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JP2016165898A - 記録物 - Google Patents

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JP2016165898A
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喬紘 筒井
Takahiro Tsutsui
喬紘 筒井
園部 洋一
Yoichi Sonobe
洋一 園部
雅美 有賀
Masami Ariga
雅美 有賀
大造 北城
Daizo Kitashiro
大造 北城
石永 博之
Hiroyuki Ishinaga
博之 石永
平林 弘光
Hiromitsu Hirabayashi
弘光 平林
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Abstract

【課題】記録物の生産性向上、情報セキュリティーの向上、記録コストの低減を図ることが可能な記録媒体を提供する。また、インクジェット方式に適応した記録媒体を提供する。
【解決手段】インクジェット記録用のインクを受容するインク受容層53と、全光線透過率が50%以上の透明シート52と、を備えた記録媒体1である。透明シート52およびインク受容層53が順次積層された積層構造を有し、インク受容層53が、少なくとも無機微粒子および重量平均重合度が2,000以上5,000以下、けん化度が70mol%以上90mol%以下のポリビニルアルコールを含有する組成物からなる空隙吸収型のインク受容層である。
【選択図】図1

Description

本発明は、インク受容層を備えた記録媒体、特に前記インク受容層に反転画像(鏡像)が記録された記録媒体およびその製造方法に関する。また、本発明は、前記記録媒体と、画像支持体とを備え、前記画像支持体に本来の画像(正像)が支持された記録物およびその製造方法に関する。
従来、種々の熱転写記録方法が知られている。それらの中でも、基材シート上に着色転写層を形成した熱転写シートにおいて、その背面からサーマルヘッドなどにより、画像状に加熱して、上記の着色転写層を熱転写受像シートの表面に熱転写して、画像形成する熱転写方法が一般的である(特許文献1参照)。この熱転写方法は、マルチメディアに関連した様々なハードおよびソフトの発達により、コンピューターグラフィックス、衛星通信による静止画像そしてCDROMその他に代表されるデジタル画像およびビデオ等のアナログ画像のフルカラーハードコピーシステムとして、その市場を拡大している。
任意の紙、樹脂製品、金属など、種々の対象物に画像を形成して記録物を得る場合、従来では、対称物に対して熱転写方式で画像を形成することが行われている。この熱転写方式は、着色転写層の構成によって、昇華転写型と熱溶融転写型とに大別される。両方式ともに、フルカラー画像の形成が可能であり、例えば、イエロー、マゼンタ、シアンさらに必要に応じて、ブラックの三色ないし四色の熱転写シートを用意し、同一の熱転写受像シートの表面に各色の画像を重ねて熱転写して、フルカラー画像を形成するものである。
熱溶融転写型の熱転写方式を用いて記録物を製造する記録物製造方法としては、例えば、受容層が基材上に剥離可能に設けられた記録媒体と、染料層を有する熱転写シートと、を用い、染料層の染料を基材上の受容層に転写して画像を形成した後、その記録媒体を加熱して受容層を対象物に転写することで、記録物を製造する記録物製造方法が提案されている(特許文献2)。
また、昇華転写型の熱転写シートを用いて画像を形成する記録物製造方法も提案されている(特許文献3)。
昇華転写型の熱転写シートは、顔写真等の階調性画像を精密に形成することができる反面、通常の記録インクにより形成された画像とは異なり、耐候性、耐摩擦性、耐薬品性等の耐久性に欠けるという不具合がある。その解決策として、熱転写画像上に熱転写性樹脂層を有する保護層熱転写フィルムを重ね合わせ、サーマルヘッドや加熱ロール等を用いて、透明性を有する熱転写性樹脂層を転写させ、画像上に保護層を形成することが行われている(特許文献4)。
また、記録媒体の受容層にインクジェット方式で画像印画し、この記録媒体と被転写体とを重ね合わせて加熱し転写する技術も提案されている(特許文献5)。
特開昭62−238791号公報 特開2000−238439号公報 特開2003−211761号公報 特開2008−44130号公報 特開2008−188865号公報
しかしながら、特許文献4に記載のような印刷方法は、熱転写フィルム上にブラック、シアン、マゼンタ、イエロー、透明保護層の順番で単色ずつ画像転写領域を設けて、順次被転写体を前進・後進を繰り返しながら各色を順次転写して画像を形成するため、その生産性を向上し難く、生産性の面で大きな課題を有していた。また、熱転写記録方法では、記録情報が熱転写フィルム上に陰画として残ることになり、使用後の熱転写フィルムの廃棄には特別な配慮が必要となるなど、情報セキュリティーの面にも大きな課題が残されていた。更に、画像に拠らず、記録面全面に対応した熱転写フィルムが必要となり、非記録部に関わる記録コストの割合も大きく、その経済性に関しても大きな課題となっていた。
また、特許文献5に記載の技術は、記録媒体についての具体的な説明がない。このため、インクジェット方式を用い、記録媒体と被転写体とを重ね合わせ、加熱して転写する技術において、その技術に適した記録媒体を製造することができなかった。
本発明は、前記課題を解決するためになされたものである。即ち、本発明は記録物の生産性向上、情報セキュリティーの向上、記録コストの低減を図ることが可能な記録媒体を提供するものである。また、本発明は、インクジェット方式に適応した記録媒体を提供するものである。
本発明者は前記課題について鋭意検討を行った。その結果、熱転写記録方式に代わりインクジェット記録方式を採用することで、その生産性および記録コストを飛躍的に向上させるとともに記録コストを低減することができ、陰画が残らないため情報セキュリティーも向上させることが可能であることに想到した。更には、インク受容層に含まれる無機微粒子、又は水溶性樹脂等の構成を精密に制御することで、インクジェット方式に適応した記録媒体を構成することができることに想到して本発明を完成するに至った。即ち、本発明によれば、以下に示す記録媒体、記録物およびこれらの製造方法が提供される。
[1]記録媒体:
本発明によれば、インクジェット記録用のインクを受容するインク受容層と、全光線透過率が50%以上の透明シートと、を備え、前記透明シートおよび前記インク受容層が順次積層された積層構造を有し、前記インク受容層が、少なくとも無機微粒子および重量平均重合度が2,000以上5,000以下、けん化度が70mol%以上90mol%以下のポリビニルアルコールを含有する組成物からなる空隙吸収型のインク受容層であることを特徴とする記録媒体;が提供される。
また、本発明によれば、インクジェット記録用のインクを受容するインク受容層と、全光線透過率が50%以上の透明シートと、を備え、前記透明シートおよび前記インク受容層が順次積層された積層構造を有し、前記インク受容層が、少なくとも、平均粒子径が120nm以上200nm以下のアルミナ微粒子、ならびに水溶性樹脂および水分散性樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含有する組成物からなる空隙吸収型のインク受容層であることを特徴とする記録媒体;が提供される。
[2]記録物:
更に、本発明によれば、画像が支持される画像支持体と、画像が記録された記録媒体と、を備え、前記記録媒体が、本発明の記録媒体であり、前記画像支持体、前記インク受容層および前記透明シートが順次積層された積層構造を有することを特徴とする記録物;が提供される。
[3]記録媒体の製造方法:
本発明によれば、インクジェット記録用のインクを受容するインク受容層と、全光線透過率が50%以上の透明シートと、を備え、前記透明シートおよび前記インク受容層が順次積層された積層構造を有する記録媒体の製造方法であって、前記透明シートの表面に、少なくとも水、無機微粒子および重量平均重合度が2,000以上5,000以下、けん化度が70mol%以上90mol%以下のポリビニルアルコールを含有する塗工液を塗工し、少なくとも前記無機微粒子および前記ポリビニルアルコールを含有する組成物からなる空隙吸収型のインク受容層を形成することを特徴とする記録媒体の製造方法;が提供される。
また、本発明によれば、インクジェット記録用のインクを受容するインク受容層と、全光線透過率が50%以上の透明シートと、を備え、前記透明シートおよび前記インク受容層が順次積層された積層構造を有する記録媒体の製造方法であって、前記透明シートの表面に、少なくとも水、平均粒子径が120nm以上200nm以下のアルミナ微粒子、ならびに水溶性樹脂および水分散性樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含有する塗工液を塗工し、少なくとも前記アルミナ微粒子および前記樹脂を含有する組成物からなる空隙吸収型のインク受容層を形成することを特徴とする記録媒体の製造方法;が提供される。
[4]記録物の製造方法:
更に、本発明によれば、画像が支持される画像支持体と、画像が記録された記録媒体と、を備えた記録物の製造方法であって、本発明の記録媒体の製造方法により前記記録媒体を得、前記画像支持体と前記記録媒体とを、前記画像支持体、前記インク受容層および前記透明シートが順次積層されるように当接させた状態で加熱圧着し、前記画像支持体、前記インク受容層および前記透明シートが順次積層された積層構造を有する記録物を得ることを特徴とする記録物の製造方法;が提供される。
本発明の記録媒体は、熱転写方式と比較して、記録物の生産性向上、情報セキュリティーの向上、記録コストの低減を図ることが可能である。
本発明の記録媒体の一の実施形態を示す図であり、記録媒体を厚さ方向に切断した断面を模式的に示す断面図である。 本発明の記録媒体の別の実施形態を示す図であり、記録媒体を厚さ方向に切断した断面を模式的に示す断面図である。 本発明の記録媒体を模式的に示す斜視図である。 本発明の記録媒体を画像支持体に貼付し、記録物を形成した状態を模式的に示す斜視図である。 図4に示す記録物から基材シートおよび離型層を剥離した状態を模式的に示す斜視図である。 本発明の記録物を製造する製造装置の第1の構成例を模式的に示す側面図である。 アルミナ微粒子の平均粒子径と反射濃度(OD)および記録面と視認面の色差(ΔE)の関係を示すグラフである。 第1の製造装置とコントローラとの接続状態を示すブロック図である。 図8に示した記録部の制御系の構成を示すブロック図である。 第1の製造装置の動作フローを示すフローチャートである。 図1に示す記録媒体にプレカット処理を施した状態を示す断面図である。 記録物の構成を示す断面図である。 従来のプレカット処理部分にインクが侵入した状態を示す断面図である。 プレカット処理部分にインクが侵入した状態を示す断面図である。 画像支持体およびプライマー層を示す断面図である。 第2の製造装置の全体構成を示す模式図である。 第2の製造装置の動作フローを示す図フローチャートである。 第3の製造装置においてプライマー層が基材シートに設けられた状態を示す断面図である。 第4の製造装置における記録媒体の構成を示す断面図である。 アンカー層を用いた記録媒体の構成を示す断面図である。 図20に示す記録媒体にプレカット処理を施した状態を示す断面図である。 アンカー層を用いて製造される記録物の構成を示す断面図である。 アンカー層を含むプレカット処理部分にインクが侵入した状態を示す断面図である。 表面改質処理を行った記録媒体の構成を示す断面図である。 隙間吸収型のインク受容層に顔料インクが定着した状態を示す断面図である。 膨潤吸収型のインク受容層にインクが定着した後のインク受容層の膨潤状態を示す断面図である。 隙間吸収型のインク受容層に染料インクが定着した状態を示す断面図である。 隙間吸収型のインク受容層に染料インクが定着した後に染料インクがマイグレーションした状態を示す断面図である。
以下、本発明について図面を参照しながら詳細に説明する。但し、本発明は下記の実施形態に限定されず、その発明特定事項を有する全ての対象を含むものである。なお、同一構造の部材については図面において同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。
本発明においては、熱転写記録方式に代わりインクジェット記録方式を採用している。これにより、熱転写方式と比較して、記録物の生産性向上、情報セキュリティーの向上、記録コストの低減を図ることが可能である。
本発明の第1の実施形態においては、インク受容層を構成するポリビニルアルコールの重量平均重合度および、けん化度を精密に制御している。これにより、インクジェット方式を採用した場合の固有の問題点であるインク受容層と透明シートとの密着強度を向上させることができる。
本発明の第2の実施形態においては、インク受容層を構成するアルミナ微粒子の平均粒子径を精密に制御している。これにより、インクジェット方式を採用した場合の固有の問題点であるインク受容層の透明性(透過性)を向上させることができ、透明シートの側からの反転画像の視認性を向上させることができる。従って、インク受容層に浸透し難い顔料インクを使用した場合でも、インク密度を増加させ、或いは多量のインクを受容させるためにインク受容層の厚さの増大させる必要がない。このため、記録媒体、ひいては記録物の全体厚さを薄厚化することができる。
[1]記録媒体:
図1は、本発明の記録媒体の一の実施形態を示す図であり、記録媒体を厚さ方向に切断した断面を模式的に示す断面図である。本発明の記録媒体は、図1に示す記録媒体1のように、インク受容層53と、透明シート52と、を備えた記録媒体である。
[1−1]インク受容層:
インク受容層は、インクジェット記録用のインクを受容する層である。インク受容層の形態としては、水溶性高分子の網目構造中にインクを受容する膨潤吸収型と、無機微粒子により形成される空隙中にインクを受容する空隙吸収型が存在する。本発明の記録媒体は、少なくとも無機微粒子、並びに水溶性樹脂および水分散性樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含有する組成物からなる空隙吸収型のインク受容層を備えている。空隙吸収型のインク受容層は、無機微粒子によって形成される空隙によってインクを速やかに吸収することができる。従って、記録媒体を画像支持体に加熱圧着させる際に、インクが急激に突沸することが少なく、記録媒体と画像支持体とが完全に密着しない不具合(密着性不良)や、記録媒体と画像支持体との間に気泡が残る不具合(気泡残り)を抑制することができる。
[1−1−1]無機微粒子:
無機微粒子は、無機材料からなる微粒子である。無機微粒子はインク受容層にインクを受容する空隙を形成する機能を有する。
無機微粒子を構成する無機材料の種類は特に限定されない。但し、インク吸収能が高く、発色性に優れ、高品位の画像が形成可能な無機材料であることが好ましい。例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、ケイソウ土、アルミナ、コロイダルアルミナ、水酸化アルミニウム、ベーマイト構造のアルミナ水和物、擬ベーマイト構造のアルミナ水和物、リトポン(硫酸バリウムと硫化亜鉛の混合物)、ゼオライト等を挙げることができる。
これらの無機材料からなる無機微粒子の中でも、アルミナおよびアルミナ水和物からなる群より選択される少なくとも1種の物質からなるアルミナ微粒子が好ましい。アルミナ水和物としては、ベーマイト構造のアルミナ水和物、擬ベーマイト構造のアルミナ水和物などを挙げることができる。アルミナ、ベーマイト構造のアルミナ水和物、擬ベーマイト構造のアルミナ水和物は、インク受容層の透明性および画像の記録濃度を向上させることができる点において好ましい。
ベーマイト構造のアルミナ水和物は、長鎖のアルミニウムアルコキシドに対して酸を添加して加水分解・解膠を行うことによって得ることができる(特開昭56−120508号公報参照)。解膠には有機酸、無機酸のいずれを用いてもよい。但し、硝酸を用いることが好ましい。硝酸を用いることにより、加水分解の反応効率を向上させることができ、形状が制御されたアルミナ水和物を得ることができ、分散性が良好な分散液を得ることができる。
