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JP2016105417A - 抽出構造体を備えた導光体の製造方法及びその方法で製造された導光体 - Google Patents

抽出構造体を備えた導光体の製造方法及びその方法で製造された導光体 Download PDF

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Abstract

【課題】効率的な導光体の提供に使用できる光抽出構造体及び光抽出構造体アレイを製造できる方法を提供する。【解決手段】(a)光反応性組成物を提供する工程であって、該光反応性組成物が、(1)酸又はラジカル開始化学反応を受けることが可能な少なくとも1つの反応性種と、(2)少なくとも1つの多光子光開始剤系と、を含む、工程と、(b)前記組成物の少なくとも一部を少なくとも2つの光子を同時に吸収させるのに十分な光に撮像的に露光する工程であって、これにより少なくとも1つの酸又はラジカル開始化学反応を誘発し、該組成物が、前記光に露光され、該撮像的露光が、光抽出構造体のアレイの少なくとも表面を画定するのに有効なパターンで行われ、該光抽出構造体のそれぞれが、少なくとも1つの形状因子を有し、該光抽出構造体のアレイが、均一又は不均一な分布を有する工程と、を含む、方法。【選択図】図1

Description

(優先権の主張)
本願は、2006年5月18日に出願された米国仮出願第60/747,609号の優先権を主張するものであり、その仮出願の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
(発明の分野)
本発明は、光抽出構造体、光抽出構造体アレイ、及び/又は光抽出構造体アレイのマスター型を製造する方法に関し、別の観点では、この方法により製造された光抽出構造体、光抽出構造体アレイ、及び/又は光抽出構造体アレイのマスター型に関する。本発明は、光抽出構造体アレイを備えた導光体、及び導光体を備えた物品にも関する。
種々のデバイスが電子ディスプレイ及びキーパッドの照明用に提案されている。これらのデバイスには、背面照明パネル、前面照明パネル、コンセントレータ、反射材、構造化された表面フィルム、及び光を方向転換、視準、分配、ないしは別の方法で操作するためのその他の光学デバイスが挙げられる。受動光学構成要素(例えば、レンズ、プリズム、ミラー、及び光抽出構造体)は、既知であり、光学系に使用され、光学放射線を収集、分配、又は修正する。
光の効率的な使用は、携帯電話、携帯情報端末、及びラップトップコンピュータで使用されるようなバッテリー電源の電子ディスプレイ及びキーパッドにおいて特に重要である。照明効率を向上させることにより、バッテリーの耐用期間の延長、及び/又はバッテリーの小型化が可能になる。照明効率を向上させ、背面照明液晶ディスプレイの見かけ上の輝度を高めるために、一般にプリズム状フィルムが使用されている。キーパッドでは、この目的のために、一般に複数の光源(例えば、発光ダイオード(LED))が使用されている。
電子ディスプレイ及びキーパッドにおいて、照明の質も重要な考慮事項である。背面照明ディスプレイ又はキーパッドにおける照明の質の1つの目安には、輝度の均一性が挙げられる。ディスプレイ(及び、幾分程度は低いが、キーパッド)は、一般に接近して注視されたり、あるいは長時間使用されるため、比較的小さな輝度の差異も容易に認識される可能性がある。このような輝度にばらつきのある機種は、ユーザーを悩ませたり、いらだたせる恐れがある。不均一性を和らげたり、隠すために、光散乱素子(例えば、拡散板)が使用される場合がある。しかしながら、このような散乱素子は、ディスプレイ又はキーパッドの輝度全体に悪影響を及ぼす恐れがある。
輝度の均一性を実現するため、もう1つの選択肢として複数の光源が使用可能であるが、この方法にはバッテリーの耐用期間が短くなるという短所が伴う。従って、複数個の光抽出構造体を備えた導光体の開発も含め、より限られた数の光源から光を効率的に分配する種々の手段を開発することに一部の関心が寄せられている。このような光抽出構造体、並びに光抽出構造体アレイは、多くの異なる技術で製造されているが、各技術にはそれぞれ異なる長所と短所が存在する。
従って、本発明者らは、様々な異なる用途の品質、コスト及び/又は性能要求を満たすことができる導光体を製造するために使用可能な方法に対する要望があることを認識している。とりわけ、本発明者らは、輝度の均一性及びバッテリーの長期耐用期間(又はバッテリーの小型化)を可能にする効率的な導光体の提供に使用できる光抽出構造体及び光抽出構造体アレイを製造できる方法に対する要望を認識している。
簡潔に言えば、ある態様では、本発明は、光抽出構造体アレイ又は光抽出構造体アレイのマスター型を製造する方法を提供する。本方法は、光反応性組成物を提供する工程を含み、光反応性組成物は、(a)酸又はラジカル開始化学反応を行うことが可能な少なくとも1つの反応性種と、(b)少なくとも1つの多光子光開始剤系とを含む。好ましくは、反応性種は、硬化性種(より好ましくは、モノマー類、オリゴマー類及び反応性ポリマー類からなる群から選択される硬化性種)である。
組成物の少なくとも一部は、少なくとも2つの光子を同時に吸収させるのに十分な光に撮像的に露光可能であり、それによって少なくとも1つの酸又はラジカル開始化学反応が誘発され、組成物が光に露光される。
撮像的露光は、光抽出構造体のアレイの少なくとも表面を画定するのに有効なパターンで実行可能であり、光抽出構造体のそれぞれは少なくとも1つの形状因子を有し、光抽出構造体のアレイの分布は均一でも不均一であってもよい。一般に、分布は不均一である可能性があり、及び/又は少なくとも1つの光抽出構造体の形状因子は別の少なくとも1つの光抽出構造体の形状因子と異なっている可能性がある。
組成物は、場合により、組成物の生じた露光部分又は生じた非露光部分を除くことにより現像可能である。場合により、組成物の少なくとも一部を撮像的に露光した後、組成物の少なくとも一部を残りの未反応光反応性組成物のどれかの少なくとも一部を反応させるのに十分な光に非撮像的に露光することができる。
好ましくは、アレイの分布は不均一であり、少なくとも1つの形状因子(好ましくは、高さ)が、光抽出構造体のアレイ全体に渡って(又はアレイ内の配置に応じて)少なくともある程度(好ましくは、規則的に)異なっている。少なくとも1つの光抽出構造体の高さ(又は別の寸法)及び/又は幾何学的形状が、アレイ内の他の少なくとも1つの光抽出構造体の高さ及び/又は幾何学的形状と異なっている場合、形状因子が異なっていると言える。アレイ内の2つの光抽出構造体が重ね合わせ可能にスケール変更できない場合、幾何学的形状が異なっていると言える。好ましくは、光抽出構造体のアレイの面密度はアレイ全体に渡って異なっており、及び/又は少なくとも1つの形状因子がアレイ全体に渡って異なっている(より好ましくは、面密度及び少なくとも1つの形状因子が共にアレイ全体に渡って異なっており、更に好ましくは、面密度及び高さが共にアレイ全体に渡って異なっており、最も好ましくは、アレイ全体に渡って光抽出構造体の高さが増すにつれて面密度が増加する)。
多光子光製造方法は、異なる光学特性を有する光抽出構造体アレイ(例えば、光抽出の空間的変化を示すアレイ)の製造に十分適用可能なことが知られている。驚いたことに、本発明の方法は、単一アレイの様々な個々の光抽出構造体特性を製造する際に融通性と制御を提供でき、更には好ましくは低レベルの平均表面粗さを実現するために使用でき、同時に業界で許容できる製造速度又は「処理能力」を維持できる。又、そのような融通性と制御が、様々なフィルファクタ及び/又は様々な分布の均一度を備えるアレイの生産を容易にできる。
本発明の方法は、比較的低コストの材料(例えば、ポリマー類)の使用を包含し、比較的容易に光電子デバイスの製造に使用される製造方法に統合できる。又、前記方法は、経済的な複製(例えば、マスター型の製造により)を可能にする。更に、前記方法は、幾何学的形状及び高さが様々に異なる(つまり、形状因子が異なる)光抽出構造体、並びに対称性(又は非対称性)及びフィルファクタが様々に異なるアレイを弾力的にかつ制御可能に製造可能であり、それによってこのような各タイプの光抽出構造体及び光抽出構造体アレイは別個の制御された光学特性を有する。
従って、本発明の方法の少なくとも一部の実施形態は、種々の異なる用途の品質、コスト、及び/又は性能要求を満たすことができ、更に、とりわけ輝度の均一性及びバッテリーの長期耐用期間(又はバッテリーの小型化)を可能にする効率的な導光体を提供することができる、光抽出構造体アレイの製造方法に関する上記の要望に適合する。本発明の方法で製造された光抽出構造体アレイは、例えば、背面照明ディスプレイ及び背面照明キーパッドなど、多くの光学的用途で使用するのに好適であることができる。
別の態様では、本発明は次のものも提供する:
不均一な分布を有する複数個の光抽出構造体を備えた光抽出構造体アレイであって、光抽出構造体がそれぞれ主軸線及び少なくとも1つの形状因子を有し、複数個の光抽出構造体が全体に渡って面密度、少なくとも1つの形状因子、及び主軸線に変化を示す、光抽出構造体アレイ;
不均一な分布を有する複数個の光抽出構造体を備えた光抽出構造体アレイであって、光抽出構造体がそれぞれ幾何学的形状を有し、少なくとも1つの光抽出構造体の幾何学的形状が切頭非球面体である、光抽出構造体アレイ;
アレイを備えた導光体;及び
導光体を備えた光学デバイス(例えば、背面照明ディスプレイ又は背面照明キーパッド)。
発明の方法を実施するのに有用な代表的な多光子光製造装置の略図。 本発明の光抽出構造体アレイの実施形態の走査電子顕微鏡写真(側面図)。
定義
本特許出願で使用する場合:
「平均表面粗さ」は、光抽出構造体の実際の表面特性の平均偏差及びその平均表面特性を意味する。
「硬化」は、重合及び/又は架橋を引き起こすことを意味する。
「電子励起状態」は、分子の電子基底状態よりエネルギーが高い電子状態を意味する。電子励起状態は、電磁放射線の吸収により達成可能であり、10−13秒を超す寿命を有する。
「露光システム」は、光学系に光源を加えたものを意味する。
「フィルファクタ」(光抽出構造体アレイに関する)は、入射化学線を修正するアレイの面積の部分又はパーセンテージを意味する。
「光抽出構造体」は、光を誘導又は分配可能な(少なくとも約1マイクロメートルの長さ、幅、及び高さを有する)ミクロ構造体を意味する(例えば、導光体内に光を分配したり、導光体から光を誘導する、凸型又は凹型ミクロ構造体)。
「マスター型」は、複製用ツールの製造に使用可能な初代製造の物品を意味する。
「多光子吸収」は、同エネルギーの1つの光子を吸収してもエネルギー的に達成不可能な反応性の電子励起状態に達するように、2つ以上の光子を同時に吸収することを意味する。
「光学系」は、光を制御するためのシステムを意味する。光学系には、レンズなどの屈折光学素子、ミラーなどの反射光学素子、及び回折格子などの回折光学素子から選択される少なくとも1つの素子が含まれる。光学素子には、拡散板、導波路、及びその他の光学分野で既知の素子が含まれてもよい。
(光開始剤系の構成要素の)「光化学的に効果的な量」は、選択した露光条件(例えば、密度、粘度、色、pH、屈折率、又はその他の物理化学的特性における変化で分かるような)で、反応性種を少なくとも部分的に反応させることができる十分な量を意味する。
「光増感剤」は、光開始剤の活性化に必要なエネルギーより低いエネルギーの光を吸収し、光開始剤と相互作用して光開始性種を生成することにより、光開始剤の活性化に必要なエネルギーを低下させる分子を意味する。
(光抽出構造体に関する)「形状因子」は、構造の寸法(長さ、幅、又は高さ)若しくは幾何学的形状を意味する。
「同時」は、10-14秒以下の時間内に発生する2つの事象を意味する。
「十分な光」は、多光子吸収を引き起こすのに十分な強度で適切な波長の光を意味する。
「三次元の光パターン」は、光エネルギー分布が、容積として、又は単一平面ではなく多平面上に存在する光学画像を意味する。
反応種
光反応組成物内で使用するのに好適な反応種には、硬化性の化学種と非硬化性の化学種の双方が挙げられる。硬化性の化学種が一般に好ましく、又硬化性の化学種には、例えば、付加重合性モノマー及びオリゴマーと付加架橋性ポリマー(例えばアクリレート、メタクリレート、及びスチレンなどの特定のビニル化合物を含む、ラジカル重合性又は架橋性のエチレン系不飽和の化学種)、更には、カチオン重合性モノマー及びオリゴマーとカチオン架橋性ポリマー(この化学種は最も一般的には酸開始されており、又この化学種には、例えばエポキシ、ビニルエーテル、シアネートエステルなどが挙げられる)、その他同種のもの、並びにそれらの混合物が挙げられる。
