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JP2016204217A - 複層ガラス - Google Patents

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JP2016204217A
JP2016204217A JP2015089014A JP2015089014A JP2016204217A JP 2016204217 A JP2016204217 A JP 2016204217A JP 2015089014 A JP2015089014 A JP 2015089014A JP 2015089014 A JP2015089014 A JP 2015089014A JP 2016204217 A JP2016204217 A JP 2016204217A
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大道 千葉
Omichi Chiba
大道 千葉
淳 石黒
Atsushi Ishiguro
淳 石黒
小原 禎二
Teiji Obara
禎二 小原
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Nippon Zeon Co Ltd
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Abstract

【課題】高温高湿環境下に置かれた場合であっても、導電性の経時低下が抑制された透明導電膜付き合わせガラスの提供。
【解決手段】2枚以上のガラス板と、これらのガラス板相互の接合面に介在する樹脂中間膜とからなり、これらのガラス板の少なくとも1枚の前記接合面には透明導電膜が形成された複層ガラスにおいて、前記樹脂中間膜が、アルコキシシリル基が導入されてなる特定の変性ブロック共重合体水素化物を含有する中間膜である合わせガラス。前ブロック共重合体が芳香族ビニル化合物由来の構造単位を主成分とするブロックと鎖状共役ジエン化合物由来の構造単位を主成分とするブロックとからなり、主鎖及び側鎖の炭素−炭素不飽和結合並びに芳香環の不飽和結合の90%以上を水素化されたブロック共重合体水素化物である複層ガラス。
【選択図】なし

Description

本発明は、透明導電膜を有する複層ガラスに関し、更に詳しくは、特定の変性ブロック共重合体水素化物により被覆され、耐久性に優れた透明導電膜を有する複層ガラスに関する。
表面に透明導電膜を形成したガラス(透明導電膜付き複層ガラス)は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、タッチパネル、プラズマディスプレイ、太陽電池、防曇自動車ガラス、遮熱ガラス等に利用されている。例えば、環境保護の観点から今後の普及が期待される電気自動車では、排熱を利用した防曇機能が付加できないため、透明導電膜を付与した複層ガラスを通電加熱することによる防曇機能が望まれている。発熱機能をもたせるための薄膜としては、ITO(In(Sn))、SnO、ZnO、SbあるいはFドープSnO、AlドープZnO等の透明導電膜が知られている。
しかし、透明導電膜を用いた複層ガラスにおいては、高温高湿条件下では時間経過とともに、透明導電膜の電気抵抗値が変化し、複層ガラスの防曇性能に好ましくない影響を及ぼすことがあった。
これに対する対応策として、特許文献1には、ガラス表面上に形成した透明導電膜と中間膜との間に、金属や金属酸化物、珪素酸化物等からなる層を形成して電気抵抗の変化を低減する方法が開示されている。
しかし、透明導電膜の上に更に保護層を形成する方法は、工業生産上で有利な方法とはいえない。
本発明に関連して、特許文献2、3には、芳香族ビニル化合物由来の重合体ブロックと、鎖状共役ジエン化合物由来の重合体ブロックとからなるブロック共重合体の、主鎖及び側鎖の炭素−炭素不飽和結合、及び、芳香環の炭素−炭素不飽和結合を水素化して得られるブロック共重合体水素化物に、アルコキシシリル基が導入された変性ブロック共重合体水素化物は、ガラスとの接着性、低吸湿性、透明性、太陽電池封止材や複層ガラス用接着剤等として有用であることが開示されている。
特開平8−217499号公報 WO2012/043708号パンフレット WO2013/176258号パンフレット
本発明は、上述した従来技術に鑑みてなされたものであり、高温高湿環境下でも導電性の経時低下を抑制した透明導電膜付き複層ガラスを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、表面に透明導電膜を形成したガラスを使用した複層ガラスにおいて、高温高湿環境下での電気抵抗値が変化する原因は、中間膜を透過して侵入する水分による透明導電膜の劣化が原因であると推測した。そして、この推測に基づき、従来汎用的に使用されているポリビニルアセタールを使用した複層ガラス中間膜に代えて、アルコキシシリル基が導入されてなる特定の変性ブロック共重合体水素化物を使用した中間膜を使用することにより、ガラス表面上に形成された透明導電膜の高温高湿環境下での電気抵抗値の経時変化が抑制されることを見出し、本発明を完成するに至った。
かくして本発明によれば、下記(1)及び(2)の複層ガラスが提供される。
(1)2枚以上のガラス板と、これらのガラス板相互の接合面に介在するプラスチック中間膜とからなり、これらのガラス板の少なくとも1枚の前記接合面に透明導電膜が形成された複層ガラスにおいて、
前記プラスチック中間膜が、芳香族ビニル化合物由来の構造単位を主成分とする、少なくとも2つの重合体ブロック[A]と、鎖状共役ジエン化合物由来の構造単位を主成分とする、少なくとも1つの重合体ブロック[B]とからなり、全重合体ブロック[A]のブロック共重合体全体に占める重量分率をwAとし、全重合体ブロック[B]のブロック共重合体全体に占める重量分率をwBとしたときに、wAとwBとの比(wA:wB)が30:70〜60:40であるブロック共重合体[C]の、主鎖及び側鎖の炭素−炭素不飽和結合及び芳香環の炭素−炭素不飽和結合の90%以上が水素化されたブロック共重合体水素化物[D]に、アルコキシシリル基が導入されてなる変性ブロック共重合体水素化物[E]を含有する中間膜であることを特徴とする複層ガラス。
(2)少なくとも、第1のガラス板、第1のガラス板上に形成された透明導電膜、樹脂中間膜、第2のガラス板の順に積層されてなる複層ガラスであって、
a.第1のガラス板上に積層された透明導電膜の端が、第1のガラス板の端に対して全周囲に亘って2mm以上離れて配置され、
b.樹脂中間膜が、透明導電膜の面積より大きい面積を有し、
