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JP2015205348A - 研磨剤、研磨剤セット及び基体の研磨方法 - Google Patents

研磨剤、研磨剤セット及び基体の研磨方法 Download PDF

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友洋 岩野
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Abstract

【課題】ストッパ膜に対する絶縁膜の研磨選択性を向上させることが可能な研磨剤を提供する。【解決手段】4価金属元素の水酸化物の粒子を含む砥粒と、エチレンジアミンにオキシエチレン及びオキシプロピレンの少なくとも一方が付加した化合物と、液状媒体と、を含有する。【選択図】なし

Description

本発明は、研磨剤、研磨剤セット及び基体の研磨方法に関する。
近年の半導体素子の製造工程では、高密度化・微細化のための加工技術の重要性がますます高まっている。加工技術の一つであるCMP(ケミカル・メカニカル・ポリッシング:化学機械研磨)技術は、半導体素子の製造工程において、シャロートレンチ分離(STI、シャロー・トレンチ・アイソレーション)の形成、プリメタル絶縁膜又は層間絶縁膜の平坦化、プラグ又は埋め込み金属配線の形成等に必須の技術となっている。
研磨剤として最も多用されているのは、砥粒として、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ等のシリカ(酸化珪素)粒子を含むシリカ系研磨剤である。シリカ系研磨剤は汎用性が高いことが特徴であり、砥粒含有量、pH、添加剤等を適切に選択することで、絶縁膜及び導電膜を問わず幅広い種類の膜を研磨することができる。
一方で、主に酸化珪素膜等の絶縁膜を対象とした、砥粒としてセリウム化合物粒子を含む研磨剤の需要も拡大している。例えば、酸化セリウム(セリア)粒子を砥粒として含む酸化セリウム系研磨剤は、シリカ系研磨剤よりも低い砥粒含有量でも高速に酸化珪素膜を研磨できる(例えば、下記特許文献1、2参照)。
ところで、近年、半導体素子の製造工程では更なる配線の微細化を達成することが求められており、研磨時に発生する研磨傷が問題となっている。すなわち、従来の酸化セリウム系研磨剤を用いて研磨を行った際に微小な研磨傷が発生しても、この研磨傷の大きさが従来の配線幅より小さいものであれば問題にならなかったが、更なる配線の微細化を達成しようとする場合には、研磨傷が微小であっても問題となってしまう。
この問題に対し、4価金属元素の水酸化物の粒子を用いた研磨剤が検討されている(例えば、下記特許文献3〜5参照)。また、4価金属元素の水酸化物の粒子の製造方法についても検討されている(例えば、下記特許文献6、7参照)。これらの技術は、4価金属元素の水酸化物の粒子が有する化学的作用を活かしつつ機械的作用を極力小さくすることによって、粒子による研磨傷を低減しようとするものである。
また、STIを形成するためのCMP工程等においては、凹凸パターンを有する基板の凸部上に配置されたストッパ膜(研磨停止層)と、凹凸パターンの凹部を埋めるように基板及びストッパ膜上に配置された絶縁膜(例えば酸化珪素膜)と、を有する積層体の研磨に際し、ストッパ膜を用いて絶縁膜が研磨されている。これは絶縁膜の研磨量(絶縁膜における除去される膜厚)を制御することが難しいためであり、ストッパ膜が露出するまで絶縁膜を研磨することにより研磨の程度を制御している。この場合、研磨においては、絶縁膜が充分に除去されるのに対してストッパ膜がほとんど除去されない必要がある。すなわち、研磨剤の研磨特性においては、ストッパ膜に対する絶縁膜の研磨選択性(研磨速度比:絶縁膜の研磨速度/ストッパ膜の研磨速度)を高める必要がある。
このような要求に対して、添加剤を含む研磨剤が知られている(例えば、下記特許文献8参照)。この技術によれば、研磨剤が、4価金属元素の水酸化物の粒子と、カチオン性の重合体及び多糖類の少なくとも一方とを含むことにより、酸化珪素膜が高速に研磨され、窒化珪素膜に対する優れた研磨選択比を得ることができる。
特開平10−106994号公報 特開平08−022970号公報 国際公開第2002/067309号 国際公開第2012/070541号 国際公開第2012/070542号 特開2006−249129号公報 国際公開第2009/131133号 国際公開第2012/070544号
ストッパ膜としては従来窒化珪素膜が用いられているが、近年、ポリシリコン膜をストッパ膜として用いることが増えてきている。この場合、ポリシリコン膜に対する絶縁膜の研磨選択性を更に高める必要がある。しかしながら、ポリシリコン膜に対する絶縁膜の研磨選択性に優れた研磨剤はあまり知られていない。
また、半導体素子の構造によって、用いられるストッパ膜が異なることがある。しかしながら、ある種のストッパ膜に対する研磨選択性が高い研磨剤であっても、別の種のストッパ膜に対しては高い研磨選択性が得られないことが多い。このように、多くの研磨剤は汎用性に劣り、ストッパ膜の種類によって研磨剤を使い分けているのが現状である。
本発明は、上記の課題を解決しようとするものであり、ストッパ膜に対する絶縁膜の研磨選択性を向上させることが可能な研磨剤、研磨剤セット、及び基体の研磨方法を提供することを目的とする。
より具体的には、本発明は、ポリシリコン膜に対する絶縁膜の研磨選択性を向上させることが可能な研磨剤、研磨剤セット、及び基体の研磨方法を提供することを目的とする。また、本発明は、窒化珪素膜に対する絶縁膜の研磨選択性を向上させることが可能であり、汎用性に優れた研磨剤、研磨剤セット、及び基体の研磨方法を提供することを目的とする。
本発明に係る研磨剤の第1態様は、4価金属元素の水酸化物の粒子を含む砥粒と、エチレンジアミンにオキシエチレン及びオキシプロピレンの少なくとも一方が付加した化合物(以下、場合により「EOPO付加物」という。)と、液状媒体と、を含有する。
第1態様に係る研磨剤によれば、ストッパ膜に対する絶縁膜の研磨選択性を向上させることができる。これにより、ストッパ膜を用いて絶縁膜を良好に研磨することができる。
例えば、第1態様に係る研磨剤によれば、ポリシリコン膜に対する絶縁膜の研磨選択性を向上させることができる。これにより、ストッパ膜としてポリシリコン膜を用いた場合であっても、ポリシリコン膜を用いて絶縁膜を良好に研磨することができる。また、第1態様に係る研磨剤によれば、窒化珪素膜に対する絶縁膜の研磨選択性を向上させることができる。これにより、ストッパ膜として窒化珪素膜を用いた場合であっても、窒化珪素膜を用いて絶縁膜を良好に研磨することができる。このような第1態様に係る研磨剤は、ストッパ膜の種類によらず高い研磨選択性を得ることができるため、汎用性が高い。
また、第1態様に係る研磨剤によれば、シャロートレンチ分離絶縁膜、プリメタル絶縁膜、層間絶縁膜等を平坦化するCMP技術において、絶縁膜を高速に研磨すると共に高度な平坦面を得ることもできる。更に、第1態様に係る研磨剤によれば、絶縁膜を高速に研磨すると共に、絶縁膜を低研磨傷で研磨することもできる。
本発明に係る研磨剤の第2態様は、上記第1態様に係る研磨剤がポリビニルピロリドンを更に含有する態様である。ポリビニルピロリドンを前記EOPO付加物と併用することにより、前記第1態様と比較して、絶縁膜の研磨速度が更に向上し、ストッパ膜に対する絶縁膜の研磨選択性を更に向上させることができる。
本発明に係る研磨剤の第3態様は、上記第1態様に係る研磨剤がグリセリン化合物を更に含有する態様である。グリセリン化合物を前記EOPO付加物と併用することにより、前記第1態様と比較して、絶縁膜の研磨速度が更に向上すると共にストッパ膜の研磨速度が更に抑制されるため、ストッパ膜に対する絶縁膜の研磨選択性を更に向上させることができる。
本発明に係る研磨剤の第4態様は、上記第1態様に係る研磨剤がポリビニルピロリドンとグリセリン化合物とを更に含有する態様である。この場合、ポリビニルピロリドン及びグリセリン化合物の両方を前記EOPO付加物と併用することにより、前記第1態様と比較して、絶縁膜の研磨速度を更に向上させることができるため、ストッパ膜に対する絶縁膜の研磨選択性を更に向上させることができる。
グリセリン化合物は、ポリグリセリン、ジグリセリン誘導体及びポリグリセリン誘導体からなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましい。これらの化合物を前記EOPO付加物と併用することにより、ストッパ膜に対する絶縁膜の研磨選択性を更に向上させることができる。
なお、本明細書において、「ポリグリセリン」は、グリセリンの平均重合度が3以上であるポリグリセリン(3量体以上のポリグリセリン)である。また、本明細書において、「ジグリセリン誘導体」は、ジグリセリンに官能基を導入した化合物であり、「ポリグリセリン誘導体」は、グリセリンの平均重合度が3以上であるポリグリセリンに官能基を導入した化合物である。詳しくは後述する。
グリセリン化合物は、ポリグリセリン及びジグリセリン誘導体からなる群より選択される少なくとも一種であることがより好ましい。これにより、他のグリセリン化合物を使用した場合と比較して、絶縁膜の研磨速度を更に向上させることができる。
グリセリン化合物は、ポリグリセリンであることが更に好ましい。これにより、他のグリセリン化合物を使用した場合と比較して、ストッパ膜の研磨速度を更に抑制させることができる。特に、ストッパ膜がポリシリコン膜である場合に、ストッパ膜の研磨速度を更に抑制することができる。
また、この効果は、前記第4態様の研磨剤(ポリビニルピロリドン及びグリセリン化合物の両方を前記EOPO付加物と併用した研磨剤)において、より顕著である。すなわち、前記グリセリン化合物としてポリグリセリンを用いる場合に、絶縁膜の研磨速度が更に向上し、かつ、ストッパ膜の研磨速度が更に抑制されるため、結果として、ストッパ膜に対する絶縁膜の研磨選択性を更に向上させることができる。
4価金属元素の水酸化物の粒子は、希土類金属元素の水酸化物の粒子及び水酸化ジルコニウムの粒子からなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましい。これにより、絶縁膜の研磨速度を更に向上させることができる。
