以下、図面を参照して、本発明のアンテナ装置の実施形態について説明する。
なお、以降の説明では、車体1の前進方向(図1におけるy軸正方向)を「前方向」と称し、その後進方向(図1におけるy軸負方向)を「後方向」と称する。また、車体1の右手方向(図1におけるx軸正方向)を「右方向」と称し、車体1の左手方向(図1におけるx軸負方向)を「左方向」と称する。また、車体1のシャシーからルーフへと向かう方向(図1におけるz軸正方向)を「上方向」と称し、車体1のルーフからシャシーへと向かう方向(図1におけるz軸負方向)を「下方向」と称する。また、左方向及び右方向を、向きを区別せずに指すとときには、「左右方向」といい、上方向及び下方向を、向きを区別せずに指すときには、「上下方向」という。
また本明細書の各実施形態において、ルーフの後端に配置されるスポイラーを筐体とする車載用アンテナ装置について説明するが、本発明はこれに限定されない。すなわち、本発明は、ルーフの前端、右端、又は左端に配置される車載用アンテナ装置にも適用することができる。
〔第1の実施形態〕
図1及び図2を参照して、本発明の第1の実施形態に係る車載用アンテナ装置10について説明する。
〔車載用アンテナ装置10の搭載例〕
初めに図1を参照して、本発明の第1の実施形態に係る車載用アンテナ装置10の車体1への搭載例について説明する。図1の(a)は、本実施形態に係る車載用アンテナ装置10を搭載した車体1の外観を示す斜視図である。図1の(b)は、本実施形態に係る車載用アンテナ装置10を搭載した車体1の一部を拡大した平面図である。具体的には、車体1が搭載する車載用アンテナ装置10を拡大した平面図である。
図1の(a)に示す車体1は、ハッチバック型の車体である。車体1において、ルーフ20を含む外板(ボディパネル)は、鋼板及びアルミ板などの金属部材によって構成され、ルーフ20がなす面は略水平である。すなわち、ルーフ20は水平面に沿って形成され車体1の上下方向と交わっている。本明細書の各実施形態において、ルーフに沿う方向は水平面に沿う方向と同義であり、ルーフに交わる方向は水平面に交わる方向と同義である。本実施形態に係る車載用アンテナ装置10は、スポイラー16を筐体とする車載用アンテナ装置であり、ルーフ20の後端に搭載される。
図1の(b)に示すように、車体1のハッチゲート21は、その下部を構成するハッチゲートパネル21aと、その上部を構成する枠体21cと、リヤガラス21bと、により構成されている。枠体21cは、一対の縦柱と一対の横柱とによって構成されており、その枠内にリヤガラス21bが設けられている。枠体21cの一対の横柱のうちルーフ20に近接する側(上側)の横柱は、図示しないヒンジによってルーフ20の後端に取り付けられている。リヤガラス21bは、運転手からの後方視界を確保すると共に、ウィンドシールドとしても機能する。ハッチゲートパネル21a及び枠体21cは、金属部材によって構成されている。
枠体21cの一対の横柱のうち上側の横柱の一部には、スポイラー固定部21d(特許請求の範囲に記載のアンテナ装置固定部)が設けられている。枠体21cの上側の横柱の一部を後方に迫り出させ、このせり出させた部分をスポイラー固定部21dとして用いる(図2の(a)参照)。スポイラー固定部21dは、枠体21cと同様に金属部材により構成されている。スポイラー固定部21dのスポイラー16が取り付けられる面は、ルーフ20がなす面と同様に、およそ天頂方向を向いており、水平面に沿っている。したがって、スポイラー固定部21dは、ルーフ20の後端部を形成している。本実施形態においてスポイラー固定部21dは、枠体21cと一体に形成された金属部材であるが、枠体21cとは別体に成形され枠体21cにボルト等によって固定された金属部材であってもよい。
スポイラー固定部21dには、図示しない固定手段(例えばボルト等)によってスポイラー16が取り付けられている。スポイラー固定部21dに固定されることによって、スポイラー16の上面とルーフ20全体の上面とが略面一に並ぶ。スポイラー16は、車体1の美観を向上させる、車体1の空力特性を改善するなどの機能を有するほかに、本発明では、車載用アンテナ装置10の筐体として機能する。スポイラー16には、アンテナ11とストップランプ19とが内蔵されている。スポイラー16は、誘電体(例えば樹脂等)からなり、電磁波を透過する。
アンテナ11は、スポイラー16の内部のストップランプ19に干渉しない位置に配置されている。具体的には、スポイラー16の左右方向の中心に配置されたストップランプ19を避けて、アンテナ11は、ストップランプ19の左側にずらして配置されている。
〔車載用アンテナ装置10〕
車載用アンテナ装置10の構成について、図2を参照して具体的に説明する。図2は、本実施形態に係る車載用アンテナ装置10の構成を示す。図2の(a)は、車載用アンテナ装置10を搭載する車体1の一部を拡大した矢視断面図であり、図1の(b)に示したA−A’線に沿う矢視断面図である。図2の(b)は、車載用アンテナ装置10が備えているアンテナ11を平面に展開した展開図である。
図2の(a)に示すように、車載用アンテナ装置10は、スポイラー16の内部に、アンテナ11が折り曲げられた状態で載置されるように構成されている。スポイラー16にアンテナ11を固定する固定手段の例としては、粘着シート、両面テープや樹脂製のファスナー等が挙げられる。固定手段は、限定されるものではないが、電磁波の送信及び受信を妨げないために導体ではないものからなることが好ましい。アンテナ11の具体的な折り曲げ方などについては、図2の(b)を参照しながら後述する。
〔アンテナ11〕
アンテナ11は、誘電体基板と、当該誘電体基板の表面に形成された放射素子と、図示しない同軸線と放射素子とを接続する接続する接続部とを備えている。本実施形態では、上記誘電体基板として、誘電体フィルム12を採用している。誘電体フィルム12を構成する材料としては、例えばポリイミド樹脂が挙げられるが、これに限定されない。このように構成されたアンテナ11は、フィルムアンテナとも見做せるし、FPC(Flexible printed circuits)基板とも見做せる。
図2の(b)の例では、誘電体フィルム12の表面に、第1の放射素子14及び第2の放射素子15からなる放射素子が形成されている。第1の放射素子14及び第2の放射素子15は、導体からなる薄板状の部材である。例えば、第1の放射素子14及び第2の放射素子15としては、銅箔が用いられるが、これに限定されない。
接続部13は、図示しない同軸線が放射素子14,15に接続される部位であり、2つの給電点(一対の給電点)13a,13bからなる。給電点13a,13bの各々は、それぞれ、放射素子14,15の各々の表面に形成されている。接続部13には、同軸線の一方の端部が接続可能である。同軸線の他方の端部をチューナーなどの車載機器に接続することによって、車載用アンテナ装置10は、無線を送受信可能になる。
同軸線を構成する一対の導体のうち一方の導体(例えば内側導体)は、接続部13の一方の給電点である第1の給電点13aにおいて第1の放射素子14に接続されている。同軸線の他方の導体(例えば外側導体)は、接続部13の他方の給電点である第2の給電点13bにおいて第2の放射素子15に接続されている。本実施形態においては、アンテナ11としてダイポールアンテナを採用しているが、ループアンテナ、モノポールアンテナ、及び逆F型アンテナをアンテナ11として使用してもよい。また、それぞれの放射素子は、本実施形態の放射素子14,15のように面状の放射素子であってもよいし、線状の放射素子であってもよい。
アンテナ11は、図2の(b)に示すB−B’線及びC−C’線に沿って谷折りされる。その結果、外側に誘電体フィルム12が配置され、内側に放射素子14,15が配置されたU字型(あるいはコの字型)に折り曲げられたアンテナ11が形成される。図2の(a)に示すように、車載用アンテナ装置10は、U字型に折り曲げられたアンテナ11をスポイラー16の内壁に沿って固定する構成を採用している。
図2の(a)に示すように、車載用アンテナ装置10を車体1の後端に搭載したときに、アンテナ11の第1の放射素子14は、給電点13aからルーフ20に交わる方向である車体1の下方向(請求の範囲に記載の第1の方向に相当する)に引き出されており、第2の放射素子15は、給電点13bからルーフ20に交わる方向であって、車体1の下方向とは異なる方向である上方向(請求の範囲に記載の第2の方向に相当する)に引き出されている。車載用アンテナ装置10においては、第1の方向及び第2の方向がルーフ20に交わる構成を採用している。
第1の放射素子14において、給電点13aから下方向に引き出されている部分、すなわち、給電点13aに接続されている第1の放射素子14の始端(根元)から、谷折りされる線であるC−C’線までの部分を給電点近傍部14aとする。
給電点近傍部14aが給電点13aから下方向に引き出されているため、給電点近傍部14aを流れる電流の方向は、主に上下方向である。また、第1の放射素子14を流れる電流の電流密度は、第1の放射素子14の始端(給電点13aとの接続部)において最も高く、終端に近づくにしたがって低くなる。このことから、給電点近傍部14aでは、相対的に高い電流密度の電流が車体1の上下方向に流れる。その結果として、第1の放射素子14は、放射する電磁波に含まれる垂直偏波成分の割合を従来(特許文献1に記載の車載用アンテナ装置)よりも多くすることができる。
更に、垂直偏波は、水平偏波と比較した場合に、ルーフ20による減衰効果を受け難いという特性を有する。このため、第1の放射素子14を備えている車載用アンテナ装置10は、ルーフ20が金属製であっても、ルーフ20を横断する方向(ここでは前方向)に対する垂直偏波の放射利得を十分に大きくすることができる。その結果として、ルーフが金属製であっても、ルーフを横断する方向に対する電磁波の放射利得を十分に大きくすることができる。
また、給電点近傍部14aの幅W14aは、アンテナ11が放射する電磁波の最短波長の1/2以下であることが好ましい。本実施形態においては、第1の放射素子14が長方形であるため給電点近傍部14aも長方形であり、幅W14aは、給電点13aからC−C’線に至るまで一定である。給電点近傍部14aが長方形でない場合は、幅W14aの最大値がアンテナ11が放射する電磁波の最短波長の1/2以下であることが好ましい。
