以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。本実施形態では、本発明に係る旋回駆動装置として、監視カメラ及びステージ装置を取り上げることとする。但し、本発明に係る旋回駆動装置は、このような用途に限定されるものではない。
本発明の第1実施形態について説明する。図1(a)は、本発明の第1実施形態に係る監視カメラ100の概略構成を示す斜視図である。図1(b)は、監視カメラ100の分解斜視図である。説明の便宜上、図1(a),(b)に示すように、監視カメラ100に対して、互いに直交するX方向(X軸)、Y方向(Y軸)及びZ方向(Z軸)を定める。そして、監視カメラ100は、XY面が水平面と略平行となり、Z軸が鉛直方向と略平行となるように配置されているものとする。「略平行」とは、実質的に平行とみなすことができることをいい、厳密に平行であることを必要としないことをいう。
監視カメラ100は、振動型アクチュエータ101a,101b、カメラ本体110(第1の回転体(撮像装置))、旋回枠体120(第2の回転体)及び基台部130を備える。カメラ本体110は、レンズ部111、2つの取付部112及び2つの第1の回転シャフト部113を有する。旋回枠体120は、第2の回転シャフト部122及び2カ所に設けられた第1の軸受121を有する。基台部130は、第2の軸受131及び2本のガイドピン132を有する。
カメラ本体110に設けられた2つの第1の回転シャフト部113はそれぞれ、レンズ部111の光軸L3と略直交する第1の回転軸L1(第1の軸)を中心軸とする丸棒状シャフトであり、旋回枠体120に設けられた第1の軸受121に挿入される。これにより、カメラ本体110は、旋回枠体120に対して第1の回転軸L1を中心として回転自在に軸支される。なお、第1の軸受121は、転がり軸受や滑り軸受等である。旋回枠体120の第2の回転シャフト部122は、第2の回転軸L2(第2の軸)を中心軸とした丸棒状シャフトであり、基台部130に設けられた第2の軸受131に挿入される。これにより、旋回枠体120は、基台部130に対して第2の回転軸L2を中心として回転自在に軸支される。なお、第2の軸受131は、転がり軸受や滑り軸受等である。
ここで、図1に示されるように、第2の回転軸L2はZ方向と略平行であり、第1の回転軸L1と第2の回転軸L2とは略直交している。ここで、第1の回転軸L1と第2の回転軸L2とが略直交しているとは、部品誤差や組み付け誤差を考慮し、カメラ本体110のチルト駆動とパン駆動とが独立して可能な角度で交差していることを指し、厳密に直交していることを必要としないことをいう。レンズ部111の光軸L3と第1の回転軸L1とが略直交することも、同様に定義される。
基台部130に対してカメラ本体110と旋回枠体120は一体的に第2の回転軸L2回りに回転自在であり、旋回枠体120に対してカメラ本体110は、第1の回転軸L1回りに回転自在となっている。前述の通り、本実施形態では、Z方向を鉛直方向と略平行な方向としているため、第2の回転軸L2は鉛直方向と略平行であり、第1の回転軸L1は水平方向と略平行である。そこで、以下の説明では、適宜、第1の回転軸L1回りにカメラ本体110を回転させる駆動をチルト駆動といい、第2の回転軸L2回りにカメラ本体110と旋回枠体120とを一体的に回転させる駆動をパン駆動という。
監視カメラ100が図1(a)に示すように第1の回転軸L1がY方向と略平行な状態にあるときにX方向から見て、2つの取付部112は、カメラ本体110において、第2の回転軸L2を中心としてY方向で実質的に対称となる位置に設けられている。第1の回転シャフト部113が第1の軸受121に軸支されることによりカメラ本体110が旋回枠体120に支持された状態で、2つの取付部112は旋回枠体120とは接触していない。2つの取付部112はそれぞれ、連結部材の一例である自在継手105(図2参照)を介して、振動型アクチュエータ101a,101bのそれぞれの被駆動体103(図3参照)に連結される。基台部130に設けられた2本のガイドピン132は、後述するように、振動型アクチュエータ101a,101bを支持する役割を担う。
