JP2019219094A - 炉内状況判定方法及び燃焼制御方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】火炎燃焼開始位置及びその移動方向を的確に検出しつつ、乾燥部の廃棄物の形状及びその動きを把握できる方法を提供する。【解決手段】炉内状況判定方法は、映像取得工程と、3次元映像作成工程と、算出工程と、を含む処理を行う。映像取得工程では、乾燥部11の炉幅方向の端部に形成されている側壁に設けられた窓部から、視点が異なる複数の撮像装置95を用いて、少なくとも乾燥部11に堆積した廃棄物及び火炎の外観を含むとともに視点が異なる複数の映像を連続して取得する。3次元映像作成工程では、映像取得工程で取得された異なる視点からの複数の映像に画像合成処理を行うことで、3次元映像を連続して作成する。算出工程では、3次元映像作成工程で作成された3次元映像に含まれている火炎に基づいて火炎燃焼開始位置を特定し、火炎燃焼開始位置が搬送方向上流側に移動しているか搬送方向下流側に移動しているかを算出する。【選択図】図1
Description
本発明は、主として、火格子により廃棄物を搬送しながら焼却する火格子式の廃棄物焼却炉において、安定な燃焼を適切に維持するための方法に関する。
従来から、廃棄物焼却炉には、多種多様な廃棄物が投入されるため、投入された廃棄物の性状が変化した場合であっても、安定な燃焼を適切に維持できることが重要となる。また、火格子式の廃棄物焼却炉では、廃棄物を乾燥させる乾燥部と、廃棄物を火炎燃焼させる燃焼部と、廃棄物を後燃焼(オキ燃焼)させる後燃焼部と、に区分されている。安定な燃焼を適切に維持する燃焼制御を行うためには、このような火炎燃焼の終了位置である燃え切り点の位置を適切な範囲に収めることが重要となる。
なお、(1)燃え切り点の位置が適切な範囲から外れる主たる原因が、廃棄物の性状の違いに起因して、想定乾燥時間と実乾燥時間とに差異が生じることにあること、(2)そのため想定乾燥時間と実乾燥時間との差異が発生してからかなりの時間遅れの後に状態変化が発現する燃焼位置や燃え切り点の変化情報に基づいて燃え切り点の位置の制御を行うことは、現実的には困難であること、(3)火炎燃焼開始位置の移動方向は、想定乾燥時間と実乾燥時間との差異の傾向(即ち、廃棄物の乾燥及び燃焼の進行状況の適正性)に相当するため、燃え切り点を適切な範囲に収めるために必要な情報として扱うことができること、等を踏まえれば、乾燥部の火格子に堆積されている廃棄物における乾燥の進行状況の各種の情報は、燃え切り点の位置を適切な範囲に収めるための情報として扱うことができる。
特許文献1には、後燃焼部よりも更に搬送方向下流側に1つの赤外線カメラを配置し、炉内の熱画像情報を取得する焼却炉が開示されている。この焼却炉では、赤外線カメラが取得した熱画像情報(火格子上の廃棄物のサーモグラフィ情報)について、廃棄物層から放射される赤外線の波長と火炎から放射される赤外線の波長が異なることに基づいて解析することで、火炎の上流側にある乾燥部の廃棄物の熱画像を取得する。
特許文献2には、乾燥部の天井部に赤外線カメラを配置し、乾燥部の廃棄物の熱画像を取得する焼却炉が開示されている。この赤外線カメラは、透過波長が約3.9μmのフィルタが取り付けられているため、火炎が放射する赤外線を除く熱画像が作成される。なお、特許文献2には、このフィルタを装着した赤外線カメラと、このフィルタを装着しない赤外線カメラと、を用いてそれぞれ熱画像を取得する構成が開示されている。
しかし、特許文献1では、後燃焼部よりも更に搬送方向下流側に赤外線カメラが配置されているため、赤外線カメラと火炎燃焼開始位置との間には、高温の燃焼部にある廃棄物、この廃棄物の飛散物、燃焼部を保護することで高温となった耐火材等からの輻射光(赤外線を含む)及びその散乱光が存在する。従って、波長の違いに基づいて火炎から放射される赤外線を除いた場合であっても、この画像に基づいて、火炎の上流側にある乾燥部の廃棄物の形状及びその動きを十分に特定できない。
また、特許文献2では、炉内の天井部に赤外線カメラが配置されているが、炉内では廃棄物の熱分解によって発生した熱分解ガス及び燃焼により発生した燃焼ガスが大量に存在し、上方に吹き上げられている。そのため、天井部に配置された赤外線カメラはこの影響を受け易い。また、特許文献2では、上記のフィルタを装着した赤外線カメラと装着していない赤外線カメラの合計2つの赤外線カメラで熱画像を取得することが記載されている。しかし、フィルタを装着した赤外線カメラでは火炎以外(即ち、廃棄物)に関する情報が主として含まれる一方で、フィルタを装着していない赤外線カメラでは火炎に関する情報が主として含まれる。従って、これらの2つの赤外線カメラで取得した画像を比較しても、火炎の形状や廃棄物の形状及びその動きを十分に特定できない。
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、火炎燃焼開始位置及びその移動方向を的確に検出しつつ、乾燥部の廃棄物の形状及びその動きを把握できる方法を提供することにある。
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
本発明の観点によれば、以下の炉内状況判定方法が提供される。即ち、この炉内状況判定方法は、乾燥部と燃焼部と後燃焼部とに区分された火格子から構成されており、廃棄物が堆積した状態で間欠的に動作することで当該廃棄物を搬送するとともに当該火格子を介して一次燃焼用気体を供給する搬送部を備えた廃棄物焼却炉に対して行われる。この炉内状況判定方法は、映像取得工程と、3次元映像作成工程と、算出工程と、を含む処理を行う。前記映像取得工程では、前記乾燥部の炉幅方向の端部に形成されている側壁に設けられた窓部から、視点が異なる複数の撮像装置を用いて、少なくとも前記乾燥部に堆積した前記廃棄物及び火炎の外観を含むとともに視点が異なる複数の映像を連続して取得する。前記3次元映像作成工程では、前記映像取得工程で取得された異なる視点からの複数の映像に画像合成処理を行うことで、3次元映像を連続して作成する。前記算出工程では、前記3次元映像作成工程で作成された3次元映像に含まれている火炎に基づいて火炎燃焼開始位置を特定し、火炎燃焼開始位置が搬送方向上流側に移動しているか搬送方向下流側に移動しているかを算出する。
