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JP2015141360A - 静電荷像現像用カプセルトナー - Google Patents

静電荷像現像用カプセルトナー Download PDF

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JP2015141360A JP2014015068A JP2014015068A JP2015141360A JP 2015141360 A JP2015141360 A JP 2015141360A JP 2014015068 A JP2014015068 A JP 2014015068A JP 2014015068 A JP2014015068 A JP 2014015068A JP 2015141360 A JP2015141360 A JP 2015141360A
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Kohei Terasaki
皓平 寺崎
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Abstract

【課題】超薄膜カプセルでありながら円形度の制御を可能にし、ドラム周りでのブレードクリーニング性に優れ、クリーニング部でのストレスに耐えうる、静電荷像現像用カプセルトナーを提供する。【解決手段】アニオン性のコアの表面に、カチオン性のカプセル化材料からなるカプセル膜が形成されてなる静電荷像現像用カプセルトナーであって、前記静電荷像現像用カプセルトナーは複数のカプセルトナー粒子を含み、カプセル膜形成前のコアのpH4におけるゼータ電位がマイナスの値を示し、カプセル膜を形成した後のカプセルトナー粒子のpH4におけるゼータ電位がプラスの値を示し、かつカプセル膜の硬度が1N/m以上3N/m未満、カプセル膜の厚みが20nm以下で、カプセルトナーの円形度が0.965以上0.975未満である。【選択図】なし

Description

本発明は、電子写真法において形成される静電潜像の現像に用いられる静電荷像現像用カプセルトナーに関する。
カプセルトナーは、コアと、コアの表面に形成されたカプセル膜とから構成される。特許文献1、2には、分散剤が溶解している水性媒体にコアを固体状態で分散した状態でコア表面にカプセル膜を被覆するトナーの製造方法が開示されている。
特許文献1又は2に記載の製造方法では、アニオン性の分散剤を用いているため、コアの表面にアニオン性の分散剤を付着させることができれば、コアの凝集を抑制することができると考えられる。しかし、分子量が小さい分散剤は、水性媒体に溶解し易いため、コアの表面に付着しにくい一方、分散剤の分子量を大きくすると、分散剤が高分子凝集剤として機能し易くなり、コアの凝集が生じ易くなる。
そこで、コア粒子にアニオン性の特性を持たせることで、従来から用いられていたアニオン性の分散剤等の電解質材料を用いることなく、カチオン系の膜形成材料を表面に引き付け、in-situ重合によって重合固着させ緻密なカプセル膜を得ることが良いと考えられる。アニオン性の添加剤を用いず直接カプセル化材料をトナー表面に引き付け重合させることで、トナーのガラス転移点Tgがカプセル材料の硬化温度を下回る場合においても、カプセル形成時にトナー粒子が凝集することなく、緻密なカプセルトナーが得られる。しかしながら、このような技法を用いたとしても、カプセル膜の硬度やカプセルトナーの円形度の制御が困難で、カプセル材料のトナー表面への付着力増大に伴う現像性の低下や、それに伴う画像濃度の低下がみられたり、ドラムクリーニングを十分に行うことができず、クリーニング不良が発生する等の問題がある。
特開2004−294468号公報 特開2004−294469号公報
本発明は、超薄膜カプセルでありながら円形度の制御を可能にし、ドラム周りでのブレードクリーニング性に優れ、クリーニング部でのストレスに耐えうる、静電荷像現像用カプセルトナーを提供することを目的とする。
上記課題に鑑み、本発明者は鋭意検討することによって、硬度の高いカプセル膜を形成することで膜厚20nm以下の超薄膜カプセルでありながら円形度の制御を可能にし、ドラム周りでのブレードクリーニング性に優れ、クリーニング部でのストレスに耐えうる、静電荷像現像用カプセルトナーが得られることを見出した。また、本発明者はカプセルトナーにおけるゼータ電位測定時の適正なpHについて検討を行った結果、pHが3以下の場合は十分なカプセル膜が形成されず所望の耐熱保存性(ブロッキング性)を満たさなくてもゼータ電位がプラス(正)の値を示す場合があり、pHが5以上の場合は所望の定着性、耐熱保存性を満たしていてもゼータ電位がマイナス(負)の値を示す場合があるが、pH4においてはゼータ電位がプラス(正)であれば所望の定着性、耐熱保存性を満たすことを実験的に見出した。
すなわち、本発明は、アニオン性のコアの表面に、カチオン性のカプセル化材料からなるカプセル膜が形成されてなる静電荷像現像用カプセルトナーであって、前記静電荷像現像用カプセルトナーは複数のカプセルトナー粒子を含み、カプセル膜形成前のコアのpH4におけるゼータ電位がマイナスの値を示し、カプセル膜を形成した後のカプセルトナー粒子のpH4におけるゼータ電位がプラスの値を示し、かつカプセル膜の硬度が1N/m以上3N/m未満、カプセル膜の厚みが20nm以下で、カプセルトナーの円形度が0.965以上0.975未満である静電荷像現像用カプセルトナーを要旨とする。
以上のように、本発明によれば、膜厚20nm以下の超薄膜カプセルでありながら円形度の制御を可能にし、ドラム周りでのブレードクリーニング性に優れ、クリーニング部でのストレスに耐えうる、静電荷像現像用カプセルトナーを提供することができる。
以下、本発明に係る実施形態について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本実施形態に係る静電荷像現像用カプセルトナー(以下、単に「カプセルトナー」と称することもある。)は、多数のトナー粒子から構成される。
トナー粒子は、アニオン性のコアと、コアの表面に形成されたカチオン性のカプセル膜とから構成される。なお、本実施形態においては、カプセル膜は単一膜に限定されず、多層膜であってもよく、多層膜の場合は少なくとも最外膜がカチオン性を有することが好ましい。
コアがアニオン性を有することで、カプセル膜の形成時にカチオン性のカプセル膜の材料をコア表面に引き付けることが可能になる。詳しくは、例えば水性媒体中で負に帯電するコアと、水性媒体中で正に帯電するカプセル膜の材料とが相互に電気的に引き寄せられ、コアの表面にカプセル膜が形成される。これにより、分散剤を用いて水性媒体中にコアを高度に分散させずとも、コアの表面に均一なカプセル膜を形成し易くなる。
コアは、バインダー(結着剤)と、内添剤(着色剤、離型剤、電荷制御剤、磁性粉等)とから構成される。
コアにおいては、コア成分の大部分(例えば85%以上)をバインダーが占める。このため、バインダーの極性がコア全体の極性に大きな影響を与える。バインダーがエステル基、水酸基、エーテル基、酸基、メチル基等を有している場合には、コアはアニオン性になる傾向が強くなり、バインダーがアミノ基、アミン、アミド基等を有している場合には、コアはカチオン性になる傾向が強くなる。
本実施形態においてコアがアニオン性であることの指標は、pH4に調整された水性媒体中で測定されるコアのゼータ電位が負極性を示すことであり、良好なアニオン性を得るためには、pH4におけるゼータ電位は−5mV以下の値を示すことが好ましく、−10mV以下の値を示すことがより好ましい。
ゼータ電位の測定方法としては、電気泳動法、超音波法、ESA法等が挙げられる。
電気泳動法は、粒子分散液に電場を印加して分散液中の帯電粒子を電気泳動させ、電気泳動速度に基づきゼータ電位を算出する方法である。電気泳動法としては、レーザードップラー法(電気泳動している粒子にレーザー光を照射し、得られた散乱光のドップラーシフト量から電気泳動速度を求める方法)等が挙げられる。レーザードップラー法は、分散液中の粒子濃度を高濃度とする必要がなく、ゼータ電位の算出に必要なパラメーターの数が少なく、加えて電気泳動速度を感度よく検出できるという利点を有する。
超音波法は、粒子分散液に超音波を照射して分散液中の帯電粒子を振動させ、この振動によって生じる電位差に基づきゼータ電位を算出する方法である。
