JP2017007206A - 意匠金属板及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】金属板20と、金属板上に積層された下層側接着層41と、下層側接着層上に積層された上層側接着層42と、上層側接着層上に積層された意匠フィルム30と、を備え下層側接着層は、下層側接着剤を含み、上層側接着層は、上層側接着剤を含み、上層側接着剤の軟化温度は80℃以下であり、下層側接着剤の軟化温度は90℃以上であることを特徴とする意匠金属板を提供する。
【選択図】図2
Description
まず、図2を参照して、本発明の実施形態に係る意匠金属板10の構成について説明する。意匠金属板10は、金属板20と、意匠フィルム30と、接着層40とを備える。接着層40は、金属板20上に積層される下層側接着層41と、下層側接着層41上に積層される上層側接着層42とを備える。したがって、接着層40は2層構造になっている。意匠フィルム30は、上層側接着層42上に積層される。
金属板20の種類は特に制限されず、広く公知の金属板を使用できる。金属板20の例としては、鋼板、ステンレス板、Al板、Cu板、真鍮板、Ti板、クロム板、ニッケル板、亜鉛板、マグネシウム板などが挙げられる。
意匠フィルム30の種類も特に制限されず、従来の意匠金属板に使用される意匠フィルムであれば本実施形態の意匠フィルム30として使用可能である。意匠フィルム30には、上述したように、各種の意匠(例えば、色、柄、エンボス等)が施されている。意匠フィルム30の例としては、単色意匠フィルム、柄物意匠フィルム等が挙げられる。単色意匠フィルムは、顔料による着色が施された意匠フィルムである。単色意匠フィルムの表面にはエンボス加工が施される場合が多い。このようなエンボス加工により光反射が抑制される。また、柄物意匠フィルムは、顔料による着色及び柄の印刷が施された意匠フィルムである。柄物意匠フィルムの表面には、柄を保護するための透明保護フィルムがさらに積層されていてもよい。また、柄物意匠フィルムは、顔料による着色が施された着色フィルムと、柄が印刷された透明保護フィルムとを圧着することによって作製される場合がある。この場合、透明保護フィルムの柄印刷面が着色フィルム側に向けられる。
意匠フィルム30を構成する樹脂は、特に制限されない。すなわち、従来の意匠フィルムに適用される樹脂であれば、本実施形態の意匠フィルム30にも適用可能である。意匠フィルム30を構成する樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂の例としては、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、及びフッ素系樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂の例としては、ウレタン樹脂、ユリア樹脂、及びエポキシ樹脂等が挙げられる。意匠フィルム30は、上述した樹脂のうち、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、及びフッ素系樹脂のうちいずれか1種以上で構成されることが好ましい。これらの樹脂で構成された意匠フィルム30は、印刷の濡れ性、エンボス加工性に優れるので、高度な意匠を付与しやすい。以下、好ましい樹脂の例について詳細に説明する。
意匠フィルム30の軟化温度は特に制限されないが、上層側接着層42に接する部分の軟化温度は150℃未満であることが好ましい。ここで、軟化温度は熱機械分析装置(Thermal Mechanical Analysis)により測定される。具体的には、試料を2℃/分で加熱しつつ、試料に直径1mmの円柱針を荷重500mNで押し込む。そして、試料への円柱針の侵入深さが以下の数式(1)を満たした時の温度を軟化温度とする。なお、試料への円柱針の侵入深さは、JIS−K−7196に準拠して測定される。
ti/t200=0.8 (1)