無機微粒子は、その平均粒子径が120nm以上200nm以下であることが好ましい。前記平均粒子径を120nm以上、好ましくは140nm以上とすることで、インク受容層のインク吸収性を向上させることができ、記録後の画像におけるインクの滲みやビーディングを抑制することができる。一方、前記平均粒子径を200nm以下、好ましくは170nm以下とすることで、無機微粒子による光散乱を抑制し、インク受容層の光沢性および透明性を向上させることができる。また、インク受容層の単位面積当たりの無機微粒子数を増加させることができるため、インク吸収性を向上させることができる。従って、画像の記録濃度を向上させることができ、記録後の画像のくすみを抑制することができる。
無機微粒子は、市販の無機微粒子をそのまま用いてもよいし、粉砕分散機などを用いて市販の無機微粒子の平均粒子径、多分散指数を調整したものを用いてもよい。粉砕分散機の種類は特に限定されない。例えば、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、湿式メディア型粉砕機(サンドミル、ボールミル)、連続式高速撹拌型分散機、超音波分散機などの従来公知の粉砕分散機を用いることができる。
粉砕分散機をより具体的に例示すると、以下全て商品名で、マントンゴーリンホモジナイザー、ソノレータ(以上、同栄商事製);マイクロフルイタイザー(みずほ工業製);ナノマイザー(月島機械製);アルティマイザー(伊藤忠産機製);パールミル、グレンミル、トルネード(以上、浅田鉄鋼製);ビスコミル(アイメックス製);マイティーミル、RSミル、SΓミル(以上、井上製作所製);荏原マイルダー(荏原製作所製);ファインフローミル、キャビトロン(以上、太平洋機工製);などを挙げることができる。
また、無機微粒子は、前記平均粒子径の範囲を満たし、かつ、多分散指数(μ/<Γ>)が0.01以上0.20以下であることが好ましく、さらに好ましくは、0.01以上0.18以下とすることが好ましい。上記の範囲に設定することで粒子の大きさを一定に保つことが可能になるため、インク受容層の光沢性および透明性を向上させることができる。従って、画像の記録濃度を向上させることができ、記録後の画像のくすみを抑制することができる。
なお、本明細書にいう平均粒子径および多分散指数は動的光散乱法によって測定された値を、「高分子の構造(2)散乱実験と形態観察 第1章 光散乱」(共立出版 高分子学会編)、或いはJ.Chem.Phys.,70(B),15 Apl.,3965(1979)に記載のキュムラント法により解析することで求めることができる。動的光散乱の理論によれば、異なる粒径を持つ微粒子が混在している場合、散乱光からの時間相関関数の減衰に分布を有する。この時間相関関数をキュムラント法により解析することで、減衰速度の平均(<Γ>)と分散(μ)が求まる。減衰速度(Γ)は粒子の拡散係数と散乱ベクトルの関数で表わされるため、ストークス−アインシュタイン式を用いて、流体力学的平均粒径を求めることができる。従って、減衰速度の分散(μ)を平均の二乗(<Γ>2)で除した多分散指数(μ/<Γ>2)は、粒径の散らばりの度合いを表わしており、値が0に近づく程、粒径の分布は狭くなることを意味する。本発明で定義される平均粒子径及び多分散指数は、例えば、レーザー粒径解析装置PARIII(大塚電子(株)製)等を用いて容易に測定することができる。
前記無機微粒子は1種を単独で、或いは2種以上を混合して用いることができる。「2種以上」とは、材質自体が異なるものの他、平均粒子径、多分散指数等の特性が異なるものも含まれる。
[1−1−2]水溶性樹脂、水分散性樹脂:
水溶性樹脂は、25℃において、水と完全に混和するか、水に対する溶解度が1(g/100g)以上の樹脂である。水分散性樹脂は、ラテックスの構成成分となる樹脂である。水溶性樹脂、水分散性樹脂は、無機微粒子を結着するバインダーとして機能する。
水溶性樹脂としては、例えば、
澱粉、ゼラチン、カゼインおよびこれらの変性物;
メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース誘導体;
ポリビニルアルコール(完全けん化、部分ケン化、低けん化など)またはこれらの変性物(カチオン変性物、アニオン変性物、シラノール変性物など);
尿素系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、エピクロルヒドリン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエチレンイミン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸またはその共重合体樹脂、アクリルアミド系樹脂、無水マレイン酸系共重合体樹脂、ポリエステル系樹脂などの樹脂;などを挙げることができる。
水分散性樹脂としては、例えば、
SBR、NBRなどの合成ゴム;
メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体樹脂、アクリル酸エステル共重合体樹脂などのアクリル系重合体樹脂;
エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂などのビニル系重合体樹脂;
前記合成ゴム、前記重合体樹脂に、カチオン性基またはアニオン性基を導入した官能基変性重合体樹脂;などを挙げることができる。これらの水分散性樹脂は、水を分散媒とするラテックスの状態で存在することができる。
前記水溶性樹脂および前記水分散性樹脂の中でも、ポリビニルアルコール、特にポリ酢酸ビニルを加水分解(けん化)することにより得られる、けん化ポリビニルアルコールが好ましい。
本発明の記録媒体において、インク受容層は、けん化度70mol%以上100mol%以下のポリビニルアルコールを含有する組成物からなることが好ましい。けん化度とは、ポリビニルアルコールの酢酸基と水酸基の合計モル数に対する水酸基のモル数の百分率を意味する。
前記けん化度を70mol%以上、好ましくは86mol%以上とすることで、インク受容層が過度に硬くならず、インク受容層に十分な粘弾性を付与することができる。従って、透明シートとインク受容層との接着強度を向上させることができ、前記接着強度の不足により透明シートからインク受容層が剥離する不具合を抑制することができる。また、無機微粒子とポリビニルアルコールを含む塗工液の粘度を低下させることができる。従って、透明シートに対して前記塗工液を塗工し易くなり、記録媒体の生産性を向上させることができる。一方、けん化度を100mol%以下、好ましくは90mol%以下とすることで、インク受容層に適度な親水性を付与することができ、インクの吸収性が良好となる。従って、インク受容層に高品位の画像を記録することが可能となる。
前記けん化度の範囲を満たす、けん化ポリビニルアルコールとしては、完全けん化ポリビニルアルコール(けん化度98mol%以上99mol%以下)、部分けん化ポリビニルアルコール(けん化度87mol%以上89mol%以下)、低けん化ポリビニルアルコール(けん化度78mol%以上82mol%以下)などを挙げることができる。中でも、部分けん化ポリビニルアルコールが好ましい。
本発明の記録媒体において、インク受容層は、重量平均重合度が2,000以上5,000以下のポリビニルアルコールを含有する組成物からなることが好ましい。
重量平均重合度を2,000以上、好ましくは3,000以上とすることで、ポリビニルアルコールが適度な粘度を有するようになり、インク受容層に十分な粘弾性を付与することができる。従って、透明シートとインク受容層との接着強度を向上させることができ、前記接着強度の不足により透明シートからインク受容層が剥離する不具合を抑制することができる。一方、重量平均重合度を5,000以下、好ましくは4,500以下とすることで、無機微粒子とポリビニルアルコールを含む塗工液の粘度を低下させることができる。従って、透明シートに対して前記塗工液を塗工し易くなり、記録媒体の生産性を向上させることができる。また、インク受容層の細孔が埋まることを防止し、細孔の開口状態を良好に保つことができ、インクの吸収性が良好となる。従って、インク受容層に高品位の画像を記録することが可能となる。
重量平均重合度の値は、JIS−K−6726に記載の方法に準拠して算出された値である。
前記水溶性樹脂、水分散性樹脂は、1種を単独で、或いは2種以上を混合して用いることができる。「2種以上」とは、けん化度、重量平均重合度などの特性が異なるものも含まれる。
水溶性樹脂、水分散性樹脂の量は、無機微粒子100質量部に対し、3.3質量部以上100質量部以下とすることが好ましい。水溶性樹脂、水分散性樹脂の量を3.3質量部以上、好ましくは5質量部以上とすることで、インク受容層のひび割れや粉落ちが発生し難くなる。一方、水溶性樹脂、水分散性樹脂の量を100質量部以下、好ましくは33質量部以下とすることで、インクの吸収性が良好となる。
[1−1−3]厚さ:
インク受容層の厚さは、特に限定されない。但し、インク受容層の厚さが10μm以上20μm以下であることが好ましい。インク受容層の厚さを10μm以上、好ましくは13μm以上、更に好ましくは18μm以上とすることで、インクの吸収性とインク受容層の透明性を確保することができる。また、インクの吸収性およびインクの定着性が良好となる。一方、インク受容層の厚さを20μm以下とすることで、インク受容層の透明性を向上させることができる。また、後述するように画像支持体としてプラスチックカードを用いた場合に、記録物全体の厚さをJIS6301に記載される総厚み0.84mm以下に抑制することが容易になるため好ましい。
[1−1−4]その他:
インク受容層は、後述する反転画像とは異なる補助的な画像が予め形成(プレプリント)されているものであってもよい。
[1−2]透明シート:
透明シートは、JIS K7375に準拠して測定される全光線透過率が50%以上、好ましくは90%以上のシートを意味する。従って、透明シートには、無色透明シートの他、半透明シート、着色透明シートなども含まれる。
透明シートの種類は特に限定されない。但し、耐候性、耐摩擦性、耐薬品性などの耐久性に優れた材質からなるシート、フィルムなどが好ましい。例えば、樹脂フィルムなどを挙げることができる。
樹脂フィルムを構成する樹脂としては、
ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、1,4−ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル;
ナイロン(脂肪族ポリアミド)、アラミド(芳香族ポリアミド)、ポリイミドなどのポリアミド・ポリイミド類;
セロハン、酢酸セルロース、ポリアセテートなどのセルロース誘導体;
その他、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリフェニレンサルフィド、ポリサルホン、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、アイオノマー、ポリ乳酸などの樹脂;を挙げることができる。これらの中でも、熱可塑性樹脂が好ましく、より具体的には、耐候性に優れるPETが好ましい。これらの樹脂からなる樹脂フィルムは1種を単独で、或いは2種以上を複合または積層して用いることができる。
透明シートの厚さは、材料強度等を考慮して適宜決定すればよく、特に限定されない。但し、透明シートの厚さが0.5μm以上100μm以下であることが好ましい。透明シートの厚さを0.5μm以上、好ましくは1μm以上とすることで、耐候性を付与するという効果を得ることができる。一方、透明シートの厚さを前記100μm以下、好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下とすることで、記録媒体を画像支持体に加熱圧着させる場合の熱伝達性を良好にすることができる。
本発明の記録媒体は、図1に示す記録媒体1のように、透明シート52を備えている。透明シート52を備えることで、記録媒体1を画像支持体に加熱圧着させた場合に、透明シート52を介してインク受容層53に記録された反転画像を本来の画像として視認することが可能となる。また、記録媒体1を画像支持体に加熱圧着させた場合に、透明シート52がインク受容層53に記録された反転画像の保護層として機能する。
インク受容層に反転画像を記録するインク(インクジェット記録用のインク)として染料インクを用いる場合には、紫外線による染料の分解(光劣化)を防止するために、前記透明シートが、UVカット剤を含有するものであることが好ましい。UVカット剤としては、例えばベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物などの紫外線吸収剤;酸化チタン、酸化亜鉛などの紫外線散乱剤;などを挙げることができる。
[1−3]離型層:
本発明の記録媒体は、図1に示す記録媒体1のように、離型層51を備えていてもよい。離型層は、離型剤を含有する組成物からなる層である。離型層51を備えることによって、透明シート52から基材シート50を容易に剥離することができる。
離型剤の種類は特に限定されず、離型性に優れ、サーマル式のインクジェット記録ヘッドが発生する熱で容易に溶融しない材料であることが好ましい。例えば、
シリコーンワックスなどのワックス類;
セルロース系樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂などの軟化点が比較的高い樹脂;
軟化点が比較的高い樹脂とワックス類との混合物;
これらの中でも、シリコーンワックス、シリコーン樹脂などのシリコーン系材料;フッ素樹脂などのフッ素系材料;は、離型性に優れる点において好ましい。
離型層の厚さは、剥離性などを考慮して適宜決定すればよく、特に限定されない。但し、離型層の厚さが、乾燥状態で0.1μm以上10μm以下であることが好ましい。離型層の厚さを0.1μm以上、好ましくは1μm以上とすることで、基材シートと透明シートとの融着を抑制することができる。一方、離型層の厚さを10μm以下、好ましくは5μm以下とすることで、後述するように画像支持体としてプラスチックカードを用いた場合に、記録物全体の厚さをJIS6301に記載される総厚み0.84mm以下に抑制することができる。
なお、透明シートの表面に艶消し(マット)加工を行いたい場合には、離型層に各種粒子を含有させるか、離型層の透明シートに当接する側の表面をマット処理しておくことが好ましい。マット加工は透明シートの光沢感を適度に制御することができる点において有用な方法である。
[1−4]基材シート:
本発明の記録媒体は、図1に示す記録媒体1のように、基材シート50を備えていてもよい。基材シート(「剥離ライナー」、「セパレータ」とも称される。)は、離型層の支持体となるシート体である。
基材シートの材質、形態等については特に限定されない。例えば、従来の熱転写シートの基材フィルムとして利用されていたシート状材料等を転用することができる。具体的には、樹脂フィルム、紙シート、不織布シート等を挙げることができる。
例えば、ポリエステル(PETなど)、ナイロン(脂肪族ポリアミド)、ポリイミド、酢酸セルロース、セロハン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ゴム、フッ素樹脂、アイオノマー等の樹脂からなる樹脂フィルム;
コンデンサー紙、パラフィン紙などの紙からなる紙シート;などが好ましい。これらの中でも、耐候性に優れる、PETフィルムが好ましい。樹脂フィルム、紙シート、不織布シート等は1種を単独で、或いは2種以上を複合または積層して用いることができる。
基材シートの厚さは材料強度等を考慮して適宜決定すればよく、特に限定されない。但し、基材シートの厚さが5μm以上200μm以下であることが好ましい。基材シートの厚さを5μm以上、好ましくは10μm以上とすることで、インク受容層の積層によるカール防止という効果を得ることができる。一方、基材シートの厚さを200μm以下、好ましくは50μm以下、更に好ましくは20μm以下とすることで、記録媒体を画像支持体に加熱圧着させる場合の熱伝達性を良好にすることができる。
[1−5]アンカー層:
