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JP2015195784A - 多孔質フィルターカラム、試薬カートリッジ及び核酸抽出キット - Google Patents

多孔質フィルターカラム、試薬カートリッジ及び核酸抽出キット Download PDF

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JP2015195784A JP2014076942A JP2014076942A JP2015195784A JP 2015195784 A JP2015195784 A JP 2015195784A JP 2014076942 A JP2014076942 A JP 2014076942A JP 2014076942 A JP2014076942 A JP 2014076942A JP 2015195784 A JP2015195784 A JP 2015195784A
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Shuichi Akashi
秀一 明石
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Abstract

【課題】多孔質フィルターをカラム内に隙間なく、かつひび割れを生じさせることなく確実に保持しつつ、溶液の浸透性および流体の移動量が高く維持でき、かつ作業者を選ぶことなく容易かつ確実に組み立てることが可能な多孔質フィルターカラムの提供。
【解決手段】上部容器11と、上部容器11の下部に結合される下部容器12と、下部容器12内に配置される多孔質フィルター21及び支持部材22を備え、上部容器11のフィルター押え兼用結合部1112を下部容器12の円筒部1211内に嵌合して上部容器11と下部容器12とを結合する。上部容器11と下部容器12とが結合された時にフィルター押え兼用結合部1112の係止部と下部容器12の円筒部1211に設けた係止部1214とを互いに係合することにより得られるフィルター押え兼用結合部1112からの押圧力で多孔質フィルター21をカラム内に保持するよう構成した。
【選択図】図7

Description

本発明は、液のろ過や、液体内の特定物質の抽出などに使用する簡易組み立て式の多孔質フィルターカラム、より詳しくは、多孔質フィルターの保持機構に特徴を有する多孔質フィルターカラム、及び当該多孔質フィルターカラムを用いた試薬カートリッジ並びに核酸抽出キットに関する。
多孔質フィルターは、液体のろ過や液体内に含まれる特定物質の抽出のためのツールとして、研究・工業用途で広く利用されている。このような場合、液体を通過させるカラム内で多孔質フィルターを保持しなければならない。通常は、カラム内で二つの部材により多孔質フィルターを挟んで固定する方法等が用いられている。近年、このような多孔質フィルターカラムは、遺伝子工学や遺伝子診療の分野で生体試料の核酸抽出に用いられることもある。
核酸の抽出・回収方法として、BOOM法が知られている。BOOM法は、カオトロピックイオンの存在下で核酸がシリカ表面に吸着することを利用し、カオトロピック試薬と固相シリカなどとを組み合わせた核酸の分離精製法であり、生体試料から溶解された核酸を多孔質のシリカに吸着させ、洗浄液で不純物を洗い流した後、溶出液によりシリカに吸着されている核酸を溶出して回収することで核酸の分離・精製を行う手法である。この手法を実施するために、多孔質フィルターが底部に保持された有底筒状カラムが利用されている。これらは、有底筒状カラムの底部に廃液用の排出口を有し、ポンプや遠心などの加圧手段により複数の試薬を多孔質フィルターに通過させて最終的に精製された核酸を回収するものである。
ポンプや遠心などの加圧手段を用いて、人の血液から核酸を精製する工程をより具体的に説明すると、(1)血液の溶解→(2)溶解した血液を多孔質フィルター上部へ移動させ、核酸を吸着させる→(3)多孔質フィルターの洗浄→(4)多孔質フィルターの乾燥→(5)多孔質フィルターからの核酸の回収、という流れとなる。
上記(2)〜(5)の工程では、いずれも多孔質フィルターに空気層による圧力をかける必要がある。ここで、例えば(2)の工程において、液体を通過させるカラム内の多孔質フィルターの保持に不具合があり、多孔質フィルターの端部とカラムとの間に隙間が生じている場合、溶解した血液の一部は多孔質フィルター内を通過することなく、隙間等から流れ出てしまう。
また、(4)の工程において多孔質フィルターの端部とカラムとの間に隙間が生じている場合、空気層による圧力が多孔質フィルター前面に均一にかからず、空気が隙間等から流れ出てしまい乾燥不十分となる。その結果、(3)の工程で用いた洗浄液に含まれるエタノール等が残留してしまい、多孔質フィルターから核酸を回収した際に、回収した核酸にエタノール等が混入してしまう。そのような混入があると、回収した核酸を用いた反応に関する不具合の発生率が高くなる。
