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JP2016155079A - 樹脂シートの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】樹脂ワニスの塗工速度を上昇させても、樹脂ワニスのはじき、皺や突起の発生を抑制し、生産性に優れた樹脂シートの製造方法等の提供。【解決手段】(A)支持体上に樹脂ワニスを塗工する工程と、(B)塗工した樹脂ワニスを乾燥処理させて樹脂組成物層を形成する工程と、を含む、樹脂シートの製造方法であって、樹脂ワニスの塗工速度Yが、20m/分以上であり、樹脂ワニスは、無機充填材を含有し、無機充填材の比表面積(m2/g)をSとし、樹脂ワニス中の不揮発成分を1質量部とした場合の無機充填材の含有量(質量部)をVとしたとき、SとVの積(SV)が、以下の関係式(1)を満たす、樹脂シートの製造方法。100≧SV≧1.5式(1)(但し、0.9≧V≧0.003)【選択図】なし

Description

本発明は、樹脂シートの製造方法に関する。
プリント配線板の製造技術としては、回路形成された導体層と絶縁層とを交互に積み上げていくビルドアップ方式が広く用いられている。絶縁層は、一般に、樹脂組成物層を含む樹脂シートを内層基板にラミネートし、樹脂組成物層を硬化させて形成される。
近年では、異なる機能を有する複数の樹脂組成物層を含む積層シートが開示されている(特許文献1等)。
特開2014−17301号公報
このような積層シートの製造では、複数の樹脂組成物層の作製が必要である。樹脂組成物層は、樹脂組成物を含む樹脂ワニスを塗工することで作製されるが、生産性やコストパフォーマンスの向上のために樹脂組成物層の作製速度(樹脂ワニスの塗工速度)を上昇させると、樹脂ワニスがはじき易くなり、また、樹脂組成物層に皺や突起等の不具合が発生する課題を本発明者らは見出した。特に薄型の樹脂組成物層を作製する場合に、この課題が顕著となることを見出した。
本発明は、樹脂ワニスの塗工速度を上昇させても、樹脂ワニスのはじき、皺や突起の発生を抑制し、生産性に優れた樹脂シートの製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題につき鋭意検討した結果、無機充填材の比表面積及び含有量が所定の関係を満たす樹脂ワニスを使用することによって上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下の内容を含む。
[1] (A)支持体上に樹脂ワニスを塗工する工程と、
(B)塗工した樹脂ワニスを乾燥させて樹脂組成物層を形成する工程と、
を含む、樹脂シートの製造方法であって、
樹脂ワニスの塗工速度Yが、20m/分以上であり、
樹脂ワニスは、無機充填材を含有し、
無機充填材の比表面積(m/g)をSとし、樹脂ワニス中の不揮発成分を1質量部とした場合の無機充填材の含有量(質量部)をVとしたとき、SとVの積(SV)が、以下の関係式(1)を満たす、樹脂シートの製造方法。
100≧SV≧1.5 式(1)
(ただし、0.9≧V≧0.003である)
[2] 樹脂組成物層の厚みが、5μm以下である、[1]の方法。
[3] 工程(B)を実施する乾燥ゾーンの合計長さをX(m)としたとき、X及びYが、以下の関係式(2)を満たす、[1]又は[2]の方法。
Y/X≧0.5 式(2)
[4] 無機充填材の比表面積Sが、5m/g以上である、[1]〜[3]のいずれかの方法。
[5] 無機充填材の比表面積Sが、5m/g以上500m/g以下である、[1]〜[4]のいずれかの方法。
[6] 無機充填材の含有量Vが、0.5質量部以下である、[1]〜[5]のいずれかの方法。
[7] 樹脂ワニスの塗工速度Yが、25m/分以上である、[1]〜[6]のいずれかの方法。
[8] 樹脂シートが、絶縁樹脂層上に積層して用いられる回路形成用の樹脂シートである、[1]〜[7]のいずれかの方法。
本発明によれば、塗工速度を上昇させても、樹脂ワニスのはじき、皺や突起の発生を抑制し、生産性に優れた樹脂シートの製造方法を提供することが可能となった。
以下、本発明の樹脂シートの製造方法、樹脂シート、積層シート、積層板、及び半導体装置について詳細に説明する。
本明細書において、樹脂ワニスのはじきとは、樹脂ワニスの塗工面において樹脂ワニスがはじかれる結果、樹脂ワニスのない領域又は樹脂ワニスの量が極端に少ない領域が形成される現象をいう。本明細書において、樹脂ワニスのはじきには、樹脂ワニスの塗工直後に発生するはじきと、樹脂ワニスを乾燥させる過程で発生するはじきの両方が含まれる。また本明細書において、皺とは、樹脂組成物層に形成されるスジ状の表面欠陥をいい、突起とは、樹脂組成物層に形成される凝集物による突起状の表面欠陥をいう。
本明細書において、「高速塗工」とは、特に断りがない限り、20m/分以上の塗工速度で塗工することを表す。
[樹脂シートの製造方法]
本発明の樹脂シートの製造方法は、
(A)支持体上に樹脂ワニスを塗工する工程と、
(B)塗工した樹脂ワニスを乾燥させて樹脂組成物層を形成する工程と、
を含み、
樹脂ワニスの塗工速度Yが20m/分以上であり、
樹脂ワニスは無機充填材を含有し、
無機充填材の比表面積(m/g)をSとし、樹脂ワニス中の不揮発成分を1質量部とした場合の無機充填材の含有量(質量部)をVとしたとき、SとVの積(SV)が、以下の関係式(1)を満たすことを特徴とする。
100≧SV≧1.5 式(1)
(ただし、0.9≧V≧0.003である)
本発明では、樹脂ワニスを高速塗工する場合であっても、無機充填材の比表面積S及び含有量Vが上記関係式(1)を満たすように調整することにより、樹脂ワニスのはじき、皺や突起の発生を抑制し、生産性に優れた樹脂シートの製造方法を提供することが可能となる。
以下、本発明の樹脂シートの製造方法における各工程について詳細に説明する。
<工程(A)>
工程(A)において、支持体上に樹脂ワニスを塗工する。本発明の樹脂シートの製造方法では、20m/分以上の塗工速度で樹脂ワニスを塗工する。
上記したように、樹脂ワニスの塗工速度を上昇させることは生産性やコストパフォーマンスの向上に有利である。しかし、樹脂ワニスを乾燥させる乾燥ゾーンの長さ等の制約から、樹脂ワニスの塗工速度は、従来、20m/分未満(多くの場合、10〜15m/分)とすることが一般的であった。詳細には、樹脂ワニスの塗工と樹脂ワニスの乾燥は同一ライン上で通常実施されることから、樹脂ワニスの塗工速度を上昇させると、樹脂ワニス塗工後の支持体が乾燥ゾーンを通過する速度も上昇する。そのため、樹脂ワニスを十分に乾燥させるには乾燥ゾーンの長さを長くすることが必要となるが、乾燥ゾーンの長さは装置設計上、仕様上の限度があり、結果として、樹脂ワニスの塗工速度が制限されていた。乾燥ゾーンの温度を高く設定して樹脂ワニスを迅速に乾燥させる方法も考えられるが、斯かる方法では、樹脂ワニス中の溶剤の急激な蒸発が起こり、結果として、樹脂ワニスを乾燥させる過程においてはじきが発生し易い傾向にあった。本発明者らはまた、樹脂ワニスの高速塗工時には、樹脂ワニスの塗工直後にもはじきが発生し易く、また、樹脂組成物層に皺や突起等の不具合が発生する課題を見出した。この点、無機充填材の比表面積S及び含有量Vが上記関係式(1)を満たす樹脂ワニスを使用する本発明の樹脂シートの製造方法では、樹脂ワニスの塗工速度Yが20m/分以上であっても、樹脂ワニスのはじき、皺や突起の発生を抑制することができる。本発明の樹脂シートの製造方法では、樹脂ワニスのはじき、皺や突起の発生を抑制しつつ、さらに高い塗工速度Yを採用することができる。例えば、樹脂ワニスの塗工速度Yは、25m/分以上、30m/分以上、35m/分以上、又は40m/分以上であってもよい。本発明において、塗工速度Yの上限は、樹脂ワニスのはじき、皺や突起の発生を十分に抑制する観点から、通常、300m/分以下、200m/分以下、100m/分以下などとし得る。
−樹脂ワニス−
本発明で使用する樹脂ワニスは、無機充填材を含有する。樹脂ワニスの高速塗工時のはじき、皺や突起の発生を抑制する観点から、無機充填材の比表面積(m/g)をSとし、樹脂ワニス中の不揮発成分を1質量部とした場合の無機充填材の含有量(質量部)をVとしたとき、SとVの積(SV)は、下記関係式(1)を満たす。
100≧SV≧1.5 式(1)
(ただし、0.9≧V≧0.003である)
SとVの積(SV)は、樹脂ワニスのはじきの発生を抑制する観点から、1.5以上であり、好ましくは2.0以上、より好ましくは3.0以上、4.0以上、又は5.0以上である。また、皺や突起の発生を抑制する観点から、SVは、100以下であり、好ましくは95以下、より好ましくは90以下である。詳細は、無機充填材の比表面積S(m/g)が大きいと皺や突起が発生しやすくなるので、無機充填材の含有量V(質量部)を少なくすればよく、無機充填材の比表面積S(m/g)が小さいとはじきが発生しやすくなるので、無機充填材の含有量V(質量部)を多くすればよい。なお、無機充填材の具体的な比表面積S(m/g)、及び含有量Vは後述する。
樹脂ワニスは、無機充填材を含有する樹脂組成物(詳細は後述する。)を溶剤に溶解させて調製することができる。樹脂ワニスの調製に使用する溶剤は、本発明の効果を阻害しない限りにおいて特に限定されず、樹脂シートの製造に使用し得る公知の溶剤を用いてよい。溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)及びシクロヘキサノン等のケトン類、セロソルブ、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びカルビトールアセテート等の酢酸エステル類、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド及びN−メチルピロリドン等のアミド系溶媒、エタノール、2−メトキシプロパノール等のアルコール類、ソルベントナフサ等を挙げることができる。溶剤は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
樹脂ワニスの高速塗工時のはじき、皺や突起の発生を効果的に抑制する観点から、溶剤は、沸点100℃以上(好ましくは105℃以上、より好ましくは110℃以上、115℃以上、又は120℃以上)の溶剤を含むことが好適である。したがって好適な一実施形態において、溶剤は、沸点100℃以上の溶剤を含む。樹脂ワニスの高速塗工時のはじき、皺や突起の発生を抑制しつつ、後述するY/Xの値を高くし得る観点から、溶剤は、沸点100℃以上の溶剤に加えて、沸点100℃未満(好ましくは95℃以下、より好ましくは90℃以下、85℃以下、又は80℃以下)の溶剤を含むことが好適である。したがって好適な一実施形態において、溶剤としては、沸点100℃以上の溶剤と沸点100℃未満の溶剤との混合溶剤を使用する。
混合溶剤中の沸点100℃以上の溶剤と沸点100℃未満の溶剤の質量比[(沸点100℃以上の溶剤)/(沸点100℃未満の溶剤)]は、工程(B)を実施する乾燥ゾーンの合計長さや設定温度等にもよるが、好ましくは2/8〜8/2、より好ましくは3/7〜7/3である。
樹脂ワニスの粘度(23℃)は、高速塗工であっても、はじき、皺や突起の発生を抑制する観点、及び樹脂組成物層の厚みを容易に制御できる観点から、10mPa・s以上が好ましく、30mPa・s以上がより好ましく、50mPa・s以上がさらに好ましい。樹脂ワニスの粘度の上限については特に制限はないが、5000mPa・s以下が好ましく、4000mPa・s以下がより好ましく、3000mPa・s以下がさらに好ましい。
樹脂ワニスの粘度は、例えば、回転式(E型)粘度計を用いて測定することができる。該回転式(E型)粘度計としては、例えば、東機産業(株)製「RE−80U」が挙げられる。
樹脂ワニス中の不揮発成分の含有量は、上記の好適な粘度を達成し得る限りにおいて特に限定されない。例えば、樹脂ワニスは、樹脂ワニス中の不揮発成分の含有量が、好ましくは30質量%〜70質量%、より好ましくは40質量%〜70質量%の範囲となるように、調製することができる。
−支持体−
支持体としては、例えば、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔、離型紙が挙げられ、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔が好ましい。