前記EOPO付加物の含有量は、研磨剤の全質量を基準として0.01質量%以上10質量%以下であることが好ましい。これにより、ストッパ膜の研磨速度を更に抑制させることができる。
また、本発明の一態様は、酸化珪素を含む被研磨面の研磨への前記研磨剤の使用に関し、例えば、酸化珪素を含む被研磨面を研磨して余分の酸化珪素を除去(remove)する研磨への前記研磨剤の使用に関する。すなわち、本発明に係る研磨剤の一態様は、酸化珪素を含む被研磨面を研磨するために使用されることが好ましく、例えば、酸化珪素を含む被研磨面を研磨して余分の酸化ケイ素を除去するために使用されることが好ましい。
本発明に係る研磨剤セットは、前記研磨剤の構成成分が第1の液と第2の液とに分けて保存され、第1の液が砥粒及び液状媒体を含み、第2の液が前記EOPO付加物及び液状媒体を含む。本発明に係る研磨剤セットによれば、本発明に係る研磨剤と同様の上記効果を得ることができる。
本発明に係る研磨剤セットは、第2の液がポリビニルピロリドンを更に含む態様であってもよく、第2の液がグリセリン化合物を更に含む態様であってもよい。
本発明に係る基体の研磨方法は、前記研磨剤を用いて基体の被研磨面を研磨する工程を備える。本発明に係る基体の研磨方法によれば、前記研磨剤を用いることにより、本発明に係る研磨剤と同様の上記効果を得ることができる。
本発明によれば、ストッパ膜に対する絶縁膜の研磨選択性を向上させることができる。これにより、ストッパ膜を用いて絶縁膜を良好に研磨することができる。
例えば、本発明によれば、ポリシリコン膜に対する絶縁膜の研磨選択性を向上させることができると共に窒化珪素膜に対する絶縁膜の研磨選択性を向上させることができる。これにより、ストッパ膜としてポリシリコン膜又は窒化珪素膜等を用いた場合であっても、ストッパ膜を用いて絶縁膜を良好に研磨することができる。
また、本発明によれば、半導体素子の製造における基体表面の平坦化技術として、例えば、シャロートレンチ分離絶縁膜、プリメタル絶縁膜、層間絶縁膜等を平坦化するCMP技術において、絶縁膜を高速に研磨すると共に高度な平坦面を得ることもできる。更に、本発明によれば、絶縁膜を高速に研磨すると共に、絶縁膜を低研磨傷で研磨することもできる。
以下、本発明の実施形態に係る研磨剤、研磨剤セット、及び、これらを用いた基体の研磨方法について詳細に説明する。
<定義>
本明細書において、「研磨剤」(abrasive)とは、研磨時に被研磨面に触れる組成物として定義される。「研磨剤」という語句自体は、研磨剤に含有される成分をなんら限定しない。後述するように、本実施形態に係る研磨剤は砥粒(abrasive grain)を含有する。砥粒は、「研磨粒子」(abrasiveparticle)ともいわれるが、本明細書では「砥粒」という。砥粒は、一般的には固体粒子であって、研磨時に、砥粒がもつ機械的作用及び砥粒(主に砥粒の表面)の化学的作用によって、除去対象物が除去(remove)されると考えられるが、これに限定されない。
<研磨剤>
本実施形態に係る研磨剤は、例えばCMP用の研磨剤(以下「CMP用研磨剤」という)として用いることができる。本実施形態に係る研磨剤の第1態様は、具体的には、(A)4価金属元素の水酸化物の粒子を含む砥粒と、(B)エチレンジアミンにオキシエチレン及びオキシプロピレンの少なくとも一方が付加した化合物(EOPO付加物)と、液状媒体と、を含有する。本実施形態に係る研磨剤の第2態様は、(A)4価金属元素の水酸化物の粒子を含む砥粒と、(B)前記EOPO付加物と、(C)ポリビニルピロリドンと、液状媒体と、を含有する。本実施形態に係る研磨剤の第3態様は、(A)4価金属元素の水酸化物の粒子を含む砥粒と、(B)前記EOPO付加物と、(D)グリセリン化合物と、液状媒体と、を含有する。本実施形態に係る研磨剤の第4態様は、(A)4価金属元素の水酸化物の粒子を含む砥粒と、(B)前記EOPO付加物と、(C)ポリビニルピロリドンと、(D)グリセリン化合物と、液状媒体と、を含有する。以下、必須成分、及び任意に添加できる成分について説明する。
[砥粒]
本実施形態に係る研磨剤は、砥粒として4価金属元素の水酸化物の粒子を含有する。前記4価金属元素の水酸化物の粒子は、シリカ又はセリアからなる従来の砥粒と比較して、絶縁膜の構成材料(例えば酸化珪素)との反応性が高く、絶縁膜を高研磨速度で研磨することができる。また、シリカ又はセリアからなる従来の砥粒と比較して、低研磨傷で研磨することができる。
本実施形態に係る研磨剤において4価金属元素の水酸化物の粒子と併用することのできる他の砥粒としては、シリカ、アルミナ、セリア等の粒子が挙げられる。また、4価金属元素の水酸化物の粒子を含む砥粒として、4価金属元素の水酸化物とシリカとを含む複合粒子等を用いることもできる。
前記砥粒において前記4価金属元素の水酸化物の粒子の含有量は、砥粒全体を基準として80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上が更に好ましく、98質量%以上が特に好ましく、99質量%以上が極めて好ましい。研磨剤の調製が容易であると共に研磨特性にも更に優れる観点から、前記砥粒が前記4価金属元素の水酸化物の粒子からなる(砥粒の100質量%が前記4価金属元素の水酸化物の粒子である)ことが最も好ましい。
4価金属元素の水酸化物の粒子は、希土類金属元素の水酸化物の粒子及び水酸化ジルコニウムの粒子からなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましい。4価金属元素の水酸化物の粒子としては、絶縁膜の研磨速度を更に向上させる観点から、希土類金属元素の水酸化物の粒子が好ましい。4価を取りうる希土類金属元素としては、セリウム、プラセオジム、テルビウム等のランタノイドなどが挙げられ、中でも、絶縁膜の研磨速度を更に向上させる観点から、セリウムが好ましい。希土類金属元素の水酸化物の粒子と水酸化ジルコニウムの粒子とを併用してもよく、希土類金属元素の水酸化物の粒子から二種以上を選択して使用することもできる。
4価金属元素の水酸化物の粒子を作製する方法としては、4価金属元素の塩とアルカリ液とを混合する手法が使用できる。この方法は、例えば、「希土類の科学」〔足立吟也編、株式会社化学同人、1999年〕304〜305頁に説明されている。
4価金属元素の塩としては、従来公知のものを特に制限なく使用でき、M(SO、M(NH(NO、M(NH(SO(Mは希土類金属元素を示す。)、Zr(SO・4HO等が挙げられる。Mとしては、化学的に活性なセリウム(Ce)が好ましい。
アルカリ液としては、従来公知のものを特に制限なく使用できる。アルカリ液中の塩基性化合物としては、イミダゾール、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、グアニジン、トリエチルアミン、ピリジン、ピペリジン、ピロリジン、キトサン等の有機塩基;アンモニア、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム等の無機塩基などが挙げられる。これらのうち、絶縁膜の研磨速度を更に向上させる観点から、アンモニア及びイミダゾールが好ましく、イミダゾールがより好ましい。前記方法で合成された4価金属元素の水酸化物の粒子は、洗浄して金属不純物を除去できる。4価金属元素の水酸化物の粒子の洗浄では、遠心分離等で固液分離を数回繰り返す方法などが使用できる。また、遠心分離、透析、限外濾過、イオン交換樹脂等によるイオンの除去などの工程で洗浄することもできる。
前記で得られた4価金属元素の水酸化物の粒子が凝集している場合、適切な方法で液状媒体(例えば水)中に分散させることが好ましい。液状媒体に4価金属元素の水酸化物の粒子を分散させる方法としては、通常の撹拌機による分散処理;ホモジナイザ、超音波分散機、湿式ボールミル等による機械的な分散;遠心分離、透析、限外ろ過、イオン交換樹脂等による夾雑イオンの除去などが挙げられる。分散方法及び粒径制御方法については、例えば、「分散技術大全集」〔株式会社情報機構、2005年7月〕第3章「各種分散機の最新開発動向と選定基準」に記述されている方法を用いることができる。また、前記の洗浄処理を行って、4価金属元素の水酸化物の粒子を含む分散液の電気伝導度を下げる(例えば500mS/m以下)ことによっても、4価金属元素の水酸化物の粒子の分散性を高めることができるため、前記洗浄処理を分散処理として適用又は併用してもよい。
なお、上記で説明したような砥粒の製造方法については、上記特許文献8に詳しく説明されており、その説明は本発明に引用される。
4価金属元素の水酸化物の粒子を含む砥粒は、絶縁膜の研磨速度を更に向上させる観点から、該砥粒の含有量を1.0質量%に調整した水分散液において、波長400nmの光に対して吸光度1.00以上を与えるものであることが好ましい。なお、砥粒の含有量を所定量に調整した「水分散液」とは、所定量の砥粒と水とを含む液を意味する。研磨速度の向上効果が得られる理由は必ずしも明らかではないが、本発明者は次のように考えている。すなわち、4価金属元素の水酸化物の製造条件等に応じて、4価の金属(M4+)、1〜3つの水酸基(OH)及び1〜3つの陰イオン(Xc−)からなるM(OH)(式中、a+b×c=4である)を含む粒子が砥粒の一部として生成するものと考えられる(なお、このような粒子も4価金属元素の水酸化物の粒子である)。M(OH)では、電子吸引性の陰イオン(Xc−)が作用して水酸基の反応性が向上しており、M(OH)の存在量が増加するに伴い研磨速度が向上するものと考えられる。そして、M(OH)を含む粒子が波長400nmの光を吸光するため、M(OH)の存在量が増加して波長400nmの光に対する吸光度が高くなるに伴い、研磨速度が向上するものと考えられる。
なお、4価金属元素の水酸化物の粒子を含む砥粒がM(OH)を含むことは、砥粒を純水でよく洗浄した後にFT−IR ATR法(Fourier transform Infra Red Spectrometer Attenuated Total Reflection法、フーリエ変換赤外分光光度計全反射測定法)で陰イオン(Xc−)に該当するピークを検出する方法により確認できる。XPS法(X-ray Photoelectron Spectroscopy、X線光電子分光法)により、陰イオン(Xc−)の存在を確認することもできる。
