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JP2019172745A - プロピレン系樹脂組成物からなる中空成形体 - Google Patents

プロピレン系樹脂組成物からなる中空成形体 Download PDF

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JP2019172745A
JP2019172745A JP2018060130A JP2018060130A JP2019172745A JP 2019172745 A JP2019172745 A JP 2019172745A JP 2018060130 A JP2018060130 A JP 2018060130A JP 2018060130 A JP2018060130 A JP 2018060130A JP 2019172745 A JP2019172745 A JP 2019172745A
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杉山 武史
Takeshi Sugiyama
武史 杉山
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Kaneka Corp
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Kaneka Corp
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Abstract

【課題】プロピレン系樹脂組成物からなりドローダウンや偏肉が抑えられた良好な中空成形体を提供すること。【解決手段】(A)エチレン−α−オレフィンラバーを含むプロピレン系樹脂50〜95重量%と(B)改質プロピレン系樹脂5〜50質量%[ただし(A)と(B)を合計100重量%とする]を含み、下記1)及び2)を満たすプロピレン系樹脂組成物からなる中空成形体。1)測定温度230℃、引取り速度1m/分の条件で測定された溶融張力が2.5cN以上である。2)示差走査熱量測定(DSC測定)により得られた結晶化温度が125℃以上である。【選択図】なし

Description

本発明はプロピレン系樹脂組成物からなる中空成形体に関する。
従来、ポリプロピレンは、安価で物理的特性に優れていることから、中空成形体に広く利用されている。近年、中空成形体は、意匠性や使用範囲の拡大により、より複雑な形状が求めれているが、ポリプロピレンは溶融時の張力が小さいため、パリソンのドローダウンが大きく、得られる中空成形体が偏肉し易い等加工性が低いという欠点があった。
近年、これらの問題を改善するために、例えば特許文献1にはポリプロピレンに特定のポリエチレンを添加する方法が開示されているが、十分に満足するレベルには達していない。また、一方でポリプロピレンの溶融張力を高める取り組みが行われており、例えば特許文献2には、プロピレン系樹脂とイソプレン単量体およびラジカル重合開始剤を溶融混練して得られた改質プロピレン系樹脂からなる中空成形体が開示されてる。しかし、開示されている改質プロピレン系樹脂を単独で使用する場合、溶融張力は高い反面伸びが抑制される傾向にある。そのため、成形機のトルクが高くなりやすくなったり、特に大型中空成形において圧力空気等による膨張時(ブローアップ)に伸びにくく穴が空いてしまう懸念がある。また、特許文献3には特定の長鎖分岐構造を有するプロピレン系重合体を含むポリプロピレン系ブロー成形体が開示されている。しかし、開示されている改質プロピレン系樹脂を含むポリプロピレン系ブロー成形体の結晶化温度には言及されていない。
特開2002−187997号公報 特開平11−170343号公報 特開2009−299017号公報
プロピレン系樹脂組成物からなりドローダウンや偏肉が抑えられた良好な中空成形体を提供すること。
本発明者は、前記課題を達成するために種々検討を行い、特定のエチレン−α−オレフィンラバーを含むポリプロピレン系樹脂と、特定の改質ポリプロピレン系樹脂を含む組成物からなる中空成形体が前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の構成からなる。
(1)(A)エチレン−α−オレフィンラバーを含むプロピレン系樹脂50〜95重量%と(B)改質プロピレン系樹脂5〜50重量%〔ただし(A)と(B)を合計100重量%とする〕を含み下記1)および2)を満たすプロピレン系樹脂組成物からなる中空成形体。
1)測定温度230℃、引取り速度1m/分の条件で測定された溶融張力が2.5cN以上である。
2)示差走査熱量測定(DSC測定)により得られた結晶化温度が125℃以上である。
