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JP2019112692A - 熱処理装置および熱処理方法 - Google Patents

熱処理装置および熱処理方法 Download PDF

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JP2019112692A JP2017247890A JP2017247890A JP2019112692A JP 2019112692 A JP2019112692 A JP 2019112692A JP 2017247890 A JP2017247890 A JP 2017247890A JP 2017247890 A JP2017247890 A JP 2017247890A JP 2019112692 A JP2019112692 A JP 2019112692A
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義也 真野
慎太郎 鈴木
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Abstract

【課題】ワークに高周波熱処理を施すに当たり、該熱処理を効率良く、しかも精度良く実施可能とする。【解決手段】環状のワークWの要焼入領域を狙い温度に誘導加熱する加熱部2と、加熱部2で加熱されたワークWの要焼入領域を冷却して焼入れする冷却部3とを備え、加熱部2と冷却部3との間に、加熱部2で加熱されたワークWが冷却部3による冷却処理の開始位置Pに向けて搬送される横方向に延びた搬送路Aが設けられた熱処理装置1であって、搬送路Aに、それぞれがワークWの一端面を線接触支持可能な複数の支持部材51を相互に離間して配置することで形成されたワーク支持部52を設ける。【選択図】図6

Description

本発明は、熱処理装置および熱処理方法に関する。
周知のように、転がり軸受の軌道輪をはじめとする鋼製の機械部品の製造過程では、機械部品に所望の機械的強度や硬度を付与するために、熱処理としての焼入硬化処理が実施される。この熱処理は、機械部品の基材(ワーク)の要焼入領域を狙い温度に加熱する加熱処理が実施される加熱工程や、狙い温度に加熱されたワークの要焼入領域を冷却して焼入れする冷却処理が実施される冷却工程などを含む。上記の狙い温度とは、通常、A3変態点を超える温度であり、例えばJIS G4805に規定された高炭素クロム軸受鋼の一種であるSUJ2製のワークの場合には900℃超である。ワークサイズ等にもよるが、加熱処理は、ワークのみを直接加熱できるために高いエネルギー効率を達成できる、コンパクトな熱処理装置を実現できる、などの利点がある誘導加熱装置(高周波誘導加熱装置)を用いて実施するケースが増加しつつある。
例えば、下記の特許文献1には、加熱処理を実施する加熱部と、冷却処理を実施する冷却部とが上下に並べて設けられ、適宜の手段で保持されたワークが、加熱部にて狙い温度に誘導加熱された後、冷却部の配設位置まで下降させられることで冷却・焼入れされる熱処理装置(高周波熱処理装置)が開示されている。係る熱処理装置によれば、加熱処理および冷却処理を、時間を空けずに続けて実施することができるため、ワークの要焼入領域の温度低下に起因した焼入不良の発生を可及的に防止し、所望の焼入組織を具備する高品質の焼入済ワークを得ることができる。
特開2001−59116号公報
しかしながら、特許文献1の熱処理装置では、一のワークに対する焼入硬化処理が完了するまで後続のワークに対して何らの処理も施すことができない。従って、処理効率が低く、転がり軸受の軌道輪のような量産部品の製造過程で使用する熱処理装置としては不適である。
そこで、本発明者らは、加熱部と冷却部とを離間して配置し、加熱部と冷却部の間に、加熱部で狙い温度に加熱されたワークを冷却部による冷却処理の開始位置に向けて搬送する搬送面を設けることにより、加熱処理と冷却処理とを並行して実施可能な熱処理装置を検討した。しかしながら、この場合、ワークのうち搬送面と接触する部分では多くの熱が奪われてしまうため、冷却後のワークのうち、特に搬送面との接触によって温度低下が生じた部分に不完全な焼入れ組織が形成される可能性が高くなる。
このような問題は、例えば、(1)搬送面との接触による温度低下分を見越して加熱部におけるワークの加熱温度を高める、(2)加熱部を構成する誘導加熱装置を含め、搬送面(搬送路)を断熱壁で覆う、などの対策を講じることによって解消できるとも考えられる。しかしながら、上記(1)の場合には、結晶粒度の粗大化によって金属組織が脆くなる可能性があり、上記(2)の場合には、熱処理装置に雰囲気加熱炉(炉体)に近い構造を採用する必要があることから、熱処理装置が大幅に高コスト化する可能性がある。
以上の実情に鑑み、本発明は、ワークに高周波熱処理(高周波焼入れ)を施すに当たり、該熱処理を効率良く、しかも精度良く実施可能とすることを目的とする。
上記の目的を達成するために創案された本発明は、ワークの要焼入領域を狙い温度に誘導加熱する加熱部と、加熱部で加熱されたワークの要焼入領域を冷却して焼入れする冷却部とを備え、加熱部と冷却部との間に、加熱部で加熱されたワークが冷却部による冷却処理の開始位置に向けて搬送される横方向に延びた搬送路が設けられた熱処理装置であって、搬送路に、それぞれがワークを線接触支持可能な複数の支持部材を相互に離間して配置することで形成されたワーク支持部が設けられていることを特徴とする。なお、ここでいう「冷却部による冷却処理」とは、加熱部で加熱されたワークの要焼入領域を冷却して焼入れする処理、を意味する。また、「横方向」とは、水平方向のみならず、水平方向に対して所定角度傾斜した方向も含む概念である。
上記のように、加熱部で加熱されたワーク(加熱済ワーク)が冷却部による冷却処理の開始位置に向けて搬送される搬送路に、それぞれがワークを線接触支持可能な複数の支持部材を相互に離間して配置することで形成したワーク支持部を設けておけば、加熱済ワークを冷却部に向けて安定的に搬送しつつ、加熱済ワークの温度低下を抑制することができる。これにより、冷却処理の完了後には、所望の焼入組織を具備するワークを安定的に得ることができる。なお、「所望の焼入組織」とは、例えば、フェライト、パーライトおよびベイナイト等の組織が存在しない均一なマルテンサイト組織であって、ロックウェルCスケール硬さ(HRC)が62以上の組織である。
