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JP2017193525A - アルデヒド基を有する天然化合物による軟体動物防除技術 - Google Patents

アルデヒド基を有する天然化合物による軟体動物防除技術 Download PDF

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秀志 向井
川田 弘志
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Abstract

【課題】 人畜への毒性が低く、軟体動物に対する防除効果に優れた薬剤を提供する。
【解決手段】 食品添加物として使用されるテルペン系、もしくはフェニルプロパノイド系に分類され、かつアルデヒド基を有する化合物を有効成分とする軟体動物の防除技術。
【選択図】なし

Description

本発明は、軟体動物の防除技術に関するものである。
軟体動物は農業及び園芸場面における有害生物であり、ナメクジ及びマイマイの仲間は水稲、野菜、果樹及び花卉等多くの植物を食害する。ナメクジ及びマイマイの仲間は植物の新芽や若い葉を好んで食害するため幼苗期における食害の影響は大きく、花卉における食害痕や移動時に出す粘液は品質低下の要因となっている。また、スクミリンゴガイは茨城県を北限として幅広い地域で繁殖し、水田作物を中心にその摂食量の多さから植物防疫法における外来有害動物に指定されている。その他、同じく外来有害動物の指定を受けているアフリカマイマイは、沖縄を中心に繁殖が確認されており、食害だけでなく人が死に至ることもある広東住血線虫の宿主となることからも防除が必要とされている。
これら軟体動物の防除はメタアルデヒドを使った防除方法が一般的に知られており、メタアルデヒド水和剤(商品名:マイキラー サンケイ化学株式会社)、メタアルデヒド粒剤(商品名:ジャンボたにしくん ロンザジャパン株式会社、商品名:ナメクリーン 3 サンケイ化学株式会社、商品名:ナメナイト ロンザジャパン株式会社)が農薬として販売されている。メタアルデヒドを有効成分とする農薬は、30%水和剤でナメクジを殺す場合にあっては100倍希釈液(3000ppm)を10aあたり300L散布される。粒剤においては3〜10%に調製され、作物に直接かからない様に株の周辺に散布される。スクミリンゴガイに対する場合は、10a辺り10%粒剤を4kgが散布される。また、水中に溶出したメタアルデヒドとの接触効果について、メタルデヒド濃度が13ppmで殻の高さ30mm以上の貝の半数が死亡し、25mm以下の貝では死亡しないとすることが報告されている(非特許文献1)。
また、ホームセンターには生活害虫防除協議会の基準に則った不快害虫駆除剤としてメタアルデヒド誘引殺虫剤(商品名:ナメクジカダン誘引殺虫剤 フマキラー株式会社、商品名:ナメトックスハウス 住友化学園芸株式会社)が販売されている。
一方、メタアルデヒド剤は2010年に農薬登録において作物への直接散布を制限する注意事項が追加され、一部を除き株元や作物の周りに配置する使用方法に制限された。その結果、メタアルデヒド粒剤(商品名:ナメキール 第一農薬株式会社)、メタアルデヒド・NAC粒剤(商品名:グリーンベイト サンケイ化学株式会社)、メタアルデヒド水和剤(商品名:ナメトックス液 富士グリーン株式会社)は農薬登録を有しているものの現在その販売を中止している。
農薬における使用が制限されたようにメタアルデヒドの毒性はGlobally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals(GHS)の分類において急性毒性の評価が区分3、吸入毒性の評価が区分2であり、人体への影響が懸念される。また、処理された粒剤をペットが誤って食べ、中毒症状を起こす事故も発生しており、特に農業従事者ではない一般消費者の使用に供される製品を販売するホームセンターにおいては、メタアルデヒドに代わる安全性の高い製品が求められている。
天然香料として知られるテルペン系、もしくはフェニルプロパノイド系に分類され、かつアルデヒド基を有する化合物の軟体動物に対する誘引効果を示す技術が提案されている。しかし、駆除効果についてはベンズアルデヒド誘導体を記載するもの以外知られていない(特許文献1、2、3)。また、テルペン系、もしくはフェニルプロパノイド系に分類されるフェノール系化合物であるチモール、オイゲノール、リナロールの軟体動物に対する駆除効果が既に知られている(非特許文献2、3)。
また、フェニルプロパノイド系に分類され、かつアルデヒド基を有する化合物であるシンナムアルデヒドはUnited States Environmental Protection Agency(EPA)において殺菌殺虫剤成分として認可されており、同時に動物に対する忌避効果を示した技術が提案されている(特許文献4)。
出願番号PCT/JP2014/076287 特開2009−161560 US Patent 3459771 US Patent 4940583
熊本県農林水産部 農業研究成果情報No.355分類コード04−01 Journal of the Egyptian Society of Parasitology,vol.36,No.2,2006 Rev.Inst.Med.Trop.Sao Paulo(5):281−286,September−October,2012
安全で有効な軟体動物の防除技術。
本発明者らは天然に存在するテルペン系、もしくはフェニルプロパノイド系に分類され、かつアルデヒド基を有する化合物の軟体動物への防除効果について検討し、忌避効果に留まらずその高い駆除効果を見出した。
