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JP2016100997A - 電動モータの制御装置 - Google Patents

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昌之 廣田
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善行 家中
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俊幸 上町
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Abstract

【課題】大きなリラクタンストルクを発生するときにトルクや速度のわずかな変動により、不安定状態に陥る場合が生じるという不具合を改善する。
【解決手段】電動モータを、界磁の磁束方向であるd軸上にあるd軸電機子とd軸と直交するq軸上にあるq軸電機子とを有する等価回路に変換して扱い、上記通電制御手段は、q軸電機子に流れる電流であるq軸電流の最大値より低い制限値を設定し、q軸電流がこの制限値を越えないように制御する。
【選択図】図4

Description

本発明は、埋込磁石型同期モータの駆動装置に関するものであり、弱め磁束制御により動作範囲を拡大する制御技術に関する。
埋込磁石型同期モータにおいて、回転子の磁極方向をd軸とし、それに直交する方向をq軸とした直交座標上で表したベクトル図を図1に示す。ここで、ψaは永久磁石による磁束である。また、電機子電流ベクトルiをdq軸成分に分解し、d軸成分を励磁電流idとし,q軸成分をトルク分電流iqとする。
運転時にid,iqが流れると、巻線インダクタンスのdq軸成分Ld,Lqにより磁束LdidおよびLqiqが発生し、これらを合成した磁束ψ0がモータ内部の磁束となる。回転子が角速度ωで回転すると、各磁束に対して誘起電圧ωψa,ωLdidおよびωLqiqが発生する。これらを合成した電圧voがモータ内部に発生する誘起電圧となり、これに巻線抵抗での電圧降下Raiを加えたものが、モータに加えられている電圧vとなる。
埋込磁石型同期モータが発生するトルクTは、電磁力に基づくマグネットトルクψaiqと、磁界が鉄心を引き寄せることで発生するリラクタンストルク(Ld−Lq)idiqからなり、数式1で表される。ここで、pは極対数である。
iqを流すことでマグネットトルクが発生し、idを負の方向に流すことでリラクタンストルクが発生することが分かる。
Figure 2016100997
回転速度ωが大きくなると起電カvoが大きくなるが、モータを駆動するインバータの出力電圧vには限界があるため、誘起電圧をインバータ出力限界よりも小さい値vomに制限する必要がある。そこで、図2のように励磁電流idを負の方向に流し、誘起電圧voを制限値vomまで小さくする弱め磁束制御が用いられる。ここで、誘起電圧voの大きさが数式2で表されることから、vo=vomとしてidについて解くと、弱め磁束制御のための電流idが数式3および数式4として求められる(例えば、特許文献1参照)。
Figure 2016100997
Figure 2016100997
Figure 2016100997
特開2008−43030号公報(段落0098〜0100)
図3は、各回転速度において弱め磁束制御により誘起電圧をvomに制限したときの電流ベクトル軌跡(以下、電圧制限楕円という)を示している。負荷が大きくなるにつれ、より大きなリラクタンストルクを発生するよう、idを負の方向に大きくする。したがって、電流ベクトルは電圧制限楕円上を図において左側に推移することになる。電圧制限楕円の中心座標は(ーψa/Ld,0)であり、id=−ψa/Ldを境界として、図において右側の領域では数式3を用いて励磁電流idを演算し、左側の領域では数式4を用いて励磁電流idを演算する。
しかし、運転条件によっては境界付近で動作することがあり、このときトルクや速度のわずかな変動により数式3の演算と数式4の演算とを頻繁に切り替えることから、不安定状態に陥る場合が生じるという不具合がある。
そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、上記の不具合が生じない電動モータの制御装置を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために本発明による電動モータの制御装置は、永久磁石による界磁を複数個有するロータを、回転軸の周囲に同心円状に配置した埋込磁石型同期モータの作動を制御する電動モータの制御装置であって、直流電源から供給される直流電圧を多相交流電圧に変換して電動モータの電機子に印加するインバータと、所定のトルク指令に応じて、インバータを介して電動モータの各相の電機子に流れる電流のベクトル和である相電流を制御する通電制御手段とを備えたものにおいて、上記電動モータを、界磁の磁束方向であるd軸上にあるd軸電機子とd軸と直交するq軸上にあるq軸電機子とを有する等価回路に変換して扱い、上記通電制御手段は、q軸電機子に流れる電流であるq軸電流の最大値より低い制限値を設定し、q軸電流がこの制限値を越えないように制御することを特徴とする。
また、上記q軸電流を制限値に制限したことにより減少するトルクの減少分を、d軸電機子に流れる電流であるd軸電流を増加させることによるリラクタンストルクの増加分で補うことを特徴とする。
さらに、上記q軸電流を制限値に制限した場合に、制限したことによるq軸電流の減少分に応じて電動モータの回転速度偏差を補正し、回転速度が不安定になるワインドアップ現象の発生を抑制することを特徴とする。
負荷の増加にともない動作点が電圧制限楕円上を推移し、数式3が適用される領域と数式4が適用される領域との境界点に達したとき、トルク分電流iqはvom/(ωLq)で最大となる。この最大値より大きなトルク分電流指令iq_refが与えられた場合、数式3、数式4の平方根の中が負となり、励磁電流idを演算することができなくなる。
そこで、iq_refを最大値vom/(ωLq)より小さな値(iq_lim)で制限する。iq_limより大きな電流指令iq_refが与えられると、数式5のように、iqが制限されるため、数式6のΔTだけトルクが不足することとなる。
