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JP2017017888A - インバータの制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】モータジェネレータの駆動にかかわる異常が生じた場合であっても、車両を適切に退避走行させることができるインバータの制御装置を提供する。
【解決手段】モータジェネレータの駆動にかかわる異常が生じているか否かを判定S10し、車両の走行中において異常が生じていると判定されている期間に渡って、車両の走行のためにモータジェネレータを駆動させることを条件として、モータジェネレータの実際の出力トルクを強制的に低下させる。異常が生じていると判定されている状態が閾値時間TBにわたって継続S14した場合、モータジェネレータの駆動を停止S15させる。
【選択図】図3

Description

本発明は、車載主機として回転電機のみを備える車両に適用され、前記回転電機に電気的に接続されたインバータの制御装置に関する。
この種の制御装置としては、下記特許文献1に見られるように、駆動輪のホイール内部又は駆動輪の近傍に配置された回転電機のみを車載主機とし、この回転電機により駆動輪を直接駆動する電気自動車に適用されるものが知られている。詳しくは、この制御装置は、車両の走行中において回転電機に故障が生じたと判定した場合、インバータの操作により、車両の停止が確認されるまで回転電機の制御を停止させる。そして、制御装置は、車両の停止が確認された後に回転電機の停止解除が要求されたと判定した場合、ブレーキによって車両の動作を阻止した状態で、回転電機の故障を再度判定する。
特開2012−191751号公報
車載主機として回転電機のみを備える車両では、回転電機の駆動にかかわる異常が生じた場合に回転電機の駆動が停止されると、車両の駆動力がなくなる。このため、回転電機の駆動停止後、車両を適切に退避走行させることができなくなる懸念がある。
本発明は、回転電機の駆動にかかわる異常が生じた場合であっても、車両を適切に退避走行させることができるインバータの制御装置を提供することを主たる目的とする。
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果について記載する。
本発明は、車載主機として回転電機(11)のみを備える車両(10)に適用され、前記回転電機の出力トルク又は前記出力トルクと正の相関を有するパラメータを制御量とし、前記制御量をその目標値に制御すべく、前記回転電機に電気的に接続されたインバータ(12)を操作するインバータ操作部と、前記回転電機の駆動にかかわる異常が生じているか否かを判定する異常判定部と、前記車両の走行中において前記異常判定部によって異常が生じていると判定されている期間に渡って、前記車両の走行のために前記回転電機を駆動させることを条件として、前記回転電機の実際の出力トルクを強制的に低下させるトルク低下部と、前記異常判定部によって異常が生じていると判定されている状態が閾値時間継続された場合、前記回転電機の駆動を停止させる駆動停止部と、を備えることを特徴とする。
上記発明では、車両の走行中において、車載主機である回転電機の駆動にかかわる異常が生じていると異常判定部によって判定されている状態が閾値時間継続された場合、回転電機の駆動を停止させる。このため、回転電機の駆動にかかわる異常が生じていると判定された場合に回転電機の駆動を即停止させる構成と比較して、車両を退避走行させるための動力源を確保することができる。
上記異常が生じている状況下において車両を退避走行させる場合には、車速が低くされる。ここで、車速が低い場合、車速が高い場合よりも車両に生じる振動が大きくなるといった問題が生じ得る。この振動の発生要因には、回転電機のトルク変動が含まれる。退避走行を行うべき状況下において、車両の振動が大きくなると、ドライバに不安感を与える懸念がある。そこで上記発明では、車両の走行中において異常判定部によって異常が生じていると判定されている期間に渡って、車両の走行のために回転電機を駆動させることを条件として、回転電機の実際の出力トルクを強制的に低下させる。出力トルクを低下させることにより、回転電機のトルク変動を低減できる。このため、退避走行を行うべき状況下において、ドライバに不安感を与えることを回避できる。
このように上記発明によれば、車両を退避走行させるための動力源を確保しつつ、退避走行を行うべき状況下において、ドライバに不安感を与えることを回避できる。これにより、車両を適切に退避走行させることができる。
