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JP2019034905A - デヒドロ酢酸含有経皮吸収製剤 - Google Patents

デヒドロ酢酸含有経皮吸収製剤 Download PDF

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JP2019034905A JP2017157682A JP2017157682A JP2019034905A JP 2019034905 A JP2019034905 A JP 2019034905A JP 2017157682 A JP2017157682 A JP 2017157682A JP 2017157682 A JP2017157682 A JP 2017157682A JP 2019034905 A JP2019034905 A JP 2019034905A
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英淑 権
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裕史 山下
融融 蒋
Rongrong Jiang
融融 蒋
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Fumio Kamiyama
文男 神山
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Abstract

【課題】所期の薬効を発現させるに充分な量の薬物を安定に膏体中に保持しかつ皮膚の刺激を可及的に低減した経皮吸収製剤を提供する。【解決手段】基剤中に塩基性薬物及び安定化剤を含んでなる経皮吸収製剤において、該安定化剤はデヒドロ酢酸又はそのナトリウム塩であることを特徴とする経皮吸収製剤、塩基性薬物はドネペジル、ロチゴチン又はその塩であることが好ましく、さらに吸収促進剤を含むことが好ましい。【選択図】なし

Description

本発明は、皮膚に適用して所要の薬物を生体膜を経て体内循環系へ投与するのに使用される、テープ剤、パッチ剤(薬物を含むリザーバー層と貼付層が積層された剤型のものをいう)、パップ剤、クリーム剤、リニメント剤、軟膏剤などの経皮吸収製剤に関するものである。
一般に薬物の経口投与の場合には、胃または腸内のpH値、内容物の有無などの状態によって薬物の吸収性が左右されるため、薬物の吸収量を常に一定に保つことは困難であり、また一定量の薬物を長期間かけて徐々に投与することも難しい。経口投与においては、吸収量が一定しないために時として急激な血中濃度の上昇により副作用が生じることがあり、また半減期の短い薬物においては有効血中濃度の持続時間が短くなり、充分な薬効が長く保持できないことがある。更には、注射投与では投与時の苦痛や、投与方法の不便さといった問題がある。
そこで、これらの問題を解決するために、一定した有効血中濃度を長時間にわたって維持でき、しかも簡便性、機能性などの向上が期待できるなどの理由により、経皮吸収製剤の開発が積極的に推進されている。この種の経皮吸収製剤は、本来異物の体内への侵入を防ぐバリア機能を有する皮膚の角質層を経由して薬物を体内循環系へ投与するものであるため、所期の薬効を発現させるに充分な量の薬物を投与するのは必ずしも容易でなく、通常、基剤に吸収促進剤を加えて薬物の透過性を高めたり、貼付面積を大きくするなどの方策がとられている。
経皮吸収製剤が貼付剤である場合、これが貼付中に皮膚を刺激するという副作用を有しているため、その貼付面積は可能な限り小さい方が好ましい。このような副作用を低減させるためには、吸収促進剤の添加により薬物の皮膚透過性を向上させることにより、貼付剤の貼付面積を縮小化することが望まれる。そのため特定の化合物を製剤に添加し薬物の経皮吸収を促進するための吸収促進剤に関して多くの提案がなされてきた(例えば、特許文献1、2)。また薬物自身が安定性に劣る物質の場合、保存時の分解を防ぐための安定化剤に関しても多くの検討がなされてきた(例えば、特許文献3)。