また、前記砥粒は、絶縁膜の研磨速度を更に向上させる観点から、該砥粒の含有量を0.0065質量%に調整した水分散液において、波長290nmの光に対して吸光度1.000以上を与えるものであることが好ましい。研磨速度の向上効果が得られる理由は必ずしも明らかではないが、本発明者は次のように考えている。すなわち、4価金属元素の水酸化物の製造条件等に応じて生成する、M(OH)を含む粒子は、計算上、波長290nm付近に吸収のピークを有し、例えばCe4+(OHNO からなる粒子は波長290nmに吸収のピークを有する。そのため、M(OH)の存在量が増加して波長290nmの光に対する吸光度が高くなるに伴い、研磨速度が向上するものと考えられる。
また、前記4価金属元素の水酸化物(M(OH))は、波長450nm以上、特に波長450〜600nmの光に対して吸光を有していない傾向がある。従って、不純物を含むことにより研磨に対して悪影響が生じることを抑制して、更に優れた研磨速度で絶縁膜を研磨する観点で、前記砥粒は、該砥粒の含有量を0.0065質量%に調整した水分散液において、波長450〜600nmの光に対して吸光度0.010以下を与えるものであることが好ましい。
前記砥粒は、絶縁膜の研磨速度を更に向上させる観点から、該砥粒の含有量を1.0質量%に調整した水分散液において、波長500nmの光に対して光透過率50%/cm以上を与えるものであることが好ましい。研磨速度の向上効果が得られる理由は必ずしも明らかではないが、本発明者は次のように考えている。すなわち、4価金属元素の水酸化物の粒子がもつ砥粒としての作用は、機械的作用よりも化学的作用の方が支配的になると考えられる。そのため、砥粒の大きさよりも砥粒の数の方が、より研磨速度に寄与すると考えられる。
砥粒の含有量を1.0質量%とした水分散液において光透過率が低い場合、その水分散液に存在する砥粒は、粒子径の大きい粒子(以下「粗大粒子」という。)が相対的に多く存在すると考えられる。このような砥粒を含む研磨剤に添加剤を添加すると、粗大粒子を核として他の粒子が凝集する。その結果として、単位面積当たりの被研磨面に作用する砥粒数(有効砥粒数)が減少し、被研磨面に接する砥粒の比表面積が減少するため、研磨速度が低下する場合があると考えられる。
一方、砥粒の含有量1.0質量%の水分散液において光透過率が高い場合、その水分散液に存在する砥粒は、前記「粗大粒子」が少ない状態であると考えられる。このように粗大粒子の存在量が少ない場合は、研磨剤に添加剤を添加しても、凝集の核になるような粗大粒子が少ないため、砥粒同士の凝集が抑えられるか、又は、凝集粒子の大きさが小さくなる。その結果として、単位面積当たりの被研磨面に作用する砥粒数(有効砥粒数)が維持され、被研磨面に接する砥粒の比表面積が維持されるため、研磨速度の低下が生じ難くなり、絶縁膜の研磨速度が向上し易くなると考えられる。
水分散液における吸光度及び光透過率は、例えば、日立製作所(株)製の分光光度計(装置名:U3310)を用いて測定できる。具体的には例えば、砥粒の含有量を1.0質量%又は0.0065質量%に調整した水分散液を測定サンプルとして調製する。この測定サンプルを1cm角のセルに約4mL入れ、装置内にセルを設置する。次に、波長200〜600nmの範囲で吸光度測定を行い、得られたチャートから吸光度及び光透過率を判断する。
研磨剤に含まれる砥粒が水分散液において与える吸光度及び光透過率は、砥粒以外の固体成分、及び、水以外の液体成分を除去した後、所定の砥粒含有量の水分散液を調製し、当該水分散液を用いて測定することができる。研磨剤に含まれる成分によっても異なるが、固体成分又は液体成分の除去には、数千G以下の重力加速度をかけられる遠心機を用いた遠心分離、数万G以上の重力加速度をかけられる超遠心機を用いた超遠心分離等の遠心分離法;分配クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー、ゲル浸透クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー等のクロマトグラフィー法;自然ろ過、減圧ろ過、加圧ろ過、限外ろ過等のろ過法;減圧蒸留、常圧蒸留等の蒸留法などを用いることができ、これらを適宜組み合わせてもよい。
例えば、重量平均分子量が数万以上(例えば5万以上)の化合物を含む場合は、クロマトグラフィー法、ろ過法等が挙げられ、ゲル浸透クロマトグラフィー、限外ろ過が好ましい。ろ過法を用いる場合は、研磨剤に含まれる砥粒は、適切な条件の設定により、フィルタを通過させることができる。重量平均分子量が数万以下(例えば5万未満)の化合物を含む場合は、クロマトグラフィー法、ろ過法、蒸留法等が挙げられ、ゲル浸透クロマトグラフィー、限外ろ過、減圧蒸留が好ましい。複数種類の砥粒が含まれる場合、ろ過法、遠心分離法等が挙げられ、ろ過法の場合はろ液に、遠心分離法の場合は液相に、4価金属元素の水酸化物の粒子がより多く含まれる。
前記クロマトグラフィー法で砥粒を分離する方法としては、例えば、下記条件によって、砥粒成分及び/又は他成分を分取することができる。
試料溶液:研磨剤100μL
検出器:株式会社日立製作所社製UV−VISディテクター、商品名「L−4200」、波長:400nm
インテグレータ:株式会社日立製作所社製GPCインテグレータ、商品名「D−2500」
ポンプ:株式会社日立製作所社製、商品名「L−7100」
カラム:日立化成工業株式会社製水系HPLC用充填カラム、商品名「GL−W550S」
溶離液:脱イオン水
測定温度:23℃
流速:1mL/分(圧力:40〜50kg/cm程度)
測定時間:60分
なお、クロマトグラフィーを行う前に、脱気装置を用いて溶離液の脱気処理を行うことが好ましいが、使用できない場合は溶離液を事前に超音波等で脱気処理することが好ましい。
研磨剤に含まれる成分によっては、上記条件では砥粒成分を分取できない可能性があるが、その場合、試料溶液量、カラム種類、溶離液種類、測定温度、流速等を最適化することで分離することができる。また、研磨剤のpHを調整することで研磨剤に含まれる成分の留出時間を調整し、砥粒と分離できる可能性がある。研磨剤に不溶成分がある場合、必要に応じて、ろ過、遠心分離等で不溶成分を除去することが好ましい。
研磨剤中の砥粒の平均粒径の下限は、絶縁膜の研磨速度を更に向上させる観点から、1nm以上が好ましく、2nm以上がより好ましく、3nm以上が更に好ましい。砥粒の平均粒径の上限は、被研磨面に傷がつくことを更に抑制する観点から、300nm以下が好ましく、250nm以下がより好ましく、200nm以下が更に好ましい。上記観点から、砥粒の平均粒径は、1nm以上300nm以下であることがより好ましい。
砥粒の「平均粒径」とは、研磨剤中の砥粒の平均二次粒子径を意味する。砥粒の平均粒径の測定に際しては、光回折散乱式粒度分布計(例えば、COULTER Electronics社製、商品名:COULTER N4SD、又は、マルバーンインスツルメンツ社製、商品名:ゼータサイザー3000HSA)などを使用できる。
砥粒の含有量の下限は、絶縁膜の研磨速度を更に向上させる観点から、研磨剤の全質量を基準として0.005質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましく、0.02質量%以上が更に好ましく、0.04質量%以上が特に好ましい。砥粒の含有量の上限は、研磨剤の保存安定性を高くする観点から、研磨剤の全質量を基準として20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下が更に好ましい。上記観点から、前記砥粒の含有量は、研磨剤の全質量を基準として0.005質量%以上20質量%以下であることがより好ましい。
また、砥粒の含有量を更に少なくすることにより、コスト及び研磨傷を更に低減できる点で好ましい。砥粒の含有量が少なくなると、絶縁膜等に対する研磨速度も低下する傾向がある。一方、4価金属元素の水酸化物を含む砥粒は、少量でも所定の研磨速度を得ることができるため、研磨速度と、砥粒の含有量を少なくすることによる利点とのバランスをとりつつ、砥粒の含有量を更に低減することができる。このような観点で、砥粒の含有量は、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、1質量%以下が更に好ましく、0.5質量%以下が特に好ましく、0.3質量%以下が極めて好ましい。
[添加剤]
本実施形態に係る研磨剤は、添加剤を含有する。ここで「添加剤」とは、研磨速度、研磨選択性等の研磨特性;砥粒の分散性、保存安定性等の研磨剤特性などを調整するために、液状媒体及び砥粒以外に研磨剤が含有する物質を指す。
{第1の添加剤}
本実施形態に係る研磨剤は、第1の添加剤として、エチレンジアミンにオキシエチレン及びオキシプロピレンの少なくとも一方が付加した化合物(EOPO付加物)を含有する。第1の添加剤は、ストッパ膜に対する絶縁膜の研磨選択性を向上させる効果がある。第1の添加剤がストッパ膜と相互作用することにより、砥粒とストッパ膜との相互作用を減少させることができると考えられる。
「エチレンジアミンにオキシエチレン及びオキシプロピレンの少なくとも一方が付加する」とは、エチレンジアミンの窒素原子に結合する水素原子が、オキシエチレン及びオキシプロピレンの少なくとも一方によって置換されることを意味する。窒素原子に結合する4つの水素原子をエチレンジアミンが有しているため、4つの置換基をエチレンジアミンに付加することができるが、少なくとも一つの置換基が付加した構造であればよい。置換基としては、オキシエチレン−オキシプロピレン共重合体、オキシエチレン単独重合体、オキシプロピレン単独重合体、オキシエチレン(単体)、オキシプロピレン(単体)等が挙げられる。第1の添加剤は、エチレンジアミンにオキシエチレン−オキシプロピレン共重合体が付加した構造を有する化合物を含むことが好ましい。
第1の添加剤としては、下記一般式(I)で表される化合物(Sequential poloxamine)、下記一般式(II)で表される化合物(Reversepoloxamine)等が挙げられる。
