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JP2020193666A - 表面処理方法 - Google Patents

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JP2020193666A JP2019099684A JP2019099684A JP2020193666A JP 2020193666 A JP2020193666 A JP 2020193666A JP 2019099684 A JP2019099684 A JP 2019099684A JP 2019099684 A JP2019099684 A JP 2019099684A JP 2020193666 A JP2020193666 A JP 2020193666A
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Abstract

【課題】ピストンリングの外周面にターゲットを用いた蒸着法により被膜を形成する表面処理方法において、蒸着膜の密着性を良好なものとすることが可能な技術を提供する。【解決手段】表面処理方法は、基材準備工程と、蒸着工程と、を含み、基材外周面は、外周端面と、カット面と、を有し、カット面は、外周端面における基材下面側の縁に接続されると共に基材下面側に向かうに従って縮径するように傾斜した傾斜面含み、且つ、カット面の全領域に亘って径方向の外側に面しており、蒸着工程は、ターゲットと外周端面とを対向させた状態で行われる。【選択図】図3

Description

本発明は、表面処理方法に関する。
近年、環境負荷の低減のために、内燃機関の低燃費化とオイル消費の低減が課題として挙げられている。内燃機関の低燃費化の手段として、ピストン系の摩擦損失の低減が有効である。また、近年の内燃機関の高出力化に伴い、耐摩耗性の優れたピストンリングが要求されている。一般的な自動車に搭載される内燃機関は、トップリング及びセカンドリングを含む2本のコンプレッションリング(圧力リング)と1本のオイルリングとを組み合わせた3本のピストンリングを、シリンダに装着されたピストンに設けた構成を採用している。これに関連して、PVD処理によりピストンリングの外周面にCr窒化物被膜を施すことで、摩擦力の低減及び耐摩耗性向上を図る技術が提案されている(例えば、特許文献1)。また、内燃機関の低燃費化に加えて、オイル消費の低減を図ることも重要である。オイル消費低減の観点では、ピストンリングの外周面の下部にアンダーカットを形成することで、オイル掻き性能を向上させることが知られている。例えば、特許文献2では、コンプレッションリングの下部にアンダーカットを形成している。
特開2013−61072号公報 特開平10−252891号公報
しかしながら、例えば、PVD法のようなターゲットを用いた蒸着法によってアンダーカットを有するピストンリングの外周面に蒸着膜を形成する場合、アンダーカットの下面(クランク室側の面)に蒸着膜の材料となる粒子が十分に衝突し難く、アンダーカット下面の蒸着膜が均一な膜厚で成膜されない場合がある。その場合、後工程の化成処理時に蒸着膜の薄い部分から処理液が基材表面と蒸着膜の間に浸透し、ピストンリングのエンジン組み付け作業において蒸着膜の剥離する虞がある。剥離した蒸着膜は異物となり、内燃機関の運転中にシリンダ内壁に傷を発生させる要因となる。
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、ピストンリングの外周面にターゲットを用いた蒸着法により被膜を形成する表面処理方法において、蒸着膜の密着性を良好なものとすることが可能な技術を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は、以下の手段を採用した。本発明は、内燃機関用ピストンのリング溝に装着されるピストンリングの一例として、コンプレッションリングの外周面に、蒸着膜を形成する表面処理方法であって、前記コンプレッションリングの基材であって、該コンプレッションリングが前記リング溝に装着された場合に前記リング溝の上壁に対向する基材上面と、該コンプレッションリングが前記リング溝に装着された場合に前記リング溝の下壁に対向する基材下面と、前記基材上面の外周縁と前記基材下面の外周縁とを接続する基材外周面と、を有する基材を用意する基材準備工程と、ターゲットを用いた蒸着法により、前記ターゲットから出射された粒子を前記基材に付着させることで、前記基材外周面に前記蒸着膜を形成する蒸着工程と、を含み、前記基材外周面は、前記基材において最大径となる頂部を含み、前記基材下面側の縁が前記基材下面の外周縁よ
りも径方向外側に形成された外周端面と、前記外周端面における前記基材下面側の縁と前記基材下面の外周縁とを接続するカット面と、を有し、前記カット面は、前記外周端面における前記基材下面側の縁に接続されると共に前記基材下面側に向かうに従って縮径するように傾斜した傾斜面を含み、且つ、前記カット面の全領域に亘って径方向の外側に面しており、前記蒸着工程は、前記ターゲットと前記外周端面とを対向させた状態で行われる、表面処理方法である。
本発明によると、蒸着工程において外周端面とターゲットとを対向配置することで、外周端面において蒸着膜を均一性の高い膜厚で成膜しつつも、カット面S2を全領域に亘って径方向外側に面した形状とすることで、カット面の全域に材料の粒子が付着し易くなり、カット面においても膜厚の均一性の高いPVD被膜を成膜することができる。その結果、蒸着膜の密着性が良好なものとなり、蒸着膜の浮きや剥離を抑制することができる。ここで、「面が径方向外側に面している」とは、面が径方向外側に向いていることを指し、面が径方向に対して直交しながら(即ち、軸方向と平行)径方向の外側を向いている場合に限らず、面が軸方向に対して傾斜しながら径方向外側を向いている場合を含む。また、傾斜面の傾斜角度は、一様でなくともよい。
本発明に係る表面処理方法は、ピストンリングとして、例えば、トップリングやセカンドリングを含んだコンプレッションリングに適用することができる。なお、「周長方向」とは、ピストンリング又は基材の周長方向のことを指す。「径方向」とは、ピストンリング又は基材の半径方向のことを指す。「径方向内側」とは、ピストンリング又は基材の内周面側のことを指し、「径方向外側」とは、その反対側(即ち、基材の外周面側)のことを指す。「軸方向」とは、ピストンリング又は基材の中心軸に沿う方向のことを指す。ピストンのリング溝の「上壁」は、リング溝の内壁のうち、燃焼室側の内壁を指し、「下壁」は、クランク室側の内壁を指す。また、本発明に係る蒸着法は、ターゲットから出射された粒子を基材に付着させることで物質の表面に膜を形成する蒸着法であればよい。このような蒸着法としては、PVD(physical vapor deposition)を例示することができる
。PVD法は、物理気相成長とも呼ぶことができる。PVD法には、イオンプレーティング法、イオンビーム蒸着法、真空蒸着法、スパッタリング法、FCVA(Filtered Cathodic Vacuum Arc)法等を含めることができる。
また、本発明において、前記カット面は、前記基材下面の外周縁と前記傾斜面における前記基材下面側の縁とを接続する接続面を含んでもよい。これによると、カット面が基材下面12に向かうに従って縮径するように傾斜した傾斜面と、基材下面の外周縁と傾斜面における基材下面側の縁とを接続する接続面と、を含むことで、基材外周面がアンダーカット形状に形成されている。このような基材に表面処理を施すことで、アンダーカットを有するコンプレッションリングが形成され、このコンプレッションリングは、良好なオイル掻き性能を有する。
また、本発明において、前記蒸着工程は、複数の前記基材を、それぞれの中心軸が一致するように、軸方向に積み重ねた状態で行われ、前記基材は、径方向における前記中心軸から前記基材上面の外周縁までの距離と前記中心軸から前記基材下面の外周縁までの距離とが、互いに等しくなるように形成されていてもよい。これによると、蒸着工程において、軸方向に隣接する2つの基材において互いに対向する基材上面と基材下面とが、径方向に段差を生じることなく(ずれることなく)重なり合う。そのため、基材上面及び基材下面に蒸着膜が成膜されることを抑制でき、基材上面や基材下面から蒸着膜を除去するための研磨加工を省くことができる。このような表面処理方法は、複数の基材に対してPVD被膜を成膜する場合に好適である。
また、本発明において、前記基材の周長方向に直交する断面において、前記基材の径方
向に対する前記傾斜面の傾斜角度は、5°以上とすることが好ましい。そうすることにより、傾斜面の全域に材料の粒子がより付着し易くなり、傾斜面における膜厚の均一性を更に高めることができる。その結果、蒸着膜の密着性を更に向上させることができる。
