JP2015035929A - 回転電機の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】コイルのコアに対する位置を比較的容易に保持することが可能な回転電機の製造方法を実現する。【解決手段】回転電機の製造方法は変形工程と巻装工程と変形解除工程を備える。変形工程は、渡り部により接続される一対のコイル辺部30同士の間隔を対象間隔Aとし、コイル3がコア2に巻装された状態での対象間隔Aを基準間隔Bとして、対象間隔Aが基準間隔Bとは異なるように成形されたコイル3を用い、対象間隔Aが基準間隔Bに合うように渡り部を外力により変形させる工程である。巻装工程は、変形工程により渡り部を変形させた状態を保持したままコイル3をコア2に巻装する工程である。変形解除工程は、巻装工程の実行後に、渡り部を変形させる外力を取り除いて、一対のコイル辺部30のそれぞれを互いに周方向Cの反対側を向くスロット40の側面部50に当接させる工程である。【選択図】図4
Description
本発明は、円筒状のコア基準面の軸方向及び径方向に延びるスロットが、コア基準面の周方向に複数分散配置されているコアと、当該コアに巻装された状態でスロット内に配置されるコイル辺部及び一対のコイル辺部をコアの軸方向の外側において接続する渡り部を有するコイルと、を備えた回転電機の製造方法に関する。
上記のような回転電機として、特開2012−125043号公報(特許文献1)に記載されたものが知られている。特許文献1には、回転電機の製造方法に関して、円環状に形成されたコイルをステータコアに挿入した後、コイルを構成する同心巻コイル同士の接合部を溶接する構成が記載されている。
ところで、コイルがステータコアに対して軸方向に移動すると、コイルエンド部が他の部材と干渉するおそれがあり、また、コイルエンド部と回転電機を収容するケースとの間の距離が短くなることで、これらの間の電気的絶縁性を適切に確保することが困難になるおそれがある。また、コイルがステータコアに対して径方向に移動すると、コイルとロータとの距離が短くなることで、コイルに発生する渦電流損が大きくなるおそれがある。しかしながら、特許文献1では、これらの点について特段の認識がなされていなかった。
そこで、コイルのコアに対する位置を比較的容易に保持することが可能な回転電機の製造方法の実現が望まれる。
本発明に係る、円筒状のコア基準面の軸方向及び径方向に延びるスロットが、前記コア基準面の周方向に複数分散配置されているコアと、当該コアに巻装された状態で前記スロット内に配置されるコイル辺部及び一対の前記コイル辺部を前記コアの前記軸方向の外側において接続する渡り部を有するコイルと、を備えた回転電機の製造方法の特徴構成は、前記渡り部により接続される一対の前記コイル辺部同士の間隔を対象間隔とし、当該一対のコイル辺部における、前記コイルが前記コアに巻装された状態での前記対象間隔を基準間隔として、前記対象間隔が前記基準間隔とは異なるように成形された前記コイルを用い、前記対象間隔が前記基準間隔に合うように前記渡り部を外力により変形させる変形工程と、前記変形工程により前記渡り部を変形させた状態を保持したまま、前記渡り部により接続される一対の前記コイル辺部のそれぞれが互いに異なる前記スロット内の予め定められた設定位置に配置されるように、前記コイルを前記コアに巻装する巻装工程と、前記巻装工程の実行後に、前記外力を取り除いて、前記渡り部により接続される一対の前記コイル辺部のそれぞれを、互いに前記周方向の反対側を向く前記スロットの側面部に当接させる変形解除工程と、を備える点にある。
上記の特徴構成によれば、対象間隔が基準間隔に合うように渡り部が外力により変形された状態で、巻装工程によって渡り部により接続される一対のコイル辺部のそれぞれがスロット内に配置される。ここで、基準間隔は、コイルがコアに巻装された状態での対象間隔である。そのため、巻装工程において、一対のコイル辺部のそれぞれをスロット内に比較的容易に配置することができる。更に、上記の特徴構成によれば、変形解除工程を実行することで、渡り部により接続される一対のコイル辺部のそれぞれを、互いに周方向の反対側を向くスロットの側面部に当接させることができる。ここで、対象間隔が基準間隔に合うように外力により変形された渡り部には、一般に復元力が発生する。