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JP2015122254A - 透明電極及び電子デバイス - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の課題は、優れた導電性と光透過性とを兼ね備え、かつ経時耐久性に優れた透明電極と、当該透明電極を具備した電子デバイスを提供することである。【解決手段】本発明の透明電極は、導電性層と、当該導電性層に隣接して設けられる中間層とを有する透明電極であって、前記導電性層が、銅、金及び白金から選ばれるいずれか1種の金属元素を主成分として含有し、前記中間層が、芳香族性に関与しない非共有電子対を持つ窒素原子を有する有機化合物を含有し、かつ還元性酸化被膜除去剤を副成分として含有することを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明は、透明電極及び電子デバイスに関し、特には、導電性と光透過性と経時耐久性とを兼ね備えた透明電極と、この透明電極を具備した電子デバイスに関する。
タッチパネル、液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス素子、太陽電池等の電子デバイスでは、光取出し側の電極(透明電極)としては、酸化インジウムスズ(SnO−In:Indium Tin Oxide、以下、「ITO」と略記。)等の酸化物半導体系の材料が一般的に用いられているが、ITOと銀とを積層して低抵抗化を狙った材料の検討が、例えば、特開2002−15623号公報、特開2006−164961号公報においてなされている。しかしながら、ITOはレアメタルであるインジウムを使用しているため、材料コストが高く、また抵抗を下げるためには成膜後に300℃程度でアニール処理する必要があり、さらなる低抵抗の要望に対しては限界がある等の問題を抱えていた。
近年、上記問題を踏まえ、透明電極の構成材料として、銀を適用した検討がなされている。銀は、上記ITOに比べると、導電性には優れているが、抵抗特性と透過率のトレードオフという問題を有している。
このような状況において、電気伝導率の高い銀(Ag)とマグネシウム(Mg)との合金を用いて薄膜を構成する技術や、インジウムに代えて、安価で入手容易な金属材料を原料として薄膜を構成する技術が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照。)。
特許文献1に記載の発明では、電極材料として銀とマグネシウムの合金を用いることにより、銀単独で形成した電極に比べ、薄膜条件で所望の導電性を得ることができ、透過率と導電性の両立を図ることができるとされている。
しかしながら、特許文献1に記載されている方法で得られる電極の抵抗値は、せいぜい100Ω/□前後で、透明電極の導電性としては不十分であり、駆動電圧を低くできないという問題に加えて、マグネシウムは酸化されやすい特性であるため、長期間にわたる保存により性能が劣化しやすいという問題を抱えている。
また、特許文献2に記載されている発明では、インジウム(In)の代わりに、安価で入手が容易な亜鉛(Zn)やスズ(Sn)などの金属材料を原料として用いた透明導電膜が開示されている。しかしながら、これらの代替金属では、十分に抵抗値が下がらないこと、加えて、亜鉛を含有したZnO系の透明導電膜は、水と反応して性能が変動しやすいという特性を有している。また、錫を含有したSnO系の透明導電膜は、エッチングによる加工が困難であるとの問題を有していることが判明した。
一方、層厚が15nm程度の薄膜で、光透過性が高い銀膜を蒸着して陰極として用いた有機エレクトロルミネッセンス素子が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。しかしながら、特許文献3で提案されている方法では、形成している銀膜は、電極としてはいまだ厚いため、透明電極としての光透過率(透明性)が十分でなく、マイグレーション(原子の移動)を起こしやすい。また、銀膜を更に薄くすると、導電性等を維持することが難しくなるため、光透過性と導電性を両立する技術の開発が切望されている。
一方、本発明者らは、銀薄膜とその下部に中間層を有する透明電極において、下地となる中間層中に、銀と相互作用を有するジアザカルバゾール誘導体を含有させることにより、形成する銀薄膜の連続造膜性を向上させ、より均一の銀薄膜を形成することにより、低抵抗化、高透過性及び保存性を達成している(例えば、特許文献4参照。)。
しかしながら、近年、電子デバイスに対する要求がより高まり、特に、大面積化に対する要望に対し、より低抵抗化が求められており、視認性の面ではさらなる高光透過性、また数十年以上の電子デバイス寿命を可能にするには、保存される環境での熱や酸素に対する高い安定性・耐久性が要望されている。
特開2006−344497号公報 特開2007−031786号公報 米国特許出願公開第2011/0260148号明細書 国際公開第2013/105569号
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、優れた導電性と光透過性とを兼ね備え、かつ経時耐久性に優れた透明電極と、当該透明電極を具備した電子デバイスを提供することである。
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を進めた結果、導電性層と、当該導電性層に隣接して設けられる中間層とを有し、前記導電性層が、銅、金及び白金から選ばれるいずれか1種の金属元素を主成分として含有し、前記中間層が、芳香族性に関与しない非共有電子対を持つ窒素原子を有する有機化合物を含有し、さらに還元性酸化被膜除去剤を副成分として含有することを特徴とする透明電極により、優れた光透過性と導電性とを兼ね備え、かつ経時耐久性に優れた透明電極と、これを用いた電子デバイスを実現することができることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明の上記課題は、下記の手段により解決される。
1.導電性層と、当該導電性層に隣接して設けられる中間層とを有する透明電極であって、
前記導電性層が、銅、金及び白金から選ばれるいずれか1種の金属元素を主成分として含有し、
前記中間層が、芳香族性に関与しない非共有電子対を持つ窒素原子を有する有機化合物を含有し、かつ還元性酸化被膜除去剤を副成分として含有することを特徴とする透明電極。
2.前記導電性層が、銅を主成分として含有することを特徴とする第1項に記載の透明電極。
3.前記中間層が、前記還元性酸化被膜除去剤を、当該中間層の全質量に対して0.5〜10.0質量%の範囲内で含有していることを特徴とする第1項又は第2項に記載の透明電極。
4.前記中間層が、前記還元性酸化被膜除去剤を、当該中間層の全質量に対して1.0〜5.0質量%の範囲内で含有していることを特徴とする第1項から第3項までのいずれか一項に記載の透明電極。
5.前記導電性層を介して、更に前記中間層に対向する第2の中間層を有し、
前記導電性層を前記中間層及び前記第2の中間層で挟持した構成であることを特徴とする第1項から第4項までのいずれか一項に記載の透明電極。
6.第1項から第5項までのいずれか一項に記載の透明電極を具備していることを特徴とする電子デバイス。
本発明によれば、優れた導電性と光透過性とを兼ね備え、かつ経時耐久性に優れた透明電極と、当該透明電極を具備した電子デバイスを提供することができる。
本発明で規定する構成により、上記問題を解決することができる本発明の効果の発現機構、作用機構については明確にはなっていないが、以下のように推察される。
本発明の透明電極は、中間層に隣接して、銅、金、又は白金を主成分として含有している導電性層を有しており、かつ前記中間層には、銅原子、金原子、又は白金原子と親和性のある芳香族性に関与しない非共有電子対を有する有機化合物(以下、銅、金、又は白金との親和性化合物ともいう。)を含有し、かつ還元性酸化被膜除去剤を副成分として含有することを特徴とする、
この様な構成とすることにより、中間層上に導電性層を成膜する際には、導電性層を構成する銅原子、金原子、又は白金原子が、中間層に含有されている銅、金、又は白金との親和性化合物である芳香族性に関与しない非共有電子対を持つ窒素原子を有する有機化合物と相互作用を生じることにより、該中間層表面上での銅、金、又は白金原子の拡散距離が減少し、特定箇所での銅、金、又は白金原子の凝集を抑えることができる。
すなわち、銅原子、金原子、又は白金原子は、まず銅、金、又は白金原子と親和性のある芳香族性に関与しない非共有電子対を持つ窒素原子を有する有機化合物を含有する中間層表面上で2次元的な核を形成し,それを中心に2次元の単結晶層を形成するという単層成長型(Frank−van der Merwe:FM型)の膜成長によって成膜されるようになる。
