JP2016168564A - 汚泥処理システム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】実施形態の汚泥処理システムは、第1の生体触媒培養槽と、第1の分解槽と、第2の生体触媒培養槽と、第2の分解槽と、消化槽とを持つ。第1の生体触媒培養槽は、第1の生体触媒を培養する。第1の分解槽は、生物汚泥に含まれる粘性物質、前記第1の生体触媒により分解する。第2の生体触媒培養槽は、第2の生体触媒を培養する。第2の分解槽は、生物汚泥中の微生物を前記第2の生体触媒により分解する。消化槽は、前記第2の分解槽において処理された生物汚泥を嫌気性消化処理し、バイオガスに変換する。前記第1の生体触媒は、宿主生物の細胞表面に、生物汚泥に含まれる粘性物質の構成成分を分解する触媒を提示したものである。前記第2の生体触媒は、宿主生物の細胞表面に、生物汚泥中の微生物の構成成分を分解する触媒を提示したものである。
【選択図】図1
Description
図1は、第1の実施形態における、汚泥処理システム1の構成例を示す図である。第1の実施形態では、汚泥処理システムは、「汚泥処理システム1a」という。汚泥処理システム1aは、微生物を含有する生物汚泥を分解処理する設備であれば、特定の設備に限定されない。汚泥処理システム1aは、例えば、下水処理場、食品工場である。第1の実施形態では、汚泥処理システム1aは、一例として下水処理場である。
生物により作り出される触媒としては、酵素等のタンパク質が挙げられ、加水分解酵素、酸化還元酵素、転移酵素、脱離酵素、異性化酵素、合成酵素が好ましく、加水分解酵素がより好ましい。
一例として、宿主細胞として酵母を用いる場合、第1の生体触媒培養槽10aは、槽内環境が20〜30℃、pH4〜7となるように制御される。
炭素源としては、グルコース、フルクトース、シュークロース等の糖類;デンプン又はデンプン加水分解物等の炭水化物が挙げられる。
窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム等の無機酸または有機酸のアンモニウム塩、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーンスティーブリカー、カゼイン加水分解物、大豆粕、大豆粕加水分解物、各種発酵菌体消化物等が挙げられる。
無機塩類としては、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、炭酸カルシウム等が挙げられる。
前記第1の生体触媒により、余剰汚泥Fに含まれる粘性物質の構成成分を低分子化することで、後段の各分解槽における処理、及び消化槽50における生物汚泥の嫌気性消化処理を、高効率に行うことが可能となる。
しかし、上記フロックの粘性物質によるブロッキングで、触媒が微生物へアクセスするのが困難となっている。また、粘性物質の耐薬品性は非常に強い。粘性物質を分解する方法として、物理的な方法(例えば、超音波処理、オゾン処理、加熱処理)が有効とされるが、膨大なエネルギーをかけることになる。
実施形態においては、粘性物質の構成成分を分解可能な触媒によって、粘性物質を分解することで、少ないエネルギー且つマイルドな状態で粘性物質を効率よく分解でき、触媒の微生物へのアクセスが容易となる。
第1の生体触媒は、1種類の触媒のみを含んでいてもよく、複数種類の触媒を含んでいてもよい。第1の生体触媒が複数種類の触媒を含む場合、1種類の触媒を発現した宿主生物を、複数種類含んでいてもよいし、複数種類の触媒を発現した宿主生物を1種類又は複数種類含んでいてもよい。
粘性物質分解槽10b内の処理液のpHは、宿主生物とその細胞表面に提示された生体触媒の種類に応じて適宜設定可能である。
一例として、宿主細胞として酵母を用いる場合、第2の生体触媒培養槽20aは、槽内環境が20〜30℃、pH4〜7となるように制御される。
第2の生体触媒により、粘性物質分解槽10bにおいて処理された生物汚泥に含まれる微生物の細胞壁の構成成分を低分子化することで、後段の各分解槽における処理、及び消化槽50における生物汚泥の嫌気性消化処理を、高効率に行うことが可能となる。
