JP2015145479A - 熱可塑性樹脂組成物および成形品 - Google Patents
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Abstract
【課題】温度変化に対する寸法安定性、耐熱性および耐衝撃性のバランスに優れた成形品を得ることのできる熱可塑性樹脂組成物を提供する。【解決手段】ジエン系ゴム質重合体(ア)の存在下に、芳香族ビニル系単量体(イ)およびシアン化ビニル系単量体(ウ)を含有するビニル系単量体混合物をグラフト共重合してなるグラフト共重合体(I)、(イ)、(ウ)およびマレイミド系単量体(エ)を共重合してなる耐熱ビニル系共重合体(II)、(イ)および(ウ)を共重合してなる高シアン化ビニル系共重合体(III)、(イ)および(ウ)を共重合してなるビニル系共重合体(IV)ならびにタルク(V)を配合してなる熱可塑性樹脂組成物であって、前記(I)、(II)、(III)および(IV)の合計配合量100重量部に対して、タルク(V)配合量が20〜30重量部であり、かつ、{(I)/(V)}が1.2〜1.8である熱可塑性樹脂組成物。【選択図】なし
Description
本発明は、熱可塑性樹脂組成物およびそれを成形してなる成形品に関する。より詳しくは、グラフト共重合体、耐熱ビニル系共重合体、高シアン化ビニル系共重合体、ビニル系共重合体およびタルクを配合してなる熱可塑性樹脂組成物およびそれを成形してなる成形品に関する。
ゴム強化スチレン系樹脂は、優れた加工性、耐衝撃性、機械的特性を有することから、車輌分野、家電分野、建材分野など広範な分野において、各種構成部材の成形材料として使用されている。例えば、車輌分野において、特に自動車外装部材の材料には、高温環境下における使用に耐え得る高い耐熱性が求められている。また、デザイン性向上のために部品勘合部のクリアランスを小さくすることが求められており、環境温度の変化が生じても成形品の寸法変化が小さい、寸法安定性に優れる材料が求められている。
車輌用外装部材について、低温衝撃強度、耐薬品性、寸法安定性、塗装後の鮮映性を向上させる手段として、例えば、ポリアミド樹脂とゴム強化スチレン系樹脂組成物からなる組成物に、変性グラフト重合体および体積分布中位径1〜4μmのタルクを配合してなる樹脂組成物より成形された車輌用外装プラスチック部品が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、環境温度変化に対する寸法安定性はなお不十分であり、また、塗装の吸い込みやブリスター現象が生じやすく、塗装外観に課題があった。
これに対して、塗装の吸い込みやブリスター現象を抑制して良好な塗膜外観を得る手段として、例えば、グラフト共重合体、耐熱ビニル系共重合体、高シアン化ビニル系共重合体ならびに必要によりビニル系共重合体を含有してなる耐熱・耐塗装性熱可塑性樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、環境温度変化に対する寸法安定性が不十分である課題があった。
一方、表面外観性と線膨張係数のバランスに優れ、塗膜密着性、塗装性および面衝撃性に優れた熱可塑性樹脂組成物として、例えば、芳香族ビニル系重合体、特定の等温結晶化時間を有する芳香族ポリエステル、芳香族ポリカーボネートおよび無機充填材からなる熱可塑性樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、環境温度変化に対する寸法安定性はなお不十分であり、耐衝撃性および耐熱性が低い課題があった。
本発明は、上記従来技術の課題に鑑み、温度変化に対する寸法安定性、耐熱性および耐衝撃性のバランスに優れた成形品を得ることのできる熱可塑性樹脂組成物を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、グラフト共重合体、耐熱ビニル系共重合体、高シアン化ビニル系共重合体、ビニル系共重合体およびタルクを特定量配合してなる熱可塑性樹脂組成物により、上記課題が解決されることを見いだし、本発明に到達した。
すなわち本発明は、ジエン系ゴム質重合体(ア)40〜65重量%の存在下に、芳香族ビニル系単量体(イ)およびシアン化ビニル系単量体(ウ)を含有するビニル系単量体混合物35〜60重量%をグラフト共重合してなるグラフト共重合体(I)、芳香族ビニル系単量体(イ)、シアン化ビニル系単量体(ウ)およびマレイミド系単量体(エ)を共重合してなる耐熱ビニル系共重合体(II)、芳香族ビニル系単量体(イ)60〜70重量%およびシアン化ビニル系単量体(ウ)30〜40重量%を共重合してなる高シアン化ビニル系共重合体(III)、芳香族ビニル系単量体(イ)およびシアン化ビニル系単量体(ウ)30重量%未満を共重合してなるビニル系共重合体(IV)ならびにタルク(V)を配合してなる熱可塑性樹脂組成物であって、前記グラフト共重合体(I)、耐熱ビニル系共重合体(II)、高シアン化ビニル系共重合体(III)およびビニル系共重合体(IV)の合計配合量100重量部に対して、タルク(V)配合量が20〜30重量部であり、かつ、グラフト共重合体(I)の配合量とタルク(V)の配合量の重量比{(I)/(V)}が1.2〜1.8である熱可塑性樹脂組成物である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、温度変化に対する寸法安定性、耐熱性および耐衝撃性に優れた成形品を得ることができる。特に、環境温度の変化が生じても成形品の寸法変化が小さいため、部品勘合部のクリアランスを小さくでき、意匠性の向上が可能である。
以下、本発明の熱可塑性樹脂組成物とその成形品について、具体的に説明する。
本発明の熱可塑性樹脂組成物に配合されるグラフト共重合体(I)は、ジエン系ゴム質重合体(ア)40〜65重量%の存在下に、芳香族ビニル系単量体(イ)およびシアン化ビニル系単量体(ウ)を含有するビニル系単量体混合物35〜60重量%をグラフト共重合して得られるものである。グラフト共重合体(I)を配合することにより、成形品の耐衝撃性を向上させることができる。
ジエン系ゴム質重合体(ア)としては、例えば、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエンのブロック共重合体およびアクリル酸ブチル−ブタジエン共重合体などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。なかでも、ポリブタジエンが好ましく用いられる。
ジエン系ゴム質重合体(ア)は、ガラス転移温度が0℃以下のものが好ましく、成形品の耐衝撃性をより向上させることができる。一方、ガラス転移温度の下限値は、実用上−80℃程度である。なお、ジエン系ゴム質重合体(ア)のガラス転移温度は、DSC(示差走査熱量測定)によって求めることができる。
ジエン系ゴム質重合体(ア)は、乳化剤によって水中に分散したラテックスとして用いられることが一般的である。本発明におけるジエン系ゴム質重合体(ア)は、重量基準の粒子径頻度分布において、少なくとも200〜400nmの範囲と450nm以上の範囲のそれぞれに極大値を有することが好ましい。粒子径200〜400nmの粒子は、熱可塑性樹脂組成物の流動性を向上させ、成形加工性向上に寄与する。ジエン系ゴム質重合体(ア)の特性を活かして成形品の耐衝撃性をより向上させる観点から、300〜400nmがより好ましい。また、粒子径450nm以上の粒子により、成形品の耐衝撃性をより向上させることができる。600nm以上がより好ましい。一方、熱可塑性樹脂組成物の流動性の観点から、1200nm以下がより好ましい。本発明においては、これら両方の数値範囲に極大値を有する粒子径頻度分布を有するジエン系ゴム質重合体(ア)を用いることにより、熱可塑性樹脂組成物の流動性および成形加工性を保ちながら、成形品の耐衝撃性をより向上させることができる。
