<概要>
本開示で例示する自覚式検眼装置は、ライトフィールドディスプレイ(以下、「LFD」という場合もある)、および制御部を備える。LFDは、各々の画素集合単位から、方向毎に異なる光を出射することで、物体が放つ光線(例えば、物体によって反射される光線等)を再現することができる。つまり、LFDは、見る位置に応じた物体からの反射光または光源を再現することができる。また、LFDは、被検眼の光学特性(例えば、球面度数、乱視度数、および乱視軸の方向等の少なくともいずれか)に応じて、出力する画像の特徴値(例えば、呈示距離、円柱度数の矯正量、および円柱軸の方向の少なくともいずれか)を適宜設定することも可能である。
制御部は、LFDに呈示させる視標画像の被検眼に対する呈示距離を連続的に変化させる。この場合、呈示距離が連続的に変化する視標画像を被検者が継続して視認し、視認した結果を応答することで、被検眼の自覚的検査が適切に実行される。つまり、繰り返し呈示される複数の視標画像の各々について視認結果を被検者に応答させる場合に比べて、円滑に自覚的検査が実行される。さらに、本開示における自覚式検眼装置では、呈示距離が連続的に変化する視標画像の視認結果を被検者に応答させることで、調節力の影響が除外された状態で被検眼の光学特性の検査が行われる。よって、被検眼の光学特性の自覚的検査が適切に実行される。
なお、「連続的」には、視標画像の呈示距離を、所定のピッチで断続的に変化させていく場合も含まれる。また、呈示距離を変化させる間、視標画像自体は同一の視標画像であってもよい。この場合、視標画像自体が呈示距離によって変化することは無いので、被検眼の光学特性がより適切に検査される。また、制御部は、ユーザ(例えば、被検者または検者等)から入力される指示に応じて、視標画像の呈示距離を変化させてもよい。この場合、ユーザの希望等に応じた適切な態様で視標画像の呈示距離が変化するので、より適切に検査が実行される。
制御部は、被検眼のディオプタの検査が実行される際に、被検眼の遠点よりも遠い呈示開始距離から、視標画像の呈示距離を変更してもよい。つまり、制御部は、遠点よりも遠い呈示距離から、視標画像の呈示距離を被検眼に少なくとも近づける処理を実行してもよい。遠点とは、被検眼の遠視の焦点距離である。つまり、被検眼から遠点までの距離は、被検眼が物体を明確に視認可能な最も遠い距離となる。被検眼のディオプタは、被検眼の調節力が働いていない状態(つまり、被検眼が最も遠い距離を視認する状態)で測定される必要がある。遠点よりも遠い呈示開始距離から、視標画像の呈示距離を変更して、視標画像を視認可能な最も遠い呈示距離を被検者に応答させることで、調節力の影響が排除された状態で、被検眼のディオプタが被検者の応答結果から適切に取得される。
制御部は、被検眼のディオプタの検査が実行される際に、被検眼の遠点よりも近い呈示開始距離から、視標画像の呈示距離を変更してもよい。つまり、制御部は、遠点よりも近い呈示開始距離から、視標画像の呈示距離を被検眼から少なくとも遠ざけてもよい。この間に、視標画像を視認可能な最も遠い呈示距離を被検者に応答させることで、調節力の影響が排除された状態で、被検眼のディオプタが被検者の応答結果から適切に取得される。
なお、呈示開始距離の設定方法は適宜選択できる。例えば、制御部は、被検眼のディオプタの予備検査結果を取得してもよい。予備検査結果とは、ディオプタの検査が実行されるよりも前に実行された被検眼のディオプタの検査結果である。例えば、制御部は、他覚式検眼装置(所謂「AR」)によって予め実行されたディオプタの予備検査結果を取得してもよい。また、制御部は、同一の被検眼に対して自覚式検眼装置によって過去に実行されたディオプタの検査結果を、予備検査結果として取得してもよい。この場合、以後の検査がより円滑に実行される。
制御部は、視認可能な最も遠い呈示距離で被検者が視標画像を視認した際の、被検者による応答結果を入力してもよい。制御部は、応答結果が入力された際の視標画像の呈示距離に基づいて、被検眼のディオプタを算出してもよい。制御部は、算出したディオプタに基づいて、検査結果を出力してもよい。この場合、ユーザ(例えば、検者および被検者の少なくとも一方)は、調節力の影響が排除された状態で適切に実行された自覚的検査の結果を、容易に把握することができる。
なお、制御部が被検者の応答結果を入力するための具体的な方法は、適宜選択できる。例えば、検者または被検者が、応答結果に応じて操作部(例えば、ボタン、ダイヤル、およびタッチパネル等の少なくともいずれか)を操作してもよい。制御部は、操作部から入力される信号に基づいて、応答結果を入力してもよい。また、検者または被検者が、応答結果に応じて音声を発声してもよい。制御部は、音声を検出するマイクからの信号に基づいて、応答結果を入力してもよい。
また、制御部が検査結果を出力する方法も適宜選択できる。例えば、制御部は、検査結果を表示部に表示させてもよいし、検査結果を示す音声をスピーカから発生させてもよい。また、制御部は、検査結果を印刷装置に印刷させてもよいし、検査結果を示すデータを外部機器(着脱可能な記憶装置も含む)に出力してもよい。
