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JP2017008255A - 保護膜形成用複合シート、保護膜付きチップ、及び保護膜付きチップの製造方法 - Google Patents

保護膜形成用複合シート、保護膜付きチップ、及び保護膜付きチップの製造方法 Download PDF

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JP2017008255A JP2015127417A JP2015127417A JP2017008255A JP 2017008255 A JP2017008255 A JP 2017008255A JP 2015127417 A JP2015127417 A JP 2015127417A JP 2015127417 A JP2015127417 A JP 2015127417A JP 2017008255 A JP2017008255 A JP 2017008255A
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Yoichi Inao
洋一 稲男
尚哉 佐伯
Naoya Saeki
尚哉 佐伯
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Daisuke Yamamoto
大輔 山本
裕之 米山
Hiroyuki Yoneyama
裕之 米山
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Abstract

【課題】ウエハ等のワークのダイシング時に使用した際、保護膜形成用フィルム(保護膜)と粘着剤層との間に切削水が浸入する現象の抑制効果が高い保護膜付きチップを製造できる、保護膜形成用複合シートを提供する。
【解決手段】基材及び粘着剤層を有する粘着シートと、前記粘着剤層上に直接積層した保護膜形成用フィルムとを有し、粘着剤層がエネルギー線硬化型アクリル共重合体を含む粘着剤組成物から形成され、エネルギー線硬化型アクリル共重合体が、官能基含有モノマー由来の構成単位(x2)を35質量%以下含むアクリル系ポリマー(X)に、エネルギー線重合性基を有する重合性化合物(Y)を反応させて得られる、エネルギー線重合性基を導入したアクリル共重合体であり、エネルギー線硬化型アクリル共重合体の式(2)より算出されるαの値が28以下である、保護膜形成用複合シート。
式(2):α=〔P〕×〔Q〕×〔R〕/100
【選択図】なし

Description

本発明は、半導体ウエハや半導体チップ等のワークの裏面に保護膜を形成でき、半導体チップの製造効率の向上が可能な保護膜形成用複合シート、半導体チップの裏面に前記複合シートの保護膜形成用フィルムが硬化してなる保護膜を有する保護膜付きチップ、並びに保護膜付きチップの製造方法に関する。
近年、いわゆるフェースダウン(face down)方式と呼ばれる実装法を用いた半導体装置の製造が行われている。フェースダウン方式においては、回路面上にバンプ等の電極を有する半導体チップ(以下、単に「チップ」ともいう)が用いられ、前記電極が基板と接合される。このため、チップの回路面とは反対側の表面(チップ裏面)は剥き出しとなることがある。
この剥き出しとなったチップ裏面は、有機材料からなる保護膜により保護され、保護膜付きチップとして半導体装置に取り込まれることがある。一般的に、この保護膜付きチップは、ウエハ裏面に液状の樹脂をスピンコート法等により塗布して塗膜を形成し、前記塗膜を乾燥及び硬化させて、ウエハ裏面上に保護膜を形成し、ウエハと共に保護膜を切断して得ることができる。
しかしながら、上記チップの製造方法は、工程数が増加し、製品コストの上昇を招く。
また、このようにして液状の樹脂から形成される保護膜は、厚さの精度が充分でないため、得られる保護膜付きチップの歩留まりの低下が問題となる場合が多い。
上記問題を解決するための手段として、特許文献1には、剥離シートと、前記剥離シート上に形成されたエネルギー線硬化性成分とバインダーポリマー成分とからなる保護膜形成層を有するチップ保護用フィルムが開示されている。
半導体チップが薄型化・高密度化しつつある現在においては、厳しい温度条件下に曝された場合であっても、保護膜付チップを実装した半導体装置には、さらに高い信頼性を有することが要求されている。
本発明者らの検討によれば、特許文献1に記載のチップ用保護フィルムは、保護膜形成層を硬化する際に収縮し、半導体ウエハが反るという問題が発生する恐れがあった。特に、極薄の半導体ウエハでは、上記問題が顕著に生じ得る。半導体ウエハが反ると、ウエハの破損や、保護膜へのマーキング(印字)精度が低下の恐れがある。
このような問題を解決するために、本出願人は、特許文献2において、保護膜形成層からなる略円形の領域と、前記領域を取り囲む再剥離粘着剤からなる環状の領域とを上面に有するシートからなる保護膜形成兼ダイシング用シートを提案している。
この保護膜形成兼ダイシング用シートの保護膜形成層上に半導体ウエハを載置して、シートの周縁部をリングフレームで固定した状態でレーザーマーキングを行えば、ウエハの反りが矯正された状態が保たれるので印字の精度が向上する。
また、前記シートはダイシングシートも兼ねるので、別途ダイシングシートを用意する必要がなく、生産性も著しく向上する。
特許文献2に記載の方法では、保護膜形成兼ダイシング用シート上にウエハを固定し、ウエハが固定された状態で保護膜形成層を加熱硬化し、ウエハ上に保護膜を形成している。
特開2009−138026号公報 特開2006−140348号公報
しかしながら、上記構成の保護膜形成兼ダイシング用シートを含め、粘着シートの粘着剤層上に、上述の保護膜形成層のような保護膜形成用フィルムを積層したダイシング用シートにおいては、前記ダイシング用シートを貼付したウエハのダイシング時に、保護膜形成用フィルム(保護膜)と粘着剤層との間に、切削水が浸入し、製造される保護膜付きチップが汚染されるという問題点があった。
本発明は、ウエハ等のワークのダイシング時に使用した際、保護膜形成用フィルム(保護膜)と粘着剤層との間に切削水が浸入する現象の抑制効果が高い保護膜付きチップを製造できる保護膜形成用複合シート、保護膜付きチップ、及び保護膜付きチップの製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、保護膜形成用複合シートが有する粘着剤層を、エネルギー線重合性基が導入された特定の特性を有するエネルギー線硬化型アクリル重合体を含む粘着剤組成物から形成することで、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、下記〔1〕〜〔12〕を提供するものである。
〔1〕.基材及び粘着剤層を有する粘着シートと、前記粘着剤層上に直接積層した保護膜形成用フィルムと、を有する保護膜形成用複合シートであって、前記粘着剤層が、エネルギー線硬化型アクリル共重合体を含む粘着剤組成物から形成されてなる層であり、前記エネルギー線硬化型アクリル共重合体が、官能基含有モノマー由来の構成単位(x2)を35質量%以下含むアクリル系ポリマー(X)に、エネルギー線重合性基を有する重合性化合物(Y)を反応させて得られる、エネルギー線重合性基を導入したアクリル共重合体であり、前記エネルギー線硬化型アクリル共重合体の下記式(2)より算出されるαの値が28以下である、保護膜形成用複合シート。
式(2):α=〔P〕×〔Q〕×〔R〕/100
〔式(2)中、〔P〕は、アクリル系ポリマー(X)の全構成単位100質量部に対する、官能基含有モノマー由来の構成単位(x2)の含有割合を示す。〔Q〕は、アクリル系ポリマー(X)が有する前記官能基含有モノマー由来の官能基100当量に対する、重合性化合物(Y)の当量を示す。〔R〕は、重合性化合物(Y)が有するエネルギー線重合性基の基数を示す。〕
〔2〕.前記アクリル系ポリマー(X)が、メチルメタクリレート由来の構成単位(x1)を10質量%以上含む、〔1〕に記載の保護膜形成用複合シート。
〔3〕.前記粘着剤層の少なくとも一部が硬化した硬化領域を形成し、前記硬化領域上に前記保護膜形成用フィルムが直接積層した構成を有する、〔1〕又は〔2〕に記載の保護膜形成用複合シート。
〔4〕.前記エネルギー線重合性基が(メタ)アクリロイル基である、〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載の保護膜形成用複合シート。
〔5〕.前記保護膜形成用フィルムが、(A)重合体成分、及び(B)硬化性成分を含む、〔1〕〜〔4〕のいずれか一項に記載の保護膜形成用複合シート。
〔6〕.(B)硬化性成分が、(B1)熱硬化性成分を含む、〔5〕に記載の保護膜形成用複合シート。
〔7〕.前記保護膜形成用複合シートが有する保護膜形成用フィルムをワークに貼付した後、前記保護膜形成用複合シートから前記保護膜形成用フィルムを剥離せずに、130℃、2時間の条件下で、前記保護膜形成用フィルムを硬化させて保護膜を形成した場合に、前記保護膜のグロス値が40以上である、〔1〕〜〔6〕のいずれか一項に記載の保護膜形成用複合シート。
〔8〕.前記基材が、ポリプロピレンを含む基材である、〔1〕〜〔7〕のいずれか一項に記載の保護膜形成用複合シート。
〔9〕.チップの裏面に、〔1〕〜〔8〕のいずれか一項に記載の保護膜形成用複合シートの保護膜形成用フィルムが硬化してなる保護膜を有する、保護膜付きチップ。
〔10〕.前記保護膜付きチップのチップがある側とは反対側から測定した保護膜のグロス値が40以上である、〔9〕に記載の保護膜付きチップ。
〔11〕.下記工程(1)〜(4)を有する、保護膜付きチップの製造方法。
工程(1):ワークの裏面に、〔1〕〜〔8〕のいずれか一項に記載の保護膜形成用複合シートを貼付する工程
工程(2):ワークをダイシングする工程
工程(3):前記保護膜形成用複合シートの粘着シートを剥離せずに保護膜形成用フィルムを硬化させる工程
工程(4):工程(1)〜(3)を経て得られたダイシングされた保護膜付きワークをピックアップし、保護膜付きチップを得る工程
〔12〕.〔11〕に記載の製造方法により得られる保護膜付きチップであって、前記保護膜付きチップのチップがある側とは反対側から測定した保護膜のグロス値が40以上である、保護膜付きチップ。
本発明の保護膜形成用複合シートを、ウエハ等のワークのダイシング時に使用することで、保護膜形成用フィルム(保護膜)と粘着剤層との間に切削水が浸入する現象の抑制効果が高い保護膜付きチップを製造できる。
本発明の保護膜形成用複合シートの第1〜第4の構成を示す、保護膜形成用複合シートの断面図である。 本発明の保護膜形成用複合シートの第5〜第7の構成を示す、保護膜形成用複合シートの断面図である。
以下の本明細書中の記載において、樹脂の重量平均分子量(Mw)の値は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定されるポリスチレン換算の値であり、具体的には実施例に記載の方法に基づいて測定した値である。
また、樹脂のガラス転移温度(Tg)の値は、下記式(1)で計算した絶対温度(単位:K)のガラス転移温度(Tg)を、摂氏温度(単位:℃)に換算した値である。
Figure 2017008255
〔上記式(1)中、W、W、W、W・・・は、樹脂を構成するモノマー成分の質量分率(質量%)を示し、Tg、Tg、Tg、Tg・・・は、樹脂を構成するモノマー成分のホモポリマーの絶対温度(K)表示のガラス転移温度を示す。〕
さらに、本願において、例えば「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及び「メタクリレート」の双方を示す語として用いており、他の類似用語についても同様である。
また、本願において、「エネルギー線」としては、例えば、紫外線又は電子線等が挙げられ、紫外線又は電子線が好ましい。
〔保護膜形成用複合シート〕
本発明の保護膜形成用複合シート(以下、単に「複合シート」ともいう)は、基材及び粘着剤層を有する粘着シートと、前記粘着剤層上に直接積層した保護膜形成用フィルムと、を有するものである。
図1及び図2は、本発明の複合シートの構成の一例を示す、複合シートの断面図である。
なお、本発明の複合シートは、長尺テープ状、単葉のラベル等の形態であってもよい。
本発明の複合シートの第1〜4の構成として、図1(a)〜(d)に示すような複合シート1a、1b、1c、1dが挙げられる。