なお、渡り部の変形が弾性変形である場合のみでなく、渡り部の変形が塑性変形である場合でも、渡り部には弾性変形分に応じた復元力が発生し得る。そのため、変形解除工程では、渡り部を変形させるための外力(荷重)を取り除くことで、渡り部に発生する復元力を利用して、一対のコイル辺部のそれぞれを、互いに周方向の反対側を向くスロットの側面部に当接させることができる。この結果、一対のコイル辺部のそれぞれとスロットの側面部との間に発生する摩擦力を、コイルのコアに対する位置を保持するための力に利用することができる。従って、当該摩擦力によりコイルのコアに対する位置を保持でき、或いは、当該摩擦力を利用することができる分だけコイルのコアに対する位置を保持するための構成を簡素化することができる。
以上のように、上記の特徴構成によれば、コイルのコアに対する位置を比較的容易に保持することが可能な回転電機の製造方法を実現することができる。この結果として、例えば、回転電機の製造工数の低減や、回転電機の製造設備の簡素化を図ることが可能となる。
以上のように、上記の特徴構成によれば、コイルのコアに対する位置を比較的容易に保持することが可能な回転電機の製造方法を実現することができる。この結果として、例えば、回転電機の製造工数の低減や、回転電機の製造設備の簡素化を図ることが可能となる。
ここで、前記変形工程では、前記軸方向を軸心とする円筒状に配置された前記コイルを全周に亘って前記径方向に加圧して、前記周方向に分散配置された複数の前記渡り部を変形させる構成とすると好適である。
この構成によれば、渡り部により接続される一対のコイル辺部のそれぞれをスロット内に配置する巻装工程を、複数の渡り部のそれぞれについて共通の工程とすることができるため、回転電機の製造工数の低減を図ることができる。
上記のように、前記変形工程では前記軸方向を軸心とする円筒状に配置された前記コイルを全周に亘って前記径方向に加圧する構成において、前記巻装工程では、隣接する前記スロット間に形成されるティースを有するコア片を複数用い、前記コイルに対して前記径方向の外側に配置された複数の前記コア片を前記径方向の内側へ向けて移動させて、前記コイル辺部のそれぞれを前記設定位置に配置する構成とすると好適である。
この構成によれば、コアが周方向において一体的に形成される場合に比べて、巻装工程の簡素化を図ることができる。また、コアが周方向に一体的に形成される場合に比べて、コイルエンド部の形状に制約が生じることを抑制することもできる。
上記の各構成の回転電機の製造方法において、前記渡り部により接続される一対の前記コイル辺部のうち、前記周方向の一方側である周第一方向側の前記コイル辺部が第一コイル辺部であり、前記周第一方向とは反対側である周第二方向側の前記コイル辺部が第二コイル辺部であり、前記第一コイル辺部が配置される前記スロットの前記周第二方向側を向く側面部における、前記設定位置に配置された前記第一コイル辺部と前記周方向に対向する部分と、前記第二コイル辺部が配置される前記スロットの前記周第一方向側を向く側面部における、前記設定位置に配置された前記第二コイル辺部と前記周方向に対向する部分との間隔を第一基準スロット間隔として、前記変形工程では、前記第一コイル辺部の前記周第一方向側を向く側面部と、前記第二コイル辺部の前記周第二方向側を向く側面部との間隔が、前記第一基準スロット間隔よりも大きくなるように成形された前記コイルを用いる構成とすると好適である。
この構成によれば、渡り部を変形させるための外力(荷重)を取り除いた際に、渡り部に発生する復元力によって、第一コイル辺部がスロットの周第二方向側を向く側面部に当接すると共に、第二コイル辺部がスロットの周第一方向側を向く側面部に当接する構成とすることができる。また、上記の構成によれば、例えば、変形工程で用いるコイルとして、成形荷重の比較的小さい形状(例えば、屈曲部の曲率半径の比較的大きい形状)のコイルを用いることが可能となる。この場合、変形工程で用いるコイルの成形時に絶縁皮膜に加わるストレスを抑制して、コイルの電気的絶縁性を適切に確保することが容易となる。