Figure 2015205348

[式(I)中、a11、a12、a13及びa14は、それぞれ独立に0〜1000の整数を示し、b11、b12、b13及びb14は、それぞれ独立に0〜500の整数を示す。但し、a11、a12、a13、a14、b11、b12、b13及びb14の少なくとも一つは1以上である。]
Figure 2015205348

[式(II)中、a21、a22、a23及びa24は、それぞれ独立に0〜1000の整数を示し、b21、b22、b23及びb24は、それぞれ独立に0〜500の整数を示す。但し、a21、a22、a23、a24、b21、b22、b23及びb24の少なくとも一つは1以上である。]
一般式(I)で表される化合物において、a11、a12、a13及びa14は、互いに同一の数値でもよく、互いに異なる数値でもよい。一般式(I)で表される化合物において、b11、b12、b13及びb14は、互いに同一の数値でもよく、互いに異なる数値でもよい。一般式(II)で表される化合物において、a21、a22、a23及びa24は、互いに同一の数値でもよく、互いに異なる数値でもよい。一般式(II)で表される化合物において、b21、b22、b23及びb24は、互いに同一の数値でもよく、互いに異なる数値でもよい。
一般式(I)で表される化合物は、a11、a12、a13及びa14の少なくとも一つが1以上であり、且つ、b11、b12、b13及びb14の少なくとも一つが1以上である化合物を含むことが好ましい。一般式(II)で表される化合物は、a21、a22、a23及びa24の少なくとも一つが1以上であり、且つ、b21、b22、b23及びb24の少なくとも一つが1以上である化合物を含むことが好ましい。一般式(I)で表される化合物は、エチレンジアミン由来の窒素原子に結合したオキシエチレン−オキシプロピレン共重合体を少なくとも一つ含むことが好ましい。一般式(II)で表される化合物は、エチレンジアミン由来の窒素原子に結合したオキシエチレン−オキシプロピレン共重合体を少なくとも一つ含むことが好ましい。
前記オキシエチレン−オキシプロピレン共重合体としては、オキシエチレンとオキシプロピレンのランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体等が挙げられ、中でも、製造の容易性及び入手容易性の観点から、ブロック共重合体が好ましい。
第1の添加剤としては、ポロキサミン(Poloxamin)類を含むことが好ましい。ここでポロキサミン類とは、ポロキサミン及びリバースポロキサミンを指す。ポロキサミンは、オキシエチレン−オキシプロピレン共重合体(エチレングリコール−プロピレングリコール共重合体)におけるオキシプロピレン部分がエチレンジアミンの窒素原子に結合した化合物(上記式(I)においてa11、a12、a13、a14、b11、b12、b13及びb14が1以上である化合物)である。ポロキサミンとしては、Tetronicシリーズ(BASF社製)、アデカプルロニックTRシリーズ(ADEKA社製)等を用いることができる。
リバースポロキサミンは、オキシエチレン−オキシプロピレン共重合体におけるオキシエチレン部分がエチレンジアミンの窒素原子に結合した化合物(上記式(II)においてa21、a22、a23、a24、b21、b22、b23及びb24が1以上である化合物)である。このような化合物としては、アデカプルロニックTRシリーズのリバースタイプ(ADEKA社製)等を用いることができる。
第1の添加剤におけるオキシプロピレン部分(プロピレングリコール部分)の分子量の合計の上限は、ストッパ膜に対する絶縁膜の研磨選択性を更に向上させる観点から、2.0万以下が好ましく、1.5万以下がより好ましく、1.0万以下が更に好ましい。第1の添加剤におけるオキシプロピレン部分の分子量の合計の下限は、ストッパ膜に対する絶縁膜の研磨選択性を更に向上させる観点から、300以上が好ましく、500以上がより好ましく、700以上が更に好ましく、1200以上が特に好ましい。上記の観点から、第1の添加剤におけるオキシプロピレン部分の分子量の合計は、300以上2.0万以下であることがより好ましい。
第1の添加剤におけるオキシエチレン部分(エチレングリコール部分)全体の質量比率(総分子中に占めるオキシエチレン部分全体の質量割合)の上限は、ストッパ膜に対する絶縁膜の研磨選択性を更に向上させる観点から、80%以下が好ましく、70%以下がより好ましく、60%以下が更に好ましい。第1の添加剤におけるオキシエチレン部分全体の質量比率の下限は、ストッパ膜に対する絶縁膜の研磨選択性を更に向上させる観点から、3%以上が好ましく、5%以上がより好ましく、10%以上が更に好ましい。上記の観点から、第1の添加剤におけるオキシエチレン部分全体の質量比率は、3%以上80%以下であることがより好ましい。
第1の添加剤におけるオキシプロピレン部分の分子量、及び、オキシエチレン部分全体の質量比率は、下記の方法により測定することができる。
使用機器:FT−NMR(例えば、JEOL製 500MHz)
溶媒:重クロロホルム、重DMSO(ジメチルスルホキシド)又は重水
測定方法:第1の添加剤について1H−NMRスペクトルを測定し、シグナルを積算することで、オキシエチレン部分と、オキシプロピレン部分と、エチレンジアミン部分とのモル比を算出する。
一般式(I)で表される化合物としては、下記一般式(Ia)で表される化合物等が挙げられる。一般式(II)で表される化合物としては、下記(IIa)で表される化合物等が挙げられる。
Figure 2015205348

[式(Ia)中、a11、a12、a13及びa14は、それぞれ独立に0〜1000の整数を示し、b11、b12、b13及びb14は、それぞれ独立に0〜500の整数を示す。但し、a11、a12、a13、a14、b11、b12、b13及びb14の少なくとも一つは1以上である。]
Figure 2015205348

[式(IIa)中、a21、a22、a23及びa24は、それぞれ独立に0〜1000の整数を示し、b21、b22、b23及びb24は、それぞれ独立に0〜500の整数を示す。但し、a21、a22、a23、a24、b21、b22、b23及びb24の少なくとも一つは1以上である。]
式(I)におけるa11、a12、a13及びa14、並びに、式(II)におけるa21、a22、a23及びa24のそれぞれは、ストッパ膜に対する絶縁膜の研磨選択性を更に向上させる観点から、1以上が好ましく、2以上がより好ましい。a11、a12、a13、a14、a21、a22、a23及びa24のそれぞれは、ストッパ膜に対する絶縁膜の研磨選択性を更に向上させる観点から、910以下が好ましく、680以下がより好ましく、400以下が更に好ましい。
式(I)におけるb11、b12、b13及びb14、並びに、式(II)におけるb21、b22、b23及びb24のそれぞれは、ストッパ膜に対する絶縁膜の研磨選択性を更に向上させる観点から、1以上が好ましく、2以上がより好ましい。b11、b12、b13、b14、b21、b22、b23及びb24のそれぞれは、ストッパ膜に対する絶縁膜の研磨選択性を更に向上させる観点から、350以下が好ましく、320以下がより好ましく、300以下が更に好ましい。
第1の添加剤は、ストッパ膜に対する絶縁膜の研磨選択性を調整する目的で、単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。また、重合度等が異なる複数の化合物を組み合わせて使用することもできる。
第1の添加剤の含有量の下限は、絶縁膜の研磨速度を更に向上させる観点から、研磨剤の全質量を基準として0.01質量%以上が好ましく、0.03質量%以上がより好ましく、0.05質量%以上が更に好ましく、0.10質量%以上が特に好ましい。第1の添加剤の含有量の上限は、研磨剤の粘度が過剰に高くなることを抑制する観点から、研磨剤の全質量を基準として10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。上記の観点で、第1の添加剤の含有量は、研磨剤の全質量を基準として0.01質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。なお、第1の添加剤として複数の化合物を用いる場合、各化合物の含有量の合計が前記範囲を満たしていることが好ましい。
{第2の添加剤}
本実施形態に係る研磨剤は、第2の添加剤として、(C)ポリビニルピロリドン及び(D)グリセリン化合物からなる群より選択される少なくとも一種を含有することが好ましい。
第2の添加剤は、それぞれ単独に、絶縁膜の研磨速度を更に向上させる効果がある。ポリビニルピロリドンについては、砥粒と絶縁膜との相互作用が増大するため、絶縁膜の研磨速度が更に向上すると考えられる。また、グリセリン化合物については、グリセリン化合物の水酸基が砥粒及び絶縁膜と相互作用して砥粒及び絶縁膜が水素結合で橋渡しされることにより、砥粒と絶縁膜との相互作用が増大するため、絶縁膜の研磨速度が更に向上すると考えられる。
第2の添加剤は、ストッパ膜に対する絶縁膜の研磨選択性、平坦性及び絶縁膜の研磨速度を調整する目的で、それぞれ単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。また、重合度等が異なる複数の化合物を組み合わせて使用することもできる。
(ポリビニルピロリドン)
前記ポリビニルピロリドンの重合平均分子量の上限は、絶縁膜の研磨速度を更に向上させる観点から、200万以下が好ましく、150万以下がより好ましく、100万以下が更に好ましく、75万以下が特に好ましく、50万以下が極めて好ましい。ポリビニルピロリドンの重合平均分子量の下限は、絶縁膜の研磨速度を更に向上させる観点から、1000以上が好ましく、2000以上がより好ましく、5000以上が更に好ましく、1万以上が特に好ましい。上記の観点から、ポリビニルピロリドンの重量平均分子量は、1000以上200万以下であることがより好ましい。
なお、ポリビニルピロリドンの重量平均分子量は、例えば、標準ポリスチレンの検量線を用いてゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により下記の条件で測定することができる。