なお、一般的には、中間層表面において付着した銅原子、金原子、又は白金原子が表面を拡散しながら結合し、3次元的な核を形成し、3次元的な島状に成長するという島状成長型(Volumer−Weber:VW型)での膜成長により島状に成膜し易いと考えられるが、本発明では、中間層に含有されている芳香族性に関与しない非共有電子対を持つ窒素原子を有する有機化合物により、このような様式の島状成長が防止され、単層成長が促進されると推察される。
したがって、薄い層厚でありながらも、銅、金、又は白金原子が均一に分布し、かつ均一な層厚の導電性層が得られるようになる。この結果、より薄い層厚として光透過性を保ちつつも、導電性が確保された透明電極とすることができる。
加えて、還元性酸化被膜除去剤を副成分として含有することにより、経時劣化により酸素による透明導電性層の性能低下の主要因と推察される銅、金、又は白金の酸化を効率的に防止、あるいは抑制することができる。これは、中間層に、還元性酸化被膜除去剤を副成分として含有していると、経時劣化により導電性層に酸化被膜が形成されても、金属酸化物と該有機化合物との間に酸化還元反応が起こり、酸化被膜が還元されることで機能が回復するためであると推察される。すなわち、本発明で規定する構成とすることにより、薄膜化が可能となり、高い光透過性を有し、優れた導電性を備え、かつ経時耐久性(耐酸素性)に優れた透明電極を得ることができるものと推測している。
本発明の透明電極の構成の一例を示す概略断面図 透明電極に電極パターンをフォトリソグラフィー法で形成する一例を示す工程フロー図 電極パターンを有する透明電極対を具備した電子デバイスであるタッチパネルの構成の一例を示す斜視図 タッチパネルを構成する各透明電極の電極パターンの一例を示す平面図 タッチパネルを構成する電極部分の一例を示す平面模式図 タッチパネルの構成の一例を示す概略断面図 本発明で好適に用いることができるタッチパネルの構成の一例を示す概略断面図 本発明の透明電極を具備した電子デバイスである液晶表示装置の構成の一例を示す概略断面図
本発明の透明電極は、導電性層と、当該導電性層に隣接して設けられる中間層とを有する透明電極であって、前記導電性層が、銅、金及び白金から選ばれるいずれか1種の金属元素を主成分として含有し、前記中間層が、芳香族性に関与しない非共有電子対を持つ窒素原子を有する有機化合物を含有し、かつ還元性酸化被膜除去剤を副成分として含有することを特徴とし、優れた導電性と光透過性とを兼ね備え、かつ経時耐久性(耐酸素性)に優れた透明電極を実現することができる。この特徴は、請求項1から請求項6に係る発明に共通する技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、本発明の目的とする上記効果をより発現できる観点から、前記導電性層が、銅を主成分として含有することが好ましい。
また、前記中間層が、前記還元性酸化被膜除去剤を、当該中間層の全質量に対して0.5〜10.0質量%の範囲内で含有していることが、優れた酸化防止効果をより発現することができる観点から好ましく、より好ましくは、前記中間層が、前記還元性酸化被膜除去剤を、1.0〜5.0質量%の範囲内で含有していることである。
また、本発明の透明電極の構成としては、前記導電性層を介して、更に前記中間層に対向する第2の中間層を有し、前記導電性層を前記中間層及び前記第2の中間層で挟持した構成であることが、導電性層の耐傷性が向上する観点から好ましい。
また、本発明の電子デバイスは、本発明の透明電極を具備していることを特徴とする。 以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本発明において示す「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
《透明電極》
〔透明電極の基本構成〕
本発明の透明電極は、導電性層と、当該導電性層に隣接して設けられる中間層とを有する透明電極であって、前記導電性層が、銅、金及び白金から選ばれるいずれか1種の金属元素を主成分として含有し、前記中間層が、芳香族性に関与しない非共有電子対を持つ窒素原子を有する有機化合物(以下、単に窒素原子を有する有機化合物ともいう。)を含有し、かつ還元性酸化被膜除去剤を副成分として含有することを特徴とする。上記構成からなる透明電極は、例えば、透明な基板上に本発明に係る中間層及び導電性層を積層して形成される。
図1は、本発明の透明電極の構成の一例を示す概略断面図である。
図1の(a)に示す透明電極1は、基板11上に、中間層3を有し、この中間層3の上部に、導電性層5を積層した2層構造である。
すなわち、基板11の上部に、中間層3及び導電性層5が、この順に設けられている。本発明に係る中間層3は、芳香族性に関与しない非共有電子対を持つ窒素原子を有する有機化合物を含有し、さらに還元性酸化被膜除去剤を副成分として含有している層であり、その上に積層する本発明に係る導電性層5は、銅、金及び白金から選ばれるいずれか1種の金属元素を主成分として含有している層であることを特徴とする。
なお、本発明において、中間層3が本発明に係る芳香族性に関与しない非共有電子対を持つ窒素原子を有する有機化合物を含有することを特徴とするが、その含有量は、中間層の全質量に対し、50.0質量%以上であることが好ましい。より好ましくは55.0〜99.5質量%の範囲内であり、さらに好ましくは、90.0〜99.5質量%の範囲内であり、特に好ましくは、95.0〜99.0質量%の範囲内である。
また、本発明において、中間層3が本発明に係る還元性酸化被膜除去剤を副成分として含有することを特徴とするが、本発明でいう副成分とは、中間層の全質量に対し、本発明に係る還元性酸化被膜除去剤の含有量が、0.1質量%以上、50質量%未満であることを意味し、好ましくは0.5〜10.0質量%の範囲内であり、さらに好ましくは、1.0〜5.0質量%の範囲内である。
また、本発明において、導電性層5が銅、金及び白金から選ばれるいずれか1種の金属元素を主成分として含有しているが、本発明でいう金属元素を主成分とするとは、導電性層全質量に対し、本発明に係る銅、金又は白金のそれぞれの金属元素の含有率が90質量%以上であることを意味し、好ましくは95質量%以上であり、さらに好ましくは99質量%以上であり、特に好ましくは銅、金又は白金の金属元素のみの構成である。本発明に係る導電性層5においては、銅、金又は白金のそれぞれが、他の金属元素と合金を形成することはなく、それぞれ単体の金属元素で構成されていることが最も好ましい態様である。
また、本発明の透明電極1の層構成としては、図1の(b)に示すように、基板11上に、上記説明した構成の中間層3A及び導電性層5を有し、更に、導電性層5上に、第2の中間層3Bを積層し、中間層3Aと第2の中間層3Bとで導電性層5を挟持する層構成であることも、好ましい態様の一つである。このように、導電性層5上に、さらに第2の中間層3Bを設けることにより、金属元素で構成されている導電性層5が、例えば、酸素雰囲気等に直接晒されることがなく、また、第2の中間層3Bで導電性層5が保護されることにより、擦り傷等の発生を防止することができる。
また、第2の中間層3Bを積層することは、金属元素で構成されている導電性層5の表面の反射を軽減することができ、透明電極として光透過度を高めることができることからも好ましい。
次に、このような積層構造の透明電極1を保持するのに用いられる基板11と、透明電極1を構成する中間層3及び導電性層5の順に、更に詳細な構成要件について説明する。
〔基板〕
本発明の透明電極1を保持するのに用いられる基板11としては、例えば、ガラス、プラスチック等を挙げることができるが、これらに限定されない。また、基板11は、透明であっても不透明であってもよいが、本発明の透明電極1が、基板11側から光を取り出す電子デバイスに用いられる場合には、基板11は透明であることが好ましい。好ましく用いられる透明な基板11としては、ガラス、石英、樹脂フィルムを挙げることができる。
ガラスとしては、例えば、シリカガラス、ソーダ石灰シリカガラス、鉛ガラス、ホウケイ酸塩ガラス、無アルカリガラス等が挙げられる。これらのガラス材料の表面には、中間層1aとの密着性、耐久性、平滑性の観点から、必要に応じて、研磨等の物理的処理が施されていても良いし、無機物又は有機物からなる被膜や、これらの被膜を組み合わせたハイブリッド被膜が形成されている構成であっても良い。
樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(略称:PET)、ポリエチレンナフタレート(略称:PEN)等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート(略称:TAC)、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート(略称:CAP)、セルロースアセテートフタレート、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類又はそれらの誘導体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(略称:PES)、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン類、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、アクリル又はポリアリレート類、アートン(商品名;JSR社製)又はアペル(商品名;三井化学社製)といったシクロオレフィン系樹脂等を用いた樹脂フィルムが挙げられる。
上記樹脂フィルムの表面には、無機物又は有機物からなる被膜(以下、「ガスバリアー膜」ともいう。)や、これらの被膜を組み合わせたハイブリッド被膜が形成されている構成であっても良い。このような被膜及びハイブリッド被膜は、JIS−K−7129−1992に準拠した方法で測定される水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度90±2%RH)が0.01g/(m・24時間)以下のガスバリアー性フィルムであることが好ましい。更には、JIS−K−7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が1×10−3ml/(m・24時間・atm)以下、温度40℃・90%RHの環境下で、JIS Z0208に従い測定された水蒸気透過度が1×10−5g/(m・24時間)以下の高ガスバリアー性フィルムであることが好ましい。
以上のようなガスバリアー性フィルムを形成する材料としては、水分や酸素等の電子デバイスの劣化を引き起こす要因の浸入を抑制する機能を備えた材料であればよく、例えば、二酸化ケイ素、窒化ケイ素等を用いることができる。更に、当該ガスバリアー性フィルムの脆弱性を改良するために、これら無機層と有機材料からなる層(有機層)の積層構造を持たせることがより好ましい。無機層と有機層の積層順については特に制限はないが、両者を交互に複数回積層させることが好ましい。
ガスバリアー性フィルムの作製方法については、特に限定はなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、大気圧プラズマ重合法、プラズマCVD法(CVD:化学蒸着法、Chemical Vapor Deposition)、レーザーCVD法、熱CVD法、コーティング法等を用いることができる。
一方、基板11が不透明な材料で構成する場合には、例えば、アルミニウム、ステンレス等の金属基板、フィルムや不透明樹脂基板、セラミック製の基板等を用いることができる。
〔中間層〕
本発明に係る中間層3は、芳香族性に関与しない非共有電子対を持つ窒素原子を有する有機化合物を主成分として含有し、かつ還元性酸化被膜除去剤を副成分として含有して構成された層である。このような中間層3を基板11上に成膜する方法として、特に制限はなく、具体的な成膜方法としては、窒素原子を有する有機化合物及び還元性酸化被膜除去剤の両者に対する溶解能を備えた有機溶媒等で溶解して、中間層形成用塗布液を調製し、当該塗布液を用いて、ローラーコート法、グラビアコート法、ナイフコート法、ディップコート法、スプレーコート法、インクジェット法などのウェットプロセスにより成膜する方法や、蒸着法(抵抗加熱法、EB法(エレクトロンビーム法)など)、スパッタ法、CVD法などのドライプロセスで、上記2成分用いて成膜する方法などが挙げられる。なかでも、中間層形成用塗布液を調製し、当該塗布液を用いて成膜する方法が好ましく適用される。
中間層3は、層厚が1〜100nmの範囲内にあることが好ましく、5〜40nmの範囲内にあることがより好ましい。この範囲であればいずれの層厚であっても効果が得られる。層厚が100nm以下であると層の吸収成分が少なくなり、透明電極の透過率が向上するため好ましい。また、層厚が5nm以上であると均一で連続的な中間層が形成することができる観点から好ましい。
(芳香族性に関与しない非共有電子対を持つ窒素原子を有する有機化合物)
本発明の透明電極1においては、中間層3は、芳香族性に関与しない非共有電子対を持つ窒素原子を有する有機化合物を含有する。
芳香族性に関与しない非共有電子対を持つ窒素原子を有する有機化合物の含有量は、前述のとおり、中間層の全質量に対し、50.0質量%以上であることが好ましい。より好ましくは55.0〜99.5質量%の範囲内であり、さらに好ましくは、90.0〜99.5質量%の範囲内であり、特に好ましくは、95.0〜99.0質量%の範囲内である。
本発明において、「芳香族性に関与しない非共有電子対を持つ窒素原子」とは、非共有電子対を持つ窒素原子であって、当該非共有電子対が不飽和環状化合物の芳香族性に必須要素として直接的に関与していない窒素原子のことをいう。すなわち、共役不飽和環構造(芳香環)上の非局在化したπ電子系に、非共有電子対が、化学構造式上、芳香性発現のために必須のものとして関与していない窒素原子をいう。
以下、本発明に係る「芳香族性に関与しない非共有電子対を持つ窒素原子」について説明する。
窒素原子は第15族元素であり、最外殻に5個の電子を有する。このうち3個の不対電子は他の原子との共有結合に用いられ、残りの2個は一対の非共有電子対となるため、通常窒素原子の結合本数は3本である。
例えば、アミノ基(−NR)、アミド基(−C(=O)NR)、ニトロ基(−NO)、シアノ基(−CN)、ジアゾ基(−N)、アジド基(−N)、ウレア結合(−NRC=ONR−)、イソチオシアネート基(−N=C=S)、チオアミド基(−C(=S)NR)などが挙げられ、これらは本発明の「芳香族性に関与しない非共有電子対を持つ窒素原子」に該当する。なお、R及びRはそれぞれ置換基を表す。
このうち、例えば、ニトロ基(−NO)の共鳴式は、下記のように表すことができる。ニトロ基における窒素原子の非共有電子対は、厳密には、酸素原子との共鳴構造に利用されているが、本発明においては、ニトロ基の窒素原子も非共有電子対を持つこと定義する。
Figure 2015122254
一方、窒素原子は、非共有電子対を利用することで4本目の結合を作り出すこともできる。例えば、下記に示すように、テトラブチルアンモニウムクロライド(略称:TBAC)は、四つ目のブチル基が窒素原子とイオン結合しており、対イオンとして塩化物イオンを有する第四級アンモニウム塩である。
また、トリス(2-フェニルピリジン)イリジウム(III)(略称:Ir(ppy))は、イリジウム原子と窒素原子が配位結合している中性の金属錯体である。これらの化合物は窒素原子を有するものの、その非共有電子対がそれぞれイオン結合、配位結合に利用されてしまっているため、本発明の「芳香族性に関与しない非共有電子対を持つ窒素原子」には該当しない。
すなわち、本発明は、結合に利用されていない窒素原子の非共有電子対を有効利用するというものである。
下記に示す構造式において、左側はテトラブチルアンモニウムクロライド(略称:TBAC)、右側はトリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(III)(略称:Ir(ppy))の構造を示す。
Figure 2015122254
また、窒素原子は、芳香環を構成することのできるヘテロ原子として一般的であり、芳香族性の発現に寄与することができる。この「含窒素芳香環」としては、例えばピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、トリアジン環、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、などが挙げられる。
ピリジン環の場合、下記に示すように、6員環状に並んだ共役(共鳴)不飽和環構造において、非局在化したπ電子の数が6個であるため、4n+2(n=0又は自然数)のヒュッケル則を満たす。6員環内の窒素原子は、−CH=を置換したものであるため、1個の不対電子を6π電子系に動員するのみで、非共有電子対は、芳香族性発現のために必須のものとして関与していない。
したがって、ピリジン環の窒素原子は、本発明に係る「芳香族性に関与しない非共有電子対を持つ窒素原子」に該当する。以下に、ピリジン環の分子軌道を示す。
Figure 2015122254
ピロール環の場合は、下記に示すように、5員環内を構成する炭素原子の一つが窒素原子に置換された構造であるが、やはりπ電子の数は6個であり、ヒュッケル則を満たした含窒素芳香環である。ピロール環の窒素原子は、水素原子とも結合しているため、非共有電子対が6π電子系に動員されている。