ESA法は、粒子分散液に高周波電圧を印加して分散液中の帯電粒子を振動させて超音波を発生させ、その超音波の大きさ(強さ)からゼータ電位を算出する方法である。
超音波法及びESA法は、粒子濃度が高い(例えば20質量%を超える)粒子分散液であっても、ゼータ電位を感度よく測定することができるという利点を有する。
コアがアニオン性であることの別の指標としては、標準キャリアとの摩擦帯電量が−10μC/g以下の値を示すことが挙げられる。摩擦帯電量は、コアが正負のうちの何れの極性に帯電されるか、及びコアの帯電され易さの指標となる。標準キャリアと摩擦させた場合のコアの摩擦帯電量は、例えばQMメーター(例えば、TREK社製、MODEL 210HS−2A)により測定することができる。
以下、トナー粒子を構成するコアの全体構成、バインダー、内添剤(着色剤、離型剤、電荷制御剤、磁性粉)、カプセル膜の全体構成、カプセル膜の成分(電荷制御剤)、及び外添剤について、順に説明する。
〔コア〕
本実施形態のトナー粒子を構成するコアは、バインダー及び内添剤(着色剤、離型剤、電荷制御剤、及び磁性粉)を含む。ただし、コアが上記成分の全てを有していることは必須ではなく、トナーの用途等に応じて必要のない成分(着色剤、離型剤、電荷制御剤、磁性粉等)を割愛してもよい。
〔バインダー(コア)〕
バインダーは、例えば官能基としてエステル基、水酸基、エーテル基、酸基、メチル基、カルボキシル基、アミノ基を有する樹脂から構成されることが好ましい。バインダーを構成する樹脂としては、分子中に水酸基、カルボキシル基、アミノ基のような官能基を持つ樹脂が好ましく、分子中に水酸基及び/又はカルボキシル基を持つ樹脂がより好ましい。このような官能基を有するコア(バインダー)は、カプセル膜の材料(例えば、メチロールメラミン)と反応して化学的に結合し易くなる。こうした化学的な結合が生じると、コアとカプセル膜との結合が強固になる。
バインダーを構成する樹脂としては、熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂の好適な例としては、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレンアクリル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、N−ビニル系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂等が挙げられる。中でも、スチレンアクリル系樹脂及びポリエステル樹脂はそれぞれ、トナー中の着色剤の分散性、トナーの帯電性、及び被記録媒体に対する定着性に優れる。
(スチレンアクリル系樹脂から構成されるバインダー)
バインダーを構成するスチレンアクリル系樹脂は、例えばスチレン系単量体とアクリル系単量体との共重合体である。
スチレン系単量体の好適な例としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、ビニルトルエン、α−クロロスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、p−エチルスチレン等が挙げられる。
アクリル系単量体の好適な例としては、(メタ)アクリル酸、特に(メタ)アクリル酸アルキルエステル又は(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸iso−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸iso−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルが好ましい。
(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルとしては、例えば(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシプロピルが好ましい。
スチレンアクリル系樹脂を調製する際に、水酸基を有する単量体(p−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル等)を用いることで、スチレンアクリル系樹脂に水酸基を導入できる。例えば水酸基を有する単量体の使用量を適宜調整することで、得られるスチレンアクリル系樹脂の水酸基価を調整することができる。
スチレンアクリル系樹脂を調製する際に、(メタ)アクリル酸を単量体として用いることで、スチレンアクリル系樹脂にカルボキシル基を導入できる。例えば(メタ)アクリル酸の使用量を適宜調整することで、得られるスチレンアクリル系樹脂の酸価を調整することができる。
コアの強度及び定着性を向上させるためには、バインダーを構成するスチレンアクリル系樹脂の数平均分子量(Mn)が2000以上3000以下であることが好ましい。スチレンアクリル系樹脂の分子量分布(数平均分子量(Mn)と質量平均分子量(Mw)との比Mw/Mn)は10以上20以下であることが好ましい。バインダーのMnとMwの測定には、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いることができる。
(ポリエステル樹脂から構成されるバインダー)
バインダーを構成するポリエステル樹脂は、例えば2価又は3価以上のアルコール成分と、2価又は3価以上のカルボン酸成分とを縮重合や共縮重合することで得られる。
2価又は3価以上のアルコール成分の好適な例としては、ジオール類、ビスフェノール類、3価以上のアルコール類等が挙げられる。
ジオール類としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールが好ましい。
ビスフェノール類としては、例えばビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールAが好ましい。
3価以上のアルコール類としては、例えばソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、ジグリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンが好ましい。
2価又は3価以上のカルボン酸成分の好適な例としては、2価カルボン酸又は3価以上のカルボン酸等が挙げられる。また、これらのカルボン酸成分は、エステル形成性の誘導体(酸ハライド、酸無水物、及び低級アルキルエステル等)として用いてもよい。ここで、「低級アルキル」とは、炭素原子数1から6のアルキル基を意味する。
2価カルボン酸としては、例えばマレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸、アルキルもしくはアルケニルコハク酸が好ましい。さらに、アルケニルコハク酸としては、例えばn−ブチルコハク酸、n−ブテニルコハク酸、イソブチルコハク酸、イソブテニルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、イソドデシルコハク酸、イソドデセニルコハク酸が好ましい。
3価以上のカルボン酸としては、例えば1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、エンポール三量体酸が好ましい。
ポリエステル樹脂を製造する際に、2価又は3価以上のアルコール成分の使用量と、2価又は3価以上のカルボン酸成分の使用量とをそれぞれ適宜変更することで、ポリエステル樹脂の酸価及び水酸基価を調整することができる。また、ポリエステル樹脂の分子量を上げると、ポリエステル樹脂の酸価及び水酸基価は低下する傾向がある。
コアの強度及び定着性を向上させるためには、バインダーを構成するポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)が1200以上2000以下であることが好ましい。ポリエステル樹脂の分子量分布(数平均分子量(Mn)と質量平均分子量(Mw)との比Mw/Mn)は9以上20以下であることが好ましい。バインダーのMnとMwの測定には、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いることができる。
バインダーが強いアニオン性を得るためには、バインダーの水酸基価(OHV値)及び酸価(AV値)がそれぞれ10mgKOH/g以上であることが好ましい。