数式(1)において、tiは侵入深さ、t200は試料温度が200℃となるときの侵入深さである。したがって、数式(1)の左辺は軟化度を示す。
意匠フィルム30の厚さは特に制限されない。ただし、本実施形態の効果を有効に利用するという観点からは、意匠フィルム30の厚さは5〜400μmであることが好ましく、5〜150μmであることがより好ましい。
接着層40は、下層側接着層41と上層側接着層42とで構成される。下層側接着層41は、金属板20に密着しており、上層側接着層42は、意匠フィルム30に密着している。下層側接着層41は、下層側接着剤を含み、上層側接着層42は、上層側接着剤を含む。そして、下層側接着剤の軟化温度(Tunder)は90℃以上であり、上層側接着剤の軟化温度(Tup)は80℃以下である。なお、接着剤が熱硬化型接着剤である場合は、硬化剤を含まない接着主剤のみからなるフィルムで測定した値が接着剤の軟化温度として定義される。
下層側接着剤及び上層側接着剤を構成する接着剤は、上述した軟化温度の条件をみたすものであればどのようなものであってもよい。下層側接着剤及び上層側接着剤を構成する接着剤の例としては、溶剤型接着剤、水性接着剤,ホットメルト型接着剤、弾性接着剤、熱硬化型(熱硬化反応型)接着剤、感圧性接着剤、天然物系接着剤が挙げられる。
下層側接着層41及び上層側接着層42の層の厚さは特に制限されない。これらの厚さは、意匠金属板10に要求される特性に応じて適宜選択できる。ただし、両層ともに厚さは1μm以上であることが好ましい。厚さが1μm未満となる場合、各層が効率的に機能発現できない可能性がある。さらに経済性の観点から、各層の厚さは20μm以下であることが好ましい。
下層側接着層41及び上層側接着層42の間には、1または複数層の他の接着層が介在していてもよい。
意匠金属板10の製造方法は、意匠フィルムが鋼板に積層される工程、並びに意匠フィルムに接着剤を積層する工程がある場合はこれらの工程でも、意匠フィルムが加熱される温度が180℃以下であれば、特に制限されない。本実施形態では、積層工程で意匠フィルムが180℃以上に加熱されることがない。かつ、上層側接着層42を構成する上層側接着剤の軟化温度が80℃以下なので、金属板20の温度が180℃以下であっても上層側接着剤は十分に軟化する。したがって、意匠フィルム30と金属板20とを強固に密着することができる。意匠金属板10の製造方法の具体例としては、以下の第1の例及び第2の例が挙げられる。
第1の例では、以下の工程により意匠金属板10を作製する。まず、金属板20上に下層側接着剤組成物を塗工することで、金属板20上に下層側接着層41を形成する。ついで、下層側接着層41を加熱することで、下層側接着剤を金属板20に密着させる。ここで、金属板20の加熱温度は、下層側接着剤を金属板20に密着させる温度であれば特に制限されない。例えば、上述したように、下層側接着層41に溶剤が含まれるか否かによって加熱温度を調整してもよい。
第2の例では、以下の工程により意匠金属板10を作製する。まず、金属板20上に下層側接着剤組成物を塗工することで、金属板20上に下層側接着層41を形成する。ついで、金属板20を加熱することで、下層側接着剤を金属板20に密着させる。ここで、金属板20の加熱温度は、下層側接着剤を金属板20に密着させる温度であれば特に制限されない。例えば、上述したように、下層側接着層41に溶剤が含まれるか否かによって加熱温度を調整してもよい。
<2.意匠金属板の製造装置の構成例>
製造方法の第2の例は、例えば、図4に示す製造装置101を用いることで実現される。そこで、製造装置101の構成について説明する。ここで、製造装置101は、第2ロールコータ140及び第2オーブン150の設置位置が異なる他は、上述した製造装置100と同様の構成を有する。そこで、製造装置100との相違点について説明する。
(1−1.共通工程)
