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JP2016142118A - 作業車両 - Google Patents

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JP2016142118A
JP2016142118A JP2015021471A JP2015021471A JP2016142118A JP 2016142118 A JP2016142118 A JP 2016142118A JP 2015021471 A JP2015021471 A JP 2015021471A JP 2015021471 A JP2015021471 A JP 2015021471A JP 2016142118 A JP2016142118 A JP 2016142118A
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金子 悟
Satoru Kaneko
金子  悟
伊君 高志
Takashi Ikimi
高志 伊君
一雄 石田
Kazuo Ishida
一雄 石田
徳孝 伊藤
Noritaka Ito
徳孝 伊藤
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Abstract

【課題】車両の大きな減速時においても、機械式ブレーキによる損失を低減し、かつ制動性能を損なうことなく、良好なブレーキフィーリングを実現する作業車両を提供すること。【解決手段】走行電動機9により駆動される複数の車輪61を有する走行部と、走行部の駆動軸であるプロペラシャフト8bに機械的に連結され、力行駆動動作と回生制動動作のうち回生制動動作のみを実施する回生制動装置20と、回生制動装置が発生した回生電力を充電する蓄電装置11と、作業車両の制動動作時に走行部に出力を要求する制動動力を演算し、その制動動力が走行電動機9で出力可能な制動動力を超える場合、その不足分の制動動力を発生するように回生制動装置20に指示する制御装置200とを作業車両に備える。【選択図】 図2

Description

本発明は電動機により駆動される走行部を備える作業車両に関する。
回転電機の回生時に発生するトルクを回生制動力として車輪に伝達する回生式制動装置に関する背景技術として、特開2012−175893号公報(特許文献1)がある。
この文献には、「車両の前輪に回生制動力を伝達可能な第1回生制動手段、及び前記車両の後輪に回生制動力を伝達可能な第2回生制動手段の各々を制御する回生制動制御装置であって、前記第1回生制動手段及び前記第2回生制動手段の各々に要求される回生制動力の合計値である要求回生制動力を算出する要求回生制動力算出手段と、前記要求回生制動力を、前記第1回生制動手段及び前記第2回生制動手段で配分して実現する場合のエネルギ損失が、最も小さくなる配分比を算出する配分比算出手段と、前記算出された配分比で前記要求回生制動力を実現するように、前記第1回生制動手段及び前記第2回生制動手段を夫々制御する制御手段とを備える回生制動制御装置」が記載されている。
特開2012−175893号公報
上記文献には、第1回生制動手段として、車両の左右の前輪を駆動する第1電動機及び回生回路を備え、第2回生制動手段として、車両の左右の後輪を駆動する第2電動機及び回生回路を備えた車両、つまり、1組の前輪を駆動する第1電動機と、1組の後輪を駆動する第2電動機を備える車両が開示されている。
「走行」を主目的とする一般的な車両と異なり、「作業」を主目的とするホイールローダでは、時間あたりの作業量を最大化する観点等から、急加速とその直後の急減速をセットとした短時間の動作が繰り返し行われることがある。そして、その急減速の実行に際して、ホイールローダで必要とされる最大駆動力を超える制動力が要求されることが多く、その場合、ホイールローダでは各回転数における最大駆動力を超える最大制動力が要求される。一方、一般的に電動機が出力可能な駆動力と制動力は略等しい。そのため、ホイールローダで上記文献のように走行部の駆動源として2つの電動機(第1電動機及び第2電動機)のみを利用した場合において、ホイールローダで必要な最大駆動力を充足することを優先して当該2つの電動機の性能を決定したときには、急減速に必要な総制動力が当該2つの電動機だけで得られず、制動力不足を生じてしまい、結果的に要求される制動性能が得られない可能性が生じる。