また、本発明において、前記基材の周長方向に直交する断面において、前記基材の径方向に対する前記傾斜面の傾斜角度は、5°以上25°以下とすることがより好ましい。傾斜角度を25°以下とすることにより、外周端面の軸方向寸法をより大きく確保することができる。その結果、例えば、外周端面がクランク室側に向かうに従って拡径するように傾斜したテーパ状に形成されている場合、テーパ状の外周端面を長時間残存させることでき、外周端面が早期に消滅することによるオイル掻き機能の低下を抑制することができる。その結果、コンプレッションリングのオイル掻き性能を、より良好なものとすることができる。
また、本発明において、前記蒸着工程は、前記基材外周面にCr又はTiからなる下地被膜を形成する下地被膜形成工程と、前記下地被膜の上に硬質被膜を形成する硬質被膜形成工程と、を含んでもよい。これによると、Cr又はTiからなる下地被膜を介して硬質被膜を基材外周面に成膜することで、硬質被膜の基材外周面に対する密着性を高めることができる。その結果、硬質被膜の浮きや剥離を好適に抑制することができる。
また、本発明において、前記下地被膜の膜厚は、前記硬質被膜と前記下地被膜とを含めた前記蒸着膜全体の膜厚の50%以下とすることが、密着性の向上の観点からより好ましい。
また、本発明は、ピストンリングとして、3ピースオイルリングにおけるセグメントの外周面に蒸着膜を形成する場合にも適用することができる。即ち、本発明は、軸方向両側に設けられた一対のセグメントと、前記一対のセグメントを径方向外側へ付勢するエキスパンダと、を有し、内燃機関用ピストンのリング溝に装着されるオイルリングにおける前記セグメントの外周面に、蒸着膜を形成する表面処理方法であってもよい。この場合、本発明は、前記セグメントの基材であって、該セグメントの軸方向両側の面のうち、該オイルリングが前記リング溝に装着された場合に前記リング溝の上壁側に位置する基材上面と、該オイルリングが前記リング溝に装着された場合に前記リング溝の下壁側に位置する基材下面と、前記基材上面の外周縁と前記基材下面の外周縁とを接続する基材外周面と、を有する基材を用意する基材準備工程と、ターゲットを用いた蒸着法により、前記ターゲットから出射された粒子を前記基材に付着させることで、前記基材外周面に前記蒸着膜を形成する蒸着工程と、を含み、前記基材外周面は、前記基材において最大径となる頂部を含み、前記基材下面側の縁が前記基材下面の外周縁よりも径方向外側に形成された外周端面と、前記外周端面における前記基材下面側の縁と前記基材下面の外周縁とを接続するカット面と、を有し、前記カット面は、前記外周端面における前記基材下面側の縁に接続されると共に前記基材下面側に向かうに従って縮径するように傾斜した傾斜面を含み、且つ、前記カット面の全領域に亘って径方向の外側に面しており、前記蒸着工程は、前記ターゲットと前記外周端面とを対向させた状態で行われる、表面処理方法である。
また、本発明は、ピストンリングとして、2ピースオイルリングにおけるリング本体の外周面に蒸着膜を形成する場合にも適用することができる。即ち、本発明は、径方向外側に突出した一対のレールが軸方向両側に設けられたリング本体と、前記リング本体を径方向外側へ付勢するエキスパンダと、を有し、内燃機関用ピストンのリング溝に装着されるオイルリングにおける前記リング本体の外周面に、蒸着膜を形成する表面処理方法であってもよい。この場合、本発明は、前記リング本体の基材であって、該オイルリングが前記リング溝に装着された場合に前記リング溝の上壁に対向する基材上面と、該オイルリングが前記リング溝に装着された場合に前記リング溝の下壁に対向する基材下面と、前記基材
上面の外周縁と前記基材下面の外周縁とを接続する基材外周面と、を有する基材を用意する基材準備工程と、ターゲットを用いた蒸着法により、前記ターゲットから出射された粒子を前記基材に付着させることで、前記基材外周面に前記蒸着膜を形成する蒸着工程と、を含み、前記基材外周面は、前記一対のレールのうち、前記リング溝の上壁側のレールの外周面に含まれる上側レール面と、前記リング溝の下壁側のレールに含まれる下側レール面と、を有し、前記上側レール面は、前記上側レール面において最大径となる頂部を含み、前記基材上面側の縁が前記基材上面の外周縁よりも径方向外側に形成された上側の外周端面と、前記上側の外周端面における前記基材上面側の縁と前記基材上面の外周縁とを接続する上側のカット面であって、前記上側の外周端面における前記基材上面側の縁に接続されると共に前記基材上面側に向かうに従って縮径するように傾斜した上側の第1の傾斜面を含み、且つ、全領域に亘って径方向の外側に面した上側のカット面と、前記上側の外周端面における前記基材下面側の縁と前記上下レール接続面における前記基材上面側の縁とを接続すると共に前記基材下面側に向かうに従って縮径するように傾斜した上側の第2の傾斜面と、を有し、前記下側レール面は、前記下側レール面において最大径となる頂部を含み、前記基材下面側の縁が前記基材下面の外周縁よりも径方向外側に形成された下側の外周端面と、前記下側の外周端面における前記基材下面側の縁と前記基材下面の外周縁とを接続する下側のカット面であって、前記下側の外周端面における前記基材下面側の縁に接続されると共に前記基材下面側に向かうに従って縮径するように傾斜した下側の第1の傾斜面を含み、且つ、全領域に亘って径方向の外側に面した下側のカット面と、前記下側の外周端面における前記基材上面側の縁と前記上下レール接続面における前記基材下面側の縁とを接続すると共に前記基材上面側に向かうに従って縮径するように傾斜した下側の第2の傾斜面と、を有し、前記蒸着工程は、前記ターゲットと前記外周端面とを対向させた状態で行われる、表面処理方法である。
また、2ピースオイルリングにおけるリング本体の外周面に蒸着膜を形成する場合、本発明において、前記上側のカット面は、前記基材上面の外周縁と前記上側の傾斜面における前記基材上面側の縁とを接続する上側の接続面を含み、前記下側のカット面は、前記基材下面の外周縁と前記下側の傾斜面における前記基材下面側の縁とを接続する下側の接続面を含んでもよい。
本発明によれば、ピストンリングの外周面にターゲットを用いた蒸着法により被膜を形成する表面処理方法において、蒸着膜の密着性を良好なものとすることが可能となる。
図1は、実施形態1に係る表面処理がなされたセカンドリングが内燃機関に設けられた状態を示す断面図である。 図2は、図1の部分拡大図である。 図3は、実施形態1に係る表面処理方法の工程を示す図である。 図4は、実施形態1に係る表面処理方法の蒸着工程を行う成膜装置を示す模式図である。 図5は、蒸着工程を説明するための模式図である。 図6は、蒸着工程の詳細を示す図である。 図7は、比較例に係る表面処理方法の蒸着工程を説明するための模式図である。 図8は、捩れ試験を説明するための図である。 図9は、実施形態1の変形例1に係る表面処理方法に用いる基材の、周長方向に直交する断面を示す図である。 図10は、実施形態1の変形例2に係る表面処理がなされたセカンドリングが内燃機関に設けられた状態を示す断面図である。 図11は、実施形態1の変形例2に係る表面処理方法に用いる基材の、周長方向に直交する断面を示す図である。 図12は、実施形態1の変形例3に係る表面処理方法に用いる基材の、周長方向に直交する断面を示す図である。 図13は、実施形態1の変形例4に係る表面処理方法に用いる基材の、周長方向に直交する断面を示す図である。 図14は、実施形態2に係る表面処理がなされたオイルリングが内燃機関に設けられた状態を示す断面図である。 図15は、実施形態2に係る表面処理に用いる基材の、周長方向に直交する断面を示す図である。 図16は、実施形態3に係る表面処理がなされたオイルリングが内燃機関に設けられた状態を示す断面図である。 図17は、実施形態3に係る表面処理に用いる基材の、周長方向に直交する断面を示す図である。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。但し、以下の実施形態に記載されている構成は、特に記載がない限りは発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
なお、以下の説明において「周長方向」とは、特に指定しない限りはピストンリング又は基材の周長方向のことを指す。「径方向」とは、特に指定しない限りはピストンリング又は基材の半径方向のことを指す。「径方向内側」とは、ピストンリング又は基材の内周面側のことを指し、「径方向外側」とは、その反対側(即ち、基材の外周面側)のことを指す。「軸方向」とは、特に指定しない限りはピストンリング又は基材の中心軸に沿う方向のことを指す。ピストンのリング溝の「上壁」は、リング溝の内壁のうち、燃焼室側の内壁を指し、「下壁」は、クランク室側の内壁を指す。基材の「上側」は、基材の軸方向において、ピストンリングがリング溝に設けられた場合におけるリング溝の上壁側を指し、「下側」は、ピストンリングがリング溝に設けられた場合におけるリング溝の下壁側を指す。また、PVD(physical vapor deposition)とは、ターゲットから出射された粒