好適なエチレン系不飽和の化学種については、例えば、パラツォット(Palazzotto)らによって米国特許第5,545,676号において第1欄65行から第2欄26行で述べられており、モノアクリレート、ジアクリレート、ポリアクリレート及びメタクリレート(例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ヘキシルアクリレート、ステアリルアクリレート、アリルアクリレート、グリセロールジアクリレート、グリセロールトリアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−プロパンジオールジアクリレート、1,3−プロパンジオールジメタクリレート、トリメチロールトリアクリレート、1,2,4−ブタントリオールトリメタクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、ビス[1−(2−アクリルオキシ)]−p−エトキシフェニルジメチルメタン、ビス[1−(3−アクリルオキシ−2−ヒドロキシ)]−p−プロポキシフェニルジメチルメタン、トリスヒドロキシエチル−イソシアヌレートトリメタクリレート、分子量が約200〜500のポリエチレングリコールのビスアクリレート及びビスメタクリレート、米国特許第4,652,274号のものなどのアクリル化モノマーと米国特許第4,642,126号のものなどのアクリル化オリゴマーとの共重合性混合物)、不飽和酸アミド(例えば、メチレンビスアクリレート、メチレンビスメタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビスアクリルアミド、ジエチレントリアミン、トリスアクリルアミド及びベータメタクリルアミノエチルメタクリレート)、ビニル化合物(例えば、スチレン、ジアリルフタレート、ジビニルスクシネート、ジビニルアジペート、及びジビニルフタレート)、その他同種のもの、並びにそれらの混合物が挙げられる。好適な反応性ポリマーには、例えば1から約50のアクリル(メタクリート)基をポリマー鎖ごとに有する、ペンダントアクリレート(メタクリレート)基を有するポリマーが挙げられる。そのようなポリマーの例には、サートマー(Sartomer)社から入手可能なSarbox(商標)樹脂(例えば、Sarbox(商標)400、401、402、404、及び405)などの芳香族酸(メタクリレート)アクリレート半エステル樹脂が挙げられる。フリーラジカル化学によって硬化可能な他の有用な反応性ポリマーには、ヒドロカルビル主鎖と、米国特許第5,235,015号(アリ(Ali)ら)において記載されているものなど、ラジカル重合可能な官能性を付与されたペンダントペプチド基とを有するポリマーが挙げられる。2つ以上のモノマー、オリゴマー、及び/又は反応性高分子の混合物を、所望に応じて使用することができる。好ましいエチレン不飽和性の化学種には、アクリレート、芳香族酸(メタクリレート)アクリレート半エステル樹脂、及び、ヒドロカルビル主鎖と、ラジカル重合化可能な官能性を付与されたペンダントペプチド基とを有するポリマーが挙げられる。
好適なカチオン反応性の化学種については、例えばオクスマン(Oxman)らによって米国特許第5,998,495号及び6,025,406号において記載されており、又この化学種はエポキシ樹脂を含んでいる。そのような材料は、概してエポキシドと呼ばれるものであり、低分子量のエポキシ化合物と高分子量型のエポキシドとがあり、脂肪族、脂環式、芳香族、又は複素環式となりうる。これらの材料は一般に、平均して、分子1個あたり少なくとも1個(好ましくは少なくとも約1.5個、より好ましくは少なくとも約2個)の重合可能なエポキシ基を有している。ポリマーエポキシドには、末端エポキシ基を有する線状ポリマー(例えば、ポリオキシアルキレングリコールのジグリシジルエーテル)、骨格オキシラン単位を有するポリマー(例えば、ポリブタジエンポリエポキシド)、ペンダントエポキシ基を有するポリマー(例えば、グリシジルメタクリレートポリマー又はコポリマー)が挙げられる。エポキシドは、純粋化合物とすることができ、又、分子1個当たり1個、2個、又はそれ以上のエポキシ基を含有する化合物の混合物とすることができる。これらのエポキシ含有材料は、主鎖及び置換基の種類において、非常に多様となりうる。例えば、主鎖は任意の種類とすることができ、又、その主鎖上の置換基は、カチオン硬化を室温で実質的に妨げることのない任意の基とすることができる。許容しうる置換基の実例には、ハロゲン、エステル基、エーテル、スルホネート基、シロキサン基、ニトロ基、リン酸基、及び同種のものが挙げられる。エポキシ含有材料の分子量は、約58から約100,000以上まで様々となりうる。
有用な他のエポキシ含有材料には、以下の式のグリシジルエーテルモノマーが挙げられる。
上式で、R’はアルキル又はアリールであり、nは1から8の整数である。その実例は、多価フェノールをエピクロロヒドリンなどの過剰なクロロヒドリンと反応させることによって得られる、多価フェノールのグリシジルエーテル(例えば、2,2−ビス−(2,3−エポキシプロポキシフェノール)−プロパンのグリシジルエーテル)である。この種のエポキシドの更なる例が、米国特許第3,018,262号に、又、「エポキシ樹脂ハンドブック(Handbook of Epoxy Resins)」、リー及びネビル(Lee and Neville)著、McGraw−Hill Book Co.,New York(1967)に記載されている。
多数の商業的に入手可能なエポキシモノマー又は樹脂を使用することができる。容易に入手可能なエポキシドには、オクタデシレンオキシド、エピクロロヒドリン、スチレンオキシド、ビニルシクロヘキセンオキシド、グリコール、グリシジルメタクリレート、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(例えば、オハイオ州コロンバス(Columbus)のヘキシオンスペシャルティケミカルズ社(Hexion Specialty Chemicals, Inc.)から「EPON 815C」、「EPON 813」、「EPON 828」、「EPON 1004F」、及び「EPON 1001F」の商標表記で入手可能なもの)、及びビスフェノールFのジグリシジルエーテル(例えば、スイス国バーゼル(Basel)のチバスペシャルティケミカルズホールディング社(Ciba Specialty Chemicals Holding Company)から「ARALDITE GY281」の商標表記で、又、オハイオ州コロンバス(Columbus)のヘキシオンスペシャルティケミカルズ社(Hexion Specialty Chemicals, Inc.)から「EPON 862」の商標表記で入手可能なもの)が挙げられるが、これらに限定するものではない。他の芳香族エポキシ樹脂には、マサチューセッツ州ニュートン(Newton)のマイクロケム社(MicroChem Corp.)から入手可能なSU−8樹脂が挙げられる。
他の例示的なエポキシモノマーには、ビニルシクロヘキセンジオキシド(ペンシルベニア州ウェストチェスター(West Chester)のSPIサプライズ社(SPI Supplies)から入手可能)、4−ビニル−1−シクロヘキセンジオキシドジエポキシド(ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee)のアルドリッチケミカル社(Aldrich Chemical Co.)から入手可能)、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキセン(例えば、ミシガン州ミッドランド(Midland)のダウケミカル社(Dow Chemical Co.)から商標表記「CYRACURE UVRー6110」として入手可能なもの)、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−6−メチル−シクロヘキサンカーボネート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート(例えば、ダウケミカル社(Dow Chemical Co.)から商標表記「CYRACURE UVR−6128」として入手可能なもの)、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、及びジペンテンジオキシドが挙げられる。
更に他の例示的なエポキシ樹脂として、エポキシ化ポリブタジエン(例えば、ペンシルベニア州エクストン(Exton)のサートマー社(Sartomer Co., Inc.)から商標表記「POLY BD605E」として入手化なもの)、エポキシシラン(例えば、ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee)のアルドリッチケミカル社(Aldrich Chemical Co.)から商業的に入手可能な3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン及び3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、難燃性エポキシモノマー(例えば、ミシガン州ミッドランド(Midland)のダウケミカル社(Dow Chemical Co.)から入手可能な、臭素化ビスフェノール型エポキシモノマーであって、商標表記「DER−542」として入手可能なもの)、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル(例えば、チバスペシャルティケミカルズ社(Ciba Specialty Chemicals)から商標表記「ARALDITE RD−2」として入手可能なもの)、臭素化ビスフェノールA−エピクロロヒドリン系エポキシモノマー(例えば、ヘキシオンスペシャルティケミカルズ社(Hexion Specialty Chemicals, Inc.)から商標表記「EPONEX 1510」として入手可能なもの)、フェノール−ホルムアルデヒドノボラックのポリグリシジルエーテル(例えば、ダウケミカル社(Dow Chemical Co.)から商標表記「DEN−431」及び「DEN−438」として入手可能なもの)、並びに、アトフィナケミカルズ社(Atofina Chemicals)(ペンシルベニア州フィラデルフィア(Philadelphia))から商標表記「VIKOLOX」及び「VIKOFLEX」として入手可能な、エポキシ化した亜麻仁油及び大豆油などのエポキシ化した植物油が挙げられる。
更なる好適なエポキシ樹脂には、ヘキシオンスペシャルティケミカルズ社(Hexion Specialty Chemicals, Inc.)(オハイオ州コロンバス(Columbus))から商標表記「HELOXY」として商業的に入手可能なアルキルグリシジルエーテルが挙げられる。例示的なモノマーには、「HELOXY MODFIER 7」(C〜C10アルキルグリシジルエーテル)、「HELOXY MODFIER 8」(C12〜C14アルキルグリシジルエーテル)、「HELOXY MODFIER 61」(ブチルグリシジルエーテル)、「HELOXY MODFIER 62」(クレシルグリシジルエーテル)、「HELOXY MODFIER 65」(p−t−ブチルフェニルグリシジルエーテル)、「HELOXY MODFIER 67」(1,4−ブタンジオールのジグリシジルエーテル)、「HELOXY 68」(ネオペンチルグリコールのジグリシジルエーテル)、「HELOXY MODFIER 107」(シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル)、「HELOXY MODFIER 44」(トリメチロールエタントリグリシジルエーテル)、「HELOXY MODFIER 48」(トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル)、「HELOXY MODFIER 84」(脂肪族ポリオールのポリグリシジルエーテル)、及び、「HELOXY MODFIER 32」(ポリグリコールジエポキシド)が挙げられる。
他の有用なエポキシ樹脂は、グリシドールのアクリル酸エーテル(グリシジルアクリレート及びグリシジルメタクリレートなど)と1つ以上の共重合性ビニル化合物とのコポリマーを含んでいる。そのようなコポリマーの例が、1:1のスチレン−グリシジルメタクリレート及び1:1のメチルメタクリレート−グリシジルアクリレートである。他の有用なエポキシ樹脂類は、周知であり、エピクロロヒドリン類、アルキレンオキシド類(例えば、プロピレンオキシド)、スチレンオキシド、アルケニルオキシド類(例えば、ブタジエンオキシド)及びグリシジルエステル類(例えば、エチルグリシデート(glycidate)のようなエポキシド類を包含する。
有用なエポキシ官能性ポリマーには、ゼネラルエレクトリック社(General Electric Company)から商業的に入手可能な、米国特許第4,279,717号(エクバーグ(Eckberg)ら)に記載されているものなどのエポキシ官能性シリコーンが挙げられる。これらは、ケイ素原子の1モル%〜20モル%がエポキシアルキル基(好ましくは、米国特許第5,753,346号(レイア(Leir)ら)に記載されているように、エポキシシクロヘキシルエチル)で置換されたポリジメチルシロキサンである。
又、種々のエポキシ含有材料の配合物を利用することもできる。そのような配合物は、エポキシ含有化合物(低分子量(200未満)、中分子量(約200から1000)、及び高分子量(約1000超)など)の2つ以上の重量平均分子量分布を備えていてもよい。その代わりに又はそれに加えて、エポキシ樹脂は、異なる化学的性質(脂肪族及び芳香族など)又は官能性(極性及び無極性など)を有するエポキシ含有材料の配合物を含むことができる。他のカチオン反応性ポリマー(ビニルエーテル及び同種のものなど)を、所望に応じて更に混和することができる。
好ましいエポキシには、芳香族グリシジルエポキシ(例えば、ヘキシオンスペシャルティケミカルズ社(Hexion Specialty Chemicals, Inc.)から入手可能なEPON樹脂、及びマイクロケム社(MicroChem Corp.)(マサチューセッツ州ニュートン)から入手可能なXP KMPR1050ストリッパブルSU−8(XP KMPR 1050 strippable SU-8)などのSU−8樹脂)、及びこれらの混合物が挙げられる。より好ましいのは、SU−8樹脂及びこれらの混合物である。
又、好適なカチオン反応性の化学種には、ビニルエーテルモノマー、オリゴマー、及び反応性ポリマー(例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル(ニュージャージー州ウェイン(Wayne)のインターナショナルスペシャルティプロダクツ社(International Specialty Products)から入手可能なRAPI−CURE DVE−3)、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、及びノースカロライナ州グリーンズボロ(Greensboro)のモーフレックス社(Morflex, Inc.)によるVECTOMERジビニルエーテル樹脂(例えば、VECTOMER 1312、VECTOMER 4010、VECTOMER 4051、及びVECTOMER 4060、並びに他の製造業者から入手可能なそれらの等価物)、並びにそれらの混合物が挙げられる。又、1つ以上のビニルエーテル及び/又は1つ以上のエポキシ樹脂の(任意の比率における)配合物を利用することもできる。又、ポリヒドロキシ官能性材料(例えば米国特許第5,856,373号(カイサキ(Kaisaki)ら)に記載されているものなど)を、エポキシ−及び/又はビニルエーテル官能性材料と共に利用することもできる。