バインダーの溶解指数(SP値)は10以上であることが好ましく、15以上であることがより好ましい。上記SP値が10以上であると、水のSP値(23)に近づくため水との親和性を改善でき、バインダーの水性媒体への濡れ性が向上する。そのため、分散剤を用いなくともバインダーの水性媒体への分散性が向上し、バインダー微粒子分散体が均一に水性媒体に分散し易くなる。
バインダーのガラス転移点(Tg)は、カプセル膜に含まれるカプセル化材料(例えば、熱硬化性樹脂)の硬化開始温度以下であることが好ましい。こうしたバインダーを用いれば、カプセル膜の形成時にコアが凝集しにくくなり、高速定着システムにおいても十分な定着性が得られる。熱硬化性樹脂、例えばメラミン系樹脂の硬化開始温度は、一般的に55℃〜100℃程度である。そのため、バインダーのTgは、20℃以上55℃以下であることが好ましく、30℃以上50℃以下であることがより好ましい。バインダーのTgが20℃以上であると、カプセル膜の形成時にコアが凝集しにくくなる。
バインダーのTgは、示差走査熱量計(例えば、セイコーインスツルメンツ社製、DSC−6200)を用いてバインダーの吸熱曲線を測定することにより、吸熱曲線における比熱の変化点から求めることができる。詳細には、測定試料10mgをアルミパン中に入れ、リファレンスとして空のアルミパンを使用し、測定温度範囲25〜200℃かつ昇温速度10℃/分の条件でバインダーの吸熱曲線を求め、得られた吸熱曲線に基づいてTgを求める方法が挙げられる。
バインダーの軟化点(Tm)は100℃以下が好ましく、95℃以下がより好ましい。バインダーのTmが100℃以下であることで、高速定着時においても十分な定着性を得ることが可能になる。また、異なるTmを有する複数のバインダー材料を組み合わせることで、バインダーのTmを調整することができる。
バインダーのTmは、例えば、測定試料を高化式フローテスター(例えば、島津製作所社製、CFT−500D)にセットし、所定の条件で試料を溶融流出させてS字カーブ(温度(℃)/ストローク(mm)に関するS字カーブ)を求め、得られたS字カーブからバインダーのTmを読み取ることにより測定できる。
〔着色剤(コア)〕
着色剤としては、例えばトナー粒子の色に合わせて公知の顔料や染料を用いることができる。着色剤の使用量は、バインダー100質量部に対して1質量部以上20質量部以下であることが好ましく、3質量部以上10質量部以下であることがより好ましい。
(黒色着色剤)
本実施形態に係るトナー粒子のコアは、黒色着色剤を含有していてもよい。黒色着色剤は、例えばカーボンブラックから構成される。また、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、シアン着色剤等の着色剤を用いて黒色に調色された着色剤も利用できる。
(カラー着色剤)
本実施形態に係るトナー粒子のコアは、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、シアン着色剤等のカラー着色剤を含有していてもよい。
イエロー着色剤は、例えば縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物から構成されることが好ましい。イエロー着色剤としては、例えばC.I.ピグメントイエロー(3、12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、151、154、155、168、174、175、176、180、181、191、194等)、ネフトールイエローS、ハンザイエローG、C.I.バットイエローが好ましい。
マゼンタ着色剤は、例えば縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物から構成されることが好ましい。マゼンタ着色剤としては、例えばC.I.ピグメントレッド(2、3、5、6、7、19、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、150、166、169、177、184、185、202、206、220、221、254等)が好ましい。
シアン着色剤は、例えば銅フタロシアニン化合物、銅フタロシアニン誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物から構成されることが好ましい。シアン着色剤としては、例えばC.I.ピグメントブルー(1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66等)、フタロシアニンブルー、C.I.バットブルー、C.I.アシッドブルーが好ましい。
〔離型剤(コア)〕
離型剤は、トナーの定着性及び耐オフセット性を向上させる目的で使用される。定着性及び耐オフセット性を向上させるためには、離型剤の使用量は、バインダー100質量部に対して1質量部以上30質量部以下であることが好ましく、5質量部以上20質量部以下であることがより好ましい。
一例では、離型剤が、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィン共重合物、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の脂肪族炭化水素系ワックスから構成されることが好ましい。別の一例では、離型剤が、酸化ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックスのブロック共重合体等の脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物から構成されることが好ましい。別の一例では、離型剤が、キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろう、ライスワックス等の植物系ワックスから構成されることが好ましい。別の一例では、離型剤が、みつろう、ラノリン、鯨ろう等の動物系ワックスから構成されることが好ましい。別の一例では、離型剤が、オゾケライト、セレシン、ベトロラクタム等の鉱物系ワックスから構成されることが好ましい。別の一例では、離型剤が、モンタン酸エステルワックス、カスターワックス等の脂肪酸エステルを主成分とするワックス類から構成されることが好ましい。別の一例では、離型剤が、脱酸カルナバワックス等の脂肪酸エステルを一部又は全部を脱酸化したワックスから構成されることが好ましい。
〔電荷制御剤(コア)〕
本実施形態ではコアがアニオン性(負帯電性)を有するため、コアでは負帯電性の電荷制御剤を使用してもよい。電荷制御剤は、帯電安定性や帯電立ち上がり特性を向上させ、耐久性や安定性に優れたトナーを得る目的で使用される。帯電立ち上がり特性は、所定の帯電レベルに短時間で帯電可能か否かの指標になる。
〔磁性粉(コア)〕
トナーを1成分現像剤として使用する場合、磁性粉の使用量は、トナー全量100質量部に対して35質量部以上60質量部以下であることが好ましく、40質量部以上60質量部以下であることがより好ましい。
磁性粉は、例えば鉄(フェライト、マグネタイト等)、強磁性金属(コバルト、ニッケル等)、鉄及び/又は強磁性金属を含む合金、鉄及び/又は強磁性金属を含む化合物、熱処理等の強磁性化処理を施された強磁性合金、二酸化クロムから構成されることが好ましい。
磁性粉の粒子径は、0.1μm以上1.0μm以下であることが好ましく、0.1μm以上0.5μm以下であることがより好ましい。こうした範囲に磁性粉の粒子径がある場合は、バインダー中に磁性粉を均一に分散させ易くなる。
〔カプセル膜〕
カプセル膜を形成するカプセル化材料としては、アニオン性のコア(芯材)にカチオン性のカプセル材をイオン的に引き付けコアの表面に付着させ表面重合する、いわゆるin−situ重合を行うことができる材料であれば特に限定はないが、熱硬化性の材料が好ましい。このような材料としては、アミノ基(−NH)を有するアミノ樹脂と総称されるものが好ましい。アミノ樹脂としては、例えば、メラミン樹脂又はその誘導体(メチロールメラミン等)、グアナミン樹脂又はその誘導体(ベンゾグアナミン等)、アセトグアナミン、スピログアナミン、スルホアミド樹脂、尿素(ユリア)樹脂又はその誘導体、グリオキザール樹脂、アニリン樹脂が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
