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JP2016110942A - ナノ撥液構造を有する隔壁、その隔壁を用いた有機el素子、およびそれらの製造方法 - Google Patents

ナノ撥液構造を有する隔壁、その隔壁を用いた有機el素子、およびそれらの製造方法 Download PDF

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JP2016110942A JP2014250093A JP2014250093A JP2016110942A JP 2016110942 A JP2016110942 A JP 2016110942A JP 2014250093 A JP2014250093 A JP 2014250093A JP 2014250093 A JP2014250093 A JP 2014250093A JP 2016110942 A JP2016110942 A JP 2016110942A
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Abstract

【課題】上面と側面にナノ撥液構造を有する隔壁およびその隔壁を製造する方法を提供する。【解決手段】凹型形状の底面と側面にナノパターンを有する隔壁形成用モールドを形成し、下地基板に塗布した隔壁材料に対して隔壁形成用モールドモールドによるナノインプリント転写を行うことで、上面と側面にナノ撥液構造を有する隔壁を形成する。【選択図】図7

Description

本発明は、液体状の機能性塗布材料を任意の区画内に塗り分けるための隔壁およびその製造方法、該隔壁を形成するためのモールドおよびその製造方法、並びに該隔壁を用いた有機EL素子およびその製造方法に関する。
近年、インクジェット方式やノズルプリント方式、その他印刷方式により液体状にした機能性塗布材料を基板上にパターン形成するプリンテッドエレクトロニクス技術が発達している。機能性塗布材料の例として、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子と略称)の有機発光材料、有機薄膜トランジスタの有機半導体材料、電気配線形成用の導電性ナノインク、導電性ナノペーストなどが挙げられる。
従来は、基板全面に機能性材料の薄膜を成膜し、フォトリソグラフィーでレジストのパターンを作ってからエッチング処理を行うことで、機能性材料のパターンを形成していた。しかし、機能性材料をプリンテッドエレクトロニクス技術により直接パターン形成することで、製造工程の短縮、材料使用効率の向上などのコスト削減効果が見込まれている。ただし、上記液体状の機能性塗布材料を基板上に塗布すると、液の濡れ広がりにより、本来形成したい箇所とは異なる部位に機能性材料が形成され、機能性デバイスの動作不良が生じる場合がある。そのため、機能性材料を形成したい領域の両端もしくは上下両端に隔壁を形成し、隔壁の外に機能性塗布材料が広がらないようにする構造が広く採用されている。
例えば、フルカラー型有機EL素子は、赤、緑、青の三色の有機EL発光画素を表示領域内に配列することで、フルカラー表示を可能にしているが、有機EL発光材料を印刷方式により成膜する場合は、表示領域間に予め隔壁を設けてから各色の印刷を行うことで、発光材料の濡れ広がりによる隣接領域への混入が起こらない構造を採用している(特許文献1)。
しかしながら、表示領域間に隔壁を設けても、隔壁自体に機能性塗布材料に対する濡れ性があった場合は、塗布された機能性塗布材料は下地基板に留まらず、隔壁の側面や上面を濡れ上がってしまう虞がある。実例として、例えばフルカラー型有機EL素子を製造するときに隔壁側面への濡れ上がりが生じた場合は、本来下地基板に形成されるべき機能性塗布材料の一部が隔壁に濡れ上がって付着してしまうため、材料の使用効率が低下してしまう。また、隔壁ごとに濡れ上がり量が異なる場合は、印刷ムラが生じ、EL発光させたときの発光ムラに繋がってしまう虞がある。さらに、濡れ上がりが隔壁の上面まで達する場合は、例えば、ある色のEL発光層が形成された領域に異なる色のEL発光材料が混入することで、発光特性不良が生じてしまう。そこで、上記隔壁への導電性材料濡れ上がりによる問題を解決するためには、機能性塗布材料に対する撥液性を隔壁に付与する必要がある。