また、出力する検査結果の具体的内容も適宜選択できる。例えば、制御部は、算出したディオプタの値そのものを検査結果として出力してもよい。また、制御部は、算出したディオプタの値が許容範囲内に含まれるか否かに応じて検査結果を生成し、出力してもよい。例えば、制御部は、算出したディオプタの値が許容範囲内(例えば、−1D〜+1D)に含まれない場合に、その旨を出力してもよい。この場合、屈折矯正が必要か否か等の判断が、ユーザによって適切に行われる。なお、この場合、許容範囲は予め設定されていてもよいし、ユーザによって変更されてもよい。
制御部は、被検眼に対する視標画像の呈示距離を変化させることで、遠点呈示距離と近点呈示距離とを、被検者による応答結果に基づいて共に取得してもよい。遠点呈示距離は、視認可能な最も遠い呈示距離で被検者が視標画像を視認した際の呈示距離である。近点呈示距離は、視認可能な最も近い呈示距離で被検者が視標画像を視認した際の呈示距離である。近点とは、被検眼が物体を明確に視認可能な最も近い距離である。制御部は、遠点呈示距離と近点呈示距離とに基づいて、被検者の明視域および調節力の少なくともいずれかを取得してもよい。この場合、被検者の明視域および調節力の少なくともいずれかが、簡易な検査で適切に取得される。
なお、自覚式検眼装置が近点呈示距離を取得するための具体的な方法は、適宜選択できる。例えば、自覚式検眼装置は、被検眼の近点よりも遠い呈示開始距離から、視標画像の呈示距離を被検眼に近づけて、近点で被検者が視標画像を視認した際の、被検者による応答結果を入力してもよい。詳細には、自覚式検眼装置は、視標画像の呈示距離を、被検眼の遠点から被検眼に近づけて、近点で視標画像を視認した際の被検者による応答結果を入力してもよい。また、自覚式検眼装置は、被検眼の近点よりもさらに被検眼に近い呈示開始距離から、視標画像の呈示距離を被検眼から遠ざけて、近点で視標画像を視認した際の被検者による応答結果を入力してもよい。
制御部は、被検者の左眼に呈示する左眼用視標画像と、被検者の右眼に呈示する右眼用視標画像とを、同時にライトフィールドディスプレイに呈示させてもよい。制御部は、左眼に対する左眼用視標画像の呈示方向と、右眼に対する右眼用視標画像の呈示方向とを変化させつつ、左眼に対する左眼用視標画像の呈示距離、および、右眼に対する右眼用視標画像の呈示距離を変化させてもよい。詳細には、制御部は、左眼用視標画像と右眼用視標画像の呈示距離を被検眼に近づける場合には、左眼用視標画像の呈示方向と、右眼用視標画像の呈示方向とが成す角度を大きくしてもよい。また、制御部は、左眼用視標画像と右眼用視標画像の呈示距離を被検眼から遠ざける場合には、左眼用視標画像の呈示方向と、右眼用視標画像の呈示方向とが成す角度を小さくしてもよい。この場合、自覚式検眼装置は、被検眼に対する視標画像の呈示距離に応じて、両眼視における左眼と右眼の各々の視角を適切に変化させることができる。よって、両眼視状態の自覚的検査が適切に実行される。
制御部は、画像が一次元の方向に延びると共に、画像が延びる方向が互いに異なる複数の視標画像の各々について、被検眼に対する呈示距離を変化させることで、被検眼の乱視の検査を実行してもよい。被検眼に乱視がある場合、画像が延びる一次元の方向と乱視軸の方向の関係に応じて、画像の見え方が異なる。従って、画像が延びる一次元の方向が互いに異なる複数の視標画像の各々を用いて自覚的検査が実行されることで、被検眼の乱視の検査が適切に実行される。
制御部は、自覚的検査の手順を示すガイド情報を、被検者に通知してもよい。この場合、被検者は、通知されるガイド情報に応じて適切に自覚的検査を実行することができる。検者が検査に立ち会わずに、被検者自身で自覚的検査を実行することも可能である。
なお、ガイド情報を被検者に通知する方法も、適宜選択できる。例えば、ガイド情報は、音声によって通知されてもよいし、表示部に表示されることで被検者に通知されてもよい。また、ガイド情報の具体的な内容も適宜選択できる。例えば、ガイド情報は、視標画像の応答結果を被検者に応答させるタイミングを示す情報(例えば、「最も遠くで視標が見えた際に応答して下さい」等)であってもよい。また、制御部は、呈示距離を被検眼に近づける際に、「視標を近づけます」等のガイド情報を通知してもよい。同様に、制御部は、呈示距離を被検眼から遠ざける際に、「視標を遠ざけます」等のガイド情報を通知してもよい。また、制御部は、呈示距離の変化をユーザ(例えば被検者)が自覚式検眼装置に指示するための方法(例えば、「視標を遠ざける場合には、レバーを奥に押し込んで下さい」と言う)を、ガイド情報によってユーザに通知してもよい。
<実施形態>
(概略構成)
以下、本開示における典型的な実施形態の1つについて、図面を参照して説明する。まず、図1を参照して、本実施形態の自覚式検眼装置1の概略構成について説明する。自覚式検眼装置1は、ライトフィールドディスプレイ(LFD)2、制御ユニット5、操作部6、マイク7、およびスピーカ8を備える。一例として、本実施形態の自覚式検眼装置1では、LFD2、制御ユニット5、および操作部6等の複数の構成が、1つの筐体内に設けられている。しかし、自覚式検眼装置では、LFD2および制御ユニット5等の複数の構成のうち、少なくとも2つ以上の構成が、別々の筐体(別々のデバイス)に設けられていてもよい。
