JP2016051504A - 非水系二次電池用正極活物質、非水系二次電池用正極、非水系二次電池及び車載用非水系二次電池モジュール - Google Patents
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Abstract
【課題】高出力を得ることができるSOC範囲が広く、体積当たりの実効容量が高い非水系二次電池用の正極活物質を提供する。【解決手段】ニッケル及びマンガンを含有する第1の層状固溶体化合物101Aと、ニッケル及びマンガンを含有し、前記第1の層状固溶体化合物101Aとはニッケルの原子濃度とマンガンの原子濃度の比が異なる第2の層状固溶体化合物102Aとを含み、かつ、平均粒子径が異なる少なくとも2種の層状固溶体化合物二次粒子110A,120Aを含み、2種の層状固溶体化合物二次粒子110A,120Aの平均粒子径のうち大粒径をD1、小粒径をD2としたときにD1/D2≧2であり、平均粒子径がD1である層状固溶体化合物二次粒子110A,120Aの質量比をW1、平均粒子径がD2である層状固溶体化合物二次粒子の質量比をW2としたときに0.2≦W1/(W1+W2)≦0.9である非水系二次電池用正極活物質。【選択図】図1
Description
本発明は、非水系二次電池用正極活物質、非水系二次電池用正極、非水系二次電池及び車載用非水系二次電池モジュールに関する。
非水系電解質が電極間の電気伝導を媒介する非水系二次電池の一種として、リチウムイオン二次電池がある。リチウムイオン二次電池は、充放電反応における電極間の電気伝導をリチウムイオンが担う二次電池であり、ニッケル・水素蓄電池やニッケル・カドミウム蓄電池等の他の二次電池と比較して、エネルギー密度が高く、メモリ効果が小さいといった特徴を有している。そのため、携帯電子機器、家庭用電気機器等の小型電源から、電力貯蔵装置、無停電電源装置、電力平準化装置等の定置用電源や、船舶、鉄道、ハイブリット自動車、電気自動車等の駆動電源等の中型・大型電源に至るまでその用途が拡大しており、電池性能のさらなる向上が求められている。例えば、ハイブリッド自動車や電気自動車等の車載用途においては、航続距離の長距離化を実現する高エネルギー密度化や、加速応答性を向上させるための高出力化が要求されている。
リチウムイオン二次電池における正極の電気化学的反応を担う正極活物質の一種に、LiCoO2やLiCo1/3Ni1/3Mn1/3O2等に代表される、LiM1O2(M1は、Co、Ni、Mn等の元素を示す。)と表わされる層状酸化物がある。この層状酸化物は、比較的製造が容易であり、正極活物質として従来広く利用されてきた。しかしながら、層状酸化物の放電容量は150Ah/kg〜180Ah/kg程度と小さいことから、近年では、Li2MnO3−LiM2O2(M2は、Co、Ni、Mn等の元素を示す。)と表わされる層状固溶体化合物を用いた正極活物質の開発が進められている。層状固溶体化合物を用いた正極活物質は、高容量を示す正極活物質として期待されている。
例えば、特許文献1には、放電容量の大きなリチウムイオン二次電池、特に4.3V以下の電位領域における放電容量を大きくすることのできるリチウム二次電池用の正極活物質として、α−NaFeO2型結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物の固溶体を含み、前記固溶体が含有するLi、Co、Ni及びMnの組成比を特定の範囲に規定した正極活物質が開示されている。
また、特許文献2には、高電位での充放電による容量劣化が抑制されたリチウムイオン二次電池用の正極として、以下の一般式:xLi[Li1/3M12/3]O2・(1−x)LiM2O2(1)(ここでM1は、平均酸化状態が4+である少なくとも一種の金属元素であり、M2は、少なくとも一種の遷移金属元素である:0<x<1)で示される固溶体化合物と、以下の一般式:LiNi1−a−bM3aM4bO2(2)(ここでM3は、Al及び/又はMgであり、M4は、Co、Mn、Fe、Cu及びCrからなる群から選択される少なくとも一種の金属元素である:0.3≦a≦0.5、0≦b≦0.2)で示される層状構造を有するリチウムニッケル複合酸化物を有する、リチウムイオン二次電池用正極が開示されている。
さらに、特許文献3には、組成式:Li1+a(MnbCocNi1−b−c)1−aMdO2−e(式中、MはAl、Mg、Zr、Ti、Ba、B、Si及びFeのうちの少なくとも1種であり、a〜eは0.1<a<0.25、0.5≦b<0.7、0≦c<1−b、0≦d≦1及び0≦e≦1を満たす)で表される第1リチウム含有化合物及び第2リチウム含有化合物を含み、第1リチウム含有化合物の一次粒子の結晶子径D1が1200nm≦D1≦1900nmを満たすと共に、第2リチウム含有化合物の一次粒子の結晶子径D2が350nm≦D2≦900nmを満たし、第1リチウム含有化合物と第2リチウム含有化合物の混合比は、重量比で第1リチウム含有化合物:第2リチウム含有化合物=80:20〜70:30である、二次電池用の正極が開示されている。なお、特許文献3の実施例によれば、第1リチウム含有化合物及び第2リチウム含有化合物におけるニッケルとマンガンの比Ni/Mnはいずれも0.2/0.6である。
一般にリチウムイオン二次電池は、過充電又は過放電による電池性能の劣化を避け、電池寿命や安全性を確保するために、電池の初期充放電試験で定義された充電状態(State of Charge:SOC)の範囲よりも狭い範囲で稼働されている。従来の層状酸化物は、放電末期に高抵抗となり高出力(大電流)を得ようとすると大きな電圧降下を示すことが知られている。特許文献1や特許文献2に開示される技術によれば、電池性能上は高容量を得ることができると考えられるが、層状固溶体化合物の高抵抗領域について考慮されていないため、実効容量が十分には向上しない可能性がある。
また、層状固溶体化合物は、従来の層状酸化物と比較して低比重、かつ小粒子径であり、層状固溶体化合物を用いた正極は低密度となる。そのため、体積当たりの容量が低容量となる。特許文献3に開示される技術によれば、体積密度が向上し体積当たりの容量が高い正極を得ることができると考えられるが、高抵抗領域について考慮されていないため、実効容量が十分には向上しない可能性がある。
そこで、より広いSOC範囲で高出力を得ることができ、体積当たりの実効容量が高い非水系二次電池が求められている。本発明の課題は、高出力を得ることができるSOC範囲が広く、体積当たりの実効容量が高い非水系二次電池用の正極活物質、非水系二次電池用正極、非水系二次電池及び車載用非水系二次電池モジュールを提供することにある。
前記課題を解決するために本発明に係る非水系二次電池用正極活物質は、ニッケル及びマンガンを含有する第1の層状固溶体化合物と、ニッケル及びマンガンを含有し、前記第1の層状固溶体化合物とはニッケルの原子濃度とマンガンの原子濃度の比が異なる第2の層状固溶体化合物とを含み、かつ、平均粒子径が異なる少なくとも2種の層状固溶体化合物二次粒子を含み、前記2種の層状固溶体化合物二次粒子の平均粒子径のうち大粒径をD1、小粒径をD2としたときにD1/D2≧2であり、平均粒子径がD1である層状固溶体化合物二次粒子の質量比をW1、平均粒子径がD2である層状固溶体化合物二次粒子の質量比をW2としたときに0.2≦W1/(W1+W2)≦0.9であることを特徴とする。
また、本発明に係る非水系二次電池用正極活物質は、ニッケル及びマンガンを含有する第1の層状固溶体化合物と、ニッケル及びマンガンを含有し、前記第1の層状固溶体化合物とはニッケルの原子濃度とマンガンの原子濃度の比が異なる第2の層状固溶体化合物とを含み、前記第1の層状固溶体化合物から構成される層状固溶体化合物二次粒子と前記第2の層状固溶体化合物から構成される層状固溶体化合物二次粒子の平均粒子径のうち大粒径をD3、小粒径をD4としたときにD3/D4≧2であり、平均粒子径がD3である層状固溶体化合物二次粒子の質量比をW3、平均粒子径がD4である層状固溶体化合物二次粒子の質量比をW4としたときに0.2≦W3/(W3+W4)≦0.9であることを特徴とする。
また、本発明に係る非水系二次電池用正極は、前記の非水系二次電池用正極活物質を含むことを特徴とする。
また、本発明に係る非水系二次電池は、前記の非水系二次電池用正極を備えることを特徴とする。
また、本発明に係る車載用非水系二次電池モジュールは、前記の非水系二次電池を備えることを特徴とする。
本発明によれば、高出力が得られるSOC範囲が広く、体積当たりの実効容量が高い非水系二次電池用正極活物質、非水系二次電池用正極、非水系二次電池及び車載用非水系二次電池モジュールを提供することができる。なお、上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