乾燥部の側壁に撮像装置を設けることで、燃焼部及び後燃焼部を介することなく直接的に火炎及び乾燥部の廃棄物の映像を取得できる。更に、乾燥部の側壁は、燃焼部の側壁と比較して温度が低く、また天井と比較して熱分解ガス及び燃焼ガスの影響を受けにくいため、撮像装置の適切な設置先である。また、3次元映像を用いることで燃焼開始位置の移動方向を的確に算出できるとともに、乾燥部の廃棄物の形状及びその動きを十分に検出できる。
本発明によれば、火炎燃焼開始位置及びその移動方向を的確に検出しつつ、乾燥部の廃棄物の形状及びその動きを把握できる。
<廃棄物焼却設備の全体構成>初めに、図1を参照して、本実施形態の焼却炉(廃棄物焼却炉)10を含む廃棄物焼却設備(廃棄物焼却施設)100について説明する。図1は、本発明の方法を行う対象の焼却炉10を含む廃棄物焼却設備100の概略構成図である。なお、以下の説明では、単に上流、下流と記載したときは、廃棄物、燃焼ガス、排ガス、一次空気、二次空気、循環排ガス等が流れる方向の上流及び下流を意味するものとする。
図1に示すように、廃棄物焼却設備100は、焼却炉10と、ボイラ30と、蒸気タービン発電設備35と、を備える。焼却炉10は、供給された廃棄物を焼却する。なお、焼却炉10の詳細な構成は後述する。
ボイラ30は、廃棄物の燃焼によって発生した熱を利用して蒸気を生成する。ボイラ30は、流路壁に設けられた多数の水管31及び過熱器管32で、炉内で発生した高温の燃焼ガスと水との熱交換を行うことにより蒸気(過熱蒸気)を生成する。水管31及び過熱器管32で生成された蒸気は、蒸気タービン発電設備35へ供給される。
蒸気タービン発電設備35は、図略のタービン及び発電装置を含んで構成されている。タービンは、水管31及び過熱器管32から供給された蒸気によって回転駆動される。発電装置は、タービンの回転駆動力を用いて発電を行う。
ここで、安定した発電を行うには、ボイラ30での蒸気(過熱蒸気)の生成量を安定化させることが必要である。ボイラ30での蒸気(過熱蒸気)の生成量を安定化させるためには、ボイラ30への入熱を安定させる必要がある。つまり、発電量を一定に保つには、焼却炉10からボイラ30へ供給される燃焼ガスの保有熱量を安定させて、ボイラ30への入熱を安定に保つ必要がある。
<焼却炉10の構成>焼却炉10は、廃棄物を炉内に供給するための給じん装置40を備える。給じん装置40は、廃棄物投入ホッパ41と、給じん装置本体42と、を備える。廃棄物投入ホッパ41は、炉外から廃棄物が投入される部分である。給じん装置本体42は、廃棄物投入ホッパ41の底部分に位置し、水平方向に移動可能に構成されている。給じん装置本体42は、廃棄物投入ホッパ41に投入された廃棄物を下流側に供給する。この給じん装置本体42の移動速度、単位時間あたりの移動回数、移動量(ストローク)、及びストローク端の位置(移動範囲)は、制御装置90によって制御されている。なお、給じん装置は水平方向に対し多少の角度をもって移動する型式でもよい。
給じん装置40によって炉内に供給された廃棄物は、搬送部20によって、乾燥部11、燃焼部12、及び後燃焼部13の順に供給されていく。搬送部20は、乾燥部11に設けられた乾燥火格子21と、燃焼部12に設けられた燃焼火格子22と、後燃焼部13に設けられた後燃焼火格子23と、で構成されている。従って、搬送部20は複数段の火格子から構成されている。それぞれの火格子は、各部の底面に設けられており、廃棄物が載置される。
火格子は、廃棄物搬送方向に並べて配置された可動火格子と固定火格子とから構成されており、可動火格子が前進、停止、後進、停止等の順で動作することで、廃棄物を下流側へ搬送するとともに、廃棄物を攪拌することができる。可動火格子の動作速度を増速(減速)させることで、廃棄物の搬送速度を増速(減速)させることができる。また、可動火格子の停止時間を短く(長く)することで、廃棄物の搬送速度を増速(減速)させることができる。また、火格子は、気体が通過可能な大きさの隙間を空けて並べて配置されている。
乾燥部11は、焼却炉10に供給された廃棄物を乾燥させる部分である。乾燥部11の廃棄物は、乾燥火格子21の下から供給される一次空気及び隣接する燃焼部12における燃焼の輻射熱によって乾燥する。その際、熱分解によって乾燥部11の廃棄物から熱分解ガスが発生する。また、乾燥部11の廃棄物は、乾燥火格子21によって燃焼部12に向かって搬送される。
燃焼部12は、乾燥部11で乾燥した廃棄物を主に燃焼させる部分である。燃焼部12では、廃棄物が主に火炎燃焼を起こし火炎が発生する。燃焼部12における廃棄物及び燃焼により発生した灰及び燃焼しきれなかった未燃物は、燃焼火格子22によって後燃焼部13に向かって搬送される。また、燃焼部12で発生した燃焼ガス及び火炎は、絞り部17を通過して後燃焼部13に向かって流れる。なお、燃焼火格子22は、乾燥火格子21と同じ高さに設けられているが、乾燥火格子21よりも低い位置に設けられていてもよい。
後燃焼部13は、燃焼部12で燃焼しきれなかった廃棄物(未燃物)を燃焼させる部分である。後燃焼部13では、燃焼ガスの輻射熱と一次空気によって、燃焼部12で燃焼しきれなかった未燃物の燃焼が促進される。その結果、未燃物の殆どが灰となって、未燃物は減少する。なお、後燃焼部13で発生した灰は、後燃焼部13の底面に設けられた後燃焼火格子23によってシュート24に向かって搬送される。シュート24に搬送された灰は、廃棄物焼却設備100の外部に排出される。なお、本実施形態の後燃焼火格子23は、燃焼火格子22よりも低い位置に設けられているが、燃焼火格子22と同じ高さに設けられていてもよい。
上述したように、乾燥部11、燃焼部12、及び後燃焼部13では、生じる反応が異なるため、それぞれの壁面等は、生じる反応に応じた構成となっている。例えば、燃焼部12では火炎燃焼が生じるため、乾燥部11よりも耐火レベルが高い構造が採用されている。
再燃焼部14は、燃焼ガスに含まれる未燃ガスを燃焼させる部分である。再燃焼部14は、乾燥部11、燃焼部12、及び後燃焼部13から上方に向かって延び、その途中に二次空気が供給される。これにより、燃焼ガスは二次空気と混合及び撹拌され、燃焼ガスに含まれる未燃ガスが再燃焼部14で燃焼される。なお、燃焼部12及び後燃焼部13で生じる燃焼を一次燃焼と称し、再燃焼部14で生じる燃焼(つまり、一次燃焼で残存した未燃ガスの燃焼)を二次燃焼と称する。