上記の各構成の回転電機の製造方法において、前記渡り部により接続される一対の前記コイル辺部のうち、前記周方向の一方側である周第一方向側の前記コイル辺部が第一コイル辺部であり、前記周第一方向とは反対側である周第二方向側の前記コイル辺部が第二コイル辺部であり、前記第一コイル辺部が配置される前記スロットの前記周第一方向側を向く側面部における、前記設定位置に配置された前記第一コイル辺部と前記周方向に対向する部分と、前記第二コイル辺部が配置される前記スロットの前記周第二方向側を向く側面部における、前記設定位置に配置された前記第二コイル辺部と前記周方向に対向する部分との間隔を第二基準スロット間隔として、前記変形工程では、前記第一コイル辺部の前記周第二方向側を向く側面部と、前記第二コイル辺部の前記周第一方向側を向く側面部との間隔が、前記第二基準スロット間隔よりも小さくなるように成形された前記コイルを用いる構成としても好適である。
この構成によれば、渡り部を変形させるための外力(荷重)を取り除いた際に、渡り部に発生する復元力によって、第一コイル辺部がスロットの周第一方向側を向く側面部に当接すると共に、第二コイル辺部がスロットの周第二方向側を向く側面部に当接する構成とすることができる。また、上記の構成によれば、例えば、渡り部が軸方向に見て周方向に沿って延びる円弧状部分を有する場合に、変形工程を、渡り部を径方向の内側から加圧する構成とすることが可能となる。この場合、例えば、上記のように巻装工程が複数のコア片を径方向の内側へ向けて移動させる工程を含む場合に、当該巻装工程の簡素化を図ることが可能となる。
本発明に係る回転電機の製造方法の実施形態について、図面を参照して説明する。ここでは、本発明に係る回転電機の製造方法を、インナロータ型の回転電機100(図1参照)の製造方法に適用した場合を例として説明する。本実施形態では、回転電機100は回転界磁型の回転電機であり、コイル3の巻装対象のコアは、ステータ1のコア(ステータコア2)である。すなわち、本実施形態では、ステータコア2が本発明における「コア」に相当する。本明細書では、「回転電機」は、モータ(電動機)、ジェネレータ(発電機)、及び必要に応じてモータ及びジェネレータの双方の機能を果たすモータ・ジェネレータのいずれをも含む概念として用いている。
以下の説明では、特に区別して明記している場合を除き、「軸方向L」、「周方向C」、及び「径方向R」は、円筒状のコア基準面S(図1参照)を基準として定義している。「周第一方向C1」は、周方向Cにおける一方側へ向かう方向を表し、「周第二方向C2」は、周方向Cにおける他方側へ向かう方向(周第一方向C1とは反対方向)を表す。また、以下の説明では、コイル3がステータコア2に巻装された状態(図1、図9参照)を想定して、ステータコア2に巻装される前の状態のコイル3の説明においても、軸方向L、周方向C、及び径方向Rの各方向を用いて説明する。本明細書では、寸法、配置方向、配置位置等に関する用語は、誤差(製造上許容され得る程度の誤差)による差異を有する状態も含む概念として用いている。
1.回転電機の全体構成
回転電機100は、図1に示すように、ステータ1を備えている。ステータ1は、ステータコア2と、ステータコア2に巻装されるコイル3とを備える。ステータ1は、電機子として機能する。ステータコア2の径方向Rの内側には、永久磁石や電磁石等を備える界磁としてのロータ(図示せず)が配置され、ステータ1から発生する回転磁界によりロータが回転する。本実施形態では、回転電機100は、三相交流(多相交流の一例)で駆動される回転電機であり、U相コイル、V相コイル、及びW相コイルの3つの相コイルを備えたコイル3が、ステータコア2に巻装される。
回転電機100は、図1に示すように、ステータ1を備えている。ステータ1は、ステータコア2と、ステータコア2に巻装されるコイル3とを備える。ステータ1は、電機子として機能する。ステータコア2の径方向Rの内側には、永久磁石や電磁石等を備える界磁としてのロータ(図示せず)が配置され、ステータ1から発生する回転磁界によりロータが回転する。本実施形態では、回転電機100は、三相交流(多相交流の一例)で駆動される回転電機であり、U相コイル、V相コイル、及びW相コイルの3つの相コイルを備えたコイル3が、ステータコア2に巻装される。