c.透明導電膜が樹脂中間膜により覆われ、樹脂中間膜の端が、透明導電膜の端に対して全周囲に亘って2mm以上離れて配置された状態である
ことを特徴とする複層ガラス。
本発明によれば、高温高湿環境下に置かれた場合であっても、電気抵抗値の経時変化が抑制された透明導電膜付き複層ガラスが提供される。
以下、本発明の透明導電膜付き複層ガラスについて、詳細に説明する。
本発明の透明導電膜付き複層ガラスは、2枚以上のガラス板と、これらのガラス板相互の接合面に介在するプラスチック中間膜とからなり、これらのガラス板の少なくとも1枚の前記接合面に透明導電膜が形成された複層ガラスにおいて、
前記プラスチック中間膜が、
芳香族ビニル化合物由来の構造単位を主成分とする、少なくとも2つの重合体ブロック[A]と、鎖状共役ジエン化合物由来の構造単位を主成分とする、少なくとも1つの重合体ブロック[B]とからなり、全重合体ブロック[A]のブロック共重合体全体に占める重量分率をwAとし、全重合体ブロック[B]のブロック共重合体全体に占める重量分率をwBとしたときに、wAとwBとの比(wA:wB)が30:70〜60:40であるブロック共重合体[C]の、主鎖及び側鎖の炭素−炭素不飽和結合及び芳香環の炭素−炭素不飽和結合の90%以上が水素化されたブロック共重合体水素化物[D]に、アルコキシシリル基が導入されてなる変性ブロック共重合体水素化物[E](以下、「特定の変性ブロック共重合体水素化物[E]」ということがある。)を含有する中間膜であることを特徴とする。
1.中間膜
本発明に用いる中間膜は、少なくとも特定の変性ブロック共重合体水素化物[E]を含有するものであれば、変性ブロック共重合体水素化物[E]のみから成形されたものであっても、変性ブロック共重合体水素化物[E]に後述する配合剤を含む樹脂組成物で成形されたものであってもよい。
中間膜を構成する成分中の変性ブロック共重合体水素化物[E]の含有量は、中間膜を構成する成分全体に対して、通常70重量%以上、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上である。
変性ブロック共重合体水素化物[E]の含有量が70重量%以上であることで、耐熱性、柔軟性、低吸湿性、透明性、及び、ガラスとの接着性に優れる中間膜となる。
前記特定の変性ブロック共重合体水素化物[E]は、芳香族ビニル化合物由来の構造単位を主成分とする、少なくとも2つの重合体ブロック[A]と、鎖状共役ジエン化合物由来の構造単位を主成分とする、少なくとも1つの重合体ブロック[B]とからなり、全重合体ブロック[A]のブロック共重合体全体に占める重量分率をwAとし、全重合体ブロック[B]のブロック共重合体全体に占める重量分率をwBとしたときに、wAとwBとの比(wA:wB)が30:70〜60:40であるブロック共重合体[C]の、主鎖及び側鎖の炭素−炭素不飽和結合及び芳香環の炭素−炭素不飽和結合の90%以上が水素化されたブロック共重合体水素化物[D]に、アルコキシシリル基が導入されることにより得られる。
(ブロック共重合体[C])
前記変性ブロック共重合体水素化物[E]の前駆体であるブロック共重合体[C]は、少なくとも2つの重合体ブロック[A]と少なくとも1つの重合体ブロック[B]を含有する高分子である。ブロック共重合体[C]中の重合体ブロック[A]の数は、通常3個以下、好ましくは2個である。
ブロック共重合体[C]のブロックの形態は、鎖状型ブロックでもラジアル型ブロックでも良いが、鎖状型ブロックであるものが、機械的強度に優れ好ましい。
ブロック共重合体[C]の最も好ましい形態は、重合体ブロック[B]の両端に重合体ブロック[A]が結合した、[A]−[B]−[A]型のトリブロック共重合体である。
重合体ブロック[A]は、芳香族ビニル化合物由来の構造単位を主成分とするものであり、重合体ブロック[A]中の芳香族ビニル化合物由来の構造単位の含有量は、通常90重量%以上、好ましくは95重量%以上、より好ましくは99重量%以上である。
重合体ブロック[A]中の芳香族ビニル化合物由来の構造単位が少な過ぎると、複層ガラスの耐熱性が低下するおそれがある。
複数の重合体ブロック[A]は、上記の範囲を満足すれば互いに同一であっても、相異なっていても良い。
芳香族ビニル化合物としては、具体的には、スチレン;α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、5−t−ブチル−2−メチルスチレンなどの置換基としてアルキル基を有するスチレン類;3−メトキシスチレン、2−メトキシ−4−イソプロポキシスチレン等の置換基としてアルコキシ基を有するスチレン類;4−モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、4−モノフルオロスチレン等の置換基としてハロゲン原子を有するスチレン類;4−フェニルスチレン等の置換基としてアリール基を有するスチレン類;などが挙げられる。これらの中でも、吸湿性の観点から、極性基を含有しないもの(スチレン、置換基としてアルキル基を有するスチレン類、置換基としてアリール基を有するスチレン類)が好ましく、工業的な入手の容易さからスチレンが特に好ましい。
また、重合体ブロック[A]は、芳香族ビニル化合物由来の構造単位以外の成分として、鎖状共役ジエン由来の構造単位及び/又はその他のビニル化合物由来の構造単位を含むことができる。その含有量は、通常10重量%以下、好ましくは5重量%以下、より好ましくは1重量%以下である。
鎖状共役ジエン及びその他のビニル化合物としては、後述する重合体ブロック[B]の構造単位となる鎖状共役ジエン及びその他のビニル化合物と同様のものが挙げられる。
重合体ブロック[B]は、鎖状共役ジエン化合物由来の構造単位を主成分とするものであり、重合体ブロック[B]中の鎖状共役ジエン化合物由来の構造単位の含有量は、通常80重量%以上、好ましくは90重量%以上、より好ましくは95重量%以上である。
鎖状共役ジエン化合物由来の構造単位が上記範囲にあると、本発明の複層ガラスの耐熱衝撃性、低温での接着性に優れる。
また、重合体ブロック[B]中の鎖状共役ジエン化合物由来の構造単位以外の成分として、芳香族ビニル化合物由来の構造単位及び/又はその他のビニル化合物由来の構造単位を含むことができる。その含有量は、通常20重量%以下、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下である。重合体ブロック[B]中の芳香族ビニル化合物由来の構造単位の含有量が増加すると、接着樹脂層の低温での柔軟性が低下し、複層ガラスの耐熱衝撃性が低下するおそれがある。
ブロック共重合体[C]が重合体ブロック[B]を複数有する場合には、重合体ブロック[B]は、上記の範囲を満足するものであれば、互いに同一であっても、相異なっていても良い。