このような事態を回避する方策としては、油圧ブレーキ等の機械的な制動装置(機械式ブレーキ)を備え、その機械的な制動力により電動機による電気的な制動力の不足分を補うものがある。しかし、この方策では、機械的なブレーキを用いた分は摩擦損失となる。さらに、特性の異なる電気的なブレーキと機械的なブレーキを組み合わせて利用するため、車両の制動特性を最適に制御することが難しくなり、必要な車両全体の制動性能が得られない可能性がある。
上記の課題は、例示したホイールローダに限られず、短時間で急加速と急減速が繰り返し行われ、その急減速の実行に際して、稼働中に必要とされる最大駆動力を超える制動力が要求され得る他の作業車両にも該当するものである。
本発明は上記事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、車両の大きな減速時においても、機械式ブレーキによる損失を低減し、かつ制動性能を損なうことなく、良好なブレーキフィーリングを実現する作業車両を提供することにある。
本発明は上記目的を達成するために、電動機により駆動される走行部と、前記走行部の駆動軸に機械的に連結され、力行駆動動作と回生制動動作のうち回生制動動作のみを実施する回生制動装置と、前記回生制動装置が発生した回生電力を充電する蓄電装置と、前記作業車両の制動動作時に前記走行部に出力を要求する制動動力を演算し、その制動動力が前記電動機で出力可能な制動動力を超える場合、その不足分の制動動力を発生するように前記回生制動装置に指示する制御装置とを備えるものとする。
本発明によれば、作業車両の大きな減速時において、ブレーキによる損失を低減し、かつ制動性能を損なうことなく良好なブレーキフィーリングを実現することができる。
本発明の実施の形態に係るハイブリッド式ホイールローダの側面図。 図1に示したホイールローダ100のシステム構成を示す図。 界磁巻線型発電機の概略構成を示す図。 トルコンを用いたホイールローダの駆動システム構成を示す図。 ホイールローダの作業パターンの一例であるV字掘削動作を示す図。 回生制動装置20に関連する動力制御を行うために制御装置200が備える機能を示した機能ブロック図 回生制動装置20の動作範囲を所定の車両速度範囲に設定した場合の出力特性。 車両速度と回生制動装置20の界磁電流の時間的関係を示す図。 ハイブリッド式ホイールローダに変速機30を介して回生制動装置20を搭載した構成例を示す図。 変速機30を介して搭載した回生制動装置20の動作領域を示す図。 回生制動装置20の他の配置例を示す図。 連続降坂時の回生制動装置20の動作領域を示す図。
以下、本発明をハイブリッド式のホイールローダに適用した場合の実施の形態について説明する。ハイブリッド式のホイールローダは、一般にエンジンの出力と蓄電装置(二次電池やキャパシタ)の電力を主動力源としており、その主な駆動対象部として、走行部(ホイール部分)と油圧作業部(フロントの油圧作業装置を含む油圧アクチュエータ部分)を有しており、電動機で走行部の4つの車輪を駆動して走行しながら、エンジン又は電動機で駆動される油圧ポンプで油圧作業部の油圧アクチュエータを動作することで土砂等を掘削・運搬する作業車両である。
図1は本発明の実施の形態に係るハイブリッド式ホイールローダの側面図である。なお、各図において同じ部分には同じ符号を付しており、当該同じ部分の説明は省略することがある。
図1のホイールローダ100は、車体110と、この車体110の前方に取り付けた油圧作業装置50とを備えている。車体110は、アーティキュレート操舵式(車体屈折式)を採用しており、それぞれ左右に車輪61(前輪61a、後輪61b)を装着した前部車体(フロントフレーム)111と後部車体(リアフレーム)112を、センタージョイント64で連結している。図1には示されていないが、センタージョイント64の左右両側には前部車体111と後部車体112を連結するようにステアリングシリンダ53(図2参照)が配置されている。運転室(キャブ)116内に設置されたステアリングホイール(図示せず)を操作すると、ステアリングシリンダ53の伸縮駆動に伴って後部車体112と前部車体111はセンタージョイント64を中心にして屈折(旋回)する。
後部車体112上には、前方に運転室116、後方にエンジン室117が搭載されている。エンジン室117には、図2に示したディーゼルエンジン1、油圧ポンプ4、コントロールバルブ55、電動発電機6、蓄電装置11及び走行電動機(走行用モータ)9等が収納されている。
