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JP2015187390A - 内燃機関 - Google Patents

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JP2015187390A
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内田 克己
Katsumi Uchida
克己 内田
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Abstract

【課題】アクティブ点火法による混合気への点火の際に燃焼室内に投入するエネルギ量の適正化を図る。
【解決手段】点火プラグの中心電極と接地電極との間に発生する火花放電と気筒の燃焼室内に臨むアンテナを介して燃焼室内に放射される電界とを相互作用させて燃焼室内にプラズマを生成し燃料に着火するアクティブ点火を実行可能な内燃機関において、気筒の膨張行程における燃焼室内圧力に基づきS1、同気筒の次回以降の膨張行程の際のアクティブ点火において燃焼室内に放射する電界の強度及び/または電界の放射時間を増減調整するS3。
【選択図】図7

Description

本発明は、車両等に搭載される内燃機関に関する。
一般的な火花点火式内燃機関に実装されている点火装置では、イグナイタが消弧した際に点火コイルに発生する高電圧を点火プラグの中心電極に印加することで、点火プラグの中心電極と接地電極との間で火花放電を惹起し、点火する。
近時では、気筒の燃焼室内にある混合気に確実に着火させ、安定した火炎を得ることができるようにするために、高周波発振器が出力する高周波またはマグネトロンが出力するマイクロ波を燃焼室内に放射する「アクティブ点火(アクティブ着火)」法が試みられている(例えば、下記特許文献を参照)。アクティブ点火法によれば、中心電極と接地電極との間の空間に高周波電界またはマイクロ波電界が形成され、この電界中で発生したプラズマが成長して、火炎伝搬燃焼の始まりとなる大きな火炎核を生成することができる。
特開2011−064162号公報
アクティブ点火法は、混合気への着火の確実性を高める有望な技術である。だが、燃焼室内への電界放射に起因した電力の消費というデメリットもある。 気筒に充填される吸気の量や、その吸気に占めるEGR(Exhaust Gas Recirculation)ガスの割合であるEGR率、並びに混合気の空燃比は、常時一定ではない。加えて、気筒毎のくせ即ち気筒間のばらつきも存在する。具体的に述べると、内燃機関が備える複数の気筒には、EGRガスが流入しやすく新気が流入しにくい気筒と、EGRガスが流入しにくく新気が流入しやすい気筒とがあり、各気筒に充填される吸気のEGR率は必ずしも均等ではない。
気筒の燃焼室に供給する電界のエネルギが燃焼室内の混合気に吸収される度合いは、混合気のEGR率や空燃比等に応じて変化する。それ故、アクティブ点火のために最適な電界の強度及び放射時間は頻々に変動し得る上、気筒毎でも異なり得る。そして、燃焼室に投入する電界のエネルギ量が不足すれば、混合気への着火がうまくゆかず、燃焼不安定ないし失火を招く懸念が生じる。
逆に、燃焼室に投入する電界のエネルギ量が不必要に過剰であると、電力の浪費となる。そればかりか、燃焼室内の混合気に吸収されない余剰のエネルギが、電界発生装置たる高周波発振器またはマグネトロンの側に反射して返ってくる可能性があり、高周波発振器またはマグネトロンを故障させる原因ともなりかねない。
本発明は、アクティブ点火法による混合気への点火の際に燃焼室内に投入するエネルギ量の適正化を図ることを所期の目的としている。