また、アミノ樹脂としては、窒素元素を分子骨格に有する材料も挙げられ、ポリイミド樹脂、マレイド系重合体、ビスマスイミド、アミノビスマスイミド、ビスマスイミドトリアジン等の熱硬化性樹脂が挙げられる。
さらに、アミノ樹脂としては、アミノアルデヒド樹脂が挙げられる。アミノアルデヒド樹脂とは、メラミン、グアナミン等のアミノ化合物(トリアジン化合物等)を、ホルムアルデヒド等のアルデヒドとの反応により付加重合させ、メチロール化(一般的にアルキロール化)したものを縮重合させて得られる樹脂の総称であり、具体的には、メラミンホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミン尿素アルデヒド樹脂が挙げられる。
カプセル化材料としては、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、尿素樹脂等の窒素元素を含むアミノアルデヒド樹脂のモノマー又はプレポリマー材料が好ましいが、水系でのアニオン系の固体粒子表面に適度に吸着し、カプセル化と共に、カプセルの硬化反応が完了するまでトナー粒子同士が凝集しないように分散安定性を維持できるメラミンホルムアルデヒド初期縮合物がより好ましい。中でも、メラミンホルムアルデヒド初期縮合物を用いるのが最も好ましい。これは、水系でのアニオン系の固体粒子表面に適度に吸着し、トナー粒子表面でin-situ重合するためには、水及びトナー粒子表面との親和性のバランスが特に重要である。トナー粒子表面にカプセル化材料が吸着し、トナー粒子表面の官能基(−OH基、−COOH基)とインタラクションを形成すると共に、カプセル化材料の硬化反応が完了するまでトナー粒子同士が凝集しないように水中でのトナー粒子の分散安定性を維持する必要があるからである。即ち、水に対する親和性が高くても、低くても良くなく、適正な領域が存在する。
カプセル膜の厚さは20nm以下であり、1nm以上10nm以下であることが好ましい。カプセル膜の膜厚が厚すぎると、十分な定着性が得られない。カプセル膜の厚さは、カプセル膜を構成する樹脂(例えば、メラミン系樹脂等の熱硬化性樹脂)単独の場合に換算した厚みを意味し、熱硬化性樹脂に改質剤等を添加して柔軟性を持たせた場合は上記範囲に限定されるものではない。なお、熱可塑系のカプセル剤の場合には膜が薄いと十分なブロッキング効果が得られないため、50m以上の厚膜になる傾向がある。
カプセル膜の厚みは、例えば、以下のようにして測定することができる。即ち、トナー粒子を、常温硬化性のエポキシ樹脂中に十分に分散し、40℃の雰囲気にて2日間硬化させて硬化物を得る。この硬化物を四三酸化オスミウムにて染色した後、ダイヤモンドナイフをセットしたミクロトーム(例えば、ライカ社製、EM UC6)にて切り出し、厚さ200nmの薄片試料を得る。そして、この試料の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)(例えば、日本電子社製、JSM−6700 F)にて撮影する。
画像解析ソフトウェア(例えば、三谷商事社製、WinROOF)でTEM撮影像を解析することで、カプセル膜の厚さを計測する。具体的には、トナー粒子の断面の略中心で直交する2本の直線を引き、この2本の直線上の、カプセル膜と交差する4箇所の長さを測定する。そして、測定された4箇所の長さの平均値を測定対象である1個のトナー粒子のカプセル膜の厚みとする。トナーに含まれる10個以上のトナー粒子についてカプセル膜の厚みを測定し、得られた10個以上の測定値の平均値を評価値とする。
なお、カプセル膜の厚みが小さい場合は、TEM画像上でのコアとカプセル膜との界面が不明瞭になるため、カプセル膜の厚みの測定が困難な場合がある。このような場合は、TEM撮影と電子エネルギー損失分光法(EELS)とを組み合わせてコアとカプセル膜との界面を明確にすることにより、カプセル膜の厚みを測定する。具体的には、TEM画像中で、EELSを用いてカプセル膜の材質に特徴的な元素(窒素元素)のマッピングを行ことでカプセル膜の厚みを特定する。
〔電荷制御剤(カプセル膜)〕
本実施形態ではカプセル膜がカチオン性(正帯電性)を有するため、カプセル膜では正帯電性の電荷制御剤を使用してもよい。
〔外添剤〕
なお、本実施形態においては、トナー粒子の流動性及び取扱性を向上させるため、カプセル膜の表面に外添剤を付着させてもよい。以下、外添剤により処理される前の粒子を「トナー母粒子」と記載する。流動性及び取扱性の向上の点から、外添剤の使用量は、トナー母粒子100質量部に対して0.5質量部以上10質量部以下であることが好ましく、2質量部以上5質量部以下であることがより好ましい。
外添剤は、例えばシリカまたは、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、もしくはチタン酸バリウムのような金属酸化物から構成されることが好ましい。
外添剤の粒子径は、流動性及び取扱性の向上の点から、0.01μm以上1μm以下であることが好ましい。
次に、本実施形態に係るトナーをキャリアと混合して2成分現像剤として使用する場合について説明する。所望する画像濃度を得、トナー飛散を抑制するためには、トナーの含有量は、2成分現像剤の質量に対して3質量%以上20質量%以下であることが好ましく、5質量%以上15質量%以下であることがより好ましい。
〔キャリア〕
例えば磁性キャリアを使用することが好ましい。磁性キャリアは、例えばキャリア芯材と、キャリア芯材を被覆する樹脂層とから構成される。または、樹脂中に磁性粒子を分散させたキャリア芯材を樹脂層で被覆したものでも良い。
一例では、キャリア芯材が、鉄、酸化処理鉄、還元鉄、マグネタイト、銅、ケイ素鋼、フェライト、ニッケル、もしくはコバルト等の粒子、又はこれらの材料とマンガン、亜鉛、及びアルミニウム等の金属との合金の粒子から構成されることが好ましい。別の一例では、キャリア芯材が、鉄−ニッケル合金、鉄−コバルト合金等の粒子から構成されることが好ましい。別の一例では、キャリア芯材が、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化銅、酸化マグネシウム、酸化鉛、酸化ジルコニウム、炭化ケイ素、チタン酸マグネシウム、チタン酸バリウム、チタン酸リチウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛、ニオブ酸リチウム等のセラミックスの粒子から構成されることが好ましい。別の一例では、キャリア芯材が、リン酸二水素アンモニウム、リン酸二水素カリウム、ロッシェル塩等の高誘電率物質の粒子から構成されることが好ましい。
キャリア芯材を被覆する樹脂層は、例えば(メタ)アクリル系重合体、スチレン系重合体、スチレン−(メタ)アクリル系共重合体、オレフィン系重合体(ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリカーボネート、セルロース樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等)、フェノール樹脂、キシレン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリアセタール樹脂、アミノ樹脂から構成されることが好ましい。
磁性及び流動性を向上させるためには、キャリアの粒子径は、20μm以上120μm以下が好ましく、25μm以上80μm以下がより好ましい。粒子径は電子顕微鏡等で観察することにより測定することができる。
次に、本実施形態に係るトナーの製造方法について説明する。
〔コアの形成〕
コアは、例えば粉砕分級法(溶融混練法)又は凝集法により形成される。これらの方法によれば、バインダー中に内添剤を良好に分散させることが可能になる。
(粉砕分級法によるコアの形成)
バインダーの材料と内添剤の材料とを混合し、混合物を溶融混練する。次に、溶融混練物を粉砕し、分級することにより、所望の粒子径を有するコアを得る。粉砕分級法によれば、凝集法よりも容易にコアを形成することが可能になる。
(凝集法によるコアの形成)
コア成分を含む微粒子を水性媒体中で凝集させる。詳しくは、バインダーの材料を水性媒体中で所望のサイズに微粒子化することで、バインダー微粒子を含む水性分散液(バインダー微粒子分散液)を得る。続けて、バインダー微粒子分散液中で微粒子を凝集させる。これにより、凝集粒子が形成される。
〔カプセル膜の形成〕
カプセル膜の形成に際しては、まず、溶媒のpHを調整する。溶媒のpHは、例えば酸性物質により4程度に調整されるのが好ましい。分散液のpHを4程度の酸性側に調整することで、カプセル膜の形成に用いられる材料の重縮合反応が促進される。続けて、pHを調整した溶媒(水性媒体)にカチオン性のカプセル膜の材料を溶解させる。