図2は、本発明の記録媒体の別の実施形態を示す図であり、記録媒体を厚さ方向に切断した断面を模式的に示す断面図である。本発明の記録媒体は、図2に示す記録媒体1のように、又は図20に示すように、アンカー層59を更に備えていてもよい。
アンカー層59は、接着性を有する層であり、透明シート52とインク受容層53との間に配置される。アンカー層を備えることで、透明シートとインク受容層との密着性、接着強度を向上させることができ、前記接着強度の不足により透明シートからインク受容層が剥離する不具合を抑制することができる。アンカー層は、後述するプライマー層と同様の構成を採用することができる。
また、図24に示すように、表面改質処理として、インク受容層を塗工する透明シート52の表面に、予めコロナ放電処理やプラズマ放電処理を行ったり、IPAやアセトン等の有機溶剤を塗工することによって透明シート52の表面をあらすことによって、塗れ性を改良し密着性を向上させることができる。上記のようなアンカー層の形成や表面処理を行うことによって、インク受容層53と透明シート52との結着性を高めることができ、膜強度を上げ、透明シート52の剥がれを防止することができる。
このような、アンカー層59としては、結着性を高めるものとして、後述するプライマー層を構成するものと同等のものが使用できる。例えば、熱可塑性の合成樹脂、天然樹脂、ゴム、ワックス等を用いて形成することができる。より具体的には、エチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロース誘導体、ポリスチレン、ポリα−メチルスチレン等のスチレン系樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル等のアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール等のビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、アイオノマー、エチレンアクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体等の合成樹脂、粘着性付与剤としてのロジン、ロジン変性マレイン酸樹脂、エステルガム、ポリイソブチレンゴム、ブチルゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンアクリロニトリルゴム、ポリアミド樹脂、ポリ塩素化オレフィン等の天然樹脂や合成ゴムの誘導体等が挙げられる。
また、塗工液の濡れ性を向上させたり、結着性を高めたりするものとしては、ポリオレフィン樹脂なども好ましく用いられ、中でもポリエチレンは特に好ましく用いられる。ポリエチレンは、主として低密度のポリエチレン(LDPE)または高密度のポリエチレン(HDPE)であるが、他のLLDPEやポリプロピレン等も一部使用することができる。
上記、アンカー層59は後述する付着工程でのヒートロールでの熱処理により、アンカー層59が溶融することが好ましい。アンカー層59の溶融により、インク受容層53のおよび透明シート52表面の凹凸の影響を受けることなく、インク受容層53と透明シート52の結着性をより強固なものとすることができる。熱処理は、熱によりアンカー層を溶融させることによって接着性を発現させる一方で、インクの蒸発が起こらない範囲で用いることが好ましい。従って、ガラス転移温度(Tg)が60℃〜160℃、さらに好ましくは70〜140℃、特に好ましくは70〜100℃の熱可塑性樹脂から形成することが好ましい。上記の温度範囲は、付着部29において記録媒体1から印加される熱によってもインク受容層内部のインクの内圧が上がることから、インクに沸騰が起こらないため、好ましく使用される。一方、160℃以上では、急激な熱によりインクが沸騰してしまい、良好な接着が行われなくなるので好ましくない。
[1−6]ホログラム層:
本発明の記録媒体は、図2に示す記録媒体1のように、又は図19に示すように、ホログラム層58を更に備えていてもよい。ホログラム層58は、三次元像が記録された層であり、透明シート52とインク受容層53との間に配置される。ホログラム層を備えることで、記録物(クレジットカードなど)の偽造を防止する効果が付与される。ホログラム層の構成は特に限定されず、従来公知の構成を採用することができる。例えばレリーフホログラムなどを挙げることができる。
アンカー層59を設ける場合は、図2に示すようにアンカー層59と透明シート52の間にホログラム層58を設けることができる。ホログラム層58は、一般に樹脂の層で構成されるが、この層自体は単一構造でもよく、また多層構造でもよい。そして、ホログラム形成層は、平面型ホログラムでも体積型ホログラムでもよく、平面型ホログラムの場合、なかでもレリーフホログラムが量産性およびコストの面から好ましい。
その他、フレネルホログラム、フラウンホーファーホログラム、レンズレスフーリエ変換ホログラム、イメージホログラム等のレーザー再生ホログラム、および、レインボーホログラム等の白色光再生ホログラム、更にそれらの原理を利用したカラーホログラム、コンピュータホログラム、ホログラムディスプレイ、マルチプレックスホログラム、ホログラフィックステレオグラム、ホログラフィック回折格子等を用いることができる。
干渉縞を記録するためのホログラム形成用感光材料としては、銀塩、重クロム酸ゼラチン、サーモプラスチックス、ジアゾ系感光材料フォトレジスト、強誘電体、フォトクロミックス材料、カルコゲンガラス等が使用できる。また、ホログラム形成層の材質として、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂(例、ポリメチルメタアクリレート)、ポリスチレン、ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂、そして、不飽和ポリエステル、メラミン、エポキシ、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン系アクリレート等の熱硬化性樹脂を硬化させたもの、或いは、上記熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の混合物が使用可能である。
さらに、ホログラム層58の材質として、ラジカル重合性不飽和基を有する熱成形性物質が使用可能である。ホログラム層58は、従来既知の方法によって形成することができる。例えば、透明型ホログラムがレリーフホログラムである場合、干渉縞が凹凸の形で記録されたホログラム原版をプレス型として用いる。そして、このホログラム原版上にホログラム形成用樹脂シートを置き、加熱ロールなどの手段によって両者を加熱圧着し、ホログラム形成用樹脂シート表面にホログラム原版の凹凸模様を複製する方法によってレリーフ形成面を有するホログラム形成層を得ることができる。
[1−7]積層構造:
本発明の記録媒体は、図1に示す記録媒体1のように、透明シート52およびインク受容層53が順次積層された積層構造を有している。「透明シートおよびインク受容層が順次積層」とは、透明シートとインク受容層との間に他の層が介在するか否かに拘わらず、透明シートとインク受容層がその順序に従って積層されていることを意味する。即ち、図2に示す記録媒体1のように、透明シート52とインク受容層53との間に、アンカー層59やホログラム層58が存在する構造も、「透明シートおよびインク受容層が順次積層」された積層構造に含まれる。
但し、本発明の記録媒体は、図1に示す記録媒体1のように、透明シート52とインク受容層53とが相互に当接された積層構造を有することが好ましい。即ち、透明シート52とインク受容層53との間に、他の層(シートも含む。)が介在していない構造が好ましい。記録物の対象物となるクレジットカードなどは厚さの制限が厳格であるため、積層される層やシートの数を減じ、記録物を薄厚化することが望ましいからである。特に、インク受容層に含まれるポリビニルアルコールの重量平均重合度、けん化度を精密に調整すれば、透明シートとインク受容層との接着強度が顕著に向上し、必ずしもアンカー層を形成する必要がなくなる。このような構成によれば、記録媒体ひいては記録物を薄厚化することができるという利点がある。
本発明の記録媒体が、図1に示す記録媒体1のように、離型層51および基材シート50を更に備える場合には、インク受容層53、透明シート52、離型層51および基材シート50が順次積層された積層構造を有することが好ましい。
積層される層やシートの数を減じ、記録物を薄厚化するという観点から、本発明の記録媒体は、図1に示す記録媒体1のように、透明シート52と離型層51とが相互に当接され、離型層51と基材シート50とが相互に当接された積層構造を有することが特に好ましい。
[1−8]画像:
図3は、本発明の記録媒体を模式的に示す斜視図である。本発明の記録媒体は、インク受容層に画像が形成されていることが好ましく、特に図3に示す記録媒体1のように、インク受容層53に、インク受容層53の側から見ると鏡像となり、透明シート52の側から見ると正像となる反転画像72が記録されていることが好ましい。
本発明の記録媒体においては、図3に示す記録媒体1のように、反転画像72は、インク受容層53の透明シート52が積層されていない面に、インクジェット記録方式により記録されたものである。反転画像をインクジェット記録方式で記録することにより、従来の熱転写方式と比較して、記録物の生産性および情報セキュリティーを向上させることができ、記録コストの低減を図ることが可能となる。
本発明の記録媒体においては、前記画像が、染料インクにより形成された画像であってもよいし、顔料インクにより形成された画像であってもよい。但し、前記画像が、顔料インクにより形成された画像であることが好ましい。顔料インクにより反転画像を形成することで、インク受容層の表面にインク中の水分や溶媒が残存し難くなり(即ち、乾燥が容易となり)、前記水分や前記溶媒に起因する画像支持体と記録媒体(具体的にはインク受容層)との接着不良やマイグレーション(インクの移動)を有効に防止することができる。更に、顔料インクにより反転画像を形成することで、反転画像の耐光性を向上させることができる。
また、顔料インク中の顔料成分としては、顔料粒子の周りを樹脂で被覆した樹脂分散型の顔料成分を用いることが好ましい。樹脂分散型の顔料を用いることによって、インク媒体を分離した後の顔料粒子同士の結着力を高めることができ、更には、画像支持体がプライマー層を備えている場合に、プライマー層との結着力を高めることができる。これにより、顔料膜の表面上の水分は顔料膜によって、インク受容層中の下層の水分とはほぼ遮断され、更に下層からの水分補給もほぼ遮断された状態になる。従って、顔料膜の表面上の水分が少量であれば、自然乾燥で十分に乾燥できる。
顔料粒子の周りを被覆する樹脂としては、酸価100mgKOH/g以上160mgKOH/g以下である(メタ)アクリル酸エステル系共重合体が好ましい。前記酸価を100mgKOH/g以上とすると、サーマル方式でインクを吐出するインクジェット記録方式において吐出安定性が向上する。一方、前記酸価を160mgKOH/g以下とすると、顔料粒子に対して相対的に疎水性を有するようになりインクの定着性および耐滲み性が良好となる。従って、インクの高速定着、高速記録に適する。
[1−9]使用方法:
図4は、本発明の記録媒体を画像支持体に貼付し、記録物を形成した状態を模式的に示す斜視図であり、図5は、図4に示す記録物から基材シートおよび離型層を剥離した状態を模式的に示す斜視図である。
本発明の記録媒体は、図3および図4に示す記録媒体1のように、インク受容層53を画像支持体55と対向させるように画像支持体55に貼付して用いる。これにより、画像支持体55、インク受容層53および透明シート52が順次積層された積層構造が形成される。これにより、記録媒体1に記録された反転画像72が画像支持体55に貼付される。
記録媒体が、図3および図4に示す記録媒体70のように、離型層51および基材シート50を更に備えている場合は、図5に示すように離型層51および基材シート50を透明シート52の表面から剥離する。こうすることにより、透明シート52の側から見た場合に、記録媒体1に記録された反転画像72を正像として視認することが可能となる。
[2]記録物:
本発明の記録物は、図4および図5に示す記録物73のように、画像が支持される画像支持体55と、画像(図示の例では反転画像72)が記録された記録媒体1と、を備えている。そして、本発明の記録物は、既に説明した本発明の記録媒体を備えている。
[2−1]画像支持体:
画像支持体は、記録媒体の画像が支持される対象物である。画像支持体の構成は特に限定されない。樹脂を構成材料とする画像支持体(樹脂ベース支持体)、紙を構成材料とする画像支持体(紙ベース支持体)などを挙げることができる。樹脂べース支持体としては、例えばクレジットカード、ICカードなどの樹脂製カード;などを挙げることができる。紙ベース基材としては、例えばパスポートなどの紙製冊子;紙製カード;などを挙げることができる。
[2−1−1]樹脂ベース支持体:
樹脂ベース支持体を構成する樹脂は、画像支持体の用途に応じて適宜選択すればよく、特に限定されない。例えば、
ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体などのポリエステル樹脂;
ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン樹脂;
ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ4フッ化エチレン、エチレン−4フッ化エチレン共重合体などのポリフッ化エチレン系樹脂;
ナイロン6、ナイロン6,6などの脂肪族ポリアミド樹脂;
ポリ塩化ビニル、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ビニロンなどのビニル重合体樹脂;
三酢酸セルロース、セロハンなどのセルロース系樹脂;
ポリメタアクリル酸メチル、ポリメタアクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチルなどのアクリル系樹脂;
ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリイミドなどの、その他の合成樹脂;を挙げることができる。
樹脂ベース支持体を構成する樹脂は、例えば、脂肪族ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ乳酸、ポリビニルアルコール、セルロースアセテート、ポリカプロラクトンなどの生分解性樹脂であってもよい。また、樹脂ベース支持体は、樹脂を主たる構成材料としているものであればよく、例えば金属箔などの樹脂以外の材料を含むものであってもよい。
[2−1−2]紙ベース支持体:
紙ベース支持体を構成する紙の種類も特に限定されない。例えば、コンデンサーペーパー、グラシン紙、硫酸紙、サイズ度の高い紙、合成紙(ポリオレフィン系、ポリスチレン系)、上質紙、アート紙、コート紙、キャストコート紙、壁紙、裏打用紙、合成樹脂またはエマルジョン含浸紙、合成ゴムラテックス含浸紙、合成樹脂内添紙、板紙、セルロース繊維紙などが挙げられる。
[2−1−3]その他:
樹脂ベース支持体および紙ベース支持体は、必要に応じて、エンボス、サイン、ICメモリ(ICチップ)、光メモリ、磁気記録層、偽変造防止用記録層(パール顔料層、透かし記録層、マイクロ文字など)、エンボス記録層、ICチップ隠蔽層などを備えていてもよい。
また、樹脂ベース支持体および紙ベース支持体は、前記の材質からなる単層体として構成してもよいし、材質や厚さの異なるシートやフィルムを2層以上貼り合わせた複層体として構成してもよい。
更に、画像支持体の全体の厚さは、30μm以上800μm以下であることが好ましい。画像支持体の厚さを30μm以上、好ましくは500μm以上、さらに好ましくは650μm以上とすることが好ましい。一方、画像支持体の厚さを800μm以下、好ましくは770μm以下とすることが好ましい。後述するように画像支持体としてプラスチックカードを用いた場合に、記録物全体の厚さをJIS6301に記載される総厚み0.68mm以上0.84mm以下に制御することができる。
[2−2]プライマー層:
