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JP2018205013A - アントシアニン色素の定量方法 - Google Patents

アントシアニン色素の定量方法 Download PDF

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JP2018205013A JP2017107654A JP2017107654A JP2018205013A JP 2018205013 A JP2018205013 A JP 2018205013A JP 2017107654 A JP2017107654 A JP 2017107654A JP 2017107654 A JP2017107654 A JP 2017107654A JP 2018205013 A JP2018205013 A JP 2018205013A
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剛 箕川
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雅志 今井
諒 石橋
Ryo Ishibashi
諒 石橋
浜崎 孝治
Koji Hamazaki
孝治 浜崎
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Abstract

【課題】 類似化合物の集合組成物である天然アントシアニン色素総量の正確な定量を可能とする技術であって、標準試料のない個別成分であるアントシアニン化合物に対してもその定量を可能とする技術を提供する。【解決手段】 下記に記載の工程、(工程1)アントシアニン化合物を含む測定試料に対して、コリジョンエナジーを変化させた分解処理を3回以上行って、断片化された化合物イオンを積算して含むMS/MS分析でのマススペクトルを取得する工程、及び、(工程2)前記(工程1)にて取得されたマススペクトルから、前記アントシアニン化合物に含まれる共通構造を対象フラグメントイオンとして指標としアントシアニン化合物を定量する工程、を含むことを特徴とする、アントシアニン化合物の定量方法。【選択図】 図2

Description

本発明は、アントシアニン色素の正確な定量を可能とする技術であって、類似化合物の集合組成物である天然アントシアニン色素の定量に適用可能な技術に関する。
アントシアニン色素は、赤、青、紫等の色調を呈する植物原料由来の天然色素化合物であり、近年の消費者の安全志向とも重なり、飲食品、香粧品、医薬部外品、医薬品等の多くの分野での優れた色素素材として利用されている。
アントシアニン色素は、複数の類似化合物の集合体である色素組成物であり、その化合物組成は原料植物の種類や品種、生育期間、生育環境等によって大きく異なる。アントシアニン色素は、アグリコンと糖分子の組み合わせに加えて、有機酸や各種修飾基の有無や種類によって膨大な類似化合物の組み合わせが存在し、それぞれが異なる色調や安定性等に関する分子的性質を有する。
アントシアニン色素を使用する色素剤や飲食品等の製造分野においては、製造ロット等での色調や安定性等の品質に関する要求の点で、アントシアニン色素の正確な定量を、迅速且つ簡易に実行することが求められている。
ここで、アントシアニン色素の定量法としては、ペラルゴニジン−3−グルコシド等の代表的なアントシアニン化合物の標準試料を用いて吸光度により検量線を作成して、当該標準試料である色素化合物に換算した総アントシアニン量として算出する方法が挙げられる。当該手法は簡易法として現場等にて使用されるところ、しかし、当該手法では、標準試料の色素化合物とは吸光度が異なるものへの適用は難しく、色調が異なる類似化合物の集合体組成物である天然アントシアニン色素の定量を正確に行うことはできない。また、当該手法では総アントシアニン量の推定のみで、個別のアントシアニン成分の定量を行うことが原理的にできない。
また、アントシアニン色素に含まれる個別成分を定量する手法としては、HPLCやLC/MS等にて個別成分を定量する手法が挙げられる。しかし、これらの一般的な手法にて定量が可能となるのは、標準試料の準備が可能な一部の化合物のみである。また、換算式等にて総アントシアニン量や総アグリコン量等を推定する場合、分子量や化学特性等が異なる多様な類似化合物集合体であるアントシアニン色素の事情に起因して、これらの推定を正確に行うことはできない。
上記一般技術での事情を具体的な事例で説明すると、例えば、アントシアニン色素の一つである赤ダイコン色素には、ペラルゴニジン系アントシアニンに分類される膨大な種類のアントシアニン化合物が含まれるところ、しかし、標準試料を容易に入手可能なものはペラルゴニジン−3−グルコシド等の極一部のみであり、大部分の天然化合物には標準試料が存在しない。また、赤ダイコン色素の化合物組成は原料ダイコンの品種等によって大きく変化する。そのため、上記従来技術の手法では、赤ダイコン色素に含まれる総アントシアニン量や総ペラルゴニジン量の定量を正確に行うことができない。また、標準試料のない個別のアントシアニン化合物については、その成分毎の個別定量を行うことができない。
Journal of Agricultural and Food Chemistry, 2004 Feb 25 52(4) p688-691, Zhang Z. et al., Comparison of HPLC methods for determination of anthocyanins and anthocyanidins in bilberry extracts.
本発明は、上記従来技術の事情に鑑みてなされたものでありその課題とする処は、類似化合物の集合組成物である天然アントシアニン色素総量の正確な定量を可能とする技術であって、標準試料のない個別成分であるアントシアニン化合物に対してもその定量を可能とする技術を提供することを目的とする。
上記従来技術の状況において本発明者らは鋭意研究を重ねたところ、対象試料中のアントシアニン化合物をMS/MS分析に供した際に、コリジョンエナジーにて分解生成された化合物イオン中に、アントシアニン化合物の共通構造であるアグリコンイオンが含まれることに着目した。しかし、通常のMS/MS分析を行って得られる断片化合物イオンの量を測定しただけでは、類似化合物の集合組成物であるアントシアニン色素を測定対象とした場合、分解生成されるアグリコン量に定量性を見出すことができなかった。
そこで、本発明者らは更に検討を重ね、コリジョンエナジーを変化させた分解処理を3回以上行って積算されたアグリコンイオンを含むMS/MS分析でのマススペクトルを取得したところ、驚くべきことに、当該取得されたマススペクトル中のアグリコンイオン量を指標として当該アグリコンを共通構造として含むアントシアニン化合物の総量の定量が可能となることを見出した。
また、本発明者らは更に検討を重ねたところ、MS/MS分析における3回以上の分解処理のうちの少なくとも1回を前記アントシアニン化合物の未分解ピークが含まれる低エネルギーのコリジョンエナジーにて行い、少なくとも別の1回を前記アントシアニン化合物の未分解ピークを実質的に含まず且つ前記共通構造のアグリコンイオンのピークを含む高エネルギーのコリジョンエナジーにて行い、少なくとも更に別の1回を前記2回のコリジョンエナジーの間のエネルギーにて行ったところ、分子量や構造等が様々な類似化合物の集合組成物である天然アントシアニン色素からでも、定量可能なアグリコンイオン量が安定して生成可能となることを見出した。
本発明者らは、上記知見に基づいて、赤ダイコン色素及び紫イモ色素を測定試料とする定量の実証試験を行ったところ、従来技術では困難であった類似化合物の集合体組成物である天然アントシアニン色素の定量を極めて正確に行うことが可能となることを見出した。当該定量は、所望のアグリコンを有するアントシアニン化合物の総量、全アントシアニン化合物の総量、及び所望のアントシアニン化合物の個別定量、等を同時に行うことが可能であった。また、当該定量手段においては、測定試料中の個別成分を標準化合物として準備する必要はなく、当該アグリコンを含む既知の化合物を用いて検量線を作成するのみで、前記した総量や個別成分量の定量が可能であった。
上記した本発明者らが見出したアントシアニン色素の定量原理は、AIF(All Ion Fragmentation)法の原理を利用して、積算された対象フラグメントイオン(具体的にはアグリコンイオン)が安定した「定量性」を有することを見出した点に創作性が認められるところ、従来のAIF法では、試料中の未知化合物を「定性分析」する方法に用いられることが知られているのみで、上記コリジョンエナジーの設定にて対象フラグメントイオンに定量性が付与される知見は知られていなかった。
この点は、本発明は、従来のAIF分析は「定性分析」のみに用いられる分析手法であるという技術常識の存在下において着想されたものであり、上記コリジョンエナジーの複数設定にて蓄積させた対象フラグメントイオンに「定量性」が付与されることを想起させる技術常識は存在していなかったものと認められる。
なお、一般的な方法としては普及していないが、上記以外のアントシアニン色素の定量方法の従来技術として、測定試料中のアントシアニン化合物に対して酸加水分解を行ってアグリコンを遊離させ、有機溶媒層にアグリコンを抽出してLC/MS等にてアントシアニン含量を定量する方法が報告されている(非特許文献1)。
しかし、当該方法では、酸加水分解反応及び有機溶媒抽出後に得られるアグリコン抽出量のばらつきが大きく、正確な定量を行うことが原理的に困難な方法である。更に当該手法では、測定試料の前処理として酸加水分解と有機溶媒抽出を行うことが必須であるため、試料調製やハンドリングの点で定量操作を簡便且つ迅速に行うことができない。
それに対して、本発明者らが見出した上記定量法では、MS/MS分析を利用した精密定量が可能であることに加えて、化学薬品や酵素処理等での測定試料の前処理等が不要な手法であるため、定量操作を容易に且つ迅速に実行することが可能となる。