鎖状共役ジエン系化合物としては、吸湿性の観点から、極性基を含有しない鎖状共役ジエン系化合物が好ましい。具体的には、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン等が挙げられる。これらの中でも、工業的な入手の容易さから、1,3−ブタジエン、イソプレンが特に好ましい。
その他のビニル系化合物としては、鎖状ビニル化合物、環状ビニル化合物、不飽和の環状酸無水物、不飽和イミド化合物等が挙げられる。これらの化合物は、ニトリル基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシカルボニル基、ハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。これらの中でも、吸湿性の観点から、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、1−エイコセン、4−メチル−1−ペンテン、4,6−ジメチル−1−ヘプテン等の炭素数2〜20の鎖状オレフィン;ビニルシクロヘキサン、ノルボルネン等の炭素数5〜20の環状オレフィン;1,3−シクロヘキサジエン、ノルボルナジエン等の環状ジエン化合物;等の極性基を含有しないものが好ましい。
ブロック共重合体[C]中の、重合体ブロック[A]の全量がブロック共重合体[C]に占める重量分率をwAとし、重合体ブロック[B]の全量がブロック共重合体[C]に占める重量分率をwBとしたときに、wAとwBとの比(wA:wB)は、通常30:70〜60:40、好ましくは35:65〜55:45、より好ましくは40:60〜50:50である。
wAが多過ぎる場合は、変性ブロック共重合体水素化物[E]の耐熱性が高くなるが、柔軟性が低く、ガラスや金属に対する接着性が弱くなり、本発明に係る熱樹脂組成物のガラスや金属に対する接着性が損なわれるおそれがある。
ブロック共重合体[C]の分子量は、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、通常40,000〜200,000、好ましくは45,000〜150,000、より好ましくは50,000〜100,000である。また、ブロック共重合体[C]の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、特に好ましくは1.5以下である。Mw及びMw/Mnが上記範囲となるようにすると、変性ブロック共重合体水素化物[E]は、耐熱性や機械的強度が良好となり、本発明に係る複層ガラスの耐熱性や機械的強度が低下することがない。
ブロック共重合体[C]の製造方法は、特に限定されず、公知の方法を採用することができる。例えば、リビングアニオン重合等の方法により、芳香族ビニル化合物を主成分として含有するモノマー混合物と、鎖状共役ジエン系化合物を主成分として含有するモノマー混合物を交互に重合させる方法;芳香族ビニル化合物を主成分として含有するモノマー混合物と鎖状共役ジエン系化合物を主成分として含有するモノマー混合物を順に重合させた後、重合体ブロック[B]の末端同士を、カップリング剤によりカップリングさせる方法等により、得ることができる。
(ブロック共重合体水素化物[D])
ブロック共重合体水素化物[D]は、上記のブロック共重合体[C]の主鎖及び側鎖の炭素−炭素不飽和結合及び芳香環の炭素−炭素不飽和結合を水素化して得られる高分子である。
その水素化率は、通常90%以上、好ましくは97%以上、より好ましくは99%以上である。水素化率が高いほど、変性ブロック共重合体水素化物[E]の耐熱性及耐久性が良好であり、本発明に係る複層ガラスの耐熱性や耐久性が低下することがなく好ましい。
ブロック共重合体水素化物[D]の水素化率は、ブロック共重合体水素化物[D]のH−NMRを測定することにより求めることができる。
不飽和結合の水素化方法や反応形態等は特に限定されず、公知の方法にしたがって行えばよいが、水素化率を高くでき、重合体鎖切断反応の少ない水素化方法が好ましい。このような水素化方法としては、例えば、WO2011/096389号パンフレット、WO2012/043708号パンフレット等に記載された方法を挙げることができる。
水素化反応終了後においては、水素化触媒、又は水素化触媒及び重合触媒を反応溶液から除去した後、得られた溶液からブロック共重合体水素化物[D]を回収することができる。回収されたブロック共重合体水素化物[D]の形態は限定されるものではないが、通常はペレット形状にして、その後のアルコキシシリル基の導入反応に供することができる。
ブロック共重合体水素化物[D]の分子量は、THFを溶媒としたGPCにより測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、通常40,000〜200,000、好ましくは50,000〜150,000、より好ましくは60,000〜100,000である。また、ブロック共重合体水素化物[D]の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、特に好ましくは1.5以下にする。Mw及びMw/Mnが上記範囲となるようにすると、変性ブロック共重合体水素化物[E]は、耐熱性や機械的強度が良好となり、本発明に係る複層ガラスの耐熱性や機械的強度が低下することがなく好ましい。
(変成ブロック共重合体水素化物[E])
本発明の複層ガラスに使用する中間膜を構成する主要成分である変成ブロック共重合体水素化物[E]は、上記ブロック共重合体水素化物[D]に、有機過酸化物の存在下で、エチレン性不飽和シラン化合物を反応させることにより、アルコキシシリル基が導入されたものである。ブロック共重合体水素化物[D]にアルコキシシリル基を導入することにより、ガラスや金属に対する強固な接着性を付与することができる。
アルコキシシリル基としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基等の、トリ(炭素数1〜6アルコキシ)シリル基;メチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、エチルジメトキシシリル基、エチルジエトキシシリル基、プロピルジメトキシシリル基、プロピルジエトキシシリル基等の、(炭素数1〜20アルキル)ジ(炭素数1〜6アルコキシ)シリル基;フェニルジメトキシシリル基、フェニルジエトキシシリル基等の、(アリール)ジ(炭素数1〜6アルコキシ)シリル基;等が挙げられる。また、アルコキシシリル基は、ブロック共重合体水素化物[D]に、炭素数1〜20のアルキレン基や、炭素数2〜20のアルキレンオキシカルボニルアルキレン基等の2価の有機基を介して結合していても良い。