非硬化性の化学種には、例えば、酸又はラジカル誘起反応の際に溶解度が増加しうる反応性ポリマーが挙げられる。そのような反応性ポリマーには、例えば、光生成した酸によって可溶性の酸基へと変換されうるエステル基を持つ非水溶性ポリマー(例えば、ポリ(4−t−ブトキシカルボニルオキシスチレン))が挙げられる。又、非硬化性の化学種には、R.D.アレン(R. D. Allen)、G.M.ワルラフ(G. M. Wallraff)、W.D.ヒンスバーグ(W. D. Hinsberg)、及びL.L.シンプソン(L. L. Simpson)によって、「化学増幅フォトレジスト用途のための高性能アクリルポリマー(High Performance Acrylic Polymers for Chemically Amplified Photoresist Applications)」、J.Vac.Sci.Technol.B,9,3357(1991)に記載された化学増幅フォトレジストが挙げられる。化学増幅フォトレジストの構想は、特に0.5サブミクロン(又は更に0.2サブミクロン)の機構を伴うマイクロチップ製造に、現在では広く用いられている。そのようなフォトレジスト系においては、触媒性の化学種(典型的には水素イオン)を照射によって生成することができ、この照射によって化学反応の電子なだれが誘発される。この電子なだれは、より多くの水素イオン又は他の酸性の化学種を生成する反応を水素イオンが開始し、それによって反応速度が増幅されるときに発生する。典型的な、酸を触媒とする化学増幅フォトレジスト系の例には、脱保護(例えば、米国特許第4,491,628号に記載されているt−ブトキシカルボニルオキシスチレンのレジスト、テトラヒドロピラン(THP)メタクリレート系の物質、米国特許第3,779,778号に記載されているものなどのTHPフェノール物質、R.Dアレン(R. D Allen)らによってProc.SPIE 2438,474(1995)に記載されているものなどのt−ブチルメタクリレート系の物質、その他同種のもの)、解重合(例えば、ポリフタルアルデヒド系の物質)、及び転位(例えば、ピナコール転位に基づく物質)が挙げられる。
所望により、異なる種類の反応種の混合物を光反応性組成物中に利用してもよい。例えば、ラジカル反応種とカチオン反応種の混合物も又有用である。
光開始剤系
この光開始剤系は多光子光開始剤系であるが、これは、そのような系を使用することにより、光の集束ビームの焦点領域に重合作用を制限又は限定することが可能となるからである。そのような系は好ましくは、少なくとも1つの多光子光増感剤と、少なくとも1つの光開始剤(又は電子受容体)と、任意選択による少なくとも1つの電子供与体とを含む二成分又は三成分系である。そのような多成分系は感度の向上をもたらすことができ、光反応をより短い期間で成し遂げることが可能であり、それによって、サンプル及び/又は露光系の1つ以上の成分の動きに起因する問題が生じる可能性が減じられる。
好ましくは、多光子光開始剤系は、光化学的に効果的な量の、(a)少なくとも2個の光子を同時に吸収することが可能であり、任意選択であるが好ましくはフルオロセインよりも大きな二光子吸収断面を有する、少なくとも1つの多光子光増感剤と、(b)多光子光増感剤とは異なるものであり、電子励起状態の光増感剤に電子を供与することが可能な、任意選択による少なくとも1つの電子供与体化合物と、(c)電子励起状態の光増感剤から電子を受容することによって光増感することが可能であり、結果として、少なくとも1つのラジカル及び/又は酸を形成する、少なくとも1つの光開始剤と、を含んでいる。
或いは、多光子光開始剤系は、少なくとも1つの光開始剤を含んだ一成分系とすることもできる。一成分多光子光開始剤系として有用な光開始剤には、アシルホスフィンオキシド(例えば、チバ社(Ciba)から商標名Irgacure(商標)819として販売されているもの、並びにBASF社(BASF Corporation)によって商標名Lucirin(商標)TPO−Lとして販売されている2,4,6トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキシド)、及び、共有結合されたスルホニウム塩部分を有するスチルベン誘導体(例えば、W.Zhou(チョウ)らによってScience 296、1106(2002)に記載されているもの)が挙げられる。ベンジルケタールなど、他の従来の紫外線(UV)光開始剤を利用することもできるが、それらの多光子光開始感度は一般に比較的低いものとなる。
二成分及び三成分多光子光開始剤系において有用な多光子光増感剤、電子供与体、及び光開始剤(又は電子受容体)について以下で説明する。
(1)多光子光増感剤
光反応組成物の多光子光開始剤系における使用に好適な多光子光増感剤は、十分な光に露光されると少なくとも2つの光子を同時に吸収しうるものである。好ましくは、光増感剤は、フルオレセインよりも大きい(即ち、3’,6’−ジヒドロキシスピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9’−[9H]キサンテン]3−オンよりも大きい)二光子吸収断面積を有している。一般に、好ましい断面は、C.ズ(Xu)及びW.W.ウェブ(W. W. Webb)によりJ.Opt.Soc.Am.B、13巻、481頁(1996年)(それは、マーダー(Marder)及びペリー(Perry)によりPCT国際公開特許WO98/21521、85頁18〜22列に引用されている)に記載された方法で測定される約50×10−50cm秒/光子を超えることができる。
より好ましくは、光増感剤の二光子吸収断面は、フルオレセインの約1.5倍を超え(又は、或いは、上記方法で測定される約75×10−50cm秒/光子を超える);更により好ましくはフルオレセインの約2倍を超え(又は、或いは、約100×10−50cm秒/光子を超える);最も好ましくはフルオレセインの約3倍を超える(又は、或いは、約200×10−50cm秒/光子を超える)。
好ましくは、光増感剤は、反応種への可溶性を有するか(反応種が液体である場合)、或いは、反応種との、又組成物中に含められた任意の結合剤(以下で説明する)との相溶性を有している。最も好ましくは、光増感剤は又、米国特許第3,729,313号に記載の手法を使用して、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジンを、光増感剤の一光子吸収スペクトルと重なり合う波長範囲(一光子吸収条件)における連続照射下で増感させることもできる。
好ましくは、光増感剤は又、幾分かは貯蔵性の考慮事項に基づいて選択することもできる。従って、特定の光増感剤の選択は、利用する特定の反応種に(更に、電子供与体組成物及び/又は光開始剤の選定に)ある程度依存しうるものである。
特に好ましい多光子光増感剤には、ローダミンB(即ち、N−[9−(2−カルボキシフェニル)−6−(ジエチルアミノ)−3H−キサンテン−3−イリデン]−N−エチルエタンアミニウムクロライド又はヘキサフルオロアンチモネート)、並びに、例えばマーダー(Marder)及びペリー(Perry)らによって国際特許公開WO98/21521及びWO99/53242に記載されている4つの種別の光増感剤など、大きな多光子吸収断面積を呈するものが挙げられる。4つの種別は以下のように述べることができ、即ち、(a)2つの供与体が共役π(パイ)電子ブリッジに連結されている分子、(b)2つの供与体が、1つ以上の電子受容基で置換された共役π(パイ)−電子ブリッジに連結されている分子、(c)2つの受容体が共役π(パイ)−電子ブリッジに連結されている分子、並びに、(d)2つの受容体が、1つ以上の電子供与基で置換された共役π(パイ)−電子ブリッジに連結されている分子である(ここで、「ブリッジ」は、2つ以上の化学基を連結する分子断片を意味し、「供与体」は、低いイオン化ポテンシャルを有する原子または原子団であって、共役π(パイ)−電子ブリッジに結合されうるものを意味し、「受容体」は、高い電子親和力を有する原子または原子団であって、共役π(パイ)−電子ブリッジに結合されうるものを意味する)。
上述の4つの種別の光増感剤は、標準ウィッティヒ条件下でアルデヒドをイリドと反応させることによって、又は、国際特許公開WO98/21521に詳述されているマクマリー反応を使用することによって調製することができる。
その他の化合物が、大きな多光子吸収断面積を有するものとして、ラインハート(Reinhardt)らによって述べられているが(例えば、米国特許第6,100,405号、第5,859,251号、及び第5,770,737号)、それらの断面積は上記以外の方法で決定されたものである。
好ましい光増感剤には、以下の化合物(及びそれらの混合物)が挙げられる。
(2)電子供与体化合物
光反応性組成物の多光子光開始剤系に有用な電子供与体化合物は、電子を光増感剤の電子励起状態に供与できるこれらの化合物(光増感剤自身以外)である。そのような化合物は、任意選択により、光開始剤系の多光子感光性を増大させ、それによって光反応性組成物の光反応を成し遂げるのに必要な露光を減少させるために使用することができる。電子供与体化合物は好ましくは、ゼロより大きく且つp−ジメトキシベンゼンの酸化電位以下である酸化電位を有している。好ましくは、酸化電位は、標準的な飽和カロメル電極(「S.C.E.」)に対して約0.3ボルトと1ボルトの間である。
電子供与体化合物は又、好ましくは反応種への可溶性を有しており、(上述のように)幾分かは貯蔵性の考慮事項に基づいて選択される。好適な供与体は一般に、望ましい波長の光に露光されると、光反応性組成物の硬化速度又は画像濃度を増加させることが可能である。
カチオン反応性の化学種を取り扱うとき、電子供与体化合物は、その塩基性が相当なものである場合、カチオン反応に悪影響を及ぼしうることが、当業者には理解されよう。(例えば、米国特許第6,025,406号(オクスマン(Oxman)ら)における第7欄62行から第8欄49行の論述を参照。)
一般に、特定の光増感剤及び光開始剤と共に使用するのに好適な電子供与体化合物は、(例えば、米国特許第4,859,572号(ファリド(Farid)ら)において述べられている)3つの成分の酸化電位及び還元電位を比較することによって選択することができる。そのような電位は、実験的に(例えば、R.J.コックス(R. J. Cox)によって「写真感度(Photographic Sensitivity)」の第15章(Chapter 15)、Academic Press(1973)で述べられている方法によって)測定することができ、又、N.L.ワインバーグ(Weinburg)監修、有機電解合成の技術パートII、化学の技術、5巻(1975年)、及びC.K.マン(Mann)及びK.K.バーンズ(Barnes)非水系における電気化学反応(1970年)から得ることができる。これらの電位は、相対的なエネルギー関係を反映するものであり、電子供与体化合物を選択する指針として使用することができる。
好適な電子供与体化合物には、例えば、D.F.イートン(Eaton)によって、「光化学の進歩(Advances in Photochemistry)」、B.ボマン(Voman)ら編集、第13巻(Volume 13)、ページ427〜488、John Wiley and Sons、New York(1986)に、オクスマン(Oxman)らによって米国特許第6,025,406号において第7欄42行〜61行に、又、パラツォット(Palazzotto)らによって米国特許第5,545,676号において第4欄14行から第5欄18行で述べられているものが挙げられる。そのような電子供与体化合物には、アミン(トリエタノールアミン、ヒドラジン、1,4−ジアゾビシクロ[2.2.2]オクタン、トリフェニルアミン(及びそのトリフェニルホスフィンとトリフェニルアルシンの類似体)、アミノアルデヒド、及びアミノシランを含む)、アミド(ホスホルアミドを含む)、エーテル(チオエーテルを含む)、尿素(チオ尿素を含む)、スルフィン酸とその塩、ヘキサシアノ鉄II酸塩、アスコルビン酸とその塩、ジチオカルバミン酸とその塩、キサントゲン酸塩、エチレンジアミン四酢酸の塩、(アルキル)(アリール)ボレートの塩(n+m=4)(テトラアルキルアンモニウム塩が好ましい)、SnR化合物(ここで、各Rは、個別に、アルキル基、アラルキル(特にベンジル)基、アリール基、及びアルカリル基から選ばれる)などの種々の有機金属化合物(例えば、n−CSn(CH、(アリル)Sn(CH、及び(ベンジル)Sn(n−Cのような化合物)、フェロセン、その他同種のもの、並びにそれらの混合物が挙げられる。電子供与体化合物は、未置換とすることができ、又、1つ以上の非妨害置換基で置換することもできる。特に好ましい電子供与体化合物は、電子供与体原子(窒素原子、酸素原子、リン原子、またはイオウ原子など)と、電子供与体原子に対してアルファ位置にある炭素原子又はケイ素原子に結合された除去可能な水素原子とを含んでいる。
