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JP2018102310A - 飲食品用呈味改善剤 - Google Patents

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JP2018102310A JP2018035128A JP2018035128A JP2018102310A JP 2018102310 A JP2018102310 A JP 2018102310A JP 2018035128 A JP2018035128 A JP 2018035128A JP 2018035128 A JP2018035128 A JP 2018035128A JP 2018102310 A JP2018102310 A JP 2018102310A
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Abstract

【課題】果実をはじめとする食品素材含有飲食品に極微量添加することで、当該食品素材が有する味の厚み、ボディー感などを大幅に増強し、雑味がなく、バランスの改善をはかることのでき、しかも製品の状態が改善され、簡便に、安価に調製することのできる呈味改善剤の製造方法の提供。【解決手段】果汁をpH6〜pH12に調整した後、100℃〜180℃にて10分〜5時間加熱処理して加熱処理物を得る工程を含んでなる、果汁風味飲食品用呈味改善剤の製造法。および該製造方法によって得られる呈味改善剤の使用。【選択図】なし

Description

本発明は飲食品用呈味改善剤に関する。さらに詳しくは、茶類、コーヒー、焙煎穀物、カカオ、果実などの食品素材含有飲食品に極微量添加することで、当該食品素材が有する味の厚み、ボディー感などを大幅に増強し、バランスの改善をはかることのできる、呈味改善剤に関する。
現代の生活が豊かになるにつれて、食の洋風化、多様化、高級化が進み、それらの影響を受けたいろいろな加工食品が作り出されてきている。例えば、茶類、コーヒー、麦茶、玄米茶などの焙煎穀物などは缶あるいはペットボトル等に充填した容器詰め飲料とした商品として提供されている。また、カカオはココア飲料やココア風味またはチョコレート風味の菓子類として、さらに果実はいろいろな形で飲料、冷菓、菓子類などの果実風味飲食品に利用され、商品のバラエティー化、高級化のために役立てられている。
しかしながら、これらの食品素材含有飲食品は大量生産に適応させるため、工業的方法で抽出行程を行い、また長期保存に耐えられるように微生物安定性を高めるため、強い殺菌を行う必要がある。これらの加工時の殺菌工程などにより食品素材が本来有している風味が低減し、香気の散逸、加熱による香味の劣化、呈味の低下などを伴い、十分に満足のいく風味の飲食品を得ることが極めて困難であった。これらの風味劣化に対する対応に関する課題は従来から大きなテーマであった。
このような課題を解消する手段として、例えば、食品素材含有飲食品に合成香料、天然香料などを組み合わせた調合香料(フレーバー)を配合する方法が提案されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5)。また、食品素材から水蒸気蒸留により回収した回収香と、蒸留残渣から得られるエキスを組み合わせた水蒸気抽出エキスを食品素材含有飲食品に配合する方法も提案されている(特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10、特許文献11)。さらに、食品素材をプロテアーゼ、糖質分解酵素などを使用して分解した酵素処理エキスを配合する方法も提案されている(特許文献12、特許文献13、特許文献14)。
これらの提案は香気の増強などの点でそれなりの効果はみられるが、加熱殺菌行程などによる風味の低減、香気の散逸、香味の劣化などに対して十分対応することはできていない。
本発明者らは先に、茶類、コーヒー、焙煎穀物、カカオの比較的高濃度に調製した抽出液を加熱した、加熱処理物を食品素材含有飲食品に極微量添加することにより、飲食品の味の厚みやボディー感などの呈味を増強し、バランスの改善を図ることができることを提案した(特許文献15、特許文献16、特許文献17、特許文献18)。
特開2005−143467号公報 特開2006−20526号公報 特開2006−121958号公報 特開2005−15686号公報 特開2004−168936号公報 特開2011−182673号公報 特開2003−33137号公報 特開2010−13510号公報 特開2009−278957号公報 特開2011−97832号公報 特開2010−252643号公報 特開2003−144049号公報 特開2010−63382号公報 特開2007−43931号公報 特開2013−252111号公報 特開2013−252112号公報 特開2013−252113号公報 特開2013−252114号公報
本発明者らが先に提案した特許文献15〜特許文献18に記載されている呈味改善剤は、飲食品、特に、当該呈味改善剤の原料と共通するかまたは同類の食品素材、例えば、茶類、コーヒー、焙煎穀物、カカオ、果実または果汁含有飲食品にそれぞれ極微量添加することにより、味の厚みやボディー感などの呈味を増強することができるが、やや雑味が残ることが認められた。また、これらの呈味改善剤は天然物を高温で加熱しているため、澱が多く生成し製品の状態が悪いという問題点があった。従って、本発明が解決しようとする課題は、茶類、コーヒー、焙煎穀物、カカオ、果実または果汁などの食品素材含有飲食品に極微量添加することで、当該食品素材が有する味の厚み、ボディー感などを大幅に増強し、雑味がなく、バランスの改善をはかることのでき、しかも製品の状態が改善され、簡便に、安価に調製することのできる呈味改善剤を提供することである。
本発明者らは、前記課題に鑑み、先に提案した特許文献15〜特許文献18に記載されている呈味改善剤の改良について、鋭意研究を行ってきたところ、食品素材の原料の抽出液を加熱する際に、pH6〜pH12に調整した後、加熱処理することにより得られる処理物が、特に、当該食品素材が有する味の厚み、ボディー感などを大幅に増強し、雑味がなく、バランスの改善をはかることのでき、しかも製品の状態を改善することができることを見いだした。さらに、pH6〜pH12に調整した後、加熱した加熱処理物と、水蒸気抽出エキス、酵素処理エキス、溶媒抽出エキス、フレーバーなどの香気付与剤を組み合わせることによりさらに上記の効果が格段に増強できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
かくして、本発明は以下のものを提供する。
(1)飲食品用呈味改善剤であって、
食品素材の原料の抽出液をpH6〜pH12に調整した後、100℃〜180℃にて10分〜5時間加熱処理して得られる加熱処理物からなり、かつ、
前記食品素材の原料が茶葉、コーヒー豆、焙煎穀物、カカオ豆および果実からなる群より選ばれる原材料の未加工または加工物からなる群より選ばれ、
前記加熱処理物が、その希釈液のOD680を測定したときの値(A)とpH未調整加熱処理物の相当する値(B)との比(A/B)が0.88以下である、
呈味改善剤。
(2)食品素材の原料の抽出液が固形分濃度として屈折糖度(20℃)でBx1°〜Bx80°である(1)に記載の呈味改善剤。
(3)食品素材の原料の抽出液が、1種または2種以上の酵素により処理された酵素処理物である、(1)または(2)のいずれかに記載の呈味改善剤。
(4)単糖、二糖またはオリゴ糖から選ばれる1種または2種以上を添加して加熱処理する、(1)〜(3)のいずれかに記載の呈味改善剤。
(5)(1)〜(4)に記載の呈味改善剤および香気付与剤を含有する香味付与剤組成物。
(6)香気付与剤が、水蒸気抽出エキス、酵素処理エキス、溶媒抽出エキスおよびフレーバーから選択される少なくとも一つである(5)に記載の香味付与剤組成物。
(7)(5)または(6)に記載の香味付与剤組成物を飲食品に添加することを特徴とする、飲食品の香味改善方法。
本発明によれば、茶類、コーヒー、焙煎穀物、カカオ、果実などの食品素材含有飲食品に極微量添加することで、当該食品素材が有する味の厚み、ボディー感などを大幅に増強し、雑味がなく、バランスの改善をはかることができ、しかも製品の状態が改善され、簡便に、安価に調製することのできる呈味改善剤を提供することができる。
以下、本発明についてより詳細に説明する。
呈味改善剤とは、本改善剤が添加される飲食品の呈味、すなわち、味覚で感じる甘味、酸味、塩味、苦味の4原味に、場合により、辛味、うま味、渋味、えぐ味等を加えた総合的な味のバランスを良好なものとし、雑味を除去乃至マスクし、当該飲食品に含まれる食品素材に本来備わった好ましい特質を強化または増強するのに使用する添加をいう。食品素材とは、直接飲食に供することができる形態もしくは状態にある、飲食品のもとになる材料を意味し、制限されるものでないが、例えば、茶類、コーヒー、焙煎穀物、カカオ、果汁などをあげることができる。
したがって、食品素材の原料としては、茶葉、コーヒー豆、穀物、カカオ豆もしくは果実それ自体、またはその加工物を挙げることができる。
このような原料の抽出物には、当該技術分野でそれ自体既知の抽出方法を介して得られる生成物のみならず、例えば、果実にあっては、必要により、水分等を加えて搾汁して得られる果汁も包含される。以下、各食品素材の原料の例示、その抽出処理方法等について、さらに具体的に説明する。