撥液性を付与する手段として、隔壁形成後、薬液処理やプラズマ処理などの表面処理を行う方法がある。この方法は使用する薬液やプラズマ条件によって撥液性を制御できる利点があるが、基板全体で処理を行うため、隔壁だけでなく、下地基板表面の特性を変化させてしまう虞がある(特許文献2)。
また、隔壁形成前の段階で撥液性を有する材料を用いて隔壁を形成する方法もある。この方法ならば隔壁形成後に撥液性を付与する工程は不要になり、下地基板表面の特性を変化させる虞も無い(特許文献3)。
しかし、これらの方法で撥液性を付与したとしても、後工程で基板を洗浄したり、加熱やプラズマ表面処理を施したりした場合、撥液性が低下する可能性がある。また、表面処理を行ったり、撥液性を有する隔壁材料を用いたりしても、有機溶剤など表面張力の低い液体に対して濡れ上がりの少ない撥液効果を得るには不十分である。
上記の方法以外に、隔壁表面にナノ撥液構造を設けて表面エネルギーを低下させることにより、隔壁に撥液性を付与する方法がある。例えば、蓮の葉や花が水滴を弾く現象はロータス効果と呼ばれている。蓮の葉や花の表面に微細構造があるため、水滴が付着しにくくなっていることが原因と考えられているが、物質の表面にナノメートルオーダーの凹凸構造を人工的に形成することで、同様の撥液効果を付与できることが知られている。ナノ撥液構造を設ける手段としては、レーザー加工やナノインプリント法などが挙げられる。ナノインプリント法は、従来のフォトリソグラフィーに代わり超微細構造を実現する技術として注目を集めている。モールドの作成には時間とコストがかかるが、一度モールドを作成すれば、繰り返しモールドを使用できるため、デバイスの量産が容易になる。
ナノインプリント法によって樹脂の表面にナノ凹凸構造を設け、表面の撥液性をコントロールする方法が知られている(特許文献4)。ナノインプリント法で隔壁にナノ撥液構造を設ける場合、例えば隔壁材料を下地基板に一括塗布した後、硬化処理をする前にナノ撥液パターンを形成したモールドを押し付けて表面にナノ撥液構造を形成してから、フォトリソグラフィーなどにより隔壁パターンを形成したのち硬化処理を行うことで、隔壁にナノ撥液構造を付与することができる。
しかしながら、この方法では、隔壁の上面にのみナノ撥液構造が形成されるので、側面への濡れ上がりを防ぐことはできない。そのため、隔壁側面に機能性塗布材料が濡れ上がることによる材料使用効率の低下や、印刷ムラの問題は依然として残っている。隔壁上面にのみナノ撥液構造を設けることは、基板上面から加工を行うことで可能であるが、隔壁はμmオーダーの寸法で多数配列して形成させることが多いため、隔壁の側面にもナノ撥液構造を設けることは極めて困難である。
特開2002−305077号公報 特開2004−055159号公報 特開2006−216297号公報 特開2011−053334号公報
本発明は、上記問題を解決するため提案されるものであり、上面と側面にナノ撥液構造を有する隔壁、隔壁を形成するためのモールド、隔壁を用いた有機EL素子、およびそれらを製造することを目的とする。
上記課題を解決するための本発明の趣旨は、凹型形状の底面と側面にナノパターンを有するモールドを形成し、下地基板に塗布した隔壁材料に対してモールドによるナノインプリント転写を行うことで、上面と側面にナノ撥液構造を有する隔壁を形成することを特徴とする、隔壁ならびにモールドとその製造方法である。
すなわち、本発明の一様態としては、下地基板に隔壁材料を塗布し、硬化前の隔壁材料に対して、凹型形状の底面と側面にナノパターンを有するモールドをナノインプリント転写することによって、側面と上面にナノ撥液構造を有する隔壁を形成することを特徴とする隔壁の製造方法である。
つまり、隔壁は、下地基板に形成され、側面と上面にナノ撥液構造を有している。
また、本発明の他の一様態としては、モールド基材に溝状パターンを形成し、モールド基材に形成された溝状パターンの上にナノ撥液構造形成樹脂を塗布し、硬化前のナノ撥液構造形成樹脂に対して、ナノ撥液構造形成用モールドをナノインプリント転写することによって、凹型形状の底面と側面にナノパターンを有するモールドを形成することを特徴とする、隔壁形成用モールドの製造方法である。