かかる粒子径頻度分布を有するジエン系ゴム質重合体(ア)は、例えば、重量平均粒子径が200〜400nmであるジエン系ゴム質重合体と、重量平均粒子径が450nm以上であるジエン系ゴム質重合体とを配合することにより得ることができる。熱可塑性樹脂組成物の流動性を向上させる観点から、重量平均粒子径が200〜400nmであるジエン系ゴム質重合体と重量平均粒子径が450nm以上であるジエン系ゴム質重合体との配合比(200〜400nm/450nm以上)は、9/1(重量比)以下が好ましい。一方、成形品の耐衝撃性をより向上させる観点から、配合比(200〜400nm/450nm以上)は、5/5以上が好ましく、6/4以上がより好ましい。
ここで、本発明におけるジエン系ゴム質重合体(ア)の重量基準の粒子径頻度分布および重量平均粒子径は、ジエン系ゴム質重合体(ア)のラテックスを純水にて300〜500倍に希釈し、レーザー回析・散乱法による粒子径分布測定装置により測定することができる。
グラフト共重合体(I)を構成する原料におけるジエン系ゴム質重合体(ア)の重量分率は、ジエン系ゴム質重合体(ア)およびビニル系単量体混合物の合計100重量%中、40〜65重量%である。ジエン系ゴム質重合体(ア)の重量分率が40重量%未満であると、成形品の耐衝撃性が低下する。45重量%以上が好ましい。一方、ジエン系ゴム質重合体(ア)の重量分率が65重量%を超えると、流動性が低下するため成形加工性が損なわれ、成形品の塗装表面外観が低下する場合がある。60重量%以下が好ましく、55重量%以下がより好ましい。
グラフト共重合体(I)の原料として用いられるビニル系単量体混合物は、芳香族ビニル系単量体(イ)およびシアン化ビニル系単量体(ウ)を含有する。さらに、本発明の効果を失わない程度に他の共重合可能な単量体を含有してもよい。なお、グラフト共重合体(I)の原料である芳香族ビニル系単量体(イ)と、後述する耐熱ビニル系共重合体(II)、高シアン化ビニル系共重合体(III)およびビニル系共重合体(IV)の原料である芳香族ビニル系単量体(イ)は、それぞれ同一であっても異なってもよいが、同一であることが好ましい。また、グラフト共重合体(I)の原料であるシアン化ビニル系単量体(ウ)と、後述する耐熱ビニル系共重合体(II)、高シアン化ビニル系共重合体(III)およびビニル系共重合体(IV)の原料であるシアン化ビニル系単量体(ウ)は、それぞれ同一であっても異なってもよいが、同一であることが好ましい。
芳香族ビニル系単量体(イ)としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、o−エチルスチレン、p−メチルスチレン、クロロスチレンおよびブロモスチレンなどが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。なかでも、スチレンが好ましく用いられる。
シアン化ビニル系単量体(ウ)としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルおよびエタクリロニトリルなどが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。なかでも、アクリロニトリルが好ましく用いられる。
他の共重合可能な単量体としては、例えば、N−フェニルマレイミド、N−メチルマレイミドおよびメタクリル酸メチルなどが挙げられ、それぞれの目的に応じて選択することができる。これらを2種以上用いてもよい。耐熱性や難燃性をより向上させるためには、N−フェニルマレイミドが好ましい。また、硬度や透明性を向上させるためには、メタクリル酸メチルが好ましく用いられる。
グラフト共重合体(I)を構成する原料におけるビニル系単量体混合物の重量分率は、ジエン系ゴム質重合体(ア)およびビニル系単量体混合物の合計100重量%中、35〜60重量%である。ビニル系単量体混合物の重量分率が35重量%未満であると、流動性が低下して成形加工性が損なわれ、成形品の塗装表面外観が低下する場合がある。40重量%以上が好ましく、45重量%以上がより好ましい。一方、ビニル系単量体混合物の重量分率が60重量%を超えると、成形品の耐衝撃性が低下する。55重量%以下が好ましい。
また、グラフト共重合体(I)を構成する原料における芳香族ビニル系単量体(イ)およびシアン化ビニル系単量体(ウ)の重量分率は、成形加工性の観点から、芳香族ビニル系単量体(イ)35〜45重量%、シアン化ビニル系単量体(ウ)10〜20重量%が好ましい。
グラフト共重合体(I)のグラフト率は、5〜60%が好ましい。グラフト率が5%以上であれば、衝突延性により成形品の耐衝撃性をより向上させることができる。10%以上がより好ましく、20%以上がさらに好ましい。一方、グラフト率が60%以下であれば、成形加工性を向上させることができる。50%以下がより好ましく、40%以下がさらに好ましい。
グラフト率は、グラフト共重合体のジエン系ゴム質重合体含有量に対するジエン系ゴム質重合体にグラフト重合したビニル系重合体量を示し、次の方法により測定することができる。まず、グラフト共重合体の所定量(m;約1g)にアセトン200mlを加え、70℃の温度の湯浴中で3時間還流し、この溶液を8800r.p.m.(10000G)で40分間遠心分離した後、不溶分を濾過する。得られたアセトン不溶分を60℃で5時間減圧乾燥し、その重量(n)を測定し、下記式よりグラフト率を算出する。ここで、Lはグラフト共重合体のゴム含有率である。
グラフト率(%)={[(n)−{(m)×L}]/[(m)×L]}×100。
グラフト率(%)={[(n)−{(m)×L}]/[(m)×L]}×100。
本発明の熱可塑性樹脂組成物中のグラフト共重合体(I)の配合量は、グラフト共重合体(I)、後述する耐熱ビニル系共重合体(II)、高シアン化ビニル系共重合体(III)およびビニル系共重合体(IV)の合計配合量100重量部に対して、30〜45重量部が好ましい。グラフト共重合体(I)の配合量が30重量部以上であれば、成形品の耐衝撃性をより向上させることができる。32重量部以上がより好ましい。一方、グラフト共重合体(I)の配合量が45重量部以下であれば、熱可塑性樹脂組成物の流動性および成形加工性に優れ、吸込み現象、エッジ部のブリスター現象などを抑制することができる。40重量部以下がより好ましく、38重量部以下がさらに好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物に配合される耐熱ビニル系共重合体(II)は、芳香族ビニル系単量体(イ)、シアン化ビニル系単量体(ウ)およびマレイミド系単量体(エ)を共重合して得られるものである。耐熱ビニル系共重合体(II)を配合することにより、耐熱性を向上させることができる。
芳香族ビニル系単量体(イ)としては、前述のグラフト共重合体(I)において芳香族ビニル系単量体(イ)として例示したものが挙げられ、スチレンが好ましく用いられる。
シアン化ビニル系単量体(ウ)としては、前述のグラフト共重合体(I)においてシアン化ビニル系単量体(ウ)として例示したものが挙げられ、アクリロニトリルが好ましく用いられる。
マレイミド系単量体(エ)としては、例えば、N−フェニルマレイミド、N−メチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミドなどが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。なかでも、N−フェニルマレイミドが好ましく用いられる。
耐熱ビニル系共重合体(II)を構成する原料における各単量体の重量分率は、芳香族ビニル系単量体(イ)、シアン化ビニル系単量体(ウ)およびマレイミド系単量体(エ)の合計100重量%中、芳香族ビニル系単量体(イ)36〜64重量%、シアン化ビニル系単量体(ウ)1〜12重量%、マレイミド系単量体(エ)35〜52重量%が好ましい。特に、マレイミド系単量体(エ)の重量分率が35重量%以上であれば、成形品の耐熱性をより向上させることができる。一方、マレイミド系単量体(エ)の重量分率52重量%以下であれば、熱可塑性樹脂組成物の成形加工性を向上させることができる。50重量%以下がより好ましい。