気体供給装置50は、炉内に気体を供給する装置である。本実施形態の気体供給装置50は、一次空気供給部51と、二次空気供給部52と、排ガス供給部53と、を有している。それぞれの供給部は、気体を誘引又は送出するための送風機によって構成されている。
本明細書では、一次燃焼のために供給する気体を一次燃焼用気体と称する。一次燃焼用気体としては、一次空気、循環排ガス、それらの混合ガスが含まれる。一次空気とは、外部から取り込んだ空気であって、燃焼等に用いられていない(即ち、循環排ガスを除く)気体である。従って、一次空気には、外部から取り込んだ空気を加熱等した気体も含まれる。同様に、本明細書では、二次燃焼のために供給する気体を二次燃焼用気体と称する。二次燃焼用気体としては、二次空気、循環排ガス、それらの混合ガスが含まれる。二次空気の定義は一次空気と同様である。
一次空気供給部51は、一次空気供給経路71を介して炉内に一次空気を供給する。一次空気供給経路71は、第1供給経路71aと、第2供給経路71bと、第3供給経路71cと、に分岐されている。なお、一次空気供給経路71にヒータを設け、各部に供給する一次空気の温度を調整できるようにしてもよい。
第1供給経路71aは、乾燥火格子21の下方に設けられた乾燥段風箱25に一次空気を供給するための経路である。第1供給経路71aには第1ダンパ81が設けられており、乾燥段風箱25に供給する一次空気の供給量を調整することができる。また、第1ダンパ81は制御装置90によって制御されている。
第2供給経路71bは、燃焼火格子22の下方に設けられた燃焼段風箱26に一次空気を供給するための経路である。第2供給経路71bには第2ダンパ82が設けられており、燃焼段風箱26に供給する一次空気の供給量を調整することができる。また、第2ダンパ82は制御装置90によって制御されている。
第3供給経路71cは、後燃焼火格子23の下方に設けられた後燃焼段風箱27に一次空気を供給するための経路である。第3供給経路71cには第3ダンパ83が設けられており、後燃焼段風箱27に供給する一次空気の供給量を調整することができる。また、第3ダンパ83は制御装置90によって制御されている。
二次空気供給部52は、二次空気供給経路72を介して、焼却炉10の空気ガス保有空間16にその上部(天井部)から二次空気を供給するとともに、絞り部17によって燃焼ガスが方向を転換する部分(絞り部17の近傍)に二次空気を供給する。また、二次空気供給経路72には、制御装置90によって制御される第4ダンパ84が設けられており、各部への二次空気の供給量を調整することができる。
排ガス供給部53は、循環排ガス供給経路73を介して、廃棄物焼却設備100から排出された排ガスを炉内に供給する(再循環させる)。廃棄物焼却設備100から排出された排ガスはろ過式の集じん器60で浄化され、その一部が排ガス供給部53によって燃焼部12の両側面(紙面手前側及び紙面奥側の面)から焼却炉10へ供給される。なお、排ガスが供給される位置は、特に限定されない。例えば、排ガスは焼却炉10の上方(天井部)から供給されてもよく、一方の側面のみから供給されていてもよい。排ガスを焼却炉10に供給することで、焼却炉10内の酸素濃度が低下し、燃焼温度の局所的な過上昇を抑えることができる。その結果、NOxの発生を抑えることができる。循環排ガス供給経路73には、制御装置90によって制御される第5ダンパ85が設けられており、循環排ガスの供給量を調整することができる。
焼却炉10には、図1及び図2に示すように、燃焼状態等を把握するための複数のセンサが設けられている。具体的には、焼却炉内ガス温度センサ91と、焼却炉出口ガス温度センサ92と、COガス濃度センサ93と、NOxガス濃度センサ94と、撮像装置95と、が設けられている。
焼却炉内ガス温度センサ91は、焼却炉10内(例えば空気ガス保有空間16よりも下流かつ後燃焼部13よりも上流)に配置されており、焼却炉内ガス温度を検出して制御装置90へ出力する。焼却炉出口ガス温度センサ92は、焼却炉10の出口近傍(例えば再燃焼部14よりも下流かつボイラ30よりも上流)に配置されており、焼却炉出口ガス温度を検出して制御装置90へ出力する。COガス濃度センサ93は、集じん器60の下流に配置されており、排ガスに含まれるCOガス濃度(焼却炉排出COガス濃度)を検出して制御装置90へ出力する。NOxガス濃度センサ94は、集じん器60の下流に配置されており、排ガスに含まれるNOxガス濃度(焼却炉排出NOxガス濃度)を検出して制御装置90へ出力する。
本実施形態では、撮像装置95が2つ設けられている。それぞれの撮像装置95は同じ構造である。また、撮像装置95は、3つ以上設けられていてもよい。撮像装置95は、3次元映像を作成することを目的として、複数設けられている。そのため、複数の撮像装置95の相対位置は予め記憶されている。なお、撮像装置95は、静止画を適切なインターバルで連続して撮像することを主目的とする機器であってもよいし、映像(動画)を撮像することを主目的とする機器であってもよい。連続して取得された静止画により得られる画像情報は映像(動画)情報と同等であるため、何れの機器であっても、映像を取得するという機能を有していることとなる。
それぞれの撮像装置95は、火炎燃焼開始位置の映像、及び、主に乾燥火格子21を搬送される廃棄物の映像を取得することを目的としている。また、撮像装置95は、温度等を検出するための赤外線カメラではなく、廃棄物の外観(色や輝度等)の映像を取得するためのカメラである。従って、撮像装置95が取得する映像は、撮像装置95の視点から見た炉内の色や輝度等を示す映像である。なお、視点とは、計測器である撮像装置95が配置されている位置を示す。焼却炉10では、乾燥部11の下流側の端部で乾燥が完了し、燃焼部12の上流側の端部で火炎燃焼が開始されることが想定されている。しかし、供給される廃棄物の性状(例えば廃棄物に含まれる水分量、及び、廃棄物の燃え易さ)によっては、乾燥部11の中途部で乾燥が完了して火炎燃焼が開始されたり燃焼部12の中途部でも乾燥が完了されておらず火炎燃焼が開始していないことがある。