子を基材に付着させることで物質の表面に膜を形成する蒸着法の一種であり、物理気相成長とも呼ぶことができる。PVD法には、イオンプレーティング法、真空蒸着法、イオンビーム蒸着法、スパッタリング法、FCVA(Filtered Cathodic Vacuum Arc)法等を含むことができる。
<実施形態1>
実施形態1は、本発明に係る表面処理方法を、ピストンリングとしてのコンプレッションリングの一例であるセカンドリングに適用したものである。但し、本発明に係る表面処理方法は、トップリングに適用してもよい。図1は、実施形態1に係る表面処理がなされたセカンドリングが内燃機関に設けられた状態を示す断面図である。図1は、セカンドリングの周長方向に直交する断面を示している。図2は、図1の部分拡大図である。図1に示す内燃機関100は、シリンダ20と、シリンダ20に装着された内燃機関用ピストン30(以下、ピストン30)と、図示しない燃焼室及びクランク室と、を有する。図1を平面視した場合の上側が燃焼室側であり、下側がクランク室側である。図1に示すように、内燃機関100では、シリンダ20の内周面であるシリンダ内壁20aとピストン30の外周面であるピストン外周面30aの間に所定の離間距離が確保されることにより、隙間PC1が形成されている。ピストン外周面30aには、略矩形状の断面形状を有する溝であるリング溝40が形成されている。リング溝40は、燃焼室側に形成された上壁401と、クランク室側に形成されて上壁401に対向する下壁402と、上壁401と下壁402の内周縁同士を接続する接続壁403とを有する。リング溝40には、セカンドリ
ング10が装着される。
[セカンドリング]
セカンドリング10は、ピストン30の往復運動に伴ってシリンダ内壁20aを摺動する摺動部材である。図1に示すように、セカンドリング10の表面は、リング上面101とリング下面102とリング外周面103とリング内周面104とを有する。セカンドリング10がリング溝40に装着された場合において、リング上面101が上壁401に対向し、リング下面102が下壁402に対向し、リング外周面103がシリンダ内壁20aに摺接し、リング内周面104が接続壁403に対向する。セカンドリング10は、合口(図示なし)が形成された円環状を有している。また、セカンドリング10は、リング溝40に装着された場合に外周面103がシリンダ内壁20aを押圧するように、自己張力を有している。図2に示すように、セカンドリング10は、基材1とPVD被膜2と酸化被膜3とを有する。セカンドリング10は、実施形態1に係る表面処理方法を用いて基材1の表面にPVD被膜2、酸化被膜3が成膜されることで形成される。以下、基材1、PVD被膜2、酸化被膜3について詳しく説明する。
[基材]
基材1は、実施形態1に係る表面処理が施される対象となるものである。基材1は、全体として、間欠的な円環形状を有している。基材1は、主に鋼材(スチール)を材料として形成されている。基材1の材料となる鋼材には、炭素鋼材、ステンレス鋼材、合金鋼、鋳鉄材、鋳鋼材が挙げられる。但し、基材1の材料はこれに限定されず、チタン系の材料やアルミニウム系の材料も使用することができる。
図1に示すように、基材1の表面は、基材上面11と基材下面12と基材外周面13と基材内周面14とを有する。基材上面11は、セカンドリング10がリング溝40に装着された場合に上壁401に対向する面である。基材下面12は、セカンドリング10がリング溝40に装着された場合に下壁402に対向する面である。基材上面11及び基材下面12は、軸方向に直交しており、互いに平行な平坦面に形成されている。図2に示すように、基材外周面13は、基材上面11の外周縁E1と基材下面12の外周縁E2とを接続する面であり、セカンドリング10がリング溝40に装着された場合に、シリンダ内壁20aに対向する。基材内周面14は、基材上面11の内周縁と基材下面12の内周縁とを接続する面であり、セカンドリング10がリング溝40に装着された場合に接続壁403に対向する。
図2に示すように、基材外周面13は、外周端面S1と、カット面S2と、第2傾斜面S3と、を有する。外周端面S1は、クランク室側に向かうに従って拡径するように傾斜したテーパ形状を有している。外周端面S1は、基材1の最外周部位を構成する面である。より具体的には、外周端面S1は、基材1において最大径となる頂部P1を含む。図2に示すように、頂部P1は、外周端面S1における基材下面12側の縁E3によって形成される。また、外周端面S1は、基材下面12の外周縁E2よりも径方向の外側に形成されている。即ち、縁E3は、基材下面12の外周縁E2よりも径方向外側に位置する。外周端面S1は、セカンドリング10がリング溝40に装着された場合に、PVD被膜2を介してシリンダ内壁20aに摺接することで、隙間PC1内のオイルを掻き落とす。なお、外周端面S1の形状は、テーパ形状に限定しない。外周端面S1は、軸方向に沿って延在するストレート形状を有してもよい。
図2に示すように、カット面S2は、外周端面S1の縁E3と基材下面12の外周縁E2とを接続する面である。カット面S2は、第1傾斜面S21と接続面S22とを含む。第1傾斜面S21は、外周端面S1の縁E3に接続されると共に基材下面12側に向かうに従って縮径するように傾斜している。接続面S22は、第1傾斜面S21における基材
下面12側の縁E4と基材下面12の外周縁E2とを接続すると共に基材1の軸方向に沿って延在している。但し、接続面S22は、基材1の軸方向に対して傾斜してもよい。図2に示すように、カット面S2は、カット面S2の全領域(全範囲)において径方向外側に面している。ここで、本明細書において「面が径方向外側に面している」とは、面が径方向外側に向いていることを指し、面が径方向に対して直交しながら(即ち、軸方向と平行)径方向外側を向いている場合に限らず、面が軸方向に対して傾斜しながら径方向外側を向いている場合を含むものとする。基材外周面13は、第1傾斜面S21と接続面S22とによって、クランク室側の部分が切り欠かかれたアンダーカット形状に形成されている。このような基材1に後述の表面処理を施すことで、外周面103にアンダーカットを有するセカンドリング10が形成される。そのため、図1に示すように、内燃機関100において、リング外周面103の下部とシリンダ20との間に、空間50が形成される。この空間50がオイル溜まりとなり、ピストン30の下降時においてセカンドリング10が隙間PC1内のオイルを掻き落とす際に、空間50にオイルがバッファされることで、油圧の上昇が抑制される。その結果、良好なオイル掻き性能が得られる。なお、第1傾斜面S21は、本発明における「傾斜面」の一例に相当する。
図2に示すように、第2傾斜面S3は、基材上面11の外周縁E1と外周端面S1における基材上面11側の縁E5とを接続する面である。第2傾斜面S3は、基材上面11側に向かうに従って縮径するように傾斜している。
なお、基材上面11、基材下面12、外周端面S1、第1傾斜面S21、接続面S22、第2傾斜面S3、基材内周面14は、R加工等によって形成された断面円弧状の曲面を介して滑らかに接続されてもよい。
[PVD被膜]
PVD被膜2は、後述する蒸着工程により基材外周面13の略全域に形成された膜である。PVD被膜2は、基材外周面13に直接成膜された下地被膜21と、下地被膜21の上に成膜された硬質被膜22と、を含む。下地被膜21は、Cr膜又はTi膜であり、基材外周面13に対する硬質被膜22の密着性を高めるために設けられる。下地被膜21は、後述する蒸着工程における下地被膜形成工程において、基材外周面13に成膜される。硬質被膜22は、セカンドリング10の耐磨耗性を向上させるために設けられる膜である。硬質被膜22は、例えば、Cr−N膜、Cr−B−N膜、非晶質炭素被膜(ダイヤモンドライクカーボンともいう)等が挙げられる。硬質被膜22は、後述する蒸着工程における硬質被膜形成工程において、下地被膜21の上に成膜される。PVD被膜は、本発明における「蒸着膜」の一例である。
[酸化被膜]
酸化被膜3は、基材1の表面の防錆や、セカンドリング10とリング溝40との良好な初期馴染みを目的として設けられる膜である。酸化被膜3は、後述する酸化被膜形成工程により、基材上面11、基材下面12、基材内周面14の上に成膜される。例えば、基材1を鋼材により形成した場合、酸化被膜3として四三酸化鉄被膜が成膜され、基材1をアルミニウム系材料により形成した場合、酸化被膜3として酸化アルミニウム膜が成膜される。
[表面処理方法]
次に、実施形態1に係る表面処理方法を用いて、基材1にPVD被膜2及び酸化被膜3を形成する方法について説明する。以下に示す例では、鋼材により形成した基材1に成膜する場合について説明する。図3は、実施形態1に係る表面処理方法の工程を示す図である。図3に示すように、実施形態1に係る表面処理方法は、基材準備工程と、蒸着工程と、酸化被膜形成工程と、を含む。以下、各工程について説明する。
先ず、S110の基材準備工程では、図1及び図2に示した基材1を準備する。S110では、例えば、上述の鋼材を加工して得られた基材1の素形材にブラスト又はバフ研磨を施すことで、基材1を成形する。但し、基材準備工程では、予め成形された基材1を準備してもよい。また、基材準備工程では、S120の蒸着工程の前工程として、イオンボンバードメント処理を行うことで、基材1の表面を清浄化してもよい。
