JP2015203856A - 光学製品及び眼鏡レンズ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の光学製品(眼鏡レンズ)は、基体と、前記基体の表面に形成された光学多層膜を含み、前記光学多層膜は、低屈折率層と高屈折率層を交互に配置した6層以上の層を有しており、前記基体に最も近い前記層を第1層として、最終層が低屈折率層であり、前記最終層の光学膜厚Mと、前記光学膜厚M及び前記最終層に隣接する前記層の光学膜厚Nの和M+Nが、設計波長λ=500nmとして、〔1〕0.295λ≦M≦0.415λ、〔2〕0.460λ≦M+N≦0.560λの双方の条件を満たす。
【選択図】図1
Description
特許文献1の反射防止膜は、8層構造であり、透明基板側を第1層として、第8層が低屈折率層であって0.22λ0以上0.30λ0以下(λ0は設計波長、例えば520ナノメートル(nm))の膜厚を有しており、第7層が高屈折率層であって0.16λ0以上0.22λ0以下の膜厚を有しており、紫外線を反射する。
特許文献2の多層膜は、400〜500nmの波長範囲(青色光線)における平均反射率が2〜10%であり、プラスチック基材の凸面上に配設された多層膜の当該平均反射率が、凹面上に配設された多層膜の当該平均反射率よりも大きくされている。
特許文献2の多層膜では、400〜500nmの波長範囲における平均反射率が2〜10%であり、青色光をある程度反射するものの、紫外線を充分に反射しない。
近年、LED照明や、LEDバックライトを有するモニタ、携帯機器等の普及により、青色光線(例えば380〜500nmの波長の光)から目を保護することが考えられている。青色光線は、可視光線の波長領域(可視領域、例えば380〜780nm)において短波長側に位置し、エネルギーが比較的に高く、その分眼に負担をかけるものと考えられている。又、青色光線は、可視光線の中でも散乱され易く、眼の中でも比較的に良く散乱し、眩しさを比較的に強く感じるものとなっている。よって、青色光線の波長領域(青色領域)においてある程度の反射率を有する眼鏡レンズ等により青色光線をカットすることで、眼の保護を図ることが提案されている。
一方、紫外線については、特許文献1の[0005]に記載されているように、液晶プロジェクタや紫外線ランプ、エキシマレーザを使用したステッパの光学部品に対して遮断膜が用いられているものの、眼鏡レンズ等に紫外線遮断膜を付与することで紫外線をカットすることは行われていない。紫外線については、プラスチック眼鏡レンズにおいて、プラスチック基体に紫外線吸収剤を練り込むことでカットされており、ガラスレンズではカットされていない。又、プラスチック眼鏡レンズであっても、プラスチック基体の外面に付与された各種の膜に対しては、紫外線がカットされず届いてしまう。
紫外線は、青色光線より短波長であり、更にエネルギーが高く、眼に対する負担は一層大きいものと考えられ、可視領域外の波長を有して視認に寄与しないので、できるだけカットすることが好ましい。これに対し、青色光線は、可視領域内の波長を有し、視認に用いられるので、ある程度カットしつつ、視認性に配慮する必要がある。
そこで、請求項1〜5に記載の発明は、青色光線及び紫外線の双方をカットしながら、視認性が良好である光学製品,眼鏡レンズを提供することを目的としたものである。
請求項2に記載の発明は、上記発明において、前記光学多層膜における、波長域が280nm以上380nm以下である光に係る平均反射率が50%以上86%以下であり、波長域が380nm以上500nm以下である光に係る平均反射率が15%以上26%以下であることを特徴とするものである。
請求項3に記載の発明は、上記発明において、前記光学多層膜における、波長域が500nm以上700nm以下である光に係る平均反射率が1.0%以下であることを特徴とするものである。
請求項4に記載の発明は、上記発明において、前記光学多層膜における、視感反射率(D65光源,2°視野)が1.0%以下であることを特徴とするものである。