本発明者らは上記知見に基づいて本発明を完成するに至った。本発明は具体的には以下に記載の発明に関する。
[項1]
下記に記載の工程、
(工程1)アントシアニン化合物を含む測定試料に対して、コリジョンエナジーを変化させた分解処理を3回以上行って、断片化された化合物イオンを積算して含むMS/MS分析でのマススペクトルを取得する工程、及び、
(工程2)前記(工程1)にて取得されたマススペクトルから、前記アントシアニン化合物に含まれる共通構造を対象フラグメントイオンとして指標としアントシアニン化合物を定量する工程、
を含むことを特徴とする、アントシアニン化合物の定量方法。
[項2]
前記(工程1)に記載のMS/MS分析における3回以上の分解処理が、
少なくとも1回が、前記アントシアニン化合物の未分解ピークが含まれる低エネルギーのコリジョンエナジーにて行うものであり、
少なくとも別の1回が、前記アントシアニン化合物の未分解ピークを実質的に含まず且つ前記共通構造のフラグメントイオンのピークを含む高エネルギーのコリジョンエナジーにて行うものであり、
少なくとも更に別の1回が、前記2回のコリジョンエナジーの間のエネルギーにて行うものである、
項1に記載の方法。
[項3]
前記(工程1)が、
コリジョンエナジーを変化させた3回以上の分解処理の間、各回の分解処理後の化合物イオンを一定の空間範囲内に電気的に補足して加算蓄積されている状態とし、全ての分解処理の回数分の終了後にこれを一度に積算して検出することにより行う工程である、
項1又は2に記載の方法。
[項4]
前記(工程1)におけるMS/MS分析が、測定試料をLC/MS分析したものに対して行うものである、項1〜3のいずれかに記載の方法。
[項5]
下記に記載の装置を用いることを特徴とする、項1〜4のいずれかに記載の方法:
(装置)コリジョンエナジーを変化させた3回以上の分解処理を行うMS/MS分析が可能であって、コリジョンエナジーでの分解処理後の化合物イオンを電気的に補足して積算して検出又は検出して積算することが可能な質量分析装置。
[項6]
前記質量分析装置が、電場型フーリエ変換法を原理とする質量分析装置である、項5に記載の方法。
[項7]
前記対象フラグメントイオンとする共通構造が、
前記アントシアニン化合物のアグリコンのイオン又は前記アグリコンに由来する類似化合物のイオンである、
項1〜6のいずれかに記載のアントシアニン色素の定量方法。
[項8]
前記定量方法が、
複数のアントシアニン化合物を含んでなるアントシアニン色素組成物に対して、所望のアグリコンを有するアントシアニン化合物の総量、全アントシアニン化合物の総量、及び/又は所望のアントシアニン化合物の個別定量、が可能な方法である、
項1〜7のいずれかに記載のアントシアニン色素の定量方法。
本発明は、類似化合物の集合組成物である天然アントシアニン色素総量の正確な定量を可能とする技術であって、標準試料のない個別成分であるアントシアニン化合物に対してもその定量を可能とする技術を提供する。
本発明に係るアントシアニン色素の定量方法について、その主要工程の概略を示したフロー図である。
本発明に係る定量方法を構成する主要工程の原理を示した概念図である。図2A:MS分析によりMSマススペクトルを取得する工程。図2B:コリジョンエナジーの異なる分解処理を3回行って、分解度合の異なる3回の分解化合物イオンの混合物を取得する工程。図2C:MS/MS分析にてフラグメントイオンの積算値を測定する工程。図中の符号「M」は定量対象である分解前の化合物イオン(親イオン)を示す。図中の符号「F」は分解処理後に生成された対象フラグメントイオンを示す。
アントシアニン化合物を構成する一般的な分子構造について、ペラルゴニジン−3−カフェオイルソホロシド−5−グルコシドを用いて例示した構造図である。
本発明に係る定量方法におけるMS/MS分析での分解処理において、アントシアニン化合物の分解産物を例示した概念図である。
実施例1に係るコリジョンエナジーを変化させた分解処理において、分解前のアントシアニン化合物イオン及び生成された対象フラグメントであるアグリコン(ペオニジン)イオンのピーク面積を測定した結果図である。
実施例2に係るコリジョンエナジーを変化させたMS/MS分析での分解処理において、分解前のアントシアニン化合物イオン及び生成された対象フラグメントであるアグリコン(シアニジン)イオンのピーク面積を測定した結果図である。
実施例3に係るコリジョンエナジーを変化させたMS/MS分析での分解処理において、高分子アントシアニン化合物の一つであるペラルゴニジン−3−カフェオイル,フェルロイルソホロシド−5−マロニルグルコシド(m/z:1195.3102)に関するMS/MSマススペクトルの結果を示した結果図である。図7A:HCD10でのマススペクトル。図7B:HCD40でのマススペクトル。図7C:HCD80でのマススペクトル。
実施例3に係るコリジョンエナジーを変化させたMS/MS分析での分解処理において、生成された対象フラグメントであるアグリコン(ペラルゴニジン)イオンのピーク面積を測定した結果図である。
実施例3のHCD条件によりペラルゴニジンクロライドの希釈系列試料に対してAIF分析を利用した検出を行い、得られたペラルゴニジンイオンのピーク面積をプロットして得られた回帰直線の結果図である。
実施例4のHCD条件により赤ダイコン色素の希釈系列溶液に対してAIF分析を利用した検出を行い、得られたペラルゴニジンイオンのピーク面積をプロットして得られた回帰曲線の結果図である。
実施例6に係る赤ダイコン色素に対するLC/MS分析において、得られたトータルイオンクロマトグラムを示す結果図である。
実施例6において構造推定された赤ダイコン色素に含まれるアントシアニン化合物の構造式を示す図である。
実施例7に係るコリジョンエナジーを変化させたMS/MS分析での分解処理において、生成された対象フラグメントであるアグリコン(ペオニジン、シアニジン)イオンのピーク面積を測定した結果図である。
実施例7のHCD条件によりペラルゴニジンクロライドの希釈系列試料に対してAIF分析を利用した検出を行い、得られたペオニジンイオンのピーク面積をプロットして得られた回帰直線の結果図である。
実施例7のHCD条件によりシアニジンクロライドの希釈系列試料に対してAIF分析を利用した検出を行い、得られたシアニジンイオンのピーク面積をプロットして得られた回帰直線の結果図である。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。また、本発明に係る定量方法の原理及び工程等に関する説明を、図1〜4に例示的に示す。
本明細書中、「Pn」はペオニジンを、「PnCl」はペオニジンクロライドを、「Cy」はシアニジンを、「CyCl」はシアニジンクロライドを、「Pg」はペラルゴニジンを、「PgCl」はペラルゴニジンクロライドを示す略称として用いられる場合がある。
なお、本発明に係る技術的範囲は、本発明に係る技術的特徴が奏する作用効果を実質的に妨げるものでなければ、下記に記載した構成以外の他の構成を含む態様を除外するものではない。また、本発明に係る技術的範囲は、下記した構成を全て含む態様に限定されるものではない。
1.定量原理
本発明は、アントシアニン色素の正確な定量を可能とする技術であって、類似化合物の集合組成物である天然アントシアニン色素の定量に適用可能な技術に関する。
[測定試料]
本発明に係るアントシアニン色素の定量方法における測定試料は、アントシアニン化合物を含む試料である。
ここで、本明細書中、「アントシアニン化合物」とは、赤、青、紫等の色調を呈する植物原料由来の天然色素化合物であり、アグリコンであるアントシアニジンに糖分子(例えば、グルコース、ガラクトース、ラムノース等)が結合した配糖体である。糖分子の他に、有機酸(例えば、シナピン酸、カフェ酸、コハク酸、マロン酸等)が結合してアシル化アントシアニンとなることもある。アントシアニン化合物の構造は、アグリコンの種類、糖分子の種類及び結合位置、有機酸の有無や種類及び結合位置等の組み合わせにより、分子量や構造が異なる膨大な種類の分子種が存在する(図3参照)。そして、アントシアニン化合物は、これらの構造の相違により呈色色調が様々に異なる。
本発明の測定試料としては、アントシアニン化合物を単一成分として含むものも含まれるが、具体的には、分子量等が異なる類似化合物である2以上のアントシアニン化合物を含む色素組成物を挙げることができる。また、本発明に係る測定試料としては、アグリコンの種類の異なる2系統以上のアントシアニン化合物を含んでなるアントシアニン色素組成物に対しても好適に測定試料とすることができる。
本発明に係る測定試料としては、多種類のアントシアニン化合物を含んでなる天然原料由来のアントシアニン色素を、好適に測定試料とすることが可能である。
ここで、天然原料由来のアントシアニン色素を例示すると、例えば、赤ダイコン色素、赤キャベツ色素、紫イモ色素、ブドウ果汁色素、ブドウ果皮色素、有色ジャガイモ色素、紫トウモロコシ色素、チョウマメ色素、黒豆色素、エルダーベリー色素、クランベリー色素、グースベリー色素、サーモンベリー色素、ストロベリー色素、チェリー色素、ダークスイートチェリー色素、チンブルベリー色素、デュベリー色素、ハイビスカス色素、ハクルベリー色素、ブラックカーラント色素、ブラックベリー色素、レッドカーラント色素、ローガンベリー色素、プラム色素、ブルーベリー色素、ボイセンベリー色素、ホワートルベリー色素、マルベリー色素、モレロチェリー色素、ラズベリー色素、シソ色素、赤米色素、紫ニンジン色素、等を挙げることができる。また、これらから選ばれる2以上を含んでなる混合色素組成物を挙げることができる。
本発明に係る測定試料としては、色素製剤、色素抽出物、果汁、野菜汁等の様々なアントシアニン色素組成物の形態が含まれる。
