JP2015120976A - Ni基鋳造超合金および該Ni基鋳造超合金からなる鋳造物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】質量%で、0.03〜0.15%のCと、0.005〜0.04%のBと、0.01〜1%のHfと、0.05%以下のZrと、3.5〜4.9%のAlと、4.4〜8%のTaと、2.6〜3.9%のTiと、0.05〜1%のNbと、8〜12%のCrと、1〜6.9%のCoと、4〜10%のWと、0.1〜0.95%のMoと、SiおよびFeの少なくとも一方を含有し、前記Siが含有される場合の成分量は0.02〜1.1%であり、前記Feが含有される場合の成分量は0.1〜3%であり、残部がNiと不可避不純物とからなるNi基鋳造超合金。Al+Ti+Siが8.8質量%以下であり、Co+Feが1〜6.9質量%であるNi基鋳造超合金。
【選択図】図1
Description
0.03質量%以上0.15質量%以下のC(炭素)と、
0.005質量%以上0.04質量%以下のB(ホウ素)と、
0.01質量%以上1質量%以下のHf(ハフニウム)と、
0.05質量%以下のZr(ジルコニウム)と、
3.5質量%以上4.9質量%以下のAl(アルミニウム)と、
4.4質量%以上8質量%以下のTa(タンタル)と、
2.6質量%以上3.9質量%以下のTi(チタン)と、
0.05質量%以上1質量%以下のNb(ニオブ)と、
8質量%以上12質量%以下のCr(クロム)と、
1質量%以上6.9質量%以下のCo(コバルト)と、
4質量%以上10質量%以下のW(タングステン)と、
0.1質量%以上0.95質量%以下のMo(モリブデン)と、
Si(ケイ素)およびFe(鉄)の少なくとも一方を含有し、前記Siが含有される場合の成分量は0.02質量%以上1.1質量%以下であり、前記Feが含有される場合の成分量は0.1質量%以上3質量%以下であり、
残部がNi(ニッケル)と不可避不純物とからなることを特徴とするNi基鋳造超合金を提供する。
(i)前記Siが0.4質量%超で含有され、前記Alと前記Tiと前記Siとの合計成分量が8.8質量%以下である。
(ii)前記Feが1質量%以上で含有され、前記Coと前記Feとの合計成分量が1質量%以上6.9質量%以下である。
(iii)前記Coの成分量が1質量%以上4.9質量%以下であり、前記Moの成分量が0.1質量%以上0.45質量%以下である。
(iv)前記鋳造物は、その母相が一方向凝固法により鋳造された柱状結晶および/または単結晶から構成されている。
(v)前記鋳造物は、タービンのタービン翼である。
Ni基超合金において析出強化の効果を極大化するためには、基本的にγ’相の分散析出量を増やし、かつγ相の固相線温度(液相が生成する温度)を低下させる元素の添加を抑制することが望ましい。これは、γ’相を分散析出させる溶体化−時効熱処理において、γ’相の固溶温度(γ’相が固溶する温度)以上でかつγ相の固相線温度未満のできるだけ高い温度で溶体化熱処理を行うことにより、時効熱処理でのγ’相の微細分散析出が促進されるためである。
本発明に係るNi基鋳造超合金の組成について説明する。
C成分は、高温強度と結晶粒界強度との両立を図る上で重要な元素である。C成分の添加量が増えるに従って、鋳造物の凝固方向(結晶粒の長手方向)のクリープ破断強度は低下する傾向があるが、凝固方向に垂直方向(結晶粒の短手方向、すなわち結晶粒界に垂直な方向)のクリープ破断強度は0.15質量%の添加量までは向上する傾向がある。高温強度と結晶粒界強度とを両立するためには、C成分量は0.03質量%以上0.15質量%以下が好ましく、0.05質量%以上0.12質量%以下がより好ましく、0.05質量%以上0.09質量%以下が更に好ましい。C成分量が0.03質量%未満になると、凝固方向のクリープ破断強度は優れているが、結晶粒界強度が低いため粒界割れを抑制する効果が得られない。一方、C成分を過剰に(0.15質量%超)添加すると、クリープ破断強度が急激に低下する。