茶類の原料は、ツバキ科の常緑樹であるチャ(学名:Camellia sinensis(L)O.Kuntze)から得られる茶葉それ自体または茶葉から製茶された、例えば、煎茶、番茶、ほうじ茶、玉露、かぶせ茶、碾茶等の蒸し製の不発酵茶;嬉野茶、青柳茶、中国緑茶等の釜炒り製の不発酵茶;包種茶、凍頂烏龍茶、東方美人等台湾烏龍茶や鉄観音、黄金桂、武夷岩茶、鳳凰水仙、色種等中国烏龍茶の半発酵茶;ダージリン、ウバ、ジャワティー、キーモン紅茶等の発酵茶;阿波番茶、碁石茶、プーアール茶、六堡茶等の後発酵茶の加工茶葉を挙げることができる。これらのうち、特に、緑茶、ウーロン茶、紅茶などの加工茶葉が好適である。本発明にいう、食品素材たる、茶葉には、上記各種茶葉それ自体および茶葉に由来する茶葉粉末、茶葉抽出物(抽出液もしくはその濃縮物またはその燥粉末等)が包含される。
コーヒーの原料は、コーヒー豆それ自体(生豆)またはそれから焙煎等の処理の施された加工品であることができる。コーヒー豆の起源は、例えば、アラビカ種、ロブスタ種、リベリカ種等のいずれでも良く、その種類、産地を問わずいかなるコーヒー豆でも利用することができる。コーヒー生豆の焙煎はコーヒーロースターなどを用い常法により行うことができる。例えば、コーヒー生豆を回転ドラムの内部に投入し、この回転ドラムを回転攪拌しながら、下方からガスバーナー等で加熱することで焙煎できる。焙煎コーヒー豆の焙煎度は、通常、L値で表され、イタリアンロースト:16〜19、フレンチロースト:
19〜21、フルシティーロースト:21〜23、シティーロースト:23〜25、ハイロースト:25〜27,ミディアムロースト:27〜29程度である。これより浅い焙煎は通常の飲用では一般的にはあまり使用されない。L値とはコーヒーの焙煎の程度を表す指標で、コーヒー焙煎豆の粉砕物の明度を色差計で測定した値である。黒をL値0で、白をL値100で表す。従って、コーヒー豆の焙煎が深いほど数値は低い値となり、浅いほど高い値となる。本発明にいう、食品素材たる、コーヒーには、上記原料の粉砕粉末、抽出物(抽出液もしくはその濃縮物またはその乾燥粉末等)が包含される。
穀物には、例えば、大麦、玄米、発芽米、小麦、ハトムギ、ソバの実、トウモロコシ、ごま、キヌア、アマランサス、キビ、ヒエ、アワ、大豆、など、或はその加工品である、焙煎大麦、焙煎米、焙煎玄米、焙煎発芽米、焙煎小麦、焙煎ハトムギ、焙煎ソバの実、焙煎トウモロコシ、炒りごま、焙煎キヌア、焙煎アマランサス、焙煎キビ、焙煎ヒエ、焙煎アワ、焙煎大豆などを例示できる。これらの内、焙煎処理された特に、焙煎大麦、焙煎米、焙煎発芽玄米および焙煎小麦が好ましい。本発明にいう、食品素材たる、焙煎穀物には、麦茶、いわゆる玄米茶に使用される玄米、玄米を焙煎したもの、ハトムギ茶、ソバ茶、が挙げられ、かような穀物の粉砕粉末、抽出物(抽出液もしくはその濃縮物またはその乾燥粉末等)が包含される。
カカオの原料であるカカオ豆は、市場で一般に入手できるものを使用することができる。カカオ豆は、カカオの実が収穫された後、実を割り、種をパルプごと取り出した後、1週間程度発酵させ、その後、110〜150℃で焙煎された後、粗粉砕され、ハスク(外皮)と胚芽が取り除かれるが、この焙煎し粗粉砕されたカカオ豆をカカオニブと呼ぶ。カカオニブを微粒子となるまで磨砕すると、カカオニブにはカカオバターが多量に含まれているため、液状となり、これがカカオリカーと呼ばれる。カカオリカーを圧搾して、カカオバター(油脂)を適度に除いた塊がココアケーキと呼ばれ、ココアケーキを粉砕したものがココアパウダーと呼ばれる。本発明にいう、食品素材たるカカオとして、カカオ豆の加工工程における、カカオニブ、カカオリカー、ココアケーキ、ココアパウダーを挙げることができ、一方、カカオ豆原料の加工品として、入手および抽出の容易さから、カカオニブまたはココアパウダーを特に好ましいものとして挙げることができる。
果実としては、例えば、柑橘類果実(オレンジ、ミカン、グレープフルーツ、レモン、ライム等)、アップル、グレープ、ピーチ、熱帯果実(パイナップル、グァバ、バナナ、マンゴー、アセロラ、パパイヤ、パッションフルーツ等)、その他果実(ウメ、ペアー、ザクロ、イチジク、ブルーベリー、キウイフルーツ等)、トマト、ニンジン、ストロベリー、メロンなどを挙げることができ、特に、オレンジ、グレープフルーツ、レモン、ライム、アップル、グレープ、ピーチ、パイナップル、グァバ、バナナ、マンゴー、パパイヤ、ストロベリー、ペアー、アプリコット、キウイフルーツ、ザクロ、イチジク、ブルーベリー、トマトなどの果実が好適であり、これらの果実は単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明にいう、食品素材たる果実としては、上記果実それ自体、またはこれらの果実から搾汁された果汁の濃厚物もしくは希釈物が包含される。
本発明では、前記した食品素材の原料の抽出液を使用する。以下、食品素材の原料が茶葉、コーヒー豆、焙煎穀物、カカオ豆および果実からなる群より選ばれる原材料の未加工または加工物である原料からの抽出液の調製方法を例示する。
茶葉またはその加工品の抽出
茶類原料の茶葉またはその加工品からの抽出液を調製する方法としては、抽出溶媒は主として水であり、抽出時の水、あるいは抽出後の抽出液に対し、酸化防止剤として、ビタミンCまたはアスコルビン酸ナトリウムを茶類原料に対し、0.01〜5質量%程度添加してもよい。また、必要によっては、エタノール、グリセリン、プロピレングリコール、
ソルビトールなどの食品に使用し得る水混和性極性有機溶媒を、溶媒全体に対し、0.1〜60質量%の範囲内で混合して使用することもできる。抽出に用いる溶媒(水)の量は任意に選択できるが、一般には茶類原料の5〜50倍量(質量)であり、好ましくは10〜20倍量である。抽出の温度及び時間についても任意に定めることができ、特に限定されるものではないが、10〜100℃にて30分〜12時間、特に1〜2時間が好適である。本発明の抽出液を得る操作の方法としては、カラム抽出、バッチ式、ニーダーによる抽出などのいずれでも行うことができる。
また、抽出時および/または抽出後の抽出液に対し、酵素処理を行うこともできる。酵素処理により、ペクチンなどの多糖類が分解し、抽出液の粘度が低下し、後に記述する濃縮時においても加熱を均一に行うことができ、好適である。この酵素処理に使用することのできる酵素としては、特に制限はなく、例えば、タンナーゼ、クロロゲン酸エステラーゼ、プロテアーゼ、糖質分解酵素、リパーゼなどを例示することができる。茶葉中にはカテキン類などのタンニンが多く含まれており、また、クロロゲン酸も含まれているためタンナーゼやクロロゲン酸エステラーゼで分解することが効果的である。タンナーゼは、タンニン中の水酸基に没食子酸がエステル結合しているデプシド結合を加水分解する酵素、例えば、エピガロカテキンガレートをエピガロカテキンと没食子酸に加水分解する酵素である。本発明で使用することのできるタンナーゼとしては、具体的には、例えば、タンナーゼ(500U/g;キッコーマン社製)、タンナーゼ(5,000U/g;キッコーマン社製)、タンナーゼ(500U/g;三菱化学フーズ社製)などを用いることもできる。タンナーゼの使用量は、力価などにより一概には言えないが、通常、茶類原料の質量を基準として通常0.1〜50U/g、好ましくは0.5〜20U/gの範囲内を例示することができる。
茶葉中には約25%のタンパク質(5訂食品成分表参照)が含まれており、プロテアーゼ処理を行うことにより、後の加熱反応の効果が特に高まる。しかしながら、茶葉中のタンパク質はタンニンと結合しているため、茶葉にプロテアーゼを単独で作用させても、ほとんどアミノ酸は生成しない。そこで、茶葉にプロテアーゼおよびタンナーゼを作用させることにより茶葉中のタンパク質の一部が分解し、アミノ酸の豊富な茶抽出液を得ることができる。プロテアーゼは、蛋白質やペプチドのペプチド結合を加水分解する酵素である。本発明で使用可能なプロテアーゼとしては、市販の各種プロテアーゼを挙げることができる。プロテアーゼの使用量は、力価などにより異なり一概には言えないが、茶類原料の質量を基準として通常、0.01〜100U/g、好ましくは1〜80U/gの範囲内を例示することができる。
茶葉中には多糖類が含まれているが、この多糖類を糖質分解酵素によりあらかじめ加水分解しておくことにより、後の加熱反応の効果が特に高まる。糖質分解酵素としては、具体的には、例えば、アミラーゼ、グルコアミラーゼ、プルラナーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、キシラナーゼ、ペクチナーゼ、アラバナーゼ、デキストラナーゼ、グルカナーゼ、マンナナーゼ、α−ガラクトシダーゼなどを例示することができる。糖質分解酵素の使用量は、使用する酵素の種類や茶葉中の多糖類の存在量により一概にはいえないが、おおよそ茶類原料の質量を基準として通常0.1〜1,000U/g、好ましくは1〜100U/gの範囲内、または、製剤中に通常複数種類の酵素が含まれていて活性単位では表しにくいような場合は、茶類原料に対して通常、0.01〜5質量%、好ましくは0.1〜2質量%の範囲内を例示することができる。
また、リパーゼ処理を行うことでも、後の加熱反応の効果が特に高まる。本発明で使用可能なリパーゼとしては、特に制限されるものではなく、例えば、アスペルギルス属、ムコール属、キャンディダ属、リゾープス属等の微生物由来リパーゼ、豚の膵臓から得られるリパーゼ、子山羊、子羊、子牛の咽頭分泌線から採取したオーラルリパーゼなどを適宜
利用できる。リパーゼの使用量は力価などにより異なり一概には言えないが、通常、茶葉原料に対して0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%の範囲内を例示することができる。