本発明の複合シートとしては、図1(a)の複合シート1aのように、基材11上に粘着剤層12を有する粘着シート10と、粘着剤層12上の一部に直接積層した保護膜形成用フィルム20とを有する構成のものが挙げられる。この複合シート1aが有する粘着シート10の大きさは、保護膜形成用フィルム20を包含できる形状であればよい。
この複合シート1aは、保護膜形成用フィルム20が積層せずに表出した粘着剤層12の部分は、粘着性を保持しているため、リングフレーム等の治具を固定することができる。
また、本発明の複合シートは、図1(b)の複合シート1bのように、粘着剤層12上の全面に保護膜形成用フィルム20が直接積層された構成であってもよい。
この複合シート1bは、保護膜形成用フィルム20と粘着シート10とは同形状となる。
なお、本発明の複合シートは、保護膜形成用フィルム20側から見下ろして平面視したときに、保護膜形成用フィルム20が、半導体ウエハ等のワークと略同一形状もしくはワークの形状全体を含むことのできる形状に調整された、複合シート1bのような構成であってもよく、保護膜形成用フィルム20よりも大きなサイズの粘着シート10に積層されている複合シート1aのような構成であってもよい。
また、本発明の複合シートは、図1(c)の複合シート1cのように、粘着剤層12の少なくとも一部が硬化した硬化領域12aを形成し、前記硬化領域12a上に保護膜形成用フィルム20が直接積層した構成を有するものとしてもよい。
硬化領域12aは、粘着剤層12の少なくとも表面において粘着剤層12が硬化した平面視における領域である。
硬化領域12aは、粘着剤層12の少なくとも保護膜形成用フィルム20が積層する位置に形成されていることが好ましく、粘着剤層12の全領域が硬化して、粘着剤層12内の全領域に渡り硬化領域が形成されていてもよい。
図1(c)の複合シート1cのような構成を有する複合シートは、チップ製造時に用いた際に、ピックアップ適性に優れ、保護膜形成用フィルムから形成される保護膜のグロス値が高く、保護膜表面のレーザー印字部分の視認性に優れた保護膜付きチップを製造し得る。
得られる複合シートをチップ製造時に用いた際に、ピックアップ適性に優れる理由としては、形成される硬化領域12aが、前記硬化領域12a以外の粘着剤層12の部分と比べて、流動性が低下するためと考えられる。
また、複合シートを用いて形成される保護膜のグロス値が向上する理由としては、硬化領域12aは、加熱時における流動性が低く保たれるため、硬化領域12a上に直接積層した保護膜形成用フィルムを加熱硬化して保護膜を形成する過程でも、硬化領域12aの表面の平滑性を維持することができるためと考えられる。
硬化領域12aは、平面視にて、保護膜形成用フィルム20と同形状であることが好ましいが、保護膜形成用フィルム20の形状よりも大きく、保護膜形成用フィルム20全体を含む形状であってもよい。
また、硬化領域12aの粘着性は低下するが、硬化領域12a以外の粘着剤層12の表面は、高い粘着性を有していることが好ましい。
粘着剤層12がエネルギー線硬化型アクリル共重合体を含む粘着剤組成物から形成されてなる層であるため、硬化領域12aは、粘着剤層12の少なくとも一部にエネルギー線を照射し、粘着剤層の一部又は全部を硬化させることにより形成することができる。
硬化領域12aにおける粘着剤層の硬化反応の進行の程度は、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上、更に好ましくは90%以上であり、完全に硬化していることが特に好ましい。
エネルギー線の照射は、基材11側から行ってもよいし、保護膜形成用フィルム20側から行ってもよく、保護膜形成用フィルム20と粘着シートを貼り合わせる前にエネルギー線照射を行う場合には、保護膜形成用フィルム20と貼り合わされるべき面の側から行ってもよい。
また、図1(d)の複合シート1dのように、基材11と粘着剤層12との境界の一部に、印刷等によりエネルギー線遮蔽層13を設け、基材11側からエネルギー線を照射することで、硬化領域12aと、未硬化で高粘着性の粘着剤層12とを、分けて形成することが容易にできる。
さらに本発明の複合シートは、リングフレーム等の治具と接着する際に、前記治具に対する接着力を向上させる目的で、図2(a)〜(b)に示すように、複合シートの外周部に、治具接着層31を設けた構成としてもよい。
図2(a)の複合シート2aは、粘着剤層12上の一部に、保護膜形成用フィルム20が積層し、更に治具接着層31を設けた構成を有している。この複合シート2aは、粘着剤層12を硬化して硬化領域を形成し粘着力が低下している場合や、保護膜形成後に粘着シート10の剥離を容易とするために粘着剤層の粘着性を低減させている場合においても、粘着剤層12上に治具接着層31を設けることで治具との接着力を良好とすることができる。
また、図2(b)の複合シート2bは、平面視にて、保護膜形成用フィルム20と粘着シート10とが同形状であり、保護膜形成用フィルム20の表面の外周部に、治具接着層31を設けた構成を有している。保護膜形成用フィルム20についても、治具を接着するだけの接着力を有しておらず、治具接着層31を設けることで、治具との接着力を向上させることができる。
なお、図2(a)の複合シート2a、及び図2(b)の複合シート2bも、上述の理由から、粘着剤層12の少なくとも保護膜形成用フィルム20が積層する位置に硬化領域が形成されていることが好ましく、粘着剤層12の全領域が硬化して、粘着剤層12内の全領域に渡り硬化領域が形成されていてもよい。
治具接着層31は、基材(芯材)を有する両面粘着シートや、粘着剤の単層からなる層により形成することができる。
治具接着層31を形成するために用いる基材(芯材)としては、後述する基材11と同じものを用いることができ、例えば、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、液晶ポリマーフィルム等が挙げられ、ポリプロピレンフィルムが好ましい。
また、治具接着層31を形成するために用いる粘着剤としては、粘着剤の機能による分類によれば、例えば、エネルギー線硬化型粘着剤、表面凹凸のある粘着剤、熱膨張性粘着剤等が挙げられ、粘着剤中の主剤樹脂による分類によれば、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ビニルエーテル系粘着剤等が挙げられる。
治具接着層31の厚さは、好ましくは1〜80μm、より好ましくは5〜60μm、更に好ましくは10〜40μmである。
また、本発明の複合シートとして、図2(c)に示すように、複数の層が積層された粘着剤層を有する複合シート2cであってもよい。
すなわち、図2(c)の複合シート2cは、保護膜形成用フィルム20と直接積層する粘着剤層12以外に、基材11と粘着剤層12との間に、粘着剤層12とは別に、治具接着用粘着剤層41を設けた構成を有する。すなわち、複合シート2cは、基材11、治具接着用粘着剤層41及び粘着剤層12がこの順に積層されてなる粘着シート10aを有する。
治具接着用粘着剤層41を設けることで、治具接着用粘着剤層41の平面視したときの領域のうち、粘着剤層12が存在しない領域と、リングフレーム等の治具とを接着する際に、前記治具に対する接着性を高めつつも、保護膜形成用フィルム20と粘着剤層12との界面における接着性を制御できる。その結果、この複合シートを用いてチップを製造する際、保護膜付きチップのピックアップの作業性を向上させることができる。
なお、図2(c)の複合シート2cも、上述の理由から、粘着剤層12の少なくとも保護膜形成用フィルム20が積層する位置に硬化領域が形成されていることが好ましく、粘着剤層12の全領域が硬化して、粘着剤層12内の全領域に渡り硬化領域が形成されていてもよい。
治具接着用粘着剤層41を形成する粘着剤としては、例えば、上述の治具接着層31を形成する粘着剤と同じものが挙げられるが、粘着剤層12よりも高い粘着性を発現する粘着剤が好ましい。
治具接着用粘着剤層41の厚さは、好ましくは1〜50μm、より好ましくは3〜40μm、更に好ましくは3〜30μmである。
なお、本発明の複合シートにおいて、保護膜形成用フィルム20の表面、保護膜形成用フィルム20が積層されずに表出している粘着剤層12の表面、治具接着層31の表面、及び粘着剤層12が積層されずに表出している治具接着用粘着剤層41の表面には、さらに剥離シートを設けてもよい。
剥離シートは、剥離シート用基材の少なくとも片面に剥離剤を塗布し剥離処理を施したものが挙げられる。
剥離シート用基材としては、例えば、後述の基材を構成する樹脂フィルムと同じものが挙げられる。
剥離剤としては、例えば、アルキッド系剥離剤、シリコーン系剥離剤、フッ素系剥離剤、不飽和ポリエステル系剥離剤、ポリオレフィン系剥離剤、ワックス系剥離剤等挙げられる。これらの中でも、耐熱性の観点から、アルキッド系剥離剤、シリコーン系剥離剤、フッ素系剥離剤が好ましい。
剥離シートの厚さは、特に制限はないが、好ましくは10〜500μm、より好ましくは15〜300μm、更に好ましくは20〜200μmである。
以下、本発明の複合シートを構成する、基材、粘着剤層、保護膜形成用フィルムの詳細について説明する。
<基材>
本発明で用いる粘着シートの基材としては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢酸ビニル共重合体フィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム等の樹脂フィルムが挙げられる。
なお、これらの樹脂フィルムは、架橋フィルムであってもよい。
また、基材としては、1種の樹脂フィルムからなる単層フィルムであってもよいし、2種以上の樹脂フィルムを積層した複層フィルムであってもよい。他に、基材として、着色した樹脂フィルムを用いてもよい。
これらの中でも、耐熱性に優れる樹脂フィルムが好ましい。
保護膜形成用フィルムが熱硬化性であり、粘着シートから剥離する前に保護膜形成用フィルムを熱硬化させる場合であっても、基材として耐熱性に優れる樹脂フィルムを用いることで、基材の熱によるダメージを抑制し、半導体装置の製造プロセスにおける不具合の発生を抑制できる。
さらに、基材としては、耐熱性に優れると共に、適度な柔軟性を有するためにエキスパンド適性を有し、複合シートをチップの製造に用いた際に、良好なピックアップ適性も維持されやすいとの観点から、ポリプロピレンフィルムを含む基材が好ましい。
なお、ポリプロピレンフィルムを含む基材の構成としては、ポリプロピレンフィルムのみからなる単層構造であってもよいし、ポリプロピレンフィルムと他の樹脂フィルムとからなる複層構造であってもよい。
基材の厚さは、好ましくは10〜500μm、より好ましくは15〜300μm、更に好ましくは20〜200μmである。
<粘着剤層>
粘着剤層は、エネルギー線硬化型アクリル共重合体を含む粘着剤組成物から形成されてなる層である。そして、前記エネルギー線硬化型アクリル共重合体は、官能基含有モノマー由来の構成単位(x2)を35質量%以下含むアクリル系ポリマー(X)に、エネルギー線重合性基を有する重合性化合物(Y)を反応させて得られる、エネルギー線重合性基を導入したものである。
前記粘着剤組成物は、前記エネルギー線硬化型アクリル共重合体の他に、硬化反応を短時間で効率的に進行させる観点から、光重合開始剤を含有することが好ましく、また、形成される粘着剤層の凝集力及び接着力を向上させる観点から、架橋剤を含有することが好ましい。
なお、図1(c)、(d)に示された複合シート1c、1dの構成のように、本発明で用いる粘着シート10の粘着剤層12の少なくとも一部は、硬化領域12aを含むことが好ましい。
粘着剤層の厚さは、好ましくは1〜100μm、より好ましくは3〜50μm、更に好ましくは5〜25μmである。
以下、粘着剤層を形成する粘着剤組成物に含まれる各成分について詳述する。
[エネルギー線硬化型アクリル共重合体]
本発明で用いるエネルギー線硬化型アクリル共重合体は、官能基含有モノマー由来の構成単位(x2)を35質量%以下含むアクリル系ポリマー(X)に、エネルギー線重合性基を有する重合性化合物(Y)を反応させて得られる、エネルギー線重合性基を導入したアクリル共重合体である。
粘着剤層を構成する粘着剤組成物中にエネルギー線硬化型アクリル共重合体を含有することで、複合シートをウエハ等のワークに貼付してチップを製造する際、エネルギー線の照射により粘着剤層の粘着力を低下させることができるため、ピックアップ性を良好とすることができる。また、粘着剤層内に硬化領域を形成することも可能となる。