すなわち、本発明はテルペン系、もしくはフェニルプロパノイド系に分類され、かつアルデヒド基を有する化合物の少なくとも1種を有効成分として含有する軟体動物防除剤に関するものである。また、テルペン系、もしくはフェニルプロパノイド系に分類され、かつアルデヒド基を有する化合物を有効成分として用いる軟体動物の効果的な防除技術を提供するものである。ここでいう「防除」とは軟体動物を殺すこと、忌避させることの両方を併せた概念である。
より具体的には、テルペン系に分類され、かつアルデヒド基を有する化合物がペリルアルデヒド、シトラール、シトロネラールの中から選択される少なくとも1種を有効成分として含有する軟体動物防除剤。もしくは、フェニルプロパノイド系に分類され、かつアルデヒド基を有する化合物がアニスアルデヒド、シンナムアルデヒド、バニリン、ベンズアルデヒドの中から選択される少なくとも1種を有効成分として含有する軟体動物防除剤に関する。また、これらの化合物は日常的に使用され、食品添加物として世界的に認可されているものである。
これらのアルデヒド類を製剤化して使用する場合においては、非イオン系界面活性剤であればポリオキシエチレン糖脂肪酸エステル、グリセリンモノ脂肪酸エステル、糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等、或は、陰イオン系界面活性剤であればリン脂質、脂肪酸の塩等の食品添加物として認可されている界面活性剤を用いることが望ましい。これらの界面活性剤の使用にあたっては、非イオン界面活性剤と陰イオン界面活性剤のそれぞれ一種以上を混合して用いるのが一般的である。
日常的に使用されているテルペン系、もしくはフェニルプロパノイド系に分類され、かつアルデヒド基を有する化合物を有効成分として用いる軟体動物の効果的な防除技術を提供する。
本発明の軟体動物防除剤はテルペン系、もしくはフェニルプロパノイド系に分類され、かつアルデヒド基を有する化合物から選ばれる少なくとも1種を含む。具体的な有効成分としては、ペリルアルデヒド、シトラール、シトロネラール、アニスアルデヒド、シンナムアルデヒド、バニリン、ベンズアルデヒドをあげることができるが、これらに限定されるものではない。
有効成分として選抜されるテルペン系、もしくはフェニルプロパノイド系に分類され、かつアルデヒド基を有する化合物は、その化合物そのものの他、その化合物が含まれる生物由来の抽出物を使用することもできる。これらの有効成分を用いて軟体動物を死滅させるための使用濃度は、水中に生息するスクミリンゴガイ等の軟体動物に連続的に接触させる場合は数10ppmから数100ppmである。地上に生息する軟体動物に直接散布して駆除する場合は数100ppmから数1000ppmであり、忌避剤として使用する場合はこれらのおよそ10分の1程度である。
本発明の防除剤は化合物を直接使用することも可能であるが、テルペン系、もしくはフェニルプロパノイド系に分類され、かつアルデヒド基を有する化合物の物性は一般に脂溶性であるため、溶媒、界面活性剤等と混合し、更に水を用いて希釈して使用することが可能である。この時使用する溶媒としては、たとえばアルコール類、ポリアルキレングリコール、ジメチルスルホキシド等の水溶性溶剤、もしくは植物油、脂肪酸エステル、有機酸エステル、中級脂肪酸ジメチルアミド等、いずれも安全性の高い溶剤を用いることが望ましい。また、溶剤と共に界面活性剤を使用することが一般的であり、既存の各種界面活性剤を使用することが可能である。例えば、非イオン系界面活性剤であればポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油等、或は、陰イオン系界面活性剤であればアルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ジアルキルスルホサクシネート塩、ポリオキシエチレンアリルフェニルエーテルスルホン酸塩等を用いることができる。特に非イオン系界面活性剤のポリオキシエチレン糖脂肪酸エステル、グリセリンモノ脂肪酸エステル、糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、陰イオン界面活性剤のリン脂質、陰イオン系界面活性剤になり得る脂肪酸の塩は、食品添加物として認可されており使用することが望ましい。これら界面活性剤の使用に当たっては単独または混合して使用することができる。
また、本発明の防除剤はでんぷん、デキストリン、砂糖等の糖類、植物油、動物油、穀物粉末、動物質粉末、ビスケット粉等に混合させて食品を元にした固体製剤を調製することも可能である。
また、酸化を受けやすい化合物を含む製剤にあっては酸化防止剤を併用することができる。
以下に本発明の具体的な実施例を示すが、本発明の技術範囲は実施例に限定されるものではない。
(調製例1)
ペリルアルデヒド(和光純薬工業株式会社製品)、95%シトラール(シグマアルドリッチジャパン株式会社製品)、シトロネラール(和光純薬工業株式会社製品)、99%アニスアルデヒド(東京化成工業株式会社製品)、98%シンナムアルデヒド(東京化成工業株式会社製品)、98%バニリン(東京化成工業株式会社製品)、98%ベンズアルデヒド(和光純薬工業株式会社製品)、以上7点のアルデヒド各々に陰イオン界面活性剤である80%ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテルサルフェート(東邦化学株式会社製品、ソルポール T−10SPG 以下T−10SPGと記す)及びエタノール(キシダ化学株式会社製品)を加え、下記表1に示す重量比の乳剤を調製した。また、対照としてアルデヒドを含まない白試料も下記表2に示す通り調製した。