したがって、ピロール環の窒素原子は、非共有電子対を有するものの、芳香族性発現のために必須のものとして利用されてしまっているため、本発明の「芳香族性に関与しない非共有電子対を持つ窒素原子」には該当しない。
以下に、ピロール環の分子軌道を示す。
Figure 2015122254
一方、イミダゾール環は、下記に示すように、5員環内に二つの窒素原子が1、3位に置換した構造を有しており、やはりπ電子数が6個の含窒素芳香環である。窒素原子Nは、1個の不対電子のみを6π電子系に動員し、非共有電子対を芳香族性発現のために利用していないピリジン環型の窒素原子である。一方、窒素原子Nは、非共有電子対を6π電子系に動員しているピロール環型の窒素原子である。
したがって、イミダゾール環の窒素原子Nは、本発明の「芳香族性に関与しない非共有電子対を持つ窒素原子」に該当する。以下に、イミダゾール環の分子軌道を示す。
Figure 2015122254
また、含窒素芳香環骨格を有する縮環化合物の場合も同様である。例えば、δ-カルボリンは、下記に示すように、ベンゼン環骨格、ピロール環骨格及びピリジン環骨格がこの順に縮合したアザカルバゾール化合物である。ピリジン環の窒素原子Nは、1個の不対電子のみを、ピロール環の窒素原子Nは、非共有電子対を、それぞれπ電子系に動員しており、環を形成している炭素原子からの11個のπ電子とともに、全体のπ電子数が14個の芳香環となっている。
したがって、δ-カルボリンの二つの窒素原子のうち、ピリジン環の窒素原子Nは本発明に係る「芳香族性に関与しない非共有電子対を持つ窒素原子」に該当するが、ピロール環の窒素原子Nはこれに該当しない。
このように、ピリジン環やピロール環は、その骨格が縮環化合物中に組み込まれている場合でも、その効果が阻害されたり抑制されたりすることはなく、単環として利用したときとなんら相違はない。以下に、δ−カルボリンの分子軌道を示す。
Figure 2015122254
以上のように、本発明で規定する「芳香族性に関与しない非共有電子対を持つ窒素原子」は、その非共有電子対を導電性層の主成分である銅、金、又は白金と強い相互作用を発現するために重要である。そのような窒素原子としては、安定性、耐久性の観点から、含窒素芳香環中の窒素原子であることが好ましい。
本発明に係る芳香族性に関与しない非共有電子対を持つ窒素原子を有する有機化合物としては、芳香族複素環を有することが好ましく、該芳香族複素環としては、ピリジン環が好ましい。
また、本発明に係る芳香族性に関与しない非共有電子対を持つ窒素原子を有する有機化合物は、臭素原子、ヨウ素原子又は硫黄原子を有する有機化合物であることが好ましい。中間層に含有される有機化合物は、これらの原子を用いることで、主骨格によることなく、本発明の目的とする効果を発現できる。
本発明に係る芳香族性に関与しない非共有電子対を持つ窒素原子を有する有機化合物の具体的化合物として、特に制限はないが、下記一般式(I)〜一般式(IV)で表される化合物を一例として挙げることができる。
本発明の透明電極1において、中間層3に芳香族性に関与しない非共有電子対を持つ窒素原子を有する有機化合物として、下記一般式(I)で表される化合物を挙げることができる。
Figure 2015122254
上記一般式(I)において、XはNR、酸素原子又は硫黄原子を表す。E〜Eは、それぞれ独立にCR又は窒素原子を表し、少なくとも1つは窒素原子を表す。R及びRはそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。
一般式(I)において、Rで表される置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルキニル基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基、複素環基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、シクロアルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルファモイル基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、カルバモイル基、ウレイド基、スルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基又はヘテロアリールスルホニル基、アミノ基、ハロゲン原子、フッ化炭化水素基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、シリル基、リン酸エステル基、ホスホノ基等が挙げられる。
一般式(I)において、Rで表される置換基としては、Rで表される置換基と同様のものを挙げることができる。
上記一般式(I)で表される化合物は、下記一般式(II)で表される化合物であることが好ましい。
Figure 2015122254
上記一般式(II)において、E〜E15はそれぞれ独立にCRを表す。R及びRはそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。
上記一般式(II)において、R及びRで表される置換基としては、上記一般式(I)におけるRで表される置換基と同様のものを挙げることができる。
また、上記一般式(I)で表される化合物は、下記一般式(III)で表される化合物であることが好ましい。
Figure 2015122254
上記一般式(III)において、E16〜E22はそれぞれ独立にCRを表す。Rは水素原子又は置換基を表す。
上記一般式(III)において、Rで表される置換基としては、上記一般式(I)におけるRで表される置換基と同様のものを挙げることができる。
また、上記一般式(I)で表される化合物は、下記一般式(IV)で表される化合物であることが好ましい。
Figure 2015122254
上記一般式(IV)において、E23〜E28はそれぞれ独立にCRを表す。R及びRはそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。
上記一般式(IV)において、R及びRで表される置換基としては、上記一般式(I)におけるRで表される置換基と同様のものを挙げることができる。
以下に、本発明に係る芳香族性に関与しない非共有電子対を持つ窒素原子を有する有機化合物の具体例として、上記一般式(I)〜一般式(IV)で表される化合物例と、その他の構造を有する当該有機化合物例を示すが、本発明においてはこれら例示する有機化合物にのみ限定されるものではない。
Figure 2015122254
Figure 2015122254
Figure 2015122254
Figure 2015122254
Figure 2015122254
本発明に係る芳香族性に関与しない非共有電子対を持つ窒素原子を有する有機化合物は、従来公知の合成方法に準じて、容易に合成して得ることができる。
(還元性酸化被膜除去剤)
本発明に係る中間層には、上記説明した芳香族性に関与しない非共有電子対を持つ窒素原子を有する有機化合物とともに、副成分として還元性酸化被膜除去剤を含有することを特徴とする。
一般的に透明電極の性能の経時劣化の要因の一つに、導電性層の主成分である金属の酸化が挙げられる。特に銅が主成分の場合、該透明電極を長時間使用、保存することは大気中の酸素との酸化反応を徐々に促進するため、導電性層に金属酸化物からなる酸化被膜が形成されてしまう。これにより、透明電極の性能は低下する。
還元性酸化被膜除去剤は、還元反応により、酸化被膜を除去する効果を有する有機化合物である。これにより、導電性層に酸化被膜が形成されても、金属酸化物と還元性酸化被膜除去剤との間に酸化還元反応が起こり、酸化被膜が還元されることで機能が回復し、その結果酸素に対する耐性が向上して、経時耐久性に優れた透明電極を作成することができる。
本発明でいう副成分とは、中間層の全質量に対し、本発明に係る還元性酸化被膜除去剤の含有量が、0.1質量%以上、50質量%未満であることを意味し、好ましくは0.5〜10.0質量%の範囲内であり、さらに好ましくは、1.0〜5.0質量%の範囲内である。
本発明に用いられる還元性酸化被膜除去剤としては、効果を有するものであれば特に制約はないが、例えばメルカプト基を有するメタンチオール、エタンチオールの如きチオール系化合物、チオグリコール、チオグリセリンの如きチオポリオール系化合物、チオ酢酸、チオプロピオン酸、チオグリコール酸、チオリンゴ酸の如きチオカルボン酸系化合物、チオ安息香酸、チオサルシル酸、チオフェノールの如き芳香族チオ化合物、これら化合物の誘導体及び塩等が好適なものとして挙げられる。なお、塩としてはアルカリ金属塩、アンモニウム塩、第1〜第3級アミン塩等がある。そして、これら化合物は、単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