支持体としてプラスチック材料からなるフィルムを使用する場合、プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルファイド(PES)、ポリエーテルケトン、ポリイミドなどが挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、安価なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
支持体として金属箔を使用する場合、金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられ、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅の単金属からなる箔を用いてもよく、銅と他の金属(例えば、スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン等)との合金からなる箔を用いてもよい。
支持体は、樹脂ワニスを塗工する側の表面にマット処理、コロナ処理を施してあってもよい。また、支持体としては、樹脂ワニスを塗工する側の表面に離型層を有する離型層付き支持体を使用してもよい。離型層付き支持体の離型層に使用する離型剤としては、例えば、アルキド樹脂、オレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択される1種以上の離型剤が挙げられる。離型剤の市販品としては、例えば、アルキド樹脂系離型剤である、リンテック(株)製の「SK−1」、「AL−5」、「AL−7」などが挙げられる。
支持体の厚さは、特に限定されないが、5μm〜75μmの範囲が好ましく、10μm〜60μmの範囲がより好ましい。なお、支持体が離型層付き支持体である場合、離型層付き支持体全体の厚さが上記範囲であることが好ましい。
樹脂ワニスの塗工(塗布)は、厚さが均一な塗膜を形成し得る限りにおいて従来公知の任意の方法により実施してよい。例えば、ダイコーター、コンマコーター、グラビアコーター、バーコーター等の塗工装置を用いて樹脂ワニスを支持体上に塗工することができる。
<工程(B)>
工程(B)において、塗工した樹脂ワニスを乾燥させて樹脂組成物層を形成する。
工程(B)は、乾燥ゾーンにて実施することができる。本発明において、「乾燥ゾーン」とは、工程(A)で塗工した樹脂ワニスを乾燥させるべく、加熱、減圧等の処理が実施される領域を意味する。好適な一実施形態において、樹脂ワニスの乾燥は、樹脂ワニスを加熱して溶剤を蒸発させることにより実施する。
乾燥条件は、樹脂ワニスに含まれる溶剤の沸点等に応じて決定してよい。例えば、乾燥温度は、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上、さらに好ましくは70℃以上である。乾燥温度の上限は特に限定されないが、通常、150℃以下、140℃以下などとし得る。
工程(B)は、単一の乾燥ゾーンを使用して実施してもよく、複数の乾燥ゾーンを使用して実施してもよい。複数の乾燥ゾーンを使用する場合、乾燥ゾーンの数nは、好ましくは3以上、より好ましくは4以上、さらに好ましくは5以上、又は6以上である。乾燥ゾーンの数nの上限は、特に限定されないが、通常、20以下、15以下、10以下などとし得る。複数の乾燥ゾーンを使用して工程(B)を実施する場合、複数の乾燥ゾーンは、同一の乾燥条件に設定されていてもよく、相異なる乾燥条件に設定されていてもよい。以下、工程(A)で得られた支持体が最初に通過する乾燥ゾーンを「第1乾燥ゾーン」、2番目に通過する乾燥ゾーンを「第2乾燥ゾーン」、n番目に通過する乾燥ゾーンを「第n乾燥ゾーン」(但し、3≦n≦20)ともいう。
複数の乾燥ゾーンを使用して工程(B)を実施する場合、溶剤の急激な蒸発に起因する樹脂ワニスのはじきを抑制する観点から、一般に、第1乾燥ゾーンの温度T1は、樹脂ワニスに含まれる溶剤の沸点よりも十分に低い温度に設定される。樹脂ワニスに含まれる最も低沸点の溶剤の沸点(℃)をTbとしたとき、一般に、第1乾燥ゾーンの温度T1は、(Tb−10)℃未満、(Tb−15)℃以下、又は(Tb−20)℃以下に設定される。この点、上記関係式(1)を満たす樹脂ワニスを使用する本発明においては、樹脂ワニスのはじきを抑制しつつ、第1乾燥ゾーンの温度T1を高く設定することができる。本発明においては、第1乾燥ゾーンの温度T1は、(Tb−10)℃以上、又は(Tb−5)℃以上であってもよい。本発明において、第1乾燥ゾーンの温度T1の上限は、樹脂ワニスのはじきを抑制する観点から、好ましくは(Tb+20)℃以下、より好ましくは(Tb+15)℃以下、さらに好ましくは(Tb+10)℃以下である。また、溶剤の急激な蒸発を抑制しつつ後述のY/X比を高く設定し得る観点から、第2乾燥ゾーンの温度T2は温度T1より高いことが好ましく、(T1+5)℃以上であることがより好ましく、(T1+10)℃以上であることがより好ましい。第2乾燥ゾーンの温度T2の上限は、好ましくは(T1+50)℃以下、より好ましくは(T1+40)℃以下、さらに好ましくは(T1+30)℃以下、又は(T1+20)℃以下である。なお、最も高い温度に設定された乾燥ゾーンの温度Tmaxは、樹脂ワニスに含まれる最も高沸点の溶剤の沸点(℃)をTb’としたとき、好ましくは(Tb’−50)℃以上、より好ましくは(Tb’−40)℃以上である。温度Tmaxの上限は、上記の乾燥温度の好適な範囲にある限り特に限定されないが、好ましくは(Tb’+10)℃以下、より好ましくは(Tb’+5)℃以下である。好適な一実施形態において、乾燥ゾーンの温度は、第1乾燥ゾーンから第n乾燥ゾーンにかけて順に高くなるように設定される。
なお、入口から出口にかけて温度傾斜を実現し得る単一の乾燥ゾーンを使用してもよい。斯かる実施形態において、入口温度は上記温度T1と同様としてよく、乾燥ゾーン内の最高温度は上記温度Tmaxと同様としてよい。
先述のとおり、樹脂ワニスの塗工と樹脂ワニスの乾燥は同一ライン上で通常実施され、乾燥ゾーン内の樹脂シートの通過速度は、上記した塗工速度Y(m/分)と同一である。
工程(B)を実施する乾燥ゾーンの合計長さ(m)をXとすると、樹脂シートの生産性を向上させる観点から、X及びYは、下記関係式(2)を満たすことが好ましい。なお、乾燥ゾーンの合計長さとは、単一の乾燥ゾーンを使用する場合は該乾燥ゾーンの長さをいい、複数の乾燥ゾーンを使用する場合は該複数の乾燥ゾーンの長さの和をいう。
Y/X≧0.5 式(2)
先述のとおり、乾燥ゾーンの合計長さXの制約から、樹脂ワニスの塗工速度Yは制限される傾向にあった。さらに、樹脂ワニスの塗工速度Yを上昇させると、樹脂ワニスの塗工直後にもはじきが発生し易く、また、樹脂組成物層に皺や突起等の不具合が発生する場合のあることが新たに見出された。この点、上記関係式(1)を満たす樹脂ワニスを使用する本発明においては、樹脂ワニスのはじき、皺や突起の発生を抑制しつつ、さらに高いY/X比を実現することができる。本発明において、Y/X比は、0.6以上、0.7以上、0.8以上、0.9以上、又は1.0以上であってもよい。Y/X比の上限については特に制限はないが、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、さらに好ましくは5以下である。
乾燥ゾーンの合計長さXとしては、塗工速度Yとの関係で上記関係式(2)を満たす限り特に制限はないが、2〜80mが好ましく、10〜50mがより好ましく、20〜40mがさらに好ましい。なお、複数の乾燥ゾーンを使用する場合、各乾燥ゾーンの長さは、特に制限はないが、1m〜10mが好ましく、2m〜8mがより好ましく、3m〜7mがさらに好ましい。
なお、工程(B)で必ずしも溶剤を完全に除去する必要はない。支持体上に形成した樹脂組成物層中の不揮発成分の含有量を100質量%としたとき、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、2質量%以下、又は1質量%以下にて溶剤を含有していてもよい。
本発明では、上記関係式(1)を満たすことで、樹脂ワニスを高速塗工して薄型の樹脂組成物層を形成する場合であっても、樹脂ワニスのはじき、皺や突起の発生を抑制することができる。例えば、5μm以下、4.5μm以下、4μm以下、3.5μm以下、3μm以下、2.5μm以下、又は2μm以下と薄型の樹脂組成物層を形成する場合であっても、上記関係式(1)を満たすことで本発明の効果を奏する。樹脂組成物層の厚さの下限は、特に制限はないが、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.2μm以上、さらに好ましくは0.4μm以上、0.6μm以上、0.8μm以上、又は1μm以上である。樹脂組成物層の厚さは、例えば、接触式層厚計を用いて測定することができる。接触式層厚計としては、例えば、(株)ミツトヨ製「MCD−25MJ」が挙げられる。
<その他の工程>
本発明の樹脂シートの製造方法は、工程(B)の後に、樹脂シートを冷却する工程(以下「工程(C)」ともいう。)を含んでもよい。
工程(C)は、冷風吹きつけ等の公知の冷却方法により実施してよい。具体的な冷却温度は、好ましくは50℃未満、より好ましくは45℃以下、さらに好ましくは40℃以下である。
本発明の樹脂シートの製造方法で製造された樹脂シートにおいて、20mの長さにおける樹脂ワニスのはじきの個数は、目視観察において、1個以下であり、好ましくは0個である。はじきは、凹み直径が1.5mm以上のものを表す。
本発明の樹脂シートの製造方法で製造された樹脂シートにおいて、20mの長さにおける樹脂組成物層の皺や突起の個数は、目視観察において、1個以下であり、好ましくは0個である。皺は、長さが3mm以上のものを表し、突起は直径1.5mm以上のものを表す。
本発明の樹脂シートの製造方法は、工程(B)の後に、樹脂組成物層の支持体と接合していない面(即ち、支持体とは反対側の面)に支持体に準じた保護フィルムを設ける工程を含んでもよい。
保護フィルムの厚さは、特に限定されないが、例えば、1μm〜40μmとし得る。保護フィルムを積層することにより、樹脂組成物層の表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。樹脂シートは、ロール状に巻きとって保存することが可能であり、プリント配線板の製造において絶縁層を形成する際には、保護フィルムを剥がすことによって使用可能となる。
保護フィルムは、ロールやプレス圧着等で樹脂組成物層にラミネート処理することが好ましい。ラミネート処理は、市販されている真空ラミネーターを用いて実施することができる。市販されている真空ラミネーターとしては、例えば、(株)名機製作所製の真空加圧式ラミネーター、ニチゴー・モートン(株)製のバキュームアップリケーター等が挙げられる。
本発明の方法で製造される樹脂シートは、絶縁樹脂層上に積層して用いられる回路形成用の樹脂シートとして好適である。プリント配線板の製造に際して、該樹脂シートを絶縁樹脂層と組み合わせて使用することにより、粗化処理後の表面粗度が低い絶縁層を実現することができる。中でも、めっきプロセスにより回路形成を行うための樹脂シート(めっきプロセスによる回路形成用の樹脂シート)として特に好適に使用することができる。
[樹脂シート]
本発明の樹脂シートは、支持体と、該支持体と接合している樹脂組成物層とを含む。
支持体は、上記のとおりである。また、樹脂組成物層は、上記のとおり、上記関係式(1)を満たす樹脂ワニスを塗工し、乾燥して形成される。以下、樹脂ワニスの調製に使用する樹脂組成物について説明する。
樹脂組成物としては、例えば、無機充填材、硬化性樹脂とその硬化剤を含む組成物が挙げられる。硬化性樹脂としては、プリント配線板の絶縁層を形成する際に使用される従来公知の硬化性樹脂を用いることができ、中でもエポキシ樹脂が好ましい。したがって一実施形態において、樹脂組成物は(a)無機充填材、(b)エポキシ樹脂及び(c)硬化剤を含む。樹脂組成物は、必要に応じて、さらに(d)有機充填材、(e)熱可塑性樹脂、(f)硬化促進剤、及び(g)難燃剤等の添加剤を含んでいてもよい。
以下、樹脂組成物の材料について説明する。
−(a)無機充填材−
無機充填材の比表面積Sは、無機充填材の含有量Vとの関係で上記関係式(1)を満たす限り特に制限はないが、ハジキ防止の点から、好ましくは5m/g以上、より好ましくは7m/g以上、10m/g以上、20m/g以上、30m/g以上であり、特に、微細配線形成性を向上させる点からは、40m/g以上が好ましい。皺や突起の発生防止の点からは、好ましくは500m/g以下、より好ましくは400m/g以下、さらに好ましくは350m/g以下である。無機充填材の比表面積Sは、BET法により測定することができる。具体的には、吸着占有面積が既知の分子を液体窒素の温度で無機充填材試料に吸着させ、その吸着量から無機充填材試料の比表面積を求めることができる。吸着専有面積が既知の分子としては、窒素、ヘリウム等の不活性ガスが好適に使用される。無機充填材の比表面積Sは、自動比表面積測定装置を使用して測定することができ、該自動比表面積測定装置としては、例えば、(株)マウンテック製「Macsorb HM−1210」が挙げられる。