また、本発明に係る測定試料としては、アントシアニン化合物の他に他の色素化合物が含まれる混合色素組成物の形態が含まれる。例えば、クチナシ赤色素、クチナシ黄色素、クチナシ青色素、ベニバナ色素、ベニコウジ色素、ウコン色素、タマリンド色素、カキ色素、カラメル色素、スピルリナ色素、コウリャン色素、コチニール色素、トマト色素、等の天然色素を挙げることができるが特にこれらに制限されない。また、各種合成色素や各種香料化合物等の混合色素組成物についても、本発明に係る測定試料とすることが可能である。
本発明に係る測定試料としては、液体試料の形態にて分析に供することが望ましい。具体的には、水で希釈した水溶液として分析に供することが望ましい。
本発明に係る分析工程に供する測定試料の試料濃度としては、使用する装置の性能に応じて適宜決定することが可能であるが、MS/MS分析のスキャンポイントを多く確保して解像度の高いデータ取得を行うことを考慮すると、定量性が担保される量の色素化合物を含有し且つ全化合物のイオン量を少なく調製した試料濃度を採用することが好適である。
このような試料濃度としては、一例としては、色価0.001〜1、好ましくは色価0.005〜0.1程度になるようにアントシアニン化合物を含む試料溶液を挙げることができる。
なお、本明細書中、「色価」とは、「色価E10% 1cm」を意味し、「色価E10% 1cm」とは、10質量%の色素組成物含有溶液を調製した場合において、光路長が1cmの測定セルを用いて、可視光領域における極大吸収波長(λmax)の吸光度(A:Absorbance)を測定することで、算出される値である。「色価(10%E)」と表記する場合もある。詳細には、第8版食品添加物公定書(厚生労働省)に記載の方法に従って算出できる。
[測定装置]
本発明に係るアントシアニン色素の定量方法は、コリジョンエナジーを変化させた3回以上の分解処理を行うMS/MS分析が可能であって、コリジョンエナジーでの分解処理後の化合物イオンを電気的に補足して積算して検出又は検出して積算することが可能な質量分析装置、を用いることを特徴とする方法である。
当該装置として好適には、分析精度及び分析操作の大幅な簡便性の観点を踏まえると、i)コリジョンエナジーを変化させた3回以上の分解処理の間、各回の分解処理後の化合物イオンを一定の空間範囲内に電気的に補足して加算蓄積されている状態とし、全ての分解処理の回数分の終了後にこれを一度に積算して検出することが可能な質量分析装置であることが好ましい。
なお、当該装置としては、ii)分解処理後の化合物イオンをまず検出しておき、これをコリジョンエナジーの設定分だけ繰り返してから事後的に検出値を積算する態様を採用することも可能である。当該態様も本発明の範囲から排除されるものではないが、但し、本発明では、分析精度及び分析操作の簡便性の両観点から、上記段落に記載のi)の態様を採用する方が好適である。
本発明に係る方法に使用可能な装置としては、上記分析を実現可能な質量分析装置であれば、公知又は非公知の如何なる装置又は器具等を用いることが可能である。当該装置の一態様としては、例えば、電場型フーリエ変換法、磁場型フーリエ変換法、イオントラップ法等を原理とする質量分析装置を用いることが可能である。
本発明においては、特に、電場型フーリエ変換法を原理とする質量分析装置を用いた場合、精密測定での精度の観点から好適態様となり望ましい。ここで、電場型フーリエ変換法を原理とする質量分析装置としては、本出願時においては、サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製のオービトラップ法を原理とする一例の質量分析装置を挙げることができるが、本発明の態様は当該装置を使用する態様に制限されるものではない。
また、本発明に係る方法に使用可能な装置としては、上記MS/MS分析の前段階の分析として、LC/MS分析が可能な装置であることが好適である。即ち、本発明に係る方法に使用可能な装置としては、上記原理を利用した装置であって更にLC/MS/MS分析が可能な装置であることが好適である。
当該装置としては、MS/MS分析のスキャンポイントを多く確保して解像度の高いデータ取得を行うために、所望の分子量の範囲にある化合物を選別してから上記MS/MS分析を実行することが好適である。当該態様として好適には、MS/MS分析の前段階の分析機器として、四重極型のMS分析手段等を備えた装置であることが好適である。
[分析工程]
本発明に係る定量方法は、上記原理を用いた質量分析装置を用いてAIF分析を利用して定量を行うことが可能である。本明細書中、「AIF(All Ion Fragmentation)分析」とは、対象化合物にコリジョンエナジーを変化させた複数回の分解処理を伴うMS/MSを行い、当該断片化された化合物イオンを積算して含むマススペクトルを取得する分析法を指す(図1〜4参照)。
具体的に、本発明に係るアントシアニン色素の定量方法では、アントシアニン化合物を含む測定試料に対して、コリジョンエナジーを変化させた分解処理を3回以上行って、断片化された化合物イオンを積算して含むMS/MS分析でのマススペクトルを取得する工程、を行うことを特徴とする方法である。
MSスキャンデータの取得
当該AIF分析工程におけるMS/MS分析は、第1回目のMS分析にて取得されたマススペクトルのピークイオンに対して分解処理のためエネルギー(コリジョンエナジー)を与えて分解生成されて化合物イオンを検出する工程である。当該第1回目のMS分析は、測定試料中に含まれる未分解化合物をそのまま検出したマススペクトルを取得するための質量分析工程である。また、MS/MS分析は、第1回目のMS分析のピークイオンを断片化して検出するための第2回目の質量分析工程である。
ここで、MS/MS分析の前に行われる第1回目のMS分析としては、低含量のアントシアニン化合物をも網羅的に定量するために、フルMSスキャンデータとして取得されることが望ましいところ、しかし、MS/MS分析のスキャンポイントを多く確保して解像度の高いデータ取得を行うためには、所望の分子量の範囲にある化合物をある程度絞って選別した後に、上記MS/MS分析を実行することが好適である。
そのため、本発明に係る定量方法では、i)測定対象であるアントシアニン化合物の分子量がある程度の範囲内に予測できることから、第1回目のMS分析の対象化合物として、m/z値150〜2000、好ましくはm/z値400〜1500程度の分子量の範囲に絞って、第1回目のMSスキャンデータを取得することが好適である。
なお、当該分析工程におけるMS/MS分析の別態様としては、ii)第1回目のMS分析では分子量の範囲限定を行わずに全ての化合物についてのフルMSスキャンデータを取得して、その後のMS/MS分析の際に一定閾値以上のシグナルピーク及び/又は上位所定の範囲にあるシグナルピークに絞って、MS/MS分析を行う態様を採用することもできる。本発明に係る定量方法としては、当該ii)に記載の態様を排除するものではないが、但し、当該態様では試料中の含量の少ない化合物が漏れるリスクがある。
そのため、本発明では、網羅性と解像度の両方を充足する観点から、第1回目のMS分析としては、上記段落に記載のi)の態様を採用する方が好適である。
また、当該分析工程における第1回目のMS分析としては、分析対象が液体試料中のアントシアニン化合物であることから、LC/MS分析であることが好適である。
コリジョンエナジーによる分解処理
本発明に係る定量方法のAIF分析工程では、上記第1回目のMSマススペクトルを構成するピークイオンのそれぞれに対して、コリジョンエナジーを変化させた分解処理によるMS/MS分析を行う工程を含むものである。当該MS/MS分析は、上記i)の態様では網羅的に実行され、上記ii)の態様ではデータ依存的に実行される。
実施形態の一例としては、実施例に記載のオービトラップ法を原理とする装置の場合であれば、高エネルギー衝突乖離セル(HCDコリジョンセル)にて当該分解処理を行うことが可能となる。ここで、本明細書中「HCD」とは、higher energy collisional dissociationの略称として記載している。
本発明に係る定量方法では、分子量や構造が異なる膨大な数の類似化合物にて組成される天然アントシアニン色素組成物を測定試料とする場合、当該MS/MS分析における3回以上の分解処理として、測定試料に対するそれぞれの分解処理でのエネルギー付与等をそれぞれ独立して3回以上の態様にて実行することが望ましい。ここで、それぞれ独立して3回以上とは、対象試料に対する分解処理を別途に3通り以上独立して行う態様を指す。ここで、本発明に係る定量方法における当該分解処理を行う回数としては、試料中の分解に要するエネルギー状態が違う類似化合物の存在を網羅するために3回以上を挙げることができる。具体的には3〜40回、好ましくは3〜20回程度を挙げることができる。
当該MS/MS分析における3回以上の分解処理としては、具体的には、(条件1)少なくとも1回が、前記アントシアニン化合物の未分解ピークが含まれる低エネルギーのコリジョンエナジーにて行うものであることが好適である。当該(条件1)のコリジョンエナジーは、低分子アントシアニン化合物由来の対象フラグメントイオンを過剰分解させることなく回収するためのエネルギー条件である。
ここで、当該コリジョンエナジーとして好ましくは、前記アントシアニン化合物の未分解ピークを含み且つ前記共通構造のフラグメントイオンのピークも含むコリジョンエナジーにて行うものが好適である。
また、当該MS/MS分析における3回以上の分解処理としては、(条件2)少なくとも別の1回が、前記アントシアニン化合物の未分解ピークを実質的に含まず且つ前記共通構造のフラグメントイオンのピークを含む高エネルギーのコリジョンエナジーにて行うものであることが好適である。当該(条件2)のコリジョンエナジーは、高分子アントシアニン化合物の分解に十分なエネルギーを与えて、高分子化合物由来の対象フラグメントイオンを回収するためのエネルギー条件である。
