以下、本発明に係る電力供給システムについて好適な実施形態を例示し、添付の図面を参照しながら説明する。
[本実施形態の構成]
本実施形態に係る電力供給システム10は、図1に示すように、給電側である1次側12から受電側である2次側14に非接触給電(非接触電力伝送)を行うシステムである。
1次側12は、切替手段としての切替スイッチ15を有し、交流電源16に対して、1次側スイッチ18と、切替スイッチ15(及び1次側共振コンデンサ21)とを介して1次側コイル20が接続されている。切替スイッチ15は、リレースイッチ(三点スイッチ)であり、c接点が1次側スイッチ18を介して交流電源16に接続され、b接点が1次側共振コンデンサ21の一端に接続され、a接点が1次側共振コンデンサ21の他端及び1次側コイル20に接続されている。
1次側スイッチ18と切替スイッチ15のc接点との間には、1次側コイル20に流れる電流I1(以下、送電電流I1ともいう。)を検出する1次側電流センサ22が接続されている。また、1次側コイル20に生ずる電圧V1(以下、送電電圧V1ともいう。)を検出する1次側電圧センサ24が、1次側コイル20と(1次側共振コンデンサ21と)切替スイッチ15とに対して並列に接続されている。切替スイッチ15は、1次側制御手段としての1次側コントローラ26からの制御信号に基づいて、c接点をa接点又はb接点に接続する。c接点とa接点とが接続された場合、1次側共振コンデンサ21がバイパスされる(バイパス状態)。一方、c接点とb接点とが接続された場合、バイパス状態が解除され、1次側スイッチ18と1次側共振コンデンサ21とが接続される(接続状態)。1次側スイッチ18は、1次側制御手段としての1次側コントローラ26からの制御信号に基づいてオンオフされるリレーである。
この場合、1次側電流センサ22は、送電電流I1を逐次検出し、検出した送電電流I1に応じた検出信号を1次側コントローラ26に逐次出力する。また、1次側電圧センサ24は、送電電圧V1を逐次検出し、検出した送電電圧V1に応じた検出信号を1次側コントローラ26に逐次出力する。1次側コントローラ26は、後述する1次側データテーブル28を有し、入力された各検出信号(送電電流I1、送電電圧V1)に基づいて1次側12の電力P1(以下、送電電力P1ともいう。)を算出し、1次側データテーブル28と送電電流I1及び送電電力P1とに基づいて、切替スイッチ15の切り替え及び1次側スイッチ18のオンオフを制御することにより、1次側12から2次側14への非接触給電を制御する。
すなわち、1次側コントローラ26は、切替スイッチ15をc接点とa接点との接続に切り替えることで、1次側共振コンデンサ21をバイパス状態とし、1次側スイッチ18を介して交流電源16と1次側コイル20とを接続させ、1次側12を非共振回路として機能させる。また、1次側コントローラ26は、切替スイッチ15をc接点とb接点との接続に切り替えることで、1次側共振コンデンサ21をバイパス状態から解除し(接続状態とし)、1次側スイッチ18及び切替スイッチ15を介して交流電源16と1次側共振コンデンサ21及び1次側コイル20とを接続させ、1次側12を共振回路として機能させる。
2次側14は、例えば、電気自動車30であって、2次側コイル32に対して、負荷である二次電池のバッテリ34が接続されている。2次側コイル32は、送電側パッドである1次側コイル20に対して、所定のギャップを隔てて配置された受電側パッドであり、1次側コイル20から非接触で供給された電力を受電する。
また、2次側14において、2次側コイル32とバッテリ34との間には、2次側共振コンデンサ36を介してOBC38(オンボードチャージャ)が並列に接続されている。そのため、2次側14は、2次側コイル32及び2次側共振コンデンサ36等から構成される共振回路を含み構成されている。従って、電力供給システム10では、切替スイッチ15の切り替えによって1次側共振コンデンサ21をバイパス状態にすることで、N−S回路の非接触給電により、1次側コイル20から2次側コイル32を介してバッテリ34に充電可能である。また、電力供給システム10では、切替スイッチ15の切り替えによって1次側共振コンデンサ21を接続状態にすることで、S−S回路の非接触給電により、1次側コイル20から2次側コイル32を介してバッテリ34に充電可能となる。
OBC38は、車載型の充電器であって、接触充電口40を備えており、1次側コイル20から2次側コイル32を介して非接触で供給された電力をバッテリ34に充電するか、又は、不図示の外部電源から接触充電口40を介して供給される電力をバッテリ34に充電する。なお、2つの充電方法の切り替えは、OBC38内部での制御切り替えによって行われる。
また、2次側コイル32に生ずる電圧V2(以下、受電電圧V2ともいう。)を検出する2次側電圧センサ42が、2次側コイル32と2次側共振コンデンサ36とに対して並列に接続されている。2次側共振コンデンサ36の後端とOBC38との間には、2次側コイル32に流れる電流I2(以下、受電電流I2ともいう。)を検出する2次側電流センサ44が接続されている。さらに、OBC38からバッテリ34に流れる電流I3(以下、充電電流I3ともいう。)を検出する充電電流センサ46が、OBC38とバッテリ34との間に接続されている。さらにまた、バッテリ34の電圧V3(以下、充電電圧V3ともいう。)を検出する充電電圧センサ48が、バッテリ34に対して並列に接続されている。
この場合、2次側電流センサ44は、受電電流I2を逐次検出し、検出した受電電流I2に応じた検出信号をOBC38に逐次出力する。また、2次側電圧センサ42は、受電電圧V2を逐次検出し、検出した受電電圧V2に応じた検出信号をOBC38に逐次出力する。充電電流センサ46は、充電電流I3を逐次検出し、検出した充電電流I3に応じた検出信号をOBC38に逐次出力する。また、充電電圧センサ48は、充電電圧V3を逐次検出し、検出した充電電圧V3に応じた検出信号をOBC38に逐次出力する。
OBC38では、2次側コイル32及び2次側共振コンデンサ36からバッテリ34に向かって、リレーである2次側スイッチ50及び抵抗器52の直列回路と、整流回路54と、第1平滑回路56と、電圧変換回路58と、第2平滑回路60と、DC/DCコンバータ62とが、2次側コイル32に対して並列に接続されている。また、OBC38において、2次側共振コンデンサ36と整流回路54との間には、整流回路54を接触充電口40に接続するか、又は、整流回路54を2次側共振コンデンサ36並びに2次側スイッチ50及び抵抗器52の直列回路に接続するか、を切り替えるための入力切替スイッチ64が設けられている。
さらに、OBC38には、リレーである2次側スイッチ50及び入力切替スイッチ64と、電圧変換回路58と、DC/DCコンバータ62とを制御する2次側制御手段としての2次側コントローラ66が設けられている。2次側コントローラ66は、後述する2次側データテーブル68を有する。2次側コントローラ66は、OBC38に入力された各検出信号(受電電流I2、受電電圧V2)に基づいて、2次側14の電力P2(以下、受電電力P2ともいう。)を算出し、2次側データテーブル68と受電電流I2及び受電電力P2とに基づいて、2次側スイッチ50、入力切替スイッチ64、電圧変換回路58及びDC/DCコンバータ62を制御することにより、1次側12から2次側14への非接触給電を制御する。
OBC38において、2次側スイッチ50は、2次側コントローラ66からの制御信号によってオンオフされる。抵抗器52は、2次側コイル32からバッテリ34を見たときの負荷抵抗値Rzの取り得る範囲内の値である任意の固定値に設定された抵抗値(例えば、比較的小さな電流が2次側14の回路に流れるような負荷抵抗値Rzが取り得る範囲内の値のうち、高い側の抵抗値)を有する抵抗器である。
なお、負荷抵抗値Rzは、正確には、図1において、2次側コイル32からバッテリ34を見たときに、2次側14における2次側共振コンデンサ36よりも右側部分の負荷インピーダンスの抵抗分(実数成分)をいう。
整流回路54は、4つのダイオード70から構成されるダイオードブリッジであって、入力切替スイッチ64によって2次側共振コンデンサ36と整流回路54とが接続されているときに、2次側コイル32及び2次側共振コンデンサ36に生じた受電電圧V2を整流する(脈動電圧に変換する)。第1平滑回路56は、コンデンサ72を有し、脈流電圧を平滑化することにより直流電圧を生成する。
電圧変換回路58は、スイッチング素子としてのトランジスタ74、コイル76及びダイオード78を有する昇圧チョッパであり、直流電圧を昇圧する。なお、電圧変換回路58は、必要に応じて、力率改善回路の機能を備えてもよい。
この場合、コイル76及びトランジスタ74の直列回路がコンデンサ72に並列に接続されている。すなわち、トランジスタ74のコレクタ端子がコイル76を介してコンデンサ72の一端に接続され、エミッタ端子がコンデンサ72の他端に接続されている。また、トランジスタ74のコレクタ端子は、ダイオード78のアノード端子に接続されている。トランジスタ74は、2次側コントローラ66からベース端子に供給される制御信号に基づいて、コレクタ端子とエミッタ端子との間がオンオフされる。なお、電圧変換回路58は、降圧チョッパも採用可能であるが、以下の説明では、図1に示すように、昇圧チョッパである場合について説明する。