第1実施形態にかかる車載システムの全体構成図。 トルク制御処理を示すブロック図。 フェールセーフ処理の手順を示すフローチャート。 車速とトルク制限係数との関係を示す図。 電圧位相、モータトルク及びモータ回転速度の関係を示す図。 モータ回転速度とモータ最大トルクとの関係を示す図。 車速と車両感度との関係を示す図。 仮異常判定から本異常判定に移行する場合のフェールセーフ処理の一例を示すタイムチャート。 仮異常判定から通常制御に移行する場合のフェールセーフ処理の一例を示すタイムチャート。 第2実施形態にかかるトルク制御処理を示すブロック図。 車速とフィードバックゲインとの関係を示す図。
(第1実施形態)
以下、本発明にかかる制御装置を、車載主機として回転電機のみを備える電気自動車に適用した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1に示すように、本実施形態にかかる車両10は、1つのモータジェネレータ11、インバータ12、EVECU20、及びINVECU30を備えている。本実施形態では、モータジェネレータ11として、永久磁石同期機を用いており、より具体的には、突極機であるIPMSMを用いている。
車両10は、駆動輪13、従動輪14、電動パワーステアリング装置15、及びブレーキ装置16を備えている。駆動輪13には、デファレンシャルギア17を介して、モータジェネレータ11のロータに連結された出力軸11aが機械的に接続されている。ここで本実施形態では、出力軸11aと駆動輪13との間を接続する動力伝達経路に、変速装置が備えられていない。なお本実施形態では、駆動輪13が前輪であり、従動輪14が後輪である。
電動パワーステアリング装置15は、操舵輪としての駆動輪13の操舵角を操作するハンドルと、操舵用電動機とを備えている。操舵用電動機は、ハンドルの操作力を補助する操舵力を発生する。
ブレーキ装置16は、ドライバのブレーキペダルの踏み込み動作を補助するマスターバックと、電動ポンプとを備え、駆動輪13及び従動輪14にブレーキ力を付与する。電動ポンプは、マスターバックにおけるブレーキ用の負圧を発生させる。
モータジェネレータ11のステータ巻線の各相には、インバータ12が電気的に接続されている。インバータ12は、上アームスイッチSup,Svp,Swpと下アームスイッチSun,Svn,Swnとの直列接続体を3組備えている。上アームスイッチ及び下アームスイッチの直列接続体には、直流電源としてのバッテリ18が接続されている。
U相上,下アームスイッチSup,Sunの接続点には、ステータ巻線のU相が接続されている。V相上,下アームスイッチSvp,Svnの接続点には、ステータ巻線のV相が接続されている。W相上,下アームスイッチSwp,Swnの接続点には、ステータ巻線のW相が接続されている。ちなみに本実施形態では、各スイッチSup〜Swnとして、電圧制御形の半導体スイッチング素子を用いており、より具体的には、IGBTを用いている。そして、各スイッチSup,Svp,Swp,Sun,Svn,Swnには、各フリーホイールダイオードDup,Dvp,Dwp,Dun,Dvn,Dwnが逆並列に接続されている。
車両10は、電圧センサ21、相電流センサ22、回転角センサ23、温度センサ24、及び速度センサ25を備えている。電圧センサ21は、インバータ12に入力されるバッテリ18の電圧を検出する。相電流センサ22は、モータジェネレータ11に流れる3相固定座標系における各相電流のうち、少なくとも2相の電流を検出する。回転角センサ23は、モータジェネレータ11の電気角を検出する。本実施形態では、回転角センサ23として、レゾルバを用いている。
温度センサ24は、インバータ12を構成するスイッチを温度検出対象とする。本実施形態では、各スイッチSup〜Swnのうちインバータ12の駆動時において最も温度が高くなると想定される1つのスイッチを温度検出対象としている。速度センサ25は、車速を検出可能なものであればよく、例えば、ABS用の車輪速センサを用いることができる。
EVECU20は、車両制御を統括する電子制御装置である。EVECU20は、ドライバによるアクセルペダルの踏み込み量に基づいて、モータジェネレータ11の目標トルクTrqを設定する目標値設定部を含む。EVECU20は、設定した目標トルクTrq、及び速度センサ25によって検出された車速Vsを、INVECU30に対して出力する。
INVECU30は、EVECU20よりも下位の電子制御装置である。INVECU30には、電圧センサ21、相電流センサ22、回転角センサ23及び温度センサ24の検出値が入力される。なお本実施形態において、INVECU30がインバータ操作部を含む。
続いて、図2を用いて、本実施形態にかかるモータジェネレータ11のトルク制御について説明する。本実施形態では、モータジェネレータ11に流れる電流を指令電流に制御することにより、モータジェネレータ11の出力トルクを目標トルクTrqに制御する電流フィードバック制御を行う。