耐熱ビニル系共重合体(II)の30℃における還元粘度は、0.3〜0.7dl/gが好ましい。30℃における還元粘度が0.3dl/g以上であれば、成形品の耐衝撃性をより向上させることができる。0.4dl/g以上がより好ましい。一方、30℃における還元粘度が0.7dl/g以下であれば、熱可塑性樹脂組成物の流動性および成形加工性を向上させることができる。0.6dl/g以下がより好ましい。ここで、耐熱ビニル系共重合体(II)の30℃における還元粘度は、耐熱ビニル系共重合体(II)をジメチルスルフォキシドに溶解した濃度0.4g/dlの溶液を用いて、30℃において、ウベローデ粘度計で測定することができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物中の耐熱ビニル系共重合体(II)の配合量は、前述のグラフト共重合体(I)、耐熱ビニル系共重合体(II)、後述する高シアン化ビニル系共重合体(III)およびビニル系共重合体(IV)の合計配合量100重量部に対して、10〜25重量部が好ましい。耐熱ビニル系共重合体(II)の配合量が10重量部以上であれば、成形品の耐熱性をより向上させることができる。一方、耐熱ビニル系共重合体(II)の配合量が25重量部以下であれば、成形品の耐衝撃性をより向上させることができる。また、熱可塑性樹脂組成物の流動性が向上し、吸込み現象やエッジ部のブリスター現象などを抑制することができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物に配合される高シアン化ビニル系共重合体(III)は、芳香族ビニル系単量体(イ)60〜70重量%およびシアン化ビニル系単量体(ウ)30〜40重量%を共重合して得られるものである。高シアン化ビニル系共重合体(III)を配合することにより、成形品の塗装表面外観を向上させ、エッジ部のブリスター現象などを抑制することができる。
芳香族ビニル系単量体(イ)としては、前述のグラフト共重合体(I)において芳香族ビニル系単量体(イ)として例示したものが挙げられ、スチレンが好ましく用いられる。
シアン化ビニル系単量体(ウ)としては、前述のグラフト共重合体(I)においてシアン化ビニル系単量体(ウ)として例示したものが挙げられ、アクリロニトリルが好ましく用いられる。
高シアン化ビニル系共重合体(III)を構成する原料における各単量体の重量分率は、芳香族ビニル系単量体(イ)およびシアン化ビニル系単量体(ウ)の合計100重量%中、芳香族ビニル系単量体(イ)60〜70重量%、シアン化ビニル系単量体(ウ)30〜40重量%である。シアン化ビニル系単量体の重量分率が30重量%未満であると、成形品の耐薬品性が低下し、塗装不良(吸込み)が発生しやすくなる。一方、40重量%を超える場合には、高シアン化ビニル系共重合体(III)の重合度を高めることが困難であり、成形品の耐衝撃性が低下する。
高シアン化ビニル系共重合体(III)の30℃における固有粘度は、0.3〜0.7dl/gが好ましい。30℃における固有粘度が0.3dl/g以上であると、成形品の耐衝撃性をより向上させることができる。一方、30℃における固有粘度が0.7dl/g以下であると、熱可塑性樹脂組成物の流動性を向上させることができる。ここで、高シアン化ビニル系共重合体(III)の30℃における固有粘度は、高シアン化ビニル系共重合体(III)をメチルエチルケトンに溶解した濃度0.2g/dlおよび0.4g/dlの各溶液を用いて、30℃において、ウベローデ粘度計で測定した粘度から算出することができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物中の高シアン化ビニル系共重合体(III)の配合量は、前述のグラフト共重合体(I)、耐熱ビニル系共重合体(II)、高シアン化ビニル系共重合体(III)および後述するビニル系共重合体(IV)の合計配合量100重量部に対して、5〜20重量部が好ましい。高シアン化ビニル系共重合体(III)の配合量が5重量部以上であれば、吸込み現象やエッジ部のブリスター現象を抑制することができる。一方、溶融時の色調安定性をより向上させるには、高シアン化ビニル系共重合体(III)の配合量を20重量部以下にすることが好ましい。
高シアン化ビニル系共重合体(III)は、シアン化ビニル系単量体(ウ)由来の構造単位の平均含有率が30〜40重量%であり、共重合体中のシアン化ビニル系単量体(ウ)由来の構造単位の組成分布において、シアン化ビニル系単量体(ウ)由来の構造単位の含有率がその平均含有率より2重量%以上高い共重合体を、高シアン化ビニル系共重合体(III)100重量%中に20〜50重量%含有することが好ましい。
高シアン化ビニル系共重合体(III)のシアン化ビニル系単量体(ウ)由来の構造単位は、吸込み現象やエッジ部のブリスター現象を抑制し、成形品の塗装表面外観を向上させる効果を奏する。このため、シアン化ビニル系単量体(ウ)由来の構造単位の平均含有率が30重量%以上であれば、成形品のエッジ部分における吸込みやブリスター現象をより抑制することができる。一方、シアン化ビニル系単量体(ウ)由来の構造単位の平均含有率が40重量%以下であれば、溶融時の色調安定性を向上させることができる。
高シアン化ビニル系共重合体(III)中のシアン化ビニル系単量体(ウ)由来の構造単位の平均含有率は、一般的に、原料におけるシアン化ビニル系単量体(ウ)の重量分率によって定まるが、シアン化ビニル系単量体(ウ)由来の構造単位の含有率は高シアン化ビニル系共重合体(III)中において均一ではなく、ある程度の分布を有する場合が多い。前述のとおり、シアン化ビニル系単量体(ウ)由来の構造単位の含有率が高い方が塗装表面外観を向上させることができる一方、シアン化ビニル系単量体(ウ)由来の構造単位の含有率が低い重合体は、グラフト共重合体(I)やビニル系共重合体(IV)との相溶性や、溶融時の色調安定性を向上させることができる。そのため、本発明においては、シアン化ビニル系単量体(ウ)由来の構造単位にある程度の組成分布を有することが好ましい。具体的には、シアン化ビニル系単量体(ウ)由来の構造単位の含有率がその平均含有率より2重量%以上高い共重合体を20〜50重量%含有することが好ましい。シアン化ビニル系単量体(ウ)由来の構造単位の含有率がその平均含有率より2重量%以上高い共重合体を高シアン化ビニル系共重合体(III)中に20重量%以上含有することにより、ブリスター現象をより抑制し、成形品の塗装表面外観をより向上させることができる。25重量%以上がより好ましい。一方、シアン化ビニル系単量体(ウ)由来の構造単位の含有率がその平均含有率より2重量%以上高い共重合体を高シアン化ビニル系共重合体(III)中に50重量%以下含有することにより、溶融時の色調安定性および成形品の耐衝撃性をより向上させることができる。45重量%以下がより好ましい。
高シアン化ビニル系共重合体(III)中のシアン化ビニル系単量体(ウ)由来の構造単位の平均含有率は、高シアン化ビニル系共重合体(III)を加熱プレスにより40μm程度のフィルム状にし、赤外分光分析することにより測定することができる。また、高シアン化ビニル系共重合体(III)中のシアン化ビニル系単量体(ウ)由来の構造単位の組成分布は、次の方法により求めることができる。まず、高シアン化ビニル系共重合体(III)のメチルエチルケトン溶液を作製し、この溶液にシクロヘキサンを滴下する。高シアン化ビニル系共重合体(III)が沈殿しだい、シクロヘキサンの滴下を中止し、遠心分離と濾過にて高シアン化ビニル系共重合体(III)を分離後、真空乾燥する。分離した濾液に、一定量のシクロヘキサンを添加し、さらに沈殿した高シアン化ビニル系共重合体(III)を同様の操作にて分離、乾燥を行い、高シアン化ビニル系共重合体(III)の沈殿が無くなるまで本操作を繰り返す。高シアン化ビニル系共重合体(III)中のシアン化ビニル系単量体(ウ)由来の構造単位の含有率により、析出し始めるシクロヘキサン濃度が異なる(シアン化ビニル系単量体(ウ)由来の構造単位の含有率が少ないほど、早い段階で祈出する)ことから、本操作により、組成分布のある高シアン化ビニル系共重合体(III)を、組成が異なる共重合体毎に分離することができる。