カプセル膜の材料は、アミノアルデヒド樹脂又はその誘導体、モノマーもしくはプレポリマー(例えば初期縮合物)であることが特に好ましい。中でも、メラミンホルムアルデヒド初期縮合物がより好ましい。メラミンホルムアルデヒド初期縮合物は、例えばメラミンをメタノール中でホルムアルデヒドと反応させてメチロール化した後、メチル化することによって合成することができる。
メラミンに付加するホルムアルデヒドの量、メチロール基と反応するメタノールの量等を変えることによって、メチロール基(−CH2OH)、メトキシ基(−OCH3)、メチレン基(−CH2−)、イミノ基(−NH−)の組成比が異なる種々の組成物を生成することができる。
イミノ基の量が少ないほど、メラミンホルムアルデヒド初期縮合物の硬化温度は高くなる傾向にある。メチレン基の量は縮合度に対応し、メチレン基が少ないほど、メラミンホルムアルデヒド初期縮合物を含む組成物を高濃度化して架橋密度の高いカプセル膜を形成できる。メチロール基が多いほど、メラミンホルムアルデヒド初期縮合物を含む組成物の安定性が低下し、加工時にホルムアルデヒドが多く発生する傾向にあるため、メチロール基は少ない方が好ましい。
メラミンホルムアルデヒド初期縮合物は、溶媒(例えば水性媒体)中でアニオン性の固体粒子表面に適度に吸着し易いため、コア表面の官能基(例えば水酸基、カルボキシル基)とのin−situ重合反応(コアとの結合反応)が進み易い。また、カプセル膜の材料がメラミンホルムアルデヒド初期縮合物であれば、カプセル膜の硬化反応が完了するまでコアの分散性が高く維持され易い。
カプセル膜の形成時においてカプセル膜の材料の混和度は250〜1000質量%の範囲にあることが好ましい。こうした混和度であれば、カプセル膜の材料の溶媒(例えば水性媒体)に対する親和性が適正なレベルになり、カプセル膜の形成時においてコアの分散性を高く維持しながらコア表面にカプセル膜の材料(例えばメラミンホルムアルデヒド初期縮合物)を強く結合させることが可能になる。なお、混和度は、カプセル膜の材料(例えばメラミンホルムアルデヒド初期縮合物)に対する溶媒(例えば水性媒体)の溶解度である。混和度600質量%であれば、カプセル膜の材料の6倍(質量比)の溶媒がカプセル膜の材料に入り込むことができる。カプセル膜の材料の重合度が高いほど混和度が低くなる傾向にある。
続けて、カプセル膜の材料を溶解させた溶媒中に前述の方法で作製したコアを添加し、分散させる。溶媒中にコアが均一に分散されると、均一なカプセル膜を得やすくなる。
コアを良好に分散させる方法としては、例えば分散液を強力に撹拌できる装置を用いて機械的に分散させる方法が好ましい。強力に撹拌できる装置としては、プライミックス社製のハイビスミックス等が挙げられる。ただしこれに限られず、コアを分散させる方法は任意である。
例えば分散剤を含有する水性媒体中でコアを分散させてもよい。ただし、分散剤の使用量が多過ぎると、コア表面に分散剤が付着した状態でカプセル膜の形成が行われる可能性がある。こうした状態でカプセル膜が形成されると、コアとカプセル膜との結合が弱くなるため、トナーに加わる機械的ストレス等により、コアからカプセル膜が剥がれ易くなる。そのため、分散剤の使用量は、コア100質量部に対して75質量部以下であることが好ましい。分散剤の使用量を75質量部以下にすることにより、コアからのカプセル膜の剥離を抑制することが可能になる。
分散剤としては、例えばポリアクリル酸ナトリウム、ポリパラビニルフェノール、部分鹸化ポリ酢酸ビニル、イソプレンスルホン酸、ポリエーテル、イソブチレン/無水マレイン酸共重合体、ポリアスパラギン酸ナトリウム、デンプン、ゼラチン、アラビアゴム、ポリビニルピロリドン、リグニンスルホン酸ナトリウムが好ましい。これらは単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
続けて、コアを添加した溶媒の温度を所望の温度にして、所定の時間その温度で維持(保温)する。そして、この温度にてカプセル膜の形成(例えば硬化反応)が進行する。この際、コアが表面張力によって収縮することで、軟化したコアが球形化することがある。
カプセル膜の形成を良好に進行させるためには、カプセル膜を形成する際の溶液の温度(反応温度)が40℃以上95℃以下であることが好ましく、50℃以上80℃以下であることがより好ましい。また、コアを構成するバインダーが水酸基又はカルボキシル基を有する樹脂(例えばポリエステル樹脂)から構成され、カプセル膜がアミノアルデヒド樹脂又はその誘導体、モノマーもしくはプレポリマーから構成される場合において、カプセル膜を形成する際の温度が40℃以上95℃以下であれば、コア表面に露出する水酸基又はカルボキシル基と、カプセル膜を構成する樹脂のメチロール基とが反応して、コアを構成するバインダーとカプセル膜を構成する樹脂との間に共有結合が形成され易くなる。これにより、コア表面にカプセル膜を強固に付着させることが可能になる。
続けて、溶媒のpHを例えば7に調整し、フラスコの内容物を常温まで冷却する。この溶媒には、アニオン性のコアと、コアの表面を被覆するカチオン性のカプセル膜とから構成されるトナー母粒子が含まれる。
以上説明したカプセル膜の形成方法は、カプセル膜の構成又は要求される特性等に応じて任意に変更することができる。例えば溶媒にカプセル膜の材料を溶解させる工程よりも前に、溶媒中にコアを添加する工程を行うようにしてもよい。また、必要のない工程は割愛してもよい。
〔洗浄〕
トナー母粒子の形成後、トナー母粒子の洗浄を行う。例えばブフナーロートを用いて分散液からトナー母粒子のウエットケーキをろ取し、トナー母粒子のウエットケーキを再度イオン交換水に分散させてトナー母粒子を洗浄する。そして、イオン交換水による同様の洗浄を数回繰り返し、ろ液及び洗浄水は排水として回収する。ただしこれに限られず、トナー母粒子の洗浄方法は任意である。
ろ液の導電率は、トナー帯電量の環境変動が大きくなるのを抑制するため、10μS/cm以下であることが好ましい。ろ液の導電率は、例えば、堀場製作所社製のHoriba COND METER ES−51を用いて測定することができる。
〔乾燥〕
例えばスプレードライヤー、流動層乾燥機、真空凍結乾燥器、減圧乾燥機によりトナー母粒子を乾燥する。この際、スプレードライヤーを用いれば、乾燥中のトナー母粒子の凝集を抑制することが可能になる。ただしこれに限られず、トナー母粒子の乾燥方法は任意である。
〔外添〕
トナー母粒子の表面に外添剤を付着させる。外添剤を付着させる方法としては、例えば外添剤がトナー母粒子表面に埋没しないように条件を調整して、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー等の混合機によりトナー母粒子と外添剤とを混合する方法が好ましい。ただしこれに限られず、トナー母粒子に対する外添方法は任意である。例えば乾燥工程でスプレードライヤーを用いる場合には、トナー母粒子の分散液と共に、シリカ等の外添剤の分散液を噴霧できる。その結果、乾燥工程と外添工程を同時に行うことが可能になる。
以上説明した本実施形態に係るトナーの製造方法によれば、耐熱保存性に優れたカプセルトナーが得られる。こうしたトナーは、電子写真法等が適用される画像形成装置において好適に使用できる。
本実施形態に係るカプセルトナーは、カプセル膜の硬度が1N/m以上3N/m未満であり、1.5N/m以上2.5N/m未満であることが好ましい。カプセル膜の硬度が低すぎると、クリーニングブレードでのストレスによる融着やクリーニング不良が発生し、クリーニング性が劣り、カプセル膜の硬度が高すぎると、最低定着温度が上昇し、定着性が劣る。
本実施形態におけるカプセル膜の硬度は、例えば、原子間力顕微鏡(AFM)を用いてAFM針でトナー表面を押圧し、カプセル膜が破れた瞬間の押圧力をカプセル膜の硬度とする。
本実施形態におけるカプセルトナーの円形度は0.965以上0.975未満である。円形度が低すぎると、カプセル材料のトナー表面への付着力増大に伴う現像性の低下や、それに伴う画像濃度の低下がみられ、円形度が高すぎると、ドラムクリーニングを十分に行うことができず、クリーニング不良が発生する。カプセルトナーの円形度は、例えば、カプセル膜の硬度、カプセル化材料の重合時間を変更することにより、前記範囲に制御することができる。なお、熱可塑性のカプセル剤を用いた場合には、カプセル化工程での熱の影響によりトナー円形度が高くなる傾向にある。