請求項5に記載の発明は、眼鏡レンズにあって、上記の光学製品が用いられており、前記基材は眼鏡レンズ基材であることを特徴とするものである。
基体の材質は、ガラスやプラスチックを始めとしてどのようなものであっても良いが、好適には、プラスチックが用いられる。基体の材質の例として、ポリウレタン樹脂、エピスルフィド樹脂、ポリカーボネイト樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリ4−メチルペンテン−1樹脂、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート樹脂が挙げられる。
光学製品の代表例として、眼鏡プラスチックレンズや眼鏡ガラスレンズを始めとする眼鏡レンズが挙げられ、他の例として、カメラレンズ、プロジェクターレンズ、双眼鏡レンズ、望遠鏡レンズ、各種フィルタが挙げられる。眼鏡レンズの場合、基体は眼鏡レンズ基体となる。
光学多層膜は、基体の表面において、直接成膜されても良いし、ハードコート層を始めとする単数又は複数の中間膜を介して成膜されても良い。ハードコート層は、例えば、オルガノシロキサン系、その他有機ケイ素化合物、アクリル化合物等から形成される。又、ハードコート層の下層にプライマー層を設けても良い。プライマー層は、例えば、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、有機ケイ素系樹脂の少なくとも何れかから形成される。
光学多層膜は、基体側を第1層として、最終層(最も外側の層)に低屈折率材料を配置する。尚、光学多層膜の外側に、撥水膜を始めとする単数又は複数の外膜を更に形成しても良い。
光学多層膜は、例えば真空蒸着法やスパッタ法等の物理気相体積法により積層される。真空蒸着法において、蒸着時に不活性ガス等の各種のガスを供給したり、当該ガスの供給条件(供給量や成膜時圧力等)を制御したり、各種イオンを所定の加速電圧や加速電流にて成膜時に導入するイオンアシストを行ったり、プラズマ処理を成膜時に行ったりして良い。
0.295λ≦M≦0.415λ
である。
又、最終層の光学膜厚と、最終層に隣接する層(高屈折率層)の光学膜厚の和が、0.460λ以上0.560λ以下の範囲内にあるようにされている。即ち、最終層に隣接する層の光学膜厚をNとすると、
0.460λ≦M+N≦0.560λ
である。
即ち、波長域が280nm以上380nm以下である光に係る平均反射率(以下「紫外平均反射率」とする)が50%以上86%以下である。
又、波長域が380nm以上500nm以下である光に係る平均反射率(以下「青色光平均反射率」とする)が15%以上26%以下である。
更に、波長域が500nm以上700nm以下である光に係る平均反射率(以下「可視領域中央部平均反射率」とする)が1.0%以下である。
加えて、視感反射率(D65光源,2°視野)が1.0%以下である。
又、可視領域中央部平均反射率が1.0%以下であり、あるいは視感反射率が1.0%以下であることにより、反射防止機能を付与して視認性に優れた光学多層膜(光学製品)とすることができる。尚、波長域が380nm以上500nm以下である光の平均反射率が15%以上26%以下であることによっても、青色光線が必要以上にカットされない(中程度にカットされる)ので、良好な視認性が確保される。
又、Mが0.415λを上回ると、可視領域中央部平均反射率が1.0%を超え、あるいは視感反射率が1.0%を超えて、優れた視認性を確保することができない。
更に、最終層の光学膜厚Mとその隣接層(最終層より1枚内側の層)の光学膜厚Nとの和M+Nが0.460λ未満であると、可視領域中央部平均反射率が1.0%を超え、あるいは視感反射率が1.0%を超えて、優れた視認性を確保することができない。
又更に、M+Nが0.560λを上回ると、紫外平均反射率が50%を下回り、可視領域中央部平均反射率が1.0%を超え、あるいは視感反射率が1.0%を超えて、優れた紫外線カット性能や視認性を確保することができない。