また、本発明に係る熱処理装置では、加熱済ワークが搬送路を介して冷却処理の開始位置に搬送されることから、加熱部による加熱処理と、冷却部による冷却処理とを並行して実施することができる。そのため、複数のワークに対して高周波焼入れを効率良く実施することができる。
ワーク支持部は、例えば、それぞれが搬送路の延在方向に延びた複数の支持部材を、搬送路の幅方向に相互に離間して配置することで形成することができる。また、ワーク支持部は、それぞれが搬送路の延在方向に対して所定角度傾斜した複数の支持部材を、搬送路の延在方向に沿って相互に離間して配置することで形成された第1支持部と、それぞれが第1支持部を構成する支持部材とは反対方向に傾斜した複数の支持部材を、搬送路の延在方向に沿って相互に離間して配置することで形成された第2支持部と、を備えるものとすることもできる。特に、後者の構成を有するワーク支持部を採用すれば、第1支持部と第2支持部との境界線に沿ってワークを案内搬送できることに加え、ワーク支持部(支持部材)との接触位置を変化させながらワークが搬送されるので、ワークの局部的な温度低下を効果的に抑制できる、という利点がある。
支持部材としては、耐熱性に優れると共に、ワークとの間で熱伝達し難い(ワークよりも熱伝導率が低い)材料で形成されたものを使用するのが好ましく、具体的には、アルミナ、窒化ケイ素、ジルコニア等のセラミックス(ファインセラミックス)製の棒材、あるいは石英ガラス製の棒材を使用することができる。棒材としては、ワークを線接触支持可能である限り、その断面形状は特に問わず、また、中実/中空の別も特に問わないが、入手容易性を考慮すると、中実または中空の丸棒が好ましい。
熱処理装置には、支持部材を100〜300℃に加熱する加熱手段を設けることもできる。このようにすれば、搬送路に沿って搬送されるワークの温度低下を抑制する上で有利となる。
熱処理装置は、さらに、搬送路に導入されたワークを、冷却処理の開始位置まで強制的に搬送する搬送機構を備えるものとすることができる。この場合、搬送機構のうちワークとの接触部は、上記同様の理由から、例えば、アルミナ、窒化ケイ素、ジルコニア等のセラミックス、あるいは石英ガラスで形成するのが好ましい。また、搬送機構のうち、ワークとの接触部を100〜300℃に加熱可能に構成しておけば、搬送機構との接触によるワークの温度低下を効果的に抑制することができる。
本発明は、冷却部が、冷却液を貯留した冷却液貯留槽と、ワークが冷却液に浸漬されるのに伴ってワークの外周面又は内周面を拘束可能な拘束型と、を備える熱処理装置に適用することができる。この場合において、冷却部に、ワークおよび拘束型を冷却液中でワークの軸線回りに回転させる回転機構と、冷却液を撹拌させる撹拌機構の少なくとも一方を設けておけば、ワーク(の要焼入領域)を均一に冷却することができるので、ワーク(の要焼入領域)に高品質の焼入組織を形成するうえで有利となる。
また、本発明は、室内雰囲気を酸化性雰囲気から非酸化性ガス雰囲気に置換可能な密閉室をさらに備え、室内雰囲気が非酸化性ガス雰囲気に置換された密閉室内で加熱部による加熱処理が実施された後、冷却処理として、密閉室の開口部を閉口する冷却液にワークを浸漬させる処理が実施される熱処理装置に好適に適用することができる。なお、ここでいう「非酸化性ガス雰囲気」とは、酸素が一切存在しない雰囲気のみならず、ワークの表面に酸化スケールが生成されない程度に酸素が僅かに存在する雰囲気(例えば、酸素濃度が100ppm以下)も含む概念である。このようにすれば、加熱処理や冷却処理の実施中に、ワークの外観品質を低下させたり、コンタミの発生原因となる酸化スケールがワーク表面に生成され難くなるので、高品質の焼入済みワークを得る上で有利となる。
以上で説明した本発明に係る熱処理装置は、例えば、転がり軸受の軌道輪のように、全体焼入れ(ずぶ焼入れ)が必要な環状のワークに高周波焼入れを施すための熱処理装置として好適に用い得る。
また、上記の目的を達成するため、本発明では、ワークの要焼入領域を狙い温度に誘導加熱する加熱処理が実施される加熱工程と、加熱工程で加熱されたワークの要焼入領域を冷却して焼入れする冷却処理が実施される冷却工程と、加熱工程で加熱されたワークを横方向に延びる搬送路に沿って冷却処理の開始位置に向けて搬送する搬送工程と、を備えた熱処理方法であって、搬送工程では、ワークを下方側から線接触支持することを特徴とする熱処理方法を提供する。
以上から、本発明に係る熱処理装置によれば、ワークに熱処理としての高周波焼入れを施すに当たり、該熱処理を効率良く、しかも精度良く実施することが可能となる。
本発明の実施形態に係る熱処理装置の全体構造を示す概略斜視図である。 図1に示す熱処理装置の概略正面図である。 熱処理装置の部分概略断面図(加熱部の概略断面図)である。 誘導加熱装置の斜視図である。 搬送路(支持手段)の部分概略平面図である。 搬送路(支持手段)および搬送機構の部分概略斜視図である。 搬送機構の部分拡大斜視図である。 冷却部の概略断面図である。 冷却工程の実施状態を示す部分概略断面図である。 他の実施形態に係る搬送路(支持手段)の部分概略平面図である。 他の実施形態に係る搬送路(支持手段)および搬送機構の部分概略斜視図である。 他の実施形態に係る搬送機構の部分概略断面図である。 他の実施形態に係る搬送機構の部分概略断面図である。 他の実施形態に係る冷却工程の実施状態を示す概略断面図である。 (a)図および(b)図は、他の実施形態に係る拘束型を用いた場合における冷却工程の実施状態を示す概略断面図である。 他の実施形態に係る冷却部の部分概略断面図である。 他の実施形態に係る誘導加熱装置の部分斜視図である。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る熱処理装置の全体構造を示す概略斜視図であり、図2は、同熱処理装置の概略正面図である。図1および図2に示す熱処理装置1は、鋼材からなる環状のワークWを所定経路(図2中に示す二点鎖線を参照)に沿って送りながら、ワークWに熱処理としての焼入硬化処理(高周波焼入)を施すように構成されたいわゆる連続式の高周波熱処理装置であって、ワークWの送り方向に沿って、ワークWの要焼入領域を狙い温度(A3変態点を超える温度)に誘導加熱する加熱部2と、加熱されたワークWの要焼入領域を冷却して焼入れする冷却部3とが設けられている。さらに、この熱処理装置1は、加熱部2による加熱処理および冷却部3による冷却処理の実施に伴って、ワークWの表面に酸化スケールが生成されるのを可及的に防止するため、少なくともワークWの加熱開始〜冷却・焼入完了までの間、ワークWが基本的に酸素に接触しないように構成されている。なお、ワークWとしては、JIS G4805に規定された高炭素クロム軸受鋼の一種であるSUJ2で作製された転がり軸受の外輪の基材を挙げることができる。この場合、上記の狙い温度は900℃超であり、要焼入領域はワークWの全域である。