シアン化ビニル系単量体(ウ)由来の構造単位の含有率毎に分離した高シアン化ビニル系共重合体(III)の重量を測定し、総祈出量から割り返して重量分率を求めるとともに、赤外分光分析によりシアン化ビニル系単量体(ウ)由来の構造単位の含有率を求めることで、組成分布を求めることができ、前述の方法で求めた平均含有率とあわせて、シアン化ビニル系単量体(ウ)由来の構造単位の含有率がその平均含有率より2重量%以上高い共重合体の含有量を算出することができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物に配合されるビニル系共重合体(IV)は、芳香族ビニル系単量体(イ)およびシアン化ビニル系単量体(ウ)30重量%未満を共重合して得られるものである。ビニル系共重合体(IV)を配合することにより、熱可塑性樹脂組成物の流動性を向上させることができる。さらに、本発明の効果を失わない程度に他の共重合可能な単量体を含有してもよい。ただし、マレイミド系単量体を共重合した共重合体は、前述の耐熱ビニル系共重合体(II)に分類する。
芳香族ビニル系単量体(イ)としては、前述のグラフト共重合体(I)において芳香族ビニル系単量体(イ)として例示したものが挙げられ、スチレンが好ましく用いられる。
シアン化ビニル系単量体(ウ)としては、前述のグラフト共重合体(I)においてシアン化ビニル系単量体(ウ)として例示したものが挙げられ、アクリロニトリルが好ましく用いられる。
他の共重合可能な他の単量体としては、例えば、メタクリル酸メチルなどが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
ビニル系共重合体(IV)を構成する原料における各単量体の重量分率は、芳香族ビニル系単量体(イ)、シアン化ビニル系単量体(ウ)および他の共重合可能な単量体の合計100重量%中、芳香族ビニル系単量体(イ)70重量%を超え82重量%以下、シアン化ビニル系単量体(ウ)18重量%以上30重量%未満が好ましい。ビニル系共重合体(IV)のシアン化ビニル系単量体の重量分率が18重量%以上であれば、成形品の耐薬品性を向上させ、吸込み現象やエッジ部のブリスター現象を抑制して塗装表面外観をより向上させることができる。19重量%以上がより好ましく、20重量%以上がさらに好ましい。
ビニル系共重合体(IV)の30℃における固有粘度は、0.3〜0.8dl/gが好ましい。30℃における固有粘度が0.3dl/g以上であると、成形品の耐衝撃性をより向上させることができる。一方、30℃における固有粘度が0.7dl/g以下であると、熱可塑性樹脂組成物の流動性を向上させることができる。ここで、ビニル系共重合体(IV)の30℃における固有粘度は、ビニル系共重合体(IV)をメチルエチルケトンに溶解した濃度0.2g/dlおよび0.4g/dlの各溶液を用いて、30℃において、ウベローデ粘度計で測定した粘度から算出することができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物中のビニル系共重合体(IV)の配合量は、前述のグラフト共重合体(I)、耐熱ビニル共重合体(II)、高シアン化ビニル系共重合体(III)およびビニル系共重合体(IV)の合計100重量部に対して、25〜50重量部が好ましい。ビニル系共重合体(III)の配合量が25重量部以上であれば、熱可塑性樹脂組成物の流動性を向上させ、成形加工性を向上させることができる。30重量部以上がより好ましい。一方、50重量部以下であれば、成形品の耐衝撃性をより向上させることができる。45重量部以下がより好ましい。
本発明において、グラフト共重合体(I)、耐熱ビニル系共重合体(II)、高シアン化ビニル系共重合体(III)およびビニル系共重合体(IV)の製造方法に関しては特に制限はなく、例えば、塊状重合、懸濁重合、塊状懸濁重合、溶液重合、乳化重合、沈殿重合などの方法が挙げられる。これらを2種以上組み合わせてもよい。単量体の仕込み方法に関しても特に制限はなく、初期に一括添加してもよいし、共重合体の組成分布を付けるため、あるいは防止するために、数回に分けて添加して段階的に重合してもよい。高シアン化ビニル系共重合体(III)中のシアン化ビニル系単量体(ウ)由来の構造単位に組成分布を付けるためには、懸濁重合法が好適に用いられる。さらに、単量体を数回に分けて仕込み、段階的に重合する方法が好ましく用いられる。
本発明において、グラフト共重合体(I)、耐熱ビニル系共重合体(II)、高シアン化ビニル系共重合体(III)およびビニル系共重合体(IV)の製造において、過酸化物またはアゾ系化合物などを開始剤として用いることができる。また、重合度を調節するため、連鎖移動剤を用いることもできる。
過酸化物としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカルボネート、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオクテート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートなどが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。なかでも、クメンハイドロパーオキサイドおよび1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサンが特に好ましく用いられる。
アゾ系化合物としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2−フェニルアゾ−2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル、2−シアノ−2−プロピルアゾホルムアミド、1,1’−アゾビスシクロヘキサン−1−カーボニトリル、アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、1−t−ブチルアゾ−1−シアノシクロヘキサン、2−t−ブチルアゾ−2−シアノブタン、2−t−ブチルアゾ−2−シアノ−4−メトキシ−4−メチルペンタンなどが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。なかでも、アゾビスイソブチロニトリルが特に好ましく用いられる。
連鎖移動剤としては、例えば、n−オクチルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、n−オクタデシルメルカプタンなどのメルカプタン、テルピノレンなどのテルペンなどが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。なかでも、n−オクチルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタンおよびn−ドデシルメルカプタンが好ましく用いられる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物に配合されるタルク(V)は、一般的に、化学式Mg3(Si4O10)(OH)2で表されるMgOとケイ酸塩からなる天然物である。タルク(V)を配合することにより、成形品の温度変化に対する寸法安定性を向上させることができる。