ここで、当該(条件2)に記載の「前記アントシアニン化合物の未分解ピークを実質的に含まず」とは、測定試料であるアントシアニン化合物が十分に分解されている状態を示すもので、本発明の定量性を担保する程度に対象フラグメントイオンが分解生成されていることの十分条件を示すものである。具体的には、コリジョンエナジー付与前の未分解状態のアントシアニン化合物量の10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは1%以下となっている状態であれば、当該条件を満たすと判断できる。当該条件におけるアントシアニン化合物の未分解ピークを含むか否かの判断としては、アントシアニン色素組成物に含まれるアントシアニン化合物のうちの最も分子量の高いものを指標としてその有無を判断することが可能となる。
また、当該(条件2)に記載の「フラグメントイオンのピークを含む」としては、好適には、フラグメントイオンの最も高いピーク面積に対して1%以上、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上のピーク面積であれば当該条件を明確に満たすと判断することが可能である。当該ピーク面積が少なすぎる場合、対象フラグメントイオンの過剰分解が進み過ぎている可能性があり好適とはいえない。
また、当該MS/MS分析における3回以上の分解処理としては、(条件3)少なくとも更に別の1回が、前記2回コリジョンエナジーの間にあるエネルギーにて行うことが好適である。当該(条件3)に記載の分解処理のコリジョンエナジーとしては、他の分解処理におけるコリジョンエナジーとは異なるエネルギー状態であることが好適である。また、当該MS/MS分析における分解処理の全体での回数が4回以上である場合、当該(条件3)のコリジョンエナジーでの分解処理を複数回行う態様であることが好適である。
当該コリジョンエナジーとして好ましくは、中程度の分子量のアントシアニン化合物由来の対象フラグメントイオンを確実に回収するために、(条件1〜3)の各分解処理間のエネルギー値の間隔が均等に又は実質的に均等になるコリジョンエナジーを採用することが好適である。ここで、当該条件における実質的に均等とは、誤差が10%以内、好ましくは5%以内、より好ましくは1%以内であって、本発明の定量性を担保する程度に対象フラグメントイオンが十分に分解生成される範囲を指すものである。
なお、当該MS/MS分析における分解処理としては、全ての分解処理におけるコリジョンエナジーがお互いに異なるエネルギー状態であることが好適であるところ、同一のエネルギー状態にあるコリジョンエナジーにて重複した分解処理を行う態様が排除されるものではない。また、複数回の分解処理におけるコリジョンエナジーのエネルギー状態の高さの順番については、特に制限はなく如何なる順番にて分解処理を行うことも可能である。
本発明に係るアントシアニン色素の定量方法では、MS/MS分析での分解処理をこのようなコリジョンエナジーにて行うことによって、類似化合物の集合であるアントシアニン色素組成物に対しても、アグリコンを共通構造として有する化合物の定量が可能となる。
特に、本発明に係る定量方法においては、天然アントシアニン色素組成物に含まれる様々な分子量の類似化合物のアントシアニン化合物からのアグリコン生成を確実に行うために、コリジョンエナジーの設定範囲を広く且つ適切な範囲に設定することが好適である。ここで、当該AIF分析におけるコリジョンエナジーの設定範囲が適切でない場合、測定試料中のアントシアニン化合物の定量を正確に行うことができず好適でない。
本発明に係るアントシアニン色素の定量方法では、所定の装置にて所定の試料に関するコリジョンエナジーの設定範囲の検討を行った場合、それ以降に同種の試料に関する定量を行う際に、以前の検討にて決定したコリジョンエナジーの設定範囲を採用して迅速に定量操作を行うことが可能となる。
分解処理後化合物イオンの積算
当該AIF分析工程では、上記にてコリジョンエナジーを変化させた分解処理を3回以上行った後、断片化された化合物イオンを積算して含むMS/MS分析でのマススペクトルを取得する工程を含むものである。
ここで、分解処理後化合物イオンの積算を行う態様としては、i)コリジョンエナジーでの分解処理後の化合物イオンを電気的に補足して積算して検出する態様にて行うことが好適である。当該態様として、詳しくは、コリジョンエナジーを変化させた3回以上の分解処理を順次実行する間、様々に断片化された化合物イオン(エネルギー状態によっては未分解のままの化合物イオンを含む)を一定の空間範囲内に電気的に補足して加算蓄積された混合物状態とし、全ての分解処理の回数分の終了後にこれを一度に積算して検出することにより行う態様を採用することが好適である。
当該態様をコリジョンエナジーでの分解処理と併せて更に例示すると、(第1回目)最初にある強度のコリジョンエナジーにて試料中の化合物の分解処理を行って、当該処理にて得られた化合物イオン(未分解の化合物イオン及び断片化されたフラグメントイオン等を含む)を別の空間内にて電気的に補足蓄積させ、(第2回目)次に第1回目とは異なる強度のコリジョンエナジーにて同様にして試料中の化合物の分解処理を行って、当該処理にて得られた化合物イオンを前記空間内にて前段階の化合物イオンと一緒に電気的に補足蓄積させ、(第3〜n回目)更に前段階とは異なる強度のコリジョンエナジーにて同様にして試料中の化合物の分解処理を行って、当該処理にて得られた化合物イオンを前記空間内にて前段階までの化合物イオンと一緒に電気的に補足蓄積させ、全ての分解処理の回数分の終了後にこれを一度に検出する態様を挙げることができる。
当該工程における化合物イオンの電気的補足状態は、電場型フーリエ変換法、磁場型フーリエ変換法、イオントラップ法等を原理とする質量分析装置において、コリジョンエナジーでの分解処理を行う部位とは異なる部位等での電極を配置した空間等にて実現することが可能である。
また、当該AIF分析工程における「一定空間内に電気的に補足して加算蓄積する」態様として好適には、電極の周囲の電場にイオンを回転させて補足保持可能な電極配設空間を設置し、これとは別に配置したコリジョンエナジー分解反応空間を配置し、コリジョンエナジー分解反応空間にて処理された化合物イオンを当該電極配設空間に順次流入させて、当該電極の周囲の電場にて化合物イオンを順次補足させて加算的に蓄積される態様、を好適に挙げることができる。当該好適態様は、精密定量を行う場合において特に好適であり、電場型フーリエ変換法等を原理とする質量分析装置において実現可能となる。
実施例に記載の一実施形態としては、オービトラップ法の原理を利用した装置におけるオービトラップMS2の紡錘型電極の周囲に発生する電場を利用する態様を挙げることができる。
また、当該AIF分析工程における断片化された化合物イオンを積算して含むMS/MS分析でのマススペクトルを取得する工程としては、分解処理後化合物イオンの積算を行う態様として、上記段落に記載のi)の態様の他に、分解処理後の化合物イオンをまず検出しておき、これをコリジョンエナジーの設定分だけ繰り返してから事後的に検出値を積算するデータ処理を行う態様、を採用することも可能である。当該ii)の態様も本発明の範囲から排除されるものではないが、但し、本発明では、分析精度及び分析操作の簡便性の両観点から、上記段落に記載のi)の態様を採用する方が好適である。
当該AIF分析工程では、上記積算された化合物イオンを示す値としては、各種演算処理を行った値を用いることも可能である。例えば、分解処理を行った回数にて除して均等化した値を当該定量に用いることも可能である。
対象フラグメントイオン
本発明に係るAIF分析工程でのMS/MS分析にて取得されたマススペクトルには、分解の進行度合に従って、未分解のアントシアニン化合物イオン、中間生成物イオン、アントシアニンを構成していた共通構造物イオン、過剰分解された低分子化合物イオン、等の多様な化合物イオンが、分解度合の様々な段階の積算ピーク値として含まれている。
本発明では、これらのうち、測定試料中のアントシアニン化合物の分子種が有する共通構造を構成する化合物イオンの積算ピークを指標とすることによって、測定試料中に含まれていた当該共通構造を有するアントシアニン化合物の総量を定量することが可能となる。
即ち、本発明に係るAIF分析工程では、上記MS/MS分析にて取得されたマススペクトルから、前記アントシアニン化合物に含まれる共通構造を対象フラグメントイオンとして指標としアントシアニン化合物を定量する工程が含まれる。
当該工程においては、詳しくは、アントシアニン色素の正確な定量性を踏まえると、測定試料中のアントシアニン化合物の分子種が有する共通構造であって且つアントシアニン化合物以外の測定試料中の化合物の構成構造ではない化合物イオンを採用することが好適である。
このような条件を充足する分解処理後に生成される化合物としては、測定試料に含まれるアントシアニン化合物のアグリコン又はそれに由来する類似化合物を採用することが好適である。即ち、本発明に係る対象フラグメントイオンとしては、前記アントシアニン化合物のアグリコンイオン又は前記アグリコンに由来する類似化合物イオンを、検出対象とすることが好適である。ここで、アグリコンに由来する類似化合物のイオンとしては、植物体内での代謝、測定試料の保管や加工等における変化により生成された官能基置換化合物等を挙げることができる。
本発明に係る対象フラグメントイオンであるアントシアニン化合物から分解生成されるアグリコンとは、具体的にはアントシアニジンを指す。アントシアニジンの一般構造式を下記(式1)として示した。下記(式1)中におけるR〜Rは、水素原子(−H)、水酸基(−OH)、又はメトキシル基(−OCH)のいずれかを示す。
アントシアニジンは、A環、B環、C環の3つの環構造からなり、B環(式(1)右側のベンゼン環)に付加する水酸基(−OH)やメトキシル基(−OCH)の数によりペラルゴニジン、シアニジン、デルフィニジン、ペオニジン、ペチュニジン、マルビジンの6系統に主として分類される。また、他にもオーランチニジン、ルテオリニジン、ヨーロピニジン、ロシニジン等を挙げることができる。これらは、アントシアニン化合物の構成アグリコンとなった場合にその色調が様々に異なる。