又、好適には、表面に成膜される光学多層膜における反射光の色彩が、基体表面や他の膜における反射光の色彩と合うようにする。このようにすると、レンズやこれを備えるもの(眼鏡レンズの装用者等)を外から見た場合に、レンズからの反射光の色彩が調和していることでちらつかずに美しく見えるし、レンズを備えるものにとっても、レンズを媒介して観察する光における色彩のちらつきが抑えられて、レンズからの光が見易くなる。凹面(裏面)に対し、凸面(表面)と同様に成る光学多層膜を形成して、表裏で同等の膜を有するようにしても良い。
膜種Aは、全6層構成であり、低屈折率材料をSiO2とし、高屈折材料をZrO2として、基体側の第1層をZrO2とした種類である。最終層はSiO2であり、これに隣接する層はZrO2である。
膜種Bは、全7層構成であり、低屈折率材料をSiO2とし、高屈折材料をTiO2として、基体側の第1層をTiO2とした種類である。最終層はSiO2であり、これに隣接する層はTiO2である。
膜種A,B(全実施例ないし全比較例)に係る光学多層膜は、何れも同じレンズ基体の両面に形成した。当該レンズ基体は、チオウレタン樹脂製で、屈折率は1.60であり、アッベ数は42であって、度数は−0.00(凸面と凹面が同じカーブの基板)である。
更に、図1は実施例A1〜A3の紫外線領域ないし可視領域における反射率分布を示すグラフであり、図2は図1の拡大図(反射率に係る縦軸を0〜5%とし波長に係る横軸を380nm始まりとしたグラフ)であり、図3は実施例A4〜A6の反射率分布を示すグラフであり、図4は図3の拡大図であり、図5は実施例A7〜A9の反射率分布を示すグラフであり、図6は図5の拡大図であり、図7は実施例A10〜A12の反射率分布を示すグラフであり、図8は図7の拡大図である。又、図9は比較例A1〜A4の反射率分布を示すグラフであり、図10は図9の拡大図である。
更に、図11は実施例B1〜B3の反射率分布を示すグラフであり、図12は図11の拡大図であり、図13は実施例B4〜B6の反射率分布を示すグラフであり、図14は図3の拡大図であり、図15は実施例B7〜B9の反射率分布を示すグラフであり、図16は図15の拡大図であり、図17は実施例B10〜B12の反射率分布を示すグラフであり、図18は図17の拡大図であり、図19は実施例B13〜B15の反射率分布を示すグラフであり、図20は図19の拡大図である。又、図21は比較例B1〜B4の反射率分布を示すグラフであり、図22は図21の拡大図である。
YI値は、XYZ表色系に係る標準光における試料の三刺激値であるX,Y,Zを用いて、次式で示される。
YI=100(1.2769X−1.059Z)/Y
YI値は、マイナスの場合青みが強くなり、プラスの場合黄・赤みが強くなる。XYZ表色系は、CIE(国際照明委員会)において標準表色系として採用されており、光の三原色である赤・緑・青あるいはそれらの加法混色に基づく系である。XYZ表色系における刺激値X,Y,Zを求める測色器は公知であり、被測定光の分光エネルギーに刺激値X,Y,Zに関するそれぞれの等色関数を波長毎に乗じつつ可視領域の全波長にわたり積算することで刺激値X,Y,Zが求められる。
比較例A2では、最終層の光学膜厚(L6)が0.421λであり、0.295λ≦M≦0.415λの上限を少し上回っているところ、可視領域中央部平均反射率が1.6%となっており、又視感反射率が2.4%となっており、やはり極めて優れた可視光視認性(可視領域中央部平均反射率及び視感反射率の双方が1%以下)を確保できていない。
比較例A3では、最終層とその隣接層の光学膜厚の和(L5+L6)が0.454λであり、0.460λ≦M+N≦0.560λの下限を少し下回っているところ、可視領域中央部平均反射率が2.3%となっており、又視感反射率が2.0%となっており、極めて優れた可視光視認性を確保できていない。