特表平10−507199号公報(特許第3228341号) 国際公開第2011/049038号(特許第5913981号) 特開平3−261722号公報(特許第3002493号)
安定化剤及び吸収促進剤は、粘着剤層中の薬物の安定性を向上させ、薬物の放出性と薬物の経皮吸収性のいずれかあるいは両方を向上させる作用を果たす。ただし、粘着性基剤に吸収促進剤を添加した結果、粘着性が低下したり皮膚刺激性が高くなったりしてはならない。したがって、吸収促進剤としては、対象となる薬物、配合される粘着性基剤などを勘案して、最適のものを選定する必要がある。
また、安定化剤及び吸収促進剤は、経皮吸収製剤を皮膚に貼付している期間中、皮膚に対して作用するものであるから、皮膚刺激を有するものであってはならない。現在までに多くの安定化剤が使用されてきた。代表的な安定化剤は、BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)、トコフェロール、ビタミンC及びその誘導体、ヒドロキノン、等の酸化防止剤である。経皮吸収促進剤としては、1−ドデシルシクロヘプタン−2−オン、ピロチオデカン、オレイルアルコール、ラウリン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリン酸メタノールアミド、1−メチル−2−ピロリドン、ミリスチン酸イソプロピル、等が知られている。しかし、上記従来技術の経皮吸収製剤において使用されている吸収促進剤は、いずれも、経皮吸収促進効果はある程度認められるが、皮膚刺激が強い、あるいは皮膚刺激は弱いが吸収促進効果が低い、という難点を有している。本発明の目的は、上記の如き実情に鑑み、所期の薬効を発現させるに充分な量の薬物を安定に膏体中に保持しかつ皮膚の刺激を可及的に低減した経皮吸収製剤を提供することにある。
本発明者らは、新規安定化剤、吸収促進剤開発の検討を鋭意進める中で、デヒドロ酢酸又はそのナトリウム塩が多くの薬物の安定化及び経皮吸収促進に優れかつ皮膚刺激性も低いことを見出し、本発明を完成させるに至った。
デヒドロ酢酸又はそのナトリウム塩は、防かび剤や殺菌剤としてよく知られており、化粧品、食品に古くから使用されてきた安全性データも多い物質である。しかしながら、本物質を経皮吸収製剤に添加することにより薬物に対する安定性付与の性質を有し、かつ、経皮吸収促進能が極めて優れていることは全く知られていなかった。
本発明は、以下に示す通りである。
〔1〕 基剤中に塩基性薬物及び安定化剤を含んでなる経皮吸収製剤において、該安定化剤はデヒドロ酢酸又はそのナトリウム塩であることを特徴とする経皮吸収製剤。
〔2〕 塩基性薬物がドネペジル、ロチゴチン又はその塩である〔1〕に記載の経皮吸収製剤。
〔3〕 塩基性薬物がドネペジル又はその塩であり、さらに吸収促進剤を含む〔1〕に記載の経皮吸収製剤。
〔4〕 塩基性薬物がドネペジル又はその塩であり、基剤がゴム系粘着剤であり、さらに吸収促進剤を含む〔1〕に記載の経皮吸収製剤。
〔5〕 吸収促進剤がトリアセチンである〔3〕又は〔4〕に記載の経皮吸収製剤。
本発明の経皮吸収製剤に含まれる安定化剤であるデヒドロ酢酸は、酸性化合物である。薬物が塩基性の化合物である場合、デヒドロ酢酸と相互作用して安定化し、分解を抑制するものと考えられる。また、デヒドロ酢酸は、薬物の吸収促進剤としても作用する。さらに、デヒドロ酢酸と既に知られている吸収促進剤との組合せを用いることにより、単位面積及び単位時間当たりの薬物の放出量及び皮膚内部への薬物の移行性が極めて向上せられる。こうした吸収促進剤として、トリアセチン、乳酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩及びラウリン酸ジエタノールアミドなどがある。これら化合物をそれぞれ単独で用いる場合には得られない優れた薬物吸収促進効果が得られる。これは、上記吸収促進剤が基剤の物性を変えると共に、皮膚内に浸透して角質層のバリア機能を減退させるためであると考えられる。その結果、基剤と皮膚の間の薬物の分配係数が変化し、あるいは、皮膚中における薬物の拡散速度が高められ、薬物の放出量が向上すると共に、所要量の薬物が容易に皮膚を透過して体内循環系に吸収される。