本発明では、点火プラグの中心電極と接地電極との間に発生する火花放電と気筒の燃焼室内に臨むアンテナを介して燃焼室内に放射される電界とを相互作用させて燃焼室内にプラズマを生成し燃料に着火するアクティブ点火を実行可能な内燃機関であって、気筒の膨張行程における燃焼室内圧力に基づき、同気筒の次回以降の膨張行程の際のアクティブ点火において燃焼室内に放射する電界の強度及び/または電界の放射時間を増減調整する内燃機関を構成した。
本発明によれば、アクティブ点火法による混合気への点火の際に燃焼室内に投入するエネルギ量の適正化を図ることができる。
本発明の一実施形態の内燃機関の概略構成を示す図。 同実施形態の内燃機関の点火系の回路図。 同実施形態の内燃機関の点火系に付随する電界発生装置の構成を説明する図。 同電界発生装置の要素であるHブリッジの回路図。 同実施形態の内燃機関における正常燃焼時のイオン電流の推移を示すタイミング図。 イグナイタの点弧から火花点火へと至る期間における、点火コイルの一次側コイルを流れる一次電流の推移を示す図。 同実施形態の内燃機関の制御装置が実行する処理の手順例を示すフロー図。
本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。図1に、本実施形態における車両用内燃機関の概要を示す。本実施形態における内燃機関は、気筒1の燃焼室内に直接燃料を噴射する筒内直接噴射式の4ストロークガソリンエンジンであり、複数の気筒1(図1には、そのうち一つを図示している)を具備している。各気筒1には、その燃焼室に臨む位置に、燃料を噴射するインジェクタ11を設置している。また、各気筒1の燃焼室の天井部に、点火プラグ12を取り付けてある。
図2に、点火系の電気回路を示している。点火プラグ12は、点火コイル14にて発生した誘導電圧の印加を受けて、中心電極と接地電極との間で火花放電を惹起するものである。点火コイル14は、半導体スイッチング素子131を有するイグナイタ13とともに、コイルケースに一体的に内蔵される。
内燃機関の制御装置たるECU(Electronic Control Unit)0からの点火信号iをイグナイタ13が受けると、まずイグナイタ13の半導体スイッチ131が点弧して点火コイル14の一次側に電流が流れ、その直後の火花点火のタイミングで半導体スイッチ131が消弧してこの電流が遮断される。すると、自己誘導作用が起こり、一次側に高電圧が発生する。そして、一次側と二次側とは磁気回路及び磁束を共有するので、二次側にさらに高い誘導電圧が発生する。この高い誘導電圧が点火プラグ12の中心電極に印加され、中心電極と接地電極との間で火花放電を生じる。
点火コイル14の一次側コイルは、半導体スイッチ131を介して車載の電源バッテリ17に接続する。半導体スイッチ131を点弧し、バッテリ17から供給される直流電圧を一次側コイルに印加して通電を開始すると、一次側コイルを含む一次側(低圧系)の回路を流れる一次電流は逓増する。
図6に、一次側コイルへの通電開始後の一次電流の推移を例示する。図6中、電流制限機能が働かない場合を破線で描画し、電流制限機能が働く場合を一点鎖線で描画している(実線については、後述する)。バッテリ17及び一次側コイルを含む一次側の電気回路をRL直列回路と仮定すると、t=0時点にて直流電圧Eを印加した場合の一次電流I(t)は、
I(t)≒{1−e-(R/L)t}E/R
となる。即ち、過渡現象として一次電流は逓増するが、その増加の速さは徐々に衰える。十分に長い時間が経過すると、図6中の破線のように一次電流はE/Rに飽和する。
イグナイタ13は、一次電流の過大化を抑制する電流制限機能を有している。この電流制限機能は、今日普及している既製のイグナイタのそれと同様である。具体的には、制御回路132が、検出抵抗133を介して、一次電流を当該抵抗133の両端間電圧の形で恒常的に計測する。そして、その一次電流(抵抗133の両端間電圧)の大きさが規定値以下である間は半導体スイッチ131を点弧する一方、規定値を超えたときには半導体スイッチ131を消弧する。これにより、一次電流を図6中の一点鎖線のように規定値にクリップする。