2相変換部30aは、相電流センサ22によって検出された相電流と、回転角センサ23によって検出された電気角θとに基づいて、3相固定座標系におけるU,V,W相電流を、2相回転座標系であるdq座標系におけるd軸電流Idr及びq軸電流Iqrに変換する。速度算出部30bは、電気角θに基づいて、モータジェネレータ11の電気角速度ωを算出する。
温度係数設定部30cは、温度センサ24によって検出された温度(以下「素子温度TD」という。)に基づいて、目標トルクTrqを補正するための温度係数Ktを可変設定する。温度係数設定部30cは、インバータ12を構成する各スイッチSup〜Swnを過熱から保護すべく、素子温度TDが高い場合に目標トルクTrqを低下させるための処理部である。本実施形態において、温度係数設定部30cは、素子温度TDが0よりも高い第1規定温度T1以下であると判定した場合、温度係数Ktを1に設定する。この場合、目標トルクTrqが制限されない。温度係数設定部30cは、素子温度TDが第1規定温度T1よりも高くてかつ第2規定温度T2未満であると判定した場合、素子温度TDが高いほど温度係数Ktを小さく設定する。温度係数設定部30cは、素子温度TDが第2規定温度T2以上であると判定した場合、温度係数Ktを0に設定する。この場合、目標トルクTrqが0とされ、モータジェネレータ11の駆動が停止される。
温度乗算部30dは、EVECU20によって設定された目標トルクTrqに温度係数Ktを乗算して出力する。フェールセーフ部30eは、トルク制限係数Kvに基づいて、EVECU20によって設定された目標トルクTrqを補正する。フェールセーフ部30eは、補正した目標トルク「(1−Kv)×Trq」を出力する。なお、フェールセーフ部30eが行う処理については、後に詳述する。また本実施形態において、温度係数設定部30c及び温度乗算部30dが温度補正部に相当する。
選択部30fは、温度乗算部30dの出力値「Kt×Trq」と、フェールセーフ部30eの出力値「(1−Kv)×Trq」とのうち、小さい方を目標補正トルクTtgtとして出力する。指令電流設定部30gは、選択部30fから出力された目標補正トルクTtgtに基づいて、d,q軸指令電流Id*,Iq*を設定する。
d軸偏差算出部30hは、指令電流設定部30gによって設定されたd軸指令電流Id*からd軸電流Idrを減算した値として、d軸電流偏差ΔIdを算出する。q軸偏差算出部30iは、指令電流設定部30gによって設定されたq軸指令電流Iq*からq軸電流Iqrを減算した値として、q軸電流偏差ΔIqを算出する。
d軸指令電圧算出部30jは、d軸電流偏差ΔIdに基づいて、d軸電流Idrをd軸指令電流Id*にフィードバック制御するための操作量として、d軸指令電圧Vd*を算出する。本実施形態では、下式(eq1)に示すように、d軸電流偏差ΔIdを入力とする比例積分制御によってd軸指令電圧Vd*を算出する。
Figure 2017017888
上式(eq1)において、Kpは比例ゲインを示し、Kiは積分ゲインを示す。
q軸指令電圧算出部30kは、q軸電流偏差ΔIqに基づいて、q軸電流Iqrをq軸指令電流Iq*にフィードバック制御するための操作量として、q軸指令電圧Vq*を算出する。本実施形態では、下式(eq2)に示すように、q軸電流偏差ΔIqを入力とする比例積分制御によってq軸指令電圧Vq*を算出する。
Figure 2017017888
なお本実施形態では、d軸指令電圧算出部30jにおけるフィードバックゲインKp,Kiと、q軸指令電圧算出部30kにおけるフィードバックゲインKp,Kiとを同一に設定している。
3相変換部30lは、d,q軸指令電圧Vd*,Vq*、電圧センサ21によって検出された電圧(以下「電源電圧VINV」という。)、及び電気角θに基づいて、dq座標系におけるd,q軸指令電圧Vd*,Vq*を、3相固定座標系におけるU,V,W相指令電圧Vu*,Vv*,Vw*に変換する。本実施形態において、U,V,W相指令電圧Vu*,Vv*,Vw*は、電気角で位相が互いに120°ずつずれた正弦波状又は矩形状の波形となる。
操作部30mは、3相変換部30lから出力された各相指令電圧Vu*,Vv*,Vw*に基づいて、各スイッチSup,Sun,Svp,Svn,Swp,Swnをオンオフするための各操作信号gup,gun,gvp,gvn,gwp,gwnを生成する。操作部30mは、生成した各操作信号gup,gun,gvp,gvn,gwp,gwnを各スイッチSup,Sun,Svp,Svn,Swp,Swnに対して出力する。ここで各操作信号gup〜gwnは、例えば、三角波信号等のキャリア信号と各相指令電圧Vu*,Vv*,Vw*との大小比較に基づいて生成すればよい。上アーム側の駆動信号gup,gvp,gwpと、対応する下アーム側の駆動信号gun,gvn,gwnとは、互いに相補的な信号となっている。このため、上アームスイッチSup、Svp,Swpと、対応する下アームスイッチSun,Svn,Swnとは、交互にオンとされる。