(中間層の形成方法)
本発明に係る中間層の形成方法としては、ウェットプロセスで形成しても、ドライプロセスで形成してもよい。
ウェットプロセスで中間層を形成する場合には、芳香族性に関与しない非共有電子対を持つ窒素原子を有する有機化合物と還元性酸化被膜除去剤を、所望の比率で共通の溶解能を有する有機溶媒、例えば、トルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、アルコール類に溶解して、中間層形成用塗布液を調製したのち、湿式塗布装置、例えば、ローラーコーター、グラビアコーター、ナイフコーター、ディップコーター、スプレーコーター、インクジェットヘッドなどを用いて、基板上に塗布したのち、乾燥して中間層を形成する。
一方、ドライプロセスとしては、蒸着法(抵抗加熱法、EB法(エレクトロンビーム法)など)、スパッタ法、CVD法などのドライプロセスで、上記2成分用いて成膜する方法などが挙げられる。なかでも、2成分を用い、それぞれの成分の蒸着速度を制御して所望の比率となるように共蒸着させる方法が好ましく適用される。
これらの中では、有機溶媒に溶解して、中間層形成用塗布液を調製したのち、湿式塗布するウェットプロセスで中間層を形成することが、還元性酸化被膜除去剤の有機溶媒に対する溶解性の点から好ましい。
〔導電性層〕
本発明に係る導電性層5は、銅、金及び白金から選ばれるいずれか1種の金属元素を主成分として構成されている層で、中間層3上に形成される。本発明に係る導電性層5の成膜方法としては、例えば、塗布法、インクジェット法、コーティング法、ディップ法などのウェットプロセスを用いる方法や、蒸着法(抵抗加熱、EB法など)、スパッタ法、CVD法などのドライプロセスを用いる方法などが挙げられる。上記成膜方法のなかでも、蒸着法が好ましく適用される。また、導電性層5は、中間層3上に成膜されることにより、導電性層成膜後の高温アニール処理(例えば、150℃以上の加熱プロセス)等がなくても十分に導電性を発現することができるが、必要に応じて、成膜後に高温アニール処理等を施しても良い。
本発明でいう銅、金及び白金から選ばれるいずれか1種の金属元素を主成分として構成されている層とは、前述のとおり、導電性層5の全質量に対し、本発明に係る銅、金又は白金のそれぞれの金属元素の含有率が90質量%以上であることを意味し、好ましくは95質量%以上であり、さらに好ましくは99質量%以上であり、特に好ましくは銅、金又は白金の金属元素のみで構成されていることであり、2種以上の金属元素による合金は形成しない。本発明に係る導電性層5においては、銅、金又は白金のそれぞれが、他の金属元素と合金を形成することはなく、それぞれ単体の金属元素で構成されていることが最も好ましい態様である。
本発明に係る導電性層5においては、銅、金及び白金から選ばれるいずれか1種の金属元素を主成分として構成されている層が、必要に応じて複数の層に分けて積層された構成であっても良い。
更に、当該導電性層5は、層厚が4〜20nmの範囲内であることが好ましい。好ましくは5〜10nmの範囲内である。層厚が20nm以下であれば、層の吸収成分又は反射成分が少なくなり、透明電極の透過率が向上するためより好ましい。また、層厚が4nm以上であれば、層の導電性が十分になるため好ましい。
《透明電極の効果》
以上説明したように、本発明の透明電極1は、芳香族性に関与しない非共有電子対を持つ窒素原子を有する化合物と、還元性酸化被膜除去剤とを含有して構成された中間層3上に、銅、金及び白金から選ばれるいずれか1種の金属元素を主成分として構成されている導電性層5を設けた構成である。これにより、中間層3の上部に導電性層5を成膜する際には、導電性層5を構成する銅、金及び白金から選ばれるいずれか1種の金属元素が中間層3を構成する芳香族性に関与しない非共有電子対を持つ窒素原子と相互作用し、銅、金及び白金から選ばれるいずれか1種の金属元素の中間層3表面における拡散距離が減少し、銅、金、又は白金の凝集の生成を抑制することができる。
前述のように、銅、金及び白金から選ばれるいずれか1種の金属元素を主成分として構成されている導電性層5の成膜においては、島状成長型(Volumer−Weber:VW型)で膜成長するため、銅、金、又は白金粒子が島状に孤立し易く、層厚が薄いときは導電性を得ることが困難となり、シート抵抗値が高くなる。したがって、導電性を確保するにはある程度層厚を厚くする必要があるが、層厚を厚くすると光透過率が低下し、透明電極としては不適であった。
しかしながら、本発明で規定する構成の透明電極1によれば、芳香族性に関与しない非共有電子対を持つ窒素原子を有する化合物を含有する中間層3上において、窒素原子と銅、金及び白金から選ばれるいずれか1種の金属元素との相互作用により、銅、金、又は白金の凝集が抑えられるため、銅、金、又は白金を主成分として構成されている導電性層1bの成膜においては、単層成長型(Frank−van der Merwe:FM型)で膜成長するようになる。
なお、本発明でいう「透明電極1の透明」とは、波長590nmでの光透過率が50%以上であることをいうが、中間層3として用いられる上述した各材料は、銅、金、又は白金を主成分とした導電性層5と比較して、優れた光透過性を備えた良好な膜である。一方、透明電極1の導電性は、主に導電性層5によって確保される。したがって、上述のように、銅、金、又は白金を主成分として構成されている導電性層5が、より薄い層厚で導電性が確保されたものとなることにより、透明電極1の導電性の向上と光透過性の向上との両立を図ることができたものである。
加えて、中間層3に還元性酸化被膜除去剤を含有することにより、酸素雰囲気下での導電性層を構成する金属元素の劣化を防止することにより、高い経時耐久性を備えた透明電極1を実現することができた。
《透明電極の用途》
上記構成からなる本発明の透明電極1は、各種電子デバイスに用いることができる。電子デバイスの例としては、例えば、タッチパネル、液晶表示素子、有機エレクトロルミネッセンス素子、LED(light Emitting Diode)、太陽電池等が挙げられ、これらの電子デバイスにおいて、光透過性を必要とされる電極部材として、本発明の透明電極1を用いることができる。
〔タッチパネル〕
以下、本発明の透明電極を適用した電子デバイスの一例として、本発明の透明電極にフォトリソグラフィー法による電極パターンを形成したのち、それをタッチパネルへの適用する例について説明する。
(透明電極のパターニング)
図1の(a)で示した基板11上に、中間層3と当該中間層3に隣接して、銅、金、又は白金を主成分とする導電性層5を有する本発明の透明電極1は、例えば、フォトリソグラフィー法により、例えば、有機溶媒を含有するエッチング液を用いて、図3〜図5に示すような電極パターンを形成することができる。
〈エッチング液:有機溶媒〉
本発明において、エッチング液としては、少なくとも有機溶媒を含有していることが好ましく、有機溶媒として、特に制限はないが、中間層に対する溶解能を備えた有機溶媒であることが好ましく、より好ましくは、エーテルアルコール、ケトン及びエステルから選ばれる少なくとも1種である。
また、本発明においては、エッチング液に、上記有機溶媒とともに、銅、金、又は白金で構成される導電性層をより完全に溶解して除去する目的で、各金属元素の溶剤を併用することもできる。
〈製造工程〉
以下、フォトリソグラフィー法による電極パターンの形成方法について説明する。
本発明に適用するフォトリソグラフィー法とは、硬化性樹脂等のレジスト塗布、予備加熱、露光、現像(未硬化樹脂の除去)、リンス、有機溶媒を含むエッチング液によるエッチング処理、レジスト剥離の各工程を経ることにより、透明電極を、図3〜図5に示すような所望のパターンに加工する方法である。
本発明では、従来公知の一般的なフォトリソグラフィー法を適宜利用することができる。例えば、レジストとしてはポジ型又はネガ型のいずれのレジストでも使用可能である。また、レジスト塗布後、必要に応じて予備加熱又はプリベークを実施することができる。露光に際しては、所期のパターンを有するパターンマスクを配置し、その上から、用いたレジストに適合する波長の光、一般には紫外線や電子線等を照射すればよい。露光後、用いたレジストに適合する現像液で現像を行う。現像後、水等のリンス液で現像を止めるとともに洗浄を行うことで、レジストパターンが形成される。次いで、形成されたレジストパターンを、必要に応じて前処理又はポストベークを実施してから、有機溶媒を含むエッチング液によるエッチングで、レジストで保護されていない領域の中間層の溶解及び導電性層の除去を行う。エッチング後、残留するレジストを剥離することによって、所期のパターンを有する透明電極が得られる。このように、本発明に適用されるフォトリソグラフィー法は、当業者に一般に認識されている方法であり、その具体的な適用態様は当業者であれば所期の目的に応じて容易に選定することができる。