本実施形態におけるカプセルトナーの円形度は、例えば、フロー式粒子像分析装置(シスメックス社製、FPIA 3000)を用いて、3000個のカプセルトナー粒子の円形度を測定し、その平均値で示したものある。
つぎに、本発明の実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕
(コアの作製)
ビスフェノールAを骨格にしてエチレンオキサイドを付加したアルコール(ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物)に、パラフタル酸を反応させてポリエステル樹脂を作製した。このポリエステル樹脂のOHV値は20mgKOH/g、AVは40mgKOH/g、Tmは100℃、Tgは48℃であった。このポリエステル樹脂100質量部に対し、着色剤としてC.I.ピグメントブルー15:3(フタロシアニン顔料)を5質量部、離型剤としてエステルワックス(日油社製、WEP−3)を5質量部配合し、混合機(ヘンシェルミキサー)を用いて混合した後、2軸押出機(池貝社製、PCM−30)で混練したチップを、機械式粉砕機(ターボ工業社製、ターボミル)にて6ミクロンに粉砕した。その後、分級機(日鉄鉱業社製、エルボージェット)にて分級し、体積平均粒子径が6ミクロンのコアを得た。このコアの形状指数(円形度)は0.93、Tgは49℃、Tmは90℃であった。このコアを標準キャリアN−01を用いて摩擦帯電量(アニオン性)を測定すると−20μC/gであった。さらにpH4でのゼータ電位の測定は−15mVであり、明らかなアニオン性を示した。なお、コアの各測定は以下のようにして行った。
〔粒子径〕
ベックマンコールター社製のコールターカウンターマルチサイザー3を用いて、体積平均粒子径(D50)を測定した。
〔コアのTg〕
示差走査熱量計(セイコーインスツルメンツ社製、DSC−6200)を用いて吸熱曲線を測定することにより、吸熱曲線における比熱の変化点から求めた。
〔コアのTm〕
試料を高化式フローテスター(島津製作所社製、CFT−500D)にセットし、ダイス細孔経1mm、プランジャー荷重20kg/cm2、昇温速度6℃/分で、1cm3の試料を溶融流出させてS字カーブを求め、得られたS字カーブからコアのTmを読み取った。
〔摩擦帯電量(アニオン性)〕
ターブラミキサー(シンマルエンタープライゼス社製、型番T2F、設定条件96rpm)を用いて、標準キャリアN−01(日本画像学会から提供される負帯電極性トナー用標準キャリア)10gと、この標準キャリアに対して7質量%のコアとを30分間混合した。そして、得られた混合物を測定試料として標準キャリアと摩擦させた場合のコアの摩擦帯電量をQMメータ(TREK社製、MODEL 210HS−2A)で測定した。
〔コアのゼータ電位〕
コア0.2g、イオン交換水80g、及び1%濃度のノニオン系界面活性剤(ポリビニルピロリドン、日本触媒社製「K−85」)20gをマグネットスターラーで混合し、コアを均一に分散させて分散液を得た。この分散液に希塩酸を加えて分散液のpHを4に調整した。そして、この分散液を測定試料として、ゼータ電位・粒度分布測定装置(ベックマン・コールター社製、Delsa Nano HC)により、pH4に調整された分散液中のコアのゼータ電位を測定した。
(カプセルトナー粒子の作製)
温度計及び撹拌羽根を備えた容量1リットルの3つ口フラスコを準備し、ウォーターバスを用いてフラスコ内温度を30℃に保持した。そして、フラスコ内にイオン交換水300mlを入れ、さらに1N−塩酸を加えて、フラスコ内の水性媒体のpHを4に調整した。このフラスコ内に、カプセル化材料であるヘキサメチロール化物(昭和電工社製、ミルベン607)を3ml添加し、フラスコの内容物を撹拌してヘキサメチロール化物を水性媒体に溶解させた。次にフラスコ内(カプセル化材料が溶解した酸性水溶液)に、上記で作製したコア300gを添加し、十分攪拌した。さらに300mlのイオン交換水を追加し攪拌しながら1℃/分の速度で昇温し70℃で2時間保持した後、1℃/分の速度で分散液を室温まで冷却した。次に1N−水酸化ナトリウム水溶液(中和剤)を加えてpH7になるまで分散液を中和し、ろ過によってカプセルトナー粒子を分散液から回収した。ろ液の導電率を、堀場製作所社製のHoriba COND METER ES−51を用いて測定した結果、4μS/cmであった。このトナーに乾式シリカ(日本アエロジル社製、REA90)0.5質量%を添加し、カプセルトナー粒子を作製した。
〔実施例2〕
カプセル膜の膜厚調整のため、ヘキサメチロール化物(昭和電工社製、ミルベン607)の添加量を1mlに変更した以外は、実施例1と同様にしてカプセルトナー粒子を作製した。
〔実施例3〕
カプセル膜の膜厚調整のため、ヘキサメチロール化物(昭和電工社製、ミルベン607)の添加量を6.5mlに変更した以外は、実施例1と同様にしてカプセルトナー粒子を作製した。
〔比較例1〕
カプセル膜の膜厚調整のため、ヘキサメチロール化物(昭和電工社製、ミルベン607)の添加量を7mlに変更した以外は、実施例1と同様にしてカプセルトナー粒子を作製した。
〔比較例2〕
カプセル膜の膜厚調整のため、ヘキサメチロール化物(昭和電工社製、ミルベン607)の添加量を12mlに変更した以外は、実施例1と同様にしてカプセルトナー粒子を作製した。
〔比較例3〕
カプセル化材料によるカプセル膜の形成を行わなかった。すなわち、実施例1と同様に、コアを作製し、これに乾式シリカ0.5質量%を添加して、カプセル化していないトナー粒子を作製した。
〔実施例4〕
実施例1のコアに代えて、下記のコアを使用した以外は、実施例1と同様にしてカプセルトナー粒子を作製した。
(コアの作製)
ビスフェノールAを骨格にしてエチレンオキサイドを付加したアルコール(ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物)に、パラフタル酸を反応させてポリエステル樹脂を作製した。このポリエステル樹脂のOHV値は4mgKOH/g、AVは8mgKOH/g、Tmは100℃、Tgは48℃であった。このポリエステル樹脂100質量部に対し、着色剤としてC.I.ピグメントブルー15:3(フタロシアニン顔料)を5質量部、離型剤としてエステルワックス(日油社製、WEP−3)を5質量部、帯電制御剤(クラリアント社製、P51)1質量部を配合し、混合機(ヘンシェルミキサー)を用いて混合した後、2軸押出機(池貝社製、PCM−30)で混練したチップを、機械式粉砕機(ターボ工業社製、ターボミル)にて6ミクロンに粉砕した。その後、分級機(日鉄鉱業社製、エルボージェット)にて分級し、体積平均粒子径が6ミクロンのコアを得た。このコアの形状指数(円形度)は0.94、Tgは49℃、Tmは90℃であった。このコアを標準キャリアN−01を用いて摩擦帯電量(アニオン性)を測定すると−6μC/gであった。さらにpH4でのゼータ電位の測定は−6mVであり、弱いアニオン性を示した。
〔実施例5〕
帯電制御剤(クラリアント社製、P51)の配合量を0.5質量部に変更した以外は、実施例4と同様にしてコアを作製した。このコアの形状指数(円形度)は0.94、Tgは49℃、Tmは90℃であった。このコアを標準キャリアN−01を用いて摩擦帯電量(アニオン性)を測定すると−4μC/gであった。さらにpH4でのゼータ電位の測定は−4mVであり、弱いアニオン性を示した。そして、このコアを使用した以外は、実施例1と同様にしてカプセルトナー粒子を作製した。
〔比較例4〕
(コアの作製)
スチレンアクリル共重合体(スチレン/アクリル=80/20)を溶液重合法により作製した。OHV値は4mgKOH/g、AV値は2mgKOH/g、Tmは100℃、Tgは48℃であった。このスチレンアクリル共重合体100質量部に対し、着色剤としてC.I.ピグメントブルー15:3(フタロシアニン顔料)を5質量部、離型剤としてエステルワックス(日油社製、WEP−3)を5質量部、帯電制御剤(クラリアント社製、P51)を2質量部を配合し、混合機(ヘンシェルミキサー)を用いて混合した後、2軸押出機(池貝社製、PCM−30)で混練したチップを、機械式粉砕機(ターボ工業社製、ターボミル)にて6ミクロンに粉砕した。その後、分級機(日鉄鉱業社製、エルボージェット)にて分級し、体積平均径が6ミクロンのコアを得た。このコアの形状指数(円形度)は0.93、Tgは49℃、Tmは90℃であった。このコアを標準キャリアN−01を用いて摩擦帯電量(アニオン性)を測定すると+10μC/gであった。さらにpH4でのゼータ電位の測定は+20mVであり、弱カチオン性を示した。