アクリル系ポリマー(X)に導入される前記エネルギー線重合性基は、エネルギー線重合性の炭素−炭素二重結合を含む基であり、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等が挙げられる。これらの中でも、エネルギー線重合性基の導入が容易であるとの観点から、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
前記エネルギー線重合性基は、アクリル系ポリマー(X)の主鎖に導入されていてもよく、側鎖に導入されていてもよい。
なお、前記エネルギー線重合性基は、アクリル系ポリマー(X)と直接結合されていてもよいし、アルキレン基、アルキレンオキシ基、ポリアルキレンオキシ基等の連結基を介して、アクリル系ポリマー(X)と結合されていてもよい。
エネルギー線硬化型アクリル共重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは10万〜150万、より好ましくは20万〜120万、更に好ましくは30万〜100万、特に好ましくは40万〜80万である。
Mwが10万以上であれば、グロス値が高い保護膜を形成し得る。また、粘着剤層が保護膜形成用フィルムの表面に転着して、保護膜形成用フィルムの表面を汚染してしまう現象を抑制することができる。
一方、Mwが150万以下であれば、粘着剤層と保護膜形成用フィルムとの密着性がさらに良好となり、ダイシング時に粘着剤層と保護膜形成用フィルムとの間に、切削水が浸入する現象をより高度に抑制することができる。
粘着剤組成物の全有効成分(100質量%)に対する、エネルギー線硬化型アクリル共重合体の配合量は、好ましくは60〜100質量%、より好ましくは70〜99.9質量%、更に好ましくは80〜99質量%、特に好ましくは90〜98質量%である。
前記エネルギー線硬化型アクリル共重合体は、アクリル系ポリマー(X)と、重合性化合物(Y)が有する基とが反応し、アクリル系ポリマー(X)の主鎖及び/又は側鎖に、重合性化合物(Y)が有するエネルギー線重合性基が導入されたものである。 以下、アクリル系ポリマー(X)及び重合性化合物(Y)について説明する。
(アクリル系ポリマー(X))
アクリル系ポリマー(X)は、官能基含有モノマー由来の構成単位(x2)を35質量%以下含むものである。
官能基含有モノマー由来の構成単位(x2)を35質量%以下含むアクリル系ポリマー(X)を用いることで、形成される粘着剤層と保護膜形成用フィルムとの密着性を良好に保つことができる。その結果、得られる複合シートをチップの製造に用いる際、ダイシング時に保護膜形成用フィルム(保護膜)と粘着剤層との間に、切削水が浸入してしまう現象を抑制できる。
構成単位(x2)が有する官能基は、重合性化合物(Y)が有する基と反応する。
前記官能基としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、エポキシ基、アミノ基、シアノ基、ケト基、窒素原子含有環式基(環骨格を構成する原子として窒素原子を有する基)、アルコキシシリル基等が挙げられる。
構成単位(x2)を構成する官能基含有モノマーとしては、例えば、ヒドロキシ基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、シアノ基含有モノマー、ケト基含有モノマー、窒素原子含有環を有するモノマー、アルコキシシリル基含有モノマー等が挙げられる。
これらの官能基含有モノマーは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、ヒドロキシ基含有モノマーが好ましい。
前記ヒドロキシ基含有モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;ビニルアルコール、アリルアルコール等の不飽和アルコール類等が挙げられる。
これらの中でも、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
前記カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等が挙げられる。
前記エポキシ基含有モノマーとしては、例えば、エポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル及び非アクリル系エポキシ基含有モノマーが挙げられる。
エポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート、3−エポキシシクロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、非アクリル系エポキシ基含有モノマーとしては、例えば、グリシジルクロトネート、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。
これらの官能基含有モノマーは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
構成単位(x2)の含有割合は、アクリル系ポリマー(X)の全構成単位(100質量%)に対して、好ましくは1〜35質量%、より好ましくは5〜35質量%、更に好ましくは7〜33質量%、特に好ましくは10〜33質量%である。そして、構成単位(x2)の前記含有割合の上限値は、例えば、27質量%、25質量%及び23質量%等のいずれかから選択することもできる。
構成単位(x2)の前記含有割合が1質量%以上であれば、アクリル系ポリマー(X)の重合性化合物(Y)との反応点がより多くなり、重合性化合物(Y)の付加量を増やすことができる。その結果、硬化性のより高い粘着剤層を形成し得る。
一方、構成単位(x2)の前記含有割合が35質量%以下であれば、形成される粘着剤層の親水性の度合いが過剰に大きくなることを抑え、粘着剤層と保護膜形成用フィルム(保護膜)との間に切削水が浸入してしまう現象を防ぐことができる。また、粘着剤組成物の溶液を塗布液として塗布し、粘着剤層を形成する工程において、十分なポットライフを確保することができる。
前記アクリル系ポリマー(X)は、官能基含有モノマー由来の構成単位(x2)以外に、さらに、メチルメタクリレート由来の構成単位(x1)を含むものであってもよい。すなわち、前記エネルギー線硬化型アクリル共重合体は、メチルメタクリレート由来の構成単位(x1)及び官能基含有モノマー由来の構成単位(x2)を含むアクリル系ポリマー(X)に、エネルギー線重合性基を有する重合性化合物(Y)を反応させて得られるアクリル共重合体であってもよい。
前記アクリル系ポリマー(X)が構成単位(x1)を含む場合、構成単位(x1)の含有割合は、アクリル系ポリマー(X)の全構成単位(100質量%)に対して、好ましくは10質量%以上、より好ましくは10〜80質量%、さらに好ましくは15〜75質量%、特に好ましくは20〜70質量%、とりわけ好ましくは25〜65質量%、最も好ましくは27〜60質量%である。
構成単位(x1)の前記含有割合が10質量%以上であれば、形成される粘着剤層について、加熱時における流動性が低く保たれ、保護膜形成用フィルムを加熱硬化させる際に、粘着剤層の表面の平滑性を維持することができ、保護膜のグロス値を向上させることができる。また、形成される粘着剤層と保護膜形成用フィルムとの密着性を良好に保つことができる。その結果、得られる複合シートをチップの製造に用いる際、ダイシング時に保護膜形成用フィルム(保護膜)と粘着剤層との間に、切削水が浸入してしまう現象を抑制しつつも、ピックアップ性を良好に維持することができる。
アクリル系ポリマー(X)は、粘着剤層の粘着性を向上させ、粘着剤層と保護膜形成用フィルムとの密着性をより向上させる観点から、さらに、メチルメタクリレート以外のアルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位(x3)を含むことが好ましい。
構成単位(x3)を構成するアルキル(メタ)アクリレートとしては、前記官能基含有モノマー及びメチルメタクリレートと共重合可能なモノマーであれば特に制限はなく、例えば、メチルアクリレートであってもよいが、粘着剤層の粘着性を向上させ、粘着剤層と保護膜形成用フィルムとの密着性をより向上させる観点から、炭素数2〜18のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、又は環状骨格を有する(メタ)アクリレートが好ましく、炭素数2〜18のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートがより好ましい。なお、本明細書において「アルキル(メタ)アクリレート」が有する「アルキル基」とは、特に断りのない限り、アルキルエステルを構成するアルキル基を意味する。
アルキル(メタ)アクリレートが有するアルキル基の炭素数は、好ましくは2〜18、より好ましくは2〜12、更に好ましくは4〜10である。
炭素数2〜18のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート(ラウリル(メタ)アクリレート)、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート(ミリスチル(メタ)アクリレート)、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート(パルミチル(メタ)アクリレート)、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート(ステアリル(メタ)アクリレート)、イソオクタデシル(メタ)アクリレート(イソステアリル(メタ)アクリレート)等が挙げられる。
環状骨格を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イミドアクリレート等が挙げられる。
これらのモノマーは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、粘着剤層の粘着性を向上させ、粘着剤層と保護膜形成用フィルムとの密着性をより向上させる観点から、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましく、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートがより好ましい。
構成単位(x3)の含有割合は、アクリル系ポリマー(X)の全構成単位に対して、好ましくは10〜85質量%、より好ましくは15〜85質量%、更に好ましくは20〜83質量%、特に好ましくは25〜83質量%である。そして、構成単位(x3)の前記含有割合の上限値は、例えば、75質量%、70質量%、65質量%及び60質量%等のいずれかから選択することもできる。
アクリル系ポリマー(X)は、前記構成単位(x1)〜(x3)以外のその他の構成単位を含んでいてもよい。
その他の構成単位が由来するモノマーとしては、アクリロニトリル、スチレン等のモノマーが挙げられる。
なお、アクリル系ポリマー(X)の共重合の形態は、特に限定されず、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体のいずれであってもよい。
アクリル系ポリマー(X)の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは10万〜150万、より好ましくは20万〜120万、更に好ましくは30万〜100万である。
また、アクリル系ポリマー(X)のガラス転移温度(Tg)は、粘着剤層の粘着性を適度な範囲に調整し、形成される粘着剤層と保護膜形成用フィルムとの密着性をより向上させることができる観点から、好ましくは−66〜10℃、より好ましくは−64〜10℃、更に好ましくは−62〜10℃である。そして、アクリル系ポリマー(X)のガラス転移温度(Tg)の下限値は、例えば、−50℃、−40℃及び−30℃等のいずれかから選択することもできる。前記下限値が−50℃以上であれば、粘着剤層と保護膜形成用フィルムとの密着性をより向上させつつ、ピックアップ適性も良好に保つことができる。
アクリル系ポリマー(X)の合成方法については、特に限定されるものではなく、例えば溶剤、重合開始剤、連鎖移動剤等の存在下で溶液重合する方法や、乳化剤、重合開始剤、連鎖移動剤、分散剤等の存在下の水系でエマルション重合する方法にて製造される。なお、前記重合方法において、必要に応じて、増粘剤、濡れ剤、レベリング剤、消泡剤等の添加剤を添加してもよい。