樹脂組成物中の不揮発成分を1質量部とした場合の無機充填材の含有量、すなわち、樹脂ワニス中の不揮発成分を1質量部とした場合の無機充填材の含有量Vは、0.003質量部以上0.9質量部以下となる。好ましくは0.8質量部以下、より好ましくは0.6質量部以下、特に、微細配線形成時においてもめっき密着性を十分向上させるという点や薄膜フィルム形成時の突起の発生を防止するという点からは、0.5質量部以下、0.4質量部以下、0.3質量部以下が好ましい。含有量Vの下限は、好ましくは0.005質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上である。
無機充填材の材料は特に限定されないが、例えば、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸タングステン酸ジルコニウム等が挙げられ、シリカが特に好適である。シリカとしては、例えば、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等が挙げられる。またシリカとしては球形シリカが好ましい。無機充填材は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。市販されている球状溶融シリカとして、(株)アドマテックス製「SO−C2」、「SO−C1」、「YC100C」、「YA010C」が挙げられる。
無機充填材の平均粒径は、特に限定されないが、粗化処理後の表面粗度が低い絶縁層を得る観点や薄膜フィルム形成時の突起の発生を防止するという観点から、2μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましく、0.7μm以下がさらに好ましく、0.5μm以下、0.3μm以下、又は0.15μm以下がさらにより好ましい。一方、樹脂ワニスを形成する際に適度な粘度を有し取り扱い性の良好な樹脂ワニスを得る観点から、無機充填材の平均粒径は、0.01μm以上が好ましく、0.03μm以上がより好ましく、0.05μm以上がさらに好ましい。無機充填材の平均粒径はミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的にはレーザー回折式粒度分布測定装置により、無機充填材の粒度分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材を超音波により水中に分散させたものを好ましく使用することができる。レーザー回折式粒度分布測定装置としては、(株)堀場製作所製「LA−500」、「LA−750」、「LA−950」等を使用することができる。
無機充填材は、耐湿性及び分散性を高める観点から、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤等の1種以上の表面処理剤で処理されていることが好ましい。表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業(株)製「KBM403」(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBM803」(3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBE903」(3−アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBM573」(N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBM103」(フェニルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製「SZ−31」(ヘキサメチルジシラザン)等が挙げられる。
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量によって評価することができる。無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、無機充填材の分散性向上の観点から、0.02mg/m以上が好ましく、0.1mg/m以上がより好ましく、0.2mg/m以上が更に好ましい。一方、樹脂ワニスの溶融粘度やシート形態での溶融粘度の上昇を防止する観点から、1mg/m以下が好ましく、0.8mg/m以下がより好ましく、0.5mg/m以下がさらに好ましい。
無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、表面処理後の無機充填材を溶剤(例えば、メチルエチルケトン(MEK))により洗浄処理した後に測定することができる。具体的には、溶剤として十分な量のMEKを表面処理剤で表面処理された無機充填材に加えて、25℃で5分間超音波洗浄する。上澄液を除去し、固形分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量を測定することができる。カーボン分析計としては、(株)堀場製作所製「EMIA−320V」等を使用することができる。
−(b)エポキシ樹脂−
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert−ブチル−カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。エポキシ樹脂の不揮発成分を100質量%とした場合に、少なくとも50質量%以上は1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であるのが好ましい。中でも、1分子中に2個以上のエポキシ基を有し、温度20℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」という。)と、1分子中に3個以上のエポキシ基を有し、温度20℃で固体状のエポキシ樹脂(以下「固体状エポキシ樹脂」という。)とを含むことが好ましい。エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを併用することで、優れた可撓性を有する樹脂組成物が得られる。また、樹脂組成物の硬化物の破断強度も向上する。
液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、及びブタジエン構造を有するエポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂及びナフタレン型エポキシ樹脂がより好ましい。液状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC(株)製の「HP4032」、「HP4032H」、「HP4032D」、「HP4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂)、三菱化学(株)製の「828US」、「jER828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、「jER807」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂)、「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂)、「YL7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂)、新日鉄住金化学(株)製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品)、ナガセケムテックス(株)製の「EX−721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂)、ダイセル(株)製の「セロキサイド2021P」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂)、「PB−3600」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂)が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
固体状エポキシ樹脂としては、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂が好ましく、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、及びビフェニル型エポキシ樹脂がより好ましい。固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC(株)製の「HP−4700」、「HP−4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂)、「N−690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、「N−695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、「HP−7200」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂)、「HP−7200HH」、「EXA7311」、「EXA7311−G3」、「EXA7311−G4」、「EXA7311−G4S」、「HP6000」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂)、日本化薬(株)製の「EPPN−502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂)、「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂)、「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂)、新日鉄住金化学(株)製の「ESN475V」(ナフトール型エポキシ樹脂)、「ESN485」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂)、三菱化学(株)製の「YX4000H」、「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂)、「YX4000HK」(ビキシレノール型エポキシ樹脂)、「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂)、大阪ガスケミカル(株)製の「PG−100」、「CG−500」、三菱化学(株)製の「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂)、三菱化学(株)製の「jER1010」(固体状ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。
エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを併用する場合、それらの量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、質量比で、1:0.1〜1:6の範囲が好ましい。液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂との量比を斯かる範囲とすることにより、i)樹脂シートの形態で使用する場合に適度な粘着性がもたらされる、ii)樹脂シートの形態で使用する場合に十分な可撓性が得られ、取り扱い性が向上する、並びにiii)十分な破断強度を有する硬化物を得ることができる等の効果が得られる。上記i)〜iii)の効果の観点から、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂の量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、質量比で、1:0.3〜1:5の範囲がより好ましく、1:0.6〜1:4の範囲がさらに好ましい。