以下に、本発明の一実施形態に係る非水系二次電池用正極活物質、非水系二次電池用正極、非水系二次電池及び車載用非水系二次電池モジュール、並びにこれらの製造方法について詳細に説明する。
本実施形態に係る非水系二次電池用正極活物質は、リチウムイオン二次電池等の非水系二次電池に備えられる正極に用いる。この非水系二次電池用正極活物質は、元素組成がそれぞれ異なる複数種の化合物の組み合わせからなり、少なくとも2種の層状固溶体化合物を含むように構成されている。それらの層状固溶体化合物は、電極間反応を媒介するキャリアとしてリチウムを含有すると共に、酸化還元反応を担う遷移金属として少なくともニッケルとマンガンを含有している。そして、層状固溶体化合物におけるニッケルの原子濃度とマンガンの原子濃度の比が各層状固溶体化合物の間で異なるように構成されている点を特徴のひとつとする。
本発明は、ニッケルの原子濃度が高い層状固溶体化合物は、主に、高SOC側の領域、すなわち高充電状態において低抵抗を示し、ニッケルの原子濃度が低い層状固溶体化合物は、主に、低SOC側の領域、すなわち低充電状態において低抵抗を示すという知見に基づくものである。
層状固溶体化合物では、放電初期においても高抵抗となり、放電初期の高SOC側の領域及び放電末期の低SOC側の領域の双方において、比較的広い範囲で抵抗が増大することを確認した。一般には、単一種の層状固溶体化合物が含まれる正極では、SOCが0〜30%程度の低SOC側の領域、及び、SOCが70%〜100%程度の高SOC側の領域において抵抗が増大し、高出力が得られなくなる傾向がある。そのため、層状固溶体化合物を用いた正極活物質においては、高出力が得られるSOC範囲が狭い範囲に限られる。したがって、例えば車載用途等では、高出力を得るために、低抵抗であるSOC範囲に利用が制限される。すなわち、層状固溶体化合物を用いた正極活物質を用いた二次電池においては、実用上利用できる容量(実効容量)は減殺されているのが現状である。これに対し、本実施形態に係る非水系二次電池用正極活物質では、ニッケルの原子濃度が異なる層状固溶体化合物を組み合わせることによって、相対的にニッケルの原子濃度が高い層状固溶体化合物により、高SOC側の領域の抵抗の低減、相対的にニッケルの原子濃度が低い層状固溶体化合物により、低SOC側の領域の抵抗の低減をそれぞれ実現している。
層状固溶体化合物を組み合わせることによる抵抗の低減効果は、用いる層状固溶体化合物のニッケルの原子濃度にも依存し、少なくとも2種の層状固溶体化合物を組み合わせることによって、低抵抗であるSOC範囲を拡大することができる。すなわち、高出力が得られる領域が、高SOC側の領域と低SOC側の領域の双方に延長される。抵抗が低減されるSOCの範囲は、各層状固溶体化合物におけるニッケル濃度の選択により意図的に操作することができるため、各層状固溶体化合物におけるニッケルの原子濃度を調整することによって、二次電池の充放電入出力特性を改変することが可能である。
本実施形態に係る非水系二次電池用正極活物質がもたらす抵抗の低減に基づく効果は、実用SOC範囲の拡大や、実効容量の向上を指標として評価することが可能である。
なお、本明細書において、実用SOC範囲とは、放電時において低抵抗となり、実用上許容される出力が得られるSOCの範囲を意味するものとする。具体的には、放電時の直流抵抗値の最低値を基準として、その最低値に対して所定の範囲内の抵抗を有するSOCの範囲として定義される。ただし、非水系二次電池に実用上要求される出力については、絶対的な基準が定められてはいないため、最低値に対して任意の抵抗値以下の範囲を実用SOC範囲として定めることが許容される。実用SOC範囲を定める指標としては、抵抗の最低値に対して抵抗値が2倍以下となるような範囲を例示することができる。
また、実効容量とは、実用上許容される出力が得られるSOCの範囲における放電容量を意味するものとする。実効容量は、算出方法が特に制限されるものではなく、例えば、放電時のSOC100%における放電容量(Ah又はその密度)に、実用SOC範囲の割合を乗じて求めた値を評価の指標とすることができる。
層状固溶体化合物は、Li2MnO3−LiMtO2(Mtは、Co、Ni、Mn等の元素を示す)のように表わされるリチウム遷移金属複合酸化物である。層状固溶体化合物は、電気化学的には不活性であるものの高い理論容量を示し、層状岩塩型構造を基本構造するLi2MnO3と、電気化学的に活性であり、層状岩塩型構造を基本構造とするLiMtO2とが固溶化して、層状の結晶構造を主構造とする一次粒子を形成している。可逆的にリチウムイオンを挿入及び脱離する活性を備え、特に層状構造の層間に配列するLiのみならず金属層に配列したLiも脱離することを可能としているため、高容量を示す正極活物質となる。
本実施形態に係る非水系二次電池用正極活物質は、遷移金属としてニッケル及びマンガンを含む組成を有する一種の層状固溶体化合物(第1の層状固溶体化合物)と、遷移金属としてニッケル及びマンガンを含む組成を有し、第1の層状固溶体化合物とはニッケルの原子濃度とマンガンの原子濃度の比が異なる他の層状固溶体化合物(第2の層状固溶体化合物)とを少なくとも含有するように構成される。非水系二次電池用正極活物質が、2種の層状固溶体化合物以外に、別の層状固溶体化合物を含む場合は、それら3種以上の層状固溶体化合物のうちニッケルの原子濃度とマンガンの原子濃度の比が互いに最も離れている2種を第1の層状固溶体化合物及び第2の層状固溶体化合物と定義する。
層状固溶体化合物のニッケルの原子濃度とマンガンの原子濃度の比は、従来知られた方法により測定することができる。具体的には、例えば、透過電子顕微鏡−エネルギー分散型X線分光(Transmission Electron Microscopy-Energy Dispersive X-ray Detector;TEM−EDX)や、透過電子顕微鏡−電子エネルギー損失分光(Transmission Electron Microscopy-Electron Energy Loss Spectroscopy;TEM−EELS)等でニッケル及びマンガンの原子濃度を確認し、測定された各一次粒子における測定誤差が排除された原子濃度からニッケルの原子濃度とマンガンの原子濃度の比を求めて、第1の層状固溶体化合物と第2の層状固溶体化合物を峻別することができる。
なお、ニッケルの原子濃度とマンガンの原子濃度の比が異なるとは、ニッケル原子濃度が高い方の層状固溶体化合物一次粒子のニッケル原子濃度をNir、マンガン原子濃度をMnr、ニッケル原子濃度が低い方のニッケル濃度をNip、マンガン原子濃度をMnpとしたとき、(Nir/Mnr)/(Nip/Mnp)が1.1以上であることを意味する。ニッケルの原子濃度とマンガンの原子濃度の比が異なる第1の層状固溶体化合物及び第2の層状固溶体化合物は、それぞれ非水系二次電池用正極における正極活物質の総質量の10質量%以上を占めていることが好ましい。
また、本実施形態に係る非水系二次電池用正極活物質は、平均粒子径が異なる少なくとも2種の層状固溶体化合物二次粒子を含み、それら2種の層状固溶体化合物二次粒子の平均粒子径のうち大粒径をD1、小粒径をD2としたときにD1/D2≧2である。さらに、平均粒子径がD1である層状固溶体化合物二次粒子と平均粒子径がD2である層状固溶体化合物二次粒子の質量比をそれぞれW1、W2としたときに0.2≦W1/(W1+W2)≦0.9である。2種の層状固溶体化合物二次粒子の平均粒子径が2倍以上異なることにより、平均粒子径が大きい層状固溶体化合物二次粒子間の空間を平均粒子径が小さい層状固溶体化合物二次粒子で埋めることができ、全体が高密度化する。また、平均粒子径が大きい層状固溶体化合物二次粒子の含有量が2種の層状固溶体化合物二次粒子の合計に対して20質量%以上90質量%以下とすることにより全体が高密度化し、体積当たりの容量が向上する。特に、平均粒子径が大きい層状固溶体化合物二次粒子の含有量を50質量%以上80質量%以下とすると、さらに高密度となり、体積当たりの容量がさらに向上するため好ましい。なお、非水系二次電池用正極活物質が、平均粒子径が異なる3種以上の層状固溶体化合物二次粒子を含む場合は、それら3種以上の平均粒子径の内の最大値及び最小値を、それぞれD1及びD2と定義する。