第2平滑回路60は、コンデンサ80を有する。コンデンサ80は、ダイオード78のカソード端子とトランジスタ74のエミッタ端子との間で並列に接続され、電圧変換回路58で昇圧された直流電圧を平滑化する。DC/DCコンバータ62は、入力側がコンデンサ80と並列に接続され、一方で、出力側がバッテリ34と並列に接続されている。DC/DCコンバータ62は、バッテリ34の充電電圧V3及び充電電流I3が所望の値となるように、第2平滑回路60で平滑化された直流電圧を所望の電圧に変換する。
[N−S回路及びS−S回路の説明]
次に、電力供給システム10の回路方式について、図2A〜図3Bを参照しながら説明する。
図2Aは、電力供給システム10がS−S回路であるときの簡略化した回路図を示す。また、図2Bは、図2AのS−S回路のT型等価回路の回路図を示す。一方、図3Aは、電力供給システム10がN−S回路であるときの簡略化した回路図を示す。また、図3Bは、図3Aに示すN−S回路のT型等価回路の回路図を示す。
図2A及び図2BのS−S回路において、交流電源16からバッテリ34を見たときのインピーダンス(1次側インピーダンス)Zin1は、下記の(1)式で表わされる。
Zin1=V1/I1={r1×(r2+RL)+ω2×Lm2}
/(r2+RL) (1)
なお、r1は、1次側12の内部抵抗値、r2は、2次側14の内部抵抗値、RLは、2次側14の負荷抵抗値Rz、ωは角周波数、Lmは、1次側コイル20と2次側コイル32との間の相互インダクタンスである。
一方、図3A及び図3BのN−S回路において、1次側インピーダンスZin1は、下記の(2)式で表わされる。
Zin1=V1/I1={(r1+j×ω×L1)×(r2+RL)
+ω2×Lm2}/(r2+RL) (2)
なお、L1は、1次側コイル20の自己インダクタンスであり、jは、虚数単位である。図2A〜図3Bにおいて、C1は、1次側共振コンデンサ21の静電容量、C2は、2次側共振コンデンサ36の静電容量、L1は、1次側コイル20のインダクタンス、L2は、2次側コイル32のインダクタンスである。
ここで、N−S回路とS−S回路とでは、効率は略同等ではあるが、送電電力P1については、N−S回路よりも、S−S回路の方が大きくなる。
また、(1)式から、負荷抵抗値RL=∞(無限大)のときに、Zin1=V1/I1=r1となる。この場合、負荷抵抗値RLが無限大の状態から非接触給電を開始しようとすると、1次側スイッチ18をオンした瞬間に、低い内部抵抗値r1に起因した大きな1次電流I1=V1/r1が流れてしまう。この結果、1次側12及び2次側14は、共に、配電設備の許容電流値を超えてしまう可能性がある。
従って、S−S回路による非接触給電は、大電力の送電に適しているが、一方で、負荷抵抗値RL=∞の状態からは利用することができない。
これに対して、N−S回路では、(2)式から、負荷抵抗値RL=∞のときに、Zin1=V1/I1=r1+j×ω×L1となる。この場合、I1=V1/(r1+j×ω×L1)となる。そのため、インダクタンスL1が十分に高ければ、低い内部抵抗値r1に対して、高いj×ω×L1により、力率が低下し、送電電流I1(実効電流)を低く抑えることができる。このため、N−S回路では、1次側スイッチ18をオンにして、小電力状態から低接触給電を開始することができる。
従って、後述するように、電力供給システム10による非接触給電では、交流電源16が投入され、1次側12及び2次側14の制御が開始された最初の低電力状態では、N−S回路により1次側12から2次側14への非接触給電を行い、その後、S−S回路により、大電力状態で1次側12から2次側14への非接触給電を行う。そして、N−S回路とS−S回路との切り替えは、切替スイッチ15による1次側共振コンデンサ21の接続状態又はバイパス状態への切り替えによって行われる。
[1次側データテーブル28及び2次側データテーブル68]
次に、図4〜図7を参照しながら、1次側データテーブル28及び2次側データテーブル68について説明する。
1次側データテーブル28(図1参照)は、1次側12及び2次側14の相互の状態が正常であるかどうか、具体的には、1次側コイル20から2次側コイル32への非接触給電が正常に行えているか否かを、1次側コントローラ26が、2次側14の状況を知ることなく、1次側12の送電電流I1及び送電電力P1から判定する際に利用される。一方、2次側データテーブル68は、1次側12及び2次側14の相互の状態が正常であるかどうか、具体的には、1次側コイル20から2次側コイル32への非接触給電が正常に行えているか否かを、2次側コントローラ66が、1次側12の状況を知ることなく、2次側14の受電電流I2及び受電電力P2から判定する際に利用される。
この場合、1次側データテーブル28及び2次側データテーブル68は、下記のように、予め実験により求められ、1次側コントローラ26及び2次側コントローラ66に記憶(設定)される。
この実験は、1次側コイル20と2次側コイル32とが所定のギャップ(間隔)で正対する正規の位置にあり、且つ、1次側スイッチ18及び2次側スイッチ50がそれぞれオンである場合に、交流電源16から1次側コイル20に電圧を供給して、1次側コイル20から2次側コイル32に非接触で電力を供給することにより行われる。その際、OBC38に替えて、不図示の電子負荷装置等の負荷抵抗装置を取り付け、抵抗値(負荷抵抗値Rz)を略無限大(∞)から低い値(0付近の抵抗値)にまで変化させたときに、変化させた各抵抗値に応じた送電電流I1、送電電圧V1、受電電流I2及び受電電圧V2をそれぞれ取得する。
なお、以下の説明では、負荷抵抗装置の抵抗値が負荷抵抗値Rz(RL)である場合について説明する。また、前述のように、送電電流I1、送電電圧V1、受電電流I2及び受電電圧V2は、それぞれ、1次側電流センサ22、1次側電圧センサ24、2次側電流センサ44及び2次側電圧センサ42によって検出される。
また、送電電力P1は、負荷抵抗値Rz毎に、送電電流I1と送電電圧V1と1次側12の力率cosθ1とを乗算することにより求められる。一方、受電電力P2は、負荷抵抗値Rz毎に、受電電流I2と受電電圧V2と2次側14の力率cosθ2とを乗算することにより求められる。実際には、1次側コイル20と2次側コイル32との間の送受電周波数より十分速いサンプリング速度で、送電電流I1、送電電圧V1、受電電流I2及び受電電圧V2を取得し、取得した電流及び電圧を乗算した瞬時電力の積分値を、送電電力P1及び受電電力P2として算出する。
さらに、電力供給システム10では、切替スイッチ15によって、N−S回路又はS−S回路に切り替わる。そのため、以下の説明では、N−S回路において得られた各電流、各電圧及び各電力には「NS」の文字を付けて説明する一方で、S−S回路において得られた各電流、各電圧及び各電力には、「SS」の文字を付けて説明する場合がある。
図4には、送電電流I1と負荷抵抗値Rzとの関係を示す特性(送電電流特性)と、送電電力P1と負荷抵抗値Rzとの関係を示す特性(送電電力特性)とが図示されている。
図4に示すように、N−S回路において、送電電流特性は、負荷抵抗値Rzの低下に伴って、送電電流I1NSが最大送電電流I1NSmaxにまで増加し、最大送電電流I1NSmaxでの負荷抵抗値Rzよりも低い抵抗値では、送電電流I1NSが減少する特性を有する。また、送電電力特性は、負荷抵抗値Rzの低下に伴って、送電電力P1NSが最大送電電力P1NSmaxにまで増加し、最大送電電力P1NSmaxでの負荷抵抗値Rzよりも低い抵抗値では、送電電力P1NSが減少する特性を有する。
一方、図4に示すように、S−S回路において、送電電流特性は、負荷抵抗値Rzの低下に伴って、送電電流I1SSが減少する特性を有する。また、送電電力特性は、負荷抵抗値Rzの低下に伴って、送電電力P1SSが減少する特性を有する。すなわち、S−S回路では、前述のように、負荷抵抗値Rzが大きくなるほど、送電電流I1SS及び送電電力P1SSが大きくなる。
なお、この実験で得られたN−S回路での送電電力特性上に、N−S回路からS−S回路に切り替わる所定のポイントを設定する。図4中では、このポイントの所定の送電電力P1NSをP1NSthとしている。また、S−S回路での送電電力特性上に、S−S回路からN−S回路に切り替える所定のポイントを設定する。このポイントは、後述のS−S回路での受電電力特性上に、S−S回路からN−S回路に切り替わるポイントに対応して設定される。図4中では、このポイントの所定の送電電力P1SSをP1SSthとしている。
図5には、受電電流I2と負荷抵抗値Rzとの関係を示す特性(受電電流特性)と、受電電力P2と負荷抵抗値Rzとの関係を示す特性(受電電力特性)とが示されている。
図5に示すように、N−S回路において、受電電流特性は、負荷抵抗値Rzの低下に伴って、受電電流I2NSが最大受電電流I2NSmaxにまで増加する特性を有する。また、受電電力特性は、負荷抵抗値Rzの低下に伴って、受電電力P2NSが最大受電電力P2NSmaxにまで増加し、最大受電電力P2NSmaxでの負荷抵抗値Rzよりも低い抵抗値では、受電電力P2NSが減少する特性を有する。