火花点火の際に点火プラグ12の中心電極に印加される誘導電圧は、半導体スイッチ131を消弧する時点t1で点火コイル14の一次側コイルに流れている一次電流が大きいほど高圧になる。従って、一次側コイルへの通電時間が長いほど、点火プラグ12の中心電極に印加される誘導電圧が高圧になる。並びに、一次電流が大きいことは点火コイル14に入力する電力量が大きいことを意味しており、一次側コイルへの通電時間が長いほど、点火プラグ12の中心電極と接地電極との間で火花放電が継続する時間も長くなる。
要するに、半導体スイッチ131を点弧する時点t0、t0’を調整することで、点火プラグ12の中心電極に印加される誘導電圧の大きさや火花放電の継続時間を調整することが可能である。図6中、一次側コイルへの通電時間が比較的短い(より遅い時点t0から通電を開始する)場合を実線で描画し、一次側コイルへの通電時間が比較的長い(より早い時点t0’から通電を開始する)場合を一点鎖線で描画している。
因みに、イグナイタ13は、点火コイル14またはイグナイタ13自身の温度が上限値を超えるような異常発熱を感知した場合に、一次側コイルへの通電を強制的に遮断する機能をも有している。
本実施形態の内燃機関では、その点火系に気筒1の燃焼室内に電界を発生させる電界発生装置6を付設している。この電界発生装置6は、燃焼室内でプラズマを生成する目的のものである。電界発生装置6の具体例としては、高周波の交流電圧を出力する交流電圧発生回路や、高周波の脈流電圧を出力する脈流電圧発生回路等を挙げることができる。
図3及び図4に示すように、高周波を発生させる電界発生装置6は、車載バッテリを電源とし、低圧直流を高圧交流に変換する回路を含む。具体的には、バッテリが提供する約12Vの直流電圧を100V〜500Vに昇圧するDC−DCコンバータ61と、DC−DCコンバータ61が出力する直流を交流に変換する高周波発生回路たるHブリッジ回路62と、Hブリッジ回路62が出力する交流の高周波をさらに高い電圧に昇圧する昇圧トランス63とを構成要素とする。
DC−DCコンバータ61は、ECU0からの指令lを受けて、Hブリッジ回路62に印加する直流の駆動電圧の大きさを変化させることができ、ひいては、昇圧トランス63の下流における高周波電圧の振幅を変化させることができる。昇圧トランス63の下流における高周波電圧は、周波数が200kHz〜3000kHz程度、振幅が3kVp−p〜10kVp−p程度であることが好ましい。
電界発生装置6の出力端には、第一ダイオード64及び第二ダイオード65を介設する。第一ダイオード64は、カソードが昇圧トランス63の二次側巻線の信号ラインに接続し、アノードが点火コイル14との結節点であるミキサ7に接続している。第二ダイオード65は、アノードが昇圧トランス63の二次側巻線のグランドラインに接続し、カソードが接地している。これら第一ダイオード64及び第二ダイオード65は、昇圧トランス63の下流において交流の高周波を半波整流して脈流化するとともに、点火タイミングにおいて点火コイル14の二次側から流れ込む負の高圧パルス電流を遮る役割を担う。
因みに、電界発生装置6として脈流電圧発生回路を採用する場合、当該脈流電圧発生回路は周期的に電圧が変化する直流電圧を発生させるものであればよく、その波形も任意であってよい。ここに言う脈流電圧は、基準電圧(0Vであることがある)から一定周期で一定電圧まで変動するパルス電圧や、交流電圧に直流バイアスを加味した電圧等を含む。