図2は、監視カメラ100の側面図であり、ホームポジションにある状態を示している。ホームポジションは、パン駆動の回転角度(以下「パン角度」という)とチルト駆動の回転角度(以下「チルト角度」という)がそれぞれ0度である状態を指す。よって、ホームポジションでは、第1の回転軸L1はY方向と略平行であり、且つ、レンズ部111の光軸L3はX方向と略平行となっている。ホームポジションでは、Y方向から見て、一方の振動型アクチュエータ101aの被駆動体103とカメラ本体110の一方の取付部112とを連結する自在継手105のコマ部105bの中心が、第2の回転軸L2上に位置する。このことは、他方の振動型アクチュエータ101b(図2には不図示)についても同様である。自在継手105の詳細については後述する。
図3(a)は、振動型アクチュエータ101aの概略構成を示す分解斜視図である。振動型アクチュエータ101a,101bは共に同じ構造を有するため、振動型アクチュエータ101bについての説明は省略する。振動型アクチュエータ101aは、振動体102、被駆動体103及び支持部材104を有する。振動体102は、弾性体102b、固定部102d、弾性体102bの一方の面に設けられた2つの突起部102c、弾性体102bにおいて突起部102cが設けられている面の反対側の面に設けられた圧電素子102aを有する。ここでは、振動体102として、2つの突起部102cで被駆動体103を摩擦駆動する構成を取り上げるが、被駆動体103を摩擦駆動するためには突起部102cは少なくとも1つあればよい。
弾性体102bは、略矩平板状の形状を有し、例えば、マルテンサイト系のステンレス等の金属材料からなる。振動体102を支持部材104に固定するための固定部102dは、弾性体102bと一体的に振動体102の長手方向端に設けられている。突起部102cは、ばね性を有する厚さ(高さ)で形成されており、例えば、弾性体102bを構成する板材のプレス加工等によって弾性体102bと一体的に形成されている。但し、突起部102cは、これに限らず、溶接等によって弾性体102bに固定されていてもよい。突起部102cの先端部(上面)は、被駆動体103の摺動部103aと摩擦摺動するため、少なくとも突起部102cには、耐摩耗性を高めるために焼入処理等の硬化処理が施されている。
電気−機械エネルギー変換素子である圧電素子102aは、接着剤を用いて弾性体102bに接合されている。圧電素子102aは、矩形平板状の圧電セラミックスの両面に所定形状の電極が形成された構造を有する。圧電素子102aの電極には、不図示のフレキシブル配線板等を介して、所定の周波数の駆動電圧(交流電圧)が印加される。これにより、振動体102に後述する第1の振動モードと第2の振動モードの振動が励起され、2つの突起部102cを結ぶ方向と突起部102cの突出方向とを含む面内で、突起部102cに楕円運動を生じさせることができる。突起部102cの楕円運動によって被駆動体103は摩擦駆動され、被駆動体103と振動体102とを相対的にX方向に移動させることができる。本実施形態では、後述するように、振動体102は、支持部材104に支持されてX方向に移動することができないため、被駆動体103がX方向に移動する。なお、X方向は、第1の回転軸L1及び第2の回転軸L2の両方と略直交する第3の軸の軸方向(軸が延びる方向)である。
被駆動体103は、ステンレス等の金属材料からなり、略丸棒状の形状を有する。被駆動体103において、振動体102の2つの突起部102cとの摩擦摺動面である摺動部103aは平面状に形成されており、長手方向の一端には自在継手105と連結される連結部103bが設けられている。摺動部103aは、丸棒状部材の側面(曲面)をプレス加工や切削加工等により平坦にし、平滑な面となるようにラップ加工等を施すことにより形成することができる。また、摺動部103aには、窒化処理等の硬化処理が施されており、耐摩耗性が高められている。振動体102と被駆動体103とは、被駆動体103に内蔵される等して設けられた不図示のネオジウム磁石やフェライト磁石等の磁石による磁力(吸引力)により、所定の加圧力でZ方向において振動体102(突起部102c)と加圧接触している。