一方、S−S回路において、受電電流特性は、本来、定電流特性を有する。そのため、負荷抵抗値Rzによらず受電電流I2SSは一定であるが、図5に示すように、実際の電磁気回路では、損失により、負荷抵抗値Rzの増加に伴って、受電電流I2SSが若干減少する特性を有する。また、受電電力特性は、負荷抵抗値Rzの増加に伴って、受電電圧V2SSが増大することにより受電電力P2SSが増加する特性を有する。すなわち、S−S回路では、前述のように、負荷抵抗値Rzが大きくなるほど、受電電力P2SSが大きくなる。なお、図5において、P2SSmaxは、電磁気回路の特性から設定された所定の最大受電電力である。
なお、この実験で得られたN−S回路での受電電力特性上に、N−S回路からS−S回路に切り替わる所定のポイントを設定する。図5中では、このポイントの所定の受電電力P2NSをP2NSthとしている。このポイントは、図4中のN−S回路からS−S回路に切り替わるポイント(送電電力P1NSth)に対応して設定されている。ここで、N−S回路からS−S回路に切り替わるときの受電電力P2の低下量を、所定の低下量ΔP2とする。また、S−S回路での受電電力特性上に、S−S回路からN−S回路に切り替わるときの受電電力P2の低下量が、所定の低下量ΔP2となるように所定のポイントを設定する。図5中では、このポイントの所定の受電電力P2SSをP2SSthとしている。
ところで、上記のように、1次側コイル20と2次側コイル32とが正対している状態の正規の位置に対して、1次側コイル20と2次側コイル32との位置ずれが発生する場合や、温度等の周辺環境によっては、送電電流特性、送電電力特性、受電電流特性及び受電電力特性が変動する可能性がある。
そこで、このような位置ずれ、ギャップの違い、雰囲気温度、周辺環境等を考慮し、図4及び図5に示す各特性について、図6及び図7に示すように、該各特性を中心とした一定の許容範囲を設定し、その設定範囲での該各特性を事前に測定し、各特性及び各許容範囲を1次側データテーブル28及び2次側データテーブル68として1次側コントローラ26及び2次側コントローラ66にそれぞれ事前に設定(記憶)させる。
図6は、送電電流特性に対して一定の許容範囲(送電電流許容範囲ΔI1NS、ΔI1SS)を反映すると共に、送電電力特性に対して一定の許容範囲(送電電力許容範囲ΔP1NS、ΔP1SS)を反映した1次側データテーブル28を図示したものである。図7は、受電電流特性に対して一定の許容範囲(受電電流許容範囲ΔI2NS、ΔI2SS)を反映すると共に、受電電力特性に対して一定の許容範囲(受電電力許容範囲ΔP2NS、ΔP2SS)を反映した2次側データテーブル68を図示したものである。
なお、実際には、制御処理上、下記のような演算処理によって送電電力P1NS、P1SS及び受電電力P2NS、P2SSが求められる。先ず、1次側コントローラ26は、送受電周波数よりも十分高い周波数に応じた所定のサンプリング間隔で、送電電流I1(I1NS、I1SS)及び送電電圧V1(V1NS、V1SS)の瞬時値(検出値)をそれぞれ取得する。次に、1次側コントローラ26は、取得した送電電流I1及び送電電圧V1の各瞬時値からサンプリング毎の送電電力P1(P1NS、P1SS)の瞬時値(瞬時電力)を算出する。次に、1次側コントローラ26は、交流電源16の周波数に応じた1周期について、送電電力P1の瞬時電力を加算し、加算した瞬時電力を該周期で除算することにより、瞬時電力の平均値(平均電力)を算出する。これにより、1次側コントローラ26は、求めた平均電力を送電電力P1(P1NS、P1SS)とする。
一方、2次側コントローラ66は、送受電周波数よりも十分高い周波数に応じた所定のサンプリング間隔で、受電電流I2(I2NS、I2SS)及び受電電圧V2(V2NS、V2SS)の瞬時値(検出値)をそれぞれ取得する。次に、2次側コントローラ66は、取得した受電電流I2及び受電電圧V2の各瞬時値からサンプリング毎の受電電力P2(P2NS、P2SS)の瞬時値(瞬時電力)を算出する。次に、2次側コントローラ66は、交流電源16の周波数に応じた1周期について、受電電力P2の瞬時電力を加算し、加算した瞬時電力を該周期で除算することにより、瞬時電力の平均値(平均電力)を算出する。これにより、2次側コントローラ66は、求めた平均電力を受電電力P2(P2NS、P2SS)とする。
そして、電力供給システム10では、2次側スイッチ50をオフとし、且つ、入力切替スイッチ64によって2次側共振コンデンサ36と整流回路54とを接続した状態で、1次側コントローラ26からの制御で1次側スイッチ18がオンすると共に、2次側コントローラ66によるPWM(Pulse Width Modulation)制御でトランジスタ74がオンオフすることにより、1次側コイル20から2次側コイル32を介したバッテリ34への非接触給電(充電)が行われる。
この場合、1次側コントローラ26及び2次側コントローラ66では、それぞれ、1次側データテーブル28及び2次側データテーブル68を用いて、下記の処理を行うことができる。
すなわち、切替スイッチ15が1次側共振コンデンサ21をバイパスするように切り替えられ、電力供給システム10がN−S回路となっている場合、1次側コントローラ26は、図6に示すように、1次側データテーブル28内の送電電流許容範囲ΔI1NSを用いて、1次側電流センサ22が検出した送電電流I1NSに基づいて、送電電流許容範囲ΔI1NS内となる負荷抵抗値Rzの範囲ΔRzi11、ΔRzi12を算出する。また、1次側コントローラ26は、1次側電流センサ22が検出した送電電流I1NSと、1次側電圧センサ24が検出した送電電圧V1NSとに基づいて送電電力P1NSを算出し、1次側データテーブル28内の送電電力許容範囲ΔP1NSを用いて、算出した送電電力P1NSに基づいて、送電電力許容範囲ΔP1NS内となる負荷抵抗値Rzの範囲ΔRzp1を算出する。
そして、送電電流I1NSに基づいて算出した負荷抵抗値Rzの範囲ΔRzi11、ΔRzi12と、送電電力P1NSに基づいて算出した負荷抵抗値Rzの範囲ΔRzp1との間に一致する領域がある場合には、1次側コイル20と2次側コイル32との相互の結合関係を含め、1次側12及び2次側14が正常な状態であり、1次側12から2次側14への非接触給電が正常に行えている状態であると判定する。なお、図6では、送電電流I1NSに基づく負荷抵抗値Rzの範囲として、最大送電電流I1NSmaxを挟み、右側の範囲ΔRzi11と、左側の範囲ΔRzi12との2つある。この場合、右側の範囲ΔRzi11の一部と、送電電力P1NSに基づく範囲ΔRzp1とが重なり合う領域(範囲ΔRzp1)が、一致する領域となる。
一方、送電電流I1NSに基づいて算出した負荷抵抗値Rzの範囲ΔRzi11、ΔRzi12と、送電電力P1NSに基づいて算出した負荷抵抗値Rzの範囲ΔRzp1との間に一致する領域がない場合には、1次側コイル20と2次側コイル32との相互の結合関係を含め、1次側12及び2次側14が異常な状態にあり、1次側12から2次側14への非接触給電が正常に行えていない状態であると判定する。
また、2次側コントローラ66は、図7に示すように、2次側データテーブル68内の受電電流許容範囲ΔI2NSを用いて、2次側電流センサ44が検出した受電電流I2NSに基づいて、受電電流許容範囲ΔI2NS内となる負荷抵抗値Rzの範囲ΔRzi2を算出する。また、2次側コントローラ66は、2次側電流センサ44が検出した受電電流I2NSと、2次側電圧センサ42が検出した受電電圧V2NSとに基づいて受電電力P2NSを算出し、2次側データテーブル68内の受電電力許容範囲ΔP2NSを用いて、算出した受電電力P2NSに基づいて、受電電力許容範囲ΔP2NS内となる負荷抵抗値Rzの範囲ΔRzp2を算出する。
そして、受電電流I2NSに基づいて算出した負荷抵抗値Rzの範囲ΔRzi2と、受電電力P2NSに基づいて算出した負荷抵抗値Rzの範囲ΔRzp2との間に、一致する領域がある場合には、1次側コイル20と2次側コイル32との相互の結合関係を含め、1次側12及び2次側14が正常な状態であり、1次側12から2次側14への非接触給電が正常に行えている状態であると判定する。なお、図7では、受電電流I2NSに基づく範囲ΔRzi2と、受電電力P2Nsに基づく範囲ΔRzp2の一部とが重なり合っている領域が、一致する領域となる。
一方、受電電流I2NSに基づいて算出した負荷抵抗値Rzの範囲ΔRzi2と、受電電力P2NSに基づいて算出した負荷抵抗値Rzの範囲ΔRzp2との間に、一致する領域がない場合には、1次側コイル20と2次側コイル32との相互の結合関係を含め、1次側12及び2次側14が異常な状態にあり、1次側12から2次側14への非接触給電が正常に行えていない状態であると判定する。
これに対して、切替スイッチ15が1次側共振コンデンサ21を接続状態に切り替えることで、電力供給システム10がS−S回路となっている場合には、上記の説明について、「NS」の文言を「SS」の文言に置き換えると、S−S回路における1次側コントローラ26及び2次側コントローラ66での1次側データテーブル28及び2次側データテーブル68を用いた処理の説明となる。従って、S−S回路の処理の説明については、省略する。
[本実施形態の動作]