好ましいアミン電子供与体化合物には、アルキルアミン、アリールアミン、アルカリルアミン、アラルキルアミン(例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、トリエタノールアミン、アミルアミン、ヘキシルアミン、2,4−ジメチルアニリン、2,3−ジメチルアニリン、o−トルイジン、m−トルイジン、p−トルイジン、ベンジルアミン、アミノピリジン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、N,N’−ジエチル−1,3−プロパンジアミン、N,N’−ジエチル−2−ブテン−1,4−ジアミン、N,N’−ジメチル−1,6−ヘキサンジアミン、ピペラジン、4,4’−トリメチレンジピペリジン、4,4’−エチレンジピペリジン、p−N,N−ジメチル−アミノフェネタノール及びp−N−ジメチルアミノベンゾニトリル)、アミノアルデヒド(例えば、p−N,N−ジメチルアミノベンズアルデヒド、p−N,N−ジエチルアミノベンズアルデヒド、9−ジュロリジンカルボキシアルデヒド、及び4−モルホリノベンズアルデヒド)、及び、アミノシラン(例えば、トリメチルシリルモルホリン、トリメチルシリルピペリジン、ビス(ジメチルアミノ)ジフェニルシラン、トリス(ジメチルアミノ)メチルシラン、N,N−ジエチルアミノトリメチルシラン、トリス(ジメチルアミノ)フェニルシラン、トリス(メチルシリル)アミン、トリス(ジメチルシリル)アミン、ビス(ジメチルシリル)アミン、N,N−ビス(ジメチルシリル)アニリン、N−フェニル−N−ジメチルシリルアニリン、及びN,N−ジメチル−N−ジメチルシリルアミン)、並びにそれらの混合物が挙げられる。三級芳香族アルキルアミン、特に、少なくとも1つの電子求引性基を芳香環上に有するものが、とりわけ良好な貯蔵性をもたらすことが判明している。又、良好な貯蔵性は、室温で固体となるアミンを使用しても得られている。良好な写真感度は、1つ以上のジュロリジニル部分を含んでいるアミンを使用して得られている。
好ましいアミド電子供与体化合物には、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチル−N−フェニルアセトアミド、ヘキサメチルホスホルアミド、ヘキサエチルホスホルアミド、ヘキサプロピルホスホルアミド、トリモルホリノホスフィンオキシド、トリピペリジノホスフィンオキシド、及びそれらの混合物が挙げられる。
好ましいアルキルアリールボレート塩には、次のものが挙げられる。
Ar(n−C)N(C
Ar(n−C)N(CH
Ar(n−C)N(n−C
Ar(n−C)Li
Ar(n−C)N(C13
Ar−(C)N(CH(CHCO(CHCH
Ar−(C)N(CH(CHOCO(CHCH
Ar−(sec−C)N(CH(CHCO(CHCH
Ar−(sec−C)N(C13
Ar−(C)N(C17
Ar−(C)N(CH
(p−CHO−C(n−C)N(n−C
Ar−(C)N(CH(CHOH
ArB(n−C(CH
ArB(C(CH
Ar(n−C(CH
Ar(C)N(C
Ar(C
ArB(CH(CH
(n−C(CH
Ar(C)P(C
(式中、Arは、フェニル、ナフチル、置換(好ましくは、フッ素置換)フェニル、置換ナフチル及び多数の縮合芳香環を有するその類の基)加えてテトラメチルアンモニウムn−ブチルトリフェニルホウ酸塩及びテトラブチルアンモニウムn−ヘキシル−トリス(3−フルオロフェニル)ホウ酸塩、並びにこれらの混合物が挙げられる。
好適なエーテル電子供与体化合物には、4,4’−ジメトキシビフェニル、1,2,4−トリメトキシベンゼン、1,2,4,5−テトラメトキシベンゼンなど、その他同種のもの、及びそれらの混合物が挙げられる。好適な尿素系電子供与体化合物には、N,N’−ジメチル尿素、N,N−ジメチル尿素、N,N’−ジフェニル尿素、テトラメチルチオ尿素、テトラエチルチオ尿素、テトラ−n−ブチルチオ尿素、N,N−ジ−n−ブチルチオ尿素、N,N’−ジ−n−ブチルチオ尿素、N,N−ジフェニルチオ尿素、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジエチルチオ尿素、その他同種のもの、及びそれらの混合物が挙げられる。
ラジカル誘起反応に対する好ましい電子供与体化合物には、1つ以上のジュロリジニル部分を含んだアミン、アルキルアリールボレート塩、及び芳香族スルフィン酸の塩が挙げられる。しかしながら、そのような反応では、電子供与体化合物を、所望により(例えば、光反応性組成物の貯蔵性を改善するために、又は、分解能、コントラスト、及び相反性を修正するために)、除外することもできる。酸誘起反応のための好ましい電子供与体化合物には、4−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、3−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノベンゾイン、4−ジメチルアミノベンズアルデヒド、4−ジメチルアミノベンゾニトリル、4−ジメチルアミノフェネチルアルコール、及び1,2,4−トリメトキシベンゼンが挙げられる。
(3)光開始剤
光反応性組成物の反応種に好適な光開始剤(即ち、電子受容体化合物)は、電子励起状態の多光子光増感剤から電子を受容し、結果として、少なくとも1つのフリーラジカル及び/又は酸が形成されることによって感光化することが可能な光開始剤である。そのような光開始剤には、ヨードニウム塩(例えば、ジアリールヨードニウム塩)、スルホニウム塩(例えば、所望によりアルキル基又はアルコキシ基で置換されており、又任意選択により、隣接アリール部分を橋渡ししている2,2’オキシ基を有するトリアリールスルホニウム塩)、その他同種のもの、及びそれらの混合物がある。
光開始剤は、好ましくは反応種への可溶性を有しており、又好ましくは貯蔵性を有している(即ち、光増感剤及び電子供与体化合物の存在下で、反応種中に溶解したとき、反応種の反応を自発的に促進しない)。従って、特定の光開始剤の選択は、上述のように、選定する特定の反応種、光増感剤、及び電子供与体化合物にある程度依存しうるものである。反応種が、酸開始化学反応を受けうる場合、光開始剤はオニウム塩(例えば、ヨードニウム塩又はスルホニウム塩)である。
好適なヨードニウム塩には、パラツォット(Palazzotto)らによって米国特許第5,545,676号の第2欄28行から46行において述べているヨードニウム塩が挙げられる。好適なヨードニウム塩は又、米国特許第3,729,313号、第3,741,769号、第3,808,006号、第4,250,053号及び第4,394,403号にも記載されている。ヨードニウム塩は、単塩(例えば、Cl、Br、I又はCSO などのアニオンを含有する)又は金属錯体塩(例えば、SbF 、PF 、BF 、テトラキス(パーフルオロフェニル)ホウ酸塩、SbFOH又はAsF を含有する)であってもよい。所望により、ヨードニウム塩の混合物を使用することができる。
有用な芳香族ヨードニウム錯塩光開始剤には、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジ(4−メチルフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、フェニル−4−メチルフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジ(4−ヘプチルフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、ジ(3−ニトロフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(4−クロロフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(ナフチル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、ジ(4−トリフルオロメチルフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(4−メチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロヒ酸塩、ジ(4−フェノキシフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、フェニル−2−チエニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、3,5−ジメチルピラゾリル−4−フェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモン酸塩、2,2’−ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジ(2,4−ジクロロフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(4−ブロモフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(4−メトキシフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(3−カルボキシフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(3−メトキシカルボニルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(3−メトキシスルホニルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(4−アセトアミドフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(2−ベンゾチエニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、及びジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモン酸塩、その他同種のもの、並びにそれらの混合物が挙げられる。芳香族ヨードニウム錯塩は、ベーリンガー(Beringer)らのJ.Am.Chem.Soc.81、342(1959)の教示に従って、対応する(例えばジフェニルヨードニウム重硫酸塩などの)芳香族ヨードニウム単塩のメタセシスによって調製することができる。
好ましいヨードニウム塩には、ジフェニルヨードニウム塩(ジフェニルヨードニウムクロライド、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、及びジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレートなど)、ジアリールヨードニウムヘキサフルオロアンチモン酸塩(例えば、サートマー社(Sartomer Co., Inc.)から入手可能なSarCat(商標)SR 1012)、及びそれらの混合物が挙げられる。
有用なスルホニウム塩には、米国特許第4,250,053号(スミス(Smith))の第1欄66行から第4欄2行に記載されているスルホニウム塩が挙げられ、このスルホニウム塩は次の式で表すことができる。
(式中、R、R及びRは、それぞれ独立して約C4〜約C20炭素原子を有する芳香族基(例えば、置換又は非置換フェニル、ナフチル、チエニル及びフラニル、ここで置換反応は、アルコキシ、アルキルチオ、アリールチオ、ハロゲンなどのような基をともなっていてもよい)及びC1〜約C20炭素原子を有するアルキル基から選択される)により表わすことができる。ここで用いているように、「アルキル」という用語は、置換アルキル(例えば、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、又はアリールのような基で置換されたもの)を包含する。R、R、及びRのうちの少なくとも1つは芳香族であり、又好ましくは各々がそれぞれ芳香族である。Zは、共有結合、酸素、硫黄、−S(=O)−、−C(=O)−、−(O=)S(=O)−、及び−N(R)−からなる群から選択され、Rは、アリール(フェニルなど、約6個〜約20個の炭素のもの)、アシル(アセチル、ベンゾイルなど、約2個〜約20個の炭素のもの)、炭素−炭素結合、又は−(R−)C(−R)−であり、RとRは別個に、水素と、1個〜約4個の炭素原子を有するアルキル基と、約2個〜約4個の炭素原子を有するアルケニル基とからなる群より選択される。Xは、以下に述べるようなアニオンである。
スルホニウム塩に(又他の種類の光開始剤のいずれかに)好適なアニオンXには、例えば、イミド、メチド、ホウ素中心、リン中心、アンチモン中心、ヒ素中心、及びアルミニウム中心のアニオンなど、様々なアニオンの種類が挙げられる。
好適なイミド及びメチドのアニオンの例示的で且つ非限定的な例には、(CSO、(CSO、(C17SO、(CFSO、(CFSO、(CSO、(CFSO(CSO)C、(CFSO)(CSO)N、((CFNCSO、(CFNCSO(SOCF、(3,5−ビス(CF)C)SOSOCF、CSO(SOCF、CSOSOCF、その他同種のものが挙げられる。この種類の好ましいアニオンには、式(RSOが挙げられ、ここで、Rは、1個〜約4個の炭素原子を有するパーフルオロアルキルラジカルである。
実例として限定するものではないが、好適なホウ素中心アニオン類の例としては、F、(3,5−ビス(CF)C、(C、(p−CF、(m−CF、(p−FC、(C(CH)B、(C(n−C)B、(p−CH(C)B、(CFB、(C(C)B、(CH(p−CF、(C(n−C1837O)B、及びその類が挙げられる。好ましいホウ素中心のアニオンは一般に、ホウ素に付随した3つ以上のハロゲン置換芳香族炭化水素ラジカルを含んでおり、フッ素が最も好ましいハロゲンである。好ましいアニオンの例示的で且つ非限定的な例には、(3,5−ビス(CF)C、(C、(C(n−C)B、(CFB、及び(C(CH)Bが挙げられる。
他の金属又は半金属中心を含有する好適なアニオン類としては、例えば、(3,5−ビス(CF)CAl、(CAl、(C、(C)F、F、(C)FSb、FSb、(HO)FSb及びFAsが挙げられる。他の有用なホウ素中心の非求核塩、並びに他の金属又は半金属を含んだ他の有用なアニオンが、当業者には(前述の一般式から)容易に明らかとなるため、前述の列挙は全てを網羅しようとしたものではない。
好ましくは、アニオンXは、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロヒ酸塩、ヘキサフルオロアンチモン酸塩、及びヒドロキシペンタフルオロアンチモン酸塩から選択される(例えば、エポキシ樹脂などのカチオン反応性の化学種と共に使用するため)。
好適なスルホニウム塩光開始剤の例には、次のものが挙げられる。
トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート
メチルジフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート
ジメチルフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート
トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート
トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモン酸塩
ジフェニルナフチルスルホニウムヘキサフルオロヒ酸塩
トリトリルスルホニウム(tritolysulfonium)ヘキサフルオロホスフェート
アニシルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモン酸塩
4−ブトキシフェニルジフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート
4−クロロフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート
トリ(4−フェノキシフェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスフェート
ジ(4−エトキシフェニル)メチルスルホニウムヘキサフルオロヒ酸塩
4−アセトニルフェニルジフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート
4−チオメトキシフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート
ジ(メトキシスルホニルフェニル)メチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモン酸塩
ジ(ニトロフェニル)フェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモン酸塩
ジ(カルボメトキシフェニル)メチルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート
4−アセトアミドフェニルジフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート
ジメチルナフチルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート
トリフルオロメチルジフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート
p−(フェニルチオフェニル)ジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモン酸塩
10−メチルフェノキサチイニウムヘキサフルオロホスフェート
5−メチルチアンスレニニウムヘキサフルオロホスフェート
10−フェニル−9,9−ジメチルチオキサンテニウムヘキサフルオロホスフェート
10−フェニル−9−オキソチオキサンテニウムテトラフルオロボレート
5−メチル−10−オキソチアンスレニウムテトラフルオロボレート
5−メチル−10,10−ジオキソチアンスレニウムヘキサフルオロホスフェート
好ましいスルホニウム塩には、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモン酸塩(例えば、サートマー社(Sartomer Company)から入手可能なSarCat(商標)SR1010)、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェート(例えば、サートマー社(Sartomer Company)から入手可能なSarCat(商標)SR1011)、及びトリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェート(例えば、サートマー社(Sartomer Company)から入手可能なSarCat(商標)KI85)などのトリアリール置換塩が挙げられる。
好ましい光開始剤には、ヨードニウム塩(より好ましくはアリールヨードニウム塩)、スルホニウム塩、及びそれらの混合物が挙げられる。より好ましいのは、アリールヨードニウム塩及びそれらの混合物である。
光反応性組成物の調製
反応種、多光子光増感剤、電子供与体化合物、及び光開始剤は、上述の方法によって又は当該技術分野において既知の他の方法で調製することができ、又、多数のものが商業的に入手可能である。これらの4つの構成成分は、「安全光」の条件下で、混合の任意の順序及び方法を使用して(任意選択的に、かき混ぜ又は攪拌を用いて)混合することができるが、ときには(貯蔵寿命及び熱的安定性の観点から)光開始剤を最後に(且つ、他の構成成分の溶解を促進するために任意選択で用いられる加熱工程の後に)添加するのが好ましい。溶媒を組成物の構成成分と相当に反応しないように選定するという条件で、所望により溶媒を使用することができる。好適な溶媒には、例えば、アセトン、ジクロロメタン、及びアセトニトリルが挙げられる。又、反応種自体が、ときには他の構成成分の溶媒として働くことができる。
光開始剤系の3つの成分は、光化学的に効果的な量(上記で定義した)で存在する。一般に、その組成物は、固体の総重量(即ち、溶媒以外の構成成分の総重量)に基づいて、少なくとも約5重量%(好ましくは、少なくとも約10重量%、より好ましくは、少なくとも約20重量%)から約99.79重量%まで(好ましくは約95重量%まで、より好ましくは約80重量%まで)の1つ以上の反応種と、少なくとも約0.01重量%(好ましくは少なくとも約0.1重量%、より好ましくは少なくとも約0.2重量%)から約10重量%まで(好ましくは約5重量%まで、より好ましくは約2重量%まで)の1つ以上の光増感剤と、任意選択による約10重量%まで(好ましくは約5重量%まで)の1つ以上の電子供与体化合物(好ましくは少なくとも約0.1重量%、より好ましくは約0.1重量%から約5重量%)と、約0.1重量%から約10重量%の1つ以上の電子受容体化合物(好ましくは約0.1重量%から約5重量%)とを含むことができる。
種々様々な補助剤を、望まれる最終用途に応じて光反応性組成物に含めることができる。好適な補助剤には、溶媒、希釈剤、樹脂、結合剤、可塑剤、顔料、染料、無機又は有機の補強又は増量充填剤(組成物の総重量に基づいて約10重量%から90重量%の好ましい量)、チキソトロープ剤、指示薬、阻害剤、安定化剤、紫外線吸収剤、その他同種のものが挙げられる。そのような補助剤の量及び種類、並びにそれらの補助剤を組成物に添加する方式は、当業者なら周知であろう。
非反応性高分子結合剤を組成物に、例えば、粘度を制御するために、またフィルム形成能をもたらすために含めることは、本発明の範囲内となる。そのような高分子結合剤は一般に、反応種と相溶性を有するように選定することができる。例えば、反応種に使用されているものと同じ溶媒に可溶であり、反応種の反応過程に悪影響を及ぼしうる官能基のない高分子結合剤を利用することができる。結合剤は、望ましいフィルム形成特性及び溶液レオロジーを達成するのに好適な分子量(例えば、約8.3E−21g(5,000ダルトン)〜1.6E−18g(1,000,000ダルトン)、好ましくは約1.7E−20g(10,000ダルトン)〜8.3E−19g(500,000ダルトン)、より好ましくは約2.5E−20g(15,000ダルトン)〜4.2E−19g(250,000ダルトン)の分子量)のものにすることができる。好適な高分子結合剤には、例えば、ポリスチレン、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(スチレン)−co−(アクリロニトリル)、セルロースアセトブチレート、その他同種のものが挙げられる。
露光に先立って、結果として生じた光反応性組成物を、所望により、当業者に既知の種々のコーティング方法(例えば、ナイフコーティング及びスピンコーティングを含む)のうちのいずれかを用いて基板上にコーティングすることができる。基板は、種々様々なフィルム、シート、及び他の表面材(シリコンウェハ及びガラスプレートを含む)から、特定の用途及び利用する露光の方法に応じて選定することができる。好ましい基板は一般に、均一な厚さを有する光反応性組成物の層を調製しうるように十分に平坦なものである。コーティングがさほど望ましくない用途の場合、光反応性組成物を、別法としてバルク形式で露光させることができる。
露光システム及びその使用
発明の方法を実施するにあたり、光反応性組成物は、多光子吸収が行われる条件で光に露光され、それにより露光前の光反応性組成物と比べて異なる溶解度特性(例えば、特定の溶媒中でより小さい又はより大きい溶解度)の領域をもたらす。前記露光は、十分な光の強度を得ることができる任意の既知の手段で達成できる。
使用することができるシステムの1つの代表的なタイプを図1に示す。図1について説明すると、製造システム10は、光源12、最終光学素子15(所望によりビームの開きを制御するガルボミラー(galvo-mirror)及び望遠鏡を含む)を備える光学系14及び移動可能ステージ16を含む。ステージ16は、一、二、又は典型的に三次元に移動できる。ステージ16に実装される基材18は、その上に光反応性組成物24の層20を有する。光源12から生ずる光線26は、光学系14を通過し、最終光学素子15を通って離れ、それを層20内の点Pに集中させる、それにより光の強度の三次元空間分布を組成物内に制御し、点Pの付近の光反応性組成物24の少なくとも一部をそれが光線26に露光直前よりも少なくとも1つの溶媒中でより可溶性に又はより可溶性でなくする。
光学系14の1つ以上の要素の移動と組合せてステージ16を移動又は光線26を向ける(例えば、ガルボミラー(galvo-mirror)及び望遠鏡を使用してレーザー光線を移動する)ことにより、焦点Pを走査でき又は所望の形状に対応する三次元パターンに形を変えることができる。次に、生じた光反応性組成物24の反応又は部分的に反応した部分が、所望の形状の三次元構造体を製作する。例えば、単一通過で1つ以上の光抽出構造体の表面輪郭(約1容量ピクセル又はボクセルの厚さに相当する)を露光又は撮像でき、それの現像により光抽出構造体の表面を形成できる。
表面輪郭の撮像的露光は、所望の三次元構造体の平面スライスの少なくとも周辺を走査し、次に複数個の好ましくは平行の平面スライスを走査し、構造体を仕上げることにより行うことができる。スライス厚さは、光学品質の光抽出構造体を提供するために、十分低レベルの表面粗さを実現するよう制御可能である。例えば、より小さいスライス厚さは、より大きい構造テーパの領域で望ましく、高い構造忠実度の実現に役立つことができるが、より大きいスライス厚さは、より小さい構造テーパの領域で利用され、有用な製造時間の維持に役立つことができる。このように、スライス厚さ未満の表面粗さ(好ましくは、スライス厚さの約1/2未満、より好ましくはスライス厚さの約1/4未満)は、製造速度(処理能力又は単位時間当たりに製造される構造体の数)を犠牲にすることなく達成できる。
光反応性組成物をボクセル高さと同じ又はそれ以上の寸法規模である程度の非平面性を示す基材にコーティングする場合、光学的又は物理的に不良の構造体を回避するため非平面性の補償をするのが望ましい場合がある。これは、基材と露光される光反応性組成物の部分の間の境界面の位置を位置決めし(例えば、共焦点境界面ロケータシステム、干渉法又は蛍光境界面ロケータシステムを使用して)、次に光学系14の位置を適切に調節し、光線26を境界面に集中させることにより達成できる。(このような方法は、同時係属及び同時申請の特許出願、代理人整理番号61438US002号に詳細に記載されており、その明細は参照により本明細書に組み込まれる。)好ましくは、この手順は、アレイの20個の構造体ごとの中から少なくとも1個の構造体について(より好ましくはアレイの10個ごとの中から少なくとも1個、最も好ましくは構造体ごとに)踏襲されてもよい。
光源12は、多光子吸収を行うのに十分な光の強度を製造するいかなる光源であってもよい。好適な光源としては、例えば、アルゴンイオンレーザー(例えば、コヒラント(Coherent)から商品名「イノバ(INNOVA)」として入手可能なもの)により励起されるフェムト秒近赤外チタンサファイア発振器(例えば、カリフォルニア州サンタクララ(Santa Clara)のコヒラント(Coherent)から商品名「ミラオプティマ(MIRA OPTIMA)900−F」として入手可能なもの)が挙げられる。76MHzで操作するこのレーザーは、200フェムト秒未満のパルス幅を有し、700〜980ナノメートルで同調可能であり、1.4ワットまでの平均出力を有する。別の有用なレーザーが、カリフォルニア州マウンテンビュー(Mountain View)のスペクトラ・フィジックス(Spectra-Physics)から商品名「マイタイ(MAI TAI)」として入手でき、750〜850ナノメートルの範囲内で同調可能であり、80メガヘルツの反復周波数、約100フェムト秒(1×10−13秒)のパルス幅、1ワットまでの平均出力を有する。
しかし、光反応性組成物に使用される多光子吸収剤に適した波長で多光子吸収を行うのに十分な強度を備える任意の光源(例えば、レーザー)を利用できる。前記波長は、一般に約300〜約1500ナノメートルの範囲内、好ましくは約400から約1100ナノメートル、より好ましくは約600から約900ナノメートル、より好ましくは約750から約850ナノメートルまでであってよい。典型的に、光フルエンス(例えば、パルス化レーザーのピーク強度)は、約10W/cmを超える。光フルエンスの上限は、一般に光反応性組成物のアブレーション閾値により規定される。例えば、Q−スイッチNd:YAGレーザー(例えば、スペクトラ・フィジックス(Spectra-Physics)から商品名「クウオンタ−レイプロ(QUANTA-RAY PRO)」として入手可能なもの)、可視波長染料レーザー(例えば、スペクトラ・フィジックス(Spectra-Physics)から商品名「クウオンタ−レイプロ(QUANTA-RAY PRO)」を有するQ−スイッチNd:YAGレーザーにより励起されるスペクトラ・フィジックス(Spectra-Physics)から商品名「シラー(SIRAH)」として入手可能なもの)及びレーザーで励起されるQ−スイッチダイオード(例えば、スペクトラ・フィジックス(Spectra-Physics)から商品名「FCBAR」として入手可能なもの)も利用されてよい。