上記第1の放射素子14の構成によれば、給電点13aから供給された電流が、給電点近傍部14a内において、車体1の左右方向に沿って流れることを抑制し、車体1の上下方向に沿って流れることを促進する。したがって、幅W14aがアンテナ11が放射する電磁波の最短波長の1/2を上回る場合と比較して、垂直偏波の放射利得をより高めることができる。結果として、車体1の前方向に対する電磁波の放射利得を更に大きくすることができる。
第2の放射素子15において、給電点13bから上方向に引き出されている部分、すなわち、給電点13bに接続されている第2の放射素子15の始端(根元)から、谷折りされる線であるB−B’線までの部分を給電点近傍部15aとする。
車載用アンテナ装置10においては、第2の放射素子15の給電点近傍部15aは、車体1の上方向に引き出されている。このように構成された給電点近傍部15aは、車載用アンテナ装置10が放射する電磁波に含まれる垂直偏波成分の割合を更に高めることができる。
給電点近傍部14aが給電点13aから下方向に引き出され、且つ、給電点近傍部15aが給電点13bから上方向に引き出されている構成において、垂直偏波の放射利得を高めるために幅W14a及び幅W15aの各々がアンテナ11は、放射する電磁波の最短波長の1/2以下であることが好ましい。しかし、幅W14a及び幅W15aのうち何れか一方がアンテナが放射する電磁波の最短波長の1/2以下であれば、幅W14a及び幅W15aの各々がアンテナ11が放射する電磁波の最短波長の1/2を上回る場合と比較して、垂直偏波の放射利得をより高めることができる。
また、ルーフ20の後端部に配置される車載用アンテナ装置10のアンテナ11において、給電点近傍部14a、15a以外の放射素子の幅W14、W15(ルーフ20の後端辺に沿って測った放射素子の幅)も、上記アンテナが放射する電磁波の最短波長の1/2以下であることがより好ましい。ここで、第1の放射素子14の幅W14及び第2の放射素子15の幅W15の各々が異なる場合、両方の幅W14及びW15が、上記アンテナが放射する電磁波の最短波長の1/2以下であることが好ましい。
上記アンテナ11の構成によれば、給電点13aから第1の放射素子14に供給された電流、及び、給電点13bから第2の放射素子15に供給された電流の各々が車体1の左右方向に沿って流れることが抑制され、車体1の上下方向又は上下方向に沿って流れることが促進される。すなわち、第1及び第2の放射素子14,15を流れる主たる電流の方向を車体1の上下方向及び前後方向に限定することができる。その結果として、例えば、車体1の左右方向に延びる放射素子をリアガラスに貼り付けた他のアンテナが、スポイラー16を筐体とする車載用アンテナ装置10の近傍に設けられている場合であっても、アンテナ11の放射素子14,15が、他のアンテナ(車体1の左右方向に延びる放射素子)に与える、又は、他のアンテナから受ける影響を抑制することができる。
以上のように、車載用アンテナ装置10では、放射素子が一方の給電点から第1の方向に引き出され、この第1の方向がルーフに交わる方向であることから、主たる偏波成分として垂直偏波を放射することができる。垂直偏波の偏波面は、金属体であるルーフに対して交わる方向である。このことから、水平偏波と比較した場合に、垂直偏波は、車体を横断する過程において上述したルーフによる減衰効果の影響を受けづらく、放射利得をロスすることなくルーフを横断することができる。
したがって、ルーフ20の後端部に配置された車載用アンテナ装置10は、ルーフ20が金属体であっても、ルーフ20を横断する方向(前方向)への放射利得が従来よりも大きい車載用アンテナ装置を実現することができる。そのため、車載用アンテナ装置10は、LTE用の電磁波に代表される波長が短い周波数帯を利用する車載用アンテナ装置としても好適に利用することができる。すなわち、スポイラーの内部の放射素子を水平になるように配置した従来の車載用アンテナ装置では、アンテナから放射される電磁波が水平偏波を主たる偏波成分とするため、ルーフによる減衰効果の影響を受けやすく、3GやLTEなどのように地上に設置された基地局との通信を要するアンテナシステムに適用するのが困難であったが、本発明の車載用アンテナ装置では、主たる偏波成分として垂直偏波を放射することができるため、3GやLTEなどのように地上に設置された基地局との通信を要するアンテナシステムとしても好適に利用することができる。
なお、図2の(a)に示すように、第2の放射素子15のB−B’線から終端までの部分は、ルーフ20に沿う方向に配置されている。この構成によれば、車載用アンテナ装置10は、垂直偏波だけでなく水平偏波も放射することができる。
〔第2の実施形態〕
次に、図3を参照して、本発明の第2の実施形態に係る車載用アンテナ装置について説明する。図3の(a)は、本実施形態に係る車載用アンテナ装置110を搭載する車体1の一部拡大平面図である。図3の(b)は、車載用アンテナ装置110を搭載する車体1の一部を拡大した矢視断面図であって、(a)に示すL−L’線に沿う矢視断面図である。
本実施形態に係る車載用アンテナ装置10Aは、第1の実施形態に係る車載用アンテナ装置10が備えているアンテナ11とスポイラー16を、それぞれ以下に説明するスポイアンテナ11Aとスポイラー16Aに変更することによって得られる。
アンテナ11Aは、第1の実施形態に係る車載用アンテナ装置10を車体1の上方向から上面視して(図1の(b)参照)、アンテナ11を反時計回りに90度回転したうえで、第1の放射素子14の終端が延伸される方向を車体1の左方から右方へ反転させることによって得られる。換言すれば、一方の給電点を含む給電点近傍部14Aaが第1の方向である車体1の下方向に引き出され、他方の給電点を含む給電点近傍部14Abが第2の方向である車体1の上方向に引き出されている。更に、第1の放射素子14Aの終端は、車体1の右方に延伸されており、第2の放射素子15Aの終端は、車体1の左方に延伸されている(図3の(b)参照)。放射素子の折り曲げ方に着目すると、放射素子14,15がU字型(あるいはコの字型)に折り曲げられているのに対し、放射素子14A,15Aは、ステップ形状(あるいはZ字型)に折り曲げられている。
図3の(b)に示すように、スポイラー116には、アンテナ111を載置するためのアンテナ載置台116aが設けられている。アンテナ載置台116aは、ルーフ20に交わる平面と、ルーフ20に沿う平面であってスポイラー116の内部に位置する平面とからなる。より具体的には、ルーフ20に交わる面は、図3の(b)に図示した座表軸におけるyz平面であり、ルーフ20に沿う平面は、同図に図示した座標軸におけるxy平面である。図3の(b)に示すように、アンテナ載置台116aは、アンテナ111を載置するためのステップであって、スポイラー116の内部に張り出したステップを形成する。
アンテナ11をスポイラー16内に固定する固定手段と同様の固定手段を用いて、アンテナ11Aをスポイラー16A内に固定することができる。図3の(a)に示すように、スポイラー16Aを平面視したときの形状は、車体1の前後方向に対して短く、車体1の左右方向に対して長い。また、スポイラー16Aの前部領域と後部領域とにおいて内部スペースを比較すると、後部領域のスペースは、前部領域のスペースを大きく上回る。これは、スポイラー16Aの前部領域にはスポイラー固定部21dが設けられており、且つ、スポイラーの上面とルーフ20全体の上面とを略面一にするためである。
アンテナ111の放射素子114,115は、スポイラー116の長手方向に沿って延伸されているため、アンテナ11の放射素子14,15と比較して、放射素子の始端から終端までの長さを長く設計することができる。その結果、アンテナ111は、アンテナ11と比較して放射利得を向上させることができる。また、スペースが広いスポイラー116の後部領域に載置すればよいため、アンテナ111は、アンテナ11と比較してスポイラー116への載置が容易である。
このように構成された車載用アンテナ装置110においても、給電点近傍部114aは、車体1の下方向に引き出され、給電点近傍部115aは、車体1の上方向に引き出されている。したがって、車載用アンテナ装置110は、主たる偏波成分として垂直偏波を放射することができる。したがって、車載用アンテナ装置110は、ルーフ20が金属体であっても、ルーフ20を横断する方向(前方向)への放射利得が従来よりも大きい車載用アンテナ装置を実現することができる。
〔第3の実施形態〕
次に、図4を参照して、本発明の第3の実施形態に係る車載用アンテナ装置30について説明する。車載用アンテナ装置30は、第1の実施形態に係る車載用アンテナ装置10が備えているアンテナ11を、以下に説明するアンテナ31に変更することによって得られる。
図4の(a)は、本実施形態に係る車載用アンテナ装置30を搭載する車体1の矢視断面図である。図4の(b)は、車載用アンテナ装置30が備えているアンテナ31の展開図である。
アンテナ31は、アンテナ11と比較して、U字型に折り曲げる位置が異なっている。言い換えれば、折り曲げる位置を除くと、アンテナ31は、アンテナ11と同様に構成されている。具体的には、アンテナ31において、一方の折り曲げる位置に対応するD−D’線として、給電点33bと第2の放射素子35の始端となる端辺とを含む直線を採用している。また、E−E’線として、図2の(b)に示すC−C’線と比較して、第1の放射素子34の終端により近い直線を採用している。
D−D’線及びE−E’線に沿ってU字型に折り曲げられたアンテナ31は、図4(a)に示すようにスポイラー16の内部に載置されている。具体的には、車載用アンテナ装置30を車体1の後端に搭載したときに、給電点33aから第1の放射素子34の給電点近傍部34aが第1の方向である車体1の下方向(ルーフ20に交わる方向)に引き出され、給電点33bから第2の放射素子35が第2の方向である車体の前方向(ルーフ20に沿う方向)に引き出される構成を採用している。