そのため、テープ剤の場合、従来の薬物含有経皮吸収製剤と比較して、同一面積の従来品よりも有効投与量の大きな経皮吸収製剤が得られる。換言すれば、従来品より小さい面積の経皮吸収製剤で従来品と同一の効果が得られる。
したがって、皮膚刺激に敏感な人においても紅斑を生じることが回避されるか、または紅斑の面積が縮小される。そして製剤の面積が小さくてすむため、貼付操作が容易である上に、貼付による違和感もない。
薬物安定性試験で測定したHPLCのクロマトグラムの一例を示す。60℃4週間保存のドネペジルパッチの抽出液(左);DNがドネペジルのピーク。60℃4週間保存のブランクパッチの抽出液(右)。
デヒドロ酢酸又はそのナトリウム塩は、単独で使用されてもよいし、すでに知られている吸収促進剤と併用されてもよい。デヒドロ酢酸又はそのナトリウム塩の添加量は、好ましくは基剤中に0.1〜20重量%であり、更に好ましくは0.5〜10重量%である。基剤中の添加量が0.1重量%未満では薬物への吸収促進効果が弱く、また20重量%を超えると皮膚刺激性に問題を生じがちである。
併用可能な吸収促進剤としては、1−ドデシルシクロヘプタン−2−オン、ピロチオデカン、オレイルアルコール、オレイン酸、ラウリン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリン酸メタノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド、1−メチル−2−ピロリドン、ミリスチン酸イソプロピル、トリアセチン、乳酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ジイソプロパノールアミン、などがあげられる。塩基性薬物の吸収促進のためには、トリアセチン、ジイソプロパノールアミンなどが好ましい。
上記基剤中に含まれる薬物、吸収促進剤の添加量は、軟膏剤、クリーム剤、リニメント剤では製剤自体に対する添加量に相当し、テープ剤やパップ剤では製剤から支持体や剥離紙を除いた部分、すなわち、粘着性基剤の部分に対する添加量に相当し、パッチ剤ではリザーバー層及び/または粘着剤層に含ませる基剤に対する添加量に相当する。
本発明で使用される経皮吸収製剤の基剤はテープ剤やパップ剤の場合には粘着性基剤であって、軟膏剤、クリーム剤、パッチ剤及びリニメント剤の場合には非粘着性基剤である。
上記粘着性基剤としては薬物を溶解することができ、かつ、常温で皮膚ないし粘膜に対し長時間固着し得る感圧接着性を有する一般的な粘着剤組成からなるものであれば、特に限定されない。好ましい粘着性基剤としては、アクリル系粘着剤からなる基剤、ゴム系粘着剤からなる基剤、シリコーン系粘着剤からなる基剤などが例示される。
アクリル系粘着基剤に使用されるアクリル系粘着剤としては、炭素数1〜18、特に好ましくは4〜18の脂肪族アルコールと(メタ)アクリル酸とから得られるアルキル(メタ)アクリレートの単独重合体、共重合体及びアルキル(メタ)アクリレートとその他の官能性モノマーとの共重合体が例示される。
官能性モノマーの例としては、水酸基を有するモノマー、カルボキシル基を有するモノマー、アミド基を有するモノマー、アミノ基を有するモノマー、等がありまた共重合性モノマーとしては、たとえば酢酸ビニル、スチレン、α−メチルスチレン、塩化ビニル、アクリロニトリル、エチレン、プロピレン、ブタジエンなども使用できる。粘着剤中にはアルキル(メタ)アクリレートが(共)重合成分として50重量%以上含有されることが好ましい。
アクリル系粘着剤を調製するには、通常、重合開始剤の存在下に所要のモノマーの溶液重合を行う。ただし、重合形態はこれに限定されない。また重合反応条件は主としてモノマーの種類により適宜選定される。
ゴム系粘着基剤に使用されるゴム系粘着剤としては、天然ゴム、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−オレフィン−スチレンブロック共重合体、ポリイソプレン、ポリブテン、ポリイソブチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのゴム弾性体100重量部に、たとえばロジン系樹脂、ポリテルペン樹脂、クマロン−インデン樹脂、石油系樹脂、テルペン−フェノール樹脂などの粘着性付与剤を20〜200重量部及び必要に応じて、液状ポリブテン、鉱油、ラノリン、液状ポリイソプレン、液状ポリアクリレートなどの軟化剤、酸化チタンなどの充填剤、ブチルヒドロキシトルエンなどの老化防止剤などを適量添加してなるものが例示される。
