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JP2017111380A - エレクトロクロミック素子およびその製造方法 - Google Patents

エレクトロクロミック素子およびその製造方法 Download PDF

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JP2017111380A JP2015247388A JP2015247388A JP2017111380A JP 2017111380 A JP2017111380 A JP 2017111380A JP 2015247388 A JP2015247388 A JP 2015247388A JP 2015247388 A JP2015247388 A JP 2015247388A JP 2017111380 A JP2017111380 A JP 2017111380A
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松尾 孝
Takashi Matsuo
孝 松尾
植田 秀昭
Hideaki Ueda
秀昭 植田
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Osaka Soda Co Ltd
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Osaka Soda Co Ltd
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  • Electrochromic Elements, Electrophoresis, Or Variable Reflection Or Absorption Elements (AREA)

Abstract

【課題】 エレクトロクロミック素子としての基本性能を備え、機械的特性に優れ、液漏れがなく安全性、信頼性に優れたエレクトロクロミック素子を提供することを課題とする。【解決手段】 表示基板、表示電極と、対向基板、対向電極と、前記表示電極に設けられたエレクトロクロミック層と、前記表示電極と前記対向電極とに挟まれて設けられた電解質層とを有するエレクトロクロミック素子において、前記電解質層が、電解質塩とエチレンオキシドユニットを有するポリエーテル共重合体を含有する電解質溶液を架橋させたゲル電解質層であることにより、課題を解決できることを見出した。【選択図】なし

Description

本発明は、表示装置や調光ガラス等に用いられるエレクトロクロミック素子およびその製造方法に関する。本発明は、低電圧で駆動でき、素子強度、信頼性、安全性に優れる表示装置や光シャッター、アクティブフィルター等に用いられるエレクトロクロミック素子およびその製造方法に関するものである。
エレクトロクロミック素子は、電圧が印加されると可逆的に酸化還元反応が起こり、可逆的に色が変化するエレクトロクロミック現象を利用した表示素子である。エレクトロクロミック素子は、反射型の表示素子であること、メモリー性があること、低電圧で駆動できることから近年、活発に研究開発が進められている。
しかし、エレクトロクロミック現象は酸化還元反応を利用して発消色を行う原理のため、発消色の応答速度が遅いという欠点がある。これに対して特許文献1では、エレクトロクロミック化合物を電極近傍に固定させることによって従来数十秒かかっていた発消色の時間が1秒程度まで改善することが提案されている。
また、エレクトロクロミック現象は電気化学現象であるため、エレクトロクロミック素子の応答速度や発色のメモリー性は、エレクトロクロミック素子を構成する電解質層の性能に大きく依存する。電解質を溶媒に溶かすことにより形成した液体状の電解質層を用いた場合、応答性の点で優れるが、素子の強度や信頼性の点で十分ではない。
これに対して、液状の電解質の欠点を解決するものとして、固体状またはゲル状の電解質層が提案されている。このうち特に固体状の電解質層として、例えば高分子固体電解質を用いた電解質層が提案されている。しかし、高分子固体電解質のイオン電導度は通常の非水電解質溶液に比べ、2〜3桁程度低い。そのため、特許文献2では、有機電解液に高分子を溶解させることによって半固体の電解質層としたものや、電解質を加えた液状モノマーを重合させることによって電解質を含む架橋重合体とした電解質層が提案されている。また、特許文献3では、イオン性化合物と溶媒に高分子を溶解させた電解質層が提案されている。しかしながら、従来のゲル電解質では、電解質層の膜強度や製造安定性、イオン電導性の点で改善する余地があった。
特表2001−510590号公報 特開昭63−94501号公報 特表2008−516287号広報
以上のような事情を鑑み、本発明の課題は、エレクトロクロミック素子としての基本性能を備え、機械的特性に優れ、安全性、信頼性に優れたエレクトロクロミック素子を提供することである。さらに、エレクトロクロミック素子の製造時に、作業性、製造安定性に優れたエレクトロクロミック素子を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、電極の間に、電解質として特定のエチレンオキシドユニットを有するポリエーテル共重合体および電解質塩を含有する電解質溶液を塗布した後、架橋させたゲル電解質を両極間に挟持させることで、最適なゲル電解質膜の形成が可能となり、応答性に優れ、製造安定性、安全性に優れたエレクトロクロミック素子が得られることを見出して、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は以下に関する。
項1
表示基板、表示電極と、対向基板、対向電極と、前記表示電極に設けられたエレクトロクロミック層と、前記表示電極と前記対向電極とに挟まれて設けられた電解質層とを有するエレクトロクロミック素子において、前記電解質層が、電解質塩とエチレンオキシドユニットを有するポリエーテル共重合体を含有する電解質溶液を架橋させたゲル電解質層であることを特徴とするエレクトロクロミック素子である。
項2
該電解質塩として常温溶融塩を含有することを特徴とする項1に記載のエレクトロクロミック素子である。
項3
該エチレンオキシドユニットを有するポリエーテル共重合体が、(A)で示される繰り返し単位0〜90モル%
[式中、Rは炭素数1〜12のアルキル基、または−CHO(CR)である。R、R、Rは水素原子または−CHO(CHCHO)であり、nおよびRはR、R、Rの間で異なっていてもよい。Rは炭素数1〜12のアルキル基、または置換基を有してもよいアリール基であり、nは0〜12の整数である。]、及び
(B)で示される繰り返し単位99.5〜9.5モル%、
及び(C)で示される繰り返し単位0.5〜15モル%
[式中、Rはエチレン性不飽和基を有する基である。]
から構成されることを特徴とする項1または2に記載のエレクトロクロミック素子である。
項4
該ゲル電解質層にフィラーを含有することを特徴とする項1〜3のいずれかに記載のエレクトロクロミック素子である。
項5
該電解質塩としてイミド塩を含有することを特徴とする項1〜4のいずれかに記載のエレクトロクロミック素子である。
項6
該ゲル電解質層に含まれるポリエーテル共重合体の含有量が電解質層全体の5〜50重量%であることを特徴とする項1〜5のいずれかに記載のエレクトロクロミック素子である。
項7
対向電極上に多孔質白色散乱層を有することを特徴とする項1〜6のいずれかに記載のエレクトロクロミック素子である。
項8
表示基板、表示電極と、対向基板、対向電極と、前記表示電極に設けられたエレクトロクロミック層と、前記表示電極と前記対向電極とに挟まれて設けられた電解質層とを有するエレクトロクロミック素子において、前記電解質層が電解質塩とエチレンオキシドユニットを有するポリエーテル共重合体を含有する電解質溶液をエレクトロクロミック層を有する表示電極および対向電極の間に注入したのち、加熱またはUV照射して架橋させ、ゲルにすることを特徴とする項1〜7記載のエレクトロクロミック素子の製造方法である。
項9
表示基板、表示電極と、対向基板、対向電極と、前記表示電極に設けられたエレクトロクロミック層と、前記表示電極と前記対向電極とに挟まれて設けられた電解質層とを有するエレクトロクロミック素子において、前記電解質層が電解質塩とエチレンオキシドユニットを有するポリエーテル共重合体を含有する電解質溶液をエレクトロクロミック層上、対向電極上、多孔質白色散乱層上の少なくともいずれかに塗布したのち、加熱またはUV照射して架橋させ、ゲルにすることを特徴とする項1〜7記載のエレクトロクロミック素子の製造方法である。
項10
該エチレンオキシドユニットを有するポリエーテル共重合体が、(A)で示される繰り返し単位0〜90モル%