核酸抽出用多孔質フィルターカラムにおいて、円筒状の外容器および多孔質フィルターを保持するための部材は、そのほとんどが樹脂製であり、精密な実験や測定に用いられることから、試料のコンタミネーションを防ぐために一度使用されたものは再度使用せずに捨てることが多い。しかも、円筒状の外容器と多孔質フィルターは一体となって取り扱われ、かつ、多孔質フィルターの端部とカラムとの間に隙間をなくすための多孔質フィルター保持部材が必要になる。
多孔質フィルターを保持するための部材としてはOリングが一般的に用いられており、多孔質フィルターが支持された有底筒状のカラムにおいて、Oリングが多孔質フィルターの外周縁部分に設置されているものがある。
しかし、Oリングに覆われるフィルター部分はろ過に利用できないため、ろ過に利用可能なフィルター面積が狭くなり、ろ過効率が低下する。その結果、加圧しても流体の移動量が増加しにくい。また、Oリングとカラムとの間に生じる隙間に溶液が残りやすいため、核酸抽出用途においては多孔質フィルターへの吸着効率・洗浄効率が共に悪く、試料の純度や収量が低下することが問題となっていた。
この問題に対し、特許文献1には、多孔質フィルターの外周縁部を全周にわたり抑えるフィルター保持部材が記載されている。この部材は、外周部を均一につぶすことができるため、隙間が生じにくく結果として圧力漏れ等が発生しずらい。しかし、嵌め合いであることから直径の精度が必要となり、またOリングと同様の課題を回避するため、肉厚を薄くしたため製造方法がかなり限定されてしまい高価な部品となってしまった。
また、組み立て時にフィルター保持部材を嵌める工程で、本来であれば一定量押し込むことにより、嵌合させることが理想的だが、フィルター保持部材やフィルターカラムの寸法のばらつきがあることから、押せるところまで押す方法で嵌合させている。しかし、フィルター部材が柔軟である場合、押し込むことにより潰れてフィルター保持部材の直下が潰されることとなり、結果として中心部が引っ張られフィルター部材が裂けてしまうことがあった。
この問題に対し、特許文献2には、金型へフィルターを硬質なものに変更し、フィルターを一次成型品に装着後金型へ設置して、一体成型する製造方法および形状が記載されている。この方法は、フィルター部材とフィルター保持部材が容易に密着し良好な接着が得られ、隙間の発生を最小限に抑えることができる。しかし、金型内にフィルターを設置し一体成型することにより、フィルターに不要な熱がかかり核酸抽出能力に不利な状態になる可能性が高く、またフィルター部材がガラス繊維のように柔らかい場合、射出成型時の圧力でフィルターが固定できず設計通りの形状が得られない。
特願2012−173417号 特開2010−94136号公報
本発明は、上記の課題を解決するもので、多孔質フィルターをカラム内に確実に保持しつつ、溶液の浸透性および流体の移動量が高く維持され、隙間の発生しない、熱がかからず、柔らかいフィルターでも容易に組み立て可能であり、フィルターのひび割れが発生せず、作業者を選ぶことなく容易かつ確実に組み立てることができる多孔質フィルターカラム、及びこれを用いた試薬カートリッジ並びに核酸抽出キットを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために請求項1の発明は、多孔質フィルターカラムであって、筒状の上部容器と、前記上部容器の下部に結合される下部容器と、前記下部容器内に配置された支持部材と、前記下部容器内で前記支持部材で支持され前記上部容器の軸心方向と直交する面上の全域に配置される多孔質フィルターとを備え、前記上部容器は、上端に開口部を有する円筒部と、前記円筒部の外周面下部に設けられた円筒状を呈するフィルター押え兼用結合部を有し、前記下部容器は、前記フィルター押え兼用結合部の外周に密嵌合される円筒部と、当該円筒部の下部を接続し排出口が形成された底面部を有し、前記フィルター押え兼用結合部の外周面には第1係止部が形成され、前記下部容器の円筒部の内周面には前記第1係止部と係合して前記下部容器の円筒部へのフィルター押え兼用結合部の嵌合深さを規定する第2係止部が形成され、前記フィルター押え兼用結合部が前記下部容器の前記円筒部に嵌合され前記第1係止部と前記第2係止部とが係合した状態で、前記フィルター押え兼用結合部の下端が前記多孔質フィルターの周縁部上面に一定の押圧力で当接するように構成されていることを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1に記載の多孔質フィルターカラムにおいて、前記第1係止部は前記フィルター押え兼用結合部の外周面に全周に亘りリング状に形成された凸部からなり、前記第2係止部は前記下部容器の円筒部の内周面に全周に亘りリング状に形成され前記凸部と係合する凹部からなることを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項2に記載の多孔質フィルターカラムにおいて、前記凸部の幅が0.2mm以上2mm以下であることを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項1乃至3の何れか1項に記載の多孔質フィルターカラムにおいて、前記多孔質フィルターが核酸吸着能を有することを特徴とする。