なお、本発明に係る対象フラグメントイオンとしては、これらの列挙したアントシアニジンに限定されるものではなく、測定試料中のアントシアニン化合物のアグリコンであって且つ当該アントシアニン化合物以外の測定試料中の化合物の構成構造ではない化合物イオンであれば、上記以外のアントシアニジンを対象フラグメントイオンとして用いることが可能となる。
2.具体的定量手法
本発明では、上記段落に記載の原理及び知見を利用することによりアントシアニン色素の正確な定量が可能となる。
[濃度換算]
本発明に係る定量方法において当該共通構造である対象フラグメントイオンの検出データから実際の濃度値を算出するためには、当該対象フラグメント構造を含む何等かの化合物を1以上準備して当該化合物の希釈系列を作成して検量線を作成するのみで、測定試料の検出データから濃度値を算出することが可能となる。
例えば、対象フラグメントとしてアグリコンを採用する態様では、当該アグリコンを含む既知の化合物に対して本発明に係るAIF法と同条件(コリジョンエナジーの設定等)での分析を行って検量線を作成することで、測定試料の検出データと分子量情報から、測定試料中の対象アントシアニン化合物の濃度値や含量値を算出することが可能となる。
ここで、濃度換算を行うための検量線としては、測定試料中の個別成分を標準化合物として準備して検量線を作成する必要はなく、例えば、対象フラグメントとしてアグリコンを採用した場合であれば、当該アグリコンを含む既知の低分子アントシアニン化合物、当該アグリコンの塩化物、等の対象フラグメントである共通構造化合物の生成が可能な化合物であれば如何なるものを用いてもよい。
[各種態様]
共通構造を含む全化合物の定量
アントシアニン化合物には、分子量や構造が異なる膨大な種類の分子種が存在し、通常の天然アントシアニン色素はこれらの類似化合物の集合体組成物として存在するところ、本発明に係る定量方法では、上記AIF分析を利用した共通構造である化合物イオンを対象フラグメントイオンとする定量手法であるため、当該共通構造を含む全てのアントシアニン化合物の定量が可能となる(図1〜4参照)。
従って、本発明に係る定量方法では、測定試料に含まれるアントシアニン化合物を構成するアグリコンをAIF分析での対象フラグメントイオンとして検出することで、当該アグリコンを「共通構造」として含むアントシアニン化合物の総量を定量することが可能となる。
当該態様の具体的な測定例としては、例えば、赤ダイコン色素を測定試料としてペラルゴニジンイオンを対象フラグメントイオンとして検出した場合、赤ダイコン色素に含まれるペラルゴニジン系アントシアニンの総量を定量することが可能となる。
全アントシアニン化合物の総量の定量
本発明に係る定量方法では、上記AIF分析を利用して測定試料中に含まれる「全アントシアニン化合物の総量」を定量することが可能となる。当該態様としては、詳しくは、測定試料に含まれるアントシアニン化合物を構成するアグリコンの種類の全てを対象フラグメントイオンとして本発明に係る定量を行うことで、全アントシアニン化合物の総量を定量することが可能となる。
当該態様の具体的な測定例として、例えば、赤ダイコン色素(ペラルゴニジン系アントシアニン化合物のみをアントシアニン化合物として含む)を測定試料として全アントシアニンの総量を定量する場合、ペラルゴニジンイオンを対象フラグメントイオンとして上記AIF分析にてペラルゴニジン系アントシアニンの総量を定量し、当該値を以て赤ダイコン色素に含まれる全アントシアニン化合物の総量とすることが可能となる。
また、別の態様としては、アグリコンの種類の異なる2系統以上のアントシアニン化合物を含んでなるアントシアニン色素組成物に対しても好適に測定試料とすることができる。当該態様の測定例としては、例えば、紫イモ色素(ペオニジン系アントシアニン化合物とシアニジン系アントシアニン化合物をアントシアニン化合物として含む)を測定試料として全アントシアニンの総量を測定する場合、ペオニジンイオン及びシアニジンイオンを対象フラグメントイオンとして上記AIF分析にてペオニジン系アントシアニンの総量とシアニジン系アントシアニンの総量を定量し、これらの和を以て紫イモ色素に含まれる全アントシアニン化合物の総量とすることが可能となる。
個別成分の定量
本発明に係る定量方法では、上記AIF分析を利用して測定試料中に含まれる「各アントシアニン化合物の個別成分量」を定量することが可能となる。当該態様としては、詳しくは、測定試料に含まれる所望のアントシアニン化合物を構成するアグリコンを対象フラグメントイオンとして本発明に係るAIF法にて定量し、所望の個別成分由来のシグナル含有率を測定することで、測定試料中における当該所望のアントシアニン化合物の個別含量を定量することが可能となる。
ここで、当該個別成分の測定データから実際の濃度値を算出する場合は、上記した共通構造を利用した検量線が一律に使用可能であるため、当該測定対象である個別成分を標準化合物として準備して、その標準化合物ごとに検量線を作成する操作を行うことは不要となる。
また、本発明に係る定量方法では、上記した共通構造に基づく定量を行うと同時に、測定試料に含まれる所望のアントシアニン化合物の個別成分の構造決定を行うことが可能となる。本発明に係る定量方法の一実施形態においては、AIF分析を行う前段階にて通常のMSスキャンデータが併せて取得されるところ、当該MSスキャンデータのマススペクトル、MS/MS分析での断片化マススペクトル等から、上記に記載の装置が通常に備える機能により、所望のアントシアニン化合物の構造決定を行うことが可能となる。当該構造解析では、必要に応じて(MS)n段の分析による多段階解析を行うことが有効である場合がある。
[本発明に係る定量法の主な利点]
本発明に係る定量方法は、MS/MS分析にて分解生成される共通構造のフラグメントイオンについて、定量性を有するように分析することを特徴とする方法であるため、従来技術では困難であった類似化合物の集合体組成物である天然アントシアニン色素の定量を正確に行うことが可能となる。
本発明に係る定量方法では、所望のアグリコンを有するアントシアニン化合物の総量、全アントシアニン化合物の総量、所望のアントシアニン化合物の個別定量等を同時に実行することが可能となる。また、これらを別途行うことも可能である。
本発明に係る定量方法では、測定試料中の個別成分を標準化合物として準備する必要がなく、対象フラグメントとしてアグリコンを採用する場合であれば、当該アグリコンを含む既知の化合物を用いて検量線を作成するのみで、前記した総量や個別成分量の定量が可能となる。
本発明に係る定量方法では、その測定原理上、化学薬品や酵素処理等での測定試料の前処理が不要な手法であるため、試料調製や定量操作を容易に且つ迅速に実行することが可能となる。
ここで、上記本発明に係る定量法の利点と比較した従来技術であるアントシアニン化合物の定量法との相違点を記載する。
従来技術として汎用される定量として、i)代表的なアントシアニン化合物の標準試料を用いて吸光度により検量線を作成して、当該標準試料である色素化合物に換算した総アントシアニン量として算出する吸光度法が知られている。当該手法は簡易法として現場等にて広く使用されている方法である。しかし、当該手法では、標準試料の色素化合物とは吸光度が異なるものへの適用は難しく、色調が異なる類似化合物の集合体組成物である天然アントシアニン色素の定量を正確に行うことはできない。
また、別の従来技術としては、ii)測定試料中のアントシアニン化合物に対して酸加水分解を行ってアグリコンを遊離させ、有機溶媒層にアグリコンを抽出してLC/MS等にてアントシアニン含量を定量する方法が報告されている。しかし、当該方法では、酸加水分解反応及び有機溶媒抽出後に得られるアグリコン抽出量のばらつきが大きく、正確な定量を行うことが原理的に困難な方法である。更に当該手法では、測定試料の前処理として酸加水分解と有機溶媒抽出を行うことが必須であるため、試料調製やハンドリングの点で定量操作を簡便且つ迅速に行うことができない。
また、別の従来技術としては、iii)アントシアニン色素に含まれる個別成分を定量する手法として、HPLCやLC/MS等にて個別成分を定量する手法が挙げられる。しかし、当該手法にて定量が可能となるのは、標準試料の準備が可能な一部の化合物のみであり、分子量や化学特性等が異なる多様な類似化合物の集合体であるアントシアニン色素の定量を正確に行うことはできない。
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明の範囲はこれらにより限定されるものではない。
[実施例1]『アントシアニン化合物の単独成分での定量』
電場型フーリエ変換法を原理とするLC/MS/MSのAIF分析を利用して、アントシアニン色素を構成するアグリコンのフラグメントイオンを指標とした定量が可能かを検討した。
(1)「測定試料」
紫サツマイモ色素に含まれるアントシアニン化合物であるペオニジン−3−グルコシド(Pn−3−glc)を水で希釈して色価0.01の測定試料を調製した。当該アントシアニン化合物としては、和光純薬工業社製の精製化合物を用いた。
(2)「MS/MSにおけるコリジョンエナジーの検討」
上記測定試料をオービトラップ質量分析装置でのLC/MS/MS分析に供し、当該分析でのMS/MSのコリジョンエナジーを変化させた場合におけるアグリコン生成を示すフラグメントイオンを検出した。ここで、検出イオンのフラグメントイオンとしては、ペオニジン(m/z:301.0698)を対象とした。当該分析に使用したオービトラップ質量分析装置及び条件を以下に示した。使用溶媒等はLC/MSグレードを用いた。コリジョンエナジーの大きさを示す値は、HCD(higher energy collisional dissociation)値として示した。得られたイオンピーク面積を測定した結果を下記表及び図5に示した。
[オービトラップLC/MS/MS条件]
装置: UPLC Ultimate 3000(Thermo Fisher Scientific Inc.)