上記において、非水系二次電池用正極活物質が組成の相異なる第1の層状固溶体化合物及び第2の層状固溶体化合物を含むことと、平均粒子径がD1である層状固溶体化合物二次粒子及び平均粒子径がD2である層状固溶体化合物二次粒子を含むこととは互いに独立した条件である。すなわち、本実施形態に係る非水系二次電池用正極活物質には、例えば図1〜8に示す各形態が少なくとも包含される。図1では、非水系二次電池用正極活物質100Aが、第1の層状固溶体化合物から構成される層状固溶体化合物一次粒子101A及び第2の層状固溶体化合物から構成される層状固溶体化合物一次粒子102Aを含み、かつ、非水系二次電池用正極活物質100Aが、平均粒子径がD1である層状固溶体化合物二次粒子110A及び平均粒子径がD2である層状固溶体化合物二次粒子120Aを含み、それぞれの層状固溶体化合物二次粒子110A、120Aが、第1の層状固溶体化合物から構成される層状固溶体化合物一次粒子101A及び第2の層状固溶体化合物から構成される層状固溶体化合物一次粒子102Aの両方を含んでいる。また、図2では、非水系二次電池用正極活物質100Bが、第1の層状固溶体化合物から構成される層状固溶体化合物一次粒子101B及び第2の層状固溶体化合物から構成される層状固溶体化合物一次粒子102Bを含み、かつ、平均粒子径がD1である層状固溶体化合物二次粒子110B及び平均粒子径がD2である層状固溶体化合物二次粒子120Bを含み、その内の層状固溶体化合物二次粒子110Bが第1の層状固溶体化合物から構成される層状固溶体化合物一次粒子101B及び第2の層状固溶体化合物から構成される層状固溶体化合物一次粒子102Bの両方を含み、層状固溶体化合物二次粒子120Bは第2の層状固溶体化合物から構成される層状固溶体化合物一次粒子102Bのみから構成されている。
また、図3では、非水系二次電池用正極活物質100Cが、第1の層状固溶体化合物から構成される層状固溶体化合物一次粒子101C及び第2の層状固溶体化合物から構成される層状固溶体化合物一次粒子102Cを含み、かつ、平均粒子径がD1である層状固溶体化合物二次粒子110C及び平均粒子径がD2である層状固溶体化合物二次粒子120Cを含み、その内の層状固溶体化合物二次粒子120Cが第1の層状固溶体化合物から構成される層状固溶体化合物一次粒子101C及び第2の層状固溶体化合物から構成される層状固溶体化合物一次粒子102Cの両方を含み、層状固溶体化合物二次粒子110Cは第1の層状固溶体化合物から構成される層状固溶体化合物一次粒子101Cのみから構成されている。また、図4では、非水系二次電池用正極活物質100Dが、第1の層状固溶体化合物から構成される層状固溶体化合物一次粒子101D及び第2の層状固溶体化合物から構成される層状固溶体化合物一次粒子102Dを含み、かつ、平均粒子径がD1である層状固溶体化合物二次粒子110D及び平均粒子径がD2である層状固溶体化合物二次粒子120Dを含み、層状固溶体化合物二次粒子110Dは、第1の層状固溶体化合物から構成される層状固溶体化合物一次粒子101D及び第2の層状固溶体化合物から構成される層状固溶体化合物一次粒子102Dのいずれか一方のみから構成され、層状固溶体化合物二次粒子120Dは、第2の層状固溶体化合物から構成される層状固溶体化合物一次粒子102Dのみから構成されている。
また、図5では、非水系二次電池用正極活物質100Eが、第1の層状固溶体化合物から構成される層状固溶体化合物一次粒子101E及び第2の層状固溶体化合物から構成される層状固溶体化合物一次粒子102Eを含み、かつ、平均粒子径がD1である層状固溶体化合物二次粒子110E及び平均粒子径がD2である層状固溶体化合物二次粒子120Eを含み、層状固溶体化合物二次粒子120Eは、第1の層状固溶体化合物から構成される層状固溶体化合物一次粒子101E及び第2の層状固溶体化合物から構成される層状固溶体化合物一次粒子102Eのいずれか一方のみから構成され、層状固溶体化合物二次粒子110Eは、第1の層状固溶体化合物から構成される層状固溶体化合物一次粒子101Eのみから構成されている。また、図6の形態は、図1と同様に、非水系二次電池用正極活物質100Fが、平均粒子径がD1である層状固溶体化合物二次粒子110F及び平均粒子径がD2である層状固溶体化合物二次粒子120Fを含むとともに、層状固溶体化合物二次粒子110F、120Fがそれぞれ、第1の層状固溶体化合物から構成される層状固溶体化合物一次粒子101F、101F’及び第2の層状固溶体化合物から構成される層状固溶体化合物一次粒子102F、102F’を含んでいる。また、図7の形態は、非水系二次電池用正極活物質100Gが、平均粒子径がD1である層状固溶体化合物二次粒子110G及び平均粒子径がD2である層状固溶体化合物二次粒子120Gを含み、さらに、平均粒子径がD1である層状固溶体化合物二次粒子110Gは、第1の層状固溶体化合物から構成される層状固溶体化合物一次粒子101G、101G’及び第2の層状固溶体化合物から構成される層状固溶体化合物一次粒子102G、102G’を含み、平均粒子径がD2である層状固溶体化合物二次粒子120Gは、第1の層状固溶体化合物から構成される層状固溶体化合物一次粒子101G’’、101G’’’及び第2の層状固溶体化合物から構成される層状固溶体化合物一次粒子102G’’、102G’’’を含んでいる。
さらに、図8では、非水系二次電池用正極活物質100Hが、第1の層状固溶体化合物から構成される層状固溶体化合物一次粒子101H及び第2の層状固溶体化合物から構成される層状固溶体化合物一次粒子102Hを含み、かつ、平均粒子径がD1である、第1の層状固溶体化合物からなる層状固溶体化合物一次粒子101Hのみから構成される層状固溶体化合物二次粒子110Hと、平均粒子径がD2である、第2の層状固溶体化合物からなる層状固溶体化合物一次粒子102Hのみから構成される層状固溶体化合物二次粒子120Hとを含んでいる。
特に、図8に示す形態が好ましい。すなわち、第1の層状固溶体化合物からなる層状固溶体化合物一次粒子101Hから構成される層状固溶体化合物二次粒子110Hと、第2の層状固溶体化合物からなる層状固溶体化合物一次粒子102Hから構成される層状固溶体化合物二次粒子120Hの平均粒子径をそれぞれD3、D4としたときにD3/D4≧2であり、層状固溶体化合物二次粒子110Hと層状固溶体化合物二次粒子120Hの質量比をそれぞれW3、W4としたときに0.2≦W3/(W3+W4)≦0.9であることが好ましく、0.5≦W3/(W3+W4)≦0.8であることが特に好ましい。これにより、正極活物質が高密度化し、体積当たりの実効容量が向上する。また、同じ組成を有する層状固溶体化合物であって粒子径の相異なる複数の二次粒子を製造する必要がなく、低コストに製造することができるため好ましい。
層状固溶体化合物複合体における各二次粒子の平均粒子径は、1μm以上60μm以下とすることが好ましいが、これに限定されるものではない。二次粒子の平均粒子径を60μm以下とすることによって、凹凸の無い正極を製造することができる。また、二次粒子の平均粒子径を1μm以上とすることで高固形分比の正極合材スラリーを製造でき、高密度な正極を製造することができる。
また、本実施形態に係る非水系二次電池用正極活物質において、それぞれの層状固溶体化合物二次粒子は、平均粒子径が異なる少なくとも2種の層状固溶体化合物一次粒子を含み、それら2種の層状固溶体化合物一次粒子の平均粒子径のうち大粒径をd1、小粒径をd2としたときにd1/d2≧2であり、さらに、平均粒子径がd1である層状固溶体化合物一次粒子と平均粒子径がd2である層状固溶体化合物一次粒子の質量比をそれぞれw1、w2としたときに0.2≦w1/(w1+w2)≦0.9であることが好ましい。この例を図7に示す。図7の非水系二次電池用正極活物質100Gでは、平均粒子径がD1である層状固溶体化合物二次粒子110Gが、平均粒子径がd1である層状固溶体化合物一次粒子101G、102Gと平均粒子径がd2である層状固溶体化合物一次粒子101G’、102G’とから構成されている。また、平均粒子径がD2である層状固溶体化合物二次粒子120Gについても、平均粒子径がd1’である層状固溶体化合物一次粒子101G’’、102G’’と平均粒子径がd2’である層状固溶体化合物一次粒子101G’’’、102G’’’とから構成されている。2種の層状固溶体化合物一次粒子の平均粒子径が2倍以上異なることにより、平均粒子径が大きい層状固溶体化合物一次粒子間の空間を平均粒子径が小さい層状固溶体化合物一次粒子で埋めることができ、層状固溶体化合物二次粒子が高密度化する。また、平均粒子径が大きい層状固溶体化合物一次粒子の含有量が2種の層状固溶体化合物一次粒子の合計に対して20質量%以上90質量%以下であることにより層状固溶体化合物二次粒子が高密度化し、体積当たりの容量が向上する。特に、平均粒子径が大きい層状固溶体化合物一次粒子の含有量を50質量%以上80質量%以下とすると、さらに高密度となり、体積当たりの容量がさらに向上するため好ましい。なお、層状固溶体化合物二次粒子が、平均粒子径が異なる3種以上の層状固溶体化合物一次粒子を含む場合は、それら3種以上の平均粒子径の内の最大値及び最小値を、それぞれd1(又はd1’、以下同じ)及びd2(又はd2’、以下同じ)と定義する。