次いで、図を交えて、本発明に適用可能な電極パターンの形成方法について説明する。
図2は、透明電極に電極パターンをフォトリソグラフィー法で形成する一例を示す工程フロー図である。
第1ステップとして、図2の(a)で示すように、透明基板11上に中間層3及び導電性層5を積層して、未加工の透明電極1を作製する。
次いで、図2の(b)で示すレジスト膜の形成工程で、導電性層5上に感光性樹脂組成物等から構成されるレジスト膜6を均一に塗設する。感光性樹脂組成物としては、ネガ型感光性樹脂組成物あるいはポジ型感光性樹脂組成物を用いることができる。
塗布方法としては、マイクログラビアコーティング、スピンコーティング、ディップコーティング、カーテンフローコーティング、ロールコーティング、スプレーコーティング、スリットコーティングなどの公知の方法によって導電性層上に塗布し、ホットプレート、オーブンなどの加熱装置でプリベークすることができる。プリベークは、例えば、ホットプレート等を用いて、50℃以上、150℃以下の範囲で30秒〜30分間行うことができる。
次いで、図2の(c)に示す露光工程で、所定の電極パターンにより作製したマスク7を介して、ステッパー、ミラープロジェクションマスクアライナー(MPA)、パラレルライトマスクアライナーなどの露光機8を用いて、10〜4000J/m程度(波長365nm露光量換算)の光を、次工程で除去するレジスト膜6Aに照射する。露光光源に制限はなく、紫外線、電子線や、KrF(波長248nm)レーザー、ArF(波長193nm)レーザーなどを用いることができる。
次いで、図2の(d)に示す現像工程で、露光済みの透明電極を、現像液に浸漬して、光照射した領域のレジスト膜6Aを溶解する。
現像方法としては、シャワー、ディッピング、パドルなどの方法で現像液に5秒〜10分間浸漬することが好ましい。現像液としては、公知のアルカリ現像液を用いることができる。具体例としては、アルカリ金属の水酸化物、炭酸塩、リン酸塩、ケイ酸塩、ホウ酸塩などの無機アルカリ、2−ジエチルアミノエタノール、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンなどのアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド、コリンなどの4級アンモニウム塩を1種あるいは2種以上含む水溶液などが挙げられる。現像後、水でリンスすることが好ましく、続いて50℃以上150℃以下の範囲で乾燥ベークを行ってもよい。
次いで、図2の(e)に示すように、上記説明したエッチング液9を用いたエッチング処理を行う。
具体的には、例えば、エーテルアルコール、ケトン、エステル等の有機溶媒を含むエッチング液に、透明電極1を浸漬し、レジスト膜6で保護されていない領域の中間層3を溶解するとともに及び中間層に保持されている薄膜の導電性層も同時に除去することにより、所定の電極パターンを形成する。
最後に、図2の(f)に示すように、レジスト膜剥離液、例えば、ナガセケムテックス社製のN−300に浸漬して、導電性層5上のレジスト膜6を除去する。
《タッチパネルの構成》
次いで、本発明の透明電極を適用することができるタッチパネルの構成について、代表的な実施形態の詳細について説明する。
〔実施形態1:2枚の透明基板上に2層の透明電極を設けた構成〕
図3は、上述した本発明の透明電極を用い、後述の図7で示す構成からなるタッチパネル21aの概略構成を示す斜視図である。また、図4は、タッチパネル21の電極構成を示す2枚の透明電極1−1及び1−2の平面図である。
これらの図に示すタッチパネル21は、投影型静電容量式のタッチパネルである。このタッチパネル21は、透明基板11−1、11−2の一主面上に、第1の透明電極1−1及び第2の透明電極1−2がこの順に配置され、この上部が前面板13で覆われている。
第1の透明電極1−1及び第2の透明電極1−2は、それぞれが、図1及び図2を用いて説明したタッチパネル用の電極パターンが形成された透明電極1である。したがって、第1の透明電極1−1は、第1の中間層3−1と第1の導電性層5−1とがこの順に積層された構成である。同様に第2の透明電極1−2は、第2の中間層3−2と第2の導電性層5−2とがこの順に積層された構成である。
以下、タッチパネル21を構成する主要各層の詳細を、透明基板11−1、11−2側から順に説明する。なお、ここでは、図3及び図4とともに、図5の電極部分の平面模式図及び、そのA−A断面に相当する図6の断面模式図を用いて説明を行う。また、図1及び図2で説明したと同様の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
(透明基板11)
図3及び図5に示す透明基板11−1、11−2は、先の透明電極1で説明した基板11(以下、透明基板ともいう。)である。
(第1の中間層3−1(第1の透明電極1−1))
第1の中間層3−1は、先の透明電極1で説明した中間層3であり、基板11上に成膜されている。ここでは一例として、第1の中間層3−1は、透明基板11−1に導電性層5−1と同一形状にパターニングされている。
(第1の導電性層5−1(第1の透明電極1−1))
第1の導電性層5−1は、先の透明電極で説明した導電性層5であり、第1の中間層3−1上においてパターニングされた複数のx電極パターン5x1、5x2、(中略)等として構成されている。各x電極パターン5x1、5x2、(中略)等は、それぞれがx方向に延設された状態で、互いに間隔を保って並列に配置されている。これらの各x電極パターン5x1、5x2、(中略)等は、例えば、x方向に配列されたひし形のパターン部分を、ひし形の頂点付近において、x方向に直線状に連結した形状であることとする。
また、各x電極パターン5x1、5x2、(中略)等には、それぞれの端部にx配線17xが接続されている。これらのx配線17xは、透明基板11−1上における周縁領域において配線され、透明基板11−1の端縁に引き出されている。このような各x配線17xは、x電極パターン5x1、5x2、(中略)等と同様に、銅、金、又は白金を主成分とする第1の導電性層5−1として構成されたものである。
(第2の中間層3−2(第2の透明電極1−2))
第2の中間層3−2は、先の透明電極1で説明した中間層3であり、透明基板11−2上に成膜されていて、第2の電極層5−2と同一形状にパターニングされている。
(第2の電極層5−2(第2の透明電極1−2))
第2の電極層5−2は、先の透明電極1で説明した導電性層5であり、第2の中間層3−2上においてパターニングされた複数のy電極パターン5y1、5y2、(中略)等として構成されている。各y電極パターン5y1、5y2、(中略)等は、それぞれがx電極パターン5x1、5x2、(中略)等と直交するy方向に延設された状態で、互いに間隔を保って並列に配置されている。これらの各y電極パターン5y1、5y2、(中略)等は、例えば、y方向に配列されたひし形のパターン部分を、ひし形の頂点付近においてy方向に直線状に連結した形状であることとする。
ここで、図5に示すように、各y電極パターン5y1、5y2、(中略)等を構成するひし形のパターン部分は、x電極パターン5x1、5x2、(中略)等を形成するひし形のパターン部分に対して平面視的に重なることのない位置に配置され、重なることのない範囲でできるだけ大きな範囲を占める形状となっている。これにより、透明基板11−2の中央部の領域においては、第1の電極層5−1で構成されたx電極パターン5x1、5x2、(中略)等及び第2の電極層5−2で構成されたy電極パターン5y1、5y2、(中略)等が視認され難い構成となっている。
各y電極パターン5y1、5y2、(中略)等は、ひし形の電極パターンの連結部分においてのみ、各x電極パターン5x1、5x2、(中略)等と積層される。これらの積層部分には、第2の中間層3−2が挟持され、これによってx電極パターン5x1、5x2、(中略)等とy電極パターン5y1、5y2、(中略)等との絶縁性が確保された状態となっている。
また、各y電極パターン5y1、5y2、(中略)等には、それぞれの端部にy配線17yが接続されている。これらのy配線17yは、透明基板11−2上における周縁領域において配線され、x配線17xと並ぶように透明基板11−2の端縁に引き出されている。このような各y配線17yは、y電極パターン5y1、5y2、(中略)等と同様に、銅、金、又は白金を主成分とする第2の導電性層5−2として構成されたものである。
なお、透明基板11−2の端縁に引き出されたx配線17x及びy配線17yには、フレキシブルプリント基板などが接続される構成となっている。
(前面板13)