つまり、隔壁形成用モールドは、ナノ撥液構造形成樹脂が塗布された溝状パターンを有するモールド基材上に、凹型形状の底面と側面にナノパターンを有している。
また、モールド基材は可撓性を有しても良い。
また、本発明の他の一様態としては、下地基板に隔壁材料を塗布し、硬化前の隔壁材料に対して、凹型形状の底面と側面にナノパターンを有するモールドをナノインプリント転写することによって、側面と上面にナノ撥液構造を有する隔壁を形成し、隔壁で区切られた下地基板の各領域に、各色の発光材料を塗布する、複数色の発光が可能な有機EL素子の製造方法である。
つまり、複数色の発光が可能な有機EL素子は、側面と上面にナノ撥液構造を有する隔壁で区切られた前記下地基板の各領域に、各色の発光材料が塗布されて形成されている。
本発明の隔壁形成用モールドを用いて製造した隔壁によれば、隔壁で囲まれて区切られた領域内にある下地基板に機能性塗布材料を塗布したときに生じる、隔壁側面と上面への濡れ上がりを防ぐことができる。隔壁への濡れ上がりを防げるため、隣接領域への混入や塗布ムラが無く機能性塗布材料を塗布できる。また、下地基板上に無駄なく機能性塗布材料を塗布できるので、デバイス作成コストの低減にも効果がある。
本発明の一実施形態である隔壁の概略構造の一例を説明するため模式図である。 本発明の一実施形態である隔壁形成用モールド10の概略構造の一例を説明するための模式図である。 本発明の一実施形態である隔壁形成用モールド10の製造工程を説明するための模式図である。 本発明の一実施形態である隔壁形成用モールド10の製造工程を説明するための模式図である。 本発明の一実施形態である隔壁形成用モールド10の製造工程を説明するための模式図である。 本発明の一実施形態である隔壁形成用モールド10の製造工程を説明するための模式図である。 本発明の一実施形態である隔壁形成用モールド10の製造工程を説明するための模式図である。 実施例1の構造の隔壁1で囲まれた領域に機能性塗布材料3の塗布した状態の概略図である。 比較例1の構造の隔壁1で囲まれた領域に機能性塗布材料3の塗布した状態の概略図である。 比較例2の構造の隔壁1で囲まれた領域に機能性塗布材料3の塗布した状態の概略図である。
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、本発明はこれに限るものではない。
図1は、本発明の一実施形態である隔壁1の概略構造の一例を説明するため模式図である。隔壁1は、下地基板2の上面に設けられている。また、隔壁1の側面と上面には、ナノ撥液構造が設けられている。図2は、本発明の一実施形態である隔壁形成用モールド10の概略構造の一例を説明するための模式図である。隔壁形成用モールド10は、モールド基材11の上面に凹凸形状が設けられており、ナノ撥液構造形成樹脂12はその凹凸形状に沿ってモールド基材11上に形成されている。また、ナノ撥液構造形成樹脂12の表面全体に、ナノ撥液構造が設けられている。
次に、図2に示した隔壁形成用モールド10の製造方法について、図3から図6を用いて説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
まず、図3に示すようにモールド基材11の表面に溝状のパターン(凹凸形状)を形成する。本発明にかかるモールド基材11としては、可撓性を有するフレキシブル基板と、可撓性を持たないリジッド基板との双方が使用できる。また、モールド基材11は、絶縁性であっても、導電性であっても良いし、透明性を有する必要も無い。ただし、隔壁形成用モールド10を使用して隔壁1をナノインプリント法で形成する際に、隔壁1の材料樹脂がUV硬化樹脂で、かつ、隔壁形成用モールド10を通して隔壁1の材料樹脂にUV照射を行う場合は、モールド基材11の材質が透明である必要がある。