シリコーン系粘着基剤に使用されるシリコーン系粘着剤としては、ポリジメチルシロキサンなどを主成分とするものが例示される。
上記粘着基剤中には、可塑剤、充填剤、老化防止剤などの配合剤が必要に応じて添加されてもよい。
前記非粘着性基剤としては蜜ろう、油脂、ラノリン、白色ワセリン、パラフィン、プラスチベース、高級脂肪酸、高級アルコール、乳化剤、マクロゴール、カルボキシビニルポリマーなどが例示される。
本発明で使用される薬物(生理活性物質)としては、経皮的に生体膜を透過しうるものであればよい。
薬物の例としては、たとえば解熱消炎鎮痛剤、抗てんかん剤、抗精神病剤、抗うつ・抗不安剤、抗パーキンソン病剤、抗そう剤、抗認知症剤、催眠剤、鎮静剤、鎮痙剤、筋弛緩剤、自立神経作用剤、脳循環・代謝改善剤、強心剤、抗狭心症剤、高血圧・不整脈用剤、血管拡張剤、血圧降下剤、昇圧剤、利尿剤、呼吸促進剤、鎮咳去痰剤、気管支拡張剤、喘息・鼻アレルギー治療剤、呼吸器用剤、感冒用剤、制吐剤、制酸剤、抗潰瘍剤、緩下剤、止痢制腸剤、肝臓用剤、膵疾患治療剤、利胆剤、女性ホルモン剤、男性ホルモン剤、視床下部及び下垂体ホルモン剤、排卵誘発剤、尿崩症治療剤、甲状線ホルモン剤、蛋白同化ホルモン剤、抗甲状線剤、カルシウム代謝剤、ステロイド系抗炎症剤、非ステロイド抗炎症剤、消炎酵素剤、抗ヒスタミン剤、抗リウマチ剤、痛風治療剤、血糖降下剤、ビタミン剤、造血剤、止血剤、高脂血症治療剤、抗生物質、抗腫瘍剤、免疫抑制剤、解毒剤、催吐剤、駆虫剤、抗原虫剤、痔治療剤、泌尿生殖器用剤、局所麻酔剤、抗凝血剤などが例示される。
解熱消炎鎮痛剤としては、インドメタシン、サリチル酸、サリチル酸グリコール、アスピリン、アセトアミノフェン、ジクロフェナックナトリウム、イブプロフェン、スリンダック、ナプロキセン、ケトプロフェン、などが例示される。
ステロイド系抗炎症剤としては、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、フルオシノロンアセトニド、フルドロキシコルチド、メチルプレドニゾロン、などが例示される。
血管拡張剤としては、ジルチアゼム、ベラパミル、四硝酸ペンタエリスリトール、ジピリダモール、硝酸イソソルビド、ニフェジピン、ニトログリセリンなどが例示される。
高血圧・不整脈用剤としては、プロパノロール、アテノロール、ピンドロール、硫酸キニジン、アジマリン、塩酸アルプレノロール、酒石酸メトプロロール、ナドロール、マレイン酸チモロール、ジソピラミドなどが例示される。
血圧降下剤としては、塩酸クロニジン、カプトプリル、塩酸ブニトロロールなどが例示される。
鎮咳去痰剤としては、塩酸プロカテロール、硫酸テルブタリン、などが例示される。
抗腫瘍剤としては、5−フルオロウラシル、1−(2−テトラヒドロフリル)−5−フルオロウラシル、マイトマイシンCなどが例示される。
局所麻酔剤としては、ベンゾカイン、プロカイン、リドカイン、テトラカインなどが例示される。
ホルモン剤としては、エストロゲン、エストラジオール、テストステロン、プロゲステロン、プロスタグランジンなどのステロイドホルモン類や、インスリンなどのペプチドホルモン類などが例示される。
喘息・鼻アレルギー治療剤としては、フマル酸ケトチフェン、塩酸アゼラスチン、クロモグリク酸ナトリウムなどが例示される。
抗ヒスタミン剤としては、塩酸シクロヘプタジン、塩酸ジフェンヒドラミン、フェンベンザミン、メキタジンなどが例示される。
抗凝血剤としては、ヘパリンなどが例示される。
鎮痙剤としては、スコポラミン、クロフルペロールなどが例示される。
脳循環・代謝改善剤としては、ビンポセチン、塩酸フルナリジン、塩酸ニカルジピン、フマル酸ブロビンカミン、メシル酸ジヒドロエルゴトキシン、酒石酸イフェンプロジル、塩酸イソクスプリンなどが例示される。