油圧作業装置50は、リフトアーム121及びバケット122と、リフトアーム121及びバケット122を駆動するために伸縮駆動されるリフトシリンダ52及びバケットシリンダ51を備えている。なお、リフトアーム121とリフトシリンダ52は前部車体111の左右に1つずつ装備されているが、図1で隠れている右側のリフトアーム121とリフトシリンダ52は省略して説明する。
リフトアーム121は、リフトシリンダ52の伸縮駆動に伴って上下方向に回動(俯仰動)する。バケット122は、バケットシリンダ51の伸縮駆動に伴って上下方向に回動(ダンプ動作又はクラウド動作)する。なお、図示したホイールローダ100は、バケット122を作動させるためのリンク機構として、Zリンク式(ベルクランク式)のものを採用している。当該リンク機構にはバケットシリンダ51が含まれている。
図2は図1に示したホイールローダ100のシステム構成図である。この図に示すホイールローダは、ディーゼルエンジン1と、エンジン1の出力軸に機械的に連結されエンジン1によって駆動される電動発電機(モータ/ジェネレータ(M/G))6と、電動発電機6を制御するインバータ装置7と、電動発電機6に機械的に連結され、電動発電機6及びエンジン1の少なくとも一方に駆動される油圧ポンプ4と、コントロールバルブ55を介して油圧ポンプ4から供給される圧油によって駆動される油圧アクチュエータ(バケットシリンダ51、リフトシリンダ52及びステアリングシリンダ53)と、出力軸の両端に機械的に連結されたプロペラシャフト(駆動軸)8a,8bを介して4つの車輪61を駆動する走行電動機9と、走行電動機9を制御するインバータ装置10と、DCDCコンバータ12を介してインバータ7,10(電動発電機6,走行電動機9)と電気的に接続されインバータ7,10との間で直流電力の受け渡しを行う蓄電装置11と、油圧アクチュエータ51,52,53を駆動するための操作信号を操作量に応じて出力する操作装置(操作レバー56及びステアリングホイール(図示せず))と、ホイールローダ100に必要な性能を発揮するための各種制御処理を実行してハイブリッドシステムを統括的に制御する制御装置200とを備えている。
さらにホイールローダ100は、ホイールローダ100の速度(車両速度)を算出するために利用される各車輪61の回転量・回転角度・回転位置を検出するロータリエンコーダ62を備えている。
走行電動機9の出力軸の一端(車両前方側の出力軸)は、1組の前輪61aに駆動力を伝達するプロペラシャフト8aに機械的に連結されており、その出力軸の他端は、1組の後輪61bに駆動力を伝達するプロペラシャフト8bに機械的に連結されている。
プロペラシャフト8aに入力された駆動力は、ディファレンシャルギア(Dif)、ドライブシャフト及びギア(G)を介して1組の前輪61aに伝達され、同様に、プロペラシャフト8bに入力された駆動力は、ディファレンシャルギア(Dif)、ドライブシャフト及びギア(G)を介して1組の後輪61bに伝達される。
プロペラシャフト8bには回生制動装置20が機械的に連結されている。回生制動装置20は、プロペラシャフト8bからの回転動力の入力で電気的な制動力を発生する装置、すなわち発電機であり、力行駆動動作と回生制動動作のうち回生制動動作のみを実施する。回生制動装置20の出力軸は、車両後方側のディファレンシャルと走行電動機9を接続するプロペラシャフト8bの一部を構成しているとみなすことができる。回生制動装置20が電気的な制動力を発生した場合(すなわち回生制動動作を行った場合)に生じた回生電力は蓄電装置11で回収(充電)される。
回生制動装置20としては、図3に示した界磁巻線型発電機を利用することが好ましい。界磁巻線型発電機は、界磁電流により発生する磁界を利用して発電する。界磁巻線型発電機における変換器は図示のようにダイオード整流器71となるため、インバータを搭載するタイプの発電機に対してより安価となる。また、界磁巻線型発電機(回生制動装置20)による制動力の発生の有無及び大きさは、界磁巻線型発電機に入力する界磁電流で制御することができる。例えば、或る条件で回生制動装置20が動作するようにする場合には、当該条件が満たされている間に界磁電流を流すように制御すれば良く、その界磁電流により磁界が発生して制動力および回生電力を得ることができる。