[式中、Rは炭素数1〜12のアルキル基、または−CHO(CR)である。R、R、Rは水素原子または−CHO(CHCHO)であり、nおよびRはR、R、Rの間で異なっていてもよい。Rは炭素数1〜12のアルキル基、または置換基を有してもよいアリール基であり、nは0〜12の整数である。]、及び
(B)で示される繰り返し単位99.5〜9.5モル%、
及び(C)で示される繰り返し単位0.5〜15モル%
[式中、Rはエチレン性不飽和基を有する基である。]
から構成されることを特徴とする項8または項9に記載のエレクトロクロミック素子の製造方法である。
本発明によれば、表示基板、表示電極と、対向基板、対向電極と、前記表示電極に設けられたエレクトロクロミック層と、前記表示電極と前記対向電極とに挟まれて設けられた電解質層とを有するエレクトロクロミック素子において、前記電解質層が、電解質塩とエチレンオキシドユニットを有するポリエーテル共重合体を含有する電解質溶液を架橋させたゲル電解質層とすることで、応答性に優れ、安全性、信頼性に優れたエレクトロクロミック素子を得ることができる。さらに、製造安定性に優れたエレクトロクロミック素子を得ることができる。
本発明のゲル電解質はエチレンオキシドユニットを有するポリエーテル共重合体の重量平均分子量を10万〜150万とすることが好ましい。ポリエーテル共重合体の分子量が大きいと粘度が高くなり、ゲル電解質を均一に形成することが難しくなり、塗布する場合の塗工性も悪くなってしまう。逆に共重合体の分子量が小さいとゲル電解質の機械的強度が低くなり、電解質自体の液漏れを防止することができなくなる。
以下、本発明の構成につき詳細に説明する。
ここで、本発明のエレクトロクロミック素子を構成するゲル電解質層は、ゲルになる前の高分子電解質と電解塩を非プロトン性有機溶媒に溶解させたゲル電解質組成物溶液を熱または光によって架橋させ、ゲルとなったゲル電解質組成物である。
本発明のエレクトロクロミック素子は、表示基板/表示電極/エレクトロクロミック層/ゲル電解質層/対向電極/対向基板から構成されている。
(ゲル電解質層)
本発明のゲル電解質層は、電解塩とエチレンオキシドユニットを有するポリエーテル共重合体とを少なくとも含有しており、エチレンオキシドユニットを有するポリエーテル共重合体を架橋させたゲル状の電解質である。
本発明のエチレンオキシドユニットを有するポリエーテル共重合体の重量平均分子量は、良好な加工性、機械的強度、柔軟性を達成するために、好ましくは10万〜150万、より好ましくは20万〜120万、更に好ましくは30万〜100万の範囲内のものが適する。
さらに、本発明の架橋前の電解質組成物溶液として、ポリエーテル共重合体の含有量が電解質組成物溶液の全固形分中の5〜50重量%である。ポリエーテル共重合体の含有量が多いとイオン電導度が遅くなり、素子の応答速度が遅くなってしまう。逆にポリエーテル共重合体の含有量が少ないとゲルとしての機械的強度が低くなり保液性がなくなってしまう。
本発明のゲル電解質組成物として用いられるエチレンオキサイドユニットを有するポリエーテル共重合体は、主鎖または側鎖に式(B)であらわされるエチレンオキサイドの繰り返し単位を有する共重合体であり、
さらに、下記式(C)であらわされるエチレン性不飽和基を分子中に有す構造をもった共重合体
[式中、Rはエチレン性不飽和基を有する基である。]
から構成される。
本発明で用いられるエチレンオキサイドユニットを有するポリエーテル共重合体は必要があれば、下記式(A)であらわされる繰り返し単位を含んでいてもよい。
[式中、Rは炭素数1〜12のアルキル基、または−CHO(CR)である。R、R、Rは水素原子または−CHO(CHCHO)であり、nおよびRはR、R、Rの間で異なっていてもよい。Rは炭素数1〜12のアルキル基、または置換基を有してもよいアリール基であり、nは0〜12の整数である。]
例えば、本発明で用いられる式(A)、式(B)、式(C)の繰り返し単位を有する化合物は、
式(1):
[式中、Rは炭素数1〜12のアルキル基、または−CHO(CR)である。R、R、Rは水素原子または−CHO(CHCHO)であり、nおよびRはR、R、Rの間で異なっていてもよい。Rは炭素数1〜12のアルキル基、または置換基を有してもよいアリール基であり、nは0〜12の整数である。]で示される単量体、及び
式(2):
で示される単量体、及び
式(3)
[式中、Rはエチレン性不飽和基を有する基である。]で示される単量体を重合させて得られるポリエーテル共重合体またはその架橋物が好適に用いられる。
式(1)の化合物は市販品からの入手、またはエピハロヒドリンとアルコールからの一般的なエーテル合成法等により容易に合成が可能である。市販品から入手可能な化合物としては、例えば、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、t−ブチルグリシジルエーテル、ベンジルグリシジルエーテル、1,2−エポキシドデカン、1,2−エポキシオクタン、1,2−エポキシヘプタン、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、1,2−エポキシデカン、1,2−エポキシへキサン、グリシジルフェニルエーテル、1,2−エポキシペンタン、グリシジルイソプロピルエーテルなどが使用できる。これら市販品のなかでは、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、グリシジルイソプロピルエーテルが好ましく、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテルが特に好ましい。
合成によって得られる式(1)で表される単量体では、Rは−CHO(CR)が好ましく、R、R、Rの少なくとも一つが−CHO(CHCHO)であることが好ましい。Rは炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、炭素数1〜4がより好ましい。nは2〜6が好ましく、2〜4がより好ましい。
式(2)の化合物は基礎化学品であり、市販品を容易に入手可能である。
式(3)の化合物において、Rはエチレン性不飽和基を含む置換基である。エチレン性不飽和基含有のモノマー成分としては、アリルグリシジルエーテル、4−ビニルシクロヘキシルグリシジルエーテル、α−テルピニルグリシジルエーテル、シクロヘキセニルメチルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテル、アリルフェニルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、3,4−エポキシ−1−ブテン、3,4−エポキシ−1−ペンテン、4,5−エポキシ−2−ペンテン、1,2−エポキシ−5,9−シクロドデカンジエン、3,4−エポキシ−1−ビニルシクロヘキセン、1,2−エポキシ−5−シクロオクテン、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、ソルビン酸グリシジル、ケイ皮酸グリシジル、クロトン酸グリシジル、グリシジル−4−ヘキセノエートが用いられる。好ましくは、アリルグリシジルエーテル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルである。
ここで繰り返し単位(A)及び(C)は、それぞれ2種以上の異なるモノマーから誘導されるものであってもよい。
本発明のポリエーテル共重合体の合成は次のようにして行える。開環重合触媒として有機アルミニウムを主体とする触媒系、有機亜鉛を主体とする触媒系、有機錫−リン酸エステル縮合物触媒系などの配位アニオン開始剤、または対イオンにKを含むカリウムアルコキシド、ジフェニルメチルカリウム、水酸化カリウムなどのアニオン開始剤を用いて、各モノマーを溶媒の存在下又は不存在下、反応温度10〜120℃、撹拌下で反応させることによってポリエーテル共重合体が得られる。重合度、あるいは得られる共重合体の性質などの点から、配位アニオン開始剤が好ましく、なかでも有機錫−リン酸エステル縮合物触媒系が取り扱い易く特に好ましい。
本発明のポリエーテル共重合体においては、繰り返し単位(A)、繰り返し単位(B)及び繰り返し単位(C)のモル比が、(A)0〜90モル%、(B)99.5〜9.5モル%、及び(C)0.5〜15モル%が好ましく、より好ましくは(A)0〜80モル%、(B)98〜30モル%、及び(C)0.5〜13モル%、更に好ましくは(A)0〜70モル%、(B)98〜50モル%、及び(C)0.5〜11モル%である。繰り返し単位(B)が99モル%を越えるとガラス転移温度の上昇とオキシエチレン鎖の結晶化を招き、結果的に電解質のイオン伝導性を著しく悪化させることとなる。一般にポリエチレンオキシドの結晶性を低下させることによりイオン伝導性が向上することは知られているが、本発明のポリエーテル共重合体はこの点において格段に優れている。
