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JP2018111674A - 化合物、発光素子用化合物、発光素子、発光装置、光源、認証装置および電子機器 - Google Patents

化合物、発光素子用化合物、発光素子、発光装置、光源、認証装置および電子機器 Download PDF

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JP2018111674A
JP2018111674A JP2017004629A JP2017004629A JP2018111674A JP 2018111674 A JP2018111674 A JP 2018111674A JP 2017004629 A JP2017004629 A JP 2017004629A JP 2017004629 A JP2017004629 A JP 2017004629A JP 2018111674 A JP2018111674 A JP 2018111674A
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JP2017004629A
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唯芽 濱出
Yuiga Hamade
唯芽 濱出
藤田 徹司
Tetsuji Fujita
徹司 藤田
英利 山本
Hidetoshi Yamamoto
英利 山本
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Abstract

【課題】発光素子が備える発光層に含まれることで、幅広い波長領域における近赤外域で発光する高効率かつ長寿命な発光素子を得ることができる化合物および発光素子用化合物、幅広い波長領域における近赤外域で発光する高効率かつ長寿命な発光素子、この発光素子を備える発光装置、光源、認証装置および電子機器を提供すること。
【解決手段】本発明の発光素子1は、陽極3と、陰極8と、陽極3と陰極8との間に設けられ、陽極3と陰極8との間に通電することにより発光する発光層5とを有し、発光層5は、発光材料として下記一般式IRDで表わされる化合物を含んで構成されている。
Figure 2018111674

【選択図】図1

Description

本発明は、ベンゾ−ビス−チアジアゾール系化合物、発光素子用化合物、発光素子、発光装置、光源、認証装置および電子機器に関するものである。
有機エレクトロルミネッセンス素子(いわゆる有機EL素子)は、陽極と陰極との間に少なくとも1層の発光性有機層を介挿した構造を有する発光素子である。このような発光素子では、陰極と陽極との間に電界を印加することにより、発光層に陰極側から電子が注入されるとともに陽極側から正孔が注入され、発光層中で電子と正孔が再結合することにより励起子が生成され、この励起子が基底状態に戻る際に、そのエネルギー分が光として放出される。
このような発光素子としては、700nmを超える長波長域で発光するものが知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
例えば、特許文献1、2に記載の発光素子では、分子内に官能基として電子供与体であるアミンと電子受容体であるニトリル基を共存させた材料を発光層のドーパントとして用いることにより、発光波長を長波長化している。
また、発光層の発光材料として、ベンゾ−ビス−チアジアゾール系化合物を用いることも報告されている(例えば、非特許文献1参照)。
しかし、従来では、幅広い波長領域における近赤外域で発光する高効率かつ長寿命な素子を実現することはできなかった。
また、近赤外域で面発光する高効率かつ長寿命な発光素子は、例えば、血中酸素濃度、血糖値、体脂肪率、皮膚癌等の生体情報取得用(生体センサー)の光源、静脈、指紋等の生体情報を用いて個人を認証する生体認証用(生体認証装置)の光源、さらには、各種発光装置、および電子機器の光源として、その実現が望まれている。
特開2000−091073号公報 特開2001−110570号公報
Adv. Mater. 2009, 21, 111-116
本発明の目的は、発光素子が備える発光層に含まれることで、幅広い波長領域における近赤外域で発光する高効率かつ長寿命な発光素子を得ることができる化合物および発光素子用化合物、幅広い波長領域における近赤外域で発光する高効率かつ長寿命な発光素子、この発光素子を備える発光装置、光源、認証装置および電子機器を提供することにある。
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の化合物(ベンゾ−ビス−チアジアゾール系化合物)は、下記一般式IRDで表わされることを特徴とする。
Figure 2018111674
[前記一般式IRD中、基Zは、芳香族環を含む炭素数1〜50の置換基であり、各基Rは、それぞれ独立して、水素原子、芳香族環を含む炭素数1〜20の置換基のうちのいずれかである。]
前記一般式IRDで表わされる化合物(ベンゾ−ビス−チアジアゾール系化合物)を、発光素子が備える発光層に含まれる発光材料として用いることにより、この発光素子は、幅広い波長領域における近赤外域、具体的には、705nm以上975nm以下の発光ピーク波長域で、高効率に発光し得るものとなる。
本発明の発光素子用化合物(ベンゾ−ビス−チアジアゾール系化合物)は、下記一般式IRDで表わされることを特徴とする。
Figure 2018111674
[前記一般式IRD中、基Zは、芳香族環を含む炭素数1〜50の置換基であり、各基Rは、それぞれ独立して、水素原子、芳香族環を含む炭素数1〜20の置換基のうちのいずれかである。]
前記一般式IRDで表わされる発光素子用化合物(ベンゾ−ビス−チアジアゾール系化合物)を、発光素子が備える発光層に含まれる発光材料として用いることにより、この発光素子は、幅広い波長領域における近赤外域、具体的には、705nm以上975nm以下の発光ピーク波長域で、高効率に発光し得るものとなる。
本発明の発光素子は、陽極と、
陰極と、
前記陽極と前記陰極との間に設けられ、前記陽極と前記陰極との間に通電することにより発光する発光層と、を有し、
前記発光層は、発光材料として下記一般式IRDで表わされる化合物を含んで構成されることを特徴とする。
Figure 2018111674
[前記一般式IRD中、基Zは、芳香族環を含む炭素数1〜50の置換基であり、各基Rは、それぞれ独立して、水素原子、芳香族環を含む炭素数1〜20の置換基のうちのいずれかである。]
このように構成された発光素子によれば、発光材料として前記一般式IRDで表わされる化合物(ベンゾ−ビス−チアジアゾール系化合物)を用いているので、幅広い波長領域における近赤外域、具体的には、705nm以上975nm以下の発光ピーク波長域で、高効率に発光し得る発光素子とすることができる。
本発明の発光素子では、前記発光材料を保持するホスト材料として下記式IRH1で表わされる化合物(テトラセン系材料)を含んで構成されることが好ましい。
Figure 2018111674
[前記式IRH1中、nは、1〜12の自然数を示し、Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、アリールアミノ基を示す。]
ホスト材料としてテトラセン系材料を用いることから、ホスト材料から発光材料へエネルギーを効率的に移動させることができる。そのため、発光素子の発光効率を優れたものとすることができる。
また、テトラセン系材料は電子およびホールに対する安定性(耐性)に優れるため、発光層の長寿命化、ひいては、発光素子の長寿命化を図ることができる。
本発明の発光素子では、前記発光材料を保持するホスト材料として下記式IRH2で表わされる化合物(アントラセン系材料)を含んで構成されることが好ましい。
Figure 2018111674
[前記式IRH2中、nは、1〜10の自然数を示し、Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、アリールアミノ基を示す。]
ホスト材料としてアントラセン系材料を用いることから、ホスト材料から発光材料へエネルギーを効率的に移動させることができる。そのため、発光素子の発光効率を優れたものとすることができる。
また、アントラセン系材料は電子およびホールに対する安定性(耐性)に優れるため、発光層の長寿命化、ひいては、発光素子の長寿命化を図ることができる。
本発明の発光素子では、前記ホスト材料は、炭素原子および水素原子で構成されていることが好ましい。
これにより、ホスト材料と発光材料との不本意な相互作用が生じるのを防止することができる。そのため、発光素子の発光効率を高めることができる。また、電位および正孔に対するホスト材料の耐性を高めることができる。そのため、発光素子の長寿命化を図ることができる。
本発明の発光素子では、前記発光層中における前記発光材料の含有量は、0.5wt%以上5.0wt%以下であることが好ましい。
これにより、発光素子の発光効率と寿命とのバランスを優れたものとすることができる。
本発明の発光素子では、前記発光層と前記陰極との間に設けられ、アントラセン骨格を有する化合物を含んで構成されている電子輸送層を備えることが好ましい。
これにより、発光層へ電子を効率的に輸送・注入することができる。その結果、発光素子の発光効率を高めることができるとともに、耐久性の向上が図られる。
本発明の発光素子では、前記発光層の厚さは、10nm以上50nm以下であることが好ましい。