(2)(B)改質プロピレン系樹脂が(a)プロピレン系樹脂と(b)イソプレン単量体と(c)ラジカル重合開始剤とを溶融混練して得たことを特徴とする前記(1)記載の中空成形体。
(3)230℃、2.16kgで測定した(B)改質プロピレン系樹脂のMFRが0.3g/10分以上2.0g/10分以下であることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の中空成形体。
(4)230℃、2.16kgで測定した(A)エチレン−α−オレフィンラバーを含むプロピレン系樹脂のMFRが0.3g/10分以上5.0g/10分以下であることを特徴とする前記(1)に記載の中空成形体。
本発明の目的はドローダウンや偏肉が抑えられた良好なプロピレン系樹脂組成物からなる中空成形体を提供することができる。
<(A)エチレン−α−オレフィンラバーを含むプロピレン系樹脂の組成>
一般的にプロピレン系樹脂としては、プロピレンの単独重合体、プロピレンと他の単量体とのブロック共重合体、またはプロピレンと他の単量体とのランダム共重合体などが挙げられる。本発明においてはその中でもエチレン−α−オレフィンラバーを含むプロピレン系樹脂(ブロック共重合体)が好ましく用いられる。ただし、前記ブロック共重合体の特性を損なわない範囲で、プロピレンの単独共重合体やランダム共重合体を混合してもよい。
(A)エチレン−α−オレフィンラバーを含むプロピレン系樹脂は、プロピレン系樹脂の特徴である高い耐熱性、耐薬品性、剛性を保持する点から、含有されるプロピレン単量体成分が全体の75重量%以上であることが好ましく、全体の85重量%以上であることがさらに好ましい。
<エチレン−α−オレフィンラバー>
(A)エチレン−α−オレフィンラバーを含むプロピレン系樹脂に含まれるエチレン−α−オレフィンラバーとしては特に限定されるものではないが、エチレン、α−オレフィン、環状オレフィン、ジエン系単量体およびビニル単量体よりなる単量体の群から選ばれた1種または2種以上の単量体があげられる。これらの単量体の好ましい具体例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3,4−ジメチル−1−ブテン、1−ヘプテン、3−メチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセンなどの炭素数2または3〜12のα−オレフィンなどが挙げられる。
<(A)エチレン−α−オレフィンラバーを含むプロピレン系樹脂のMFR>
(A)エチレン−α−オレフィンラバーを含むプロピレン系樹脂の230℃、2.16kgの条件で測定したMFRは、0.3(g/10分)以上5.0(g/10分)以下が好ましく、0.3(g/10分)以上3.0(g/10分)以下がより好ましく、0.3(g/10分)以上1.0(g/10分)以下がより好ましい。(A)エチレン−α−オレフィンラバーを含むプロピレン系樹脂のMFRが0.3より小さいと、溶融粘度が高くなり過ぎて成形機のトルクが大きくなりやすいことから成形性が悪化する傾向にある。一方、MFRが5.0(g/10分)を超える場合、溶融粘度が低いためドローダウンが大きくなりすぎる傾向にある。
<(B)改質プロピレン系樹脂>
本発明における(B)改質プロピレン系樹脂は、(a)プロピレン系樹脂に(b)共役ジエン化合物と(c)ラジカル重合開始剤を配合し溶融混練して得られる樹脂が好ましい。以下、詳細に説明する。
(a)プロピレン系樹脂としては、プロピレンの単独重合体、プロピレンと他の単量体とのブロック共重合体、またはプロピレンと他の単量体とのランダム共重合体などの重合体があげられる。その重合体は、結晶性を有する重合体であることが好ましい。うち、剛性が高く、安価である観点からは、プロピレン単独重合体が好ましく、また、剛性および耐衝撃性がともに高い観点からは、プロピレンと他の単量体とのブロック共重合体であることが好ましく、さらには透明性が高い観点からは、プロピレンと他の単量体とのランダム共重合体が好ましい。さらには、これらの特性を調整するために、前記以外のプロピレン単独重合体、ブロック共重合体、ランダム共重合体を混合してもよい。
<(a)が共重合体の場合>
(a)プロピレン系樹脂が、プロピレンと他の単量体とのブロック共重合体またはプロピレンと他の単量体とのランダム共重合体である場合、プロピレン系樹脂の特徴である高い耐熱性、耐薬品性、剛性を保持する点から、含有されるプロピレン単量体成分が全体の75重量%以上であることが好ましく、全体の90重量%以上であることがさらに好ましい。
<(a)中の他の単量体>