本発明のゲル化前のポリエーテル共重合体は、ブロック共重合体、ランダム共重合体等、何れの共重合タイプでも良い。ランダム共重合体がよりポリエチレンオキシドの結晶性を低下させる効果が大きいので好ましい。
本発明の電解質組成物は、上記のポリエーテル共重合体の溶液に電解質塩を含有する。
(電解質塩)
本発明において用いることができる電解質塩は、ポリエーテル共重合体又は該共重合体の架橋体、および常温溶融塩(イオン液体)からなる混合物に相溶することが好ましい。ここで相溶とは電解質塩化合物が結晶化などして析出してこない状態を意味する。
本発明においては、以下に挙げる電解質塩を含有してもよい。即ち、金属陽イオン、アンモニウムイオン、アミジニウムイオン、及びグアニジウムイオンから選ばれた陽イオンと、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、過塩素酸イオン、チオシアン酸イオン、テトラフルオロホウ素酸イオン、硝酸イオン、AsF 、PF 、ステアリルスルホン酸イオン、オクチルスルホン酸イオン、ドデシルベンゼンスルホン酸イオン、ナフタレンスルホン酸イオン、ドデシルナフタレンスルホン酸イオン、7,7,8,8−テトラシアノ−p−キノジメタンイオン、XSO 、[(XSO)(XSO)N]、[(XSO)(XSO)(XSO)C]、及び[(XSO)(XSO)YC]から選ばれた陰イオンとからなる化合物が挙げられる。但し、X、X、X、およびYは電子吸引基である。好ましくはX、X、及びXは各々独立して炭素数が1〜6のパーフルオロアルキル基又は炭素数が6〜18のパーフルオロアリール基であり、Yはニトロ基、ニトロソ基、カルボニル基、カルボキシル基又はシアノ基である。X、X及びXは各々同一であっても、異なっていてもよい。
金属陽イオンとしては遷移金属の陽イオンを用いる事ができる。好ましくはMn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn及びAg金属から選ばれた金属の陽イオンが用いられる。又、Li、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca及びBa金属から選ばれた金属の陽イオンを用いても好ましい結果が得られる。電解質塩として前述の化合物を2種類以上併用することが可能である。特に、エレクトロクロミック層のエレクトロクロミック材料が酸化タングステン系化合物において、電解質塩としてはLi塩化合物が好適に用いられる。
Li塩化合物としては、たとえば、LiBF、LiPF、LiClO、LiCFSO、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiN[CFSC(CSO]などを挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは、単独で用いても、2種類以上を混合して用いても良い。
(常温溶融塩)
本発明の電解質組成物はポリエーテル共重合体及び電解質塩に対して、更に非プロトン性有機溶媒や常温溶融塩(イオン液体)を共存させて得られる高分子電解質ゲルである。常温溶融塩を用いた場合には、電解質塩と非プロトン性有機溶媒の役割を持たせることができ、ポリエーテル共重合体を常温溶融塩に溶解させれば、それ自体でゲル電解質組成物溶液を調製することができる。
常温溶融塩とは、常温において少なくとも一部が液状を呈する塩をいい、常温とは電源が通常作動すると想定される温度範囲をいう。電源が通常作動すると想定される温度範囲とは、上限が120℃程度、場合によっては60℃程度であり、下限は−40℃程度、場合によっては−20℃程度である。
常温溶融塩はイオン液体とも呼ばれており、有機物カチオンとアニオンからなる液状の塩であるが、アニオンとしてイミド塩を含有することが好ましい。常温溶融塩としては、ピリジン系、脂肪族アミン系、脂環族アミン系の4級アンモニウム有機物カチオンが知られている。4級アンモニウム有機物カチオンとしては、ジアルキルイミダゾリウム、トリアルキルイミダゾリウム、などのイミダゾリウムイオン、テトラアルキルアンモニウムイオン、アルキルピリジニウムイオン、ピラゾリウムイオン、ピロリジニウムイオン、ピペリジニウムイオンなどが挙げられる。特に、イミダゾリウムカチオンが好ましい。
イミダゾリウムカチオンとしては、ジアルキルイミダゾリウムイオン、トリアルキルイミダゾリウムイオンが例示される。ジアルキルイミダゾリウムイオンとしては、1,3−ジメチルイミダゾリウムイオン、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−メチル−3−エチルイミダゾリウムイオン、1−メチル−3−ブチルイミダゾリウムイオン、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムイオンなどが挙げられ、トリアルキルイミダゾリウムイオンとしては、1,2,3−トリメチルイミダゾリウムイオン、1,2−ジメチル−3−エチルイミダゾリウムイオン、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムイオン、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムイオンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、1−アリル−3−エチルイミダゾリウムイオン、1−アリル−3−ブチルイミダゾリウムイオン、1,3−ジアリルイミダゾリウムイオンなどの1−アリルイミダゾリウムイオンも使用することができる。
テトラアルキルアンモニウムイオンとしては、トリメチルエチルアンモニウムイオン、ジメチルジエチルアンモニウムイオン、トリメチルプロピルアンモニウムイオン、トリメチルヘキシルアンモニウムイオン、テトラペンチルアンモニウムイオン、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2メトキシエチル)アンモニウムイオンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
アルキルピリジウムイオンとしては、N−メチルピリジウムイオン、N−エチルピリジニウムイオン、N−プロピルピリジニウムイオン、N−ブチルピリジニウムイオン、1−エチル−2メチルピリジニウムイオン、1−ブチル−4−メチルピリジニウムイオン、1−ブチル−2,4ジメチルピリジニウムイオン、N−メチル−N−プロピルピぺリジニウムイオンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
ピロリジニウムイオンとしては、N−(2−メトキシエチル)−N−メチルピロリジニウムイオン、N−エチル−N−メチルピロリジニウムイオン、N−エチル−N−プロピルピロリジニウムイオン、N−メチル−N−プロピルピロリジニウムイオン、N−メチル−N−ブチルピロリジニウムイオン、などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
なお、これらのカチオンを有する常温溶融塩は、単独で用いてもよく、または2種以上を混合して用いても良い。
アニオンとしては、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオンなどのハロゲン化物イオン、過塩素酸イオン、チオシアン酸イオン、テトラフルオロホウ素酸イオン、硝酸イオン、AsF 、PF などの無機酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、ステアリルスルホン酸イオン、オクチルスルホン酸イオン、ドデシルベンゼンスルホン酸イオン、ナフタレンスルホン酸イオン、ドデシルナフタレンスルホン酸イオン、7,7,8,8−テトラシアノ−p−キノジメタンイオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン、ビス(フルオロスルホニル)イミドイオン、トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチドイオン、ビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミドイオン、4,4,5,5−テトラフルオロ−1,3,2−ジチアゾリジン−1,1,3,3−テトラオキシドイオン、トリフルオロ(ペンタフルオロエチル)ホウ素酸イオン、トリフルオロ−トリ(ペンタフルオロエチル)リン酸イオン、などの有機酸イオンなどが例示される。
本発明の電解質組成物において、電解質塩の量はポリエーテル共重合体10重量部に対して、1〜120重量部の範囲内が好ましく、更に好ましくは3〜90重量部である。