本発明の記録物は、図4および図5に示す記録物73のように、画像支持体55が、プライマー層56を更に備えていることが好ましい。図15に示すように、プライマー層56は、接着性を有する層であり、画像支持体55の表面に配置される。プライマー層を備えることで、画像支持体55と記録媒体1(具体的にはインク受容層53)との密着性、接着強度を向上させることができ、前記接着強度の不足により画像支持体から記録媒体が剥離する不具合を抑制することができる。
プライマー層の構成材料は特に限定されない。但し、加熱により接着性を発現する材料、例えば熱可塑性の合成樹脂、天然樹脂、ゴム、ワックスなどから構成されていることが好ましい。より具体的には、
エチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネートなどのセルロース誘導体;
ポリスチレン、ポリα−メチルスチレンなどのスチレン系樹脂;
ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチルなどのアクリル系樹脂;
ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタールなどのビニル系樹脂;
ポリエステル、ポリアミド、エポキシ樹脂、ポリウレタン、アイオノマー、エチレンアクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体などの、その他の合成樹脂;
ロジン、ロジン変性マレイン酸樹脂、エステルガムなどの粘着性付与剤;
ポリイソブチレンゴム(ブチルゴム)、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエン−アクリロニトリルゴム、ポリ塩素化オレフィンなどの合成ゴム;などを挙げることができる。
プライマー層が熱可塑性樹脂で構成されている場合、その熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、60℃以上160℃以下であることが好ましい。前記ガラス転移温度を60℃以上、好ましくは70℃以上とすることで、装置内部の雰囲気温度によってプライマー層が溶融することが少なく、厳格な温度管理が不要で、記録媒体のハンドリングを容易にすることができる。一方、前記ガラス転移温度を160℃以下、好ましくは140℃以下、更に好ましくは100℃以下とすることで、プライマー層が接着性を発揮する温度まで加熱しても記録媒体の反転画像を構成するインクが沸騰し難く、記録媒体と画像支持体との接着が良好となる。
ガラス転移点が60℃以上160℃以下の熱可塑性樹脂としては、例えばポリアミド、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステルなどを挙げることができる。これらの樹脂は熱時接着性が良好である点において好ましい。
プライマー層は、前記材料の1種を単独で、或いは2種以上を混合して用いることができる。また、プライマー層の厚さは、構成材料の種類、要求される接着性能、塗工性などを考慮して適宜設定すればよく、特に限定されない。但し、プライマー層の厚さが0.5μm以上10μm以下であることが好ましい。プライマー層の厚さを0.5μm以上、好ましくは1.0μm以上とすることで、紙ベース支持体のような表面が粗い画像支持体を用いた場合でも良好な接着性を得ることができる。一方、プライマー層の厚さを10μm以下、好ましくは5μm以下とすることで、後述するように画像支持体としてプラスチックカードを用いた場合に、記録物全体の厚さをJIS6301に記載される総厚み0.84mm以下に抑制するという効果を得ることができる。
なお、画像支持体がプライマー層を備えることに代えて、インク受容層にプライマー層の構成材料として例示した樹脂などを含有させることにより、画像支持体と記録媒体(具体的にはインク受容層)との密着性、接着強度を向上させることもできる。
[2−3]積層構造:
本発明の記録物は、図4または図5に示す記録物73のように、画像支持体55、インク受容層53および透明シート52が順次積層された積層構造を有している。そして、本発明の記録物は、図4または図5に示す記録物73のように、画像支持体55、プライマー層56、インク受容層53および透明シート52が順次積層された積層構造を有していてもよい。この場合において、本発明の記録物は、図4または図5に示す記録物73のように、画像支持体55とプライマー層56とが相互に当接され、プライマー層56とインク受容層53とが相互に当接された積層構造を有することが好ましい。
[3]記録媒体の製造方法:
本発明の記録媒体の製造方法は、インクジェット記録用のインクを受容するインク受容層と、全光線透過率が50%以上の透明シートと、を備え、前記透明シートおよび前記インク受容層が順次積層された積層構造を有する記録媒体の製造方法である。なお、以下の記録媒体の製造方法および記録物の製造方法の項においては、記録媒体の項などで既に説明した事項については割愛し、製造方法固有の事項のみ説明する。
[3−1]インク受容層の形成:
本発明の記録媒体の製造方法の第1の実施形態においては、透明シートの表面に、少なくとも水、無機微粒子および重量平均重合度が2,000以上5,000以下、けん化度が70mol%以上90mol%以下のポリビニルアルコールを含有する塗工液を塗工する。これにより、少なくとも前記無機微粒子および前記ポリビニルアルコールを含有する組成物からなる空隙吸収型のインク受容層を形成する。
本発明の記録媒体の製造方法の第2の実施形態においては、透明シートの表面に、少なくとも水、平均粒子径が120nm以上200nm以下のアルミナ微粒子、ならびに水溶性樹脂および水分散性樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含有する塗工液を塗工する。これにより、少なくとも前記アルミナ微粒子および前記水溶性樹脂などを含有する組成物からなる空隙吸収型のインク受容層を形成する。
[3−1−1]透明シート:
透明シートは、予め表面改質が行われたものを用いてもよい。透明シートの表面を粗面化する表面改質を行うことにより、透明シートの濡れ性が向上し、インク受容層やアンカー層との密着性を向上させることができる場合がある。表面改質の方法は特に限定されない。例えば、透明シートの表面に、予めコロナ放電処理やプラズマ放電処理を行う方法;透明シートの表面にIPAやアセトン等の有機溶剤を塗工する方法;などを挙げることができる。これらの表面処理は、インク受容層と透明シートとの結着性が高まり、強度が向上し、透明シートからインク受容層が剥離する不具合を防止することができる。
そして、透明シートは、他の層やシートとの積層体とした状態で用いてもよい。例えば、前記透明シート、離型剤を含有する組成物からなる離型層、および前記離型層の支持体となる基材シートが順次積層された積層シートを用いることが好ましい。
離型層は、基材シートを構成する樹脂フィルムなどに、離型層を構成する樹脂やワックスを含有する塗工液を塗工し、乾燥することにより形成することができる。塗工方法としては、従来公知の塗工方法、例えばグラビア記録法、スクリーン記録法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング法などの塗工方法を挙げることができる。
また、透明シートは、予めアンカー層が形成されたものを用いてもよい。
[3−1−2]塗工液:
インク受容層は、前記無機微粒子、水溶性樹脂および/または水分散性樹脂および水性媒体とともに混合して塗工液を調製し、これを基材の表面に塗布し乾燥させてインク受容層を形成することで得られる。
本発明の記録媒体の製造方法の第1の実施形態においては、塗工液としては、少なくとも水、無機微粒子および重量平均重合度が2,000以上5,000以下、けん化度が70mol%以上90mol%以下のポリビニルアルコールを含有する塗工液を用いる。
本発明の記録媒体の製造方法の第2の実施形態においては、塗工液としては、少なくとも水、平均粒子径が120nm以上190nm以下のアルミナ微粒子、ならびに水溶性樹脂および水分散性樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含有する塗工液を用いる。
塗工液の媒体としては、水性媒体を用いることが好ましい。水性媒体としては、水;水と水溶性有機溶剤との混合溶媒;などを挙げることができる。水溶性有機溶剤としては、例えば、
メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類;
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテルなどの多価アルコールの低級アルキルエーテル類;
アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;
テトラヒドロフランなどのエーテル類;などを挙げることができる。
前記塗工液としては、熱融着性樹脂を更に含有する塗工液を用いることが好ましい。前記熱融着性樹脂としては、プライマー層の項で例示した材料、特にガラス転移温度が60℃以上160℃以下の熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。また、塗工液の濡れ性を向上させ、結着性を高めるために、ポリオレフィン樹脂などを含有させることが好ましい。中でもポリエチレンを含有させることが好ましい。ポリエチレンとしては、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)などを挙げることができる。但し、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリプロピレンなども用いることができる。
塗工液には、本発明の効果を妨げない限り、各種添加剤を含有させることができる。反転画像を記録するインクとして染料インクを用いる場合には、染料固着剤を含有させることが好ましい。染料固着剤は染料分子のアニオン性基と結合して塩を形成し、染料を水に対して不溶化させることで、マイグレーションを防止することができる。
その他の添加剤としては、例えば界面活性剤、顔料分散剤、増粘剤、消泡剤、インク定着剤、ドット調整剤、着色剤、蛍光増白剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防腐剤、pH調整剤などを挙げることができる。
塗工液中の無機微粒子の濃度は塗工液の塗工性などを考慮して適宜決定すればよく、特に限定されない。但し、塗工液の全質量に対し、10質量%以上30質量%以下とすることが好ましい。
さらに、インク受容層の膜強度を調整およびインク受容層と画像支持体(被転写体)の接着強度を強める目的で、後述するプライマー層に使用する接着性を有する樹脂をインク受容層に使用することが好ましい。プライマー層に使用する樹脂をインク受容層に使用することにより、プライマー層を使用しなくても後述する画像支持体とインク受容層の接着性をもたせることが可能となるだけでなく、インク受容層を溶融させることにより画像支持体との接着性がより強固なものとすることができる。さらに、塗工膜の膜強度を弱めることができ、後述する再転写時のインク受容層の剥離性を向上させることができる。また、再転写時の加熱で、インク受容層中の樹脂をとかすことで、インク受容層の細孔を埋めることでき、水系インク中の残存水分や溶媒によるインクの移動(マイグレーション)を防ぐことができる。但し、インク受容層中に接着性を有する樹脂を含有させる場合は、樹脂により細孔が埋まってしまう可能性があるため、インクの吸収性が低下し、画像品位が低下することがある。
なお、インク受容層中に接着性を有する樹脂を用いる場合は、図6に示す製造装置25の乾燥部7において水分蒸発制御を行う際のプレ乾燥温度を、接着性を有する樹脂のTg温度以下に設定する。
また、一般に記録媒体の耐水性を改善する目的で染料固着剤を使用してもよい。このような染料固着剤は、アニオン性の基を持つインク中の染料と塩を形成し、水に対して染料を不溶化することでマイグレーションを向上させる。
[3−1−3]塗工:
インク受容層の形成は、前記透明シートの表面に、前記塗工液を塗工することにより行う。塗工後は必要により塗工液の乾燥を行う。これにより、前記透明シートおよび前記インク受容層が順次積層された積層構造を有する記録媒体を得ることができる。
前記透明シート、前記離型層、および前記基材シートが順次積層された積層シートを用いる場合には、前記積層シートを構成する前記透明シートの表面に、前記塗工液を塗工すればよい。これにより、図1に示すようなインク受容層53、透明シート52、離型層51および基材シート50が順次積層された積層構造を有する記録媒体1を得ることができる。
塗工方法としては、従来公知の塗工方法を用いることができる。例えば、ブレードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法、スロットダイコーティング法、バーコーティング法、グラビアコーティング法、ロールコーティング法などを挙げることができる。
塗工液の塗工量は、固形分換算で8g/m以上25g/m以下とすることが好ましい。塗工量を8g/m以上、好ましくは10g/m以上とすることで、インク中の水分吸収性に優れたインク受容層を形成することができる。従って、記録された反転画像中のインクが流れたり、反転画像が滲んだりする不具合を抑制することができる。一方、塗工量を25g/m以下、好ましくは18g/m以下とすることで、塗工層を乾燥させる際に記録媒体にカールが発生し難くなる。また、インク受容層の厚さを薄くすることにより、最終的に形成される記録物の厚さを薄厚化することができる。画像支持体がクレジットカードなどのプラスチックカードである場合には、日本工業規格(JIS−X−6305)により厚さが厳格に規定されているため、前記塗工量とすることが有効である。なお、塗工量を25g/m以下とした場合には、インク受容層の厚さが薄くなるため、後述するプレカット処理を行わなくてもよい。
[3−2]プレカット処理:
本発明の記録媒体の製造方法においては、前記インク受容層を形成した後、前記インク受容層の側から、前記インク受容層と前記透明シートの一部に切り込みを入れるプレカット処理を行ってもよい。プレカット処理は、記録媒体に反転画像を記録して記録媒体とし、前記記録媒体と画像支持体とを接着した後に、前記切り込みを起点にして透明シートを綺麗に切断することができる。従って、均一な厚さの透明シートからなる強固な保護層を形成することができ、インク受容層に形成された反転画像に十分な耐久性が付与される。
[3−3]反転画像の記録:
次いで、前記記録媒体における前記インク受容層の前記透明シートが積層されていない面に、前記インク受容層の側から見ると鏡像となり、前記透明シートの側から見ると正像となる反転画像を、インクジェット記録方式により記録する。これにより、図3に示すように、記録媒体1のインク受容層53に反転画像72が記録される。
インクジェット記録方式とは、記録ヘッドに形成された複数のノズルから記録媒体に対してインク(インク滴)を吐出して画像を記録する方式である。インクジェット記録方式の種類は特に限定されない。但し、駆動パルスに応じた熱エネルギーをノズル内のインクに付与して膜沸騰により気泡を形成させ、この気泡によってノズルからインク滴を吐出させるサーマルインクジェット記録方式が好ましい。
インクジェット記録方式は、インクジェット記録装置(インクジェットプリンタ)により実施することができる。インクジェットプリンタは、画像記録時に記録ヘッドと記録媒体が接触しないので、極めて安定した画像記録を行うことができる点において好ましい。インクジェットプリンタの種類は特に限定されない。但し、インク吐出口およびインク流路などからなるノズルを複数集積したマルチノズルヘッドを記録媒体の搬送方向と直交するように多数配列させたラインヘッドを備えたフルライン型のインクジェットプリンタを用いることが好ましい。フルライン型のインクジェットプリンタは記録媒体の搬送に合わせて複数のノズルのインク吐出口から同時にインクを吐出させて画像の記録を行う。このため、高品位で高解像度の画像を高速で記録することができる点において好ましい。
本発明の記録媒体の製造方法においては、前記反転画像を形成するインクジェット記録用のインクとして、顔料インクを用いることが好ましい。特に、本発明の記録媒体の第2の実施形態においては、インク受容層のアルミナ粒子の粒径を精密に制御したことにより、インク受容層の透明性が顕著に向上している。従って、インク受容層の表面から内部に浸透し難い顔料インクにより記録された反転画像であっても、透明シートを介して明瞭な画像として視認することができる。