比較例A4では、最終層とその隣接層の光学膜厚の和(L5+L6)が0.576λであり、0.460λ≦M+N≦0.560λの上限を少し上回っているところ、紫外平均反射率が46%となっており、可視領域中央部平均反射率が1.4%となっており、又視感反射率が2.2%となっており、紫外線の適度なカット性(紫外平均反射率が50%以上86%以下)や、極めて優れた可視光視認性(可視領域中央部平均反射率及び視感反射率の双方が1%以下)を確保できていない。尚、比較例A4では、YI値が10.1となっており、光学多層膜の黄みないし赤みが比較的に強く、優れた視認性や良好な外観(YI値10以下)が確保できない。黄みや赤みが強いと、視界が黄み(赤み)がかるし、眼鏡においては、眼の周りに黄色や赤色が付与されて個性的な外観となるところ、かような外観は避けられる傾向がある。
従って、青色光線と紫外線の双方をカットしながら、極めて良好な視認性を確保することができ、又良好な外観を確保することもできる。青色光線と紫外線がカットされるので、眼鏡の場合には眼を保護することができる。又、基体に紫外線吸収剤を含む光学製品に実施例A1〜A12の光学多層膜を付与したとしても、光学多層膜の段階で紫外線をカットすることができ、基体やハードコート膜等の中間膜を紫外線から保護することができる。更に、可視領域における優れた視認性も同時に確保することができ、眼鏡やカメラ用フィルタ、ディスプレイ用フィルム等に適している。
比較例B2では、最終層の光学膜厚(L6)が0.430λであり、0.295λ≦M≦0.415λの上限を少し上回っているところ、可視領域中央部平均反射率が1.2%となっており、又視感反射率が1.2%となっており、やはり極めて優れた可視光視認性を確保できていない。尚、比較例B2では、YI値が10.6となっており、黄みや赤みが強くなっている。
比較例B3では、最終層とその隣接層の光学膜厚の和(L5+L6)が0.437λであり、0.460λ≦M+N≦0.560λの下限を少し下回っているところ、可視領域中央部平均反射率が2.0%となっており、又視感反射率が1.2%となっており、極めて優れた可視光視認性を確保できていない。
比較例B4では、最終層とその隣接層の光学膜厚の和(L5+L6)が0.564λであり、0.460λ≦M+N≦0.560λの上限を少し上回っているところ、可視領域中央部平均反射率が1.1%となっており、又視感反射率が1.6%となっており、極めて優れた可視光視認性を確保できていない。
従って、青色光線と紫外線の双方をカットしながら、極めて良好な視認性を確保することができ、又良好な外観を確保することもできる。
Claims (5)
- 基体と、前記基体の表面に形成された光学多層膜を含み、
前記光学多層膜は、
低屈折率層と高屈折率層を交互に配置した6層以上の層を有しており、
前記基体に最も近い前記層を第1層として、最終層が低屈折率層であり、
前記最終層の光学膜厚Mと、前記光学膜厚M及び前記最終層に隣接する前記層の光学膜厚Nの和M+Nが、設計波長λ=500nmとして、次の条件を満たす
ことを特徴とする光学製品。
0.295λ≦M≦0.415λ
0.460λ≦M+N≦0.560λ - 前記光学多層膜における、波長域が280nm以上380nm以下である光に係る平均反射率が50%以上86%以下であり、
波長域が380nm以上500nm以下である光に係る平均反射率が15%以上26%以下である
ことを特徴とする請求項1に記載の光学製品。 - 前記光学多層膜における、波長域が500nm以上700nm以下である光に係る平均反射率が1.0%以下である
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光学製品。 - 前記光学多層膜における、視感反射率(D65光源,2°視野)が1.0%以下である
ことを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れかに記載の光学製品。 - 請求項1ないし請求項4の何れかに記載の光学製品が用いられており、
前記基体は眼鏡レンズ基体である
ことを特徴とする眼鏡レンズ。
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