本発明の電解質組成物は、非プロトン性有機溶媒や常温溶融塩と組み合わせることでゲル状となり易い。ここで、ゲルとは溶媒によって膨潤した流動性の無い軟体物を指す。
(非プロトン性有機溶媒) 非プロトン性有機溶媒としては、非プロトン性のニトリル類、エーテル類及びエステル類が好ましい。具体的には、アセトニトリル、プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、ブチレンカーボネート、ビニルカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルモノグライム、メチルジグライム、メチルトリグライム、メチルテトラグライム、エチルモノグライム、エチルジグライム、エチルトリグライム、エチルメチルモノグライム、ブチルジグライム、3−メチル−2−オキサゾリドン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4,4−メチル−1,3−ジオキソラン、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル等が挙げられ、中でも、プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、ブチレンカーボネート、ビニルカーボネート、エチレンカーボネート、メチルトリグライム、メチルテトラグライム、エチルトリグライム、エチルメチルモノグライムが好ましい。これらの2種以上の混合物を用いても良い。
電解質塩および必要な非プロトン性有機溶媒等をポリエーテル共重合体に混合する方法に特に制限はないが、電解質塩および必要な非プロトン性有機溶媒を含む溶液にポリエーテル共重合体を長時間浸漬して含浸させる方法、電解質塩および必要な非プロトン性有機溶媒をポリエーテル共重合体へ機械的に混合させる方法、ポリエーテル共重合体および電解質塩を非プロトン性有機溶媒に溶かして混合させる方法、あるいはポリエーテル共重合体を一度他の溶媒に溶かした後、非プロトン性有機溶媒を混合させる方法などがある。他の溶媒を使用して製造する場合の他の溶媒としては各種の極性溶媒、例えばテトラヒドロフラン、アセトン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が単独、或いは混合して用いられる。他の溶媒は、ポリエーテル共重合体を架橋する場合には、架橋前、架橋する間または架橋した後に除去できる。
本発明の電解質層は、上記の電解質組成物を溶解させた溶液を熱または光によって架橋させることによって得られるゲル電解質層である。
ゲルを強固にするために架橋助剤を添加し、反応開始剤の存在下に熱線や紫外線などの活性エネルギー線を照射することによって架橋させてゲル化させてもよい。
(架橋助剤)
本発明においては、架橋助剤を熱反応開始剤や光反応開始剤と併用してもよい。架橋助剤は、通常、多官能性化合物(例えば、CH=CH−、CH=CH−CH−、CF=CF−を少なくとも2個含む化合物)である。架橋助剤の具体例は、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアクリルホルマール、トリアリルトリメリテート、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、ジプロパルギルテレフタレート、ジアリルフタレート、テトラアリルテレフタールアミド、トリアリルホスフェート、ヘキサフルオロトリアリルイソシアヌレート、N−メチルテトラフルオロジアリルイソシアヌレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレートなどである。
(反応開始剤)
本発明に用いることができる熱反応開始剤として、有機過酸化物系、アゾ化合物系等から選ばれるラジカル開始剤が挙げられる。 有機過酸化物系としては、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル等、通常架橋用途に使用されているものが用いられ、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等が挙げられる。
アゾ化合物系としてはアゾニトリル化合物、アゾアミド化合物、アゾアミジン化合物等、通常架橋用途に使用されているものが用いられ、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2'−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2−アゾビス(2−メチル−N−フェニルプロピオンアミジン)・二塩酸塩、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2'−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2'−アゾビス(2−メチルプロパン)、2,2'−アゾビス[2−(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]等が挙げられる。 好ましくは有機過酸化物系の開始剤が用いられ、これらの化合物を2種類以上併用することも可能である。

本発明に用いる光反応開始剤としては、アルキルフェノン系光反応開始剤が好適に用いられる。アルキルフェノン系光反応開始剤は、反応速度が速く電解質組成物への汚染が少ない点で非常に好ましい。
アルキルフェノン系光反応開始剤の具体例としては、ヒドロキシアルキルフェノン系化合物である1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−[4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル]−2−メチル−プロパン−1−オンや2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、などが挙げられる。またアミノアルキルフェノン系化合物である2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルフォニル)フェニル]−1−ブタノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1等が挙げられる。その他として、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル等が挙げられる。中でも2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルフォニル)フェニル]−1−ブタノンが好ましい。
その他の光反応開始剤としては、ベンゾフェノン系、アシルフォスフィンオキサイド系、チタノセン類、トリアジン類、ビスイミダゾール類、オキシムエステル類などが挙げられる。これらの反応開始剤を単独で用いてもよいし、アルキルフェノン系の光反応開始剤の補助的な開始剤として添加することも可能である。
光による架橋に用いる活性エネルギー線は、紫外線、可視光線、電子線等を用いることができる。特に装置の価格、制御のしやすさから紫外線が好ましい。
架橋反応に用いられる熱重合開始剤の量はポリエーテル共重合体100重量部に対して0.01〜10重量部の範囲内が好ましく、更に好ましくは0.1〜4.0重量部である。
架橋反応に用いられる光反応開始剤の量はポリエーテル共重合体100重量部に対して0.01〜10重量部の範囲内が好ましく、更に好ましくは0.1〜5.0重量部である。
架橋反応は、熱による場合は、室温から200℃ぐらいの温度設定で10分から24時間程度加熱することによって行なうことができる。紫外線による場合では、キセノンランプ、水銀ランプ、高圧水銀ランプおよびメタルハライドランプを用いることができ、例えば、電解質を波長365nm、光量1〜50mW/cmで0.1〜30分間照射することによって行うことができる。
本発明の趣旨に従い、電解質組成物のゲルとしての不流動状態を維持するためには、該電解質組成物の粘度がそのエレクトロクロミック素子の使用環境において8Pa・s以上あればよい。
本発明の電解質組成物には、架橋させた後のゲル電解質に強度を持たせるためや、イオン透過性をより高めるなどの目的で、無機微粒子、樹脂微粒子および樹脂製の極細繊維よりなる群から選択される少なくとも1種のフィラー材料を含有させてもよい。
使用可能な材料としては、Al、SiO、ベーマイト、PMMA(架橋PMMA)の各微粒子が好ましく用いられる。
ゲル電解質層の厚みは、薄いほどエレクトロクロミック素子の駆動電圧が小さくなるため有利であり出来るだけ薄い方が好ましいが薄すぎると電極同士がショートしてしまう可能性があるため適当な膜厚が必要となる。具体的には1〜200μm、好ましくは5〜100μm、より好ましくは5〜50μmである。