使用機器:日立L−6000型〔株式会社日立製作所製〕
カラム:ゲルパックGL−R420+ゲルパックGL−R430+ゲルパックGL−R440〔日立化成工業株式会社製 商品名、計3本〕
溶離液:テトラヒドロフラン
測定温度:40℃
流量:1.75mL/分
検出器:L−3300RI〔株式会社日立製作所製〕
ポリビニルピロリドンの含有量の下限は、絶縁膜の研磨速度を更に向上させる観点から、研磨剤の全質量を基準として0.001質量%以上が好ましく、0.002質量%以上がより好ましく、0.005質量%以上が更に好ましく、0.008質量%以上が特に好ましい。ポリビニルピロリドンの含有量の上限は、研磨剤の粘度が過剰に高くなることを抑制する観点から、研磨剤の全質量を基準として10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。上記の観点で、ポリビニルピロリドンの含有量は、研磨剤の全質量を基準として0.001質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。なお、ポリビニルピロリドンとして複数の化合物を用いる場合、各化合物の含有量の合計が前記範囲を満たしていることが好ましい。
(グリセリン化合物)
グリセリン化合物とは、グリセリン骨格を有する化合物である。グリセリン化合物は、ポリグリセリン、ジグリセリン誘導体及びポリグリセリン誘導体からなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましく、ポリグリセリン及びジグリセリン誘導体からなる群より選択される少なくとも一種であることがより好ましく、ポリグリセリンであることが更に好ましい。
ポリグリセリンは、グリセリンの平均重合度が3以上であるポリグリセリン(平均3量体以上であるポリグリセリン)として定義される。ポリグリセリンの平均重合度は、絶縁膜の研磨速度を更に向上させる観点から、4以上が好ましい。ポリグリセリンの平均重合度の上限は特に制限はないが、入手容易性の観点から、100以下が好ましく、50以下がより好ましく、30以下が更に好ましい。
前記ポリグリセリンとしては、ポリグリセリン#310、ポリグリセリン#500、ポリグリセリン#750(商品名:いずれも阪本薬品工業株式会社製)等が挙げられる。
ジグリセリン誘導体は、ジグリセリンに官能基を導入した化合物である。官能基としては、ポリオキシアルキレン基、脂肪酸エステル基、エーテル基等が挙げられる。ポリオキシアルキレン基を導入したジグリセリン誘導体としては、ポリオキシアルキレンジグリセリルエーテル等が挙げられる。脂肪酸エステル基を導入したジグリセリン誘導体としては、ジグリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。エーテル基を導入したジグリセリン誘導体としては、ジグリセリンアルキルエーテル、ジグリセリンポリアルキルエーテル等が挙げられる。
ジグリセリン誘導体は、ポリオキシアルキレンジグリセリルエーテル、ジグリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリンアルキルエーテル及びジグリセリンポリアルキルエーテルからなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましい。これにより、絶縁膜の研磨速度を更に向上させ、ストッパ膜に対する絶縁膜の研磨選択性を更に向上させることができる。
前記ポリオキシアルキレンジグリセリルエーテルとしては、ポリオキシエチレンジグリセリルエーテル(阪本薬品工業株式会社製、SC−Eシリーズ、SC−Pシリーズ等)、ポリオキシプロピレンジグリセリルエーテル(坂本薬品工業株式会社製、SY−DPシリーズ等)などが挙げられる。ジグリセリン脂肪酸エステルとしては、阪本薬品工業株式会社製のMCA−150等が挙げられる。ジグリセリンアルキルエーテルとしては、3−[2−アルコキシ−1−(メトキシメチル)エトキシ]−1,2−プロパンジオール等が挙げられる。
ポリグリセリン誘導体は、グリセリンの平均重合度が3以上であるポリグリセリンに官能基を導入した化合物である。官能基としては、ポリオキシアルキレン基、脂肪酸エステル基、エーテル基等が挙げられる。ポリグリセリン誘導体におけるポリグリセリン骨格の平均重合度は、絶縁膜の研磨速度を更に向上させる観点から、3以上であり、4以上が好ましい。ポリグリセリン誘導体におけるポリグリセリン骨格の平均重合度の上限は、製造上の観点から、100以下が好ましく、50以下がより好ましく、30以下が更に好ましい。
ポリグリセリン誘導体としては、ポリオキシアルキレンポリグリセリルエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリンアルキルエーテル等が挙げられる。ポリオキシアルキレンポリグリセリルエーテルとしては、ポリオキシエチレンポリグリセリルエーテル(坂本薬品工業株式会社製、#310−EO60等)、ポリオキシプロピレンポリグリセリルエーテル等が挙げられる。ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、グリセリン脂肪酸エステル(坂本薬品工業株式会社製、SYグリスターシリーズ等)等が挙げられる。ポリグリセリンアルキルエーテルとしては、ペンタグリセリンドデシルエーテル等が挙げられる。
グリセリン化合物の重合平均分子量の上限は、特に制限はないが、作業性及び起泡性の観点から、5000以下が好ましく、3000以下がより好ましく、2000以下が更に好ましい。グリセリン化合物の重合平均分子量の下限は、絶縁膜の研磨速度を更に向上させる観点から、250以上が好ましく、400以上がより好ましく、500以上が更に好ましい。上記の観点から、グリセリン化合物の重量平均分子量は、250以上5000以下であることがより好ましい。
なお、グリセリン化合物の重量平均分子量は、例えば、ポリビニルピロリドンの重量平均分子量と同様の条件で、標準ポリスチレンの検量線を用いてゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により測定することができる。
グリセリン化合物の含有量の下限は、絶縁膜の研磨速度を更に向上させる観点から、研磨剤の全質量を基準として0.001質量%以上が好ましく、0.002質量%以上がより好ましく、0.005質量%以上が更に好ましく、0.008質量%以上が特に好ましい。グリセリン化合物の含有量の上限は、研磨剤の粘度が過剰に高くなることを抑制する観点から、研磨剤の全質量を基準として10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。上記の観点で、グリセリン化合物の含有量は、研磨剤の全質量を基準として0.001質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。なお、グリセリン化合物として複数の化合物を用いる場合、各化合物の含有量の合計が前記範囲を満たしていることが好ましい。
なお、第2の添加剤として、ポリビニルピロリドンとグリセリン化合物とを併用する場合、第2の添加剤の含有量(ポリビニルピロリドンの含有量とグリセリン化合物の含有量との合計)の下限は、絶縁膜の研磨速度を更に向上させる観点から、研磨剤の全質量を基準として0.001質量%以上が好ましく、0.002質量%以上がより好ましく、0.005質量%以上が更に好ましく、0.008質量%以上が特に好ましい。第2の添加剤の含有量の上限は、研磨剤の粘度が過剰に高くなることを抑制する観点から、研磨剤の全質量を基準として10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。上記の観点で、前記第2の添加剤の含有量は、研磨剤の全質量を基準として0.001質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。
{その他の添加剤}
本実施形態に係る研磨剤は、研磨速度等の研磨特性;砥粒の分散性、保存安定性等の研磨剤特性などを調整する目的で、前記第1の添加剤及び第2の添加剤とは異なるその他の添加剤を更に含有していてもよい。
その他の添加剤としては、カルボン酸、アミノ酸、水溶性高分子、酸化剤(例えば過酸化水素)等が挙げられ、これらは単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
その他の添加剤を使用する場合、その含有量は、砥粒の沈降を抑制しつつ添加剤の添加効果が得られる観点から、研磨剤の全質量を基準として0.0001質量%以上10質量%以下が好ましい。なお、その他の添加剤として複数の化合物を用いる場合、各化合物の含有量の合計が前記範囲を満たしていることが好ましい。
カルボン酸は、pHを安定化させると共に絶縁膜の研磨速度を更に向上させる効果がある。カルボン酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、乳酸等が挙げられる。
アミノ酸は、前記砥粒(特に、前記4価金属元素の水酸化物の粒子)の分散性を向上させ、絶縁膜の研磨速度を更に向上させる効果がある。アミノ酸としては、アルギニン、リシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、ヒスチジン、プロリン、チロシン、トリプトファン、セリン、トレオニン、グリシン、アラニン、β−アラニン、メチオニン、システイン、フェニルアラニン、ロイシン、バリン、イソロイシン等が挙げられる。
水溶性高分子は、平坦性、面内均一性、窒化珪素膜に対する酸化珪素膜の研磨選択性(酸化珪素膜の研磨速度/窒化珪素膜の研磨速度)、ポリシリコン膜に対する酸化珪素膜の研磨選択性等の研磨特性を調整する効果がある。ここで、「水溶性高分子」とは、水100gに対して0.1g以上溶解する高分子として定義する。なお、第1の添加剤及び第2の添加剤に該当する高分子は「水溶性高分子」に含まれないものとする。
前記水溶性高分子としては、特に制限はなく、アルギン酸、ペクチン酸、カルボキシメチルセルロース、寒天、カードラン、デキストリン、シクロデキストリン、キトサン、キトサン誘導体、プルラン等の多糖類;