以下の工程により、接着剤組成物を調製した。まず、撹拌棒と還流冷却管を備えたフラスコ中に高沸点ナフサ(ソルベッソ150)200質量部を投入し、10分ほど撹拌した。その後、接着主剤(ポリエステル、アクリル、及びウレタンの何れか)100質量部を投入し、室温で4時間撹拌溶解した。ここで、接着主剤は、上述した上層側接着剤または下層側接着剤を構成するものである。接着主剤が完全に溶解したのを確認した後、MEK(メチルエチルケトン、丸善石油社製)を20質量部投入し30分間室温で撹拌した。以上の工程により、接着剤組成物を作製した。
上記接着剤組成物に硬化剤溶液(横浜ゴム社製Y6410−B、バイエル社製デスモジュールRFEのいずれか)、及び触媒(サンアプロ社製U−CAT SA102)を配合することで、硬化型接着剤組成物を得た。ここで、Y6410−Bは、イソシアネート基を全ジカルボン酸残基に対して30モル%有するポリイソシアネート樹脂である。ここで、硬化剤溶液の投入量は、固形分で4質量部とし、触媒の投入量は、固形分で0.1質量部とした。
撹拌棒と還流冷却管を備えたフラスコ中に高沸点ナフサ(ソルベッソ150)200質量部、充填剤として微細シリカ(アロエジルR−972)2.5質量部を投入し、10分ほど撹拌した。その後、接着主剤(ポリエステル、アクリル、及びウレタンの何れか)100質量部を投入し、室温で4時間撹拌溶解した。接着主剤が完全に溶解したのを確認し、シランカップリング剤としてシラン化合物(信越化学社製KBM−402)と触媒を加え1時間室温で撹拌した。最後にMEK(メチルエチルケトン、丸善石油社製)を20質量部投入し30分間室温で撹拌した。以上の工程により、接着剤組成物を得た。接着剤組成物の組成を表1〜3に示す。
以下の方法により、各接着剤組成物の軟化温度、具体的には、接着剤組成物を構成する接着主剤の軟化温度を測定した。まず、接着剤組成物を直径7.5cm厚さ1cm程度のPE(ポリエチレン)製の容器に静かに流し込んだ。ついで、容器を静かに傾けることで、接着剤組成物の厚さを容器内で均一にした。ついで、容器を水平に保って20℃恒温室で1〜3日乾燥させることで、接着剤フィルムを作製した。ついで、接着剤フィルムを容器より静かに剥離した。なお、接着剤組成物として硬化剤及び触媒を投入するまえの接着剤組成物を使用して、軟化温度を測定した。
以下の工程により意匠フィルムを準備、または作製した。
(3−1.塩化ビニルフィルム)
(3−1−1.単色エンボスフィルム)
塩化ビニルからなる単色エンボスフィルムとして、オカモト社製のLE301を準備した。フィルム厚さは150μmである。また、エンボスフィルムの表面には、深さ15μmのカワシボエンボス模様が施されている。
単色フィルムの作製時に使用した樹脂組成物をカレンダー法により製膜することで、厚さ120μmの原反フィルムを作製した。ここで、カレンダー法に使用するロールを鏡面ロールとすることで、鏡面仕上げの原反フィルムを作製した。ついで、連続式ラミネータを使用して、当該原反フィルムにポリエステル系接着剤(積水フーラー社製 S−580X)を塗工し、80℃で乾燥した。乾燥後、原反フィルムの接着剤塗工面上に木目印刷を施した25μm厚の2軸延伸PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムを、印刷面と接着剤とが接するようにしてラミネートした。以上の工程により、高鮮映フィルムを得た。
2層Tダイスを使用して、白色顔料入り(20質量%)PET系アロイからなる単色フィルム、原反フィルムを得た。いずれのフィルムも厚さは100μmとした。なお、単色フィルムには、エンボスロールを使用して上記3−1−1.と同様のエンボス模様を施し、単色エンボスフィルムとした。さらに、原反フィルムでは鏡面ロールを使用し、鏡面仕上げとした。さらに、上記3−1−2.と同様のダブリング工程を行うことで、木目印刷を施した25μm厚の2軸延伸PETフィルムを原反フィルムに積層した。この工程により、高鮮映フィルムを得た。ここで、PET系アロイとは、PET(ユニチカ製 MA1344)、ポリオレフィン系エラストマー(三井化学製、タフマー4085S)、エチレン3元共重合体(住友化学株式会社製、ボンドファスト7L)を87/10/3に混合したアロイである。