タルク(V)のメジアン径(D50)は、2〜10μmが好ましい。メジアン径(D50)を2μm以上とすることで、成形品の寸法安定性をより向上させることができる。一方、メジアン径(D50)を10μm以下とすることで、成形品の塗装表面外観(塗装光沢性)をより向上させることができる。タルク(V)のメジアン径は、タルク(V)を水などに分散させてスラリー化し、レーザー回析・散乱法による粒子径分布測定装置などにより測定することができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物中のタルク(V)の配合量は、前述のグラフト共重合体(I)、耐熱ビニル系共重合体(II)、高シアン化ビニル系共重合体(III)およびビニル系共重合体(IV)の合計100重量部に対して、20〜30重量部である。タルク(V)の配合量が20重量部未満であると、成形品の寸法安定性が低下する。22重量部以上が好ましく、24重量部以上がより好ましい。一方、タルク(V)の配合量が30重量部を超えると、成形品の耐衝撃性が低下する。28重量部以下が好ましく、26重量部以下がさらに好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物において、グラフト共重合体(I)とタルク(V)の配合量の重量比{(I)/(V)}は、1.2〜1.8である。前述のとおり、成形品の寸法安定性を向上させるためにタルク(V)の配合量を増やすと、耐衝撃性が低下する傾向にある。一方、グラフト共重合体(I)を増量することによって耐衝撃性を向上させることができるものの、流動性が低下し、成形加工性が低化する。本発明においては、グラフト共重合体(I)とタルク(V)の配合量を特定の範囲にすることにより、流動性や成形加工性を維持しながら、寸法安定性と耐衝撃性をバランス良く発現することができる。{(I)/(V)}が1.2未満であると、成形品の耐衝撃性が低下する。一方、{(I)/(V)}が1.8を超えると、熱可塑性樹脂組成物の流動性が低下し、成形品の寸法安定性および塗装表面外観が低下する。1.6以下が好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、さらに、必要に応じて、本発明の特性を損なわない範囲で、任意の耐衝撃改良材を配合することができる。耐衝撃改良材としては、例えば、天然ゴム、低密度ポリエチレンや高密度ポリエチレンなどのポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/メチルアクリレート共重合体、エチレン/エチルアクリレート共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン/ブチルアクリレート共重合体、エチレン/エチルアクリレート/一酸化炭素共重合体、エチレン/グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン/メチルアクリレート/グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン/ブチルアクリレート/グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン/オクテン−1共重合体、エチレン/ブテン−1共重合体などのエチレン系エラストマ、ポリエチレンテレフタレート/ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールブロック共重合体、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート/ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールブロック共重合体などのポリエステルエラストマ、メタクリル酸メチル/ブタジエン/スチレン共重合体またはアクリル系のコアシェルエラストマ、スチレン系エラストマが例示される。これらを2種以上配合してもよい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、必要に応じて、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、含硫黄化合物系酸化防止剤、含リン有機化合物系酸化防止剤、フェノール系、アクリレート系などの熱酸化防止剤、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サクシレート系などの紫外線吸収剤、デカブロモビフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノールA、塩素化ポリエチレン、臭素化エポキシオリゴマー、臭素化ポリカーボネート、三酸化アンチモン、縮合リン酸エステルなどの難燃剤・難燃助剤、銀系抗菌剤に代表される抗菌剤、抗カビ剤、カーボンブラック、酸化チタン、離型剤、潤滑剤、顔料および染料などを配合することもできる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、例えば、構成する各成分を溶融混練することにより得ることができる。溶融混練方法に関しては、特に制限はないが、加熱装置およびベントを有するシリンダーで単軸または二軸のスクリューを使用して溶融混練する方法などが採用可能である。二軸のスクリューを使用する場合、同一回転方向でも異回転方向でもよい。溶融混練時の際の加熱温度は、通常210〜320℃の範囲から選択される。本発明の目的を損なわない範囲で、温度勾配等を自由に設定することも可能である。
本発明の樹熱可塑性樹脂組成物は、任意の成形方法により成形することができる。成形方法については特に限定されないが、射出成形が好ましい。射出成形温度は、220〜300℃が一般的である。射出成形時の金型温度は、30〜80℃が一般的である。
本発明の成形品は、温度変化に対する寸法安定性に優れる。特に、成形品の流動方向(MD)とその直角方向(TD)の線膨張係数からSchapery式により算出される、三次元ランダム配向複合材の線膨張係数(α3D)が6.0×10−5/℃以下であることが好ましく、5.7×10−5/℃以下であることがより好ましい。線膨張係数(α3D)が6.0×10−5/℃以下であれば、環境温度の変化による寸法変化がより小さいことから、部品勘合部のクリアランスを小さくでき、意匠性の向上が可能である。前述の本発明の熱可塑性樹脂組成物を成形することにより、かかる線膨張係数(α3D)を有する成形品を得ることができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物によれば、ISO法1.8MPaの荷重たわみ温度90℃以上、好ましくは95℃以上の耐熱性を有し、環境温度変化に対する寸法安定性および耐衝撃性に優れた成形品を得ることができる。また、耐塗装性に優れ、90°未満のエッジを有する射出成形品に塗装した場合にも、吸込みやブリスターといった塗装不良を抑制することができる。このため、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、自動車外装のバックドアガーニッシュ、リアドアガーニッシュ、ルーフガーニッシュ、ライセンスガーニッシュ、リアスポイラー、ドアミラー、ラジエータグリルなど、高い耐熱性、寸法安定性、耐衝撃性および耐塗装性が求められる用途に好適に使用することができる。
本発明をさらに具体的に説明するため、以下に実施例を挙げるが、これらの実施例は本発明を何ら制限するものではない。まず、各参考例、実施例および比較例における評価方法を下記する。
(1)グラフト率
グラフト共重合体の所定量(m;約1g)にアセトン200mlを加え、70℃の温度の湯浴中で3時間還流し、この溶液を8800r.p.m.(10000G)で40分間遠心分離した後、不溶分を濾過した。得られたアセトン不溶分を60℃で5時間減圧乾燥し、その重量(n)を測定した。グラフト率は、下記式より算出した。ここでLは、グラフト共重合体のゴム含有率である。
グラフト率(%)={[(n)−{(m)×L}]/[(m)×L]}×100。
グラフト共重合体の所定量(m;約1g)にアセトン200mlを加え、70℃の温度の湯浴中で3時間還流し、この溶液を8800r.p.m.(10000G)で40分間遠心分離した後、不溶分を濾過した。得られたアセトン不溶分を60℃で5時間減圧乾燥し、その重量(n)を測定した。グラフト率は、下記式より算出した。ここでLは、グラフト共重合体のゴム含有率である。
グラフト率(%)={[(n)−{(m)×L}]/[(m)×L]}×100。