以上のように構成される電力供給システム10の動作について、図8〜図13を参照しながら説明する。この動作説明では、必要に応じて、図1〜図7も参照しながら説明する。
ここでは、二次電池であるバッテリ34の充電電圧V3を、安全に充電を行うことができる最高電圧値、すなわち、充電終止電圧V3objにすることを制御目標として、1次側12から2次側14に非接触給電を行う場合について説明する。なお、安全に充電できる最大電流値は、SOC(State of Charge;充電率) により変化する値であり、目標充電電流I3objとする。
また、2次側コントローラ66は、トランジスタ74をPWM制御によってオンオフさせるものとする。ここでは、PWM制御による制御信号の周期をτとし、トランジスタ74のオン時間をTonとする。なお、オン時間Tonを制御することにより、負荷抵抗値Rzを略無限大(∞)から0付近まで変化させることができ、図5及び図7に示す受電電流I2(I2NS、I2SS)及び受電電力P2(P2NS、P2SS)を制御することができる。
なお、以下の説明では、バッテリ34からの電力要求(例えば、SOC、充電電圧V3、充電電流I3)に応じて、切替スイッチ15が1次側共振コンデンサ21をバイパス状態又は接続状態のどちらかに切り替えることにより、N−S回路又はS−S回路の切り替えを行う場合について説明する。従って、説明の煩雑化を避けるため、N−S回路又はS−S回路の動作における送電電流I1、送電電圧V1、送電電力P1、受電電流I2、受電電圧V2及び受電電力P2に対しては、N−S回路の動作中のものであることを示す「NS」の文言や、S−S回路の動作中のものであることを示す「SS」の文言を付けないで説明する場合があることに留意する。
図8〜図11は、1次側12及び2次側14(図1参照)の制御のフローチャートである。なお、図8において、左側のフローは1次側12の制御を示し、右側のフローは2次側14の制御を示す。また、図9は、図8の1次側12の制御の続きを示しており、一方で、図10及び図11は、図8の2次側14の制御の続きを示している。
先ず、運転者がバッテリ34を充電すべく、1次側コイル20(送電側パッド)と2次側コイル32(受電側パッド)とが対向する位置に電気自動車30を停車させ、下車する。この場合、運転者は、双方のパッドが対向する位置にあり、両パッド間に異物等が存在しない状態であるか否かを確認する。
ここで、図8のステップS201において、運転者は、電気自動車30のOBC38の図示しないスイッチをオンにし、OBC38を起動させる。
これにより、ステップS202において、OBC38の2次側コントローラ66は、入力切替スイッチ64に制御信号を供給して2次側共振コンデンサ36と整流回路54とを接続させない状態にする一方で、2次側スイッチ50に制御信号を供給してオンにする。
次のステップS203において、2次側コントローラ66は、バッテリ34が充電可能な状態であるか否かを確認する。具体的に、2次側コントローラ66は、充電電圧センサ48が検出した充電電圧V3、及び、充電電流センサ46が検出した充電電流I3に基づいて、V3<V3obj、且つ、SOC<100%であるか否かを判定する。ステップS203で肯定的な判定結果であれば(ステップS203:YES)、2次側14では、次のステップS204に進んで待機する。
一方、1次側12では、ステップS101において、運転者が図示しない1次側コントローラ26のスイッチをオンにし、1次側コントローラ26を起動させる。1次側コントローラ26は、切替スイッチ15に制御信号を供給して1次側共振コンデンサ21をバイパス状態に切り替える。これにより、1次側12は、非共振回路に切り替わる。すなわち、電力供給システム10は、N−S回路に切り替わる。
次に、ステップS102において、1次側コントローラ26は、1次側スイッチ18に制御信号を供給してオンオフさせることにより、交流電源16からの交流電力を、短時間持続するパルス的な電力(パルス電力)として1次側コイル20に供給する。これにより、1次側コイル20は、2次側コイル32にパルス電力を非接触で給電する。前述のように、1次側コイル20に対向して2次側コイル32が所定位置に近接している状態では、1次側コイル20と2次側コイル32との間の相互インダクタンスLmにより、1次側12及び2次側14には、規定値の送電電力P1(P1NS)及び受電電力P2(P2NS)が生ずる。
そこで、ステップS103において、1次側コントローラ26は、送電電力P1が規定値であるか否かを、1次側データテーブル28に基づき判断する。具体的に、1次側コントローラ26は、1次側電流センサ22が検出した送電電流I1(I1NS)に基づいて負荷抵抗値Rzを参照し、参照した負荷抵抗値Rzと送電電流I1との座標値が、1次側データテーブル28の送電電流許容範囲ΔI1(ΔI1NS)内であるか否かを判定する。また、1次側コントローラ26は、送電電流I1と、1次側電圧センサ24が検出した送電電圧V1(V1NS)とに基づいて送電電力P1を算出し、算出した送電電力P1に基づいて負荷抵抗値Rzをさらに参照し、送電電力P1と負荷抵抗値Rzとの座標値が、1次側データテーブル28の送電電力許容範囲ΔP1NS内であるか否かを判定する。そして、参照した各負荷抵抗値Rzが、互いに略等しく、且つ、抵抗器52の固定された抵抗値と略等しいか否かを判定する。
ステップS103で肯定的な判定結果であった場合(ステップS103:YES)、1次側コントローラ26は、1次側コイル20と2次側コイル32との間で、非接触による電力供給が可能であると判定し、次のステップS104に進む。ステップS104において、1次側コントローラ26は、ステップS102、S103の処理を繰り返し行うか否かを判定する。繰り返し行う場合(ステップS104:YES)、1次側コントローラ26は、ステップS102に戻り、ステップS102、S103の処理を再度行う。
ステップS102〜S104の処理が繰り返し行われることにより、図12に示すように、例えば、T1の時間におけるT2、T3の周期内でパルス状の送電電力P1が発生し、1次側コイル20から2次側コイル32に非接触で電力供給が行われる。なお、図12では、時点t1で2次側コントローラ66が起動し(ステップS201)、時点t2で1次側コントローラ26が起動し(ステップS101)、時点t3から時点t4までの時間T1内で、パルス幅T4、T5の3つのパルス状の送電電力P1が発生する場合を図示している。また、時間T1内のパルス状の送電電力P1を複数のパルス波形とみなした場合、ステップS102〜S104の処理では、「10001000110000」のパターン配列のパルス信号を1次側コイル20から2次側コイル32に送信していると考えることもできる。
なお、時点t4において、パルス状の送電電力P1の発生を停止させた後(ステップS104:NO)、1次側12は、次のステップS105に進んで待機する。
一方、図8のステップS204において、2次側コントローラ66は、2次側コイル32が1次側コイル20からパルス状の電力を受電したか否かを判定する。そして、2次側コイル32がパルス状の電力を受電したと判定した場合(ステップS204:YES)、次のステップS205において、2次側コントローラ66は、2次側14が1次側12との磁界結合により非接触で電力を受電可能であるか否か、さらには、2次側14が1次側12に対する磁界結合の相手として、所定の仕様を満たした正規なものであるか否かの認証処理を行う。
ステップS205では、下記(1)〜(3)の3つの判定処理を、並行して、又は、順に、行う。
(1)2次側データテーブル68を参照して、受電電流I2(I2NS)に応じた負荷抵抗値Rzを参照する。次に、受電電圧V2(V2NS)と受電電流I2とに基づいて受電電力P2(P2NS)を算出し、2次側データテーブル68を参照して、算出した受電電力P2に応じた負荷抵抗値Rzを参照する。そして、求めた各負荷抵抗値Rzが、互いに略等しく、且つ、抵抗器52の固定された抵抗値と略等しいか否かを判定する。
(2)1次側コイル20に電力(送電電力P1)が供給された際に、2次側コイル32で受電される電力(受電電力P2)が2次側データテーブル68から参照される規定値(受電電力許容範囲ΔP2NS)内であるか否かを判定する。
(3)1次側コイル20に供給された複数のパルス状の電力について、電力が供給されている時間(状態)を「1」、電力が供給されていない時間(状態)を「0」として表わしたときのパターン配列と、該パターン配列のパルス状の電力が1次側コイル20から2次側コイル32に非接触で給電されたときに、2次側コイル32で受電される複数のパルス状の受電電力P2について、上記の規定値の電力が供給される時間(状態)を「1」、電力が供給されていない時間(状態)を「0」として表わしたときのパターン配列とが、一致するか否かを判定する。
一例として、(3)の判定処理では、1次側コイル20のパルス状の電力のパターン配列が図12に示す「10001000110000」である場合、2次側14の受電電力P2のパターン配列が「10001000110000」と一致するかを判定する。