また、アンテナ31では、ルーフ20の後端部を構成する金属部材(スポイラー固定部21d)に沿い、且つ、この金属部材に対して離間した状態で重畳する重畳部35bを更に備えている。本実施形態において、重畳部35bは、第2の放射素子35の終端を含む部分に設けられている。しかし、重畳部35bを設ける位置は終端を含む部分に限定されず、第2の放射素子35のルーフ20に沿う方向に伸びる部分の少なくとも一部に設けられていればよい。重畳部35bが導電体からなるスポイラー固定部21dに重畳していることによって、スポイラー固定部21dがアンテナ31のグランドとして利用され、車体前方に対する放射利得を更に大きくすることができる。
なお、本実施形態では、第2の放射素子35の一部に重畳部35bが設けられている構成を採用している。しかし、第1の放射素子34の一部に設けられた重畳部がスポイラー固定部21dと重畳する構成を採用することもできる。放射素子34,35の何れの放射素子に重畳部を設けるかは、接続部33の位置、放射素子34,35の各々の形状、スポイラー16の形状、及びアンテナ31とスポイラー固定部21dとの相対位置関係に応じて適宜決定すればよい。
〔第4の実施形態〕
次に、図5を参照して、本発明の第4の実施形態に係る車載用アンテナ装置60について説明する。車載用アンテナ装置60は、第3の実施形態に係る車載用アンテナ装置30(図4参照)の筐体として機能するスポイラー16を、スポイラー66に変更したうえで、車載用アンテナ装置30が備えているアンテナ31を、アンテナ61に変更することによって得られる。
図5の(a)は、車載用アンテナ装置60を搭載する車体1の一部を拡大した矢視断面図である。図5の(b)は、車載用アンテナ装置60が備えているアンテナ61の展開図である。
スポイラー16と比較して、スポイラー66には、その内壁後端部にアンテナ61を載置するためのアンテナ載置台66aが設けられている。図5の(a)に示すように、アンテナ載置台66aは、ルーフ20に交わる平面と、ルーフ20に沿う平面とからなる。より具体的には、アンテナ載置台66aは、車体1の上下方向に伸びる平面(図5の(a)に図示した座表軸におけるzx平面)と、車体1の前後方向に伸びる平面(同図に図示した座標軸におけるxy平面)とからなる。アンテナ載置台66aは、スポイラー66の内部に張り出したステップを形成する。
車載用アンテナ装置60は、アンテナ61をスポイラー66の内部形状に沿って折り曲げられた状態で載置するように構成されている。アンテナ61をスポイラー66に固定する固定手段としては、アンテナ11,31をスポイラー16に固定する固定手段と同様の固定手段を用いることができる。
アンテナ61は、スポイラー66に載置されるために、図5の(b)に示すF−F’線に沿って谷折りにされ、図5の(b)に示すG−G’線に沿って山折りにされる。その結果、Z字型に折り曲げられたアンテナ61が形成される。図5の(a)に示すように、車載用アンテナ装置60は、Z字型に折り曲げられたアンテナ61をスポイラー66の内壁及びアンテナ載置台66aに沿って固定する構成を採用している。
図5の(a)に示すように、車載用アンテナ装置60を車体1の後端に搭載したときに、アンテナ61の第1の放射素子64は、給電点63aからルーフ20に交わる方向である車体1の下方向(請求の範囲に記載の第1の方向に相当する)に引き出されており、第2の放射素子65は、給電点63bからルーフ20に交わる方向であって、車体1の下方向とは異なる方向である上方向(請求の範囲に記載の第2の方向に相当する)に引き出されている。車載用アンテナ装置60においては、第1の方向及び第2の方向がルーフ20に交わる構成を採用している。
第1の放射素子64において、給電点63aから下方向に引き出されている部分、すなわち、給電点63aに接続されている第1の放射素子64の始端(根元)から、山折りされる線であるG−G’線までの部分を給電点近傍部64aとする。
給電点近傍部64aが給電点63aから下方向に引き出されているため、給電点近傍部64aを流れる電流の方向は、主に上下方向である。また、第1の放射素子64を流れる電流の電流密度は、第1の放射素子64の始端(給電点63aとの接続部)において最も高く、終端に近づくにしたがって低くなる。このことから、給電点近傍部64aでは、相対的に高い電流密度の電流が車体1の上下方向に流れる。その結果として、第1の放射素子64は、放射する電磁波に含まれる垂直偏波成分の割合を従来(特許文献1に記載の車載用アンテナ装置)よりも多くすることができる。
更に、垂直偏波は、水平偏波と比較した場合に、ルーフ20による減衰効果を受け難いという特性を有する。このため、第1の放射素子14を備えている車載用アンテナ装置10は、ルーフ20が金属製であっても、ルーフ20を横断する方向(ここでは前方向)に対する垂直偏波の放射利得を十分に大きくすることができる。その結果として、ルーフが金属製であっても、ルーフを横断する方向に対する電磁波の放射利得を十分に大きくすることができる。
第2の放射素子65において、給電点63bから上方向に引き出されている部分、すなわち、給電点63bに接続されている第2の放射素子65の始端(根元)から、谷折りされる線であるF−F’線までの部分を給電点近傍部65aとする。この構成によれば、第2の放射素子65は、第1の放射素子64と同様に放射する電磁波に含まれる垂直偏波成分の割合を従来(特許文献1に記載の車載用アンテナ装置)よりも多くすることができる。したがって、アンテナ61は、放射する電磁波に含まれる垂直偏波成分の割合を従来(特許文献1に記載の車載用アンテナ装置)よりも、更に多くすることができる。
また、アンテナ61では、ルーフ20に沿い、且つ、スポイラー固定部21dに重畳する重畳部65bを更に備えている。本実施形態において、重畳部65bは、アンテナ31が備えている重畳部35bと同様に、第2の放射素子35の終端を含む部分に設けられている。重畳部65bが導電体からなるスポイラー固定部21dに重畳していることによって、スポイラー固定部21dがアンテナ61のグランドとして利用され、車体前方に対する放射利得を更に大きくすることができる。
なお、本実施形態では、第2の放射素子65の一部に重畳部65bが設けられている構成を採用している。しかし、第3の実施形態に記載したように、第1の放射素子64の一部に設けられた重畳部がスポイラー固定部21dと重畳する構成を採用することもできる。
〔アンテナの変形例〕
以下、図6〜図9を参照して、第1から第4の実施形態に係る車載用アンテナ装置10,110,30,60が備えているアンテナ11,111,31,61の変形例について説明する。
図6の(a)は、第1の変形例であるアンテナ41の展開図であり、図6の(b)は、アンテナ41の矢視側面図である。図6の(c)は、第2の変形例であるアンテナ51の展開図であり、図6の(d)は、アンテナ51の矢視側面図である。図6の(b)においては、アンテナ41の構成を分かりやすくするために筐体であるスポイラー16を省略している。同様に、図6の(d)においてもスポイラー16を省略している。図7は、第3の変形例であるアンテナ71の展開図である。図8は、図7に示す第3の変形例であるアンテナ71の別の例を示す展開図である。図9は、第4の変形例であるアンテナ81の展開図である。
(第1の変形例及び第2の変形例)
図6の(a)に示すように、アンテナ41は、給電点43aから車体1の下方向(ルーフ20に交わる方向)に引き出され、給電点43bから車体1の前方向(ルーフ20に沿う方向)に引き出された単一かつ環状の放射素子44を備えている。すなわち、第1の変形例では、ダイポールアンテナであるアンテナ11の代わりにループアンテナであるアンテナ41を採用している。
図6の(c)に示すように、アンテナ51は、給電点53aから車体1の下方向(ルーフ20に交わる方向)に引き出された第1の導体55と、給電点53bから車体の前方向(ルーフ20に沿う方向)に引き出された第2の導体56と、第1の導体55の中間部及び第2の導体56の中間部をそれぞれ接続する第3の導体57とからなる単一の放射素子54を備えている。
放射素子54において、第1の導体55を地板として機能させる場合、第3の導体57は、第2の導体56の中間部を接地する。この構成によれば、アンテナ51は、逆F型アンテナとして機能する。
また、放射素子54において、第1の導体55及び第2の導体56のそれぞれに給電する構成を採用した場合、放射素子54は、環状の放射素子に対して、分枝を付加した放射素子として機能する。この場合、環状の放射素子は、第1の導体55の始端から中間部までと、第2の導体56の始端から中間部までと、第3の導体57とからなり、一方の分枝は、第1の導体55の中間部から終端までからなり、他方の分枝は、第2の導体56の中間部から終端までからなる。この構成によれば、アンテナ51は、ループアンテナに分枝を付加したアンテナとして機能する。
以上のように、第2の変形例では、ダイポールアンテナであるアンテナ11の代わりに、逆F型アンテナ又はループアンテナに分枝を付加したアンテナとして機能するアンテナ51を採用する。
これらの変形例に係る車載用アンテナ装置が備えているアンテナ41,51は、一方の給電点である給電点43a,53aから車体の下方向(図中のz軸負方向)に引き出され、他方の給電点である給電点43b,53bから車体の前方向(図中のy軸正方向)に引き出された放射素子44,54を備えている。したがって、これらの変形例に係る車載用アンテナ装置は、車体前方に対する電磁波の放射強度を十分に大きくすることができる。
(第3の変形例)
図7に示すように、第3の変形例であるアンテナ71は、アンテナ11,111,31,61と比較して、第1の放射素子74の形状を釣鐘型(あるいは杯型)に変更することによって得られる。具体的には、第1の放射素子74が有する4つの角のうち第2の放射素子75に近接する2つの角の各々を、四分楕円74b及び四分楕円74cに置き換えることによって釣鐘型の第1の放射素子74が得られる。第1の放射素子74の形状を長方形から釣鐘型に変更することによって、第1の放射素子74の給電点近傍部74aと第2の放射素子75の給電点近傍部75aとの間隔を連続的に変化させることができる。その結果、アンテナ71の共振周波数を調整することができ、動作帯域を調整することができる。