ブロック共重合体水素化物[D]へのアルコキシシリル基の導入量は、通常、ブロック共重合体水素化物[D]100重量部に対し、0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜5重量部、より好ましくは0.5〜3重量部である。アルコキシシリル基の導入量が多過ぎると、得られる変性ブロック共重合体水素化物[E]を保存中に微量の水分等で分解されたアルコキシシリル基同士の架橋が進み、ゲル化したり、溶融成形時の流動性が低下して、中間膜を溶融押出し成形できる温度が高くなったり、成形される中間膜の表面が荒れたりするおそれがある。また、アルコキシシリル基の導入量が少な過ぎると、成形される中間膜のガラスや金属に対する接着性が低下するおそれがある。
アルコキシシリル基が導入されたことは、IRスペクトルで確認することができる。また、その導入量は、H−NMRスペクトルにて算出することができる。
用いるエチレン性不飽和シラン化合物としては、ブロック共重合体水素化物[D]とグラフト重合し、ブロック共重合体水素化物[D]にアルコキシシリル基を導入するものであれば、特に限定されない。例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ジメトキシメチルビニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラ、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、等が好適に用いられる。これらのエチレン性不飽和シラン化合物は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
エチレン性不飽和シラン化合物の使用量は、ブロック共重合体水素化物[D]100重量部に対して、通常0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜5重量部、より好ましくは0.5〜3重量部である。
過酸化物としては、1分間半減期温度が170〜190℃のものが好ましく使用される。例えば、t−ブチルクミルパーオキシド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ヘキシルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキシド、ジ(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン等が好適に用いられる。これらの過酸化物は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
過酸化物の使用量は、ブロック共重合体水素化物[D]100重量部に対して、通常0.05〜2重量部、好ましくは0.1〜1重量部、より好ましくは0.2〜0.5重量である。
上記のブロック共重合体水素化物[D]とエチレン性不飽和シラン化合物とを、過酸化物の存在下で反応させる方法は、特に限定されない。例えば、二軸混練機にて所望の温度で所望の時間混練することにより、ブロック共重合体水素化物[D]にアルコキシシリル基を導入することができる。
二軸混練機による混練温度は、通常180〜220℃、好ましくは185〜210℃、より好ましくは190〜200℃である。
加熱混練時間は、通常0.1〜10分、好ましくは0.2〜5分、より好ましくは0.3〜2分程度である。
温度、滞留時間が上記範囲になるようにして、連続的に混練、押出しをすればよい。得られた変性ブロック共重合体水素化物[E]の形態は限定されるものではないが、通常はペレット形状にして、その後の添加剤の配合に供することができる。
変性ブロック共重合体水素化物[E]の分子量は、導入されるアルコキシシリル基の量が少ないため、原料として用いたブロック共重合体水素化物[D]の分子量と実質的には変わらない。一方、過酸化物の存在下で、エチレン性不飽和シラン化合物と反応させるため、重合体の架橋反応、切断反応が併発し、変性ブロック共重合体水素化物[E]の分子量分布の値は大きくなる。
変性ブロック共重合体水素化物[E]の分子量は、THFを溶媒としたGPCにより測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、通常40,000〜200,000、好ましくは50,000〜150,000、より好ましくは60,000〜100,000である。また、分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは3.5以下、より好ましくは2.5以下、特に好ましくは2.0以下である。Mw及びMw/Mnが上記範囲となるようにすると、変性ブロック共重合体水素化物[E]の耐熱性や機械的強度が維持される。
(配合剤)
本発明の複層ガラスに使用する中間膜を構成する成分としては、主要成分である変成ブロック共重合体水素化物[E]に加えて、各種の添加剤を配合することもできる。
好ましい添加剤としては、充填性、接着温度の低下、及びガラスとの接着性等を調整するための充填助剤、紫外線を遮蔽するための紫外線吸収剤、加工性等を高めるための酸化防止剤やブロッキング防止剤、耐久性を高めるための光安定剤等が挙げられる。
中間膜を接着する対象物表面の微細構造に隙間なく中間膜を充填させるための充填助剤としては、ブロック共重合体水素化物[D]及び/又は変性ブロック共重合体水素化物[E]に均一に溶解ないし分散できるものが好ましく、数平均分子量300〜5,000の炭化水素系重合体が好ましい。
炭化水素系重合体の具体例としては、ポリイソブチレン、ポリブテン、ポリ−4−メチルペンテン、ポリ−1−オクテン、エチレン・α−オレフィン共重合体等の低分子量体及びその水素化物;ポリイソプレン、ポリイソプレン−ブタジエン共重合体等の低分子量体及びその水素化物等が挙げられる。充填助剤は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、特に透明性、耐光性を維持し、充填性の効果に優れている点で、低分子量のポリイソブチレン水素化物、低分子量のポリイソプレン水素化物が好ましい。
低分子量の炭化水素系重合体の配合量は、変性ブロック共重合体水素化物[E]100重量部に対して、通常20重量部以下、好ましくは10重量部以下である。低分子量の炭化水素系重合体の配合量を多くすると、複層ガラス用の中間膜とした場合に、充填性は高められるが、耐熱性が低下したり、溶出物が増加し易くなる傾向がある。