抗うつ・抗不安剤としては、塩酸マプロチリン、エチゾラム、ジアゼパム、ブロマゼパム、塩酸アミトリプチリン、塩酸ミアンセリンなどが例示される。
抗パーキンソン病剤としてはロチゴチンが例示される。
抗認知症剤としては、ドネペジルが例示される。
ビタミンD製剤としては、アルファカルシドール、エルゴカルシフェロールなどが例示される。
血糖降下剤としては、グリベンクラミド、グリクラジドなどが例示される。
抗潰瘍剤としては、リンゴ酸クレボブリド、ファモチジン、臭化グリコピロニウムなどが例示される。
睡眠剤としては、フェノバルビタール、アモバルビタールなどが例示される。
抗生物質としては、テトラサイクリン、クロラムフェニコールなどが例示される。
本発明においては、各種薬物の経皮吸収性を促進することができる。従って、薬物が、塩基性薬物であっても、酸性薬物であっても、本発明の組成物と組み合わせることで、経皮吸収性の優れた製剤を製造することができるが、安定化剤としてデヒドロ酢酸を使用する観点から、塩基性薬物を選択することが望ましい。塩基性薬物とは、アミノ基(1級、2級又は3級)等の塩基性官能基を分子中に有し、化合物として塩基性を示す薬物のことであり、酸性薬物とは、カルボキシ基等の酸性官能基を分子中に有し、化合物として酸性を示す薬物のことである。
塩基性薬物の好適な例として、ドネペジル又はその塩が挙げられる。ドネペジル(2−[(1−ベンジル−4−ピペリジニル)メチル]−5,6−ジメトキシインダン−1−オン)又はその塩は、アセチルコリンエステラーゼ阻害作用を有し、抗アルツハイマー型認知症薬として使用されている。ドネペジルの塩としては、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩などの無機酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩などの有機酸塩などが挙げられ、塩酸塩が好ましい。
塩基性薬物の好適な別の例として、抗パーキンソン病剤のロチゴチン又はその塩が挙げられる。ロチゴチンの塩としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、硝酸塩、リン酸塩、硫酸塩などの無機酸塩、酢酸塩、アスコルビン酸塩、安息香酸塩、桂皮酸塩、クエン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルタミン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩、フタル酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、パモ酸塩、p−トルエンスルホン酸塩などの有機酸塩などが挙げられる。
これらの薬物の添加量は、薬物の種類、経皮吸収製剤の使用目的などにより異なるが、好ましくは0.1〜50重量%である。薬物の基剤に対する飽和溶解度は基剤の組成により変わる。薬物をその飽和溶解度に可能な限り近い濃度で基剤中に相溶させ、結晶析出が起こらないようにすることにより、薬物の高い放出性が得られる。ただし、基剤中に薬物の結晶が析出していても、特に支障はない。薬物または吸収促進剤をカプセル化したり、薬物または吸収促進剤の貯蔵層を設けることも可能である。
本発明で使用される経皮吸収製剤は、テープ剤、パップ剤、パッチ剤、クリーム剤、リニメント剤及び軟膏剤などである。
ただし、前記リザーバー層中の薬物や安定化剤などは、粘着剤層にも含ませてもよい。
上記クリーム剤、軟膏剤及びリニメント剤は、前記非粘着性基剤に、薬物、安定化剤及び必要に応じて加えられる吸収促進剤等の添加剤を均一に混合してなる薬物含有ペースト、スラリーまたは液状物である。
テープ剤は、薬物、安定化剤及び必要に応じて加えられる吸収促進剤等の添加剤を含む前記粘着性基剤が、支持体の片面に設けられたものであり、好ましい粘着性基剤としては皮膚に接着性のよいものである。
上記パップ剤は、薬物、安定化剤、水及び必要に応じて加えられる吸収促進剤等の添加剤を含む前記粘着基剤を支持体の片面に層状に塗布したものであり、好ましい粘着性基剤としては水と親和性のよいものである。粘着性基剤の粘着性が乏しい場合は絆創膏、粘着テープなどで皮膚表面に固定される。