また、前記プロピレンと共重合しうる他の単量体としては、エチレン、α−オレフィン、環状オレフィン、ジエン系単量体およびビニル単量体よりなる単量体の群から選ばれた1種または2種以上の単量体があげられる。これらの単量体の好ましい具体例としては、エチレン、1−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3,4−ジメチル−1−ブテン、1−ヘプテン、3−メチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセンなどの炭素数2または4〜12のα−オレフィン、シクロペンテン、ノルボルネン、テトラシクロ[6,2,11,8,13,6]−4−ドデセンなどの環状オレフィン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、メチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエンなどのジエン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、無水マレイン酸、スチレン、メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼンなどのビニル単量体などをあげることができる。
(b)共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ヘプタジエン、2,3−ジメチルブタジエン、2,5−ジメチル−2,4−ヘキサジエンなどが好ましい具体例としてあげられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中では、ブタジエン、イソプレンが安価であることから好ましく、さらにはイソプレンが取り扱いやすく、反応が均一に進みやすい点から、特に好ましい。
<(b)と共重合可能な他の単量体>
本発明の効果を著しく阻害しない限りにおいて、前記共役ジエン化合物と共重合可能な単量体の1種また2種以上を併用してもよい。具体例として、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸ビニル、スチレン、ジビニルベンゼン、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸金属塩、メタクリル酸金属塩、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリルなどのアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリルなどのメタクリル酸エステルなどがあげられる。
(c)ラジカル重合開始剤としては、一般に過酸化物、アゾ化合物などが挙げられるが、プロピレン系樹脂や前記共役ジエン化合物からの水素引き抜き能を有するものが好ましく、一般にケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシエステルなどの有機過酸化物が挙げられる。これらのうち、特に水素引き抜き能が高いものが好ましく、具体例として1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n−ブチル4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタンなどのパーオキシケタール、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、α,α'−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3−ヘキシンなどのジアルキルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシオクテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシ3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレートなどのパーオキシエステルなどが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
共役ジエン化合物の添加量としては、(a)プロピレン系樹脂100重量部に対して、0.01重量部以上20重量部以下が好ましく、0.05重量部以上5重量部以下がさらに好ましい。共役ジエン化合物の添加量が0.01重量部未満では改質の効果が得られにくい場合があり、また、20重量部を超える添加量においては、効果が飽和してしまい、経済的でない場合がある。
ラジカル重合開始剤の添加量としては、(a)プロピレン系樹脂100重量部に対して、0.01重量部以上10重量部以下が好ましく、0.05重量部以上4重量部以下がさらに好ましい。ラジカル重合開始剤の添加量が0.01重量部未満では改質の効果が得られにくい場合があり、また、10重量部を超える添加量では、(a)プロピレン系樹脂の分解反応が極度に進行する場合がある。
<(B)改質プロピレン系樹脂の製造方法>