ポリビニルアルコール、ポリアクロレイン等のビニル系ポリマ;
ポリアクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド等のアクリル系ポリマ;
ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン、ポリジアリルアミン類等のアミンポリマ;
ポリエチレングリコール、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合物などが挙げられる。前記水溶性高分子の中でも、ストッパ膜に対する絶縁膜の研磨選択性を更に向上させる観点から、ポリアリルアミンが好ましい。水溶性高分子は、単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
前記水溶性高分子の重合平均分子量は、ストッパ膜に対する絶縁膜の研磨選択性を更に向上させる観点から、100以上が好ましく、300以上がより好ましく、500以上が更に好ましく、1000以上が特に好ましい。前記水溶性高分子の重合平均分子量は、ストッパ膜に対する絶縁膜の研磨選択性を更に向上させる観点から、100万以下が好ましく、70万以下がより好ましく、50万以下が更に好ましく、30万以下が特に好ましい。なお、前記水溶性高分子の重量平均分子量は、第2の添加剤の重量平均分子量と同様の方法により測定することができる。
前記水溶性高分子を使用する場合、前記水溶性高分子の含有量は、砥粒の沈降を抑制しつつ水溶性高分子の添加効果が得られる観点から、研磨剤の全質量を基準として0.0001質量%以上が好ましく、0.00015質量%以上がより好ましく、0.0002質量%以上が更に好ましい。前記水溶性高分子の含有量は、砥粒の沈降を抑制しつつ水溶性高分子の添加効果が得られる観点から、研磨剤の全質量を基準として10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下が更に好ましく、1質量%以下が特に好ましい。前記水溶性高分子として複数の化合物を用いる場合、各化合物の含有量の合計が前記範囲を満たしていることが好ましい。
[液状媒体]
本実施形態に係る研磨剤における液状媒体は、特に制限はないが、脱イオン水、超純水等の水が好ましい。液状媒体の含有量は、他の構成成分の含有量を除いた研磨剤の残部でよく、特に限定されない。
[研磨剤の特性]
本実施形態に係る研磨剤のpH(25℃)は、研磨剤の保存安定性に優れる観点、及び、絶縁膜の研磨速度を更に向上させる観点から、3.0以上12.0以下が好ましい。研磨剤のpHは、主に研磨速度に影響する。pHの下限は、絶縁膜の研磨速度を更に向上させる観点から、4.0以上がより好ましく、4.5以上が更に好ましく、5.0以上が特に好ましい。また、pHの上限は、絶縁膜の研磨速度を更に向上させる観点から、11.0以下がより好ましく、10.0以下が更に好ましい。
研磨剤のpHは、無機酸、有機酸等の酸成分;アンモニア、水酸化ナトリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、イミダゾール等のアルカリ成分などの添加によって調整可能である。また、pHを安定化させるため、緩衝液を添加してもよい。このような緩衝液としては、酢酸塩緩衝液、フタル酸塩緩衝液等が挙げられる。
本実施形態に係る研磨剤のpHは、pHメータ(例えば、電気化学計器株式会社製の型番PHL−40)で測定することができる。具体的には例えば、フタル酸塩pH緩衝液(pH4.01)と中性リン酸塩pH緩衝液(pH6.86)を標準緩衝液として用いてpHメータを2点校正した後、pHメータの電極を研磨剤に入れて、2分以上経過して安定した後の値を測定する。このとき、標準緩衝液と研磨剤の液温は共に25℃とする。
本実施形態に係る研磨剤は、砥粒と、第1の添加剤と、液状媒体とを少なくとも含む一液式研磨剤として保存してもよく、スラリ(第1の液)と添加液(第2の液)とを混合して前記研磨剤となるように前記研磨剤の構成成分をスラリと添加液とに分けた二液式の研磨剤セットとして保存してもよい。スラリは、例えば、砥粒及び液状媒体を少なくとも含む。添加液は、例えば、第1の添加剤及び液状媒体を少なくとも含む。前記添加剤(第1の添加剤、第2の添加剤及びその他の添加剤)は、添加液に含まれることが好ましい。特に、前記第2の添加剤が添加液に含まれる場合には、砥粒の凝集を抑制し易くなる。なお、前記研磨剤の構成成分は、三液以上に分けた研磨剤セットとして保存してもよい。
前記研磨剤セットにおいては、研磨直前又は研磨時に、スラリ及び添加液が混合されて研磨剤が作製される。また、一液式研磨剤は、液状媒体の含有量を減じた研磨剤用貯蔵液として保存されると共に、研磨時に液状媒体で希釈して用いられてもよい。二液式の研磨剤セットは、液状媒体の含有量を減じたスラリ用貯蔵液及び添加液用貯蔵液として保存されると共に、研磨時に液状媒体で希釈して用いられてもよい。
一液式研磨剤の場合、研磨定盤上への研磨剤の供給方法としては、例えば、研磨剤を直接送液して供給する方法;研磨剤用貯蔵液及び液状媒体を別々の配管で送液し、これらを合流、混合させて供給する方法;研磨剤用貯蔵液及び液状媒体をあらかじめ混合しておき供給する方法等を用いることができる。
スラリと添加液とに分けた二液式の研磨剤セットとして保存する場合、これら二液の配合比を任意に変えることにより研磨速度の調整ができる。研磨剤セットを用いて研磨する場合、研磨定盤上への研磨剤の供給方法としては、下記に示す方法がある。例えば、スラリと添加液とを別々の配管で送液し、これらの配管を合流、混合させて供給する方法;スラリ用貯蔵液、添加液用貯蔵液及び液状媒体を別々の配管で送液し、これらを合流、混合させて供給する方法;スラリ及び添加液をあらかじめ混合しておき供給する方法;スラリ用貯蔵液、添加液用貯蔵液及び液状媒体をあらかじめ混合しておき供給する方法等を用いることができる。また、前記研磨剤セットにおけるスラリと添加液とをそれぞれ研磨定盤上へ供給する方法を用いることもできる。この場合、研磨定盤上においてスラリ及び添加液が混合されて得られる研磨剤を用いて被研磨面が研磨される。
なお、本実施形態に係る研磨剤セットは、上記必須成分を少なくとも含有する研磨剤と、酸化剤(例えば過酸化水素)等の任意成分を少なくとも含む添加液とに分けた態様であってもよい。この場合、研磨剤及び添加液が混合されて得られた混合液(当該混合液も「研磨剤」に相当する)を用いて研磨が行われる。また、本実施形態に係る研磨剤セットは、三液以上に分けた研磨剤セットとして、上記必須成分の一部を少なくとも含有する液と、上記必須成分の残部を少なくとも含有する液と、任意成分を少なくとも含む添加液とに分けた態様であってもよい。研磨剤セットを構成する各液は、液状媒体の含有量を減じた貯蔵液として保存されてもよい。
<基体の研磨方法>
本実施形態に係る基体の研磨方法は、前記研磨剤を用いて基体の被研磨面を研磨する研磨工程を備える。研磨工程では、例えば、被研磨膜を有する基体の該被研磨膜を研磨定盤の研磨パッド(研磨布)に押圧した状態で、前記研磨剤を被研磨膜と研磨パッドとの間に供給しながら、基体と研磨定盤とを相対的に動かして被研磨膜を研磨する。研磨工程では、例えば、被研磨膜の少なくとも一部を研磨により除去する。
研磨対象である基体としては、基板等が挙げられ、例えば、半導体素子製造に係る基板(例えば、STIパターン、ゲートパターン、配線パターン等が形成された半導体基板)上に被研磨膜が形成された基板が挙げられる。被研磨膜としては、酸化珪素膜等の絶縁膜;ポリシリコン膜;窒化珪素膜などが挙げられる。被研磨膜は、単一の膜であってもよく、複数の膜であってもよい。複数の膜が被研磨面に露出している場合、それらを被研磨膜と見なすことができる。
このような基板上に形成された被研磨膜(例えば酸化珪素膜等の絶縁膜)を前記研磨剤で研磨し、余分な部分を除去することによって、被研磨膜の表面の凹凸を解消し、被研磨膜の表面全体にわたって平滑な面とすることができる。本実施形態に係る研磨剤は、酸化珪素を含む被研磨面を研磨するために使用されることが好ましい。
本実施形態では、少なくとも表面に酸化珪素を含む絶縁膜(例えば酸化珪素膜)と、絶縁膜の下層に配置されたストッパ膜と、ストッパ膜の下に配置された半導体基板とを有する基体における絶縁膜を研磨することができる。ストッパ膜は、被研磨膜よりも研磨速度が低い膜であり、ポリシリコン膜、窒化珪素膜等が好ましい。このような基体では、ストッパ膜が露出した時に研磨を停止させることにより、絶縁膜が過剰に研磨されることを防止できるため、絶縁膜の研磨後の平坦性を向上させることができる。
本実施形態に係る研磨剤により研磨される被研磨膜の作製方法としては、低圧CVD法、準常圧CVD法、プラズマCVD法等に代表されるCVD法;回転する基板に液体原料を塗布する回転塗布法などが挙げられる。
酸化珪素膜は、低圧CVD法を用いて、例えば、モノシラン(SiH)と酸素(O)を熱反応させることにより得られる。また、酸化珪素膜は、準常圧CVD法を用いて、例えば、テトラエトキシシラン(Si(OC)とオゾン(O)を熱反応させることにより得られる。その他の例として、テトラエトキシシランと酸素をプラズマ反応させることにより、同様に酸化珪素膜が得られる。
酸化珪素膜は、回転塗布法を用いて、例えば、無機ポリシラザン、無機シロキサン等を含む液体原料を基板上に塗布し、炉体等で熱硬化反応させることにより得られる。
ポリシリコン膜の製膜方法としては、モノシランを熱反応させる低圧CVD法、モノシランをプラズマ反応させるプラズマCVD法等が挙げられる。
以上のような方法で得られた酸化珪素膜、ポリシリコン膜等の膜質を安定化させるために、必要に応じて200〜1000℃の温度で熱処理をしてもよい。また、以上のような方法で得られた酸化珪素膜には、埋込み性を高めるために微量のホウ素(B)、リン(P)、炭素(C)等が含まれていてもよい。
以下、絶縁膜が形成された半導体基板の研磨方法を一例に挙げて、本実施形態に係る研磨方法を更に説明する。本実施形態に係る研磨方法において、研磨装置としては、被研磨面を有する半導体基板等の基体を保持可能なホルダーと、研磨パッドを貼り付け可能な研磨定盤とを有する一般的な研磨装置を使用できる。前記ホルダー及び前記研磨定盤のそれぞれには、回転数が変更可能なモータ等が取り付けてある。研磨装置としては、アプライドマテリアルズ社製の研磨装置:Reflexion等を使用できる。