図1および図2に示すように、熱処理装置1は、熱処理装置1の運転中における室内雰囲気が非酸化性ガス雰囲気に保たれる密閉室4を有する。この密閉室4は、ワークWの送り方向に沿って順に配置された加熱室5、通路室7および焼入れ準備室6からなる。図3および図8に示すように、加熱室5の内部空間と、焼入れ準備室6の内部空間とは、横方向(ここでは水平方向)に延びた通路室7の内部空間を介して繋がっている。
図示は省略しているが、熱処理装置1は、密閉室4の室内雰囲気を大気雰囲気(酸化性雰囲気)から非酸化性ガス雰囲気に置換するための置換装置を備える。置換装置は、密閉室4の内部空間に存在する空気を脱気するための脱気装置と、密閉室4の内部空間に、不活性ガスや還元性ガスなどの非酸化性ガスを供給するためのガス供給装置とを備え、密閉室4の内部空間には、脱気装置から延びた脱気管の一端、およびガス供給装置から延びたガス供給管の一端がそれぞれ開口している。
密閉室4は、加熱室5の内部空間にワークWを投入するための入口側開口部4a(図3参照)と、焼入れ準備室6の底壁に設けられた出口側開口部4b(図8参照)とを有する。入口側開口部4aは、図3に示す開閉手段(第2の開閉手段)12によって開口又は閉口され、出口側開口部4bは、図8に示すように、冷却液貯留槽35に貯留された冷却液36の液面によって常に閉口(大気と遮断)されている。
図3および図4に示すように、加熱部2は、ワークWの要焼入領域を狙い温度に誘導加熱する誘導加熱装置20を備える。本実施形態の誘導加熱装置20は、段積み状態で支持された複数のワークWを上方に送りながら誘導加熱するように構成された、いわゆる連続式の加熱装置であって、複数のワークWを段積み状態で支持可能な支持部材21と、支持部材21で支持されたワークWの径方向外側に配置された加熱コイル22と、支持部材21の下方側に配置され、支持部材21に対してワークWを供給するワーク供給部材23とを備える。支持部材21、加熱コイル22およびワーク供給部材23は、加熱室5の内部空間に配置され、加熱コイル22は、密閉室4外に配置された図示外の高周波電源と電気的に接続されている。
支持部材21は、支持すべきワークWの周方向に離間した複数箇所に配設されている。各支持部材21は、支持すべきワークWの径方向に沿って進退移動可能に設けられており、ワーク供給部材23によって下方側からワークWが供給されるのに伴って支持すべきワークWの径方向外側に移動してワークWを受け入れ、ワークWを受け入れた後には、支持すべきワークWの径方向内側に移動してワークWを支持する。
加熱コイル22は、例えば、導電性金属からなる管状体を螺旋状に巻き回した多巻きコイルからなり、支持部材21で支持されたワークWと同軸に配置されている。加熱コイル22としては、段積み状態で支持された複数のワークWを同時に加熱することができるように、ワークWの軸方向寸法の数倍〜数十倍程度の全長(軸方向)寸法を有するものが使用される。ワーク供給部材23は、例えば、支持部材21で支持されたワークWと同軸に配置された伸縮自在のシリンダロッド23aを有する動力シリンダ(油圧シリンダ、エアシリンダあるいは電動シリンダ)で構成される。シリンダロッド23aの先端には、ワークWを載置可能なフランジ部23bが設けられている。
以上の構成において、加熱室5の内部空間に投入されたワークWは、ワーク供給部材23のフランジ部23b上に載置される。フランジ部23b上に載置されたワークWは、ワーク供給部材23のシリンダロッド23aが伸長動作することによって支持部材21の上側に送られ、支持部材21で支持される。以降、後続のワークWが、順次、支持部材21と支持部材21で支持されたワークWとの間に供給されるのに伴って、支持部材21で支持されたワークWに上向きの送り力が付与される。そして、ワークWは、通電状態の加熱コイル22の対向領域を上側に送られながら狙い温度に誘導加熱され、加熱コイル22の上側に排出される。
図3に示すように、加熱コイル22の上側に排出された加熱済のワークWは、その一端面を下方に配置した横姿勢のままで加熱コイル22の径方向外側に払い出され、通路室7の内部空間に導入される。通路室7の内部空間に導入された加熱済のワークWは、通路室7の内部空間を通過して焼入れ準備室6の内部空間(冷却部3による冷却処理の開始位置P:図8参照)に搬送される。従って、通路室7の内部空間は、加熱済のワークWが冷却処理の開始位置Pに向けて搬送される搬送路Aを構成する。
図1〜図3に示すように、熱処理装置1は、熱処理装置1の運転時にワークWを加熱室5の内部空間に投入するにあたり、非酸化性ガス雰囲気に置換された密閉室4の室内雰囲気を非酸化性ガス雰囲気に保つための置換室8を有する。そのため、図示は省略しているが、熱処理装置1は、置換室8の室内雰囲気を酸化性雰囲気から非酸化性ガス雰囲気に置換するための置換装置を備える。この置換装置は、密閉室4に接続された置換装置を兼用しても良いし、これとは別のものを設置しても良い。
図3に示すように、置換室8には、その内部空間にワークWを投入するための開口部8aが設けられており、この開口部8aは開閉手段(第1の開閉手段)11によって開口又は閉口される。また、置換室8と加熱室5との間には開閉手段(第2の開閉手段)12が設けられており、第2の開閉手段12によって密閉室4の入口側開口部4aが開口又は閉口される。両開閉手段11,12は、例えば昇降式のシャッターで構成される。
置換室8の内部空間に投入されたワークWは、図示外の移送手段によって加熱室5の内部空間に移送される。この移送手段としては、例えば、置換室8および加熱室5の底面に跨るように敷設された搬送コンベア、あるいは動力シリンダ(油圧シリンダ、エアシリンダ、電動シリンダ)などを採用することができる。