支持部材104は、支持部104aとガイド溝部104bを有しており、振動体102の固定部102dが支持部104aに対して溶接や接着等により接合されている。支持部104aはZ方向に突出した形状を有しており、振動振幅の小さい振動体102の固定部102dのみを安定して固定する。これにより、振動体102に励起された振動の基台部130への伝搬を抑制することができると共に、振動体102を支持部材104に固定したことによって振動体102での振動の励起が阻害されてしまうことを抑制することができる。
支持部材104のガイド溝部104bは、X方向において2つの突起部102cの中間に位置しており、Y方向に略平行に伸びた長穴形状を有する。ガイド溝部104bへは、基台部130にZ方向に突出するように形成されたガイドピン132が挿通される。ガイドピン132の外径とガイド溝部104bのX方向の幅は、ガイドピン132に対して支持部材104がY方向には移動可能であるがX方向では移動不可能となる寸法公差(はめあい公差)に設定されている。したがって、支持部材104は、ガイドピン132によってX方向での移動は規制されているが、Y方向とZ方向には移動が可能となっている。よって、支持部材104に接合された振動体102も、基台部130に対してX方向での移動が規制される一方で、Y方向及びZ方向へは移動可能となっており、このような構成としている理由については後述する。
自在継手105は、所謂、ユニバーサルジョイントであり、コマ部105bにおいて、Y軸回りとZ軸回りにそれぞれ回転可能な構造を有している。自在継手105の長手方向端にはそれぞれ、取付穴部105aが設けられている。一方の取付穴部105aは、被駆動体103に設けられている連結部103bと嵌合し、これにより、自在継手105は被駆動体103に連結される。自在継手105の他方の取付穴部105aは、カメラ本体110の取付部112に固定される。こうして、自在継手105を介して、カメラ本体110の取付部112と被駆動体103とが連結される。なお、自在継手105と被駆動体103或いは取付部112との連結は、接着や焼嵌め、ピン等を用いて行ってもよい。
続いて、振動型アクチュエータ101aの駆動(被駆動体103のX方向での駆動)に用いられる固有振動モードについて説明する。図3(b)は、振動型アクチュエータ101aを駆動するために振動体102に励起させる第1の振動モードを説明する斜視図である。図3(c)は、振動型アクチュエータ101aを駆動するために振動体102に励起させる第2の振動モードを説明する斜視図である。なお、図3(b),(c)では、変形形状の理解を容易にするために、振動体102の形状に比べて変位量が拡大されて表示されている。図3(b),(c)に示したX,Y,Z方向はそれぞれ、図2や図3(a)でのX,Y,Z方向と同じ方向となっている。
第1の振動モードは、X方向において2次の屈曲振動を生じるモードであり、Y方向と略平行な3本の節を有し、突起部102cは、第1の振動モードの振動によりX方向で往復運動を行う。このとき、突起部102cを第1の振動モードの振動で節となる位置の近傍に設けることにより、突起部102cをX方向で大きく変位させることができる。第2の振動モードは、Y方向において1次の屈曲振動を生じるモードであり、X方向と略平行な2本の節を有し、突起部102cは、第2の振動モードの振動によりZ方向で往復運動を行う。このとき、突起部102cが第2の振動モードの振動で腹となる位置の近傍に設けることにより、突起部102cをZ方向で大きく変位させることができる。なお、振動体102の固定部102dは、第1の振動モードの振動振幅が小さくなる節の近傍で、且つ、第2の振動モードの振動振幅が小さくなる節の近傍で、支持部104aに固定されている。
第1の振動モードと第2の振動モードとを組み合わせることにより、突起部102cの先端部に略ZX面内で楕円運動を発生させ、これにより、略X方向に被駆動体103を摩擦駆動する駆動力を発生させることができる。このとき、2つの突起部102cがそれぞれ、第1の振動モードの節の位置、且つ、第2の振動モードの腹の位置に設けられていることで、突起部102cの振動変位を最も大きくすることができるため、高い出力を得ることができる。