変性ブロック共重合体水素化物[E]に配合される、紫外線吸収剤、酸化防止剤、ブロッキング防止剤、光安定剤等は、それぞれ1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの添加剤の配合量は、変性ブロック共重合体水素化物[E]100重量部に対して、通常5重量部以下、好ましくは2重量部以下、より好ましくは1重量部以下である。
紫外線吸収剤としては、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、トリアジン系化合物等が使用できる。
酸化防止剤としては、リン系酸化防止剤、フェノ−ル系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤等が使用できる。
光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤等が使用できる。
変成ブロック共重合体水素化物[E]に各種の添加剤を配合する方法としては、一般に用いられる公知の方法が適用できる。例えば、変性ブロック共重合体水素化物[E]のペレット及び配合剤を、タンブラー、リボンブレンダー、ヘンシェルタイプミキサー等の混合機を使用して均等に混合した後、二軸押出し機等の連続式溶融混練機により溶融混合し、押出してペレット状にする方法、変性ブロック共重合体水素化物[E]を、サイドフィーダーを備えた二軸押出し機により、サイドフィーダーから配合剤を連続的に添加しながら、溶融混練して押出し、ペレット状にする方法、等によって配合剤を均一に分散した変性ブロック共重合体水素化物[E]を製造することができる。
(中間膜)
本発明に使用する中間膜は、変性ブロック共重合体水素化物[E]をシート状に成形して、少なくとも2枚以上のガラス板を貼り合わせる目的で使用される。
中間膜を成形する方法としては、特に限定されず、公知の、溶融押出し成形法、インフレーション成形法、カレンダー成形法等が適用できる。
変性ブロック共重合体水素化物[E]から形成された中間膜は、熱架橋性を付与するための有機過酸化物や架橋助剤の配合を必要としないため、溶融成形温度の選択領域が広い。例えば、溶融押出し成形法により、中間膜を成形する場合は、樹脂温度は、通常170〜250℃、好ましくは180〜240℃、より好ましくは190〜230℃の範囲で適宜選択される。樹脂温度が低過ぎる場合は、流動性が悪化し、得られる中間膜にゆず肌やダイライン等の不良を生じ易く、また、中間膜の押出し速度が上げられず、工業的に不利となるおそれがある。樹脂温度が高過ぎる場合は、中間膜のガラスヘの接着性が不良となったり、中間膜の貯蔵安定性が低下して、中間膜を常温常湿環境下で長期間貯蔵した後のガラスに対する接着性が低下したりするおそれがある。
中間膜の厚みは、特に制限されないが、通常0.05〜5mm、好ましくは0.1〜4mm、より好ましくは0.2〜3mmの範囲である。中間膜の厚みが0.05mmよりも小さい場合、ガラスとの積層時に中間膜の取り扱い性が劣り、作業性が低下するおそれがある。また、中間膜の厚みが5mmよりも大きい場合、複層ガラス全体での光線透過率が低下したり、変性ブロック共重合体水素化物[E]の使用量が多くなり経済性が低下したりするおそれがある。
中間膜の層構成は、変性ブロック共重合体水素化物[E]に、必要に応じて前記配合剤を配合した組成物からなる単層のシートであっても、また、ブロック共重合体水素化物[D]に、必要に応じて前記配合剤を配合した組成物からなるシートの片面もしくは両面に、変性ブロック共重合体水素化物[E]からなる層が積層されている多層シートであっても良い。
中間膜が多層シートである場合、多層シートを成形する方法としては、例えば、2種3層共押出し成形法;ブロック共重合体水素化[D]からなるシートの片面もしくは両面に、変性ブロック共重合体水素化物[E]をからなるシートを、熱圧着して積層する方法;等が挙げられる。
中間膜が多層シートの場合、変性ブロック共重合体水素化物[E]からなる層の厚みは、通常0.005mm以上、好ましくは0.01mm以上、より好ましくは0.015mm以上である。変性ブロック共重合体水素化物[E]からなる層の厚みが0.005mmよりも小さいと、ガラス板との接着性が十分に得られなくなるおそれがある。
中間膜の表面は、平面状やエンボス加工を施した形状等とすることができる。また、中間膜同士のブロッキングを防止するために、中間膜の片面に、離型フィルムを重ねて保管することもできる。
2.ガラス板
本発明の複層ガラスにおいて、使用されるガラス板は、厚さや材質等は特に限定されない。使用されるガラス板の厚さは、通常0.5〜10mm程度である。厚さが0.05〜0.4mm程度の極薄ガラス板を使用することもできる。例えば、厚さ3.2mmのガラス板(第1のガラス板)/樹脂中間膜/透明導電膜が形成された厚さ1.0mmのガラス板(第2のガラス板)のように、異なる厚みのガラス板を使用することもできる。
変性ブロック共重合体水素化物[E]は、−50℃程度の低温領域から、+120℃程度の高温領域まで幅広い温度帯域で柔軟性を維持するため、熱膨張係数の異なるガラス板を貼り合わせることもでき、急激な温度変化によってもガラスの割れを低減することができる。
使用するガラス板の材質は特に限定されない。例えば、アルミノシリケート酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、ウランガラス、カリガラス、ケイ酸ガラス、結晶化ガラス、ゲルマニウムガラス、石英ガラス、ソーダガラス、白板ガラス、鉛ガラス、バリウム瑚珪酸ガラス、瑚珪酸ガラス等が挙げられる。
3.透明導電膜
本発明に用いる透明導電膜は、ガラス板表面に直接形成した場合の、波長550nmにおける光線透過率が60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上のものである。
本発明で使用する透明導電膜は、具体的には、無機酸化物、無機窒化物、無機硫化物又は金属等の無機物を用いてガラス上に製膜積層する。透明導電膜の膜厚は、5〜400nmの範囲内で、通電、発熱、電磁波遮蔽あるいは光反射等の目的に応じて適宜選択することが可能である。
無機物としては、例えば、酸化亜鉛、Alドープ酸化亜鉛、Gaドープ酸化亜鉛、Inドープ酸化亜鉛、Fドープ酸化亜鉛、酸化インジウム、Snドープ酸化インジウム、Fドープ酸化インジウム、酸化ガリウム、酸化スズ、Sbドープ酸化スズ、Fドープ酸化スズ、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化タングステン、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化チタン、硫化カドミウム、硫化亜鉛、セレン化亜鉛等;金属としては、Ag、Pd、Al、Zn等が使用でき、単層膜又は多層膜として用いることができる。