重合反応は、60〜100℃の温度条件下、2〜8時間かけて行われることが好ましい。
重合時の原料モノマーの濃度は、通常30〜70質量%、好ましくは40〜60質量%である。
重合の際に使用される重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物;過酸化水素、ベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド等の過酸化物;過硫酸アンモニウムと亜硫酸ソーダ、酸性亜硫酸ソーダ等との組み合わせからなるレドックス系の重合開始剤等が挙げられる。
重合開始剤の添加量は、原料モノマーの全量100質量部に対して、好ましくは0.2〜2質量部、より好ましくは0.3〜1質量部である。
重合の際に使用される連鎖移動剤としては、例えば、オクチルメルカプタン、ノニルメルカプタン、デシルメルカプタン、ドデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン類;チオグリコール酸オクチル、チオグリコール酸ノニル、チオグリコール酸−2−エチルヘキシル、β−メルカプトプロピオン酸−2−エチルヘキシル等のチオグリコール酸エステル類;2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン;1−メチル−4−イソプロピリデン−1−シクロヘキセン等が挙げられる。
これらの中でも、チオグリコール酸エステル類、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン、1−メチル−4−イソプロピリデン−1−シクロヘキセンが好ましい。
連鎖移動剤の添加量は、原料モノマーの全量100質量部に対して、好ましくは0.001〜3質量部である。
(重合性化合物(Y))
重合性化合物(Y)は、エネルギー線重合性炭素−炭素二重結合を含む重合性基を有する化合物であって、アクリル系ポリマー(X)と反応し、アクリル系ポリマー(X)の主鎖及び/又は側鎖に前記重合性基を導入し得る化合物である。
重合性化合物(Y)としては、アクリル系ポリマー(X)が有する官能基と反応する基を有すると共に、エネルギー線重合性炭素−炭素二重結合を含む重合性基を1分子あたり1〜5個有する化合物であることが好ましい。
アクリル系ポリマー(X)が有する官能基と反応する基としては、例えば、イソシアネート基、カルボキシ基、エポキシ基等が挙げられ、イソシアネート基が好ましい。
また、エネルギー線重合性炭素−炭素二重結合を含む重合性基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等が挙げられ、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
具体的な重合性化合物(Y)としては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、メタ−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート、(メタ)アクリロイルイソシアネート、アリルイソシアネート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸等が挙げられる。
これらの重合性化合物(Y)は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、アクリル系ポリマー(X)が有する官能基と反応する基として好ましいイソシアネート基を有しており、アクリル系ポリマー(X)と重合性基の距離が適当となる化合物であるとの観点から、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートが好ましい。
エネルギー線硬化型アクリル共重合体の合成方法としては、例えば、ヒドロキシ基を有するアクリル系ポリマー(X)に、イソシアネート基を有する重合性化合物(Y)を導入する場合であれば、酢酸エチル等の有機溶液中で、ジブチル錫ラウレート等の触媒を用い、室温程度の温度で、常圧にて、24時間程度反応させる方法が挙げられる。
アクリル系ポリマー(X)が有する官能基数100当量に対する、重合性化合物(Y)の配合量は、複合シートを用いて形成される保護膜のレーザーマーキング適性の向上の観点から、好ましくは20〜100当量、より好ましくは30〜95当量、更に好ましくは40〜90当量、特に好ましくは55〜85当量である。
また、アクリル系ポリマー(X)100質量部に対する、重合性化合物(Y)の配合量は、粘着剤層と保護膜形成用フィルム(保護膜)との密着性をより向上させる観点から、好ましくは1〜40質量部、より好ましくは5〜37質量部、更に好ましくは10〜35質量部、特に好ましくは14〜33質量部である。そして、重合性化合物(Y)の前記配合量の上限値は、例えば、30質量部及び25質量部等のいずれかから選択することもできる。前記上限値が30質量部以下であれば、複合シートを用いて形成される保護膜のレーザーマーキング適性が向上する。
本発明においては、アクリル系ポリマー(X)と重合性化合物(Y)との配合量の関係について、下記式(2)より算出されるαの値が28以下である。
式(2):α=〔P〕×〔Q〕×〔R〕/100
式(2)中、〔P〕は、アクリル系ポリマー(X)の全構成単位100質量部に対する、官能基含有モノマー由来の構成単位(x2)の含有割合を示す。〔Q〕は、アクリル系ポリマー(X)が有する前記官能基含有モノマー由来の官能基100当量に対する、重合性化合物(Y)の当量を示す。〔R〕は、重合性化合物(Y)が有するエネルギー線重合性基の基数を示す。
式(2)より算出されるαの値は、形成される粘着剤層と保護膜形成用フィルム(保護膜)との密着性の指標となり、値が小さいほど、密着性が高く、ウエハ等のワークのダイシング時に、保護膜形成用フィルム(保護膜)と粘着剤層との間に、切削水が浸入してしまう現象の抑制効果が高い。
前記αの値は、28以下であり、好ましくは25以下、より好ましくは23以下、更に好ましくは20以下、特に好ましくは18以下、とりわけ好ましくは17以下、最も好ましくは16以下である。また、ピックアップ適性を良好とする観点から、前記αの値は、好ましくは1以上、より好ましくは5以上である。また、先に説明したように、メチルメタクリレート由来の構成単位(x1)を所定量含むエネルギー線硬化型アクリル共重合体を用いることで、前記αの値が低くても、さらにピックアップ適性が良好となる。
[光重合開始剤]
本発明で用いる粘着剤組成物は、さらに光重合開始剤を含有することが好ましい。前記粘着剤組成物が光重合開始剤を含有することで、粘着剤層にエネルギー線を照射して、粘着剤層を硬化させる際に、重合硬化時間を短くし、光線照射量を少なくしても、粘着剤層の硬化を進行させて硬化領域を形成することができる。
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン化合物、アセトフェノン化合物、アシルフォスフィンオキサイド化合物、チタノセン化合物、チオキサントン化合物、パーオキサイド化合物等の光開始剤や、アミンやキノン等の光増感剤等が挙げられる。
具体的な光重合開始剤としては、例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロニトリル、ジベンジル、ジアセチル、β−クロールアンスラキノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。
これらの光重合開始剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記粘着剤組成物における、光重合開始剤の配合量は、硬化反応を十分に進行させ、ピックアップ適性を向上させると共に、残留物の生成を抑える観点から、前記エネルギー線硬化型アクリル共重合体100質量部に対して、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは1〜7質量部、更に好ましくは2〜5質量部である。
[架橋剤]
本発明で用いる粘着剤組成物は、さらに架橋剤を含有することが好ましい。前記粘着剤組成物が架橋剤を含有することで、アクリル系ポリマー(X)が有する官能基と架橋反応して網目構造を形成し、形成された粘着剤層の凝集力を向上させ、接着力を制御することができる。
架橋剤としては、例えば、有機多価イソシアネート化合物、有機多価エポキシ化合物、有機多価イミン化合物等が挙げられる。
有機多価イソシアネート化合物としては、例えば、芳香族多価イソシアネート化合物、脂肪族多価イソシアネート化合物、脂環族多価イソシアネート化合物、及びこれら有機多価イソシアネート化合物の三量体、並びにこれら有機多価イソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させて得られる末端イソシアネートウレタンプレポリマー等が挙げられる。
具体的な有機多価イソシアネート化合物としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート等のトリレンジイソシアネート系化合物;1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシレンジイソシアネート等のキシレンジイソシアネート系化合物;ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート;ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート;3−メチルジフェニルメタンジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート;ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート;ジシクロヘキシルメタン−2,4’−ジイソシアネート;リジンイソシアネート;これらの多価アルコールアダクト体(多価アルコール付加物)等が挙げられる。
有機多価エポキシ化合物としては、例えば、1,3−ビス(N,N’−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミン等が挙げられる。
有機多価イミン化合物としては、例えば、N,N’−ジフェニルメタン−4,4’−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、及びN,N’−トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)トリエチレンメラミン等が挙げられる。
前記粘着剤組成物における、架橋剤の配合量は、アクリル共重合体100質量部に対して、好ましくは0.01〜20質量部、より好ましくは0.1〜10質量部、更に好ましくは0.3〜5質量部である。
[その他の添加剤]
また、本発明で用いる粘着剤組成物は、粘着付与樹脂、酸化防止剤、安定剤、軟化剤、充填材、顔料、染料等のその他の添加剤を含有してもよい。
前記粘着付与樹脂としては、例えば、ロジン系樹脂、水素化ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、水素化テルペン系樹脂、C5留分を共重合して得られるC5系石油樹脂、C5系石油樹脂の水素化石油樹脂、C9留分を共重合して得られるC9系石油樹脂、C9系石油樹脂の水素化石油樹脂等が挙げられる。
<粘着シートの製造方法>
粘着シートの製造方法としては、特に制限はない。例えば、上述の各成分に有機溶媒を加えて粘着剤組成物の溶液を調製する。そして、基材上に、この粘着剤組成物の溶液を公知の方法で塗布し、塗膜を形成し、前記塗膜を乾燥させて、粘着剤層を形成することで製造することができる。
また、前記粘着剤溶液を、上述の剥離シート上に塗布して、剥離シート上に粘着剤層を形成し、前記粘着剤層上に基材を積層して、剥離シート付き粘着シートとしてもよい。この場合、粘着シートの使用時に、前記剥離シートを除去し、表出した粘着剤層上に、保護膜形成用フィルムが積層される。
前記有機溶媒としては、例えば、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン等が挙げられる。また、粘着剤組成物の溶液の固形分濃度としては、好ましくは10〜80質量%、より好ましくは15〜70質量%、更に好ましくは20〜65質量%である。