次に、監視カメラ100でチルト駆動及びパン駆動を行う際の振動型アクチュエータ101a,101bの駆動方法について説明する。ここでは、便宜上、チルト角度のみを±30度とした場合と、パン角度のみを±30度とした場合について説明するが、チルト角度及びパン角度はこれに限定されるものではない。監視カメラ100においてパン角度及びチルト角度が0度となっているとき(ホームポジションにあるとき)の監視カメラ100の状態は、図1(a)及び図2に示されている。
図4は、監視カメラ100をチルト駆動させた状態を示す斜視図である。図4(a)は、ホームポジションからチルト角度のみを−30度駆動した監視カメラ100の状態を示している。振動型アクチュエータ101a,101bのそれぞれの被駆動体103を、X方向のプラスの向きである矢印M2の向きに同じ移動量だけ駆動すると、カメラ本体110の2つの取付部112はそれぞれ、被駆動体103から矢印M2の向きに力を受ける。取付部112が第1の回転軸L1から一定の距離だけ離れているため、矢印M2の向きの力は、取付部112に対して第1の回転軸L1回りのモーメントとして作用する。一方、前述の通り、ホームポジションにある監視カメラ100をX方向から見たときに、2つの取付部112は第2の回転軸L2を中心としてY方向で実質的に対称となる位置に設けられている。そのため、2つの取付部112に作用する矢印M2の向きの力による第2の回転軸L2回りのモーメントは打ち消し合い、したがって、旋回枠体120が第2の回転軸L2回りに回転することはない。よって、2つの被駆動体103を矢印M2の向きに同時に同じ移動量で駆動することにより、カメラ本体110を第1の回転軸L1回りに回転させて、図4(a)に示すようにカメラ本体110をチルト角度のみが−30度となった状態とすることができる。
なお、チルト角度が0度から−30度へ変化する間、自在継手105のコマ部105bはY軸回りに回転し、これに伴って取付部112はX方向のプラスの向きへ移動しながらZ方向のプラスの向きに移動するように第1の回転軸L1回りに回動する。ここで、振動体102は被駆動体103に対して磁力で吸引されているため、カメラ本体110のチルト駆動に伴い、基台部130に対して振動体102と支持部材104とが一体的にガイドピン132の突出方向(Z方向のプラスの向き)に移動する。このとき、支持部材104のX方向での移動は規制されているため、振動型アクチュエータ101a,101bの駆動は安定した状態で維持される。
図4(b)は、ホームポジションからチルト角度のみを+30度駆動した監視カメラ100の状態を示している。振動型アクチュエータ101a,101bのそれぞれの被駆動体103を、X方向のマイナスの向きである矢印M1の向きに同じ移動量だけ駆動すると、カメラ本体110の2つの取付部112はそれぞれ、被駆動体103から矢印M1の向きに力を受ける。このとき、先述のチルト角度を−30度としたチルト駆動の場合と同様に、カメラ本体110には第1の回転軸L1回りのモーメントが作用するが、旋回枠体120には第2の回転軸L2回りのモーメントは発生しない。よって、2つの被駆動体103を矢印M1の向きに同時に同じ移動量で駆動することにより、カメラ本体110を第1の回転軸L1回りに回転させて、図4(b)に示すようにカメラ本体110をチルト角度のみが+30度となった状態とすることができる。
なお、チルト角度が0度から+30度へ変化する間、自在継手105のコマ部105bはY軸回りに回転し、取付部112はX方向のマイナスの向きへ移動しながらZ方向のプラスの向きに移動するように、第1の回転軸L1回りに回動する。よって、チルト角度が−30度になるように駆動した場合と同様に、支持部材104と振動体102は、カメラ本体110のチルト駆動に伴い、一体的にZ方向のプラスの向きに移動する。