そのため、火炎燃焼開始位置を撮像するために、2つの撮像装置95の撮像範囲には、乾燥部11と燃焼部12の境界及びその近傍の映像がそれぞれ含まれる。また、本実施形態では、乾燥部11の廃棄物を撮像するために、2つの撮像装置95の撮像範囲には、乾燥部11の廃棄物の表面も含まれている。より具体的には、本実施形態の2つの撮像装置95の撮像範囲には、廃棄物の搬送方向において、乾燥部11の上流端から燃焼部12の中央までが含まれている。なお、2つの撮像装置95の撮像範囲は、本実施形態よりも狭くても広くてもよい。また、撮像装置95は、映像の撮像範囲を変更可能な構成であってもよい。この場合、この撮像装置95は、焼却炉10を停止させること無しに、撮像範囲を変更可能であってもよい。撮像装置95は、廃棄物の堆積量が多くなった場合でも適切に映像を取得する等の目的で、廃棄物よりも高い位置に配置されている。従って、撮像装置95は、下側に向けて傾斜して配置されている。なお、撮像装置95を傾斜させずに配置してもよい。
図3に示すように、廃棄物の搬送方向と上下方向(鉛直方向)に垂直な方向を炉幅方向と称する。撮像装置95は乾燥部11の炉幅方向の端部に形成されている壁部である側壁11aから映像を取得する。具体的には、側壁11aには2つの窓部11bが設けられており、2つの撮像装置95は、それぞれの窓部11bを介して映像を取得する。窓部11bとは、炉内を観察するための部分であり、具体的には、側壁11aの一部を開口させ、透明(半透明を含む)な耐熱ガラス等で当該開口を塞いだ構成の部分である。なお、1つの窓部11bに2つの撮像装置95を配置してもよい。また、本実施形態では撮像装置95は搬送方向に並べて配置されているが、上下方向に並べて配置されていてもよい。
本実施形態では、左右の側壁11aのうち一方の側壁11aのみに2つの撮像装置95が配置されているが、両方の側壁11aにそれぞれ1又は複数の撮像装置95が配置されていてもよい。
<制御装置が行う処理>制御装置90は、CPU、RAM、ROM等によって構成されており、種々の演算を行うとともに、廃棄物焼却設備100全体を制御する。画像処理装置96も同様に、CPU、RAM、ROM等によって構成されており、2つの撮像装置95が取得した映像に基づいて3次元映像を作成する処理(画像合成処理)を行うことができる。本実施形態では、制御装置90と画像処理装置96は、個別のハードウェアであるが、1つのハードウェアが制御装置90と画像処理装置96の両方の機能を有していてもよい。以下、制御装置90が行う燃焼制御であって、特に3次元映像を解析して行う制御について、図4のフローチャートに沿って説明する。図4は、燃焼を安定させるために制御装置90が行う制御を示すフローチャートである。
初めに、制御装置90は、複数(2つ)の撮像装置95が取得した映像に基づいて画像処理装置96が作成した3次元映像を記憶する(S101)。複数の映像(各画像)から3次元映像(時間的に連続する複数の3次元画像)を作成する処理は公知の技術なので簡単に説明する。ここでは、2つの撮像装置95を区別するために第1及び第2を付けて説明することがある。第1撮像装置が取得する映像には、第1撮像装置の位置から見た火炎及び廃棄物の表面の色及び形状等が表れている。第2撮像装置が取得する映像についても同様である。そして、画像処理装置96は、火炎又は廃棄物の表面の特定箇所Aが、2つの映像のそれぞれ何処に表示されるかを特定する。上述したように第1撮像装置と第2撮像装置の位置関係は既知なので、三角法等に基づいて、第1又は第2撮像装置から、火炎又は廃棄物の特定箇所Aまでの距離を計算できる。この処理を火炎又は廃棄物の表面の他の部分についても行うことで、火炎又は廃棄物の表面の位置(3次元座標)を特定できる。
次に、制御装置90は、乾燥部11の廃棄物について、(1)厚みの時間変化、(2)表面の移動速度の時間変化、及び、(3)乾燥部滞留時間をそれぞれ算出する(S102)。これらの値は燃焼制御の制御値を補正するために用いられるため、これらの値を補正データと称する。
上記の(1)に関し、廃棄物の厚みとは、図5に示すように、乾燥火格子21から廃棄物の表面までの上下方向に沿う長さである。乾燥火格子21の表面(上面)の位置は、予め制御装置90等に記憶されている。また、3次元映像に基づいて、廃棄物の表面の位置を特定できる。従って、この2つの位置(座標)を比較することで、廃棄物の厚みを算出できる。なお、搬送方向及び炉幅方向の両方に応じた廃棄物の厚みを算出することも可能であるが(実際にその処理を行ってもよいが)、本実施形態では、処理を簡単にするため、搬送方向のみに応じた廃棄物の厚みを算出する。また、炉幅方向で廃棄物の厚みが異なる場合は、炉幅方向の平均等を用いて代表値を決定する。
以上のようにして、ある時刻での3次元映像に基づいて、搬送方向に応じた、乾燥部11の廃棄物の厚みの分布を算出できる。なお、画像合成処理にて得られる3次元映像は時刻に応じて順次作成されるので、次の時刻の3次元映像に対しても同様に廃棄物の厚みが算出される。このようにして、制御装置90は、搬送方向に応じた廃棄物の厚みの時間変化を算出し、所定の記憶部に記憶する。
廃棄物の厚みの時間変化を算出する意義は以下のとおりである。即ち、乾燥部11に堆積した廃棄物は、乾燥火格子21の乾燥操作(送り操作)に伴い、この廃棄物に含まれる水分が蒸発することで乾燥し、質量が低減するとともに体積も減少する。つまり、廃棄物の厚みの時間変化は、廃棄物が乾燥していく経過を示すものであり、乾燥操作の進行の程度の一種の指標となる。従って、本実施形態では、廃棄物の厚みの時間変化に基づいて燃焼制御を行う。
上記の(2)に関し、廃棄物の表面の移動速度とは、図5に示すように、廃棄物の表面が搬送方向に移動する速度である。図5では、分かり易くするために比較的厚みが大きい部分に太線を描き、この部分が移動する様子を示している。各時刻における3次元映像には、廃棄物の表面の形状が表れているため、この3次元映像に基づいて、廃棄物の表面がどのように動いているかを得ることができる。従って、廃棄物の表面の特定部分の移動距離と、当該移動距離を移動するために掛かった時間と、に基づいて、廃棄物の特定部分の移動速度を算出できる。なお、搬送方向及び炉幅方向の両方に応じた廃棄物の移動速度を算出することも可能であるが(実際にその処理を行ってもよいが)、本実施形態では、搬送方向のみに応じた廃棄物の移動速度を算出する。また、炉幅方向で廃棄物の移動速度が異なる場合は、炉幅方向の平均等を用いて代表値を決定する。