なお、上記では4輪61a,61a、61b,61bを1つの走行電動機9が駆動する場合について説明したが、プロペラシャフト8a,8bを分離独立させ、各プロペラシャフト8a,8bに異なる電動機を連結する構成(すなわち走行電動機は合計2つとなる)を採用しても良い。
蓄電装置11としては、比較的大きな電気容量を有するものが好ましく、例えば、リチウム電池などの2次電池あるいは電気2重層キャパシタなどがこれに該当する。DCDCコンバータ12は、蓄電装置11の電圧の昇降圧制御を行い、これによりインバータ7、10と蓄電装置11の間で直流電力の受け渡しが行われる。
図1及び2に示すハイブリッドホイールローダは、フロント部については、油圧ポンプ4で油圧作業装置50に油圧を供給し、その油圧を元に目的に応じた作業を実施する。この点については、エンジンの動力をトルクコンバータ(トルコン)、トランスミッション(TM)及びプロペラシャフトを介して車輪に伝えて走行を行いながら、フロント部の油圧作業装置のバケットで土砂等を掘削・運搬する従来からのホイールローダ(以下では「トルコン機」と称することがあり、その概略構成を図4に示す)と同様である。しかし、走行部については、トルコン機と異なり、主にエンジン1の動力により電動発電機6で発電した電力を利用し、走行電動機9を駆動することにより行う。その際、蓄電装置11では車両制動時の回生電力の吸収やエンジン1に対する出力アシストを行い、車両の消費エネルギーの低減に寄与する。
本発明の適用対象となるホイールローダにはいくつかの特徴的な動作パターンがある。このうち最も典型的な作業形態は図5に示すようなV字掘削作業である。この作業の際、ホイールローダはまず、砂利山などの掘削対象物に対して前進し、その掘削対象物に突っ込むような形でバケット122に砂利等の運搬物を積み込む(第1前進動作31)。その後、後進して元の位置に戻り(第1後退動作32)、ステアリングを操作しながら、かつバケット122を上昇させながらダンプ等の運搬車両に向かって前進する(第2前進動作33)。そして、バケット122をダンプさせて運搬車両に運搬物を積み込んだ(バケット122から放土した)後は再び後進し、元の位置に戻る(第2後退動作34)。車両は以上の説明のようにV字軌跡を描くように前進・後退して掘削作業を繰り返し行う。
V字掘削作業では、上記の一連の動作31,32,33,34からなる動作パターンは基本的に変わらないものの、この動作パターンに要する時間(サイクルタイムと称することがある)はその時々の状況により長短がある。V字掘削作業時の移動距離を一定とすれば、サイクルタイムが短い場合には、それに応じて各動作31,32,33,34における車両の加減速度が大きくなる。そして、この場合の車両の加速度と減速度は同一ではなく、異なった特性となる。
特に短い(速い)サイクルタイムでのV字掘削作業では、後進して元の位置に戻る後退動作32,34における車両の挙動が特に速くなり(さらに、後退動作32,34に続く前進動作33,31を見越して、後退が完全に完了する前にオペレータが前後進レバーを「前進」に入れることが多いため)、非常に大きな減速度が発生する。例えば、上記のV字掘削作業においては、作業中の最高速度(例えば車速10km/h程度)から数km/h程度までの速度範囲で減速を行うときの減速度が特に大きな値となり、その減速度の大きさは駆動時の加速度の大きさに対して2倍程度となる。なお、先述のトルコン機では、トルコン自体が車輪から与えられる回転力によって非常に大きな制動力を出すことができるため、上記のような場合(後退動作32,34のとき)にも特に制動力に不足分を生じることなく動作することができる。
本実施の形態を含むハイブリッド式のホイールローダでは、減速が必要な場合には、まず走行電動機により制動動力を発生させ、車両を停止させる方向に動力を働かせる。しかし、前述のようにサイクルタイムが短く、加速後の減速に際して特に大きな制動動力が必要となる場合には、その際に必要となる制動動力(制動動力要求値)は走行電動機9で発生可能な制動動力を上回ることがある。
この場合、車輪61に伴って回転する円盤に対して油圧を利用してブレーキパッドを接触させ、車輪61の運動エネルギーを熱エネルギーに変換することにより制動する油圧ブレーキ(機械式ブレーキ)を走行電動機9と併用すれば、不足分の制動動力を補うことができる。しかし、この方法では運動エネルギーは熱エネルギーに変換されるため損失となり、ブレーキパッドも磨耗する。さらに走行電動機9の電気的な制動動力と、油圧ブレーキの機械的な制動動力の特性の違いにより、この2つのブレーキを併用した際には、スムーズな制動動作を実施することができず、最終的には作業性の低下に繋がる可能性もある。