図5は、監視カメラ100をパン駆動させた状態を示す斜視図である。図5(a)は、ホームポジションからパン角度のみを−30度駆動した監視カメラ100の状態を示している。一方の振動型アクチュエータ101aを、その被駆動体103が矢印M1の向き(X方向のマイナスの向き)に移動するように駆動する。また、他方の振動型アクチュエータ101bを、その被駆動体103が矢印M2の向き(X方向のプラスの向き)に移動するように駆動する。すると、カメラ本体110の2つの取付部112はそれぞれ、振動型アクチュエータ101a,101bのそれぞれの被駆動体103から矢印M1,M2の向きの力を受ける。こうして2つの取付部112に作用する力は、カメラ本体110及び旋回枠体120を第2の回転軸L2回りに回転駆動するモーメントとなるが、第1の回転軸L1回りでは、互いに打ち消し合うモーメントとなる。したがって、振動型アクチュエータ101a,101bのそれぞれの被駆動体103を矢印M1,M2の向きに同じ移動量だけ駆動することにより、図5(a)に示すようにカメラ本体110をパン角度のみが−30度となった状態とすることができる。
なお、パン角度が0度から−30度に変化する間、自在継手105のコマ部105bはZ軸回りに回転する。また、振動型アクチュエータ101aの被駆動体103はY方向をプラスの向きに移動し、振動型アクチュエータ101bの被駆動体103はY方向をマイナスの向きに移動する。ここで、振動体102は被駆動体103に対して磁力で吸引されており、振動型アクチュエータ101a,101bのそれぞれの支持部材104は、基台部130に対してY方向に移動自在である。そのため、カメラ本体110のパン駆動に伴い、振動体102と支持部材104は一体となってY方向を互いに近付くように移動する。このとき、支持部材104のX方向での移動は規制されているため、振動型アクチュエータ101a,101bの駆動は安定した状態で維持される。
図5(b)は、ホームポジションからパン角度のみを+30度駆動した監視カメラ100の状態を示している。パン角度のみを+30度駆動する場合には、振動型アクチュエータ101a,101bのそれぞれの被駆動体103を駆動する向きを、パン角度のみを−30度駆動した場合と逆にすればよい。つまり、振動型アクチュエータ101aの被駆動体103を矢印M2の向きに、振動型アクチュエータ101bの被駆動体103を矢印M1の向きに、それぞれ同じ移動量だけ駆動すればよい。これにより、図5(b)に示すようにカメラ本体110をパン角度のみが+30度となった状態とすることができる。なお、パン角度が0度から+30度に変化する間、自在継手105のコマ部105bはZ軸回りに回転し、振動型アクチュエータ101a,101bのそれぞれの被駆動体103はY方向を互いに近付くように移動する。これに伴い、振動体102と支持部材104は一体となってY方向を互いに近付くように移動する。
図4を参照して説明した通り、監視カメラ100では、振動型アクチュエータ101a,101bのそれぞれの被駆動体103をX方向の同じ向きに同じ移動量だけ駆動することにより、チルト駆動のみを実現することができる。そして、図5を参照して説明したように、監視カメラ100では、振動型アクチュエータ101a,101bのそれぞれの被駆動体103をX方向の反対向きに同じ移動量だけ駆動することにより、パン駆動のみを実現することができる。監視カメラ100の駆動態様は、このようにチルト駆動とパン駆動とを独立させて実行する駆動に限定されるものではない。即ち、振動型アクチュエータ101a,101bのそれぞれの被駆動体103の移動量と移動の向きを調節することにより、パン駆動とチルト駆動を同時に実現して、レンズ部111の光軸L3を所望する方向へ向けることが可能である。