図3に図示した前面板13は、タッチパネル21において入力位置に対応する部分が押圧される板材である。このような前面板13は、光透過性を有する板材であって、透明基板11と同様のものが用いられる。またこの前面板13は、必要に応じた光学特性を備えた材料を選択して用いても良い。このような前面板13は、例えば接着剤15に(図6参照。)よって第2の透明電極1−2側に張り合わせられていることとする。この接着剤15は、光透過性を有するものであれば、特に材料が限定されることはない。
またこの前面板13には、透明基板11−1及び11−2の周縁を覆う遮光膜が設けられ、x電極パターン5x1、5x2、(中略)等から引き出されたx配線17x、及びy電極パターン5y1、5y2、(中略)等から引き出されたy配線17yが、前面板13側から視認されることを防止している。
(タッチパネルの動作)
以上のようなタッチパネル21を動作させる場合、x配線17x及びy配線17yに接続させたフレキシブルプリント基板などから、x電極パターン5x1、5x2、(中略)等及びy電極パターン5y1、5y2、(中略)等に対して電圧を印加しておく。この状態で、前面板13の表面に指又はタッチペンが触れると、タッチパネル21内に存在する各部の容量が変化し、x電極パターン5x1、5x2、(中略)等及びy電極パターン5y1、5y2、(中略)等の電圧の変化となって現れる。この変化は、指又はタッチペンが触れた位置からの距離によって異なり、指又はタッチペンが触れた位置で最も大きくなる。このため、電圧の変化が最大となる、x電極パターン5x1、5x2、(中略)等及びy電極パターン5y1、5y2、(中略)等でアドレスされた位置が、指又はタッチペンが触れた位置として検出される。
(タッチパネル21の効果)
以上のようなタッチパネル21は、2層の透明電極1−1及び1−2として、先に説明した光透過性とともに充分な導電性を備えた透明電極を用いている。これにより、下地の表示画像の視認性を良好に保ちつつ、タッチパネル用の透明電極を大型化した際の電圧降下を抑えることができ、タッチパネル21の大型化をすることが可能となる。
特に、このタッチパネル21は、x電極パターン5x1、5x2、(中略)等及びこれに直交して配置された電極パターン5y1、5y2、(中略)等を有する投影型静電容量式である。このため、x電極パターン5x1、5x2、(中略)等及びy電極パターン5y1、5y2、(中略)等には、高い導電性が要求される。しかしながら、これらのx電極パターン5x1、5x2、(中略)等及びy電極パターン5y1、5y2、(中略)等は、先に説明したタッチパネル用透明電極の導電性層(電極層)5であるため、導電性を維持しつつ薄膜化が可能である。したがって、x電極パターン5x1、5x2、(中略)等及びy電極パターン5y1、5y2、(中略)等自体が視認され難くなり、タッチパネル21を介しての下地の表示画像の視認性を劣化させることをも防止できる。
図7は、実施形態のタッチパネルで、本発明で特に好ましく適用することができるタッチパネルの構成を説明するための断面模式図であり、図5に示したA−A断面に相当する図である。この図に示すタッチパネル21aは、2枚の透明基板11−1及び11−2の一主面上に、第1の透明電極1−1及び第2の透明電極1−2を設けた構成であり、それ以外の構成は先に説明した実施形態1と同様である。このため、先の実施形態1のタッチパネルと同様の構成には同様の符号を付し、重複する説明は省略する。
すなわち、図7に示す変形例のタッチパネル21aは、第1の透明電極1−1が設けられた第1の基板11−1と、第2の透明電極1−2が設けられた第2の基板11−2とを有する。これらの基板11−1及び11−2は、透明電極1−1及び1−2の形成面を同一方向に向け、第1の基板11−1における第1の透明電極1−1の形成面上に、第2の基板11−2が位置するように重ねて配置されている。
第1の基板11−1及び第2の基板11−2は、先の透明電極で説明したと同様の基板11である。また、第1の透明電極1−1及び第2の透明電極1−2は、それぞれが先の実施形態1と同様の構成であり、それぞれが基板11−1及び11−2上に、中間層3−1及び3−2と、導電性層5−1及び5−2をこの順に積層した構成となっている。
さらに各導電性層5−1及び5−2の構成も、先の実施形態1と同様であり、第1の導電性層5−1で構成されたx電極パターン5x1、5x2、(中略)等、及び第2の電極層5−2で構成されたy電極パターン5y1、5y2、(中略)等が視認され難いパターン構成及び配置構成となっている。ただし、第1の導電性層5−1と第2の導電性層5−2との間は、第2の基板11−2と第2の中間層3−2とによって絶縁性が確保された状態となっている。
また、積層された第1の基板11−1と第2の基板11−2との間は、ここでの図示を省略した接着剤によって貼り合せられており、この接着剤によっても、第1の電極層5−1と第2の電極層5−2とが絶縁される。
〔実施形態2:透明基板上に2層の透明電極を設けた構成〕
図6は、実施形態のタッチパネルの他の一例を説明するための断面模式図であり、図6に示すタッチパネル21は、透明基板11上に第1の透明電極1−1及び第2の透明電極1−2を設けた構成であり、それ以外の構成は先の実施形態1と同様である。このため、先の実施形態のタッチパネルと同様の構成には同様の符号を付し、重複する説明は省略する。
〔液晶表示装置への適用〕
次いで、電子デバイスとして液晶表示装置への本発明の透明電極を組み入れた例を説明する。
図8は、本発明の透明電極を具備した液晶表示装置の構成の一例を示す概略断面図である。液晶表示装置は一例であり、本発明はこれに限定されるものではない。
液晶表示装置は、一般に、液晶ディスプレイ、液晶パネルともいわれ、液晶の駆動方式によって、STN、TN、OCB、HAN、VA(MVA、PVA)、IPS、OCBなどの各種駆動方式の液晶表示装置が挙げられる。通常、液晶ディプレイとしてTVや液晶パネル等好ましく用いられる方式は、VA(MVA,PVA)型液晶表示装置である。
図8で示す液晶表示装置100は、バックライト側から、出入りの光をコントロールする偏光フィルター101A、電極部から電気が他の領域に漏洩しないようにするガラス基板102A、液晶ディスプレイを駆動するための本発明の透明電極1A、液晶分子を一定方向に配向させるための配向膜104A、液晶105、スペーサー106、他方の配向膜104B、他方の透明電極1B、RGBのそれぞれのフィルターをかけ、色を表示するカラーフィルター103、他方のガラス基板102B、他方の偏光フィルター101Bで構成され、本発明の透明電極1A及び1Bは、優れた導電性と光透過性とを兼ね備え、かつ低シート抵抗値を有し、耐久性(耐熱性及び耐酸素性)に優れている。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
《透明電極の作製》
以下に示す方法に従って、透明電極1〜64を、導電性領域の面積が5cm×5cmとなる条件で作製した。透明電極1〜3は、導電性層のみの構造の透明電極として作製し、透明電極4〜61は、中間層3と導電性層5との積層構造からなる透明電極を作製し、透明電極62〜64は、中間層3A、導電性層5及び第2の中間層3Bの3層の積層構造からなる透明電極を作製した。
〔透明電極1の作製〕
下記に示す方法に従って、導電性層のみ構造からなる比較例の透明電極1を作製した。
透明な無アルカリガラス製の基板を、市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定し、これを真空蒸着装置の真空槽内に取り付けた。一方、タングステン製の抵抗加熱ボートに銅(Cu)を装填し、当該真空槽内に取り付けた。次に、真空槽内を4×10−4Paまで減圧した後、抵抗加熱ボートを通電及び加熱し、蒸着速度0.1〜0.2nm/秒の範囲内で、基板上に銅が100質量%で構成される層厚が8nmの導電性層の単膜を蒸着して、透明電極1を作製した。
〔透明電極2及び3の作製〕
上記透明電極1の作製において、導電性層の構成金属元素を銅に代えて、それぞれ金(Au)、白金(Pt)を用いた以外は同様にして、単膜の導電性層から構成される透明電極2及び3を作製した。
(湿式塗布法による中間層の形成)
以下の実施例において中間層は湿式塗布法により形成した。
また、還元性酸化被膜除去剤として以下の化合物を用いた。
チオグリコール酸
チオグリコール酸アンモニウム
チオリンンゴ酸
〔透明電極4の作製〕
〈中間層形成用塗布液の調製〉
芳香族性に関与しない非共有電子対を持つ窒素原子を有する有機化合物:例示化合物(27) 1.0質量%
メチルエチルケトン 99.0質量%
メチルエチルケトンに例示化合物(27)を添加し、加熱しながら溶解して、1.0質量%の中間層形成用塗布液を調製した。
〈中間層の形成〉