(2)還元粘度
耐熱ビニル系共重合体(II)をジメチルスルフォキシドに溶解した濃度0.4g/dlの溶液を用いて、測定温度30℃で、ウベローデ粘度計により測定した。
耐熱ビニル系共重合体(II)をジメチルスルフォキシドに溶解した濃度0.4g/dlの溶液を用いて、測定温度30℃で、ウベローデ粘度計により測定した。
(3)固有粘度
高シアン化ビニル系共重合体(III)、ビニル系共重合体(IV)をそれぞれエチルエチルケトンに溶解した濃度0.2g/dlおよび0.4g/dlの各溶液を用いて、測定温度30℃で、ウベローデ粘度計により粘度を測定し、固有粘度を算出した。
高シアン化ビニル系共重合体(III)、ビニル系共重合体(IV)をそれぞれエチルエチルケトンに溶解した濃度0.2g/dlおよび0.4g/dlの各溶液を用いて、測定温度30℃で、ウベローデ粘度計により粘度を測定し、固有粘度を算出した。
(4)シアン化ビニル系単量体(ウ)由来の構造単位の平均含有率
高シアン化ビニル系共重合体(III)、ビニル系共重合体(IV)をそれぞれ加熱プレスにより40μm程度のフィルム状にし、赤外分光光度計により求めた。
高シアン化ビニル系共重合体(III)、ビニル系共重合体(IV)をそれぞれ加熱プレスにより40μm程度のフィルム状にし、赤外分光光度計により求めた。
(5)シアン化ビニル系単量体(ウ)由来の構造単位の組成分布
高シアン化ビニル系共重合体(III)約5gを80mlのメチルエチルケトンに溶解した溶液を作製し、そこへ高シアン化ビニル系共重合体(III)が沈殿するまでシクロヘキサンを添加した。沈殿した高シアン化ビニル系共重合体(III)を、遠心分離と濾過にて分離後、真空乾燥した。分離した濾液に、約10mlのシクロヘキサンを添加し、さらに沈殿した高シアン化ビニル系共重合体(III)を同様の操作にて分離し、真空乾燥した。高シアン化ビニル系共重合体(III)の沈殿がなくなるまで本操作を繰り返した。分離した各々の高シアン化ビニル系共重合体(III)の重量を測定し、総祈出量から割り返して重量分率を求めるとともに、赤外分光分析によりシアン化ビニル系単量体(ウ)由来の構造単位の含有率を求めることで、組成分布を求め、(4)と同じように求めた平均含有率とあわせて、シアン化ビニル系単量体(ウ)由来の構造単位の含有率がその平均含有率より2重量%以上高い共重合体の含有量を算出した。
高シアン化ビニル系共重合体(III)約5gを80mlのメチルエチルケトンに溶解した溶液を作製し、そこへ高シアン化ビニル系共重合体(III)が沈殿するまでシクロヘキサンを添加した。沈殿した高シアン化ビニル系共重合体(III)を、遠心分離と濾過にて分離後、真空乾燥した。分離した濾液に、約10mlのシクロヘキサンを添加し、さらに沈殿した高シアン化ビニル系共重合体(III)を同様の操作にて分離し、真空乾燥した。高シアン化ビニル系共重合体(III)の沈殿がなくなるまで本操作を繰り返した。分離した各々の高シアン化ビニル系共重合体(III)の重量を測定し、総祈出量から割り返して重量分率を求めるとともに、赤外分光分析によりシアン化ビニル系単量体(ウ)由来の構造単位の含有率を求めることで、組成分布を求め、(4)と同じように求めた平均含有率とあわせて、シアン化ビニル系単量体(ウ)由来の構造単位の含有率がその平均含有率より2重量%以上高い共重合体の含有量を算出した。
(6)耐熱性
荷重たわみ温度:ISO75−2(1.8MPa条件で測定)に準拠して測定した。
荷重たわみ温度:ISO75−2(1.8MPa条件で測定)に準拠して測定した。
(7)耐衝撃性
シャルピー衝撃強度:ISO179/1eAに準拠して測定した。
シャルピー衝撃強度:ISO179/1eAに準拠して測定した。
(8)流動性
メルトフローレート:ISO1133(温度240℃、98N荷重条件で測定)に準じて測定した。
メルトフローレート:ISO1133(温度240℃、98N荷重条件で測定)に準じて測定した。
(9)エッジ付成形品の塗装表面外観
各実施例および比較例により得られたペレットから、射出成形機を使用して、シリンダー温度を250℃、金型温度を60℃に設定し、長手方向にエッジ部を有する70mm×240mm×2mm厚の角板を射出成形した。図1に角板の概略図を示す。図1において、符号1はエッジ部を表し、符号2はゲートを表す。エッジ角度θは45°と60°の2種類とした。その角板に、アクリル−ウレタン2液塗料(ウレタンPG60/ハードナー、関西ペイント株式会社製)を、塗装ロボット:川崎重工株式会社製 KE610H、ABB社製 カートリッジベルを用い、塗膜厚み30μmでそれぞれ塗布した後、乾燥温度80℃で30分間乾燥させ、塗装成形品を得た。得られた塗装成形品の鮮明度と外観を以下基準により目視で評価した。◎と○を合格レベルとし、△と×を不合格レベルとした。
◎:高光沢感が確認される。
○:光沢感はあるが高光沢ではない。
△:一部分に若干の塗装ムラがある。
×:全体的に塗装ムラが目立つ。
各実施例および比較例により得られたペレットから、射出成形機を使用して、シリンダー温度を250℃、金型温度を60℃に設定し、長手方向にエッジ部を有する70mm×240mm×2mm厚の角板を射出成形した。図1に角板の概略図を示す。図1において、符号1はエッジ部を表し、符号2はゲートを表す。エッジ角度θは45°と60°の2種類とした。その角板に、アクリル−ウレタン2液塗料(ウレタンPG60/ハードナー、関西ペイント株式会社製)を、塗装ロボット:川崎重工株式会社製 KE610H、ABB社製 カートリッジベルを用い、塗膜厚み30μmでそれぞれ塗布した後、乾燥温度80℃で30分間乾燥させ、塗装成形品を得た。得られた塗装成形品の鮮明度と外観を以下基準により目視で評価した。◎と○を合格レベルとし、△と×を不合格レベルとした。
◎:高光沢感が確認される。
○:光沢感はあるが高光沢ではない。
△:一部分に若干の塗装ムラがある。
×:全体的に塗装ムラが目立つ。
(10)ブリスター
(9)の方法により得られた塗装成形品各10個について、エッジ部を観察し、ブリスターが形成された個数を計数した。
(9)の方法により得られた塗装成形品各10個について、エッジ部を観察し、ブリスターが形成された個数を計数した。
(11)寸法安定性
成形品の環境温度変化による寸法安定性は、線膨張係数をJIS K 7197に準拠(測定温度範囲:−30〜80℃)し、樹脂の流動方向(MD)とその直角方向(TD)を測定し、以下のSchapery式により三次元ランダム配向複合材の線膨張係数(α3D)として算出した。
α3D≒(αMD+2αTD)/3
成形品の環境温度変化による寸法安定性は、線膨張係数をJIS K 7197に準拠(測定温度範囲:−30〜80℃)し、樹脂の流動方向(MD)とその直角方向(TD)を測定し、以下のSchapery式により三次元ランダム配向複合材の線膨張係数(α3D)として算出した。
α3D≒(αMD+2αTD)/3
各実施例および比較例に用いた材料を以下に示す。
(参考例1)グラフト共重合体(I−1)の調製
ポリブタジエンラテックス(重量平均粒子径が350nmであるポリブタジエンラテックスと800nmであるポリブタジエンラテックスを、重量比率8:2で混合したもの)45重量%(固形分換算)の存在下で、スチレン40重量%とアクリロニトリル15重量%からなる単量体混合物を、ステアリン酸カリウムを使用して乳化重合してゴム強化スチレン樹脂ラテックスを得た。これを、90℃の0.3%希硫酸水溶液中に添加して凝集させた後、水酸化ナトリウム水溶液により中和し、洗浄・脱水・乾燥工程を経て、グラフト共重合体(I−1)を調製した。グラフト率は25%であった。なお、ポリブタジエンラテックス中のポリブタジエンの重量平均粒子径は、ポリブタジエンラテックスを純水にて300〜500倍に希釈し、レーザー回析・散乱法による粒子径分布測定装置により測定した。