記録ヘッドのインクの吐出量としては、20pl以下であることが好ましい。インクの吐出量を20pl以下、好ましくは10pl以下、更に好ましくは5pl以下とすることにより、記録媒体と画像支持体との加熱圧着工程においてインクの水分量を適切なレベルにコントロールすることができる。また、吐出量を小さくするほど、インク受容層でのインクの広がりを抑えることができ、稠密で十分な濃度の反転画像を記録することができる。更には、画像層(インク層)の厚さを抑えることが可能となる。
[3−4]インクの乾燥:
本発明の記録媒体の製造方法においては、前記画像を形成しているインクジェット記録用のインクの水分量を、前記インクの総打ち込み量に対して70質量%以下となるまで乾燥することが好ましい。インクの水分量を70%質量%以下、好ましくは50質量%以下とすることにより、画像支持体と記録媒体を加熱圧着させる際に、インク成分の急激な蒸発が抑制され、画像支持体と記録媒体との密着強度の低下、インク受容層における気泡残りなどの不具合を防止することができる。なお、ここにいう水分量とは、色材を除く水および不揮発性溶媒などの総量を意味するものとする。
インクの総打ち込み量は、記録ヘッドのインク吐出量により調整することができる。水分量の制御を容易に行えるように、予め画像記録時のドット数を間引くなどして、打ち込み量を制限してもよい。
前記乾燥は、ハロゲンヒータなどのヒータ(熱源)、ファンなどの排気装置などにより行うことができる。但し、ヒータ等の特別な乾燥手段を設けずに、十分な長さの搬送路を搬送させることによって、自然乾燥を促してもよい。
[4]記録物の製造方法:
本発明の記録物の製造方法は、画像が支持される画像支持体と、反転画像が記録された記録媒体と、を備えた記録物の製造方法である。
[4−1]記録媒体の製造:
まず、本発明の記録媒体の製造方法により前記記録媒体を得る。
[4−2]画像支持体:
前記画像支持体としては、記録物の項で説明した、樹脂ベース支持体、紙ベース支持体などを用いることができる。中でも、クレジットカード、ICカードなどの樹脂製カード(プラスチックカード);パスポート等の紙製冊子;などが好ましい。
前記画像支持体としては、プライマー層を更に備えた画像支持体を用いてもよい。プライマー層の形成方法は、特に限定されない。但し、プライマー層の項で例示した材料、特にガラス転移温度が60℃以上160℃以下の熱可塑性樹脂からなるシートを前記画像支持体に対して積層して積層体とし、前記積層体を加熱圧着させることにより、プライマー層を形成することが好ましい。加熱圧着の方法としては、ヒートローラを用いて前記積層体を全面的に加熱する方法、サーマルヘッドを用いて前記積層体の特定部分を選択的に加熱する方法などを挙げることができる。
[4−3]記録媒体と画像支持体との加熱圧着:
前記画像支持体と前記記録媒体とを、前記画像支持体、前記インク受容層および前記透明シートが順次積層されるように当接させた状態で加熱圧着する。これにより、前記画像支持体、前記インク受容層および前記透明シートが順次積層された積層構造を有する記録物を得る。
また、前記画像支持体として、プライマー層を更に備えた画像支持体を用いた場合には、前記画像支持体、前記プライマー層、前記インク受容層および前記透明シートが順次積層されるように前記画像支持体および前記記録媒体を配置し、前記画像支持体と前記記録媒体とを加熱圧着する。これにより、図4に示すような画像支持体55、プライマー層56、インク受容層53および透明シート52が順次積層された積層構造を有する記録物73を得る。
前記加熱圧着の温度は60℃以上160℃以下に制御することが好ましい。加熱圧着の温度を60℃以上とすることにより、プライマー層(或いはアンカー層、インク受容層)に含まれる熱可塑性樹脂を接着に十分な程度に溶融し、画像支持体と記録媒体とを圧着させることができる。一方、加熱圧着の温度を160℃以下とすることにより、画像支持体と記録媒体を加熱圧着させる際に、インク成分の急激な蒸発が抑制され、画像支持体と記録媒体との密着強度の低下、インク受容層における気泡残りなどの不具合を防止することができる。
加熱圧着の方法は特に限定されない。例えば、画像支持体に対して記録媒体を積層して積層体とし、前記積層体を一対のヒートローラ間に挟み込み、加熱圧着する方法などを挙げることができる。この際、ヒートローラの表面温度は、100℃以上180℃以下とすることが好ましい。これにより、前記積層体の搬送速度が速く加熱時間が十分にとれない場合でも、前記積層体を60℃以上160℃以下に加熱することができる。
[4−4]基材シートおよび離型層の剥離:
前記のようにして得られた記録物は、最後に、図5に示すように基材シート50および離型層51を剥離することにより、画像支持体55、プライマー層56、インク受容層53および透明シート52が順次積層された構造の記録物73が得られる。この記録物73においては、透明シート52が最上層に位置し、その下層側に位置するインク受容層53に記録された反転画像72を保護している。そして、記録媒体1と画像支持体55は、プライマー層56を介して十分に密着固定される。
[5]第1の製造装置:
図6は、本発明の記録物を製造する製造装置の第1の構成例(以下、「第1の製造装置」ともいう。)を模式的に示す側面図である。
[5−1]主要な構成:
製造装置25は、ロール状に巻回された記録媒体1を搬送経路へと送り出す供給部4と、搬送経路へと送り出した記録媒体1に、色材、水、不揮発性の有機溶媒などを含有する水系インクを直接吐出して、反転画像を記録する記録部6と、を備えている。
また、製造装置25は、インクが付与された記録媒体1の中の水分を蒸発させて画像支持体11との密着性を向上させるための乾燥部7と、蒸発した水分によって、機内の結露を防止するファン10と、記録部6において反転画像が記録された記録媒体1を画像支持体11に付着させるためのプライマー層18を画像支持体11の表面に転写する転写部13と、を備えている。
更に、製造装置25は、画像支持体11に転写されたプライマー層18を加熱して記録媒体1との密着性を向上させるための予備加熱部19と、反転画像が記録されたインク受容層および透明シート23を画像支持体11に付着させる付着部29と、反転画像が記録された画像支持体11を排出して集積する排出部26と、を備えている。
[5−2]動作:
供給部4は、ロール状の記録媒体1を図中の矢印に示す方向に回転させ、記録媒体1を記録部6および乾燥部7へ送り出す。その際、記録媒体1はシートガイド27で案内されるとともに、グリップローラ3とニップローラ2で挟持され、平坦な状態で記録部6へと搬送される。
供給部4から記録媒体1の搬送が開始されると、センサ部31により、プレカット処理部5でプレカット処理された被検出部8(貫通孔)の検出を行い、記録部6は記録媒体1のインク受容層に反転画像9を記録する。記録動作が終了すると、記録媒体1は乾燥部7とガイド板28の間を通過する。乾燥部7は反転画像9を形成するインク中の水などを蒸発させ、ファン10は蒸発した水分を排気する。これにより、記録媒体1のインク受容層に反転画像9が記録された記録媒体が得られる。
一方、画像支持体供給部12は、転写部13に画像支持体11を1枚ずつ供給する。転写部13は、プライマー層18を、供給ロール15から供給し、サーマルヘッド30と画像支持体11間を通過させ、巻上げロール17に巻き取る。この際、プライマー層18はガイドロール16により支持されている。プライマー層18はサーマルヘッド30により画像支持体11に転写される。
予備加熱部19は、記録媒体1の密着性を向上させるため、プライマー層18の予備加熱を行う。この際、ファン20がプライマー層18から蒸発した溶剤などを排気する。更に、レジストガイド14が画像支持体11と記録媒体1の位置合わせを行う。その後、画像支持体11が記録媒体1の上に積層される。
画像支持体11と記録媒体1との積層体は付着部29に搬送される。付着部29は一対のヒートローラ21、22を備えている。前記積層体が一対のヒートローラ21、22の間を通過する際に画像支持体11と記録媒体1とが加熱圧着される。その後、記録媒体1を構成している基材シートおよび離型層が剥離され、巻取りロール24に巻き取られる。このような動作を経て、画像支持体11に記録媒体1が加熱圧着された記録物73を得ることができる。
[5−3]第1の製造装置とコントローラとの接続:
図8に示すように、製造装置25(画像形成記録装置)は、ネットワーク47を経由してコントローラ41に接続される。但し、この製造装置25は、ネットワーク47を介さずに、シリアル・ポート、パラレル・ポート、またはUSBポート等を介してコントローラ41に接続することも可能である。製造装置25は、前述のようにプレカット処理部5、記録部6、乾燥部7、予備加熱部19、転写部13、および付着部29などを備えるとともに、後述するCPUが記録部6に備えられ、プレカット処理部5、乾燥部7、予備加熱部19、転写部13、および付着部29が記録部6に接続されている。そして、CPU100が、プレカット処理部5、記録部6、乾燥部7、予備加熱部19、転写部13、および付着部29の動作を制御するように構成されている。
ネットワーク47は、インターネット、ローカルエリアネットワーク(LAN)等のネットワークであり、有線、無線を問わない。コントローラ41は、製造装置25を制御するためのコンピュータである。コントローラ41は、制御部44、表示部45、入出力部46、記憶部42、通信部43がシステム・バス48を介して互いに接続される。また、コントローラ41にはデジタルカメラや、画像データ等を読み込むためのドライブ装置等が接続される場合もある。さらに、コントローラ41には製版装置等が接続されることもある。
制御部44は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を有する。CPUは、記録部、ROM等に格納されるプログラムをRAM上のワークメモリ領域に呼び出して実行し、演算処理、動作制御を行い、システム全体を制御する。ROMは、不揮発性メモリであり、プログラム、データ等を恒久的に保持する。また、RAMは、揮発性メモリであり、プログラム、データ等を一時的に保持する。
表示部45は、CRTモニタ、液晶パネル等のディスプレイ装置、ディスプレイ装置と連携してコンピュータのビデオ機能を実現するための論理回路等(ビデオアダプタ等)の表示装置等である。
入出力部46は、データの入出力を行う部分である。データの入力を行うものとしては、例えば、キーボード、マウス等のポインティングデバイス、テンキー等があり、これらの入力部を介して、コントローラ41に対して、操作指示、動作指示、データ入力、維持管理等を行うことができる。また、不図示のスキャナやドライブ装置等と接続され、これらの外部装置からの入力データを制御部44に転送したり、データを外部装置に出力したりする。
記憶部42は、データを記憶する装置であり、磁気ディスク、メモリ、光ディスク装置等がある。記憶部42には、制御部44が実行するプログラム、プログラム実行に必要なデータ、OS(Operating System)等が格納される。また製造装置25の記録部6で記録されるパターンを格納することもできる。通信部43は、コントローラ41とネットワーク47間の通信を媒介する通信インターフェースであり、通信制御装置、通信ポート等を有する。なお、パーソナルコンピュータ等をコントローラ41の代りに用いることも可能である。
[5−4]制御系:
図9は、図8に示す記録部6に設けられた制御系の構成を示すブロック図である。ホストPC120から送信された記録データやコマンドはインターフェイスコントローラ102を介してCPU100に受信される。CPU100は、記録部の記録データの受信、記録動作、ロ−ル紙Pのハンドリング等、全般的な制御を司る演算処理装置である。CPU100は、受信したコマンドを解析した後、記録データの各色成分のイメージデータをイメージメモリ106にビットマップ展開する。記録前の動作処理としては、出力ポート114、モータ駆動部116を介してキャッピングモータ122とヘッドアップダウンモータ118を駆動し、各々の記録ヘッド22K、22C、22M、22Yをキャッピング位置(待機位置)から離して記録位置(画像形成位置)に移動させる。
続いて、一定速度で搬送される記録媒体にインクを吐出し始めるタイミング(記録タイミング)を決定するためのセンサ部31(先端検出センサ)で記録媒体の位置を検出する。その後、記録媒体の搬送に同期して、CPU100はイメージメモリ106から対応する色の記録データを順次に読み出し、この読み出したデータを各々の記録ヘッド22K、22C、22M、22Yに記録ヘッド制御回路112を介して転送する。これにより、記録ヘッドの各ノズルに設けられた吐出エネルギー発生素子が記録データに従って駆動され、駆動された吐出エネルギー発生素子によってノズルからインク滴が吐出される。吐出されたインク滴は、記録ヘッドに対向する位置にある記録媒体のインク受容層(インク受容部)へと着弾し、ドットを形成する。このドットの集合によって所望の画像が形成される。
なお、上記のようなCPU100の動作はプログラムROM104に記憶された処理プログラムに基づいて実行される。プログラムROM104には、制御フローに対応する処理プログラム及びテーブルなどが記憶されている。また、作業用のメモリとしてワークRAM108が使用される。
[5−5]第1の製造装置の動作フロー:
次に、図6に示す第1の製造装置の動作フローを図10のフローチャートに従って説明する。このフローチャートは図9に示すCPU100により実行される。
記録部のCPUは、コントローラよりネットワークまたは各種ポートを介して記録データが送信されたか否かを判断し(S101)、記録データが送信されていると判断されると(S101のYES)、供給部からの未記録の記録媒体の供給を開始させる(S102)。このときセンサ部は、プレカット処理部でプレカット処理された被検出部(貫通孔)の検出を行い、センサ部が被検出部を検出していなければ(OFFであれば(S103のYES))、記録媒体への記録部による記録動作(S104)を開始する(S104)。この後、記録動作が終了すると(S105のYES)、乾燥部は、記録部によって記録された記録媒体から余分な水分を蒸発させるための乾燥処理を行う(S106)。以上の動作は、いずれもセンサ部が被検出部を検出した時点を基準としており、互いに同期をとりながら行われる。なお、プレカット処理部で処理される被検出部は、予め記録媒体に形成しておいたものでも良い。
一方、前述のようにCPUに記録データが送信されると(S107のYES)、画像支持体供給部から転写部(プライマー転写部)へと画像支持体が給送される(S108)。転写部では、給送された画像支持体の上にシート状のプライマーが供給され、そのプライマーはサーマルヘッドにより画像支持体上に転写される(S109)。この後、記録部で記録された記録媒体1の密着性を向上させるため、予備加熱部によるプレ過熱処理を行い(S110)、レジストガイドにおいて画像支持体と記録媒体との位置合わせを開始し(S111)、記録媒体との位置合わせが完了した時点で(S113)、先のステップへと進む。このとき、S114のステップはYESとなり、画像支持体は記録媒体上に載り、付着部によって記録媒体と画像支持体とをプライマーを介して互いに接着させる(S115)。この後、下流側へと搬送されるに伴って、プレカット処理部でプレカットされた部分を基点に、記録媒体の基材が剥離し、記録物(最終記録物)を排出部に積載させる(S116)。記録物は、図12に示すようにインク受容層53を挟み込む形で透明シート52が付着され、優れた画像品位を実現するとともに、強固な堅牢性を有する。
[5−6]第1の製造装置により実行される処理:
[5−6−1]記録媒体の位置検出およびプレカット処理:
図6に示す被検出部8では、記録媒体1と記録部6との同期をとるため、記録媒体1の位置を検出し、その検出結果に基づいて各部の制御を行なっている。メディアの検出には、反射型または透過型の光センサを用いている。被検出部8は、予め記録媒体1に記録または加工されているか、プレカットによって形成されてもよい。その際に、記録媒体1のインクの受容層部分を厚くした場合には、再転写後の剥離工程が構成的・時間的に困難となる場合があるため、検出部同様に予め加工されているか、メディア加工部によって形成しても良い。