Figure 2017193525
Figure 2017193525
(調製例2)
98%シンナムアルデヒドに、陰イオン界面活性剤であるT−10SPG、もしくは脂肪酸塩であるラウリン酸ジエタノールアミン(98%ラウリン酸 東京化成工業株式会社製品、99%ジエタノールアミン 東京化成工業株式会社製品、以下ラウリン酸DEAと記す)、もしくは非イオン界面活性剤であるポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(花王株式会社製品、レオドール スーパー TW−L120 以下TW―L120と記す)を加え、溶剤としてエタノール、もしくはジメチルスルホキシド(キシダ化学製品、以下DMS0と記す)を加えて、下記表3に示す重量比の乳剤を調製した。また、対照としてアルデヒドを含まない白試料を下記表4に示す通り調製した。
Figure 2017193525
Figure 2017193525
(調製例3)
98%シンナムアルデヒドに、陰イオン界面活性剤であるT−10SPG、もしくは、脂肪酸塩であるラウリン酸トリエタノールアミン(98%トリエタノールアミン 東京化成工業株式会社製品、以下ラウリン酸TEAと記す)、もしくは非イオン界面活性剤であるTW−L120を加えて、下記表5に示す重量比の乳剤を調製した。また、対照としてアルデヒドを含まない白試料も下記表5に示す通り調製した。
Figure 2017193525
(生物試験例1)
スクミリンゴガイに対する効果試験のため、500ml用のプラスチック製の容器に調製例1、処方No.1〜7による薬剤を水で100ppmの濃度に希釈した薬液で満たした。また、調製例1、処方No.B1〜B3による白試料を前述の薬剤100ppm希釈時と同様に希釈した液で満たし、スクミリンゴガイ(殻口長径が15〜25mm)5頭を放飼し、上部に空隙を残してふたをして20℃定温室内で7日間観察、調査した。比較対照薬剤としてメタアルデヒド(和光純薬工業株式会社製品)を水で100ppmの濃度に希釈した薬液を供試した。試験結果を下記表6に示す。
Figure 2017193525
(生物試験例2)
スクミリンゴガイに対する効果試験のため、500ml用のプラスチック製の容器に調製例1、処方No.1、5による薬剤を水で10、30、100ppmの濃度に希釈した薬液で満たした。また、調製例1、処方No.B1〜B3による白試料を前述の薬剤100ppm希釈時と同様に希釈した液で満たし、スクミリンゴガイ(殻口長径が15〜25mm)5頭を放飼し、上部に空隙を残してふたをして20℃定温室内で7日間観察、調査した。比較対照薬剤としてメタアルデヒド(和光純薬工業株式会社製品)を水で10、30、100ppmの濃度に希釈した薬液を供試した。試験結果を下記表7に示す。
Figure 2017193525
(生物試験例3)
スクミリンゴガイに対する効果試験のため、500mlのプラスチック製の容器に調製例1、処方No.5、調製例2、処方No.8〜10の薬剤を水で100ppmの濃度に希釈した薬液で満たした。また、調整例1及び調整例2による処方No.B1〜B9による白試料を前述の薬剤100ppm希釈時と同様に希釈した液で満たし、スクミリンゴガイ(殻口長径が15〜25mm)5頭を放飼し、上部に空隙を残してふたをして20℃定温室内で7日間観察、調査した。比較対照薬剤としてメタアルデヒド(和光純薬工業株式会社製品)を水で100ppmの濃度に希釈した薬液を供試した。試験結果を下記表8に示す。
Figure 2017193525
Figure 2017193525
(生物試験例4)
ナメクジに対する効果試験のため、調製例1及び調製例2による処方No.1〜10の薬剤を水で2500ppmに希釈した薬液を調整した。また、調製例1及び調製例2による処方No.B1〜B9の白試料を前述の薬剤2500ppm希釈時と同様に希釈調整した。プラスチックシャーレ(直径9cm×高さ1cm)に体長4〜5cmのチャコウラナメクジを1頭入れ、調整した各々の薬液を小型ガラススプレーを用いて、各1回ずつチャコウラナメクジのいるシャーレ全体に噴霧した。噴霧量は1シャーレ当たり1.2mlであった。噴霧後ふたをして20℃定温室内で7日間観察調査した。各薬剤は3反復で実施した。対照薬剤として、メタアルデヒド水和剤(メタアルデヒド0.3%、商品名:ナメトックス液 原液散布)及び天然系置換フェノールと銅化合物の混合液剤(商品名:ナメ退治シャワー 住友化学園芸)を用いて同様に噴霧試験を行った。試験結果を下記表9に示す。
Figure 2017193525
Figure 2017193525
(生物試験例5)
ナメクジに対する効果試験のため、調製例3による処方No.11〜13の薬剤を水で250、500、1000、1500、3000ppmに希釈した薬液を調整した。また、調製例1及び調製例3による処方No.B1、B10〜B12の白試料を前述の薬剤3000ppm希釈時と同様に希釈調整した。プラスチックシャーレ(直径9cm×高さ1cm)に体長4〜5cmのチャコウラナメクジを1頭入れ、調整した各々の薬液を小型ガラススプレーを用いて、各1回ずつチャコウラナメクジのいるシャーレ全体に噴霧した。噴霧量は1シャーレ当たり1.2mlであった。噴霧後ふたをして20℃定温室内で7日間観察調査した。各薬剤は3反復で実施した。対照薬剤として、生物試験例4と同様にメタアルデヒド水和剤及び天然系置換フェノールと銅化合物の混合液剤を用いて同様に噴霧試験を行った。試験結果を下記表10に示す。
Figure 2017193525
Figure 2017193525
以上の結果、テルペン系、もしくはフェニルプロパノイド系に分類され、かつアルデヒド基を有する化合物の軟体動物に対する防除効果が明らかになった。