次に、S120の蒸着工程では、PVD法により、基材外周面13にPVD被膜2を成膜する。但し、蒸着工程で用いる蒸着法はPVD法に限定しない。蒸着工程で用いる蒸着法は、ターゲットから出射された粒子を基材に付着させることで物質の表面に膜を形成する蒸着法であればよい。以下、PVD法の一例であるアークイオンプレーティング法により複数の基材1の基材外周面13にPVD被膜を形成する場合について説明する。
図4は、実施形態1に係る表面処理方法の蒸着工程を行う成膜装置を示す模式図である。図4では、複数の基材1の一部を示している。図4に示す成膜装置200は、基材外周面13にアークイオンプレーティングによって成膜処理を行なう装置である。アークイオンプレーティング法は、イオンプレーティングの一つで、真空アーク放電を利用して、陰極の材料を蒸気化、イオン化して、被コーティング物の表面に被膜を形成するものである。成膜装置200は、チャンバ210と、ターゲット220と、アーク供給源230と、ワーク回転装置240と、バイアス電圧供給源250を備えている。チャンバ210は、基材1及びターゲット220を収容する空間である。ターゲット220は、PVD被膜2を成膜するための材料を含んで形成されており、材料の粒子(金属イオン)が飛び出す出射面220Sを有する。アーク供給源230は、ターゲット220にアーク電流を供給することで、材料の粒子を出射させる。アーク供給源230は、ターゲット220に接続される陰極とチャンバ210に接続される陽極とを有する。ワーク回転装置240は、成膜プロセス中に、基材1を、回転軸A1回りに自転させる。バイアス電圧供給源250は、ワーク回転装置240を介して基材1にバイアス電圧を印加する。
図5は、蒸着工程を説明するための模式図である。図5では、便宜上、複数の基材1のうち、軸方向に隣接する2つの基材1のみを図示している。図5に示すように、蒸着工程は、ターゲット220が基材1の径方向外側に配置され、ターゲット220の出射面220Sと外周端面S1とが対向した状態で行われる。また、図5に示す例では、複数の基材1が軸方向に積み重ねられた状態で、蒸着工程が行われる。より詳細には、複数の基材1は、それぞれの中心軸が回転軸A1に一致するようにして設置されている。つまり、複数の基材1は、同軸となるように設置されている。
チャンバ210内の基材1には、ワーク回転装置240を介してバイアス電圧供給源250からバイアス電位が印加される。この状態で、アーク供給源230からターゲット220へアーク電流が供給される。これにより、ターゲット220(陰極)とチャンバ210の内面(陽極)との間でアーク放電が発生し、ターゲット220に含まれる材料が蒸発して高エネルギーの粒子が出射面220Sから飛び出す。このとき、バイアス電圧が基材1に印加されることにより、粒子が基材1に向かって加速され、基材外周面13に衝突し、付着する。これにより、基材外周面13にPVD被膜2が形成される。このとき、ワーク回転装置240が基材1を回転軸A1回り(即ち、基材1の中心軸回り)に自転させることで、基材外周面13の全周に亘ってPVD被膜2が形成される。
ここで、出射面220Sから出射された材料の粒子の多くは、基材1に入射する。図4及び図5に鎖線で示す矢印は、出射面220Sから基材1の基材外周面13に入射する粒子の軌跡を模式的に表したものである。図5に示すように、外周端面S1と出射面220Sとが対向配置されていることから、出射面220Sから基材1に入射する粒子が外周端
面S1の全域に付着し易くなり、外周端面S1において膜厚の均一性の高いPVD被膜2を成膜することができる。また、カット面S2については、カット面S2が全領域において径方向外側に面していることから、出射面220Sから入射する粒子は、カット面S2の全域に付着し易くなっている。その結果、カット面S2においても膜厚の均一性の高いPVD被膜2を成膜することができる。同様に、第2傾斜面S3が傾斜して形成されていることから、出射面220Sから入射する粒子が第2傾斜面S3の全域に付着することができ、第2傾斜面S3においても膜厚の均一性の高いPVD被膜2を成膜することができる。
図6は、蒸着工程の詳細を示す図である。図6に示すように、蒸着工程は、下地被膜形成工程と硬質被膜形成工程と、を含む。S121の下地被膜形成工程では、下地被膜21として、Cr膜又はTi膜を成膜する。下地被膜形成工程では、ターゲット220の材料としてCr又はTiを用いる。次に、S122の硬質被膜形成工程では、下地被膜21の上に、硬質被膜22として、Cr−N膜、Cr−B−N膜、又は非晶質炭素被膜を成膜する。Cr−N膜又はCr−B−N膜を成膜する場合、ターゲット220の材料としてCr又はCrBを用い、反応ガスとしての窒素をチャンバ210に導入する。非晶質炭素被膜を成膜する場合、ターゲット220の材料としてグラファイトを使用する。以上のようにして、下地被膜21及び硬質被膜22が成膜される。
次に、S130の酸化被膜形成工程では、化成処理を行うことで基材上面11、基材下面12、及び基材内周面14に酸化被膜3を成膜する。S130では、アルカリ着色処理が用いられる。アルカリ着色処理では、アルカリ溶液に酸化剤や反応促進剤等を加えた処理液に鋼材を浸して煮沸等することで、鋼材の表面に処理液が作用し、四三酸化鉄からなる酸化被膜3が成膜される。酸化被膜形成工程では、アルカリ着色処理により、基材1の表面においてPVD被膜2によって覆われていない領域、即ち、基材上面11、基材下面12、及び基材内周面14に酸化被膜3が成膜される。
以上の工程を経ることにより、実施形態1に係る表面処理が完了する。これにより、基材1の表面にPVD被膜2及び酸化被膜3が形成される。上述の表面処理が完了した後、ブラスト、バフ研磨、ラッピング処理等を行うことによって、図1に示すセカンドリング10が完成する。
[作用・効果]
以上のように、実施形態1に係るコンプレッションリングの表面処理方法は、基材1を用意する基材準備工程と、ターゲットを用いた蒸着法であるPVD法により、基材外周面13にPVD被膜2を形成する蒸着工程と、を含む。そして、基材外周面13は、基材1において最大径となる頂部P1を含み、基材下面12の外周縁E2よりも径方向外側に形成された外周端面S1と、外周端面S1における基材下面側の縁E3と基材下面12の外周縁E2とを接続するカット面S2と、を有する。そして、カット面S2は、外周端面S1における基材下面12側の縁E3に接続されると共に基材下面12側に向かうに従って縮径するように傾斜した第1傾斜面S21を含み、且つ、カット面S2の全領域に亘って径方向の外側に面している。そして、蒸着工程は、PVD被膜2の材料となる粒子を出射するターゲット220と外周端面S1とを対向させた状態で行われる。
このような表面処理方法によると、蒸着工程において外周端面S1とターゲット220とを対向配置することで、外周端面S1においてPVD被膜2を均一性の高い膜厚で成膜しつつも、カット面S2を全領域に亘って径方向外側に面した形状とすることで、カット面S2の全域に材料の粒子が付着し易くなり、カット面S2においても膜厚の均一性の高いPVD被膜2を成膜することができる。
更に、カット面S2が、基材下面12に向かうに従って縮径するように傾斜した第1傾斜面S21と、基材下面12の外周縁E2と第1傾斜面S21における基材下面12側の縁E4とを接続する接続面S22と、を含むことで、基材外周面13がアンダーカット形状に形成されている。このような基材外周面13に表面処理を施すことで、外周面103にアンダーカットを有するセカンドリング10が形成される。これにより、良好なオイル掻き性能を得ることができる。
ここで、成膜されたPVD被膜の膜厚の均一性が低いと、酸化被膜形成工程において化成処理をしたときに、PVD被膜の薄い部分から処理液が基材外周面とPVD被膜の間に浸透し、PVD被膜が基材外周面から浮く場合がある。その結果、セカンドリングのエンジン組み付け作業においてセカンドリングに応力が作用したときにPVD被膜が剥離する虞がある。剥離した被膜は異物となり、内燃機関の運転中にシリンダ内壁の傷発生等の要因となる。つまり、PVD被膜の膜厚の均一性が低いと、PVD被膜の密着性の低下を招く虞がある。
図7は、比較例に係る表面処理方法の蒸着工程を説明するための模式図である。図7では、便宜上、単一の基材を示している。比較例に係る表面処理方法は、基材1に代えて基材1Xを用いる点で、図3で説明した表面処理方法と相違し、その他の点で同じである。基材1Xは、外周面13Xがアンダーカット形状に形成されているものの、カット面S2Xが第1傾斜面S21に代えて傾斜面S23とストレート面S24とを有する点で基材1と異なる。傾斜面S23は、外周端面S1の縁E3に接続されると共に、基材下面12に向かうに従って縮径するように傾斜している。ストレート面S24は、傾斜面S23における基材下面12側の縁E6に接続されると共に基材1の周長方向に直交する断面において、径方向と平行に延在している。即ち、ストレート面S24は、軸方向下側に面している。これにより、カット面S2Xは、ストレート面S24において径方向外側に面していない形状となっている。ストレート面S24における径方向内側の縁E4には、接続面S22が接続されている。図7に示すように、比較例の場合、ストレート面S24が径方向外側に面していないため、ターゲット220の出射面220Sから入射する粒子がストレート面S24に付着し難くなっている。その結果、ストレート面S24において膜厚の均一性の高いPVD被膜2が成膜されず、ストレート面S24におけるPVD被膜2が剥離する虞がある。