フレキシブル基板の材質としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエーテルサルフォン、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ポリアリレート、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のプラスチックフィルムやシートが使用できる。また、ジメチルポリシロキサン等のシリコーン樹脂を材質としても良い。ただし、隔壁1を熱ナノインプリント法で形成する場合は、モールド基材11の材質は熱ナノインプリントのプロセス温度前後で変性しない素材でなければならない。リジッド基板の材質としては、例えば、ガラス基板や石英基板、シリコン基板等が使用できる。あるいは、銅やアルミ等の金属やステンレス等の合金を基材としても良いが、これらに限るものではない。
モールド基材11に形成する溝状パターンの形状と寸法は、後の工程で形成する隔壁1のパターン形状と寸法によって決まる。隔壁1を直線状の隔壁が並列するストライプ構造にしたい場合は、モールド基材11に形成するパターンを直線状の溝が並列する構造にする必要がある。また、隔壁1を井桁状に隔壁が形成されるボックス構造にしたい場合は、モールド基材11に井桁状の溝を形成する必要がある。溝状パターンの幅は、隔壁1と同じ幅にすれば良い。一方、溝状パターンの深さは、隔壁1の高さのおよそ倍にする必要がある。例えば、幅30μm、高さ2μmのストライプ状の隔壁1を形成したい場合は、モールド基材11には、幅30μm、高さ4μmのストライプ状の溝パターンを形成すれば良い。
モールド基材11に溝状パターンを形成する方法として、モールド基材11に感光性レジストを塗布し、フォトリソグラフィーによりレジストパターンを形成してから、ウェットエッチング、またはドライエッチングを行う方法がある。また、フォトリソグラフィーを行わずに、レーザー加工等によりモールド基材11に直接溝状パターンを形成しても良い。溝状パターン形成後、図4に示すようにモールド基材11上にナノ撥液構造形成樹脂12を一括塗布する。ナノ撥液構造形成樹脂12は、ナノインプリント法により表面にナノ撥液構造を形成できる材料であることが望ましい。UV硬化法でナノインプリント転写を行う場合は、ナノ撥液構造形成樹脂12はUV硬化性を持つ必要がある。一方、熱硬化法でナノインプリント転写を行う場合は、ナノ撥液構造形成樹脂12は熱可塑性を持つ必要がある。
ナノ撥液構造形成樹脂12の材料としては、例えばフッ素系樹脂や、アクリル系樹脂等が使用できるが、これらに限るものではない。また、ナノ撥液構造形成樹脂12の材料としてUV硬化樹脂を用いる場合、カチオン重合型の樹脂を選んでも良いし、ラジカル重合型の樹脂を選んでも良い。また、モールド基材11がフレキシブル基板の場合は、ナノ撥液構造形成樹脂12はモールド基材11の曲げに追従できる上、ひび割れ、剥離等を起こさない素材である必要がある。
ナノ撥液構造形成樹脂12は、スピンコーター、バーコーター、ロールコーター、ダイコーター、グラビアコーター等の公知の塗布方法を用いて塗布する。塗布膜厚は0.5μm〜10μm程度が望ましいが、モールド基材11に形成した溝状パターンを全面覆うため、溝状パターンの深さよりも厚い膜厚で塗布する必要がある。溝状パターンを形成したモールド基材11上にナノ撥液構造形成樹脂12を塗布すると、溝状パターン内に樹脂が入り込むことで、基材の段差がある程度平坦化されるが、完全に溝が埋まって基材表面が平坦になることは無い。樹脂の性質にも左右されるが、樹脂塗布後の溝状パターンによるモールド基材11の段差は、樹脂塗布前のおおよそ半分になる。つまり図4に示すように、深さhの溝状パターンを形成したモールド基材11の上にナノ撥液構造形成樹脂12を塗布した場合、表面の段差は樹脂により緩和されて、h/2になる。
ナノ撥液構造形成樹脂12を塗布した後、ナノ撥液構造形成用モールド13によるナノインプリント転写でナノ撥液構造形成樹脂12の表面にナノ撥液構造を形成する。ナノ撥液構造形成用モールド13は、基材表面にナノ撥液構造が形成されたモールドである(図6を参照)。ナノ撥液構造形成用モールド13の基材は、モールド基材11と同様の材料を用いてもいいが、フレキシブル基板にする必要がある。ナノ撥液構造形成用モールド13は、ナノインプリントのマスターモールド製造方法と同様に、基材上に電子ビームリソグラフィー(以下、EBリソグラフィー)用レジストを塗布した後、EBリソグラフィー、レジスト現像を行うことで、レジストパターンを形成した基材に対して、ドライエッチング処理を行って、基材にパターンを形成することで製造する。また、上述の工程で製造したマスターモールドを使って樹脂にパターン転写して製造したレプリカモールドを、ナノ撥液構造形成用モールド13として用いても良い。