(B)改質プロピレン系樹脂を製造するため、(a)プロピレン系樹脂、(b)共役ジエン化合物、(c)ラジカル重合開始剤を溶融混練するための装置には特段の制限はない。使用できる装置の具体例として、ロール、コニーダー、バンバリーミキサー、ブラベンダー、単軸押出機、2軸押出機などの混練機、2軸表面更新機、2軸多円板装置などの横型撹拌機、ダブルヘリカルリボン撹拌機などの縦型撹拌機、などが挙げられる。これらのうち、混練機を使用することが好ましく、特に押出機が生産性の点から好ましい。(a)プロピレン系樹脂、(b)共役ジエン化合物、(c)ラジカル重合開始剤を溶融混練する際、それらを添加する順序、方法にも特段の制限はない。(a)プロピレン系樹脂、(b)共役ジエン化合物、(c)ラジカル重合開始剤を混合したのち一括して溶融混練してもよいし、これらの一部を混合したのち溶融混練し、残りの原料を添加してさらに溶融混練してもよい。さらに、溶融状態とした(a)プロピレン系樹脂に、(b)共役ジエン化合物/(c)ラジカル重合開始剤を同時に、あるいは、別々に、一括してあるいは分割して添加し、溶融混練してもよい。ただし、溶融状態の(a)プロピレン系樹脂に対し、ラジカル重合開始剤のみが添加された状態で長時間混練することは、前記した分解反応が極度に進行する場合があるため避けることが好ましい。
溶融混練時の温度は、使用する(a)プロピレン系樹脂が十分溶融し、かつ熱分解しないという観点から選定すればよい。また、温度を高めることで反応は短時間に進行するが、高くしすぎると、反応が均一でなくなる場合があるため好ましくない。一般に130℃以上300℃以下、より好ましくは160℃以上250℃以下である。また、溶融混練の時間は、反応が完了するのに十分な程度とすればよく、一般に1〜60分である。
また、溶融混練中に、未反応のまま残った(b)共役ジエン化合物や(c)ラジカル重合開始剤の反応残渣等をベント等により樹脂から除去する方法は本発明においても好ましく用いられる。
このようにして得られる(B)改質プロピレン系樹脂の形状、大きさに特段の制限はなく、一般には後工程でのハンドリング性の観点からペレット状、フレーク状などの粒状物とされる。さらに、得られた(B)改質プロピレン系樹脂は、未反応のまま残った共役ジエン化合物やラジカル重合開始剤の反応残渣等を除く等の目的で、溶融しない程度の温度で加熱処理を行ったり、再度溶融混練を行ってもよい。
<(B)改質プロピレン系樹脂のMFR>
本発明で用いる(B)改質プロピレン系樹脂の230℃、2.16kgの条件で測定したMFRは0.3(g/10分)以上2.0(g/10分)以下が好ましく、0.3(g/10分)以上1.0(g/10分)以下がより好ましく、0.3(g/10分)以上0.5(g/10分)以下がさらに好ましい。MFRが0.3より小さいと、均一な混合状態が得られにくくなったり、成形機のトルクが大きくなったりする傾向にある。一方、MFRが2.0(g/10分)を超える場合、本発明の特徴である(B)改質プロピレン系樹脂の添加により得られるドローダウン抑制や偏肉抑制効果が小さい傾向にある。
<(B)改質プロピレン系樹脂の溶融張力>
本発明における改質プロピレン系樹脂は良好な溶融張力を有している。溶融張力とは、溶融張力測定用アタッチメントを付けたキャピログラフ(東洋精機製作所製)を使用して、230℃φ1mm、長さ10mmの孔を有するダイスから、ピストン降下速度10mm/分で降下させたストランドを1m/分で引取った時のロードセル付きプーリーの引き取り荷重を言う。、パリソンが自重によりドローダウンしようとした際の抵抗力となるため中空成形に用いる樹脂の溶融張力は高いことが好ましいが、溶融張力が高い場合、溶融時の樹脂の伸びが低下する傾向にある。中空成形においてドローダウンを抑制するために溶融張力は高い事が好ましいが、ブローアップ時は樹脂が伸びることが求められる。したがい、状況にもよるが、溶融張力と伸びのバランスが良い事が求められる。
<(B)改質プロピレン系樹脂の結晶化温度>
本発明における(B)改質プロピレン系樹脂の結晶化温度は、示差走査熱量分析装置(DSC測定装置)を用い樹脂組成物を10℃/minで昇温し230℃、5分間保持し一旦加熱溶融した後、10℃/minで0.0℃まで冷却する際に検出される発熱ピーク頂点の温度をいう。本発明における(B)改質プロピレン系樹脂の結晶化温度は125℃以上であることが好ましく、130℃以上であることがさらに好ましい。
<プロピレン系樹脂組成物>
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、(A)エチレン−α−オレフィンラバーを含むプロピレン系樹脂および(B)改質プロピレン系樹脂を含んでなる樹脂組成物からなる。前記樹脂組成物は、(A)エチレン−α−オレフィンラバーを含むプロピレン系樹脂50〜95重量%、(B)改質プロピレン系樹脂5〜50重量%を含有することが好ましく、(A)エチレン−α−オレフィンラバーを含むプロピレン系樹脂65〜95重量%、(B)改質プロピレン系樹脂5〜35重量%を含有することがより好ましく、(A)エチレン−α−オレフィンラバーを含むプロピレン系樹脂85〜95重量%、(B)改質ポリプロピレン系樹脂5〜15重量%を含有することがさらに好ましい。〔ただし、ここで(A)と(B)を合計100重量%とする。〕