これに対して、実施形態1に係る表面処理方法では、第1傾斜面S21においても膜厚の均一性の高いPVD被膜2を成膜可能となることから、下地被膜21におけるPVD被膜の密着性を比較例よりも向上させることができる。その結果、セカンドリング10に良好なオイル掻き性能を付与しながらも、PVD被膜2の密着性を良好なものとすることができ、PVD被膜2の浮きや剥離を抑制することができる。
更に、蒸着工程は、基材外周面13にCr又はTiからなる下地被膜21を形成する下地被膜形成工程と、下地被膜21の上に硬質被膜22を形成する硬質被膜形成工程と、を含んでいる。これによると、Cr又はTiからなる下地被膜21を介して硬質被膜22を基材外周面13に成膜することで、硬質被膜22の基材外周面13に対する密着性を高めることができる。その結果、硬質被膜22の浮きや剥離を好適に抑制することができる。また、下地被膜21により密着性が向上するため、硬質被膜22を薄く成膜した場合であっても、浮きや剥離が生じ難くなる。その結果、PVD被膜2の厚みをより薄くすることが可能となる。ここで、下地被膜21の膜厚は特に限定されないが、硬質被膜22と下地被膜21とを含めた蒸着膜2全体の膜厚の50%以下とすることが、密着性向上の観点から、より好ましい。
ここで、径方向における頂部P1から基材上面11の外周縁E1までの距離をd1とす
る。また、径方向における頂部P1から基材下面12の外周縁E2までの距離d2とする。図2に、d1及びd2を示す。このとき、実施形態1では、基材1の基材外周面13に基材上面11に向かうに従って縮径するように傾斜した第2傾斜面S3を形成することで、d1とd2とを、互いに等しくしている。これにより、基材1では、径方向における中心軸から基材上面11の外周縁E1までの距離と中心軸から基材下面12の外周縁E2までの距離とが、互いに等しくなっている。そして、蒸着工程は、複数の基材1を、それぞれの中心軸が一致するように、軸方向に積み重ねた状態で行われる。これによると、図5に示すように、蒸着工程において、軸方向に隣接する2つの基材1において互いに対向する基材上面11の外周縁E1と基材下面12の外周縁E2の、径方向における位置が一致する。即ち、互いに対向する基材上面11と基材下面12とが、径方向に段差を生じることなく(ずれることなく)重なり合う。ここで、互いに対向する基材上面11と基材下面12との間に段差が生じると、当該段差部分において基材上面11や基材下面12にPVD被膜2が成膜される場合がある。その場合、基材上面11や基材下面12からPVD被膜2を除去してリング上面101やリング下面102を平坦面とするための研磨加工が必要となる。これに対して、実施形態1に係る表面処理方法では、互いに対向する基材上面11と基材下面12とが、径方向に段差を生じることなく重なり合うため、基材上面11及び基材下面12にPVD被膜2が成膜されることを抑制でき、上述した研磨加工を省くことができる。このような表面処理方法は、複数の基材1に対してPVD被膜2を成膜する場合に好適である。
ここで、図2に示す符号θは、基材1の周長方向に直交する断面における、基材1の径方向(即ち、軸方向と直交する方向)に対する第1傾斜面S21の傾斜角度を表す。このとき、傾斜角度θを5°以上とすることで、第1傾斜面S21の全域にターゲット220の材料の粒子がより付着し易くなり、第1傾斜面S21における膜厚の均一性を更に高めることができる。その結果、第1傾斜面S21に対するPVD被膜2の密着性を更に向上させることができる。但し、本発明はこれに限定しない。
傾斜角度θが5°以上の場合、90°を超えない範囲で傾斜角度θを大きくすればするほど、PVD被膜2の密着性が向上する。ここで、セカンドリングのリング幅(軸方向寸法)は該セカンドリングを収容するリング溝の上下幅に依存し、例えば、1.0〜1.5mmのように、設計可能なリング幅の範囲が限定されている。そのため、傾斜角度θをより大きくしようとすると、縁E3をより燃焼室側に形成する必要があり、その結果、外周端面S1の軸方向寸法が減少する。ここで、本実施形態のように外周端面S1がテーパ形状を有している場合、ピストン30の往復運動に伴い、外周端面S1が徐々に摩耗する。このとき、外周端面S1の軸方向寸法がより大きい方が、外周端面S1をより長時間残存させることができる。これを考慮すると、傾斜角度θは、5°以上25°以下とすることが好ましい。傾斜角度θを25°以下とすることで、外周端面S1の軸方向寸法をより大きく確保することができる。これにより、テーパ状の外周端面S1を長時間残存させることでき、外周端面S1が早期に消滅することによるオイル掻き機能の低下を抑制することができる。その結果、セカンドリング10のオイル掻き性能を、より良好なものとすることができる。但し、本発明はこれに限定しない。
以上、アークイオンプレーティング法により複数の基材1の基材外周面13にPVD被膜を形成する場合について説明したが、本発明に係る表面処理方法は、これに限定しない。蒸着工程で用いられるPVD法には、イオンプレーティング法、イオンビーム蒸着法、真空蒸着法、スパッタリング法、FCVA(Filtered Cathodic Vacuum Arc)法を挙げることができる。また、本発明で用いられる蒸着法は、PVD法に限らず、ターゲットを用いる蒸着法であればよい。また、蒸着工程では、1つの基材1に対してPVD被膜を形成してもよい。
また、本発明の蒸着工程において成膜される蒸着膜は、下地被膜や硬質被膜に限定されず、PVD被膜の材料は、上述の材料に限定されない。例えば、PVD被膜は、下地被膜を有さずに硬質被膜のみを有してもよい。また、本発明に係る表面処理方法は、酸化被膜形成工程を含まなくともよい。例えば、本発明に係る表面処理方法は、酸化被膜に代えて、リン酸塩被膜を形成してもよい。
[密着性評価]
実施形態1に係る表面処理方法により成膜されたPVD被膜の密着性の評価を行った。密着性の評価では、化成処理により酸化被膜を成膜した後のセカンドリングを対象に捩れ試験を実施し、カット面にPVD被膜の剥離が存在するか否かを目視にて観察した。図8は、捩れ試験を説明するための図である。捩れ試験では、図8に示すように、セカンドリング10の合口を形成する一対の合口端部110,120を掴持し、中心軸に対して合口の反対側部位130を支点として、セカンドリングが図8の実線で示される姿勢となる方向にセカンドリングを所定の捩れ角度で捻った。なお、このときの捩れ角度は45°、90°とした。
[実施例]
実施例1〜5として、図3に示した表面処理方法を用いて基材の外周面にPVD被膜を成膜した場合の密着性を評価した。実施例1〜5では、図1に示した形状の基材を用い、第1傾斜面の傾斜角度を異ならせた。より詳細には、実施例1では、第1傾斜面の傾斜角度を2°とし、PVD被膜を得た。実施例2は、第1傾斜面の傾斜角度を5°とした以外は、実施例1と同様にして、PVD被膜を得た。実施例3は、第1傾斜面の傾斜角度を10°とした以外は、実施例1と同様にして、PVD被膜を得た。実施例4は、第1傾斜面の傾斜角度を15°とした以外は、実施例1と同様にして、PVD被膜を得た。実施例5は、第1傾斜面の傾斜角度を25°とした以外は、実施例1と同様にして、PVD被膜を得た。
[比較例]
比較例1として、カット面が傾斜面を有さない基材の外周面にPVD被膜を成膜した場合の密着性を評価した。比較例1は、第1傾斜面の傾斜角度を0°とした以外は、実施例1と同様にして、PVD被膜を得た。
[実験結果]
表1に示す評価結果は、密着性評価の結果を以下の評価基準で表したものである。各捩れ角度において、PVD被膜の剥離の発生がないものを「○」とし、剥離が発生したものを「×」とした。また、表1に示す密着性は、捩れ角度45°と捩れ角度90°の両方で剥離が発生しなかったものについては「A」とし、捩れ角度90°では剥離が発生したものの、捩れ角度45°では剥離が発生しなかったものについては「B」とし、捩れ角度45°と捩れ角度90°の両方で剥離が発生したものについては「C」とした。表1に示すように、比較例1よりも実施例1〜5の方が密着性に優れる結果となった。これにより、実施形態1に係る表面処理方法によってPVD被膜の密着性が向上することを確認できた。また、実施例同士で比較した場合、実施例1よりも実施例2〜5の方が密着性に優れる結果となった。これにより、第1傾斜面の傾斜角度を5°以上とすることによってPVD被膜の密着性が更に向上することを確認できた。
Figure 2020193666

[実施形態1の変形例1]