以上のようにして、搬送方向に応じた、乾燥部11の廃棄物の移動速度の分布を算出できる。なお、画像合成処理にて得られる3次元映像は時刻に応じて順次作成されるので、次の時刻の3次元映像及びその過去の3次元映像を用いて、廃棄物の新たな移動速度が算出される。このようにして、制御装置90は、搬送方向に応じた廃棄物の移動速度の時間変化を算出し、所定の記憶部に記憶する。
廃棄物の移動速度の時間変化を算出する意義は以下のとおりである。即ち、廃棄物の移動速度の時間変化は、乾燥部11に堆積した廃棄物が乾燥火格子21の乾燥操作(送り操作)により、体積を減少させながら、搬送方向に送られていく実速度を示すものであり、乾燥操作によって、廃棄物がどう「動かされてきた」かの指標である。従って、本実施形態では、廃棄物の移動速度の時間変化に基づいて燃焼制御を行う。
上記の(3)に関し、乾燥部滞留時間とは、乾燥部11に堆積している廃棄物が、乾燥部11に滞留している時間である。言い換えれば、それぞれの廃棄物が、乾燥部11に到達してから現在に至るまでに経過した時間である。上述のように、搬送方向に応じた、かつ、時刻に応じた、廃棄物の表面の移動速度は算出されている。従って、搬送方向に応じた、廃棄物の乾燥部滞留時間を算出できる。なお、画像合成処理にて得られる3次元映像は時刻に応じて順次作成されるので、次の時刻の3次元映像に基づく移動速度を用いて、同様に廃棄物の乾燥部滞留時間が算出(更新)される。このようにして、制御装置90は、搬送方向に応じた廃棄物の乾燥部滞留時間を算出し、所定の記憶部に記憶する。
廃棄物の乾燥部滞留時間を算出する意義は以下のとおりである。即ち、乾燥部滞留時間は、乾燥部11に堆積している廃棄物が、乾燥火格子21の乾燥操作(送り操作)により、乾燥が進行していき、この廃棄物に含まれる水分の蒸発が終わって「燃焼開始」に至るまでに掛かった時間(後述の実乾燥時間)に関する情報である。つまり、乾燥部11の搬送方向に応じた滞留時間を算出及び更新していき、この廃棄物が乾燥部11の下流端(又は火炎燃焼開始位置)に到達したときの乾燥部滞留時間が実乾燥時間に相当する。実乾燥時間は、乾燥部11に堆積していた廃棄物がどれだけ乾燥し易かったか(廃棄物に含まれる水分量が少なかったか)/乾燥しにくかったか(廃棄物に含まれる水分量が多かったか)を示す指標である。従って、本実施形態では、乾燥部滞留時間に基づいて燃焼制御を行う。
次に、制御装置90は、画像処理装置96が作成した3次元映像を解析して、火炎燃焼開始位置を特定する(S103)。火炎燃焼開始位置とは、火炎燃焼が開始され始める搬送方向における位置である。撮像装置95が取得した映像には、火炎燃焼が含まれているため、色及び輝度等に基づいて火炎を特定し、当該火炎の上流側の端部の位置を求めることで、火炎燃焼開始位置を特定できる。このように、撮像装置95が取得した映像のみによっても火炎燃焼開始位置を特定することもできる。しかし、1つの撮像装置95で取得した映像のみでは、当該映像に含まれている火炎の3次元位置を正確に特定することができないため、制御装置90は、3次元映像を用いて火炎燃焼開始位置を特定する。具体的には、3次元映像に含まれている火炎のうち最も上流側にある火炎の位置(更に言えば火炎のうち廃棄物の表面に存在している部分の位置)を特定する。これにより、火炎燃焼開始位置をより正確に特定することができる。なお、火炎燃焼開始位置は、炉幅方向で一様ではないが、例えば炉幅方向での火炎燃焼開始位置の平均等を求めることで算出された火炎燃焼開始位置を記憶する。
次に、制御装置90は、火炎燃焼開始位置の時間変化に基づいて、火炎燃焼開始位置が上流側に移動しているか否かを判定する(S104)。例えば、焼却炉10に供給される廃棄物に含まれる水分量が少なくなったり、燃え易い廃棄物が供給されるようになった場合、乾燥部11で廃棄物を乾燥(及び乾燥に伴う熱分解を含む、以下同じ)させるために実際に必要な時間(実乾燥時間)が短くなる。従って、実乾燥時間が、予め想定されている廃棄物の想定乾燥時間よりも短くなる(差異が生じる)。この場合、図6に示すように、乾燥部11の中途部で乾燥が完了するため、乾燥部11の中途部で火炎燃焼が発生する(火炎燃焼開始位置が上流側に移動する)こととなる。
この状態を放置していると、乾燥部11で火炎燃焼が進行してしまうために、燃焼部12における火炎燃焼に必要な滞留時間が短くなることとなり、燃焼部12の途中で火炎燃焼の次の段階である後燃焼が徐々に開始する。その結果、火格子上の乾燥、燃焼、後燃焼のそれぞれの位置が全体的に、上流側へ徐々に移動していくこととなり、燃え切り点(火炎燃焼の終了位置)が適切な範囲から外れてしまい、安定な燃焼を維持できなくなる。
これを防止するため、制御装置90は、基本的には火炎燃焼開始位置が上流側に移動していると判定した場合(S104でYesの場合)、乾燥火格子21の廃棄物の搬送速度(以下、単に搬送速度)を増速させる(S105)。上述のように、搬送速度を増速させるためには、乾燥火格子21の可動火格子の動作速度を増速させるか、それに代えて又は加えて、乾燥火格子21の可動火格子の停止時間を短くする。これにより、火格子上の各部の燃焼位置が上流側に移動する事態を防止することができる。従って、燃え切り点を適切な範囲に収めることができるので、安定な燃焼を維持することができる。なお、可動火格子の動作速度又は停止時間は、搬送速度の制御における制御値の一例である。
ただし、乾燥火格子21の搬送速度を増速させた際の判定に用いた火炎燃焼開始位置は、既に燃焼が終了した廃棄物に関する情報(過去の情報)であることを踏まえ、現に乾燥部11にある廃棄物の性状に関する情報である上記の補正データに基づいて、搬送速度の増速の程度を補正することで、更に安定な燃焼を維持できる。なお、ステップS105の処理及び他の処理において、補正データに基づく補正を行う際は、廃棄物の厚みの時間変化、廃棄物の表面の移動速度の時間変化、及び、廃棄物の乾燥部滞留時間の少なくとも何れかを使用して補正を行う。
具体的には、廃棄物の厚みの減少が加速している場合(即ち、単位時間あたりの厚みの減少量(正)が大きくなっている場合)、実乾燥時間が想定乾燥時間よりも更に短くなる傾向にあるため、搬送速度を更に増速させることが好ましい場合がある。また、廃棄物の表面の移動速度及び乾燥部滞留時間は、廃棄物の現在の搬送速度に関する情報であるため、これらの値を考慮して、乾燥火格子21の搬送速度を変更することが好ましい。