前記研磨パッドとしては、一般的な不織布、発泡体、非発泡体等が使用できる。研磨パッドの材質としては、ポリウレタン、アクリル、ポリエステル、アクリル−エステル共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ4−メチルペンテン、セルロース、セルロースエステル、ポリアミド(例えば、ナイロン(商標名)、アラミド)、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリシロキサン共重合体、オキシラン化合物、フェノール樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート、エポキシ樹脂などの樹脂が使用できる。研磨パッドの材質としては、特に、研磨速度及び平坦性の観点から、発泡ポリウレタン、非発泡ポリウレタンが好ましい。研磨パッドには、研磨剤がたまるような溝加工が施されていることが好ましい。
研磨条件に制限はないが、定盤の回転速度は、半導体基板が飛び出さないように200min−1以下が好ましく、半導体基板にかける研磨圧力(加工荷重)は、研磨傷が発生することを充分に抑制する観点から、100kPa以下が好ましい。研磨している間、ポンプ等で連続的に研磨剤を研磨パッドに供給することが好ましい。この供給量に制限はないが、研磨パッドの表面が常に研磨剤で覆われていることが好ましい。
研磨終了後の半導体基板は、流水中でよく洗浄して基板に付着した粒子を除去することが好ましい。洗浄には、純水以外に希フッ酸又はアンモニア水を併用してもよく、洗浄効率を高めるためにブラシを併用してもよい。また、洗浄後は、半導体基板に付着した水滴をスピンドライヤ等を用いて払い落としてから半導体基板を乾燥させることが好ましい。
本実施形態に係る研磨剤、研磨剤セット及び研磨方法は、STIの形成に好適に使用できる。STIを形成するためには、前記ストッパ膜(例えばポリシリコン膜)に対する絶縁膜(例えば酸化珪素膜)の研磨速度比は、30以上であることが好ましい。前記研磨速度比が30未満であると、ストッパ膜の研磨速度に対する絶縁膜の研磨速度の大きさが小さく、STIを形成する際に所定の位置で研磨を停止しにくくなる傾向がある。一方、前記研磨速度比が30以上であれば、研磨の停止が容易になり、STIの形成に更に好適である。
本実施形態に係る研磨剤、研磨剤セット及び研磨方法は、プリメタル絶縁膜の研磨にも使用できる。プリメタル絶縁膜の構成材料としては、酸化珪素の他、例えば、リン−シリケートガラス、ボロン−リン−シリケートガラスが使用され、更に、シリコンオキシフロリド、フッ化アモルファスカーボン等も使用できる。
本実施形態に係る研磨剤、研磨剤セット及び研磨方法は、酸化珪素膜のような絶縁膜以外の膜にも適用できる。このような膜としては、Hf系、Ti系、Ta系酸化物等の高誘電率膜;シリコン、アモルファスシリコン、SiC、SiGe、Ge、GaN、GaP、GaAs、有機半導体等の半導体膜;GeSbTe等の相変化膜;ITO等の無機導電膜;ポリイミド系、ポリベンゾオキサゾール系、アクリル系、エポキシ系、フェノール系等のポリマ樹脂膜などが挙げられる。
本実施形態に係る研磨剤、研磨剤セット及び研磨方法は、膜状の研磨対象だけでなく、ガラス、シリコン、SiC、SiGe、Ge、GaN、GaP、GaAs、サファイヤ又はプラスチック等から構成される各種基板にも適用できる。
本実施形態に係る研磨剤、研磨剤セット及び研磨方法は、半導体素子の製造だけでなく、TFT、有機EL等の画像表示装置;フォトマスク、レンズ、プリズム、光ファイバー、単結晶シンチレータ等の光学部品;光スイッチング素子、光導波路等の光学素子;固体レーザ、青色レーザLED等の発光素子;磁気ディスク、磁気ヘッド等の磁気記憶装置の製造に用いることができる。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
<4価金属元素の水酸化物の粒子の合成>
350gのCe(NH(NO50質量%水溶液(日本化学産業株式会社製、製品名:CAN50液)を7825gの純水に溶解して溶液を得た。次いで、この溶液を攪拌しながら、750gのイミダゾール水溶液(10質量%水溶液)を5mL/分の速度で滴下して、水酸化セリウムを含む粒子の沈殿物を得た。
得られた水酸化セリウムを含む沈殿物を遠心分離(4000min−1、5分間)した後に、デカンテーションで液相を除去することによって固液分離を施した。また、得られた粒子10gと水990gを混合し、超音波洗浄機を用いて粒子を水に分散させて、水酸化セリウムスラリ用貯蔵液(粒子の含有量:1.0質量%)を調製した。
マルバーンインスツルメンツ社製、商品名ゼータサイザー3000HSAを用いて水酸化セリウムスラリ用貯蔵液における粒子の平均粒径(Z−average Size)を測定したところ、25nmであった。測定法は下記のとおりである。まず、1.0質量%の粒子を含む測定サンプルを1cm角のセルに約1mL入れ、ゼータサイザー3000HSA内にセルを設置した。測定サンプルの屈折率を1.33、測定サンプルの粘度を0.887mPa・sとし、25℃において測定を行い、Z−average Sizeとして表示される値を読み取った。
水酸化セリウムスラリ用貯蔵液を適量採取し、粒子の含有量が0.0065質量%となるように水で希釈して測定サンプル(水分散液)を得た。測定サンプルを1cm角のセルに約4mL入れ、日立製作所(株)製の分光光度計(装置名:U3310)内にセルを設置した。波長200〜600nmの範囲で吸光度測定を行い、波長290nmの光に対する吸光度と、波長450〜600nmの光に対する吸光度とを測定した。波長290nmの光に対する吸光度は1.192であり、波長450〜600nmの光に対する吸光度は0.010未満であった。
水酸化セリウムスラリ用貯蔵液(粒子の含有量:1.0質量%)を1cm角のセルに約4mL入れ、日立製作所(株)製の分光光度計(装置名:U3310)内にセルを設置した。波長200〜600nmの範囲で吸光度測定を行い、波長400nmの光に対する吸光度と、波長500nmの光に対する光透過率とを測定した。波長400nmの光に対する吸光度は2.25であり、波長500nmの光に対する光透過率は92%/cmであった。
水酸化セリウムスラリ用貯蔵液を適量採取し、真空乾燥して砥粒を単離し、純水で充分に洗浄して得られた試料について、FT−IR ATR法による測定を行ったところ、OH基に基づくピークの他に、NO基に基づくピークが観測された。また、同試料について、窒素に対するXPS(N−XPS)測定を行ったところ、NHに基づくピークは観測されず、NOに基づくピークが観測された。これらの結果より、上記水酸化セリウムスラリ用貯蔵液に含まれる砥粒は、セリウム元素に結合したNO基を有する粒子を少なくとも一部含有することが確認された。
<CMP用研磨剤の調製>
実施例1〜16及び比較例1〜3で用いるCMP用研磨剤は、CMP用研磨剤の全質量基準で、砥粒として前記水酸化セリウムを含む粒子を0.05質量%、表1に示す(B)EOPO付加物を0〜0.5質量%、(C)ポリビニルピロリドンを0〜0.3質量%、(D)グリセリン化合物を0〜0.1質量%、pH調整剤としてイミダゾールを0.005質量%、残部に純水を含有するように調製した。
具体的には、前記水酸化セリウムスラリ用貯蔵液に水を加えて5〜10倍に希釈し、水酸化セリウムを含む粒子を砥粒として含有するスラリを得た。次に、砥粒以外の含有成分を純水に溶解させて添加液を得た。次いで、前記スラリと、前記添加液とを混合、撹拌してCMP用研磨剤を調製した。
<液状特性評価>
これらのCMP用研磨剤のpHと、CMP用研磨剤中の砥粒の平均粒径を下記の条件で評価した。
(pH)
測定温度:25±5℃
測定装置:電気化学計器株式会社製、型番PHL−40
測定方法:標準緩衝液(フタル酸塩pH緩衝液、pH:4.01(25℃);中性リン酸塩pH緩衝液、pH6.86(25℃))を用いて2点校正した後、電極をCMP用研磨剤に入れて、2分以上経過して安定した後のpHを前記測定装置により測定した。
(砥粒の平均粒径)
マルバーンインスツルメンツ社製、商品名ゼータサイザー3000HSAを用いてCMP用研磨剤中の砥粒の平均粒径(Z−average Size)を測定した。測定法は下記のとおりである。まず、CMP用研磨剤を1cm角のセルに約1mL入れ、ゼータサイザー3000HSA内にセルを設置した。測定サンプルの屈折率を1.33、測定サンプルの粘度を0.887mPa・sに調整し、25℃において測定を行い、Z−average Sizeとして表示される値を読み取った。砥粒の平均粒径は、実施例1〜16及び比較例1〜3のCMP用研磨剤のいずれにおいても25nmであった。
<CMP評価>
実施例1〜16及び比較例1〜3のCMP用研磨剤を用いて下記研磨条件で酸化珪素膜及びポリシリコン膜を研磨した。また、実施例11及び比較例1のCMP用研磨剤を用いて下記研磨条件で窒化珪素膜を研磨した。
(CMP研磨条件)
研磨装置:Reflexion(APPLIED MATERIALS社製)
CMP用研磨剤流量:200mL/分
被研磨基板:(a)厚さ1μmの酸化珪素膜をシリコン基板上にプラズマCVD法で形成した基板、(b)厚さ0.15μmのポリシリコン膜をシリコン基板上に形成した基板、(c)厚さ0.5μmの窒化珪素膜をシリコン基板上に形成した基板。
研磨パッド:独立気泡を持つ発泡ポリウレタン樹脂(ローム・アンド・ハース・ジャパン株式会社製、型番IC1000)
研磨圧力:14.7kPa(2psi)
基板と研磨定盤との相対速度:85m/分
研磨時間:1分
洗浄:CMP処理後、超音波水による洗浄を行った後、スピンドライヤで乾燥させた。
(研磨品評価項目)
前記条件で研磨及び洗浄した被研磨基板について、酸化珪素膜の研磨速度(SiORR)、ポリシリコン膜の研磨速度(p−SiRR)、及び、窒化珪素膜の研磨速度(SiNRR)を次式より求めた。なお、研磨前後での酸化珪素膜、ポリシリコン膜及び窒化珪素膜の膜厚差は、光干渉式膜厚装置(フィルメトリクス社製、商品名:F80)を用いて求めた。
(研磨速度:RR)=(研磨前後での酸化珪素膜、ポリシリコン膜又は窒化珪素膜の膜厚差(nm))/(研磨時間(分))