酵素処理条件としては、バッチ式、ニーダーによる抽出などにおいて、茶類原料の抽出時に酵素を添加する場合は、例えば、茶類原料1質量部あたり水を通常5〜50質量部、好ましくは10〜20質量部添加し、60〜121℃で2秒〜20分間殺菌した後冷却したものに対し、酵素を添加し、20〜60℃で30分〜24時間酵素処理を行う。酵素処理後、60〜121℃で2秒〜20分間加熱して酵素を失活させた後冷却し、固液分離、濾過することにより、酵素処理された茶抽出液を得ることができる。また、カラム抽出、バッチ式、ニーダーによる抽出などにおいて、茶類原料の抽出後の抽出液に対して酵素を添加する場合は、抽出液に対し酵素を添加し、20〜60℃で30分〜24時間酵素処理を行う。酵素処理後、60〜121℃で2秒〜20分間加熱して酵素を失活させた後冷却し、固液分離、濾過することにより、酵素処理された茶抽出液を得ることができる。
また、茶抽出液は、前記酵素処理と併せて、または、酵素処理とは別に、抽出時および/または抽出後の抽出液に対し、PVPP(ポリビニルポリピロリドン)および/または活性炭による接触処理を行っても良い。PVPPはカテキン類などのポリフェノールを吸着する性質があり、茶抽出液をPVPPと接触処理することにより、茶抽出液中のポリフェノール含量を低減させることができる。かかるPVPPの使用量は、一般には、茶類原料の質量を基準として、15〜300質量%、特に30〜150質量%の範囲内とすることができる。PVPPによる接触処理は、茶類原料の抽出中または抽出液にPVPPを添加し、例えば、10〜60℃程度の範囲内の温度で10分〜2時間攪拌処理することにより行うことができる。その後、遠心分離、濾過等適宜の分離手段を採用して清澄な抽出液とすることができる。これにより、ポリフェノールを低減させた茶抽出液を得ることができる。活性炭は低極性成分やカフェインなどを吸着する性質があり、茶抽出液を活性炭と接触処理することにより、茶抽出液中のカフェインやポリフェノール含量を低減させることができる。かかる活性炭の使用量は、一般には、茶類原料の質量を基準として、15〜300質量%、特に30〜150質量%の範囲内とすることができる。活性炭による接触処理は、茶類原料の抽出中または抽出液に活性炭を添加し、例えば、10〜60℃程度の範囲内の温度で10分〜2時間攪拌処理することにより行うことができる。また、抽出液に対する処理であれば、粒状態の活性炭を充填したカラムに、SV(空間速度)=1〜100、好ましくは5〜20の範囲内で通液し、処理することもできる。その後、遠心分離、濾過等適宜の分離手段を採用して清澄な抽出液とすることができる。これにより、カフェインやポリフェノールを低減させた茶抽出液を得ることができる。
かくして得られた茶抽出液はBx1°〜Bx10°程度であり、そのまま加熱処理に供することもできるが、加熱処理に供するときの濃度はある程度高いことが好ましい。加熱処理に供するときの茶抽出液の濃度としては、Bx1°〜Bx80°、好ましくはBx5°〜Bx80°、より好ましくはBx10°〜Bx70°、さらに好ましくはBx20°〜Bx60°、最も好ましくはBx30°〜Bx55°とすることができる。濃度が低すぎる場合は、加熱の効果が出にくい。また、通常の飲用程度の濃度(Bx0.3°程度)であると、いわゆるレトルト臭、加熱臭が発生することが知られているが、低濃度での加熱処理ではレトルト臭と同様な風味が生じてしまい、呈味改善剤として十分に有効な素材としては得られない。また、濃度が低いことにより、茶飲料へ多量の添加が必要になってしまう可能性がある。一方、濃度が高すぎる場合は粘度が高く、均一加熱ができなく、焦げ付くなどの弊害が生じる可能性がある。茶抽出液の濃度を高めるための方法としては、減圧濃縮、RO膜濃縮、凍結濃縮などの濃縮手段を採用することができる。
また、濃度を高めるための別の方法として、茶抽出液に糖類を添加して濃度を高める方
法を採用することもできる。使用する糖類としては、単糖、二糖またはオリゴ糖が好ましく、リボース、キシロース、アラビノース、グルコース、フラクトース、ラムノース、ラクトース、マルトース、シュークロース、トレハロース、セロビオース、マルトトリオース、水飴などを例示することができる。糖類の添加量としては、Bx1°〜Bx10°程度の茶類抽出液1質量部に対し、0.01〜2質量部を挙げることができる。
コーヒー豆またはその加工品の抽出
コーヒー抽出液を調製する方法としては、抽出溶媒は主として水であり、抽出時の水、あるいは抽出後の抽出液に対し、酸化防止剤として、ビタミンCまたはアスコルビン酸ナトリウムをコーヒー豆原料に対し、0.01〜5質量%程度添加してもよい。また、必要によっては、エタノール、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトールなどの食品に使用し得る水混和性極性有機溶媒を、溶媒全体に対し、0.1〜60質量%の範囲内で混合して使用することもできる。抽出に用いる溶媒(水)の量は任意に選択できるが、一般にはコーヒー豆原料の5〜50倍量(質量)であり、好ましくは10〜20倍量である。抽出の温度及び時間についても任意に定めることができ、特に限定されるものではないが、10〜100℃にて30分〜12時間、特に1〜2時間が好適である。本発明の抽出液を得る操作の方法としては、カラム抽出、バッチ式、ニーダーによる抽出などのいずれでも行うことができる。
また、抽出時および/または抽出後の抽出液に対し、酵素処理を行うこともできる。酵素処理により、ガラクトマンナンなどの多糖類が分解し、抽出液の粘度が低下し、後に記述する濃縮時においても加熱を均一に行うことができ、好適である。この酵素処理に使用することのできる酵素としては、特に制限はなく、例えば、糖質分解酵素、プロテアーゼ、リパーゼ、タンナーゼ、クロロゲン酸エステラーゼなどを例示することができる。
コーヒー豆中には多糖類が含まれているが、この多糖類を糖質分解酵素によりあらかじめ加水分解しておくことにより、後の加熱反応の効果が特に高まる。糖質分解酵素としては、前記した茶抽出液に使用する酵素と同様なものを採用することができ、同様な方法で処理することができる。また、焙煎コーヒー豆中には焙煎後であってもある程度の量のタンパク質が残存していると考えられ、プロテアーゼ処理を行うことにより、後の加熱反応の効果が特に高まる。プロテアーゼは、前記した茶抽出液の場合と同様な酵素を採用し、同様な方法で処理することができる。さらにまた、コーヒー豆中には油脂が含まれているが、この油脂をリパーゼによりあらかじめ加水分解しておくことにより、後の加熱反応の効果が特に高まる。本発明で使用可能なリパーゼとしては、前記した茶抽出液に使用する酵素と同様なものを採用することができ、同様な方法で処理することができる。また、コーヒー豆中にはタンニンやクロロゲン酸を含むものもあるためタンナーゼやクロロゲン酸エステラーゼで分解することも効果的である。タンナーゼとしては、前記した茶抽出液に使用する酵素と同様なものを採用することができ、同様な方法で処理することができる。
酵素処理条件としては、前記した茶抽出液の調製方法と同様な方法を採用することにより、酵素処理されたコーヒー豆抽出液を得ることができる。また、コーヒー豆抽出液は、前記酵素処理と併せて、または、酵素処理とは別に、抽出時および/または抽出後の抽出液に対し、PVPP(ポリビニルポリピロリドン)および/または活性炭による接触処理を行っても良い。PVPP処理方法および活性炭処理方法は、前記した茶抽出液での処理方法と同様に処理することにより、カフェインやポリフェノールを低減させたコーヒー豆抽出液を得ることができる。
かくして得られたコーヒー豆抽出液はBx1°〜Bx20°程度であり、そのまま加熱処理に供することもできるが、加熱処理に供するときの濃度はある程度高いことが好ましい。加熱処理に供するときのコーヒー豆抽出液の濃度としては、Bx1°〜Bx80°、
好ましくはBx5°〜Bx80°、より好ましくはBx10°〜Bx70°、さらに好ましくはBx20°〜Bx60°、最も好ましくはBx30°〜Bx55°とすることができる。コーヒー豆抽出液の濃度を高めるための方法としては、減圧濃縮、RO膜濃縮、凍結濃縮などの濃縮手段を採用することができる。
また、濃度を高めるための別の方法として、コーヒー豆抽出液に糖類を添加して濃度を高める方法を採用することもできる。使用する糖類としては、前記した茶抽出液の調製の際に挙げた糖類をBx1°〜Bx10°程度のコーヒー豆抽出液1質量部に対し、0.01〜2質量部を挙げることができる。
焙煎穀物の抽出
焙煎穀物の抽出液を調製する方法としては、抽出溶媒は主として水であり、抽出時の水、あるいは抽出後の抽出液に対し、酸化防止剤として、ビタミンCまたはアスコルビン酸ナトリウムを焙煎穀物原料に対し、0.01〜5質量%程度添加してもよい。また、必要によっては、エタノール、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトールなどの食品に使用し得る水混和性極性有機溶媒を、溶媒全体に対し、0.1〜60質量%の範囲内で混合して使用することもできる。抽出に用いる溶媒(水)の量は任意に選択できるが、一般には焙煎穀物原料の5〜50倍量(質量)であり、好ましくは10〜20倍量である。抽出の温度及び時間についても任意に定めることができ、特に限定されるものではないが、10〜100℃にて30分〜12時間、特に1〜2時間が好適である。本発明の抽出液を得る操作の方法としては、カラム抽出、バッチ式、ニーダーによる抽出などのいずれでも行うことができる。
また、抽出時および/または抽出後の抽出液に対し、酵素処理を行うこともできる。酵素処理により、澱粉などの多糖類が分解し、抽出液の粘度が低下し、後に記述する濃縮時においても加熱を均一に行うことができ、好適である。この酵素処理に使用することのできる酵素としては、特に制限はなく、例えば、プロテアーゼ、糖質分解酵素、リパーゼ、タンナーゼ、クロロゲン酸エステラーゼなどを例示することができる。