Figure 2016100997
Figure 2016100997
不足したトルク△Tは、数式7のようにリラクタンストルクで補うものとする。このリラクタンストルクを発生するために必要な励磁電流△idは数式8となり、これを数式3のidに加えることで、重負荷時においても弱め磁束制御を達成することができる。
Figure 2016100997
Figure 2016100997
Figure 2016100997
図4は、数式3及び数式4による電圧制限楕円と、数式9により弱め磁束制御を行ったときの電流ベクトル軌跡を示している。q軸電流が制限されるまで、動作点は数式3の電圧制限楕円上を推移する。q軸電流がiq_limに制限されると、動作点は電圧制限楕円より内側を推移することになる。ここで、不足したトルクを補うためd軸電流をΔidだけ負の方向に増やすことから、−Ψa/Ldの境界より左側の領域であっても数式3を用いてidを演算することができる。これにより、数式3による演算と数式4による演算とを切りかえることで発生する不安定現象を防ぐことができる。
速度制御系を持つシステムでは、一般に、q軸電流指令iq_refは速度のPI制御器で作られる。PI制御器の出力を制限した場合、ワインドアップ現象により速度や電流が振動的な振る舞いをすることがある。そこで、iq_refが制限されたときに制限された量ΔiqをPI制御器の入力にフィードバックし、数式10のように速度偏差Δω(=ωref−ω)を修正することで振動を抑制する。ここで、Kpは速度PI制御器の比例ゲインである。図5に、iq_refの制限を考慮したPI制御器の構成を示す。
Figure 2016100997
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、埋込磁石型同期モータの弱め磁束制御が必要となる高速回転領域において、トルク電流iqを制限し、不足したトルクをリラクタンストルクで補うよう励磁電流idを決める。これにより、励磁電流を計算する2つの数式である数式3と数式4とを切り替えることなく、一つの数式を用いて連続的に励磁電流指令を決定することができ、計算式の切り替えに起因する振動や発振といった現象を抑えることができる。
埋込磁石型同期モータ運転時における電圧、電流および磁束のベクトル図 埋込磁石型同期モータで弱め磁束制御を行ったときの電圧、電流および磁束のベクトル図 弱め磁束制御時の電流ベクトル軌跡(電圧制限楕円)と励磁電流演算式との関係を表す図 本発明による弱め磁束制御時の電流ベクトル軌跡(電圧制限楕円)を表す図 トルク電流制限による影響を抑制する手法のブロック図 埋込磁石型同期モータの駆動システムの一例を示すブロック図 速度推定に用いる拡張誘起電圧オブザーバのブロック図
以下、本発明を埋込磁石型同期モータのセンサレス駆動システムに適用した一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図6は、埋込磁石型同期モータのセンサレス駆動システムを示している。このシステムは、速度制御部1、励磁電流指令演算部2、電流制御部3、非干渉制御部4、座標変換部5、速度推定部6、PWM変調部7、および三相インバータ8から構成される。
検出されたモータ電流iu、iwを、推定した磁極位置(電気角)θに基づくγ−δ回転座標系に座標変換し、iγ、iδを求める。このモータ電流iγ、iδと、モータ電圧の指令値vγ1_ref、vδ1_refが速度推定部6に入力される。
速度推定部6では、モータ電圧指令vγ1_ref、vδ1_refとモータ電流iγ、iδから、拡張誘起電圧eγ、eδを推定する。図7に、拡張誘起電圧を推定するオブザーバの構成を示す。求められた拡張誘起電圧から、磁極位置の推定誤差θeを数式11のように求める。
Figure 2016100997
数式11で演算された推定誤差θeが0となるようPI演算を行い、その出力を推定速度(機械角速度)ωmとする。このωmを積分演算し、推定磁極位置θmを求める。ωmは、速度制御および非干渉制御に用いられる。また、θmは極対数Pによって電気角θに変換され座標変換5に用いられる。
速度制御部1では、速度指令値ω_refと推定速度ωmとが一致するようPI制御を行う。このPI制御器の出力を、トルク電流指令iqとする。弱め磁束制御が必要な領域で、iq_refが制限値iq_limより大きくなったとき、iq_refをiq_limで制限する。このとき、ワインドアップ現象を防ぐため、図5に示すように、制限された量Δiqを求め、速度偏差△ωを修正して積分演算を再計算する。
励磁電流指令演算部2では、励磁電流指令id_refを決定する。回転速度が小さく、弱め磁束制御が必要ない領域では、可能な限り小さな電流で効率よくトルクを発生するよう、図3に示す「最大トルク/電流制御」曲線に従ってid_refを決定する。このときの演算式を数式12に示す。
Figure 2016100997
回転速度が上がり、誘起電圧voが制限値vomより大きくなると、弱め磁束制御が必要になるため、数式3によりid_refを決定する。ここで、iq_refがiq_limで制限されている場合は、不足したトルクをリラクタンストルクで補うための励磁電流△idを数式8から求め、数式9によりid_refを演算する。
電流制御部では、電流指令id_ref,iq_refとモータ電流iγ、iδとが一致するよう、それぞれPI制御し、PI制御器の出力を電圧指令vγ_ref,vδ_refとする。この電圧指令vγ_ref,vδ_refに非干渉制御を施し、電圧指令vγ1_ref,vδ1_refを決定する。ここで、vγ1_ref,vδ1_refは数式13および数式14で求められる。
Figure 2016100997
Figure 2016100997
PWM変調部では、電圧指令vγ1_ref,vδ1_refから空間ベクトル変調により、インバータのスイッチング指令を決定し、インバータを動作させ、埋込磁石型同期モータを駆動する。
なお、本発明は上記した形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えてもかまわない。
1 速度制御部
2 励磁電流指令演算部
3 電流制御部
4 非干渉制御部
5 座標変換部
6 速度推定部
7 PWM変調部
8 三相インバータ