以上の説明の通り、監視カメラ100では、振動型アクチュエータ101a,101bの協調駆動により、カメラ本体110のチルト駆動とパン駆動を実現している。つまり、従来の監視カメラのように、一方のアクチュエータによるパン駆動に伴って他方のアクチュエータをカメラ本体と共にパン方向に回転させる構成となっていない。そのため、振動型アクチュエータ101a,101bには大きなトルクが不要となることで、監視カメラ100全体の小型化が可能になる。また、パン駆動時のイナーシャを低減することができることで、カメラ本体110の位置決め(角度調整)精度や応答性等の制御性を向上させることができる。更に、チルト駆動とパン駆動の際に振動型アクチュエータ101a,101bが分担するトルクは、1つの振動型アクチュエータでチルト駆動やパン駆動を行う場合の略半分となる。よって、チルト駆動とパン駆動をそれぞれ別のアクチュエータで駆動する構成に比べて、振動型アクチュエータ101a,101bの小型化が可能であり、ひいては監視カメラ100の更なる小型化が可能となる。
監視カメラ100では、チルト駆動とパン駆動の際に振動型アクチュエータ101a,101bが相互に動作を阻害することなく協調して動作するため、球体状の被駆動体を回転駆動する従来の構造のように摩擦力を低減させための動作を実行させる必要がない。よって、振動型アクチュエータ101a,101bのそれぞれの振動体102(圧電素子102a)へは、カメラ本体110の駆動にのみ必要な電力を供給すればよいため、消費電力を抑えることができる。また、監視カメラ100では、振動型アクチュエータ101a,101bは、チルト駆動とパン駆動の際のY方向及びZ方向へのそれぞれの移動量が、基台部130に対して小さく抑えられる。そのため、パン駆動によってパン駆動軸回りに振動型アクチュエータが回転する構成で必要となるスリップリングを用いる必要はなく、フレキシブル配線板等を用いた簡単な構成で振動体102への給電が可能となることで、監視カメラ100の小型化が可能となる。更に、監視カメラ100では、振動体102を固定する支持部材104にガイド溝部104bを設けて振動体102と支持部材104とを一体的にY方向及びZ方向に移動可能な構成としている。これにより、振動型アクチュエータとは別にガイド部材を設ける等した場合と比べて部品点数を削減することができ、ひいては、監視カメラ100の小型化と軽量化が可能となる。
監視カメラ100では、振動型アクチュエータ101a,101bを構成する被駆動体103の摺動部103aを平坦な形状としているため、被駆動体が球体のように高精度で複雑な加工が必要となる場合に比べて、生産性の向上とコストの低減が可能となる。また、監視カメラ100では、被駆動体103をX方向に駆動するリニア型の振動型アクチュエータ101a,101bを用いている。そのため、DCモータやステッピングモータ等の回転型モータの回転出力をボールねじやギア等を用いて直線的な出力に変換する場合に比べて構造を簡素化することができ、これにより、監視カメラ100の軽量化が可能となる。そして、ボールねじやギア等を用いないためにバックラッシュ等が発生せず、カメラ本体110を直接駆動することで、カメラ本体110の高精度な位置決めや応答性の高い制御が可能となる。このとき、監視カメラ100では、ボールねじやギア等の駆動音(噛み合う音)が発生しないため、静粛な動作が可能となる。
振動型アクチュエータ101a,101bは、摩擦力を利用して被駆動体103を駆動しているために保持力を有している。そのため、振動体102(圧電素子102a)に対する無通電時に予期せぬ外力が監視カメラ100に作用しても、カメラ本体110や旋回枠体120が動いてしまうのを抑制することができる。特に、監視カメラ100では、2つの振動型アクチュエータ101a,101bがカメラ本体110と連結されている。そのため、チルト回転又はパン回転の一方の回転方向にのみ外力が作用する場合の保持力は、1方向の回転に1つのアクチュエータを用いる場合の2倍となることで、外力に対してカメラ本体110を保持する高い効果を有する。よって、監視カメラ100では、DCモータ等を駆動源として構成される監視カメラで必要となるブレーキ等が不要になり、これにより、装置全体の更なる小型化や軽量化が可能となる。
ここで、監視カメラ100の変形例の1つであるステージ装置について説明する。図6は、ステージ装置200の概略構成を示す斜視図である。ステージ装置200は、振動型アクチュエータ201a,201b、ステージ210、旋回枠体220及び基台部230を備える。ステージ装置200は、第1実施形態に係る監視カメラ100のカメラ本体110をステージ210に取り替えた構造を有する。よって、振動型アクチュエータ201a,201b、旋回枠体220及び基台部230はそれぞれ、振動型アクチュエータ101a,101b、旋回枠体120及び基台部130と同じ構造を有しており、これらについての共通する説明は省略する。