2層Tダイスを使用して、上層:PP(ポリプロピレン、日本ポリプロ社製、ノバレックスFB3B)、下層:無水マレイン酸変性PP(三井化学社製、アドマーSF725)からなる2層PPフィルム(上層/下層=90/10μm)を作製した。この2層PPフィルムを用いて、単色エンボスフィルム、鏡面仕上げポリオレフィン原反を得た。ここで、単色エンボスフィルムには、上記3−1−1.と同様のエンボス模様を付した。さらに、上記3−1−2.と同様のダブリング工程を行うことで、木目印刷を施した25μm厚の2軸延伸PETフィルムを原反フィルムに積層した。この工程により、高鮮映フィルムを得た。
フッ素系樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルムとして、40μm厚PVDフィルム(テドラー、デュポン社製)、PMMA(100μm厚、協和レザー社製)の単色フィルムを用意した。これらの単色フィルムの表面に上記3−1−1.と同一のエンボス模様を施すことで、単色エンボスフィルムを作製した。
金属板として、0.45mm厚さの2種類の亜鉛系金鋼板(新日鉄住金製スーパーダイマー(K08)(以下、「SD鋼板」とも称する)、GI鋼板(Z18))、Al板(A5052、1.2mm厚)を用意した。そして、これらの金属板にアルカリ脱脂処理を施した後、クロメート液を塗布し、約45mg/m2のクロメート膜を金属板表面に形成した。また、他の金属板として、粗化処理したCu板(70μm、電解銅箔板)、真空焼鈍酸洗仕上げをしたJISH4600規格Ti板(1mm厚さ)を用意した。
(5−1.実施例1〜37)
実施例1〜37に係る意匠金属板は以下の工程により作製した。まず、金属板にコータにて下層用の接着剤組成物(下層側接着層組成物)を厚さが2μmになるように塗布した。ついで、金属板を下層加熱温度(詳細な値は後述する表に示す)まで加熱した。これにより、金属板上に下層側接着層を形成した。金属板を室温まで冷却した後、上層用の接着剤組成物(上層側接着剤組成物)を下層側接着層上に厚さが2μmになるように塗布した。ついで、金属板を上層加熱温度(詳細な値は後述する表に示す)まで加熱することで、上層側接着層を形成した。金属板の温度が上層加熱温度に到達した後、上述した塩化ビニルフィルム(単色エンボスフィルム、高鮮映フィルムのいずれか)を上層側接着層の表面に圧着した。以上の工程により、意匠金属板を得た。なお、金属板の加熱温度は、予め金属板表面に装着した熱電対を用いて測定した。実施例1〜11では、上層用の接着剤組成物及び下層用の接着剤としてポリエステル系の接着剤組成物を使用した。実施例12〜18では、上層用の接着剤組成物及び下層用の接着剤組成物としてアクリル系接着剤組成物を使用した。実施例19〜37では、上層用の接着剤組成物及び下層用の接着剤組成物として異なる材料系の接着剤組成物を使用した。金属板は実施例毎に異なるものを使用した。以下の説明では、単色エンボスフィルムが貼り付けられた意匠金属板を「単色エンボス板」とも称し、高鮮映フィルムが貼り付けられた意匠金属板を「高鮮映板」とも称する。
意匠フィルムの種類を変更した他は実施例1と同様の工程を行うことで、意匠金属板を作製した。
実施例42に係る意匠金属板は以下の工程により作製した。まず、金属板にコータにて下層用の接着剤組成物を厚さが2μmになるように塗布した。ついで、金属板を下層加熱温度まで加熱した。これにより、金属板上に下層側接着層を形成した。ついで、金属板を室温まで冷却した。一方、上述した塩化ビニルフィルム上にコータにて上層用の接着剤組成物を厚さが2μmになるように塗布した。ついで、意匠フィルムを上層加熱温度まで加熱した。これにより、塩化ビニルフィルム上に上層側接着層を形成した。その後、意匠フィルムを室温まで冷却した。ついで、下層側接着層が形成された金属板を上層加熱温度まで加熱し、意匠フィルム上の上層側接着層を金属板上の下層側接着層に圧着した。以上の工程により、意匠金属板を得た。