LFD2について説明する。LFD2は、各々の画素集合単位(詳細は後述する)から、方向毎に異なる光を出射することで、物体が放つ光線(例えば、物体によって反射される光線等)を再現することができる。つまり、LFD2は、見る位置に応じた物体からの反射光または光源を再現することができる。また、LFD2は、被検眼の光学特性(例えば、球面度数、乱視度数、および乱視軸の方向等の少なくともいずれか)に応じて、出力する画像の特徴値(例えば、被検眼に対する視標画像の呈示距離等)を適宜変更することも可能である。
詳細は後述するが、LFD2は、被検眼に対する視標画像の呈示距離を変更することができる。この場合、被検者は、視標画像の呈示位置が、被検眼の遠点から近点までの間に存在する場合に、呈示された視標画像を明確に視認することができる。被検眼から遠点までの距離は、被検眼の遠視の焦点距離となる。つまり、被検眼から遠点までの距離は、被検眼からの距離のうち、被検眼が物体(例えば視標画像等)を明確に視認可能な最も遠い距離となる。また、被検眼から近点までの距離は、被検眼からの距離のうち、被検眼が物体を明確に視認可能な最も近い距離となる。
現在、光線を再現する方式が互いに異なる複数種類のLFDが提案されている。LFDの方式には、例えば、微小素子アレイ方式、複数ディスプレイ方式、およびバリア基盤方式等がある。
微小素子アレイ方式のLFDは、画像源(例えばディスプレイ等)の正面側(画像を視認するユーザ側)に微小素子アレイを備える。微小素子アレイとは、複数の画素集合単位の各々に対応して設けられる複数の微小素子が、二次元上に並べて(例えば格子状に)配置された光学部材である。微小素子アレイには、例えば、複数のマイクロレンズを備えるマイクロレンズアレイ、複数のマイクロホールを備えるマイクロホールアレイ、複数の回折素子を備える回折素子アレイ、複数の偏光素子を備える偏光素子アレイ、および、複数の屈折素子を備える屈折素子アレイ等の少なくともいずれかを採用できる。
また、複数ディスプレイ方式のLFDでは、複数のディスプレイがスタック状に組み合わされている。複数ディスプレイ方式のLFDには、例えばテンソルディスプレイ等がある。バリア基盤方式のLFDでは、細かいスリットが形成されたバリア基盤が、画像源(例えばディスプレイ等)の背面側(画像を視認するユーザ側の反対側)に設けられている。なお、LFDの構成は、画素からの光を被検眼に向けて出射する構成でもよいし、スクリーンに画素を投影する構成でもよい。また、LFDは、光を走査させることで画像を出力してもよい。
自覚式検眼装置1には、いずれの方式のLFDを採用することも可能である。本実施形態では、マイクロレンズアレイを備えた微小素子アレイ方式のLFD2を採用する場合を例示して説明を行う。図1に示すように、本実施形態のLFD2は、画像源10、バックライト20、および微小素子アレイ30を備える。なお、図1では、LFD2の構成の理解を容易にするために、画像源10、バックライト20、および微小素子アレイ30の各々が分解された状態が示されている。
画像源10は、画像を視認するユーザ(本実施形態では被検者)の視線方向に交差する二次元の方向(つまり、ディスプレイの表示面に平行な二次元方向)に並べられた複数の画素を有する。一例として、本実施形態の画像源10には、多数の画素を備えた(つまり、高解像度の)ディスプレイが使用されている。しかし、ディスプレイ以外の画像源が使用されてもよい。例えば、物体が放つ光線を再現するための所定の画像が印刷された印刷媒体(紙等)が、画像源10として使用されてもよい。この場合、印刷媒体が交換されることで、LFD2によって出力(呈示)される画像が変更されてもよい。
バックライト20は、画像源10の背面側に設けられており、画像源10を背面側から照明する。なお、画像源10自体が十分な強さで発光可能な場合等には、バックライト20を省略することも可能である。
微小素子アレイ(本実施形態ではマイクロレンズアレイ)30は、複数の微小素子31(本実施形態ではマイクロレンズ)を備える。複数の微小素子31は、二次元上に並べて(本実施形態では格子状に)配置されている。各々の微小素子31には、画像源10における複数の画素に対応する。詳細には、画像源10のうち、各々の微小素子31の領域を背面側に投影した領域内に配置された複数の画素が、1つの画素集合単位11となる。画素集合単位11内の画素から出射される光は、画素集合単位11に対応する微小素子31(つまり、画素集合単位11の正面側に配置された微小素子31)を通過して、正面側に出射される。
ここで、図2を参照して、被検眼に対する視標画像の呈示距離を変更する方法の一例について説明する。図2は、被検眼に対する視標画像の呈示距離(本実施形態では、LFD2から画像の呈示位置までの距離)をLFD2が変更した場合の一部の光線の状態を、模式的に示す図である。図2(A)は、視標画像の呈示位置(つまり、結像面の位置)を、図2(B)の呈示位置PP2比べて被検眼の位置EPに近い位置PP1とした場合の、光線の状態の一例である。