焙煎穀物中には焙煎後であってもある程度の量のタンパク質が残存しており、プロテアーゼ処理を行うことにより、後の加熱反応の効果が特に高まる。プロテアーゼは、前記した茶抽出液の場合と同様な酵素を採用し、同様な方法で処理することができる。また、焙煎穀物中には、焙煎後であってもかなりの量の多糖類が含まれており、この多糖類を糖質分解酵素によりあらかじめ加水分解しておくことにより、後の加熱反応の効果が特に高まる。糖質分解酵素としては、前記した茶抽出液に使用する酵素と同様なものを採用することができ、同様な方法で処理することができる。また、リパーゼ処理を行うことでも、後の加熱反応の効果が特に高まる。本発明で使用可能なリパーゼとしては、前記した茶抽出液に使用する酵素と同様なものを採用することができ、同様な方法で処理することができる。また焙煎穀物にはタンニンやクロロゲン酸を含むものもあるためタンナーゼやクロロゲン酸エステラーゼで分解することも効果的である。タンナーゼとしては、前記した茶抽出液に使用する酵素と同様なものを採用することができ、同様な方法で処理することができる。
酵素処理条件としては、前記した茶抽出液の調製方法と同様な方法を採用することにより、酵素処理された焙煎穀物抽出液を得ることができる。また、焙煎穀物抽出液は、前記酵素処理と併せて、または、酵素処理とは別に、抽出時および/または抽出後の抽出液に対し、PVPP(ポリビニルポリピロリドン)および/または活性炭による接触処理を行ってもよい。PVPP処理方法および活性炭処理方法は、前記した茶抽出液での処理方法と同様に処理することにより、ポリフェノール類を低減させた焙煎穀物抽出液を得ることができる。
かくして得られた焙煎穀物抽出液はBx1°〜Bx10°程度であり、そのまま加熱処理に供することもできるが、加熱処理に供するときの濃度はある程度高いことが好ましい。加熱処理に供するときの焙煎穀物抽出液の濃度としては、Bx1°〜Bx80°、好ましくはBx5°〜Bx80°、より好ましくはBx10°〜Bx70°、さらに好ましくはBx20°〜Bx60°、最も好ましくはBx30°〜Bx55°とすることができる。焙煎穀物抽出液の濃度を高めるための方法としては、減圧濃縮、RO膜濃縮、凍結濃縮などの濃縮手段を採用することができる。
また、濃度を高めるための別の方法として、焙煎穀物抽出液に糖類を添加して濃度を高める方法を採用することもできる。使用する糖類としては、前記した茶抽出液を調製する際に挙げた糖類を、Bx1°〜Bx10°程度の焙煎穀物抽出液1質量部に対し、0.01〜2質量部を挙げることができる。
カカオ豆またはその加工品の抽出
カカオ抽出液の調製方法としては、抽出溶媒は主として水であり、抽出時の水、あるいは抽出後の抽出液に対し、酸化防止剤として、ビタミンCまたはアスコルビン酸ナトリウムを焙煎カカオ豆原料に対し、0.01〜5質量%程度添加してもよい。また、必要によっては、エタノール、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトールなどの食品に使用し得る水混和性極性有機溶媒を、溶媒全体に対し、0.1〜60質量%の範囲内で混合して使用することもできる。抽出に用いる溶媒(水)の量は任意に選択できるが、一般にはカカオ豆原料の2〜50倍量(質量)であり、好ましくは5〜30倍量、より好ましくは10〜20倍量である。抽出の温度及び時間についても任意に定めることができ、特に限定されるものではないが、10〜100℃にて30分〜12時間、特に1〜2時間が好適である。本発明の抽出液を得る操作の方法としては、カラム抽出、バッチ式、ニーダーによる抽出などのいずれでも行うことができる。
また、抽出時および/または抽出後の抽出液に対し、酵素処理を行うこともできる。酵素処理により、澱粉などの多糖類が分解し、抽出液の粘度が低下し、後に記述する濃縮時においても加熱を均一に行うことができ、好適である。この酵素処理に使用することのできる酵素としては、特に制限はなく、例えば、プロテアーゼ、リパーゼ、糖質分解酵素、タンナーゼ、クロロゲン酸エステラーゼなどを例示することができる。
焙煎カカオ豆中には焙煎後であってもある程度の量のタンパク質が残存していると考えられ、プロテアーゼ処理を行うことにより、後の加熱反応の効果が特に高まる。プロテアーゼは、前記した茶抽出液の場合と同様な酵素を採用し、同様な方法で処理することができる。また、カカオ豆中には油脂が含まれているが、この油脂をリパーゼによりあらかじめ加水分解しておくことにより、後の加熱反応の効果が特に高まる。本発明で使用可能なリパーゼとしては、前記した茶抽出液に使用する酵素と同様なものを採用することができ、同様な方法で処理することができる。さらに、カカオ豆中には多糖類が含まれているが、この多糖類を糖質分解酵素によりあらかじめ加水分解しておくことにより、後の加熱反応の効果が特に高まる。糖質分解酵素としては、前記した茶抽出液に使用する酵素と同様なものを採用することができ、同様な方法で処理することができる。また焙煎カカオ豆にはタンニンやクロロゲン酸を含むものもあるためタンナーゼやクロロゲン酸エステラーゼで分解することも効果的である。タンナーゼとしては、前記した茶抽出液に使用する酵素と同様なものを採用することができ、同様な方法で処理することができる。
酵素処理条件としては、前記した茶抽出液の調製方法と同様な方法を採用することにより、酵素処理されたカカオ豆抽出液を得ることができる。また、焙煎カカオ豆抽出液は、前記酵素処理と併せて、または、酵素処理とは別に、抽出時および/または抽出後の抽出
液に対し、PVPP(ポリビニルポリピロリドン)および/または活性炭による接触処理を行っても良い。PVPP処理方法および活性炭処理方法は、前記した茶抽出液での処理方法と同様に処理することにより、カフェインやポリフェノール類を低減させた焙煎カカオ豆抽出液を得ることができる。
かくして得られた焙煎カカオ豆抽出液はBx1°〜Bx10°程度であり、そのまま加熱処理に供することもできるが、加熱処理に供するときの濃度はある程度高いことが好ましい。加熱処理に供するときの焙煎カカオ豆抽出液の濃度としては、Bx1°〜Bx80°、好ましくはBx5°〜Bx80°、より好ましくはBx10°〜Bx70°、さらに好ましくはBx20°〜Bx60°、最も好ましくはBx30°〜Bx55°とすることができる。焙煎カカオ豆抽出液の濃度を高めるための方法としては、減圧濃縮、RO膜濃縮、凍結濃縮などの濃縮手段を採用することができる。
また、濃度を高めるため別の方法として、焙煎カカオ豆抽出液に糖類を添加して濃度を高める方法を採用することもできる。使用する糖類としては、前記した茶抽出液を調製する際に挙げた糖類を、Bx1°〜Bx10°程度のカカオ豆抽出液1質量部に対し、0.01〜2質量部を挙げることができる。
果実の抽出
果実抽出液の調製方法は、通常の果汁を調製する方法を採用することができ、本発明では、これらの果汁の搾汁時および/または搾汁後の搾汁液に対し、糖質分解酵素処理を行うこともできる。糖質分解酵素処理により、果実中のペクチン質などが分解され、抽出液の粘度が低下し、後に記述する濃縮時においても加熱を均一に行うことができ、好適である。糖質分解酵素としては、具体的には、例えば、アミラーゼ、グルコアミラーゼ、プルラナーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、キシラナーゼ、ペクチナーゼ、アラバナーゼ、デキストラナーゼ、グルカナーゼ、マンナナーゼ、α−ガラクトシダーゼなどを例示することができる。これらのうち、特に好ましい糖質分解酵素としては、ペクチナーゼ、セルラーゼを例示することができ、糖質分解酵素の使用量は、使用する酵素の種類や果汁中のペクチン質などの糖質の存在量により一概にはいえないが、おおよそ果実原料の質量を基準として通常0.1〜1,000U/g、好ましくは1〜100U/gの範囲内、または、製剤中に通常複数種類の酵素が含まれていて活性単位では表しにくいような場合は、果実原料に対して通常、0.01〜5質量%、好ましくは0.1〜2質量%の範囲内を例示することができる。また、これらの糖質分解酵素に加えて、プロテアーゼ、リパーゼなどを併用することもできる。
かくして得られた果汁はBx1°〜Bx10°程度であり、そのまま加熱処理に供することもできるが、加熱処理に供するときの濃度はある程度高いことが好ましい。加熱処理に供するときの果汁の濃度としては、Bx1°〜Bx80°、好ましくはBx5°〜Bx80°、より好ましくはBx10°〜Bx70°、さらに好ましくはBx20°〜Bx60°、最も好ましくはBx30°〜Bx55°とすることができる。果汁の濃度を高めるための方法としては、減圧濃縮、RO膜濃縮、凍結濃縮などの濃縮手段を採用することができる。また、市販の濃縮果汁を使用することもできる。
また、濃度を高めるため別の方法として、果汁に糖類を添加して濃度を高める方法を採用することもできる。使用する糖類としては、前記した茶抽出液を調製する際に挙げた糖類を、Bx1°〜Bx10°程度の果汁1質量部に対し、0.01〜2質量部を挙げることができる。
食品素材の原料抽出液の処理
かくして得られた茶類、コーヒー、焙煎穀物、カカオ、果実などの食品素材の原料から
の抽出液をpH6〜pH12に調整した後、加熱処理する点が本発明にしたがう呈味改善剤の特徴である。食品素材の原料からの抽出液をpH6〜pH12に調整した後、加熱処理することにより、いわゆるメイラード反応の素材となる糖やアミノ酸の他に食品素材の原料からの抽出液の特有の成分(ビタミン類、水溶性植物繊維、ポリフェノール類、無機質など)が複雑に反応し、呈味増強成分が生成すると考えられる。これは、確認したことでなく、また、このような理論により本発明が限定的に解釈されるものでないが、本発明の呈味改善剤の特有の特性は、上記、また、好ましくは後述する条件下の前記抽出液の加熱処理により、前記のような複雑な反応がおこった結果に基づくものと理解される。当業者に周知のとおり、メイラード反応はアミノカルボニル反応の一種であり、通常、褐色物質を生成する非酵素的反応である。典型的なメイラード反応では、アミノ酸と還元糖が反応し、窒素配糖体を経由してシッフ塩基を形成した後、アマドリ転移によりその反応生成物を生じるまでの初期段階の反応、アマドリ転移生成物等をともなう中期段階の反応、およびかような生成物等の重合および/またはストレッカー分解反応等を伴う、最終段階の反応が関与することが知られているが、本発明にしたがう前記加熱処理では、特に、pHを中性乃至アルカリ性の条件下で当該処理を実施することにより、いずれかの段階で一定の香味または風味成分が生じるものと理解されている。