ステータコア2には、軸方向L及び径方向Rに延びるスロット40が、周方向Cに複数分散配置されている。複数のスロット40は、周方向Cに沿って一定間隔で配置されている。本実施形態では、毎極毎相あたりのスロット数が“2”であり、ステータコア2には、各相用のスロット40が、2つずつ周方向Cに沿って繰り返し現れるように配置されている。周方向Cに隣接する2つのスロット40の間には、ティース23が形成される。上述した「円筒状のコア基準面」は、スロット40の配置や構成に関して基準となる仮想面であり、本実施形態では、図1に示すように、複数のティース23のそれぞれの径方向Rの内側の端面を含む円筒状の仮想面(コア内周面)を、コア基準面Sとしている。ステータコア2の径方向Rの外側の面(コア外周面)等をコア基準面Sとしても良い。
スロット40のそれぞれは、ステータコア2を軸方向Lに貫通するように形成されている。スロット40のそれぞれは、径方向Rの内側に向けて開口する開口部40aを有する。本実施形態では、スロット40のそれぞれは、周方向Cの中央部を結ぶ仮想線(すなわち、幅方向中心線)が径方向Rに平行に延びるように形成されている。また、本実施形態では、スロット40のそれぞれはオープンスロットであり、ティース23の径方向Rの内側の端部には、セミオープンスロットの場合に備えられるような周方向Cに突出する突出部は形成されていない。すなわち、スロット40の周方向Cの両側の側面部50(周方向Cに対向する2つの側面部50)は、径方向Rの内側の端部まで連続する平面となるように形成されている。ここで、図4に示すように、周方向Cの両側の側面部50のうち、周第一方向C1側の側面部50(すなわち、周第二方向C2側を向く側面部50)を第一側面部51とし、周第二方向C2側の側面部50(すなわち、周第一方向C1側を向く側面部50)を第二側面部52とする。本実施形態では、スロット40の周方向Cの幅は、径方向Rに沿って均一に形成されている。すなわち、本実施形態では、スロット40は平行スロットであり、スロット40の両側の側面部50は、互いに平行に形成されている。すなわち、スロット40は、軸方向Lに見て長方形状に形成されている。
本実施形態では、ステータコア2は、複数のコア片20を周方向Cに沿って環状に配列して構成される。コア片20のそれぞれは、周方向Cに延びる本体部20a(ヨーク部)と、本体部20aから径方向Rの内側に延びるティース23とを備える。本体部20aの周方向Cの両側の側面部が、隣接するコア片20との接合面21とされる。本例では、接合面21には、隣接するコア片20同士を位置決めするための嵌合部20bが形成されている。本実施形態では、接合面21は、スロット40に対応する周方向Cの位置(ここではスロット40の周方向Cの中央部)に形成されている。環状に配置された複数のコア片20は、例えば、径方向Rの外側の面(外周面)に嵌合された円筒状の固定部材を用いて、互いに移動不能に固定される。コア片20は、例えば、複数枚の磁性体板(例えば、ケイ素鋼板等の電磁鋼板)を積層して構成され、或いは、磁性材料の粉体を加圧成形してなる圧粉材を主な構成要素として構成される。
本実施形態では、複数のコア片20は、互いに同じ形状を有している。また、本実施形態では、コア片20のそれぞれは、2つのティース23を備えている。ステータ1を製造する際には、後述するように、ステータコア2に巻装された状態と同じ円筒状に形成されたコイル3に対して、複数のコア片20を径方向Rの外側から挿入する。この際、1つのコア片20の2つのティース23の間に形成されるスロット40を含む全てのスロット40が平行スロットであるため、コイル3に対して径方向Rの外側から容易にコア片20を装着することができる。
コイル3は、図1及び図2に示すように、延在方向に直交する断面である直交断面の形状が矩形状の線状導体34を用いて構成される。すなわち、コイル3は、平角線を用いて構成される。ここで、「矩形状」には、角部が円弧状の矩形や、内角の大きさと90度との差の絶対値が予め定められた角度(例えば、5度や10度等)未満の矩形を含む。線状導体34は、弾性変形に加えて塑性変形が可能な材料を用いて形成されている。また、線状導体34は、導電性を有する材料(例えば、銅やアルミニウム等の金属)を用いて形成され、線状導体34の表面は、他の導体との接続部等の一部を除いて、樹脂(例えばエナメル等)等からなる絶縁皮膜により被覆されている。すなわち、線状導体34は、絶縁皮膜付平角線であり、本実施形態では、絶縁皮膜は、線状導体34における直交断面の全周に亘って形成されている。