B成分は、結晶粒界に偏析し凝固方向の強度(すなわち、高温強度)と凝固方向に垂直方向の強度(すなわち、結晶粒界強度)とを両立させる元素である。高温強度と結晶粒界強度とを両立するためには、B成分量は0.005質量%以上0.04質量%以下が好ましく、0.016質量%以上0.035質量%以下がより好ましく、0.016質量%以上0.025質量%以下が更に好ましい。B成分量が0.005質量%未満になると、上記の効果が十分に得られない。一方、B成分を過剰に(0.04質量%超)添加すると、γ相の固相線温度を大きく低下させるため熱処理時に部分溶融が生じ易くなり、クリープ破断強度を著しく低下させる。
Hf成分は、その一部がγ相に固溶し、残部がNi3Hfの金属間化合物(γ’相)を形成する。Hf成分の添加は、凝固方向のクリープ破断強度を低下させることなく、凝固方向に垂直方向のクリープ破断強度と引張強さとの両方を改善する効果がある。さらに、鋳造物表面に形成される酸化被膜の剥離を抑制し、耐酸化性を向上させる効果も見られる。Hf成分量は0.01質量%以上1質量%以下が好ましく、0.1質量%以上0.5質量%以下がより好ましく、0.15質量%以上0.3質量%以下が更に好ましい。Hf成分量が0.01質量%未満になると、上記の効果が十分に得られない。一方、Hf成分を過剰に(1質量%超)添加すると、γ相の固相線温度を著しく低下させるためγ’相の溶体化熱処理の完全な遂行が困難になり、クリープ破断強度を著しく低下させる。
Zr成分は、その一部がNi3Zrの金属間化合物(γ’相)を形成する。一方、Zr成分の過剰の添加は、γ相の固相線温度を著しく低下させるためγ’相の溶体化熱処理の完全な遂行が困難になり、クリープ破断強度を著しく低下させる。そのため、Zr成分量は0.05質量%以下が好ましく、0.02質量%以下がより好ましく、実質的に無添加(不可避混入程度)が更に好ましい。
Al成分は、Ni基超合金の高温強化因子であるγ’相を形成するための必須元素である。また、Al成分は、鋳造物表面に酸化物被膜(Al2O3)を形成することで耐酸化性と耐食性との向上に寄与する。Al成分量は3.5質量%以上4.9質量%以下が好ましく、4質量%以上4.6質量%以下がより好ましく、4質量%以上4.5質量%以下が更に好ましい。Al成分量が3.5質量%未満になると、上記の効果が十分に得られない。一方、Al成分を過剰に(4.9質量%超)添加すると、鋳造直後(凝固直後)の共晶γ’相が多くなり過ぎて、溶体化熱処理の限られた時間内に全ての共晶γ’相をγ相中に固溶させるのが困難になる。共晶γ’相は、時効熱処理により析出するγ’相と異なり、クリープ現象での亀裂の起点となる可能性があることから、できるだけ残存させないことが望ましい。なお、本発明のNi基鋳造超合金は、共晶γ’相が少し残存する状態(溶体化熱処理によって共晶γ’相を完全にγ相中に固溶させられなかった状態)であっても優れた高温強度を示すことができる。
Ta成分は、Al成分と共にγ’相を形成し高温強度を向上させる効果がある。Ta成分量は4.4質量%以上8質量%以下が好ましく、5質量%以上8質量%以下がより好ましく、6.1質量%以上8質量%以下が更に好ましい。Ta成分量が4.4質量%未満になると、上記の効果が十分に得られない。一方、Ta成分を過剰に(8質量%超)添加すると、γ’相の固溶温度が上昇してγ’相の溶体化熱処理の完全な遂行が困難になり、クリープ破断強度を低下させる。
Ti成分は、Al成分とTa成分と共にγ’相(Ni3(Al,Ta,Ti))を形成し高温強度を向上させる効果がある。さらに、Ti成分は、超合金の高温における耐食性(例えば、溶融塩腐食に対する耐食性)を大きく向上させる効果がある。Ti成分量は2.6質量%以上3.9質量%以下が好ましく、3質量%以上3.9質量%以下がより好ましく、3.4質量%以上3.6質量%以下が更に好ましい。Ti成分量が2.6質量%未満になると、上記の効果が十分に得られない。一方、Ti成分を過剰に(3.9質量%超)添加すると、超合金の耐酸化性を劣化させると共に脆化相のη相(Ni3Ti相)が析出し易くなる。