請求項5の発明は、被検体から核酸を分離精製するための試薬が収容され、分注チップを用いて液体が分注される試薬カートリッジであって、前記被検体を収容する被検体収容部と、前記試薬を収容する試薬収容部と、前記分離精製において発生する廃液を収容する廃液収容部と、請求項1乃至4の何れか1項に記載の多孔質フィルターカラムとを備えることを特徴とする。
請求項6の発明は、核酸精製キットであって、請求項5に記載の試薬カートリッジと、前記分注チップを複数収容するための分注チップ収容体とを備えることを特徴とする。
本発明の試薬カートリッジ並びに核酸精製キットに用いられる多孔質フィルターカラムによれば、上部容器と下部容器に互いに係合する係止部を設けたことにより、多孔質フィルターをカラム内へ確実に保持しつつ、溶液の浸透性及び流体の移動量が高く維持され、隙間の発生しない、柔らかいフィルターでも熱をかけたり、別部品を用いることなく組み立てることが可能であり、しかも、フィルター押え兼用結合部の下部容器への嵌合深さを規定の位置で止めることができるため、多孔質フィルターのひび割れも発生せず、作業者を選ぶことなく容易に組み立てることができる。
本発明にかかる多孔質フィルターカラムを用いた試薬カートリッジの一実施の形態を示す斜視図である。 本発明にかかる核酸精製キットにおける試薬カートリッジ及び分注チップラックを示す斜視図である。 本発明にかかる多孔質フィルターカラムの構成部品を分解して示す縦断面図である。 本発明にかかる多孔質フィルターカラムの一部の構成部品を分解して示す縦断面図である。 図3に示す多孔質フィルターカラムの組み立ての途中段階を示す縦断面図である。 図3に示す多孔質フィルターカラムの組み立ての終了段階を示す縦断面図である。 組み立て終了の多孔質フィルターカラムの縦断面及びフィルター押え兼用結合部の凸状係止部と円筒部の凹状係止部との係合部分を拡大して示した縦断面図である。 本発明にかかる多孔質フィルターカラムを構成する下部容器の他の例を示す一部切り欠きの斜視図である。
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して詳細を説明する。以下では、本発明に係わる多孔質フィルターカラムが収納され、核酸の分離精製に用いられる試薬カートリッジと、分注チップ収容体とを備える核酸精製キットについて説明する。
図1及び図2に示すように、核酸精製キット51は、被検体から核酸を抽出するための試薬などが収容された試薬カートリッジ100と、液体を分注するための分注チップ201が複数収容された分注チップラック(分注チップ収容体)200を備えている。本実施形態では、分注チップラック200は同径同大の分注チップ201を複数備えており、試薬カートリッジ100に収容された液体は複数の分注チップ201のいずれかによって分注操作あるいは攪拌操作され、分注チップ201によって液体間で交叉汚染が生じないようになっている。また、分注チップラック200は、使用後の分注チップ201を回収するための容器であり、分注チップ201の使用終了後は、感染性廃棄物として分注チップ201を分注チップラック200ごと廃棄することができる。
図1は、試薬カートリッジ100の斜視図を示すもので、この試薬カートリッジ100は、長方形状を呈し、かつ上面が解放されてなる略箱状に形成された本体101と、本体101の長手方向の中間部外側面に外方へ突出して形成された爪部102とを有している。この爪部102は、例えば試薬カートリッジ100が核酸分析装置などにセットされた時に、試薬カートリッジ100が転倒しないように核酸分析装置の一部と係合させるためのものである。
本体101の上面及び側面には、使用時に取り外される薄膜状の封止フィルム103が巻かれている。本体101の上面開口は封止フィルム103によって封止されており、これにより、本体101の内部に収容された多孔質フィルターカラム10などが本体101から脱落しないように保持している。また、封止フィルム103は、使用時まで本体101内部に塵や埃などの異物が混入することを防止する機能も有している。