これにより、発光素子の駆動電圧を抑制しつつ、発光素子の長寿命化を図ることができる。
本発明の発光装置は、本発明の発光素子を備えることを特徴とする。
このような発光装置は、近赤外域での発光が可能である。また、高効率および長寿命な発光素子を備えるので、信頼性に優れる。
本発明の光源は、本発明の発光素子を備えることを特徴とする。
このような光源は、近赤外域での発光が可能である。また、高効率および長寿命な発光素子を備えるので、信頼性に優れる。
本発明の認証装置は、本発明の発光素子を備えることを特徴とする。
このような認証装置は、近赤外光を用いて生体認証を行うことができる。また、高効率および長寿命な発光素子を備えるので、信頼性に優れる。
本発明の電子機器は、本発明の発光素子を備えることを特徴とする。
このような電子機器は、高効率および長寿命な発光素子を備えるので、信頼性に優れる。
本発明の実施形態に係る発光素子を模式的に示す断面図である。 本発明の発光装置を適用したディスプレイ装置の実施形態を示す縦断面図である。 本発明の認証装置の実施形態を示す図である。 本発明の電子機器を適用したモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピューターの構成を示す斜視図である。
以下、本発明の化合物、発光素子用化合物、発光素子、発光装置、光源、認証装置および電子機器を添付図面に示す好適な実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る発光素子を模式的に示す断面図である。なお、以下では、説明の都合上、図1中の上側を「上」、下側を「下」として説明を行う。
発光素子(エレクトロルミネッセンス素子)1は、本実施形態では、図1に示すように、陽極3と正孔注入層4と発光層5と電子輸送層6と電子注入層7と陰極8とがこの順に積層されてなるものである。すなわち、発光素子1では、陽極3と陰極8との間に、陽極3側から陰極8側へ正孔注入層4と発光層5と電子輸送層6と電子注入層7とがこの順で積層された積層体14が介挿されている。
そして、発光素子1は、その全体が基板2上に設けられるとともに、封止部材9で封止されている。
このような発光素子1にあっては、陽極3と陰極8とこれら同士の間に設けられた発光層5とを有し、陽極3および陰極8に駆動電圧が印加され、陽極3と陰極8との間、すなわち発光層5に通電されることにより、発光層5に対し、それぞれ、陰極8側から電子が供給(注入)されるとともに、陽極3側から正孔が供給(注入)される。そして、発光層5では、正孔と電子とが再結合し、この再結合に際して放出されたエネルギーによりエキシトン(励起子)が生成され、エキシトンが基底状態に戻る際にエネルギー(蛍光やりん光)を放出(発光)する。これにより、発光素子1(発光層5)は、発光する。
特に、この発光素子1は、後述するように発光層5の発光材料として本発明の化合物(好ましい例として発光素子用化合物)、すなわち、後述する一般式IRDで表わされるベンゾ−ビス−チアジアゾール系化合物を用いることにより、幅広い波長領域における近赤外域、具体的には、705nm以上975nm以下の発光ピーク波長域で、高効率に発光する。なお、本明細書において、「近赤外域」とは、700nm以上1500nm以下の波長域を言う。
基板2は、陽極3を支持するものである。本実施形態の発光素子1は、基板2側から光を取り出す構成(ボトムエミッション型)であるため、基板2および陽極3は、それぞれ、実質的に透明(無色透明、着色透明または半透明)とされている。
基板2の構成材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、ポリアミド、ポリエーテルサルフォン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリアリレートのような樹脂材料や、石英ガラス、ソーダガラスのようなガラス材料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
このような基板2の平均厚さは、特に限定されないが、0.1mm以上30mm以下程度であるのが好ましく、0.1mm以上10mm以下程度であるのがより好ましい。
なお、発光素子1が基板2と反対側から光を取り出す構成(トップエミッション型)の場合、基板2には、透明基板および不透明基板のいずれも用いることができる。
不透明基板としては、例えば、アルミナのようなセラミックス材料で構成された基板、ステンレス鋼のような金属基板の表面に酸化膜(絶縁膜)を形成したもの、樹脂材料で構成された基板等が挙げられる。
また、このような発光素子1では、陽極3と陰極8との間の距離(すなわち積層体14の平均厚さ)は、100nm以上500nm以下であるのが好ましく、100nm以上300nm以下であるのがより好ましく、100nm以上250nm以下であるのがさらに好ましい。これにより、簡単かつ確実に、発光素子1の駆動電圧を実用的な範囲内にすることができる。
以下、発光素子1を構成する各部を順次説明する。
(陽極)
陽極3は、正孔注入層4に正孔を注入する電極である。この陽極3の構成材料としては、仕事関数が大きく、導電性に優れる材料を用いるのが好ましい。
陽極3の構成材料としては、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、In、SnO、Sb含有SnO、Al含有ZnO等の酸化物、Au、Pt、Ag、Cuまたはこれらを含む合金等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
特に、陽極3は、ITOで構成されているのが好ましい。ITOは、透明性を有するとともに、仕事関数が大きく、導電性に優れる材料である。これにより、陽極3から正孔注入層4へ効率的に正孔を注入することができる。
また、陽極3の正孔注入層4側の面(図1にて上面)は、プラズマ処理が施されているのが好ましい。これにより、陽極3と正孔注入層4との接合面の化学的および機械的な安定性を高めることができる。その結果、陽極3から正孔注入層4への正孔注入性を向上させることができる。なお、かかるプラズマ処理については、後述する発光素子1の製造方法の説明において詳述する。
このような陽極3の平均厚さは、特に限定されないが、10nm以上200nm以下程度であるのが好ましく、50nm以上150nm以下程度であるのがより好ましい。
(陰極)
一方、陰極8は、後述する電子注入層7を介して電子輸送層6に電子を注入する電極である。この陰極8の構成材料としては、仕事関数の小さい材料を用いるのが好ましい。
陰極8の構成材料としては、例えば、Li、Mg、Ca、Sr、La、Ce、Er、Eu、Sc、Y、Yb、Ag、Cu、Al、Cs、Rbまたはこれらを含む合金等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて(例えば、複数層の積層体、複数種の混合層等として)用いることができる。
特に、陰極8の構成材料として合金を用いる場合には、Ag、Al、Cu等の安定な金属元素を含む合金、具体的には、MgAg、AlLi、CuLi等の合金を用いるのが好ましい。かかる合金を陰極8の構成材料として用いることにより、陰極8の電子注入効率および安定性の向上を図ることができる。
このような陰極8の平均厚さは、特に限定されないが、100nm以上10000nm以下程度であるのが好ましく、100nm以上500nm以下程度であるのがより好ましい。
なお、本実施形態の発光素子1は、ボトムエミッション型であるため、陰極8に、光透過性は、特に要求されない。また、トップエミッション型である場合には、陰極8側から光を透過させる必要があるので、陰極8の平均厚さは、1nm以上50nm以下程度であるのが好ましい。
(正孔注入層)
正孔注入層4は、陽極3からの正孔注入効率を向上させる機能を有する(すなわち正孔注入性を有する)ものである。これにより、発光素子1の発光効率を高めることができる。ここで、正孔注入層4は、陽極3から注入された正孔を発光層5まで輸送する機能をも有する(すなわち正孔輸送性を有する)ものである。したがって、正孔注入層4は、前述したように正孔輸送性を有することから、正孔輸送層であるということもできる。なお、正孔注入層4と発光層5との間に、正孔注入層4とは異なる材料(例えばベンジジン誘導体等のアミン系化合物)で構成された正孔輸送層を別途設けてもよい。
この正孔注入層4は、正孔注入性を有する材料(正孔注入性材料)を含んでいる。
この正孔注入層4に含まれる正孔注入性材料としては、特に限定されず、例えば、銅フタロシアニンや、4,4’,4’’−トリス(N,N−フェニル−3−メチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)、N,N’−ビス−(4−ジフェニルアミノ−フェニル)−N, N’−ジフェニル−ビフェニル−4−4’−ジアミン等のアミン系材料が挙げられる。
中でも、正孔注入層4に含まれる正孔注入性材料としては、正孔注入性および正孔輸送性に優れるという観点から、アミン系材料を用いるのが好ましく、ジアミノベンゼン誘導体、ベンジジン誘導体(ベンジジン骨格を有する材料)、分子内に「ジアミノベンゼン」ユニットと「ベンジジン」ユニットとの両方を有するトリアミン系化合物、テトラアミン系化合物(具体的には、例えば、下記式HIL−1〜HIL−27で表されるような化合物)を用いるのがより好ましい。
Figure 2018111674
Figure 2018111674
Figure 2018111674