そして、ステップS205において、2次側コントローラ66は、これらの3つの判定処理の結果が全て肯定的な判定結果である場合(ステップS205:YES)、1次側コイル20から非接触で給電された電力を2次側コイル32で受電可能である(2次側14が受電可能状態にある)と共に、2次側14が1次側12との磁界結合の相手として正規なものであることを認定し、次のステップS206に進む。
ステップS206において、2次側コントローラ66は、2次側スイッチ50をオフした後、次のステップS207に進んで待機する。
一方、ステップS105において、1次側コントローラ26は、1次側スイッチ18のオン状態を継続させ、交流電源16から1次側コイル20に常時通電させる。これにより、1次側コイル20から2次側コイル32を介してバッテリ34に非接触給電を開始させることが可能な状態となり、次のステップS106に進む。なお、図12において、時点t4が、1次側12におけるステップS105、及び、2次側14におけるステップS206の状態となる。
ステップS207において、2次側コントローラ66は、ステップS206で2次側スイッチ50がオフになって以降、十分に長い時間経過している場合に、2次側14が正しい受電状態であるか否かを判定する。
具体的に、2次側コントローラ66は、2次側データテーブル68を参照して、受電電流I2に応じた負荷抵抗値Rzを参照し、一方で、受電電圧V2と受電電流I2とに基づいて受電電力P2を算出し、2次側データテーブル68を参照して、算出した受電電力P2に応じた負荷抵抗値Rzを参照し、参照した各負荷抵抗値Rzが略等しいか否かを判定する。
ステップS207で肯定的な判定結果である場合(ステップS207:YES)、次のステップS208に進む。ステップS208において、2次側コントローラ66は、トランジスタ74のオン時間Tonを最小単位時間Δτに設定し、設定した最小単位時間Δτに応じた制御信号をトランジスタ74のベース端子に供給することにより、トランジスタ74のコレクタ端子とエミッタ端子との間を導通させる、最低限度の通電制御を行う。ここで、オン時間Tonが0を含めてn段階に変更可能である場合、トランジスタ74に対するPWM周期をTとすると、Δτ=T/(n−1)となる。
すなわち、2次側コントローラ66は、トランジスタ74のオン時間Tonを最初に最小単位時間Δτに設定し、該オン時間Tonを最小単位時間Δτから、2Δτ、3Δτ、…、nΔτのように、ステップ的に長くする通電制御を行うことができる。このように、2次側コントローラ66は、オン時間Tonを変化させることにより、2次側14の負荷抵抗値Rzを、実質的に、略無限大の状態から出発して、0に向かって変化させることができる。
なお、図12において、t4〜t5の時間帯が、2次側14におけるステップS207の状態であり、時点t5がステップS208となる。
次のステップS209において、2次側コントローラ66は、最低限度の通電制御(最小単位時間Δτでのトランジスタ74のオン)において、2次側14が正しい受電状態であるか否かについて、ステップS207と同様の判定処理を再度行う。ステップS209において、肯定的な判定結果である場合(ステップS209:YES)、図10のステップS210に進む。なお、図12において、時点t6以降の状態が、2次側14のステップS210以降の処理となる。
また、前述のステップS203、S205、S207、S209の各判定処理において、否定的な判定結果であった場合(ステップS203、S205、S207、S209:NO)、2次側コントローラ66は、2次側14が電力を非接触で受電可能な状態にはない異常状態にあると判断し、次のステップS211で、2次側14での充電処理を終了させる。すなわち、トランジスタ74及びDC/DCコンバータ62をオフさせる。
これに対して、1次側12では、ステップS106において、1次側コントローラ26は、ステップS105以降、送電電力P1が変化した場合、1次側データテーブル28を用いて送電電流I1に基づいた負荷抵抗値Rzを参照し、一方で、送電電力P1に基づいた負荷抵抗値Rzを参照し、両方の負荷抵抗値Rzが略等しい場合、2次側14において最低限の通電制御が行われていると判断し(ステップS106:YES)、図9のステップS107に進む。
ステップS107において、1次側コントローラ26は、1次側12の状態を確認し続ける。具体的には、1次側データテーブル28を用いて、送電電流I1に基づいた負荷抵抗値Rzを参照し、一方で、送電電力P1に基づいた負荷抵抗値Rzを参照し、両方の負荷抵抗値Rzが略等しいか否かを確認すると共に、送電電力P1の増加又は減少等の変化が、1次側データテーブル28の規定値(送電電力許容範囲ΔP1NS)内であるか否かを確認する。ステップS107で肯定的な判定結果である場合(ステップS107:YES)、次のステップS108に進む。
ステップS108では、1次側コントローラ26は、1次側データテーブル28の送電電力特性(送電電力P1)を参照して、N−S回路又はS−S回路による制御であるか否かを判断する。
N−S回路による制御であると判断した場合(ステップS108:YES)、1次側コントローラ26は、ステップS109において、S−S回路による制御が実行中であることを示す制御フラグSSを0に設定すると共に、N−S回路による制御が実行中であることを示す制御フラグNSを1に設定する(SS→0、NS→1)。なお、SS=0とは、S−S回路による制御が行われていないことを示し、NS=1とは、N−S回路による制御が行われていることを示している。
一方、S−S回路による制御であると判断した場合(ステップS108:NO)、1次側コントローラ26は、ステップS110において、制御フラグSSを1に設定すると共に、制御フラグNSを0に設定する(SS→1、NS→0)。なお、SS=1とは、S−S回路による制御が行われていることを示し、NS=0とは、N−S回路による制御が行われていないことを示している。
この動作説明では、N−S回路による制御から非接触給電が開始されるので、最初は、ステップS109で、制御フラグをSS=0、NS=1に設定し、次のステップS111に進む。
ステップS111において、1次側コントローラ26は、2次側14で受電電力P2の最小状態の経過時間が規定時間以下であることにより、1次側12の送電電力P1についても最小状態の経過時間が規定時間以下であるか否かを判定する。ステップS111で肯定的な判定結果である場合(ステップS111:YES)、次のステップS112に進む。すなわち、ステップS111の判定処理は、最小状態の経過時間が規定時間を超える場合に、2次側14が異常終了したか、又は、2次側14がバッテリ34の充電終了により正常終了したか、を判断するために用いられる。なお、最小状態の経過時間が規定時間以下の場合には(ステップS111:YES)、バッテリ34に対する充電を継続するべく、ステップS112に進む。
ステップS112において、1次側コントローラ26は、制御フラグNSが1であり、前回の処理で算出された受電電力P2old(P2NSold)と比較して、P1>P1old(P1NS>P1NSold)であり、且つ、所定の送電電力P1NSthと比較して、P1>P1NSthであるか否かを判断する。
N−S回路にて非接触給電が開始されるので、N−S回路による制御の初期では、P1<P1NSthであり(ステップS112:NO)、次のステップS113に進む。
ステップS113において、1次側コントローラ26は、制御フラグSSが1であり、P1<P1oldであり、且つ、P1<P1SSthであるか否かを判断する。
N−S回路による制御の初期では、P1>P1oldにあるため(ステップS113:NO)、1次側コントローラ26は、ステップS107に戻り、ステップS107〜S113の処理を再度実行する。この結果、N−S回路による制御のまま、1次側12から2次側14への非接触給電(バッテリ34への充電)が継続される。
このような処理を継続して行うことにより、後述のように、2次側14の受電電力P2に対する制御によって、送電電力P1は次第に上昇し、1次側12の最大送電電力P1NSmax近傍の送電電力P1NSthに近づいていく。このN−S回路による制御初期の状態は、図13の時点t11から時点t12の時間帯に対応する。
なお、ステップS103、S106、S107において、否定的な判定結果であった場合(ステップS103、S106、S107:NO)、1次側コントローラ26は、1次側12が送電可能な状態にはない異常状態と判断し、ステップS120で、1次側12での充電処理を終了させる。
このように1次側12でステップS107〜S113のループによるN−S回路による制御が行われ、2次側14のバッテリ34への充電が継続されている場合、2次側14では下記の制御を実行する。
2次側14でも、N−S回路による制御から開始するので、図10のステップS210において、2次側コントローラ66は、制御フラグSS、NSをSS→0、NS→1にそれぞれ設定する。
次に、2次側コントローラ66は、ステップS212において、ステップS207、S209と同様の判定処理を再度行う。これは、上述した2次側14でのイニシャルループ処理を終了し、その後、ステップS212以降において繰り返し行われる電力追尾ループ処理での異常検知判断をステップS212で行うためである。ステップS212で肯定的な判定結果であった場合(ステップS212:YES)、次のステップS213に進む。