コイル3は、コイル辺部30と渡り部38とを備える。コイル辺部30は、コイル3がステータコア2に巻装された状態で、スロット40の内部に配置される部分である。コイル辺部30は、軸方向Lに沿って(設計上、軸方向Lに平行に)延びるように直線状に形成される。コイル辺部30は、図4に示すように、周第一方向C1側を向く側面部である第一側面部61と、周第二方向C2側を向く側面部である第二側面部62とを備える。渡り部38は、コイル3がステータコア2に巻装された状態で、一対のコイル辺部30をステータコア2の軸方向Lの外側において接続する部分である。渡り部38は、ステータコア2から軸方向Lに突出するコイル3の部分であるコイルエンド部を形成する。図1に示すように、スロット40の内部には、複数のコイル辺部30が配置される。コイル辺部30のそれぞれには、スロット40内における配置位置が予め設定位置として設定されている。本実施形態では、スロット40の内部には、複数のコイル辺部30が一列に並んで径方向Rに沿って整列配置される。すなわち、1つのコイル辺部30の径方向Rの配置領域を1層とすると、各スロット40には、複数のコイル辺部30が複数の層(本例では10層)に分かれて配置される。このように、本実施形態では、コイル辺部30のそれぞれには、層の位置(層の番号)が設定位置として予め設定される。
本実施形態では、コイル3は、複数のコイルユニット10(図2、図3参照)を用いて形成される。コイルユニット10のそれぞれは、周第一方向C1側に配置される第一コイル辺部31と、周第二方向C2側に配置される第二コイル辺部32とを、コイル辺部30として備える。本実施形態では、コイルユニット10のそれぞれは、複数の第一コイル辺部31と複数の第二コイル辺部32とを備える。具体的には、本実施形態では、コイルユニット10は、一対のスロット40間に複数回巻回される単コイル部(重ね巻部)である。コイルユニット10は、ステータコア2に巻装される前に螺旋状に成形されるカセットコイルである。すなわち、本実施形態では、コイル3は重ね巻によりステータコア2に巻装される。図2に示す例では、コイルユニット10は、1本の線状導体34を螺旋状に複数回巻回して形成されている。
コイルユニット10は、線状導体34の延在方向の両端部のそれぞれに、言い換えれば、電流の流れ方向の両端部のそれぞれに、接続部39を備える。本実施形態では、接続部39は、延在方向を周方向Cの一方側に屈曲する周方向屈曲部や、延在方向を径方向Rの内側に屈曲する径方向屈曲部を備えるが、図2では簡略化のため、接続部39の形状を軸方向Lに沿った直線状としている。上記の径方向屈曲部を備えることで、図9に示すように、接続部39の先端側部分は径方向Rに沿って延びるように形成される。接続部39は、他のコイルユニット10の接続部39と接合されて渡り部38を共に構成し、或いは、電源端子や中性点等に接続される。以下の説明では、特に断らない限り、渡り部38は、1つのコイルユニット10に含まれる渡り部38を指し、異なるコイルユニット10の接続部39同士を接合して構成される渡り部38は含まないものとする。
コイル3を構成する複数のコイルユニット10は、周方向Cの配設位置を除き、本例では更に接続部39の形状を除き、互いに同様に構成されている。本実施形態では、1つのコイルユニット10の第一コイル辺部31と第二コイル辺部32とは、図4に示すように、スロット40の配設ピッチの6倍だけ離間して配置された一対のスロット40に分かれて配置される。第一コイル辺部31及び第二コイル辺部32のそれぞれは、径方向Rに隣接する2つのコイル辺部30の間に1層分の隙間Gが形成されるように、径方向Rに沿って間隔をあけながら一列に並んで配置される。具体的には、スロット40内の最も径方向Rの内側の層を第一層とし、そこから径方向Rの外側に向かって順に、第二層、第三層、・・・、第十層とすると、第一コイル辺部31は偶数番目の層に配置され、第二コイル辺部32は奇数番目の層に配置されている。そして、スロット40と同数のコイルユニット10を周方向Cの一方側にスロット40の配設ピッチ分ずつずらしながら配置することで、コイル3が構成される。各スロット40には、スロット40の配設ピッチの6倍だけ離間して配置された2つのコイルユニット10の一方の第一コイル辺部31と他方の第二コイル辺部32とが、1つずつ径方向Rに沿って交互に配置される。