電界発生装置6が発生させる高周波電圧は、点火プラグ12の中心電極に印加する。つまり、気筒1の燃焼室内に臨む点火プラグ12の中心電極を、電界を放射するアンテナとする。これにより、燃焼室内における、点火プラグ12の中心電極と接地電極との間の空間に、高周波電界が形成される。そして、高周波電界中で火花放電を行うことによりプラズマが発生し、このプラズマが火炎伝搬燃焼の始まりとなる大きなラジカルプラズマ火炎核を生成する。
上記は、火花放電による電子の流れ及び火花放電によって生じたイオンやラジカルが、電界の影響を受け振動、蛇行することで行路長が長くなり、周囲の水分子や窒素分子と衝突する回数が飛躍的に増加することによるものである。イオンやラジカルの衝突を受けた水分子や窒素分子は、OHラジカルやNラジカルになるとともに、イオンやラジカルの衝突を受けた周囲の気体も電離した状態、即ちプラズマ状態となることで、飛躍的に混合気への着火領域が大きくなり、火炎核も大きくなるのである。この結果、火花放電のみによる二次元的な着火から三次元的な着火に増幅され、燃焼が燃焼室内に急速に伝播、高い燃焼速度で拡大することとなる。
アクティブ点火を実行する場合の、点火プラグ12の中心電極に高周波を印加するタイミングは、通常、火花放電開始と略同時、火花放電開始直前、または火花放電開始直後である。
勿論、本実施形態の内燃機関は、アクティブ点火ではない従来型の火花点火、即ち点火プラグ12の中心電極からの高周波電界の放射を伴わない火花放電によって混合気に着火することもできる。安定的に着火して燃焼させることが容易な(燃焼不良に陥りにくい)状況下では、従来型の火花点火を実行することとして電力消費を抑制することが考えられる。
本実施形態において、ECU0は、混合気の燃焼の際に気筒1の燃焼室内に発生するイオン電流を検出し、当該イオン電流信号hを参照して燃焼状態の判定を行うことが可能である。
図2に示しているように、本実施形態では、点火系の電気回路に、イオン電流を検出するための回路を付加している。この検出回路は、イオン電流を効果的に検出するためのバイアス電源部15と、イオン電流の多寡に応じた検出電圧を増幅して出力する増幅部16とを備える。バイアス電源部15は、バイアス電圧を蓄えるキャパシタ151と、キャパシタ151の電圧を所定電圧まで高めるためのツェナーダイオード152と、電流阻止用のダイオード153、154と、イオン電流に応じた電圧を出力する負荷抵抗155とを含む。増幅部16は、オペアンプに代表される電圧増幅器161を含む。
点火プラグ12の中心電極と接地電極との間のアーク放電時にはキャパシタ151が充電され、その後キャパシタ151に充電されたバイアス電圧により負荷抵抗155にイオン電流が流れる。イオン電流が流れることで生じる抵抗155の両端間の電圧は、増幅部16により増幅されてイオン電流信号hとしてECU0に受信される。
図5に、正常燃焼における、イオン電流(図中実線で示す)及び気筒1内の燃焼圧力(筒内圧。図中破線で示す)のそれぞれの推移を例示する。正常燃焼の場合のイオン電流は、火花点火の終了後、化学反応により、圧縮上死点の手前で減少した後、熱解離によって再び増加する。そして、筒内圧がピークを迎えるのとほぼ同時に、イオン電流も極大となる。
ECU0は、気筒1の燃焼室内に充填された混合気に点火した後に検出されるイオン電流信号hの大きさが閾値を上回っている期間Tの長さ(クランク角度(°CA)単位または秒単位)を計数する。そして、その計数した期間Tの長さが判定値以上であれば、当該気筒1の膨張行程において混合気が正常に燃焼したと判定する。逆に、期間Tの長さが判定値を下回ったならば、当該気筒1の膨張行程における混合気の燃焼が不良、即ち燃焼不安定または失火が発生したと判定する。
なお、イオン電流は、点火のための放電中には検出することができない。また、図5に示しているものは、従来型の火花点火によって混合気を燃焼させた際のイオン電流信号hの波形である。点火プラグ12の中心電極から高周波電界を放射するアクティブ点火を実行する場合には、その高周波電界の放射中もイオン電流を検出することができない。