続いて、フェールセーフ部30eが行うフェールセーフ処理について説明する。フェールセーフ部30eは、モータジェネレータ11の駆動にかかわる異常が生じた場合において、車両10を適切に退避走行させるために備えられている。
図3に、フェールセーフ部30eが行う処理の手順を示す。この処理は、フェールセーフ部30eによって繰り返し実行される。
この一連の処理では、まずステップS10において、モータジェネレータ11の駆動にかかわる異常が生じているか否かを判定する。本実施形態では、相電流センサ22によって検出された相電流が実際の相電流からずれている電流検出値異常、回転角センサ23によって検出された電気角θが実際の電気角からずれている角度検出値異常、及び素子温度TDが実際のスイッチの温度からずれている温度検出値異常のうち、いずれかが生じているか否かを判定する。電流検出値異常、角度検出値異常及び温度検出値異常のそれぞれには、センサそのものの異常と、センサ及びINVECU30を電気的に接続する信号線の断線異常とが含まれる。なお本実施形態において、本ステップの処理が異常判定部に相当する。
続くステップS11では、仮異常判定し、仮異常フラグFaを0から1に切り替える。また、図4に示すように、速度センサ25によって検出された車速Vsが低いほど、目標トルクTrqを補正するためのトルク制限係数Kvを大きく設定する。詳しくは、車速Vsが0の場合、トルク制限係数Kvを1に設定し、車速Vsが0よりも高い第1車速(例えば10km/h)の場合、トルク制限係数Kvを1よりも小さい第1係数(例えば0.9)に設定する。また、車速Vsが第1車速よりも高い第2車速(例えば30km/h)の場合、トルク制限係数Kvを第1係数よりも小さい第2係数(例えば0.6)に設定し、車速Vsが第2車速よりも高い第3車速(例えば80km/h)の場合、トルク制限係数Kvを第2係数よりも小さい第3係数(例えば0.2)に設定する。車速Vsが第3車速以下であってかつ、車速Vsが0、第1車速及び第2車速以外の値となる場合、直線補間にてトルク制限係数Kvを設定する。そして、設定したトルク制限係数Kvを「(1−Kv)×Trq」に入力することにより、目標トルクTrqを強制的に低下させる。なお本実施形態では、車速Vsが第3速度よりも高い場合、トルク制限係数Kvを0に設定する。この場合、フェールセーフ部30eにおいて、目標トルクTrqは制限されない。
ちなみに、角度検出値異常が生じていない場合、回転角センサ23によって検出された電気角θに基づいて車速を算出し、算出した車速を用いてトルク制限係数Kvを設定してもよい。
トルク制限係数Kvの設定処理は、トルク低下部に相当し、モータジェネレータ11の駆動にかかわる異常判定がされている状況下において車両10を退避走行させる場合、ドライバに不安感を与えることを回避するための処理である。
モータジェネレータ11の駆動にかかわる異常が生じている状況下において、車速が低いほど、車両10に生じる振動が大きくなる。本実施形態において、振動が大きくなる要因には、モータジェネレータ11にかかわる要因と、車両10にかかわる要因とが含まれる。
まず、モータジェネレータ11にかかわる要因について説明する。図5に、インバータ12の出力電圧ベクトルの位相である電圧位相と、モータジェネレータ11の出力トルクとの関係を示す。ここで、出力電圧ベクトルは、d軸電圧及びq軸電圧によって規定され、電圧位相は、例えば、dq座標系のd軸の正方向と出力電圧ベクトルとのなす角度のことである。本実施形態において、電圧位相は、dq座標系において、d軸を基準として反時計回りの方向が正方向として定義されている。
図5に示すように、モータジェネレータ11の出力トルクの最大値は、モータジェネレータ11の回転速度Nmが低いほど大きくなる。これは、図6に示すように、回転速度Nmが高いほど、モータジェネレータ11の出力トルクの最大値が小さくなるためである。ただし、図5に示すように、出力トルクが最大値となる電圧位相は、回転速度Nmにかかわらず大きく変化しない。このため、電圧位相の変化に対する出力トルクの変化量は、回転速度Nmが低いほど大きくなる。
したがって、角度検出値異常が生じる場合において、検出された電気角θと実際の電気角とのずれが出力トルクに及ぼす影響は、回転速度Nmが低いほど大きくなる。出力トルクに及ぼす影響が大きくなると、d,q軸電流偏差ΔId,ΔIqの変動が大きくなり、その結果出力トルクの変動が大きくなる。また、電流検出値異常が生じる場合にも、d,q軸電流偏差ΔId,ΔIqの変動が大きくなることにより、出力トルクの変動が大きくなる。出力トルクの変動が大きくなると、車両10の振動が大きくなり、ドライバに不安感を与える。