透明な無アルカリガラス製の基板上に、上記調製した中間層形成用塗布液を、スピンコート法により湿式塗布を行い、薄膜を形成した。次いで、90℃で1時間加熱乾燥し、層厚が35nmの中間層を形成した。
(導電性層の形成)
次に、中間層を形成した基板を第1真空槽に移し、第1真空槽を4×10−4Paまで減圧した後、銅の入った加熱ボートを通電及び加熱し、蒸着速度0.1〜0.2nm/秒の範囲で、層厚が8nmの銅単独からなる導電性層を蒸着して、透明電極4を得た。
〔透明電極5及び6作製〕
上記透明電極4の作製において、導電性層の構成金属元素を銅に代えて、それぞれ金(Au)、白金(Pt)を用いた以外は同様にして、中間層及び導電性層から構成される透明電極5及び6を作製した。
〔透明電極7の作製〕
〈中間層形成用塗布液の調製〉
チオグリコール酸(還元性酸化被膜除去剤) 1.0質量%
メチルエチルケトン 99.0質量%
メチルエチルケトンにチオグリコール酸を添加し、加熱しながら溶解して、1.0質量%の中間層形成用塗布液を調製した。
〈中間層の形成〉
透明な無アルカリガラス製の基板上に、上記調製した中間層形成用塗布液を、スピンコート法により湿式塗布を行い、薄膜を形成した。次いで、90℃で1時間加熱乾燥し、層厚が35nmの中間層を形成した。
(導電性層の形成)
次に、中間層を形成した基板を第1真空槽に移し、第1真空槽を4×10−4Paまで減圧した後、銅の入った加熱ボートを通電及び加熱し、蒸着速度0.1〜0.2nm/秒の範囲で、層厚が8nmの銅単独からなる導電性層を蒸着して、透明電極7を得た。
〔透明電極8の作製〕
〈中間層形成用塗布液の調製〉
芳香族性に関与しない非共有電子対を持つ窒素原子を有する有機化合物:例示化合物(27) 0.95質量%
チオグリコール酸(還元性酸化被膜除去剤) 0.05質量%
メチルエチルケトン 99.00質量%
メチルエチルケトンに各化合物を添加し、加熱しながら溶解して、1.0質量%の中間層形成用塗布液を調製した。
〈中間層の形成〉
透明な無アルカリガラス製の基板上に、上記調製した中間層形成用塗布液を、スピンコート法により湿式塗布を行い、薄膜を形成した。次いで、90℃で1時間加熱乾燥し、層厚が35nmの中間層を形成した。
(導電性層の形成)
次に、あらかじめ用意した、第2真空槽に移し中間層を形成した基板を真空状態のまま第2真空槽に移し、第2真空槽を4×10−4Paまで減圧した後、銅に代えて、銀の入った加熱ボートを通電及び加熱し、蒸着速度0.1〜0.2nm/秒の範囲で、層厚が8nmの銀単独からなる導電性層を蒸着し、中間層とこの上部に銀からなる導電性層を積層した透明電極8を得た。
〔透明電極9〜61の作製〕
上記透明電極8の作製において、芳香族性に関与しない非共有電子対を持つ窒素原子を有する有機化合物と還元反応による酸化被膜除去材のそれぞれの種類と含有比率、導電性層の材料と層厚、及び基板の種類を表1〜表3のようにそれぞれ変えて、透明電極8と同様にして透明電極9〜61を作製した。
〔透明電極62〜64の作製〕
上記透明電極12(導電性層:銅)、透明電極13(導電性層:金)、透明電極14(導電性層:白金)の作製において、各導電性層を形成したのち、導電性層上に、中間層3Aと同様の内容で、第2の中間層3Bを形成し、導電性層5を中間層3A及び第2の中間層3Bで挟持した構成とした以外は同様にして、透明電極62〜64を作製した。
なお、表1〜表3において以下の略号を用いた。
化合物(N):芳香族性に関与しない非共有電子対を持つ窒素原子を有する有機化合物
化合物(R):還元性酸化被膜除去剤
R1:チオグリコール酸
R2:チオグリコール酸アンモニウム
R3:チオリンンゴ酸
比較1:比較化合物1
比較2:比較化合物2
比較3:比較化合物3
PET:ポリエチレンテレフタレートフィルム
比較化合物1〜3の構造式を以下に示す。
Figure 2015122254
《透明電極の評価》
上記作製した透明電極1〜64について、下記の方法に従って、光透過率、シート抵抗値及び経時耐久性(酸素環境下での電極寿命)の測定及び評価を行った。
〔光透過率の測定〕
上記作製した各透明電極について、分光光度計(日立製作所製U−3300)を用い、各透明電極の作製に用いた基板をリファレンスとして、波長590nmにおける光透過率(%)を測定した。
〔シート抵抗値の測定〕
上記作製した各透明電極について、抵抗率計(三菱化学社製MCP−T610)を用い、4端子4探針法定電流印加方式でシート抵抗値(Ω/□)の測定を行った。
〔経時耐久性の評価:酸素環境下での透明電極の寿命測定〕
作製した各透明電極に、酸素雰囲気下(温度:23℃、酸素濃度:100体積%の環境)で、10Aの電流を流し続け、シート抵抗値が初期値の2倍となるに要する時間を測定した。
次いで、透明電極8(導電性層:銀)のシート抵抗値が初期値の2倍となるに要する時間を100とする相対値を求めこれを経時耐久性の尺度とした。数値が大きいほど、経時耐久性に優れ、透明電極寿命が長いことを表す。
以上により得られた結果を、表1〜表3に示す。
Figure 2015122254
Figure 2015122254
Figure 2015122254
表1〜表3に記載の結果より明らかなように記導電性層が銅、金又は白金で構成され、中間層が、芳香族性に関与しない非共有電子対を持つ窒素原子を有する有機化合物、及び副成分として還元性酸化被膜除去剤を含有する構成である本発明の透明電極は、比較例に対し、光透過性、シート抵抗特性及び熱及び酸素に対する耐久性に優れ、透明電極寿命が長いことがわかる。
従来広く用いられてきた銀で構成される導電性層を有する透明電極8に対し、本発明の透明電極は、電極としての光透過性が向上し、シート抵抗値も低下し、特に、酸化耐性に優れた効果を発現していることがわかる。
また、導電性層の構成金属として銅を用いた透明電極は、金を用いた透明電極、又は白金を用いた透明電極に対し、各項目についてより優れた効果を発現している。
また、透明電極57〜61において、中間層における化合物(N)と化合物(O)の比率としては、99.5:0.5〜90:10の範囲内であることがより優れた効果を有し、更に99:1〜95:5の範囲内で、特に優れた効果が発揮されている。
また、また、透明電極62〜64において、導電性層5を中間層3A及び第2の中間層3Bで挟持した構成とすることにより、表面反射が抑えられ、透過率が向上していることが分かる。また、透明電極の経時耐久性がより向上し、加えて、導電性層の擦り傷耐性が改良されることを確認することができた。
1、1−1、1−2、1A、1B 透明電極
3、3A、3B、3−1、3−2 中間層
5、5−1、5−2 導電性層
5x1、5x2、5x3等 x電極パターン(第1の導電性層)
5y1,5y2、5y3等 y電極パターン(第2の導電性層)
6 レジスト膜
7 マスク
8 露光機
9 エッチング液
11 透明基板
13 前面板
15 接着剤
17、17x,17y 配線
21、21a タッチパネル
100 液晶表示装置
101A、101B 偏光フィルター
102A、102B ガラス基板
103 カラーフィルター
104A、104B 配向膜
105 液晶
106 スペーサー

Claims (6)

  1. 導電性層と、当該導電性層に隣接して設けられる中間層とを有する透明電極であって、
    前記導電性層が、銅、金及び白金から選ばれるいずれか1種の金属元素を主成分として含有し、
    前記中間層が、芳香族性に関与しない非共有電子対を持つ窒素原子を有する有機化合物を含有し、かつ還元性酸化被膜除去剤を副成分として含有することを特徴とする透明電極。
  2. 前記導電性層が、銅を主成分として含有することを特徴とする請求項1に記載の透明電極。
  3. 前記中間層が、前記還元性酸化被膜除去剤を、当該中間層の全質量に対して0.5〜10.0質量%の範囲内で含有していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の透明電極。
  4. 前記中間層が、前記還元性酸化被膜除去剤を、当該中間層の全質量に対して1.0〜5.0質量%の範囲内で含有していることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の透明電極。
  5. 前記導電性層を介して、更に前記中間層に対向する第2の中間層を有し、
    前記導電性層を前記中間層及び前記第2の中間層で挟持した構成であることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の透明電極。
  6. 請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の透明電極を具備していることを特徴とする電子デバイス。
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