以下、本発明において隔壁1に形成するナノ撥液構造の設計について説明する。凹凸を持った被塗布面における液体の見かけ上の接触角θは、Cassie−Baxterの式で次のように表現される。
cosθ=F(cosθ1+1)−1
ここで、θ1は凹凸の無い平坦な被塗布面に液を滴下したときの真の接触角であり、Fは表面物質が液滴に点接触する割合である。Fが0に近いほどθは180°に近くなり、より高い撥液性が得られるため望ましい。
Fを少なくするためには、表面物質が液滴に点接触する割合をより少なくする、すなわち凹凸構造の凸部の面積を少なくする必要がある。つまり、周期的な凹凸構造を形成する場合は、凸部の幅が凹部の幅より狭くなるよう設計すれば良い。本発明においては、ナノ撥液構造形成用モールド13に形成するナノ撥液構造と、隔壁1に形成するナノ撥液構造とは、同じ凹凸構造を持つ。よって、次に説明する設計手法でナノ撥液構造形成用モールド13を製造すれば、隔壁1を製造したときに、同じ凹凸構造設計でナノ撥液構造を形成することができる。
ナノ撥液構造は、モールド表面に二次元周期で凸形状が配列された構造である。凸部の形状は角柱状や円柱状等で設計すれば良いが、それらに限るものではない。凸部の幅もしくは径は300nm以下とし、より狭いほうが望ましいが、EBリソグラフィー装置の加工精度やナノインプリント転写時のモールドの耐久性を考慮すると、100nm以下にするのは困難である。また、凸部中心間のピッチも狭くしすぎるとEBリソグラフィー時に加工不良が発生する虞があるので、200〜500nmに設定する。凹凸パターンの溝が深い方が、液滴が底に接触しにくく撥液性を維持しやすいので、凸部の幅に対する高さのアスペクト比は、0.5以下が望ましい。
以上の設計手法においてナノ撥液構造を形成したナノ撥液構造形成用モールド13を用いて、ナノ撥液構造形成樹脂12にナノインプリント転写を行う方法について、図5、図6を用いて説明する。
図5は、ロール型ナノインプリント転写機100の概略構造の一例を説明するため模式図である。ロール型ナノインプリント転写機100は、基板ステージ101、ローラー102、およびUV照射ユニット103から構成される。基板ステージ101は、ローラー102に対して前後方向に動くことができる電動ステージである。また、基板ステージ101にはステージ温度調整機能があり、指定の温度でナノインプリント転写を行うことができる。
以下、ナノ撥液構造形成樹脂12へのナノインプリント転写工程について説明する。まず、基板ステージ101の上に、ナノ撥液構造形成樹脂12を塗布したモールド基材11を塗布面が上を向く方向に置いて固定する。次に、ナノ撥液構造形成樹脂12の上にナノ撥液構造形成用モールド13を、ナノ撥液構造パターン面が下に向く方向に置く。基板ステージ101を、ローラー102の下部にモールド基材11の上端面が接するところまで移動してからローラー102を下降し、ナノ撥液構造形成用モールド13とナノ撥液構造形成樹脂12との間に圧力を掛ける。ローラー102を下降したまま、基板ステージ101をローラー102が回転する方向(図中の矢印方向)へ移動させることで、モールド基材11上のナノ撥液構造形成樹脂12の全体にナノ撥液構造パターンをロール転写することができる。
ナノ撥液構造形成樹脂12がUV硬化樹脂の場合は、ロール転写中もしくはロール転写後に、UV照射ユニット103からUV光をナノ撥液構造形成樹脂12に照射し、樹脂を硬化させることで、パターン転写を行うことができる。一方、ナノ撥液構造形成樹脂12が熱可塑性樹脂の場合は、ステージ温度を上昇させ、ナノインプリント転写が可能になるまで樹脂を軟化させてから、ロール転写を行う。ロール転写の終了後にステージ温度を下降させ、ナノ撥液構造形成樹脂12を冷却することで、パターン転写を行うことができる。