図2(A)、(B)に示すように、LFD2は、被検眼に対する視標画像の呈示位置を、前後方向(図2における左右方向)に変化させることができる。一例として、本実施形態のLFD2は、各々の画素集合単位11のうち、発光させる画素の集合の数を変化させることで、視標画像の呈示位置(つまり、視標画像の結像面の位置)を変化させることができる。また、LFD2は、各々の画素集合単位11のうち、発光させる画素の位置を変えることで、画角(つまり、被検眼に対する視標画像の呈示方向)を変更することも可能である。
なお、被検眼に対する視標画像の呈示距離を変更するための具体的な方法は、適宜選択されればよい。例えば、図2(A)、(B)に示す例では、変更される呈示距離に関わらず、各々の画素集合単位11(つまり、各々のマイクロレンズ31)から視標画像用の光線が出射される。従って、被検者によって観測される視標画像の解像度が低下し難い。しかし、LFD2は、各々の呈示距離毎に、光線を出射させる画素集合単位11を区別してもよい。また、LED2は、画像の表示面(本実施形態ではマイクロレンズアレイ30)とユーザの間に、各々の画素集合単位11から出射される複数の光線がいずれも通過する光学素子(例えばレンズ等)を備えていてもよい。
図1の説明に戻る。本実施形態のLFD2は、分解能調整部(図示せず)を備える。分解能調整部は、視標画像の呈示距離を変更する際の分解能を調整する。つまり、分解能とは、LFD2が変更することが可能な視標画像の呈示距離の最小ピッチである。LFD2は、分解能調整部によって分解能を高くすることで、細かいピッチで視標画像の呈示距離を変更することができる。また、LFD2は、分解能調整部によって分解能を低くすることで、変更可能な視標画像の呈示距離の最大幅(最大範囲)を大きくすることができる。
分解能調整部の具体的な構成は、適宜選択できる。一例として、本実施形態の分解能調整部は、微小素子アレイ(マイクロレンズアレイ)30が備える複数の微小素子(マイクロレンズ)31の焦点距離を変更することで、視標画像の呈示距離の分解能を調整することができる。詳細には、本実施形態では、焦点距離を変更することが可能な焦点距離可変レンズ(例えば液晶レンズ等)が、微小素子アレイ30のマイクロレンズとして使用されている。分解能調整部は、焦点距離可変レンズを駆動させることで、焦点距離を変更する。マイクロレンズの焦点距離を長くすると、呈示距離の分解能が高くなる。逆に、マイクロレンズの焦点距離を短くすると、変更可能な呈示距離の最大幅が大きくなる。
また、本実施形態の分解能調整部は、微小素子アレイ30と画像源10の間の距離を変更することで、視標画像の呈示距離の分解能を変更することができる。一例として、本実施形態の分解能調整部は、アクチュエータ(例えばモータ等)を駆動し、微小素子アレイ30と画像源10の少なくともいずれかを、表示面に垂直な方向に移動させる。その結果、微小素子アレイ30と画像源10の間の距離が変更されて、呈示距離の分解能が変更される。微小素子アレイ30と画像源10の間の距離を長くすると、呈示距離の分解能が高くなる。逆に、微小素子アレイ30と画像源10の間の距離を短くすると、変更可能な呈示距離の最大幅が大きくなる。
なお、微小素子アレイ30と画像源10の間の距離を長くした際に、光線を通過させる物質(例えば、ガラスおよび樹脂等の少なくともいずれか)が、微小素子アレイ30と画像源10の間に挿入されてもよい。この場合、微小素子アレイ30と画像源10の間の位置調整(所謂「アライメント」)等が容易になる。また、微小素子アレイ30と画像源10の間の距離を変更して呈示距離の分解能を調整する場合、マイクロレンズアレイ以外の微小素子アレイ30(例えば、マイクロホールアレイ、回折素子アレイ、偏光素子アレイ、または、屈折素子アレイ等)が使用されていてもよい。
制御ユニット5は、CPU51、不揮発性メモリ(Non−volatile memory:NVM)52等を備える。CPU51は、自覚式検眼装置1の制御(例えば、LFD2による視標画像の出力制御等)を司る。NVM52は、電源の供給が遮断されても記憶内容を保持できる非一過性の記憶媒体である。例えば、ハードディスクドライブ、フラッシュROM、および着脱可能なUSBメモリ等を不揮発性メモリ34として使用してもよい。本実施形態では、後述する視力検査処理(図3〜図5参照)を実行するための視力検査処理プログラム等が、NVM52に記憶される。
制御ユニット5は、LFD2、操作部6、マイク7、およびスピーカ8に接続されている。操作部6は、ユーザ(例えば、検者および被検者等の少なくともいずれか)が各種指示および応答を自覚式検眼装置1に入力するために、ユーザによって操作される。操作部6には、例えば、ボタン、回転可能なダイヤル、キーボード、マウス、タッチパネル等の少なくともいずれかを使用できる。マイク7は、各種指示および応答を入力するために、各種音声を入力する。例えば、被検者は、視標画像を視認し、応答結果を示す音声を発声させてもよい。CPU51は、マイク7から入力した音声に対して音声認識処理を実行することで、被検者による応答結果を取得してもよい。この場合、被検者が操作部6を操作しなくても、自覚的検査が適切に実行される。スピーカ8は、各種音声を出力する。