CMP用研磨剤のpH、酸化珪素膜の研磨速度(SiORR)、ポリシリコン膜の研磨速度(p−SiRR)、及び、窒化珪素膜の研磨速度(SiNRR)等を表1及び表2に示す。
また、前記条件で研磨及び洗浄した被研磨基板(ブランケットウエハ)を0.5質量%のフッ化水素の水溶液に15秒間浸漬した後に、60秒間水洗した。続いて、PVAブラシで被研磨膜表面を、水を供給しながら1分間洗浄した後に、乾燥させた。アプライドマテリアルズ製Complusを用いて、被研磨膜表面の0.2μm以上の欠陥を検出した。更に、Complusで得られた欠陥検出座標とアプライドマテリアルズ製SEM Visionを用いて、被研磨膜表面を観測したところ、被研磨膜表面における0.2μm以上の研磨傷の個数は、実施例1〜16及び比較例1〜3のいずれにおいても0〜3(個/ウエハ)程度であり、研磨傷の発生が充分に抑制されていた。
Figure 2015205348
Figure 2015205348
なお、表1に記載される各化合物は以下の通りである。
(EOPO付加物)
TR−304:アデカ製、エチレンジアミンテトラポリオキシエチレンポリオキシプロピレン、上記式(Ia)の化合物、オキシプロピレン部分の分子量の合計:約750、オキシエチレン部分全体の質量割合:40%
TR−702:アデカ製、エチレンジアミンテトラポリオキシエチレンポリオキシプロピレン、上記式(Ia)の化合物、オキシプロピレン部分の分子量の合計:約2800、オキシエチレン部分全体の質量割合:20%
TR−704:アデカ製、エチレンジアミンテトラポリオキシエチレンポリオキシプロピレン、上記式(Ia)の化合物、オキシプロピレン部分の分子量の合計:約2800、オキシエチレン部分全体の質量割合:40%
TR−913R:アデカ製、エチレンジアミンテトラポリオキシプロピレンポリオキシエチレン、上記式(IIa)の化合物、オキシプロピレン部分の分子量の合計:約4500、オキシエチレン部分全体の質量割合:約30%
(ポリビニルピロリドン)
PVP K15:日本触媒製、重量平均分子量:1万
PVP K30:日本触媒製、重量平均分子量:4.5万
PVP K90:日本触媒製、重量平均分子量:36万
(グリセリン化合物)
ポリグリセリン4量体:坂本薬品工業製、重量平均分子量:300
ポリグリセリン10量体:坂本薬品工業製、重量平均分子量:680
ポリグリセリン20量体:坂本薬品工業製、重量平均分子量:1300
SC−E2000:阪本薬品工業製、ジグリセリンポリエーテル(ポリオキシエチレンジグリセリルエーテル)、重量平均分子量:2000
SC−P1000:阪本薬品工業製、ジグリセリンポリエーテル(ポリオキシプロピレンジグリセリルエーテル、重量平均分子量:1000
#310−EO60:阪本薬品工業製、ポリオキシエチレンポリグリセリルエーテル、ポリグリセリン骨格の平均重合度:4、重量平均分子量:3000
以下、表1及び表2に示す結果について詳しく説明する。
実施例1では、CMP用研磨剤の作製において、TR−304を0.5質量%用いた。実施例1のポリシリコン膜に対する絶縁膜の研磨選択性は35であり、比較例1〜3より高い値を示した。
実施例2では、CMP用研磨剤の作製において、TR−702を0.5質量%用いた。実施例2のポリシリコン膜に対する絶縁膜の研磨選択性は32であり、比較例1〜3より高い値を示した。
実施例3では、CMP用研磨剤の作製において、TR−704を0.5質量%用いた。実施例3のポリシリコン膜に対する絶縁膜の研磨選択性は40であり、比較例1〜3より高い値を示した。
実施例4では、CMP用研磨剤の作製において、TR−913Rを0.5質量%用いた。実施例4のポリシリコン膜に対する絶縁膜の研磨選択性は53であり、比較例1〜3より高い値を示した。
実施例5では、CMP用研磨剤の作製において、TR−704を0.5質量%、PVP K30を0.1質量%用いた。実施例5のポリシリコン膜に対する絶縁膜の研磨選択性は78であり、比較例1〜3より高い値を示した。
実施例6では、CMP用研磨剤の作製において、TR−704を0.5質量%、PVP K30を0.3質量%用いた。実施例6のポリシリコン膜に対する絶縁膜の研磨選択性は70であり、比較例1〜3より高い値を示した。
実施例7では、CMP用研磨剤の作製において、TR−913Rを0.5質量%、PVP K30を0.3質量%用いた。実施例7のポリシリコン膜に対する絶縁膜の研磨選択性は63であり、比較例1〜3より高い値を示した。
実施例8では、CMP用研磨剤の作製において、TR−704を0.5質量%、ポリグリセリン20量体を0.1質量%用いた。実施例8のポリシリコン膜に対する絶縁膜の研磨選択性は84であり、比較例1〜3より高い値を示した。
実施例9では、CMP用研磨剤の作製において、TR−704を0.5質量%、PVP K30を0.3質量%、ポリグリセリン4量体を0.01質量%用いた。実施例9のポリシリコン膜に対する絶縁膜の研磨選択性は171であり、比較例1〜3より高い値を示した。
実施例10では、CMP用研磨剤の作製において、TR−704を0.5質量%、PVP K30を0.3質量%、ポリグリセリン10量体を0.01質量%用いた。実施例10のポリシリコン膜に対する絶縁膜の研磨選択性は222であり、比較例1〜3より高い値を示した。
実施例11では、CMP用研磨剤の作製において、TR−704を0.5質量%、PVP K30を0.3質量%、ポリグリセリン20量体を0.01質量%用いた。実施例11のポリシリコン膜に対する絶縁膜の研磨選択性は250であり、比較例1〜3より高い値を示した。実施例11の窒化珪素膜に対する絶縁膜の研磨選択性は9であり、比較例1より高い値を示した。
実施例12では、CMP用研磨剤の作製において、TR−704を0.5質量%、PVP K15を0.3質量%、ポリグリセリン20量体を0.01質量%用いた。実施例12のポリシリコン膜に対する絶縁膜の研磨選択性は262であり、比較例1〜3より高い値を示した。
実施例13では、CMP用研磨剤の作製において、TR−704を0.5質量%、PVP K90を0.3質量%、ポリグリセリン20量体を0.01質量%用いた。実施例13のポリシリコン膜に対する絶縁膜の研磨選択性は194であり、比較例1〜3より高い値を示した。
実施例14では、CMP用研磨剤の作製において、TR−913Rを0.5質量%、PVP K30を0.3質量%、SC−E2000を0.1質量%用いた。実施例14のポリシリコン膜に対する絶縁膜の研磨選択性は85であり、比較例1〜3より高い値を示した。
実施例15では、CMP用研磨剤の作製において、TR−913Rを0.5質量%、PVP K30を0.3質量%、SC−P1000を0.1質量%用いた。実施例15のポリシリコン膜に対する絶縁膜の研磨選択性は95であり、比較例1〜3より高い値を示した。
実施例16では、CMP用研磨剤の作製において、TR−913Rを0.5質量%、PVP K30を0.3質量%、#310−EO60を0.1質量%用いた。実施例16のポリシリコン膜に対する絶縁膜の研磨選択性は64であり、比較例1〜3より高い値を示した。
本発明によれば、ストッパ膜に対する絶縁膜の研磨選択性を向上させることが可能な研磨剤、研磨剤セット、及び基体の研磨方法を提供することができる。また、本発明によれば、シャロートレンチ分離絶縁膜、プリメタル絶縁膜、層間絶縁膜等を平坦化するCMP技術において、絶縁膜を高速に研磨すると共に高度な平坦面を得ることもできる。本発明によれば、絶縁膜を高速に研磨すると共に、絶縁膜を低研磨傷で研磨することもできる。

Claims (14)

  1. 4価金属元素の水酸化物の粒子を含む砥粒と、エチレンジアミンにオキシエチレン及びオキシプロピレンの少なくとも一方が付加した化合物と、液状媒体と、を含有する、研磨剤。
  2. ポリビニルピロリドンを更に含有する、請求項1に記載の研磨剤。
  3. グリセリン化合物を更に含有する、請求項1に記載の研磨剤。
  4. ポリビニルピロリドンと、グリセリン化合物とを更に含有する、請求項1に記載の研磨剤。
  5. 前記グリセリン化合物が、ポリグリセリン、ジグリセリン誘導体及びポリグリセリン誘導体からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項3又は4に記載の研磨剤。
  6. 前記グリセリン化合物が、ポリグリセリン及びジグリセリン誘導体からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項3又は4に記載の研磨剤。
  7. 前記グリセリン化合物がポリグリセリンである、請求項3又は4に記載の研磨剤。
  8. 前記4価金属元素の水酸化物の粒子が、希土類金属元素の水酸化物の粒子及び水酸化ジルコニウムの粒子からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の研磨剤。
  9. エチレンジアミンにオキシエチレン及びオキシプロピレンの少なくとも一方が付加した前記化合物の含有量が、研磨剤の全質量を基準として0.01質量%以上10質量%以下である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の研磨剤。
  10. 酸化珪素を含む被研磨面を研磨するために使用される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の研磨剤。
  11. 請求項1〜10のいずれか一項に記載の研磨剤の構成成分が第1の液と第2の液とに分けて保存され、前記第1の液が、前記砥粒、及び、液状媒体を含み、前記第2の液が、エチレンジアミンにオキシエチレン及びオキシプロピレンの少なくとも一方が付加した前記化合物、及び、液状媒体を含む、研磨剤セット。
  12. 前記第2の液がポリビニルピロリドンを更に含む、請求項11に記載の研磨剤セット。
  13. 前記第2の液がグリセリン化合物を更に含む、請求項11又は12に記載の研磨剤セット。
  14. 請求項1〜10のいずれか一項に記載の研磨剤を用いて基体の被研磨面を研磨する工程を備える、基体の研磨方法。
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