ステージ210は、平板状に形状を有し、その表面には複数箇所にねじ穴部214が設けられている。複数のねじ穴部214を用いて、様々な形状や大きさの被駆動部材をステージ210に取り付けることができる。これにより、ステージ装置200の汎用性を高めることができる。例えば、ステージ装置200は、デジタルカメラ等の撮像装置を固定する雲台として用いることができる。また、ステージ装置200を用いれば、ステージ210にカメラを取り付けて監視カメラとする場合でも、基台部230の実際の取付位置に応じてカメラの光軸の方向を変更することができ、よって、ニーズに応じた監視カメラを実現することができる。
ところで、監視カメラ100では、自在継手105としてコマ部105bがY軸とZ軸のそれぞれの軸回りに回転可能なものを用いたが、カメラ本体110の取付部112と被駆動体103の連結構造はこれに限定されるものではない。例えば、自在継手105においてY軸回りの回転可能であると共にY方向に移動可能な構成とし、支持部材104においてZ軸回りに回転可能であると共にZ方向に移動可能な構成としてもよい。つまり、パン駆動とチルト駆動とを独立して行うことができる限りにおいて、カメラ本体110の取付部112と振動型アクチュエータ101a,101bとの連結は、どのような自由度で構成されていてもよい。そして、自在継手105は、ユニバーサルジョイントに限定されず、必要な自由度が得られるなら、継手形状や溝形状であってもよい。
また、監視カメラ100では、基台部130に設けられたガイドピン132と支持部材104に設けられたガイド溝部104bとの係合により、振動体102と支持部材104とが一体的にY方向とZ方向の各方向に移動可能とした。しかし、これに限らず、支持部材104がZ方向のみに移動可能となるようにガイド溝部104bを設計すると共に、被駆動体103がY方向で移動しても振動体102による摩擦駆動が常に可能となるように被駆動体103の幅を広げた構成としてもよい。
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図7(a)は、本発明の第2実施形態に係る監視カメラ300の概略構成を示す斜視図である。監視カメラ300は、振動型アクチュエータ301a,301b、レンズ部311及び取付部312を有するカメラ本体310、旋回枠体320及び基台部330を備える。監視カメラ300が備えるカメラ本体310、旋回枠体320及び基台部330は、第1実施形態に係る監視カメラ100が備えるカメラ本体110、旋回枠体120及び基台部130と同じであり、よって、これらの説明を省略する。
図7(b)は、監視カメラ300を構成する振動型アクチュエータ301a及びその周辺部の概略構成を示す分解斜視図である。なお、振動型アクチュエータ301a,301bは同じ構造を有するため、振動型アクチュエータ301bについての説明は省略する。振動型アクチュエータ301aは、振動体302及び被駆動体303を有する。振動体302は、第1実施形態で説明した振動型アクチュエータ101aを構成する振動体102と同じであるため、説明を省略する。
基台部330には、振動体302を支持する支持ばね部材304が設けられている。支持ばね部材304には、Z方向に突出した形状を有する支持部304aが設けられており、振動体302に設けられている固定部302d(振動体102の固定部102dに対応する)は、支持部304aに溶接や接着等で接合されている。第1実施形態と同様に、振動振幅の小さい固定部302dで振動体302が支持ばね部材304に固定されることにより、振動体302に励起された振動が基台部330に伝わるのを抑制することができる。また、振動体302を支持ばね部材304に固定したことによって振動体302での振動励起が阻害されてしまうことを抑制することができる。