Claims (3)

  1. 永久磁石による界磁を複数個有するロータを、回転軸の周囲に同心円状に配置した埋込磁石型同期モータの作動を制御する電動モータの制御装置であって、直流電源から供給される直流電圧を多相交流電圧に変換して電動モータの電機子に印加するインバータと、所定のトルク指令に応じて、インバータを介して電動モータの各相の電機子に流れる電流のベクトル和である相電流を制御する通電制御手段とを備えたものにおいて、
    上記電動モータを、界磁の磁束方向であるd軸上にあるd軸電機子とd軸と直交するq軸上にあるq軸電機子とを有する等価回路に変換して扱い、上記通電制御手段は、q軸電機子に流れる電流であるq軸電流の最大値より低い制限値を設定し、q軸電流がこの制限値を越えないように制御することを特徴とする電動モータの制御装置。
  2. 上記q軸電流を制限値に制限したことにより減少するトルクの減少分を、d軸電機子に流れる電流であるd軸電流を増加させることによるリラクタンストルクの増加分で補うことを特徴とする請求項1に記載の電動モータの制御装置。
  3. 上記q軸電流を制限値に制限した場合に、制限したことによるq軸電流の減少分に応じて電動モータの回転速度を補正し、回転速度が不安定になるワインドアップ現象の発生を抑制することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電動モータの制御装置。
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