樹脂組成物中のエポキシ樹脂の含有量は、良好な機械強度、絶縁信頼性を示す絶縁層を得る観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上である。エポキシ樹脂の含有量の上限は、本発明の効果が奏される限りにおいて特に限定されないが、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下である。
なお、本発明において、樹脂組成物中の各成分の含有量は、別途明示のない限り、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたときの値である。
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは50〜5000、より好ましくは50〜3000、さらに好ましくは80〜2000、さらにより好ましくは110〜1000である。この範囲となることで、硬化物の架橋密度が十分となり表面粗さの小さい絶縁層をもたらすことができる。なお、エポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができ、1当量のエポキシ基を含む樹脂の質量である。
エポキシ樹脂の重量平均分子量は、好ましくは100〜5000、より好ましくは250〜3000、さらに好ましくは400〜1500である。ここで、エポキシ樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
−(c)硬化剤−
硬化剤としては、エポキシ樹脂を硬化する機能を有する限り特に限定されず、例えば、活性エステル系硬化剤、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、カルボジイミド系硬化剤、活性エステル系硬化剤、等が挙げられる。硬化剤は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤としては、導体層との密着強度に優れる絶縁層を得る観点から、含窒素フェノール系硬化剤又は含窒素ナフトール系硬化剤が好ましく、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤又はトリアジン骨格含有ナフトール系硬化剤がより好ましい。中でも、耐熱性、耐水性、及び導体層との密着強度を高度に満足させる観点から、トリアジン骨格含有フェノールノボラック樹脂が好ましい。フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤の具体例としては、例えば、明和化成(株)製の「MEH−7700」、「MEH−7810」、「MEH−7851」、日本化薬(株)製の「NHN」、「CBN」、「GPH」、新日鉄住金化学(株)製の「SN−170」、「SN−180」、「SN−190」、「SN−475」、「SN−485」、「SN−495」、「SN−375」、「SN−395」、DIC(株)製の「LA−7052」、「LA−7054」、「LA−3018」、「LA−1356」、「TD2090」等が挙げられる。トリアジン骨格含有フェノールノボラック硬化剤の具体例としては、例えば、DIC(株)製の「LA−3018−50P」等が挙げられる。
シアネートエステル系硬化剤としては、特に限定されないが、例えば、ノボラック型(フェノールノボラック型、アルキルフェノールノボラック型等)シアネートエステル系硬化剤、ジシクロペンタジエン型シアネートエステル系硬化剤、ビスフェノール型(ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型等)シアネートエステル系硬化剤、及びこれらが一部トリアジン化したプレポリマー等が挙げられる。具体例としては、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート(オリゴ(3−メチレン−1,5−フェニレンシアネート))、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルフェニルシアネート)、4,4’−エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2−ビス(4−シアネート)フェニルプロパン、1,1−ビス(4−シアネートフェニルメタン)、ビス(4−シアネート−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,3−ビス(4−シアネートフェニル−1−(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4−シアネートフェニル)チオエーテル、及びビス(4−シアネートフェニル)エーテル等の2官能シアネート樹脂、フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂、これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマー等が挙げられる。シアネートエステル系硬化剤の具体例としては、ロンザジャパン(株)製の「PT30」及び「PT60」(いずれもフェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂)、「BA230」(ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー)等が挙げられる。
ベンゾオキサジン系硬化剤の具体例としては、昭和高分子(株)製の「HFB2006M」、四国化成工業(株)製の「P−d」、「F−a」が挙げられる。
カルボジイミド系硬化剤の具体例としては、日清紡ケミカル(株)製の「V−03」、「V−07」等が挙げられる。
活性エステル硬化剤としては、1分子中に活性エステル基を2個以上有する活性エステル化合物が好ましく、例えば、フェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N−ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する活性エステル化合物が好ましく用いられる。活性エステル硬化剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物と、ヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られる活性エステル化合物が好ましい。中でも、カルボン酸化合物と、フェノール化合物、ナフトール化合物及びチオール化合物から選択される1種以上とを反応させて得られる活性エステル化合物がより好ましく、カルボン酸化合物と、フェノール性水酸基を有する芳香族化合物とを反応させて得られる、1分子中に2個以上の活性エステル基を有する芳香族化合物がさらに好ましく、少なくとも2個以上のカルボキシ基を1分子中に有するカルボン酸化合物と、フェノール性水酸基を有する芳香族化合物とを反応させて得られる芳香族化合物であって、1分子中に2個以上の活性エステル基を有する芳香族化合物がさらにより好ましい。活性エステル化合物は、直鎖状であってよく、分岐状であってもよい。また、少なくとも2個以上のカルボキシ基を1分子中に有するカルボン酸化合物が脂肪族鎖を含む化合物であれば樹脂組成物との相溶性を高くすることができ、芳香環を有する化合物であれば耐熱性を高くすることができる。
カルボン酸化合物としては、例えば、炭素原子数1〜20(好ましくは2〜10、より好ましくは2〜8)の脂肪族カルボン酸、炭素原子数7〜20(好ましくは7〜10)の芳香族カルボン酸が挙げられる。脂肪族カルボン酸としては、例えば、酢酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸等が挙げられる。芳香族カルボン酸としては、例えば、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。中でも、耐熱性の観点から、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸が好ましく、イソフタル酸、テレフタル酸がより好ましい。
チオカルボン酸化合物としては、特に制限はないが、例えば、チオ酢酸、チオ安息香酸等が挙げられる。
フェノール化合物としては、例えば、炭素原子数6〜40(好ましくは6〜30、より好ましくは6〜23、さらに好ましくは6〜22)のフェノール化合物が挙げられ、好適な具体例としては、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、カテコール、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール等が挙げられる。フェノール化合物としてはまた、フェノールノボラック、特開2013−40270号公報記載のフェノール性水酸基を有するリン原子含有オリゴマーを使用してもよい。
ナフトール化合物としては、例えば、炭素原子数10〜40(好ましくは10〜30、より好ましくは10〜20)のナフトール化合物が挙げられ、好適な具体例としては、α−ナフトール、β−ナフトール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン等が挙げられる。ナフトール化合物としてはまた、ナフトールノボラックを使用してもよい。
中でも、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、カテコール、α−ナフトール、β−ナフトール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール、フェノールノボラック、フェノール性水酸基を有するリン原子含有オリゴマーが好ましく、カテコール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール、フェノールノボラック、フェノール性水酸基を有するリン原子含有オリゴマーがより好ましく、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、ジシクロペンタジエン型ジフェノール、フェノールノボラック、フェノール性水酸基を有するリン原子含有オリゴマーがさらに好ましく、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジシクロペンタジエン型ジフェノール、フェノールノボラック、フェノール性水酸基を有するリン原子含有オリゴマーがさらにより好ましく、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジシクロペンタジエン型ジフェノール、フェノール性水酸基を有するリン原子含有オリゴマーが殊更好ましく、ジシクロペンタジエン型ジフェノールが特に好ましい。
チオール化合物としては、特に制限はないが、例えば、ベンゼンジチオール、トリアジンジチオール等が挙げられる。
活性エステル硬化剤の好適な具体例としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物、芳香族カルボン酸とフェノール性水酸基を有するリン原子含有オリゴマーとを反応させて得られる活性エステル化合物が挙げられ、中でもジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物、芳香族カルボン酸とフェノール性水酸基を有するリン原子含有オリゴマーとを反応させて得られる活性エステル化合物がより好ましい。なお本発明において、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造」とは、フェニレン−ジシクロペンタレン−フェニレンからなる2価の構造単位を表す。
活性エステル硬化剤としては、特開2004−277460号公報、特開2013−40270号公報に開示されている活性エステル化合物を用いてもよく、また市販の活性エステル化合物を用いることもできる。活性エステル化合物の市販品としては、例えば、DIC(株)製の「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「HPC−8000−65T」、「HPC−8000L−65M」(ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物)、DIC(株)製の「9416−70BK」(ナフタレン構造を含む活性エステル化合物)、三菱化学(株)製の「DC808」(フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物)、三菱化学(株)製の「YLH1026」(フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物)、DIC(株)製の「EXB9050L−62M」(リン原子含有活性エステル化合物)が挙げられる。