また、正孔注入層4の構成材料のLUMOは、発光層5に用いるホスト材料のLUMOとの差が0.5eV以上であることが好ましい。これにより、電子が発光層5から正孔注入層4へ抜けてしまうのを低減し、発光効率を高めることができる。
また、正孔注入層4の構成材料のHOMOは、4.7eV以上5.8eV以下であることが好ましく、また、正孔注入層4の構成材料のLUMOは、2.2eV以上3.0eV以下であることが好ましい。
このような正孔注入層4の平均厚さは、特に限定されないが、5nm以上90nm以下程度であるのが好ましく、10nm以上70nm以下程度であるのがより好ましい。
(発光層)
発光層5は、前述した陽極3と陰極8との間に通電することにより、発光するものである。
この発光層5は、発光材料を含んで構成されている。本発明では、この発光層5は、発光材料として本発明の化合物(発光素子用化合物)である下記一般式IRDで表わされるベンゾ−ビス−チアジアゾール系化合物(以下、単に「ベンゾ−ビス−チアジアゾール系化合物」とも言う)すなわち、2つ(複数)のベンゾ−ビス−チアジアゾール骨格を有する化合物を含んで構成されている。
Figure 2018111674
[前記一般式IRD中、基Zは、芳香族環を含む炭素数1〜50の置換基であり、各基Rは、それぞれ独立して、水素原子、芳香族環を含む炭素数1〜20の置換基のうちのいずれかである。]
前記一般式IRD中、各基Rは、それぞれ独立して、水素原子、芳香族環を含む炭素数1〜20の置換基のうちのいずれかであるが、フェニル基であることが好ましい。また、基Zは、芳香族環を含む炭素数1〜50の置換基であるが、窒素原子を含むことが好ましく、具体的には、例えば、ジフェニルアミン基、フェノチアジン基、フェノキサジン基、カルバゾール基、チオフェニル−フェニルアミン基、モノフェニルアミン基のうちのいずれかを2つ含むものであることが好ましい。そのため、前記一般式IRDは、下記一般式IRD−A、下記一般式IRD−B、または、下記一般式IRD−Cで表わされるベンゾ−ビス−チアジアゾール系化合物で表すことができる。
Figure 2018111674
[前記一般式IRD−A中、各基Xは、酸素原子、硫黄原子、単結合、開環しているのうちのいずれかであり、基Yは、フェニル基、チオフェニル基のうちのいずれかであり、各基R、Rは、それぞれ独立して、水素原子、芳香族環を含む炭素数1〜20の置換基のうちのいずれかである。]
Figure 2018111674
[前記一般式IRD−B中、基Yは、フェニル基、チオフェニル基のうちのいずれかであり、各基R、Rは、それぞれ独立して、水素原子、芳香族環を含む炭素数1〜20の置換基のうちのいずれかである。]
Figure 2018111674
[前記一般式IRD−C中、基Yは、フェニル基、チオフェニル基のうちのいずれかであり、各基R、Rは、それぞれ独立して、水素原子、芳香族環を含む炭素数1〜20の置換基のうちのいずれかである。]
なお、本明細書中において、例えば、基Xは、単結合であるとは、基Xに連結する結合手が原子を介さず直接連結していることをいい、基Xは、開環しているとは、基Xに連結する2つの結合手にそれぞれ水素原子が連結していることをいう。
また、前記一般式IRD−A、前記一般式IRD−Bおよび前記一般式IRD−C中、各基R、Rは、それぞれ独立して、水素原子、芳香族環を含む炭素数1〜20の置換基のうちのいずれかであるが、芳香族環を含む炭素数1〜20の置換基のうちのいずれかである場合、窒素原子を含むことが好ましく、具体的には、例えば、ジフェニルアミン基、フェノチアジン基、フェノキサジン基、カルバゾール基のうちのいずれかであることが好ましく、ジフェニルアミン基であることがより好ましい。
前記一般式IRDを、前記一般式IRD−A、前記一般式IRD−Bおよび前記一般式IRD−Cで表される構成のものとすることで、これらの化合物は、基Yであるフェニル基、チオフェニル基のうちのいずれかを介して、電子ドナーとして機能するジフェニルアミン、フェノチアジン、フェノキサジン、カルバゾール、チオフェニル−フェニルアミンまたはモノフェニルアミンが対称をなして2つ連結し、さらに、これら2つの電子ドナーにそれぞれ1つの電子アクセプターとして機能するベンゾ−ビス−チアジアゾール骨格が連結する構造を有するものとなる。すなわち、2つの電子アクセプターが、基Yを備える2つの電子ドナーを介して連結された構造を有するものとなる。このような電子アクセプターと電子ドナーとの組み合わせとすることで、化合物中におけるバンドギャップを狭め、このベンゾ−ビス−チアジアゾール系化合物を発光材料における発光ドーパントとして含む発光層5を、高効率な近赤外域の発光が実現されたものとし得る。また、このベンゾ−ビス−チアジアゾール系化合物を発光材料における発光ドーパントとして含む発光層5は、700nm以上の波長域(近赤外域)のうち、幅広い波長領域において発光し得るもの、具体的には、705nm以上975nm以下の発光ピーク波長域での発光をし得るものとなる。
特に、電子ドナーとしてフェノチアジンまたはチオフェニル−フェニルアミン基を備えるものを、ベンゾ−ビス−チアジアゾール系化合物として用いた場合、このものを発光ドーパントとして含む発光層5は、特に長波長域において発光し得るもの、具体的には、935nm以上945nm以下程度の発光ピーク波長域での発光をし得るものとなる。なお、このような傾向は、基Yとして、チオフェニル基を備える場合に、より顕著に認められる。
また、電子ドナーとしてフェノキサジンを備えるものを、ベンゾ−ビス−チアジアゾール系化合物として用いた場合、このものを発光ドーパントとして含む発光層5は、特に優れた発光効率で発光し得るものとなる。
上記のような各基X、Y、R、Rを備える上記式IRD−Aで表されるベンゾ−ビス−チアジアゾール系化合物としては、具体的には、例えば、基Yがフェニル基である場合、下記式IRD−1、3、5、7、9で表わされる化合物またはその誘導体が挙げられ、基Yがチオフェニル基である場合、下記式IRD−2、4、6、8で表わされる化合物またはその誘導体が挙げられる。
また、上記のような各基Y、R、Rを備える上記式IRD−Bで表されるベンゾ−ビス−チアジアゾール系化合物としては、具体的には、例えば、基Yがフェニル基である場合、下記式IRD−10、11で表わされる化合物またはその誘導体が挙げられ、基Yがチオフェニル基である場合、下記式IRD−12で表わされる化合物またはその誘導体が挙げられる。
さらに、上記のような各基Y、R、Rを備える上記式IRD−Cで表されるベンゾ−ビス−チアジアゾール系化合物としては、具体的には、例えば、基Yがフェニル基である場合、下記式IRD−13、14で表わされる化合物またはその誘導体が挙げられ、基Yがチオフェニル基である場合、下記式IRD−15で表わされる化合物またはその誘導体が挙げられる。
Figure 2018111674
Figure 2018111674
なお、発光層5は、上述した発光材料以外の発光材料(各種蛍光材料、各種燐光材料)が含まれていてもよい。
また、発光層5は、本実施形態では、前述したような発光材料に加えて、この発光材料がゲスト材料(ドーパント)として添加(担持)されるホスト材料を含んで構成されていることが好ましい。このホスト材料は、正孔と電子とを再結合して励起子を生成するとともに、その励起子のエネルギーを発光材料に移動(フェルスター移動またはデクスター移動)させて、発光材料を励起する機能を有する。そのため、発光層5を、発光材料(ゲスト材料)の他に、ホスト材料を含有する構成とすることで、発光素子1の発光効率を高めることができる。このようなホスト材料は、例えば、ゲスト材料である発光材料をドーパントとしてホスト材料にドープして用いることができる。
このようなホスト材料としては、用いるゲスト材料に対して前述したような機能を発揮するものであれば、特に限定されないが、例えば、ジスチリルアリーレン誘導体、ナフタセン誘導体、アントラセン誘導体などのアセン系材料、ペリレン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアミン誘導体、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(p−フェニルフェノラト)アルミニウム(BAlq)、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体(Alq)等のキノリノラト系金属錯体、トリフェニルアミンの4量体等のトリアリールアミン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ルブレンおよびその誘導体、シロール誘導体、ジカルバゾール誘導体、オリゴチオフェン誘導体、ベンゾピラン誘導体、トリアゾール誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、キノリン誘導体、4,4’−ビス(2,2’−ジフェニルビニル)ビフェニル(DPVBi)、3−フェニル−4−(1’−ナフチル)−5−フェニルカルバゾール、4,4’−N,N’−ジカルバゾールビフェニル(CBP)等のカルバゾール誘導体等が挙げられ、これらのうち1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることもできる。
これらの中でも、ホスト材料としては、アセン系材料、または、キノリノラト系金属錯体を用いるのが好ましく、アセン系材料を用いるのがより好ましい。