図8に示す冷却部3は、加熱済のワークWの要焼入領域を冷却して焼入れする冷却処理が実施される部位であり、本実施形態の冷却部3は、ワークWの外周面を拘束型33で拘束した状態でワークWを冷却・焼入れ可能に構成されている。図1、図2および図8に示すように、冷却部3は、主な構成として、プレス装置30、拘束型33、昇降テーブル34および冷却液貯留漕35を備える。
プレス装置30は、焼入れ準備室6の内部空間(冷却処理の開始位置P)に搬送されたワークWを下方側に加圧する加圧部材31と、加圧部材31を昇降可能に保持した昇降ユニット32とを備える。本実施形態では、加圧部材31の下端に拘束型33が取り付け固定されており、拘束型33は加圧部材31と一体的に昇降移動する。図1および図2に示すように、昇降ユニット32は焼入れ準備室6の外側に配置されており、加圧部材31、拘束型33、さらには下端に加圧部材31を保持した軸部材の一部のみが焼入れ準備室6の内部空間に配置されている。加圧部材31を保持した軸部材は、焼入れ準備室6の天井壁を貫通する貫通穴に挿通されており、この貫通穴(貫通穴の内壁面と軸部材の外径面との間の隙間)は図示外のシール材で封止されている。
図8に示すように、冷却液貯留漕35は、焼入れ準備室6の下方に設置され、ワークWの要焼入領域を冷却して焼入れするための冷却液36を貯留した上面開口の漕で構成される。冷却液36としては、公知の水溶性焼入れ液や焼入れ油などが使用される。冷却液貯留槽35の上面開口部は、密閉室4の壁部によって第1開口部35aと第2開口部35bとに区分されている。密閉室4の出口側開口部4bは、冷却液貯留槽35に貯留された冷却液36のうち、第1開口部35a内に存在する冷却液36の液面で閉口されている。
図8に示すように、昇降テーブル34は、加圧部材31の直下に配設されて冷却液36中で昇降する。昇降テーブル34の上端面34aはワークWを載置する載置面とされ、昇降テーブル34が上昇限に位置したときには、昇降テーブル34の上端面34aが冷却液36の液面よりも上方に位置して、焼入れ準備室6の内部空間に搬送されてきたワークWを受け取る。従って、本実施形態では、昇降テーブル34によってワークWが受け取られる位置が「冷却処理の開始位置P」となる。
冷却液貯留槽35の内部には、拘束型33から離型された焼入れ済のワークWを昇降テーブル34から払い出すための払い出し手段(図示せず)と、払い出されたワークWを受け取って冷却液貯留槽35の外側に排出するための排出手段37とが設けられている。この排出手段37としては、例えば、上記の昇降テーブル34とは別に設けられた昇降テーブルを採用することができる。このワーク排出用昇降テーブルは、冷却液貯留槽35のうち、上記の第2開口部35bの直下位置で昇降可能に設けられており、焼入れ済のワークWを第2開口部35bを介して冷却液貯留槽35の外側に排出する。
図3〜図6に示すように、加熱室5と焼入れ準備室6の間に介在する通路室7の内部空間(搬送路A)には、搬送路Aの延在方向Xに沿って延び、搬送路Aに導入されたワークWを下方側から支持可能な支持手段50と、搬送路Aに導入されたワークWを冷却処理の開始位置Pに向けて強制的に搬送する搬送機構55とが設けられている。支持手段50は、搬送路Aの加熱室5側の端部付近を始端とし、冷却処理の開始位置Pの手前(搬送路Aの焼入れ準備室6側の端部付近)で終端している。
図3〜図6に示すように、支持手段50には、それぞれがワークWの一端面(下面)を線接触支持可能な複数の支持部材51を相互に離間して配置することで形成されたワーク支持部52が設けられている。図5に示すように、本実施形態のワーク支持部52は、それぞれが搬送路Aの延在方向Xに対して所定角度θ傾斜した複数の支持部材51を、搬送路Aの延在方向Xに沿って相互に離間して配置することで形成された第1支持部52Aと、それぞれが第1支持部52Aを構成する支持部材51とは反対方向に傾斜した複数の支持部材51を、搬送路Aの延在方向Xに沿って相互に離間して配置することで形成された第2支持部52Bとを備える。端的に言うと、本実施形態のワーク支持部52は、延長線が搬送路Aの幅方向中央部で交わるようにV字状に配置された二本の支持部材51の組を、搬送路Aの延在方向Xに沿って複数配置することで形成されている。
搬送路Aの延在方向Xで隣り合う二つの支持部材51の離間距離、および上記の角度θは、支持手段50上を搬送されるワークWが、搬送路Aの延在方向Xで隣り合う二つの支持部材51間に落ち込まないように調整される。図示例では、第1支持部52Aおよび第2支持部52Bのそれぞれが、ワークWの一端面の周方向に離間した複数箇所を線接触支持し得るように支持部材51が配置されている。
支持部材51は、誘導加熱装置20によって数百度の高温に加熱されたワークWを線接触支持することから、高い耐熱性を具備していることが求められる。また、支持部材51との接触によってワークWの熱が奪われてしまうと、冷却部3で冷却・焼入れされるワークWに所望の焼入組織を形成することができなくなる。さらに、熱処理装置1の高コスト化を回避するためにも、支持部材51は安価な量産品であることが望まれる。以上を勘案し、支持部材51としては、例えば、アルミナ、窒化ケイ素、ジルコニア等のセラミックス(ファインセラミックス)製の棒材、あるいは石英ガラス製の棒材を使用する。例示した上記の材料は、ワークWを構成する鋼材よりも熱伝導率が低く、ワークWとの間で熱伝達し難い(ワークWの熱を奪い難い)材料であるために好適である。支持部材51を構成する棒材は、ワークWの一端面を線接触支持可能である限りにおいて、その断面形状は特に問わず、また、中実/中空の別も特に問わないが、ここでは、入手容易で安価な中実の丸棒を使用している(図3および図8参照)。
図3〜図6および図8に示すように、支持手段50は、支持部材51を固定的(回転不能)に保持したベース部53を有し、支持部材51は、ベース部53に対して着脱可能に固定されている。そのため、支持部材51が摩耗・損傷等したときには、支持部材51を新品に交換すれば支持手段50を再利用することができる。