内燃機関の気筒1に吸気を供給するための吸気通路3は、外部から空気を取り入れて各気筒1の吸気ポートへと導く。吸気通路3上には、エアクリーナ31、電子スロットルバルブ32、サージタンク33、吸気マニホルド34を、上流からこの順序に配置している。
気筒1から排気を排出するための排気通路4は、気筒1内で燃料を燃焼させた結果発生した排気を各気筒1の排気ポートから外部へと導く。この排気通路4上には、排気マニホルド42及び排気浄化用の三元触媒41を配置している。
外部EGR装置2は、いわゆる高圧ループEGRを実現するものであり、排気通路4における触媒41の上流側と吸気通路3におけるスロットルバルブ32の下流側とを連通するEGR通路21と、EGR通路21上に設けたEGRクーラ22と、EGR通路21を開閉し当該EGR通路21を流れるEGRガスの流量を制御するEGRバルブ23とを要素とする。EGR通路21の入口は、排気通路4における排気マニホルド42またはその下流の所定箇所に接続している。EGR通路21の出口は、吸気通路3におけるスロットルバルブ32の下流の所定箇所、具体的にはサージタンク33に接続している。
内燃機関の運転制御を司るECU0は、プロセッサ、メモリ、入力インタフェース、出力インタフェース等を有したマイクロコンピュータシステムである。
入力インタフェースには、車両の実車速を検出する車速センサから出力される車速信号a、クランクシャフトの回転角度及びエンジン回転数を検出するエンジン回転センサから出力されるクランク角信号b、アクセルペダルの踏込量またはスロットルバルブ32の開度をアクセル開度(いわば、要求負荷)として検出するセンサから出力されるアクセル開度信号c、ブレーキペダルの踏込量を検出するセンサから出力されるブレーキ踏量信号d、吸気通路3(特に、サージタンク33)内の吸気温及び吸気圧を検出する温度・圧力センサから出力される吸気温・吸気圧信号e、内燃機関の冷却水温を検出する水温センサから出力される冷却水温信号f、吸気カムシャフトまたは排気カムシャフトの複数のカム角にてカム角センサから出力されるカム角信号g、燃焼室内での混合気の燃焼に伴って生じるイオン電流を検出する回路から出力されるイオン電流信号h等が入力される。
出力インタフェースからは、点火プラグ12のイグナイタ13に対して点火信号i、インジェクタ11に対して燃料噴射信号j、スロットルバルブ32に対して開度操作信号k、DC−DCコンバータ61に対して当該DC−DCコンバータ61が出力する駆動電圧の大きさを指令する電圧指令信号l、EGRバルブ23に対して開度操作信号m等を出力する。
ECU0のプロセッサは、予めメモリに格納されているプログラムを解釈、実行し、運転パラメータを演算して内燃機関の運転を制御する。ECU0は、内燃機関の運転制御に必要な各種情報a、b、c、d、e、f、g、hを入力インタフェースを介して取得し、エンジン回転数を知得するとともに気筒1に充填される吸気量を推算する。そして、それらエンジン回転数及び吸気量等に基づき、要求される燃料噴射量、燃料噴射タイミング(一度の燃焼に対する燃料噴射の回数を含む)、燃料噴射圧、点火タイミング、燃焼室内に高周波電界を印加するか否かやその電界の強度、要求EGR率(または、EGR量)等といった各種運転パラメータを決定する。ECU0は、運転パラメータに対応した各種制御信号i、j、k、l、mを出力インタフェースを介して印加する。
その上で、本実施形態では、気筒1の燃焼室内に充填された混合気に対してアクティブ点火を実行するにあたり、同気筒1の前回以前のサイクル(吸気−圧縮−膨張−排気の一連を一サイクルとする)の膨張行程における筒内圧(同気筒1の燃焼室内圧力)の実績に基づいて、当該気筒1の今回のサイクルのアクティブ点火の際に燃焼室内に放射する電界の強度及び/または電界の放射時間を増減調整することとしている。