上記パッチ剤は、支持体の片面に非粘着性のリザーバー層及び前記粘着剤からなる粘着剤層が順次積層されて構成されたものであり、リザーバー層に、薬物、安定化剤及び必要に応じて加えられる吸収促進剤等の添加剤を含む前記非粘着性基剤が保持させられたものである。このリザーバー層が粘着剤層を介して皮膚に貼付され、リザーバー層中の薬物が粘着層を通って経皮吸収される。
クリーム剤及び軟膏剤には、脂溶性溶解剤、精製水、水溶性溶解剤、pH調整剤などが添加されてもよい。脂溶性溶解剤としては、流動パラフィン、ミリスチン酸イソプロピル、セバシン酸ジエチルなどが例示され、水溶性溶解剤としては、エタノール、グリセリン、プロピレングリコールなどが例示される。
テープ剤、パップ剤及びパッチ剤の支持体としては、柔軟であるが経皮吸収製剤に自己支持性を付与し、かつ粘着性基剤層中やリザーバー層中の薬物の揮散や移行を防止する役目を果たすものが使用される。支持体の素材としては、酢酸セルロース、エチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート、可塑化酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、ナイロン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、可塑化ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニリデン、アルミニウムなどが例示される。これら素材はたとえば単層のシートないしフィルムや2枚以上の積層体として用いられる。アルミニウム以外の素材は織布や不織布として使用してもよい。支持体としては、皮膚面に対して追従性を有する素材よりなるものが好適に用いられ、特にポリエチレンテレフタレートとエチレン−酢酸ビニル共重合体とのラミネートフィルムが好ましい。支持体の厚みは、好ましくは5〜100μmである。
上記支持体の片面に粘着性基剤層が形成されてテープ剤が構成せられ、また上記支持体の片面にリザーバー層及び粘着剤層が順次積層されてパッチ剤が構成せられる。パッチ剤ではリザーバー層と粘着剤層との間に適当な制御膜が存在してもよい。
テープ剤の調製において、粘着性基剤層を形成するには通常の粘着テープの製造方法が適用できる。その代表例は溶剤塗工法であり、これ以外にもホットメルト塗工法、電子線硬化エマルジョン塗工法などが用いられる。粘着性基剤層を溶剤塗工法で形成するには、たとえば、薬物、安定化剤及び必要に応じて加えられる吸収促進剤等の添加剤を適当な溶媒に溶解ないし分散させ、得られた溶液ないし分散液を支持体の片面に直接塗布・乾燥し、所要厚みの粘着性基剤層を形成する。また、この溶液ないし分散液を保護用の剥離紙上に塗布し、乾燥後に得られた粘着性基剤層を支持体に密着させてもよい。粘着性基剤層の厚みは使用目的により異なるが、好ましくは10〜200μmである。
テープ剤は、使用時までその粘着性基剤層表面を保護するために通常はその貼付面に剥離紙を備えている。パッチ剤は粘着剤層の貼付面に剥離紙を備えている。剥離紙としてはポリエチレンテレフタレートのフィルムをシリコーン処理してなるものがよく用いられるが、剥離紙はこれに限定されない。剥離紙の厚みは1000μm以下、好ましくは30〜200μmである。
パップ剤を製造するには、粘着性基剤、薬物、安定化剤、水及び必要に応じて加えられる吸収促進剤等の添加剤を均一に混合し、得られた薬物含有ペーストを支持体の片面に層状に塗布する。薬物含有ペーストにはさらに、精製水、保湿剤、無機充填剤、粘度調整剤、架橋剤、老化防止剤などのその他の添加剤が添加されもよい。保湿剤としては、グリセリン、プロピレングリコールなどが例示され、無機充填剤としては、カオリン、ベントナイト、亜鉛華、二酸化チタンなどが例示される。
得られた種々の剤形の経皮吸収製剤は、通常は薬物を経皮的ないし経粘膜的に体内循環器系へ投与する目的で、皮膚ないし粘膜の表面に直接貼付または塗布される。さらにこれら経皮吸収製剤は薬物を皮膚ないし粘膜の疾患部の治療を目的として皮膚ないし粘膜に貼付または塗布されることもある。