なお、焼却炉10で生じる乾燥及び燃焼は、焼却炉10の形状や構造、及び投入される廃棄物によって大きく異なる。また、要求される処理量、焼却炉10の耐久性、及び排ガスに関する法規制等によっても、目標とする状態が大きく異なる。そのため、火炎燃焼開始位置が上流側に移動していても搬送速度を増速させる制御が行われない場合も考えられる。同様に、補正データに基づく搬送速度の補正についても、上記とは逆の補正が行われる可能性もある。なお、制御装置90は、乾燥火格子21の搬送速度の増速の要否及びその程度について、火炎燃焼開始位置が上流側に移動しているか否か、及び補正データだけでなく、更に別の検出データ(例えば焼却炉内ガス温度センサ91からNOxガス濃度センサ94等の検出データ)に基づいて決定することが好ましい。
制御装置90は、火炎燃焼開始位置が上流側に移動していないと判定した場合(S104でNoの場合)、火炎燃焼開始位置の時間変化に基づいて、火炎燃焼開始位置が下流側に移動しているか否かを判定する(S106)。
例えば、焼却炉10に供給される廃棄物に含まれる水分量が多くなったり、燃えにくい廃棄物が供給されるようになった場合、乾燥部11で廃棄物を乾燥させるための実乾燥時間が長くなる。従って、実乾燥時間が、予め想定されている廃棄物の想定乾燥時間よりも長くなる(差異が生じる)。この場合、図7に示すように、乾燥部11の下流側の端部でも乾燥が完了していないため、燃焼部12の中途部で火炎燃焼が開始する(火炎燃焼開始位置が下流側に移動する)こととなる。
この状態を放置していると、燃焼部12で必要な火炎燃焼のための滞留時間が確保されないため、燃焼部12で完結されるはずの火炎燃焼が後燃焼部13にズレ込むこととなり、後燃焼部13の中途部で後燃焼が開始することとなる。その結果、火格子上の乾燥、燃焼、後燃焼のそれぞれの位置が全体的に、下流側へ徐々に移動していくこととなり、燃え切り点が適切な範囲から外れてしまい、安定な燃焼を維持できなくなる。
これを防止するため、制御装置90は、基本的には火炎燃焼開始位置が下流側に移動していると判定した場合(S106でYesの場合)、乾燥火格子21の搬送速度を減速させる(S107)。上述のように、搬送速度を減速させるためには、乾燥火格子21の可動火格子の動作速度を減速させるか、それに代えて又は加えて、乾燥火格子21の可動火格子の停止時間を長くする。これにより、火格子上の各部の燃焼位置が下流側に移動する事態を防止することができる。従って、燃え切り点を適切な範囲に収めることができるので、安定な燃焼を維持することができる。
また、搬送速度を減速させる場合においても、上記と同様の理由により、補正データに基づいて補正を行うことが好ましい。具体的には、廃棄物の厚みの減少が加速している場合、実乾燥時間が想定乾燥時間よりも短くなる傾向にあるため、搬送速度を減速させる程度を小さくすることが好ましい場合がある。また、廃棄物の表面の移動速度及び乾燥部滞留時間は、上述したように廃棄物の現在の搬送速度に関する情報であるため、これらの値を考慮して、乾燥火格子21の搬送速度を変更することが好ましい。なお、搬送速度の増速時の補正において説明した理由により、環境等の状況によっては、補正データに基づく搬送速度の補正について、上記とは逆の補正が行われる可能性もある。また、搬送速度の減速時の制御においても、更に別の検出データに基づいて制御値を決定することが好ましい。
また、実乾燥時間と予め想定されている廃棄物の想定乾燥時間とに差異が生じたとして、乾燥火格子21の搬送速度を変更させることは、現に乾燥火格子21から燃焼火格子22に供給されている廃棄物の性状は既に従来の想定と異なっていることを意味する。その結果、その状態で燃焼火格子22及び後燃焼火格子23の搬送速度を従来と同じにしていると、既に燃焼、後燃焼に必要な時間は変化しているため、安定な燃焼を維持できない。
これを防止するため、制御装置90は、乾燥火格子21の搬送速度を変更した場合(S104又はS106でYesの場合)、乾燥火格子21の搬送速度の変更の原因である廃棄物の性状の変化の状態に応じて、燃焼火格子22及び後燃焼火格子23の搬送速度を変更する(S108)。なお、制御装置90は、燃焼火格子22及び後燃焼火格子23の搬送速度の変更の要否及び変更すべき量について、乾燥火格子21の搬送速度の変更量だけではなく、他の検出データにも基づいて決定することが好ましい。
また、燃焼火格子22及び後燃焼火格子23の搬送速度を変更する場合においても、上記と同様の理由により、補正データに基づいて補正を行うことが好ましい。基本的には、乾燥火格子21と同様に、燃焼火格子22と後燃焼火格子23の搬送速度を変更することが好ましいが、乾燥火格子21に存在する廃棄物が後燃焼火格子23に到達するまでのタイムラグ(言い換えれば、各部の廃棄物の性状の違い)、乾燥部11での乾燥時間、燃焼部12での燃焼時間、後燃焼部13での後燃焼時間に相関関係があるとは言い切れない等の理由により、上記とは異なる制御を行うことが好ましい場合も考えられる。
次に、制御装置90は、乾燥火格子21の搬送速度の変更の原因である廃棄物の性状の変化の状態に応じて、第1ダンパ81から第5ダンパ85の少なくとも何れかを調整することで、一次燃焼用気体及び二次燃焼用気体の供給量を調整する(S109)。即ち、この第1ダンパ81から第5ダンパ85の開度が制御値の一例である。従来では、例えば焼却炉内ガス温度センサ91からNOxガス濃度センサ94の検出データ等を用いて、一次燃焼用気体及び二次燃焼用気体の供給量を調整している。
これに対し、本実施形態では、他の検出データに加えて、火炎燃焼開始位置の移動方向(上流側に移動しているか、下流側に移動しているか)に基づいて、一次燃焼用気体及び二次燃焼用気体の供給量を調整する。ここで、火炎燃焼開始位置が上流側に移動していて各火格子の搬送速度を増速させた場合、廃棄物の性状にも関係するが一般的には、熱分解ガスの発生量が多くなるとともに、一次燃焼が行われることで生じる一次燃焼ガス(CO等の未燃焼ガスを含む)が多くなる。従って、一次燃焼用気体及び二次燃焼用気体の供給量を増加させる必要がある。一方で、火炎燃焼開始位置が下流側に移動していて各火格子の搬送速度を減速させた場合、廃棄物の性状にも関係するが一般的には、熱分解ガスの発生量が少なくなるとともに、一次燃焼が行われることで生じる一次燃焼ガスが少なくなる。従って、一次燃焼用気体及び二次燃焼用気体の供給量を低減させる必要がある。