また、第1の放射素子74は、丸められた2つの角に挟まれた辺から突出した突出部に設けられた給電点73aを有している。このように構成された第1の放射素子74は、給電点73aからルーフ20に交わる方向である車体1の下方向(請求の範囲に記載の第1の方向に相当する)に引き出されている。
一方、第2の放射素子75は、第1の放射素子74の突出部の形状に合わせて切り取られた切り欠き部の近傍に設けられた給電点73bを有している。このように構成された第2の放射素子75は、給電点73bからルーフ20に交わる方向であって、車体1の下方向とは異なる方向である上方向(請求の範囲に記載の第2の方向に相当する)に引き出されている。
そして、図7に示すアンテナ71は、第1、第2及び第4の実施形態に係る車載用アンテナ装置10、10A、60が備えるアンテナ11、11A、61と同様に、第1の方向及び第2の方向がルーフ20に交わる構成を採用している。
また、第1の放射素子74の幅及び第2の放射素子75の幅の各々は、アンテナ71が送信する電磁波の最短波長の1/2以下となるように構成されている。
具体的には、例えば、第1の実施形態に係る車載用アンテナ装置10が備えるアンテナ11と同様に、第1の放射素子74において、給電点73aから下方向に引き出されている部分、すなわち、給電点73aに接続されている第1の放射素子74の始端(根元)から、谷折りされる線であるI−I’線までの部分を給電点近傍部74aとする。また、第2の放射素子75において、給電点73bから上方向に引き出されている部分、すなわち、第2の放射素子75の始端(根元)から、谷折りされる線であるH−H’線までの部分を給電点近傍部75aとする。そして、第4の実施形態に係る車載用アンテナ装置60が備えるアンテナ61のように、スポイラー固定部21dに重畳するように構成された第2の放射素子の75の終端を含む部分を重畳部75bとする。
また例えば、2の実施形態に係る車載用アンテナ装置30が備えるアンテナ31と同様に、第1の放射素子74において、給電点73aから下方向に引き出されている部分、すなわち、給電点73aに接続されている第1の放射素子74の始端(根元)から、山折りされる線であるI−I’線までの部分を給電点近傍部74aとする。また、第2の放射素子75において、給電点73bから上方向に引き出されている部分、すなわち、第2の放射素子75の始端(根元)から、谷折りされる線であるH−H’線までの部分を給電点近傍部75aとする。
また例えば、第4の実施形態に係る車載用アンテナ装置60が備えるアンテナ61と同様に、第1の放射素子74において、給電点73aから下方向に引き出されている部分、すなわち、給電点73aに接続されている第1の放射素子74の始端(根元)から、山折りされる線であるI−I’線までの部分を給電点近傍部74aとする。また、第2の放射素子75において、給電点73bから上方向に引き出されている部分、すなわち、第2の放射素子75の始端(根元)から、谷折りされる線であるH−H’線までの部分を給電点近傍部75aとする。更に、重畳部75bは、第2の放射素子75の終端を含む部分に設けられており、ルーフ20の後端を構成するスポイラー固定部21dに沿い、且つ、スポイラー固定部21dに対して離間した状態で重畳するように構成されている。
また、釣鐘型であるアンテナ71は、図8に示すように構成されていてもよい。すなわち第1の放射素子74において、給電点73aから上方向に引き出されている部分、すなわち、給電点73aに接続されている第1の放射素子74の始端(根元)から、谷折り(若しくは山折り)される線であるI−I’線までの部分を給電点近傍部とする。そして給電点近傍部の幅が、アンテナが放射する電磁波の最短波長の1/2以下となるように構成されており、I−I’線から終端までの領域の幅が給電点近傍部の幅より広くなるように構成されている。
また第2の放射素子75についても同様に、給電点73bから下方向に引き出されている部分、すなわち、第2の放射素子75の始端(根元)から、谷折りされる線であるH−H’線までの部分を給電点近傍部とする。そして給電点近傍部の幅が、アンテナが放射する電磁波の最短波長の1/2以下となるように構成されており、H−H’線から終端までの領域の幅が給電点近傍部の幅より広くなるように構成されている。
(第4の変形例)
図9に示すように、アンテナ11の第4の変形例であるアンテナ81は、給電点83aから車体1の下方向(ルーフ20に交わる方向)に引き出された第1の導体85と、給電点83bから車体1の上方向(ルーフ20に交わる方向)に引き出された第2の導体86と、第1の導体85及び第2の導体86をそれぞれ接続する第3の導体87とからなる、単一の放射素子84を備えている。
第1の導体85は、給電点83aから引き出された給電点近傍部85aと、ルーフ20の後端に車載用アンテナ装置60が配置されたときに車体1の左右方向に沿って延伸する導体85bと、導体85bと交わる方向、すなわち、車体1の前後方向に沿って延伸する導体85cとからなる。
第2の導体86は、給電点83bから引き出された給電点近傍部86aを備えている。また、第2の導体86の中間から終端にかけての領域である重畳部84bは、スポイラー固定部21dに沿い、且つ、スポイラー固定部21dに対して離間した状態で重畳する。
このように構成された放射素子84を含むアンテナ81は、給電点83aを接地することによって、すなわち、第1の導体85を地板として機能させることによって逆F型アンテナとして機能する。
本変形例に係る車載用アンテナ装置60では、領域A1における、給電点近傍部85a及び導体85bの各々と給電点近傍部86aとの間隔を調整することにより、アンテナ81の共振周波数を変化させることができる。その結果、車載用アンテナ装置60の動作帯域を調整することができる。同様に、導体85cの形状を調整することによって、領域A2における導体85cと第2の導体86との間隔を調整することができ、結果として車載用アンテナ装置60の動作帯域を調整することができる。
〔第1の実施例〕
以下、第1の実施形態に係る車載用アンテナ装置10の実施例を説明する。本実施例に係る車載用アンテナ装置10は、図8に示したアンテナ71を採用している。
本実施例の車載用アンテナ装置10は、ハッチバック型の車体1のルーフ20の後端、より具体的には、ハッチゲートの上部に搭載されている。アンテナ11から放射される電磁波としては、LTE用の800MHz帯と呼ばれる周波数(具体的には830MHz)の電磁波を用いた。
図10は、本実施例に係る車載用アンテナ装置10によって得られたxy平面における放射利得の方向依存性を示すグラフである。図10において、破線は水平偏波の放射利得を示し、点線は垂直偏波の放射利得を示し、実線は、水平偏波と垂直偏波との和、すなわち全偏波の放射利得を示す。単位は、〔dBi〕である。
図10を参照すると、車体1の前方向に対する放射利得は、車体1の後方向に対する放射利得と比較して弱いものの、車載用アンテナ装置として用いるのに十分な放射利得を上回っていることが分かる。
〔第2の実施例〕
以下、第2の実施形態に係る車載用アンテナ装置110の実施例を説明する。実施条件は、第1の実施例と同様である。なお、本実施例に係る車載用アンテナ装置110は、アンテナ111として図7に示した釣鐘型のアンテナ71を採用している。ここで採用するアンテナ71の全長(第1の放射素子74の長さと第2の放射素子75の長さの和)は、第1の実施例に係るアンテナ11の全長(第1の放射素子14の長さと第2の放射素子15の長さとの和)の1.43倍である。
本実施例の車載用アンテナ装置110は、ハッチバック型の車体1のルーフ20の後端、より具体的には、ハッチゲートの上部に搭載されている。アンテナ111から放射される電磁波としては、LTE用の800MHz帯と呼ばれる周波数(具体的には830MHz)の電磁波を用いた。
図11は、本実施例に係る車載用アンテナ装置110によって得られたxy平面における放射利得の方向依存性を示すグラフである。図11において、破線は水平偏波の放射利得を示し、点線は垂直偏波の放射利得を示し、実線は、水平偏波と垂直偏波との和、すなわち全偏波の放射利得を示す。単位は、〔dBi〕である。
図11を参照すると、車体1の前方向に対する放射利得は、車体1の後方向に対する放射利得と比較して弱いものの、車載用アンテナ装置として用いるのに十分な放射利得を上回っていることが分かる。
また、車載用アンテナ装置110によって得られたxy平面における放射利得の方向依存性と、第1の実施例の車載用アンテナ装置10によって得られたxy平面における放射利得の方向依存性(図10参照)とを比較すると、車体1の、前方向に対する放射利得及び後方向に対する放射利得の各々に関して、車載用アンテナ装置110が車載用アンテナ装置10を上回っていることが分かる。これは、車載用アンテナ装置110の放射素子114,115(74,75)がスポイラー116の長手軸に沿って延伸されており、放射素子114,115(74,75)の長さが車載用アンテナ装置10の放射素子14,15の長さより長いことに起因すると考えられる。
〔第3の実施例〕
以下、第3の実施形態に係る車載用アンテナ装置30の実施例を説明する。実施条件は、第1の実施例と同様である。なお、本実施例に係る車載用アンテナ装置30は、アンテナ31として図7に示した釣鐘型のアンテナ71と同様の放射素子形状を採用している。
図12は、本実施例に係る車載用アンテナ装置30によって得られたxy平面における放射利得の方向依存性を示すグラフである。図12において、破線は水平偏波の放射利得を示し、点線は垂直偏波の放射利得を示し、実線は、水平偏波と垂直偏波との和、すなわち全偏波の放射利得を示す。単位は、〔dBi〕である。
第3の実施例に係る車載用アンテナ装置30の放射利得は、図10に示した第1の実施例と比較して、車体1の全方向に対して向上していることが分かる。特に、車体1の前方向に対して顕著に向上していることが分かる。この向上は、第2の放射素子35の終端を含む重畳部35bがルーフ20に重畳していることに起因すると考えられる。
〔第4の実施例〕