こうして、特定のpH条件下での加熱処理を行うことにより、得られる加熱処理物は、pH未調整の抽出液(通常、食品素材の原料からの水抽出液のpHは酸性側にある)の加熱処理物に比べて,着色の程度が異なる。例えば、かような処理物を、必要により一定濃度まで希釈(例えば、イオン交換水にて1000倍に希釈)し、分光光度計を用いてOD680を測定すると、pH未調整加熱処理物のOD680値(B)とpH調整加熱処理物のOD680値(A)との比(A/B)は、限定されるものでないが、食品素材の原料が、緑茶葉である場合、0.33以下、好ましくは0.28以下、またはより好ましくは0.24以下となり、焙煎コーヒー豆である場合、0.88以下、好ましくは0.78以下、より好ましくは0.74以下となり、カカオ由来のカカオニブからの抽出液である場合、0.8以下であり、また、果汁ブルーベリーである場合、0.07以下の値になる。
したがって、加熱処理は、かようなOD680値の変動を追跡しながら、好ましい反応条件を選ぶことができる。
加熱処理の際に、一般的には、pH調整剤を添加して食品素材の抽出液のpHをpH6〜pH12、好ましくはpH7〜pH11.5、さらに好ましくはpH8〜pH11に調整して加熱処理することにより糖の分解を促進し、呈味改善剤としての目的を達成することができるほか、加熱による沈殿の生成を抑制することができ、好適である。かかるpH調整剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどを例示することができる。
所定のpH範囲に調整した食品素材の抽出液の加熱処理における反応温度としては、100℃〜180℃、好ましくは110℃〜170℃、より好ましくは120℃〜150℃、さらに好ましくは120℃〜140℃とすることができる。温度が低すぎる場合は、加熱反応が進行しづらく、呈味改善剤としての効果が出にくい。温度が高すぎる場合は、加熱による変化が大きすぎ、呈味改善剤としての目的を達成することができない。また、加熱処理における反応時間としては、反応に必要な時間を確保する必要があり、10分〜5時間、好ましくは20分〜4時間、より好ましくは1時間〜2時間とすることができる。反応時間が短すぎる場合は、反応が十分進行せず、呈味改善剤としての効果が出にくい。反応時間が長すぎる場合は、加熱による変化が大きすぎ、呈味改善剤としての目的を達成することができない。
本発明において、加熱処理には、密閉系にて内容物を加熱攪拌できるオートクレーブを使用することが好ましい。オートクレーブの操作としては、内容物として前記の所定のp
H範囲に調整した食品素材の抽出液を仕込んだ後、容器を密閉にし、所望により容器のヘッドスペースを不活性ガスにより置換して、または抽出液に不活性ガスを吹き込む方法により、脱酸素条件下に加熱処理を行い、冷却後、釜内から、加熱処理物を回収する。回収物に澱が生じているときは濾過や遠心分離などの処理により、澱を除去することもできる。
釜内から回収された加熱処理物はこのまま呈味改善剤として使用することもできるが、所望により、さらに濃縮、あるいは、デキストリン、化工澱粉、サイクロデキストリン、アラビアガム等の賦形剤を添加して、ペースト状とすることができ、さらに、噴霧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥などの乾燥により粉末状の呈味改善剤組成物とすることもできる。
上記のようにして得られる呈味改善剤または呈味改善剤組成物は、さらにフレーバー、水蒸気抽出エキス、酵素処理エキス、溶媒抽出エキスなどから選択される香気付与剤を組み合わせた香味付与剤組成物とすることによりさらに上記の効果が格段に増強できる。
本発明におけるフレーバーとしては、例えば、特許文献1に記載されている炭化水素類、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、酸類、エステル類、ラクトン類、含窒素化合物類、含硫化合物類、フェノール類、フラン類およびピラン類からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の香料を含む茶フレーバー組成物、特許文献2に記載されている(A)天然香料類、(B)アルコール類、(C)アルデヒド類およびアセタール類、(D)ケトン類およびケタール類、(E)フラン類、(F)フェノール類、(G)カルボン酸類、(H)エステル類、(I)ラクトン類、(J)含窒素化合物類及び(K)含硫化合物類からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の香料を含むコーヒーフレーバー組成物、特許文献3に記載されている炭化水素類、アルコール類、フェノール類、アルデヒド類、ケトン類、酸類、エステル類、ラクトン類、含窒素化合物、含硫化合物、アセタール類、フラン類から選ばれる少なくとも1種を配合してなるココア様香料組成物、特許文献4に記載されている天然香料類、エステル類、アルコール類、アルデヒド類、アセタール類、ケトン類、ケタール類、フェノール類、エーテル類、ラクトン類、炭化水素類、含窒素及び/又は含硫化合物類、酸類の群から選ばれる少なくとも1種以上の香料を含有するフルーツ様香料組成物、特許文献5に記載されている(A)天然香料類、(B)エステル類、(C)アルコール類、(D)アルデヒド類、(E)ケトン類、(F)フェノール類、(G)エーテル類、(H)ラクトン類、(I)炭化水素類、(J)含窒素及び/又は含硫化合物類、(K)酸類の(A)〜(K)からなる群より選ばれる1種又は2種以上の香料を含むシトラス様香料組成物をあげることができる。
前記した本発明の呈味改善剤とフレーバー(またはフレーバーリング剤)とを組み合わせた香味付与剤組成物における呈味改善剤とフレーバーとの配合割合は、呈味改善剤の種類、フレーバーの種類などにより一概にはいえないが、例えば、呈味改善剤100重量部に対してフレーバー0.01〜1000重量部、好ましくは0.1〜100重量部、さらに好ましくは1重量部〜50重量部の割合とすることができる。
本発明における水蒸気抽出エキスとしては、例えば、特許文献6に記載されている(1)茶類原料から水蒸気蒸留法により香気を回収し、(2)蒸留残渣を酵素処理して酵素処理エキスを得、(3)工程(2)で得られた酵素処理エキスと工程(1)で得られた回収香を混合した茶類エキス、特許文献7に記載されている嗜好飲料用原料を水蒸気蒸留して得られるフレーバー(A)と、嗜好飲料用原料を気−液向流接触装置に供して得られるフレーバー(B)を含有するフレーバー、特許文献8に記載されている(A)天然原料を水蒸気蒸留して香気を含む留出液を得る工程、(B)天然原料に水を加えて抽出して抽出液を得る工程、(C)(A)の留出液に(B)の抽出液の一部または全量を混合後、逆浸透膜を用いて濃縮してなる香気濃縮物、特許文献9に記載されている焙煎コーヒー豆を水抽
出時および/または水抽出後に酵素処理を施してコーヒーエキスを製造するに当たり、酵素処理前の段階である、焙煎コーヒー豆またはコーヒースラリーから水蒸気蒸留法により香気留出液を回収し、酵素処理後の抽出液に香気留出液を添加してなるコーヒーエキス、特許文献10に記載されている(A)焙煎植物原料を水抽出して得られる水性エキス、または、(B)焙煎植物原料を水蒸気蒸留して留出液を得た後、水蒸気蒸留残渣を水抽出して抽出液を得、抽出液と先に得られた水蒸気蒸留留出液を混合することにより得られる水性エキス、のいずれかに対し逆浸透膜による透過処理を行い、非透過液を採取してなる酢酸の低減された焙煎植物原料水性エキス、特許文献11に記載されている焙煎穀物を、第1段目の工程として水蒸気蒸留法により香気を回収し、第2段目の工程として残渣を糖質分解酵素処理して酵素処理エキスを得、第3段目の工程として第2段目の工程で得られた酵素処理エキスと第1段目の工程で得られた回収香を混合してなるビール風味飲料用風味改善剤などを挙げることができる。
前記した本発明の呈味改善剤と水蒸気抽出エキスとを組み合わせた香味付与剤組成物における呈味改善剤と水蒸気蒸留エキスとの配合割合は、呈味改善剤の種類、水蒸気抽出エキスの種類などにより一概にはいえないが、例えば、呈味改善剤100重量部に対して水蒸気抽出エキス0.01〜1000重量部、好ましくは0.1〜100重量部、さらに好ましくは1重量部〜50重量部の割合とすることができる。
本発明における酵素処理エキスとしては、例えば、特許文献12に記載されている茶類原料を、プロテアーゼおよびタンナーゼの存在下に抽出してなる茶類エキス、特許文献13に記載されている植物原料を抽出するに際し、植物原料と水を混合し、次いで、加熱処理を行った後、冷却し、酵素を添加し、酵素を作用させながら抽出してなる植物抽出液、特許文献14に記載されている焙焼処理したカカオ原料をプロテアーゼ処理して得られるカカオ酵素処理物の製造方法であって、プロテアーゼ処理後の総遊離アミノ酸の含有率が処理前に比べて少なくとも1.5倍であり、且つプロテアーゼ処理後のグルタミン酸、アスパラギン酸、アルギニンのそれぞれの含有率が処理前に比べて少なくとも1.8倍となるのに十分な時間及び温度でプロテアーゼ処理してなるカカオ酵素処理物などを挙げることができる。