アセン系材料は、前述したようなゲスト材料との不本意な相互作用が少ない。また、ホスト材料としてアセン系材料(特にアントラセン系材料、テトラセン系材料)を用いると、ホスト材料からゲスト材料(発光材料)へのエネルギー移動を効率的に行うことができ、そのため、発光素子1の発光効率を優れたものとすることができる。これは、(a)アセン系材料の三重項励起状態からのエネルギー移動によるゲスト材料の一重項励起状態の生成が可能となること、(b)アセン系材料のπ電子雲とゲスト材料の電子雲との重なりが大きくなること等によるものと考えられる。
このようなことから、ホスト材料としてアセン系材料を用いると、発光素子1の発光効率を高めることができる。
また、アセン系材料は、電子および正孔に対する耐性に優れる。また、アセン系材料は、熱安定性にも優れる。そのため、発光層5ひいては発光素子1の長寿命化を図ることができる。また、アセン系材料は、熱安定性に優れるため、気相成膜法を用いて発光層を形成する場合に、成膜時の熱によるホスト材料の分解を防止することができる。そのため、優れた膜質を有する発光層を形成することができ、その結果、この点でも、発光素子1の発光効率を高めるとともに長寿命化を図ることができる。
さらに、アセン系材料は、それ自体発光しにくいので、ホスト材料が発光素子1の発光スペクトルに悪影響を及ぼすのを防止することもできる。
このようなアセン系材料は、アセン骨格を有し、かつ、前述したような効果を発揮するものであれば、特に限定されず、例えば、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、ナフタセン誘導体(テトラセン誘導体)、ペンタセン誘導体が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、アントラセン系材料(アントラセン誘導体)またはテトラセン系材料(テトラセン誘導体)を用いるのが好ましく、テトラセン系材料を用いるのがより好ましい。
テトラセン系材料としては、1つの分子内に少なくとも1つのテトラセン骨格を有し、かつ、前述したようなホスト材料としての機能を発揮し得るものであれば、特に限定されないが、例えば、下記式IRH1で表わされる化合物を用いるのが好ましい。
Figure 2018111674
[前記式IRH1中、nは、1〜12の自然数を示し、Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、アリールアミノ基を示す。]
前述したようなベンゾ−ビス−チアジアゾール系化合物は、極性が高い(分極が大きい)ため、発光材料として用いた場合、発光層中の濃度が高いときに、発光材料の分子同士の相互作用により発光効率が低下する現象である濃度消光を生じやすい。
一方、前記テトラセン系材料は、極性が低い(分極が小さい)。そのため、テトラセン系材料をホスト材料として用いることにより、前述したような発光材料の分子同士の相互作用を低減し、濃度消光性を低減することができる。
これに対し、例えば、極性が高い(分極が大きい)Alqをホスト材料として用いた場合、ホスト材料および発光材料の双方の極性が高く(分極が大きく)なるため、発光材料の分子同士の相互作用が生じやすく、濃度消光性が高くなってしまう。
また、テトラセン系材料と同じアセン系材料であるアントラセン系材料は、ホスト材料として用いた場合、濃度消光性を低減する効果があるものの、テトラセン系材料をホスト材料として用いた場合と比べて、発光効率が低くなる。これは、アントラセン系材料をホスト材料として用いると、ホスト材料から発光材料へのエネルギー移動が十分でないこと、および、ホスト材料のLUMOに注入された電子が陽極側へ突き抜ける確率が高いことが原因であると推察される。かかる点を考慮すると、アントラセン系材料とテトラセン系材料とを比較すると、テトラセン系材料がホスト材料として特に好ましく用いられる。
よって、ホスト材料としてテトラセン系材料(アセン系材料)を用いることにより、発光素子1の発光効率を高めることができる。
また、テトラセン系材料は、電子および正孔に対する耐性に優れる。また、テトラセン系材料は、熱安定性にも優れる。そのため、発光素子1は、長寿命化を図ることができる。また、テトラセン系材料は、熱安定性に優れるため、気相成膜法を用いて発光層を形成する場合に、成膜時の熱によるホスト材料の分解を防止することができる。そのため、優れた膜質を有する発光層を形成することができ、その結果、この点でも、発光素子1の発光効率を高めるとともに長寿命化を図ることができる。
さらに、テトラセン系材料は、それ自体発光しにくいので、ホスト材料が発光素子1の発光スペクトルに悪影響を及ぼすのを防止することもできる。
また、ホスト材料として用いるテトラセン系材料としては、前記式IRH1で表され、かつ、前述したようなホスト材料としての機能を発揮し得るものであれば、特に限定されないが、下記式IRH1−Aで表わされる化合物を用いるのが好ましく、下記IRH1−Bで表わされる化合物を用いるのがより好ましい。
Figure 2018111674
[前記式IRH1−A、IRH1−B中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、アリールアミノ基を示す。また、R〜Rは、互いに同じであっても異なっていてもよい。]
また、テトラセン系材料すなわちホスト材料は、炭素原子および水素原子で構成されているのが好ましい。これにより、ホスト材料の極性を低くし、ホスト材料と発光材料との不本意な相互作用が生じるのを防止することができる。そのため、発光素子1の発光効率を高めることができる。また、電位および正孔に対するホスト材料の耐性を高めることができる。そのため、発光素子1の長寿命化を図ることができる。
具体的には、テトラセン系材料としては、例えば、下記式IRH1−1〜IRH1−27で表される化合物を用いるのが好ましい。
Figure 2018111674
Figure 2018111674
なお、アントラセン系材料としては、1つの分子内に少なくとも1つのアントラセン骨格を有し、かつ、前述したようなホスト材料としての機能を発揮し得るものであれば、特に限定されないが、例えば、下記式IRH2で表わされる化合物が好ましく用いられ、例えば、下記式IRH2−A、下記式IRH2−B、下記式IRH2−Cまたは下記式IRH2−Dで表される化合物が挙げられる。より具体的には、例えば、下記式IRH2−1〜56で表される化合物が挙げられる。
Figure 2018111674
Figure 2018111674
Figure 2018111674
Figure 2018111674
また、発光層5に用いるホスト材料のHOMOは、5.0eV以上5.8eV以下であることが好ましく、また、このホスト材料のLUMOは、2.5eV以上3.6eV以下であることが好ましい。
このような発光材料およびホスト材料を含む発光層5中における発光材料の含有量(ドープ量)は、0.5wt%以上5.0wt%以下であるのが好ましく、0.75wt%以上2.0wt%以下であるのがより好ましく、1.5wt%以上2.0wt%以下であるのがさらに好ましい。発光材料の含有量が前記下限値未満では、ホスト材料の種類によってはホストからの発光が強くなる傾向を示し、また、前記上限値超では、ホスト材料の種類によっては濃度消光による発光効率低下が顕著となる傾向を示すことがあるため、発光材料の含有量を前記範囲内に設定することにより、発光素子1の発光効率と寿命とのバランスを優れたものとすることができる。
また、発光層5の平均厚さは、10nm以上50nm以下であるのが好ましく、25nm以上50nm以下であるのがより好ましい。発光層5の平均厚さが前記下限値未満では、発光材料の種類によっては、発光層5の周辺層での再結合が増大する傾向を示し、不要な発光が増大してしまうおそれがあり、また、前記上限値超では、発光材料の種類によっては、発光層5における電圧が徐々に上昇する傾向を示し、発光層5の発光効率の低下を招くおそれがあるため、発光層5の厚さを前記範囲内に設定することにより、発光素子1の駆動電圧を抑制しつつ、高効率および長寿命な発光素子1とすることができる。
なお、本実施形態では、本発明の発光素子用化合物を、発光層5が備える発光材料に適用する場合について説明したが、本発明の発光素子用化合物は、これに限らず、正孔注入層4が備える正孔注入材料または電子輸送層6が備える電子輸送材料として含有されていてもよい。
(電子輸送層)
電子輸送層6は、陰極8から電子注入層7を介して注入された電子を発光層5に輸送する機能を有するものである。
電子輸送層6の構成材料(電子輸送性材料)としては、例えば、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(BCP)等のフェナントロリン誘導体、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq)等の8−キノリノールないしその誘導体を配位子とする有機金属錯体などのキノリン誘導体、アザインドリジン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ペリレン誘導体、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、キノキサリン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、ニトロ置換フルオレン誘導体、アントラセン系材料等のアセン系材料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、電子輸送層6に用いる電子輸送性材料としては、アントラセン骨格を有する化合物を用いることが好ましい。また、フェナントロリン誘導体、フェナントロリン誘導体のように骨格中に窒素原子を備える含窒素化合物を用いることが好ましい。これらのことから、特に、アザインドリジン骨格およびアントラセン骨格の双方を分子内に有するアザインドリジン系化合物(以下、単に「アザインドリジン系化合物」ともいう)を用いることがより好ましい。これにより、発光層5へ電子を効率的に輸送・注入することができる。その結果、発光素子1の発光効率を高めることができる。