接着層を1層だけで構成することとした他は、実施例1と同様の工程により、意匠金属板を作製した。すなわち、実施例1と同様の工程により、金属板上に接着層を形成した。ついで、金属板を加熱温度(詳細な値は後述する表に示す)まで加熱した。ついで、塩化ビニルフィルムを接着層に圧着した。以上の工程により、意匠金属板を作製した。
上層側接着剤の軟化温度を下層側接着剤の軟化温度より高くした他は、実施例1と同様の工程により、意匠金属板を作製した。
下層側接着剤の軟化温度を90℃未満とした他は、実施例1と同様の工程により、意匠金属板を作製した。
上層側接着剤の軟化温度を80℃より高くした他は、実施例1と同様の工程により、意匠金属板を作製した。
意匠フィルムの種類を変更した他は比較例1と同様の工程を行うことで、意匠金属板を作製した。各実施例及び比較例で作製した意匠金属板の構成を表5〜15にまとめて示す。
(6−1.初期密着力)
単色エンボス板を用いて、初期密着力を評価した。具体的には、カッターナイフで単色エンボスフィルムに5mm幅の#型切込みを入れた。ここで、切り込みの深さは金属板に達する程度の深さとした。ついで、エリクセン試験機(DKSH社製、エリクセン試験機)を用いて#型切込み部分を8mm張り出した。ここで、張り出し部分の中心(トップ部)を#型切込み部分の中心に一致させた。ついで、#型切込み部分をピンセットで強制剥離し、剥離の程度を以下の基準で評価した。
◎◎:評点5(フィルムが凝集破壊して殆ど剥離なし)
◎:評点4(トップ部のみ剥離)
○:評点3(トップ部の全体および側面部の1/3未満が剥離)
×:評点2(トップ部の全体および側面部の全体が剥離)
××:評点1(トップ部の全体、側面加工部の全体、及び#型切込み部分の周囲が剥離)
そして、同様の試験を5回繰り返して行った。結果を表5〜15にまとめて示す。なお、試験毎に評価のバラ付きがある場合、評価の上限、下限を表に記載した。
単色エンボス板を用いて、初期意匠保持性の評価指標の1つであるエンボス戻り率を評価した。具体的には、単色エンボスフィルム表面の算術平均粗さRa1と、単色エンボス板表面(具体的には、単色エンボス板に貼り付けられた単色エンボスフィルムの表面)の算術平均粗さRa2を接触式2次元粗さ計(オリンパス社製、OLS400)で測定した。観察面は、20×20mmとした。ついで、初期意匠保持性の指標の1つであるエンボス戻り率を以下の数式(2)により算出した。
エンボス戻り率χ: χ=1−Ra2/Ra1 (2)
高鮮映フィルムを用いて、初期意匠保持性の評価指標の1つである鮮映度(PDG値)及び色落ちを評価した。具体的には、高鮮映フィルム表面及び高鮮映板表面(具体的には、高鮮映板の表面に貼り付けられた高鮮映フィルムの表面)の鮮映度を鮮明度光沢度計((財)日本色彩研究所社製PGD―IV)で測定した。そして、鮮映度を以下の基準で評価した。
◎:高鮮映フィルム及び高鮮映板の鮮映度の差が0.1未満
○:高鮮映フィルム及び高鮮映板の鮮映度の差が0.1〜0.2
×:高鮮映フィルム及び高鮮映板の鮮映度の差が0.3以上
そして、同様の試験を5回繰り返して行った。結果を表5〜15にまとめて示す。なお、試験毎に評価のバラ付きがある場合、評価の上限、下限を表に記載した。
◎: △a<3.0
○: 3.0<△a<5.0
×: △a>5.0
そして、同様の試験を5回繰り返して行った。結果を表5〜15にまとめて示す。なお、試験毎に評価のバラ付きがある場合、評価の上限、下限を表に記載した。