そこで、上記のように構成した本実施の形態に係るホイールローダ100では、プロペラシャフト8bの軸上に回生制動装置20を設置することとした。このように回生制動装置20を備えれば、ホイールローダ100の制動動作時に必要となる制動動力(制動動力要求値)が走行電動機9の発生可能な制動動力を超えても、その超過分の制動動力を回生制動装置20で発生して補うことで、制動動力要求値通りの制動動力を発生できる。また、回生制動装置20により制動動力を発生すると、車輪61の運動エネルギーは電気エネルギー(回生電力)に変換され、その回生電力は蓄電装置11に蓄えられる。すなわち、機械式ブレーキの場合と比較して制動に伴うエネルギー損失は低減できる。さらに、回生制動装置20による制動動力は、走行電動機9と同じ電気的な制動動力であるため、走行電動機9によるブレーキと併用しても車両の制動特性の最適制御が容易であり、機械式ブレーキを併用した場合のように制動性能を損なうことが無く、良好なブレーキフィーリングを実現できる。
回生制動装置20は、ホイールローダ100に搭載されている他の電気機器と同様に制御装置200によって制御される。ここで、回生制動装置20の制御に関連して制御装置200で実施される動力制御の一例を述べる。なお、駆動動力(駆動パワー)はホイールローダ100の駆動動作時に出力される符号が正の動力とし、制動動力(制動パワー)は制動動作時に出力される符号が負の動力とする。
図6に回生制動装置20に関連する動力制御を行うために制御装置200が備える機能を示した機能ブロック図を示す。この図に示すように制御装置200は、要求走行動力演算部25と、指令走行動力演算部26と、走行電動機動力演算部27として機能する。まず、要求走行動力演算部25は、ホイールローダ100のオペレータが走行部(走行電動機9及び回生制動装置20を含むホイールローダ100の走行に必要な全ての電動アクチュエータ)に要求する動力(要求走行動力)を演算する部分である。要求走行動力は、アクセルペダル及びブレーキペダルの踏み込み量を示す信号と、前進又は後退を選択するための前後進レバーのレバー位置を示す信号と、ロータリエンコーダ62の出力から取得される車速データを入力として演算される。要求走行動力の符号が正のときは車輪61の駆動が要求されていることを、負のときは車輪61の制動が要求されていることを示す。
要求走行動力演算部25による処理において、前後進レバーの信号は、例えば、レバー位置(「前進」と「後進」がある)が示す方向が実際の車両進行方向と一致するか否かを判別するために用いられる。これは、他の信号が同じ場合でも、レバー位置が示す方向が実際の車両進行方向と一致するか否かで必要とされる要求走行動力値が異なるためである。また、両者の方向の不一致と、アクセル信号を検出することで、近い将来オペレータから急加速または急減速が要求されることが予測でき、例えばそれを見越した各種制御を開始・準備することもできる。
指令走行動力演算部26は、制御装置200からの指令として実際に走行部に出力を要求する動力(指令走行動力)を演算する部分である。指令走行動力演算部26は、演算部25で演算した要求走行動力と、エンジン1の状態(例えば図示の回転数及びトルク)と、蓄電装置11の状態(例えば図示の電圧)と、オペレータが油圧作業部(バケットシリンダ51、リフトシリンダ52、ステアリングシリンダ53等を含むホイールローダ100に搭載された全ての油圧アクチュエータ)に要求する動力(つまりオペレータが油圧ポンプ4に要求する動力であり、以下では「要求油圧動力」と称することがある)を基に、要求走行動力及び/又は要求油圧動力に制限を加える処理を必要に応じて行い、それを指令走行動力値として演算する。
エンジン1の状態からはエンジン1が出力可能な動力を算出でき、蓄電装置11の状態からは蓄電装置11の電力により出力可能な動力を算出でき、この2つの動力からは、走行部と油圧部に割り当て可能な動力の合計値(出力可能動力合計値)を算出できる。一方、要求走行動力値と要求油圧動力値からは、走行部と油圧部が要求する動力の合計値(要求動力合計値)を算出できる。要求動力合計値が出力可能動力合計値を超える場合には、要求動力合計値を制限する処理(出力制限処理)を行う必要があり、その結果、実際に走行部に出力を指示する動力(指令走行動力値)が要求走行動力値を下回ることも出てくる。このように指令走行動力演算部26は、要求動力合計値が出力可能動力合計値以下に収まるように指令走行動力を演算している。