第2の生体触媒は、1種類の触媒のみを含んでいてもよく、複数種類の触媒を含んでいてもよい。第2の生体触媒が複数種類の触媒を含む場合、一種類の触媒を発現した宿主生物を、複数種類含んでいてもよいし、複数種類の触媒を発現した宿主生物を1種類又は複数種類含んでいてもよい。
細胞壁分解槽20b内の処理液のpHは、宿主生物とその表面に提示された生体触媒の種類に応じて適宜設定可能である。
一例として、宿主細胞として酵母を用いる場合、第3の生体触媒培養槽30aは、槽内環境が20〜30℃、pH4〜7となるように制御される。
第3の生体触媒により、細胞壁分解槽20bにおいて処理された生物汚泥に含まれる微生物の細胞膜及び/又は細胞質の構成成分を低分子化することで、後段の消化槽50における生物汚泥の嫌気性消化処理を、高効率に行うことが可能となる。
微生物の細胞質の構成成分を分解し得る分解酵素としては、微生物の細胞質の構成成分を分解可能なものであれば特に制限されない。微生物の細胞質の構成成分を分解し得る分解酵素としては、細胞質に含有される物質であるデンプン、タンパク質、脂質等を加水分解可能な酵素が挙げられる。デンプンに関しては、デンプンを加水分解可能なアミラーゼ酵素群が挙げられる。タンパク質に関しては、プロテアーゼが挙げられ、ペプチド結合を加水分解するプロテアーゼ群が挙げられる。脂質に関しては、脂質分解酵素が挙げられる。脂質分解酵素としては、脂質を加水分解可能なリパーゼ酵素群が挙げられる。
第3の生体触媒は、1種類の触媒のみを含んでいてもよく、複数種類の触媒を含んでいてもよい。第3の生体触媒が複数種類の触媒を含む場合、1種類の触媒を発現した宿主生物を、複数種類含んでいてもよいし、複数種類の触媒を発現した宿主生物を1種類又は複数種類含んでいてもよい。
細胞膜・細胞質分解槽30b内の処理液のpHは、宿主生物とその表面に提示された生体触媒の種類に応じて適宜設定可能である。
生物は所有している遺伝子情報(DNA)を基に、酵素の合成を行っている。そこで特定の生物に汚泥分解酵素の情報をコードしている遺伝子を人為的に導入(遺伝子組み換え)することで、目的の酵素を上記微生物に作らせることが可能である。
また、Streptococcus faecalis、Leuconostoc mensenteroides、Lactobacillus delbruckii等の乳酸菌;Bacillus subtilis 、B. megaterium 等のBacillus属のグラム陽性細菌;Clostridium acetobutylicum、C. beijerinckii 等のClostridium 属のグラム陽性細菌;Arthrobacter simplex等のArthrobacter属のグラム陽性細菌;Corynebacterium glutamicum、Brevibacterium ammoniagenes 、B. flavum 、Propionibacterium sp. 等のその他のグラム陽性細菌などを挙げることができる。
さらに、Nocardia rhodocrous 、Streptomyces phaeochromogenes 、S. rimosus、S. roseochromogenes 、S. tendae 、S. rimosus等の放線菌、Saccharomyces sp. 、Hansenula jadinii 、Candida tropicalis、Rhodotorula minuta等の酵母、Rhizopus nigricans、R. stolonofer 、Curvularia lunata 、Aspergillusochraceus 、A. niger、Penicillium chrysogenum 等の糸状菌などを挙げることができる。
上述した微生物の内、生体触媒として2種以上の異なる微生物を宿主として用いてもよい。代表的な宿主微生物として、酵母、大腸菌等が挙げられる。
宿主細胞に上記酵素を提示させる方法としては、一例として、遺伝子操作により酵素と細胞表層提示タンパクをコードしている遺伝子を特定の微生物に導入する方法が挙げられる。遺伝子の発現により、微生物の細胞内から酵素が合成された後、細胞表層に提示される。より具体的には、宿主微生物(酵母)に以下の配列、分泌シグナル、目標酵素、アグルチニンタンパク質、及び上記アンカー付着シグナルをコードする遺伝子を含む配列を導入することが挙げられる。アグルチニンタンパク質は、上記酵素を固定するアンカーとなる。アンカー付着シグナルとしては、グリコシルフォスファチジルイノシトール(GPI)が挙げられる。上記特徴を有する配列を酵母に導入することにより、目標酵素を宿主微生物にアーミングすることができる。酵素が提示された微生物は生体触媒となり、生物汚泥に含有される物質の低分子化に作用する。