気筒1に充填される吸気量やその吸気のEGR率、並びに混合気の空燃比は常時一定ではない。加えて、気筒1毎のくせ、気筒1間のばらつきも存在している。即ち、各気筒1に充填される吸気の量や吸気のEGR率、空燃比は全て気筒1で均等とはなっていない。例えば、内燃機関が備える複数の気筒1には、EGRガスが流入しやすく新気が流入しにくい気筒1と、EGRガスが流入しにくく新気が流入しやすい気筒1とがあり、各気筒1に充填される吸気のEGR率は必ずしも均等でない。また、各気筒1に設置されたインジェクタ11にも、その燃料噴射性能に個体差や経年変化があり、各気筒1における混合気の空燃比は必ずしも均等でない。
気筒1の燃焼室に供給する電界のエネルギが燃焼室内の混合気に吸収される度合いは、混合気のEGR率や空燃比等に応じて変化する。それ故、アクティブ点火のために最適な電界の強度及び放射時間は頻々に変動し得る上、気筒毎でも異なり得る。アクティブ点火において、燃焼室に投入する電界のエネルギ量が不足すれば、混合気への着火がうまくゆかず、燃焼不安定ないし失火を招く懸念が生じる。
逆に、燃焼室に投入する電界のエネルギ量が不必要に過剰であると、電力の浪費となる。そればかりか、燃焼室内の混合気に吸収されない余剰のエネルギが、電界発生装置6側に反射して返ってくる可能性があり、電界発生装置6を故障させる原因ともなりかねない。
そこで、本実施形態では、気筒1の膨張行程における筒内圧を計測または推測し、この筒内圧の高低を基にそのときの燃焼室内雰囲気の特性、即ちEGR率や空燃比等を推定する。そして、推定したEGR率等に応じて、同じ気筒1の次回以降の膨張行程の際のアクティブ点火における高周波電界の強度(点火プラグ12の中心電極に印加する高周波電圧の大きさ)や放射時間(点火プラグ12の中心電極に高周波電圧を印加する時間の長さ)を決定する。これは、今回の(混合気の着火燃焼を遂行し筒内圧を計測または推測した)膨張行程における混合気のEGR率等と、同じ気筒1の次回の膨張行程における混合気のEGR率等とがほぼ等しくなると予想されることによる。
アクティブ点火において燃焼室内に放射する高周波電界の強度及び/または放射時間は、気筒1毎に個別に決定する。図7に、ECU0が高周波電界の強度及び/または放射時間を決定する具体的な手順を示す。
まず、ECU0は、対象の気筒1にて実際に混合気を燃焼させた今回のサイクルの膨張行程における筒内圧の最大値を計測または推測する(ステップS1)。筒内圧を検出する圧力センサが気筒1に実装されているならば、その圧力センサを介して膨張行程中の筒内圧を計測することができる。また、筒内圧と筒内温(燃焼室内温度)との間には相関があるので、筒内温を検出する圧力センサが気筒1に実装されているならば、その温度センサを介して計測される筒内温(及び、気筒1に充填された吸気量)に基づいて、間接的に膨張行程中の筒内圧を推算することができる。
あるいは、圧力センサや温度センサが気筒1に実装されていなくとも、既に述べた通り、イオン電流信号hの筒内圧との間には相関があるので、膨張行程中に検出されるイオン電流信号hの大きさに基づいて、膨張行程中の筒内圧の大きさを推定することが可能である。総じて言えば、ECU0は、筒内圧力センサの出力信号、筒内温度センサの出力信号またはイオン電流信号hを参照して、今回のサイクルの膨張行程における筒内圧の最大値を知得する。
次いで、ECU0は、計測または推測した膨張行程中の筒内圧の最大値から、当該膨張行程を含む今回のサイクルにおいて気筒1に充填されていた混合気の特性、特にEGR率(または、EGRガス量)を推定する(ステップS2)。通常は、混合気のEGR率が高いほど、膨張行程中に実際に生じる燃焼圧力が低くなると考えられる。