図2は、封止フィルム103を除いた状態の試薬カートリッジ100と分注チップラック200の斜視図を示すもので、本体101の内部には、生体試料などの被検体が投入されるサンプルウェル(被検体収容部)110と、被検体から核酸を抽出するための試薬などが収容されている試薬ウェル部120と、被検体から核酸を抽出する工程で分離された不要な溶液を廃棄する廃液ウェル(廃液収容部)130と、被検体から抽出された核酸を回収する回収ウェル140とが、本体101の長手方向に配列された状態で一体に形成されている。また、本体101の内部には、多孔質フィルターカラム10が収容される保持部160が、サンプルウェル(被検体収容部)110と回収ウェル140との間に位置して一体に形成されている。
保持部160は、試薬カートリッジ100において多孔質フィルターカラム10が収容される初期位置になっている。保持部160の底部には、液体を吸収する吸収体(図示せず)を設けることができる。この吸収体は、多孔質フィルターカラム10を保持部160に収容したときに多孔質フィルターカラム10の排出口(後述する)側の外面に接触するようになっている。このため、例えば多孔質フィルターカラム10内に洗浄液を供給したときに排出口の外面に洗浄液が付着した場合に、保存部160の底部に吸収体を配することにより洗浄液を吸収させて洗浄液を除去することができる。
試薬ウェル部120は、複数の試薬ウェル(試薬収容部)121、122、123、124、125、126とオイルウェル(オイル収容部)127とオイル除去部(液体除去部)128とを有している。また、試薬ウェル部120において、複数の試薬ウェル121、122、123、124、125、126及びオイルウェル127の各開口は、使用時までウェル封止フィルム104によって封止されている。ウェル封止フィルム104は、気体の透過を抑制すると共に、分注チップ201を突き刺すことにより容易に破ることができる構成とすることが好ましく、材料としては、例えば金属性の薄膜やプラスチックフィルム等が用いることができる。
試薬ウェル121には、細胞膜などの生体物質を溶解する溶解液121Aが収容されるようになっている。試薬ウェル122には、溶解液121Aで溶解しきれず担体へ目詰まりを起こしている細胞質などの生体物質を溶解する溶解液122Aが収容されるようになっている。試薬ウェル123、124には、担体に吸着された核酸以外の不要物を洗い流すための洗浄液123A、124Aがそれぞれ収容されるようになっている。試薬ウェル125には、担体から核酸を溶出させる溶出液125Aが収容されるようになっている。試薬ウェル126には、溶出液中の核酸濃度を調整するための希釈液126Aが収容されるようになっている。
オイルウェル127には、例えばPCR反応において反応溶液に重層して用いられる周知のシリコンオイル127Aが収容されている。オイル127Aとしては、例えばミネラルオイルやシリコンオイルなどを好適に採用することができる。
図2に示すように、廃液ウェル130は、多孔質フィルターカラム10の外形形状に対応する凹部を有している。その詳細は後述するが、これにより、多孔質フィルターカラム10を廃液ウェル130に差し込んでも転倒せず、かつ排出口が廃液ウェル内の廃液に接しないように支持することができる。
回収ウェル140は、廃棄ウェル130と同様に、多孔質フィルターカラム10の外形形状に対応する凹部を有しており、回収ウェル140に差し込まれた多孔質フィルターカラム10を支持することができる。また、回収ウェル140の底部には、多孔質フィルターカラム10の担体から溶出液125Aによって溶出された核酸溶液を貯蔵する貯蔵部(図示せず)を有している。
廃液ウェル130と回収ウェル140とは、試薬カートリッジ100内でお互いに隣り合うように配置されている。これは、多孔質フィルターカラム10の洗浄を廃液ウェル130において行った後に回収ウェル140に移動させるときの多孔質フィルターカラム10の移動距離を短くするためである。これにより、試薬カートリッジ100の他の部分などを汚染する可能性を軽減することができる。
次に、試薬カートリッジ100に収容された、本発明の多孔質フィルターカラム10について説明する。
多孔質フィルターカラム10は、図3に示すように、試料液体や洗浄溶液などの溶液が収容される筒状の上部容器11と、上部容器11の下部に組み立て可能に結合され、上部容器11の底部を構成する漏斗状の下部容器12と、下部容器12内に配置され上部容器11の軸心方向と直交する面上に位置する円盤状の支持部材22と、下部容器12内で支持部材22上に重ねられ上部容器11の軸心方向と直交する面上の全域に配置される多孔質フィルター21とを備えて構成される。