(カプセルトナー粒子の作製)
温度計及び撹拌羽根を備えた容量1リットルの3つ口フラスコを準備し、ウォーターバスを用いてフラスコ内温度を30℃に保持した。そして、フラスコ内にイオン交換水300mlを入れ、さらに1N−塩酸を加えて、フラスコ内の水性媒体のpHを4に調整した。このフラスコ内に、カプセル化材料であるヘキサメチロール化物(昭和電工社製、ミルベン607)を2ml添加し、フラスコの内容物を撹拌してヘキサメチロール化物を水性媒体に溶解させた。次にフラスコ内(カプセル化材料が溶解した酸性水溶液)に、上記で作製したコア300gを添加し、十分攪拌した。さらに300mlのイオン交換水を追加し攪拌しながら1℃/分の速度で昇温し70℃で2時間保持した後、1℃/分の速度で分散液を室温まで冷却した。次に1N−水酸化ナトリウム水溶液(中和剤)を加えてpH7になるまで分散液を中和し、ろ過によってカプセルトナー粒子を分散液から回収した。ろ液の導電率を、堀場製作所社製のHoriba COND METER ES−51を用いて測定した結果、4μS/cmであった。このトナーに乾式シリカ0.5質量%を添加し、カプセルトナー粒子を作製した。反応液中にヘキサメチロール化物及びトナーの凝集物が観察され、カチオン性のカプセル剤がトナー表面に十分に付着しなかったことが観察された。
〔実施例6〕
実施例1と同様にして、コアを作製した。そして、このコアを用いて、カプセルトナー粒子を作製する際に、カプセル膜の膜厚調整のため、1N−塩酸を加えてpHを3に調整した以外は、実施例1と同様にしてカプセルトナー粒子を作製した。
〔実施例7〕
実施例1と同様にして、コアを作製した。そして、このコアを用いて、カプセルトナー粒子を作製する際に、カプセル膜の膜厚調整のため、1N−塩酸を加えてpHを5に調整した以外は、実施例1と同様にしてカプセルトナー粒子を作製した。
〔実施例8〕
実施例1と同様にして、コアを作製した。そして、このコアを用いて、カプセルトナー粒子を作製する際に、カプセル膜の膜厚調整のため、1N−塩酸を加えてpHを3に調整すると共に、カプセル膜の膜厚調整のため、ヘキサメチロール化物(昭和電工社製、ミルベン607)の添加量を1mlに変更した以外は、実施例1と同様にしてカプセルトナー粒子を作製した。
〔実施例9〕
実施例1と同様にして、コアを作製した。そして、このコアを用いて、カプセルトナー粒子を作製する際に、カプセル膜の膜厚調整のため、1N−塩酸を加えてpHを5に調整すると共に、カプセル膜の膜厚調整のため、ヘキサメチロール化物(昭和電工社製、ミルベン607)の添加量を1mlに変更した以外は、実施例1と同様にしてカプセルトナー粒子を作製した。
〔実施例10〕
実施例1と同様にして、コアを作製した。そして、このコアを用いて、カプセルトナー粒子を作製する際に、カプセル膜の膜厚調整のため、1N−塩酸を加えてpHを3に調整すると共に、カプセル膜の膜厚調整のため、ヘキサメチロール化物(昭和電工社製、ミルベン607)の添加量を6.5mlに変更した以外は、実施例1と同様にしてカプセルトナー粒子を作製した。
〔実施例11〕
実施例1と同様にして、コアを作製した。そして、このコアを用いて、カプセルトナー粒子を作製する際に、カプセル膜の膜厚調整のため、1N−塩酸を加えてpHを5に調整すると共に、カプセル膜の膜厚調整のため、ヘキサメチロール化物(昭和電工社製、ミルベン607)の添加量を6.5mlに変更した以外は、実施例1と同様にしてカプセルトナー粒子を作製した。
〔比較例5〕
実施例1と同様にして、コアを作製した。そして、このコアを用いて、カプセルトナー粒子を作製する際に、カプセル膜の膜厚調整のため、1N−塩酸を加えてpHを6に調整した以外は、実施例1と同様にしてカプセルトナー粒子を作製した。
〔比較例6〕
実施例1と同様にして、コアを作製した。そして、このコアを用いて、カプセルトナー粒子を作製する際に、カプセル膜の膜厚調整のため、1N−塩酸を加えてpHを6に調整すると共に、カプセル膜の膜厚調整のため、ヘキサメチロール化物(昭和電工社製、ミルベン607)の添加量を1mlに変更した以外は、実施例1と同様にしてカプセルトナー粒子を作製した。
〔比較例7〕
実施例1と同様にして、コアを作製した。そして、このコアを用いて、カプセルトナー粒子を作製する際に、カプセル膜の膜厚調整のため、1N−塩酸を加えてpHを6に調整すると共に、カプセル膜の膜厚調整のため、ヘキサメチロール化物(昭和電工社製、ミルベン607)の添加量を6.5mlに変更した以外は、実施例1と同様にしてカプセルトナー粒子を作製した。
〔比較例8〕
実施例1と同様にして、コアを作製した。そして、このコアを用いて、カプセルトナー粒子を作製する際に、カプセル膜の膜厚調整のため、1N−塩酸を加えてpHを2に調整した以外は、実施例1と同様にしてカプセルトナー粒子を作製した。
〔比較例9〕
実施例1と同様にして、コアを作製した。そして、このコアを用いて、カプセルトナー粒子を作製する際に、カプセル膜の膜厚調整のため、1N−塩酸を加えてpHを2に調整すると共に、カプセル膜の膜厚調整のため、ヘキサメチロール化物(昭和電工社製、ミルベン607)の添加量を1mlに変更した以外は、実施例1と同様にしてカプセルトナー粒子を作製した。
〔比較例10〕
実施例1と同様にして、コアを作製した。そして、このコアを用いて、カプセルトナー粒子を作製する際に、カプセル膜の膜厚調整のため、1N−塩酸を加えてpHを2に調整すると共に、カプセル膜の膜厚調整のため、ヘキサメチロール化物(昭和電工社製、ミルベン607)の添加量を6.5mlに変更した以外は、実施例1と同様にしてカプセルトナー粒子を作製した。
〔実施例12〕
実施例1と同様にして、コアを作製した。そして、このコアを用いて、カプセルトナー粒子を作製する際に、円形度を調整するために、70℃での保持時間を1時間に変更した以外は、実施例1と同様にしてカプセルトナー粒子を作製した。
〔実施例13〕
実施例1と同様にして、コアを作製した。そして、このコアを用いて、カプセルトナー粒子を作製する際に、円形度を調整するために、70℃での保持時間を3時間に変更した以外は、実施例1と同様にしてカプセルトナー粒子を作製した。
〔比較例11〕
実施例1と同様にして、コアを作製した。そして、このコアを用いて、カプセルトナー粒子を作製する際に、円形度を調整するために、70℃での保持時間を0時間(保持時間なし)に変更した以外は、実施例1と同様にしてカプセルトナー粒子を作製した。
〔比較例12〕
実施例1と同様にして、コアを作製した。そして、このコアを用いて、カプセルトナー粒子を作製する際に、カプセル膜の膜厚調整のため、ヘキサメチロール化物(昭和電工社製、ミルベン607)の添加量を1mlに変更すると共に、円形度を調整するために、70℃での保持時間を0時間(保持時間なし)に変更した以外は、実施例1と同様にしてカプセルトナー粒子を作製した。
〔比較例13〕
実施例1と同様にして、コアを作製した。そして、このコアを用いて、カプセルトナー粒子を作製する際に、カプセル膜の膜厚調整のため、ヘキサメチロール化物(昭和電工社製、ミルベン607)の添加量を6.5mlに変更すると共に、円形度を調整するために、70℃での保持時間を0時間(保持時間なし)に変更した以外は、実施例1と同様にしてカプセルトナー粒子を作製した。
〔比較例14〕
実施例1と同様にして、コアを作製した。そして、このコアを用いて、カプセルトナー粒子を作製する際に、円形度を調整するために、70℃での保持時間を5時間に変更した以外は、実施例1と同様にしてカプセルトナー粒子を作製した。
〔比較例15〕
実施例1と同様にして、コアを作製した。そして、このコアを用いて、カプセルトナー粒子を作製する際に、カプセル膜の膜厚調整のため、ヘキサメチロール化物(昭和電工社製、ミルベン607)の添加量を1mlに変更すると共に、円形度を調整するために、70℃での保持時間を5時間に変更した以外は、実施例1と同様にしてカプセルトナー粒子を作製した。
〔比較例16〕
実施例1と同様にして、コアを作製した。そして、このコアを用いて、カプセルトナー粒子を作製する際に、カプセル膜の膜厚調整のため、ヘキサメチロール化物(昭和電工社製、ミルベン607)の添加量を6.5mlに変更すると共に、円形度を調整するために、70℃での保持時間を5時間に変更した以外は、実施例1と同様にしてカプセルトナー粒子を作製した。