なお、当然のことながら、膨張行程中の筒内圧は、吸気のEGR率だけでなく、点火タイミングや、そのときの内燃機関の運転領域[エンジン回転数,負荷(サージタンク33内吸気圧、気筒1に充填された吸気量または燃料噴射量)]等の影響をも受ける。よって、EGR率を推定するためには、点火タイミング及び内燃機関の運転領域等を加味する必要がある。加えて、吸気のEGR率の大きさは、EGRバルブ23の開度や、吸気バルブ及び/または排気バルブの開閉タイミング(内燃機関にVVT(Variable Valve Timing)機構が装備されている場合)に依存する。EGR率の推定精度を高めるためには、EGRバルブ23開度や吸排気バルブのバルブタイミングを考慮に入れることが好ましい。ECU0のメモリには予め、膨張行程中の筒内圧の最大値、点火タイミング、内燃機関の運転領域を示すパラメータ、EGRバルブ23の開度(必須ではない)及びバルブタイミング(必須ではない)等と、吸気の推定EGR率との関係を規定したマップデータまたは関数式が格納されている。ステップS2にて、ECU0は、対象の気筒1の今回のサイクルの膨張行程中の筒内圧の最大値、今回のサイクルの点火タイミング、今回のサイクルにおける運転領域、今回のサイクルにおけるEGRバルブ23の開度(必須ではない)及びバルブタイミング(必須ではない)等をキーとして当該マップを検索するか、またはそれらを当該関数式に代入して、今回のサイクルにおける吸気の推定EGR率を知得する。この推定EGR率は、サイクル毎に多少なりとも変動し、かつ気筒1毎でも異なり得るものである。
そして、ECU0は、ステップS2にて知得した混合気の特性即ち推定EGR率を基に、次回のサイクルで実行するアクティブ点火において燃焼室内に放射する高周波電界の強度及び/または放射時間を決定する(ステップS3)。これにより、次回のサイクルで気筒1に充填される吸気の特性(EGR率)に見合った大きさの電力を燃焼室内に投入できるようになり、必要十分な量のエネルギを混合気に吸収させて着火及び燃焼を惹起することが可能となる。混合気が高周波のエネルギを多量には吸収できない場合や、そもそも混合気の着火燃焼が容易である(EGR率が低い、または燃焼室内の酸素量が十分に多い)状況下では、燃焼室内に投入する電力量を削減することができる。
但し、次回のサイクルにて気筒1に充填される混合気が高周波のエネルギを吸収できる量は、次回のサイクルにおける吸気のEGR率だけでなく、そのときの内燃機関の運転領域[エンジン回転数,負荷(サージタンク33内吸気圧、気筒1に充填された吸気量または燃料噴射量)]等の影響をも受ける。ECU0のメモリには予め、吸気のEGR率及び内燃機関の運転領域を示すパラメータ等と、適正な高周波電界の強度及び/または放射時間との関係を規定したマップデータまたは関数式が格納されている。当該マップまたは関数式は、予め実験的に求められたものである。ステップS3にて、ECU0は、対象の気筒1の今回のサイクルにおける吸気の推定EGR率を次回のサイクルにおける吸気のEGR率と見なし、このEGR率及び次回のサイクルにおける運転領域等をキーとして当該マップを検索するか、またはそれらを当該関数式に代入して、次回のサイクルにおけるアクティブ点火の際の高周波電界の強度及び/または放射時間を知得する。
本実施形態では、点火プラグ12の中心電極と接地電極との間に発生する火花放電と気筒1の燃焼室内に臨むアンテナ(点火プラグ12の中心電極)を介して燃焼室内に放射される電界とを相互作用させて燃焼室内にプラズマを生成し燃料に着火するアクティブ点火を実行可能な内燃機関であって、気筒1の膨張行程における燃焼室内圧力に基づき、同気筒1の次回以降の膨張行程の際のアクティブ点火において燃焼室内に放射する電界の強度または電界の放射時間を増減調整する内燃機関を構成した。