粘着剤組成物の溶液の塗布方法としては、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等が挙げられる。
なお、形成した粘着剤層内に硬化領域を形成する場合、前記硬化領域の形成方法としては、特に制限はない。例えば、上述の粘着シートの製造方法においては、剥離シート側又は基材側から、紫外線等のエネルギー線を照射し、粘着剤層を硬化させればよい。
照射エネルギー線としては、紫外線が好ましい。
照射する紫外線の照度は、好ましくは100〜250mW/cmであり、紫外線の光量は、好ましくは350〜700mJ/cmである。
<保護膜形成用フィルム>
保護膜形成用フィルムとしては、特に制限はないが、(A)重合体成分、及び(B)硬化性成分を含むことが好ましく、更に(C)着色剤、(D)カップリング剤、(E)無機充填材、(F)汎用添加剤(以下、これら各成分を、その符号に対応して「(A)成分〜(F)成分」と称することがある)を含んでもよい。
以下、保護膜形成用フィルムに含まれる前記(A)〜(F)成分について、説明する。
[(A)重合体成分]
「(A)重合体成分」とは、重量平均分子量が2万以上であり、少なくとも1種の繰り返し単位を有する化合物を意味する。保護膜形成用フィルム中に(A)重合性成分を含有することで、主に、保護膜形成用フィルムに可とう性及び造膜性を付与し、シート性状維持性を良好とすることができる。
(A)重合体成分の重量平均分子量(Mw)としては、好ましくは2万以上、より好ましくは2万〜300万、更に好ましくは5万〜200万、特に好ましくは10万〜150万である。
(A)成分の含有量は、保護膜形成用フィルムの全量(100質量%)に対して、好ましくは5〜50質量%、より好ましくは8〜40質量%、更に好ましくは10〜30質量%、特に好ましくは12〜25質量%である。
(A)重合体成分としては、(A1)アクリル系重合体が好ましく、(A1)成分以外の、ポリエステル、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリシロキサン、ゴム系重合体等の(A2)非アクリル系重合体を用いてもよい。
これらの重合体成分は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
((A1)アクリル系重合体)
(A1)アクリル系重合体の重量平均分子量(Mw)は、保護膜形成用フィルムに可とう性及び造膜性を付与する観点から、好ましくは2万〜300万、より好ましくは10万〜150万、更に好ましくは15万〜120万、特に好ましくは25万〜100万である。
(A1)アクリル系重合体のガラス転移温度(Tg)は、保護膜形成用フィルムから形成される保護膜の被着体に対する接着性の観点、及び、複合シートを用いて製造される保護膜付きチップの信頼性の向上の観点から、好ましくは−60〜50℃、より好ましくは−50〜40℃、更に好ましくは−40〜30℃、特に好ましくは−35〜20℃である。
(A1)アクリル系重合体としては、アルキル(メタ)アクリレートを主成分とする重合体が挙げられ、具体的には、炭素数1〜18のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位(a1)を含むアクリル系重合体が好ましく、構成単位(a1)と共に官能基含有モノマー由来の構成単位(a2)を含むアクリル系共重合体がより好ましい。
(A1)成分は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、(A1)成分が共重合体である場合、前記共重合体の形態は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体のいずれであってもよい。
(構成単位(a1))
構成単位(a1)を構成するアルキル(メタ)アクリレートのアルキル基の炭素数は、保護膜形成用フィルムに可とう性及び造膜性を付与する観点から、好ましくは1〜18であり、より好ましくは1〜12、更に好ましくは1〜8である。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート(ラウリル(メタ)アクリレート)、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート(ミリスチル(メタ)アクリレート)、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート(パルミチル(メタ)アクリレート)、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート(ステアリル(メタ)アクリレート)、イソオクタデシル(メタ)アクリレート(イソステアリル(メタ)アクリレート)等が挙げられる。
なお、これらのアルキル(メタ)アクリレートは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、保護膜形成用フィルムから形成される保護膜のグロス値を上昇させ、保護膜のレーザーマーキング適性を向上させる観点から、構成単位(a1)を構成するアルキル(メタ)アクリレートは、炭素数4以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、炭素数4〜6のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートがより好ましく、ブチル(メタ)アクリレートが更に好ましい。
上記観点から、炭素数4以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位の含有割合は、(A1)アクリル系重合体の全構成単位に対して、好ましくは1〜70質量%、より好ましくは5〜65質量%、更に好ましくは10〜60質量%である。
また、本発明の複合シートを用いて製造される保護膜付きチップの信頼性向上の観点から、構成単位(a1)を構成するアルキル(メタ)アクリレートは、炭素数1〜3のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、メチル(メタ)アクリレートがより好ましい。
上記観点から、炭素数1〜3のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位の含有割合は、(A1)アクリル系重合体の全構成単位に対して、好ましくは1〜60質量%、より好ましくは3〜50質量%、更に好ましくは5〜40質量%である。
構成単位(a1)の含有割合は、(A1)アクリル系重合体の全構成単位に対して、好ましくは50質量%以上、より好ましくは50〜99質量%、更に好ましくは55〜90質量%、特に好ましくは60〜80質量%である。
(構成単位(a2))
構成単位(a2)を構成する官能基含有モノマーとしては、上述の構成単位(x2)を構成する官能基含有モノマーと同様のものが挙げられ、例えば、ヒドロキシ基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、シアノ基含有モノマー、ケト基含有モノマー、窒素原子含有環を有するモノマー、アルコキシシリル基含有モノマー等が挙げられる。
これらの官能基含有モノマーは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、ヒドロキシ基含有モノマーが好ましい。
ヒドロキシ基含有モノマーとしては、構成単位(x2)を構成するヒドロキシ基含有モノマーとして例示したものが挙げられるが、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
カルボキシ基含有モノマーとしては、構成単位(x2)を構成するカルボキシ基含有モノマーとして例示したものが挙げられる。
カルボキシ基含有モノマーを用いることで、(A1)アクリル系重合体にカルボキシ基が導入され、保護膜形成用フィルムが、(B)硬化性成分として、エネルギー線硬化性成分を含有する場合に、(B)成分と(A)成分との相溶性が向上する。
なお、後述する(B)硬化性成分として、エポキシ系熱硬化性成分を用いる場合には、カルボキシ基とエポキシ系熱硬化性成分中のエポキシ基が反応してしまうため、カルボキシ基含有モノマー由来の構造単位の含有量は少ないことが好ましい。
(B)硬化性成分として、エポキシ系熱硬化性成分を用いる場合、カルボキシ基含有モノマー由来の構造単位の含有量は、(A1)アクリル系重合体の全構成単位に対して、好ましくは0〜10質量%、より好ましくは0〜5質量%、更に好ましくは0〜2質量%、特に好ましくは0質量%である。
エポキシ基含有モノマーとしては、構成単位(x2)を構成するエポキシ基含有モノマーとして例示したものが挙げられるが、エポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、グリシジル(メタ)アクリレートがより好ましい。
(A1)アクリル系重合体を構成する構成単位に、エポキシ基含有モノマー由来の構成単位が含まれると、保護膜形成用フィルムから形成される保護膜のグロス値を上昇させることができ、保護膜のレーザーマーキング適性を向上させることができる。
エポキシ基含有モノマー由来の構成単位の含有割合は、保護膜形成用フィルムから形成される保護膜のグロス値を上昇させる観点、及び、本発明の複合シートを用いて得られるチップの信頼性を良好とする観点から、(A1)アクリル系重合体の全構成単位に対して、好ましくは1〜30質量%、より好ましくは5〜27質量%、更に好ましくは10〜24質量%である。
構成単位(a2)の含有量は、(A1)アクリル系重合体の全構成単位に対して、好ましくは1〜50質量%、より好ましくは5〜45質量%、更に好ましくは10〜40質量%、特に好ましくは20〜40質量%である。
(その他のモノマー由来の構成単位)
なお、(A1)アクリル系重合体は、本発明の効果を損なわない範囲において、上記の構成単位(a1)及び(a2)以外のその他のモノマー由来の構成単位を有していてもよい。
その他のモノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、スチレン、エチレン、α−オレフィン等が挙げられる。
((A2)非アクリル系重合体)
保護膜形成用フィルムには、必要に応じて、上述の(A1)アクリル系重合体以外の樹脂成分として、(A2)非アクリル系重合体を含有してもよい。
(A2)非アクリル系重合体としては、例えば、ポリエステル、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリシロキサン、ゴム系重合体等が挙げられる。
(A2)非アクリル系重合体は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(A2)非アクリル系重合体の重量平均分子量としては、好ましくは2万以上、より好ましくは2万〜10万、更に好ましくは2万〜8万である。
(A2)非アクリル系重合体は、単独で用いてもよいが、上述の(A1)アクリル系重合体と併用することで、粘着シートと保護膜形成用フィルムとの層間剥離を容易に行うことができ、ボイド等の発生を抑えることができる。
(A2)非アクリル系重合体を、上述の(A1)アクリル系重合体と併用する場合、(A2)非アクリル系重合体と(A1)アクリル系重合体(A1)との質量比〔(A2)/(A1)〕は、上記観点から、好ましくは1/99〜60/40、より好ましくは1/99〜30/70である。
なお、(A1)アクリル系重合体を構成する構成単位に、エポキシ基含有モノマー由来の構成単位が含まれる場合の(A1)アクリル系重合体や、エポキシ基を有するフェノキシ樹脂は、熱硬化性を有しているが、これらは(B)硬化性成分ではなく、(A)重合体成分の概念に含まれるものとする。
[(B)硬化性成分]
(B)硬化性成分は、保護膜形成用フィルムを硬化させて、硬質の保護膜を形成する役割を担うものであり、重量平均分子量が20000未満の化合物である。
(B)硬化性成分として、熱硬化性成分(B1)及び/又はエネルギー線硬化性成分(B2)を用いることが好ましく、保護膜形成用フィルムから形成される保護膜の着色を抑える観点、硬化反応を十分に進行させる観点、並びに、コスト低減の観点から、少なくとも熱硬化性成分(B1)を用いることがより好ましい。
熱硬化性成分(B1)としては、少なくとも加熱により反応する官能基を有する化合物を含有することが好ましい。