ポリブタジエンラテックス(重量平均粒子径が350nmであるポリブタジエンラテックスと800nmであるポリブタジエンラテックスを、重量比率8:2で混合したもの)45重量%(固形分換算)の存在下で、スチレン40重量%とアクリロニトリル15重量%からなる単量体混合物を、ステアリン酸カリウムを使用して乳化重合してゴム強化スチレン樹脂ラテックスを得た。これを、90℃の0.3%希硫酸水溶液中に添加して凝集させた後、水酸化ナトリウム水溶液により中和し、洗浄・脱水・乾燥工程を経て、グラフト共重合体(I−1)を調製した。グラフト率は25%であった。なお、ポリブタジエンラテックス中のポリブタジエンの重量平均粒子径は、ポリブタジエンラテックスを純水にて300〜500倍に希釈し、レーザー回析・散乱法による粒子径分布測定装置により測定した。
(参考例2)グラフト共重合体(I−2)の調製
ポリブタジエンラテックス(重量平均粒子径350nm)60重量%(固形分換算)の存在下で、スチレン29重量%とアクリロニトリル11重量%からなる単量体混合物を、ステアリン酸カリウムを使用して乳化重合してゴム強化スチレン樹脂ラテックスを得た。これを、90℃の0.3%希硫酸水溶液中に添加して凝集させた後、水酸化ナトリウム水溶液により中和し、洗浄・脱水・乾燥工程を経て、グラフト共重合体(I−2)を調製した。グラフト率は42%であった。なお、ポリブタジエンラテックス中のポリブタジエンの重量平均粒子径は、参考例1と同様に測定した。
ポリブタジエンラテックス(重量平均粒子径350nm)60重量%(固形分換算)の存在下で、スチレン29重量%とアクリロニトリル11重量%からなる単量体混合物を、ステアリン酸カリウムを使用して乳化重合してゴム強化スチレン樹脂ラテックスを得た。これを、90℃の0.3%希硫酸水溶液中に添加して凝集させた後、水酸化ナトリウム水溶液により中和し、洗浄・脱水・乾燥工程を経て、グラフト共重合体(I−2)を調製した。グラフト率は42%であった。なお、ポリブタジエンラテックス中のポリブタジエンの重量平均粒子径は、参考例1と同様に測定した。
(参考例3)耐熱ビニル系共重合体(II)の調製
N−フェニルマレイミド37重量%、スチレン54重量%とアクリロニトリル9重量%からなる単量体混合物から、ステアリン酸カリウムを使用して乳化重合を行い、90℃の0.3%希硫酸水溶液中に添加して凝集させた後、水酸化ナトリウム水溶液により中和し、洗浄・脱水・乾燥工程を経て、耐熱ビニル系共重合体(II−1)を調製した。得られた耐熱ビニル系共重合体(II−1)をジメチルスルフォキシドに溶解した濃度0.4g/dlの溶液を用いて、30℃においてウベローデ粘度計で測定した還元粘度(ηSP/c)は0.55dl/gであった。
N−フェニルマレイミド37重量%、スチレン54重量%とアクリロニトリル9重量%からなる単量体混合物から、ステアリン酸カリウムを使用して乳化重合を行い、90℃の0.3%希硫酸水溶液中に添加して凝集させた後、水酸化ナトリウム水溶液により中和し、洗浄・脱水・乾燥工程を経て、耐熱ビニル系共重合体(II−1)を調製した。得られた耐熱ビニル系共重合体(II−1)をジメチルスルフォキシドに溶解した濃度0.4g/dlの溶液を用いて、30℃においてウベローデ粘度計で測定した還元粘度(ηSP/c)は0.55dl/gであった。
(参考例4)高シアン化ビニル系共重合体(III−1)の調製
アクリルアミド80重量部、メタアクリル酸メチル20重量部、過硫酸カリウム0.3重量部、イオン交換水1800重量部を反応器中に仕込み、反応器中の気相を窒素ガスで置換し撹拌しながら70℃に保った。単量体が完全に重合体に転化するまで反応を続けて、アクリルアミドとメタアクリル酸メチル二元共重合体の水溶液を得た。得られた反応液はやや白濁した粘性を有する水溶液であった。これに水酸化ナトリウム35重量部とイオン交換水を加え、0.6%のアクリルアミドとメタアクリル酸メチルとの二元共重合体水溶液としてアルカリ性に保ち、70℃で2時間撹拌した後、室温にまで冷却することで透明な懸濁重合用の媒体の水溶液を得た。
アクリルアミド80重量部、メタアクリル酸メチル20重量部、過硫酸カリウム0.3重量部、イオン交換水1800重量部を反応器中に仕込み、反応器中の気相を窒素ガスで置換し撹拌しながら70℃に保った。単量体が完全に重合体に転化するまで反応を続けて、アクリルアミドとメタアクリル酸メチル二元共重合体の水溶液を得た。得られた反応液はやや白濁した粘性を有する水溶液であった。これに水酸化ナトリウム35重量部とイオン交換水を加え、0.6%のアクリルアミドとメタアクリル酸メチルとの二元共重合体水溶液としてアルカリ性に保ち、70℃で2時間撹拌した後、室温にまで冷却することで透明な懸濁重合用の媒体の水溶液を得た。
バッフルおよびファウドラ型撹拌翼を備えたステンレス製20Lのオートクレーブに、前記アクリルアミドとメタアクリル酸メチルとの二元共重合体水溶液8重量部、イオン交換水150重量部を仕込み、400rpmで撹拌し、系内を窒素ガスで置換した。次に、38重量部のアクリロニトリル、4重量部のスチレン、0.46重量部のt−ドデシルメルカプタン、0.39重量部の2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、0.05重量部の2,2’−アゾビスイソブチルニトリルの混合溶液を撹拌しながら添加し、58℃にて共重合反応を開始した。重合開始から15分が経過した後、オートクレーブ上部に備え付けた供給ポンプから58重量部のスチレンを110分間かけて断続添加した。この間、槽内温度は58〜65℃まで昇温した。スチレンの反応系への断続添加後、50分間かけて100℃に昇温した。100℃に到達した後、100℃にて30分間維持した後、冷却し、得られたスラリーを洗浄・脱水・乾燥し、高シアン化ビニル系共重合体(III−1)を調製した。得られた高シアン化ビニル系共重合体(III−1)の固有粘度は0.45dl/gであった。また、シアン化ビニル系単量体(ウ)由来の構造単位の平均含有率は38重量%で、シアン化ビニル系単量体(ウ)由来の構造単位の含有率がその平均含有率より2重量%以上高い共重合体の割合は40重量%であった。
(参考例5)高シアン化ビニル系共重合体(III−2)の調製
予熱機および脱モノマ機からなる連続塊状重合装置を用い、スチレン69重量%、アクリロニトリル31重量%からなる単量体混合物を135kg/時で連続塊状重合させた。重合反応混合物は、単軸押出機型脱モノマ機により未反応の単量体をベント口より減圧蒸発回収し、一方脱モノマ機から高シアン化ビニル系共重合体(III−2)を得た。得られた高シアン化ビニル系共重合体(III−2)の固有粘度は0.52dl/gであった。また、シアン化ビニル系単量体(ウ)由来の構造単位の平均含有率は31重量%で、シアン化ビニル系単量体(ウ)由来の構造単位の含有率がその平均含有率より2重量%以上高い共重合体の割合は0重量%であった。
予熱機および脱モノマ機からなる連続塊状重合装置を用い、スチレン69重量%、アクリロニトリル31重量%からなる単量体混合物を135kg/時で連続塊状重合させた。重合反応混合物は、単軸押出機型脱モノマ機により未反応の単量体をベント口より減圧蒸発回収し、一方脱モノマ機から高シアン化ビニル系共重合体(III−2)を得た。得られた高シアン化ビニル系共重合体(III−2)の固有粘度は0.52dl/gであった。また、シアン化ビニル系単量体(ウ)由来の構造単位の平均含有率は31重量%で、シアン化ビニル系単量体(ウ)由来の構造単位の含有率がその平均含有率より2重量%以上高い共重合体の割合は0重量%であった。
(参考例6)ビニル系共重合体(IV−1)の調製
予熱機および脱モノマ機からなる連続塊状重合装置を用い、スチレン72重量%、アクリロニトリル28重量%からなる単量体混合物を135kg/時で連続塊状重合させた。重合反応混合物は、単軸押出機型脱モノマ機により未反応の単量体をベント口より減圧蒸発回収し、一方脱モノマ機からビニル系共重合体(IV−1)を得た。得られたビニル系共重合体(IV−1)の固有粘度は0.50dl/gであった。また、シアン化ビニル系単量体(ウ)由来の構造単位の平均含有率は26重量%で、シアン化ビニル系単量体(ウ)由来の構造単位の含有率がその平均含有率より2重量%以上高い共重合体の割合は0重量%であった。