なお、前述したように、制御ユニット5および操作部6等は、自覚式検眼装置1の筐体とは別の筐体に設けられていてもよい。例えば、自覚式検眼装置1に接続されたパーソナルコンピュータの制御ユニットが、自覚式検眼装置1の制御ユニット5として機能してもよい。
<ディオプタ検査処理>
図3を参照して、本実施形態における視力検査処理の1つであるディオプタ検査処理について説明する。ディオプタ検査処理では、被検眼のディオプタ(球面度数)の検査が、被検者の左眼および右眼の少なくとも一方に対して実行される。制御ユニット5のCPU51は、ディオプタの自覚的検査の開始指示を入力すると、NVM52に記憶された視力検査処理プログラムに従って、図3に例示するディオプタ検査処理を実行する。
まず、CPU51は、被検眼のディオプタの予備検査値を取得しているか否かを判断する(S1)。予備検査値とは、ディオプタ検査処理よりも前に実行された被検眼のディオプタの検査結果の値である。例えば、自覚式検眼装置1は、他覚式検眼装置によって実行された被検眼のディオプタの検査結果の値を、予備検査値として取得してもよい。また、同一の被検眼に対して自覚式検眼装置1によって過去に実行された被検眼のディオプタの検査結果の値を、予備検査値として取得してもよい。以後の検査が予備検査値に基づいて実行されることで、より円滑に検査が実行される。
被検眼のディオプタの予備検査値が取得されていない場合(S1:NO)、CPU51は、視標画像の呈示開始距離を大きい値に設定する(S2)。呈示開始距離とは、視標画像の呈示を開始する際の呈示距離である。本実施形態のS2では、被検眼が強度の遠視である場合でも、呈示開始距離が被検眼の遠点よりも遠い呈示距離となるように、呈示開始距離が十分に大きい値(例えば、無限遠、または、光学的に無限遠よりもさらに遠方の距離(プラスディオプタに相当))に設定される。なお、被検眼とLFD2の間の距離が予め判明していてもよい。この場合、検査精度はさらに向上する。例えば、LFD2から所定の距離に被検者が配置されてもよい。また、LFD2と被検眼の間の距離が、各種方法(例えば、距離センサによる検出結果を採用する方法、または、被検眼から反射された輝点に基づいて距離を算出する方法等)によって検出されてもよい。
次いで、CPU51は、前述した分解能調整部の駆動を制御することで、以後の処理で変更される視標画像の呈示距離の分解能を低い値に調整する(S3)。その結果、変更可能な視標画像の呈示距離の最大幅が大きくなる。よって、呈示開始距離を十分に大きい値に設定した場合でも、広い範囲で視標画像の呈示距離を変更することが可能となる。処理はS10へ移行する。
被検眼のディオプタの予備検査値が取得されている場合(S1:YES)、CPU51は、分解能調整部の駆動を制御することで、視標画像の呈示距離の分解能を高い値に調整する(S5)。その結果、視標画像の呈示距離を細かいピッチで変更することが可能となる。
次いで、CPU51は、被検眼の遠点よりも遠い位置から視標画像の呈示を開始させるか否かを判断する(S6)。本実施形態では、ユーザ(例えば、被検者および検者の少なくとも一方)は、被検眼の遠点よりも遠い位置、および遠点よりも近い位置のいずれから視標画像の呈示を開始させるかを、自覚式検眼装置1へ指示(例えば、操作部6の操作指示)を入力することで選択することができる。
遠点よりも遠い位置から呈示を開始させる場合(S6:YES)、CPU51は、視標画像の呈示開始距離を、予備検査値に対応する遠点(つまり、予備検査値が示すディオプタの値に対応する焦点距離)よりも遠い距離に設定する(S7)。その結果、以後の処理では、視標画像は遠点よりも遠い呈示開始位置から被検眼に向けて近づけられる。また、遠点よりも近い位置から呈示を開始させる場合(S6:NO)、CPU51は、視標画像の呈示開始距離を、予備検査値に対応する遠点よりも近い距離に設定する(S8)。その結果、以後の処理では、視標画像は遠点よりも近い呈示開始位置から遠ざけられる。なお、S7およびS8において設定される呈示開始距離と、予備検査値に対応する遠点との差は、以後に実行される自覚的検査(S13〜S17)が円滑に実行される値に設定されることが望ましい。呈示開始距離と遠点の差は、予め定められていてもよいし、ユーザによって適宜設定されてもよい。
次いで、CPU51は、S2、S7、またはS8で設定された呈示開始位置に視標画像を呈示する(S10)。CPU51は、自覚的検査の手順を示すガイド情報の、被検者への通知を開始する(S11)。一例として、本実施形態のS11では、「視標画像の距離を変更させて、最も遠くで視標が見えた際に応答して下さい」とのガイド情報が、被検者に通知される。また、本実施形態では、呈示距離を変化させる指示を被検者が自覚式検眼装置1に入力するための方法を示すガイド情報(例えば、「視標を遠ざける場合には、レバーを奥に押し込んで下さい」等)が、被検者に通知される。ガイド情報は、スピーカ8によって音声で被検者に通知されてもよいし、表示部に表示されることで通知されてもよい。表示部が用いられる場合、LFD2が表示部として用いられてもよいし、LFD2以外の表示部(例えば、モニタまたはプロジェクタ等)が用いられてもよい。