また、生体触媒として、酵母等の有価物生産をする微生物を用いる場合、これらの微生物自身も低分子された汚泥を餌として利用でき、例えば、酵母表層に提示されたセルラーゼの働きにより、汚泥中のセルロースが低分子糖に分解され、酵母がこの低分子糖を利用し、アルコール発酵を行い、バイオエタノールを生産するように、有価物を生産することが可能となる。宿主細胞に発現させる酵素は、1種類でも複数種類でもよい。発現効率の観点からは1種類のタンパク質を発現させることが好ましく、複数の宿主細胞にそれぞれ異なる種類のタンパク質を1種類ずつ発現させることがより好ましい。
生体触媒の表層に難分解目標の分解に適した酵素を提示することによって、生体触媒の汚泥低分子化効率を向上させることができる。
消化槽50には、メタン生成菌を主とする種々の嫌気性微生物(加水分解菌、酸生成菌、メタン生成菌等)が定着している。消化槽50は、回転式の撹拌翼を備えたものなど攪拌装置を備えることが好ましい。消化槽50で消化された消化汚泥は、調整部60によって、脱水機90へ送られる。調整部60は、一例として、ポンプ又はバルブである。
消化槽50内の処理液のpHは、嫌気消化の最適pHである8.5〜9.5の範囲が好ましく、嫌気消化開始時には消石灰等を用いて8.5〜9.0に調整を行うことがより好ましい。
脱水処理されて得られた汚泥の液分は、返流水として、下水処理施設に返流される。
死滅させる方法としては、塩素、オゾン、紫外線等による消毒や、加温による滅菌、pH調整による滅菌、圧力制御による滅菌が挙げられる。係る構成により、各生体触媒培養槽で培養された生体触媒が、環境中に漏えいすることを防止できる。
滅菌装置は、有機性汚泥中の微生物を死滅させる手段を備えたものであれば特に限定されず、加温手段、pH調整手段、圧力制御手段等を備えたものが挙げられる。オートクレーブのように、高温高圧の飽和水蒸気による滅菌手段を備えたものであってもよい。
高温滅菌法で加熱するために、バイオガス発電の際に発生した燃焼廃熱を回収して、加熱に用いてもよい。
第2の実施形態では、汚泥処理システム1が細胞壁分解槽20bの後段に、細胞膜分解槽31b(第3の分解槽)と、細胞質分解槽40b(第4の分解槽)を備えている点、及び第4の生体触媒培養槽40a(第4の生体触媒培養槽)を備えている点が、第1の実施形態と相違する。第2の実施形態では、第1の実施形態との相違点についてのみ説明する。
第3の生体触媒により、微生物の細胞膜の構成成分を低分子化することで、後段の細胞質分解槽40bにおける処理、及び消化槽50における生物汚泥の嫌気性消化処理を、高効率に行うことが可能となる。
微生物の細胞膜を破壊し、細胞内の細胞質を溶出させることで、メタン発酵の基質として利用されやすい細胞質の成分が溶出され、細胞質の成分の分解の効率を向上させることができる。
第4の生体触媒により、微生物の細胞質の構成成分を低分子化することで、後段の消化槽50における生物汚泥の嫌気性消化処理を、高効率に行うことが可能となる。
細胞質には、微生物のエネルギー原として貯蔵されている物質顆粒、例えばデンプンなどの多糖類、脂質が含まれる。これらの物質はメタン発酵の基質にもなるため、メタンガスの発生量に大きく寄与する。これらの物質を、生体触媒を用い、高い反応速度で予め低分子化することで、後段の消化槽50における消化反応をよりスムーズに進行させることができる。
第3の実施形態では、汚泥処理システム1が、粘性物質分解槽10bと細胞壁分解槽20bの間に、生体触媒に含まれる酵素を失活させる酵素失活装置100を、更に備えている点で、第1の実施形態と相違する。第3の実施形態において、該生体触媒は、第1の生体触媒である。第3の実施形態では、第1に実施形態との相違点についてのみ説明する。