なお、温度検出値異常が生じると、例えば素子温度TDが第1規定温度T1と第2規定温度T2との間で変動することにより、温度係数Ktが変動する。その結果、温度乗算部30dの出力値が大きく変動する。この場合にも、目標補正トルクTtgtが大きく変動し、ドライバに不安感を与える。
続いて、車両にかかわる要因について説明する。図7に、モータジェネレータ11の出力トルクを同一にすることにより車両10の駆動力を同一にした状態における車速と車両感度との関係を示す。ここで車両感度とは、例えば、路面から車輪を介して車体に入力される力に対する車両10の加速度のことである。上記加速度は、車両10の上下方向、左右方向及び前後方向のそれぞれの加速度のうち少なくとも1つを含む。図示されるように、車両10は、車速が低いほど、車両感度が高くなる特性を有している。このため、車速が低いほど、車両10に生じる振動が大きくなる。退避走行が行われる場合、車速が低くされる。このため、退避走行が行われる場合、車両10に生じる振動が大きくなり、ドライバに不安感を与える。
先の図3の説明に戻り、続くステップS12では、ステップS10で異常が生じていると判定され始めてから規定時間TAが経過したか否かを判定する。なお、規定時間TAは、例えば数十msecに設定されている。
ステップS12において、ステップS10で異常が生じていると判定され始めてから規定時間TAが経過する前に、異常が生じていない旨の判定に切り替わったと判定した場合には、ステップS13に進む。ステップS13では、現在のトルク制限係数Kvを0まで徐々に低下させる徐変処理を行う。これにより、フェールセーフ部30eの出力値「(1−Kv)×Trq」は、EVECU20によって設定された目標トルクTrqまで徐々に増加する。またステップS13では、仮異常判定を解除し、仮異常フラグFaを1から0に切り替える。なお本実施形態において、本ステップの処理が解除部に相当する。
一方、ステップS12において、ステップS10で異常が生じていると判定され始めてから規定時間TAが経過したと判定した場合には、ステップS14に進む。ステップS14では、ステップS10で異常が生じていると判定され始めてから閾値時間TBが経過したか否かを判定する。閾値時間TBは、規定時間TAよりも長く設定されており、例えば数百msecに設定されている。
ステップS14において、ステップS10で異常が生じていると判定され始めてから規定時間TAが経過したものの、異常が生じていると判定され始めてから閾値時間TBが経過する前に、異常が生じていない旨の判定に切り替わったと判定した場合には、ステップS13に進む。一方、ステップS14において、ステップS10で異常が生じていると判定され始めてから閾値時間TBが経過したと判定した場合には、ステップS15に進み、本異常判定し、本異常フラグFbを0から1に切り替える。また、目標トルクTrqを補正するためのトルク制限係数Kvを0に設定することにより、モータジェネレータ11の駆動を停止させる。なお本実施形態では、ステップS14において、異常が生じている旨をドライバに通知する処理も行う。また本実施形態において、トルク制限係数Kvを0に設定する処理が駆動停止部に相当する。
続いて図8及び図9に示すタイムチャートを用いて、フェールセーフ処理について説明する。ここで、図8(a),図9(a)はモータジェネレータ11の駆動にかかわる異常の有無の推移を示し、図8(b),図9(b)は仮異常フラグFaの値の推移を示し、図8(c),図9(c)は本異常フラグFbの値の推移を示す。図8(d),図9(d)はトルク制限係数Kvを百分率で表示した値の推移を示し、図8(e),図9(e)は車速Vsの推移を示し、図8(f),図9(f)はq軸電流Iqの推移を示す。図8(g),図9(g)は電動パワーステアリング装置15によって補助される操舵力の推移を示し、図8(h),図9(h)はブレーキ装置16が車輪に付与するブレーキ力の推移を示す。
まず、図8を用いて説明する。図8は、30km/h付近で車両10を走行させている状態から退避走行に移行する場合のフェールセーフ処理を示す。
異常が生じることにより、図8(f)に示すように、q軸電流Iqの変動が大きくなる。時刻t1において、異常が生じていると判定され始める。このため、その後時刻t2において、仮異常フラグFaの値が0から1に切り替えられるとともに、車速Vsに基づいてトルク制限係数Kvが設定される。これにより、その後、目標トルクTrqに対してモータジェネレータ11の出力トルクが強制的に低下させられる。その結果、出力トルクのピークを低減させることができ、車両の振動を低減させることができる。なお図8では、便宜上、時刻t2〜t3の期間において、トルク制限係数Kvを車速Vsに依存しない一定値として示している。