これまで、第1〜第4の実施形態において、本発明の一実施形態に係る車載用アンテナ装置をルーフ20の後端に配置するものとして説明してきた。図1に示すように、車体1において、ルーフ20の後端にはハッチゲート21が設けられている。ハッチゲート21に含まれているリヤガラス21bは、絶縁体からなる平面を有する。したがって、リヤガラス21bの上端辺には、DTV用の放送信号やFM用の放送信号を受信するためのフィルムアンテナが貼り付けられることがある。
この場合、本発明の一実施形態に係る車載用アンテナ装置とリヤガラス21bに貼られたフィルムアンテナとが近接しているため、両アンテナ間に電磁気的な結合が生じ影響を及ぼし合う可能性がある。
本実施例では、このアンテナ間の結合が与える影響を調べるために、第1の実施形態に係る車載用アンテナ装置10と、リヤガラス21bの上端辺に貼り付けられたTDV用のフィルムアンテナ(以下、DTVアンテナ)とを用いて、車載用アンテナ装置10とDTVアンテナとの間に生じる結合について測定した。
(測定系)
上記結合を測定するための測定系の構成は、次の通りである。ネットワークアナライザーの第1のポートに第1の実施形態である車載用アンテナ装置10を接続し、同じネットワークアナライザーの第2のポートにDTVアンテナを接続した。上記第1のポートは、ネットワークアナライザーから高周波信号を出力する出力ポートである。上記第2のポートは、ネットワークアナライザーに高周波信号を入力する入力ポートである。
車載用アンテナ装置10は、上記第1のポートから供給された高周波信号を送信する。DTVアンテナは、車載用アンテナ装置10が放射した高周波信号を受信し、上記第2のポートに供給する。ネットワークアナライザーは、第1のポートから出力した高周波信号と第2のポートから入力された高周波信号とに基づき、車載用アンテナ装置10とDTVアンテナとの間に生じる結合の強さを透過特性S21として算出する。
車載用アンテナ装置10とDTVアンテナとの結合が強ければ強いほど、DTVアンテナは、車載用アンテナ装置10から送信された高周波信号を効率よく受信する。その結果として、上記結合が強ければ強いほど、S21は高くなる。すなわち、車載用アンテナ装置10とDTVアンテナとが及ぼし合う影響を抑制するためには、S21を抑制することが好ましい。
(車載用アンテナ装置10の構成)
本実施例では、車載用アンテナ装置10が備えるアンテナ11を変形することによって得られた2種類の車載用アンテナ装置10を採用した。具体的には、1つ目の車載用アンテナ装置10のアンテナとしてアンテナ71(図7参照)を採用し、2つ目の車載用アンテナ装置10は、アンテナとしてアンテナ81(図9参照)を採用した。ここで、2種類の車載用アンテナ装置10では、アンテナ71,81の放射素子の重畳部74b、84bが、金属部材であるスポイラー固定部21dに沿い、且つ、スポイラー固定部21dに対して離間した状態で重畳している。またルーフ20の後端辺に沿って測った放射素子74,75の幅は、アンテナ71が送信する電磁波の最短波長の1/2以下、具体的には約1/2.8とした。アンテナ71は、放射素子74,75を備えたダイポールアンテナである。アンテナ81は、第1の導体85、第2の導体86、及び第3の導体87を備えた逆F型アンテナである。第1の導体85は、給電点近傍部85a、導体85b、及び導体85cからなる。給電点近傍部85aは、給電点83aから下方向に引き出されている。導体85bは、車体1の左右方向に沿って伸びている。導体85cは、車体1の前後方向に沿って伸びている。
(DTVアンテナの構成)
本実施例では、DTVアンテナとして、長方形のループアンテナが誘電体フィルム上に形成されたフィルムアンテナを採用した。DTVアンテナは、ループアンテナの長辺方向が車体1の左右方向と一致する向きにリヤガラス21bの上端辺に貼り付けた。これは、DTVアンテナが車体1の運転者の後方視界を妨げないようにするためである。
(S21)
アンテナ71を備えた車載用アンテナ装置10、及び、アンテナ81を備えた車載用アンテナ装置10の各々を用いて測定した透過特性であるS21を図13に示す。図13に示すように、アンテナ71を備えた車載用アンテナ装置10のS21は、アンテナ81を備えた車載用アンテナ装置10のS21を下回った。すなわち、アンテナ71を備えた車載用アンテナ装置10は、アンテナ81を備えた車載用アンテナ装置10よりも、DTVアンテナとの間に生じる結合を抑制できることが分かった。
この結果は、次のように解釈できる。本実施例において、アンテナ71が備える放射素子74,75の幅をアンテナ71が送信する電磁波の最短波長の1/2以下、具体的には約1/2.8とした。そのため、給電点73aから給電されて第1の放射素子74を流れる電流、及び、給電点73bから給電されて第2の放射素子75を流れる電流の多くは、その流れる方向を放射素子74,75の長手方向、すなわち、車体1の前後方向に限定される。
それに対して、アンテナ81が備える第1の導体85には、車体1の左右方向に延伸された導体85bが設けられているため、給電点83aから給電され給電点近傍部85aを介して導体85bに到達した電流は、その流れる方向を車体1の左右方向に限定される。
このように構成されたアンテナ71及びアンテナ81に対して、DTVアンテナは、ループアンテナの長辺方向が車体1の左右方向と一致する向きに貼り付けられている。そのため、車体1の前後方向に沿って振動する高周波信号と、車体1の左右方向に沿って振動する高周波信号とを比較すると、後者をより効率よく受信する。アンテナ71は、放射素子74,75に流れる主たる電流の方向を車体1の前後方向に限定することができる。その結果として、アンテナ71を備えた車載用アンテナ装置10は、アンテナ81を備えた車載用アンテナ装置10と比較して、DTVアンテナに与える影響、又は、DTVアンテナから受ける影響を抑制することができる。
〔第5の実施形態〕
次に、図14〜図16を参照して、本発明の第5の実施形態に係る車載用アンテナ装置90について説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
図14は、車載用アンテナ装置90を搭載する車体1の一部を拡大した、図1の(b)のA−A’線に沿う矢視断面図である。アンテナは、車載用アンテナ装置90が備えているアンテナ91Aまたは91Bを平面に展開した展開図である。なお、図15では、誘電体フィルム12の図示を省略している。図16は、アンテナ91Aまたは91Bを構成する第2の放射素子95Aまたは95Bにおいて、その給電点と、給電点から放射素子95Aまたは95Bの長手方向に離れた角部とを結ぶ2つのエッジの形状を破線及び一点鎖線で示す説明図である。
車載用アンテナ装置90の筐体としてのスポイラー16’は、図2または図4に示すスポイラー16と形状及びサイズの点で違いがあるが、この違いは本質的ではないので、その違いを詳細に説明することは省略する。したがって、図2または図4に示すスポイラー16に、アンテナ91Aまたは91Bを取り付けて車載用アンテナ装置90を構成してもよい。
〔車載用アンテナ装置90〕
車載用アンテナ装置90の構成について、図14を参照して具体的に説明する。図14に示すように、車載用アンテナ装置90は、アンテナ91Aまたは91Bをスポイラー16’の内部に折り曲げられた状態で載置するように構成されている。ただし、車載用アンテナ装置90は、アンテナ91Aまたは91Bの構成要素である誘電体フィルム12をスポイラー16’の内壁に密着させていない点で、図2に示す車載用アンテナ装置10及び図4に示す車載用アンテナ装置30とは異なっている。言い換えると、車載用アンテナ装置90の場合、誘電体フィルム12とスポイラー16’の内壁との間にスペースが設けられている。このスペースを設けたことによって、スポイラー16’にアンテナ91Aまたは91Bを内装することが容易になる。
アンテナ91Aまたは91Bの折り曲げ状態についてより詳細に説明する。アンテナ91Aまたは91Bは、U字状に折り曲げられた結果、車体1の上下方向(z軸方向)に対向した上壁部及び下壁部と、上壁部及び下壁部をつなぐ立壁部とを備えている。上壁部及び下壁部は、図14に示すとおり、車体1の前後方向(y軸方向)に平行をなしている。また、立壁部は車体1の上下方向(z軸方向)に平行をなしているので、上壁部及び下壁部のそれぞれは、立壁部と90度をなしている。
上記スペースの設け方をより具体的に説明すると、立壁部と平行をなすスポイラー16’の後壁と立壁部との間にスペースが設けられている。さらに、下壁部に対面するスポイラー16’の底壁と下壁部との間にスペースが設けられている。
スポイラー16’にアンテナ91Aまたは91Bを固定する固定手段の例としては、上述した実施形態と同じでよいが、U字状に折り曲げられたアンテナ91Aまたは91BのU字内部に位置する支持体を配設し、その支持体にアンテナ91Aまたは91Bを巻き付けるように固定してもよい。なお、上記支持体は、スポイラー16’に固定される。
あるいは、図15に示すように、アンテナ91Aまたは91Bを構成する第1の放射素子94Aまたは94B、第2の放射素子95Aまたは95B、及び図15では図示していない誘電体フィルム12に複数の穴96、97を適宜設けるとともに、スポイラー16’及び上記支持体に、複数の穴96、97の位置に合わせて複数の凸部(フック)を設けてもよい。この形態では、複数の凸部を複数の穴96、97に嵌め込む、あるいは係合させることによって、アンテナ91Aまたは91Bを固定することができる。
〔アンテナ91A/91B〕
アンテナ91Aまたは91Bと、アンテナ11(図2)、アンテナ31(図4)、及びアンテナ71(図7)等との最も重要な相違点は、第2の放射素子の形状である。第1の放射素子94A,94Bは、動作帯域を調整できるという既に説明した効果が得られるように、第1の放射素子74(図7)と同様に釣鐘型の形状を有しているが、釣鐘型に限定されるものではない。