Claims (6)

  1. テルペン系、もしくはフェニルプロパノイド系に分類され、かつアルデヒド基を有する化合物の少なくとも1種を有効成分として含有する軟体動物防除剤。
  2. テルペン系に分類され、かつアルデヒド基を有する化合物がペリルアルデヒド、シトラール、シトロネラールの中から選択される少なくとも1種を有効成分として含有する軟体動物防除剤。
  3. フェニルプロパノイド系に分類され、かつアルデヒド基を有する化合物がアニスアルデヒド、シンナムアルデヒド、バニリン、ベンズアルデヒドの中から選択される少なくとも1種を有効成分として含有する軟体動物防除剤。
  4. 非イオン系界面活性剤としてポリオキシエチレン糖脂肪酸エステル、グリセリンモノ脂肪酸エステル、糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルの中から選択される少なくとも1種を使用する請求項1、請求項2及び請求項3に記載の軟体動物防除剤。
  5. 陰イオン界面活性剤としてリン脂質、脂肪酸塩の中から選択される少なくとも1種を使用した請求項1、請求項2及び請求項3に記載の軟体動物防除剤。
  6. テルペン系、もしくはフェニルプロパノイド系に分類され、かつアルデヒド基を有する化合物を有効成分として用いる軟体動物の防除方法。
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