[5−6−2]カット処理:
記録媒体は、必要に応じて図13または図21に示すようにインク受容層53と透明シート52の一部分またはインク受容層53とアンカー層59と透明シート52の一部分に切込み54または切込み60を形成しておくカット処理(以下、プレカット処理という)が施されている。このため、プライマー層56を有する画像支持体55に記録媒体1を付着させた場合、プレカット処理により形成された切込み54を境界にして、透明シート52が切断され、画像記録された部分(画像記録領域)が透明シート52によって覆われる。この透明シート52は均一厚みを有する強固な保護層として機能するため、画像には十分な耐久性が付与されることとなる。また、図12および図22に示すように記録媒体1を剥離した後、プレカット処理により形成された切込み54または切込み60の部分で、透明シート52が綺麗に切断されるため、保護層を画像上に精度良く、簡単に転写することができる。
また、プレカット処理を施し、切込み54または切込み60を形成することにより、シャープで正確なエッジ形状を得ることができる。これにより、画像支持体の、例えばサインパネル、ICチップ、磁気ストライプの部分や、画像支持体に予め記録されているロゴ、ホログラム等の意匠デザインの部分の位置と、上記の部分的に抜けている部分の位置を合わせて、そのパッチを画像支持体へ付着させることができる。これにより、サインパネルやICチップ、磁気ストライプ等の部分では、その部分の後処理における性能の低下を防止することができる。また、ロゴ、ホログラム等の意匠デザイン部分では、その個所に画像が形成されると、透明性が損なわれ(不透明性が増加し)、品位の低下が生じるために、画像形成部から外す必要があるが、これを正確に行うことができる。なお、上記のサインパネル部分は、ボールペン等の筆記具で手書きしたり、スタンプインキでナンバリングしたり、朱肉やスタンプインキで捺印したりする部分である。
プレカット処理により形成される切込み54または切込み60は、図11に示すようにインク受容層53と透明シート52の一部分、または図21に示すようにインク受容層53とアンカー層59と透明シート52の一部分に行われているものであり、離型層51まで切り込みを形成するカット処理とは異なるものである。
第1の製造装置においては、インクジェット方式による記録を行うため、インク受容層53がインクを吸収する必要があり、吸収性を確保するためにインク受容層の厚みを厚くする必要がある。特にインク受容層53が空隙吸収型で形成され、インク受容層中に接着性を有する樹脂等が含有されていなかったり、その塗工量が25g/m以上となったりした場合には、インク受容層の厚みにより、画像形成領域が不用意に記録媒体から剥がれてしまうことがある。このため、画像形成領域の剥がれを防止するために、プレカット処理を行うことが好ましい。
また、離型層51までカット処理を施してしまうと、インクジェット方式によって画像を記録する第1の製造装置では、カット部にインクが吐出された場合に、図13に示すように離型層51にインクが吸収されてしまい、記録画像の品質低下を招く。これに対し、図14または図23に示すように、プレカット処理を施した部分への記録が行われても、インクはインク受容層53に適切に吸収されるのみで、透明シート52には吸収されないため、良好な記録画像を得ることができる。このため、インク受容層53と透明シート52の一部分またはインク受容層とアンカー層と透明シートの一部分に切込み54を形成するプレカット処理を行うことが好ましい。
前述した画像はがれを防止するために、再転写前のプリンタ内での記録媒体1の搬送は曲率を持たずに平滑な状態で搬送されることが好ましい。これにより、プリンタ走行中に、画像形成部が不用意に記録媒体から剥がれることがなく、過酷な使用条件においても、転写画像の各種耐久性に優れたものを作製でき、透明シート52を画像上に精度良く、簡単に転写不良が無く、画像支持体へ再転写させることができる。
[5−6−3]記録処理:
記録ヘッドに形成された複数のノズルから記録媒体にインク(インク滴)を吐出して画像を形成するインクジェット方式画像形成装置(インクジェットプリンタ)が広く使用されている。ノズルからインク滴を吐出させる技術として、駆動パルスに応じた熱エネルギをノズル内のインクに供給して膜沸騰による気泡を形成させ、この気泡によってノズルからインク滴を吐出させる技術が知られている。形成する画像に応じた多数のインク滴がノズルから記録媒体に吐出されることにより記録媒体に画像が形成される。
インクジェットプリンタには、画像記録速度を向上させるために、インク吐出口及びインク流路等からなるノズルを複数集積したマルチノズルヘッドを記録媒体の搬送方向に直交させて多数配列させたラインヘッドを用いる、フルライン型のものがある。このフルライン型のプリンタでは、記録媒体の搬送に合わせて複数のノズルのインク吐出口から同時にインクを吐出させて画像の記録を行う。このため、上記のフルライン型のインクジェットプリンタによれば、画像品位で高解像度の画像を高速で形成する、という現在のプリンタに対する要求を満足させることができる。また、インクジェットプリンタは、画像記録時に記録ヘッドと記録媒体とが非接触であるので、非常に安定した画像記録を行うことができるという利点も有している。記録ヘッドのインクの吐出量としては、後述する再転写時のインクの水分量を適切に管理するという観点から、好ましくは20pl以下、より好ましくは10pl以下、さらに好ましくは5pl以下のものが利用される。色材の濃度にもよるが、インク受容層でのインクの広がり具合から、吐出量が小さくなるほど稠密で十分な濃度の画像を形成できると共に、インク層の厚みを抑えることが可能になる。したがって、20pl以上の吐出量では、画像支持体と記録媒体との付着工程におけるインクの水分量のコントロールが困難になる可能性がある。
記録媒体1は、グリップローラ3とニップローラ2とに挟持されつつ記録部6へと搬送される間に、ガイド板28が存在し、記録媒体1はそのガイド板28の上を通過し案内されて記録部6に入る。記録部6は、K、C、M、Yからなる4つの記録ヘッドを主な構成部としている。6個の記録ヘッドは、画像データに応じてインクを吐出し、記録媒体1に設けたインク受容層にインク滴を吐出して画像を形成する。
インクとしては、染料インクおよび顔料インクのどちらも好適に使用できる。しかしながら、再転写時の画像支持体55とインク受容層53の接着性を高めるためには、記録後の記録表面からの水分の蒸発による接着不良を防止するために、乾燥された状態(表面にインク中の水分溶媒が残らない状態)にすることがよく、また、水系インク中の残存水分や溶媒によるインクの移動(マイグレーション)を防止する観点からも、顔料インクが好ましく用いられる。さらに、顔料インクは印字画像の耐光性を付与させることの可能であるため、好ましく用いられる。
上記内容についてさらに詳細に説明する。顔料インクは、図25に示すように、隙間吸収型のインク受容層においては、顔料インク中の顔料成分63は粒子径が大きいため、インク受容層を形成する顔料粒子65で構成される細孔の内部まで浸透せずに、インク受容層64の記録表面で定着する。さらにインク受容層は、膨潤型のインク受容層とは異なり、インク受容層が膨潤することなく平滑に保たれる。一方、後述する膨潤吸収型のインク受容層を用いた場合は、図26に示すように、インク中の水分によりインク受容層67が膨潤して、インク受容層66の表面に凹凸が発生するため、画像支持体55の接着性を低下させてしまう。また、インク中の残存水分や溶媒はインク受容層66の表面に残るため、付着工程における残存水分および溶媒の蒸発により、画像支持体とインク受容層のとの密着性が不足する可能性がある。
また、顔料インク中の顔料成分はインク受容層53の表面で定着する一方でインク中の水分および溶媒成分62は、インク受容層の内部まで浸透し、表面の顔料成分63と分離(固液分離)する。これにより、再転写時には、顔料表面は乾燥した状態になるため、水分の蒸発による接着不良を防止し接着性を向上することができる。また、残存水分および溶媒成分62はインク受容層の内部にとどまるため、顔料成分は、再度、残存水分および溶媒成分62が接触することがないため、インクの移動(マイグレーション)を防止することができる。
また、顔料インク中の顔料成分としては、色材顔料の周りを樹脂で被覆した樹脂分散型の顔料成分を用いることが好ましい。樹脂分散型の顔料を用いることによって、固液分離後の顔料同士の結着力を高めることができ、さらには、再転写時のプライマー層との結着力を高めることができる。これにより、顔料表面上の水分は顔料膜によって、インク受容層中の下層の水分とはほぼ遮断され、さらに下層からの水分補給もほぼ遮断された状態になるため、少量であれば、自然乾燥で十分に乾燥できる。このような顔料を被覆させる樹脂としては、相対的に疎水性を有することにより定着性が良好になる樹脂の酸価100mgKOH/g以上160mgKOH/g以下である(メタ)アクリル酸エステル系共重合体が好ましい。(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の酸価が160mgKOH/gを超えると、記録される画像(印字物)の顔料成分の親水性がつよくなるため、耐滲み性が低下する傾向にある。一方、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の酸価が100mgKOH/g未満であると、サーマル方式でインクを吐出するインクジェット記録装置で用いた場合に吐出安定性が低下する傾向にある。以上の理由から、顔料インクは高速定着するため高速記録に最適である。
一方、染料インクは図27に示すように、染料成分68と水分および溶媒はインク受容層を形成する顔料粒子65で構成される細孔の内部まで浸透して定着するため、インク受容層中で、顔料インクで示したような固液分離はおこらない。このため、再転写後に染料成分68が残存する水分および溶媒成分と再度接触すると、水分および溶媒成分に染料が再度溶解してしまうため、図28に示すように染料成分68が染料成分69のように移動(マイグレーション)が起こってしまうため、好ましくない。
[5−6−4]水分蒸発制御:
再転写時にインクを含む受容層表面に、インクが残存すると画像支持体と密着不良となる。再転写時の加熱により受容層表面層に残るインク成分やインクの急激な蒸発により密着製不足や受容層の部分的な気泡残りなどの不具合の可能性がある為、再転写用インクジェット記録後、再転写前に転写シートの搬送路に効果的な工夫を施したプレ乾燥が必要な場合がある。ヒータ等の特別な乾燥手段を設けずに、再転写前に十分な長さの搬送路を備える構成として自然乾燥を促しても良い。またその際に蒸発したインク成分による装置内部の気流制御や排気手段が必要な場合がある。図6に示すように、記録部6によって、記録媒体1上のインク受容層に記録した反転画像9を、乾燥部7とガイド板28の間を通す際に、ハロゲンそれに順ずる熱源及び風、またはそれら二つの組み合わせによる蒸発機能を持つ乾燥部7によって、受容層に記録した画像に含まれているインクの主成分である水や若干の揮発性溶剤成分を蒸発させ、蒸発した気体が機内において結露等するのを防ぐために、ファン10によって気流及び排気の制御を行う。気流制御を併用することによって、インク受容層表面の飽和蒸気圧も改善されて乾燥が促進される場合もある。
上記水分制御によって、付着工程時にインク受容層中のインクの水分量(色材を除く水と不揮発性溶媒等の総量)を、インクの総打ち込み量に対して70%以下、さらに好ましくは50%以下に制御する。インクの水分量が70%以上残る場合には、インク受容層の厚みにも拠るが、インク受容層表面層に残るインク成分やインクの急激な蒸発により密着製不足や受容層の部分的な気泡残りなどの不具合の可能性があるため好ましくない。また、上記インクの総打ち込み量は、前記ヘッドの吐出量により異なるが、上記水分制御が適切に行われるように、予め画像形成時のドット数を間引くなどして、打ち込み量を制限するなどして、適正な打ち込み量に設定することができる。
[5−6−5]付着工程:
図6に示すように、記録媒体1上に設けた受容層に画像が記録部6にて形成され、次にその記録媒体1がガイド板28の上に案内されて、2本のヒートローラ21、22から構成される付着部29に移動する。この付着部29では、画像支持体11が枚葉状のシートの形態で、画像支持体供給部12に置かれて、転写部13でプライマーを画像支持体11に転写した後、レジストガイド14で位置を補正し、記録媒体1の搬送に合わせて供給する。画像支持体供給部12は、画像支持体の転写面へのゴミ付着やピックアップ時によるゴムロールからの汚染を防止するため、下方からの給紙とする。
プライマーの転写は、画像支持体11を1枚ずつ転写部13内に供給し、供給ロール15(プライマー供給ロール)からサーマルヘッド30と画像支持体11間を通り、ガイドロール16を経由して巻上げロール17(プライマー巻上げロール)側に巻き取られて搬送される。サーマルヘッド30はプライマーの厚みや材質等で変わる熱容量に応じてエネルギーが印加され、発熱し、プライマーを画像支持体11に移行させて接着層を形成する。サーマルヘッド30の選択的加熱により、IC部など表面コートを行いたくない特殊な部分へのプライマー転写を行わない、選択的なプライマー転写が可能となるが、全面へのプライマー層の付与が前提となる装置では、安価なヒートローラなどの加熱手段によるプライマー転写を行うことも可能である。
記録媒体1の画像形成されたインク受容層と画像支持体11のプライマーとを重ねてヒートローラ21、23間に搬送し、加熱することで、プライマーを介して画像支持体11と画像形成されたインク受容層と透明シート23とが接着する。その後、記録媒体1に設けられている基材シートを記録媒体1から剥離する。これにより、画像支持体11上に画像の形成されたインク受容層と共に透明シートが付着した状態となる。つまり、画像支持体11上には透明シート23が保護膜として最上層に位置し、その保護膜の下に画像が形成される。
また、再転写時の温度は、再転写時にインク中の水の急激な蒸発が発生すると密着不良や受容層の部分的な気泡残りが発生するため、再転写時の温度をプライマーの接着が発現するプライマーのTg以上、インクの蒸発温度以下の範囲で行うものとする。再転写時におけるインク受容層への加熱は、プラスチックカードなどの厚めの画像支持体側からでなく、主として記録媒体の基材シート側からの熱伝達によって行われるが、付着工程時のインク受容層の最大到達温度がインクの主成分たる水の蒸発温度を超えないように制御すれば良い。つまり、記録媒体1と画像支持体11とを接着させる際のヒートローラの表面温度は、水が蒸発して記録媒体1と画像支持体11との間に気泡ができない温度であればよく、また搬送速度等が速く熱源による加熱時間が十分に取れない場合は熱源と受容部との温度差が生じる場合もあることから、ヒートローラの表面温度は、100℃〜180℃など、通常の水の蒸発温度よりも高くなるように制御しても構わない。また、閉空間による加熱では、圧力上昇による沸点上昇もあるため、プライマー層と透明シート層とに挟まれたインク受容層では、水の蒸発温度は上昇するため、密着性・箔切れ性に考慮してさらに高い温度となるように制御しても良い。
[5−6−6]プレ加熱:
図6に示すように、プライマー層18を予めカード側に転写し、記録された記録媒体1と位置を合わせて付着させる場合は、プライマー層18の少なくとも表層のみで加熱溶融させることによって付着を行うことが可能となる場合がある。そのためには、プライマー層とこれを転写した紙などの画像支持体とを含むカード等の表面を、記録媒体1を付着させる前に予備加熱部19で適度に加熱しておけば、記録媒体1上のインク受容層の加熱による過度な温度上昇を制御できる。またこの加熱の際に、プライマー層から蒸発した溶剤は、ファン20によって気流及び排気の制御を行う。
[5−6−7]剥離処理:
図6に示すように、付着部29を通過した記録媒体1の基材シート50は、プレカット処理により分離された画像形成領域が剥がれた状態で、巻取りロール24側に巻き取られ、また画像形成された画像支持体11は排出部26に搬送されて一枚ずつ集積されていく。