酵素失活装置100における酵素失活方法としては、加温による酵素の変性、pH調整による酵素の変性、抗体の投入、キレート剤の投入による酵素活性中心の不活性化などがあり、これらの方法に限定されない。
各分解槽で処理された汚泥には、多くの汚泥分解酵素が含まれているため、そのまま有機性汚泥を消化槽50に投入すると、消化槽50中の嫌気微生物の活性を低下する可能性がある。そのために、上記汚泥が消化槽50に投入される前に、酵素失活装置を通過させ、汚泥分解酵素、特に微生物の細胞壁、細胞膜を分解する酵素を失活させることによって、消化槽内の嫌気性微生物の活性低下を阻止できる。
上記の観点によれば、酵素失活装置100は、粘性物質分解槽10bと細胞壁分解槽20bとの間、又は細胞膜・細胞質分解槽30bと消化槽50との間に配置されることが好ましい。酵素失活装置100は、粘性物質分解槽10bと細胞壁分解槽20bとの間、及び細胞膜・細胞質分解槽30bと消化槽50との間に配置されることがより好ましい。
酵素失活装置100は、粘性物質分解槽10bと細胞壁分解槽20bとの間、又は細胞質分解槽40bと消化槽50との間に配置されることが好ましい。酵素失活装置100は、粘性物質分解槽10bと細胞壁分解槽20bとの間、及び細胞質分解槽40bと消化槽50との間に配置されることがより好ましい。
第4の実施形態では、汚泥処理システム1が、細胞膜・細胞質分解槽30bと消化槽50の間に、生物汚泥中の微生物を死滅させる滅菌装置110を、更に備えている点で、第1の実施形態と相違する。第4の実施形態において、該生物汚泥中の微生物は、第1の生体触媒、第2の生体触媒、第3の生体触媒、及び余剰汚泥F中の微生物である。第4の実施形態では、第1の実施形態との相違点についてのみ説明する。
Claims (6)
- 第1の生体触媒を培養する第1の生体触媒培養槽と、
生物汚泥に含まれる粘性物質の構成成分を、前記第1の生体触媒により分解する第1の分解槽と、
第2の生体触媒を培養する第2の生体触媒培養槽と、
前記第1の分解槽の後段に配置され、前記第1の分解槽において処理された生物汚泥中の微生物の構成成分を前記第2の生体触媒により分解する第2の分解槽と、
前記第2の分解槽の後段に配置され、前記第2の分解槽において処理された生物汚泥を嫌気性消化処理し、バイオガスに変換する消化槽と、
を備え、
前記第1の生体触媒は、宿主生物の細胞表面に、生物汚泥に含まれる粘性物質の構成成分を分解する触媒を提示したものであり、
前記第2の生体触媒は、宿主生物の細胞表面に、生物汚泥中の微生物の構成成分を分解する触媒を提示したものである汚泥処理システム。 - 前記第2の生体触媒は、宿主生物の細胞表面に、生物汚泥中の微生物の細胞壁の構成成分を分解する触媒を提示したものである請求項1に記載の汚泥処理システム。
- 更に、第3の生体触媒を培養する第3の生体触媒培養槽と、
前記第2の分解槽の後段に配置され、前記第2の分解槽において処理された生物汚泥中の、微生物の構成成分を前記第3の生体触媒により分解する第3の分解槽と、
を備え、
前記第3の生体触媒は、宿主生物の細胞表面に、生物汚泥中の微生物の細胞膜及び/又は細胞質の構成成分を分解する触媒を提示したものである請求項1又は2に記載の汚泥処理システム。 - 更に、第4の生体触媒を培養する第4の生体触媒培養槽と、
前記第3の分解槽の後段に配置され、前記第3の分解槽において処理された生物汚泥中の、微生物の構成成分を前記第4の生体触媒により分解する第4の分解槽と、
を備え、
前記第3の生体触媒は、宿主生物の細胞表面に、生物汚泥中の微生物の細胞膜の構成成分を分解する触媒を提示したものであり、
前記第4の生体触媒は、宿主生物の細胞表面に、生物汚泥中の微生物の細胞質の構成成分を分解する触媒を提示したものである請求項3に記載の汚泥処理システム。 - 更に、前記第1の分解槽と前記第2の分解槽の間、及び/又は前記第2の分解槽と前記消化槽の間に、酵素失活装置を備えた請求項1〜4のいずれか一項に記載の汚泥処理システム。
- 更に、前記第1の分解槽と前記第2の分解槽の間、及び/又は前記第2の分解槽と前記消化槽の間に、生物汚泥中の微生物を死滅させる滅菌装置を備えた請求項1〜4のいずれか一項に記載の汚泥処理システム。
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