上部容器11は、図3及び図4に示すように、液体のろ過や液体内の特定物質の抽出などに必要な長さ(例えば5mm〜50mm)と外径(例えば5mm〜20mm)及び0.5mm〜3mmの肉厚を有する円筒部1111と、この円筒部1111の下端に、該下端から円筒部1111の軸心方向に延在して一体に形成された円筒状のフィルター押え兼用結合部1112と、円筒部1111の外周面に全周を覆うように設けられた被把持部材1113とを備える。また、円筒部1111は、その上端に使用溶液や洗浄溶液などの試薬類を分注や加圧エアを導入するための開口部1114と、円筒部1111の上端外周に全周に亘りに外方へ突出して一体に形成された鍔部1115を有している。
なお、被把持部材1113は、例えば多孔質フィルターカラム10を試薬カートリッジ100の保持部160から回収ウェル140に移動する時に、図示省略の装置担体移動手段により多孔質フィルターカラム10の把持部となるほか、多孔質フィルターカラム10を試薬カートリッジ100の廃液ウェル(廃液収容部)130等に差し込んだ際に多孔質フィルターカラム10が転倒しないように支持するためなどに利用される。また、被把持部材1113は、多孔質フィルターカラム10を装置担体移動手段により把持する際の補強を兼ねている。
フィルター押え兼用結合部1112は、多孔質フィルター21の周縁部を上方から押圧して支持部材22を含む多孔質フィルター21を多孔質フィルターカラム10内に一定の圧力で確実に保持する機能と、上部容器11と下部容器12とを気密かつ液密に結合する機能を有している。
このために、フィルター押え兼用結合部1112は、支持部材22を含む多孔質フィルター21の押圧保持及び下部容器12との結合に必要な長さ(例えば5mm〜20mm)と、円筒部1111の内径と同一の内径と、円筒部1111の外径より小さく、かつ円盤状の多孔質フィルター21及び支持部材22の外径(例えば5mm〜20mm)と同一の外径とを有している。さらに、フィルター押え兼用結合部1112の外周面には、後述する下部容器12の円筒部1211へのフィルター押え兼用結合部1112の嵌合深さを規定して多孔質フィルター21の周縁部への押圧力を一定に保持するための凸状の係止部1116(特許請求の範囲に記載の第1係止部に相当)が全周に亘りリング状に形成されている。
上記凸状の係止部1116の幅が0.2mm以上2mm以下であることが好ましい。
ここで、凸状の係止部1116の幅を0.2mm以上2mm以下の範囲に設定されている場合は、より強い密封が得られる。また、凸状の係止部1116の幅が0.2mm未満または2mmを超える場合は、嵌合に必要な力が必要以上もしくは規定位置で止まらないという不具合が生じることになる。
下部容器12は、フィルター押え兼用結合部1112の外周に気密かつ液密に嵌合される円筒部1211と、円筒部1211の下端に一体に形成され、かつ円筒部1211の下端から円筒部1211の軸心方向で円筒部1211の下端周辺から円筒部1211の軸心に近づくに従い下り勾配に傾斜する底面部1212と、この底面部1212の円筒部1211の軸心と一致する中心箇所に形成された排出口1213とを有している。
下部容器12の円筒部1211は、上部容器11の円筒部1111の外径と同一の外径と、フィルター押え兼用結合部1112の外径と同一の内径を有している。また、円筒部1211の内周面には、フィルター押え兼用結合部1112の凸状の係止部1116と係合する凹状の係止部1214(特許請求の範囲に記載の第2係止部に相当)が全周に亘りリング状に形成されている。さらに、円筒部1211と底面部1212との接合部の内側角部には、支持部材22の下面側の外周縁部22aが係合するリング状の担持部1215が全周に亘り形成されている。
なお、フィルター押え兼用結合部1112及び下部容器12の円筒部1211に互いに係合する係止部をそれぞれ設ける理由は、フィルター押え兼用結合部1112が下部容器12の円筒部1211に嵌合されることで、凸状の係止部1116と凹状の係止部1214とが互いに係合された時に、フィルター押え兼用結合部1112の円筒部1211への嵌合深さを規定して、フィルター押え兼用結合部1112の下端を多孔質フィルター21の周縁部にその上方から当接して一定の押圧力が負荷されるように保持する。これにより、多孔質フィルター21に変形やひび割れを生じさせることなく、フィルター押え兼用結合部1112と下部容器12の円筒部1211との嵌め合いによる多孔質フィルターカラム10の組み立てを可能にするためである。
上部容器11及び下部容器12を形成する材料としては、試料溶液に用いる溶媒に溶解せず、溶液中の試料や試薬等に影響を与えないものであれば制限はないが、特にポリプロピレン、ポリカーボネート、アクリルのいずれかを含む樹脂材料を用いれば、良好な可視光透過性を確保することができ、溶液の状態を確認することができる。ポリプロピレンとしては、ホモポリプロピレンやポリプロピレンとポリエチレンとのランダム共重合体を使用することができる。また、アクリルとしては、ポリメタクリル酸メチル、または、メタクリル酸メチルとその他のメタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、スチレンなどのモノマーとの共重合体を使用することができる。また、これらの樹脂材料を使用する場合、チップの耐熱性や強度を確保することもできる。