走行電動機出力演算部27は、走行電動機9の動力(図中の「走行電動機動力」であり、実際に走行電動機9が出力する動力となる)を決定する処理を行う。走行電動機動力の最大値は、走行電動機9の性能や蓄電装置11の電力に依存するため、指令走行動力が走行電動機動力を超えて、走行電動機9だけでは指令走行動力を出力できないことがある。そこで、制御装置200は、指令走行動力から走行電動機動力を減じる演算を走行電動機動力算出と並列して行い、その算出値を不足分動力とする。
本実施の形態では、制動動作時に不足分動力が生じた場合には、その不足分の制動動力を発生するように回生制動装置20に指示をする。これにより回生制動装置20により不足分の制動動力が出力されるので、指令走行動力通りの制動性能を確保することができる。回生制動装置20は電気的な出力制御が可能なので、走行電動機9と同等のフィーリングで制御可能である。また、機械式ブレーキを併用した場合に摩擦熱となって失われるパワー分を回生電力として蓄電装置11に回収し、電動アクチュエータ(電動発電機6及び走行電動機9)の駆動に再利用することができるため、最終的に燃料消費量の削減に繋がる。
ところで、回生制動装置20の動作が必要となる場面(すなわち、指令走行動力が走行電動機動力を超える場合)は、前述のように車両速度と密接な関係性があり、予め設定した車両速度範囲で動作するように回生制動装置20に制御装置200から指示することが好ましい。当該速度範囲の下限値の決定に関しては、或る車両速度で制動動作を行うことを想定したとき、走行電動機9が出力可能な制動力と回生制動装置20が出力可能な制動力が略一致する車両速度を当該速度範囲の下限値として設定することが好ましい。そして、当該速度範囲の上限値に関しては、作業車両の作業中の最高速度を上限値に設定することが好ましい。例えば、ホイールローダの当該速度範囲は、V字掘削作業中の最高速度である10km/h付近から数km/h付近までの範囲となる。
このように回生制動装置20が動作する速度範囲を予め設定しておくと、回生制動装置20の仕様や性能をホイールローダでの利用に最適化でき、例えば回生制動装置20の小型化を図ることができる。
回生制動装置20の動作範囲を前述の車両速度範囲に設定した場合の出力特性を図7のN−T線図に示す。この図において、横軸(N)は走行電動機9及び回生制動装置20の回転数を示し、縦軸(T)は走行電動機9及び回生制動装置20のトルク(制動力)を示す。図7の横軸上では、便宜上、回転数を車両速度に変換し、前述の速度範囲(下限値がAkm/h(数km/hに相当)で上限値がBkm/h(10km/hに相当))を横軸上に示している。各回転数において走行電動機9が出力可能な制動力の最大値は図中の破線で示しており、各回転数において走行電動機9と回生制動装置20が出力可能な制動力の合計の最大値は図中の実線で示している。これにより或る回転数における実線上の点から破線上の点を減じた値が当該回転数において回生制動装置20が出力可能な制動力の最大値となる。図中のハッチングは、回生制動装置20が制動力を出力するA〜Bkm/hの範囲において、回生制動装置20が出力可能な制動力の範囲を示している。この図に示すように、所定の速度範囲(A〜Bkm/h)では、走行電動機9の制動力が不足しても、その不足分を回生制動装置20の制動力で補うことができる。
回生制動装置20を図3に示した界磁巻線型発電機とした場合には、回生制動装置20の制動力は界磁電流で制御できるが、界磁電流の電流値を目標値まで変化させる指示をした時刻(指示タイミング)と当該界磁電流が実際に当該目標値に達する時刻(到達タイミング)には時間的遅れが生じる。そこで、上述のように回生制動装置20を予め設定した速度範囲で動作させる場合には、車両速度がその速度範囲に入ったときに界磁電流の電流値が目標値に達しているように、界磁電流の時定数、車両速度、及びそのときの加速度を考慮して界磁電流制御の指示タイミングを決定することが好ましい。この場合の界磁電流の制御例(波形)を図8に示す。
図8に示すように、回生制動装置20(界磁巻線型発電機)の界磁電流が予め設定された速度範囲(A〜Bkm/h)で立ち上がっておくように制御を行う。通常、界磁巻線型発電機の界磁電流の時定数は数10ms〜数秒単位程度であり、そのときの車両速度、および加速度を演算し、動作させる車両速度までの所要時間を算出し、界磁電流の時定数と同様の所要時間となる車両速度で界磁電流制御を開始することとなる。図8の例では、車両速度が速度範囲の上限値(Bkm/h)を超えている状態から当該速度範囲に入るため、車両速度が速度Bに達するタイミングで界磁電流の電流値が速度Bでの目標値に達するように指示タイミングを決定している。