(エレクトロクロミック素子の製造方法)
本発明のエレクトロクロミック素子の表示基板および対向基板は、ガラス、プラスチック等を用いることができる。このうち少なくとも表示基板は透明である必要がある。特に表示基板と対向基板としてプラスチックフィルムを用いる場合、フレキシブルなエレクトロクロミック素子を作製することが可能となる。
表示基板の上には、透明導電性の表示電極が形成される。透明導電性の電極に用いられる材料としては、InやSnO、In:Sn(ITO)、SnO:Sb(ATO)、SnO:F(FTO)、ZnO:Al、ZnO:F、CdSnOなどの導電性金属酸化物が用いられる。このうち、ITO、ATO,FTOが特に好ましい。これらの材料はスパッタ法により容易に成膜することができる。
また、対向基板に対向電極が形成される。対向電極に、表示電極と同様の透明導電膜を用いてもよいが亜鉛、白金等の導電性金属膜を用いてもよい。対向電極として亜鉛等の金属板を用いる場合、対向電極が対向基板を兼ねることになる。
(エレクトロクロミック層)
本発明のエレクトロクロミック層に用いられる材料としては、酸化還元反応により色が変化する材料を用いることが出来る。このような材料としては、金属酸化物系、ポリマー系、色素系、金属錯体等の公知のエレクトロクロミック化合物を用いることができる。
金属酸化物系の材料としては、例えば酸化タングステン、酸化タンタル、酸化モリブデン、酸化チタン、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化ニッケル、酸化イリジウム、またはこれらの酸化物に水素またはリチウム、ナトリウムもしくはカリウムがドープされたものを用いることができる。これらの中でも酸化タングステン、あるいは水素またはリチウム、ナトリウムもしくはカリウムをドープした酸化タングステンが好ましく、酸化タングステンが最も好ましい。
ポリマー系、色素系、金属錯体系の材料としては、例えばアゾベンゼン系、アントラキノン系、ジアリールエテン系、ジヒドロプレン系、スチリル系、スチリルスピロピラン系、スピロオキサジン系、スピロチオピラン系、チオインジゴ系、テトラチアフルバレン系、テレフタル酸系、トリフェニルメタン系、トリフェニルアミン系、フェニレンジアミン系、ナフトピラン系、ビオロゲン系、ピラゾリン系、フェナジン系、フェノキサジン系、フェノチアジン系、メロシアニン系、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系、フルオラン系、フルギド系、ベンゾピラン系、メタロセン系、フェナントロリン系、等の低分子系有機エレクトロクロミック化合物、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリフェニレンビニレン等の導電性高分子化合物を用いることができる。中でもビオロゲン系、フタロシアニン系、フェナントロリン系の有機エレクトロクロミック化合物が好適に用いられる。
本発明において、例えばエレクトロクロミック層が酸化タングステンの場合は、電解質塩としてLi塩化合物と常温溶融塩が好適に用いられる。また、エレクトロクロミック層が有機化合物を吸着させた酸化チタンの場合は、電解質塩化合物は常温溶融塩のみが好適に用いられる。
本発明において、エレクトロクロミック層が酸化タングステンの場合にはポリエーテル共重合体に対するLi塩化合物と非プロトン性有機溶媒および常温溶融塩の合計使用量は、ポリエーテル共重合体10重量部に対して、電解質塩1〜120重量部が好ましく、更に好ましくは3〜90重量部の範囲がよい。
本発明において、エレクトロクロミック層に有機色素系、有機金属系の低分子有機化合物を用いる場合には、酸化チタンや酸化亜鉛の微粒子に低分子有機化合物を吸着させて用いることが好ましい。そうすることにより、有機化合物の劣化を防止し、発色性を上げることができる。
本発明において、例えばエレクトロクロミック層が低分子有機化合物を吸着させた酸化チタンや酸化亜鉛の場合は、電解質塩化合
物は常温溶融塩や常温溶融塩と非プロトン性有機溶媒との混合液が好適に用いられる。
本発明において、エレクトロクロミック層が低分子有機化合物場合にはポリエーテル共重合体に対する非プロトン性有機溶媒および常温溶融塩の合計使用量は、ポリエーテル共重合体10重量部に対して、電解質塩5〜250重量部が好ましく、更に好ましくは10〜200重量部の範囲がよい。
(多孔質白色散乱層)
本発明において、エレクトロクロミック素子の発色性を上げるために多孔質白色散乱層を設けることができる。多孔質白色散乱層は、対向電極上に設けられる。適用可能な多孔質白色散乱層は、電解質溶媒に実質的に溶解しない水系高分子と白色顔料との水混和物を塗布乾燥して形成することができる。
本発明で適用可能な白色顔料としては、例えば、二酸化チタン(アナターゼ型あるいはルチル型)、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウムおよび水酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、リン酸マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、アルカリ土類金属塩、タルク、カオリン、ゼオライト、酸性白土、ガラス、有機化合物としてポリエチレン、ポリスチレン、アクリル樹脂、アイオノマー、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素−ホルマリン樹脂、メラミン−ホルマリン樹脂、ポリアミド樹脂などが単体または複合混合で、または粒子中に屈折率を変化させるボイドを有する状態で使用されてもよい。
本発明では、上記白色粒子の中でも、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化亜鉛が好ましく用いられる。また、無機酸化物(Al23、AlO(OH)、SiO2等)で表面処理した二酸化チタン、これらの表面処理に加えて、トリメチロールエタン、トリエタノールアミン酢酸塩、トリメチルシクロシラン等の有機物処理を施した二酸化チタンを用いることができる。
これらの白色粒子のうち、高温時の着色防止、屈折率に起因する素子の反射率の観点から、酸化チタンまたは酸化亜鉛を用いることがより好ましい。
表示電極のエレクトロクロミック層上または対向電極および多孔質白色散乱層の上に、本発明のゲル電解質組成物を塗布、必要な架橋を施した転写シート状の膜を転写させて電解質組成物層を形成した後、表示電極または対向電極および多孔質白色散乱層を重ね合わせることによってもエレクトロクロミック素子が組み上げられる。
本発明のエレクトロクロミック素子の製造方法の一例としては、
(A)式(1):
[式中、Rは炭素数1〜12のアルキル基、または−CHO(CR)である。R、R、Rは水素原子または−CHO(CHCHO)であり、nおよびRはR、R、Rの間で異なっていてもよい。Rは炭素数1〜12のアルキル基、または置換基を有してもよいアリール基であり、nは0〜12の整数である。]で示される単量体から誘導される繰り返し単位0〜90モル%、及び
式(2):
で示される単量体から誘導される繰り返し単位99.5〜9.5モル%、及び
式(3)
[式中、Rはエチレン性不飽和基を有する基である。]で示される単量体から誘導される繰り返し単位0.5〜15モル%で示される単量体を、重合させて得られるポリエーテル共重合体を得る工程と、
(B)前記ポリエーテル共重合体、電解質塩化合物が含まれる組成物を、エレクトロクロミック層を有する表示電極および対向電極の間に注入する工程と、
(C)前記注入された組成物を架橋してゲル化する工程と、
を含む製造方法が例示される。
重合工程(A)においては、上記式(1)、式(2)及び式(3)で示される単量体を重合させてポリエーテル共重合体を得る。開環重合触媒として有機アルミニウムを主体とする触媒系、有機亜鉛を主体とする触媒系、有機錫−リン酸エステル縮合物触媒系などの配位アニオン開始剤、または対イオンにKを含むカリウムアルコキシド、ジフェニルメチルカリウム、水酸化カリウムなどのアニオン開始剤を用いて、各モノマーを溶媒の存在下又は不存在下、反応温度10〜120℃、撹拌下で反応させることによってポリエーテル共重合体が得られる。重合度、あるいは得られる共重合体の性質などの点から、配位アニオン開始剤が好ましく、なかでも有機錫−リン酸エステル縮合物触媒系が取り扱い易く特に好ましい。
塗布工程(B)においては、ポリエーテル共重合体、反応開始剤、電解質塩を含有する溶液を、エレクトロクロミック層を有する表示電極またはおよび対向電極の間に注入する。