また、電子輸送層6は、前述したような電子輸送性材料のうち2種以上を組み合わせて用いる場合、2種以上の電子輸送性材料を混合した混合材料で構成されていてもよいし、異なる電子輸送性材料で構成された複数の層を積層して構成されていてもよい。本実施形態では、図1に示すように、電子輸送層6は、第1電子輸送層6bと、第1電子輸送層6bと発光層5との間に設けられた第2電子輸送層6aと、を有している。
第1電子輸送層6bの構成材料として用いるアントラセン骨格を有する化合物は、アザインドリジン骨格およびアントラセン骨格の双方を分子内に有するアザインドリジン系化合物であることが好ましい。また、第2電子輸送層6aの構成材料として用いるアントラセン骨格を有する化合物は、アントラセン骨格を分子内に有し、かつ、炭素原子および水素原子で構成されているアントラセン系化合物であることが好ましい。これにより、発光層5へ電子を効率的に輸送・注入するとともに、電子輸送層6の劣化を低減することができる。その結果、発光素子1の発光効率を高めるとともに、発光素子1の長寿命化を図ることができる。
ここで、光学的な光取り出しに必要な電子輸送層6の厚さを第2電子輸送層6aにより確保しつつ、第1電子輸送層6bの厚さを薄くして長寿命化を図ることができる。
電子輸送層6に用いるアザインドリジン系化合物は、1つの分子内に含まれるアザインドリジン骨格およびアントラセン骨格の数がそれぞれ1つまたは2つであるのが好ましい。これにより、電子輸送層6の電子輸送性および電子注入性を優れたものとすることができる。
具体的には、電子輸送層6に用いるアザインドリジン系化合物としては、例えば、下記式ETL1−1〜24で表わされるような化合物、下記式ETL1−25〜36で表わされるような化合物、下記式ETL1−37〜56で表わされる化合物を用いるのが好ましい。
Figure 2018111674
Figure 2018111674
Figure 2018111674
このようなアザインドリジン系化合物は、電子輸送性および電子注入性に優れる。そのため、発光素子1の発光効率を向上させることができる。
このようなアザインドリジン系化合物の電子輸送性および電子注入性が優れるのは、以下のような理由によるものと考えられる。
前述したようなアザインドリジン骨格およびアントラセン骨格を分子内に有するアザインドリジン系化合物は、その分子全体がπ共役系で繋がっているため、電子雲が分子全体に亘って拡がっている。
そして、かかるアザインドリジン系化合物のアザインドリジン骨格の部分は、電子を受け入れる機能と、その受け取った電子をアントラセン骨格の部分へ送り出す機能とを有する。一方、かかるアザインドリジン系化合物のアントラセン骨格の部分は、アザインドリジン骨格の部分から電子を受け入れる機能と、その受け入れた電子を、電子輸送層6の陽極3側に隣接する層、すなわち発光層5へ受け渡す機能とを有する。
より具体的に説明すると、かかるアザインドリジン系化合物のアザインドリジン骨格の部分は、2つの窒素原子を有し、その一方(アントラセン骨格の部分に近い側)の窒素原子がsp混成軌道を有し、他方(アントラセン骨格の部分に遠い側)の窒素原子がsp混成軌道を有する。sp混成軌道を有する窒素原子は、アザインドリジン系化合物の分子の共役系の一部を構成するとともに、炭素原子よりも電気陰性度が高く、電子を引き付ける強さが大きいため、電子を受け入れる部分として機能する。一方、sp混成軌道を有する窒素原子は、通常の共役系ではないが、非共有電子対を有するため、その電子がアザインドリジン系化合物の分子の共役系に向けて電子を送り出す部分として機能する。
一方、かかるアザインドリジン系化合物のアントラセン骨格の部分は、電気的に中性であるため、アザインドリジン骨格の部分から電子を容易に受け入れることができる。また、かかるアザインドリジン系化合物のアントラセン骨格の部分は、発光層5の構成材料、特にホスト材料(テトラセン系材料)と軌道の重なりが大きいため、発光層5のホスト材料へ電子を容易に受け渡すことができる。
また、かかるアザインドリジン系化合物は、前述したように電子輸送性および電子注入性に優れるため、結果として、発光素子1の駆動電圧を低電圧化することができる。
また、アザインドリジン骨格の部分は、sp混成軌道を有する窒素原子が還元されても安定であり、sp混成軌道を有する窒素原子が酸化されても安定である。そのため、かかるアザインドリジン系化合物は、電子および正孔に対する安定性が高いものとなる。その結果、発光素子1の長寿命化を図ることができる。
また、電子輸送層6(第2電子輸送層6aを有する場合、特に第2電子輸送層6a)に用いるアントラセン系化合物としては、前述した発光層5に含まれるホスト材料として挙げた上記式IRH2で表される化合物であればよいが、上記式IRH2−A、上記式IRH2−B、上記式IRH2−Cまたは上記式IRH2−Dで表される化合物であることが好ましく、より具体的には、例えば、上記式IRH2−1〜56で表される化合物であることが好ましい。
また、電子輸送層6(より具体的には、第2電子輸送層6a)の構成材料のHOMOは、発光層5に用いるホスト材料のHOMOとの差が0.2eV以上であることが好ましい。これにより、正孔が発光層5から電子輸送層6へ抜けてしまうのを低減し、発光効率を高めることができる。
また、第2電子輸送層6aの構成材料のHOMOは、5.5eV以上6.0eV以下であることが好ましく、また、第2電子輸送層6aの構成材料のLUMOは、2.5eV以上3.0eV以下であることが好ましい。
また、第1電子輸送層6bの構成材料のHOMOは、5.8eV以上6.5eV以下であることが好ましく、また、第1電子輸送層6bの構成材料のLUMOは、2.8eV以上3.5eV以下であることが好ましい。
また、第2電子輸送層6aの厚さは、第1電子輸送層6bの厚さよりも厚いことが好ましい。これにより、発光素子1の駆動電圧を抑制しつつ、発光層5へ電子を効率的に輸送・注入するとともに、電子輸送層6の劣化を低減することができる。
また、第2電子輸送層6aの具体的な厚さは、30nm以上150nm以下であることが好ましく、70nm以上90nm以下であることがより好ましい。これにより、発光素子1の駆動電圧を抑制しつつ、発光層5へ電子を効率的に輸送・注入するとともに、電子輸送層6の劣化を低減することができる。
さらに、電子輸送層6全体の厚さは、55nm以上200nm以下であることが好ましく、70nm以上95nm以下であることがより好ましい。これにより、発光素子1の駆動電圧を抑制しつつ、発光層5へ電子を効率的に輸送・注入することができる。
なお、第2電子輸送層6aは、第1電子輸送層6bと発光層5との構成材料の組み合わせ等によっては、省略してもよい。
(電子注入層)
電子注入層7は、陰極8からの電子注入効率を向上させる機能を有するものである。
この電子注入層7の構成材料(電子注入性材料)としては、例えば、各種の無機絶縁材料、各種の無機半導体材料が挙げられる。
このような無機絶縁材料としては、例えば、アルカリ金属カルコゲナイド(酸化物、硫化物、セレン化物、テルル化物)、アルカリ土類金属カルコゲナイド、アルカリ金属のハロゲン化物およびアルカリ土類金属のハロゲン化物等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらを主材料として電子注入層7を構成することにより、電子注入性をより向上させることができる。特にアルカリ金属化合物(アルカリ金属カルコゲナイド、アルカリ金属のハロゲン化物等)は仕事関数が非常に小さく、これを用いて電子注入層7を構成することにより、発光素子1は、高い輝度が得られるものとなる。
アルカリ金属カルコゲナイドとしては、例えば、LiO、LiO、NaS、NaSe、NaO等が挙げられる。
アルカリ土類金属カルコゲナイドとしては、例えば、CaO、BaO、SrO、BeO、BaS、MgO、CaSe等が挙げられる。
アルカリ金属のハロゲン化物としては、例えば、CsF、LiF、NaF、KF、LiCl、KCl、NaCl等が挙げられる。
アルカリ土類金属のハロゲン化物としては、例えば、CaF、BaF、SrF、MgF、BeF等が挙げられる。
また、無機半導体材料としては、例えば、Li、Na、Ba、Ca、Sr、Yb、Al、Ga、In、Cd、Mg、Si、Ta、SbおよびZnのうちの少なくとも1つの元素を含む酸化物、窒化物または酸化窒化物等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
電子注入層7の平均厚さは、特に限定されないが、0.1nm以上1000nm以下程度であるのが好ましく、0.2nm以上100nm以下程度であるのがより好ましく、0.2nm以上50nm以下程度であるのがさらに好ましい。
なお、この電子注入層7は、陰極8および電子輸送層6の構成材料や厚さ等によっては、省略してもよい。
(封止部材)
封止部材9は、陽極3、積層体14、および陰極8を覆うように設けられ、これらを気密的に封止し、酸素や水分を遮断する機能を有する。封止部材9を設けることにより、発光素子1の信頼性の向上や、変質・劣化の防止(耐久性向上)等の効果が得られる。
封止部材9の構成材料としては、例えば、Al、Au、Cr、Nb、Ta、Tiまたはこれらを含む合金、酸化シリコン、各種樹脂材料等を挙げることができる。なお、封止部材9の構成材料として導電性を有する材料を用いる場合には、短絡を防止するために、封止部材9と陽極3、積層体14および陰極8との間には、必要に応じて、絶縁膜を設けるのが好ましい。