図6および図7に示す搬送機構55は、搬送路Aの延在方向Xに沿って進退移動(往復動)可能に設けられ、搬送路Aに導入されたワークWを焼入れ準備室6側に加圧する加圧部材56と、加圧部材56を駆動させる図示外の駆動源とを備え、加圧部材56は、搬送路Aの幅方向略中央部に配置されている。駆動源としては、例えば、エアシリンダ、油圧シリンダ又は電動シリンダ等の動力シリンダを採用することができる。
図6および図7に示すように、加圧部材56のうち、ワークWとの接触部には、加圧部材56との接触によるワークWの温度低下を抑制するための低温化抑制部57が設けられている。この低温化抑制部57は、支持部材51と同様の材料で形成されている。本実施形態の低温化抑制部57には、それぞれがワークWと線接触する帯状の突状部57aが一体的に設けられており、図示例では断面半円形の突状部57aを採用している。そのため、搬送路Aに導入されたワークWは、低温化抑制部57と線接触した状態で焼入れ準備室6側に加圧されることにより、冷却処理の開始位置Pに向けて強制的に搬送される。なお、本実施形態では、加圧部材56のワークWの外周面との対向面をV字形状に形成し、V字状の対向面を構成する一方の面および他方の面のそれぞれに低温化抑制部57を設けると共に、各低温化抑制部57に、それぞれがワークWの外周面と線接触する複数の突状部57aを一体的に設けている。そのため、搬送対象のワークWをしっかりと保持することができ、ワークWを搬送路Aの延在方向Xに沿って適切に加圧することができる。
熱処理装置1は以上の構成を有し、密閉室4の室内雰囲気を酸化性雰囲気から非酸化性ガス雰囲気に置換する雰囲気置換工程と、ワークWに加熱処理を施す加熱工程と、加熱済ワークWを冷却処理の開始位置Pに向けて搬送する搬送工程と、冷却処理の開始位置Pに搬送されたワークWに冷却処理を施す冷却工程とを自動で実施する。以下、各工程の実施態様を説明する。
[雰囲気置換工程]
この工程では、主に熱処理装置1の運転開始時(熱処理装置1へのワークWの投入前)に、密閉室4の室内雰囲気を大気雰囲気から非酸化性ガス雰囲気に置換する雰囲気置換処理が実施される。この雰囲気置換処理は、密閉室4の入口側開口部4aおよび出口側開口部4bを閉口した状態(出口側開口部4bは、冷却液貯留槽35に貯留された冷却液36の液面で常に閉口されている)で図示外の置換装置を作動させることにより行う。具体的には、例えば、密閉室4に接続された脱気装置を作動させて密閉室4の内部空間に存在する大気を脱気しつつ、密閉室4に接続されたガス供給装置を作動させて密閉室4の内部空間に不活性ガスあるいは還元性ガスなどの非酸化性ガスを充填する。これにより、密閉室4の室内雰囲気を迅速に非酸化性ガス雰囲気に置換することができる。
この雰囲気置換処理は、ワークWが密閉室4の内部空間に投入された後、密閉室4の出口側開口部4bを閉口した冷却液36に浸漬されるまでの間に、ワークWの表面に酸化スケールが生成されない程度に密閉室4内の酸素濃度が低下するまで行えば良く、必ずしも密閉室4内の酸素濃度がゼロになるまで行う必要はない。ワークWの表面に酸化スケールが生成されない程度の酸素濃度は100ppm以下である。
[加熱工程]
以上のようにして、密閉室4の室内雰囲気を非酸化性ガス雰囲気に置換した後、図3に示すように、ワークWを置換室8の内部空間に投入する。このとき、第2の開閉手段12は閉状態に維持し、密閉室4の入口側開口部4aを閉口しておく。置換室8の内部空間にワークWを投入した後、置換室8の入口側開口部8aを閉口する。この状態で、置換室8に接続された置換装置を作動させることにより、置換室8の室内雰囲気を、酸化性雰囲気から非酸化性ガス雰囲気に置換する。
置換室8の室内雰囲気が非酸化性ガス雰囲気に置換された後、置換室8の入口側開口部8aを閉口したまま密閉室4の入口側開口部4aを開口させ、ワークWを加熱室5の内部空間に移送してワーク供給部材23のフランジ部23b上に載置する。ワークWが加熱室5の内部空間に移送された後、第2の開閉手段12を開状態から閉状態に移行させることにより密閉室4の入口側開口部4aを閉口する。以上の手順で加熱室5の内部空間にワークWを投入することにより、密閉室4の室内雰囲気を非酸化性ガス雰囲気に維持したまま、密閉室4(加熱室5)の内部空間にワークWを投入することができる。
ワーク供給部材23のフランジ部23b上に載置されたワークWは、ワーク供給部材23のシリンダロッド23aが伸長動作することによって支持部材21の上側に送られ、支持部材21で支持される。以降、後続のワークWが、順次、以上で述べた手順(置換室8の内部空間に投入→置換室8の室内雰囲気を非酸化性ガス雰囲気に置換→置換室8の内部空間から加熱室5の内部空間に移送→ワーク供給部材23の伸長動作)を踏んで支持部材21と支持部材21で支持されたワークWとの間に供給されるのに伴って、支持部材21で支持されたワークWに上向きの送り力が付与される。このようして、ワークWは、通電状態の加熱コイル22の対向領域を上側に送られながら狙い温度に誘導加熱され、加熱コイル22の上側に排出される(以上、図3および図4を参照)。
なお、ワークWに全体焼入れが施される本実施形態では、各ワークWの全域が狙い温度に誘導加熱されるように、加熱コイル22に供給すべき高周波電力量や、誘導加熱装置20に対するワークWの供給間隔などが調整される。
[搬送工程]
この工程では、加熱コイル22の上側に排出された加熱済のワークWが、焼入れ準備室6の内部空間(冷却処理の開始位置P)に搬送される。具体的には、まず、加熱コイル22の上側に排出された加熱済のワークWが加熱コイル22の径方向外側に払い出され、通路室7の内部空間(搬送路A)に導入される。ワークWが搬送路Aに導入され、支持手段50上に載置されると、搬送機構55(加圧部材56)が作動してワークWを焼入れ準備室6側に加圧する(図6および図7参照)。これにより、ワークWは、冷却処理の開始位置Pに向けて強制的に搬送される。
[冷却工程]
この工程では、冷却処理の開始位置Pに搬送された加熱済のワークWに対し、該ワークWの要焼入領域を冷却して焼入れする冷却処理を施す。具体的には、図8に示すように、まず、プレス装置30の昇降ユニット32(図2参照)を駆動して加圧部材31および拘束型33を一体的に下降させ、冷却処理の開始位置Pに位置するワークW(昇降テーブル34の上端面34aに載置されたワークW)の外周に拘束型33を配置する。この状態において、ワークWの外周面と拘束型33の内周面のはめあいはすきまばめ(JIS B 0401−1を参照)とされ、また、拘束型33の下端面と昇降テーブル34の上端面34aとは当接状態にある。