図6は、ロール転写中のナノ撥液構造形成樹脂12とナノ撥液構造形成用モールド13との接触状態を説明するための拡大図である。ローラー102の圧力によりナノ撥液構造形成用モールド13がモールド基材11の溝状パターンをトレースするようにたわむことで、ナノ撥液構造形成樹脂12の全面にナノ撥液構造パターンが転写される。最後に、フッ素コーティング剤等の離型処理剤にモールド基材11をディッピングし、ナノ撥液構造形成樹脂12の離型処理を行う。以上の工程により、隔壁形成用モールド10が製造できた。
次に、図1に示した隔壁1の製造方法について、図7を用いて説明する。
まず、下地基板2上に隔壁1の材料樹脂を塗布する。隔壁1の材料樹脂は、ナノ撥液構造形成樹脂12と同様にナノインプリント法により、表面に撥液構造形成が可能な材料を選択する。また、塗布方法は、スピンコーター、バーコーター、ロールコーター、ダイコーター、グラビアコーター等の塗布方法を用いて一括塗布する他に、インクジェットプリンター、ノズルコーター、フレキソ印刷機等を用いて、隔壁を形成したい箇所にのみ印刷しても良い。下地基板2は、上面に機能性塗布材料を塗布するためのデバイス基板である。例えば、有機EL素子の場合は、表面にITO等の透明電極が形成されたガラス基板が下地基板になるが、本実施形態はそれに限るものではない。
次に、図7に示すように、隔壁1の材料樹脂を塗布した下地基板2の上に隔壁形成用モールド10をナノインプリント転写することで、側面と上面にナノ撥液構造を備える隔壁1を形成することができる。ナノインプリント転写は、ロール型転写機を使って行っても良いし、図7に示す一括転写型の転写機を使っても良い。ナノインプリント転写後、ドライエッチング処理により、隔壁1を形成しない箇所の残膜を除去する。上記方法で製造する隔壁1により隔てられた領域内の下地基板2に対して、機能性塗布材料3を印刷し、その後の製造工程を経ることで機能性デバイスが完成する。
以下、本発明の実施例および比較例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
(実施例1)
(隔壁形成用モールド10の作製工程)
まず、モールド基材11である石英基板上に、フォトレジストを塗布して露光・現像し、ドライエッチングで石英をパターン加工することで、モールド基材11に溝状のストライプパターンを形成した。触針式段差計P−11(KLA‐Tencor社製)で溝の幅と深さの測定を行ったところ、溝の幅は18μm、溝の深さは4μmであった。
次に、モールド基材11の上に、ナノ撥液構造形成樹脂12をスピンコート法により塗布した。ナノ撥液構造形成樹脂12の材料として、UV硬化性を持つナノインプリント用のフッ素系樹脂PAK−01(東洋合成工業社製)を用いた。また、溝状パターンが無い箇所の膜厚が5μmとなるよう、ナノ撥液構造形成樹脂12をスピンコートしたところ、溝状パターンにナノ撥液構造形成樹脂12が入り込み、触針式段差計P−11で溝の幅と深さの測定を行ったところ、溝の幅は18μm、深さは2μmであった。
次に、ナノ撥液構造形成樹脂12に対してナノ撥液構造形成用モールド13をナノインプリント転写することで、ナノ撥液構造形成樹脂12の表面にナノ撥液構造を形成した。ナノ撥液構造形成用モールド13は、EBリソグラフィーにより石英基板上にナノ撥液パターンを形成したマスターモールドから形成したレプリカモールドを使用した。また、レプリカモールドは、ポリエチレンテレフタレートフィルム上にUV硬化性のアクリル樹脂からなるレプリカモールド樹脂を形成した構造からなるものを使用した。
ナノ撥液構造形成用モールド13に形成したナノ撥液パターンは、モールド表面に二次元周期で角柱が配置された凹凸構造であり、走査型プローブ顕微鏡SPI3800N(セイコーインスツル社製)で角柱の幅、ピッチ、高さを測定したところ、角柱の幅は200nm、角柱の中心間のピッチは400nm、角柱の高さは500nmであった。