本実施形態によれば、その時々の混合気の特性(特に、EGR率)のばらつきや気筒1間の差異を吸収して、アクティブ着火による混合気の着火燃焼を均一化できるようになる。従って、内燃機関の熱機械変換効率が高まり、燃費性能の向上に寄与し得る。
また、燃焼室内に投入する高周波エネルギ量の不足による失火や、高周波エネルギ量の過剰による電力の浪費及び高周波の反射に伴う電界発生装置6の損傷のリスクを低減できる。電界発生装置6を反射波から保護するための高機能かつ高コストな回路保護装置が不要となることに加えて、アンテナたる点火プラグ12の中心電極に向けた高周波の伝送効率も向上(伝送損失が低減)し、電界発生装置6を構成するDC−DCコンバータ61、高周波発生回路62及び昇圧トランス63(または、マグネトロン)の出力を必要最小限に抑えることが許容され、コストダウン及び信頼性向上といった効用をも得られる。
なお、本発明は以上に詳述した実施形態に限られるものではない。例えば、気筒1の燃焼室内に電界を印加するための電界発生装置6は、高周波の交流電圧を印加する交流電圧発生回路や、高周波の脈流電圧を印加する脈流電圧発生回路に限定されない。電界発生装置6としてマイクロ波を出力するマグネトロン等を採用し、気筒1の燃焼室内にマイクロ波電界を印加してアクティブ点火を実行するものとしてもよい。
上記実施形態では、点火プラグ12の中心電極を電界放射用のアンテナとしていたが、点火プラグ12とは別体のアンテナを気筒1に設け、これを介して気筒1の燃焼室内に高周波電界またはマイクロ波電界を放射してもよい。
ステップS3にて決定した、アクティブ点火における高周波(または、マイクロ波)電界の放射強度及び/または放射時間を、気筒1毎の学習値としてECU0のメモリに記憶させ、以後の点火制御に利用することも考えられる。この場合には、決定した高周波電界の強度及び/または放射時間を、対象の気筒1及びそのときの内燃機関の運転領域、点火タイミング、EGRバルブ23開度及びバルブタイミング(VVT機構の存在が前提である)等に関連付けて記憶する。そして、対象の気筒1において同等の運転領域、点火タイミング、EGRバルブ23開度及びバルブタイミング等が再現されるときに、先に記憶した高周波電界の強度及び/または放射時間の学習値をメモリから読み出し、これを用いて当該気筒1におけるアクティブ点火を実行する。
本発明の適用対象となる内燃機関は、いわゆるガソリン直噴エンジンには限定されない。ディーゼルエンジンや、HCCI(Homogeneous−Charge Compression Ignition)エンジン等に、本発明を適用することも当然に考えられる。
さらには、本発明を、吸気ポートに対して燃料を噴射するポート噴射式の内燃機関に適用することも可能である。
その他各部の具体的構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
本発明は、車両等に搭載される内燃機関として利用することができる。
0…制御装置(ECU)
1…気筒
11…インジェクタ
12…点火プラグ、アンテナ
13…イグナイタ
14…点火コイル
2…排気ガス再循環(EGR)装置
6…電界発生装置
7…ミキサ

Claims (1)

  1. 点火プラグの中心電極と接地電極との間に発生する火花放電と気筒の燃焼室内に臨むアンテナを介して燃焼室内に放射される電界とを相互作用させて燃焼室内にプラズマを生成し燃料に着火するアクティブ点火を実行可能な内燃機関であって、
    気筒の膨張行程における燃焼室内圧力に基づき、同気筒の次回以降の膨張行程の際のアクティブ点火において燃焼室内に放射する電界の強度または電界の放射時間を増減調整する内燃機関。
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