以上のように、本実施の形態では、その時々の車両速度に応じて回生制動装置20(界磁巻線型発電機)の界磁電流を制御するだけで、予め設定された速度範囲内での制動力制御が実施可能となる。
なお、図8の例では、A〜Bkm/hの速度範囲で界磁電流の電流値は一定(速度Bでの目標値)としているがこれは一例に過ぎず、車両速度に合わせて電流値を変化させても良いことは言うまでも無い。また、図8の例とは反対に、車両速度が速度範囲の下限値(Bkm/h)未満の状態から当該速度範囲に入る場合には、車両速度が速度Aに達するタイミングで界磁電流の電流値が速度Aでの目標値に達するように指示タイミングを決定すれば良い。すなわち、当該速度範囲に入るときの速度(速度範囲の上限値または下限値)における界磁電流の目標値に界磁電流が達するタイミングと、車両速度が当該速度範囲に入るタイミングが一致するように(又はできるだけ近づくように)指示タイミングを決定し、その指示タイミングに基づいて界磁電流を制御すれば良い。
次に、回生制動装置20を変速機を介してプロペラシャフト8bに接続する実施形態について述べる。この場合のホイールローダの構成図を図9に示す。図9に示すように、回生制動装置20は、変速機(TM)30を介してプロペラシャフト8bに接続されている。変速機30は、プロペラシャフト8bから入力される動力の回転数を車両速度に応じて適宜変更して回生制動装置20に伝達する。
この構成とした場合、回生制動装置20が使用できる速度範囲は変速機30の変速比に応じて拡大させることができる。たとえば、変速機30が2速とした場合の回生制動装置20の動作範囲を図10にハッチングで示す。この場合、変速機30が1速の場合の回生制動装置20の動作範囲は図7においてハッチングで示した範囲となる。
本実施の形態のように、車両速度に応じて変速機30を変速することにより、回生制動装置20の動作範囲を拡大することができる。これにより、回生制動装置20をより高回転域で動作させることができるようになるため、回生制動装置20をより小型化できるようになる。
なお、以上の実施の形態では回生制動装置20の動作範囲は、主に掘削作業における制動時に大きな制動力が必要となる速度範囲として説明した。これは、短いサイクルタイムにおける掘削作業では、走行用電動機9で出力される制動力に対して、車両自体はより大きな制動力を必要とするからである。
ただし、回生制動装置20の使用範囲は上記掘削作業時にのみに限らない。すなわち、比較的大きな制動力を必要する走行状態では、その他の速度範囲においても回生制動装置20により良好な制動特性と、回生エネルギーの回収が可能となる。その走行状態の一つに連続降坂がある。この場合、坂道の傾斜にもよるが、車両の降坂速度が増加するのを防止するため、比較的大きな制動力が必要となる。さらに、降坂走行の時間が長くなった場合、走行用電動機9あるいは機械式ブレーキの発熱も大きくなる可能性がある。このとき、上記回生制動装置20を併用すると、車両全体として大きな制動力を得られると共に、走行用電動機9あるいは機械式ブレーキの発熱を小さくすることができる。このときの回生制動装置20の動作範囲を図12に示す。図12に示すように、本実施の形態では、車両の最高速度から制動力を発生するようにする。また、回生制動装置20の最低動作速度は例えば、先の実施の形態で示した掘削動作における最低動作速度とすればよい。(例えば、図7中で示す速度Akm/h)。このとき、動作範囲を高速側まで拡大したことになるが、回生制動装置20のパワーとしては掘削時と同様のパワーである。そのため、回生制動装置20の構造が大きく変わることは無く、また、回生制動装置20の連続使用時間に応じて増加する発熱に対しては、回生制動装置20の体格を大きくして熱容量を大きくすることで対応可能となる。このように、回生制動装置20の動作範囲は速度に制限されるのもではなく、大きな制動力が要求される場面で必要に応じて使用することが可能である。