時刻t1から閾値時間TBが経過するまで継続して異常が生じていると判定されることにより、時刻t3において本異常フラグFbの値が0から1に切り替えられる。このため、トルク制限係数Kvが0に設定され、目標補正トルクTtgtが0となる。これにより、モータジェネレータ11の駆動が停止される。ここでは、モータジェネレータ11の駆動が停止される直前まで出力トルクが制限されていることにより、トルク制限係数Kvが0に設定される直前におけるフェールセーフ部30eの出力値「(1−Kv)×Trq」と0との差を小さくできる。その結果、モータジェネレータ11の駆動が停止されることに伴って生じるショックを低減することができる。
ちなみに本実施形態では、モータジェネレータ11の駆動が停止された後も、電動パワーステアリング装置15及びブレーキ装置16に対する通電が継続されている。このため、時刻t3以降の退避走行時において、電動パワーステアリング装置15によりハンドル操作がアシストされ、ブレーキ装置16によりブレーキ操作がアシストされる。その結果、ドライバに退避走行を安全に行わせることができる。
続いて、図9を用いて説明する。図9は、80km/h付近で車両10を高速走行させている場合のフェールセーフ処理を示す。
時刻t1において異常が生じていると判定され始める。その後時刻t2において、仮異常フラグFaの値が0から1に切り替えられるとともに、車速Vsに基づいてトルク制限係数Kvが設定される。ここで時刻t1において生じた異常は、一時的な異常である。一時的な異常には、例えば、相電流センサ22、回転角センサ23及び温度センサ24のいずれかの検出値に一時的にノイズが重畳する異常と、INVECU30に供給される電力が一時的に中断されるいわゆる瞬断とが含まれる。
このため、時刻t1から閾値時間TBが経過する前の時刻t3において、一時的な異常が解消し、異常が生じていないと判定される。これにより、仮異常フラグFaの値が1から0に切り替えられるとともに、徐変処理が開始される。徐変処理により、ドライバの意図しない車両の加速であるいわゆるオーバーランの発生を抑制する。その後、トルク制限係数Kvが0になることにより、車両制御が通常制御に移行する。
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
車両10の走行中において、相電流センサ22、回転角センサ23又は温度センサ24にかかわる異常が生じていると判定されている状態が閾値時間TB継続された場合、トルク制限係数Kvを0とすることにより、モータジェネレータ11の駆動を停止させた。このため、砂漠地帯や極寒地帯等、過酷な環境下を車両10が走行中に上記異常が生じた場合であっても、車両10を退避走行させるための動力源を確保することができる。
また、車両10の走行中において上記異常が生じていると判定されている期間に渡って、目標補正トルクTtgtを0よりも大きな値にすることを条件として、目標補正トルクTtgtを強制的に低下させた。このため、退避走行を行うべき状況下において、車両10の振動を低減することができ、ドライバに不安感を与えることを回避できる。したがって、車両10を適切に退避走行させることができる。
相電流センサ22、回転角センサ23又は温度センサ24にかかわる異常が生じていると判定され始めてから閾値時間TB経過する前に、異常が生じていないとの判定に切り替わった場合、目標トルクTrqの強制的な低下を解除した。異常には、瞬断などの一時的な異常もある。このため、フェールセーフ部30eによって異常が生じたと一旦判断されたとしても、その後異常が生じていない状態に戻ることもある。このため本実施形態によれば、一時的な異常に対してモータジェネレータ11の駆動が停止され、車両10が停止することを回避できる。これにより、車両10の走行を継続させることができる。
異常が生じていると判定され始めてから閾値時間TBが経過する前に、異常が生じていないとの判定に切り替わった場合、トルク制限係数Kvを0まで徐々に低下させた。このため、モータジェネレータ11の出力トルクの強制的な低下が解除される直前の出力トルクを徐々に目標トルクTrqに近づけることができる。これにより、出力トルクの強制的な低下が解除されることに伴いショックが生じることを回避でき、オーバーランの発生を抑制することができる。
異常が生じていると判定され始めてから閾値時間TBが経過するまでの期間に渡って継続して目標トルクTrqを強制的に低下させた。このため、モータジェネレータ11の駆動が停止される直前の出力トルクと0との差を小さくできる。これにより、モータジェネレータ11の駆動が停止されることに伴い生じるショックを低減することができる。ここでは、車速Vsが低いほど、トルク制限係数Kvを大きく設定していることが、モータジェネレータ11の駆動が停止されることに伴い生じるショックの低減効果を大きくしている。