前記した本発明の呈味改善剤と酵素処理エキスとを組み合わせた香味付与剤組成物における呈味改善剤と酵素処理エキスとの配合割合は、呈味改善剤の種類、酵素処理エキスの種類などにより一概にはいえないが、例えば、呈味改善剤100重量部に対して酵素処理エキス0.01〜1000重量部、好ましくは0.1〜100重量部、さらに好ましくは1重量部〜50重量部の割合とすることができる。
本発明における溶媒抽出エキスとしては、前記した食品素材を水及び/又は有機溶媒、並びに超臨界又は亜臨界炭酸ガスで抽出したものをいう。水溶性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノールなどのアルコール類;アセトンのようなケトン類;及びエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、1,2−ブチレングリコールなどの多価アルコール類の中から選ばれる一種もしくは複数種の混合物を例示することができる。これらの中では、アルコール類もしくは多価アルコール類が好ましく、殊にエタノール、プロピレングリコール及びグリセリンの中から選ばれる一種もしくは複数種の混合物を、より好ましいものとして例示することができる。本発明では、水あるいは水溶性有機溶媒を単独で抽出溶媒として用いることもできるが、水溶性有機溶媒と水とを混合して使用するのが好ましい。その場合、混合溶媒の水含有率は、通常、20〜80質量%程度の範囲内が好ましい。
前記した本発明の呈味改善剤と溶媒抽出エキスとを組み合わせた香味付与剤組成物にお
ける呈味改善剤と溶媒抽出エキスとの配合割合は、呈味改善剤の種類、溶媒抽出エキスの種類などにより一概にはいえないが、例えば、呈味改善剤100重量部に対して溶媒抽出エキス0.01〜1000重量部、好ましくは0.1〜100重量部、さらに好ましくは1重量部〜50重量部の割合とすることができる。
かくして得られた呈味改善剤、呈味改善剤組成物あるいは香味付与剤組成物は、対応する食品素材含有飲食品に0.1ppm〜1%程度添加することにより、当該食品素材が有する、味の厚み、ボディー感などを大幅に増強し、雑味がなく、バランスの改善をはかることができ、しかも製品の状態が改善され、簡便に、安価に調製することのできる呈味改善剤、呈味改善剤組成物あるいは香味付与剤組成物を提供することができる。ここで、味の厚みとは、飲食品を口に含んだとき、または、飲み込んだ時に口中全体から喉の奥にかけてしばらく持続し、味わいが深いと感じさせるような感覚である。また、ボディー感とは、味の骨格がしっかりしていて、かつ、まろやかでふくらみがあり、呈味全体に強さをもたらすような感覚である(以下、味の厚みとボディー感を併せてコク味ということがある)。また、バランスとは食品素材の呈味バランスを意味し、酸味、甘味の他前述の味の厚み・ボディー感などが良好に調和した感覚を意味する。
本発明の呈味改善剤、呈味改善剤組成物あるいは香味付与剤組成物が添加される飲食品としては、例えば、茶含有飲食品としては、ペットボトル、缶または紙容器に充填された緑茶、抹茶、碾茶、烏龍茶、紅茶などの茶系飲料;ペットボトル、缶または紙容器に充填された混合茶飲料;緑茶、抹茶、碾茶、烏龍茶、紅茶などの茶風味のアイスクリーム、ソフトクリームまたはシャーベットなどの冷菓;各種茶風味のビスケット、クッキー、せんべい、饅頭、チョコレート、クリーム内包菓子、パンなどを例示することができる。コーヒー含有飲食品としては、例えば、ペットボトル、缶または紙容器に充填された無糖コーヒー、加糖コーヒー、ミルクコーヒー、カフェオレ、キャラメルコーヒーなどのコーヒー系飲料;コーヒー風味のアイスクリーム、ソフトクリームまたはシャーベットなどの冷菓;各種コーヒー風味のビスケット、クッキー、せんべい、饅頭、チョコレート、クリーム内包菓子、パンなどを例示することができる。穀物含有飲食品としては、例えば、ペットボトル、缶または紙容器に充填された、麦茶飲料、玄米茶飲料、茶類と焙煎した穀物類を混合したいわゆる混合茶類飲料などの茶系飲料;ビール、発泡酒、いわゆる第三のビール、ノンアルコールビール風味飲料などのビール風味飲料;麦茶、玄米茶、混合茶またはビールなどの風味を付与したアイスクリーム、ソフトクリームまたはシャーベットなどの冷菓;麦茶、玄米茶、混合茶またはビールなどの風味を付与したビスケット、クッキー、せんべい、饅頭、チョコレート、クリーム内包菓子、パンなどを例示することができる。カカオ風味飲食品としては、例えば、ペットボトル、缶または紙容器に充填されたココア飲料、チョコレートドリンクなどの飲料類;チョコレート類;ココア風味またはチョコレート風味を付与したアイスクリーム、ソフトクリームまたはシャーベットなどの冷菓類;ココア風味またはチョコレート風味を付与したビスケット、クッキー、せんべい、饅頭、クリーム内包菓子、パンなどを例示することができる。果実風味飲食品としては、例えば、ペットボトル、缶または紙容器に充填された天然果汁、果汁飲料、果汁入り清涼飲料、果汁入り炭酸飲料、果汁入りアルコール飲料などの飲料類;ジャム、フルーツプレパレーションなどの果実加工品;果実入りヨーグルト;果実風味のアイスクリーム、ソフトクリームまたはシャーベットなどの冷菓類;果実風味を付与したビスケット、クッキー、せんべい、饅頭、クリーム内包菓子、パンなどの菓子類を例示することができる。
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに具体的に説明する。
(実施例1)
(1)調製方法
水9000gに焙煎、粉砕したコーヒー豆(コロンビア;L値22)1000gを投入
し、80℃にて5分間殺菌し、45℃まで冷却した。これに、セルロシンGM5(登録商標:エイチ・アイ・ビー(株)社製のガラクトマンナン分解酵素)20g(対コーヒー豆2%)およびスミチーム(登録商標:新日本化学工業株式会社製のグルコアミラーゼ)20g(対コーヒー豆2%)を加え、15分間攪拌した後、45℃にて16時間酵素処理を行った。酵素処理後、90℃にて10分間殺菌した後、30℃まで冷却し、さらし布にてバスケット型遠心分離機によりコーヒー豆残渣固形物を除いた後、No.2濾紙(ADVANTEC社製 保留粒子径5μ、20cm)にセルロースパウダー150gをプレコートしたヌッチェを使用して一定圧力にて吸引濾過(減圧度13.33KPa)を行い、清澄な抽出液7725gを得た。この抽出液を減圧濃縮しBx50°の濃縮液743gを得た(比較品1:pH4.9)。
比較品1の半量を1Lオートクレーブに仕込み、密閉した後、攪拌しながら加熱し、約30分かけて昇温し、135±2℃にて1時間加熱した。次いで、30℃まで冷却後、内容物を取り出し、200メッシュサランにて濾過して加熱処理物を得た(比較品2)。
比較品1の残りの半量を30%水酸化ナトリウム水溶液でpH11に調整したものを1Lオートクレーブに仕込み、密閉した後、攪拌しながら加熱し、約30分かけて昇温し、135±2℃にて1時間加熱した。次いで、30℃まで冷却後、内容物を取り出し、200メッシュサランにて濾過して加熱処理物を得た(本発明品1)。
(2)官能評価
市販無糖ブラックコーヒー飲料(1L紙容器入り)(参考品1)、および、参考品1の希釈液(8質量部の参考品1と2質量部の水を混合したもの:参考品2)を調製し、参考品2に対し、本発明品1、比較品1及び比較品2をそれぞれ10ppm添加し、良く訓練された10名のパネラーにて官能評価を行った。評価基準は、コーヒー豆感、味の厚み・ボディー感についてそれぞれ、参考品1をコントロールとして、明らかに弱い:−2点、やや弱い:−1点、同程度:0点、やや強い:+1点、明らかに強い+2点として、また、コーヒー飲料としてのバランスの良さについて、悪い:−2点、やや悪い:−1点、差無し:0点、やや良い:+1点、良い:+2点として、さらに雑味について、強い:−2点、やや強い:−1点、同程度:0点、弱い:+1点、明らかに弱い:+2点として官能評価を行った。その平均点を表1に示す。なお、コーヒー豆感とは、前記の通り、コーヒー豆独特の呈味を形成する感覚であって、添加することにより、実際に使用したコーヒー豆の量より多くコーヒー豆を使用したと感じさせる飲み応えのある感覚である。また、味の厚みとは、飲食品を口に含んだとき、または、飲み込んだ時に口中全体から喉の奥にかけてしばらく持続し、味わいが深いと感じさせるような感覚である。また、ボディー感とは、味の骨格がしっかりしていて、かつ、まろやかでふくらみがあり、呈味全体に強さをもたらすような感覚である。また、バランスとはコーヒーの呈味バランスを意味し、苦味、渋味、甘味の他前述の味の厚み・ボディー感、コーヒー豆感などが良好に調和した感覚を意味し、雑味とは、飲食品を口に含んだとき、または、飲み込んだ時に、コーヒーとは異質な苦味などの呈味を感じる感覚である。
Figure 2018102310
表1に示したとおり、参考品2のコーヒー飲料に未加熱品である比較品1を添加したものは、コーヒー豆感、味の厚み・ボディー感、バランスで添加効果がみられなかったが、加熱品である比較品2及び本発明品1では、コーヒー豆感、味の厚み・ボディー感、バランスで添加効果が確認された。しかしながら、比較品2では、雑味(コーヒーとは異質の苦味)が強く感じられたが、本発明品1を添加したものは雑味もなく、コーヒー独特のスッキリした苦味が強く感じられた。
(3)保存安定性試験
本発明品1、比較品1及び比較品2のそれぞれについて、調製直後(0week)、50℃にて2週間保存後(2week)、4週間保存後(4week)の保存状態について、−:澱なし、+:僅かな澱あり、++:澱ありの評価基準にて観察し、その結果を表2に示す。
Figure 2018102310
表2に示したとおり、pHを調整しないで加熱処理した比較品2は、2週間保存後から澱が生成していたが、pHを調整した後加熱処理した本発明品1は、ほとんど澱は生成せず、保存安定性に優れていた。