Nb成分は、Al成分とTi成分と共にγ’相(Ni3(Al,Nb,Ti))を形成し高温強度を向上させる効果がある。また、超合金の高温における耐食性を改善する効果もある。Nb成分量は0.05質量%以上1質量%以下が好ましく、0.1質量%以上0.8質量%以下がより好ましく、0.1質量%以上0.5質量%以下が更に好ましい。Nb成分量が0.05質量%未満になると、上記の効果が十分に得られない。一方、本発明のようにTi成分量が比較的多いNi基超合金にNb成分を過剰に(1質量%超)添加すると、脆化相のη相が析出し易くなる。
Cr成分は、γ相中に固溶すると共に、鋳造物表面に酸化物被膜(Cr2O3)を形成して耐食性と耐酸化性とを向上させる効果がある。Cr成分量は8質量%以上12質量%以下が好ましく、9質量%以上10.9質量%以下がより好ましく、9.5質量%以上10.9質量%以下が更に好ましい。Cr成分量が8質量%未満になると、上記の効果が十分に得られない。一方、Cr成分を過剰に(12質量%超)添加すると、固溶強化元素(例えば、W)の固溶可能量を低下させて固溶強化の効果を減じさせる。
Co成分は、Niに近い元素でありNiと置換する形でγ相中に固溶し、クリープ破断強度を向上させると共に耐食性を向上させる効果がある。Co成分量は1質量%以上6.9質量%以下が好ましく、1質量%以上5.9質量%以下がより好ましく、1質量%以上4.9質量%以下が更に好ましい。Co成分量が1質量%未満になると、上記の効果が十分に得られない。一方、Co成分を過剰に(6.9質量%超)添加すると、γ’相の析出量を減少させて高温強度を低下させる。
W成分は、γ相中に固溶して高温強度を向上させる(固溶強化する)効果がある。W成分量は4質量%以上10質量%以下が好ましく、5質量%以上8質量%以下がより好ましい。W成分量が4質量%未満になると、上記の効果が十分に得られない。一方、W成分を過剰に(10質量%超)添加すると、Wを主成分とする針状の析出物が析出して高温強度が低下する。
Mo成分は、Cr成分と同様に耐食性を向上させる効果がある。また、Wと同様に固溶強化する効果がある。Mo成分量は0.1質量%以上0.95質量%以下が好ましく、0.1質量%以上0.45質量%以下がより好ましく、0.35質量%以上0.45質量%以下が更に好ましい。Mo成分量が0.1質量%未満になると、上記の効果が十分に得られない。一方、Mo成分を過剰に(0.95質量%超)添加すると、高温雰囲気中での耐酸化性を大きく低下させる。
Si成分は、Ni基超合金において、一般的に耐酸化性を向上させる効果がある。一方、Si成分は、Al成分と置換する元素であり、Al成分とTi成分と共にγ’相を形成するが、γ’相の格子定数を変化させてクリープ破断強度を低下させるマイナス効果も有する。そのため、従来の単結晶材用Ni基超合金では、クリープ破断強度の重要性からSi成分を不純物として扱い、Si成分量は0.01質量%以下と規定されている。
Fe成分は、Ni基超合金中のCo成分と容易に置換する元素であり、超合金のクリープ破断強度を低下させる元素と考えられてきた。また、Fe成分は、自身の耐酸化性が悪いことから、Ni基超合金の耐酸化性を低下させる元素と考えられてきた。そのため、従来の単結晶材用Ni基超合金では、Fe成分を不純物として扱い、Fe成分量は0.02質量%以下と規定されている。
比較超合金1〜4(CS-1〜CS-4)および発明超合金1〜11(IS-1〜IS-11)を用意した。各超合金の名目組成を表1〜表2に示す。比較超合金1(CS-1)は、特許文献1(特開昭60-211031)に記載されている超合金(CMSX-4、登録商標)であり、市販の単結晶材用Ni基超合金で最も有名なものである。比較超合金2(CS-2)は、特許文献3(特開平5-59474)に記載されているNi基超合金(Rene’ N5)であり、一部の発電用ガスタービンの動翼として使用されている。比較超合金1〜2は、組成としてC,B,Si,Feを実質的に含まずReを3質量%含み、高温でのクリープ破断強度が高いという特徴がある。従来超合金3(CS-3)は、「Superalloys 1996,Eighth International Symposium」で開示された単結晶材用Ni基超合金である。比較超合金3は、Re,Si,Feを実質的に含まずC,Bを含み、従来超合金1〜2よりも結晶粒界強度が高い材料とされている。