多孔質フィルター21が下部容器12の円筒部1211内で変形することが支持部材22によって抑制されている。多孔質フィルター21としては、生体試料が化学的に吸着するような親水性基を表面に有する材料を用いて、試料溶液が内部に浸透して試料が効率よく吸着する為に表面積の大きい多孔質の膜状に形成したものが好ましい。また、洗浄液による洗浄時には核酸を吸着保持し、回収液による回収時には核酸の吸着力を弱めて離すように構成されている。本発明における多孔質材料として、ガラスウール等の繊維状の材料を重ね合わされたものが用いられてもよい。
多孔質フィルター21の形状としては、下部容器12の円筒部1211内に水平に設置した際に円筒部1211との間に隙間が生じないような形状であればよい。本実施形態では、多孔質フィルター21は、平面視において円筒部1211の内径と等しい外径をもつ円形の円盤状とされている。また、多孔質フィルター21の膜厚は、親水基の種類や多孔質材料の表面積、吸着させたい試料の種類などにより試料の吸着性が変化するため、フィルターの材質等を考慮して、分析等に必要なだけの試料が吸着できる値に設定すればよい。
また、多孔質フィルター21は、1枚であっても複数枚であってもよい。さらに、複数枚設置する場合、材料が同一であっても、異なっていてもよい。
多孔質フィルター21の材料としては、有機物質の存在下で核酸などの生体物質を吸着することができるものであれば特に限定されないが、親水基を有する材料を多孔質にしたものや、多孔質材料に親水基を導入したものを用いることが好ましい。親水基を有する無機材料としては、シリカ、シリカに親水基を導入したシリカ誘導体、珪藻土、アルミナなどが挙げられる。また、親水基を有する有機材料としては、ポリヒドロキシエチルアクリル酸、ポリヒドロキシエチルメタアクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリオキシエチレン、アセチルセルロース、アセチル価の異なるアセチルセルロースの混合物、多糖構造を有する有機材料などを用いることができる。
さらに、ガラスやセラミックスなどの親水基を持たない材料の表面に親水基を有する材料をコーティングさせたものであっても良く、コーティングに用いる材料としては、ポリヒドロキシエチルアクリル酸、ポリヒドロキシエチルメタアクリル酸及びそれらの塩、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸及びそれらの塩、ポリオキシエチレン、アセチルセルロース、アセチル価の異なるアセチルセルロースの混合物等の有機材料のポリマーが好ましい。
本明細書において「親水基」とは、水との相互作用を持つことができる有極性の基を指し、核酸等の生体物質の吸着に関与する全ての基が当てはまる。このような親水基としては、水との相互作用を持つ極性基で核酸を吸着することができるものであればよく、例えば水酸基、カルボキシル基、シアノ基、オキシエチレン基、アミノ基や、親水性をコントロールする目的でこれらの親水基を修飾した基などを挙げることができる。
多孔質フィルター21は洗浄・ろ過等の際に加圧手段により加圧されるため、強度の低い多孔質フィルター21を用いる場合、多孔質フィルター21が撓んでしまい、円筒部1211の内面と多孔質フィルター21との間に溶液が通過する隙間が生じ、この部分からの溶液漏れが起こるおそれがあるが、剛性の高い支持部材22を配置しておくことにより、多孔質フィルター21が撓むことを防ぎ、強度の低い多孔質フィルター21を用いた場合でも好適に加圧することができる。そのため支持部材22は、少なくとも核酸に対する吸着性が低く、かつ被検体から核酸を抽出する反応を阻害しない材料によって形成されていることが好ましい。
支持部材22に使用される材料としては、例えば樹脂の粒を焼結させて作製された、液体が通過できるフィルター状のものを用いることが好ましいが、これに限定されるものではなく、洗浄等に用いる溶媒に溶解せず、溶媒によって剛性が低下せず、試料や試薬等に影響を与える物質が溶出せず、対象とする溶液や不純物等が通過できる孔を有していればよい。支持部材22の作製には上部容器11及び下部容器12と同様の樹脂材料を用いることができるが、フィルターを通過した液体が滞りなく通過できるよう、多孔質に形成されるものであれば特に限定されるものではない。
次に、多孔質フィルターカラム10の組み立て方法について図5及び図6を参照して説明する。