単色エンボス板を用いて、耐久性を評価した。具体的には、単色エンボス板を20日間沸騰水及び75℃の温水に浸漬した。なお、下層側接着剤の軟化温度が100℃未満となる場合、実施例6を除き、70℃の温水にのみ浸漬した。以下、このような試験を「浸漬試験」とも称する。ついで、浸漬試験後のフィルム密着力を上述した初期密着力と同様の試験により評価した。さらに、浸漬試験後の単色エンボス板の端部を目視で観察し、単色エンボスフィルムの戻り(剥がれ)の有無、腐食の有無を評価した。なお、腐食の有無は、腐食が問題となる金属板、すなわちGI鋼板、SD鋼板についてのみ行った。そして、同様の試験を5回繰り返して行った。結果を表5〜15にまとめて示す。なお、試験毎に評価のバラ付きがある場合、評価の上限、下限を表に記載した。
実施例1〜43では、初期密着力、初期意匠保持性、耐久性のいずれも高い評価が得られた。実施例1〜43では、上層側接着剤の軟化温度が80℃以下となっているので、上層加熱温度が低くても(具体的には、180℃以下であっても)、意匠フィルムを十分に金属板に密着させることができる。したがって、初期密着力、初期意匠保持性のいずれもが高くなった。さらに、下層側接着剤の軟化温度が90℃以上となっているので、高温多湿の環境下に長時間意匠金属板を曝露しても、金属板/下層側接着層の界面への水分子の侵入を防止できる。したがって、耐久性が高くなった。
20 鋼板
30 意匠フィルム
40 接着層
41 下層側接着層
42 上層側接着層
100、101 意匠金属板の製造装置
120 第1ロールコータ
130 第1オーブン
140 第2ロールコータ
150 第2オーブン
160 意匠フィルム搬送装置
170 冷却装置
Claims (21)
- 金属板と、
前記金属板上に積層された下層側接着層と、
前記下層側接着層上に積層された上層側接着層と、
前記上層側接着層上に積層された意匠フィルムと、を備え、
前記下層側接着層は、下層側接着剤を含み、
前記上層側接着層は、上層側接着剤を含み、
前記上層側接着剤の軟化温度は80℃以下であり、
前記下層側接着剤の軟化温度は90℃以上であることを特徴とする、意匠金属板。 - 前記上層側接着剤の軟化温度は70℃以下であることを特徴とする、請求項1記載の意匠金属板。
- 前記下層側接着剤の軟化温度は100℃以上であることを特徴とする、請求項1または2記載の意匠金属板。
- 前記下層側接着剤及び前記上層側接着剤は、ポリエステル系、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系、及びユリア系の熱硬化型接着剤のうち何れか1種以上で構成されることを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載の意匠金属板。
- 前記下層側接着剤及び前記上層側接着剤は、線状ポリエステル樹脂100質量部にイソシアネート基を全ジカルボン酸残基に対して30モル%以上有するポリイソシアネート樹脂3〜25質量部を添加したポリエステル系熱硬化型接着剤であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の意匠金属板。
- 前記下層側接着層は、シランカップリング剤を前記下層側接着剤100質量部に対して2〜15質量部含むことを特徴とする、請求項1〜5の何れか1項に記載の意匠金属板。
- 前記意匠フィルムは、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、及びフッ素系樹脂のうち何れか1種以上で構成されることを特徴とする、請求項1〜6の何れか1項に記載の意匠金属板。
- 前記意匠フィルムのうち、前記上層側接着層に接する部分の軟化温度は150℃未満であることを特徴とする、請求項1〜7の何れか1項に記載の意匠金属板。
- 請求項1〜8の何れか1項に記載の意匠金属板を製造する意匠金属板の製造方法であって、
180℃以下の前記金属板と前記意匠フィルムとを前記下層側接着層及び前記上層側接着層を介して接着することを特徴とする、意匠金属板の製造方法。 - 下層側接着剤を金属板上に積層することで、下層側接着層を前記金属板上に形成する工程と、