また、封止部材9は、平板状として、基板2と対向させ、これらの間を、例えば熱硬化性樹脂等のシール材で封止するようにしてもよい。
以上のように構成された発光素子1によれば、発光層5の発光材料としてベンゾ−ビス−チアジアゾール系化合物を用いるとともに、発光層5のホスト材料としてテトラセン系材料を用いることにより、近赤外域での発光を可能とするとともに、高効率化および長寿命化を図ることができる。
なお、本発明の発光素子は、上述した発光素子1の構成に限らず、陽極3と発光層5と陰極13とを有し、発光層5に発光材料として前記一般式IRDで表わされるベンゾ−ビス−チアジアゾール系化合物を含有するものであれば、いかなる構成のものであってもよく、例えば、陽極3、発光層5および陰極13以外の層が省略されていてもよいし、他の任意の層が任意の数で追加されていてもよい。具体的には、任意の層が追加されている発光素子としては、例えば、近赤外域で発光する発光層5の他に可視光域または紫外域で発光する発光層を有するものであってもよい。さらに、この場合、近赤外域で発光する発光層5と可視光域または紫外域で発光する発光層とは積層されているものであってもよいし、領域を分離して並列に並べられたものであってもよく、さらに、これらが組み合わされたものであってもよい。
以上のような発光素子1は、例えば、次のようにして製造することができる。
[1] まず、基板2を用意し、この基板2上に陽極3を形成する。
陽極3は、例えば、プラズマCVD、熱CVDのような化学蒸着法(CVD)、真空蒸着等の乾式メッキ法、電解メッキ等の湿式メッキ法、溶射法、ゾル・ゲル法、MOD法、金属箔の接合等を用いて形成することができる。
[2] 次に、陽極3上に正孔注入層4を形成する。
正孔注入層4は、例えば、CVD法や、真空蒸着、スパッタリング等の乾式メッキ法等を用いた気相プロセスにより形成するのが好ましい。
なお、正孔注入層4は、例えば、正孔注入性材料を溶媒に溶解または分散媒に分散してなる正孔注入層形成用材料を、陽極3上に供給した後、乾燥(脱溶媒または脱分散媒)することによっても形成することができる。
正孔注入層形成用材料の供給方法としては、例えば、スピンコート法、ロールコート法、インクジェット印刷法等の各種塗布法を用いることもできる。かかる塗布法を用いることにより、正孔注入層4を比較的容易に形成することができる。
正孔注入層形成用材料の調製に用いる溶媒または分散媒としては、例えば、各種無機溶媒や、各種有機溶媒、または、これらを含む混合溶媒等が挙げられる。
なお、乾燥は、例えば、大気圧または減圧雰囲気中での放置、加熱処理、不活性ガスの吹付け等により行うことができる。
また、本工程に先立って、陽極3の上面には、酸素プラズマ処理を施すようにしてもよい。これにより、陽極3の上面に親液性を付与すること、陽極3の上面に付着する有機物を除去(洗浄)すること、陽極3の上面付近の仕事関数を調整すること等を行うことができる。
ここで、酸素プラズマ処理の条件としては、例えば、プラズマパワー100W以上800W以下程度、酸素ガス流量50mL/min以上100mL/min以下程度、被処理部材(陽極3)の搬送速度0.5mm/sec以上10mm/sec以下程度とするのが好ましい。
[3] 次に、正孔注入層4上に、発光層5を形成する。
発光層5は、例えば、真空蒸着等の乾式メッキ法等を用いた気相プロセスにより形成することができる。
[4] 次に、発光層5上に、電子輸送層6(第1電子輸送層6bおよび第2電子輸送層6a)を形成する。
電子輸送層6(第1電子輸送層6bおよび第2電子輸送層6a)は、例えば、真空蒸着等の乾式メッキ法等を用いた気相プロセスにより形成するのが好ましい。
なお、電子輸送層6は、例えば、電子輸送性材料を溶媒に溶解または分散媒に分散してなる電子輸送層形成用材料を、発光層5上に供給した後、乾燥(脱溶媒または脱分散媒)することによっても形成することができる。
[5] 次に、電子輸送層6上に、電子注入層7を形成する。
電子注入層7の構成材料として無機材料を用いる場合、電子注入層7は、例えば、CVD法や、真空蒸着、スパッタリング等の乾式メッキ法等を用いた気相プロセス、無機微粒子インクの塗布および焼成等を用いて形成することができる。
[6] 次に、電子注入層7上に、陰極8を形成する。
陰極8は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、金属箔の接合、金属微粒子インクの塗布および焼成等を用いて形成することができる。
以上のような工程を経て、発光素子1が得られる。
最後に、得られた発光素子1を覆うように封止部材9を被せ、基板2に接合する。
(発光装置)
次に、本発明の発光装置の実施形態について説明する。
図2は、本発明の発光装置を適用したディスプレイ装置の実施形態を示す縦断面図である。
図2に示すディスプレイ装置100は、基板21と、複数の発光素子1Aと、各発光素子1Aをそれぞれ駆動するための複数の駆動用トランジスター24とを有している。ここで、ディスプレイ装置100は、トップエミッション構造のディスプレイパネルである。
基板21上には、複数の駆動用トランジスター24が設けられ、これらの駆動用トランジスター24を覆うように、絶縁材料で構成された平坦化層22が形成されている。
各駆動用トランジスター24は、シリコンからなる半導体層241と、半導体層241上に形成されたゲート絶縁層242と、ゲート絶縁層242上に形成されたゲート電極243と、ソース電極244と、ドレイン電極245とを有している。
平坦化層上には、各駆動用トランジスター24に対応して発光素子1Aが設けられている。
発光素子1Aは、平坦化層22上に、反射膜32、腐食防止膜33、陽極3、積層体(有機EL発光部)14、陰極13、陰極カバー34がこの順に積層されている。本実施形態では、各発光素子1Aの陽極3は、画素電極を構成し、各駆動用トランジスター24のドレイン電極245に導電部(配線)27により電気的に接続されている。また、各発光素子1Aの陰極13は、共通電極とされている。
図2における発光素子1Aは、近赤外域で発光するものである。
隣接する発光素子1A同士の間には、隔壁31が設けられている。また、これらの発光素子1A上には、これらを覆うように、エポキシ樹脂で構成されたエポキシ層35が形成されている。
そして、エポキシ層35上には、これらを覆うように封止基板20が設けられている。
以上説明したようなディスプレイ装置100は、例えば軍事用途等の近赤外線ディスプレイとして用いることができる。
このようなディスプレイ装置100によれば、近赤外域での発光が可能である。また、幅広い波長領域における近赤外域で発光し得る高効率および長寿命な発光素子1を備えるので、信頼性に優れる。
(認証装置)
次に、本発明の認証装置の実施形態を説明する。
図3は、本発明の認証装置の実施形態を示す図である。
図3に示す認証装置1000は、生体F(本実施形態では指先)の生体情報を用いて個人を認証する生体認証装置である。
この認証装置1000は、光源100Bと、カバーガラス1001と、マイクロレンズアレイ1002と、受光素子群1003と、発光素子駆動部1006と、受光素子駆動部1004と、制御部1005とを有する。
光源100Bは、前述した発光素子1を複数備えるものであり、撮像対象物である生体Fへ向けて、近赤外域の光を照射する。例えば、この光源100Bの複数の発光素子1は、カバーガラス1001の外周部に沿って配置される。
カバーガラス1001は、生体Fが接触または近接する部位である。
マイクロレンズアレイ1002は、カバーガラス1001の生体Fが接触または近接する側と反対側に設けられている。このマイクロレンズアレイ1002は、複数のマイクロレンズがマトリクス状に配列して構成されている。
受光素子群1003は、マイクロレンズアレイ1002に対してカバーガラス1001とは反対側に設けられている。この受光素子群1003は、マイクロレンズアレイ1002の複数のマイクロレンズに対応してマトリクス状に設けられた複数の受光素子で構成されている。この受光素子群1003の各受光素子としては、例えば、CCD(Charge Coupled Device)、CMOS等を用いることができる。
発光素子駆動部1006は、光源100Bを駆動する駆動回路である。
受光素子駆動部1004は、受光素子群1003を駆動する駆動回路である。
制御部1005は、例えば、MPUであり、発光素子駆動部1006および受光素子駆動部1004の駆動を制御する機能を有する。
また、制御部1005は、受光素子群1003の受光結果と、予め記憶された生体認証情報との比較により、生体Fの認証を行う機能を有する。
例えば、制御部1005は、受光素子群1003の受光結果に基づいて、生体Fに関する画像パターン(例えば静脈パターン)を生成する。そして、制御部1005は、その画像パターンと、生体認証情報として予め記憶された画像パターンとを比較し、その比較結果に基づいて、生体Fの認証(例えば静脈認証)を行う。
このような認証装置1000によれば、近赤外光を用いて生体認証を行うことができる。また、幅広い波長領域における近赤外域で発光し得る高効率および長寿命な発光素子1を備えるので、信頼性に優れる。
このような認証装置1000は、各種の電子機器に組み込むことができる。
(電子機器)
図4は、本発明の電子機器を適用したモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピューターの構成を示す斜視図である。