図9は、実施形態1の変形例1に係る表面処理方法に用いる基材1Aの、周長方向に直交する断面を示す図である。実施形態1の変形例1に係る表面処理方法は、基材1に代えて基材1Aを用いる点で、図3で説明した表面処理方法と相違し、その他の点は同じである。また、基材1Aは、基材外周面13Aが第2傾斜面S3を有さない点で基材1と相違し、その他の点は同じである。図9に示すように、本発明に係る表面処理方法では、第2傾斜面S3を有さない基材を用いてもよい。
[実施形態1の変形例2]
図10は、実施形態1の変形例2に係る表面処理がなされたセカンドリングが内燃機関に設けられた状態を示す断面図である。図11は、実施形態1の変形例2に係る表面処理方法に用いる基材1Bの、周長方向に直交する断面を示す図である。実施形態1の変形例2に係る表面処理方法は、基材1に代えて基材1Bを用いる点で、図3で説明した表面処理方法と相違し、その他の点は同じである。
図11に示すように、実施形態1の変形例2に係る基材1Bの基材外周面13Bは、基材1Bにおいて最大径となる頂部P1を含み、基材下面12の外周縁E2よりも径方向外側に形成された外周端面S1と、外周端面S1の縁E3と基材下面12の外周縁E2とを接続するカット面S2と、を含む。また、カット面S2は、外周端面S1における基材下面12側の縁E3と基材下面12の外周縁E2とを接続すると共に基材下面12側に向かうに従って縮径するように傾斜した第1傾斜面S21によって形成されている。即ち、基材1Bは、基材外周面13Bのカット面S2が接続面S22を有さない点で基材1と相違し、その他の点は同じである。図11に示すように、カット面S2が第1傾斜面S21によって形成されていることから、カット面S2は、全領域において径方向外側に面した形状となっている。
基材外周面13Bは、カット面S2が第1傾斜面S21によって形成されていることより、クランク室側の部分が斜めにカットされたベベル形状に形成されている。このような基材1Bに表面処理を施されたセカンドリング10Bのリング外周面103Bは、図10に示すように、内燃機関100においてオイル溜まりとなる空間50を形成する。そのため、良好なオイル掻き性能を得ることができる。更に、実施形態1の変形例2に係る表面処理方法では、カット面S2を全領域において径方向外側に面した形状とすることで、蒸着工程において、カット面S2の全域に材料の粒子が付着し易くなり、カット面S2に膜厚の均一性の高いPVD被膜2を成膜することができる。その結果、セカンドリングに良好なオイル掻き性能を付与しながらも、基材外周面13Bに対するPVD被膜2の密着性を良好なものとすることができ、PVD被膜2の浮きや剥離を抑制することができる。
[実施形態1の変形例3]
図12は、実施形態1の変形例3に係る表面処理方法に用いる基材1Cの、周長方向に直交する断面を示す図である。実施形態1の変形例3に係る表面処理方法は、基材1に代えて基材1Cを用いる点で、図3で説明した表面処理方法と相違し、その他の点は同じである。また、基材1Cは、基材外周面13Cが第2傾斜面S3を有さない点で基材1Bと相違し、その他の点は同じである。
[実施形態1の変形例4]
なお、第1傾斜面S21の傾斜角度θは、一様でなくともよい。図13は、実施形態1の変形例3に係る表面処理方法に用いる基材1Dの、周長方向に直交する断面を示す図である。実施形態1の変形例4に係る表面処理方法は、基材1に代えて基材1Dを用いる点で、図3で説明した表面処理方法と相違し、その他の点は同じである。図13に示すように、変形例4に係る基材外周面13Dの第1傾斜面S21Dは、傾斜角度の異なる複数の面が連なって形成されている点で図2に示した基材外周面13の第1傾斜面S21と相違する。より具体的には、第1傾斜面S21Dは、外周端面S1の縁E3に接続される外側面S211と、外側面S211に連なると共に第1傾斜面S21Dにおける基材下面12側の縁E4に接続される内側面S212と、を有する。外側面S211は、基材下面12側に向かうに従って縮径するように傾斜角θ1で傾斜しており、内側面S212は、基材下面12側に向かうに従って縮径するように傾斜角θ2で傾斜している。図13に示すように、第1傾斜面S21Dが全領域において径方向外側に面しているものの、θ1>θ2となっており、第1傾斜面S21Dの傾斜角度は一様ではない。
<実施形態2>
図14は、実施形態2に係る表面処理がなされたオイルリングが内燃機関に設けられた状態を示す断面図である。図15は、実施形態2に係る表面処理方法に用いる基材4の、周長方向に直交する断面を示す図である。実施形態2は、ピストンリングとして、3ピースのオイルリングに本発明に係る表面処理方法を適用したものである。コンプレッションリングの一例であるセカンドリングに適用したものである。実施形態2に係る表面処理方法は、セカンドリング(コンプレッションリング)の基材1に代えて3ピースオイルリングにおけるセグメントの基材4を用いる点で、図3で説明した実施形態1に係る表面処理方法と相違し、その他の点は同じである。
[オイルリング]
図14に示すオイルリング300は、軸方向両側に設けられた一対のセグメント60,60と、一対のセグメント60,60を径方向外側へ付勢するエキスパンダ70と、が組み合わされて形成されている。一対のセグメント60,60は、ピストン30の往復運動に伴ってシリンダ内壁20aを摺動する。図14に示すように、セグメント60の表面は、セグメント上面601とセグメント下面602とセグメント外周面603とセグメント内周面604とを有する。オイルリング300がリング溝40に装着された場合において、上側のセグメント上面601が上壁401側に位置し、下側のセグメント下面602が下壁402側に位置し、セグメント外周面603がシリンダ内壁20aに摺接し、セグメント内周面604がエキスパンダ70に当接する。セグメント60は、合口(図示なし)が形成された円環状を有している。セグメント60は、表面処理方法を用いて基材4の表面にPVD被膜2、酸化被膜3が成膜されることで形成される。以下、基材4について詳しく説明し、PVD被膜2、酸化被膜3についての詳しい説明は割愛する。
図14に示すように、基材4の表面は、基材上面41と基材下面42と基材外周面43と基材内周面44とを有する。基材上面41は、オイルリング300がリング溝40に装着された場合に上壁401側に位置する面である。基材下面42は、オイルリング300
がリング溝40に装着された場合に下壁402側に位置する面である。基材上面41及び基材下面42は、軸方向に直交しており、互いに平行な平坦面に形成されている。図15に示すように、基材外周面43は、基材上面41の外周縁E1と基材下面42の外周縁E2とを接続する面であり、オイルリング300がリング溝40に装着された場合に、シリンダ内壁20aに対向する。基材内周面44は、基材上面41の内周縁と基材下面42の内周縁とを接続する面であり、オイルリング300がリング溝40に装着された場合にエキスパンダ70に対向する。
図15に示すように、基材外周面43は、外周端面S1と、カット面S2と、を有する。外周端面S1は、周長方向に直交する断面において、径方向外側に凸状に湾曲した円弧形状を有している。外周端面S1は、基材4において最大径となる頂部P1を含む。図15に示すように、頂部P1は、外周端面S1における円弧の頂点に形成される。また、外周端面S1は、基材下面42の外周縁E2よりも径方向の外側に形成されている。即ち、頂部P1は、基材下面42の外周縁E2よりも径方向外側に位置する。外周端面S1は、オイルリング300がリング溝40に装着された場合に、PVD被膜2を介してシリンダ内壁20aに摺接することで、隙間PC1内のオイルを掻き落とす。なお、外周端面S1の形状は、円弧形状に限定しない。
図15に示すように、カット面S2は、外周端面S1の基材下面42側の縁E3と基材下面42の外周縁E2とを接続する面である。カット面S2は、第1傾斜面S21と接続面S22とを含む。第1傾斜面S21は、外周端面S1の縁E3に接続されると共に基材下面42側に向かうに従って縮径するように傾斜している。接続面S22は、第1傾斜面S21における基材下面42側の縁E4と基材下面42の外周縁E2とを接続している。接続面S22は、基材1の軸方向に沿って延在してもよいし、基材1の軸方向に対して傾斜してもよい。図15に示すように、カット面S2は、全領域において径方向外側に面している。基材外周面43は、第1傾斜面S21と接続面S22とによって、クランク室側の部分が切り欠かかれたアンダーカット形状に形成されている。このような基材4に表面処理を施すことで、セグメント60の外周面603にアンダーカットが形成される。その結果、良好なオイル掻き性能が得られる。なお、基材上面41、基材下面42、外周端面S1、第1傾斜面S21、接続面S22、基材内周面44は、R加工等によって形成された断面円弧状の曲面を介して接続されてもよい。