第2の放射素子95A,95Bに共通する特徴点は次のとおりである。すなわち、第2の放射素子95A,95Bにおける車体1の左右方向(x軸方向)に平行な最大幅と同じ幅を有し、車体1の前後方向(y軸方向)に長い長方形を考えたときに、車体1の前後方向に延びる2つの長辺を長方形の中央側へ窪ませている。言い換えると、上記長方形の形状を有する例えば銅箔の長辺部に対し、切り欠きまたは凹形状を形成している。以下、この長辺部に切り欠きまたは凹形状を形成した第2の放射素子95A,95Bの長辺部に対応した輪郭部を長エッジと呼ぶ。
第2の放射素子95A,95Bの形状をこのように設定することによって、上記長エッジに沿って電流が流れるときの距離を、本発明が対象にしている帯域(例えば電話の帯域の一例である698〜960MHz)のうち低周波の帯域(698〜854MHz)に合わせて長く確保することができる。
アンテナ91Aが放射する電磁波に対応して、第2の放射素子95A,95Bに流れる電流は、その上面と、下面と、周縁のエッジとを流れるが、エッジにおける電流密度が、上面及び下面における電流密度より大きい。したがって、上記長エッジに沿って電流が流れるときの距離を延ばすことによって、アンテナの帯域を特に低周波側に効果的に広げることができる。以下、アンテナ91A及び91Bの構成と上記距離とについてさらに詳しく説明する。
(アンテナ91A)
図15に示すように、アンテナ91Aは、釣鐘型の第1の放射素子94Aと、上記凹形状が形成された2つの長エッジを有する第2の放射素子95Aとを備えている。第1の放射素子94Aの構成は、図7に示す第1の放射素子74の構成と基本的に同じである。第2の放射素子95Aにおいて、車体1の左右方向に向かい合う2つの長エッジのうち、左の長エッジの中央付近に形成された凹形状は、ホームベース板の形状をしている。なお、ホームベース板の形状の鋭角部(頂部)が車体1の右方向を向いている。
一方、右の長エッジには、鋭角部が車体1の左方向を向いたホームベース板の形状をした凹形状が、左の長エッジの凹形状を避けた位置に形成されている。より具体的には、第1の放射素子94Aと第2の放射素子95Aとの境界に設けられた接続部93Aと、左の長エッジの凹形状との間に位置するように、右の長エッジの凹形状が形成されている。しかし、各凹形状の形成位置はこれに限定されず、長エッジに沿って電流が流れるときの距離を延ばす目的を達成できる限り、各長エッジの任意の位置に各凹形状を形成することができる。
接続部93Aは、図7に示す接続部73と同様に、第1の放射素子94Aの突出部と第2の放射素子95Aの切り欠き部とが嵌まり合う区域(接続部近傍域)の任意の位置に設けられる。その位置の一例は、図15に示すように、第1の放射素子94Aの突出部の右上隅部の付近である。接続部93Aの一方の給電点である第1の給電点93Aaは、第1の放射素子94Aに接続されており、接続部93Aの他方の給電点である第2の給電点93Abは、第2の放射素子95Aに接続されている。
アンテナ91Aは、図15に示すL1−L1’線及びM1−M1’線に沿って谷折りされる。その結果、図14に示すように、外側に誘電体フィルム12が配置され、内側に放射素子94Aが配置されたU字型に折り曲げられたアンテナ91Aが形成される。さらに、第1の放射素子94Aは、第1の給電点93Aaからルーフ20に交わる方向である車体1の下方向(請求の範囲に記載の第1の方向に相当する)に引き出されている。より具体的には、L1−L1’線とM1−M1’線との間における第1の放射素子94Aの第1領域94Ab(給電点近傍部)が、車体1の下方向(請求の範囲に記載の第1の方向に相当する)に引き出されている。また、第1領域94Abに連続する第2領域94Aaは、第1領域94Abに対して90度の角度で折り曲げられ、車体1の前方向に向かっている。
一方、第2の放射素子95Aは、第2の給電点93Abからルーフ20に沿う方向であって、車体1の下方向とは異なる方向である前後方向(請求の範囲に記載の第2の方向に相当する)に引き出されている。なお、第2の放射素子95Aは、そのほとんどが第2の給電点93Abから前方向に延び出すとともに、わずかに第2の給電点93Abから後方向にも延び出している。
(アンテナ91B)
図15に示すように、アンテナ91Bの第1の放射素子94Bは、上記第1の放射素子94Aと同じ構成を備えている。第2の放射素子95Bは、上記凹形状が形成された2つの長エッジを有しているが、2つの凹形状の形が第2の放射素子95Aの2つの凹形状の形と異なっている。
具体的には、第2の放射素子95Bにおいて車体1の左右方向に向かい合う2つの長エッジのうち、左の長エッジに形成された凹形状は、頂部が車体1の右方向を向いたホームベース板の形状を変形させた形状を有している。すなわち、ホームベース板の頂部を挟み、ホームベース板では二等辺三角形を形作る2辺のうち、一方の辺は他方の辺より長く、かつ他方の辺に対して大きな開き角を持っている。したがって、これらの一方の辺と他方の辺とは、不等辺三角形の鈍角を挟む2辺に相当している。さらに、上記一方の辺は、長エッジに沿って電流が流れるときの距離を稼ぐために、車体1の前後方向に対して傾斜した方向と、車体1の前後方向と、車体1の左右方向とに曲折を繰り返し、複数箇所の曲折点を経て、接続部93Bに達している。
一方、右の長エッジには、頂部が車体1の左方向を向いた不等辺三角形の形状をした凹形状が、左の長エッジの凹形状を避けた位置に形成されている。より具体的には、第1の放射素子94Bと第2の放射素子95Bとの境界に設けられた上記接続部93Bと、左の長エッジの凹形状との間に位置するように、右の長エッジの凹形状が形成されている。しかし、各凹形状の形成位置はこれに限定されず、長エッジに沿って電流が流れるときの距離を延ばす目的を達成できる限り、各長エッジの任意の位置に各凹形状を形成することができる。また、左の長エッジの凹形状を、右の長エッジの凹形状と同様の不等辺三角形であって、右の長エッジの不等辺三角形より大きな不等辺三角形としてもよい。
接続部93Bは、接続部93Aと同様に、第1の放射素子94Bの突出部と第2の放射素子95Bの切り欠き部とが嵌まり合う区域(接続部近傍域)の任意の位置に設けられる。接続部93Bの一方の給電点である第1の給電点93Baは、第1の放射素子94Bに接続されており、接続部93Bの他方の給電点である第2の給電点93Bbは、第2の放射素子95Bに接続されている。
アンテナ91Bは、図15に示すL2−L2’線及びM2−M2’線に沿って谷折りされる。その結果、アンテナ91Aと同様に、U字型に折り曲げられたアンテナ91Bが形成される。第1の放射素子94Bの第1領域94Bbと第2領域94Baとは、第1の放射素子94Aの第1領域94Abと第2領域94Aaとに相当している。第1の放射素子94Bの第1の給電点93Baからの引き出され方、及び第2の放射素子95Bの第2の給電点93Bbからの引き出され方は、第1の放射素子94A及び第2の放射素子95Aの場合と同じである。
(長エッジの長さ)
次に、第2の放射素子95A、95Bがそれぞれ備えている上記長エッジの長さについて説明する。図16は、第2の放射素子95A,95Bがそれぞれ備えている長エッジの形状を示す説明図である。図16に示すように、第2の放射素子95Aでは、接続部93Aに電流が供給されるので、接続部93Aがその電流の流れに沿った経路の始点になる。また、第2の放射素子95Aの前方向側の端辺の左角及び右角が、当該経路の終点98Aa及び終点98Abになる。第2の放射素子95Bでも同様に、接続部93Bが電流の流れに沿った経路の始点になり、第2の放射素子95Bの前方向側の端辺の左角及び右角が、当該経路の終点98Ba及び終点98Bbになる。
第2の放射素子95Aの2つの長エッジの一方は、図16に破線で示すように、接続部93Aから終点98Aaに至る長さを持つ長エッジN1である。第2の放射素子95Aの2つの長エッジの他方は、図16に一点鎖線で示すように、接続部93Aから終点98Abに至る長さを持つ長エッジN2である。第2の放射素子95Bも同様に、接続部93Bから終点98Baに至る長さを持つ長エッジN3と、接続部93Bから終点98Bbに至る長さを持つ長エッジN4とを備えている。
上記長エッジN1〜N4の各長さは、アンテナが放射する電磁波の帯域のうち、帯域を広げたい低周波(例えば700〜730MHz)の波長の約1/2に等しいという条件を満たすように、長エッジN1〜N4に形成した凹形状の形及びサイズが選択されている。したがって、長エッジN1〜N4のそれぞれに形成する凹形状の形、サイズ及び数は、上記条件が満たされる限り任意に設定することができる。
(各アンテナの特性)
アンテナ91A,91Bを図14に示す車載用アンテナ装置90として車体1に搭載した状態で、アンテナ91A,91Bの放射利得を車体1の前方向側に関して計算した。その結果、アンテナ91A,91Bは、第2の放射素子95A,95Bに上記の長エッジN1〜N4を持たせたことによって、帯域全体を低周波側に広げることができた。ただし、アンテナ91Bは、アンテナ91Aと比べて、高周波帯域の放射利得がより良好になった。詳しくは、図18〜図19を参照して後述する。
(重畳部)
なお、図14及び図15に示すように、第2の放射素子95A,95Bは、ルーフ20を構成する金属部材であるスポイラー固定部21dに沿い、且つ、スポイラー固定部21dに対して離間した状態で重畳する重畳部95Aa,95Baをそれぞれ有している。重畳部95Aa,95Baは、第2の放射素子95A,95Bの先端をそれぞれ含んでいる。
重畳部95Aa,95Baは、それぞれ長さLyを有している。長さLyは、第2の放射素子95A,95Bの各全長の64.5%以下であり、より好ましくは、第2の放射素子95A,95Bの各全長の26.0%以上55.2%以下である。
スポイラー16’において、長さLyを上記全長の64.5%以下となるように構成することによって、スポイラー16’から見てルーフ20を横断する方向(本実施形態では、車体1の前方向)に対する利得を、第2の放射素子95A,95Bがスポイラー固定部21dと重畳しない場合よりも大きくすることができる。また、長さLyを上記全長の26.0%以上55.2%以下となるように構成することによって、車体1の前方向に対する利得を、更に大きくすることができる。