ステップS213において、2次側コントローラ66は、バッテリ34の充電電圧V3と充電終止電圧V3objとを比較すると共に、充電電流I3とバッテリ34を安全に充電できる目標充電電流I3objとを比較し、V3<V3obj且つI3<I3objであるか否かを判定する。ステップS213が肯定的な判定結果であった場合(ステップS213:YES)、2次側コントローラ66は、充電電流I3及び充電電圧V3が共にバッテリ34を安全に充電できる状態にあると判断し、次のS214に進む。
ステップS214において、2次側コントローラ66は、今回の処理で算出された受電電力P2と、前回の処理で算出された受電電力P2old(P2NSold)とを比較し、P2>P2oldであるか否かを判定する。ステップS214において肯定的な判定結果である場合(ステップS214:YES)、次のステップS215に進む。なお、P2>P2oldであるとき、受電電力P2の状態は、図5、図7、及び、図13の時点t11〜t12の時間帯に示すように、最大受電電力P2max(P2NSmax)に向かってP2oldから単調に増加している状態か、又は、最大受電電力P2NSmaxに一旦到達した後に低下し、その後、最大受電電力P2NSmaxに向かって増加している状態であるか、のどちらかである。
ステップS215において、2次側コントローラ66は、SOC等のバッテリ34からの電力要求に応じて、負荷抵抗値Rzを下げて、受電電流I2及び受電電力P2を増加させるべく、デューティアップ制御(オン時間Tonを前回よりもΔτだけインクリメントする制御)を行い、次のステップS216に進む。
ステップS216において、2次側コントローラ66は、受電電力P2と、最大受電電力P2NSmaxよりも僅かに小さい値である受電電力P2NSthとの比較をおこなう。これは、N−S回路による制御から、S−S回路による制御への切り替えが近づいているかどうかを判断するためである。
P2<P2NSthの場合には(ステップS216:YES)、2次側コントローラ66は、N−S回路による制御から、S−S回路による制御への切り替えが近づいていないと判断し、次のステップS217で、N−S回路による制御から、S−S回路による制御への切り替え待ちを示すフラグであるSS待ちフラグを0とする。
一方、P2<P2NSthでない場合には(ステップS216:NO)、2次側コントローラ66は、N−S回路による制御から、S−S回路による制御への切り替えが近づいていると判断し、次のステップS218で、SS待ちフラグを1とする。
ステップS219において、2次側コントローラ66は、受電電力P2の最小状態の経過時間(P2≒0の状態が継続する時間)が、規定時間以下であるか否かを判断する。最小状態の経過時間が規定時間以下である場合には(ステップS219:YES)、バッテリ34の充電完了と判断できない状態であるため、2次側コントローラ66は、次のステップS220において、(P2+ΔP2)<P2old、且つ、SS待ちフラグが1であるかを判断する。ステップS220は、1次側12で非共振回路又は共振回路の切り替えが行われたか否かを判断するものである。ここで、ΔP2は、前述した実験により予め設定した所定の低下量である。
後述するように、低下量ΔP2は、1次側12が非共振回路から共振回路に切り替わった瞬間に、受電電力P2がΔP2以上変化したか否かを判断するための閾値である。従って、切り替えが発生した場合(ステップS220:YES)、2次側コントローラ66は、ステップS221において、S−S回路による制御に切り替わると共に、SS待ちフラグを0に設定する。
但し、N−S回路による制御の初期では、SS待ちフラグが1ではないので(SS待ちフラグ:0)、ステップS220では否定的な判定結果となる(ステップS220:NO)。この結果、2次側コントローラ66は、ステップS210に戻り、1次側12がN−S回路による制御から、S−S回路による制御に切り替わるまで、ステップS210〜S220の処理を繰り返し、バッテリ34への充電を継続させる。
一方、ステップS212〜S214の各判定処理において、否定的な判定結果(ステップS212〜S214:NO)となった場合の処理について以下に説明する。
ステップS212で否定的な判定結果となった場合(ステップS212:NO)、2次側コントローラ66は、ステップS211に進み、PWM制御を停止する(トランジスタ74のオン時間Tonを0とする)。
ステップS213で否定的な判定結果となった場合(ステップS213:NO)には、電圧V3が充電終止電圧V3objに到達しているか、又は、充電電流I3が目標充電電流I3objに到達していることになる。この場合、2次側コントローラ66は、ステップS222において、電圧V3が充電終止電圧V3objよりも高くならないように、又は、充電電流I3が目標充電電流I3objよりも大きくならないように、トランジスタ74のオン時間Tonを前回よりもΔτだけデクリメントする。その後、次のステップS216に進む。
また、ステップS214で否定的な判定結果となった場合(ステップS214:NO)、次のS222に進む。このような判定結果となる状態は、図7において、最大受電電力P2maxよりも左側の領域(負荷抵抗値Rzが低い領域)で、受電電力P2が前回値以下の状態である。
この場合、ステップS222において、2次側コントローラ66は、受電電力P2が最大受電電力P2maxに近づくように、トランジスタ74のオン時間Tonを前回よりもΔτだけデクリメントし、ステップS216に進む。
このようにして、ステップS212〜S220、S222の処理を繰り返し行うことにより、すなわち、バッテリ34からの電力要求に応じて、トランジスタ74のオン時間Tonを前回よりもΔτだけインクリメント又はデクリメントする処理を繰り返すことにより、時点t11から時点t12にかけて、オン時間Tonのデューティを徐々に増加させながら、最大受電電力P2maxに次第に近づくように受電電力P2が制御される。このような制御により、t11〜t12の時間帯では、時間が経過するにつれて、バッテリ34の充電が進み、SOC及び充電電圧V3は徐々に増加する。
この結果、1次側12においても、送電電力P1が次第に上昇する。その後、送電電力P1が送電電力P1NSthを超える場合(図9のステップS112:YES)、次のステップS114に進む。ステップS114において、1次側コントローラ26は、制御フラグSSを1とし、制御フラグNSを0とする。そして、次のステップS115において、1次側コントローラ26は、切替スイッチ15を制御して、1次側共振コンデンサ21を接続状態に切り替える。これにより、1次側コイル20と1次側共振コンデンサ21とが直列接続され、N−S回路による制御からS−S回路による制御に切り替わる。この結果、1次側12では、S−S回路により、ステップS107〜S113の処理が継続される。
このような1次側12における制御切り替えは、2次側14において、受電電力P2の変化を捉えることにより把握することができる。
すなわち、送電電力P1が送電電力P1NSthを超える場合、2次側コントローラ66は、2次側データテーブル68を参照して、受電電力P2が最大受電電力P2NSmax近傍の受電電力P2NSthを超えること(ステップS216:NO)を把握し、次のステップS218に進む。ステップS218において、2次側コントローラ66は、SS待ちフラグを1とする。従って、2次側コントローラ66は、間もなく1次側12がN−S回路による制御からS−S回路による制御に切り替わることを把握しつつ、N−S回路による制御を継続する。
1次側12がS−S回路による制御に切り替わった場合でも、2次側14では、PWM制御によるトランジスタ74のオンオフ制御を続けている。この場合、1次側共振コンデンサ21が1次側コイル20と直列接続され、1次側12が共振回路となった瞬間(S−S回路に切り替わった図13の時点t12)に、送電電力P1及び受電電力P2は、N−S回路による制御のときよりも電力値が所定の低下量ΔP2以上低下する。
図5及び図7には、切り替えに伴う電力値の低下量ΔP2を、P2NSからP2SSに向かう下向き矢印とで図示している。なお、図4及び図6において、P1NSからP1SSに向かう下向き矢印は、2次側14での電力値の低下量ΔP2に応じた、1次側12での電力値の低下量を示している。
そこで、2次側コントローラ66は、SS待ちフラグが1の状態で、電力値が所定の低下量ΔP2以上低下したことを検知した場合(ステップS220:YES)、1次側12が共振回路による制御に変化したことを把握し、次のステップS221でSS待ちフラグを0とする。これにより、2次側14は、図11に示すS−S回路による制御フローに移行する。
すなわち、図11のステップS223において、2次側コントローラ66は、制御フラグSSを1、制御フラグNSを0とする。なお、S−S回路への切り替えに伴い、1次側コントローラ26及び2次側コントローラ66は、それぞれ、S−S回路のデータテーブル(図6及び図7で「SS」の文言が付された特性)を参照することは勿論である。
次に、ステップS224において、2次側コントローラ66は、ステップS207、S209、S212と同様の判定処理を再度行う。これは、2次側14でのイニシャルループを終了し、ステップS224以降に繰り返される電力追尾ループ中での異常検知判断をするためである。なお、ステップS224で異常を検知した場合(ステップS224:NO)、ステップS211に戻り、充電処理を終了する。