図6に示す製造装置25(記録物製造装置)では、記録媒体1の搬送角度θが0〜165°であり、さらに好ましくは0〜90°である。この搬送角度θに設定することにより、プリンタ走行中に、プレカット処理部5にて記録媒体1のプレカット処理により分離されたパッチ部分が不用意に剥がれたり、めくれたりすることを防止することができる。図6の場合の搬送角度θは、記録部6から付着部29までの搬送経路と、ヒートローラ21、22から巻取りロール24までの搬送経路とのなす角度であるが、これに限定されない。
図11は記録物(最終記録媒体)の構成をしめすもので、記録物73は図11に示すようにインク受容層53を挟み込む形で透明シート52が付着されることにより、優れた画像品位と強い堅牢性を併せ持つ。
[6]第2の製造装置:
次に、本発明の記録物を製造するための製造装置の第2の構成例(以下、「第2の製造装置」ともいう。)を説明する。
図16は、第2の製造装置25の全体構成を示す模式図である。この製造装置25はロール状に捲装された記録媒体1を搬送経路へと送り出す供給部4と、搬送経路へと送り出した記録媒体1に水系インクを直接吐出して記録する記録部6とを備える。さらに製造装置25は、記録媒体1に記録された反転画像9に含まれる溶媒を蒸発させて画像支持体11との密着性を向上させる乾燥部7と、蒸発した水分によって、機内の結露を防止するファン10と、記録部によって記録された記録媒体1と画像支持体供給部12とを有する。さらに製造装置25は、レジストガイド14で位置合わせされた画像支持体11を記録媒体1に接着させるためのプライマーを転写する転写部13を記録媒体1の搬送経路上に備える。この構成が、上記第1の製造装置との主な相違点である。第1の製造装置との共通部分は、第1の製造装置と同じ装置及び同じ制御系構成を有しているので説明は省略する。また製造装置25は、転写部13で記録媒体1上に転写されたプライマー部分を加熱し、画像が記録されたインク受容層を有する透明シート52と画像支持体11とを互いに付着させる付着部29と、画像形成された画像支持体11を排出して集積する排出部26とを備える。また水分蒸発制御及びプレカット条件については、上記第1の製造装置と同様、記録媒体1の付着条件は、プライマーを転写した分、記録媒体1が厚くなるので、第1の製造装置よりも多めに加熱する必要がある。
第2の製造装置は、記録媒体1上にプライマーを直接転写することで、供給部から供給される記録媒体1を画像支持体11に再転写し排出するまでの経路が直列的に構成されるため簡略化でき、記録物製造の高速化が図れる。なお、図18はプライマーの転写部13によって転写されたプライマー層の概略図であり、基材シート57上に設けたインク受容層53の上面にさらにプライマー層56を転写させたものとなっている。また、プライマー層を設ける基材シート57は第1の製造装置で用いた基材シート50と同様のものを用いることができる。
次に、第2の製造装置における動作を図17のフローチャート及び図16に基づき説明する。このフローチャートはCPUにより実行される。
供給部4から給紙される未記録の記録媒体1の搬送動作は、図8に示す、コントローラ41によりネットワークまたは各種ポートを介して記録データが送信された後に開始される(S201,S202)。ここで、センサ部31が、記録媒体1にプレカット処理部5でカットされた被検出部8を検出すると(S203のYES)、記録媒体1に対して記録部6との記録動作及び乾燥部7による乾燥処理及び付着部29(再転写部)による記録媒体1の画像支持体11への付着(再転写)の開始から終了の同期を取って制御を行う(S204,S205)。ここで被検出部8は、プレカット処理部5以外で事前にカット処理されたものを用いても良い。
記録部6によって記録された記録媒体1を乾燥部7によって、記録媒体1に記録さて残った余分な水分を蒸発させた後、記録媒体1の搬送経路内に設置された転写部13によって、シート状で供給されるプライマーをサーマルヘッド30によって画像支持体11上にプライマーを転写する(S206、S207)。
一方、画像支持体供給部12より供給された画像支持体11は、レジストガイドにて記録媒体1との位置合わせの同期を取って記録媒体1上に載せられる(S208〜S212)。この後、S213のステップではYESとなり、付着部29のヒートローラーによって画像支持体11と記録媒体上のプライマーを介して接着させる(S214)。さらに、プレカット処理部5でプレカットされた部分を基点に、記録媒体の基材シートを剥離させて、最終記録物を排出部に積載させる(S215)。
[7]第3の製造装置:
第3の製造装置は、第1の製造装置の図6に示す構成と同一の構成を有している。但し、インクの定着性が必要な場合には、記録速度を上げる場合には記録媒体1上のインク空隙型受容層に吐出されたインクの吸収速度を向上させるために、プライマー(樹脂)を画像支持体11に転写すると共に、インク受容層内に含まれた接着用の樹脂を排除する。これによりインクの吸収速度の向上が図れる。
[8]第4の製造装置:
次に、第4の製造装置を説明する。第4の製造装置は、上記第2の製造装置の図16に示すものと同様の構成を有している。但し、第4の製造装置では、記録媒体1の空隙型受容層からなるインク受容層を薄くし、その薄くしたインク受容層53に記録部6で画像を記録した後、記録媒体1上にプライマーを直接転写することで、付着工程において付着される膜厚を薄くしている。これによってプレカット等の加工が不要となり、生産性の向上および装置コストの低減を図ることが可能になる。すなわち、第4の製造装置では、付着部29で加熱して画像支持体11に記録媒体1を付着させた後、速やかに画像支持体11の端部が記録媒体1から剥がれ、画像が形成されるものとなっている。なお、インク受容層の塗工量としては、20〜25g/m以下の塗工量とすることが好ましい。
[9]第5の製造装置:
第5の製造装置は、第2の製造装置の図16と同様の構成を有しているが、インク受容層として膨潤型受容層を有するものとなっている。この膨潤型受容層は、薄くてもインクの吸収が早く、プレカットを行わなくても速やかに画像支持体11の端部が記録媒体1から剥がれて、画像が形成されるため、高速記録に適している。但し、表面に凹凸があるため、プライマーの厚みで凹凸を吸収することにより平滑性を持たせたものとなっている。
次に、膨潤吸収型インク受容層について説明する。膨潤吸収型のインク受容層は、インクを吸収する水溶性樹脂などから構成される。水溶性樹脂としては、ゼラチン、メチルセルロース、セルロースアセテート、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース誘導体、寒天、カゼイン、でん粉及びポリビニルアルコールが上げられる。この中でもゼラチンはインクで用いている水や溶媒の吸収性が良好になることから好ましく用いられる。
ゼラチンとしては動物のコラーゲンを原料としたゼラチンであれば何れも使用できるが豚皮、牛革、牛骨を原料としたコラーゲンから得られるゼラチンが好ましい。さらにゼラチンの種類としては特に制限はないが、石灰処理ゼラチン、酸処理ゼラチン、誘導体ゼラチンに記載の誘導体ゼラチン)を単独またはこれらを組み合わせて用いることができる。
第5の製造装置において、水溶性樹脂として、上記説明したゼラチン、セルロース類及びポリビニルアルコールの他に、例えば、ポリビニルピロリドン類、ポリアクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、ポリジメチルアミノアクリレート、アクリル酸ビニルアルコール共重合体塩等のアクリル基を含むポリマー(特開昭60−168651号、同62−9988号参照)、澱粉、酸化澱粉、カルボキシル澱粉、ジアルデヒド澱粉、カチオン化澱粉、デキストリン、アラビアゴム、カゼイン、プルラン、デキストラン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類、ポリビニルエーテル、ポリグリセリン、マレイン酸アルキルビニルエーテル共重合体、マレイン酸N−ビニルピロール共重合体、スチレン無水マレイン酸共重合体、ポリエチレンイミン等の合成ポリマー等も併用することができる。
また、空隙吸収型同様にインク受容層53の膜強度を調整する目的で、後述するプライマー層56に使用する樹脂をインク受容層してもよい。なお、インク受容層中に接着性を有する樹脂を用いる場合は、水分蒸発制御で行うプレ乾燥温度を接着性を有する樹脂Tg以下に設定する。上記インク受容層の塗工量として好ましい範囲としては5〜20g/mであり、より好ましい範囲は10〜15g/mのとなるのが好ましい。上記の範囲にすることで良好なインク吸収性を維持することができる。
膨潤吸収型は、空隙吸収型に比べ少ない塗工量になるため、付着時の剥離性は向上するものの、インクの吸収時間には時間を要し、インクの水分および溶媒がインク受容層53表面に残りやすくなるため、画像支持体とインク受容層のとの密着性が不足する可能性がある。このため、画像支持体とインク受容層とを付着させる場合にはプレ乾燥を行い、インク受容層の水分蒸発制御を行って使用することが好ましい。また、膨潤吸収型のインク受容層を使用する場合には、インク受容層の厚みを薄くすることが可能になるため、プレカット処理を行わなくても良い。
なお、接着層の厚みは、膨潤吸収型インク受容層を使用する場合、インクの吸収によってインク受容層が膨潤してインク受容層の厚みが厚くなるため、その厚みにより表面に凹凸が発生しても十分な接着性が確保できるという点で、膨潤吸収型インク受容層の厚みより厚くするほうが好ましく、具体的には2〜3倍程度にすることが好ましい。
以上説明したように、上記第1〜第5の製造装置によれば、記録媒体が基材上に少なくとも透明シートとインク受容層を有している場合に、記録媒体を画像支持体に付着させる工程においてインク受容層のインク水分量の制御と付着時の温度制御とを行っている。これにより、記録媒体の透明シートと画像支持体との密着性を向上し、耐候性、耐水性、耐薬品性、耐ガス性などの各種耐久性に優れた画像形成プリンタを提供することができる。
以下、実施例および比較例により、本発明を更に具体的に説明する。但し、本発明は、下記の実施例の構成のみに限定されるものではない。なお、以下の記載における「部」、「%」は特に断らない限り質量基準である。
(実施例1−1)
以下の方法により空隙吸収型のインク受容層を備えた記録媒体を製造した。
[アルミナ水和物分散液の調製]
ベーマイト構造(擬ベーマイト構造)を有するアルミナ水和物A(商品名「Disperal HP14」、サソール製)20部を純水中に添加し、更に酢酸0.4部を添加して解膠処理を行うことによりアルミナ水和物分散液を得た。前記アルミナ水和物分散液におけるアルミナ水和物微粒子の平均粒子径は140nmであった。次いで、前記分散液に対して、ホウ酸0.3部を添加し、ホウ酸添加アルミナ水和物分散液を得た。
[ポリビニルアルコール水溶液の調製]
これとは別に、ポリビニルアルコール(商品名「PVA235」、クラレ製)をイオン交換水に溶解し、固形分含量が8質量%のポリビニルアルコール水溶液を調製した。なお、前記ポリビニルアルコールは、重量平均重合度が3,500、けん化度が87〜89mol%のものであった。
[インク受容層形成用塗工液の調製]
前記ホウ酸添加アルミナ水和物分散液100質量部と、前記ポリビニルアルコール水溶液27.8質量部を、スタティックミキサーにより混合し、インク受容層形成用の塗工液を得た。
[記録媒体の製造]
前記混合の直後に、前記塗工液を透明シート、離型層および基材シートの積層シートにおける透明シート上に塗工し、乾燥することにより、空隙吸収型のインク受容層を備えた記録媒体を製造した。前記塗工液の塗工は、ダイコーターを用い、5m/分の塗工速度で、乾燥後の塗工量が15g/mとなるように行った。乾燥温度は600℃とした。なお、前記積層シートとしては、商品名「DCR−320」(ダイニック製)を用いた。前記積層シートは厚さ15μm、全光線透過率が100%のものであった。
上記のようにして得られた記録媒体に、図6に示す製造装置25により、40%ベタ印刷を行って記録媒体とした後、画像支持体である塩化ビニル製のカード(商品名「C−4002」、エボリス製)に貼り付け、前記基材シートを引き剥がすことにより、実施例1−1の記録物を得た。
(実施例1−2)
ポリビニルアルコールの種類を、商品名「PVA245」(クラレ製)に変更したことを除いては実施例1−1と同様にして記録物を得た。なお、前記ポリビニルアルコールは、重量平均重合度が4,500、けん化度が87〜89mol%のポリビニルアルコールである。
(実施例1−3)
ポリビニルアルコールの種類を、商品名「PVA424」(クラレ製)に変更したことを除いては実施例1−1と同様にして記録物を得た。なお、前記ポリビニルアルコールは、重量平均重合度が2,400、けん化度が87〜89mol%のポリビニルアルコールである。
(比較例1−1)
ポリビニルアルコールの種類を、商品名「PVA117」(クラレ製)に変更したことを除いては実施例1−1と同様にして記録物を得た。なお、前記ポリビニルアルコールは、重量平均重合度が1,700、けん化度が98〜99mol%のポリビニルアルコールである。
(比較例1−2)
ポリビニルアルコールの種類を、商品名「PVA217」(クラレ製)に変更したことを除いては実施例1−1と同様にして記録物を得た。前記ポリビニルアルコールは、重量平均重合度が1,700、けん化度が87〜89mol%のポリビニルアルコールである。
(比較例1−3)
ポリビニルアルコールの種類を、商品名「PVA403」(クラレ製)に変更したことを除いては実施例1−1と同様にして記録物を得た。なお、前記ポリビニルアルコールは、重量平均重合度が300、けん化度が78〜82mol%のポリビニルアルコールである。
[評価<密着強度>]
JIS−K−5600−5−6に記載のクロスカット法に準拠して透明シートとインク受容層の密着強度を評価した。具体的には、まず、実施例または比較例の記録物の透明シート側の面をカッターナイフで1cm四方の格子状に傷を付けた。次いで、前記傷を付けた部分に粘着テープ(商品名「メンディングテープ」、住友スリーエム製)を貼り合わせた。最後に、前記記録媒体から前記粘着テープを引き剥がし、前記透明シートの剥がれ具合を以下の基準により評価した。その結果を表1に示す。
○:目視評価で透明シートの剥がれなし。
×:目視評価で透明シートの剥がれあり。
ポリビニルアルコールの重量平均重合度が2,000以上5,000以下、けん化度が70mol%以上90mol%以下の実施例1−1〜1−3の記録物は透明シートの剥がれがなく、高い密着強度を示した。これに対し、ポリビニルアルコールの重量平均重合度およびけん化度が前記範囲を外れる比較例1−1〜1−3の記録物は透明シートの剥がれがあり、密着強度が不十分という結果を示した。
(実施例2−1)
以下の方法により空隙吸収型のインク受容層を備えた記録媒体を製造した。
[アルミナ水和物分散液の調製]
ベーマイト構造(擬ベーマイト構造)を有するアルミナ水和物A(商品名「Disperal HP14」、サソール製)20部を純水中に添加し、更に酢酸0.4部を添加して解膠処理を行うことによりアルミナ水和物分散液を得た。前記アルミナ水和物分散液におけるアルミナ水和物微粒子の平均粒子径は140nmであった。次いで、前記分散液に対して、ホウ酸0.3部を添加し、ホウ酸添加アルミナ水和物分散液を得た。
[ポリビニルアルコール水溶液の調製]
これとは別に、ポリビニルアルコール(商品名「PVA235」、クラレ製)をイオン交換水に溶解し、固形分含量が8質量%のポリビニルアルコール水溶液を調製した。なお、前記ポリビニルアルコールは、重量平均重合度が3,500、けん化度が87〜89mol%のものであった。
[インク受容層形成用塗工液の調製]
前記ホウ酸添加アルミナ水和物分散液100質量部と、前記ポリビニルアルコール水溶液27.8質量部を、スタティックミキサーにより混合し、インク受容層形成用の塗工液を得た。
[記録媒体の製造]
前記混合の直後に、前記塗工液を透明シート、離型層および基材シートの積層シートにおける透明シート上に塗工し、乾燥することにより、空隙吸収型のインク受容層を備えた記録媒体を製造した。前記塗工液の塗工は、ダイコーターを用い、5m/分の塗工速度で、乾燥後の塗工量が15g/mとなるように行った。乾燥温度は80℃とした。なお、前記積層シートとしては、商品名「DCR−320」(ダイニック製)を用いた。前記積層シートは厚さ15μm、全光線透過率が100%のものであった。
(実施例2−2)