その後、図9に示すように、加圧部材31、拘束型33、ワークWおよび昇降テーブル34を一体的に下降移動させて、これらを冷却液36に浸漬させる。冷却液36に浸漬されたワークWは、わずかに縮径変形した後、拡径変形するといった変形挙動を示すため、ワークWは、その外周面が拘束型33の内周面に拘束された状態で冷却・焼入れされる。これにより、ワークWの冷却・焼入れに伴うワークW外周面の形状精度(特に外周面の真円度)の低下を効果的に防止することができる。
昇降テーブル34が下降限に到達すると、拘束型33からワークWが離型される。ワークWが離型された拘束型33は、加圧部材31とともに上昇移動して原点復帰する。一方、拘束型33から離型されたワークWは、図8中に白抜き矢印で示すように、冷却液貯留槽35の内部に設けられた図示外の払い出し手段によって昇降テーブル34の外側に払い出されて排出手段37に受け取られ、その後、排出手段37が上昇することによって冷却液貯留槽35の外側に排出される。以上のようにして、ワークWに対する熱処理としての全体焼入れが完了する。
以上で説明したように、本実施形態の熱処理装置1には、加熱済のワークWが冷却部3による冷却処理の開始位置Pに向けて搬送される横方向に延びた搬送路Aが設けられ、この搬送路Aに、それぞれがワークWを下方側から線接触支持可能な複数の支持部材51を相互に離間して配置することで形成したワーク支持部52が設けられる。このようにすれば、加熱済のワークWを冷却部3(による冷却処理の開始位置P)に向けて安定的に搬送しつつ、加熱済のワークWの温度低下を抑制することができる。
特に、本実施形態では、ワーク支持部52として、図5および図6に示すように、それぞれが搬送路Aの延在方向Xに対して所定角度θ傾斜した複数の支持部材51を、搬送路Aの延在方向Xに相互に離間して配置することで形成された第1支持部52Aと、それぞれが第1支持部52Aを構成する支持部材51とは反対方向に傾斜した複数の支持部材51を、搬送路Aの延在方向Xに相互に離間して配置することで形成された第2支持部52Bと、を備えるものを採用している。この場合、第1支持部52Aと第2支持部52Bとの境界線に沿ってワークWを案内搬送できることに加え、ワーク支持部52(支持部材51)との接触位置を変化させながらワークWが搬送されるので、ワークの局部的な温度低下を効果的に抑制できる。
また、本実施形態の熱処理装置1には、搬送路Aに導入された加熱済のワークWを冷却処理の開始位置Pまで強制的に搬送する搬送機構55を設けていることから、搬送路Aに導入されたワークWを冷却処理の開始位置Pに確実に位置させることができる。
なお、熱処理装置1を簡素化・低コスト化する観点から言えば、ワークWを強制的に搬送する搬送機構55は省略しても良い。この場合、例えば、搬送路Aの延在方向Xに延びた支持手段50のうち、加熱室5側の端部を相対的に高位に位置させると共に、焼入れ準備室6側の端部を相対的に低位に位置させ、支持部材51の頂部(ワークWを線接触支持する部分)を繋いで形成される仮想支持面を傾斜面状にすることにより、搬送路Aに導入されたワークWをその自重によって冷却処理の開始位置Pまで搬送する(スライド移動させる)ことができる。しかしながら、この場合には、ワークWの大きさや質量等によってワークWの移動速度や移動量が異なるため、ワークWを冷却処理の開始位置Pに適切に位置させることができない可能性がある。そのため、ワークWを強制的に搬送する搬送機構55を設けるのが好ましい。
以上の構成により、冷却処理の完了後には、ワークWの要焼入領域に所望の焼入組織、すなわち、フェライト、パーライトおよびベイナイト等の組織が存在しない均一なマルテンサイト組織であって、所望の機械的強度や硬度が確保された組織を形成することができる。
また、本実施形態の熱処理装置1によれば、加熱済のワークWは、その外周面が拘束型33に拘束された状態で冷却・焼入れされるので、機械的強度や硬度のみならず、外周面の形状精度(特に真円度)に優れた高品質のワークWを安定的に得ることができる。また、以上の構成を有する熱処理装置1では、ワークWに高周波焼入を施すにあたって必要不可欠な加熱処理および冷却処理を非酸化性ガス雰囲気で並行して実施することができるので、ワークWの表面に酸化スケールを生成させることなく、複数のワークWに対して効率良く焼入硬化処理を施すことができる。従って、本実施形態の熱処理装置1は、ワークWの表面に酸化スケールを生成させたり、ワークWの形状精度を低下させたりすることなく、複数のワークWに対する高周波焼入を効率良くかつ精度良く実施することができる、という利点も有する。
以上、本発明の一実施形態に係る熱処理装置1について説明したが、熱処理装置1には、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜の変更を施すことが可能である。
例えば、支持手段50に設けるべきワーク支持部52は、図10に示すように、それぞれが搬送路Aの延在方向Xに延びた複数の支持部材51を、搬送路Aの幅方向に相互に離間して配置することで形成することもできる。
また、以上で説明した実施形態では、搬送路Aに導入されたワークWを焼入れ準備室6側に加圧することにより、ワークWを冷却処理の開始位置Pまで強制的に搬送する、いわゆるプッシュタイプの搬送機構55を採用したが、搬送機構55としては、ワークWを挟持した状態で搬送するいわゆるチャックタイプを採用することもできる。図11はその一例を示すものであり、搬送路Aの幅方向両端に配置した一対の加圧部材56,56でワークWをその縮径方向に挟持し、その状態でワークWを冷却処理の開始位置Pに搬送するようにしている。この場合、前述したプッシュタイプに比べ、冷却処理の開始位置P(図8参照)に対するワークWの位置決めを一層正確に行うことができる、という利点がある。図11では、図10に示したワーク支持部52を採用しているが、図5,6等に示すワーク支持部52を採用する場合においても、チャックタイプの搬送機構55を採用することができる。