被検者は、視標画像の呈示距離を被検眼に近づける指示、および遠ざける指示を、自覚式検眼装置1に入力することができる。視標画像の呈示距離を変更する指示は、例えば、操作部6が操作されることで入力されてもよいし、マイク7を介して音声によって入力されてもよい。呈示距離を近づける指示が入力されると(S13:YES)、CPU51は、視標画像の呈示距離を被検眼に近づける(S14)。この場合、ディオプタがマイナス寄りに変化する。また、呈示距離を遠ざける指示が入力されると(S15:YES)、CPU51は、視標画像の呈示距離を被検眼から遠ざける(S16)。この場合、ディオプタがプラス寄りに変化する。例えば、S2またはS7で、呈示開始距離が遠点よりも遠い距離に設定されている場合には、まず、視標画像の呈示距離が被検眼に近づけられる。一方で、S8で、呈示距離が遠点よりも近い距離に設定されている場合には、まず、視標画像の呈示距離が被検眼から遠ざけられる。呈示距離が、遠点の近傍で近づけられたり遠ざけられたりすることで、最も遠くで視標画像が見えるタイミングがより正確に検出される。
なお、本実施形態では、CPU51は、視標画像の呈示距離を被検眼に近づける際に、その旨を示すガイド情報(例えば、「視標を近づけます」等)を被検者に通知する。また、CPU51は、視標画像の呈示距離を被検眼から遠ざける際に、その旨を示すガイド情報(例えば、「視標を遠ざけます」等)を被検者に通知する。従って、被検者は、視標が近付いているか否かを容易に把握することができる。
CPU51は、被検者による応答結果が入力されたか否かを判断する(S17)。本実施形態では、被検者は、最も遠くで視標画像が見えた際に、応答結果を自覚式検眼装置1に入力する。その結果、被検眼の調節力の影響が排除された状態で、適切なディオプタの値が算出される。また、本実施形態によると、視標画像の呈示、および、被検者による応答の一連のサイクルの頻度が増加し難い。応答結果は、例えば、操作部8が操作されることで入力されてもよいし、マイク7を介して音声によって入力されてもよい。応答結果が入力されていなければ(S17:NO)、処理はS13へ戻り、S13〜S17の処理が繰り返される。
応答結果が入力されると(S17:YES)、CPU51は、応答結果が入力された際の視標画像の呈示距離を、遠点呈示距離として取得する(S18)。遠点呈示距離とは、視認可能な最も遠い呈示距離で被検者が視標画像を視認した際の、視標画像の呈示距離である。CPU51は、取得した遠点呈示距離に基づいて、被検者のディオプタを算出する。CPU51は、算出したディオプタに基づいて、検査結果を出力する(S19)。
一例として、本実施形態では、CPU51は、算出したディオプタの値が許容範囲内(例えば、−1D〜+1D)に含まれない場合に、その旨を出力する。その結果、屈折矯正が必要か否かの判断が適切に行われる。許容範囲は、予め設定されていてもよいし、ユーザによって変更されてもよい。ただし、検査結果の出力方法を変更することも可能である。例えば、CPU51は、算出したディオプタの値そのものを検査結果として出力してもよい。また、検査結果は、例えば、スピーカ8によって音声で出力されてもよいし、表示部に表示されることで出力されてもよい。表示部が用いられる場合、使用される表示部はLFD2でもよいし、LFD2とは異なる表示部でもよい。また、検査結果は、印刷装置によって印刷されることで出力されてもよい。検査結果を示すデータが、外部機器または記憶装置等に出力されてもよい。
図3に例示したディオプタ検査処理の内容を変更することも可能である。例えば、予備検査値を取得する処理(S1)を省略し、呈示開始距離を常に定められた値(例えば無限遠等)に設定してもよい。また、図3に例示したディオプタ検査処理では、視標画像の呈示距離の変更指示(S13,S15)、および応答結果(S17)は、被検者によって入力される。しかし、呈示距離の変更指示および応答結果の少なくとも一方が、被検者以外のユーザ(例えば検者等)によって入力されてもよい。
<明視域・調節力検査処理>
図4を参照して、視力検査処理の1つである明視域・調節力検査処理について説明する。明視域・調節力検査処理では、被検者の左眼および右眼の両方に同時に視標画像が呈示されることで、被検者の両眼視状態における明視域および調節力の検査が実行される。明視域とは、奥行き方向において被検者が視認できる範囲(つまり、遠点と近点の間の範囲)を言う。制御ユニット5のCPU51は、両眼視状態における明視域・調節力の自覚的検査の開始指示を入力すると、NVM52に記憶された視力検査処理プログラムに従って、図4に例示する明視域・調節力検査処理を実行する。