まず、図5に示すように、下部容器12の円筒部1211内に多孔質フィルター21及び支持部材22を、支持部材22の外周縁部22aが担持部1215に係止されるまで嵌入する。その後、図6に示すように、上部容器11のフィルター押え兼用結合部1112を、その下端側から下部容器12の円筒部1211内に挿入し、かつ上部容器11全体を上方から押圧して、凸状の係止部1116が凹状の係止部1214に係合される位置までフィルター押え兼用の結合部1112を円筒部1211内に押し込み、フィルター押え兼用結合部1112を円筒部1211に嵌合させる。
ここで、フィルター押え兼用結合部1112の係止部1116と下部容器12の係止部1214とが、図7に示すように係合することにより、フィルター押え兼用結合部1112と円筒部1211とが規定の嵌合深さ位置で嵌合されるとともに、フィルター押え兼用結合部1112の円筒部1211内への嵌合押込み量を制限する。すなわち、フィルター押え兼用結合部1112と円筒部1211との嵌合量が凸状の係止部1116と凹状の係止部1214によって規定の位置に設定されることになる。これにより、フィルター押え兼用結合部1112の下端が多孔質フィルター21の周縁部にその上方から当接することで負荷される多孔質フィルター21への押圧力を、多孔質フィルター21に変形やひび割れを生じさせることのない値に設定することになり、しかも、作業者技術的能力や多孔質フィルターの材質に左右されることなく、何人においても多孔質フィルターカラムを容易にかつ確実に組み立てることが可能になる。
また、フィルター押え兼用結合部1112の係止部1116と下部容器12の係止部1214とが互いに係合することにより、フィルター押え兼用結合部1112と円筒部1211とが多孔質フィルター21に変形やひび割れを生じさせることのない状態に嵌合されたことを作業者に感触としてフィードバックすることができる。
上記のように組み立てられた多孔質フィルターカラム10の使用時は、まず、上部容器11の開口部1114から使用溶液や洗浄溶液などの試薬類を分注し、次いで、加圧エアを開口部1114から導入する。これにより試薬類が多孔質フィルター21に吸着または多孔質フィルター21を通過またはろ過される。孔質フィルター21を通過またはろ過された溶液は下部容器12の漏斗状に傾斜する底面部1212を介して排出口1213より排出もしくは別容器に回収される。
次に、図8に示す下部容器12について説明する。
図8において、下部容器12を構成する底面部1212の内面には、円筒部1211と底面部1212との内側の接合角部に形成されたリング状の担持部1215から傾斜底面部1212に沿い半径方向に延在して配置された、三角形の平板状を呈する複数の担持片1216が円周方向に一定の間隔をおいて一体に形成されている。この各担持片1216は、多孔質フィルター21を支持部材22を介して下面側から複数箇所で支持するとともに、これらの変形を防止するためのものである。
以上に説明した構成の多孔質フィルターカラム10を備えた試薬カートリッジ100及び分注チップラック200からなる核酸精製キット51の使用時の動作について、核酸の分離精製を例にとり多孔質フィルターカラム10の作用を中心に説明する。
まず、ユーザの手作業によって図1に示す試薬カートリッジ100の封止フィルム103が取り外される。続いて、試薬カートリッジ100のサンプルウェル110に例えば全血試料をユーザの手作業によって注入する。
続いて、試薬ウェル121〜126に貯留された各種の試薬を所定の手順に従って自動分析装置の分注搬送機構によって分注、混合する。これにより、サンプルウェル110に供給された全血試料中の細胞は溶解され細胞溶解液が得られる。試薬ウェル121〜126から液体を分注チップ201内に吸引するときには、試薬ウェル121〜126を封止している封止フィルム104を分注チップ201の先端で突き破る。すると、封止フィルム104には貫通孔が形成され、分注チップ201によって試薬ウェル121〜126の内部の各種試薬類を吸引できるようになる。
廃液を集める必要があるため、多孔質フィルターカラム10が廃液ウェル130へ搬送され、細胞が溶解された溶液をサンプルウェル110から多孔質フィルターカラム10に供給される。
廃液ウェル130に形成された凹部の内径は、上部容器11を構成する被把持部材1113を含む円筒部1111全体の外径より大きいため、多孔質フィルターカラム10の排出口1213及び被把持部材1113はウェル内に挿入されるが、被把持部材1113は廃液ウェル130内に進入できないため、被把持部材1113が設けられた部位は廃液ウェル130内に進入せず、排出口1213が廃液ウェル内の廃液に接しない高さに支持される。
多孔質フィルターカラム10は開口部1114から気体を送り込んでカラム内を加圧することで、多孔質フィルター21を液体が通過する速度を高めることができる。すると、細胞が溶解された溶液は多孔質フィルター21を通過して、核酸は多孔質フィルター21に吸着される。その後、前記溶解液121Aで溶解しきれず担体へ目詰まりを起こしている細胞質などの生体物質を溶解する溶解液122Aにより多孔質フィルター21を洗浄する。