重畳部95Aa,95Baにおける第2の放射素子95A,95Bとスポイラー固定部21dとの間隔Dzは、18mm未満であり、より好ましくは、11mm未満である。スポイラー16’において、重畳部95Aa,95Baがスポイラー固定部21dに重畳しており、且つ、重畳部95Aa,95Baにおける上記間隔Dzが18mm未満となるように構成することによって、車体1の前方向に対する利得を、第2の放射素子95A,95Bがスポイラー固定部21dと重畳しない場合よりも大きくすることができる。また、間隔Dzが11mm未満となるように構成することによって、車体1の前方向に対する利得を、更に大きくすることができる。
なお、本実施形態において、スポイラー16’は、重畳部95Aa,95Baがスポイラー固定部21dに沿い、且つ、スポイラー固定部21dに対して離間した状態で重畳するように構成されているが、スポイラー16’は、ルーフ20に固定されていてもよい。この場合、スポイラー16’は、重畳部Aa,95Baがルーフ20の後端を構成する金属部材に沿い、且つ、この金属部材に対して離間した状態で重畳するように構成されていればよい。
第1の放射素子94A,94Bの全長及び第2の放射素子95A,95Bの全長は、特に限定されるものではなく、アンテナ91A,91Bから放射させたい電磁波の周波数に応じて、それぞれの全長を適宜定めることができる。長さLyは、アンテナ91A,91Bから放射させたい電磁波の周波数に応じて定められた第2の放射素子95A,95Bの全長に基づいて、上述した範囲内に収まるように決定すればよい。
〔第5〜第7の実施例〕
以下、本発明の第5〜第7の実施例を説明する。第5の実施例である車載用アンテナ10は、図17の(a)に示すアンテナ71を採用している。第6の実施例である車載用アンテナ90は、図17の(b)に示すアンテナ91Aを採用している。第7の実施例であるアンテナ90は、図17の(c)に示すアンテナ91Bを採用している。図17の(a)〜(c)の各々は、それぞれアンテナ71、アンテナ91A、アンテナ91Bを平面に展開した展開図である。
図18の(a)は、アンテナ71を備えている車載用アンテナ装置70及びアンテナ91Aを備えている車載用アンテナ装置90の放射利得の周波数依存性を示すグラフである。図18の(b)は、アンテナ71を備えている車載用アンテナ装置70及びアンテナ91Aを備えている車載用アンテナ装置90のVSWRの周波数依存性を示すグラフである。
図19の(a)は、アンテナ91Aを備えている車載用アンテナ装置90及びアンテナ91Bを備えている車載用アンテナ装置90の放射利得の周波数依存性を示すグラフである。図19の(b)は、アンテナ91Aを備えている車載用アンテナ装置90及びアンテナ91Bを備えている車載用アンテナ装置90の放射利得のVSWRの周波数依存性を示すグラフである。
車載用アンテナ装置70,90の放射利得及びVSWRは、車載用アンテナ装置70,90の各々を車体1のルーフ20の後端に搭載した状態で測定した。図18の(a)及び図19の(a)に示す車載用アンテナ装置70,90の各々の放射利得は、車体1のルーフ20に沿う平面内における放射利得を、アンテナ71,91A,91Bを中心とする全方位に関して計算し、全方位分を総和することによって得られた値である。
図18の(a)を参照すると、アンテナ91Aを備えている車載用アンテナ装置90の放射利得は、0.8GHz未満の周波数帯域において、アンテナ71を備えている車載用アンテナ装置70の放射利得を上回っていることが分かる。
図18の(b)を参照すると、アンテナ91Aを備えている車載用アンテナ装置90のVSWRは、0.8GHz未満の周波数帯域において、アンテナ71を備えている車載用アンテナ装置70のVSWRを下回っていることが分かる。
これは、アンテナ91Aの第2の放射素子95Aに凹形状を形成したことによって得られた効果である。すなわち、アンテナ71のエッジ長に対してアンテナ95Aのエッジ長を長く構成することによって、車載用アンテナ装置90の帯域を車載用アンテナ装置70の帯域と比較して低周波側に広げることができた。
図19の(a)を参照すると、アンテナ91Bを備えている車載用アンテナ装置90の放射利得は、2GHz近傍の周波数帯域において、アンテナ91Aを備えている車載用アンテナ装置90の放射利得を上回っていることが分かる。
図19の(b)を参照すると、アンテナ91Bを備えている車載用アンテナ装置90のVSWRは、1.7GHz以上2.3GHz以下の周波数帯域において、アンテナ91Aを備えている車載用アンテナ装置90のVSWRを下回っていることが分かる。
以上のように、アンテナ91Bを備えている車載用アンテナ装置90は、アンテナ91Aを備えている車載用アンテナ装置90と比べて、高周波帯域の特性がより良好であることが分かった。
〔アンテナの更なる変形例〕
以下、図20〜図22を参照して、図7に示すアンテナ71の変形例について説明する。図20は、アンテナ71の変形例であるアンテナ71Aを平面に展開した展開図である。図21の(a)は、U字型に折り曲げられたアンテナ71Aを、第2の放射素子75Aに直行する方向から見た場合に得られる平面図である。図21の(b)は、図21の(a)に示したアンテナ71の右側面図である。図21の(c)は、図21の(a)に示したX−X’線に沿った断面における断面矢視図である。図22の(a)は、アンテナ71の別の変形例であるアンテナ71Bを平面に展開した展開図である。図22の(b)は、U字型に折り曲げられたアンテナ71Bを、第2の放射素子75Bに直行する方向から見た場合に得られる平面図である。
(アンテナ71A)
アンテナ71Aは、アンテナ71が備えている第1の放射素子74を第1の放射素子74Aに置換し、アンテナ71が備えている第2の放射素子75を第2の放射素子75Aに置換することによって得られる。
図20に示すように、第1の放射素子74Aは、一方の給電点73Aaにおいて図示しない同軸線の一方の導体に接続されており、一方の給電点73Aaを含む領域と、N−N’線からO−O’線までの領域である給電点近傍部74Aa(請求の範囲に記載の第1部分)と、O−O’線から第1の放射素子74Aの末端(接続部73Aと逆側の端部)までの領域である第2部分74Abとにより構成されている。給電点近傍部74Aaは、一方の給電点73Aaから第1の方向に引き出された部分である。
第2の放射素子75Aは、他方の給電点73Abにおいて図示しない同軸線の他方の導体に接続されており、他方の給電点73Abを含む根本部75Aaと、枝部75Abと、首部75Acと、主部75Adとによって構成されている。
アンテナ71Aは、図20に示すN−N’線及びO−O’線に沿って谷折りされ、第1の方向に沿った第1平面P1、第2の方向に沿った第2平面P2、及び第1平面P1に交わり、且つ、第2平面P2に対向する第3平面P3に沿うように、U字型に折り曲げられている。その結果、図21に示すように、外側に誘電体フィルム72が配置され、内側に第1,第2の放射素子74A,75Aが配置されたU字型に折り曲げられたアンテナ71Aが形成される。
U字型に折り曲げられた状態において、給電点73Aa,73Abによって構成される接続部73Aは、第3平面P3上であって、第1平面P1と交差する交差部近傍に配置されている。
(第1の放射素子74A)
第1の放射素子74Aにおいて、給電点近傍部74Aaは、第1平面P1に配置されており、第2部分74Abは、第3平面P3に配置されている。また、第2の放射素子75Aは、第2平面P2に配置されている。本変形例においては、第1平面P1に対して、第2平面P2及び第3平面P3の各々は、直交している。すなわち、第2平面P2と第3平面P3とは、互いに平行である。第1平面P1、第2平面P2、及び第3平面P3の各々は、それぞれ、請求の範囲に記載の第1面、第2面、及び第3面に対応する。本変形例では、第1面、第2面、及び第3面の各々として平面を採用しているが、第1面、第2面、及び第3面の各々として曲面を採用することもできる。また、第2面及び第3面は互いに平行でなくてもよい。
第1の放射素子74Aの第2部分74Abは、給電点近傍部74Aaの端部から1つの方向に延ばされた第1直線部によって構成されている。上記1つの方向は、第3平面P3に沿い、且つ、第2平面P2から遠ざかる方向である。本変形例においては第1平面P1と第3平面P3とが平行であるため、当該方向は、第2の方向と一致する。
(第2の放射素子75A)
上述のように、第2の放射素子75Aは、他方の給電点73Abに接続されており、根本部75Aaと、枝部75Abと、首部75Acと、主部75Adとによって構成されている。
根本部75Aaは、第2平面P2において、他方の給電点73Abから第2の方向に延ばされ、上記第2の方向に交わる第3の方向(図示したX−X’線と平行な方向)に対する幅が第1の放射素子74Aの給電点近傍部74Aaより狭くなるように構成された導体である。根本部75Aaの第3の方向に対する幅が、第1の放射素子74Aの第1部分74Aaより狭く構成されていることによって、第1の放射素子74Aの第1部分74Aaから延ばされた第2部分74Ab(第1直線部)と、第2の放射素子の根本部75Aaとが重畳しないように配置することができる。
枝部75Abは、第2平面P2において、根本部75Aaから第3の方向に延ばされた帯状導体である。第1の放射素子74Aから延ばされた第2部分74Abの長さ、及び、根本部75Aaから延ばされた枝部75Abの長さは、互いに重畳しないように定められている。
首部75Acは、第2平面P2において、根本部75Aaの端部から第2の方向に延ばされ、第3の方向に対する幅が根本部75Aaよりも狭い帯状導体である。
主部75Adは、首部75Acの端部に設けられ、形状が楕円形である導体である。
図21の(a)に示すように、第3平面P3に直交する方向から平面視した場合に、第2部分74Abは、第2平面P2に配置された第1の放射素子74Aの給電点73Aaに重畳しないように構成されている。また、第2部分74Abは、第2の放射素子75Aと重畳しない。
(アンテナ71Aの効果)
例えばアンテナ11は、U字型に折り曲げることによって狭小なスペースに実装可能である。その一方で、本願の発明者らは、平面に展開した状態のアンテナとU字型に折り曲げられたアンテナとでは放射特性が変化し、平面に展開した状態のアンテナの放射特性よりも、U字型に折り曲げられたアンテナの放射特性が劣化することを見出した。