好ましい光源は、約10−8秒未満(より好ましくは約10−9秒未満、最も好ましくは約10−11秒未満)のパルス長を有する近赤外パルス化レーザーである。上記のピーク強度及びアブレーション閾値が満たされる限り他のパルス長が使用されてもよい。例えば、パルス化放射線は、約1キロヘルツから約50メガヘルツまで又は更にそれ以上のパルス周波数を有する。連続波レーザーも使用されてよい。
光学系14は、例えば、屈折光学素子(例えば、レンズ又はマイクロレンズアレイ)、反射光学素子(例えば、再帰反射器又は集束ミラー)、回折光学素子(例えば、回折格子、相マスク及びホログラム)、分散形光学素子(例えば、プリズム及び回折格子)、拡散板、ポッケルスセル、導波路等を含むことができる。前記光学素子は、集束、ビーム送達、ビーム/モード整形、パルス整形及びパルスタイミングに有用である。一般に、光学素子の組合せが利用でき、他の適切な組合せが、当業者により認識されることになる。最終光学素子15は、例えば、1つ以上の屈折、反射及び/又は回折光学素子を含むことができる。ある実施形態では、(例えば、顕微鏡検査で使用されるような)対物レンズを、例えば、カールツァイス北米(Carl Zeiss, North America)(ニューヨーク州ソーンウッド(Thornwood))などの供給業者から手軽に入手でき、最終光学素子15として使用することができる。例えば、製造システム10は、開口数(NA)0.75の対物レンズ(例えば、カールツァイス北米(Carl Zeiss, North America)から商品名「20X FLUAR」として入手可能なもの)を備えた走査共焦点顕微鏡(例えば、バイオラドラボラトリーズ(Bio-Rad Laboratories)(カリフォルニア州ハーキュレス)から商品名「MRC600」として入手可能なもの)を有していてもよい。
高集束光を提供するため、しばしば比較的大きい開口数を有する光学系を使用することが望ましい場合がある。しかし、所望の強度特性(及びその空間配置)を提供する光学素子の任意の組合せが利用できる。
一般に露光時間は、光反応性組成物内で反応性種の反応を引き起こすために使用される露光システムの種類(及び開口数、光強度空間分布の形状、レーザーパルス時のピーク光の強度(ほぼピーク光の強度に相当するより高い強度及びより短いパルス持続時間)などのそれに伴う変数)並びに光反応性組成物の性質により決まる。一般に、焦点近辺でのより高いピーク光の強度は、ほかの全てが同じである場合、より短い露光時間を可能にする。一般に一次元撮像又は「書込み」速度は、約10−8〜10−15秒(例えば、約10−11〜10−14秒)及び約10〜10パルス/秒(例えば、約10〜10パルス/秒)のレーザーパルス持続時間の使用により約5〜100,000μ/秒であることができる。
露光された光反応性組成物の溶媒現像を容易にし、製造された光抽出構造体を得るため、光の閾値投与量(すなわち、閾値投与量)が利用できる。この閾値投与量は、典型的にプロセス固有であって、例えば、波長、パルス周波数、光の強度、具体的な光反応性組成物、製造された具体的な構造体又は溶媒現像に使用されるプロセスなどの変数により決めることができる。従って、それぞれの組のプロセスパラメーターは、典型的に閾値投与量により特徴付けることができる。閾値より高い光の投与量が使用でき、有益である場合があるが、より高い投与量(閾値投与量を超える1回)は、典型的により遅い書込み速度及び/又はより高い光の強度の状態で使用できる。
光の投与量の増加は、プロセスにより発生するボクセルの容量及びアスペクト比を増加させる傾向がある。従って、低アスペクト比のボクセルを得るため、一般に、閾値投与量の約10倍未満、好ましくは閾値投与量の約4倍未満、より好ましくは閾値投与量の約3倍未満である光投与量を使用することが好ましい。低アスペクト比のボクセルを得るため、光線26の放射状強度特性は、好ましくはガウス形である。
多光子吸収によって、光線26は、非露光光反応性組成物のものと異なる溶解特性を有する物質の容積領域を製造する光反応性組成物内の反応を誘発する。次に、生じた異なる溶解度のパターンは、例えば露光又は非露光領域のいずれかを取り除くことで従来の現像方法により実現できる。
露光された光反応性組成物は、例えば、露光された光反応性組成物を溶媒中に定置し、より高い溶媒溶解度の領域を溶解し、溶媒ですすぎ、蒸発させ、酸素プラズマエッチングし、他の既知の方法及びそれらの組合せにより現像されてもよい。露光された光反応性組成物を現像するために使用することができる溶媒としては、例えば、水(例えば、1〜12の範囲内のpHを有する)水と有機溶媒類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、その類及びこれらの混合物)の相溶性ブレンド、及び有機溶媒などの水性溶媒が挙げられる。代表的な有用な有機溶媒としては、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール及びプロパノール)、ケトン類(例えば、アセトン、シクロペンタノン及びメチルエチルケトン)、芳香族類(例えば、トルエン)、ハロカーボン類(例えば、塩化メチレン及びクロロホルム)、ニトリル類(例えば、アセトニトリル)、エステル類(例えば、エチルアセテート及びプロピレングリコールメチルエーテルアセテート)、エーテル類(例えば、ジエチルエーテル及びテトラヒドロフラン)、アミド類(例えば、N−メチルピロリドン)、その類およびそれらの混合物が挙げられる。
多光子吸収条件下で光への露光後であるが溶媒現像前で、任意選択の焼付けが、例えば、エポキシ型反応性種などの一部の光反応性組成物に有用な場合がある。典型的な焼付け条件としては、約40℃〜約200℃の範囲内の温度、約0.5分〜約20分の範囲内の時間が挙げられる。
所望により、光抽出構造体アレイの表面輪郭だけの露光、好ましくはそれに次いで溶媒現像の後、化学線を使用した非撮像的露光を行い、残りの未反応光反応性組成物の反応を行ってもよい。前記非撮像的露光は、好ましくは一光子法を使用して行うことができる。
複雑な三次元の光抽出構造体及び光抽出構造体アレイは、この方法で調製可能である。
光抽出構造体アレイ
本発明の方法は、種々のサイズ及び幾何学的形状又は表面外形部(例えば、凸構造及び凹構造の両方を含む)の光抽出構造体を備えたアレイを弾力的に制御可能に提供するために使用できる。また一方、前記方法は、少なくとも1つの形状因子がアレイ内の位置の関数としてある程度変化する光抽出構造体アレイ及び/又は光抽出構造体の分布が不均一である光抽出構造体アレイを提供するのに特に好適である。例えば、アレイ全体に渡って光抽出構造体の高さ及び/又は間隔の空間的変化が制御されたアレイは、光抽出の均一性及び効率を修正するのに有効である。
例えば、本方法は、凸構造の高さ(又は凹構造の深さ)が約5ミクロン〜約300ミクロン(好ましくは約50ミクロン〜約200ミクロン、より好ましくは約75ミクロン〜約150ミクロン)の範囲、及び/又は最大長さ及び/又は最大幅が約5ミクロン〜約500ミクロン(好ましくは約50ミクロン〜約300ミクロン、より好ましくは約100ミクロン〜約300ミクロン)の範囲である光抽出構造体を備えたアレイを製造するのに使用可能である。広範囲のフィルファクタ(100パーセントまで)を達成できる。多くの用途では、約1パーセント〜100パーセント(好ましくは約5パーセント〜約75パーセント)のフィルファクタが有効である。
様々な幾何学的形状(例えば、錐体、非球面体、切頭非球面体、及び切頭錐体)を有する光抽出構造体をアレイのフィルファクタを100パーセントにまでして製造することができる(ここで、「切頭」形状とは、底面に加えて、平坦な頂部面を形成可能なもう1つの切頭面を有する形状である)。形状は複雑であってもよい(例えば、非球面体及びピラミッド又は錐体を積み重ねて組み合わせたものなど、単一構造に複数の形状の部分を併せ持つ形状)。好ましい幾何学的形状には、切頭で対称形のもの(例えば、切頭錐体、切頭非球面体、及びこれらの組み合わせ)が挙げられる。
幾何学的形状は、底面、1以上の面(例えば、側壁を形成する面)、及び頂部(例えば、平坦な表面(切頭により形成される面など)又は点であってもよい)などの構造的要素を有する場合がある。このような要素は、本質的にいずれの形状であってもよい(例えば、底面、側面、及び頂部は、円形、楕円形、又は多角形(規則的又は不規則的)であってもよく、その結果得られる側壁は、本質的に放物線状、双曲線状、直線状、又はそれらの組み合わせの(底面に対して垂直な)縦断面を特徴としてもよい)。側壁は構造の底面に対して垂直でないことが好ましい(例えば、底面における垂直正接角度(vertical tangent angle)が約10°〜約80°(好ましくは約20°〜約70°、より好ましくは約30°〜約60°)であると有用な場合がある)。光抽出構造体は、底面の中心と上部の中心とを結ぶ主軸線を有する場合がある。望ましい輝度や視界に応じて、約80°以下(好ましくは約25°以下)の傾斜角度(主軸線と底面との角度)を実現できる。
本発明の方法は、1回の書き込みプロセスで、複数の構造設計を有する、模様付き又はランダムで不均質な光抽出構造体アレイのマスター型を製造するのに使用可能である。λ/2(好ましくはλ/4、より好ましくはλ/10、最も好ましくはλ/20)の平均表面粗さを実現できる(ここで、λ(ラムダ)は、構造体が設計される光の波長、以下「操作波長」である)。
アレイのフィルファクタは、輝度及び均一性を制御するために変化させてもよい。構造の実装配置又は分布は、規則的(例えば、正方形又は六角形)でも不規則的であってもよい。アレイを構成する構造の形状因子は、アレイ全体に渡って異なっていてもよい。例えば、高さは、(均一な光抽出を実現するように)特定の構造で光源からの距離に応じて異なっていてもよい。継続的に均一な光出力を維持するため(更に、輝点を最小限に抑えるか無くすため)、形状因子及び/又は面密度が不規則的に変化するアレイを調製してもよい。面密度及び少なくとも1つの形状因子は共にアレイ全体に渡って変化することが好ましい(より好ましくは、両者が変化し、少なくとも一方が不規則的に変化する)。本明細書で使用するとき、「規則的な変化」とは、アレイ全体に渡って単位距離ごとに定義された(例えば、数学的に既定された)量で(例えば、直線的、指数的、又はべき級数に従って)変化することを意味する。
本発明の方法は、主軸線が平行でない少なくとも2つの光抽出構造体を備えたアレイ(以降「傾斜構造」アレイと呼ぶ」)の製造にも使用可能である。このようなアレイは、アレイ全体に渡って構造間の傾斜角度が独立して変化してもよい。
従って、好ましい光抽出構造体アレイは、不均一な分布を有する複数個の光抽出構造体を備え、光抽出構造体がそれぞれ主軸線及び少なくとも1つの形状因子を有し、複数個の光抽出構造体に渡って面密度、少なくとも1つの形状因子、及び主軸線に変化を示す。(より好ましくは、少なくとも1つの光抽出構造体の幾何学的形状が切頭錐体、切頭非球面体、及びこれらの組み合わせから選択され、及び/又は複数個によって示される変化が面密度、形状因子、及び主軸線のうちの少なくとも1つに対して複数個に渡って不規則的である。)このようなアレイは、例えば、複数個の光抽出構造体に渡る主軸線の変化に従って抽出光を多方向に誘導するのに有効である。
別の好ましい光抽出構造体アレイは、不均一な分布を有する複数個の光抽出構造体を備え、光抽出構造体がそれぞれ幾何学的形状を有し、少なくとも1つの光抽出構造体の幾何学的形状が切頭非球面体である。(より好ましくは、アレイ内の各光抽出構造体の幾何学的形状が、非球面体、切頭非球面体、及びこれらの組み合わせから選択される。)このようなアレイは、例えば、(アレイの比較的光源に近い領域で単に光抽出構造体の密度を減らすことだけを伴うやり方により生じる可能性がある)離散的な輝点や輝線を出現させることなく、均一な抽出光出力を実現するのに有効である。出力の均一性は、例えば、光抽出構造体を比較的高密度(例えば、間隔が約200マイクロメートル未満、好ましくは約150マイクロメートル未満)に保つことに加えて、アレイの比較的光源に近い領域で切頭により光抽出構造体の効率を低下させることで、このような輝点を生じることなく実現することができる。
マスター型からの複製ツールの調製
金型挿入体などの複製ツールは、上記のように調製した光抽出構造体アレイをマスター型として使用することにより調製可能である。つまり、別の材料をマスター型に配置して、アレイの逆の像を有する金型挿入体を調製することができる。その後、引き続き次のアレイの調製に使用可能な金型挿入体を外し、マスター型を取り出すことができる。金型挿入体は、アレイの逆の像の形状の型空間を有するであろう。金属製の複製ツールは、ニッケルなどの金属をマスター型に電気メッキ又は電鋳した後、マスター型を取り外すことにより、マスター型から製造可能である。シリコーン製の複製ツールは、マスター型にシリコーン樹脂を硬化させた後、マスター型を取り外すことにより製造可能である。
導光体及び光学デバイス
本発明の光抽出構造体アレイを備えた導光体は、ポリカーボネート、ポリアクリレート(ポリメチルメタクリレートなど)、ポリスチレン、及びガラスなどの光学的に好適な広範な種々の材料から製造可能であり、好ましい材料はポリアクリレート及びポリカーボネートなどの高屈折率のものである。導光体は、好ましくは、上記の複製ツールに注入形成可能な樹脂を金型形成、型押し、硬化、ないしは別の方法で成型することにより製造される。最も好ましくは、注入形成及び硬化技術を使用する。導光体を金型形成、型押し、又は硬化する方法は、当業者には周知であろう。望ましい場合には、導光体の1以上の面の少なくとも一部(例えば、光抽出構造体の内面又は凹面)に既知の方法でコーティング(例えば、薄い金属の反射コーティング)を適用してもよい。個々の導光体の設計は、望ましい場合には、ブリオートリサーチオーガニゼーション社(Breault Research Organization, Inc.)の「ASAP」、オプティカルリサーチアソシエイツ社(Optical Research Associates, Inc.)の「コードV(Code V)」及び「ライトツールズ(Light Tools)」、i−サイトミッションテクノロジー社(i-Cyt Mission Technology, Inc.)のオプティカルソフトウェアディビジョン(Optica Software Division)の「ライカ(Rayica)」、ラムダリサーチ社(Lambda Research, Inc.)の「トレースプロ(Trace Pro)」、及びゼマックスディベロップメント社(Zemax Development Corporation)の「ゼマックス(ZEMAX)」などの好適なレイトレーシングモデリングソフトウェアを使用することで実際に製造する必要なく評価することができる。