平均粒子径がd1である層状固溶体化合物一次粒子と平均粒子径がd2である層状固溶体化合物一次粒子のそれぞれは、第1の層状固溶体化合物及び第2の層状固溶体化合物のいずれか一方から構成されていてもよいし、その両方を含んで構成されていてもよい。すなわち、層状固溶体化合物二次粒子が平均粒子径の異なる少なくとも2種の層状固溶体化合物一次粒子を含むことと、非水系二次電池用正極活物質が全体として第1の層状固溶体化合物及び第2の層状固溶体化合物を含むこととは独立した条件である。そして、各形態の中でも、図6に示すように、層状固溶体化合物二次粒子110Fが、第1の層状固溶体化合物から構成される層状固溶体化合物一次粒子101Fと、第2の層状固溶体化合物から構成される層状固溶体化合物一次粒子102Fとを含み、第1の層状固溶体化合物から構成される層状固溶体化合物一次粒子101Fと第2の層状固溶体化合物から構成される層状固溶体化合物一次粒子102Fの平均粒子径をそれぞれd3、d4としたときにd3/d4≧2であり、第1の層状固溶体化合物から構成される層状固溶体化合物一次粒子101Fと第2の層状固溶体化合物から構成される層状固溶体化合物一次粒子102Fの質量比をそれぞれw3、w4としたときに0.2≦w3/(w3+w4)≦0.9であることが好ましく、0.5≦w3/(w3+w4)≦0.8であることが特に好ましい。これにより、ニッケルの原子濃度とマンガン原子濃度の比の相違に基づく実用SOC範囲の拡大を確実に達成することができ、かつ、層状固溶体化合物二次粒子が高密度化し、体積当たりの実効容量が向上する。また、同じ組成を有する層状固溶体化合物であって粒子径の相異なる複数の一次粒子を製造する必要がなく、低コストに製造することができるため好ましい。
層状固溶体化合物の各一次粒子の平均粒子径は、30nm以上700nm以下とすることが好ましいが、これに限定されるものではない。一次粒子の平均粒子径を700nm以下とすることによって、一次粒子の比表面積が確保されるため、抵抗を有意に低減することができる。また、一次粒子の平均粒子径は、30nm以上とすることで層状固溶体化合物二次粒子に含まれる層状固溶体化合物一次粒子の充填率が確保されるため好ましい。
層状固溶体化合物二次粒子あるいは層状固溶体化合物一次粒子の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope;SEM)や、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope;TEM)による観察に基づいて測定することができる。観察により、粒子径が有意に異なる少なくとも2種の層状固溶体化合物二次粒子あるいは層状固溶体化合物一次粒子の群を峻別し、それぞれの群につき、粒子径が中央値に近い順に40個の粒子を抽出し、これらの粒子径の加重平均を算出することによって平均粒子径とする。なお、粒子径は、観察された電子顕微鏡像における粒子の長径と短径の平均値として求めることができる。また、質量比は、電子顕微鏡像において占める面積比に対して比例関係があるので、各層状固溶体化合物二次粒子あるいは各層状固溶体化合物一次粒子が占める面積比により算出することができる。なお、平均粒子径が異なる2種以上の層状固溶体化合物二次粒子あるいは層状固溶体化合物一次粒子におけるニッケルの原子濃度とマンガンの原子濃度の比が同一の場合(同一組成の場合)は、その粒子全体の粒度分布をSEMやTEMを用いて算出し、D20とD60の値がD20≦D60/2であれば通常は本発明の範囲内となる。
層状固溶体化合物のそれぞれは、具体的には、以下の一般式(1):
xLi2MnO3−(1−x)LiNiaMnbCocMdO2 (1)
[式中、x、a、b、c、dは、以下の関係:0.2≦x≦0.8、0.3≦a<1.0、0≦b≦0.6、0≦c<0.5、0≦d≦0.05を満たし、Mは、Fe、Ti、Zr、Al、Mg、Cr、V、Nb、Ta、W、Mo、Cu、Zn、Sn及びRuからなる群より選択される少なくとも1種の元素である。]で表される組成を有することが好ましい。
xLi2MnO3−(1−x)LiNiaMnbCocMdO2 (1)
[式中、x、a、b、c、dは、以下の関係:0.2≦x≦0.8、0.3≦a<1.0、0≦b≦0.6、0≦c<0.5、0≦d≦0.05を満たし、Mは、Fe、Ti、Zr、Al、Mg、Cr、V、Nb、Ta、W、Mo、Cu、Zn、Sn及びRuからなる群より選択される少なくとも1種の元素である。]で表される組成を有することが好ましい。
前記の一般式(1)において、xは、層状固溶体化合物におけるLi2MnO3の比率を表している。Li2MnO3の比率が高いほど、層状固溶体化合物がリチウム過剰となるため高容量を得ることができる。その一方で、Li2MnO3の比率が高いほど、電気化学的活性は低下するため層状固溶体化合物の抵抗は増大する。xが0.2以上0.8以下の組成であれば、リチウムを一定程度富化して高容量化を図りつつ、抵抗の増大による出力や容量の低下を避けることができるため好ましい。
Niは、一般に、価数変化が大きく容量密度の向上に有効であり、Coと比較して安価かつ入手し易い元素である。よって、aは0.3以上1.0未満の組成とすることによって、実用SOC範囲の拡大や実効容量の高容量化を有利に達成することができる。
Mnは、Niと比較して、容量密度を向上させる効果に劣るが、安価かつ入手し易い元素である。よって、bが0を超え0.6以下の組成とすることによって、Niの原子濃度を一定程度確保しつつ、層状固溶体化合物の原料費を抑えることができる。なお、bが0の組成として、Mnが少ない層状固溶体化合物としてもよい。
Coは、容量密度の向上に寄与するが高価である。また、Coを多く含む層状固溶体化合物は、カチオンミキシングが発生し易く、結晶性が低下する傾向が見られる。その結果、高SOC側が低抵抗化しにくい。そのため、高SOC側では、Niの原子濃度を所定の比率以上含む層状固溶体化合物を用いることが好ましい。よって、cは0を超え0.5未満の組成とすることによって、Niの原子濃度を一定程度確保しつつ、高容量の層状固溶体化合物とすることができる。なお、cが0の組成として、Coを含有しない層状固溶体化合物としてもよい。
前記の一般式(1)において、dは、層状固溶体化合物における添加元素(M)の組成比を表している。Mの元素としては、Fe、Ti、Zr、Al、Mg、Cr、V、Nb、Ta、W、Mo、Cu、Zn、Sn及びRuからなる群より選択される少なくとも1種の元素であり、これらの元素をNi、Mn又はCoと置換させることによって、結晶構造の安定化や電荷補償等の作用が得られる。よって、dは0を超え0.05以下の組成とすることによって、高容量化や熱安定性の向上を図ることができる、なお、dが0の組成として、Mの元素を含有しない層状固溶体化合物としてもよい。
前記の一般式(1)において、Ni、Mn、Co及びMの元素の関係は、実質的にa+b+c+d=1を満たす。また、層状固溶体化合物の組成は、厳密に化学量論比に従うものに制限されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で組成が不定比であってよく、結晶構造上でサイト間の置換や欠損を有していてもよい。ただし、Ni、Mn、Co及びMの元素の平均価数(酸化数)は、3.2以上であることが好ましい。
層状固溶体化合物は、ニッケルの原子濃度が、2.4mol%以上であることが好ましく、2.4mol%以上12.6mol%以下であることがより好ましく、2.4mol%以上9.5mol%以下であることがさらに好ましい。すなわち、本実施形態に係る非水系二次電池用正極活物質に少なくとも2種含まれる層状固溶体化合物のそれぞれについて、この原子濃度範囲の範囲内で、ニッケルの原子濃度が相違するように調整することが好ましい。なお、ニッケルの原子濃度は、その層状固溶体化合物におけるリチウム、ニッケル、マンガン、コバルト、Mの元素、及び酸素の全ての原子数に対するニッケルの原子数に相当する。
ニッケルの原子濃度を2.4mol%以上とすることによって、ニッケルによる抵抗の低減の作用を有意かつ良好な度合で得ることができる。また、ニッケルの原子濃度が12.6mol%以下、好ましくは9.5mol%以下であれば、安定的な結晶構造を有する層状固溶体化合物とすることができ、高容量を得ることができる。
層状固溶体化合物におけるニッケルの原子濃度とマンガンの原子濃度の比は、ニッケルの原子濃度の高い層状固溶体化合物におけるニッケルの原子濃度とマンガンの原子濃度の比(ニッケルの原子濃度/マンガンの原子濃度)をC1、ニッケルの原子濃度の低い層状固溶体化合物におけるニッケルの原子濃度とマンガンの原子濃度の比(ニッケルの原子濃度/マンガンの原子濃度)をC2としたとき、C1>C2、かつ、1.3≦C1/C2≦7.0の範囲にあることが好ましい。
原子濃度の比C1/C2を1.3以上とすることによって、各層状固溶体化合物におけるニッケルの原子濃度とマンガンの原子濃度の比に有意な相違が与えられるため、実用SOC範囲を拡大して、実効容量を向上させることができる。また、原子濃度の比C1/C2を7.0以下とすることによって、高SOC側の領域及び低SOC側の領域の双方においてバランス良く抵抗を低減させることができ、実用SOC範囲を拡大して、実効容量を向上させることができる。その一方で、原子濃度の比C1/C2が7.0を超えると、各層状固溶体化合物におけるニッケルの原子濃度の比率が過大又は過少となる。C1/C2が、1.3≦C1/C2≦7.0の範囲にあることで、実用SOC範囲を大きく拡大することができる。