(A)エチレン−α−オレフィンラバーを含むプロピレン系樹脂の配合比率が50重量%未満である場合、成形機のトルクが高くなりやすくなったり、溶融張力は高い反面伸びが抑制されるため、ブローアップ時に伸びにくく穴が空いてしまう懸念がある。一方、(A)エチレン−α−オレフィンラバーを含むプロピレン系樹脂の配合比率が95重量部を超える場合も、本発明の特徴である(B)改質プロピレン系樹脂の添加により得られるドローダウン抑制や偏肉抑制効果が小さい傾向にある。
<プロピレン系樹脂組成物の結晶化温度>
本発明における結晶化温度は、示差走査熱量分析装置(DSC測定装置)を用い樹脂組成物を10℃/minで昇温し230℃、5分間保持し一旦加熱溶融した後、10℃/minで0.0℃まで冷却する際に検出される発熱ピーク頂点の温度をいう。
結晶化温度は、溶融状態の樹脂が冷却されると共に結晶構造を作り出す時に放出される熱量が最大となる温度として知られており、中空成形においては冷却時間に影響を与える。すなわち、結晶化によりその成形体に高い剛性が生まれることから成形機からの取り出しが可能となる。従い、結晶化温度が高いほど冷却時間の短縮につながり生産性が向上する。
本発明におけるプロピレン系樹脂組成物の結晶化温度は125℃以上であることが好ましく、130℃以上であることがより好ましい。結晶化温度が125℃以上であるとブローアップから離型までの時間短縮につながり生産性が向上する。
結晶化温度を125℃以上にする方法としては、結晶核剤を配合することや、結晶化温度が125℃以上であるプロピレン系樹脂を配合することが挙げられるが、本発明における(B)改質プロピレン系樹脂を配合する方法が結晶化温度を125℃以上にすることに加えプロピレン系樹脂組成物の溶融張力を高くすることの両方が達成出来るため好ましい。
<プロピレン系樹脂組成物の溶融張力>
本発明のプロピレ樹脂組成物の230℃、1m/分で引取った時の溶融張力は、2.5cN以上4.7未満であることが好ましく、2.5cN以上4.0cN以下であることがより好ましく、2.5cN以上3.5cN未満がさらに好ましい。溶融張力が2.5cN未満であると特に大型中空成形体ではドローダウンを十分抑制出来なくなる可能性があり、4.7cN以上の場合、溶融張力は高い反面伸びが抑制されるため、ブローアップ時に伸びにくく穴が空いてしまう懸念がある。
<プロピレン系樹脂組成物の製造方法>
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、(A)エチレン−α−オレフィンラバーを含むプロピレン系樹脂と(B)改質プロピレン系樹脂とを溶融混練させることで製造することが出来る。製造方法としては、特に限定されるものではないが、ロール、コニーダー、バンバリーミキサー、ブラベンダー、単軸押出機、2軸押出機などの混練機、2軸表面更新機、2軸多円板装置などの横型撹拌機、ダブルヘリカルリボン撹拌機などの縦型撹拌機、などが挙げられる。これらのうち、混練機を使用することが好ましく、特に押出機が生産性の点から好ましい。溶融混練時の温度は、使用する(A)エチレン−α−オレフィンラバーを含むプロピレン系樹脂と(B)改質プロピレン系樹脂が十分溶融し、かつ熱分解しないという観点から選定すればよい。一般に130℃以上300℃以下、より好ましくは160℃以上250℃以下である。また、溶融混練の時間は、溶融混練が完了するのに十分な程度とすればよく、一般に1〜60分である。
<樹脂組成物に添加する樹脂、ゴム、添加剤>
本発明の効果を著しく阻害しない限りにおいて、プロピレン系樹脂以外の樹脂、ゴム、添加剤等をプロピレン系樹脂組成物に含ませてもよい。
前記の樹脂またはゴムの具体例としては、たとえばポリエチレン;ポリブテン−1、ポリイソブテン、ポリペンテン−1、ポリメチルペンテン−1などのポリα−オレフィン;プロピレン含有量が75重量%未満のエチレン/プロピレン共重合体、エチレン/ブテン−1共重合体、エチレン/ヘキセン−1共重合体、エチレン−オクテン―1共重合体、プロピレン含有量が75重量%未満のプロピレン/ブテン−1共重合体、プロピレン/ヘキセン−1共重合体、プロピレン/オクテン−1共重合体などのエチレンまたはα−オレフィン/α−オレフィン共重合体;プロピレン含有量が75重量%未満のエチレン/プロピレン/5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体などのエチレンまたはα−オレフィン/α−オレフィン/ジエン系単量