透明導電膜の製膜方法としては、真空製膜法、例えば、スパッタリング法、蒸着法、CVD法等の製膜法を用いることができる。透明導電膜はガラス板表面に直接形成しても、ガラス表面に太陽電池素子や表示素子等の他の薄膜を形成した上に形成してもよい。
4.複層ガラス
本発明の複層ガラスは、2枚以上のガラス板と、これらのガラス板相互の接合面に介在する樹脂中間膜とからなり、これらのガラス板の少なくとも1枚の前記接合面には透明導電膜が形成された複層ガラスであって、樹脂中間膜は、前述のアルコキシシリル基が導入された特定の変性ブロック共重合体水素化物[E]から形成されたものである。
すなわち、本発明の複層ガラスは、少なくとも、第1のガラス板/透明導電膜/樹脂中間膜/第2のガラス板の順に積層された構造を有している。第2のガラス板の表面にも透明導電膜が形成されていてもよい。
本発明の複層ガラスでは、透明導電膜の端部は樹脂中間膜で覆われていることが好ましく、a〜cの状態であることがより好ましい。
a.第1のガラス板上に積層された透明導電膜の端が、第1のガラス板の端に対して全周囲に亘って2mm以上離れて配置され、
b.樹脂中間膜が、透明導電膜の面積より大きい面積を有し、
c.透明導電膜が樹脂中間膜により覆われ、樹脂中間膜の端が、透明導電膜の端に対して全周囲に亘って2mm以上離れて配置されている。
本発明で使用する樹脂中間膜は、吸湿性及び透湿性が小さく、ガラスに対する接着性に優れた変性ブロック共重合体水素化物[E]を使用し、更に、透明導電膜の端部を樹脂中間膜で覆うことにより、高温高湿度環境下で使用した場合であっても、抵抗値が上昇して導電性が失われる等の不具合の発生を低減できる。
複層ガラスを製造するには、少なくとも、透明導電膜が形成された第1のガラス板/透明導電膜が形成された面に接するように樹脂中間膜/第2のガラス板をこの順に重ね、真空ラミネータを用いて加熱減圧下で接着させる方法や、減圧可能な耐熱性のゴム袋に入れて脱気後、オートクレーブを使用して、加熱加圧下で接着させる方法等が適用できる。
本発明の複層ガラスの層構成としては、透明導電膜を形成した第1のガラス板/第1の樹脂中間膜/ディスプレイ素子/第2の樹脂中間膜/第2のガラス板、透明導電膜を形成した第1のガラス板/第1の樹脂中間膜/調光素子/第2の樹脂中間膜/第2のガラス板、透明導電膜を形成した第1のガラス板/第1の樹脂中間膜/太陽電池素子/第2の樹脂中間膜/第2のガラス板、等が挙げられる。
ディスプレイ素子、EL素子、調光素子、太陽電池素子等は、有機EL素子、液晶素子、サーモクロミック素子、フォトクロミック素子、エレクトロクロミック素子、半導体素子等からなり、透明導電膜と同様に、複層ガラス端部から侵入する水分や酸素により劣化し易いものが多い。
したがって、本発明の複層ガラスと同様の構成、すなわち、ディスプレイ素子、調光素子、太陽電池素子等の端が、第1及び第2の樹脂中間膜の端に対して全周囲に亘って2mm以上離れて配置された、第1のガラス板/第1の樹脂中間膜/ディスプレイ素子/第2の樹脂中間膜/第2のガラス板、第1のガラス板/第1の樹脂中間膜/調光素子/第2の樹脂中間膜/第2のガラス板、第1のガラス板/第1の樹脂中間膜/太陽電池素子/第2の樹脂中間膜/第2のガラス板、等の構成は、高温高湿環境下での有機ELディスプレイ素子、液晶ディスプレイ素子、調光素子、太陽電池素子等の劣化を防止するためにも効果的である。
本発明の複層ガラスは、防曇ガラス、建築物の窓ガラス、屋根用ガラス、部屋用遮熱壁材、自動車のサイドガラスやサンルーフ用ガラス、電気自動車のフロントガラス、鉄道車両や船舶用の窓ガラス、ディスプレイ基板等として有用である。
本発明を、実施例を示しながら、さらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。なお部及び%は特に断りのない限り重量基準である。
本実施例における評価は、以下の方法によって行う。
(1)重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)
ブロック共重合体及びブロック共重合体水素化物の分子量は、THFを溶離液とするGPCによる標準ポリスチレン換算値として38℃において測定した。
測定装置としては、東ソー社製HLC8020GPCを用いた。
(2)水素化率
ブロック共重合体水素化物[D]の主鎖、側鎖及び芳香環の水素化率は、H−NMRスペクトルを測定して算出した。
(3)透明導電膜の耐久性
1枚のガラス板上に形成した透明導電膜上に2本の導線を固定し、樹脂中間膜を介して、もう1枚のガラス板と貼り合わせて一体成形体とした複層ガラスを試験片とした。
この試験片を恒温恒湿槽に入れて、温度85℃、相対湿度85%RHの環境に暴露し、複層ガラス試験片の2本の導線線間の電気抵抗値(R)を、初期(R)及び経時で測定し、透明導電膜の導電性を評価した。
耐久性の評価は、2本の導線間の電気抵抗値(R)の初期値(R)に対する、1500時間経過後の抵抗値(R1500)の比(R1500/R0)が10以下である場合を良好(○)、10を超える場合を不良(×)と判断した。
[製造例1] 樹脂中間膜[G−1]の製造
(変性ブロック共重合体水素化物「E−1])
内部が十分に窒素置換された、攪拌装置を備えた反応器に、脱水シクロヘキサン400部、脱水スチレン25.0部、及び、ジ−n−ブチルエーテル0.475部を入れた。全容を60℃で攪拌しながら、n−ブチルリチウムの15%シクロヘキサン溶液0.88部を加えて重合を開始させ、攪拌しながら60℃で60分反応させた。この時点で、反応液をガスクロマトグラフィー(GC)により分析した結果、重合転化率は99.5%であった。
次いで、反応液に脱水イソプレン50.0部を加え、60℃で30分攪拌を継続した。この時点で、反応液をGCにより分析した結果、重合転化率は99.5%であった。
その後、更に、反応液に脱水スチレンを25.0部加え、60℃で60分攪拌した。この時点で、反応液をGCにより分析した結果、重合転化率はほぼ100%であった。
ここで、イソプロピルアルコール0.5部を加えて反応を停止させ、重合体溶液を得た。
重合体溶液に含まれるブロック共重合体[C−1]の重量平均分子量(Mw)は47,200、分子量分布(Mw/Mn)は1.04、wA:wB=50:50であった。
次に、上記の重合体溶液を攪拌装置を備えた耐圧反応器に移送し、水素化触媒として、珪藻土担持型ニッケル触媒(製品名「E22U」、ニッケル担持量60%、日揮触媒化成社製)8.0部、及び脱水シクロヘキサン100部を添加して混合した。反応器内部を水素ガスで置換し、さらに溶液を攪拌しながら水素を供給し、温度190℃、圧力4.5MPaにて6時間水素化反応を行った。