この図において、パーソナルコンピューター1100は、キーボード1102を備えた本体部1104と、表示部を備える表示ユニット1106とにより構成され、表示ユニット1106は、本体部1104に対しヒンジ構造部を介して回動可能に支持されている。
このパーソナルコンピューター1100において、本体部1104には、前述した認証装置1000が設けられている。
このようなパーソナルコンピューター1100によれば、幅広い波長領域における近赤外域で発光し得る高効率および長寿命な発光素子1を備えるので、信頼性に優れる。
なお、本発明の電子機器は、図4のパーソナルコンピューター(モバイル型パーソナルコンピューター)の他にも、例えば、スマートフォン、タブレット端末、時計、携帯電話機、ディジタルスチルカメラ、テレビや、ビデオカメラ、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、ラップトップ型パーソナルコンピューター、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳(通信機能付も含む)、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニタ、電子双眼鏡、POS端末、タッチパネルを備えた機器(例えば金融機関のキャッシュディスペンサー、自動券売機)、医療機器(例えば電子体温計、血圧計、血糖計、脈拍計測装置、脈波計測装置、心電表示装置、超音波診断装置、内視鏡用表示装置)、魚群探知機、各種測定機器、計器類(例えば、車両、航空機、船舶の計器類)、フライトシミュレータ、その他各種モニタ類、プロジェクター等の投射型表示装置等に適用することができる。
また、本発明の電子機器は、前述した光源100Bを備える構成のものとして、例えば、血中酸素濃度測定器、血糖値測定器、肌診断機、体脂肪測定器、体内蛍光物質観察器、皮膚癌診断機器、瞳観察装置、血管観察機器のような医療機器(生体センサー)、赤外スキャナー機器等が、認証装置1000を備える構成以外のものとして挙げることができる。
以上、本発明の化合物、発光素子用化合物、発光素子、発光装置、光源、認証装置および電子機器を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものでない。
また、本発明の発光素子および発光装置は照明用の光源として用いてもよい。
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1−1.発光材料の製造
以下の工程1〜5により、前記式IRD−1で表されるベンゾ−ビス−チアジアゾール系化合物を合成した。
[工程1]
Figure 2018111674
まず、2リットルコルベンに発煙硝酸(1.50)500gを仕込み、内温3℃まで冷却した。そこへ、濃硫酸(345ml)を内温10℃以下でゆっくりと滴下した。その後、原料4,7−ブロモ−2,1,3−ベンゾビスチアジアゾール(75.0g,255mmol)を内温10℃以下でゆっくり分割添加し、室温放置し、一晩撹拌した。
次いで、反応液を氷水(2.7L)へ注ぎ入れ、固体をろ取した。得られた固体にトルエン(80mL)を加え、再結晶化した。得られた固体を再度トルエン(40mL)を用いて再結晶化することによって、目的物を得た(収量25.5g、収率26%)。
Figure 2018111674
次いで、Arガス下、2リットルコルベンにジブロモ体(15.0g、39mmol)とトリブチルフェニルスタンナン(14.7g、40mmol)をジオキサン(700mL)に溶解し、そこへPd(PPh (2.3g、2mmol)を加え、内温95℃まで昇華し、一晩撹拌した。
次いで、室温まで冷却後、反応駅を減圧下濃縮した。得られた固体をトルエンにて洗浄し、その後、トルエン800mLを用いて再結晶を行うことにより目的物を得た(収量7.6g、収率51%)。
[工程2]
Figure 2018111674
まず、Arガス下、1リットルの3つ口フラスコにN,N‘−ビス(4−ブロモフェニル)−N,N’−ジフェニルベンゼン−1,4−ジアミン(43.9g、77mmol)を脱水THF(500ml)に溶解し、−78℃まで冷却した。そこへ1.6Mn−BuLiヘキサン溶液(52.5ml、84.5mmol)を内温−60℃以下で滴下し、そのまま30分間撹拌した。その後、塩化トリブチルすず(IV)(50.1g、154mmol)を内温−60℃以下で滴下した。滴下後、室温まで上昇させ、一晩撹拌した。
次いで、NaF(4.20g、100mmol)を水(500ml)に溶解し、そこへ反応液を注ぎ入れた。トルエン(250ml)を加えて1時間撹拌した後、有機層を分取し、再度有機層を水(250ml×2)を用いて洗浄した。得られた有機層を減圧下濃縮操作を行うことによって、目的物を得た(収量59g)。
[工程3]
Figure 2018111674
まず、Arガス下、500mlの3つ口フラスコにブロモ体(工程1の成果物)(7.5g、19.7mmol)とスズ体(工程2の成果物)(9.4g、9.5mmol)をジオキサン(350ml)に溶解し、そこへPd(PPh(1.13g、0.975mmol)を加え、内温95℃まで昇温し、一晩撹拌した。
次いで、室温まで冷却後、反応液を減圧下濃縮した。得られた固体をトルエンにて洗浄し、その後、トルエン400mlを用いて再結晶を行うことにより目的物を得た(収量4.7g、収率49%)。
[工程4]
Figure 2018111674
まず、Arガス下、300mlの3つ口フラスコに酢酸(200ml)とFe(10.2g、182mmol)を加えて、内温65℃まで昇温した。そこへ工程3で得られたニトロ体(4.5g、4.4mmol)をゆっくりと分割添加し、80℃まで昇温、3時間そのまま撹拌した。
次いで、反応液を室温まで冷却後、水(300ml)へ注ぎ入れた。その後、固体(Fe含む)を濾過した。その固体からTHF(300ml)を用いて有機物を抽出し、減圧下濃縮した。得られた残渣にトルエン(150ml)を加え、再度減圧濃縮することによって目的物を得た(収量2.9g、収率75%)。
[工程5]
Figure 2018111674
Arガス下、300mlの3つ口フラスコに工程4で得られたアミン体(2.5g、2.8mmol)を脱水ピリジン(90ml)に溶解し、N−チオニルアニリン(0.84g、6mmol)とトリメチルシリルクロリド(3.6g、33mmol)を加えた。その後、内温80℃まで昇温、一晩撹拌した。
反応液を室温まで冷却後、水(200ml)に注ぎ入れた。析出した結晶をろ過して取り出し、固体をTHFにて洗浄し、1.3gの固体(結晶)を得た。
シリカゲルクロマトグラフィー(シリカゲル100g、展開溶媒クロロベンゼン)にて精製を行った。
最後にキシレンを用いた再沈殿法により精製を行うことで、目的物である前記化学式IRD−1で表わされる化合物を得た(収量0.8g、収率30%)。
1−2.ホスト材料の製造
前記式IRH1−5等で表されるテトラセン系ホスト材料および前記式IRH2−30等で表されるアントラセン系ホスト材料は、それぞれ、特開2013−177327および特開2013−179123に記載の製造方法を参照して合成した。
2.発光素子の製造
(実施例1)
<1> まず、平均厚さ0.5mmの透明なガラス基板を用意した。次に、この基板上に、スパッタ法により、平均厚さ100nmのITO電極(陽極)を形成した。
そして、基板をアセトン、2−プロパノールの順に浸漬し、超音波洗浄した後、酸素プラズマ処理およびアルゴンプラズマ処理を施した。これらのプラズマ処理は、それぞれ、プラズマパワー100W、ガス流量20sccm、処理時間5secで行った。
<2> 次に、ITO電極上に、前記式HIL−1で表わされる化合物を真空蒸着法により蒸着させ、平均厚さ70nmの正孔注入層(HIL)を形成した。
<3> 次に、正孔注入層上に、発光層の構成材料を真空蒸着法により蒸着させ、平均厚さ25nmの発光層を形成した。発光層の構成材料としては、発光材料(ゲスト材料)として前記式IRD−1で表わされる化合物(ベンゾ−ビス−チアジアゾール系化合物)を用い、ホスト材料として前記式IRH1−5で表わされる化合物(テトラセン系材料)を用いた。また、発光層中の発光材料(ドーパント)の含有量(ドープ濃度)を2.0wt%とした。
<4> 次に、発光層上に、前記ETL1−3で表される化合物(アザインドリジン系化合物)を真空蒸着法により成膜し、平均厚さ95nmの電子輸送層(第1電子輸送層;ETL1)を形成した。
<5> 次に、電子輸送層上に、フッ化リチウム(LiF)を真空蒸着法により成膜し、平均厚さ1nmの電子注入層を形成した。
<6> 次に、電子注入層上に、Alを真空蒸着法により成膜した。これにより、Alで構成される平均厚さ100nmの陰極を形成した。
<7> 次に、形成した各層を覆うように、ガラス製の保護カバー(封止部材)を被せ、エポキシ樹脂により固定、封止した。
以上の工程により、発光素子を製造した。
(実施例2)
前記工程<3>で用いる発光材料(ドーパント)として前記式IRD−2で表わされる化合物を用いたこと以外は、前述した実施例1と同様にして発光素子を製造した。
(実施例3)
前記工程<3>で用いる発光材料(ドーパント)として前記式IRD−3で表わされる化合物を用いたこと以外は、前述した実施例1と同様にして発光素子を製造した。
(実施例4)
前記工程<2>で形成する正孔注入層の平均厚さを30nmとし、前記工程<3>で用いる発光材料(ドーパント)として前記式IRD−6で表わされる化合物を用い、発光層中の発光材料(ドーパント)の含有量(ドープ濃度)を5.0wt%とし、さらに、前記工程<4>で形成する電子輸送層の平均厚さを75nmとした以外は、前述した実施例1と同様にして発光素子を製造した。