Q-Exactive HPLCシステム(Thermo Fisher Scientific Inc.)
カラム:L-column ODS(カラム内径φ2.1mm×カラム長150mm、粒子径3μm)
移動相: (A)0.1%ギ酸水 → (B)0.1%ギ酸含有アセトニトリル
グラジエント条件(B含量): 5%(0分)→18%(15分)
→70%(40〜42分)
流量: 0.2mL/分
カラム温度: 40℃
イオン化法: ESI positive
スプレー電圧: 3kV
キャピラリー温度: 300℃
四重極MSスキャン幅: m/z 400〜1500
オービトラップMS2スキャン幅: m/z 150〜1500
HCD条件: 10〜50
検出イオン: ペオニジン(m/z:301.0698)
その結果、オービトラップ質量分析装置でのMS/MSにおけるコリジョンエナジーをHCD10に設定した場合では、フラグメントイオンであるペオニジンが検出されるところ、分解前の親イオンであるペオニジン−3−グルコシドも残存して同時に検出されることが示された。ここで、コリジョンエナジーをHCD20に設定した場合では、親イオンであるペオニジン−3−グルコシドは消失しつつ、フラグメントイオンであるペオニジンが十分に検出されることが示された。また、コリジョンエナジーをHCD40に設定した場合では、フラグメントイオンであるペオニジンが分解されて更なる断片化が進行することが示された。
当該結果から、ペオニジン−3−グルコシド(m/z:463.1226)を分析に供した際にフラグメントイオン(m/z:301.0698)が十分に検出されるコリジョンエナジーをカバーする条件は、HCD10〜30の範囲であると判断された。
(3)「AIF法によるフラグメントイオンピーク面積の積算値の測定」
上記を踏まえて、オービトラップ質量分析装置を用いて3測定点(Stepped Collision)でのイオン化産物の同時検出を行い、得られるアグリコンを示すフラグメントイオンのピーク面積の積算値によって試料中のアグリコン量の定量が可能かを検討した。
ペオニジンクロライド(EXTRASYNTHESE社製)を水で希釈した測定試料を調製し、HCD10、HCD20、及びHCD30の3測定点でのペオニジンイオンピーク(m/z:301.0698)の面積の積算値を測定した。当該積算値分析では、上記(2)に記載のオービトラップ質量分析装置のAIF(All Ion Fragmentation)モードを用いて、3測定点でのイオン化産物の同時検出を行うことにより実行した。
その結果、検出されたペオニジンイオンピーク面積の積算値は、添加したペオニジンクロライドの添加量との間で相関を示し、濃度換算可能な検量線が作成できることが示された。また、相関関係の寄与率(R)は1に極めて近似した値であったことから、高精度での精密定量が可能であることが示された。
(4)「小括」
以上の結果から、本発明に係るAIF分析を利用して3測定点でのイオン化産物の同時検出を行って得られるフラグメントイオンのピーク面積の積算値を測定することによって、アグリコンを指標としたアントシアニン化合物の定量が可能となることが示された。また、その定量精度は極めて高いことが示された。
[実施例2]『他のアグリコンを有するアントシアニン化合物での検討』
上記実施例に係るAIF法を利用した定量方法について、ペオニジンとは異なるシアニジンをアグリコンとして含んでなるアントシアニン化合物への適用可能性を検討した。
(1)「測定試料」
紫サツマイモ色素に含まれるアントシアニン化合物であるシアニジン−3−グルコシド(Cy−3−glc)を水で希釈して色価0.01の測定試料を調製した。当該アントシアニン化合物としては、和光純薬工業社製の精製化合物を用いた。
(2)「MS/MSにおけるコリジョンエナジーの検討」
上記測定試料をオービトラップ質量分析装置でのLC/MS/MS分析に供し、当該分析でのMS/MSのコリジョンエナジーを変化させた場合におけるアグリコン生成を示すフラグメントイオンを検出した。当該分析に使用したオービトラップ質量分析装置及び条件は、検出対象のフラグメントイオンとしてシアニジン(m/z:287.0537)を対象としたことを除いては、実施例1の記載と同様にして行った。結果を下記表及び図6に示した。
検出イオン: シアニジン(m/z:287.0537)
その結果、実施例1におけるペオニジン−3−グルコシドでの検出結果とほぼ同様の結果が得られ、シアニジン−3−グルコシド(m/z:449.1065)を分析に供した際にフラグメントイオン(m/z:287.0537)が十分に検出されるコリジョンエナジーをカバーする条件は、HCD10〜30の範囲であると判断された。
(3)「AIF法によるフラグメントイオンピーク面積の積算値の測定」
上記を踏まえて、オービトラップ質量分析装置を用いて3測定点(Stepped Collision)でのイオン化産物の同時検出を行い、得られるアグリコンを示すフラグメントイオンのピーク面積の積算値によって試料中のアグリコン量の定量が可能かを検討した。
シアニジンクロライド(EXTRASYNTHESE社製)を水で希釈した測定試料を調製し、HCD10、HCD20、及びHCD30の3測定点でのシアニジンイオンピーク(m/z:287.0537)の面積の積算値を測定した。当該積算値分析では、上記(2)に記載のオービトラップ質量分析装置のAIF(All Ion Fragmentation)モードを用いて、3測定点でのイオン化産物の同時検出を行うことにより実行した。
その結果、検出されたシアニジンイオンピーク面積の積算値は、添加したシアニジンクロライドの添加量との間で相関を示し、濃度換算可能な検量線が作成できることが示された。また、相関関係の寄与率(R)は1に極めて近似した値であったことから、高精度での精密定量が可能であることが示された。
(4)「小括」
以上の結果から、本発明に係るAIF法を利用した定量方法では、ペオニジン以外のアグリコンを含んで構成されるアントシアニン化合物の定量が可能であることが示された。
[実施例3]『天然アントシアニン色素組成物での検討』
上記実施例に係るAIF分析を利用した定量方法について、様々な分子量のアントシアニン化合物の集合である天然アントシアニン色素組成物についての適用可能性を検討した。
(1)「測定試料」
赤ダイコン色素製剤(三栄源エフ・エフ・アイ社製)を水で希釈して、色価0.01の測定試料を調製した。当該赤ダイコン色素は、ペラルゴニジン系アントシアニンに分類される多数の化合物を含んでなる集合組成物である。
(2)「MS/MSにおけるコリジョンエナジーの検討」
上記測定試料をオービトラップ質量分析装置でのLC/MS/MS分析に供し、当該分析でのMS/MSのコリジョンエナジーを変化させた場合におけるアグリコン生成を示すフラグメントイオンを検出した。当該分析に使用したオービトラップ質量分析装置及び条件は、検出対象のフラグメントイオンとしてペラルゴニジン(m/z:271.0599)を対象として以下の条件にしたことを除いては、実施例1の記載と同様にして行った。結果を下記表及び図8に示した。また、MS/MSマススペクトルの結果の一部を図7に示した。
グラジエント条件(B含量): 10%(0分)→20%(40〜44分)
→90%(48〜50分)
HCD条件: 10〜100
検出イオン: ペラルゴニジン(m/z:271.0599)
その結果、オービトラップ質量分析装置でのMS/MSにおけるコリジョンエナジーをHCD10に設定した場合では、フラグメントイオンであるペラルゴニジンが検出されず、分解前の高分子アントシアニン化合物の一つであるペラルゴニジン−3−カフェオイル,フェルロイルソホロシド−5−マロニルグルコシド(m/z:1195.3102)が多量に検出されることが示された(図7A、図8)。
ここで、コリジョンエナジーをHCD40〜50に設定した場合では、ペラルゴニジン−3−カフェオイル,フェルロイルソホロシド−5−マロニルグルコシドは消失し、フラグメントイオンであるペラルゴニジンが十分に検出されることが示された(図7B、図8)。また、コリジョンエナジーをHCD90〜100に設定した場合では、フラグメントイオンであるペラルゴニジンも分解されて減少し更なる断片化が進行することが示された(図7C、図8)。
当該結果から、類似化合物の集合組成物である赤ダイコン色素を分析に供した際に、高分子のアントシアニン化合物を分解してフラグメントイオン(m/z:271.0599)が十分に検出される範囲をカバーするコリジョンエナジー条件は、HCD10〜80の範囲であると判断された。
ここで、本試験においてフラグメントイオンの検出をカバーするHCD範囲が広範となるのは、測定試料中に分子量の異なる様々な分子構造のペラルゴニジン系アントシアニンが含まれているためと考えられる。
具体的には、本試験におけるHCD10〜40付近の低エネルギー条件では、赤ダイコン色素組成物を構成するペラルゴニジン系アントシアニン色素のうち、低分子化合物の分解によって生じたペラルゴニジンが検出されていると認められる。また、HCD50〜80付近の高いエネルギー条件では、ペラルゴニジン系アントシアニン色素のうちの高分子化合物の分解によって生じたペラルゴニジンが検出されていると認められる。
以上を踏まえると、AIF分析におけるコリジョンエナジーをHCD10〜80の範囲に設定することによって、赤ダイコン色素中のアントシアニン化合物の分解により生じるアグリコンであるペラルゴニジンが、網羅的に検出可能になると認められた。