予熱機および脱モノマ機からなる連続塊状重合装置を用い、スチレン72重量%、アクリロニトリル28重量%からなる単量体混合物を135kg/時で連続塊状重合させた。重合反応混合物は、単軸押出機型脱モノマ機により未反応の単量体をベント口より減圧蒸発回収し、一方脱モノマ機からビニル系共重合体(IV−1)を得た。得られたビニル系共重合体(IV−1)の固有粘度は0.50dl/gであった。また、シアン化ビニル系単量体(ウ)由来の構造単位の平均含有率は26重量%で、シアン化ビニル系単量体(ウ)由来の構造単位の含有率がその平均含有率より2重量%以上高い共重合体の割合は0重量%であった。
タルク(V)
以下に示すタルク(V)のメジアン径は、タルク(V)を水に分散させてスラリー化し、レーザー回析・散乱法による粒子径分布測定装置により測定した。
タルク(V−1);商品名「LS−402」、平均粒子径4.8μm、宇部マテリアルズ(株)製
タルク(V−2);商品名「ミクロンホワイト #5000S」、平均粒子径2.8μm、林化成(株)製
タルク(V−3);商品名「ミセルトン」、平均粒子径1.4μm、林化成(株)製
タルク(V−4);商品名「MS−P」、平均粒子径13μm、日本タルク(株)製。
以下に示すタルク(V)のメジアン径は、タルク(V)を水に分散させてスラリー化し、レーザー回析・散乱法による粒子径分布測定装置により測定した。
タルク(V−1);商品名「LS−402」、平均粒子径4.8μm、宇部マテリアルズ(株)製
タルク(V−2);商品名「ミクロンホワイト #5000S」、平均粒子径2.8μm、林化成(株)製
タルク(V−3);商品名「ミセルトン」、平均粒子径1.4μm、林化成(株)製
タルク(V−4);商品名「MS−P」、平均粒子径13μm、日本タルク(株)製。
(実施例1〜15、比較例1〜9)
前記グラフト共重合体(I)、耐熱ビニル系共重合体(II)、高シアン化ビニル系共重合体(III)、ビニル系共重合体(IV)およびタルク(V)を、表1および表2に示した比で配合し、スクリュー径30mmの同方向回転の二軸押出機(温度範囲:240〜250℃)で溶融混練を行い、ペレットを得た。得られたペレットから、射出成形機(成形温度250℃、金型温度60℃)を用いて試験片を作製し、前述の方法により評価を行った。ただし、前記(9)の塗装表面外観用の試験片は(9)エッジ付成形品の塗装表面外観に記載の条件で作製した。実施例の結果を表1、比較例の結果を表2に示す。
前記グラフト共重合体(I)、耐熱ビニル系共重合体(II)、高シアン化ビニル系共重合体(III)、ビニル系共重合体(IV)およびタルク(V)を、表1および表2に示した比で配合し、スクリュー径30mmの同方向回転の二軸押出機(温度範囲:240〜250℃)で溶融混練を行い、ペレットを得た。得られたペレットから、射出成形機(成形温度250℃、金型温度60℃)を用いて試験片を作製し、前述の方法により評価を行った。ただし、前記(9)の塗装表面外観用の試験片は(9)エッジ付成形品の塗装表面外観に記載の条件で作製した。実施例の結果を表1、比較例の結果を表2に示す。
実施例1〜15、すなわち本発明の熱可塑性樹脂組成物によれば、いずれも耐熱性、寸法安定性、耐衝撃性のバランスに優れた成形品が得られる。一方、実施例1と比較例1〜2の比較から、グラフト共重合体(I)とタルク(V)の配合量の重量比{(I)/(V)}が1.2〜1.8の範囲を外れると、寸法安定性と耐衝撃性が両立できないことが分かる。また、実施例1と比較例6、7との比較から、タルク(V)が規定量よりも少ないと寸法安定性が低下し、一方、タルク(V)が規定量よりも多いと耐衝撃性が低下することが分かる。実施例1と比較例8との比較から、耐熱ビニル系共重合体(II)配合量が規定量よりも少ないと耐熱性が低下することが分かる。実施例1と比較例9との比較から、高シアン化ビニル系共重合体(III)の配合量が規定量よりも少ないと塗装表面外観が著しく低下し、ブリスターも増加することが分かる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、例えば自動車外装用バックドアガーニッシュ、リアドアガーニッシュ、テールゲートガーニッシュ、ライセンスガーニッシュ、リアスポイラー、ドアミラー、ラジエータグリルなど、特に高いレベルの耐熱性、寸法安定性、耐衝撃性、耐塗装性(吸込み現象、エッジ部のブリスター現象低減)を要求される用途に好適に使用することができる。
1 エッジ部
2 ゲート
2 ゲート
Claims (8)
- ジエン系ゴム質重合体(ア)40〜65重量%の存在下に、芳香族ビニル系単量体(イ)およびシアン化ビニル系単量体(ウ)を含有するビニル系単量体混合物35〜60重量%をグラフト共重合してなるグラフト共重合体(I)、芳香族ビニル系単量体(イ)、シアン化ビニル系単量体(ウ)およびマレイミド系単量体(エ)を共重合してなる耐熱ビニル系共重合体(II)、芳香族ビニル系単量体(イ)60〜70重量%およびシアン化ビニル系単量体(ウ)30〜40重量%を共重合してなる高シアン化ビニル系共重合体(III)、芳香族ビニル系単量体(イ)およびシアン化ビニル系単量体(ウ)30重量%未満を共重合してなるビニル系共重合体(IV)ならびにタルク(V)を配合してなる熱可塑性樹脂組成物であって、前記グラフト共重合体(I)、耐熱ビニル系共重合体(II)、高シアン化ビニル系共重合体(III)およびビニル系共重合体(IV)の合計配合量100重量部に対して、タルク(V)配合量が20〜30重量部であり、かつ、グラフト共重合体(I)の配合量とタルク(V)の配合量の重量比{(I)/(V)}が1.2〜1.8である熱可塑性樹脂組成物。
- 前記高シアン化ビニル系共重合体(III)が、シアン化ビニル系単量体(ウ)由来の構造単位の平均含有率が30〜40重量%であり、共重合体中のシアン化ビニル系単量体(ウ)由来の構造単位の組成分布において、シアン化ビニル系単量体(ウ)由来の構造単位の含有率がその平均含有率より2重量%以上高い共重合体を、高シアン化ビニル系共重合体(III)100重量%中に20〜50重量%含有する請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 前記ジエン系ゴム質重合体(ア)が、重量基準の粒子径頻度分布において、少なくとも200〜400nmの範囲と450nm以上の範囲のそれぞれに極大値を有する請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 前記ジエン系ゴム質重合体(ア)が、重量平均粒子径が200〜400nmであるジエン系ゴム質重合体と、重量平均粒子径が450nm以上であるジエン系ゴム質重合体とを、重量比率が9:1〜5:5の範囲になるように配合してなる請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 前記タルク(V)のメジアン径(D50)が2〜10μmである請求項1〜4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形品。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる自動車外装塗装部品。
- バックドアガーニッシュである請求項7に記載の自動車外装塗装部品。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN111225929A (zh) * | 2018-01-09 | 2020-06-02 | 电化株式会社 | 马来酰亚胺系共聚物、其制造方法以及使用马来酰亚胺系共聚物的树脂组合物 |
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-
2014
- 2014-02-04 JP JP2014018976A patent/JP2015145479A/ja active Pending
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