塗布工程(B)では、エレクトロクロミック層を有する表示電極または対向正極の一方における1つの表面に電解質組成物を塗布してもよく、また、エレクトロクロミック層を有する表示電極または対向電極の両方の表面に電解質組成物を塗布してもよい。ここでいう表面とは、エレクトロクロミック層の表面および対向電極の電極表面を指す。
架橋工程(C)において、注入した電解質組成物を架橋させてゲル化させ、該電解質組成物のゲル電解質層をエレクトロクロミック層を有する表示電極および対向電極の間に形成させる。架橋は、非プロトン性有機溶媒の存在下または不存在下に、熱または活性エネルギー線を照射することによって行える。活性エネルギー線の具体例は、熱線、紫外線、可視光線、赤外線、X線、ガンマー線、レーザー光線等の電磁波、アルファー線、ベータ線、電子線等の粒子線である。
表示電極のエレクトロクロミック層上または対向電極上にゲル電解質層を形成した場合は、ゲル電解質の上からもう一方の電極等を乗せればゲル電解質層は粘着性のある膜のため、もう一方の電極等と良好な接合を行うことができる。
架橋工程(C)によりゲル化された電解質組成物を用いて、表示基板/表示電極/エレクトロクロミック層/ゲル電解質層/対向電極/対向基板の構成の素子を作製し、端面を封止剤で封止すれば本発明のエレクトロクロミック素子を製造することができる。
本発明において、電解質組成物フィルムを電解質層に適用することによってエレクトロクロミック素子を製造しても良い。電解質組成物フィルムは、電解質組成物を製造し、該電解質組成物を例えば剥離シートに塗布し、剥離シート上で架橋させ、剥離シートから剥離することによって製造することができる。
実施例
本発明を実施するための具体的な形態を以下に実施例を挙げて説明する。但し、本発明はその要旨を逸脱しない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
本実施例では、ゲル電解質組成物溶液の粘度、塗工性の評価および、本発明のゲル電解質組成物を用いて表示基板、表示電極とエレクトロクロミック層、ゲル電解質層と、対向電極、対向基板とからなるエレクトロクロミック素子において、エレクトロクロミック素子の発色性、機械的特性を比較するために以下の実験を行った。
[合成例(ポリエーテル共重合用触媒の製造)]
撹拌機、温度計及び蒸留装置を備えた3つ口フラスコにトリブチル錫クロライド10g及びトリブチルホスフェート35gを入れ、窒素気流下に撹拌しながら250℃で20分間加熱して留出物を留去させ残留物として固体状の縮合物質を得た。以下の重合例で重合触媒として用いた。
ポリエーテル共重合体のモノマー換算組成はH NMRスペクトルにより求めた。
ポリエーテル共重合体の分子量測定にはゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定を行い、標準ポリスチレン換算により重量平均分子量を算出した。GPC測定は(株)島津製作所製RID−6A、昭和電工(株)製ショウデックスKD−807、KD−806、KD−806MおよびKD−803カラム、および溶媒にDMFを用いて60℃で行った。
[重合例1]
内容量3Lのガラス製4つ口フラスコの内部を窒素置換し、これに重合触媒として触媒の合成例で示した縮合物質1gと水分10ppm以下に調整したグリシジルエーテル化合物(a):
158g、アリルグリシジルエーテル22g、及び溶媒としてn−ヘキサン1000gを仕込み、化合物(a)の重合率をガスクロマトグラフィーで追跡しながら、エチレンオキシド125gを逐次添加した。このときの重合温度は20℃とし、9時間反応を行った。重合反応はメタノールを1mL加え反応を停止した。デカンテーションによりポリマーを取り出した後、常圧下40℃で24時間、更に減圧下45℃で10時間乾燥してポリマー280gを得た。得られたポリエーテル共重合体の重量平均分子量および」換算組成分析結果を表1に示す。
[重合例2]
内容量3Lのガラス製4つ口フラスコの内部を窒素置換し、これに触媒として触媒の製造例で示した縮合物質2gと水分10ppm以下に調整したメタクリル酸グリシジル40g及び溶媒としてn−ヘキサン1000g及び連鎖移動剤としてエチレングリコールモノメチルエーテル0.07gを仕込み、エチレンオキシド230gはメタクリル酸グリシジルの重合率をガスクロマトグラフィーで追跡しながら、逐次添加した。重合反応はメタノールで停止した。デカンテーションによりポリマーを取り出した後、常圧下40℃で24時間、更に減圧下45℃で10時間乾燥してポリマー238gを得た。得られたポリエーテル共重合体の重量平均分子量およびモノマー換算組成分析結果を表1に示す。
[重合例3]
重合例2の仕込みにおいてメタクリル酸グリシジル50g、エチレンオキシド195g、及びエチレングリコールモノメチルエーテル0.06gを仕込んで重合した以外は同様の操作を行い、ポリマー223gを得た。得られたポリエーテル共重合体の重量平均分子量およびモノマー換算組成分析結果を表1に示す。
[重合例4]
重合例2の仕込みにおいてアリルグリシジルエーテル30g、エチレンオキシド100g、及びn−ブタノール0.01gを仕込んで重合した以外は同様の操作を行い、ポリマー126gを得た。得られたポリエーテル共重合体の重量平均分子量およびモノマー換算組成分析結果を表1に示す。
[重合例5]
重合例2の仕込みにおいてメタクリル酸グリシジル30g、エチレンオキシド260g、及びエチレングリコールモノメチルエーテル0.09g、を仕込んで重合した以外は同様の操作を行い、ポリマー250gを得た。得られたポリエーテル共重合体の重量平均分子量およびモノマー換算組成分析結果を表1に示す。
[実施例1]表示基板/表示電極/エレクトロクロミック層/電解質層1/対向電極/対向基板で構成されたエレクトロクロミック素子の作製
<エレクトロクロミック層1の作製>
無色透明の厚さ2mmで10×10cm角のガラス基板上に、スパッタリング法によりシート抵抗値10Ω/sqのITOを成膜し、表示電極を形成した。次にITO膜上に、スパッタリング法により酸化タングステン層(0.8μm厚)を成膜しエレクトロクロミック層1を形成した。
<電解質層1の作製>
無色透明の厚さ2mmで10×10cm角のガラス基板上に、スパッタリング法によりシート抵抗値10Ω/sqのITOを成膜し、対向電極を形成した。次に、重合例1で得られた共重合体を10重量部、トリメチロールプロパントリメタクリレート1重量部、光重合開始剤2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン0.2重量部を1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミドにリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを1mol/Lの濃度に溶解させた溶液、90重量部およびγブチルラクトン10重量部に溶解させて調整した電解質溶液を対向電極上にドクターブレードで塗布し、厚さ20μmの電解質層を形成した。その後、乾燥させたのち、電解質表面をラミネートフィルムでカバーした状態で、(株)GSユアサ製の高圧水銀灯(30mW/cm)を30秒間照射することで架橋し、対向電極上にゲル電解質層1を形成した。
<エレクトロクロミック素子1の作製>
ラミネートフィルムを剥がし、表示基板と対向基板を各成膜面が対向するように配置し、これらの基板を軽く圧着させた。表示基板と対向基板のITO電極からリード線を取り出し、セルの周囲をエポキシ系紫外線硬化型樹脂によりシールすることによりエレクトロクロミック素子1を作製した。
[実施例2]表示基板/表示電極/エレクトロクロミック層2/電解質層2/対向電極/対向基板で構成されたエレクトロクロミック素子2の作製
<エレクトロクロミック層2の作製>
エレクトロクロミック層1の作製とまったく同様の方法でエレクトロクロミック層2を作製した。
<電解質層2の作製>
無色透明の厚さ2mmで10×10cm角のガラス基板上に、スパッタリング法によりシート抵抗値10Ω/sqのITOを成膜し、対向電極を形成した。次に、重合例2で得られた共重合体を10重量部、トリメチロールプロパントリメタクリレート1重量部、シリカ平均粒径10μm(ハイプレシカ:宇部日東化成(株)社製)3重量部、光重合開始剤2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン0.2重量部を1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミドにリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを1mol/Lの濃度に溶解させた溶液、90重量部およびプロピレングリコール10重量部に溶解させて調整した電解質溶液を対向電極上にドクターブレードで塗布し、厚さ10μmの電解質層を形成した。その後、乾燥させたのち、電解質表面をラミネートフィルムでカバーした状態で、(株)GSユアサ製の高圧水銀灯(30mW/cm)を30秒間照射することで架橋し、対向電極上にゲル電解質層2を形成した。