体共重合体;エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/アクリル酸共重合体、エチレン/メタクリル酸共重合体、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、エチレン/アクリル酸ブチル共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体、エチレン/無水マレイン酸共重合体、エチレン/アクリル酸金属塩共重合体、エチレン/メタクリル酸金属塩共重合体、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体などのエチレン/ビニル単量体共重合体;ポリブタジエン、ポリイソプレンなどのポリジエン系共重合体;スチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体、スチレン/イソプレン/スチレンブロック共重合体、などのビニル単量体/ジエン系単量体/ビニル単量体ブロック共重合体、もしくはその水添物;スチレン/イソブチレン/スチレンブロック共重合体;アクリロニトリル/ブタジエン/スチレングラフト共重合体、メタクリル酸メチル/ブタジエン/スチレングラフト共重合体などのビニル単量体/ジエン系単量体/ビニル単量体グラフト共重合体;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレンなどのビニル重合体;塩化ビニル/アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、アクリロニトリル/スチレン共重合体、メタクリル酸メチル/スチレン共重合体などのビニル系共重合体などがあげられる。
本発明のプロピレン系樹脂組成物に対するこれら他の樹脂またはゴムの添加量は、この樹脂の種類またはゴムの種類により異なるが、通常、プロピレン系樹脂組成物全重量の25重量%程度以下であることが好ましい。
前記の添加剤として、プロピレン系樹脂組成物において汎用される具体例として、プロピレン系樹脂の加工または環境への長期暴露における劣化を抑制するためのヒンダードフェノール系安定剤、リン系安定剤、ヒンダードアミン系安定剤、チオエステル系安定剤、ベンゾトリアゾール系安定剤などの安定剤;難燃性を高めるためのハロゲン化合物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、リン酸塩、アンチモン化合物などの難燃剤;剛性を高めるためのタルク、ガラス繊維、カーボン繊維、カーボンブラック、炭酸カルシウム、クレー、マイカ、カオリン、酸化チタンなどの無機充填剤;透明性、もしくは剛性を高めるためのソルビトール系造核剤、安息香酸塩、有機リン酸塩などの造核剤;ステアリン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド、N、N’−エチレンビスステアリン酸アミドなどの滑剤;ブロッキング防止剤;帯電防止剤;蛍光増白剤;抗菌剤;顔料;染料;発泡剤などがあげられ、本発明においても好ましく用いられる。
これら添加剤のプロピレン系樹脂組成物への添加量は目的や添加剤の種類によって大きく異なるが、通常プロピレン系樹脂組成物全重量の50重量%程度以下である。なお、これら添加剤はそのまま、もしくはマスターバッチとして添加される。
なお、以上説明した、本発明で使用できるプロピレン系樹脂以外の樹脂、ゴム、添加剤等は、プロピレン系樹脂組成物を作製する際のみならず、あらかじめ(A)エチレン−α−オレフィンラバーを含むプロピレン系樹脂、(B)改質ポリプロピレン系樹脂に含ませておいてもよい。
<プロピレン系樹脂組成物からなる中空成形体>
プロピレン樹脂組成物から中空体を製造する方法としては、特に制限はないが、押出ブロー成形、射出ブロー成形、射出・押出ブロー成形、シートブロー成形、コールドパリソン成形などが挙げられる。これらの内、生産性の点から押出ブロー成形または射出ブロー成形が好ましい。
<成形品の用途>
また、このようにして得られる中空成形品は、均一厚みの中空成形体となることから食品容器、自動車部品、建材、家電部品等、広範な用途に置いて好適に用いることができる。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明は、これらにより何ら制限されるものではない。
実施例および比較例において、各種の評価に用いられた試験法は、次の通りである。
<メルトフローレート MFR>
MFRは、No120−FWPメルトフローインデックステスター(安田精機製作所製)を用い、JIS K7210−1(2014)記載に準拠してA法とし、230℃、2.16kg荷重で測定した。
<結晶化温度測定>
上記した方法にて測定した。
<溶融張力>
上記した方法にて測定した。