次に、ロール型ナノインプリント転写機100を用いてナノインプリント転写を行った。基板ステージ101の上にナノ撥液構造形成樹脂12を塗布したモールド基材11を塗布面が上を向く方向に置いて固定し、次に、ナノ撥液構造形成樹脂12の上にナノ撥液構造形成用モールド13を、ナノ撥液構造パターン面が下に向く方向に置いた。基板ステージ101を、ローラー102の下部にモールド基材11の上端面が接するところまで移動してからローラー102を下降し、ナノ撥液構造形成用モールド13とナノ撥液構造形成樹脂12との間に圧力を掛けた。
次に、ローラー102に175(N/m)の圧力を掛けたまま、基板ステージ101を10(mm/秒)の速度でローラー102が回転する側へ移動させた。ロール転写中にUV照射ユニット103から、ナノ撥液構造形成用モールド13を通して、ナノ撥液構造形成樹脂12にUVを照射することで、ナノ撥液構造が形成された状態でナノ撥液構造形成樹脂12を硬化させた。離型処理剤であるオプツール(ダイキン工業社製)を使ってナノ撥液構造形成樹脂12に離型処理を施すことで、隔壁形成用モールド10を製造した。
(隔壁1の作製工程)
下地基板2である有機EL素子基板に、隔壁1の材料樹脂を、スピンコーターで1μmの膜厚になる回転数で塗布した。隔壁1の材料樹脂は、UV硬化性を有するアクリル樹脂を用いた。
次に、隔壁形成用モールド10を用いて隔壁1のナノインプリント転写を行った。ナノインプリント転写は、ロール型ナノインプリント転写機100により行った。基板ステージ101の上に隔壁1の材料を塗布した下地基板2を置いて固定し、下地基板2の上に隔壁形成用モールド10を、ナノ撥液構造形成樹脂12が下に向く方向に置いた。ローラー102に掛ける圧力を175(N/m)とし、基板ステージ101を10(mm/秒)の速度で移動させることで隔壁1のナノインプリント転写を行い、ロール転写中にUV照射ユニット103から、隔壁形成用モールド10を通して、隔壁1にUVを照射することで、隔壁1を硬化させた。
隔壁1のナノインプリント転写後、ICPドライエッチング装置を使用し、隔壁1を形成しない箇所の残膜を除去した。残膜除去条件は、使用ガスを酸素40sccm、ヘリウム60sccm、圧力を5mTorr、Rfパワーを300Wに設定し、25秒間プラズマ処理を行ったところ、隔壁1の残膜が除去された。
(下地基板2への機能性塗布材料3の印刷工程)
隔壁1が形成され領域が区切られた下地基板2に対して、インクジェット印刷機を用いて機能性塗布材料3である有機EL発光材料を各領域に塗布した。図8に、実施例の構造で隔壁1を製造した下地基板2に対して機能性塗布材料3の塗布した状態の模式図を示す。
最初に赤色発光材料を塗布し、次に緑色発光材料、最後に青色発光材料を塗布した。各色の領域は隔壁1により隔てられおり、かつ隔壁1の側面と上面にはナノ撥液構造が形成されているので、塗布された有機EL発光材料は隔壁1に隔てられた領域内に留まり、異なる色の領域に発光材料が濡れ広がることによる混色は起きなかった。また、塗布された有機EL発光材料は隔壁1の側面にも濡れ上がらなかったので、印刷ムラもなく最小限の液量で下地基板2へ発光材料を塗布することができた。
(比較例1)
比較例1においては、ナノ撥液構造を設けない隔壁1と有機EL素子の製造例を示す。下地基板2である有機EL素子基板に、隔壁1の材料樹脂を、スピンコーターで1μmの膜厚になる回転数で塗布した。隔壁1の材料樹脂は、ポジ型の感光性ポリイミド樹脂を用いた。
フォトリソグラフィーで隔壁1の材料樹脂を露光・現像し、隔壁1のパターニングを行った。ポストベークを行い、ポリイミド樹脂を硬化させた後、隔壁1が形成された下地基板2に対して、インクジェット印刷機を用いて機能性塗布材料3である有機EL発光材料を赤色、緑色、青色の順に塗布した。図9に、比較例1の構造で隔壁1を製造した下地基板2に対して機能性塗布材料3の塗布した状態の模式図を示す。
各色の領域は隔壁1により隔てられていたが、発光材料は隔壁1の側面へと濡れ上がってしまった。また、濡れ上がり量が面内で異なったため印刷ムラが生じた。さらに、濡れ上がりが激しい箇所は、発光材料が隔壁1の上面を乗り越えて異なる色の領域まで濡れ広がったため、発光材料の混色が生じた。
比較例1の製造方法に従って製造した有機EL素子の表示品質は、印刷ムラや混色が生じたため、実施例1の製造方法に従って製造した有機EL素子よりも表示品質が大きく低下してしまった。