粗化処理後の表面粗度が低い絶縁層を得る観点から、樹脂組成物中の硬化剤の含有量は、3質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましい。硬化剤の含有量の上限は特に限定されないが、40質量%以下が好ましく、35質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。
また、(b)エポキシ樹脂のエポキシ基数を1とした場合、機械強度の良好な絶縁層を得る観点から、(c)硬化剤の反応基数は、0.2〜2が好ましく、0.3〜1.5がより好ましく、0.35〜1がさらに好ましい。ここで、「エポキシ樹脂のエポキシ基数」とは、樹脂組成物中に存在する各エポキシ樹脂の固形分質量をエポキシ当量で除した値をすべてのエポキシ樹脂について合計した値である。また、「反応基」とはエポキシ基と反応することができる官能基のことを意味し、「反応基数」とは、樹脂組成物中に存在する各硬化剤の固形分質量を反応基当量で除した値を全て合計した値である。
−(d)有機充填材−
有機充填材としては、プリント配線板の製造に際し使用し得る任意の有機充填材を使用してよく、例えば、ゴム粒子、ポリアミド微粒子、シリコーン粒子等が挙げられ、ゴム粒子が好ましい。
ゴム粒子としては、ゴム弾性を示す樹脂に化学的架橋処理を施し、有機溶剤に不溶かつ不融とした樹脂の微粒子体である限り特に限定されず、例えば、アクリロニトリルブタジエンゴム粒子、ブタジエンゴム粒子、アクリルゴム粒子等が挙げられる。ゴム粒子の市販品としては、例えば、日本合成ゴム(株)製の「XER−91」、アイカ工業(株)製の「スタフィロイドAC3355」、「スタフィロイドAC3816」、「スタフィロイドAC3401N」、「スタフィロイドAC3816N」、「スタフィロイドAC3832」、「スタフィロイドAC4030」、「スタフィロイドAC3364」、「スタフィロイドIM101」、呉羽化学工業(株)製の「パラロイドEXL2655」、「パラロイドEXL2602」等が挙げられる。
有機充填材の平均粒子径は、好ましくは0.005μm〜1μmの範囲であり、より好ましくは0.2μm〜0.6μmの範囲である。有機充填材の平均粒子径は、動的光散乱法を用いて測定することができる。例えば、適当な有機溶剤に有機充填材を超音波等により均一に分散させ、濃厚系粒径アナライザー(大塚電子(株)製「FPAR−1000」)を用いて、有機充填材の粒度分布を質量基準で作成し、そのメディアン径を平均粒子径とすることで測定することができる。
樹脂組成物中の有機充填材の含有量は、好ましくは1質量%〜10質量%、より好ましくは2質量%〜5質量%である。
−(e)熱可塑性樹脂−
熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂は、1種単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は8,000〜70,000の範囲が好ましく、10,000〜60,000の範囲がより好ましく、20,000〜60,000の範囲がさらに好ましい。熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定される。具体的には、熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は、測定装置として(株)島津製作所製LC−9A/RID−6Aを、カラムとして昭和電工(株)製Shodex K−800P/K−804L/K−804Lを、移動相としてクロロホルム等を用いて、カラム温度を40℃にて測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出することができる。
フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、アダマンタン骨格、テルペン骨格、及びトリメチルシクロヘキサン骨格からなる群から選択される1種以上の骨格を有するフェノキシ樹脂が挙げられる。フェノキシ樹脂の末端は、フェノール性水酸基、エポキシ基等のいずれの官能基でもよい。フェノキシ樹脂は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。フェノキシ樹脂の具体例としては、三菱化学(株)製の「1256」及び「4250」(いずれもビスフェノールA骨格含有フェノキシ樹脂)、「YX8100」(ビスフェノールS骨格含有フェノキシ樹脂)、及び「YX6954」(ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂)が挙げられ、その他にも、新日鉄住金化学(株)製の「FX280」及び「FX293」、三菱化学(株)製の「YX7553BH30」、「YL7553」、「YL6794」、「YL7213」、「YL7290」及び「YL7482」等が挙げられる。
ポリビニルアセタール樹脂としては、例えば、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂が挙げられ、ポリビニルブチラール樹脂が好ましい。ポリビニルアセタール樹脂の具体例としては、例えば、電気化学工業(株)製の「電化ブチラール4000−2」、「電化ブチラール5000−A」、「電化ブチラール6000−C」、「電化ブチラール6000−EP」、積水化学工業(株)製のエスレックBHシリーズ、BXシリーズ、KSシリーズ(具体的には「KS−1」等)、BLシリーズ、BMシリーズ等が挙げられる。
ポリイミド樹脂の具体例としては、新日本理化(株)製の「リカコートSN20」及び「リカコートPN20」が挙げられる。ポリイミド樹脂の具体例としてはまた、2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエン、ジイソシアネート化合物及び四塩基酸無水物を反応させて得られる線状ポリイミド(特開2006−37083号公報記載のポリイミド)、ポリシロキサン骨格含有ポリイミド(特開2002−12667号公報及び特開2000−319386号公報等に記載のポリイミド)等の変性ポリイミドが挙げられる。
ポリアミドイミド樹脂の具体例としては、東洋紡績(株)製の「バイロマックスHR11NN」及び「バイロマックスHR16NN」が挙げられる。ポリアミドイミド樹脂の具体例としてはまた、日立化成工業(株)製の「KS9100」、「KS9300」(ポリシロキサン骨格含有ポリアミドイミド)等の変性ポリアミドイミドが挙げられる。
ポリエーテルスルホン樹脂の具体例としては、住友化学(株)製の「PES5003P」等が挙げられる。
ポリスルホン樹脂の具体例としては、ソルベイアドバンストポリマーズ(株)製のポリスルホン「P1700」、「P3500」等が挙げられる。
樹脂組成物中の熱可塑性樹脂の含有量は、好ましくは0.1質量%〜20質量%、より好ましくは1質量%〜15質量%である。
−(f)硬化促進剤−
硬化促進剤としては、特に限定されないが、例えば、イミダゾール系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、リン系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤等が挙げられる。硬化促進剤は、1種単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。硬化促進剤は、エポキシ樹脂及び硬化剤の不揮発成分の合計を100質量%としたとき、0.05質量%〜3質量%の範囲で使用することが好ましい。
−(g)難燃剤−
難燃剤としては、例えば、有機リン系難燃剤、有機系窒素含有リン化合物、窒素化合物、シリコーン系難燃剤、金属水酸化物等が挙げられる。難燃剤は、1種単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。樹脂組成物中の難燃剤の含有量は特に限定されないが、好ましくは0.5質量%〜10質量%、より好ましくは1質量%〜9質量%である。難燃剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、三光(株)製の「HCA−HQ」等が挙げられる。
−その他の添加剤−
樹脂組成物は、必要に応じて、さらに他の成分を含んでいてもよい。斯かる他の成分としては、例えば、有機銅化合物、有機亜鉛化合物及び有機コバルト化合物等の有機金属化合物、並びに増粘剤、消泡剤、レベリング剤、密着性付与剤、及び着色剤等の樹脂添加剤等が挙げられる。
本発明の樹脂シートにおいて、樹脂組成物層の厚さの好適な範囲は、[樹脂シートの製造方法」に記載のとおりである。
本発明の樹脂シートは、絶縁樹脂層上に積層して用いられる回路形成用の樹脂シートとして好適に使用することができる。プリント配線板の製造に際して、本発明の樹脂シートを絶縁樹脂層と組み合わせて使用することにより、粗化処理後の表面粗度が低い絶縁層を実現することができる。中でも、本発明の樹脂シートは、めっきプロセスにより回路形成を行うための樹脂シート(めっきプロセスによる回路形成用の樹脂シート)として特に好適に使用することができる。
[積層シート]
本発明の方法により製造された樹脂シートは接着性に優れており、絶縁樹脂層をはじめとする種々のフィルムとの積層シートを容易に形成することが可能である。
一実施形態において、本発明の積層シートは、本発明の樹脂シートと、該樹脂シートの樹脂組成物層と接合している絶縁樹脂層とを含む。
絶縁樹脂層としては、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して従来公知の絶縁樹脂層を使用できる。絶縁樹脂層の厚さは、絶縁層の薄型化の観点から、好ましくは70μm以下、より好ましくは60μm以下、50μm以下、40μm以下、30μm以下、又は20μm以下である。絶縁樹脂層の厚さの下限は、特に限定されないが、通常、1μm以上、5μm以上、10μm以上等とし得る。
機械強度に優れる薄型の絶縁層を得る観点から、絶縁樹脂層としては、プリプレグが好ましいが、シート状繊維基材を含有しない熱硬化性樹脂組成物層(以下、単に「熱硬化性樹脂組成物層」という。)を使用してもよい。熱硬化性樹脂組成物層は、硬化後に十分な硬度と絶縁性を示す限り特に限定されないが、一般に、エポキシ樹脂及び硬化剤を含む。エポキシ樹脂の種類や含有量は、上記[樹脂シート]における(b)エポキシ樹脂について説明したとおりである。硬化剤としては、上記[樹脂シート]における(c)硬化剤を用いてよい。このとき、エポキシ樹脂と硬化剤との量比は、得られる絶縁層の機械強度や耐水性を向上させる観点から、[エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数]:[硬化剤の反応基の合計数]の比率で、好ましくは1:0.2〜1:2、より好ましくは1:0.3〜1:1.5、さらに好ましくは1:0.4〜1:1である。ここで、硬化剤の反応基とは、活性水酸基、活性エステル基等であり、硬化剤の種類によって異なる。得られる絶縁層の熱膨張率を低下させて、絶縁層と導体層との熱膨張の差によるクラックや回路歪みの発生を防止する観点から、熱硬化性樹脂組成物層は、無機充填材をさらに含むことが好ましい。無機充填材としては、上記[樹脂シート]における(a)無機充填材を用いてよい。熱硬化性樹脂組成物層中の無機充填材の含有量は、得られる絶縁層の熱膨張率を低下させる観点から、熱硬化性樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%としたとき、好ましくは50質量%以上、より好ましくは55質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上、65質量%以上、70質量%以上、又は75質量%以上である。無機充填材の含有量の上限は、得られる絶縁層の機械強度の観点から、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下又は85質量%以下である。熱硬化性樹脂組成物層に含有させ得る他の成分としては、例えば、上記[樹脂シート]において説明した、(d)有機充填材、(e)熱可塑性樹脂、(f)硬化促進剤、(g)難燃剤及び「その他の添加剤」が挙げられる。