また、エネルギー線硬化性成分(B2)は、エネルギー線照射により反応する官能基を有する化合物(B21)を含有し、紫外線、電子線等のエネルギー線の照射を受けると重合硬化する。
これらの硬化性成分が有する官能基同士が反応し、三次元網目構造が形成されることにより硬化が実現される。
(B)硬化性成分の重量平均分子量(Mw)は、(A)成分と組み合わせて用いることで、保護膜形成用フィルムを形成する組成物の粘度を抑制し、取り扱い性を向上させる等の観点から、好ましくは20000未満、より好ましくは10000以下、更に好ましくは100〜10000である。
(熱硬化性成分(B1))
熱硬化性成分(B1)としては、エポキシ系熱硬化性成分が好ましい。
エポキシ系熱硬化性成分は、エポキシ基を有する化合物(B11)と共に、熱硬化剤(B12)を組み合わせたものを用いることが好ましい。
エポキシ基を有する化合物(B11)(以下、「エポキシ化合物(B11)」ともいう)としては、例えば、多官能系エポキシ樹脂、ビスフェノールAジグリシジルエーテル及びその水添物、オルソクレゾールノボラックエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェニレン骨格型エポキシ樹脂等の、反応性を有する官能基を1分子中に2個以上有するエポキシ化合物等が挙げられる。
これらのエポキシ化合物(B11)は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
保護膜形成用フィルムにおいて、エポキシ化合物(B11)の含有量は、(A)成分100質量部に対して、好ましくは1〜500質量部、より好ましくは3〜300質量部、更に好ましくは10〜150質量部、特に好ましくは20〜120質量部である。
(熱硬化剤(B12))
熱硬化剤(B12)は、エポキシ化合物(B11)に対する硬化剤として機能する。
熱硬化剤としては、1分子中にエポキシ基と反応し得る官能基を2個以上有する化合物が好ましい。
前記官能基としてはフェノール性水酸基、アルコール性水酸基、アミノ基、カルボキシル基、酸基が無水物化された基等が挙げられる。これらの中でも、フェノール性水酸基、アミノ基、又は酸基が無水物化された基が好ましく、フェノール性水酸基又はアミノ基がより好ましく、アミノ基が更に好ましい。
フェノール性水酸基を有するフェノール系熱硬化剤としては、例えば、多官能系フェノール樹脂、ビフェノール、ノボラック型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン系フェノール樹脂、ザイロック型フェノール樹脂、アラルキルフェノール樹脂等が挙げられる。
アミノ基を有するアミン系熱硬化剤としては、例えば、ジシアンジアミド(DICY)等が挙げられる。
熱硬化剤(B12)は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
保護膜形成用フィルムにおいて、熱硬化剤(B12)の含有量は、エポキシ化合物(B11)100質量部に対して、好ましくは0.1〜500質量部、より好ましくは1〜200質量部、である。
(硬化促進剤(B13))
保護膜形成用フィルムは、その熱硬化の速度を調整するために、硬化促進剤(B13)を含んでもよい。硬化促進剤(B13)は、熱硬化性成分(B1)として、エポキシ化合物(B11)と併用することが好ましい。
硬化促進剤(B13)としては、例えば、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の3級アミン類;2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール類;トリブチルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の有機ホスフィン類;テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィンテトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩等が挙げられる。
これらの硬化促進剤(B13)は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
保護膜形成用フィルムにおいて、硬化促進剤(B13)の含有量は、保護膜形成用フィルムから形成される保護膜の接着性の向上の観点、及び複合シートを用いて製造される保護膜付きチップの信頼性の向上の観点から、エポキシ化合物(B11)及び熱硬化剤(B12)の合計量100質量部に対して、好ましくは0.01〜10質量部、より好ましくは0.1〜6質量部、更に好ましくは0.3〜4質量部である。
(エネルギー線硬化性成分(B2))
エネルギー線硬化性成分(B2)としては、エネルギー線照射により反応する官能基を有する化合物(B21)を単独で用いてもよいが、化合物(B21)と共に、光重合開始剤(B22)を組み合わせて用いることが好ましい。
(エネルギー線照射により反応する官能基を有する化合物(B21))
エネルギー線照射により反応する官能基を有する化合物(B21)(以下、「エネルギー線反応性化合物(B21)」ともいう)としては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、1,4−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、オリゴエステルアクリレート、ウレタンアクリレート系オリゴマー、エポキシアクリレート、ポリエーテルアクリレート、イタコン酸オリゴマー等が挙げられる。
これらのエネルギー線反応性化合物(B21)は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、エネルギー線反応性化合物(B21)の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは100〜30000、より好ましくは300〜10000である。
保護膜形成用フィルムにおいて、エネルギー線反応性化合物(B21)の含有量は、(A)成分100質量部に対して、好ましくは1〜1500質量部、より好ましくは3〜1200質量部である。
(光重合開始剤(B22))
上述のエネルギー線反応性化合物(B21)と共に、光重合開始剤(B22)を併用することで、重合硬化時間を短くし、光線照射量を少なくても、保護膜形成用フィルムの硬化を進行させることができる。
光重合開始剤(B22)としては、前記粘着剤組成物における光重合開始剤と同じものが挙げられる。
保護膜形成用フィルムにおいて、光重合開始剤(B22)の含有量は、硬化反応を十分に進行させると共に、残留物の生成を抑える観点から、エネルギー線反応性化合物(B21)100質量部に対して、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは1〜5質量部である。
(B)硬化性成分の含有量は、保護膜形成用フィルムの全量(100質量%)に対して、好ましくは5〜50質量%、より好ましくは8〜40質量%、更に好ましくは10〜30質量%、特に好ましくは12〜25質量%である。
なお、(B)硬化性成分の含有量は、上述のエポキシ化合物(B11)、熱硬化剤(B12)、及び硬化促進剤(B13)を含む熱硬化性成分(B1)、並びに、エネルギー線反応性化合物(B21)、及び光重合開始剤(B22)を含むエネルギー線硬化性成分(B2)の合計含有量である。
[(C)着色剤]
保護膜形成用フィルムは、さらに(C)着色剤を含むことが好ましい。
保護膜形成用フィルムが(C)着色剤を含むことで、保護膜形成用フィルムから形成される保護膜を有する半導体チップを機器に組み込んだ際、周囲の装置から発生する赤外線等を遮蔽して、半導体チップの誤作動を防止することができる。
(C)着色剤としては、有機又は無機の顔料及び染料を用いることができる。
染料としては、例えば、酸性染料、反応染料、直接染料、分散染料、カチオン染料等が挙げられる。
顔料としては、特に制限されず、公知の顔料から適宜選択して用いることができる。
これらの中でも、電磁波や赤外線の遮蔽性が良好で、且つレーザーマーキング法による識別性をより向上させる観点から、黒色顔料が好ましい。
黒色顔料としては、例えば、カーボンブラック、酸化鉄、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭等が挙げられるが、半導体チップの信頼性を高める観点から、カーボンブラックが好ましい。
なお、これらの(C)着色剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(C)着色剤の含有量は、保護膜形成用フィルムの全量(100質量%)に対して、好ましくは0.1〜30質量%、より好ましくは0.5〜25質量%、更に好ましくは1.0〜15質量%、特に好ましくは1.2〜5質量%である。
[(D)カップリング剤]
保護膜形成用フィルムは、さらに(D)カップリング剤を含むことが好ましい。
保護膜形成用フィルムが(D)カップリング剤を含むことで、保護膜形成用フィルム中のポリマー成分と、被着体である半導体チップ表面や充填材表面とを結合させて、接着性や凝集性を向上させることができる。また、保護膜形成用フィルムから形成される保護膜の耐熱性を損なうことなく、耐水性を向上させることもできる。
(D)カップリング剤としては、(A)成分や(B)成分が有する官能基と反応する化合物が好ましく、シランカップリング剤がより好ましい。
シランカップリング剤としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−6−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−6−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、イミダゾールシラン等が挙げられる。
これらの(D)カップリング剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(D)カップリング剤としては、オリゴマータイプのカップリング剤が好ましい。
オリゴマータイプのカップリング剤も含めた(D)カップリング剤の分子量としては、好ましくは100〜15000、より好ましくは150〜10000、更に好ましくは200〜5000、特に好ましくは250〜3000、最も好ましくは350〜2000である。
(D)カップリング剤の含有量は、保護膜形成用フィルムの全量(100質量%)に対して、好ましくは0.01〜10質量%、より好ましくは0.05〜7質量%、更に好ましくは0.10〜4質量%、特に好ましくは0.15〜2質量%である。
[(E)無機充填材]
保護膜形成用フィルムは、さらに(E)無機充填材を含むことが好ましい。
保護膜形成用フィルムが(E)無機充填材を含むことで、保護膜形成用フィルムの硬化後の保護膜における熱膨張係数を適度な範囲に調整することが可能となり、半導体チップに対して硬化後の保護膜の熱膨張係数を最適化することで半導体装置の信頼性を向上させることができる。また、硬化後の保護膜の吸湿率を低減させることも可能となる。
(E)無機充填材としては、例えば、シリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化鉄、炭化珪素、窒化ホウ素等の粉末、これらを球形化したビーズ、単結晶繊維及びガラス繊維等が挙げられる。
これらの(E)無機充填材は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、(E)無機充填材としては、シリカ又はアルミナが好ましい。
(E)無機充填材の平均粒径としては、保護膜形成用フィルムから形成される保護膜のグロス値を向上させる観点から、好ましくは0.3〜50μm、より好ましくは0.5〜30μm、更に好ましくは0.7〜10μmである。
なお、本発明において、(E)無機充填材の平均粒径は、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置を用いて測定した値を意味する。
(E)無機充填材の含有量は、保護膜形成用フィルムの全量(100質量%)に対して、好ましくは25〜80質量%、より好ましくは30〜70質量%、更に好ましくは40〜65質量%、特に好ましくは45〜60質量%である。
[(F)汎用添加剤]
保護膜形成用フィルムは、上記の他に、必要に応じて各種の(F)汎用添加剤が配合されてなるものでもよい。