<エレクトロクロミック素子2の作製>
ラミネートフィルムを剥がし、表示基板と対向基板を各成膜面が対向するように配置し、これらの基板を軽く圧着させた。表示基板と対向基板のITO電極からリード線を取り出し、セルの周囲をエポキシ系紫外線硬化型樹脂によりシールすることによりエレクトロクロミック素子2を作製した。
[実施例3]表示基板/表示電極/エレクトロクロミック層3/電解質層3/多孔質白色散乱層/対向電極/対向基板で構成されたエレクトロクロミック素子3の作製
<エレクトロクロミック層3の作製>
無色透明の厚さ2mmで10×10cm角のガラス基板上に、スパッタリング法によりシート抵抗値25Ω/sqのアンチモンドープの酸化スズを成膜し、表示電極を形成した。次にアンチモンドープの酸化スズ膜上に、平均粒径6nmの酸化チタン20重量%をテルピネオールに分散させた分散液を、スピンコートにより塗布し、400℃で1時間焼結させて膜厚10μmの酸化チタン多孔質層を得た。その基板を1,1’−ジベンジル−4,4’−ビピリジニウム ジクロライド0.02M溶液に24時間浸漬し、アルコール洗浄・乾燥させエレクトロクロミック層3を形成した。
<電解質層3の作製>
厚さ0.5mmで10×10cm角の亜鉛基板上に、SiO2で被覆された酸化チタン(平均一次粒径300nm)とポリビニルアルコールと水とエタノールの混合液をブレード塗布法で乾燥膜厚が10μmとなるように多孔質白色散乱層を形成した。次に、重合例3で得られた共重合体を10重量部、トリメチロールプロパントリメタクリレート1重量部、光重合開始剤2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン0.2重量部を1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドにリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを1mol/Lの濃度に溶解させた溶液、90重量部、プロピレングリコール10重量部に溶解させて調整した電解質溶液を対向電極上にドクターブレードで塗布し、厚さ30μmの電解質層を形成した。その後、乾燥させたのち、電解質表面をラミネートフィルムでカバーした状態で、(株)GSユアサ製の高圧水銀灯(30mW/cm)を30秒間照射することで架橋し、対向電極の多孔質白色散乱層上にゲル電解質層3を形成した。
<エレクトロクロミック素子3の作製>
ラミネートフィルムを剥がし、表示基板と対向基板を各成膜面が対向するように配置し、これらの基板を軽く圧着させた。表示基板のITO電極と対向基板の亜鉛電極からリード線を取り出し、セルの周囲をエポキシ系紫外線硬化型樹脂によりシールすることによりエレクトロクロミック素子3を作製した。
[実施例4]表示基板/表示電極/エレクトロクロミック層4/電解質層4/多孔質白色散乱層/対向電極/対向基板で構成されたエレクトロクロミック素子4の作製
<エレクトロクロミック層4の作製>
無色透明の厚さ2mmで10×10cm角のガラス基板上に、平均粒径30nmのITO粒子を1−ブタノールに濃度が10wt%となるように添加し、超音波分散機を用いで分散させた塗布液を、乾燥膜厚が1μmになるようにディッピング法により塗布し表示電極を形成した。次にITO膜上に、平均粒径30nmの酸化チタン20重量%をテルピネオールに分散させた分散液を、スピンコートにより塗布し、350℃で1時間焼結させて膜厚10μmの酸化チタン多孔質層を得た。その基板を1,1’−ジドデシル−4,4’−ビピリジニウムジブロマイド0.02M溶液に24時間浸漬し、アルコール洗浄・乾燥させエレクトロクロミック層4を形成した。
<電解質層4の作製>
厚さ0.5mmで10×10cm角の亜鉛基板上に、SiO2で被覆された酸化チタン(平均粒径300nm)とポリビニルアルコールと水とエタノールの混合液をブレード塗布法で乾燥膜厚が10μmとなるように多孔質白色散乱層を形成した。次に、重合例4で得られた共重合体を10重量部、トリメチロールプロパントリメタクリレート1重量部、光重合開始剤2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン0.2重量部を1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドにリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを1mol/Lの濃度に溶解させた溶液、90重量部、プロピレングリコール10重量部に溶解させて調整した電解質溶液を対向電極上にドクターブレードで塗布し、厚さ30μmの電解質層を形成した。その後、乾燥させたのち、電解質表面をラミネートフィルムでカバーした状態で、(株)GSユアサ製の高圧水銀灯(30mW/cm)を30秒間照射することで架橋し、対向電極の多孔質白色散乱層上にゲル電解質層4を形成した。
<エレクトロクロミック素子4の作製>
ラミネートフィルムを剥がし、表示基板と対向基板を各成膜面が対向するように配置し、これらの基板を軽く圧着させた。表示基板のITO電極と対向基板の亜鉛電極からリード線を取り出し、セルの周囲をエポキシ系紫外線硬化型樹脂によりシールすることによりエレクトロクロミック素子4を作製した。
[実施例5]表示基板/表示電極/エレクトロクロミック層5/電解質層5/対向電極/対向基板で構成されたエレクトロクロミック素子4の作製
<エレクトロクロミック層5の作製>
無色透明の厚さ2mmで10×10cm角のガラス基板上に、スパッタリング法によりシート抵抗値10Ω/sqのITOを成膜し、表示電極を形成した。次にITO膜上に、スピンコーターにポリアニリン分散液(ポリアニリンスルホン酸5質量%、純水95質量%の分散液:Aqua−PASS三菱レーヨン社製)を滴下し、その後、80℃の環境下に30分間置いて乾燥させた。乾燥後の膜厚は、200nmであった。このようにしてエレクトロクロミック層5を形成した。
<電解質層5の作製>
無色透明の厚さ2mmで10×10cm角のガラス基板上に、スパッタリング法によりシート抵抗値10Ω/sqのITOを成膜し、対向電極を形成した。次に、重合例5で得られた共重合体を10重量部、トリメチロールプロパントリメタクリレート1重量部、シリカ平均粒径10μm(ハイプレシカ:宇部日東化成(株)社製)3重量部、光重合開始剤2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン0.2重量部を1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミドにリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを1mol/Lの濃度に溶解させた溶液、90重量部およびプロピレングリコール10重量部に溶解させて調整した電解質溶液を対向電極上にドクターブレードで塗布し、厚さ10μmの電解質層を形成した。その後、乾燥させたのち、電解質表面をラミネートフィルムでカバーした状態で、(株)GSユアサ製の高圧水銀灯(30mW/cm)を30秒間照射することで架橋し、対向電極上にゲル電解質層5を形成した。
<エレクトロクロミック素子5の作製>
ラミネートフィルムを剥がし、表示基板と対向基板を各成膜面が対向するように配置し、これらの基板を軽く圧着させた。表示基板と対向基板のITO電極からリード線を取り出し、セルの周囲をエポキシ系紫外線硬化型樹脂によりシールすることによりエレクトロクロミック素子5を作製した。
[比較例1]表示基板/表示電極/エレクトロクロミック層6/電解質層6/対向電極/対向基板で構成されたエレクトロクロミック素子の作製
<エレクトロクロミック層6の作製>
無色透明の厚さ2mmで10×10cm角のガラス基板上に、スパッタリング法によりシート抵抗値10Ω/sqのITOを成膜し、表示電極を形成した。次にITO膜上に、スパッタリング法により酸化タングステン層(0.8μm厚)を成膜しエレクトロクロミック層6を形成した。
<電解質層6の作製>
無色透明の厚さ2mmで10×10cm角のガラス基板上に、スパッタリング法によりシート抵抗値10Ω/sqのITOを成膜し、対向電極を形成した。次に、ポリエチレングリコール(分子量50万:和光純薬社製)10重量部を1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミドにリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを1mol/Lの濃度に溶解させた溶液、90重量部およびγブチルラクトン10重量部に溶解させて調整した電解質溶液を対向電極上にドクターブレードで塗布し、厚さ20μmの電解質層を形成し、対向電極上にゲル電解質層6を形成した。