ステップS224で肯定的な判定結果であった場合(ステップS224:YES)、次のステップS225に進む。ステップS225において、2次側コントローラ66は、V3<V3obj、I3<I3obj且つP2<P2SSmax(P2SSmax:S−S回路における最大受電電力)であるか否かを判定する。
ステップS225で肯定的な判定結果である場合(ステップS225:YES)、充電電流I3及び充電電圧V3が共にバッテリ34を安全に充電できる状態であり、且つ、受電電力P2(P2SS)が最大受電電力P2SSmaxよりも小さいので、2次側コントローラ66は、次のステップS226に進む。
ステップS226において、2次側コントローラ66は、受電電力P2と、前回の受電電力P2old(P2SSold)とを比較する。P2>P2oldである場合(ステップS226:YES)、図13の時点t12から時点t13の時間帯のように、受電電力P2が最大受電電力P2SSmaxに向かって、P2oldから単調に増加している状態であるため、2次側コントローラ66は、バッテリ34に対する充電を継続するべく、次のステップS227に進む。
ステップS227において、2次側コントローラ66は、受電電力P2を増加させるべく、デューティダウン制御、すなわち、トランジスタ74のオン時間Tonを前回よりΔτだけデクリメントする制御を行い、次のS228に進む。このように、S−S回路による制御では、N−S回路による制御とは異なり、受電電力P2を増加させるため、図13の時点t12から時点t13の時間帯において、オン時間Tonを短くするような制御を行う。
なお、ステップS225で否定的な判定結果となった場合(ステップS225:NO)、2次側コントローラ66は、次のステップS229に進み、充電電圧V3、充電電流I3又は受電電力P2を減少させるべく、トランジスタ74のオン時間Tonを前回よりΔτだけインクリメンさせる。また、ステップS226で否定的な判定結果となった場合(ステップS226:NO)、2次側コントローラ66は、ステップS229において、受電電力P2を減少させるべく、オン時間Tonを前回よりΔτだけインクリメントする。
ステップS228において、2次側コントローラ66は、受電電力P2と、S−S回路による制御での受電電力P2の最小値である受電電力P2SSthとの比較を行う。これは、S−S回路による制御から、N−S回路による制御への切り替えが近づいているかどうかを判断するためである。
P2>P2SSthの場合(ステップS228:YES)、2次側コントローラ66は、S−S回路による制御からN−S回路による制御への切替が近づいていないと判断し、次のステップS230において、S−S回路による制御からN−S回路による制御への切り替え待ちのフラグであるNS待ちフラグを0とする。
一方、ステップS228で否定的な判定結果であった場合(ステップS228:NO)、2次側コントローラ66は、S−S回路による制御からN−S回路による制御への切替が近づいていると判断し、次のステップS231において、NS待ちフラグを1とする。
次のステップS232において、2次側コントローラ66は、(P2+ΔP2)>P2old、且つ、NS待ちフラグが1であるか否かを判断する。ステップS232は、1次側12が共振回路から非共振回路に切り替わったか否かを判断するものである。
この場合、S−S回路による制御に切り替わった初期段階であり、NS待ちフラグが1ではない(ステップS232:NO)。そのため、2次側コントローラ66は、ステップS224に戻り、1次側12がS−S回路による制御からN−S回路による制御に切り替わるまで(ステップS232が肯定的な判定結果となるまで)、ステップS224〜S232の制御ループ処理を繰り返し、バッテリ34への充電を継続する。
その後、受電電力P2が増加し続け、S−S回路による制御での最大受電電力P2SSmaxに到達した場合(ステップS225:NO、図13の時点t14)、最大受電電力P2SSmax以上の電力を取得することはできない。そこで、2次側コントローラ66は、PWM制御によってトランジスタ74のオン時間Tonを増減させつつ(ステップS227又はS229)、最大受電電力P2SSmax近傍で受電電力P2に対するフィードバック制御を行う。すなわち、2次側コントローラ66は、フィードバック制御を行うことにより、時間経過に伴って、バッテリ34のSOCが上昇するのを待つ。SOCの上昇に伴って、充電電流I3が目標充電電流I3objに到達し、又は、充電電圧V3が充電終止電圧V3objに到達した場合(ステップS225:NO、図13の時点t16)、2次側コントローラ66は、バッテリ34への電力供給を低下させるため、PWM制御により、オン時間Tonを増加させる(ステップS229)。
バッテリ34が満充電に近づき、該バッテリ34からの電力要求が減少すると(図13の時点t16以降の時間帯)、受電電力P2は、受電電力P2SSthに近づいていくので、2次側コントローラ66は、1次側12において、間もなくN−S回路による制御に切り替わること把握することができる(ステップS228:NO→ステップS231)。
一方、1次側12の送電電力P1と2次側14の受電電力P2とは、バッテリ34からの電力要求に応じて互いに変化する。そのため、1次側コントローラ26は、送電電力P1の低下をモニタすることにより、電力要求の低下を把握することができる。
そして、送電電力P1が低下し、且つ、送電電力P1SSthを下回ると(ステップS113:YES)、1次側コントローラ26は、次のステップS116に進む。ステップS116において、1次側コントローラ26は、制御フラグSSを0にすると共に、制御フラグNSを1とし、切替スイッチ15を制御して、1次側共振コンデンサ21をバイパス状態に切り替える。これにより、ステップS117において、1次側12は、共振回路(S−S回路)から非共振回路(S−S回路)に切り替わる(図13の時点t18)。その後、1次側12では、N−S回路による制御でステップS107以降の制御ループ処理が行われる。
これに対して、2次側14では、1次側12でのN−S回路への制御切り替えが行われた瞬間も、PWM制御によりトランジスタ74に対するオン時間Tonの制御を続けている。この瞬間の前には、受電電力P2がP2SSth以下に低下しており(ステップS228:NO)、次のステップS231でNS待ちフラグが1に設定されている。この結果、ステップS232において、2次側コントローラ66が受電電力P2の低下量ΔP2以上の電力値の低下を検知することにより(ステップS232:YES)、1次側12がN−S回路による制御に戻ったことを理解し、次のステップS233でNS待ちフラグを0とする。これにより、2次側14では、ステップS210に戻り、N−S回路による制御に移行する。
2次側14では、N−S回路による制御に移行した場合、t18〜t19の時間帯において、低下量ΔP2の電力低下を補うべく、充電電流I3が目標充電電流I3objに到達するまで、デューティアップ制御を繰り返し行う(ステップS212〜S214:YES→ステップS215)。その後、時点t19で、充電電流I3が目標充電電流I3obj付近に到達した場合、t19〜t20の時間帯では、デューティアップ制御とデューティダウン制御とを交互に行い、充電電流I3を目標充電電流I3objに維持しつつ、充電電圧V3の僅かな上昇に伴って、受電電力P2が僅かに上昇するように、N−S回路による制御を継続させる。
次のt20〜t21の時間帯では、目標充電電流I3objの低下に伴い、N−S回路による制御を継続させながら、デューティダウン制御を行い、目標充電電流I3objの低下に追従するように、充電電流I3を低下させる。これにより、受電電力P2も低下する。その後、t21〜t22の時間帯では、デューティアップ制御とデューティダウン制御とを交互に行い、低下後の目標充電電流I3objに充電電流I3を維持しつつ、充電電圧V3の僅かな上昇に伴って、受電電力P2が僅かに上昇するように、N−S回路による制御を継続させる。
その後、図13の時点t22で、SOCが100%に上昇し、充電電圧V3が充電終止電圧V3objに到達して、ステップS213からステップS222に進んだときに、オン時間Tonが0又は0近傍となり、バッテリ34への充電が停止、又は、最小の電力供給状態となる。
オン時間Tonが0に近い状態を継続することにより、受電電力P2が低下する結果、送電電力P1も低下する。そのため、1次側コントローラ26は、最小の電力供給状態が連続的に規定時間続いている場合には(ステップS111:NO)、ステップS119において、1次側スイッチ18をオフとし、バッテリ34への充電制御を完了させる(図13の時点t23)。一方、2次側コントローラ66においても、同様に、最小の電力供給状態が連続的に規定時間続いている場合には(ステップS219:NO)、ステップS234において、バッテリ34に対する充電制御を終了させる(図13の時点t24)。
[変形例の説明]