(F)汎用添加剤としては、架橋剤、レベリング剤、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、イオン捕捉剤、ゲッタリング剤、連鎖移動剤等が挙げられる。
<保護膜形成用フィルムの製造方法>
保護膜形成用フィルムの製造方法としては、特に制限はなく、公知の方法により製造することができる。例えば、上述の各成分を含む原料組成物に、有機溶媒を加えて、原料組成物の溶液の形態とし、前記溶液を上述の剥離シート上に公知の塗布方法により塗布して塗膜を形成した後、この塗膜を乾燥させて、剥離シート上に保護膜形成用フィルムを形成し製造することができる。
使用する有機溶媒としては、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン等が挙げられる。
有機溶媒を配合した場合の原料組成物の溶液の固形分濃度は、好ましくは10〜80質量%、より好ましくは20〜70質量%、更に好ましくは30〜65質量%である。
塗布方法としては、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ロールナイフコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等が挙げられる。
本発明の複合シートが有する保護膜形成用フィルムは、単層であってもよく、2層以上の多層構造であってもよい。
保護膜形成用フィルムの厚さは特に限定されないが、好ましくは3〜300μm、より好ましくは5〜250μm、更に好ましくは7〜200μmであり、保護膜形成用フィルムが多層の構成である場合も、合計の厚さが前記範囲であることが好ましい。
〔保護膜形成用複合シートの物性、用途〕
本発明の複合シートは、上述の粘着シートの粘着剤層と、保護膜形成用フィルムとを貼り合せることで製造することができる。
本発明の複合シートの保護膜形成用フィルムは、硬化させることで、被着体の保護膜となる。保護膜形成用フィルムは、フェースダウン方式のチップ用半導体ウエハや半導体チップ等のワークの裏面に貼付され、適当な手段により硬化されて封止樹脂の代替として、半導体ウエハや半導体チップ等のワークの裏面を保護する機能を有する。例えば、半導体ウエハに貼付した場合には、保護膜がウエハを補強する機能を有するためにウエハの破損等を防止し得る。
また、本発明の複合シートは、ブレードダイシングする際に半導体ウエハ等のワークを固定するためのシート(すなわちダイシングシート)として使用でき、別途ダイシングシートを貼り合せてダイシングをする必要がなくなり、半導体装置の製造工程を簡略化できる。
他に、本発明の複合シートは、いわゆる先ダイシング法(半導体ウエハに回路面側から、得ようとするチップの厚さよりも深い溝を形成し、少なくとも溝に達するまで半導体ウエハの裏面側から薄化処理を行うことで、チップ群を得る方法)においても使用でき、個片化されたチップ群に貼付して用いてもよい。
本発明の保護膜形成用複合シートを用いた場合、前記保護膜形成用複合シートが有する保護膜形成用フィルムをワークに貼付した後、前記保護膜形成用複合シートから前記保護膜形成用フィルムを剥離せずに、130℃、2時間の条件下で、前記保護膜形成用フィルムを硬化させて形成した保護膜は、例えば、グロス値が30以上のものとなる。そして、本発明においては、さらにグロス値が高い前記保護膜を形成することが可能である。例えば、前記保護膜のグロス値を、好ましくは40以上、より好ましくは44以上とすることが可能である。
〔保護膜付きチップ〕
本発明の保護膜付きチップは、半導体チップ等のチップの裏面に、本発明の保護膜形成用複合シートが貼付され、前記複合シートの保護膜形成用フィルムを硬化してなる保護膜を有するものである。
なお、本発明の保護膜付きチップが有する保護膜は、完全に硬化されたものであってもよいし、一部が硬化されたものであってもよいが、完全に硬化されたものであることが好ましい。
本発明の保護膜付きチップについて、保護膜付きチップのチップがある側とは反対側から測定した保護膜のグロス値は、例えば、30以上であり、好ましくは40以上、より好ましくは44以上であり、また、好ましくは90以下である。前記グロス値が40以上であれば、レーザーマーキング適性に特に優れた保護膜付きチップとなり得る。
なお、保護膜付きチップの保護膜のグロス値は、後述の実施例のとおり、硬化処理を行い、保護膜を形成した、ダイシング前の保護膜付きワークを用いて測定してもよい。
保護膜付きチップのチップがある側とは反対側から測定した、保護膜付きチップの保護膜のグロス値と、保護膜付きワークがある側とは反対側から測定した、保護膜付きワークの保護膜のグロス値とは、ほぼ同じものと考えられる。
フェースダウン方式で基材等の上に前記保護膜付きチップを実装することで、半導体装置を製造することができる。また、ダイパッド部又は別の半導体チップ等の他の部材上(チップ搭載部上)に、前記保護膜付きチップを接着することにより、半導体装置を製造することもできる。
〔保護膜付きチップの製造方法〕
本発明の保護膜付きチップの製造方法としては、特に制限はないが、例えば、下記工程(1)〜(4)を有する、ブレードダイシングによる方法が好ましい。
工程(1):ワークの裏面に、本発明の保護膜形成用複合シートを貼付する工程
工程(2):ワークをダイシングする工程
工程(3):前記保護膜形成用複合シートの粘着シートを剥離せずに保護膜形成用フィルムを硬化させる工程
工程(4):工程(1)〜(3)を経て得られたダイシングされた保護膜付きワークをピックアップし、保護膜付きチップを得る工程
なお、本発明の保護膜付きチップの製造方法においては、工程(2)及び(3)の順序
は問わず、工程(1)、(2)、(3)、(4)の順序で保護膜付きチップを製造してもよいし、工程(1)、(3)、(2)、(4)の順序で保護膜付きチップを製造してもよい。
<工程(1)>
工程(1)では、半導体ウエハ等のワークの裏面に、本発明の複合シートの保護膜形成用フィルムを貼付し、保護膜形成用フィルム付きワークを得る工程である。
ここで、半導体ウエハは、シリコンウエハであってもよく、例えば、ガリウム・砒素等の化合物半導体ウエハであってもよい。また、半導体ウエハは、その表面に回路が形成されていると共に、裏面が適宜研削等され、厚さが50〜500μm程度とされたものであってもよい。
<工程(2)>
工程(2)では、ワークをダイシングし、ワーク表面に形成された回路ごとにダイシングし、ワークをチップに加工する工程である。
なお、本工程でダイシングを行う対象物であるワークは、工程(1)を経て得られた保護膜形成用フィルム付きワークであってもよいし、工程(1)の後、先に工程(3)を経て得られた保護膜付きワークであってもよい。
なお、ワークのダイシングは、公知の方法により行うことができる。
本工程において、本発明の複合シートは、粘着剤層と保護膜形成用フィルム(保護膜)との密着性に優れているため、粘着剤層と保護膜形成用フィルム(保護膜)との間に、切削水が浸入する現象を効果的に抑制することができる。そのため、本発明の保護膜付きチップの製造方法によれば、生産性を向上させながら、保護膜が切削水に汚染されていない保護膜付きチップを製造することができる。
ここで、工程(1)の後、本工程を経た場合には、ダイシングされた保護膜形成用フィルム付きワークが得られ、次の工程(3)にて、保護膜形成用フィルムを硬化させ、ダイシングされた保護膜付きワークとなる。
一方、工程(1)の後、工程(3)を経た場合、本工程にて、工程(3)で得られた保護膜付きワークをダイシングして、ダイシングされた保護膜付きワークとなる。
<工程(3)>
工程(3)では、前記保護膜形成用複合シートの粘着シートを剥離せずに保護膜形成用フィルムを硬化させて、硬化した保護膜を形成する工程である。
ワークに貼付された保護膜形成用複合シートの粘着シートが有する粘着剤層は、加熱時における流動性が低く保たれる。
そのため、本発明の製造方法においては、ワークに貼付された保護膜形成用複合シートの粘着シートを剥離せずに保護膜形成用フィルムを硬化させることで、熱を加えても粘着シートの粘着剤層の表面の平滑性が維持され、例えば上述のように、グロス値が40以上の保護膜を形成することもできる。
保護膜形成用フィルムは、その中に含まれる硬化性成分の種類に応じて、加熱により、若しくはエネルギー線の照射により、又はその両方を行うことにより、硬化させることができる。ただし、保護膜形成用フィルムから形成される保護膜の着色を抑える観点、硬化反応を十分に進行させる観点、及び、コスト低減の観点から、少なくとも加熱により硬化させることが好ましい。
加熱により硬化を行う場合には、硬化温度は好ましくは100〜150℃であり、硬化時間は好ましくは1〜3時間である。
また、エネルギー線の照射により硬化を行う場合の硬化条件は、使用するエネルギー線の種類により適宜設定される。例えば、紫外線を用いる場合、照度は170〜250mw/cmが好ましく、光量は600〜1000mJ/cmが好ましい。
<工程(4)>
工程(4)では、工程(1)〜(3)を経て得られたダイシングされた保護膜付きワークをコレット等の汎用手段によりピックアップし、保護膜付きチップを得る工程である。
本工程を経ることで、個片化された、裏面に保護膜を有する半導体チップ(保護膜付きチップ)が得られる。
なお、一般的に、工程(3)で熱硬化を行った後に本工程を行う場合、ピックアップが困難になる傾向にある。それに対して、本発明の保護膜付きチップの製造方法においては、特定のエネルギー線硬化型アクリル共重合体を含む粘着剤組成物からなる粘着剤層を形成することで、ピックアップ適性が良好となり、保護膜付きチップの生産性を向上させることもできる。
本発明の製造方法により得られる保護膜付きチップは、保護膜のグロス値を高くすることが可能であるため、レーザーマーキング適性に優れた保護膜付きチップとなり得る。
本発明の製造方法により得られる保護膜付きチップについて、保護膜付きチップのチップがある側とは反対側から測定した保護膜のグロス値は、例えば、30以上であり、好ましくは40以上、より好ましくは44以上である。
以下、具体的実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に、何ら限定されるものではない。
以下の記載において、各成分の重量平均分子量(Mw)及びガラス転移温度(Tg)は、以下に示す方法により測定もしくは算出された値である。
<重量平均分子量(Mw)>
ゲル浸透クロマトグラフ装置(東ソー株式会社製、製品名「HLC−8220GPC」)を用いて、下記の条件下で測定し、標準ポリスチレン換算にて測定した値を用いた。
(測定条件)
・カラム:「TSK guard column HXL−H」、「TSK gel GMHXL(×2)」、「TSK gel G2000HXL」(いずれも東ソー株式会社製)
・カラム温度:40℃
・展開溶媒:テトラヒドロフラン
・流速:1.0mL/min
<ガラス転移温度(Tg)>
上述の式(1)により算出された値を用いた。
[製造例1]
(保護膜形成用フィルムの作製)
(1)保護膜形成用フィルムの原料組成物の溶液の調製
下記(A)〜(F)成分を、下記に示す配合量で添加し、メチルエチルケトンで希釈して、固形分濃度61質量%の保護膜形成用フィルムの原料組成物の溶液を調製した。
<(A)重合体成分>
・n−ブチルアクリレート(BA)、メチルメタクリレート(MMA)、グリシジルメタクリレート(GMA)、及び2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)からなるアクリル共重合体(BA/MMA/GMA/HEA=55/10/20/15(質量%)、重量平均分子量:90万、Tg:−28℃):100質量部(固形分比)。
<(B)硬化性成分>
・ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製、商品名「jER828」、エポキシ当量:180〜200、分子量:370(重量平均分子量が2万未満の化合物)):50質量部(固形分比)。
・ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(DIC(株)製、商品名「エピクロンHP−7200HH」、重量平均分子量が2万未満の化合物。):50質量部(固形分比)。
・ジシアンジアミド(ADEKA(株)製、商品名「アデカハードナー3636AS」、アミン系硬化剤):2.8質量部(固形分比)。