また、ワークWを下方側から線接触支持する支持部材51、および搬送機構55のワークWとの接触部(突状部57a)のうちの少なくとも一方は、100〜300℃に加熱可能に構成することもできる。図12はその一例であり、支持部材51および突状部57aの双方が上記の温度範囲に加熱可能に構成されている。同図では、支持部材51および突状部57aとして、耐食性に優れ、かつ温度変化に伴う特性変化のないオーステナイト系のステンレス鋼製の棒材(丸棒)を採用し、熱処理装置1の運転時には、この棒材を図示外の加熱装置によって上記の温度範囲に加熱するようにしている。上記の温度範囲に加熱される支持部材51および突状部57aとしては、アルミナ、窒化ケイ素またはジルコニア等のセラミックス製の棒材を採用することもできる。
以上の構成を採用すれば、支持部材51(ワーク支持部52)との接触に伴うワークWの温度低下、および突状部57a(搬送機構55)との接触に伴うワークWの温度低下を一層効果的に抑制することができるので、一層高品質の焼入済みワークWを得ることができる。
上記の構成を採用する場合、支持部材51および/または突状部57aの加熱温度は、ワークW相互間で焼入品質にバラツキが生じないように、できるだけ所定の一定値に保つのが好ましい。係る観点から、例えば、支持部材51および/または突状部57aの温度を測定するための温度センサーを設け、この温度センサーの測定値に基づいて加熱装置の出力を制御(フィードバック制御)するのが好ましい。
図13は、支持部材51を加熱可能に構成した場合の変形例であり、支持部材51として、ヒータ(電熱線)を内蔵したものを使用している。すなわち、この実施形態の支持部材51は、電熱線51bと、電熱線51bを被覆する被覆部51aとからなり、被覆部51aは、オーステナイト系のステンレス鋼、あるいはアルミナ、窒化ケイ素、ジルコニア等のセラミックス製の中空棒材(中空丸棒)で構成される。図示は省略するが、この実施形態と同様の構造を有する突状部57aを採用することもできる。
また、冷却部3には、ワークWおよびワークWを拘束した拘束型33を冷却液36中でワークWの軸線回りに一体回転させる回転機構を設けることができる。図14は、その一例であり、昇降テーブル34に回転機構を設けている。この場合、加圧部材31をワークWの軸線回りに空転可能に設けると共に、昇降テーブル34に加圧部材31に嵌合されるピン34bを設け、昇降テーブル34と、昇降テーブル34に設けたピン34bが嵌合された加圧部材31とを冷却液36中に浸漬させた状態で昇降テーブル34を回転駆動することにより、加圧部材31と昇降テーブル34の間に配設されたワークWおよび拘束型33をワークWの軸線回りに一体回転させることができる。このようにすれば、冷却液36に浸漬されたワークWを均一に冷却することができるので、焼入れ完了後のワークWの形状精度を一層高めることができる。
また、詳細な図示は省略するが、冷却部3には、上記の回転機構に加え、あるいはこれに替えて、少なくともワークWが冷却液36に浸漬されたときに冷却液36を撹拌させるための撹拌機構を設けることもできる。このようにすれば、冷却部3に回転機構を設けた場合と同様に、冷却液36に浸漬されたワークWを均一に冷却する上で有利となる。
また、拘束型33は、以上で説明した実施形態のように、プレス装置30の加圧部材31に取り付け固定する他、図15(a)(b)に示すように、冷却液36中に固定的に配設することも可能である。図15(a)(b)に示す拘束型33は、その内周面でワークWの外周面を拘束するものであり、かつ、2つのワークWの軸方向寸法を合算した軸方向寸法を有する。この場合、焼入れ準備室6の内部空間に搬送されてきたワークWは、拘束型33(拘束型33の内周に圧入されたワークW)の上側に配置される。従って、この場合には、拘束型33の上側が冷却処理の開始位置Pとなる。
その後、加圧部材31が下降移動するのに伴って、冷却液36へのワークWの浸漬と、拘束型33によるワークW外周面の拘束とが同時進行する。そして、図15(b)に示すように、拘束型33の内周への後続のワークWの押し込みが完了するのに伴って、拘束型33の内周に配置されていた2つのワークWのうち、下側のワークWが拘束型33から離型される。この場合、以上で説明した実施形態で用いていた昇降テーブル34は必ずしも必要ではなく、離型されたワークWを受ける適当な受け部材を加圧部材31の直下位置に配置しておけば良い。
また、以上では、ワークWとして転がり軸受の外輪(の基材)を挙げ、拘束型33でワークWの外周面を拘束した状態でワークWを冷却・焼入れする場合に熱処理装置1を使用したが、熱処理装置1は、焼入れに伴う内周面の形状精度(特に真円度)の崩れを防止することが好ましいワークW(例えば、転がり軸受の内輪の基材)に高周波焼入を施す場合にも好ましく用いることができる。図16はその一例であり、加圧部材31の下端面にワークWの内周面を拘束可能な拘束型33’を取り付け固定している。
この場合、熱処理装置1を構成する冷却部3の動作態様や、冷却液36への浸漬に伴うワークWの形状変化の態様は図8および図9を参照して説明した実施形態と基本的に同様である。要するに、ワークWは、冷却液36に浸漬されると、まず、縮径変形し、その後拡径変形する。このため、ワークWの内周面は、冷却液36に浸漬された初期段階で拘束型33’に拘束されるが、離型される段階では基本的に拘束型33’で拘束されていない。従って、ワークWの内周面の形状精度は、以上で説明したワークWの外周面を拘束型33で拘束する場合ほど高めることはできないが、ワークWの冷却・焼入れの過程でワークWの内周面が一時的に拘束型33’の外周面で拘束されるので、本発明で採用しているいわゆる型拘束焼入れを採用しない場合に比べれば、ワークWの内周面の形状精度を高めることができる。
また、以上で説明した加熱部2の誘導加熱装置20はあくまでも一例であり、他の加熱装置が用いられる場合もある。図17はその一例であり、他の実施形態に係る加熱装置40の部分斜視図である。同図に示す加熱装置40は、ワークWを一個ずつ誘導加熱するように構成されたものであって、先端にワークWを載置可能なフランジ部41bが設けられた伸縮自在のシリンダロッド41aを有する支持部材41と、ワークWの外径側に位置する外径側コイル42と、ワークWの内径側に位置する内径側コイル43とを備え、両コイル42,43はシリンダロッド41aと同軸に配置されている。外径側コイル42および内径側コイル43は、絶縁材料からなるコイル支持部材44によって支持されている。