(実施例5)
前記工程<3>で用いる発光材料(ドーパント)として前記式IRD−7で表わされる化合物を用いたこと以外は、前述した実施例1と同様にして発光素子を製造した。
(実施例6)
前記工程<3>で用いる発光材料(ドーパント)として前記式IRD−9で表わされる化合物を用いたこと以外は、前述した実施例1と同様にして発光素子を製造した。
(実施例7)
前記工程<3>で用いる発光材料(ドーパント)として前記式IRD−10で表わされる化合物を用いたこと以外は、前述した実施例1と同様にして発光素子を製造した。
(実施例8)
前記工程<3>で用いる発光材料(ドーパント)として前記式IRD−13で表わされる化合物を用いたこと以外は、前述した実施例1と同様にして発光素子を製造した。
(実施例9)
前記工程<3>において、発光層中の発光材料(ドーパント)の含有量(ドープ濃度)を0.5wt%とした以外は、前述した実施例1と同様にして発光素子を製造した。
(実施例10)
前記工程<3>において、発光層中の発光材料(ドーパント)の含有量(ドープ濃度)を5.0wt%とした以外は、前述した実施例1と同様にして発光素子を製造した。
(実施例11)
前記工程<3>で用いるホスト材料として前記式IRH1−2で表わされる化合物(テトラセン系材料)を用いたこと以外は、前述した実施例1と同様にして発光素子を製造した。
(実施例12)
前記工程<3>で用いるホスト材料として前記式IRH1−13で表わされる化合物(テトラセン系材料)を用いたこと以外は、前述した実施例1と同様にして発光素子を製造した。
(実施例13)
前記工程<3>で用いるホスト材料として前記式IRH2−30で表わされる化合物(アントラセン系材料)を用いたこと以外は、前述した実施例1と同様にして発光素子を製造した。
(実施例14)
前記工程<3>で用いるホスト材料として前記式IRH2−47で表わされる化合物(アントラセン系材料)を用いたこと以外は、前述した実施例1と同様にして発光素子を製造した。
(実施例15)
前記工程<3>で用いるホスト材料として前記式IRH2−52で表わされる化合物(アントラセン系材料)を用いたこと以外は、前述した実施例1と同様にして発光素子を製造した。
(実施例16)
前記工程<3>で用いるホスト材料としてAlqを用いたこと以外は、前述した実施例1と同様にして発光素子を製造した。
(実施例17)
前記工程<3>で形成する発光層の平均厚さを10nm、前記工程<4>で形成する電子輸送層の厚さを85nmとした以外は、前述した実施例1と同様にして発光素子を製造した。
(実施例18)
前記工程<3>で形成する発光層の平均厚さを50nm、前記工程<4>で形成する電子輸送層の厚さを45nmとした以外は、前述した実施例1と同様にして発光素子を製造した。
(実施例19)
前記工程<4>において、さらに、発光層と電子輸送層(第1電子輸送層)との間に第2電子輸送層(ETL2)を設けた以外は、前述した実施例1と同様にして発光素子を製造した。
なお、第2電子輸送層の形成は、第1電子輸送層上に、前記IRH2−30で表される化合物(アントラセン系化合物)を真空蒸着法により成膜することにより行った。また、第1電子輸送層の厚さを15nm、第2電子輸送層の厚さを80nmとした。
(実施例20)
第1電子輸送層の厚さを5nm、第2電子輸送層の厚さを90nmとした以外は、前述した実施例19と同様にして発光素子を製造した。
(比較例1)
前記工程<2>で形成する正孔注入層の平均厚さを90nmとし、前記工程<3>で用いる発光材料(ドーパント)として下記式IRD−C1で表わされる化合物を用い、ホスト材料としてAlqを用い、さらに、前記工程<4>で形成する電子輸送層の平均厚さを105nmとした以外は、前述した実施例1と同様にして発光素子を製造した。
(比較例2)
前記工程<3>で用いる発光材料(ドーパント)として下記式IRD−C1で表わされる化合物を用いたこと以外は、前述した実施例1と同様にして発光素子を製造した。
(比較例3)
前記工程<3>で用いる発光材料(ドーパント)として下記式IRD−C2で表わされる化合物を用い、ホスト材料として前記式IRH1−5で表わされる化合物(テトラセン系材料)を用いたこと以外は、前述した比較例1と同様にして発光素子を製造した。
Figure 2018111674
3.評価
各実施例および各比較例について、一定電流電源(株式会社東陽テクニカ製 KEITHLEY2400)を用いて、発光素子に100mA/cmの定電流を流し、そのときの発光ピーク波長を高速分光放射計(相馬光学製 S-9000)を用いて測定した。また、薄型フォトダイオードパワーセンサ(ソーラボ製 S132C)を用いて、700nm〜980nmの波長域における外部量子効率(発光効率)EQE(%)も測定した。
さらに、発光素子に100mA/cmの定電流を流し、輝度が初期の輝度の50%となる時間(LT50)も測定した。
これらの測定結果を表1に示す。
Figure 2018111674
表1から明らかなように、各実施例の発光素子は、705nm以上975nm以下の幅広い発光ピーク波長領域を有する近赤外域で発光するととともに、各比較例の発光素子に比し、実施例16を除き、発光効率と寿命とのバランスに優れる。
また、実施例11〜15の発光素子と実施例16の発光素子とを比較すると、実施例11〜15の発光素子は、実施例16の発光素子に比べて、外部量子効率(発光効率)が高く、濃度消光性を低減することができる。
1…発光素子、1A…発光素子、2…基板、3…陽極、4…正孔注入層、5…発光層、6…電子輸送層、6a…第2電子輸送層、6b…第1電子輸送層、7…電子注入層、8…陰極、9…封止部材、13…陰極、14…積層体、20…封止基板、21…基板、22…平坦化層、24…駆動用トランジスター、27…導電部、31…隔壁、32…反射膜、33…腐食防止膜、34…陰極カバー、35…エポキシ層、100…ディスプレイ装置、100B…光源、241…半導体層、242…ゲート絶縁層、243…ゲート電極、244…ソース電極、245…ドレイン電極、1000…認証装置、1001…カバーガラス、1002…マイクロレンズアレイ、1003…受光素子群、1004…受光素子駆動部、1005…制御部、1006…発光素子駆動部、1100…パーソナルコンピューター、1102…キーボード、1104…本体部、1106…表示ユニット、F…生体

Claims (13)

  1. 下記一般式IRDで表わされることを特徴とする化合物。
    Figure 2018111674
    [前記一般式IRD中、基Zは、芳香族環を含む炭素数1〜50の置換基であり、各基Rは、それぞれ独立して、水素原子、芳香族環を含む炭素数1〜20の置換基のうちのいずれかである。]
  2. 下記一般式IRDで表わされることを特徴とする発光素子用化合物。
    Figure 2018111674
    [前記一般式IRD中、基Zは、芳香族環を含む炭素数1〜50の置換基であり、各基Rは、それぞれ独立して、水素原子、芳香族環を含む炭素数1〜20の置換基のうちのいずれかである。]
  3. 陽極と、
    陰極と、
    前記陽極と前記陰極との間に設けられ、前記陽極と前記陰極との間に通電することにより発光する発光層と、を有し、
    前記発光層は、発光材料として下記一般式IRDで表わされる化合物を含んで構成されることを特徴とする発光素子。
    Figure 2018111674
    [前記一般式IRD中、基Zは、芳香族環を含む炭素数1〜50の置換基であり、各基Rは、それぞれ独立して、水素原子、芳香族環を含む炭素数1〜20の置換基のうちのいずれかである。]
  4. 前記発光材料を保持するホスト材料として下記式IRH1で表わされる化合物を含んで構成される請求項3に記載の発光素子。
    Figure 2018111674
    [前記式IRH1中、nは、1〜12の自然数を示し、Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、アリールアミノ基を示す。]
  5. 前記発光材料を保持するホスト材料として下記式IRH2で表わされる化合物を含んで構成される請求項3に記載の発光素子。
    Figure 2018111674
    [前記式IRH2中、nは、1〜10の自然数を示し、Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、アリールアミノ基を示す。]
  6. 前記ホスト材料は、炭素原子および水素原子で構成されている請求項4または5に記載の発光素子。
  7. 前記発光層中における前記発光材料の含有量は、0.5wt%以上5.0wt%以下である請求項3ないし6のいずれか1項に記載の発光素子。
  8. 前記発光層と前記陰極との間に設けられ、アントラセン骨格を有する化合物を含んで構成されている電子輸送層を備える請求項3ないし7のいずれか1項に記載の発光素子。
  9. 前記発光層の厚さは、10nm以上50nm以下である請求項3ないし8のいずれか1項に記載の発光素子。
  10. 請求項3ないし9のいずれか1項に記載の発光素子を備えることを特徴とする発光装置。
  11. 請求項3ないし9のいずれか1項に記載の発光素子を備えることを特徴とする光源。
  12. 請求項3ないし9のいずれか1項に記載の発光素子を備えることを特徴とする認証装置。
  13. 請求項3ないし9のいずれか1項に記載の発光素子を備えることを特徴とする電子機器。
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