まず、CPU51は、被検者の左眼に呈示する左眼用視標画像と、被検者の右眼に呈示する右眼用視標画像の、各々の呈示開始距離を設定する(S21)。一例として、本実施形態のS21では、左眼用視標画像と右眼用視標画像の各々の呈示開始距離は、十分に大きい値(例えば無限遠等)に設定される。しかし、S21で設定される呈示開始距離を変更することも可能である。例えば、図3のS1〜S8で例示したように、予備検査値に基づいて呈示開始距離が設定されてもよい。また、予備検査値に基づいて呈示開始距離が設定される場合、予備検査値に対応する遠点よりも遠く、または近くに呈示開始距離が設定されてもよい。
CPU51は、左眼用視標画像および右眼用視標画像の各々を、呈示開始位置(つまり、S21で設定された呈示開始距離となる位置)に呈示する(S22)。CPU51は、自覚的検査の手順を示すガイド情報の、被検者への通知を開始する(S23)。一例として、本実施形態のS23では、前述したS11の処理と同様に、「視標画像の距離を変更させて、最も遠くで視標が見えた際に応答して下さい」等のガイド情報が、被検者に通知される。
CPU51は、左眼用視標画像および右眼用視標画像の呈示距離の変更指示が入力されたか否かを判断する(S25)。呈示距離の変更指示は、検者によって入力されてもよいし、被検者によって入力されてもよい。呈示距離の変更指示が入力されると(S25:YES)、CPU51は、入力された指示(つまり、呈示距離を近づける指示、または遠ざける指示)に応じて、左眼用視標画像および右眼用視標画像の呈示距離を変化させつつ、左眼用視標画像および右眼用視標画像の呈示方向を変化させる(S26)。つまり、CPU51は、左眼用視標画像および右眼用視標画像の呈示距離の変化に対して、左眼と右眼の各々の視角が適切に対応するように、左眼用視標画像および右眼用視標画像の呈示方向を変化させる。詳細には、CPU51は、左眼用視標画像および右眼用視標画像の呈示距離を被検眼に近づける場合には、左眼用視標画像の呈示方向と右眼用視標画像の呈示方向とが成す角度を大きくする。逆に、左眼用視標画像および右眼用視標画像の呈示距離を被検眼から遠ざける場合には、CPU51は、左眼用視標画像の呈示方向と右眼用視標画像の呈示方向とが成す角度を小さくする。その結果、左眼および右眼の視角が、視標画像の呈示距離に応じて適切に変化する。よって、両眼視状態の自覚的検査が適切に実行される。なお、S26では、前述したディオプタ検査処理と同様に、「視標を近づけます/遠ざけます」のガイド情報が、被検者に通知される。
次いで、CPU51は、最も遠くで視標画像が見えた際の被検者の応答結果(つまり、遠点で視標画像が見えたことを示す応答結果)が入力されたか否かを判断する(S27)。入力されていなければ(S27:NO)、S25〜S27の処理が繰り返される。遠点の応答結果が入力されると(S27:YES)、CPU51は、応答結果が入力された際の視標画像の呈示距離を、遠点呈示距離として取得する(S28)。前述したように、遠点呈示距離とは、視認可能な最も遠い呈示距離で被検者が視標画像を視認した際の、視標画像の呈示距離である。
次いで、CPU51は、被検者に通知するガイド情報を変更する(S29)。一例として、本実施形態のS29では、「視標画像の距離を変更させて、最も近くで視標が見えた際に応答して下さい」とのガイド情報が、被検者に通知される。CPU51は、前述したS25およびS26の処理と同様に、入力された呈示距離の変更指示に応じて、左眼用視標画像および右眼用視標画像の呈示距離を変化させつつ、左眼用視標画像および右眼用視標画像の呈示方向を変化させる(S31,S32)。
次いで、CPU51は、最も近くで視標画像が見えた際の被検者の応答結果(つまり、近点で視標画像が見えたことを示す応答結果)が入力されたか否かを判断する(S33)。入力されていなければ(S33:NO)、S31〜S33の処理が繰り返される。近点の応答結果が入力されると(S33:YES)、CPU51は、応答結果が入力された際の視標画像の呈示距離を、近点呈示距離として取得する(S34)。近点呈示距離とは、視認可能な最も近い呈示距離で被検者が視標画像を視認した際の、視標画像の呈示距離である。
次いで、CPU51は、取得した遠点呈示距離と近点呈示距離に基づいて、被検者の両眼視状態における明視域および調節力の少なくとも一方を取得し、出力する(S35)。その結果、被検者の明視域および調節力の少なくともいずれかが、簡易な検査で適切にユーザによって把握される。
図4に例示した明視域・調節力検査処理の内容を変更することも可能である。例えば、図4に例示した明視域・調節力検査処理では、両眼視状態における明視域・調節力の自覚的検査が実行される。しかし、片眼の明視域・調節力の自覚的検査を実行することも可能である。この場合、S26およびS32では、視標画像の呈示距離の変更に応じて呈示方向を変更する処理は、省略することも可能である。また、図4に例示した処理では、遠点呈示距離が取得された後に、近点呈示距離が取得される。しかし、近点呈示距離が遠点呈示距離よりも先に取得されてもよい。また、遠点呈示距離は、前述したディオプタ検査処理によって取得されてもよい。
<乱視検査処理>