次に、洗浄液123A、124Aを多孔質フィルター21に供給して多孔質フィルター21を洗浄液123A、124Aによって洗浄する。その後、多孔質フィルターカラム10を回収ウェル140へ搬送し、溶出液125Aを多孔質フィルター21に供給する。これにより、多孔質フィルター21に吸着されていた核酸を溶出液125A中に溶出させて、核酸を含有する核酸溶液を回収ウェル140に回収する。
その後、希釈液126Aと回収された核酸が回収された溶出液125Aとを混ぜ合わせると、サンプルの準備が完了する。以上で多孔質フィルターカラム10を備える核酸精製キット51による核酸の分離精製は終了する。
なお、上記実施の形態では、第1係止部1116をフィルター押え兼用結合部1112の外周面に全周に亘りリング状に形成した凸部から構成し、第2係止部1214を下部容器12の円筒部1211の内周面に全周に亘りリング状に形成した凹部から構成した場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば、上記と逆に第1係止部をリング状の凹部から構成し、第2係止部をリング状の凸部から構成してもよいほか、特許請求の範囲に記載された要件を逸脱しない範囲において種々変更することが可能であり、要は、第1係止部と前記第2係止部とが係合した状態で、フィルター押え兼用結合部の下端が多孔質フィルターの周縁部上面に一定の押圧力で当接するように構成されるものであればよい。
10…多孔質フィルターカラム
11…上部容器
1111…円筒体
1112…フィルター押え兼用結合部
1113…被把持部材
1114…開口部
1115…鍔部
1116…凸状の係止部
12…下部容器
1211…円筒部
1212…底面部
1213…排出口
1214…凹状の係止部
1215…担持部
1216…リブ状の担持片
21…多孔質フィルター
22…支持部材
51…核酸精製キット
100…試薬カートリッジ
110…サンプルウェル(被検体収容部)
121、122、123、124、125、126…試薬ウェル(試薬収容部)
130…廃液ウェル(廃液収容部)
200…分注チップラック
201…分注チップ

Claims (6)

  1. 筒状の上部容器と、
    前記上部容器の下部に結合される下部容器と、
    前記下部容器内に配置された支持部材と、
    前記下部容器内で前記支持部材で支持され前記上部容器の軸心方向と直交する面上の全域に配置される多孔質フィルターとを備え、
    前記上部容器は、上端に開口部を有する円筒部と、前記円筒部の外周面下部に設けられた円筒状を呈するフィルター押え兼用結合部を有し、
    前記下部容器は、前記フィルター押え兼用結合部の外周に密嵌合される円筒部と、当該円筒部の下部を接続し排出口が形成された底面部を有し、
    前記フィルター押え兼用結合部の外周面には第1係止部が形成され、
    前記下部容器の円筒部の内周面には前記第1係止部と係合して前記下部容器の円筒部へのフィルター押え兼用結合部の嵌合深さを規定する第2係止部が形成され、
    前記フィルター押え兼用結合部が前記下部容器の前記円筒部に嵌合され前記第1係止部と前記第2係止部とが係合した状態で、前記フィルター押え兼用結合部の下端が前記多孔質フィルターの周縁部上面に一定の押圧力で当接するように構成されている、
    ことを特徴とする多孔質フィルターカラム。
  2. 前記第1係止部は前記フィルター押え兼用結合部の外周面に全周に亘りリング状に形成された凸部からなり、前記第2係止部は前記下部容器の円筒部の内周面に全周に亘りリング状に形成され前記凸部と係合する凹部からなることを特徴とする請求項1に記載の多孔質フィルターカラム。
  3. 前記凸部の幅が0.2mm以上2mm以下であることを特徴とする請求項2多孔質フィルターカラム。
  4. 前記多孔質フィルターが核酸吸着能を有することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の多孔質フィルターカラム。
  5. 被検体から核酸を分離精製するための試薬が収容され、分注チップを用いて液体が分注される試薬カートリッジであって、
    前記被検体を収容する被検体収容部と、
    前記試薬を収容する試薬収容部と、
    前記分離精製において発生する廃液を収容する廃液収容部と、
    請求項1乃至4の何れか1項に記載の多孔質フィルターカラムと、
    を備えることを特徴とする試薬カートリッジ。
  6. 請求項5に記載の試薬カートリッジと、
    前記分注チップを複数収容するための分注チップ収容体と、
    を備えることを特徴とする核酸精製キット。
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