本実施形態に係る非水二次電池用正極活物質は、第1の層状固溶体化合物及び第2の層状固溶体化合物と共に、他の正極活物質種を含有していてもよい。含有させる他の正極活物質種としては、一般式(1)の元素組成を満たし、第1の層状固溶体化合物及び第2の層状固溶体化合物とはニッケルの原子濃度が異なる他の層状固溶体化合物(第3の層状固溶体化合物)や、従来リチウムイオン二次電池の正極に使用されている一般的な正極活物質種を挙げることができる。このとき、第3の層状固溶体化合物についてのニッケルの原子濃度、総質量、粒子径等は、第1の層状固溶体化合物及び第2の層状固溶体化合物と同様の条件とすることが好ましい。第3の層状固溶体化合物を含有することで、二次電池の充放電入出力特性を調整することが可能である。一般的な正極活物質種としては、例えば、LiM3O2のように表される層状酸化物系化合物や、LiM4ApOqのように表わされるポリアニオン系化合物等が挙げられる。なお、前記の式中、M3及びM4は、Mn、Ni、Co及びFeからなる群より選択される少なくとも1種の元素であり、Aは、酸素と結合してPO4、SiO4、BO3等のアニオンを形成する典型元素であり、p、qは、1≦p≦2、3≦q≦7を満たす数である。M3及びM4の元素は、一部をTi、Zr、Al、Mg、Cr、V、Nb、Ta、W、Mo等の元素で置換してもよい。
このような他の正極活物質種を併用することによって、その種に応じた特性を非水二次電池用正極に付与することができる。例えば、第3の層状固溶体化合物を併用すると、より広いSOCの範囲において、放電電圧を一定させるといった放電出力特性の制御が可能となる。
これら各正極活物質種の元素組成は、例えば、透過電子顕微鏡−エネルギー分散型X線分光(Transmission Electron Microscopy-Energy Dispersive X-ray Detector;TEM−EDX)や、透過電子顕微鏡−電子エネルギー損失分光(Transmission Electron Microscopy-Electron Energy Loss Spectroscopy;TEM−EELS)等で確認することができる。
本実施形態に係る非水系二次電池用正極活物質に含まれる層状固溶体化合物等のそれぞれの化合物は、一般的な正極活物質の製造方法に準じて製造することができる。このような製造方法としては、例えば、固相法、共沈法、ゾルゲル法、水熱法等が挙げられるが、原料の溶解を伴わない方法によることが好ましく、固相法によることが特に好ましい。なお、ここでの原料の溶解とは、原料の溶解率が10%以上であることを意味する。原料の溶解率は、溶解物の質量/原料の質量×100(%)として定義される。原料の溶解を伴わない方法を用いて正極活物質を製造することによって、異相の形成を抑制することができる。
固相法を用いた正極活物質の製造では、まず、原料のLi含有化合物、Ni含有化合物、Mn含有化合物等を所定の元素組成となる比率で秤量し、粉砕及び混合して原料粉末を調製する。
Li含有化合物としては、例えば、酢酸リチウム、硝酸リチウム、炭酸リチウム、水酸化リチウム、塩化リチウム、硫酸リチウム等を用いることができる。また、Ni含有化合物としては、例えば、酢酸ニッケル、硝酸ニッケル、炭酸ニッケル、硫酸ニッケル、水酸化ニッケル等を用いることができ、Mn含有化合物としては、例えば、酢酸マンガン、硝酸マンガン、炭酸マンガン、硫酸マンガン、酸化マンガン、水酸化マンガン等を用いることができる。また、CoやMの元素を含有させる場合は、これらの酢酸塩、硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩、水酸化物、酸化物等を用いることができる。
原料粉末を調製する際の粉砕、混合には、乾式粉砕及び湿式粉砕のいずれの方式も用いることができる。粉砕手段としては、例えば、ボールミル、ビーズミル、遊星型ボールミル、アトライター、ジェットミル等の粉砕機を利用することができる。
調製された原料粉末は、焼成することによって正極活物質の一次粒子とする。原料粉末の焼成は、不活性ガス雰囲気又は酸化ガス雰囲気の下で仮焼成することによって原料化合物を熱分解させ、適宜解砕及び分級した後、本焼成することによって焼結させることが好ましい。仮焼成における加熱温度は、例えば、300℃〜600℃程度、本焼成における加熱温度は、例えば、700℃〜1100℃とする。
正極活物質は、製造された正極活物質の一次粒子を解砕又は粉砕・混合し、乾式造粒又は湿式造粒によって二次粒子を造粒することによって製造することができる。正極活物質は製造した二次粒子の集合体である。造粒手段としては、例えば、スプレードライヤ等の造粒機を利用することができる。また、造粒後に焼成処理を行っても構わない。
以上のようにして製造された非水系二次電池用正極活物質は、非水系二次電池用正極の材料として用いられる。
本実施形態に係る非水系二次電池用正極は、主に、非水系二次電池用正極活物質、導電材及び結着剤を含む正極合材層と、正極合材層が塗工された正極集電体とを備える。
導電材としては、一般的なリチウムイオン二次電池に用いられている導電材を用いることができる。具体的には、例えば、黒鉛粉末、アセチレンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック等の炭素粒子や炭素繊維等が挙げられる。導電材は、例えば、正極合材層全体の質量に対して1質量%以上10質量%以下程度となる量を用いればよい。
結着剤としては、一般的なリチウムイオン二次電池に用いられている結着剤を用いることができる。具体的には、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、スチレン−ブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリロニトリル、変性ポリアクリロニトリル等が挙げられる。結着剤は、例えば、正極合材層全体の質量に対して1質量%以上10質量%以下程度となる量を用いればよい。
正極集電体としては、アルミニウム製又はアルミニウム合金製の箔、エキスパンドメタル、パンチングメタル等を用いることができる。箔については、例えば、8μm以上30μm以下程度の厚さとすればよい。
本実施形態に係る非水系二次電池用正極は、前記の非水系二次電池用正極活物質を用いて、一般的な正極の製造方法に準じて製造することができる。
非水系二次電池用正極の製造方法の一例は、正極合材調製工程、正極合材塗工工程、成形工程を含んでなる。正極合材調製工程では、材料の正極活物質、導電材及び結着剤を溶媒中で混合することでスラリー状の正極合材を調製する。正極活物質を少なくとも用いて、結着剤を溶解させた溶媒中において、導電材と共に撹拌均質化する。溶媒としては、結着剤の種類に応じて、N−メチルピロリドン、水、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン等から選択することができる。材料を混合する撹拌手段としては、例えば、プラネタリーミキサ、ディスパーミキサ、自転・公転ミキサ等が挙げられる。
正極合材塗工工程では、調製されたスラリー状の正極合材を正極集電体上に塗布した後、熱処理により溶媒乾燥させることによって、正極合材層を形成する。正極合材を塗布する塗工手段としては、例えば、バーコーター、ドクターブレード、ロール転写機等が挙げられる。
成形工程では、乾燥させた正極合材層をロールプレス等を用いて加圧成形し、必要に応じて正極集電体と共に裁断することによって、所望の形状の非水系二次電池用正極とする。正極集電体上に形成される正極合材層の厚さは、例えば、50μm以上300μm以下程度とすればよい。
以上のようにして製造された非水系二次電池用正極は、非水系二次電池の材料として用いられる。
本実施形態に係る非水系二次電池は、主に、非水系二次電池用正極、非水系二次電池用負極、セパレータ及び非水電解液を含み、これらが円筒型、角型、ボタン型、ラミネートシート型等の形状の外装体に収容された構成とされる。
図9は、本実施形態に係る非水系二次電池の一例を示す断面模式図である。