また、一次燃焼用気体及び二次燃焼用気体の供給量を変更する場合においても、上記と同様の理由により、補正データに基づいて補正を行うことが好ましい。例えば、一次燃焼用気体の1つである一次空気は、燃焼部12での燃焼だけでなく乾燥部11での乾燥にも用いられるため、実乾燥時間を短くすることが好ましい場合は、一次空気の供給量を増加させることが好ましい場合がある。ただし、一次空気は燃焼部12での燃焼にも用いられるため、このような補正が行われない場合もある。
また、廃棄物の性状は常に変化する可能性があるため、制御装置90は、ステップS109の処理の後に、再びステップS101以降の処理を行う。これにより、廃棄物の性状が変化した場合であっても、廃棄物の乾燥及び燃焼の進行状況が適正になるように修正することができるため、火炎燃焼開始位置を適切な範囲に収め、安定な燃焼を維持することができる。
以上に説明したように、本実施形態の炉内状況判定方法は、乾燥部11と燃焼部12と後燃焼部13とに区分された火格子から構成されており、廃棄物が堆積した状態で間欠的に動作することで当該廃棄物を搬送するとともに火格子を介して一次燃焼用気体を供給する搬送部20を備えた焼却炉10に対して行われる。この炉内状況判定方法は、映像取得工程と、3次元映像作成工程と、算出工程と、を含む処理を行う。映像取得工程では、乾燥部11の炉幅方向の端部に形成されている側壁11aに設けられた窓部11bから、視点が異なる複数の撮像装置95を用いて、少なくとも乾燥部11に堆積した廃棄物及び火炎の外観を含むとともに視点が異なる複数の映像を連続して取得する。3次元映像作成工程では、映像取得工程で取得された異なる視点からの複数の映像に画像合成処理を行うことで、3次元映像を連続して作成する。算出工程では、3次元映像作成工程で作成された3次元映像に含まれている火炎に基づいて火炎燃焼開始位置を特定し、火炎燃焼開始位置が搬送方向上流側に移動しているか搬送方向下流側に移動しているかを算出する。
乾燥部11の側壁11aに撮像装置95を設けることで、燃焼部12及び後燃焼部13を介することなく直接的に火炎及び乾燥部11の廃棄物の映像を取得できる。更に、乾燥部11の側壁11aは、燃焼部12の側壁と比較して温度が低く、また天井と比較して熱分解ガス及び燃焼ガスの影響を受けにくいため、撮像装置95の適切な設置先である。また、3次元映像を用いることで燃焼開始位置の移動方向を的確に算出できるとともに、乾燥部11の廃棄物の形状及びその動きを十分に検出できる。
本実施形態の炉内状況判定方法においては、3次元映像に基づいて、乾燥部11の廃棄物について、乾燥火格子21上の廃棄物の厚みの時間変化を算出する。
本実施形態の炉内状況判定方法においては、3次元映像に基づいて、乾燥部11の廃棄物の表面の移動速度の時間変化を算出する。
本実施形態の炉内状況判定方法においては、乾燥部11の廃棄物の表面の移動速度の時間変化に基づいて、乾燥部11の廃棄物が乾燥部11に滞留している時間である乾燥部滞留時間を算出する。
以上により、乾燥部11において、廃棄物の性状の変化等に起因して、廃棄物の乾燥がどの程度進行しているかに関する状況を把握することができる。
本実施形態の燃焼制御方法においては、火炎燃焼開始位置が搬送方向上流側に移動していることが特定された場合は、乾燥部11の乾燥火格子21による廃棄物の搬送速度を増速させる制御を行う。火炎燃焼開始位置が搬送方向下流側に移動していることが特定された場合は、乾燥部11の乾燥火格子21による廃棄物の搬送速度を減速させる制御を行う。
これにより、想定乾燥時間と実乾燥時間との差異を小さくすることができるので、廃棄物の乾燥及び燃焼の進行状況をより適正にすることができる。その結果、燃え切り点を適切な範囲に収め、安定な燃焼を維持することができる。
本実施形態の燃焼制御方法においては、乾燥火格子21上の廃棄物の厚みの時間変化を算出する処理、乾燥部11の廃棄物の表面の移動速度の時間変化を算出する処理、乾燥部滞留時間を算出する処理の少なくとも何れかを行う。乾燥部11の乾燥火格子21の搬送速度を変更するとともに、上記の少なくとも何れかの処理で得られた廃棄物の性状の変化の状態に応じて、燃焼火格子22及び後燃焼火格子23の搬送速度を変更する。
これにより、乾燥火格子21の搬送速度のみならず、燃焼火格子22及び後燃焼火格子23の搬送速度を変更することで、燃焼状態の全体の変動を修正できる。
本実施形態の燃焼制御方法においては、火炎燃焼開始位置が搬送方向上流側に移動しているか搬送方向下流側に移動しているかに基づいて、乾燥部11、燃焼部12、及び後燃焼部13の少なくとも何れかへ供給する一次燃焼用気体の供給量を調整する。
これにより、廃棄物の搬送速度を変更したことに起因する一次燃焼用気体の過不足を修正することができるので、乾燥、燃焼、及び後燃焼をより適切に行うことができる。
本実施形態の燃焼制御方法において、焼却炉10では、乾燥部11、燃焼部12、及び後燃焼部13で行われる一次燃焼と、当該一次燃焼で発生した未燃焼ガスを含む一次燃焼ガスを燃焼させる二次燃焼と、が行われる。火炎燃焼開始位置が搬送方向上流側に移動しているか搬送方向下流側に移動しているかに基づいて、二次燃焼用気体の供給量を調整する。
これにより、火炎燃焼開始位置の移動方向に基づいて一次燃焼の進行状況(即ち一次燃焼ガスの発生量等)を推測することができるので、それに応じて二次燃焼用気体の供給量を調整することで、二次燃焼において一次燃焼ガスに含まれる未燃焼ガスを十分に燃焼させることができる。
本実施形態の燃焼制御方法においては、乾燥火格子21上の廃棄物の厚みの時間変化と、乾燥部11の廃棄物の表面の移動速度の時間変化と、乾燥部滞留時間と、のうち少なくとも何れかに基づいて、燃焼状態を制御するための制御値を決定する。
これにより、火炎燃焼開始位置に加え、現に乾燥部11にある廃棄物の性状に関する情報を用いて制御値を補正できるので、補正をしないときと比較して、現に乾燥部11にある廃棄物により合致した安定な燃焼を維持することができる。
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