(比較例2)
比較例2においては、上面にのみナノ撥液構造を設けた隔壁1と有機EL素子の製造例を示す。下地基板2である有機EL素子基板に、隔壁1の材料樹脂を、スピンコーターで1μmの膜厚になる回転数で塗布した。隔壁1の材料樹脂は、ポジ型の感光性を持つアクリル系樹脂を用いた。
ナノ撥液構造形成用モールド13を用いて、隔壁1の材料樹脂表面にナノ撥液構造をナノインプリント転写した。ナノインプリント転写は、ロール型ナノインプリント転写機100を用いた。実施例1では、UV硬化樹脂でナノインプリント転写を行ったが、比較例2では、ナノインプリント時にステージを隔壁1の材料樹脂が軟化する温度まで加熱し、転写終了後にステージを冷却する熱ナノインプリント転写を行った。
表面にナノ撥液構造を転写した隔壁1の材料樹脂を、フォトリソグラフィーによりパターニングすることで隔壁1を形成した。隔壁1が形成された下地基板2に対して、インクジェット印刷機を用いて機能性塗布材料3である有機EL発光材料を赤色、緑色、青色の順に塗布した。図10に、比較例2の構造で隔壁1を製造した下地基板2に対して機能性塗布材料3の塗布した状態の模式図を示す。
各色の領域は隔壁1により隔てられており、隔壁1の上面にはナノ撥液構造が形成されていたため、発光材料が隔壁1の上面を乗り越えて異なる色の領域まで濡れ広がる発光材料の混色は生じなかった。しかし、隔壁1の側面にナノ撥液構造が形成されていなかったため、発光材料は隔壁1の側面へと濡れ上がってしまった。また、濡れ上がり量が面内で異なったため印刷ムラが生じた。
比較例2の製造方法に従って製造した有機EL素子の表示品質は、混色が無いため、比較例1の有機EL素子の表示品質と比べると良かったが、比較例2の有機EL素子には印刷ムラがあったため、実施例1の製造方法に従って製造した有機EL素子の表示品質と比べると、表示品質は低下してしまった。
本発明は、プリンテッドエレクトロニクス技術、例えば有機エレクトロルミネッセンス素子の有機発光材料、有機薄膜トランジスタの有機半導体材料、電気配線形成用の導電性ナノインク、導電性ナノペーストなどを用いた分野に利用することが可能である。
1 隔壁
2 下地基板
3 機能性塗布材料
10 隔壁形成用モールド
11 モールド基材
12 ナノ撥液構造形成樹脂
13 ナノ撥液構造形成用モールド
100 ロール型ナノインプリント転写機
101 基板ステージ
102 ローラー
103 UV(紫外線)照射ユニット

Claims (7)

  1. 下地基板に隔壁材料を塗布し、
    硬化前の前記隔壁材料に対して、凹型形状の底面と側面にナノパターンを有するモールドをナノインプリント転写することによって、側面と上面にナノ撥液構造を有する隔壁を形成する、隔壁の製造方法。
  2. 下地基板に形成され、側面と上面にナノ撥液構造を有する、隔壁。
  3. モールド基材上に溝状パターンを形成し、
    前記モールド基材に形成された前記溝状パターンの上にナノ撥液構造形成樹脂を塗布し、
    硬化前の前記ナノ撥液構造形成樹脂に対して、ナノ撥液構造形成用モールドをナノインプリント転写することによって、凹型形状の底面と側面にナノパターンを有するモールドを形成する、隔壁形成用モールドの製造方法。
  4. ナノ撥液構造形成樹脂が塗布された溝状パターンを有するモールド基材上に、凹型形状の底面と側面にナノパターンを有する、隔壁形成用モールド。
  5. 前記モールド基材が可撓性を有する、請求項4に記載の隔壁形成用モールド。
  6. 下地基板に隔壁材料を塗布し、
    硬化前の前記隔壁材料に対して、凹型形状の底面と側面にナノパターンを有するモールドをナノインプリント転写することによって、側面と上面にナノ撥液構造を有する隔壁を形成し、
    前記隔壁で区切られた前記下地基板の各領域に、各色の発光材料を塗布する、複数色の発光が可能な有機EL素子の製造方法。
  7. 側面と上面にナノ撥液構造を有する隔壁で区切られた前記下地基板の各領域に、各色の発光材料が塗布されて形成されている、複数色の発光が可能な有機EL素子。
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