なお、電力供給システム10では、N−S回路又はS−S回路に切り替えて、1次側12から2次側14に非接触給電を行う場合について説明したが、電力要求が非共振回路による送電電力P1の範囲内である場合、1次側コントローラ26は、切替スイッチ15を1次側共振コンデンサ21のバイパス状態に維持し、1次側12の回路を非共振回路に維持したままで、N−S回路による非接触給電を行ってもよい。
また、電力供給システム10は、図14のように構成されてもよい。図14において、1次側共振コンデンサ21に対して、1次側コントローラ26からの制御によってオンオフする短絡用スイッチ90と、抵抗器92との直列回路が並列に接続されている。これにより、切替スイッチ15によって共振回路又は非共振回路に切り替わる際、短絡用スイッチ90をオンにすると、1次側共振コンデンサ21に蓄積された電荷が抵抗器92によって速やかに放電される。
[本実施形態の効果]
以上説明したように、本実施形態に係る電力供給システム10によれば、給電側の1次側12と受電側の2次側14との間で、給電情報等の情報交換を行うことなく、且つ、1次側12にインバータを用いることなく、簡単な構成で、且つ、低コストで、1次側12から2次側14への非接触の電力供給を行うことができる。すなわち、非接触で電力供給を行う1次側12の回路を、切替スイッチ15を用いた簡単な構成で、共振回路又は非共振回路に切り替えることにより、2次側14からの電力要求に応じて、非接触の電力供給を適切に行うことができる。
また、1次側12では、インバータを使用しないので、該1次側12を設置するインフラに付帯する交流電源等のベース電源の周波数や電圧をそのまま利用して、電気自動車等の給電対象物に非接触給電を行うことができる。具体的には、一般インフラを利用して給電対象物に給電する際、商用電源の周波数(商用周波数)をそのまま利用することが可能である。また、船舶や航空機内で給電対象物に給電する際、該船舶及び航空機内のインフラ周波数をそのまま利用することができる。例えば、航空機内では、該航空機内のインフラ周波数である400Hzの周波数をそのまま利用することができる。
ここで、1次側12が、交流電源16、1次側スイッチ18、切替スイッチ15及び1次側コントローラ26を有するので、交流電源16から共振回路又は非共振回路への電力供給を効率よく行うことができる。
また、切替スイッチ15によって非共振回路に切り替わり、且つ、1次側スイッチ18によって交流電源16と非共振回路とを導通させた状態で、交流電源16から非共振回路に電力を供給することにより、1次側12から2次側14への非接触の電力供給が開始される。これにより、非接触の電力供給の開始時に、1次側12及び2次側14に許容電流値を超える大きな電流が流れることを回避しつつ、非接触の電力供給を行うことができる。
また、非共振回路及び共振回路が1次側コイル20を含み、2次側14が2次側コイル32及びバッテリ34を有し、1次側コイル20と2次側コイル32との磁界結合によって、1次側12から2次側14への非接触の電力供給が行われるので、非接触の電力供給を効率よく行うことができる。
また、2次側14が2次側コイル32を含む共振回路であるため、非接触の電力供給の開始時には、N−S回路で電力供給が開始され、その後、2次側14の電力要求に応じて、S−S回路に切り替えて電力供給を行うことが可能となる。すなわち、先ず、N−S回路により、許容電流値を超える大きな電流が流れることを回避しつつ、低電力状態で安全に電力供給を開始し、その後、2次側14の電力要求に応じて、切替スイッチ15によって、S−S回路に切り替え、大電力の電力供給を行うことができる。
この場合、2次側14の2次側コントローラ66は、バッテリ34からの電力要求に応じて、負荷抵抗値Rzを制御し、1次側コントローラ26は、非接触の電力供給を行うための送電電力P1に基づいて、切替スイッチ15を制御し、非共振回路又は共振回路に切り替える。このように、1次側12と2次側14のそれぞれにコントローラを設けることにより、1次側12では、給電情報等の情報のやり取りを行うことなく、すなわち、2次側14の状況を知ることなく、監視対象である送電電力P1に基づいて、非共振回路又は共振回路に切り替えるべきか否かを判断することができる。この結果、非接触の電力供給を簡単且つ適切に制御することができる。
具体的に、1次側12が非共振回路に切り替わった状態で非接触の電力供給が開始された場合、送電電力P1が所定の送電電力P1NSthに達したときに、1次側コントローラ26は、切替スイッチ15を制御し、非共振回路から共振回路に切り替える。
すなわち、切替スイッチ15によって非共振回路から共振回路に切り替った後、2次側コントローラ66は、負荷抵抗値Rzを増加させるように制御することにより、2次側14で受電される受電電力P2を増加させる。
そして、1次側コントローラ26は、非共振回路から共振回路への切り替えの前後において、受電電力P2が所定の低下量ΔP2以上低下するような送電電力P1のときに、切替スイッチ15を制御することで、非共振回路から共振回路に切り替える。
これにより、2次側コントローラ66は、受電電力P2の低下量ΔP2以上の低下を検知することにより、1次側12の回路が非共振回路から共振回路に切り替わったと判断し、所望の制御を行うことが可能となる。また、非共振回路から共振回路に切り替わるときに、受電電力P2が低下量ΔP2以上低下するように切り替えポイントを設定しているので、切り替えの前後でバッテリ34側の充電電圧V3及び充電電流I3が許容値(充電終止電圧V3obj、目標充電電流I3obj)を超えることを回避することができる。
また、非共振回路から共振回路への切り替え後、2次側コントローラ66が電力要求の低下に伴って負荷抵抗値Rzを減少させるように制御している場合に、1次側コントローラ26は、共振回路から非共振回路への切り替えの前後において、受電電力P2が所定の低下量ΔP2以上低下するような送電電力P1のときに、切替スイッチ15を制御することで、共振回路から非共振回路に切り替える。
この場合でも、2次側コントローラ66は、受電電力P2の所定の低下量ΔP2以上の低下を検知することにより、1次側12の回路が共振回路から非共振回路に切り替わったと判断し、所望の制御を行うことが可能となる。また、共振回路から非共振回路に切り替わるときに、受電電力P2が低下量ΔP2以上低下するように切り替えポイントを設定しているので、切り替えの前後で充電電圧V3及び充電電流I3が充電終止電圧V3obj及び目標充電電流I3objを超えることを回避することができる。
また、電力供給システム10では、N−S回路による電力供給から出発し、その後、S−S回路による電力供給に切り替わることで、バッテリ34に供給される電力をスムーズに大きくすることができる。また、バッテリ34への電力供給が終了する間際には、該バッテリ34に供給する電力を小さくするため、S−S回路からN−S回路に戻すことにより、送電電流I1を増加させることなく、小電力状態での電力供給を行うことができる。この結果、バッテリ34に対する非接触の電力供給の開始から終了まで、該非接触の電力供給を簡単且つ適切に制御することができる。
なお、電力供給システム10では、N−S回路とS−S回路との切り替えを行うことなく、非接触で電力供給を行うことも可能である。バッテリ34からの電力要求が非共振回路による送電電力P1の範囲内である場合には、切替スイッチ15による切替を行うことなく、1次側12の回路を非共振回路に維持する。この場合でも、バッテリ34に対する非接触の電力供給の開始から終了まで、該非接触の電力供給を簡単且つ適切に制御することができる。
また、2次側コントローラ66は、受電電力P2の低下量ΔP2以上の低下があったときに、切替スイッチ15によって非共振回路又は共振回路の切り替えが行われたと判断し、その判断結果に基づいて、非接触の電力供給を制御するので、2次側14において、非共振回路又は共振回路の切り替えを容易に判断することができる。
さらに、切替スイッチ15は、1次側コントローラ26からの制御によって、1次側共振コンデンサ21をバイパス状態又は接続状態に切り替えるので、簡単な構成で1次側12を非共振回路又は共振回路に切り替えることができる。
さらにまた、1次側共振コンデンサ21に、1次側コントローラ26からの制御によってオンオフする短絡用スイッチ90と、抵抗器92との直列回路が並列に接続されることで、共振回路から非共振回路に切り替わる際に、短絡用スイッチ90をオンすることで、1次側共振コンデンサ21に蓄積された電荷を抵抗器92によって速やかに放電させることができる。この結果、切替スイッチ15による非共振回路又は共振回路の切り替え時に、1次側共振コンデンサ21に蓄積された電荷に起因したアークの発生による、切替スイッチ15の接点の溶着の発生を回避することができる。
また、2次側コイル32に、2次側スイッチ50と、負荷抵抗値Rzの取り得る範囲内の値で任意の固定値に設定された抵抗値の抵抗器52との直列回路が接続され、2次側コントローラ66は、2次側スイッチ50をオンオフさせることにより、2次側コイル32と抵抗器52との導通を制御する。このように、負荷抵抗値Rzの取り得る範囲内の値で任意の固定値に設定された抵抗値の抵抗器52を用いることにより、非接触の電力供給が可能か否かを精度よく判断することができる。
なお、本発明は、上述の実施形態に限らず、この明細書の記載内容に基づき、種々の構成を採り得ることは勿論である。