図5を参照して、視力検査処理の1つである乱視検査処理について説明する。乱視検査処理では、被検眼の乱視の自覚的検査が実行される。CPU51は、乱視の自覚的検査の開始指示を入力すると、NVM52に記憶された視力検査処理プログラムに従って、図5に例示する乱視検査処理を実行する。
まず、CPU51は、一次元方向に延びる視標画像(以下、「一次元視標画像」という)の、画像が延びる方向を設定する(S41)。一次元視標画像は、例えば、直線状の画像であってもよいし、複数の画像が直線状に並べられた画像であってもよい。
CPU51は、一次元視標画像の呈示開始距離を設定する(S42)。一例として、本実施形態のS42では、一次元視標画像の呈示開始距離は、十分に大きい値(例えば無限遠等)に設定される。しかし、S42で設定される呈示開始距離を変更することも可能である。例えば、図3のS1〜S8で例示したように、予備検査値に基づいて呈示開始距離が設定されてもよい。また、予備検査値に基づいて呈示開始距離が設定される場合、予備検査値に対応する遠点よりも遠く、または近くに呈示開始距離が設定されてもよい。
CPU51は、一次元視標画像を、呈示開始位置(つまり、S42で設定された呈示開始距離となる位置)に呈示する(S43)。CPU51は、自覚的検査の手順を示すガイド情報の、被検者への通知を開始する(S44)。一例として、本実施形態のS44では、前述したS11およびS23の処理と同様に、「視標画像の距離を変更させて、最も遠くで視標が見えた際に応答して下さい」等のガイド情報が、被検者に通知される。
CPU51は、一次元視標画像の呈示距離の変更指示が入力されたか否かを判断する(S46)。呈示距離の変更指示は、検者によって入力されてもよいし、被検者によって入力されてもよい。呈示距離の変更指示が入力されると(S46:YES)、CPU51は、入力された指示(つまり、呈示距離を近づける指示、または遠ざける指示)に応じて、一次元視標画像の呈示距離を変化させる(S47)。また、CPU51は、「視標を近づけます/遠ざけます」のガイド情報を、被検者に通知する。
次いで、CPU51は、最も遠くで視標画像が明確に視認された際の被検者の応答結果が入力されたか否かを判断する(S48)。入力されていなければ(S48:NO)、S46〜S48の処理が繰り返される。応答結果が入力されると(S48:YES)、CPU51は、応答結果が入力された際の一次元視標画像の呈示距離を取得する(S49)。
次いで、CPU51は、一次元視標画像による複数回の自覚的検査が完了したか否かを判断する(S51)。本実施形態の乱視検査処理では、画像が延びる方向が互いに異なる複数の一次元視標画像によって、自覚的検査が複数回実行される。被検眼に乱視がある場合には、一次元画像が延びる方向と乱視軸の方向の関係に応じて、一次元画像の見え方(すなわち呈示距離)が変化する。従って、方向が異なる複数の一次元視標画像によって自覚的検査が行われることで、乱視の自覚的検査が適切に実行される。複数回の検査が完了していなければ(S51:NO)、一次元視標画像の方向が変更されて(S52)、処理はS42へ戻る。複数回の検査が完了すると(S52:YES)、取得された複数の応答結果に基づいて、乱視の検査結果が取得され、出力される(S53)。
上記実施形態の開示された技術は一例に過ぎない。従って、上記実施形態で例示された技術を変更することも可能である。例えば、上記実施形態では、ユーザ(例えば、被検者または検者)から入力される指示に応じて、視標画像の呈示距離が、被検眼に近づくように、または被検眼から遠ざかるように変更される。しかし、CPU51は、視標画像の呈示距離を自動的に変更してもよい。例えば、CPU51は、被検眼の遠点よりも遠い呈示開始位置から、視標画像の呈示距離を自動的に被検眼に近づけていき、被検眼のピントが初めて合ったタイミングを被検者に応答させることで、被検眼の光学特性の自覚的検査を実行してもよい。つまり、本開示において、「ユーザから入力される指示に応じて視標画像の呈示距離を変化させる」とは、呈示距離の変化量および変化方向を指示に応じて制御する場合だけでなく、呈示距離の開始指示の入力に応じて呈示距離の自動的な変更処理を開始させる場合も含む。また、CPU51は、ユーザから入力される指示に基づかず、自動的に視標画像の呈示距離を変化させてもよい。
また、上記実施形態では、被検眼の眼前が開放された状態(つまり、被検眼とLFD2の間に接眼レンズ等が配置されていない状態)で検査が行われる。従って、被検者は、自然な状態で自覚的検査に対応することができる。しかし、被検眼とLFD2の間に接眼レンズ等が配置されている場合でも、上記実施形態で例示された技術によると、被検眼の自覚的検査は適切に実行される。
また、上記実施形態の明視域・調節力検査処理(図4参照)では、遠点呈示距離も取得されるので、明視域および調節力と共に、被検眼のディオプタの値を取得することも可能である。しかし、CPU51は、遠点呈示距離および近点呈示距離の各々を厳密に取得せずに、遠点呈示距離と近点呈示距離の差のみを取得することで、明視域および調節力の検査を実行してもよい。