本発明の導光体は、背面照明ディスプレイ(例えば、光源、光ゲートデバイス(液晶ディスプレイ(LCD)など)、及び導光体を有するもの)及びキーパッド(例えば、光源、少なくとも一部が光を透過する感圧性スイッチの配列、及び導光体を有するもの)に特に有用な場合がある。導光体は、小型バッテリーから電力供給される発光ダイオード(LED)で照明される超小型又は小型のディスプレイ又はキーパッドデバイス用の、点から面(point to area)又は線から面(line to area)までの背面導光体として有用である。好適なディスプレイデバイスには、例えば、携帯電話、ポケットベル(登録商標)、携帯情報端末、時計、腕時計、電卓、ラップトップコンピュータ、車両向けディスプレイ用のカラー又はモノクロLCDデバイスが挙げられる。その他のディスプレイデバイスには、ラップトップコンピュータディスプレイ又はデスクトップフラットパネルディスプレイなどのフラットパネルディスプレイが挙げられる。好適な背面照明キーパッドデバイスには、例えば、携帯電話、ポケットベル(登録商標)、携帯情報端末、電卓、車両向けディスプレイ用のキーパッドが挙げられる。
LEDに加えて、ディスプレイ及びキーパッド用の他の好適な光源には、蛍光ランプ(例えば、冷陰極蛍光ランプ)、白熱灯、エレクトロルミネッセントライトなどが挙げられる。光源は、導光体の光遷移領域に機械加工、成型、ないしは別の方法で形成されたスロット、キャビティ、又は開口部に任意の好適な方法で機械的に固定可能である。しかしながら、好ましくは、光源と周辺の光遷移領域との間に空気間隙又は空気境界面を無くすため、光源は光遷移領域に埋設、埋め込み、又は固着され、それによって光の損失が減少し、導光体から放出される光出力が向上する。このような光源の実装は、例えば、十分な量の好適な埋設、埋め込み、又は固着材料を用いて光源を光遷移領域のスロット、キャビティ、又は開口部に固着することで達成可能である。スロット、キャビティ、又は開口部は、光遷移領域の上部、下部、側面、又は背面に存在してもよい。固着は、例えば、熱接着、熱かしめ加工、超音波溶接、プラスチック溶接など、追加の材料を組み込まない種々の方法によっても達成可能である。固着の別の方法には、光源周辺での挿入成形及び注型が挙げられる。
本発明の目的及び利点は、以下の実施例によって更に例示されるが、これらの実施例において列挙された特定の材料及びその量は、他の諸条件及び詳細と同様に、本発明を不当に制限するものと解釈すべきではない。別段の指定がない限り、全ての手法は、乾燥窒素環境下で、乾燥し脱酸素された溶媒及び試薬を用いて実施したものである。別段の注記のない限り、溶媒および試薬はすべて、米国ウィスコンシン州ミルウォーキーのアルドリッチケミカル(Aldrich Chemical Co., Milwaukee, WI)から得たものであり、または得ることができるものである。
本明細書で使用するとき、
「SR1012」は、ペンシルベニア州エクストン(Exton)のサートマー社(Sartomer Co., Inc.)から得られたジアリールヨードニウムヘキサフルオロアンチモン酸塩を指し、
「ストリッパブルSU−8(Strippable SU-8)」は、マサチューセッツ州ニュートン(Newton)のマイクロケム社(MicroChem Corp.)から得られたSU−8 XP KMPRエポキシ製ネガフォトレジストを指し、
「SU−8」は、マサチューセッツ州ニュートン(Newton)のマイクロケム社(MicroChem Corp.)から得られたSU−8 2150エポキシ製ネガフォトレジストを指す。
(実施例1)
光抽出構造体アレイの製造
円形のシリコンウェハ(直径10.2cm(4インチ)、フロリダ州ウエストパームビーチ(West Palm Beach)のウェハワールド社(Wafer World, Inc.)から入手)を、約10分間、濃硫酸と30重量%水性過酸化水素の3:1容量/容量(v/v)混合物に漬けることにより洗浄した。ウェハを次に脱イオン水、続いてイソプロパノールですすぎ、その後、空気流下で乾燥した。次に、ウェハをXPオムニコート(XP OmniCoat)プライマー(マサチューセッツ州ニュートンのマイクロケム社(MicroChem Corp.))で5秒間500回転/分(RPM)、続いて25秒間2700RPMでスピンコートした。その後、ウェハを200℃のホットプレート上に1分間置いて乾燥した。
光増感剤染料であるN,N,N−トリス(7−(2−ベンゾチアゾリル)−9,9−ジエチル−2−フルオレニル)アミン(米国特許第6,300,502号(カンナン(Kannan)ら)の実施例20に合成方法と共に記載されている)とSR1012のシクロペンタノン溶液(ニューハンプシャー州ウィンダム(Windham)のランカスターシンセシス(Lancaster Synthesis)から入手可能)の濃厚溶液を調製した。溶液をシリンジで0.2マイクロメートル(μm)のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルターカートリッジに通し、ストリッパブルSU−8(Strippable SU-8)に加え、0.5%光増感剤染料及び1.0%SR−1012の溶液(固体の総重量に基づく)を生成した。次に、得られた溶液を1.0μmのガラス繊維フィルター、続いて0.7μmのガラス繊維フィルターに通して濾過した。
濾過した溶液を、プライマー処理したシリコンウェハ上に緑色のガスケットテープでマスクした5cm×5cm(内寸)の領域へ流し込んだ。ウェハを週末中、室温で乾燥させた後、強制空気オーブンに入れ、65℃で30分間、続いて95℃で90分間、更に65℃で30分間加熱し、ほぼ溶媒を含まない(以降、「乾燥」)コーティング厚が約300μmのコーティングシリコンウェハを得た。
ウェハの裏側をイソプロピルアルコールで洗い、くずを除去した。次に、ウェハを多孔質炭素真空チャック(平坦度が1μm超過)に実装した。その後、二光子製造システムを作動し、垂直位置に固定した光信号を生成した(製造システムでは、垂直方向に信号を移動するためのz制御は作動させなかった)。光信号の焦点をウェハの表面上に定めると共焦点応答を引き起こす唯一の状態が生じるように共焦点顕微鏡システムを組み合わせて、ウェハ表面から反射を作り出すような検出機構として信号を使用した。感光材料のコーティングとウェハとの境界面に対して垂直方向にシステムを一直線に配置した。
乾燥したコーティングの二光子重合を、800nmの波長、80fsの公称パルス幅、80MHzのパルス繰返し周波数、及び約1Wの平均電力で動作するダイオード励起チタンサファイアレーザー(カリフォルニア州マウンテンビュー(Mountain View)のスペクトラ・フィジックス社(Spectra-Physics))を使用して、以下の方式で実施した。コーティングされたウェハをコンピュータ制御三軸ステージ(ペンシルベニア州ピッツバーグ(Pittsburgh)のエアロテク社(Aerotech, Inc.)から入手)上に定置した。レーザービームを中性濃度フィルターで弱め、x、y、及びz軸制御用の望遠鏡を有するガルボスキャナー(ニューハンプシャー州ウィンダム(Windham)のナットフィールドテクノロジー社(Nutfield Technology, Inc.)から入手可能)と、乾燥コーティングの表面に直接適用したレンズ(ニコンCFIプランアクロマート50X(Nikon CFI Plan Achromat 50X)オイル対物レンズ(oil objective)N.A.0.90、対物距離0.400mm、焦点距離4.0mm)とを使用して、乾燥コーティング内に焦点を定めた。平均電力を、対物レンズの出力部で、波長校正したフォトダイオード(マサチューセッツ州ウィルミントン(Wilmington)のオフルオプトロニクス社(Ophir Optronics, Ltd.)社から入手した)を使用して測定し、平均電力が約9mWであることが判明した。
次に、CADプログラム(カリフォルニア州サンラファエロ(San Raphael)のオートデスク(Autodesk)から入手可能なオートデスクインベンター(AUTODESK INVENTOR))を使用して作製し、切頭錐体構造を記述したソフトウェアファイルを、二光子製造システムのレーザー走査ソフトウェアにロードした。走査ソフトウェアにより、表面粗さが小さい構造体の最終重合アレイを得るのに十分小さい垂直分割で、所定の構造が平面にスライスされた。スライス厚さはソフトウェアで500nmに選択し、ほぼ完全に硬化した構造を提供するよう、各平面スライスを2ミクロンの陰影間隔で網掛けした。次に、システムを作動してレーザービームを走査し、感光材料のコーティングを重合させて、切頭錐体構造を画定した。システムを自動操作し、光抽出の均一性及び効率が最適になるように構造体の位置を最適化したソフトウェアモデルを使用して、光抽出構造体を(切頭錐体の形状で)所定の位置(携帯電話のキーパッドの感圧スイッチ(ボタン)の位置に対応)に定置した。得られたアレイの分布に加えて、ボタン位置に対応する構造体の各集団の分布も、不均一であった。二光子レーザースキャナーで撮像した後、感光材料を95℃で硬化した。次に、得られた硬化アレイをマイクロケムSU−8(MicroChem SU-8)現像剤を使用して約90分間現像した。図2に、得られた現像アレイの一部の側面の操作電子顕微鏡写真を示す。
(実施例2)
光抽出構造体アレイの製造
円形のシリコンウェハ(直径10.2cm(4インチ)、フロリダ州ウエストパームビーチ(West Palm Beach)のウェハワールド社(Wafer World, Inc.)から入手)を、XPオムニコート(XP OmniCoat)プライマー(マサチューセッツ州ニュートンのマイクロケム社)を5秒間500回転/分(RPM)で、続いて25秒間2700RPMでスピンコートした。その後、ウェハを200℃のホットプレート上に1分間置いて乾燥した。
光増感剤染料であるN,N,N−トリス(7−(2−ベンゾチアゾリル)−9,9−ジエチル−2−フルオレニル)アミン(米国特許第6,300,502号(カンナン(Kannan)ら)の実施例20に合成方法と共に記載されている)とSR1012のシクロペンタノン溶液(ニューハンプシャー州ウィンダム(Windham)のランカスターシンセシス(Lancaster Synthesis)から入手可能)の濃厚溶液を調製した。溶液をシリンジで0.2マイクロメートル(μm)のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルターカートリッジに通し、SU−8に加え、0.5%光増感剤染料及び1.0%SR−1012の溶液(固体の総重量に基づく)を作製した。次に、得られた溶液を1.0μmのガラス繊維フィルター、続いて0.7μmのガラス繊維フィルターに通して濾過した。濾過した溶液をスピンコーティングでシリコンウェハにコーティングした後、80℃で10分間溶媒を除去し、厚さ約30μmの乾燥コーティングを得た。
ウェハの裏側をイソプロピルアルコールで洗い、くずを除去した。次に、ウェハを多孔質炭素真空チャック(平坦度が1μm未満)に実装した。その後、二光子製造システムを作動し、垂直位置に固定した光信号を生成した(製造システムでは、垂直方向に信号を移動するためのz制御は作動させなかった)。光信号の焦点をウェハの表面上に定めると共焦点応答を引き起こす唯一の状態が生じるように共焦点顕微鏡システムを組み合わせて、ウェハ表面から反射を作り出すような検出機構として信号を使用した。感光材料のコーティングとウェハとの境界面に対して垂直方向にシステムを一直線に配置した。
乾燥したコーティングの二光子重合を、800nmの波長、80fsの公称パルス幅、80MHzのパルス繰返し周波数、及び約1Wの平均電力で動作するダイオード励起チタンサファイアレーザー(カリフォルニア州マウンテンビュー(Mountain View)のスペクトラ・フィジックス社(Spectra-Physics))を使用して、以下の方式で実施した。コーティングされたウェハをコンピュータ制御三軸ステージ(ペンシルベニア州ピッツバーグ(Pittsburgh)のエアロテク社(Aerotech, Inc.)から入手)上に定置した。レーザービームを中性濃度フィルターで弱め、x、y、及びz軸制御用の望遠鏡を有するガルボスキャナー(ニューハンプシャー州ウィンダム(Windham)のナットフィールドテクノロジー社(Nutfield Technology, Inc.)から入手可能)と、乾燥コーティングの表面に直接適用したレンズ(ニコンCFIプランアクロマート50X(Nikon CFI Plan Achromat 50X)オイル対物レンズ(oil objective)N.A.0.90、対物距離0.400mm、焦点距離4.0mm)とを使用して、乾燥コーティング内に焦点を定めた。平均電力を、対物レンズの出力部で、波長校正したフォトダイオード(マサチューセッツ州ウィルミントン(Wilmington)のオフルオプトロニクス社(Ophir Optronics, Ltd.)社から入手した)を使用して測定し、平均電力が約16mWであることが判明した。