(3)「AIF法によるフラグメントイオンピーク面積の積算値の測定」
上記を踏まえて、オービトラップ質量分析装置を用いて3測定点(Stepped Collision)でのイオン化産物の同時検出を行い、得られるアグリコンを示すフラグメントイオンのピーク面積の積算値によって試料中のアグリコン量の定量が可能かを検討した。
ペラルゴニジンクロライド(EXTRASYNTHESE社製)を水で希釈した測定試料を調製し、HCD10、HCD45、及びHCD80での3測定点でのペラルゴニジンイオンピーク(m/z:271.0606)の面積の積算値を測定した。当該積算値分析では、上記(2)に記載のオービトラップ質量分析装置のAIF(All Ion Fragmentation)モードを用いて、3測定点でのイオン化産物の同時検出を行うことにより実行した。結果を下記表及び図9に示した。
その結果、検出されたペラルゴニジンイオンピーク面積の積算値は、添加したペラルゴニジンクロライドの添加量との間で相関を示し、濃度換算可能な検量線(y=9.0×10X−8.0×10)が作成できることが示された。また、相関関係の寄与率(R)は、0.9996という極めて1に近似した値であったことから、高精度での精密定量が可能であることが示された。
(4)「小括」
以上の結果から、本発明に係るAIF法を利用した定量法は、類似化合物の集合である天然アントシアニン色素組成物に対して、アグリコンを共通構造として有する化合物(即ち、本例ではペラルゴニジン系アントシアニン)の定量が可能な技術であることが示された。また、天然アントシアニン色素組成物に含まれる様々な分子量のアントシアニン化合物からのアグリコン生成を確実に行うために、AIF分析でのコリジョンエナジーの設定範囲を広く設定することが有効であることが示された。
[実施例4]『測定試料の色価検討』
上記実施例の定量方法を行うにあたり、AIF分析に供する際のアントシアニン色素の色価に関する検討を行った。
(1)「色価検討」
赤ダイコン色素製剤(三栄源エフ・エフ・アイ社製)を水で希釈して下記表に記載の色価の測定試料を調製し、実施例3に記載の方法と同様にしてオービトラップ質量分析装置を用いたAIF法により、HCD10、HCD45、及びHCD80での3測定点でのペラルゴニジンイオンピーク(m/z:271.0606)の面積の積算値を測定した。結果を図10に示した。
その結果、実施例1に記載の装置を用いた分析においては、色価1以下に、好適には色価を0.5以下になるように調製した試料にて、濃度依存的にフラグメントイオンのピーク面積の測定が可能であることが示された。また、本試験とは別に色価0.01〜0.1の低濃度試料を分析に供した検討を行ったが、このような薄い試料を試験に供した場合であっても、濃度依存的なフラグメントイオンのピーク面積の測定が可能であった。
(2)「小括」
以上に示したように、実施例1に記載のオービトラップ質量分析装置を用いた分析においては、測定試料の色価を1以下、好適には色価を0.5以下に調製することが好ましいことが示された。
ここで、実施例1に記載の装置を用いたAIF分析では、装置のスキャンポイントデータを可能な限り多く確保するために試料中に含まれるトータルイオン量が少ない方が好適となるところ、本試験では色価0.01〜0.1程度の極めて薄い試料を分析に用いた場合でも、安定した定量が可能であることが示された。
[実施例5]『赤ダイコン色素の定量』
上記実施例にて得られた知見及び技術を使用して、様々な分子量のアントシアニン化合物の集合である赤ダイコン色素に含まれるアントシアニン色素の総量の定量を行った。
(1)「アントシアニン総量の定量」
赤ダイコン色素製剤(三栄源エフ・エフ・アイ社製)を水で希釈して色価0.01の測定試料を調製し、実施例3に記載の方法と同様にしてオービトラップ質量分析装置を用いたAIF法によりHCD10、HCD45、及びHCD80でのペラルゴニジンイオンピーク(m/z:271.0606)の面積の積算値を測定した。得られたピーク面積の積算値について、実施例3に記載の検量線を用いてペラルゴニジン含量を算出し、ペラルゴニジン系アントシアニンの平均分子量から総アントシアニン含量を算出した。結果を下記表に示した。
その結果、本発明に係るAIF法にて定量されたペラルゴニジン系アントシアニンの総量は、赤ダイコン色素に含まれる全化合物中の13.8%(w/w)であることが示された。ここで、本試験に用いた赤ダイコン色素を構成するアントシアニン色素は、ペラルゴニジン系アントシアニンにて構成されるものであるため、ペラルゴニジン系アントシアニンの総量を以て「全アントシアニンの総量」とみなすことが可能となる。
それに対して、上記測定試料について、従来の吸光度法であるペラルゴニジン−3−5−ジグルコシドの吸光度により全アントシアニンの総量を測定した結果は、12.7%(w/w)となることが示された。
ここで、本発明に係るAIF法では、上記実施例3の検量線にて精密定量が可能である点が確認されているところ、一方、従来吸光度法では、天然アントシアニンが色調の異なる類似化合物の集合体組成物である点を考慮せずに単一化合物であるペラルゴニジン−3−5−ジグルコシドの吸光度のみにて算出された概算値である。即ち、従来の吸光度法は、本発明に係る分析法との数値の差異だけ誤差を含む測定法であると認められた。
(2)「小括」
以上の結果から、本発明に係るAIF法を利用した定量法では、類似化合物の集合である天然アントシアニン色素組成物において、アグリコンを共通構造として有する化合物(即ち、本例ではペラルゴニジン系アントシアニン)の総量を、正確に算出可能であることが示された。これにより本発明では、天然アントシアニン色素組成物に含まれる全アントシアニンの総量を正確に定量可能であることが示された。
[実施例6]『天然アントシアニン色素組成物に含まれる個別成分の同時定量』
類似化合物の集合である天然アントシアニン色素に対して、上記AIF法を用いて各組成成分であるアントシアニン化合物の個別定量が可能かを検討した。
(1)「アントシアニン個別成分の定量及び構造推定」
赤ダイコン色素製剤(三栄源エフ・エフ・アイ社製)を水で希釈して色価0.01の測定試料を調製し、実施例3に記載の方法と同様にしてオービトラップ質量分析装置を用いたLC/MS/MS分析を行った。当該分析にて得られたLC/MS分析での全イオンクロマトグラム(図11)から分子量の異なる化合物A(m/z:919.2487)、化合物B(m/z:1019.2624)、化合物C(m/z:1195.3102)に注目し、これらの化合物に対してAIF法によりHCD10、HCD45、及びHCD80でのペラルゴニジンイオンピーク(m/z:271.0606)の面積の積算値を測定した。得られた各化合物A〜C由来の対象フラグメントイオンピーク面積の積算値について、実施例3に記載の検量線を用いてペラルゴニジン含量を算出し、各個別成分の分子量から各化合物の個別含量を算出した。当該分析に使用したオービトラップ質量分析装置及び条件は、実施例3に記載の方法と同様にして行った。
また、化合物A〜Cの構造推定としては、当該オービトラップ質量分析装置による精密質量及びMS/MSでの断片プロファイリングデータにより定法により行った。定量及び同定結果を下記表に示した。また、推定された構造式を図12に示した。
その結果、化合物Aは、ペラルゴニジン−3−カフェオイルソホロシド−5−グルコシドであり測定試料である赤ダイコン色素中に0.20%(w/w)含まれることが示された。また、化合物Bは、ペラルゴニジン−3−フェルロイルソホロシド−5−マロニルグルコシドであり測定試料である赤ダイコン色素中に0.88%(w/w)含まれることが示された。また、化合物Cは、ペラルゴニジン−3−カフェオイル,フェルロイルソホロシド−5−マロニルグルコシドであり測定試料である赤ダイコン色素中に0.26%(w/w)含まれることが示された。
(2)「小括」
以上の結果から、本発明に係るAIF法による定量法を用いることによって、類似化合物の集合である天然アントシアニン色素に対して、その組成成分であるアントシアニン化合物の「個別定量」が可能となることが示された。また、当該定量法では、測定対象である当該個別成分の標準試料を用いることなく正確な定量が可能となることが示された。
更に当該方法では、未同定のアントシアニン化合物の構造推定についても同時に実行可能であることが示された。
[実施例7]『アグリコンの種類が異なる2系統のアントシアニン化合物を含む色素組成物での検討』
上記実施例に係るAIF分析を利用した定量方法について、アグリコンとしてペオニジン系アントシアニン及びシアニジン系アントシアニンの2系統のアントシアニン化合物を含む色素組成物に対する適用可能性を検討した。
(1)「測定試料」
紫イモ色素製剤(三栄源エフ・エフ・アイ社製)を水で希釈して、色価0.01の測定試料を調製した。当該紫イモ色素は、ペオニジン系アントシアニンに分類される多数の化合物及びシアニジン系アントシアニンに分類される多数のアントシアニン化合物を含んでなる色素組成物である。
(2)「MS/MSにおけるコリジョンエナジーの検討」
上記測定試料をオービトラップ質量分析装置でのLC/MS/MS分析に供し、当該分析でのMS/MSのコリジョンエナジーを変化させた場合におけるアグリコン生成を示すフラグメントイオンを検出した。当該分析に使用したオービトラップ質量分析装置及び条件は、検出対象のフラグメントイオンとしてペオニジン(m/z:301.0698)又はシアニジン(m/z:287.0537)を対象として、以下の条件としたことを除いては実施例1の記載と同様にして行った。結果を下表及び図13に示した。