好適な一実施形態において、本発明の積層シートは、本発明の樹脂シートと、該樹脂シートの樹脂組成物層と接合しているプリプレグとを含む。
プリプレグは、シート状繊維基材中に熱硬化性樹脂組成物を含浸させてなるものである。
プリプレグに用いる熱硬化性樹脂組成物は、その硬化物が十分な硬度と絶縁性を有する限りにおいて特に限定されず、プリント配線板の絶縁層の形成に用いられる従来公知の熱硬化性樹脂組成物を用いてよい。例えば、上記の熱硬化性樹脂組成物層の形成に使用する樹脂組成物を用いてよい。あるいはまた、プリプレグに用いる熱硬化性樹脂組成物は、本発明の樹脂シートにおける樹脂組成物層の形成に使用する樹脂組成物と同じであってよい。
プリプレグに用いるシート状繊維基材は特に限定されず、ガラスクロス、アラミド不織布、液晶ポリマー不織布等のプリプレグ用基材として常用されているものを用いることができる。絶縁層の薄型化の観点から、シート状繊維基材の厚さは、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下、さらに好ましくは30μm以下、25μm以下又は20μm以下である。シート状繊維基材の厚さの下限は、特に限定されないが、通常、5μm以上、10μm以上等とし得る。
プリプレグは、ホットメルト法、ソルベント法等の公知の方法により製造することができる。
プリプレグの厚さは、好ましくは200μm以下、より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは80μm以下、70μm以下、60μm以下、50μm以下、40μm以下、又は30μm以下である。プリプレグの厚さの下限は、特に限定されないが、通常、10μm以上、12μm以上等とし得る。なお、プリプレグの厚さは、熱硬化性樹脂組成物の含浸量を調整することにより、容易に変更することができる。
本発明の積層シートは、本発明の樹脂シートの樹脂組成物層と絶縁樹脂層(好ましくはプリプレグ)とが接合するように、本発明の樹脂シートと絶縁樹脂層とを積層することにより製造することができる。例えば、本発明の樹脂シートを、該樹脂シートの樹脂組成物層が絶縁樹脂層と接合するように、絶縁樹脂層にラミネート処理することにより、本発明の積層シートを製造することができる。
本発明の樹脂シートと絶縁樹脂層との積層は、作業性が良好であり、一様な接触状態が得られやすいので、ロール圧着やプレス圧着等で、本発明の樹脂シートを絶縁樹脂層にラミネート処理することが好ましい。ラミネート処理は、市販の真空ラミネーターを用いて実施することができる。市販の真空ラミネーターは、先述のとおりである。
積層シートの製造において、絶縁樹脂層は、支持体と、該支持体と接合する絶縁樹脂層とを含む接着シートの形態で使用してよい。支持体としては、上記樹脂シートについて説明した支持体と同じものを使用してよい。
絶縁樹脂層を接着シートの形態にて使用する場合、絶縁樹脂層の支持体と接合していない面(即ち、支持体とは反対側の面)には、支持体に準じた保護フィルムをさらに積層することができる。保護フィルムとしては、上記樹脂シートの製造方法で説明した保護フィルムと同じものを使用してよい。接着シートは、ロール状に巻きとって保存することが可能であり、積層シートを製造する際には、保護フィルムを剥がすことによって使用可能となる。
本発明の積層シートは、プリント配線板の絶縁層を形成するための積層シート(プリント配線板の絶縁層用積層シート)として使用することができる。本発明の積層シートを用いてプリント配線板の絶縁層を形成することにより、粗化処理後の表面粗度が低い絶縁層を実現することができる。中でも、ビルドアップ方式によるプリント配線板の製造において、絶縁層を形成するための積層シート(プリント配線板のビルドアップ絶縁層用積層シート)として好適に使用することができ、その上にめっきプロセスにより回路が形成される絶縁層を形成するための積層シート(めっきプロセスにより回路を形成するプリント配線板のビルドアップ絶縁層用積層シート)としてさらに好適に使用することができる。
[積層板]
本発明の積層板は、本発明の樹脂シートと、絶縁樹脂層とを、樹脂組成物層と絶縁樹脂層とが接合した状態で、加熱することにより形成された絶縁層を含む。
一実施形態において、本発明の積層板は、本発明の樹脂シートと絶縁樹脂層とを用いて、下記工程(I−1)を含む方法により製造することができる(以下、「第1実施形態」ともいう。)。
(I−1)樹脂組成物層同士が互いに対向するように配置された2枚の樹脂シートの間に1枚以上の絶縁樹脂層を配置し、減圧下、200℃以上で加熱及び加圧して一体成型する工程
第1実施形態において使用する樹脂シート及び絶縁樹脂層は先述のとおりである。第1実施形態において、絶縁樹脂層は、プリプレグであることが好ましい。
工程(I−1)は、例えば、真空熱プレス装置を用いて以下の手順で実施することができる。
まず真空熱プレス装置に、樹脂組成物層同士が互いに対向するように配置された2枚の樹脂シートの間に1枚以上の絶縁樹脂層を配置するように積層した積層構造をセットする。
積層構造は、クッション紙、ステンレス板(SUS板)等の金属板、離型フィルム等を介して真空熱プレス装置にセットすることが好ましい。積層構造は、例えば、クッション紙/金属板/離型フィルム/積層構造(例えば、樹脂シート/絶縁樹脂層/樹脂シート)/離型フィルム/SUS板/クッション紙の順に積層されて真空熱プレス装置にセットされる。
ここで記号「/」はこれを挟むように示されている構成要素同士が互いに接するように配置されていることを意味している(以下、積層構造の説明等において同様である。)。
次いで、減圧条件下で積層構造を加熱圧着する真空熱プレス処理を行う。
真空熱プレス処理は、加熱されたSUS板等の金属板によって積層構造をその両面側から押圧する従来公知の真空熱プレス装置を用いて実施することができる。市販されている真空熱プレス装置としては、例えば、(株)名機製作所製の「MNPC−V−750−5−200」、北川精機(株)製の「VH1−1603」等が挙げられる。
真空熱プレス処理は、1回のみ実施してもよく、2回以上繰り返して実施してもよい。
真空熱プレス処理において、圧着圧力(押圧力)は、好ましくは5kgf/cm〜80kgf/cm(0.49MPa〜7.9MPa)、より好ましくは10kgf/cm〜60kgf/cm(0.98MPa〜5.9MPa)である。
真空熱プレス処理において、雰囲気の圧力、すなわち、処理対象の積層構造が格納されるチャンバ内の減圧時の圧力は、好ましくは3×10−2MPa以下、より好ましくは1×10−2MPa以下である。
真空熱プレス処理において、加熱温度(T)は、200℃以上であり、好ましくは210℃以上、より好ましくは220℃以上である。加熱温度(T)の上限は特に限定されないが、通常、240℃以下等とし得る。
真空熱プレス処理は、粗化処理後の表面粗度が低い絶縁層を得る観点から、温度を段階的に若しくは連続的に上昇させながら、及び/又は温度を段階的に若しくは連続的に下降させながら、実施することが好ましい。斯かる場合、最高到達温度が、上記所望の温度条件を満たすことが好ましい。
工程(I−1)は、2枚以上の絶縁樹脂層を用い、絶縁樹脂層同士の間にさらに内層基板を配置して実施してもよい。2枚以上の絶縁樹脂層は、同一でも相異なっていてもよい。
本発明において、「内層基板」とは、主として、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等の基板、又は該基板の片面又は両面にパターン加工された導体層(回路)が形成された回路基板をいう。またプリント配線板を製造する際に、さらに絶縁層及び/又は導体層が形成されるべき中間製造物の内層回路基板も本発明でいう「内層基板」に含まれる。
工程(I−1)により、樹脂シートの樹脂組成物層と、絶縁樹脂層とは、一体化して絶縁層を形成する。
他の実施形態において、本発明の積層板は、本発明の積層シートを用いて、下記工程(II−1)及び(II−2)を含む方法により製造することができる(以下、「第2実施形態」ともいう。)。
(II−1)積層シートを、絶縁樹脂層が内層基板に接するように、内層基板に積層する工程
(II−2)積層シートを熱硬化して絶縁層を形成する工程
第2実施形態において使用する積層シート及び内層基板は、先述のとおりである。
工程(II−1)において、本発明の積層シートを、絶縁樹脂層が内層基板に接するように、内層基板に積層する。
工程(II−1)における積層シートと内層基板との積層は、例えば、支持体側から積層シートを内層基板に加熱圧着することにより行うことができる。積層シートを内層基板に加熱圧着する部材(以下、「加熱圧着部材」ともいう。)としては、例えば、加熱された金属板(SUS鏡板等)又は金属ロール(SUSロール)等が挙げられる。なお、加熱圧着部材を積層シートに直接プレスするのではなく、内層基板の表面凹凸に積層シートが十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスするのが好ましい。
積層シートと内層基板の積層は、真空ラミネート法により実施してよい。真空ラミネート法において、加熱温度は、好ましくは60℃〜160℃、より好ましくは80℃〜140℃の範囲であり、圧着圧力は、好ましくは1kgf/cm〜18kgf/cm(0.098MPa〜1.77MPa)、より好ましくは3kgf/cm〜15kgf/cm(0.29MPa〜1.47MPa)の範囲であり、圧着時間は、好ましくは20秒間〜400秒間、より好ましくは30秒間〜300秒間の範囲である。積層は、好ましくは圧力26.7hPa以下の減圧条件下で実施する。
工程(II−1)において、積層シートは、内層基板の片面に積層してもよく、内層基板の両面に積層してもよい。
積層シートと内層基板の積層は、市販の真空ラミネーターによって行うことができる。市販の真空ラミネーターは、先述のとおりである。
積層の後に、常圧下(大気圧下)、例えば、加熱圧着部材を支持体側からプレスすることにより、積層された積層シートの平滑化処理を行ってもよい。平滑化処理のプレス条件は、上記積層の加熱圧着条件と同様の条件としてよい。平滑化処理は、市販のラミネーターによって行うことができる。なお、積層と平滑化処理は、上記の市販の真空ラミネーターを用いて連続的に行ってもよい。
工程(II−2)において、積層シートを熱硬化して絶縁層を形成する。
熱硬化の条件は特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して通常採用される条件を使用してよい。
例えば、積層シートの熱硬化条件は、樹脂組成物層及び絶縁樹脂層の組成によっても異なるが、硬化温度は120℃〜240℃の範囲(好ましくは150℃〜210℃の範囲、より好ましくは170℃〜190℃の範囲)、硬化時間は5分間〜90分間の範囲(好ましくは10分間〜75分間、より好ましくは15分間〜60分間)としてよい。
積層シートを熱硬化させる前に、積層シートを硬化温度よりも低い温度にて予備加熱してもよい。例えば、積層シートを熱硬化させるのに先立ち、50℃以上120℃未満(好ましくは60℃以上110℃以下、より好ましくは70℃以上100℃以下)の温度にて、積層シートを5分間以上(好ましくは5分間〜150分間、より好ましくは15分間〜120分間)予備加熱してもよい。
工程(II−2)により、積層シート中の樹脂組成物層と絶縁樹脂層の双方が熱硬化され、一体化した絶縁層が形成される。
第1実施形態及び第2実施形態の別を問わず、(III)絶縁層に穴あけする工程、(IV)絶縁層を粗化処理する工程、(V)絶縁層の表面に回路を形成する工程をさらに実施してもよい。したがって一実施形態において、本発明の積層板は、絶縁層の表面に形成された回路を含む。
なお、支持体は、第1実施形態及び第2実施形態の別を問わず、絶縁層の表面に回路を形成する以前に除去すればよい。詳細には、第1実施形態において、支持体は、工程(I−1)と工程(III)との間、工程(III)と工程(IV)との間、又は工程(IV)と工程(V)との間に除去すればよい。第2実施形態において、支持体は、工程(II−1)と工程(II−2)との間、工程(II−2)と工程(III)との間、工程(III)と工程(IV)との間、又は工程(IV)と工程(V)との間に除去すればよい。支持体として有機支持体を使用する場合、該有機支持体は剥離除去することができる。支持体として金属支持体を使用する場合、該金属支持体はエッチング除去することができる。