アルミナ水和物Aの種類を、商品名「Disperal HP13」に変更したことを除いては実施例2−1と同様にして記録媒体を得た。なお、実施例2−2で得られたアルミナ水和物分散液におけるアルミナ水和物微粒子の平均粒子径は130nmであった。
(実施例2−3)
アルミナ水和物Aの種類を、商品名「Disperal HP18」に変更したことを除いては実施例2−1と同様にして記録媒体を得た。なお、実施例2−3で得られたアルミナ水和物分散液におけるアルミナ水和物微粒子の平均粒子径は180nmであった。
(比較例2−1)
アルミナ水和物Aの種類を、商品名「Disperal HP22」に変更したことを除いては実施例2−1と同様にして記録媒体を得た。なお、比較例2−1で得られたアルミナ水和物分散液におけるアルミナ水和物微粒子の平均粒子径は220nmであった。
(比較例2−2)
アルミナ水和物Aの種類を、商品名「Disperal HP30」に変更したことを除いては実施例2−1と同様にして記録媒体の製造を試みた。しかし、比較例2−2で得られたアルミナ水和物分散液における微粒子の平均粒子径は300nmと、粒子径が大きかったために、アルミナ水和物が沈降してしまった。このため、記録媒体を製造することはできず、記録適性(定着性)および視認性(色差)の評価を実施することができなかった。
(比較例2−3)
アルミナ水和物Aの種類を、商品名「Disperal HP10」に変更したことを除いては実施例2−1と同様にして記録媒体を得た。なお、比較例2−3で得られたアルミナ水和物分散液におけるアルミナ水和物微粒子の平均粒子径は100nmであった。
(比較例2−4)
アルミナ水和物Aの種類を、商品名「Disperal HP8」に変更したことを除いては実施例2−1と同様にして記録媒体の製造を試みた。しかし、比較例2−4で得られたアルミナ水和物分散液におけるアルミナ水和物微粒子の平均粒子径は80nmと、粒子径が小さかったために、アルミナ水和物分散液の粘度が高くなりすぎてしまった。このため、記録媒体を製造することはできず、記録適性(定着性)および視認性(色差)の評価を実施することができなかった。
[評価<分散性>]
アルミナ水和物の20.0質量%塗工液が、塗工液の調製に適切な粘度(10〜300mpa・s(25℃)、E型粘度計)であるか否か、目視で均一に分散されているか否かを以下の基準により評価した。その結果を表2に示す。
○:前記粘度範囲を満たし、目視評価で均一に分散されている。
×:前記粘度範囲を満たさない、または目視評価でアルミナ水和物が沈降している。
[評価<記録適性(定着性)>]
実施例または比較例の記録媒体に画像記録を行い、記録適性(定着性)を評価した。記録はサーマルインクジェット記録装置(商品名「LX−G5500」、キヤノンファインテック製)により行った。今回は、記録装置で使用するインクの中で定着性の最も悪いマゼンタ(M)インク単色で評価を行った。印刷は単位面積(1200dpi×1200dpi)に対するインク打ち込み濃度を10%〜100%の範囲(10%刻み)とし、記録媒体にベタ印字を行った。定着性不良には、記録面に対してインクの定着不良で発生する尾引きと、インク受容層の塗工バラツキ等で発生する濃度の不均一がある。印刷後の記録媒体を目視することによって、尾引き、濃度の不均一の有無を確認し、以下の基準で記録適性(定着性)を評価した。その結果を表2に示す。
評価基準(単位面積に対するインク塗布量の割合が、40%の条件において判断する)
○:画像乱れ(尾引き、不均一)の発生がない。
△:どちらか一方で乱れ発生
×:画像乱れの発生
[評価<視認性(色差)>]
実施例または比較例の記録媒体に画像記録を行い、視認性を評価した。記録媒体への記録はサーマルインクジェット記録装置(商品名「LX−G5500」、キヤノンファインテック製)により行った。記録適性の評価と同様に、使用したインクはマゼンタ(M)インク単色、かつ、インク打ち込み濃度を40%とし、ベタ印字により記録を行った。記録媒体における記録面(インク受容層側の面)と視認面(透明シート側の面)のLab表色系を分光測光器(商品名「Spectrolino」、GretagMacbeth製)により測定し、下記式(1)より色差を算出し、以下の基準により評価した。その結果を表1および図7に示す。図7は、アルミナ微粒子の平均粒子径と反射濃度(OD)および記録面と視認面の色差(ΔE)の関係を示すグラフである。
ΔE*ab=〔(ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)2〕1/2 :(1)
○:ΔE≦3(発色性、鮮明性が良好で、記録面と視認面で色の違いを感じ難い)
△:3<ΔE≦5
×:5<ΔE
アルミナ分散液の平均粒子径が120nm以上200nm以下の実施例2−1〜2−3は分散性、記録適性、視認性とも○または△であり良好な結果を示した。これに対し、アルミナ水和物の平均粒子径が120nm未満または200nm超の比較例2−1〜2−4は分散性、記録適性、視認性のいずれかが×であり、不満足な結果を示した。
1:記録媒体、2:ニップローラ、3:グリップローラ、4:供給部、5:プレカット処理部、6:記録部、7:乾燥部、8:被検出部、9:反転画像、10:ファン、11:画像支持体、12:画像支持体供給部、13:転写部、14:レジストガイド、15:供給ロール、16:ガイドロール、17:巻上げロール、18:プライマー層、19:予備加熱部、20:ファン、21、22:ヒートローラ、22K、22C、22M、22Y:記録ヘッド、23:透明シート、24:巻取りロール、25:製造装置、26:排出部、27:シートガイド、28:ガイド板、29:付着部、30:サーマルヘッド、31:センサ部、41:コントローラ、42:記憶部、43:通信部、44:制御部、45:表示部、46:入出力部、47:ネットワーク、48:システム・バス、50:基材シート、51:離型層、52:透明シート、53:インク受容層、55:画像支持体、56:プライマー層、58:ホログラム層、59:アンカー層、62:溶媒成分、63:顔料成分、64:インク受容層、65:顔料粒子、66:インク受容層、67:インク受容層、68:染料成分、69:染料成分、70:記録媒体、72:反転画像、73:記録物、100:CPU、102:インターフェイスコントローラ、104:プログラムROM、106:イメージメモリ、108:ワークRAM、112:記録ヘッド制御回路、114:出力ポート、116:モータ駆動部、118:ヘッドアップダウンモータ、120:ホストPC、122:キャッピングモータ。
本発明は、インクジェット記録用のインクが受容されたインク受容層を備えた記録物に関する。
本発明は、前記課題を解決するためになされたものである。即ち、本発明は記録物の生産性向上、情報セキュリティーの向上、記録コストの低減を図ることが可能な記録物を提供するものである。また、本発明は、インクジェット方式に適応した記録物を提供するものである。
本発明者は前記課題について鋭意検討を行った。その結果、熱転写記録方式に代わりインクジェット記録方式を採用することで、その生産性および記録コストを飛躍的に向上させるとともに記録コストを低減することができ、陰画が残らないため情報セキュリティーも向上させることが可能であることに想到した。更には、インク受容層に含まれる無機微粒子、又は水溶性樹脂等の構成を精密に制御することで、インクジェット方式に適応した記録媒体を構成することができることに想到して本発明を完成するに至った。即ち、本発明によれば、以下に示す記録物が提供される。
本発明によれば、画像支持体と、インクジェット記録用のインクが受容されたインク受容層と、全光線透過率が50%以上の透明シートと、離型剤を含有する組成物からなる離型層と、前記離型層の支持体となる基材シートと、を備え、前記画像支持体、前記インク受容層、前記透明シート、前記離型層および前記基材シートが順次積層され、前記インク受容層は、少なくとも平均粒子径が120nm以上200nm以下のアルミナ微粒子および重量平均重合度が2,000以上5,000以下、けん化度が70mol%以上90mol%以下のポリビニルアルコールを含有する組成物からなる空隙吸収型のインク受容層であり、前記インクは、顔料成分が樹脂分散型の顔料である顔料インクであることを特徴とする記録物とするものである
本発明によれば、熱転写方式と比較して、記録物の生産性向上、情報セキュリティーの向上、記録コストの低減を図ることが可能である。

Claims (25)

  1. インクジェット記録用のインクを受容するインク受容層と、全光線透過率が50%以上の透明シートと、を備え、
    前記透明シートおよび前記インク受容層が順次積層された積層構造を有し、
    前記インク受容層が、少なくとも無機微粒子および重量平均重合度が2,000以上5,000以下、けん化度が70mol%以上90mol%以下のポリビニルアルコールを含有する組成物からなる空隙吸収型のインク受容層であることを特徴とする記録媒体。
  2. インクジェット記録用のインクを受容するインク受容層と、全光線透過率が50%以上の透明シートと、を備え、
    前記透明シートおよび前記インク受容層が順次積層された積層構造を有し、
    前記インク受容層が、少なくとも、平均粒子径が120nm以上200nm以下のアルミナ微粒子、ならびに水溶性樹脂および水分散性樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含有する組成物からなる空隙吸収型のインク受容層であることを特徴とする記録媒体。
  3. 前記水溶性樹脂および水分散性樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂が、重量平均重合度が2,000以上5,000以下、けん化度が70mol%以上90mol%以下のポリビニルアルコールである請求項1または2に記載の記録媒体。
  4. 前記透明シートと前記インク受容層とが相互に当接された積層構造を有する請求項1乃至3のいずれか一項に記載の記録媒体。
  5. 離型剤を含有する組成物からなる離型層と、前記離型層の支持体となる基材シートと、を更に備え、
    前記インク受容層、前記透明シート、前記離型層および前記基材シートが順次積層された積層構造を有する請求項1乃至4のいずれか一項に記載の記録媒体。
  6. 前記透明シートと前記離型層とが相互に当接され、
    前記離型層と前記基材シートとが相互に当接された積層構造を有する請求項5に記載の記録媒体。
  7. 前記インク受容層に画像が記録されており、
    前記画像は、インクジェット記録方式により記録されたものである請求項1乃至6のいずれか一項に記載の記録媒体。
  8. 前記画像は、前記インク受容層の側から見ると鏡像となり、前記透明シートの側から見ると正像となる反転画像であり、
    前記反転画像は、前記インク受容層の前記透明シートが積層されていない面に記録されたものである請求項7に記載の記録媒体。
  9. 前記画像が、顔料インクにより形成された画像である請求項7または8に記載の記録媒体。
  10. 画像が支持される画像支持体と、画像が記録された記録媒体と、を備え、
    前記記録媒体が、請求項7乃至9のいずれか一項に記載の記録媒体であり、
    前記画像支持体、前記インク受容層および前記透明シートが順次積層された積層構造を有することを特徴とする記録物。
  11. 前記画像支持体が、プライマー層を更に備え、
    前記画像支持体、前記プライマー層、前記インク受容層および前記透明シートが順次積層された積層構造を有する請求項10に記載の記録物。
  12. 前記画像支持体と前記プライマー層とが相互に当接され、
    前記プライマー層と前記インク受容層とが相互に当接された積層構造を有する請求項11に記載の記録物。
  13. インクジェット記録用のインクを受容するインク受容層と、全光線透過率が50%以上の透明シートと、を備え、前記透明シートおよび前記インク受容層が順次積層された積層構造を有する記録媒体の製造方法であって、
    前記透明シートの表面に、少なくとも水、無機微粒子および重量平均重合度が2,000以上5,000以下、けん化度が70mol%以上90mol%以下のポリビニルアルコールを含有する塗工液を塗工し、
    少なくとも前記無機微粒子および前記ポリビニルアルコールを含有する組成物からなる空隙吸収型のインク受容層を形成することを特徴とする記録媒体の製造方法。
  14. インクジェット記録用のインクを受容するインク受容層と、全光線透過率が50%以上の透明シートと、を備え、前記透明シートおよび前記インク受容層が順次積層された積層構造を有する記録媒体の製造方法であって、
    前記透明シートの表面に、少なくとも水、平均粒子径が120nm以上200nm以下のアルミナ微粒子、ならびに水溶性樹脂および水分散性樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含有する塗工液を塗工し、
    少なくとも前記アルミナ微粒子および前記樹脂を含有する組成物からなる空隙吸収型のインク受容層を形成することを特徴とする記録媒体の製造方法。
  15. 前記水溶性樹脂および水分散性樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂として、重量平均重合度が2,000以上5,000以下、けん化度が70mol%以上90mol%以下のポリビニルアルコールを用いる請求項14に記載の記録媒体の製造方法。
  16. 前記塗工液として、熱融着性樹脂を更に含有する組成物を用いる請求項13乃至15のいずれか一項に記載の記録媒体の製造方法。
  17. 前記インク受容層を形成した後、前記インク受容層の側から、前記インク受容層と前記透明シートに切り込みを入れるプレカット処理を行う請求項13乃至16のいずれか一項に記載の記録媒体の製造方法。
  18. 前記透明シート、離型剤を含有する組成物からなる離型層、および前記離型層の支持体となる基材シートが順次積層された積層シートを用い、
    前記積層シートを構成する前記透明シートの表面に、前記塗工液を塗工し、
    前記インク受容層、前記透明シート、前記離型層および前記基材シートが順次積層された積層構造を有する記録媒体を得る請求項13乃至17のいずれか一項に記載の記録媒体の製造方法。
  19. 前記記録媒体における前記インク受容層に、画像をインクジェット記録方式により記録する請求項13乃至18のいずれか一項に記載の記録媒体の製造方法。
  20. 前記記録媒体における前記インク受容層の前記透明シートが積層されていない面に、前記インク受容層の側から見ると鏡像となり、前記透明シートの側から見ると正像となる反転画像を記録する請求項13乃至19のいずれか一項に記載の記録媒体の製造方法。
  21. 前記画像を形成するインクジェット記録用のインクとして、顔料インクを用いる請求項19または20に記載の記録媒体の製造方法。
  22. 前記画像を形成しているインクジェット記録用のインクの水分量を、前記インクの総打ち込み量に対して70質量%以下となるまで乾燥する請求項19乃至21のいずれか一項に記載の記録媒体の製造方法。
  23. 画像が支持される画像支持体と、画像が記録された記録媒体と、を備えた記録物の製造方法であって、
    請求項20乃至22のいずれか一項に記載の記録媒体の製造方法により前記記録媒体を得、
    前記画像支持体と前記記録媒体とを、前記画像支持体、前記インク受容層および前記透明シートが順次積層されるように当接させた状態で加熱圧着し、前記画像支持体、前記インク受容層および前記透明シートが順次積層された積層構造を有する記録物を得ることを特徴とする記録物の製造方法。
  24. 前記画像支持体として、プライマー層を更に備えた画像支持体を用い、
    前記画像支持体、前記プライマー層、前記インク受容層および前記透明シートが順次積層されるように前記画像支持体および前記記録媒体を配置し、前記画像支持体と前記記録媒体とを加熱圧着し、前記画像支持体、前記プライマー層、前記インク受容層および前記透明シートが順次積層された積層構造を有する記録物を得る請求項23に記載の記録物の製造方法。
  25. 前記加熱圧着の温度を60℃以上160℃以下に制御する請求項23または24に記載の記録物の製造方法。
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