≪評価≫
実施例及び比較例のトナー(カプセルトナー粒子)を用いて、下記の基準に従い各特性の評価を行った。これらの結果を、下記の表1及び表2に併せて示した。
〔カプセル膜の膜厚〕
カプセル膜の膜厚は、上述の方法に従い測定した。即ち、カプセルトナー粒子を、常温硬化性のエポキシ樹脂中に十分に分散し、40℃の雰囲気にて2日間硬化させて硬化物を得た。この硬化物を四三酸化オスミウムにて染色した後、ダイヤモンドナイフをセットしたミクロトーム(ライカ社製、EM UC6)にて切り出し、厚さ200nmの薄片試料を得た。そして、この試料の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)(日本電子社製、JSM−6700 F)にて撮影した。
〔形状指数(円形度)〕
フロー式粒子像分析装置(シスメックス社製、FPIA 3000)を用いて、形状指数としての円形度を測定した。詳しくは、各試料に関して3000個の粒子の円形度を測定し、その平均値を評価値とした。
〔カプセル膜硬度〕
原子間力顕微鏡(AFM)を用いてAFM針でトナー表面を押圧し、カプセル膜が破れた瞬間の押圧力をカプセル膜の硬度とした。評価は以下のように行った。
◎:硬度が1.5N/m以上2.5N/m未満
○:硬度が1.0N/m以上1.5N/m未満、もしくは2.5N/m以上3.0N/m未満
×:硬度が1.0N/m未満もしくは3.0N/m以上
〔ブロッキング性〕
実施例及び比較例のトナー(カプセルトナー粒子)3gを、30mlのサンプル瓶に秤量し、トナーの入ったサンプル瓶を、60℃の恒温槽(Constant Temperature Oven DKN602(ヤマト科学株式会社製))に3時間静置した。その後、恒温槽からサンプル瓶を取り出し、24時間常温で静置した。次いで、質量既知の200メッシュの篩を、パウダーテスター(TYPE PT−E 84810(ホソカワミクロン株式会社製))に取り付け、篩に常温静置後のトナーを載せた。そして、レオスタット5.0の条件で30秒間トナーを篩った。次いで、篩上に残ったトナーの質量を測定した。篩い後の篩上のトナーの質量から、耐熱保存性を、下記基準に従って評価した。評価は、メッシュ上に残存したトナーが15質量%以下であった場合を◎、メッシュ上に残存したトナーが15質量%を超え20質量%以下であった場合を○、メッシュ上に残存したトナーが20質量%を超える場合を×とした。
〔定着性〕
(キャリアとトナーとの混合)
キャリア(プリンター(FS−C5016(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製))用のキャリア)と、キャリアの質量に対して10質量%のトナーとを、ボールミルにて30分間混合して2成分現像剤を調製した。
評価機として、定着温度を調節できるように改造したプリンター(FS−C5250DN(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製))を用いた。上述のように調製した2成分現像剤を評価機のシアン色用現像部に投入し、トナーを評価機のシアン色用トナーコンテナに投入した。トナー載り量を1.2mg/cmに設定して、被記録媒体(Color Copy 90(ノイシドラー社製))に未定着のトナー画像(2cm×3cmのパッチサンプル)を形成した。評価機の定着装置の定着温度を100℃に設定し、線速195mm/秒で、未定着のベタ画像を定着させた。ベタ画像が定着された被記録媒体を、画像を形成した面が内側となるように半分に折り曲げ、布帛で覆った1kgの分銅を用いて、折り目上を5往復摩擦した。次いで、被記録媒体を広げ、定着された画像の折り曲げ部を観察し、折り曲げ部のトナーの剥がれの長さ(剥がれ長)を測定した。下記基準に従って評価した。なお、定着温度を100℃から200℃まで5℃ステップで上昇させて、それぞれの温度での剥がれの長さを測定した。剥がれの長さが1mm以下となった最低の温度を最低定着温度とした。
(評価)
◎:最低定着温度が150℃以下
○:最低定着温度が150℃を超え160℃以下
×:最低定着温度が160℃を超える
〔画像濃度〕
評価機として、プリンター(FS−C5250DN(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製))を用意し、上述のように調製した2成分現像剤を評価機のシアン色用現像部に投入し、トナーを評価機のシアン色用トナーコンテナに投入した。京セラドキュメントソリューションズ社製プリンターFS−525DNを用いて耐久評価を行った。初期画像と500枚印刷後に出力したサンプル画像のベタ印字部の画像濃度(ID)をマクベス反射濃度計(グレタグ・マクベス/RD914)で測定した。評価は、画像濃度(ID)が1.1以上のものを○、1.1未満のものを×とした。なお、500枚印刷時の印字率は5%であった。
〔クリーニング性〕
評価機として、プリンター(FS−C5250DN(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製))を用意し、上述のように調製した2成分現像剤を評価機のシアン色用現像部に投入し、トナーを評価機のシアン色用トナーコンテナに投入した。このプリンターは感光体のクリーニング方式としてブレードクリーニング方式を用いている。そして以下のようにして、融着性の評価を行った。すなわち、上記プリンターを用いて、印字率8%の画像を1000枚印字した後の画像およびクリーニングブレードを確認し、クリーニング不良による画像不具合、クリーニングブレードへのトナー成分の融着の有無を目視で確認した。評価は、クリーニング不良による画像不具合、クリーニングブレードへの融着がいずれも観察されなかったものを○、いずれか一方でも確認されたものを×とした。
Figure 2015141360
Figure 2015141360
上記表1及び表2の結果から、実施例1〜13は、カプセル膜形成前のコア粒子のpH4におけるゼータ電位がマイナスの値を示し、カプセル膜を形成した後のカプセルトナー粒子のpH4におけるゼータ電位がプラスの値を示し、かつカプセル膜の硬度が1N/m以上3N/m未満、カプセル膜の厚みが20nm以下で、カプセルトナーの円形度が0.965以上0.975未満であるため、ブロッキング性、定着性、画像評価、クリ−ニング性がいずれも良好であった。
これに対して、比較例1、2は、カプセル膜の厚さが20nmを超えるため、最低定着温度が上昇し、定着性が劣っていた。
比較例3は、カプセル膜を形成していないため、ブロッキング性が劣り、画像濃度が小さく、クリ−ニング性も劣っていた。
比較例4は、コアがプラス帯電のカチオン性を示すため、トナー凝集が生じ、カプセル膜の硬度が低く、ブロッキング性、クリ−ニング性がいずれも劣っていた。
比較例5〜7は、カプセル膜の硬度が高いため、クリーニングブレードでのストレスにより融着が発生し、クリ−ニング性が劣っていた。
比較例8〜10は、カプセル膜の硬度が強いため、最低定着温度が上昇し、定着性が劣っていた。
比較例11〜13は、カプセルトナーの円形度が低すぎるため、カプセル材料のトナー表面への付着力増大に伴う現像性の低下や、それに伴う画像濃度の低下がみられた。
比較例14〜16は、カプセルトナーの円形度が高すぎるため、ドラムクリーニングブレードからのトナー粒子のずり抜けが生じ、クリーニング性が劣っていた。
本発明は、電子写真法において形成される静電潜像の現像に用いられる静電荷像現像用カプセルトナーとして利用することができる。

Claims (2)

  1. アニオン性のコアの表面に、カチオン性のカプセル化材料からなるカプセル膜が形成されてなる静電荷像現像用カプセルトナーであって、前記静電荷像現像用カプセルトナーは複数のカプセルトナー粒子を含み、
    カプセル膜形成前のコアのpH4におけるゼータ電位がマイナスの値を示し、カプセル膜を形成した後のカプセルトナー粒子のpH4におけるゼータ電位がプラスの値を示し、
    かつカプセル膜の硬度が1N/m以上3N/m未満、カプセル膜の厚みが20nm以下で、カプセルトナーの円形度が0.965以上0.975未満であることを特徴とする静電荷像現像用カプセルトナー。
  2. カプセル化材料が熱硬化性樹脂を含有する、請求項1に記載の静電荷像現像用カプセルトナー。
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