本実施形態では、渡り部38は、互いに異なるスロット40内の互いに隣接する層にそれぞれ配置された一対のコイル辺部30同士を接続する。そのため、渡り部38には、図2及び図3に示すように、線状導体34を径方向Rに1層分オフセットさせるオフセット部37が形成されている。本例では、図2に示すように、オフセット部37は、渡り部38におけるステータコア2から軸方向Lに最も離れる部位(頂部)に形成されている。また、渡り部38におけるオフセット部37を除く部分(具体的には、渡り部38におけるオフセット部37よりも周第一方向C1側の部分、及び渡り部38におけるオフセット部37よりも周第二方向C2側の部分)は、軸方向Lに見て、周方向Cに沿って延びる円弧状に形成されている。これにより、異なるコイルユニット10の渡り部38同士を互いに干渉させることなく、スロット40の配設ピッチ毎に複数のコイルユニット10を配置することが可能となっている。
2.回転電機の製造方法
次に、本実施形態に係る回転電機100の製造方法について説明する。図10に示すように、回転電機100を製造する工程には、ステータ1を製造する工程(P1〜P5)が含まれ、具体的には、準備工程P1、配置工程P2、加圧工程P3、巻装工程P4、及び加圧解除工程P5が含まれる。本実施形態では、加圧工程P3が本発明における「変形工程」に相当し、加圧解除工程P5が本発明における「変形解除工程」に相当する。
次に、本実施形態に係る回転電機100の製造方法について説明する。図10に示すように、回転電機100を製造する工程には、ステータ1を製造する工程(P1〜P5)が含まれ、具体的には、準備工程P1、配置工程P2、加圧工程P3、巻装工程P4、及び加圧解除工程P5が含まれる。本実施形態では、加圧工程P3が本発明における「変形工程」に相当し、加圧解除工程P5が本発明における「変形解除工程」に相当する。
準備工程P1は、巻回軸周りの螺旋状に線状導体34を巻回して形成された環状コイルを、コイルユニット10(図2参照)として用意する工程である。本実施形態では、準備工程P1では、スロット40と同数のコイルユニット10を用意する。準備工程P1では、対象間隔Aが基準間隔Bとは異なるように成形されたコイルユニット10を用意する。具体的には、対象間隔Aが基準間隔Bよりも大きくなるように成形されたコイルユニット10を用意する。ここで、対象間隔Aとは、図2に示すように、渡り部38により接続される一対のコイル辺部30同士の間隔(第一コイル辺部31と第二コイル辺部32との間隔)であり、基準間隔Bとは、図4に示すように、当該一対のコイル辺部30における、コイル3がステータコア2に巻装された状態での対象間隔Aである。図2及び図4では、簡略化のため、第二層に配置される第一コイル辺部31と第一層に配置される第二コイル辺部32とについての対象間隔A及び基準間隔Bのみを示しているが、対象間隔A及び基準間隔Bのそれぞれは、渡り部38により接続される一対のコイル辺部30の組み合わせの全てについて、個別に定義される。
以下では、第二層に配置される第一コイル辺部31と第一層に配置される第二コイル辺部32とを接続する渡り部38に着目して、当該渡り部38並びにそれによって接続される第一コイル辺部31及び第二コイル辺部32の構成について、具体的に説明する。すなわち、以下では、第二層に配置される第一コイル辺部31について単に第一コイル辺部31と記載し、第一層に配置される第二コイル辺部32について単に第二コイル辺部32と記載し、これらの第一コイル辺部31及び第二コイル辺部32を単に一対のコイル辺部30と記載し、これらの第一コイル辺部31及び第二コイル辺部32を接続する渡り部38について単に渡り部38と記載する場合がある。他の渡り部38及びそれによって接続される一対のコイル辺部30については、対象間隔A等の間隔の大きさが異なる点を除いて同様であるため、具体的な説明は省略する。
本実施形態では、対象間隔Aを、渡り部38により接続される第一コイル辺部31と第二コイル辺部32との間の距離(直線距離、以下同様)、具体的には、第一コイル辺部31の中心線30aと、第二コイル辺部32の中心線30aとの間の距離としている。ここで、中心線30aとは、コイル辺部30の直交断面における中心又は重心を延在方向に沿って連続的に結んだ線である。なお、対象間隔Aを、軸方向Lに直交する断面(例えば、軸方向Lの中央部における軸方向Lに直交する断面、以下同様)における第一コイル辺部31と第二コイル辺部32との間の距離(例えば、直交断面における中心間又は重心間の距離)とすることも可能である。