<エレクトロクロミック素子6の作製>
ラミネートフィルムを剥がし、表示基板と対向基板を各成膜面が対向するように配置し、これらの基板を軽く圧着させた。表示基板と対向基板のITO電極からリード線を取り出し、セルの周囲をエポキシ系紫外線硬化型樹脂によりシールすることによりエレクトロクロミック素子1を作製した。
[比較例2]表示基板/表示電極/エレクトロクロミック層7/電解質層7/対向電極/対向基板で構成されたエレクトロクロミック素子の作製
<エレクトロクロミック層7の作製>
無色透明の厚さ2mmで10×10cm角のガラス基板上に、スパッタリング法によりシート抵抗値10Ω/sqのITOを成膜し、表示電極を形成した。次にITO膜上に、スパッタリング法により酸化タングステン層(0.8μm厚)を成膜しエレクトロクロミック層7を形成した。
<電解質層7の作製>
無色透明の厚さ2mmで10×10cm角のガラス基板上に、スパッタリング法によりシート抵抗値10Ω/sqのITOを成膜し、対向電極を形成した。次に、メトキシポリエチレングリコールモノアクリレート(中村化学社製)7.5重量部、ポリエチレングリコールジメタアクリレート2.5重量部、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン0.04重量部および過塩素酸リチウムをプロピレンカーボネートに1mol/Lの濃度に溶解させた溶液、90重量部およびγブチルラクトン10重量部に溶解させて調整した電解質溶液を対向電極上にドクターブレードで塗布し、厚さ20μmの電解質層を形成した。その後、乾燥させたのち、電解質表面をラミネートフィルムでカバーした状態で、(株)GSユアサ製の高圧水銀灯(30mW/cm)を30秒間照射することで架橋し、対向電極上にゲル電解質層7を形成した。
<エレクトロクロミック素子7の作製>
ラミネートフィルムを剥がし、表示基板と対向基板を各成膜面が対向するように配置し、これらの基板を軽く圧着させた。表示基板と対向基板のITO電極からリード線を取り出し、セルの周囲をエポキシ系紫外線硬化型樹脂によりシールすることによりエレクトロクロミック素子7を作製した。
<ゲル電解質の特性評価>
上記で試作したエレクトロクロミック素子についてゲル電解質の形成段階でのゲル化性、保液性、膜強度を評価した。
評価方法は以下の通りである。
評価方法
電解質を塗布し、光硬化させた後、カバーフィルムを剥がして表面の状態を観察した。
ゲル化性
○・・・ゲル電解質が均一に形成できておりムラがない。
×・・・ゲル電解質がやや不均一でムラがある。
保液性
○・・・電解質の表面に電解液が出ていない。
×・・・初期は出ていないが経時により電解質の表面に電解液が染み出してくる。
膜強度
膜強度は、測定対象物を軽く指で押して電解液が出てくるかどうかを確認した。
○・・・軽く押しても電解液が出てこない。
×・・・軽く押すと微少部で電解液が出てくる。
評価結果を表2に示した。
<エレクトロクロミック素子の電気化学的評価>
上記のエレクトロクロミック素子について、電気化学的評価を行った。
評価方法は以下の通りである。
評価方法
サイクリックボルタンメトリー測定装置(HSV−110:北斗電工社製)を用い、一定電圧を印加して発色を確認し、応答速度を測定した。
印加電圧
エレクトロクロミック素子に印加する電圧を徐々に上げていき、一秒以内で発色するための印加電圧を求めた。
応答速度
発色するための印加電圧で電流値が一定レベルに収束するまでに要した時間を応答速度とした。
液漏れ
エレクトロクロミック素子を室温で1週間放置し、シール端部に液漏れが発生していないか確認した。
○・・・変化が全く発生していない。
×・・・シール部分に溶解しているような部分がある。
評価結果を表3に示した。
なお、測定はいずれも25℃で行った。
表4において、実施例1〜5においては、印加電圧も低く、応答速度も速くなっている。これは、ゲル電解質のイオン電導度が高く、電気的な障害になりにくいためと考えられる。
本発明のエレクトロクロミック素子は、発色性、応答性に優れ、また物理的な安全性、品質の信頼性に優れているため、電子新聞や電子書籍等の読書用の電子ペーパー等の表示素子や調光ガラス、透過率調整ガラス及び熱線カットガラス等の光線調整用素子として使用できる。

Claims (10)

  1. 表示基板、表示電極と、対向基板、対向電極と、前記表示電極に設けられたエレクトロクロミック層と、前記表示電極と前記対向電極とに挟まれて設けられた電解質層とを有するエレクトロクロミック素子において、前記電解質層が、電解質塩とエチレンオキシドユニットを有するポリエーテル共重合体を含有する電解質溶液を架橋させたゲル電解質層であることを特徴とするエレクトロクロミック素子。
  2. 請求項1において、該電解質塩として常温溶融塩を含有することを特徴とする請求項1に記載のエレクトロクロミック素子。
  3. 該エチレンオキシドユニットを有するポリエーテル共重合体が、(A)で示される繰り返し単位0〜90モル%
    [式中、Rは炭素数1〜12のアルキル基、または−CHO(CR)である。R、R、Rは水素原子または−CHO(CHCHO)であり、nおよびRはR、R、Rの間で異なっていてもよい。Rは炭素数1〜12のアルキル基、または置換基を有してもよいアリール基であり、nは0〜12の整数である。]、及び
    (B)で示される繰り返し単位99.5〜9.5モル%、
    及び(C)で示される繰り返し単位0.5〜15モル%
    [式中、Rはエチレン性不飽和基を有する基である。]
    から構成されることを特徴とする請求項1または2に記載のエレクトロクロミック素子。
  4. 該ゲル電解質層にフィラーを含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のエレクトロクロミック素子。
  5. 該電解質塩としてイミド塩を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のエレクトロクロミック素子。
  6. 該ゲル電解質層に含まれるポリエーテル共重合体の含有量が、電解質層全体の5〜50重量%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のエレクトロクロミック素子。
  7. 対向電極上に多孔質白色散乱層を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のエレクトロクロミック素子。
  8. 表示基板、表示電極と、対向基板、対向電極と、前記表示電極に設けられたエレクトロクロミック層と、前記表示電極と前記対向電極とに挟まれて設けられた電解質層とを有するエレクトロクロミック素子において、前記電解質層が電解質塩とエチレンオキシドユニットを有するポリエーテル共重合体を含有する電解質溶液をエレクトロクロミック層を有する表示電極および対向電極の間に注入したのち、加熱またはUV照射して架橋させ、ゲルにすることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のエレクトロクロミック素子の製造方法。
  9. 表示基板、表示電極と、対向基板、対向電極と、前記表示電極に設けられたエレクトロクロミック層と、前記表示電極と前記対向電極とに挟まれて設けられた電解質層とを有するエレクトロクロミック素子において、前記電解質層が電解質塩とエチレンオキシドユニットを有するポリエーテル共重合体を含有する電解質溶液をエレクトロクロミック層上、対向電極上、多孔質白色散乱層上の少なくともいずれかに塗布したのち、加熱またはUV照射して架橋させ、ゲルにすることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のエレクトロクロミック素子の製造方法。
  10. 該エチレンオキシドユニットを有するポリエーテル共重合体が、(A)で示される繰り返し単位0〜90モル%
    [式中、Rは炭素数1〜12のアルキル基、または−CHO(CR)である。R、R、Rは水素原子または−CHO(CHCHO)であり、nおよびRはR、R、Rの間で異なっていてもよい。Rは炭素数1〜12のアルキル基、または置換基を有してもよいアリール基であり、nは0〜12の整数である。]、及び
    (B)で示される繰り返し単位99.5〜9.5モル%、
    及び(C)で示される繰り返し単位0.5〜15モル%
    [式中、Rはエチレン性不飽和基を有する基である。]
    から構成されることを特徴とする請求項8または請求項9に記載のエレクトロクロミック素子の製造方法。
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