モータジェネレータ11の出力軸11aと駆動輪13との間を接続する動力伝達経路に変速装置が備えられない構成とした。動力伝達経路に変速装置が備えられる構成では、変速装置がモータジェネレータ11のトルク変動を吸収する。これは、変速装置を構成する部材の慣性、及び変速装置を構成する部材同士の滑りなどがあるためである。したがって、本実施形態にかかる車両10では、上記異常が生じた場合にモータジェネレータ11で発生する出力トルクの変動が駆動輪13まで伝わりやすく、車両10の振動を大きくしやすい。このため本実施形態では、異常が生じた場合に目標トルクTrqを低下させるメリットが大きい。
INVECU30にフェールセーフ処理を行わせた。このため、EVECU20にフェールセーフ処理を行わせる構成と比較して、異常が生じた場合に目標トルクTrqを迅速に低下させることができる。
(第2実施形態)
以下、第2実施形態について、上記第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、異常が生じた場合におけるモータジェネレータ11の出力トルクの低下手法を変更する。詳しくは、電流フィードバック制御におけるフィードバックゲインを低下させることにより、出力トルクを低下させる。
図10に、本実施形態にかかるトルク制御のブロック図を示す。なお図10において、先の図2に示した処理と同一の処理については、便宜上、同一の符号を付している。
図示されるように、本実施形態にかかるINVECU30は、フェールセーフ部30e及び選択部30fを備えていない。指令電流設定部30gには、温度乗算部30dの出力値のみが入力される。
フェールセーフ部30nは、基本的には先の図3に示したフェールセーフ処理を行う。詳しくは、フェールセーフ部30nは、図3のステップS11におけるトルク制限係数Kvの設定処理に代えて、フィードバックゲイン設定処理を行う。この処理は、図11に示すように、車速Vsが低いほど、フィードバックゲイン設定処理が行われない通常制御時の比例ゲインKp,積分ゲインKiに対して、比例ゲインKp,積分ゲインKiを小さく設定する処理である。フェールセーフ部30nは、車速Vsが上記第3車速以下であると判定した場合にフィードバックゲイン設定処理を行う。フェールセーフ部30nは、車速Vsが上記第3車速よりも高いと判定した場合、フィードバックゲイン設定処理を行わず、比例ゲインKp,積分ゲインKiとして、通常制御時の比例ゲインKp,積分ゲインKiを用いる。
また、フェールセーフ部30nは、図3のステップS13における徐変処理に代えて、低下させた比例ゲインKp,積分ゲインKiを、通常制御時の比例ゲインKp,積分ゲインKiまで徐々に上昇させる処理を行う。
以上説明した本実施形態によっても、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
(その他の実施形態)
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
・上記各実施形態では、トルク制限係数Kvの設定処理をINVECU30が行ったがこれに限らず、EVECU20が行ってもよい。この場合、INVECU30からEVECU20に対してモータジェネレータ11の駆動にかかわる異常についての情報を伝達すればよい。
・上記第1実施形態において、図3のステップS13の徐変処理を省略してもよい。
・モータジェネレータ11の駆動にかかわる異常に、電圧センサ21によって検出された電源電圧VINVが実際の電源電圧からずれる電圧検出値異常が含まれていてもよい。
また、モータジェネレータ11の駆動にかかわる異常には、上述した異常に限らず、モータジェネレータ11の構成部品の異常等、他の異常が含まれていてもよい。
・図2のd,q軸指令電圧算出部30j,30kにおけるフィードバック制御としては、比例積分制御に限らず、例えば、比例積分微分制御であったり、比例制御であったりしてもよい。ここで上記第2実施形態において、フィードバック制御に微分制御が含まれる場合、出力トルクを強制的に低下させるために用いられるフィードバックゲインには、微分ゲインが含まれる。
・トルク制御としては、電流フィードバック制御に限らず、例えばトルクフィードバック制御であってもよい。トルクフィードバック制御は、モータジェネレータ11の推定トルクを目標トルクTrqにフィードバック制御するための操作量として電圧位相を算出し、算出した電圧位相に基づいてインバータ12の各スイッチSup〜Swnを操作する制御である。なお、推定トルクは、例えばd,q軸電流Idr,Iqrに基づいて推定すればよい。
・上記各実施形態では、モータジェネレータとして突極機を用いたがこれに限らず、非突極機を用いてもよい。この場合、出力トルクに代えて、出力トルクと正の相関を有するq軸電流を制御量としてもよい。また、モータジェネレータとしては、永久磁石型同期機に限らず、例えば巻線界磁型同期機であってもよい。さらに、モータジェネレータとしては、同期機に限らない。