図9は円筒型の非水系二次電池を例示しており、この非水系二次電池1は、正極集電体の両表面に正極合材が塗工された正極2と、負極集電体の両表面に負極合材が塗工された負極3と、正極2及び負極3の間に介装されたセパレータ4とからなる電極群を備えている。正極2及び負極3は、セパレータ4を介して捲回され、円筒型の電池缶5に収容されている。また、正極2は、正極リード片6を介して密閉蓋8と電気的に接続され、負極3は、負極リード片7を介して電池缶5と電気的に接続され、正極リード片6と負極3、負極リード片7と正極2の間には、それぞれエポキシ樹脂等を材質とする絶縁板10が配設されて電気的に絶縁されている。各リード片は、それぞれの集電体と同様の材質からなる電流引き出し用の部材であり、スポット溶接又は超音波溶接により各集電体と接合されている。また、電池缶5は、内部に非水電解液が注入された後、ゴム等のシール材9で密封され、頂部を密閉蓋8で封止される構造とされている。
図9は円筒型の非水系二次電池を例示しており、この非水系二次電池1は、正極集電体の両表面に正極合材が塗工された正極2と、負極集電体の両表面に負極合材が塗工された負極3と、正極2及び負極3の間に介装されたセパレータ4とからなる電極群を備えている。正極2及び負極3は、セパレータ4を介して捲回され、円筒型の電池缶5に収容されている。また、正極2は、正極リード片6を介して密閉蓋8と電気的に接続され、負極3は、負極リード片7を介して電池缶5と電気的に接続され、正極リード片6と負極3、負極リード片7と正極2の間には、それぞれエポキシ樹脂等を材質とする絶縁板10が配設されて電気的に絶縁されている。各リード片は、それぞれの集電体と同様の材質からなる電流引き出し用の部材であり、スポット溶接又は超音波溶接により各集電体と接合されている。また、電池缶5は、内部に非水電解液が注入された後、ゴム等のシール材9で密封され、頂部を密閉蓋8で封止される構造とされている。
非水系二次電池用負極としては、一般的なリチウムイオン二次電池に用いられている負極活物質を含む負極合材層と、負極集電体とから構成することができる。
負極活物質としては、例えば、炭素材料、金属材料、金属酸化物材料等から選択される一種以上を用いることができる。炭素材料としては、天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛類や、コークス、ピッチ等の炭化物類や、非晶質炭素や、炭素繊維等が挙げられる。また、金属材料としては、リチウム、シリコン、スズ、アルミニウム、インジウム、ガリウム、マグネシウムやこれらの合金、金属酸化物材料としては、スズ、ケイ素等を含む金属酸化物が挙げられる。この非水系二次電池用負極には、必要に応じて、前記の非水系二次電池用正極において用いられる結着剤、導電材と同種の群から選択されるものを用いてもよい。結着剤は、例えば、負極合材全体の質量に対して5質量%程度となる量を用いればよい。
負極集電体としては、銅製又はニッケル製の箔、エキスパンドメタル、パンチングメタル等を用いることができる。箔については、例えば、5μm以上20μm以下程度の厚さとすればよい。
非水系二次電池用負極は、非水系二次電池用正極と同様に、負極活物質と結着剤を混合した負極合材を負極集電体上に塗工し、加圧成形し、必要に応じて裁断することによって製造することができる。負極集電体上に形成される負極合材層の厚さは、例えば、20μm以上150μm以下程度とすればよい。
セパレータとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン−ポリプロピレン共重合体等のポリオレフィン系樹脂、ポリアミド樹脂、アラミド樹脂等の微孔性フィルムや不織布等を用いることができる。
非水電解液としては、LiClO4、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiSbF6、LiCF3SO3、LiC4F9SO3、LiCF3CO2、Li2C2F4(SO3)2、LiN(CF3SO2)2、LiC(CF3SO2)3等のリチウム塩を非水溶媒に溶解させた溶液を用いることができる。非水電解液におけるリチウム塩の濃度は、0.7M以上1.5M以下とすることが好ましい。
非水溶媒としては、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、メチルアセテート、ジメトキシエタン等を用いることができる。また、非水電解液には、電解液の酸化分解及び還元分解の抑制、金属元素の析出防止、イオン伝導性の向上、難燃性の向上等を目的として、各種の添加剤を添加することができる。このような添加剤としては、例えば、電解液の分解を抑制する1,3−プロパンサルトン、1,4−ブタンサルトン等や、電解液の保存性を向上させる不溶性ポリアジピン酸無水物、ヘキサヒドロ無水フタル酸等や、難燃性を向上させるフッ素置換アルキルホウ素等がある。
以上の構成を有する本実施形態に係る非水系二次電池は、例えば、携帯電子機器や家庭用電気機器等の小型電源、無停電電源や電力平準化装置等の定置用電源、船舶、鉄道、ハイブリット自動車、電気自動車等の駆動電源として使用することができる。
本実施形態に係る車載用非水系二次電池モジュールは、ハイブリット自動車、電気自動車等の車載用駆動電源として好適な二次電池モジュールであって、主に、前記の非水系二次電池と、コントローラと、ヒューズと、バランス回路とを備えてなる。車載用非水系二次電池モジュールにおいて、非水系二次電池は、所望の出力を確保するために複数個が直列に接続されて電池群を構成し、この電池群が並列に組み合わされて筺体に格納され高容量の電池モジュールを形成している。
ヒューズは、過電流に対する保護機能、バランス回路は、電極間電圧を平準化する機能を有する。コントローラは、非水系二次電池の電極間電圧、電流、温度を監視する機能を有し、保護回路によって、設定された充放電終止電位の範囲で過充電や過放電等を防止する機能を備えている。また、コントローラには、外部との通信を行う信号入出力手段が接続され、信号入出力手段は、例えば、車両に備えられるECUからの制御信号の入力や、ECUへの電池監視情報の出力を行う機能を有する。二次電池モジュールの構成としては、これらに加え、さらに各二次電池の容量の監視や平準化の機能、冷却機能等が備えられてもよい。
本実施形態に係る車載用非水系二次電池モジュールは、特に、所定の出力が得られるSOC範囲が広い特性を有する非水系二次電池を備えていることによって、例えば、電気自動車等においては、充電後の車両の航続距離に関わらず安定的な出力を可能とし、ハイブリット自動車等においては、内燃機関の補助を任意の充電状態で可能とし得る点で有用である。また、本実施形態に係る車載用非水系二次電池モジュールは、実効容量が優れているため、要求される容量に対するモジュールサイズを小型化することを可能としている。
以下、実施例及び比較例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれに限定されるものではない。
ニッケルの原子濃度とマンガンの原子濃度の比がそれぞれ異なる複数種の層状固溶体化合物を含む正極活物質を含有する正極を備えた非水系二次電池を製造して、その実効容量を評価した。
はじめに、ニッケルの原子濃度とマンガンの原子濃度の比(ニッケルの原子濃度/マンガンの原子濃度)が低い層状固溶体化合物から構成される層状固溶体化合物一次粒子Aと、その層状固溶体化合物一次粒子Aから構成される層状固溶体化合物二次粒子1を製造した。
原料の炭酸リチウム、炭酸マンガン及び炭酸ニッケルを所定の元素組成比率となるように秤量してジルコニア製ポットに加え、さらにアセトンを添加して、遊星型ボールミルで溶解することなく粉砕及び混合した。そして、得られたスラリーを乾燥して、原料粉末を得た。続いて、得られた原料粉末を大気中において500℃で12時間仮焼成した後、ジルコニア製ポットに加え、さらにアセトンを添加して、遊星型ボールミルで溶解することなく粉砕及び混合した。そして、得られたスラリーを乾燥した後、大気中において1000℃で12時間本焼成し、ビーズミルで解砕し層状固溶体化合物一次粒子Aを得た。得られた層状固溶体化合物一次粒子Aを4流体ノズル型スプレードライヤにより噴霧乾燥させて二次粒子を造粒し、造粒体を大気中において650℃で5時間焼成し、層状固溶体化合物二次粒子1を得た。層状固溶体化合物一次粒子Aを構成する層状固溶体化合物の元素組成は、Li1.16Ni0.2Mn0.6O2(0.45Li2MnO3−0.55LiNi0.45Mn0.55O2)であり、層状固溶体化合物一次粒子Aの平均粒子径は、0.17μmであった。また、層状固溶体化合物二次粒子1の平均粒子径は、4μmであった。なお、層状固溶体化合物一次粒子Aを構成する層状固溶体化合物におけるニッケルの原子濃度は5.1mol%であった。