<中空成形体の成形>
シリンダー温度190℃、ダイス温度190℃に設定したKT4A−80(株式会社KTK製)に投入し、直径100mmの円筒形パリソンを成形し、直方体金型(設定寸法 縦200mm×横200mm×高さ600mm)を用いて成形した。
<ドローダウン評価>
上記した中空成形にてパリソン重量1500gとなるよう樹脂吐出条件を調整した。該条件にて中空成形を行い、得られた成形体重量を評価した。成形体重量が1500gに近いほどパリソンのドローダウンが抑制されていることを示している。
<偏肉評価>
成形した直方体の底面から高さ200mmの周方向において、面の中間部分の厚みとその水平に沿った両端部(中間部分から両側にそれぞれ100mm離れた位置)の厚みを測定し、面の厚みに対して両端部厚みが減少した割合を算出し、以下の基準で評価した。
○:減少率が25%未満
△:減少率が25%以上50%未満
×:減少率が50%以上
次に、実施例、比較例で使用した樹脂について説明する。
(A)エチレン−α−オレフィンラバーを含むプロピレン系樹脂
(A−1):プライムポリマー社製プロピレン−エチレンブロック共重合体、E701G、MFR=0.5g/10分(230℃、2.16kg)、結晶化温度114℃
(B)改質ポリプロピレン系樹脂
(B−1):プロピレン系樹脂としてMFR=0.9g/10分(230℃、2.16kg)のプロピレン単独重合体100重量部と、ラジカル重合開始剤としてt−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート0.4重量部の混合物を、ホッパーから70kg/時で46mmφ二軸押出機(L/D=40)に供給してシリンダ温度200℃、回転数230rpmで溶融混練し、途中に設けた圧入部より共役ジエン化合物としてイソプレンモノマーを、定量ポンプを用い、プロピレン単独重合体100重量部に対して0.4重量部供給し、前記ニ軸押出機中で溶融混練し、押し出されたストランドを水冷、細断することにより得た改質プロピレン系樹脂。得られた改質プロピレン系樹脂のMFRは0.5g/10分(230℃、2.16kg)、溶融張力は4.7cN、結晶化温度は130℃であった。
(B−2):日本ポリプロ製WAYMAX EX8000 MFR=1.5g/10分(230℃、2.16kg)、溶融張力は3.5cN、結晶化温度124℃。
(実施例1)
(A)エチレン−α−オレフィンラバーを含むプロピレン系樹脂として(A−1)を90重量%、(B)改質プロピレン系樹脂として(B−1)を10重量%を配合したものをシリンダー温度190℃、ダイス温度190℃に設定したKT4A−80(株式会社KTK製)に投入し、パリソン重量1500gとして中空成形を実施した。得られた中空成形体を用いて、結晶化温度、溶融張力、成形体重量、偏肉を評価した。評価結果を表1に示した。
(実施例2)
(B−1)の配合量を15重量%とした以外は実施例1と同様に行った。評価結果を表1に示した。
(比較例1)
(A−1)のみを用いて実施したこと以外は実施例1と同様に行った。評価結果を表1に示した。
(比較例2)
(B)改質プロピレン系樹脂(B−2)としたこと以外は実施例2と同様に行った。評価結果を表1に示した。
Figure 2019172745
表1から、実施例1および2で得られた中空成形体はドローダウンが抑制され偏肉も少ない良好な成形体となった。比較例1はドローダウンと偏肉が大きい。比較例2は比較例1と対比してドローダウンと偏肉は抑制されているが十分ではない。

Claims (4)

  1. (A)エチレン−α−オレフィンラバーを含むプロピレン系樹脂50〜95重量%と(B)改質プロピレン系樹脂5〜50重量%〔ただし(A)と(B)を合計100重量%とする〕を含み下記1)および2)を満たすプロピレン系樹脂組成物からなる中空成形体。
    1)測定温度230℃、引取り速度1m/分の条件で測定された溶融張力が2.5cN以上である。
    2)示差走査熱量測定(DSC測定)により得られた結晶化温度が125℃以上である。
  2. (B)改質プロピレン系樹脂が(a)プロピレン系樹脂と(b)イソプレン単量体と(c)ラジカル重合開始剤とを溶融混練して得たことを特徴とする請求項1記載の中空成形体。
  3. 230℃、2.16kgで測定した(B)改質プロピレン系樹脂のMFRが0.3g/10分以上2.0g/10分以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の中空成形体。
  4. 230℃、2.16kgで測定した(A)エチレン−α−オレフィンラバーを含むプロピレン系樹脂のMFRが0.3g/10分以上5.0g/10分以下であることを特徴とする請求項1に記載の中空成形体。
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