水素化反応により得られた反応溶液に含まれるブロック共重合体水素化物[D−1]の重量平均分子量(Mw)は49,900、分子量分布(Mw/Mn)は1.06であった。
水素化反応終了後、反応溶液を濾過して水素化触媒を除去した後、フェノール系酸化防止剤であるペンタエリスリチル・テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](製品名「Songnox1010」、松原産業社製)0.1部を溶解したキシレン溶液2.0部を添加して溶解させた。
次いで、上記溶液を、金属ファイバー製フィルター(孔径0.4μm、ニチダイ社製)にて濾過して微小な固形分を除去した後、円筒型濃縮乾燥器(製品名「コントロ」、日立製作所社製)を用いて、温度260℃、圧力0.001MPa以下で、溶液から、溶媒であるシクロヘキサン、キシレン及びその他の揮発成分を除去した。
溶融ポリマーをダイからストランド状に押出し、冷却後、ペレタイザーによりブロック共重合体水素化物[D−1]のペレット95部を作製した。
得られたペレット状のブロック共重合体水素化物[D−1]の重量平均分子量(Mw)は49,500、分子量分布(Mw/Mn)は1.10、水素化率はほぼ100%であった。
得られたブロック共重合体水素化物[D−1]のペレット100部に対して、ビニルトリメトキシシラン2.0部及び2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(製品名「パーヘキサ(登録商標) 25B」、日油社製)0.2部を添加した。この混合物を、二軸押出し機を用いて、樹脂温度200℃、滞留時間60〜70秒で混練し、ストランド状に押出し、空冷した後、ペレタイザーによりカッティングし、アルコキシシリル基を有する変性ブロック共重合体水素化物[E−1]のペレット96部を得た。
得られた変性ブロック共重合体水素化物[E−1]のペレット10部をシクロヘキサン100部に溶解した後、脱水メタノール400部中に注いで、変性ブロック共重合体水素化物[E−1]を凝固させ、凝固物を濾取した。濾過物を25℃で真空乾燥して、変性ブロック共重合体水素化物[E−1]のクラム9.0部を単離した。
変性ブロック共重合体水素化物[E−1]のFT−IRスペクトルを測定したところ、1090cm−1にSi−OCH基、825cm−1と739cm−1にSi−CH基に由来する新たな吸収帯が、ビニルトリメトキシシランのSi−OCH基、Si−CH基に由来する吸収帯(1075cm−1、808cm−1及び766cm−1)と異なる位置に観察された。
また、変性ブロック共重合体水素化物[E−1]のH−NMRスペクトル(重クロロホルム中)を測定したところ、3.6ppmにメトキシ基のプロトンに基づくピークが観察され、ピーク面積比からブロック共重合体水素化物[D−1]の100部に対してビニルトリメトキシシラン1.8部が結合したことが確認された。
(中間膜[G−1])
上記で得た変性ブロック共重合体水素化物[E−1]のペレットを、37mmφのスクリューを備えた二軸混練機を有するTダイ式フィルム溶融押出し成形機(Tダイ幅300mm)、キャストロール(エンボスパターン付き)、及び、ゴム製ニップロール及びシート引き取り装置を備えた押出しシート成形機を使用して、溶融樹脂温度200℃、Tダイ温度200℃、キャストロール温度80℃の成形条件にて押出し成形し、変性ブロック共重合体水素化物[E−1]からなる中間膜[G−1](厚さ760μm、幅230mm)を成形して、中間膜[G−1]を得た。
中間膜[G−1]は、押出しシートの片面をニップロールでエンボスロールに押し当てることにより、エンボスパターンを転写した。得られた中間膜[G−1]はロールに巻き取り回収した。
[製造例2]
中間膜[G−2]の製造
(変性ブロック共重合体水素化物「E−2])
製造例1において、スチレン20.0部、イソプレン60.0部、スチレン20.0部をそれぞれ3回に分けて、この順に加え、n−ブチルリチウム(15%シクロヘキサン溶液)を0.80部に変える以外は、製造例1と同様に重合反応及び反応停止操作を行った。
得られたブロック共重合体[C−2]の重量平均分子量(Mw)は51,200、分子量分布(Mw/Mn)は1.04、wA:wB=40:60であった。
次に、上記の重合体溶液を、製造例1と同様にして水素化反応を行った。水素化反応後のブロック共重合体水素化物[D―2]の重量平均分子量(Mw)は54,200、分子量分布(Mw/Mn)は1.06であった。
水素化反応終了後、製造例1と同様に酸化防止剤を添加した後、濃縮乾燥してブロック共重合体水素化物[D−2]のペレット92部を得た。得られたペレット状のブロック共重合体水素化物[D−2]の重量平均分子量(Mw)は53,700、分子量分布(Mw/Mn)は1.11、水素化率はほぼ100%であった。
得られたブロック共重合体水素化物[D−2]のペレットを使用し、製造例1と同様にしてアルコキシシリル基を有する変性ブロック共重合体水素化物[E―2]のペレット95部を得た。
得られた変性ブロック共重合体水素化物[E−2]は、製造例1と同様にして分析し、ブロック共重合体水素化物[D−2]の100部に対してビニルトリメトキシシラン1.8部が結合したことが確認された。
(中間膜[G−2])
変性ブロック共重合体水素化物[E−2]のペレットを、製造例1と同様にしてシート成形し、変性ブロック共重合体水素化物[E−2]からなる中間膜[G−2](厚さ760μm、幅230mm)を作製した。
中間膜[G−2]は、製造例1と同様に、エンボスパターンを付与し、ロールに巻いて回収した。
[製造例3]
中間膜[G−3]の製造
(エチレン・酢酸ビニル共重合体を主成分としてなる中間膜[G−3])
エチレン・酢酸ビニル共重合体(以下、「EVA」と略記する。)(製品名「エバフレックス(登録商標)EV150」、酢酸ビニル含有量33重量%、融点61℃、三井・デュポンポリケミカル社製)のペレット95重量部に、トリアリルイソシアヌレート7重量部、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(商品名「KBM−503」、信越化学工業社製)0.5重量部、ジクミルパーオキサイド(商品名「パークミルD」、日油社製)1.0重量部、及び2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール0.4部を添加し、混合した。