原料の炭酸リチウム、炭酸マンガン及び炭酸ニッケルを所定の元素組成比率となるように秤量してジルコニア製ポットに加え、さらにアセトンを添加して、遊星型ボールミルで溶解することなく粉砕及び混合した。そして、得られたスラリーを乾燥して、原料粉末を得た。続いて、得られた原料粉末を大気中において500℃で12時間仮焼成した後、ジルコニア製ポットに加え、さらにアセトンを添加して、遊星型ボールミルで溶解することなく粉砕及び混合した。そして、得られたスラリーを乾燥した後、大気中において1000℃で12時間本焼成し、ビーズミルで解砕し層状固溶体化合物一次粒子Aを得た。得られた層状固溶体化合物一次粒子Aを4流体ノズル型スプレードライヤにより噴霧乾燥させて二次粒子を造粒し、造粒体を大気中において650℃で5時間焼成し、層状固溶体化合物二次粒子1を得た。層状固溶体化合物一次粒子Aを構成する層状固溶体化合物の元素組成は、Li1.16Ni0.2Mn0.6O2(0.45Li2MnO3−0.55LiNi0.45Mn0.55O2)であり、層状固溶体化合物一次粒子Aの平均粒子径は、0.17μmであった。また、層状固溶体化合物二次粒子1の平均粒子径は、4μmであった。なお、層状固溶体化合物一次粒子Aを構成する層状固溶体化合物におけるニッケルの原子濃度は5.1mol%であった。
続いて、ニッケルの原子濃度とマンガンの原子濃度の比が高い層状固溶体化合物から構成される層状固溶体化合物一次粒子Bと、その層状固溶体化合物一次粒子Bから構成される層状固溶体化合物二次粒子2を製造した。
層状固溶体化合物一次粒子Bは、原料の比率を変更した点を除いて、層状固溶体化合物一次粒子Aと同様にして得た。また、層状固溶体化合物二次粒子2は、ロータリーアトマイザ型スプレードライヤを用いた以外は層状固溶体化合物二次粒子1と同様にして得た。得られた層状固溶体化合物一次粒子Bを構成する層状固溶体化合物の元素組成は、Li1.16Ni0.3Mn0.5O2(0.45Li2MnO3−0.55LiNi0.68Mn0.32O2)であり、層状固溶体化合物一次粒子Bの平均粒子径は、0.45μmであった。また、層状固溶体化合物二次粒子2の平均粒子径は、30μmであった。なお、層状固溶体化合物一次粒子Bを構成する層状固溶体化合物におけるニッケルの原子濃度は7.6mol%であった。
次に、層状固溶体化合物二次粒子3、4を製造した。層状固溶体化合物一次粒子Aと層状固溶体化合物一次粒子Bを質量比0.2:0.8となるように混合し、純水を添加し、スプレードライヤで噴霧乾燥させて二次粒子を造粒した。層状固溶体化合物二次粒子3は4流体ノズル型スプレードライヤを用いた。層状固溶体化合物二次粒子4はロータリーアトマイザ型スプレードライヤを用いた。層状固溶体化合物二次粒子3、4の平均粒子径は、それぞれ4μm、30μmであった。
次に、原料の比率を変更し、層状固溶体化合物一次粒子Aと層状固溶体化合物一次粒子Bの中間組成である層状固溶体化合物一次粒子Cを製造した。得られた層状固溶体化合物一次粒子Cを構成する層状固溶体化合物の元素組成は、Li1.16Ni0.25Mn0.55O2(0.45Li2MnO3−0.55LiNi0.57Mn0.43O2)であり、層状固溶体化合物一次粒子Cの平均粒子径は、0.47μmであった。この層状固溶体化合物一次粒子Cに純水を添加し、スプレードライヤで噴霧乾燥させて二次粒子を造粒した。得られた造粒体を大気中において650℃で5時間焼成し、層状固溶体化合物二次粒子5を得た。なお、得られた層状固溶体化合物二次粒子5の平均粒子径は、4μmであった。また、層状固溶体化合物一次粒子Cを構成する層状固溶体化合物におけるニッケルの原子濃度は6.3mol%であった。
(実施例1)
得られた層状固溶体化合物二次粒子1と層状固溶体化合物二次粒子2を質量比0.8:0.2となるように混合し、正極活物質を得た。なお、層状固溶体化合物一次粒子Bを構成する層状固溶体化合物におけるニッケルの原子濃度(C1−1)とマンガンの原子濃度(C1−2)の比(C1−1/C1−2)をC1とし、層状固溶体化合物一次粒子Aを構成する層状固溶体化合物におけるニッケルの原子濃度(C2−1)とマンガンの原子濃度(C2−2)の比(C2−1/C2−2)をC2としたとき、C1/C2の値は1.8であった。
得られた層状固溶体化合物二次粒子1と層状固溶体化合物二次粒子2を質量比0.8:0.2となるように混合し、正極活物質を得た。なお、層状固溶体化合物一次粒子Bを構成する層状固溶体化合物におけるニッケルの原子濃度(C1−1)とマンガンの原子濃度(C1−2)の比(C1−1/C1−2)をC1とし、層状固溶体化合物一次粒子Aを構成する層状固溶体化合物におけるニッケルの原子濃度(C2−1)とマンガンの原子濃度(C2−2)の比(C2−1/C2−2)をC2としたとき、C1/C2の値は1.8であった。
(実施例2〜6、比較例1、2)
次に、層状固溶体化合物二次粒子1と層状固溶体化合物二次粒子2の混合比を変更した点を除いて、実施例1と同様にして正極活物質を製造した。以下の表1は、用いた層状固溶体化合物二次粒子の混合比(質量比)を示している。なお、表3において、層状固溶体化合物二次粒子1の質量比をW2、平均粒子径をD2と表し、層状固溶体化合物二次粒子2の質量比をW1、平均粒子径をD1と表す。
次に、層状固溶体化合物二次粒子1と層状固溶体化合物二次粒子2の混合比を変更した点を除いて、実施例1と同様にして正極活物質を製造した。以下の表1は、用いた層状固溶体化合物二次粒子の混合比(質量比)を示している。なお、表3において、層状固溶体化合物二次粒子1の質量比をW2、平均粒子径をD2と表し、層状固溶体化合物二次粒子2の質量比をW1、平均粒子径をD1と表す。
(実施例7)
層状固溶体化合物二次粒子3と層状固溶体化合物二次粒子4を質量比0.2:0.8となるように混合し、正極活物質を製造した。この正極活物質は、平均粒子径が異なる2種の層状固溶体化合物二次粒子を含み、かつ、それぞれの層状固溶体化合物二次粒子が、平均粒子径が異なる2種の層状固溶体化合物一次粒子を含んでいる。
層状固溶体化合物二次粒子3と層状固溶体化合物二次粒子4を質量比0.2:0.8となるように混合し、正極活物質を製造した。この正極活物質は、平均粒子径が異なる2種の層状固溶体化合物二次粒子を含み、かつ、それぞれの層状固溶体化合物二次粒子が、平均粒子径が異なる2種の層状固溶体化合物一次粒子を含んでいる。
(比較例3)
層状固溶体化合物二次粒子5のみの集合体からなる正極活物質を製造した。この正極活物質は、実施例2と同様の金属成分比を備える。
層状固溶体化合物二次粒子5のみの集合体からなる正極活物質を製造した。この正極活物質は、実施例2と同様の金属成分比を備える。
実施例1〜7及び比較例1〜3に係る正極活物質を用いた非水系二次電池の製造は、それぞれ次の手順で行った。
はじめに、正極活物質95質量部と、導電材3質量部と、結着剤2質量部とを、溶媒であるN−メチルピロリドンと混合し、均質化してスラリー状の正極合材を調製した。なお、導電材としては、アセチレンブラック「デンカブラック(登録商標)」(電気化学工業株式会社製)を用いた。また、結着剤としては、変性ポリアクリロニトリルを用いた。続いて、調製した正極合材を、厚み15μmの箔状のアルミ製正極集電体に塗布し、120℃で乾燥させた後、40MPaで3回プレスし圧縮成形して電極板とした。そして、電極板を直径15mmの円盤状に打ち抜き、非水系二次電池用正極とした。この正極について、正極の厚さを5箇所測定し、平均することで正極の厚さを測定し、正極の厚さからアルミ製正極集電体の厚さを減じ、正極合剤層の厚さを求めた。求めた正極合剤層の厚さに面積を乗じ、正極合剤層の体積を求めた。また、正極の質量を測定し、正極の質量からアルミ製正極集電体の質量を減じ、正極合剤層の質量を求めた。求めた正極合剤層の質量を正極合剤層の体積で除することで正極合剤層の密度を求めた。その結果を表4に示す。
非水系二次電池は、製造した非水系二次電池用正極と、金属リチウムからなる非水系二次電池用負極とを用いて製造した。なお、非水電解液としては、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとを体積比1:2で混合した溶媒に、LiPF6を1.0mol/Lの濃度となるように溶解させたものを用いた。
次に、製造した各非水系二次電池について、充放電試験を行い、放電容量を測定した。なお、充放電試験は、環境温度25℃の下で行った。
充電については、0.05C相当の電流で上限電圧4.6Vまで定電流定電圧充電を行い、放電については、30分間休止した後、0.05C相当の定電流で下限電圧2.5Vまで行って、この充放電の後に放電容量を測定した。
充電については、0.05C相当の電流で上限電圧4.6Vまで定電流定電圧充電を行い、放電については、30分間休止した後、0.05C相当の定電流で下限電圧2.5Vまで行って、この充放電の後に放電容量を測定した。
次に、製造した各非水系二次電池について、充放電試験を行い、各充電状態における直流抵抗を測定し、実用SOC範囲と実効容量を求めた。なお、供試した層状固溶体化合物は、層状酸化物系正極活物質等と比較して、充電時と放電時で直流抵抗の差が大きく、放電時において特に高抵抗となる特性を有している。そこで、放電時における直流抵抗の測定に基づいて、実用SOC範囲を求めることとした。