単結晶材は、次のような手順で作製した。はじめに、真空誘導溶解炉を用いて、表1〜2に示した名目組成を有するマスターインゴットを溶製した。次に、一方向凝固炉を用いて、当該マスターインゴットから単結晶材(直径15 mm、長さ180 mm)を鋳造した。鋳造条件は、鋳造温度を1800 K(1527℃)とし、凝固速度を20 cm/hとした。鋳造後、溶体化熱処理(1493 K(1220℃)まで4時間で昇温して2時間保持し、更に1513 K(1240℃)まで10分間で昇温して2時間保持した後、室温まで空冷)を施した。溶体化熱処理に続いて時効熱処理(1373 K(1100℃)まで昇温して4時間保持し空冷した後、1173 K(900℃)まで昇温して20時間保持し空冷)を施した。その後、熱処理した単結晶材に対して試験片加工を行い、試験評価用の試料(CS-1〜CS-4およびIS-1〜IS-11)を作製した。
柱状結晶材は、次のような手順で作製した。はじめに、真空誘導溶解炉を用いて、比較超合金のCS-3と発明超合金のIS-1とのマスターインゴットを溶製した。次に、一方向凝固炉を用いて、当該マスターインゴットから板状の柱状結晶材(幅100 mm、長さ220 mm、厚さ15 mm)を鋳造した。柱状結晶材の長さ方向が凝固方向である。鋳造後、溶体化熱処理と時効熱処理とを実施した。鋳造条件、溶体化熱処理条件、および時効熱処理条件は、先の単結晶材の場合と同じにした。
次に、本発明に係る鋳造物として、発電用ガスタービンのタービン翼(動翼、静翼)を作製した。図2は、本発明に係るタービン動翼の一例を示す斜視模式図である。図3は、本発明に係るタービン静翼の一例を示す斜視模式図である。例えば、出力30 MW級の発電用ガスタービンの場合、これらのタービン翼(動翼、静翼)の翼部の長さは170 mm程度である。
Claims (7)
- Ni基鋳造超合金であって、
0.03質量%以上0.15質量%以下のCと、
0.005質量%以上0.04質量%以下のBと、
0.01質量%以上1質量%以下のHfと、
0.05質量%以下のZrと、
3.5質量%以上4.9質量%以下のAlと、
4.4質量%以上8質量%以下のTaと、
2.6質量%以上3.9質量%以下のTiと、
0.05質量%以上1質量%以下のNbと、
8質量%以上12質量%以下のCrと、
1質量%以上6.9質量%以下のCoと、
4質量%以上10質量%以下のWと、
0.1質量%以上0.95質量%以下のMoと、
SiおよびFeの少なくとも一方を含有し、前記Siが含有される場合の成分量は0.02質量%以上1.1質量%以下であり、前記Feが含有される場合の成分量は0.1質量%以上3質量%以下であり、
残部がNiと不可避不純物とからなることを特徴とするNi基鋳造超合金。 - 請求項1に記載のNi基鋳造超合金において、
前記Siが0.4質量%超で含有され、前記Alと前記Tiと前記Siとの合計成分量が8.8質量%以下であることを特徴とするNi基鋳造超合金。 - 請求項1又は請求項2に記載のNi基鋳造超合金において、
前記Feが1質量%以上で含有され、前記Coと前記Feとの合計成分量が1質量%以上6.9質量%以下であることを特徴とするNi基鋳造超合金。 - 請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のNi基鋳造超合金において、
前記Coの成分量が1質量%以上4.9質量%以下であり、前記Moの成分量が0.1質量%以上0.45質量%以下であることを特徴とするNi基鋳造超合金。 - Ni基鋳造超合金からなる鋳造物であって、
前記Ni基鋳造超合金は、請求頂1乃至請求項4のいずれかに記載のNi基鋳造超合金であることを特徴とするNi基鋳造超合金からなる鋳造物。 - 請求項5に記載のNi基鋳造超合金からなる鋳造物において、
前記鋳造物は、その母相が一方向凝固法により鋳造された柱状結晶および/または単結晶から構成されていることを特徴とするNi基鋳造超合金からなる鋳造物。 - 請求項5又は請求項6に記載のNi基鋳造超合金からなる鋳造物において、
前記鋳造物は、タービンのタービン翼であることを特徴とするNi基鋳造超合金からなる鋳造物。
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