・本発明が適用される車両としては、上記各実施形態に示したものに限らない。例えば、バッテリ18を充電するための専用の発電機と、この発電機を駆動するための専用のエンジンとをさらに備えるレンジエクステンダ車両であってもよい。また、本発明が適用される車両としては、燃料電池車であってもよい。
10…車両、11…モータジェネレータ、12…インバータ、20…EVECU、30…INVECU。

Claims (9)

  1. 車載主機として回転電機(11)のみを備える車両(10)に適用され、
    前記回転電機の出力トルク又は前記出力トルクと正の相関を有するパラメータを制御量とし、前記制御量をその目標値に制御すべく、前記回転電機に電気的に接続されたインバータ(12)を操作するインバータ操作部と、
    前記回転電機の駆動にかかわる異常が生じているか否かを判定する異常判定部と、
    前記車両の走行中において前記異常判定部によって異常が生じていると判定されている期間に渡って、前記車両の走行のために前記回転電機を駆動させることを条件として、前記回転電機の実際の出力トルクを強制的に低下させるトルク低下部と、
    前記異常判定部によって異常が生じていると判定されている状態が閾値時間継続された場合、前記回転電機の駆動を停止させる駆動停止部と、を備えることを特徴とするインバータの制御装置。
  2. 前記異常判定部によって異常が生じていると判定され始めてから前記閾値時間が経過する前に、前記異常判定部による判定が異常有りの判定から異常無しの判定に切り替わった場合、前記トルク低下部による前記実際の出力トルクの低下を解除する解除部をさらに備える請求項1に記載のインバータの制御装置。
  3. 前記解除部は、前記トルク低下部によって低下させた前記実際の出力トルクを、前記制御量が前記目標値に制御されている場合の前記出力トルクまで徐々に増加させるように、前記実際の出力トルクの低下を解除する請求項2に記載のインバータの制御装置。
  4. 前記トルク低下部は、前記車両の走行速度が低いほど、前記実際の出力トルクの低下量を大きくする請求項1〜3のいずれか1項に記載のインバータの制御装置。
  5. 前記トルク低下部は、前記目標値を低下させることにより、前記実際の出力トルクを低下させる請求項1〜4のいずれか1項に記載のインバータの制御装置。
  6. 前記インバータ操作部は、前記制御量を前記目標値にフィードバック制御すべく、前記インバータを操作し、
    前記トルク低下部は、前記フィードバック制御におけるフィードバックゲインの絶対値を低下させることにより、前記実際の出力トルクを低下させる請求項1〜4のいずれか1項に記載のインバータの制御装置。
  7. 前記車両には、前記回転電機に流れる相電流を検出する相電流センサ(22)、及び前記回転電機の回転角を検出する回転角センサ(23)が備えられ、
    前記インバータ操作部は、前記相電流センサによって検出された相電流及び前記回転角センサによって検出された回転角に基づいて、前記制御量を前記目標値にフィードバック制御すべく、前記インバータを操作し、
    前記異常判定部は、前記相電流センサによって検出された相電流が実際の相電流からずれる異常、及び前記回転角センサによって検出された回転角が実際の回転角からずれる異常のうちいずれかが生じているか否かを判定する請求項1〜6のいずれか1項に記載のインバータの制御装置。
  8. 前記車両には、前記インバータを構成するスイッチ(Sup〜Swn)の温度を検出する温度センサ(24)が備えられ、
    前記温度センサによって検出された温度が規定温度以下であると判定した場合、前記目標値をそのまま出力し、前記温度センサによって検出された温度が前記規定温度よりも高いと判定した場合、前記温度センサによって検出された温度が高いほど前記目標値を低くして出力する温度補正部(30c,30d)をさらに備え、
    前記インバータ操作部は、前記温度補正部から出力された前記目標値に前記制御量をフィードバック制御すべく、前記インバータを操作し、
    前記異常判定部は、前記相電流センサによって検出された相電流が実際の相電流からずれる異常、前記回転角センサによって検出された回転角が実際の回転角からずれる異常、及び前記温度センサによって検出された温度が前記スイッチの実際の温度からずれる異常のうちいずれかが生じているか否かを判定する請求項7に記載のインバータの制御装置。
  9. 前記回転電機の出力軸(11a)と前記車両の駆動輪(13)との間を接続する動力伝達経路には、変速装置が備えられていない請求項1〜8のいずれか1項に記載のインバータの制御装置。
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