(実施例2)
(1)調製方法
軟水5400gにアスコルビン酸3.6gを溶解した溶液に緑茶(静岡県産やぶきた種二番茶をミキサーにて粉砕したもの)600gを投入し、80℃で5分間殺菌し、40℃まで冷却した。これにタンナーゼ(三菱化学フーズ社製:500U/g)6gを加え、15分間攪拌した。その後、プロテアーゼM(アマノエンザイム社製:5500U/g)6gを加え、40℃にて8時間酵素処理を行った。酵素処理後、90℃にて10分間殺菌した後、30℃まで冷却し、さらし布にてバスケット型遠心分離機により茶葉残渣固形物を除いた後、No.2濾紙(ADVANTEC社製 保留粒子径5μ、16cm)にセルロースパウダー100gをプレコートしたヌッチェを使用して一定圧力にて吸引濾過(減圧度13.33KPa)を行い、清澄な抽出液4686gを得た。この抽出液を減圧濃縮し、Bx50°の濃縮液552.2gを得た(比較品3:pH4.7)。
比較品1の半量を1Lオートクレーブに仕込み、密閉した後、攪拌しながら加熱し、約30分かけて昇温し、120±2℃にて2時間加熱した。次いで、30℃まで冷却後、内容物を取り出し、200メッシュサランにて濾過して加熱処理物を得た(比較品4)。
比較品1の残りの半量を30%水酸化ナトリウム水溶液でpH10にしたものを1Lオートクレーブに仕込み、密閉した後、攪拌しながら加熱し、約30分かけて昇温し、120±2℃にて2時間加熱した。次いで、30℃まで冷却後、内容物を取り出し、200メッシュサランにて濾過して加熱処理物を得た(本発明品2)。
(2)官能評価
市販緑茶飲料(ペットボトル2L容器入り)(参考品3)、および、参考品3の希釈液(8質量部の参考品3と2質量部の水を混合したもの:参考品4)を調製し、参考品4に対し、本発明品2、比較品3及び比較品4をそれぞれ10ppm添加し、良く訓練された10名のパネラーにて官能評価を行った。評価基準は、茶葉感、味の厚み・ボディー感などの呈味についてそれぞれ、参考品3をコントロールとして、明らかに弱い:−2点、やや弱い:−1点、同程度:0点、やや強い:+1点、明らかに強い+2点として、また、バランスについて、悪い:−2点、やや悪い:−1点、差無し:0点、やや良い:+1点、良い:+2点とし、さらに雑味について、強い:−2点、やや強い:−1点、同程度:0点、弱い:+1点、明らかに弱い:+2点として官能評価を行った。その平均点を表3に示す。なお、茶葉感とは、茶独特の呈味を形成する感覚であって、添加することにより、実際に使用した茶葉の量より多く茶葉を使用したと感じさせる飲み応えのある感覚である。また、味の厚みとは、飲食品を口に含んだとき、または、飲み込んだ時に口中全体から喉の奥にかけてしばらく持続し、味わいが深いと感じさせるような感覚である。また、ボディー感とは、味の骨格がしっかりしていて、かつ、まろやかでふくらみがあり、呈味全体に強さをもたらすような感覚である。また、バランスとは茶の呈味バランスを意味し、苦味、渋味、甘味、の他前述の味の厚み・ボディー感、茶葉感などが良好に調和した感覚を意味し、雑味とは、飲食品を口に含んだとき、または、飲み込んだ時に、茶とは異質な苦味などの呈味を感じる感覚である。
Figure 2018102310
表3に示したとおり、参考品4の緑茶飲料に未加熱品である比較品3を添加したものは、茶葉感、味の厚み・ボディー感、バランスで添加効果がみられなかったが、加熱品である比較品4及び本発明品2では、茶葉感、味の厚み・ボディー感、バランスで添加効果が確認された。しかしながら、比較品4では、雑味(茶葉とは異質の苦渋味)が強く感じられたが、本発明品2を添加したものは雑味もなく、茶葉独特のスッキリした苦渋味が強く感じられた。
(3)保存安定性試験
本発明品2、比較品3及び比較品4のそれぞれについて、調製直後(0week)、50℃にて2週間保存後(2week)、4週間保存後(4week)の保存状態について、−:澱なし、+:僅かな澱あり、++:澱ありの評価基準にて観察し、その結果を表4に示す。
Figure 2018102310
表4に示したとおり、pHを調整しないで加熱処理した比較品4は、2週間保存後から澱が生成していたが、pHを調整した後加熱処理した本発明品2は、ほとんど澱は生成せず、保存安定性に優れていた。
(実施例3)
(1)調製方法
水9000gに粉砕した麦茶(六条大麦をL値34となるように焙煎したもの)1000gを投入し、80℃にて5分間殺菌し、45℃まで冷却した。これに、コクラーゼ(登録商標:三菱化学フーズ株式会社製のα−アミラーゼを主体としたアミラーゼ製剤)20g(対麦茶2%)を加え、15分間攪拌した後、45℃にて16時間酵素処理を行った。酵素処理後、90℃にて10分間殺菌した後、30℃まで冷却し、さらし布にてバスケット型遠心分離機により麦茶残渣固形物を除いた後、No.2濾紙(ADVANTEC社製
保留粒子径5μ、20cm)にセルロースパウダー150gをプレコートしたヌッチェを使用して一定圧力にて吸引濾過(減圧度13.33KPa)を行い、清澄な抽出液8225gを得た。この抽出液を減圧濃縮しBx50°の濃縮液1234gを得た(比較品5:pH4.5)。
比較品5の半量を1Lオートクレーブに仕込み、密閉した後、攪拌しながら加熱し、約30分かけて昇温し、140±2℃にて30分加熱した。次いで、30℃まで冷却後、内容物を取り出し、200メッシュサランにて濾過して加熱処理物を得た(比較品6)。
比較品5の残りの半量を30%水酸化ナトリウム水溶液でpH10.5にしたものを1Lオートクレーブに仕込み、密閉した後、攪拌しながら加熱し、約30分かけて昇温し、140±2℃にて30分加熱した。次いで、30℃まで冷却後、内容物を取り出し、200メッシュサランにて濾過して加熱処理物を得た(本発明品3)。
(2)官能評価
市販麦茶飲料(1L紙容器入り)(参考品5)、および参考品5の希釈液(8質量部の参考品5と2質量部の水を混合したもの:参考品6)を調製し、参考品6に対し、本発明品3、比較品5及び比較品6をそれぞれ10ppm添加し、良く訓練された10名のパネラーにて官能評価を行った。評価基準は、参考品5をコントロールとして、コク味については、明らかに弱い:−2点、やや弱い:−1点、同程度:0点、やや強い:+1点、明らかに強い:+2点とし、また、麦茶飲料としてのバランスについては、悪い:−2点、やや悪い:−1点、同程度:0点、わずかに良い:+1点、明らかに良い:+2点とし、さらに雑味について、強い:−2点、やや強い:−1点、同程度:0点、弱い:+1点、明らかに弱い:+2点として官能評価を行った。その平均点を表5に示す。
Figure 2018102310
表5に示したとおり、参考品6の麦茶飲料に未加熱品である比較品5を添加したものは、コク味、バランスで添加効果がみられなかったが、加熱品である比較品6及び本発明品3では、コク味、バランスで添加効果が確認された。しかしながら、比較品6では、雑味(麦茶とは異質の苦渋味)が強く感じられたが、本発明品3を添加したものは雑味もなく、麦茶独特のスッキリした苦渋味が強く感じられた。
(実施例4)
(1)調製方法
5Lカラムに粗粉砕(3mm)した焙煎カカオニブ2500gを仕込み、95℃熱水8750gをカラム上部から送り込み、2時間かけて抽出し(2187.5gずつ、4回に分けて、仕込み後30分ホールディング後抜き取りを繰り返す)カラム下部より抽出液を抜き取り、この抽出液を、20℃に冷却後、800Gにて5分間遠心分離を行い、上清7655g(Bx4.2°)を得た。これにスミチームC(新日本化学工業社製のセルラーゼ)0.32g(対Bx換算固形分0.1%)およびプロテアーゼM(アマノエンザイム社製:5500U/g)0.32g(対Bx換算固形分0.1%)を加え、15分間攪拌した。その後、40℃にて8時間酵素処理を行った。酵素処理後、90℃にて10分間殺菌した後、30℃まで冷却して酵素処理液を得、酵素処理液を減圧濃縮し、Bx50°の濃縮液625.8gを得た(比較品7:pH5.2)。
比較品7の半量を1Lオートクレーブに仕込み、密閉した後、攪拌しながら加熱し、約30分かけて昇温し、130±2℃にて1時間加熱した。次いで、30℃まで冷却後、内容物を取り出し、200メッシュサランにて濾過して加熱処理物を得た(比較品8)。
比較品7の残りの半量を30%水酸化ナトリウム水溶液でpH11にしたものを1Lオートクレーブに仕込み、密閉した後、攪拌しながら加熱し、約30分かけて昇温し、130±2℃にて1時間加熱した。次いで、30℃まで冷却後、内容物を取り出し、200メッシュサランにて濾過して加熱処理物を得た(本発明品4)。
(2)官能評価
ココアパウダー(脂肪分10〜12%)1質量部、砂糖6質量部、食塩0.05質量部、レシチン0.01質量部、カラギーナン0.3質量部を粉体混合し、これに牛乳25質量部を加え良く混練した。これに水を加え、全体を100質量部とした後、95℃で2分加熱殺菌後、25℃まで冷却し、ココア飲料を調製し(参考品7)、さらに参考品7の希釈液(8質量部の参考品7と2質量部の水を混合したもの:参考品8)を調製し、参考品8に対し、本発明品4、比較品7及び比較品8をそれぞれ10ppm添加し、良く訓練された10名のパネラーにて官能評価を行った。評価基準は、参考品7をコントロールとして、焙煎カカオ豆感およびコク味については、明らかに弱い:−2点、やや弱い:−1点、同程度:0点、やや強い:+1点、明らかに強い:+2点とし、また、ココア飲料としてのバランスについては、悪い:−2点、やや悪い:−1点、同程度:0点、わずかに良い:+1点、明らかに良い:+2点とし、さらに雑味について、強い:−2点、やや強い:−1点、同程度:0点、弱い:+1点、明らかに弱い:+2点として官能評価を行った。その平均点を表6に示す。
Figure 2018102310