前記金属板を加熱することで、前記下層側接着層を前記金属板に密着させる工程と、
上層側接着剤を前記下層側接着層上に積層することで、上層側接着層を前記下層側接着層上に形成する工程と、
前記金属板を180℃以下の加熱温度まで加熱することで、前記上層側接着剤を軟化させる工程と、
前記上層側接着層上に意匠フィルムを積層する工程と、を含み、
前記上層側接着剤の軟化温度は80℃以下であり、
前記下層側接着剤の軟化温度は90℃以上であることを特徴とする、意匠金属板の製造方法。 - 下層側接着剤を金属板上に積層することで、下層側接着層を前記金属板上に形成する工程と、
前記金属板を加熱することで、前記下層側接着層を前記金属板に密着させる工程と、
上層側接着剤を含む上層側接着層が意匠フィルム上に積層された積層フィルムを準備する工程と、
前記金属板の温度を180℃以下とした状態で、前記金属板上の前記下層側接着層と前記意匠フィルム上の前記上層側接着層とを貼り合わせる工程と、を含み、
前記上層側接着剤の軟化温度は80℃以下であり、
前記下層側接着剤の軟化温度は90℃以上であることを特徴とする、意匠金属板の製造方法。 - 前記積層フィルムを準備する工程は、
前記上層側接着剤を前記意匠フィルム上に積層することで、上層側接着層を前記意匠フィルム上に形成する工程と、
前記意匠フィルムを加熱することで、前記上層側接着層を前記意匠フィルムに密着させる工程と、を含むことを特徴とする、請求項11記載の意匠金属板の製造方法。 - 前記下層側接着剤及び溶剤を含む下層側接着剤組成物を前記金属板上に積層することで、前記下層側接着層を形成し、
前記金属板を加熱することで、前記下層側接着層に含まれる前記溶剤を蒸発させるとともに、前記下層側接着層を前記金属板に密着させることを特徴とする、請求項10〜12の何れか1項に記載の意匠金属板の製造方法。 - 前記金属板を180℃超の加熱温度まで加熱することで、前記下層側接着層を前記金属板に密着させることを特徴とする、請求項10〜12の何れか1項に記載の意匠金属板の製造方法。
- 前記上層側接着剤の軟化温度は70℃以下であることを特徴とする、請求項10〜14の何れか1項に記載の意匠金属板の製造方法。
- 前記下層側接着剤の軟化温度は100℃以上であることを特徴とする、請求項10〜15の何れか1項に記載の意匠金属板の製造方法。
- 前記下層側接着剤及び前記上層側接着剤は、ポリエステル系、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系、及びユリア系の熱硬化型接着剤のうち何れか1種以上で構成されることを特徴とする、請求項10〜16の何れか1項に記載の意匠金属板の製造方法。
- 前記下層側接着剤及び前記上層側接着剤は、線状ポリエステル樹脂100質量部にイソシアネート基を全ジカルボン酸残基に対して30モル%以上有するポリイソシアネート樹脂3〜25質量部を添加したポリエステル系熱硬化型接着剤であることを特徴とする請求項10〜17の何れか1項に記載の意匠金属板の製造方法。
- 前記下層側接着剤及びシランカップリング剤を含む下層側接着剤組成物を前記金属板上に積層することで、前記下層側接着層を形成し、
前記シランカップリング剤は、前記下層側接着剤100質量部に対して2〜15質量部の割合で前記下層側接着剤組成物に含まれることを特徴とする、請求項10〜18の何れか1項に記載の意匠金属板の製造方法。 - 前記意匠フィルムは、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、及びフッ素系樹脂のうち何れか1種以上で構成されることを特徴とする、請求項10〜19の何れか1項に記載の意匠金属板の製造方法。
- 前記意匠フィルムのうち、前記上層側接着層に接する部分の軟化温度は150℃未満であることを特徴とする、請求項10〜20の何れか1項に記載の意匠金属板の製造方法。
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