実施形態2に係る表面処理方法では、実施形態1と同様に、ターゲット220が基材4の径方向外側に配置され、ターゲット220の出射面220Sと外周端面S1とが対向した状態で、蒸着工程が行われる。カット面S2を全領域において径方向外側に面した形状とすることで、蒸着工程において、カット面S2の全域に材料の粒子が付着し易くなり、カット面S2に膜厚の均一性の高いPVD被膜2を成膜することができる。その結果、オイルリング300に良好なオイル掻き性能を付与しながらも、基材外周面43に対するPVD被膜2の密着性を良好なものとすることができ、PVD被膜2の浮きや剥離を抑制することができる。
また、実施形態2においても、径方向における中心軸から基材上面41の外周縁E1までの距離と中心軸から基材下面42の外周縁E2までの距離とを、互いに等しくし、複数の基材4をそれぞれの中心軸が一致するように軸方向に積み重ねた状態で蒸着工程を行うことで、基材上面41及び基材下面42にPVD被膜2が成膜されることを抑制できる。
また、実施形態2においても、Cr又はTiからなる下地被膜21を介して硬質被膜22を基材外周面43に成膜することで、硬質被膜22の基材外周面43に対する密着性を更に高めることができる。その結果、硬質被膜22の浮きや剥離をより好適に抑制することができる。なお、下地被膜21の膜厚は特に限定されないが、硬質被膜22と下地被膜
21とを含めた蒸着膜2全体の膜厚の50%以下とすることが、密着性向上の観点から、より好ましい。
また、実施形態2においても、傾斜角度θを5°以上とすることで、第1傾斜面S21に対するPVD被膜2の密着性を更に向上させることができる。更に、傾斜角度θを、5°以上25°以下とすることが、オイル掻き性能の観点において好ましい。但し、本発明はこれらに限定されない。
<実施形態3>
図16は、実施形態3に係る表面処理がなされたオイルリングが内燃機関に設けられた状態を示す断面図である。図17は、実施形態3に係る表面処理方法に用いる基材5の、周長方向に直交する断面を示す図である。実施形態3は、ピストンリングとして、2ピースのオイルリングに本発明に係る表面処理方法を適用したものである。実施形態3に係る表面処理方法は、セカンドリング(コンプレッションリング)の基材1に代えて2ピースオイルリングにおけるリング本体の基材5を用いる点で、図3で説明した実施形態1に係る表面処理方法と相違し、その他の点は同じである。
[オイルリング]
図16に示すオイルリング400は、径方向外側に突出した一対のレール810,810が軸方向両側に設けられたリング本体80と、リング本体80を径方向外側へ付勢するエキスパンダ90と、が組み合わされて形成されている。一対のレール810,810は、ピストン30の往復運動に伴ってシリンダ内壁20aを摺動する。図16に示すように、リング本体80の表面は、上面801と下面802と外周面803と内周面804とを有する。オイルリング400がリング溝40に装着された場合において、上面801が上壁401に対向し、下面802が下壁402に対向し、外周面803がシリンダ内壁20aに摺接し、内周面804がエキスパンダ90に当接する。リング本体80は、合口(図示なし)が形成された円環状を有している。リング本体80は、表面処理方法を用いて基材5の表面にPVD被膜2、酸化被膜3が成膜されることで形成される。以下、基材5について詳しく説明し、PVD被膜2、酸化被膜3についての詳しい説明は割愛する。
図16に示すように、基材5の表面は、基材上面51と基材下面52と基材外周面53と基材内周面54とを有する。基材上面51は、オイルリング400がリング溝40に装着された場合に上壁401に対向する面である。基材下面52は、オイルリング400がリング溝40に装着された場合に下壁402に対向する面である。基材上面51及び基材下面52は、軸方向に直交しており、互いに平行な平坦面に形成されている。図17に示すように、基材外周面53は、基材上面51の外周縁E1と基材下面52の外周縁E2とを接続する面であり、オイルリング400がリング溝40に装着された場合に、シリンダ内壁20aに対向する。基材内周面54は、基材上面51の内周縁と基材下面52の内周縁とを接続する面であり、オイルリング400がリング溝40に装着された場合にエキスパンダ90に対向する。
図17に示すように、基材外周面53は、上下対称の形状を有している。より具体的には、基材外周面53は、リング本体80における一対のレール810,810のうち、リング溝40の上壁401側のレール810の外周面に含まれる上側レール面531と、リング溝40の下壁402側のレール810に含まれる下側レール面532と、上側レール面531と下側レール面532とを接続する上下レール接続面533と、を有する。
上側レール面531は、更に、上側の外周端面S1と、上側のカット面S2と、上側の第2傾斜面S3と、を有する。上側の外周端面S1は、周長方向に直交する断面において、径方向外側に凸状に湾曲した円弧形状を有している。上側の外周端面S1は、上側レー
ル面531において最大径となる上側の頂部P1を含み、基材上面51の外周縁E1よりも径方向の外側に形成されている。
図17に示すように、上側のカット面S2は、上側の外周端面S1の基材上面51側の縁E3と基材上面51の外周縁E1とを接続する面である。上側のカット面S2は、上側の第1傾斜面S21と上側の接続面S22とを含む。上側の第1傾斜面S21は、上側の外周端面S1の縁E3に接続されると共に基材上面51側に向かうに従って縮径するように傾斜している。上側の接続面S22は、上側の第1傾斜面S21における基材上面51側の縁E4と基材上面51の外周縁E1とを接続すると共に基材5の軸方向に沿って延在している。但し、上側の接続面S22は、基材5の軸方向に対して傾斜してもよい。図17に示すように、上側のカット面S2は、全領域において径方向外側に面している。上側の第2傾斜面S3は、上側の外周端面S1における基材下面52側の縁E5と上下レール接続面533における基材上面側51の縁E7とを接続すると共に基材下面52側に向かうに従って縮径するように傾斜している。
下側レール面532は、更に、下側の外周端面S1と、下側のカット面S2と、下側の第2傾斜面S3と、を有する。下側の外周端面S1は、周長方向に直交する断面において、径方向外側に凸状に湾曲した円弧形状を有している。下側の外周端面S1は、下側レール面532において最大径となる下側の頂部P1を含み、基材下面52の外周縁E2よりも径方向の外側に形成されている。
図17に示すように、下側のカット面S2は、下側の外周端面S1の基材下面52側の縁E3と基材下面52の外周縁E2とを接続する面である。下側のカット面S2は、下側の第1傾斜面S21と下側の接続面S22とを含む。下側の第1傾斜面S21は、下側の外周端面S1の縁E3に接続されると共に基材下面52側に向かうに従って縮径するように傾斜している。下側の接続面S22は、下側の第1傾斜面S21における基材下面52側の縁E4と基材下面52の外周縁E2とを接続すると共に基材5の軸方向に沿って延在している。但し、下側の接続面S22は、基材5の軸方向に対して傾斜してもよい。図17に示すように、下側のカット面S2は、全領域において径方向外側に面している。下側の第2傾斜面S3は、下側の外周端面S1における基材上面51側の縁E5と上下レール接続面533における基材下面側52の縁E8とを接続すると共に基材上面51側に向かうに従って縮径するように傾斜している。
なお、基材上面51、基材下面52、外周端面S1、第1傾斜面S21、接続面S22、基材内周面54は、R加工等によって形成された断面円弧状の曲面を介して接続されてもよい。
上側及び下側の外周端面S1は、オイルリング400がリング溝40に装着された場合に、PVD被膜2を介してシリンダ内壁20aに摺接することで、隙間PC1内のオイルを掻き落とす。なお、外周端面S1の形状は、円弧形状に限定しない。
実施形態3に係る表面処理方法では、実施形態1と同様に、ターゲット220が基材5の径方向外側に配置され、ターゲット220の出射面220Sと外周端面S1とが対向した状態で、蒸着工程が行われる。上側及び下側のカット面S2を全領域において径方向外側に面した形状とすることで、蒸着工程において、カット面S2の全域に材料の粒子が付着し易くなり、カット面S2に膜厚の均一性の高いPVD被膜2を成膜することができる。また、上側レール面531の第2傾斜面S3を基材下面52側に向かうに従って縮径するように傾斜させ、下側レール面532の第2傾斜面S3を基材上面51側に向かうに従って縮径するように傾斜させることで、上側及び下側の第2傾斜面S3の全域に材料の粒子が付着し易くなり、夫々の第2傾斜面S3にも膜厚の均一性の高いPVD被膜2を成膜
することができる。その結果、オイルリングに良好なオイル掻き性能を付与しながらも、基材外周面53に対するPVD被膜2の密着性を良好なものとすることができ、PVD被膜2の浮きや剥離を抑制することができる。
また、実施形態3においても、径方向における中心軸から基材上面51の外周縁E1までの距離と中心軸から基材下面52の外周縁E2までの距離とを、互いに等しくし、複数の基材5をそれぞれの中心軸が一致するように軸方向に積み重ねた状態で蒸着工程を行うことで、基材上面51及び基材下面52にPVD被膜2が成膜されることを抑制できる。