表6に示したとおり、参考品8のココア飲料に未加熱品である比較品7を添加したものは、焙煎カカオ豆感、コク味、バランスで添加効果がみられなかったが、加熱品である比較品8及び本発明品4では、焙煎カカオ豆感、コク味、バランスで添加効果が確認された。しかしながら、比較品8では、雑味(ココアとは異質の苦味)が強く感じられたが、本発明品4を添加したものは雑味もなく、ココア独特のスッキリした苦味が強く感じられた。
(実施例5)
(1)調製方法
市販のグレープ濃縮果汁(Bx68°)500gにスクラーゼN(三共社製ペクチナーゼ(登録商標))0.5gを加え、15分間攪拌した。その後、40℃にて1時間攪拌反応させ、90℃達温殺菌後、20℃まで冷却しグレープ濃縮果汁の酵素処理物を得た(比較品9;pH3.5)。
比較品9の半量を1Lオートクレーブに仕込み、密閉した後、攪拌しながら加熱し、約30分かけて昇温し、130±2℃にて2時間加熱した。次いで、30℃まで冷却後、内容物を取り出し、200メッシュサランにて濾過して加熱処理物を得た(比較品10)。
比較品9の残りの半量を30%水酸化ナトリウム水溶液でpH9にしたものを1Lオートクレーブに仕込み、密閉した後、攪拌しながら加熱し、約30分かけて昇温し、130±2℃にて2時間加熱した。次いで、30℃まで冷却後、内容物を取り出し、200メッシュサランにて濾過して加熱処理物を得た(本発明品5)。
(2)官能評価
市販のグレープ果汁飲料(50%果汁)(参考品9)、および参考品9の希釈液(8質量部の参考品9と2質量部の水を混合したもの:参考品10)を調製し、参考品10に対して本発明品5、比較品9及び比較品10をそれぞれ10ppm添加し、良く訓練された10名のパネラーにて官能評価を行った。評価基準は、果汁感+果実感、コク味についてそれぞれ、参考品9をコントロールとして、明らかに弱い:−2点、やや弱い:−1点、同程度:0点、やや強い:+1点、明らかに強い+2点として、また、グレープ果汁飲料
としてのバランスの良さについて、悪い:−2点、やや悪い:−1点、差無し:0点、やや良い:+1点、良い:+2点とし、さらに雑味について、強い:−2点、やや強い:−1点、同程度:0点、弱い:+1点、明らかに弱い:+2点として官能評価を行った。その平均点を表7に示す
Figure 2018102310
表7に示したとおり、参考品10のグレープ果汁飲料に未加熱品である比較品9を添加したものは、果汁感、果実感、コク味、バランスで添加効果がみられなかったが、加熱品である比較品10及び本発明品5では、果汁感、果実感、コク味、バランスで添加効果が確認された。しかしながら、比較品10では、雑味(グレープ果汁とは異質の苦味)が強く感じられたが、本発明品5を添加したものは雑味もなく、グレープ果汁独特のスッキリした苦味が強く感じられた。
(実施例6)
実施例1〜5に示したように、各食品素材の抽出液のpHを調整して加熱処理した呈味改善剤は、pH未調整で加熱したものに比べて、呈味の改善効果が見られ、保存安定性に優れることが判明した。この原因として、加熱処理物の物性にどのような変化が起きているかを確認するため検討した結果、加熱処理時のpHと加熱処理物の680nmにおける吸光度の値(OD680)に相関関係が認められた。以下、各食品素材ごとにサンプルの調製方法、OD680測定結果を示す。なお、OD680の測定方法は、加熱処理物をイオン交換水にて1000倍に希釈し、その希釈液をアジレント・テクノロジー(株)製Agilent8453ダイオードアレイ式分光光度計にて、それぞれの希釈液を10mmセルに入れ、680nmにおける吸光度を測定した。
(1)サンプル調製方法
・ブルーベリー
市販のブルーベリー濃縮果汁(Bx68°)のpHを3、4、8、9、10に調整し、それぞれのpH調整品を135℃にて60分間加熱処理した。
・コーヒー
実施例1で調製した比較品1のコーヒー濃縮液(Bx50°)のpHを5、6、9、10に調整し、それぞれのpH調整品を135℃にて2時間加熱処理した。
・緑茶
実施例2で調製した比較品3の緑茶濃縮液(Bx50°)のpHを5、7、9、11に調整し、それぞれのpH調整品を135℃にて2時間加熱処理した。
・カカオ
実施例4で調製した比較品7のカカオ濃縮液(Bx50°)のpHを5、10に調整し、それぞれのpH調整品を135℃にて2時間加熱処理した。
(2)OD680測定結果
各食品素材の加熱処理物のOD680の測定結果を表8〜表11に示した。なお、表中A/Bは下記の意味を有する。
A/B:pH調整加熱処理物のOD680値(A)/pH未調整加熱処理物のOD680値(B)
Figure 2018102310
Figure 2018102310
Figure 2018102310
Figure 2018102310
表8〜表11に示したように、いずれの食品素材においても、pHをアルカリ性に調整して加熱処理することで、OD680が小さくなる傾向が見られ、加熱処理時のpHにより、加熱処理物の物性が変化し、呈味の改善性、保存安定性に関連しているものと推測された。
(実施例7)
実施例2で調製した本発明品2の緑茶含有飲食品用呈味改善剤に、下記に示す香気付与剤を表12に示す配合割合で混合し、本発明品6〜9の香味付与剤組成物を調製した。
香気付与剤
・緑茶フレーバーA:特許文献1の実施例1に示されている緑茶フレーバー組成物を使用した。配合処方を以下に示す。
(配合処方)
ヘキサノール(0.5)、シス−3−ヘキセノール(0.1)、オクタノール(0.05)、2−フェニルエチルアルコール(0.05)、ゲラニオール(0.02)、ヘプタナール(0.05)、フェニルアセトアルデヒド(0.001)、シスorトランス−テアスピラン(0.1)、トランス−2−ヘキセン酸(0.05)、酢酸エチル(0.01)、オクタン酸(Z)−3−ヘキセニル(0.02)、ジャスモラクトン(0.01)、2−メトキシ−3−メチルピラジン(0.001)、ベンゾチアゾール(0.001)、マルトール(0.2)、フルフラール(0.2)、緑茶回収フレーバー参考例4(0.2)、95%エタノール(適量)、水又はODO(350)
・緑茶水蒸気抽出エキスB:特許文献8の実施例6に示されている水蒸気抽出エキスを使
用した。以下に調製方法を示す。
(調製方法)
市販の煎茶5kgを内径27cm、高さ57cmの三連のステンレス製カラムのそれぞれに充填し、100〜105℃で2〜3時間、水蒸気蒸留を行い、留出液30kgを得た。次にそれぞれのカラムに50℃軟水15kgを加え、50〜55℃で30分間の抽出を行い、濾過することにより抽出液36kg(Bx7.48°)を得た。上記の留出液7.5kgに抽出液9kgを加え、重曹にてpH5.01としたものをRO膜濃縮機NTR−759HG S2F(日東電工社製)を用い、操作圧4MPaで約3時間の処理後、遠沈処理(20℃、800×G、5分間)を行い、Bx20°に調整し、200メッシュ濾過を行い、濃縮液3.35kgを得た。
・緑茶酵素処理エキスC:特許文献12の実施例1に示されている緑茶酵素処理エキスを使用した。以下に調製方法を示す。
(調製方法)
緑茶葉(粉末)100gに軟水900gを添加し、80℃で5分間殺菌した。殺菌後、40℃まで冷却し、プロテアーゼM(アマノエンザイム(株))1gおよびタンナーゼ(三共(株))1gを添加して溶解後、40℃にて16時間酵素処理を行った。酵素処理後、90℃にて10分間殺菌した後、濾紙濾過、遠心分離により清澄な緑茶エキス820gを得た。
・緑茶溶媒抽出エキスD:以下に示す方法で調製した。
(調製方法)
市販の煎茶300gを3Lカラムに仕込み、そこに80%エタノール水溶液2700gを注ぎ込み、45℃にて1時間循環抽出(循環流量3回/時間)した。抽出液をダイヤフロックをプレコートしたヌッチェで濾過し、清澄な緑茶エキス2300gを得た。
Figure 2018102310
本発明品2、緑茶フレーバーA、緑茶水蒸気抽出エキスB、緑茶酵素処理エキスC、緑茶溶媒エキスD及び本発明品6〜10の緑茶香味付与剤組成物をそれぞれ市販緑茶飲料に50ppm添加して、よく訓練されたパネラー10名により官能評価を行った。その結果、本発明品6〜10を添加したものは、本発明品2、緑茶フレーバーA、緑茶水蒸気抽出エキスB、緑茶酵素処理エキスC、緑茶溶媒抽出エキスDを単独で添加したものに比べ、茶葉感、コク味、バランスの点で相乗的に呈味が増強されていると評価された。

Claims (7)

  1. 果実風味飲食品用呈味改善剤の製造方法であって、
    果実から搾汁された果汁をpH6〜pH12に調整した後、100℃〜180℃にて10分〜5時間加熱処理して加熱処理物を得る工程を含んでなり、かつ、
    前記加熱処理物が、その希釈液のOD680を測定したときの値(A)とpH未調整加熱処理物の相当する値(B)との比(A/B)が0.88以下である、ことを特徴とする前記製造方法。
  2. 前記果汁が固形分濃度として屈折糖度(20℃)でBx1°〜Bx80°である請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記果汁が、1種または2種以上の酵素により処理された酵素処理物である、請求項1または請求項2に記載の製造方法。
  4. 前記果汁に単糖、二糖またはオリゴ糖から選ばれる1種または2種以上を添加して加熱処理する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法により得られた呈味改善剤と香気付与剤を混合する工程を含んでなる香味付与剤組成物の製造方法。
  6. 香気付与剤が、水蒸気抽出エキス、酵素処理エキス、溶媒抽出エキスおよびフレーバーから選択される少なくとも一つである請求項5に記載の製造方法。
  7. 請求項5または請求項6に記載の製造方法で得られた香味付与剤組成物を果汁風味飲食品に添加することを特徴とする、果汁風味飲食品の香味改善方法。
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