アンテナ71Aは、第1の放射素子74Aの第2部分74Abが第1の放射素子74Aの給電点73Aaに重畳しない構成を採用することによって、上述した劣化(アンテナをU字型に折り曲げることに起因する劣化)を抑制することができる。これは、折り曲げられた第1の放射素子74A間に生じる静電容量、すなわち第2部分74Abと一方の給電点73Aaとの間に生じる静電容量を抑制可能であるためである。
また、アンテナ71Aは、第2の放射素子75Aと重畳しない構成を採用することによって、上述した劣化を更に抑制することができる。これは、互いに対向する第2平面P2及び第3平面P3の各々に設けられた第2部分74Abと第2の放射素子75Aとの間に生じる静電容量を抑制可能であるためである。
なお、アンテナ71では、アンテナをU字型に曲げることで生じるアンテナの入力特性の変化を、アンテナ71の一部を車体1のルーフ20の端部に適切に重畳させることで打ち消している。そのため、アンテナ71を使用した場合、車体1(ルーフ20)に対するアンテナ71の設置位置にアンテナの入力特性が敏感になり、そのため、種々の車両への設置の際に不利になるという側面があった。アンテナ71Aでは、上述した劣化(アンテナをU字型に折り曲げることに起因する劣化)を抑制することができるので、U字型に折り曲げられたアンテナを車体1のルーフ20の端部に配置したことに起因する入力特性の変化が小さく、より汎用的に使用できるという長所を有する。
接続部73Aに接続される同軸線とアンテナ71Aとのインピーダンス整合は、第1の放射素子74Aと第2の放射素子75Aとの間に生じる静電容量に依存することが知られている。上述のように構成されたアンテナ71Aは、第1の放射素子と第2の放射素子との間に生じる静電容量を給電領域でのみ生じさせる場合と比較して、上記インピーダンス整合を改善し、アンテナの放射特性を更に向上させることができる。
また、主部の形状が長方形である放射素子と比較して、主部75Adの形状が楕円形であることによって、アンテナ71Aが動作する周波数帯域の低周波側におけるVSWR特性帯域を拡大することができる。
(第2平面P2と第3平面P3との間隔)
アンテナ11を実装するスペースをコンパクト化するという観点では、第2平面P2と第3平面P3との間隔、換言すれば、O−O’線とN−N’線との間隔は、狭い方が好ましい。以下において、この間隔のことをアンテナ11の高さhと称する(図21の(b)参照)。
しかしながら、高さhを低くしていくにしたがって、第2の放射素子75Aの根本部75Aaと、第1の放射素子74Aの第2部分74Abとの間隔d(図21の(c)の断面矢視図参照)も狭くなる。
第2部分74Abと第2の放射素子75Aとが重畳しない構成を採用していても、この間隔dを過度に狭くした場合、第2部分74Abと第2の放射素子75Aの根本部75Aaとの間に生じる静電容量が増大する場合があり、アンテナの放射特性が低下する。
本願の発明者らは、間隔dが第2部分74Abの共振周波数を有する電磁波の真空中における波長の1/20以上、より好ましくは1/16以上になるように構成することによって、放射特性の劣化を十分に抑制可能であることを見出した。
また、第2の放射素子75Aが首部75Acを備えていることによって、第2の放射素子75Aの近傍に同軸線が配置される場合であっても、同軸線がアンテナ装置71Aに与える干渉を抑制することができる。したがって、アンテナ71をU字型に折り曲げることに起因する放射特性の劣化を抑制することができる。また、首部75Acの大きさを適宜調整することによって、アンテナ71Aの動作帯域(主に低周波側)を調整することができる。
(アンテナ71B)
アンテナ71Bは、アンテナ71が備えている第1の放射素子74を第1の放射素子74Bに置換し、アンテナ71が備えている第2の放射素子75を第2の放射素子75Bに置換することによって得られる。
図22の(a)に示すように、第1の放射素子74Bは、一方の給電点73Baに接続されており、P−P’線からQ−Q’線までの領域である給電点近傍部74Ba(請求の範囲に記載の第1部分)と、Q−Q’線から第1の放射素子74Aの末端(接続部73Bと逆側の端部)までの領域である、第2部分74Bb及び第3部分74Bdとにより構成されている。
第2の放射素子75Bは、他方の給電点73Bbに接続されており、根本部75Baと、細首部75Bcと、主部75Bdとによって構成されている。
アンテナ71Bは、図22の(a)に示すP−P’線及びQ−Q’線に沿って谷折りされ、第1の方向に沿った第1平面P1、第2の方向に沿った第2平面P2、及び第1平面P1に交わり、且つ、第2平面P2に対向する第3平面P3に沿うように、U字型に折り曲げられている。その結果、図22の(b)に示すように、外側に誘電体フィルム72が配置され、内側に第1,第2の放射素子74B,75Bが配置されたU字型に折り曲げられたアンテナ71Bが形成される。
第1の放射素子74Bの第2部分74Bbは、給電点近傍部74Aaの端部から1つの方向に延ばされた第1直線部と、当該第1直線部の端部(給電点近傍部74Aaと逆側の端部)から当該第1直線部と交わる方向に延ばされた第2直線部とによって構成されている。上記1つの方向は、第3平面P3に沿い、且つ、第2平面P2から遠ざかる方向である。本変形例においては第1平面P1と第3平面P3とが平行であるため、当該方向は、第2の方向と一致する。
第1の放射素子74Bの第3部分74Bdは、給電点近傍部74Aaの端部から1つの方向に延ばされた第1直線部によって構成されている。
第2の放射素子75Bは、他方の給電点73Bbに接続されており、根本部75Baと、首部75Bcと、主部75Bdとによって構成されている。
根本部75Ba及び首部75Bcの各々は、それぞれ、アンテナ71Aの根本部75Aa及び首部75Acと同様に構成されている。
主部75Bdは、首部75Bcの端部に設けられ、上記第2の方向に延ばされた領域75Bd1と、上記第3の方向に沿う方向に延ばされた領域75bd2とを交互に配置することによってメアンダ状に構成されている。
なお、本変形例においては、首部75Bcの端部に領域75bd2がまず接続され、その後、2組の領域75Bd1と領域75Bd2とが配置される構成を採用している。しかし、首部75Bcの端部に領域75Bd1と領域75Bd2との何れを配置するか、或いは、何組の領域75Bd1と領域75Bd2とを配置するかは、適宜定めることができる。
図22の(b)に示すように、第1の放射素子74Bの第2部分74Bbを第3平面P3に直行する方向から平面視した場合に、第2部分74Bb及び第3部分74Bdは、第1の放射素子74Bの給電点73Baに重畳しないように構成されている。また、第2部分74Bbは、第1部分74Baと反対側の端部である先端領域74Bcを除き、第2の放射素子75Bと重畳しない。
このように構成されたアンテナ71Bは、第1の放射素子74Bの第2部分74Bbを第3平面P3に直行する方向から平面視した場合に、第2部分74Bb及び第3部分74Bdが、第1の放射素子74Bの給電点73Baに重畳しないように構成されているため、アンテナ71Aと同様の効果を奏する。また、主部75Bdがメアンダ形状を有することによって、第2の放射素子75Bのエッジ長を長く構成しつつ、第2の放射素子75Bの素子長(P−P’線から第2の放射素子75Bの端部までの長さ)を抑制することができる。したがって、アンテナ71Bをよりコンパクト化することができる。
なおアンテナ71Bでは、第1の放射素子74Bの先端領域74Bcを第2の放射素子75Bと重畳させており、インピーダンス整合を改善させることができる。
〔第8の実施例〕
図23の(a)は、第5の実施例であるアンテナ71を備えている車載用アンテナ装置70のVSWRの周波数依存性を示すグラフである。実線は、アンテナ71をU字型に折り曲げる前の状態、すなわち、平面に展開した状態で測定したVSWRを示す。破線は、アンテナ71をU字型に折り曲げた状態で測定したVSWRを示す。点線は、U字型に折り曲げた状態のアンテナ71を金属板に重畳させた状態で測定したVSWRを示す。
図23の(b)は、上述したアンテナ71Aを備えている車載用アンテナ装置70(第8の実施例)のVSWRの周波数依存性を示すグラフである。実線、破線、及び点線の各々は、それぞれ、(a)の場合と同様に、アンテナ71Aを展開した状態、アンテナ71AをU字型に折り曲げた状態、及び折り曲げた状態のアンテナ71Aを金属板に重畳させた状態で測定したVSWRを示す。
金属板は、車載用アンテナ装置を車体に搭載した場合におけるルーフを模したものである。したがって、第5及び第8の実施例である車載用アンテナ装置70の各々が実際に運用される状態で得られるVSWRは、点線で示すVSWRに最も近いと考えられる。
図23の(a)を参照すると、アンテナ71は、展開した状態、U字型に折り曲げた状態、更には金属板に重畳させた状態と、その状態を変化させることによって、測定されるVSWRの周波数依存性が大きく形を異ならせることが分かる。
一方、図23の(b)を参照すると、アンテナ91Bは、展開した状態、U字型に折り曲げた状態、更には金属板に重畳させた状態と、その状態を変化させた場合であっても、測定されるVSWRの周波数依存性が安定しており、その形がほとんど変わらないことが分かる。
以上のように、アンテナ71と比較して、アンテナ71Aは、アンテナをU字型に折り曲げることに伴う放射特性の劣化を抑制できることが分かった。また、アンテナ71と比較して、アンテナ71Aは、U字型に折り曲げた状態のアンテナを金属板に重畳させた場合に生じ得る放射特性の劣化も抑制できることが分かった。
したがって、アンテナ71Aは、測定した放射特性をフィードバックしながらアンテナパターンを調整する(最適化する)調整工程を容易にすることができる。展開した状態で得られた放射特性と、運用時に得られる放射特性との間に生じる差が少ないため、展開した状態の放射特性を用いてアンテナパターンを調整することができるためである。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。