・2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール(四国化成工業社製、商品名「キュアゾール2PHZ」、硬化促進剤):2.8質量部(固形分比)。
<(C)着色剤>
・カーボンブラック:10質量部(固形分比)。
<(D)カップリング剤>
・シランカップリング剤(日本ユニカー(株)、製商品名「A−1110」):1質量部(固形分比)。
<(E)無機充填材>
・溶融シリカ(平均粒径8μm):300質量部(固形分比)。
(2)保護膜形成用フィルムの作製
調製した原料組成物の溶液を、剥離シート(リンテック社製、商品名「SP−PET3811」、厚さ:38μm)の剥離処理面上に、乾燥後の厚さが25μmとなるように塗布し、120℃で2分間の乾燥処理を行い、剥離シート上に保護膜形成用フィルムを形成した。
そして、この形成した保護膜形成用フィルム上に、他の剥離シート(リンテック社製、商品名「SP−PET381031」、厚さ:38μm)の剥離処理面を貼り合わせ、2枚の剥離シートで挟持された厚さ25μmの保護膜形成用フィルムを作製した。
[実施例1〜5、比較例1]
(1)粘着剤組成物の溶液の調製
表2に示す種類及び配合量の各成分を添加し、酢酸エチルで希釈して、固形分濃度24質量%の粘着剤組成物の溶液を調製した。各成分の詳細は、以下のとおりである。
<アクリル共重合体>
表1に示す種類及び割合の原料モノマー由来のアクリル系ポリマーに対し、メタクリロイルオキシエチルアクリレートを表1に示す配合量で添加し、酢酸エチルを添加して酢酸エチル溶液とし、触媒としてジブチル錫ラウレートを用いて、25℃、常圧にて、24時間反応させて合成した、アクリル共重合体A1〜A6を用いた。
なお、表1中のTgは、アクリル系ポリマーのガラス転移温度であり、Mwは、メタクリロイルオキシエチルアクリレートと反応させて得られたアクリル共重合体A1〜A6の重量平均分子量を示す。また、アクリル共重合体A1〜A6は、メタクリロイル基を有するエネルギー線硬化型アクリル共重合体である。
Figure 2017008255
<光重合開始剤>
・イルガキュア184:商品名(「イルガキュア」は登録商標)、BASF社製、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン。
<架橋剤>
・BHS−8515:商品名、東洋インキ製造社製、トリレンジイソシアネート系化合物。
(2)粘着シートの作製
調製した粘着剤組成物の溶液を、剥離シート(リンテック社製、商品名「SP−PET3811」、厚さ:38μm)の剥離処理面上に、乾燥後の塗布量が10g/mとなるように塗布し、100℃で1分間の乾燥処理を行い、剥離シート上に粘着剤層を形成し、前記粘着剤層上に、基材として、厚さ100μmのポリプロピレンフィルム(三菱樹脂(株)製、商品名「CT265」)を積層した。
そして、剥離シート側から、紫外線照射装置(リンテック社製、製品名「RAD−20
00m/12」を用いて、紫外線(照度140mW/cm、光量510mJ/cm)を照射し、粘着剤層の全面を硬化させ、硬化領域を含む粘着剤層を有する粘着シートを作製した。
(3)保護膜形成用複合シートの作製
作製した粘着シートの剥離シートを除去し、粘着剤層を表出させた。さらに、製造例1で作製した保護膜形成用フィルムにおいて、挟持された2枚の剥離シートのうちの一方を除去して、保護膜形成用フィルムを表出させた。そして、粘着シートの表出させた粘着剤層の硬化領域上に、表出させた保護膜形成用フィルムを直接積層した後、残りの剥離シートも除去して、さらに保護膜形成用フィルムを表出させた。
一方、粘着層の両面に剥離シートを有する両面粘着テープ(リンテック社製、商品名「Adwill G−01DF」)において、直径245mmの円形状の部位を切って抜き出し、残った部位の両面粘着テープにおいて、一方の剥離シートを除去し、粘着層を表出させた。そして、上記の表出させた保護膜形成用フィルムの表面上に、この粘着層を積層して、リングフレーム部に貼付される治具接着層を形成した。
さらに、リングフレームに対する糊しろの外径(直径270mm)に合わせて、両面粘着テープの抜き取った円形状の部分と同心円となるように、上記で得られた積層体を円形状に型抜きし、図2(b)に示された構成を有する保護膜形成用複合シートを作製した。
以上のようにして作製した保護膜形成用複合シートについて、下記方法により評価を行った。その評価結果を表2に示す。
(1)ダイシング時の切削水の浸入の有無
厚さ200μm、直径8インチ、#2000研磨を行ったシリコンウエハの研磨面と、実施例及び比較例で作製した保護膜形成用複合シートの保護膜形成用フィルムとを、粘着シート貼付装置(リンテック社製、製品名「Adwill RAD2700」)を用いて、70℃に加熱しながら貼付した。また、同時にリングフレームも貼付した。
そして、保護膜形成用複合シートを貼付したウエハを、130℃の加熱オーブンに2時間投入して、保護膜形成用フィルムを硬化させ、保護膜を形成した。
そして、ダイサー(ディスコ(株)製、製品名「DFD651」)を用いて、ブレード速度40mm/秒で、保護膜形成用複合シートの基材に15μmの深さまで切り込みが入るようにし、3mm×3mmのサイズのチップにウエハをダイシングした。
その後、切断部から保護膜と粘着剤層との間に、切削水の浸入がないかを目視で観察した。
表2には、上記の作業を30枚のウエハについて行った上で、上記の切削水の浸入がなかったウエハの枚数を記載している。
(2)グロス値
#2000研磨したシリコンウエハ(直径200mm、厚さ280μm)の研磨面と、実施例及び比較例で作製した保護膜形成用複合シートの保護膜形成用フィルムとを、粘着シート貼付装置(リンテック社製、製品名「Adwill RAD−2700」)を用いて、70℃に加熱しながら貼付した。
そして、保護膜形成用複合シートを貼付したウエハを、130℃の加熱オーブンに2時間投入して、保護膜形成用フィルムを硬化させ、保護膜を形成し、形成した保護膜上の粘着シートを除去し、試験サンプルを作製した。
そして、光沢計(日本電色工業株式会社製、製品名「VG 2000」)を用いて、JIS Z 8741に準じ、試験サンプルのシリコンウエハがある側とは反対側から保護膜の表面の60度の鏡面光沢度を測定し、その測定値を保護膜のグロス値とした。
(3)レーザーマーキング適性
厚さ200μm、直径8インチ、#2000研磨を行ったシリコンウエハの研磨面と、実施例及び比較例で作製した保護膜形成用複合シートの保護膜形成用フィルムとを、粘着シート貼付装置(リンテック社製、製品名「Adwill RAD2700」)を用いて、70℃に加熱しながら貼付した。また、同時にリングフレームも貼付した。
そして、保護膜形成用複合シートを貼付したウエハを、130℃の加熱オーブンに2時間投入して、保護膜形成用フィルムを硬化させ、保護膜を形成した。
次に、レーザーマーカー(日立建機ファインテック(株)製、製品名「YAGレーザーマーカーLM5000」)を用いて、縦400μm、横200μmの文字を、粘着シートの基材側から保護膜に印字した。
そして、保護膜形成用複合シートの粘着シートを除去した後、保護膜に印字された文字を肉眼により観察し、下記の基準により評価した。
A:文字が鮮明である。
F:文字が不鮮明である。
Figure 2017008255
実施例1〜5の保護膜形成用複合シートを用いて保護膜付きチップを製造した際、ダイシング時に、保護膜と粘着剤層との間に切削水の浸入が見られなかった。
さらに、実施例1〜3の保護膜形成用複合シートを用いて製造した保護膜付きウエハのウエハがある側とは反対側から測定した保護膜のグロス値は、高い結果となった。そのため、実施例1〜3の保護膜形成用複合シートを用いて製造される保護膜付きチップのチップがある側とは反対側から測定した保護膜のグロス値も高く、前記保護膜付きチップはレーザーマーキング適性にも優れると考えられる。
一方、比較例1の保護膜形成用複合シートを用いて保護膜付きチップを製造した際には、保護膜と粘着剤層との間に切削水の浸入が見られた。
本発明の保護膜形成用複合シートは、半導体チップの裏面を保護する保護膜の形成材料として好適である。
1a,1b,1c,1d,2a,2b,2c・・・保護膜形成用複合シート(複合シート)
10,10a・・・粘着シート
11・・・基材
12・・・粘着剤層
12a・・・硬化領域
13・・・エネルギー線遮蔽層
20・・・保護膜形成用フィルム
31・・・治具接着層
41・・・治具接着用粘着剤層

Claims (12)

  1. 基材及び粘着剤層を有する粘着シートと、前記粘着剤層上に直接積層した保護膜形成用フィルムと、を有する保護膜形成用複合シートであって、
    前記粘着剤層が、エネルギー線硬化型アクリル共重合体を含む粘着剤組成物から形成されてなる層であり、
    前記エネルギー線硬化型アクリル共重合体が、官能基含有モノマー由来の構成単位(x2)を35質量%以下含むアクリル系ポリマー(X)に、エネルギー線重合性基を有する重合性化合物(Y)を反応させて得られる、エネルギー線重合性基を導入したアクリル共重合体であり、
    前記エネルギー線硬化型アクリル共重合体の下記式(2)より算出されるαの値が28以下である、保護膜形成用複合シート。
    式(2):α=〔P〕×〔Q〕×〔R〕/100
    〔式(2)中、〔P〕は、アクリル系ポリマー(X)の全構成単位100質量部に対する、官能基含有モノマー由来の構成単位(x2)の含有割合を示す。〔Q〕は、アクリル系ポリマー(X)が有する前記官能基含有モノマー由来の官能基100当量に対する、重合性化合物(Y)の当量を示す。〔R〕は、重合性化合物(Y)が有するエネルギー線重合性基の基数を示す。〕
  2. 前記アクリル系ポリマー(X)が、メチルメタクリレート由来の構成単位(x1)を10質量%以上含む、請求項1に記載の保護膜形成用複合シート。
  3. 前記粘着剤層の少なくとも一部が硬化した硬化領域を形成し、前記硬化領域上に前記保護膜形成用フィルムが直接積層した構成を有する、請求項1又は2に記載の保護膜形成用複合シート。
  4. 前記エネルギー線重合性基が(メタ)アクリロイル基である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の保護膜形成用複合シート。
  5. 前記保護膜形成用フィルムが、(A)重合体成分、及び(B)硬化性成分を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の保護膜形成用複合シート。
  6. (B)硬化性成分が、(B1)熱硬化性成分を含む、請求項5に記載の保護膜形成用複合シート。
  7. 前記保護膜形成用複合シートが有する保護膜形成用フィルムをワークに貼付した後、前記保護膜形成用複合シートから前記保護膜形成用フィルムを剥離せずに、130℃、2時間の条件下で、前記保護膜形成用フィルムを硬化させて保護膜を形成した場合に、前記保護膜のグロス値が40以上である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の保護膜形成用複合シート。
  8. 前記基材が、ポリプロピレンを含む基材である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の保護膜形成用複合シート。
  9. チップの裏面に、請求項1〜8のいずれか一項に記載の保護膜形成用複合シートの保護膜形成用フィルムが硬化してなる保護膜を有する、保護膜付きチップ。
  10. 前記保護膜付きチップのチップがある側とは反対側から測定した保護膜のグロス値が40以上である、請求項9に記載の保護膜付きチップ。
  11. 下記工程(1)〜(4)を有する、保護膜付きチップの製造方法。
    工程(1):ワークの裏面に、請求項1〜8のいずれか一項に記載の保護膜形成用複合シートを貼付する工程
    工程(2):ワークをダイシングする工程
    工程(3):前記保護膜形成用複合シートの粘着シートを剥離せずに保護膜形成用フィルムを硬化させる工程
    工程(4):工程(1)〜(3)を経て得られたダイシングされた保護膜付きワークをピックアップし、保護膜付きチップを得る工程
  12. 請求項11に記載の製造方法により得られる保護膜付きチップであって、前記保護膜付きチップのチップがある側とは反対側から測定した保護膜のグロス値が40以上である、保護膜付きチップ。
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