上記実施形態では、乾燥部11の搬送方向の全体(上流端から下流端まで)の3次元映像を作成する処理を説明した。これに代えて、制御装置90は、乾燥部11の搬送方向の一部(例えば上流端及びその近傍を除いた部分、あるいは、搬送方向の中央よりも下流側の部分)の3次元映像を作成する構成であってもよい。
上記実施形態では、火炎燃焼開始位置の移動方向に基づいて、乾燥火格子21から後燃焼火格子23(特に乾燥火格子21)の搬送速度と、一次燃焼用気体と二次燃焼用気体の供給量と、を変更する処理を行ったが、火炎燃焼開始位置の移動方向に加えて、移動速度を用いて、これらの値を変更する処理を行ってもよい。
上記実施形態では、ステップS105,S107,S108,S109の全てにおいて補正データに基づいて補正を行うが、これらの処理の少なくとも1つについて、補正データに基づく補正を省略してもよい。また、ステップS108において、燃焼火格子22及び後燃焼火格子23の両方ではなく一方のみに対して、補正データに基づく補正を行ってもよい。
上記実施形態では、燃焼制御で用いる検出データとして、焼却炉内ガス温度センサ91、焼却炉出口ガス温度センサ92、COガス濃度センサ93、及びNOxガス濃度センサ94の検出データを挙げて説明したが、少なくとも1つの検出データを省略して燃焼制御を行ってもよいし、上記とは別の検出データを加えて燃焼制御を行ってもよい。別の検出データとしては、例えば、排ガスからの熱量回収に伴うボイラ蒸発量、又は、水噴霧により冷却を行う場合は水噴霧冷却用水量等を用いることができる。
10 焼却炉(廃棄物焼却炉)
11 乾燥部
11a 側壁
12 燃焼部
13 後燃焼部
20 搬送部
21 乾燥火格子
22 燃焼火格子
23 後燃焼火格子
90 制御装置
95 撮像装置
96 画像処理装置
11 乾燥部
11a 側壁
12 燃焼部
13 後燃焼部
20 搬送部
21 乾燥火格子
22 燃焼火格子
23 後燃焼火格子
90 制御装置
95 撮像装置
96 画像処理装置
Claims (9)
- 乾燥部と燃焼部と後燃焼部とに区分された火格子から構成されており、廃棄物が堆積した状態で間欠的に動作することで当該廃棄物を搬送するとともに当該火格子を介して一次燃焼用気体を供給する搬送部を備えた廃棄物焼却炉に対して、
前記乾燥部の炉幅方向の端部に形成されている側壁に設けられた窓部から、視点が異なる複数の撮像装置を用いて、少なくとも前記乾燥部に堆積した前記廃棄物及び火炎の外観を含むとともに視点が異なる複数の映像を連続して取得する映像取得工程と、
前記映像取得工程で取得された異なる視点からの複数の映像に画像合成処理を行うことで、3次元映像を連続して作成する3次元映像作成工程と、
前記3次元映像作成工程で作成された3次元映像に含まれている火炎に基づいて火炎燃焼開始位置を特定し、火炎燃焼開始位置が搬送方向上流側に移動しているか搬送方向下流側に移動しているかを算出する算出工程と、
を含む処理を行うことを特徴とする炉内状況判定方法。 - 請求項1に記載の炉内状況判定方法であって、
前記3次元映像に基づいて、前記乾燥部の前記廃棄物について、前記火格子上の前記廃棄物の厚みの時間変化を算出することを特徴とする炉内状況判定方法。 - 請求項1に記載の炉内状況判定方法であって、
前記3次元映像に基づいて、前記乾燥部の前記廃棄物の表面の移動速度の時間変化を算出することを特徴とする炉内状況判定方法。 - 請求項3に記載の炉内状況判定方法であって、
前記乾燥部の前記廃棄物の表面の移動速度の時間変化に基づいて、前記乾燥部の前記廃棄物が当該乾燥部に滞留している時間である乾燥部滞留時間を算出することを特徴とする炉内状況判定方法。 - 請求項1に記載の炉内状況判定方法を用いて、廃棄物焼却炉の燃焼状態を制御する燃焼制御方法であって、
火炎燃焼開始位置が搬送方向上流側に移動していることが検出された場合は、前記乾燥部の前記火格子による前記廃棄物の搬送速度を増速させる制御を行い、
火炎燃焼開始位置が搬送方向下流側に移動していることが検出された場合は、前記乾燥部の前記火格子による前記廃棄物の搬送速度を減速させる制御を行うことを特徴とする燃焼制御方法。 - 請求項5に記載の燃焼制御方法であって、
前記3次元映像に基づいて、前記乾燥部の前記廃棄物について、前記火格子上の前記廃棄物の厚みの時間変化を算出する処理、
前記乾燥部の前記廃棄物の表面の移動速度の時間変化を算出する処理、
前記乾燥部の前記廃棄物の表面の移動速度の時間変化に基づいて、前記乾燥部の前記廃棄物が当該乾燥部に滞留している時間である乾燥部滞留時間を算出する処理の少なくとも何れかを行い、
前記乾燥部の前記火格子の搬送速度を変更するとともに、前記乾燥部の前記火格子の搬送速度の変更の原因である、前記炉内状況判定方法で得られた前記廃棄物の性状の変化の状態に応じて、前記燃焼部の前記火格子及び前記後燃焼部の前記火格子の搬送速度を変化させることを特徴とする燃焼制御方法。 - 請求項5又は6に記載の燃焼制御方法であって、
火炎燃焼開始位置が搬送方向上流側に移動しているか搬送方向下流側に移動しているかに基づいて、前記乾燥部、前記燃焼部、及び前記後燃焼部の少なくとも何れかへ供給する一次燃焼用気体の供給量を調整することを特徴とする燃焼制御方法。 - 請求項5から7までの何れか一項に記載の燃焼制御方法であって、
前記廃棄物焼却炉では、前記乾燥部、前記燃焼部、及び前記後燃焼部で行われる一次燃焼と、当該一次燃焼で発生した未燃焼ガスを含む一次燃焼ガスを燃焼させる二次燃焼と、が行われ、
火炎燃焼開始位置が搬送方向上流側に移動しているか搬送方向下流側に移動しているかに基づいて、二次燃焼用気体の供給量を調整することを特徴とする燃焼制御方法。 - 請求項1に記載の炉内状況判定方法を用いて、廃棄物焼却炉の燃焼状態を制御する燃焼制御方法であって、
前記3次元映像に基づいて算出した、前記乾燥部の前記火格子上の前記廃棄物の厚みの時間変化と、
前記3次元映像に基づいて算出した、前記乾燥部の前記廃棄物の表面の移動速度の時間変化と、
前記乾燥部の前記廃棄物の表面の移動速度の時間変化に基づいて算出した、前記乾燥部の前記廃棄物が当該乾燥部に滞留している時間である乾燥部滞留時間と、
のうち少なくとも何れかに基づいて、前記燃焼状態を制御するための制御値を決定することを特徴とする燃焼制御方法。
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