直流抵抗は、SOC90%に充電した状態、及び、その後SOC10%相当を順次放電してSOC10%に至るまでの各測定点において計測を行った。各測定点では、1.2mAの電流を10秒間印加し、印加前と印加後の電位差を電流値1.2mAで除算することによって、それぞれ直流抵抗値を算出した。
求める実用SOC範囲は、測定された直流抵抗値が、直流抵抗の最低値の2倍以下である範囲と定義した。すなわち、実施例1〜7及び比較例1〜3に係る正極活物質を用いた各非水系二次電池のいずれについても、直流抵抗の最低値は28Ωであったため、直流抵抗が56Ω以下であったSOCの範囲を実用SOC範囲として求め、SOC100%に対する実用SOC範囲の分率(実用SOC分率)を算出した。また、実効容量は、測定された放電容量に実用SOC分率を乗算することによって、それぞれ算出した。その結果を、以下の表4に示す。
表4に示すように、実施例1〜7に係る非水系二次電池では、実用上許容されるSOC範囲における容量を示す実効容量の値については、正極活物質が層状固溶体化合物二次粒子1及び層状固溶体化合物二次粒子2の内のいずれか一方のみから構成される比較例1〜2、及び正極活物質が層状固溶体化合物一次粒子Aと層状固溶体化合物一次粒子Bの中間組成である層状固溶体化合物一次粒子Cのみから構成される比較例3に係る非水系二次電池と比較して向上していた。なお、比較例3の実効容量が比較例1よりも低い結果となった理由は、比較例3の直流抵抗(DCR)の挙動が、低SOC側では比較例2と似た高抵抗な挙動を示し、高SOC側では比較例1と似た高抵抗な挙動を示すためと考えられる。その結果、実用SOC範囲が狭く低実効容量となったと推察される。
また、層状固溶体化合物二次粒子1と層状固溶体化合物二次粒子2を0.5:0.5〜0.2:0.8で含む実施例2〜5は、層状固溶体化合物二次粒子1と層状固溶体化合物二次粒子2を0.8:0.2で含む実施例1、0.1:0.9で含む実施例6と比較して体積当たりの実効容量が高容量であった。このことから、層状固溶体化合物二次粒子1と層状固溶体化合物二次粒子2を0.5:0.5〜0.2:0.8の質量比で含む場合は、さらに高容量となることが明らかとなった。さらに、層状固溶体化合物一次粒子Aと層状固溶体化合物一次粒子Bを0.2:0.8の質量比で含む平均粒子径4μmの層状固溶体化合物二次粒子3と平均粒子径30μmの層状固溶体化合物二次粒子4とを0.2:0.8の質量比で含む実施例7は、さらに高容量となることが分かった。
よって、ニッケルの原子濃度とマンガンの原子濃度の比が異なる2種以上の層状固溶体化合物を含み、かつ、他の層状固溶体化合物二次粒子と比べ2倍以上の平均粒子径を有する層状固溶体化合物二次粒子の含有量が20質量%以上90質量%以下であるとき、高出力が得られるSOC範囲が拡大し、高密度化し、体積当たりの実効容量を高容量化できることが確認された。
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
1 非水系二次電池
2 正極
3 負極
4 セパレータ
5 電池缶
6 正極リード片
7 負極リード片
8 密閉蓋
9 シール材
10 絶縁板
100A〜100H 非水系二次電池用正極活物質
101A〜101H 層状固溶体化合物一次粒子
102A〜102H 層状固溶体化合物一次粒子
110A〜110H 層状固溶体化合物二次粒子
120A〜120H 層状固溶体化合物二次粒子
D1〜D4 平均粒子径
d1〜d4 平均粒子径
2 正極
3 負極
4 セパレータ
5 電池缶
6 正極リード片
7 負極リード片
8 密閉蓋
9 シール材
10 絶縁板
100A〜100H 非水系二次電池用正極活物質
101A〜101H 層状固溶体化合物一次粒子
102A〜102H 層状固溶体化合物一次粒子
110A〜110H 層状固溶体化合物二次粒子
120A〜120H 層状固溶体化合物二次粒子
D1〜D4 平均粒子径
d1〜d4 平均粒子径
Claims (15)
- ニッケル及びマンガンを含有する第1の層状固溶体化合物と、ニッケル及びマンガンを含有し、前記第1の層状固溶体化合物とはニッケルの原子濃度とマンガンの原子濃度の比が異なる第2の層状固溶体化合物とを含み、
かつ、平均粒子径が異なる少なくとも2種の層状固溶体化合物二次粒子を含み、前記2種の層状固溶体化合物二次粒子の平均粒子径のうち大粒径をD1、小粒径をD2としたときにD1/D2≧2であり、平均粒子径がD1である層状固溶体化合物二次粒子の質量比をW1、平均粒子径がD2である層状固溶体化合物二次粒子の質量比をW2としたときに0.2≦W1/(W1+W2)≦0.9である非水系二次電池用正極活物質。 - 前記W1及びW2が、0.5≦W1/(W1+W2)≦0.8である請求項1に記載の非水系二次電池用正極活物質。
- ニッケル及びマンガンを含有する第1の層状固溶体化合物と、ニッケル及びマンガンを含有し、前記第1の層状固溶体化合物とはニッケルの原子濃度とマンガンの原子濃度の比が異なる第2の層状固溶体化合物とを含み、
前記第1の層状固溶体化合物から構成される層状固溶体化合物二次粒子の平均粒子径D3が、前記第2の層状固溶体化合物から構成される層状固溶体化合物二次粒子の平均粒子径D4よりも大きく、D3/D4≧2であり、前記第1の層状固溶体化合物から構成される層状固溶体化合物二次粒子の質量比をW3、前記第2の層状固溶体化合物から構成される層状固溶体化合物二次粒子の質量比をW4としたときに0.2≦W3/(W3+W4)≦0.9である非水系二次電池用正極活物質。 - 前記W3及びW4が、0.5≦W3/(W3+W4)≦0.8である請求項3に記載の非水系二次電池用正極活物質。
- 前記層状固溶体化合物二次粒子は、平均粒子径が異なる少なくとも2種の層状固溶体化合物一次粒子を含み、前記2種の層状固溶体化合物一次粒子の平均粒子径のうち大粒径をd1、小粒径をd2としたときにd1/d2≧2であり、平均粒子径がd1である層状固溶体化合物一次粒子の質量比をw1、平均粒子径がd2である層状固溶体化合物一次粒子の質量比をw2としたときに0.2≦w1/(w1+w2)≦0.9である請求項1〜4のいずれかに記載の非水系二次電池用正極活物質。
- 前記w1及びw2が、0.5≦w1/(w1+w2)≦0.8である請求項5に記載の非水系二次電池用正極活物質。
- 前記層状固溶体化合物二次粒子は、第1の層状固溶体化合物から構成される層状固溶体化合物一次粒子と、第2の層状固溶体化合物から構成される層状固溶体化合物一次粒子とを含み、
前記第1の層状固溶体化合物から構成される層状固溶体化合物一次粒子の平均粒子径d3が、前記第2の層状固溶体化合物から構成される層状固溶体化合物一次粒子の平均粒子径d4よりも大きく、d3/d4≧2であり、前記第1の層状固溶体化合物から構成される層状固溶体化合物一次粒子の質量比をw3、前記第2の層状固溶体化合物から構成される層状固溶体化合物一次粒子の質量比をw4としたときに0.2≦w3/(w3+w4)≦0.9である請求項1〜4のいずれかに記載の非水系二次電池用正極活物質。 - 前記w3及びw4が、0.5≦w3/(w3+w4)≦0.8である請求項7に記載の非水系二次電池用正極活物質。
- 前記第1の層状固溶体化合物及び前記第2の層状固溶体化合物が、それぞれ下記の一般式(1):
xLi2MnO3−(1−x)LiNiaMnbCocMdO2 (1)
[式中、x、a、b、c及びdは、以下の関係:0.2≦x≦0.8、0.3≦a<1.0、0≦b≦0.6、0≦c<0.5、0≦d≦0.05を満たし、Mは、Fe、Ti、Zr、Al、Mg、Cr、V、Nb、Ta、W、Mo、Cu、Zn、Sn及びRuからなる群より選択される少なくとも1種の元素である。]
で表される組成を有する請求項1〜8のいずれかに記載の非水系二次電池用正極活物質。 - 前記第1及び第2の層状固溶体化合物のうちニッケルの原子濃度の高い層状固溶体化合物のニッケルの原子濃度とマンガンの原子濃度の比をC1、ニッケルの原子濃度の高い層状固溶体化合物のニッケルの原子濃度とマンガンの原子濃度の比をC2としたとき、C1>C2、かつ、1.3≦C1/C2≦7.0である請求項1〜9のいずれかに記載の非水系二次電池用正極活物質。
- 前記第1の層状固溶体化合物におけるニッケルの原子濃度及び前記第2の層状固溶体化合物におけるニッケルの原子濃度が、それぞれ2.4mol%以上9.5mol%以下である請求項1〜10のいずれかに記載の非水系二次電池用正極活物質。
- 前記第1の層状固溶体化合物及び前記第2の層状固溶体化合物が、それぞれ遷移金属としてニッケル及びマンガンのみを含む請求項1〜11のいずれかに記載の非水系二次電池用正極活物質。
- 請求項1〜12のいずれかに記載の非水系二次電池用正極活物質を含む非水系二次電池用正極。
- 請求項13に記載の非水系二次電池用正極を備える非水系二次電池。
- 請求項14に記載の非水系二次電池を備える車載用非水系二次電池モジュール。
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