HCD条件: 10〜100
検出イオン: ペオニジン(m/z:301.0698)
シアニジン(m/z:287.0537)
実施例3に記載の赤ダイコン色素での分析と同様に測定結果を評価した結果、紫イモ色素を分析に供した際にフラグメントイオンであるペオニジン(m/z:301.0698)及びシアニジン(m/z:287.0537)が十分に検出されるコリジョンエナジーをカバーする条件は、HCD20〜60の範囲であると判断された。
即ち、AIF分析におけるコリジョンエナジーをHCD20〜60の範囲に設定することによって、高分子アントシアニン化合物を含めて、紫イモ色素中のアントシアニン化合物の分解により生じるアグリコンであるペオニジン及びシアニジンが、網羅的に検出可能になると認められた。
(3)「AIF法によるフラグメントイオンピーク面積の積算値の測定」
上記を踏まえて、オービトラップ質量分析装置を用いて3測定点(Stepped Collision)でのイオン化産物の同時検出を行い、得られるアグリコンを示すフラグメントイオンのピーク面積の積算値によって試料中のアグリコン量の定量が可能かを検討した。
ペオニジンクロライド(EXTRASYNTHESE社製)又はシアニジンクロライド(EXTRASYNTHESE社製)をそれぞれ水で希釈した測定試料を調製し、HCD20、HCD40、及びHCD60の3測定点でのペオニジンイオンピーク(対象フラグメント7−1、m/z:301.0698)又はシアニジンイオンピーク(対象フラグメント7−2、m/z:287.0537)の面積の積算値を測定した。当該積算値分析では、上記(2)に記載のオービトラップ質量分析装置のAIF(All Ion Fragmentation)モードを用いて、3測定点でのイオン化産物の同時検出を行うことにより実行した。結果を下記表、図14、及び図15に示した。
その結果、検出されたペオニジンイオン(フラグメント7−1)のピーク面積の積算値は、添加したペオニジンクロライドの添加量との間で相関を示し、濃度換算可能な検量線(y=9.0×10X−9.0×10)が作成できることが示された。また、相関関係の寄与率(R)は、0.9994という極めて1に近似した値であったことから、高精度での精密定量が可能であることが示された(表8、図14)。
また、同様に、検出されたシアニジンイオン(フラグメント7−2)のピーク面積の積算値は、添加したシアニジンクロライドの添加量との間で相関を示し、濃度換算可能な検量線(y=1.0×10X−1.0×10)が作成できることが示された。また、相関関係の寄与率(R)は、0.9990という極めて1に近似した値であったことから、高精度での精密定量が可能であることが示された(表9、図15)。
(4)「小括」
以上の結果から、本発明に係るAIF法を利用した定量法は、アグリコンの種類が異なる2系統以上のアントシアニン化合物を含む天然アントシアニン色素組成物に対して、それぞれのアグリコンを共通構造とする化合物定量が可能な技術であることが示された。また、天然アントシアニン色素組成物に含まれる様々な分子量のアントシアニン化合物からのアグリコン生成を確実に行うためには、AIF分析でのコリジョンエナジーの設定範囲を広く設定することが有効であることが示された。
[実施例8]『天然アントシアニン色素組成物である紫イモ色素の定量』
上記実施例にて得られた知見及び技術を使用して、2系統のアントシアニン化合物を含む色素組成物に含まれるアントシアニン化合物の総量の定量を行った。
(1)「アントシアニン総量の定量」
紫イモ色素製剤(三栄源エフ・エフ・アイ社製)を水で希釈して色価0.5の測定試料を調製し、実施例7に記載の方法と同様にしてオービトラップ質量分析装置を用いたAIF法によりHCD20、HCD40、及びHCD60でのペオニジンイオンピーク(m/z:301.0698)又はシアニジンイオンピーク(m/z:287.0537)の面積の積算値を測定した。
得られたピーク面積の積算値について、実施例7に記載の検量線を用いてペオニジン含量及びシアニジン含量を算出し、ペオニジン系アントシアニン及びシアニジン系アントシアニンの平均分子量から総アントシアニン含量を算出した。結果を下記表に示した。
その結果、本発明に係るAIF法にて定量されたペオニジン系アントシアニンの総量は、紫イモ色素に含まれる全化合物中の15.2%(w/w)であることが示された。また、シアニジン系アントシアニンの総量は、紫イモ色素に含まれる全化合物中の3.4%(w/w)であることが示された。
ここで、本試験に用いた紫イオ色素を構成するアントシアニン色素は、ペオニジン系アントシアニン及びシアニジン系アントシアニンにて構成されるものであるため、これらの総量の和を以て「全アントシアニンの総量」とすることが可能となる。即ち、本発明に係るAIF法にて定量された紫イモ色素に含まれるアントシアニン化合物の総量は、18.6(w/w)となることが示された。
(2)「小括」
以上の結果から、本発明に係るAIF法を利用した定量法では、アグリコンの異なる2系統のアントシアニン化合物を含む天然アントシアニン色素組成物において、それぞれのアグリコンを共通構造とする化合物(即ち、本例ではペオニジン系アントシアニン及びシアニジン系アントシアニン)の総量を、それぞれ正確に算出可能であることが示された。
これにより本発明では、アグリコンの異なる2系統のアントシアニン化合物を含む天然アントシアニン色素組成物に含まれる全アントシアニンの総量を、正確に定量可能であることが示された。
1. アントシアニン化合物、分解前化合物、親イオン
2. 中間生成化合物
3. 対象フラグメントイオン、アグリコン、アグリコン構造部分
4. 過剰分解された断片化合物
M. 分解前化合物イオン、親イオン
F. 対象フラグメントイオン
5. 糖分子構造部分
6. 有機酸分子構造部分
7. 糖分子構造部分
11. ペラルゴニジン−3−カフェオイル,フェルロイルソホロシド−5−マロニルグルコシド
31. ペラルゴニジン
A. ペラルゴニジン−3−カフェオイルソホロシド−5−グルコシド
B. ペラルゴニジン−3−フェルロイルソホロシド−5−マロニルグルコシド
C. ペラルゴニジン−3−カフェオイル,フェルロイルソホロシド−5−マロニルグルコシド

Claims (8)

  1. 下記に記載の工程、
    (工程1)アントシアニン化合物を含む測定試料に対して、コリジョンエナジーを変化させた分解処理を3回以上行って、断片化された化合物イオンを積算して含むMS/MS分析でのマススペクトルを取得する工程、及び、
    (工程2)前記(工程1)にて取得されたマススペクトルから、前記アントシアニン化合物に含まれる共通構造を対象フラグメントイオンとして指標としアントシアニン化合物を定量する工程、
    を含むことを特徴とする、アントシアニン化合物の定量方法。
  2. 前記(工程1)に記載のMS/MS分析における3回以上の分解処理が、
    少なくとも1回が、前記アントシアニン化合物の未分解ピークが含まれる低エネルギーのコリジョンエナジーにて行うものであり、
    少なくとも別の1回が、前記アントシアニン化合物の未分解ピークを実質的に含まず且つ前記共通構造のフラグメントイオンのピークを含む高エネルギーのコリジョンエナジーにて行うものであり、
    少なくとも更に別の1回が、前記2回のコリジョンエナジーの間のエネルギーにて行うものである、
    請求項1に記載の方法。
  3. 前記(工程1)が、
    コリジョンエナジーを変化させた3回以上の分解処理の間、各回の分解処理後の化合物イオンを一定の空間範囲内に電気的に補足して加算蓄積されている状態とし、全ての分解処理の回数分の終了後にこれを一度に積算して検出することにより行う工程である、
    請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記(工程1)におけるMS/MS分析が、測定試料をLC/MS分析したものに対して行うものである、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
  5. 下記に記載の装置を用いることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の方法:
    (装置)コリジョンエナジーを変化させた3回以上の分解処理を行うMS/MS分析が可能であって、コリジョンエナジーでの分解処理後の化合物イオンを電気的に補足して積算して検出又は検出して積算することが可能な質量分析装置。
  6. 前記質量分析装置が、電場型フーリエ変換法を原理とする質量分析装置である、請求項5に記載の方法。
  7. 前記対象フラグメントイオンとする共通構造が、
    前記アントシアニン化合物のアグリコンのイオン又は前記アグリコンに由来する類似化合物のイオンである、
    請求項1〜6のいずれかに記載のアントシアニン色素の定量方法。
  8. 前記定量方法が、
    複数のアントシアニン化合物を含んでなるアントシアニン色素組成物に対して、所望のアグリコンを有するアントシアニン化合物の総量、全アントシアニン化合物の総量、及び/又は所望のアントシアニン化合物の個別定量、が可能な方法である、
    請求項1〜7のいずれかに記載のアントシアニン色素の定量方法。
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