工程(III)は、絶縁層に穴あけする工程であり、これにより絶縁層にビアホール、スルーホール等のホールを形成することができる。工程(III)は、絶縁層の形成に使用した樹脂組成物層及び絶縁樹脂層の組成等に応じて、例えば、ドリル、レーザー、プラズマ等を使用して実施してよい。ホールの寸法や形状は、プリント配線板のデザインに応じて適宜決定してよい。
工程(IV)は、絶縁層を粗化処理する工程である。粗化処理の手順、条件は特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して通常使用される公知の手順、条件を採用することができる。例えば、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理、中和液による中和処理をこの順に実施して絶縁層を粗化処理することができる。膨潤液としては特に限定されないが、アルカリ溶液、界面活性剤溶液等が挙げられ、好ましくはアルカリ溶液であり、該アルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液がより好ましい。市販されている膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン(株)製の「スウェリング・ディップ・セキュリガンスP」、「スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU」等が挙げられる。膨潤液による膨潤処理は、特に限定されないが、例えば、30〜90℃の膨潤液に絶縁層を1分間〜20分間浸漬することにより行うことができる。酸化剤としては、特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウムや過マンガン酸ナトリウムを溶解したアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。アルカリ性過マンガン酸溶液等の酸化剤による粗化処理は、60℃〜80℃に加熱した酸化剤溶液に絶縁層を10分間〜30分間浸漬させて行うことが好ましい。また、アルカリ性過マンガン酸溶液における過マンガン酸塩の濃度は5質量%〜10質量%が好ましい。市販されている酸化剤としては、例えば、アトテックジャパン(株)製の「コンセントレート・コンパクトCP」、「ドージングソリューション・セキュリガンスP」等のアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。また、中和液としては、酸性の水溶液が好ましく、市販品としては、例えば、アトテックジャパン(株)製の「リダクションソリューション・セキュリガントP」が挙げられる。中和液による処理は、酸化剤による粗化処理がなされた処理面を30〜80℃の中和液に5分間〜30分間浸漬させることにより行うことができる。
工程(V)は、絶縁層の表面に回路(導体層)を形成する工程である。
導体層に使用する導体材料は特に限定されない。好適な実施形態では、導体層は、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムからなる群から選択される1種以上の金属を含む。導体層は、単金属層であっても合金層であってもよく、合金層としては、例えば、上記の群から選択される2種以上の金属の合金(例えば、ニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金及び銅・チタン合金)から形成された層が挙げられる。中でも、導体層形成の汎用性、コスト、パターニングの容易性等の観点から、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金、銅・チタン合金の合金層が好ましく、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層がより好ましく、銅の単金属層が更に好ましい。
導体層は、単層構造であっても、異なる種類の金属若しくは合金からなる単金属層又は合金層が2層以上積層した複層構造であってもよい。導体層が複層構造である場合、絶縁層と接する層は、クロム、亜鉛若しくはチタンの単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層であることが好ましい。
導体層の厚さは、所望のプリント配線板のデザインによるが、通常3μm〜50μm、好ましくは5μm〜30μmである。
導体層は、めっきプロセスにより形成することができる。例えば、セミアディティブ法、フルアディティブ法等の従来公知の技術により絶縁層の表面にめっきして、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。以下、導体層をセミアディティブ法により形成する例を示す。
まず、絶縁層の表面に、無電解めっきによりめっきシード層を形成する。次いで、形成されためっきシード層上に、所望の配線パターンに対応してめっきシード層の一部を露出させるマスクパターンを形成する。露出しためっきシード層上に、電解めっきにより金属層を形成した後、マスクパターンを除去する。その後、不要なめっきシード層をエッチング等により除去して、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。
本発明の積層板は、その製造方法や構造(例えば、第1実施形態における内層基板の使用の有無、第1及び第2実施形態における回路の有無等)に応じて、種々の用途に使用し得る。例えば、プリント配線板の製造に用いられる絶縁性コア基板、内層回路基板等の内層基板として用いてもよく、プリント配線板として用いてもよい。
[半導体装置]
本発明の積層板からなるプリント配線板を用いて、あるいは本発明の積層板を用いて製造されたプリント配線板を用いて、半導体装置を製造することができる。
半導体装置としては、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、デジタルカメラ及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される各種半導体装置が挙げられる。
本発明の半導体装置は、プリント配線板の導通箇所に、部品(半導体チップ)を実装することにより製造することができる。「導通箇所」とは、「プリント配線板における電気信号を伝える箇所」であって、その場所は表面であっても、埋め込まれた箇所であってもいずれでも構わない。また、半導体チップは半導体を材料とする電気回路素子であれば特に限定されない。
本発明の半導体装置を製造する際の半導体チップの実装方法は、半導体チップが有効に機能しさえすれば、特に限定されないが、具体的には、ワイヤボンディング実装方法、フリップチップ実装方法、バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法、異方性導電フィルム(ACF)による実装方法、非導電性フィルム(NCF)による実装方法、等が挙げられる。ここで、「バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法」とは、「半導体チップをプリント配線板の凹部に直接埋め込み、半導体チップとプリント配線板上の配線とを接続させる実装方法」のことである。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の記載において、「部」は、別途明示のない限り、「質量部」を意味する。
<樹脂ワニス1の調製>
ビスフェノール型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学(株)製「ZX1059」、ビスフェノールA型とビスフェノールF型の1:1混合品、エポキシ当量約169)5部、ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC(株)製「HP4032SS」、エポキシ当量約144)5部、ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製「NC3000L」、エポキシ当量約269)20部、及びフェノキシ樹脂(三菱化学(株)製「YX7553BH30」、固形分30質量%のシクロヘキサノン:メチルエチルケトン(MEK)の1:1溶液)20部を、MEK3部に撹拌しながら加熱溶解させた。室温にまで冷却した後、そこへ、トリアジン骨格含有フェノールノボラック系硬化剤(水酸基当量125、DIC(株)製「LA−7054」、固形分60質量%のMEK溶液)10部、ナフトール系硬化剤(新日鉄住金化学(株)製「SN−485」、水酸基当量215、固形分60質量%のMEK溶液)10部、ポリビニルブチラール樹脂(ガラス転移温度105℃、積水化学工業(株)製「KS−1」の固形分20質量%のエタノールとトルエンの1:1の混合溶液)16部、アミン系硬化促進剤(4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、固形分5質量%のMEK溶液)1部、イミダゾール系硬化促進剤(三菱化学(株)製「P200−H50」、固形分50質量%のプロピレングリコールモノメチルエーテル溶液)1部、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製「KBM573」)で表面処理されたシリカ((株)アドマテックス製、アドマナノシリカ、「YC100C」、平均粒径0.10μm、比表面積50m/g、固形分30質量%のMEKスラリー)43部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散した後に、減圧脱泡、さらにカートリッジフィルター((株)ロキテクノ製「SCP−010」、濾過効率(メーカー公称値):1μm以上の粒子を99.9%以上カット)で濾過して、樹脂ワニス1を調製した。
<樹脂ワニス2の調製>
ビスフェノールAF型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「YL7760」、エポキシ当量約238)12部、ビキシレノール型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「YX4000HK」、エポキシ当量約185)12部、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(DIC(株)製「HP−7200HH」、エポキシ当量約280)12部、及びフェノキシ樹脂(三菱化学(株)製「YX7553BH30」、固形分30質量%のシクロヘキサノン:メチルエチルケトン(MEK)の1:1溶液)12部を、ソルベントナフサ12部、MEK5部に撹拌しながら加熱溶解させた。室温にまで冷却した後、そこへ、活性エステル系硬化剤(DIC(株)製「HPC−8000−65T」、活性基当量約223、不揮発成分65質量%のトルエン溶液)20部、トリアジン骨格含有クレゾールノボラック系硬化剤(水酸基当量151、DIC(株)製「LA−3018−50P」、固形分50%の2−メトキシプロパノール溶液)5部、アミン系硬化促進剤(4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、固形分5質量%のMEK溶液)2部、イミダゾール系硬化促進剤(四国化成工業(株)製(2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2P4MZ)、固形分5質量%のMEK溶液)2部、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ((株)アドマテックス製「SO−C1」、平均粒径0.30μm、比表面積10m/g)14部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散した後に、減圧脱泡、さらにカートリッジフィルター((株)ロキテクノ製「SHP−030」、濾過効率(メーカー公称値):2μm以上の粒子を99.9%以上カット)で濾過して、樹脂ワニス2を調製した。
<樹脂ワニス3の調製>