本実施形態では、対象間隔Aが基準間隔Bよりも大きくなるように成形されたコイルユニット10として、図6に示すようなコイルユニット10を用いている。このコイルユニット10は、渡り部38により接続される第一コイル辺部31と第二コイル辺部32とについて、第一コイル辺部31の第一側面部61と第二コイル辺部32の第二側面部62との間隔が、第一基準スロット間隔D1よりも大きくなるように成形されたコイルユニットである。ここで、第一基準スロット間隔D1は、第一コイル辺部31が配置されるスロット40の第一側面部51における、設定位置に配置された第一コイル辺部31と周方向Cに対向する部分(以下、「第一部分」とする。)と、第二コイル辺部32が配置されるスロット40の第二側面部52における、設定位置に配置された第二コイル辺部32と周方向Cに対向する部分(以下、「第二部分」とする。)との間隔である。第一基準スロット間隔D1は、渡り部38により接続される一対のコイル辺部30の組み合わせの全てについて、個別に定義される。なお、設定位置は、上述したように、本実施形態では層の位置である。図6では、発明の理解を容易にすべく、スロット40内の設定位置に配置された状態のコイルユニット10(破線)及びステータコア2(二点鎖線)に重ねるように、対象間隔Aが基準間隔Bよりも大きくなるように成形されたコイルユニット10(実線)を示している。この際、対応するコイル辺部30同士が径方向Rの同じ位置に配置されるように重ねている。
本実施形態では、第一コイル辺部31の第一側面部61と第二コイル辺部32の第二側面部62との間隔を、第一コイル辺部31の第一側面部61と第二コイル辺部32の第二側面部62との間の距離、具体的には、当該第一側面部61における径方向Rの中央部を結ぶ仮想線と、当該第二側面部62における径方向Rの中央部を結ぶ仮想線との間の距離としている。なお、この間隔を、軸方向Lに直交する断面における第一コイル辺部31の第一側面部61と第二コイル辺部32の第二側面部62との間の距離(例えば、径方向Rの中央部同士の距離)とすることも可能である。また、本実施形態では、第一基準スロット間隔D1を、上記第一部分と上記第二部分との間の距離、具体的には、第一部分における径方向Rの中央部を結ぶ仮想線と、第二部分における径方向Rの中央部を結ぶ仮想線との間の距離としている。なお、第一基準スロット間隔D1を、軸方向Lに直交する断面における第一部分と第二部分との間の距離(例えば、径方向Rの中央部同士の距離)とすることも可能である。
上述したように、本実施形態では、渡り部38におけるオフセット部37を除く部分は、軸方向Lに見て、周方向Cに沿って延びる円弧状に形成されている。そして、本実施形態では、この円弧の径が、コイル3がステータコア2に巻装された状態での径よりも大きくなるようにコイルユニット10を成形することで、図6に示すように、第一コイル辺部31の第一側面部61と第二コイル辺部32の第二側面部62との間隔を、第一基準スロット間隔D1よりも大きくしている。
配置工程P2は、図5に示すように、複数のコイルユニット10を周方向Cに沿って環状に配置する工程である。本実施形態では、上記のように、渡り部38における軸方向Lに見て円弧状の部分の径が、コイル3がステータコア2に巻装された状態での径よりも大きくなるようにコイルユニット10を成形しており、配置工程P2では、ステータコア2に巻装された状態で複数のコイルユニット10が配置される円筒状の領域(図9参照)よりも大径の円筒状の領域に、複数のコイルユニット10を配置する。この際、複数のコイルユニット10は、加圧工程P3の実行後に当該複数のコイルユニット10がステータコア2に巻装された状態と同じ相互位置関係で配置されるように、配置される。
加圧工程P3は、対象間隔Aが基準間隔Bとは異なるように成形されたコイル3(ここでは、図6に示すコイルユニット10)を用い、対象間隔Aが基準間隔Bに合うように渡り部38を外力により変形させる工程である。ここで、対象間隔Aが基準間隔Bに合うとは、一対のコイル辺部30同士の間隔が、一対のコイル辺部30のそれぞれをスロット40に挿入可能な間隔であることを意味し、対象間隔Aと基準間隔Bとが一致する場合に加えて、対象間隔Aと基準間隔Bとがずれている場合を含む概念である。本実施形態では、上記のように、対象間隔Aが基準間隔Bよりも大きくなるように成形されたコイルユニット10を用いるため、加圧工程P3では、対象間隔Aが減少するように、具体的には、図6に矢印で示すように渡り部38により接続される第一コイル辺部31と第二コイル辺部32との間隔が減少するように、渡り部38を変形させる。本実施形態では、渡り部38における上記の円弧状部分の径が小さくなるように渡り部38を変形させることで、対象間隔Aが基準間隔Bと合うまで、渡り部38により接続される第一コイル辺部31と第二コイル辺部32との間隔を減少させる。