図17に示す加熱装置40を採用した場合、加熱室5の内部空間に投入されたワークWは、以下のようにして焼入れ準備室6の内部空間(冷却処理の開始位置P:例えば図2参照)に搬送された後、以上で説明した実施形態と同様にして冷却・焼入れされる。
まず、以上で説明した実施形態と同様に、ワークWが投入された置換室8の室内雰囲気が非酸化性ガス雰囲気になった後、ワークWを加熱室5の内部空間に移送して支持部材41のフランジ部41b上に載置する。ワークWが加熱室5の内部空間に移送された後、密閉室4の入口側開口部4aを閉口する。支持部材41のシリンダロッド41aが伸長動作することにより、フランジ部41b上に載置されたワークWは上昇移動して通電状態の外径側コイル42と内径側コイル43の間に導入され、ワークWの全体が狙い温度に誘導加熱される。ワークWの加熱完了後、支持部材41のシリンダロッド41aが短縮動作し、フランジ部41bが下降限に到達すると、図示外の適宜の手段によって加熱済のワークWが通路室7の内部空間(搬送路A)に払い出される。搬送路Aに払い出された加熱済のワークWは、図5〜7等に示す搬送機構55により焼入れ準備室6の内部空間(冷却処理の開始位置P)に搬送される。
なお、上記の加熱装置40を採用する場合、図3,4等に示す誘導加熱装置20を採用する場合に比べて密閉室4の高さ寸法を小さくすることができるので、熱処理装置1をコンパクト化することができる、という利点がある。
以上では、転がり軸受の軌道輪の基材に高周波焼入れ(全体焼入れ)を施すに際して本発明に係る熱処理装置1を適用したが、本発明に係る熱処理装置1は、その他のワーク、例えば、すべり軸受、等速自在継手を構成する外側継手部材や内側継手部材、転がり軸受や等速自在継手に組み込まれる保持器(の基材)に無酸化高周波熱処理を施す際にも好ましく適用することができる。なお、外側継手部材や内側継手部材は、その要求特性上、転がり軸受の軌道輪のように全体焼入れを施す必要はなく、表面焼入れ(部分焼入れ)を施せば足りる。このように、部分焼入れを施せば足りるワークに高周波焼入れを施す際にも本発明に係る熱処理装置1は好適に用い得る。
本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得る。すなわち、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
1 熱処理装置
2 加熱部
3 冷却部
4 密閉室
20 誘導加熱装置
22 加熱コイル
33 拘束型
36 冷却液
40 加熱装置
50 支持手段
51 支持部材
52 ワーク支持部
52A 第1支持部
52B 第2支持部
55 搬送機構
56 加圧部材
57 低温化抑制部
57a 突状部
A 搬送路
P 冷却処理の開始位置
X 搬送路の延在方向
W ワーク

Claims (12)

  1. ワークの要焼入領域を狙い温度に誘導加熱する加熱部と、該加熱部で加熱されたワークの要焼入領域を冷却して焼入れする冷却部とを備え、前記加熱部と前記冷却部との間に、前記加熱部で加熱されたワークが前記冷却部による冷却処理の開始位置に向けて搬送される横方向に延びた搬送路が設けられた熱処理装置であって、
    前記搬送路に、それぞれがワークを下方側から線接触支持可能な複数の支持部材を相互に離間して配置することで形成されたワーク支持部が設けられていることを特徴とする熱処理装置。
  2. 前記ワーク支持部は、それぞれが前記搬送路の延在方向に延びた前記複数の支持部材を、前記搬送路の幅方向に相互に離間して配置することで形成されている請求項1に記載の熱処理装置。
  3. 前記ワーク支持部は、それぞれが前記搬送路の延在方向に対して所定角度傾斜した複数の支持部材を、前記搬送路の延在方向に相互に離間して配置することで形成された第1支持部と、それぞれが前記第1支持部を構成する前記支持部材とは反対方向に傾斜した複数の支持部材を、前記搬送路の延在方向に相互に離間して配置することで形成された第2支持部と、を備える請求項1に記載の熱処理装置。
  4. 前記支持部材が、アルミナ、窒化ケイ素、ジルコニアまたは石英ガラス製の棒材からなる請求項1〜3の何れか一項に記載の熱処理装置。
  5. 前記支持部材が100〜300℃に加熱可能に構成されている請求項1〜4の何れか一項に記載の熱処理装置。
  6. 前記搬送路に導入されたワークを、前記冷却処理の開始位置まで強制的に搬送する搬送機構をさらに備える請求項1〜5の何れか一項に記載の熱処理装置。
  7. 前記搬送機構のうち、ワークとの接触部がアルミナ、窒化ケイ素、ジルコニアまたは石英ガラスで形成されている請求項6に記載の熱処理装置。
  8. 前記搬送機構のうち、ワークとの接触部が100〜300℃に加熱可能に構成されている請求項6又は7に記載の熱処理装置。
  9. ワークが環状のワークであり、
    前記冷却部は、冷却液を貯留した冷却液貯留槽と、ワークが前記冷却液に浸漬されるのに伴ってワークの外周面又は内周面を拘束可能な拘束型と、を備える請求項1〜8の何れか一項に記載の熱処理装置。
  10. 前記冷却部は、ワークおよび前記拘束型を前記冷却液中でワークの軸線回りに回転させる回転機構と、前記冷却液を撹拌させる撹拌機構の少なくとも一方を備える請求項9に記載の熱処理装置。
  11. 室内雰囲気を酸化性雰囲気から非酸化性ガス雰囲気に置換可能な密閉室をさらに備え、
    室内雰囲気が前記非酸化性ガス雰囲気に置換された前記密閉室内で前記加熱部による加熱処理が実施された後、前記冷却処理として、前記密閉室の開口部を閉口する前記冷却液にワークを浸漬させる処理が実施される請求項9又は10に記載の熱処理装置。
  12. ワークの要焼入領域を狙い温度に誘導加熱する加熱処理が実施される加熱工程と、該加熱工程で加熱されたワークの要焼入領域を冷却して焼入れする冷却処理が実施される冷却工程と、前記加熱工程で加熱されたワークを横方向に延びる搬送路に沿って前記冷却処理の開始位置に向けて搬送する搬送工程と、を備えた熱処理方法であって、
    前記搬送工程では、ワークを下方側から線接触支持することを特徴とする熱処理方法。
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