また、実施形態3においても、Cr又はTiからなる下地被膜21を介して硬質被膜22を基材外周面53に成膜することで、硬質被膜22の基材外周面53に対する密着性を更に高めることができる。その結果、硬質被膜22の浮きや剥離をより好適に抑制することができる。なお、下地被膜21の膜厚は特に限定されないが、硬質被膜22と下地被膜21とを含めた蒸着膜2全体の膜厚の50%以下とすることが、密着性向上の観点から、より好ましい。
また、実施形態3においても、各傾斜面の傾斜角度φ1〜φ4を5°以上とすることで、第1傾斜面S21及び第2傾斜面S3に対するPVD被膜2の密着性を更に向上させることができる。更に、各傾斜面の傾斜角度φ1〜φ4を、5°以上25°以下とすることが、オイル掻き性能の観点において好ましい。但し、本発明はこれらに限定されない。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、上述した種々の形態は、可能な限り組み合わせることができる。
1 :基材
11 :基材上面
12 :基材下面
13 :基材外周面
2 :PVD被膜(蒸着膜の一例)
21 :下地被膜
22 :硬質被膜
3 :酸化被膜
10 :セカンドリング(コンプレッションリングの一例)
20 :シリンダ
30 :内燃機関用ピストン
40 :リング溝
401 :上壁
402 :下壁
100 :内燃機関
S1 :外周端面
S2 :カット面
S21 :第1傾斜面(傾斜面の一例)
S22 :接続面
S3 :第2傾斜面(傾斜面の一例)

Claims (10)

  1. 内燃機関用ピストンのリング溝に装着されるコンプレッションリングの外周面に、蒸着膜を形成する表面処理方法であって、
    前記コンプレッションリングの基材であって、該コンプレッションリングが前記リング溝に装着された場合に前記リング溝の上壁に対向する基材上面と、該コンプレッションリングが前記リング溝に装着された場合に前記リング溝の下壁に対向する基材下面と、前記基材上面の外周縁と前記基材下面の外周縁とを接続する基材外周面と、を有する基材を用意する基材準備工程と、
    ターゲットを用いた蒸着法により、前記ターゲットから出射された粒子を前記基材に付着させることで、前記基材外周面に前記蒸着膜を形成する蒸着工程と、を含み、
    前記基材外周面は、前記基材において最大径となる頂部を含み、前記基材下面側の縁が前記基材下面の外周縁よりも径方向外側に形成された外周端面と、前記外周端面における前記基材下面側の縁と前記基材下面の外周縁とを接続するカット面と、を有し、
    前記カット面は、前記外周端面における前記基材下面側の縁に接続されると共に前記基材下面側に向かうに従って縮径するように傾斜した傾斜面を含み、且つ、該カット面の全領域に亘って径方向の外側に面しており、
    前記蒸着工程は、前記ターゲットと前記外周端面とを対向させた状態で行われる、
    表面処理方法。
  2. 軸方向両側に設けられた一対のセグメントと、前記一対のセグメントを径方向外側へ付勢するエキスパンダと、を有し、内燃機関用ピストンのリング溝に装着されるオイルリングにおける前記セグメントの外周面に、蒸着膜を形成する表面処理方法であって、
    前記セグメントの基材であって、該セグメントの軸方向両側の面のうち、該オイルリングが前記リング溝に装着された場合に前記リング溝の上壁側に位置する基材上面と、該オイルリングが前記リング溝に装着された場合に前記リング溝の下壁側に位置する基材下面と、前記基材上面の外周縁と前記基材下面の外周縁とを接続する基材外周面と、を有する基材を用意する基材準備工程と、
    ターゲットを用いた蒸着法により、前記ターゲットから出射された粒子を前記基材に付着させることで、前記基材外周面に前記蒸着膜を形成する蒸着工程と、を含み、
    前記基材外周面は、前記基材において最大径となる頂部を含み、前記基材下面側の縁が前記基材下面の外周縁よりも径方向外側に形成された外周端面と、前記外周端面における前記基材下面側の縁と前記基材下面の外周縁とを接続するカット面と、を有し、
    前記カット面は、前記外周端面における前記基材下面側の縁に接続されると共に前記基材下面側に向かうに従って縮径するように傾斜した傾斜面を含み、且つ、該カット面の全領域に亘って径方向の外側に面しており、
    前記蒸着工程は、前記ターゲットと前記外周端面とを対向させた状態で行われる、
    表面処理方法。
  3. 前記カット面は、前記基材下面の外周縁と前記傾斜面における前記基材下面側の縁とを接続する接続面を含む、
    請求項1又は2に記載の表面処理方法。
  4. 径方向外側に突出した一対のレールが軸方向両側に設けられたリング本体と、前記リング本体を径方向外側へ付勢するエキスパンダと、を有し、内燃機関用ピストンのリング溝に装着されるオイルリングにおける前記リング本体の外周面に、蒸着膜を形成する表面処理方法であって、
    前記リング本体の基材であって、該オイルリングが前記リング溝に装着された場合に前記リング溝の上壁に対向する基材上面と、該オイルリングが前記リング溝に装着された場合に前記リング溝の下壁に対向する基材下面と、前記基材上面の外周縁と前記基材下面の
    外周縁とを接続する基材外周面と、を有する基材を用意する基材準備工程と、
    ターゲットを用いた蒸着法により、前記ターゲットから出射された粒子を前記基材に付着させることで、前記基材外周面に前記蒸着膜を形成する蒸着工程と、を含み、
    前記基材外周面は、前記一対のレールのうち、前記リング溝の上壁側のレールに含まれる上側レール面と、前記リング溝の下壁側のレールに含まれる下側レール面と、前記上側レール面と前記下側レール面とを接続する上下レール接続面と、を有し、
    前記上側レール面は、
    前記上側レール面において最大径となる頂部を含み、前記基材上面側の縁が前記基材上面の外周縁よりも径方向外側に形成された上側の外周端面と、前記上側の外周端面における前記基材上面側の縁と前記基材上面の外周縁とを接続する上側のカット面であって、前記上側の外周端面における前記基材上面側の縁に接続されると共に前記基材上面側に向かうに従って縮径するように傾斜した上側の第1の傾斜面を含み、且つ、全領域に亘って径方向の外側に面した上側のカット面と、
    前記上側の外周端面における前記基材下面側の縁と前記上下レール接続面における前記基材上面側の縁とを接続すると共に前記基材下面側に向かうに従って縮径するように傾斜した上側の第2の傾斜面と、を有し、
    前記下側レール面は、
    前記下側レール面において最大径となる頂部を含み、前記基材下面側の縁が前記基材下面の外周縁よりも径方向外側に形成された下側の外周端面と、前記下側の外周端面における前記基材下面側の縁と前記基材下面の外周縁とを接続する下側のカット面であって、前記下側の外周端面における前記基材下面側の縁に接続されると共に前記基材下面側に向かうに従って縮径するように傾斜した下側の第1の傾斜面を含み、且つ、全領域に亘って径方向の外側に面した下側のカット面と、
    前記下側の外周端面における前記基材上面側の縁と前記上下レール接続面における前記基材下面側の縁とを接続すると共に前記基材上面側に向かうに従って縮径するように傾斜した下側の第2の傾斜面と、を有し、
    前記蒸着工程は、前記ターゲットと前記外周端面とを対向させた状態で行われる、
    表面処理方法。
  5. 前記上側のカット面は、前記基材上面の外周縁と前記上側の傾斜面における前記基材上面側の縁とを接続する上側の接続面を含み、
    前記下側のカット面は、前記基材下面の外周縁と前記下側の傾斜面における前記基材下面側の縁とを接続する下側の接続面を含む、
    請求項4に記載の表面処理方法。
  6. 前記蒸着工程は、複数の前記基材を、それぞれの中心軸が一致するように、軸方向に積み重ねた状態で行われ、
    前記基材は、径方向における前記中心軸から前記基材上面の外周縁までの距離と前記中心軸から前記基材下面の外周縁までの距離とが、互いに等しくなるように形成されている、
    請求項1から5の何れか一項に記載の表面処理方法。
  7. 前記基材の周長方向に直交する断面において、前記基材の径方向に対する前記傾斜面の傾斜角度は、5°以上である、
    請求項1から6の何れか一項に記載の表面処理方法。
  8. 前記基材の周長方向に直交する断面において、前記基材の径方向に対する前記傾斜面の傾斜角度は、5°以上25°以下である、
    請求項1から7の何れか一項に記載の表面処理方法。
  9. 前記蒸着工程は、前記基材外周面にCr又はTiからなる下地被膜を形成する下地被膜形成工程と、前記下地被膜の上に硬質被膜を形成する硬質被膜形成工程と、を含む、
    請求項1から8の何れか1項に記載の表面処理方法。
  10. 前記下地被膜の膜厚は、前記硬質被膜と前記下地被膜とを含めた前記蒸着膜全体の膜厚の50%以下である、
    請求項9に記載の表面処理方法。
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