ビスフェノールAF型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「YL7760」、エポキシ当量約238)12部、ビキシレノール型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「YX4000HK」、エポキシ当量約185)12部、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(DIC(株)製「HP−7200HH」、エポキシ当量約280)12部、及びフェノキシ樹脂(三菱化学(株)製「YX7553BH30」、固形分30質量%のシクロヘキサノン:メチルエチルケトン(MEK)の1:1溶液)12部を、ソルベントナフサ8部、MEK2部に撹拌しながら加熱溶解させた。室温にまで冷却した後、そこへ、活性エステル系硬化剤(DIC(株)製「HPC−8000−65T」、活性基当量約223、不揮発成分65質量%のトルエン溶液)20部、トリアジン骨格含有クレゾールノボラック系硬化剤(水酸基当量151、DIC(株)製「LA−3018−50P」、固形分50%の2−メトキシプロパノール溶液)5部、アミン系硬化促進剤(4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、固形分5質量%のMEK溶液)2部、イミダゾール系硬化促進剤(四国化成工業(株)製(2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2P4MZ)、固形分5質量%のMEK溶液)2部、フェニルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製「KBM103」)で表面処理されたシリカ((株)アドマテックス製、「アドマナノシリカ、YA010C」、平均粒径0.01μm、比表面積300m/g、固形分20質量%のMEKスラリー)3部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散した後に、減圧脱泡、さらにカートリッジフィルター((株)ロキテクノ製「SCP−010」、濾過効率(メーカー公称値):1μm以上の粒子を99.9%以上カット)で濾過して、樹脂ワニス3を調製した。
<樹脂ワニス4の調製>
ビスフェノールAF型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「YL7760」、エポキシ当量約238)12部、ビキシレノール型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「YX4000HK」、エポキシ当量約185)12部、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(DIC(株)製「HP−7200HH」、エポキシ当量約280)12部、及びフェノキシ樹脂(三菱化学(株)製「YX7553BH30」、固形分30質量%のシクロヘキサノン:メチルエチルケトン(MEK)の1:1溶液)12部を、フェニルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製「KBM103」)で表面処理されたシリカ((株)アドマテックス製「アドマナノシリカ、YA010C」、平均粒径0.01μm、比表面積300m/g、固形分20質量%のMEKスラリー)120部と共に加熱溶解させた。室温にまで冷却した後、そこへ、活性エステル系硬化剤(DIC(株)製「HPC−8000−65T」、活性基当量約223、不揮発成分65質量%のトルエン溶液)20部、トリアジン骨格含有クレゾールノボラック系硬化剤(水酸基当量151、DIC(株)製「LA−3018−50P」、固形分50%の2−メトキシプロパノール溶液)5部、アミン系硬化促進剤(4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、固形分5質量%のMEK溶液)2部、イミダゾール系硬化促進剤(四国化成工業(株)製(2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2P4MZ)、固形分5質量%のMEK溶液)2部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散した後に、減圧脱泡、さらにカートリッジフィルター((株)ロキテクノ製「SCP−010」、濾過効率(メーカー公称値):1μm以上の粒子を99.9%以上カット)で濾過して、樹脂ワニス4を調製した。
<樹脂ワニス5の調製>
ビスフェノールAF型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「YL7760」、エポキシ当量約238)12部、ビキシレノール型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「YX4000HK」、エポキシ当量約185)12部、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(DIC(株)製「HP−7200HH」、エポキシ当量約280)12部、及びフェノキシ樹脂(三菱化学(株)製「YX7553BH30」、固形分30質量%のシクロヘキサノン:メチルエチルケトン(MEK)の1:1溶液)12部を、ソルベントナフサ8部、MEK4部に撹拌しながら加熱溶解させた。室温にまで冷却した後、そこへ、活性エステル系硬化剤(DIC(株)製「HPC−8000−65T」、活性基当量約223、不揮発成分65質量%のトルエン溶液)20部、トリアジン骨格含有クレゾールノボラック系硬化剤(水酸基当量151、DIC(株)製「LA−3018−50P」、固形分50%の2−メトキシプロパノール溶液)5部、アミン系硬化促進剤(4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、固形分5質量%のMEK溶液)2部、イミダゾール系硬化促進剤(四国化成工業(株)製(2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2P4MZ)、固形分5質量%のMEK溶液)2部、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ((株)アドマテックス製「SO−C1」、平均粒径0.30μm、比表面積10m/g)1部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散した後に、減圧脱泡、さらにカートリッジフィルター((株)ロキテクノ製「SHP−030」、濾過効率(メーカー公称値):2μm以上の粒子を99.9%以上カット)で濾過して、樹脂ワニス5を調製した。
<樹脂ワニス6の調製>
ビスフェノールAF型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「YL7760」、エポキシ当量約238)12部、ビキシレノール型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「YX4000HK」、エポキシ当量約185)12部、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(DIC(株)製「HP−7200HH」、エポキシ当量約280)12部、及びフェノキシ樹脂(三菱化学(株)製「YX7553BH30」、固形分30質量%のシクロヘキサノン:メチルエチルケトン(MEK)の1:1溶液)12部を、フェニルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製「KBM103」)で表面処理されたシリカ((株)アドマテックス製、「アドマナノシリカ、YA010C」、平均粒径0.01μm、比表面積300m/g、固形分20質量%のMEKスラリー)200部と共に加熱溶解させた。室温にまで冷却した後、そこへ、活性エステル系硬化剤(DIC(株)製「HPC−8000−65T」、活性基当量約223、不揮発成分65質量%のトルエン溶液)20部、トリアジン骨格含有クレゾールノボラック系硬化剤(水酸基当量151、DIC(株)製「LA−3018−50P」、固形分50%の2−メトキシプロパノール溶液)5部、アミン系硬化促進剤(4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、固形分5質量%のMEK溶液)2部、イミダゾール系硬化促進剤(四国化成工業(株)製(2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2P4MZ)、固形分5質量%のMEK溶液)2部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散した後に、減圧脱泡、さらにカートリッジフィルター((株)ロキテクノ製「SCP−010」、濾過効率(メーカー公称値):1μm以上の粒子を99.9%以上カット)で濾過して、樹脂ワニス6を調製した。
[実施例1〜5、比較例1〜2]
<樹脂フィルムの製造>
支持体として、アルキド樹脂系離型剤(リンテック(株)製「AL−5」)で離型処理したPETフィルム(東レ(株)製「ルミラーT6AM」、厚さ38μm、幅550mm)を用意した。該支持体の離型面上に、ダイコーターにて各樹脂ワニスを、幅500mmにて、乾燥後の樹脂組成物層の厚みが2又は3μmの設定厚となるように下記表に記載の塗工速度で塗布し、5mの長さごとに6つに分割された乾燥ゾーン(5m×6ゾーン(ゾーン温度はそれぞれ順に70℃、80℃、90℃、100℃、110℃、120℃に設定。乾燥ゾーンの合計長さ30m)内を通過させ、乾燥させた。その後3mの冷却ゾーン(40℃)を通過させ、ロール状に巻き取ることで各樹脂フィルムを製造した。
<はじきの評価>
得られたロール状の各樹脂フィルムに対して、20mの長さにおける樹脂組成物層の外観を目視で観察し、はじきの個数及び以下の評価基準にて評価した。なお、凹み直径が1.5mm以上のものをはじきとして算出した。
−評価基準−
○:はじきが1個以下である
×:はじきが2個以上ある
<皺や突起の評価>
得られたロール状の各樹脂フィルムに対して、20mの長さにおける樹脂組成物層の外観を目視で観察し、皺や突起の個数及び以下の判断基準にて評価した。なお、長さが3mm以上のものを皺とし、直径1.5mm以上のものを突起として算出した。
−評価基準−
○:皺や突起が1個以下である
×:皺や突起が2個以上ある
Figure 2016155079
上記表から、関係式(1)を満たす実施例1〜5は、はじきの個数が1以下であり、かつ皺や突起の個数も1以下であることから、樹脂ワニスを高速塗工してもはじき、皺や突起の発生が抑制されていることがわかる。
一方、SとVの積(SV)が1.5未満であり関係式(1)を満たさない比較例1は、樹脂シート1mあたり2〜4個のはじきが発生した。また、SVが100を超え関係式(1)を満たさない比較例2は、樹脂シート1mあたり1〜3個の皺や突起が発生した。

Claims (8)

  1. (A)支持体上に樹脂ワニスを塗工する工程と、
    (B)塗工した樹脂ワニスを乾燥させて樹脂組成物層を形成する工程と、
    を含む、樹脂シートの製造方法であって、
    樹脂ワニスの塗工速度Yが、20m/分以上であり、
    樹脂ワニスは、無機充填材を含有し、
    無機充填材の比表面積(m/g)をSとし、樹脂ワニス中の不揮発成分を1質量部とした場合の無機充填材の含有量(質量部)をVとしたとき、SとVの積(SV)が、以下の関係式(1)を満たす、樹脂シートの製造方法。
    100≧SV≧1.5 式(1)
    (ただし、0.9≧V≧0.003である)
  2. 樹脂組成物層の厚みが、5μm以下である、請求項1に記載の方法。
  3. 工程(B)を実施する乾燥ゾーンの合計長さ(m)をXとしたとき、X及びYが、以下の関係式(2)を満たす、請求項1又は2に記載の方法。
    Y/X≧0.5 式(2)
  4. 無機充填材の比表面積Sが、5m/g以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 無機充填材の比表面積Sが、5m/g以上500m/g以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 無機充填材の含有量Vが、0.5質量部以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 樹脂ワニスの塗工速度Yが、25m/分以上である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 樹脂シートが、絶縁樹脂層上に積層して用いられる回路形成用の樹脂シートである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
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