次に、CADプログラム(カリフォルニア州サンラファエロ(San Raphael)のオートデスク(Autodesk)から入手可能なオートデスクインベンター(AUTODESK INVENTOR))を使用して作製し、発光ダイオード(LED)光源に比較的近い領域の切頭非球面体構造及びLED光源から最も遠い領域の非切頭非球面体構造を記述したソフトウェアファイルを、二光子製造システムのレーザー走査ソフトウェアにロードした。走査ソフトウェアにより、表面粗さが小さい構造体の最終重合アレイを得るのに十分小さい垂直分割で、所定の構造が平面にスライスされた。スライス厚さはソフトウェアで500nmに選択し、ほぼ完全な硬化構造体を提供するよう、各平面スライスを2ミクロンの陰影間隔で網掛けした。次に、システムを作動してレーザービームを走査し、感光材料のコーティングを重合させて、構造体を画定した。システムを自動操作し、光抽出の均一性及び効率が最適になるように構造体の位置を最適化したソフトウェアモデルを使用して、光抽出構造体を(切頭及び非切頭非球面体の形状で)所定の位置(後述)に定置した。得られたアレイの分布は不均一であった。
光抽出構造体アレイは、非球面体(底面半径が40ミクロン、高さが8ミクロンの放物面体)及び切頭非球面体から構成された。光抽出構造体には3つの領域があり、各領域は異なる面密度(LEDからの距離が増すと面密度が増加)及び形状因子(高さ及び/又は幾何学的形状)を有した。各領域は10ミリメートル(mm)四方であった。全体座標系上で、(X,Y)座標空間を使用し、領域1の右下角を(15mm,−5mm)に、領域2の右下角を(5mm,−5mm)に、領域3の右下角を(−5mm,−5mm)に配置した。光源LEDは、X方向の逆向きに発光するように(20mm,0mm)に配置した。
領域1の光抽出構造体(切頭非球面体)の高さは5ミクロンであり、領域2の光抽出構造体の高さは6ミクロンであった。領域3の光抽出構造体(非球面体)は非切頭であった。
得られたアレイの各領域の面密度は、Y方向の光抽出構造体間では均一な間隔(s)で、X方向の光抽出構造体(i+1)及び(i)では不均一な間隔(sxi)で表されることができる。この不均一な間隔は、sx(i)=s((i+1)−i)の式に従って変化し、式中、iは光抽出構造体の番号である(番号は領域の一番右側に位置する構造を0とし、以降、その左側の構造体毎に1つずつ増加する)。領域1はs=555マイクロメートル、p=0.6542、領域2はs=263マイクロメートル、p=0.7948、領域3はs=149マイクロメートル、p=0.8948であった。
二光子レーザースキャナーで撮像した後、感光材料を95℃で15分間硬化した。次に、得られた硬化アレイをマイクロケム(MicroChem)社のSU−8現像剤を使用して約10分間現像し、乾燥して、原型ツールを形成した。
シリコーン(GE RTV615 2液シリコーン(GE RTV 615 2-part silicone)、ニューヨーク州ウォーターフォードのゼネラルエレクトリック社(General Electric Co))を、最終製品の導光体の外形に相当する厚さ約3mmのダムを形成するように光抽出構造体アレイの周囲にサンドブラスト用テープを配置したマスターツールに注型して形成した。シリコーンを真空オーブンで15分間脱気し、シリコーンの上部に剥離ライナーを載せ、シリコーンを80℃で1.5時間硬化した。シリコーンをマスターツールから取り外し、ドーターツールを形成した。サンドブラスト用テープを使用してシリコーンドーターツールの周囲に高さ約3mmのダムを形成し、紫外線(UV)硬化可能なアクリレート(フォトマー6210(Photomer 6210)、オハイオ州シンシナティのコグニス(Cognis))をシリコーンドーターツールに注入し、50℃の真空オーブンで15分間脱気した。脱気した構造物を剥離ライナーで覆い、UVライト(Hバルブ(H bulb)、メリーランド州ガイザースバーグ(Gaithersburg)のフュージョンUVシステムズ(Fusion UV Systems))下に12cm/秒(24フィート/分)で5回通過させて硬化した。得られた硬化アクリレートをシリコーンから分離し、ミクロ複製ツールを形成した。サンドブラスト用テープ(約2mm)を使用してミクロ複製ツールの周囲にダムを形成し、ツールにシリコーン(GE RTV615 2液シリコーン(GE RTV 615 2-part silicone))を充填した。シリコーンを真空オーブンで15分間脱気し、フィルムで覆い、80℃で1.5時間硬化した。得られた硬化シリコーンをツールから取り外し、片側に光抽出構造体(非球面体及び切頭非球面体)のパターンを有するシリコーン導光体(屈折率1.41)を形成した。導光体の端部は、上記の座標系において、X=−20mm、X=20mm、Y=−30mm、及びY=30mmであった。非球面体の光抽出構造体の底面はそれぞれ導光体の底面上に位置し、非球面体はその高さの分だけ導光体内に伸長していた。切頭非球面体の光抽出構造体は、導光体内への伸長部分が非球面体の底面に平行な平面で切られた非球面体から構成された。
シリコーン導光体を(光抽出構造体から下方に屈折した光を導光体内に反射させて戻すように)白紙上に置き、電源に接続した1個の白色LEDに連結した。導光体は上面から観察した場合、領域全体に渡って(目視で)本質的に輝点がなく、比較的均一な光の強度を示した。
本明細書で引用した特許、特許文献、および公報に含有される参照された記述内容は、その全体が、それぞれ個別に組み込まれているかのように、参照として組み込まれる。本発明に対する様々な予見できない修正及び変更は、本発明の範囲及び精神から逸脱することなく当業者に明らかとなるであろう。本発明は本明細書に記載の例示の実施形態及び実施例に必要以上に限定されるものではなく、このような実施例及び実施形態は単なる例として提示されていると理解されるべきである。
本発明のこれら及びその他の特徴、態様及び利益は、次の説明、添付した請求項及び添付図面でよりよく理解されるであろう。
この実施形態は、本発明の方法で製造されたものであり、別記の実施例1に記載されている。

Claims (38)

  1. (a)光反応性組成物を提供する工程であって、該光反応性組成物が、
    (1)酸又はラジカル開始化学反応を受けることが可能な少なくとも1つの反応性種と、
    (2)少なくとも1つの多光子光開始剤系と、を含む、工程と、
    (b)前記組成物の少なくとも一部を少なくとも2つの光子を同時に吸収させるのに十分な光に撮像的に露光する工程であって、これにより少なくとも1つの酸又はラジカル開始化学反応を誘発し、該組成物が、前記光に露光され、該撮像的露光が、光抽出構造体のアレイの少なくとも表面を画定するのに有効なパターンで行われ、該光抽出構造体のそれぞれが、少なくとも1つの形状因子を有し、該光抽出構造体のアレイが、均一又は不均一な分布を有する工程と、を含む、方法。
  2. 前記方法が、前記組成物の生じた露光部分又は生じた非露光部分を除くことにより該組成物を現像する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記方法が、前記組成物の少なくとも一部を撮像的に露光した後、該組成物の少なくとも一部を任意の残りの未反応光反応性組成物の少なくとも一部が反応するのに十分な光に非撮像的に露光する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
  4. 前記形状因子が、高さ、長さ、幅、及び幾何学的形状から選択される、請求項1に記載の方法。
  5. 前記幾何学的形状が、錐体、非球面体、切頭非球面体、切頭錐体、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項4に記載の方法。
  6. 前記幾何学的形状が、底面及び側壁を有し、該側壁が該底面において90°未満の垂直正接角度を示す、請求項4に記載の方法。
  7. 少なくとも1つの前記光抽出構造体の前記形状因子の少なくとも1つが、別の該光抽出構造体の少なくとも1つの対応する形状因子と異なる、請求項1に記載の方法。
  8. 前記分布が不均一である、請求項1に記載の方法。
  9. 前記分布が不均一であり、前記形状因子の少なくとも1つが前記アレイ全体に渡って変化する、請求項1に記載の方法。
  10. 前記形状因子が高さである、請求項9に記載の方法。
  11. 前記形状因子が前記アレイ全体に渡って規則的に変化する、請求項9に記載の方法。
  12. 前記光抽出構造のアレイの面密度が該アレイ全体に渡って変化し、及び/又は少なくとも1つの形状因子が該アレイ全体に渡って変化する、請求項1に記載の方法。
  13. 前記光抽出構造体の少なくとも過半数が、300ミクロン未満の高さ、500ミクロン未満の長さ又は幅、及び操作波長の半分未満の平均表面粗さを有する、請求項1に記載の方法。
  14. 前記アレイが5〜75%の範囲のフィルファクタを有する、請求項1に記載の方法。
  15. 前記光抽出構造体の少なくとも2つが平行でない主軸線を有する、請求項1に記載の方法。
  16. 前記反応性種が、硬化性種である、請求項1に記載の方法。
  17. 前記反応性種が、非硬化性種である、請求項1に記載の方法。
  18. 前記多光子光開始剤系が、光化学的有効量の
    (a)同時に少なくとも2つの光子を吸収できる少なくとも1つの多光子光増感剤と、
    (b)所望により前記光増感剤の電子励起状態に電子を供与できる該多光子光増感剤と異なる少なくとも1つの電子供与体と、
    (c)該光増感剤の電子励起状態から電子を受容することにより光増感され、少なくとも1つのフリーラジカル及び/又は酸を形成できる少なくとも1つの光開始剤と、を含む、請求項1に記載の方法。
  19. 前記方法が、前記光反応性組成物を基材に供給し、該組成物と該基材の間に境界面を位置決めする工程を含む、請求項1に記載の方法。
  20. 前記撮像的露光が、所望の三次元光抽出構造体の複数個の平面スライスの少なくとも周辺を走査し、同時にスライス厚さ未満の光抽出構造体の表面粗さを実現するように該スライス厚さを変化させることにより行われる、請求項1に記載の方法。
  21. 前記方法が、一光子法を使用して行われる非撮像的露光を含む、請求項1に記載の方法。
  22. 前記アレイが、マスター型を含み、該マスター型が、複製用のツールを製造するために使用される、請求項1に記載の方法。
  23. 前記ツールが、導光体を製造するために使用される、請求項22に記載の方法。
  24. (a)光反応性組成物を提供する工程であって、該光反応性組成物が、
    (1)酸又はラジカル開始化学反応を受けることが可能な少なくとも1つの硬化性種と、
    (2)光化学的有効量の
    (i)フルオレセインより大きい二光子吸収断面を有する多光子光増感剤、
    (ii)所望によりアルキルアリールホウ酸塩類、三級芳香族アルキルアミン類及びこれらの混合物から選択される少なくとも1つの電子供与体、及び
    (iii)ヨードニウム塩類、スルホニウム塩類及びこれらの混合物から選択される少なくとも1つの光開始剤、とを含む少なくとも1つの多光子光開始剤系と、を含む、工程と、
    (b)前記組成物の少なくとも一部を少なくとも2つの光子を同時に吸収させるのに十分な光に撮像的に露光する工程であって、これにより該組成物が前記光に露光された箇所で、少なくとも1つの酸又はラジカル開始化学反応が誘発され、該撮像的露光が、光抽出構造体のアレイの少なくとも表面を画定するのに有効なパターンで行われ、該光抽出構造体のそれぞれが、高さ、長さ、幅、及び幾何学的形状から選択される少なくとも1つの形状因子を有し、該光抽出構造体のアレイが不均一な分布を有し、該光抽出構造体のアレイが、前記アレイ全体に渡って面密度及び/又は少なくとも1つの該形状因子に変化を示す、工程と、
    (c)前記組成物の生じた非露光部分の少なくとも一部を除くことにより、該組成物を現像する工程と、を含む、方法。
  25. 前記組成物の少なくとも一部を撮像的に露光し、該組成物を現像した後、前記方法が、該組成物の少なくとも一部を、前記光反応性組成物の任意の残りの非露光部分の少なくとも一部の反応を行うのに十分な光に非撮像的に露光する工程を含む、請求項24に記載の方法。
  26. 前記方法が、前記光反応性組成物を基材に供給する工程、及び該組成物と該基材との間に境界面を位置決めする工程を更に含み、前記撮像的露光が、所望の三次元光抽出構造体の複数個の平面スライスの少なくとも周辺を走査し、同時にスライス厚さ未満の光抽出構造体の表面粗さを実現するように該スライス厚さを変化させることにより行われる、請求項24に記載の方法。
  27. 前記形状因子の少なくとも1つが前記アレイ全体に渡って変化する、請求項24に記載の方法。
  28. 前記形状因子の少なくとも1つが前記アレイ全体に渡って規則的に変化する、請求項24に記載の方法。
  29. 前記面密度と少なくとも1つの前記形状因子との両方が前記アレイ全体に渡って変化する、請求項24に記載の方法。
  30. 前記幾何学的形状が、錐体、非球面体、切頭非球面体、切頭錐体、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項24に記載の方法。
  31. 不均一な分布を有する複数個の光抽出構造体を備えた光抽出構造体アレイであって、該光抽出構造体のそれぞれが主軸線及び少なくとも1つの形状因子を有し、該複数個の光抽出構造体が、該複数個全体に渡る、面密度と、少なくとも1つの該形状因子と、該主軸線とにおいて、変化を示す、光抽出構造体アレイ。
  32. 前記変化が、前記面密度と、前記形状因子と、前記主軸線との中の少なくとも1つにおいて、前記複数個の光抽出構造体全体に渡って不規則的である、請求項31に記載の光抽出構造体アレイ。
  33. 前記光抽出構造体の少なくとも1つが、切頭錐体、切頭非球面体、及びこれらの組み合わせから選択される幾何学的形状を有する、請求項31に記載の光抽出構造体アレイ。
  34. 不均一な分布を有する複数個の光抽出構造体を備えた光抽出構造体アレイであって、該光抽出構造体のそれぞれが幾何学的形状を有し、少なくとも1つの該光抽出構造体の該幾何学的形状が切頭非球面体である、光抽出構造体アレイ。
  35. 請求項31に記載の光抽出構造体アレイを備えた、導光体。
  36. 請求項34に記載の光抽出構造体アレイを備えた、導光体。
  37. 請求項35に記載の導光体を備えた、光学デバイス。
  38. 請求項36に記載の導光体を備えた、光学デバイス。
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