以上のように、各実施の形態では、従来、油圧ブレーキなどの機械式ブレーキで行っていた制動を発電機20で行うようにしたため、回生電力の回収量が増加し、燃料消費量を削減できる。さらに、発電機20は、走行電動機9と同様に、電気的な制動が可能なため、機械式ブレーキを併用した場合と比較して制動時のフィーリングが向上する。さらに、機械式ブレーキの使用頻度が減少するため、ブレーキパッド等の消耗品の寿命を延長できる。
なお、回生制動装置20は走行部のプロペラシャフト8a,8bからの回転動力で駆動される構成であれば、その配置位置は図2に示した位置に制限されない。例えば図11のように、ドライブシャフト8a上に存在するセンタージョイント64より車両前方の位置に回生制動装置20を配置しても構わない。
ところで、上記の各実施の形態では、指令走行動力が走行電動機動力を超えた不足分は回生制動装置20で出力する場合について説明したが、当該不足分が回生制動装置20で発生可能な制動動力を超える場合には、その超過分の制動動力を油圧ブレーキで発生し、走行電動機9、回生制動装置20および油圧ブレーキの併用で指令走行動力を出力するように構成しても良い。また、回生制動装置20を複数搭載しても良い。
また、上記では、ロータリエンコーダ62の出力に基づいて算出した車両速度に基づいて回生制動装置20の制御を行ったが、車輪速度を検出可能なセンサであればロータリエンコーダ62と代替可能である。また、車両速度に代えて、プロペラシャフト8a,8bの回転速度、走行電動機9の回転速度、または走行電動機9への電流値などに基づいて回生制動装置20の制御を行っても良い。
また、上記で説明したハイブリッドシステムは一般にシリーズ型といわれる構成であるが、本発明は図2の構成に限定されることなく、システムに少なくとも上記シリーズ型の構成が含まれていれば適用可能である。
また、エンジン1と蓄電装置11を出力源とするハイブリッド式のホイールローダを例に挙げて説明してきたが、エンジンを備えない電動式のホイールローダについても本発明は適用可能である。さらに、上記で例示したホイールローダに限らず、加速後の急減速が使用態様に頻繁にみられる車両(例えば、フォークリフト)であれば、本発明は適用可能である。
また、本発明は、上記の各実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内の様々な変形例が含まれる。例えば、本発明は、上記の各実施の形態で説明した全ての構成を備えるものに限定されず、その構成の一部を削除したものも含まれる。また、ある実施の形態に係る構成の一部を、他の実施の形態に係る構成に追加又は置換することが可能である。
1…エンジン、2…トルクコンバータ、3…トランスミッション(TM)、4…油圧ポンプ、50…フロント油圧作業装置、6…モータジェネレータ(MG)、7…インバータ、8a,8b…プロペラシャフト、9…走行電動機、10…インバータ、11…蓄電装置、12…DCDCコンバータ、200…制御装置、20…回生制動装置、25…要求走行動力演算部、26…指令走行動力演算部、27…走行電動機動力演算部、30…トランスミッション(TM)、64…センタージョイント

Claims (4)

  1. 電動機により駆動される走行部と、
    前記走行部の駆動軸に機械的に連結され、力行駆動動作と回生制動動作のうち回生制動動作のみを実施する回生制動装置と、
    前記回生制動装置が発生した回生電力を充電する蓄電装置と、
    前記作業車両の制動動作時に前記走行部に出力を要求する制動動力を演算し、その制動動力が前記電動機で出力可能な制動動力を超える場合、その不足分の制動動力を発生するように前記回生制動装置に指示する制御装置とを備えることを特徴とする作業車両。
  2. 請求項1に記載の作業車両において、
    前記制御装置は、予め設定された車両速度範囲で動作するように前記回生制動装置に指示することを特徴とする作業車両。
  3. 請求項2に記載の作業車両において、
    前記回生制動装置は、界磁電流により発生する磁界を利用して発電する界磁巻線型発電機であり、
    前記制御装置は、前記車両速度が前記車両速度範囲に入るタイミングと、前記車両速度が前記車両速度に入る速度における前記界磁電流の目標値に前記界磁電流が達するタイミングとに基づいて、前記界磁電流の制御を実施することを特徴とする作業車両。
  4. 請求項1に記載の作業車両において、
    前記回生制動装置は、変速機を介して前記駆動軸に機械的に連結されていることを特徴とする作業車両。
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