この混合物を、製造例1で使用したのと同じ二軸混練機を有するTダイ式フィルム溶融押出し成形機、及び、キャストロール、ゴム製ニップロール及びシート引き取り装置を備えた押出しシート成形機を使用し、溶融樹脂温度90℃、Tダイ温度90℃、エンボスロール温度40℃の成形条件にて、押出しシートの片面はニップロールでエンボスロールに押し当て、エンボス形状を付与しながら、EVAからなる中間膜[G−3](厚さ760μm、幅230mm)を成形した。得られた中間膜[G−3]はロールに巻き取り回収した。中間膜[G−3]は、ポリエチレン製袋に入れて密封し、冷蔵庫内(温度5℃)で保管した。
[実施例1]
青板ガラス(縦80mm、横80mm、厚さ2mm) 上に、透明導電膜としてAlドープ酸化亜鉛(AZO)膜(膜厚650nm、シート抵抗10Ω/□cm、波長550nmでの光線透過率85.0%、ジオマテック社製)を形成した。AZO膜上に2cmの間隔を隔てた2本のタブ線(幅1.6mm、厚さ0.20mm)を、片方の端はガラス端部から2cmの距離を空け、もう一方の端はガラス板の外側まで延長して配置し、AZO膜上の6cmの長さに亘って銀ペーストで固定した。
タブ線を固定したAZO膜面に、全面を覆うように製造例1で得られた樹脂中間膜[G−1]を置き、その上にもう1枚の青板ガラス(縦80mm、横80mm、厚さ2mm)を重ねた。この積層物を、ナイロン/接着層/ポリプロピレンの層構成を有する厚さ75μmの樹脂製の袋に入れ、密封パック器(BH−951、パナソニック社製)を使用して、袋内を脱気しながら開口部をヒートシールして積層物を密封包装した。
その後、密封包装した積層物をオートクレーブに入れて、温度140℃、圧力0.8MPaで30分間処理して、ガラス板/透明導電膜/樹脂中間膜/ガラス板の層構成をした複層ガラス試験片[H−1]を作製した。複層ガラス試験片[H−1]の外観では、気泡、充填不良、剥がれ等の不良は観察されなかった。
複層ガラス試験片[H−1]の透明導電膜の耐久性を評価した結果、タブ線間の電気抵抗初期値はR=5.1Ω、85℃、85%RHの環境に1500時間暴露した後の電気抵抗値はR1500=22.4Ωで、R1500/R=4.4であり、評価は○であった。
[実施例2]
樹脂中間膜[G−1]に代えて樹脂中間膜「G−2」を使用する以外は、実施例1と同様にして複層ガラス試験片[H−2]を作製した。
複層ガラス試験片[H−2]の透明導電膜の耐久性を評価した結果、初期値はR=5.0Ω、85℃、85%RHの環境に1500時間暴露した後の電気抵抗値はR1500=19.7Ωで、R1500/R=3.9であり、評価は○であった。
[比較例1]
樹脂中間膜[G−1]に代えて樹脂中間膜「G−3」を使用する以外は、実施例1と同様にして複層ガラス試験片[H−3]を作製した。
複層ガラス試験片[H−3]の透明導電膜の耐久性を評価した結果、初期値はR=5.4Ω、85℃、85%RHの環境に1500時間暴露した後の電気抵抗値はR1500=2725.5Ωで、R1500/R=504であり、評価は×であった。
[比較例2]
樹脂中間膜[G−1]に代えてポリビニルブチラール樹脂(以下、「PVB樹脂」ということがある。)を使用した中間膜(品名Saflex(登録商標)RF41、厚さ760μm、ソルーシア社製)を使用する以外は、実施例1と同様にして複層ガラス試験片[H−4]を作製した。
複層ガラス試験片[H−4]の透明導電膜の耐久性を評価した結果、初期値はR=6.1Ω、85℃、85%RHの環境に1500時間暴露した後の電気抵抗値はR1500=2888.5Ωで、R1500/R=473であり、評価は×であった。
[実施例3]
青板ガラス上に形成する透明導電膜を酸化亜鉛膜(膜厚200nm、シート抵抗7.6kΩ/□cm、波長550nmでの光線透過率82.5%、東邦化研社製)に代える以外は、実施例1と同様にして、複層ガラス試験片[H−5]を作製した。複層ガラス試験片[H−5]の外観では、気泡、充填不良、剥がれ等の不良は観察されなかった。
複層ガラス試験片[H−1]の透明導電膜の耐久性を評価した結果、タブ線間の電気抵抗初期値はR=1.7Ω、85℃、85%RHの環境に1500時間暴露した後の電気抵抗値はR1500=4.1Ωで、R1500/R=2.4であり、評価は○であった。
本実施例及び比較例の結果から以下のことがわかる。
アルコキシシリル基を導入した変性ブロック共重合体水素化物[E]からなる中間膜を使用して、透明導電膜を形成したガラス板を対向するガラス板と貼り合わせて作製した複層ガラスでは、高温高湿環境に長時間暴露した後も、透明導電膜の抵抗値の上昇は小さく、透明導電膜の耐久性が優れることが示されている(実施例1〜3)。
EVA樹脂やPVB樹脂をからなる中間膜熱を使用した場合、高温高湿環境に長時間暴露した後では、抵抗値の増加が大きく、透明導電膜の耐久性が劣ることが示されている(比較例1、2)。
本発明の複層ガラスは、高温高湿環境下でも導電性の経時低下を抑制した透明導電膜付き複層ガラスであり、防曇ガラス、建築物の窓ガラス、屋根用ガラス、部屋用遮熱壁材、自動車のサイドガラスやサンルーフ用ガラス、電気自動車のフロントガラス、鉄道車両や船舶用の窓ガラス、ディスプレイ基板等として有用である。

Claims (2)

  1. 2枚以上のガラス板と、これらのガラス板相互の接合面に介在する樹脂中間膜とからなり、これらのガラス板の少なくとも1枚の前記接合面には透明導電膜が形成された複層ガラスにおいて、前記樹脂中間膜が
    芳香族ビニル化合物由来の構造単位を主成分とする、少なくとも2つの重合体ブロック[A]と、鎖状共役ジエン化合物由来の構造単位を主成分とする、少なくとも1つの重合体ブロック[B]とからなり、全重合体ブロック[A]のブロック共重合体全体に占める重量分率をwAとし、全重合体ブロック[B]のブロック共重合体全体に占める重量分率をwBとしたときに、wAとwBとの比(wA:wB)が30:70〜60:40であるブロック共重合体[C]の、主鎖及び側鎖の炭素−炭素不飽和結合及び芳香環の炭素−炭素不飽和結合の90%以上が水素化されたブロック共重合体水素化物[D]に、アルコキシシリル基が導入されてなる変性ブロック共重合体水素化物[E]を含有する中間膜であることを特徴とする複層ガラス。
  2. 少なくとも、第1のガラス板、第1のガラス板上に形成された透明導電膜、樹脂中間膜、第2のガラス板の順に積層されてなる複層ガラスであって、
    a.第1のガラス板上に積層された透明導電膜の端が、第1のガラス板の端に対して全周囲に亘って2mm以上離れて配置され、
    b.樹脂中間膜が、透明導電膜の面積より大きい面積を有し、
    c.透明導電膜が樹脂中間膜により覆われ、樹脂中間膜の端が、透明導電膜の端に対して全周囲に亘って2mm以上離れて配置された状態である
    ことを特徴とする複層ガラス。
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