支持ばね部材304は、Y方向とZ方向の各方向で変形可能であるが、X方向では変形し難いばね定数を有する形状に設計された弾性部材である。そのため、支持ばね部材304に結合された振動体302は、基台部330に対して、X方向での移動は規制されるが、Y方向とZ方向の各方向に移動することができるようになっている。
カメラ本体310の取付部312(カメラ本体110の取付部112に対応する)と振動型アクチュエータ301aの被駆動体303とは、連結部材の一例である球面軸受305を介して連結されている。球面軸受305は、球面部305bにおいて図中のY軸とZ軸のそれぞれの軸回りに回転可能な構造を有する。球面部305bには取付ねじ部305aが接合されており、取付ねじ部305aは被駆動体303の一端に設けられた連結ねじ穴部303bと嵌合し、これにより球面軸受305は被駆動体303に連結される。
被駆動体303は、磁石303cと、振動体302との摩擦摺動面となる摺動板303aとを有し、球面軸受305と連結される連結ねじ穴部303bは磁石303cに設けられている。摺動板303aには、耐摩耗性を高めるために、窒化処理等の硬化処理が施されており、磁石303cに対して接着剤を用いて接合されている。磁石303cと振動体302を構成する弾性体及び支持ばね部材304との間に作用する吸引力によって、振動体302と被駆動体303は所定の加圧力で接触している。
第1実施形態に係る監視カメラ100と同様に、監視カメラ300でも、振動型アクチュエータ301a,301bのそれぞれの被駆動体303をX方向の所定の向きに所定の移動量だけ駆動することにより、カメラ本体310のチルト駆動とパン駆動が実現される。振動体302は、チルト駆動の際にはZ方向に被駆動体303から力を受けるが、このとき、支持ばね部材304がX方向での変形が抑制された状態でZ方向に変形することで、振動体302と被駆動体303との間を安定した接触状態に維持することができる。また、振動体302は、パン駆動の際にはY方向に被駆動体303から力を受けるが、このとき、支持ばね部材304がX方向での変形が抑制された状態でY方向に変形することで、振動体302と被駆動体303との間を安定した接触状態に維持することができる。したがって、監視カメラ300が、第1実施形態に係る監視カメラ100が奏する効果と同等の効果を奏する。
なお、監視カメラ300では、磁石303cを用いて振動体302と被駆動体303とを加圧接触させているが、振動体302と被駆動体303とを加圧接触させる方法は、これに限定されるものではない。図8は、振動体302と被駆動体303´とを加圧接触させる別の概略構成を説明する図(側面図)である。図8の例では、加圧部材306を用いて振動体302と被駆動体303´とを加圧接触させている。ここで、被駆動体303に代えて示す被駆動体303´には磁石は用いられていない。被駆動体303´には、例えば、振動型アクチュエータ101aの被駆動体103と同じ材料が用いられ、そのため、被駆動体303´には摺動板303aが接合されていない。
加圧部材306は、加圧ばね306a、加圧受け部材306b及び従動部306cを有する。加圧ばね306aは、コイルばね等であり、振動体302と被駆動体303´とが所定の加圧力で接触可能なばね定数を有する。加圧受け部材306bは、加圧ばね306aからの加圧力を受けて、従動部306cを介して被駆動体303´を振動体302に対して押し付けている。被駆動体303´と接触する従動部306cは、球状体であり、加圧受け部材306bに回転自在に支持されている。よって、被駆動体303´がどの方向に移動しても、被駆動体303´に対して加圧を付与し続けることができ、磁石を用いないことによってコストの低減が可能となる。
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて詳述してきたが、本発明はこれら特定の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。更に、上述した各実施形態は本発明の一実施形態を示すものにすぎず、各実施形態を適宜組み合わせることも可能である。