以下、実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲での種々の変更が可能である。
以下「部」とあるのは「重量部」を意味する。また、結果に示した皮膚移行試験、皮膚刺激性試験及び皮膚透過性試験についての評価法及び測定法は次のとおりである。
実施例1−2、比較例1−5
粘着剤A、B:市販の粘着剤を使用した。ゴム系粘着剤は。原料を調合しトルエンに溶解して調製した。表1に示した所定量(重量部)の粘着剤溶液、安定化剤、吸収促進剤、及びドネペジル(日本バルク薬品(株))を混合し溶解した後、厚さ40μmのPETフィルムに塗布乾燥して厚さ50μmの粘着剤層が積層されたテープ型経皮吸収製剤を得た。
得られたテープ型経皮吸収製剤を用いて、薬物経皮吸収性試験を行い、結果を表2に示した。薬物経皮吸収性試験は以下の通り行った。
薬物経皮吸収性試験
ヘアレスマウス皮膚を37℃の水を循環させたフランツ型拡散セルに挟み、レシーバー(真皮)側にPBS緩衝溶液(pH7.4)を供給し、マグネティックスターラーにより攪拌した。ドナー(角質)側には得られた経皮吸収製剤を適用し、透過試験を行った。12時間後及び24時間後にレシーバー中の混合液を採取して、その中の薬物濃度を高速液体クロマトグラフ(HPLC)により測定し、皮膚を透過した累積薬物量を求めた。
得られたテープ型経皮吸収製剤の皮膚刺激性、皮膚粘着性及び糊残り性を測定して結果を表2に示した。測定方法は下記の通りであった。
皮膚刺激性試験
得られたテープ型経皮吸収製剤を直径2cmの円形に打抜き、ボランティア4名の上腕部に貼り付け、24時間後に剥離し、剥離直後の皮膚の状態を目視し、下記基準により測定し、その平均値で皮膚刺激性を測定した。
0;皮膚刺激なし、1;わずかに皮膚刺激あり、2;若干の皮膚刺激あり、3;皮膚刺激あり、4;強い皮膚刺激あり
皮膚粘着性及び糊残り性
得られたテープ型経皮吸収製剤を直径2cmの円形に打抜き、ボランティア4名の上腕部に貼り付け、24時間後に剥離した。テープ型経皮吸収製剤を皮膚から剥離する際の状態を官能的に観察して皮膚粘着性を測定し、その際にテープ製剤の剥れ及び皮膚に粘着剤が残らないか目視して評価した。
薬物安定性試験
作製したテープ製剤を直径2cmの円形に打抜き、アルミラミネート袋に密封し60℃で4週間保存した。その後、テープ製剤をエタノールに4時間浸漬してドネペジルを抽出し、HPLCにより薬物含量を測定した。加熱保存によりドネペジルの類縁物質と思われる物質由来のピークA及びピークBが出現した。安定性の尺度として、薬物含量測定と同時にピークA及びBの発現量をも測定した。ピークA及びBの発現の状況を、比較例1のサンプルに関する試験結果からのクロマトグラムとして図1左に示し、ブランク(比較例1における薬物以外の添加剤のみからなるサンプル)のクロマトグラムを図1右に示す。
ブランクのクロマトグラムにはピークA、Bともに出現していないので、両ピークは薬物由来であると結論できる。
(表1)
粘着剤A:アクリル粘着剤 Duro−TAK87-2510 National starch 製造
粘着剤B:アクリル粘着剤 MAS683 コスメディ製薬製造
SIS: D1161 クレイトンポリマージャパン製造
(表2)
評価結果
デヒドロ酢酸の添加により、ドネペジル経皮吸収製剤の薬物安定性を著しく向上させ、かつ薬物の経皮吸収性をも促進していることがわかる。

Claims (5)

  1. 基剤中に塩基性薬物及び安定化剤を含んでなる経皮吸収製剤において、該安定化剤はデヒドロ酢酸又はそのナトリウム塩であることを特徴とする経皮吸収製剤。
  2. 塩基性薬物がドネペジル、ロチゴチン又はその塩である請求項1に記載の経皮吸収製剤。
  3. 塩基性薬物がドネペジル又はその塩であり、さらに吸収促進剤を含む請求項1に記載の経皮吸収製剤。
  4. 塩基性薬物がドネペジル又はその塩であり、基剤がゴム系粘着剤であり、さらに吸収促進剤を含む請求項1に記載の経皮吸収製剤。
  5. 吸収促進剤がトリアセチンである請求項3又は4に記載の経皮吸収製剤。

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