本実施形態では、加圧工程P3では、配置工程P2により軸方向Lを軸心とする円筒状に配置されたコイル3(本例では複数のコイルユニット10)を全周に亘って径方向Rに加圧して、周方向Cに分散配置された複数の渡り部38を変形させる。本実施形態では、図7に示すように、加圧工程P3における加圧方向は径方向Rの内側に向かう方向であり、加圧工程P3における加圧部分は軸方向Lの両側の渡り部38である。加圧工程P3では、複数のコイルユニット10が配置される円筒状の領域を、ステータコア2に巻装された状態と同様の領域まで縮径させる。この状態で、複数のコイルユニット10のそれぞれは、ステータコア2に巻装された状態と同じ相互位置関係で配置される。図7では、円弧状の内周面を有する加圧治具90を用いて加圧工程P3を実行する場合を例示している。すなわち、本例では、渡り部38を変形させるための外力は、加圧治具90によって渡り部38に付与される押圧力である。加圧治具90は、軸方向Lの両側に分かれて配置され、軸方向Lの両側の加圧治具90の間には、コア片20を径方向Rに移動可能な空間が形成される。
巻装工程P4は、加圧工程P3により渡り部38を変形させた状態を保持したまま、渡り部38により接続される一対のコイル辺部30のそれぞれが互いに異なるスロット40内の予め定められた設定位置(本例では予め定められた層)に配置されるように、コイル3をステータコア2に巻装する工程である。すなわち、巻装工程P4の実行時には、渡り部38を変形させるための外力が渡り部38に付与された状態が維持される。本実施形態では、図8に示すように、巻装工程P4では、コア片20を複数用い、コイル3に対して径方向Rの外側であってコイル辺部30と軸方向Lの同じ位置に配置された複数のコア片20を径方向Rの内側へ向けて移動させて、コイル辺部30のそれぞれをスロット40内の設定位置に配置する。本実施形態では、複数のコイルユニット10が配置される円筒状の配置領域の外周に沿って複数のコア片20を配置した後、当該複数のコア片20の夫々の径方向Rの位置を合わせながら複数のコア片20の全てを径方向Rの内側へ向けて移動させて、コイル辺部30のそれぞれをスロット40内に配置する。この際、加圧工程P3により渡り部38を変形させた状態が保持されているため、すなわち、対象間隔Aが基準間隔Bに合う状態が保持されているため、コア片20を径方向Rの内側に移動させることで、コイル辺部30を容易にスロット40に挿入することができる。
加圧解除工程P5は、図9に示すように、巻装工程P4の実行後に実行される工程であり、渡り部38を変形させるための外力を取り除いて、渡り部38により接続される一対のコイル辺部30のそれぞれを、互いに周方向Cの反対側を向くスロット40の側面部50に当接させる工程である。本実施形態では、コイル3に対する径方向Rの加圧(本例では径方向Rの内側に向かう方向の加圧)を解除することで、渡り部38を変形させるための外力を取り除く。図9に示す例では、加圧治具90を径方向Rの外側に移動させることで、コイル3に対する加圧が解除される場合を例示している。加圧解除工程P5を実行する際には、複数のコア片20は、例えば外周面が保持されること等によって、互いに固定された状態とされる。詳細は省略するが、加圧解除工程P5の実行後に、例えば、装着工程、接合工程、コイル固定工程等を実行することで、ステータ1(回転電機100)が製造される。ここで、装着工程は、環状に配置された複数のコア片20の外周面に円筒状の固定部材を装着(例えば焼き嵌めによる嵌合)させる工程である。接合工程は、異なるコイルユニット10の接続部39同士を接合する工程である。コイル固定工程は、ステータコア2に対してコイル3を固定する工程であり、例えば、ワニスを含浸させるワニス含浸工程や、モールドを充填するモールド充填工程等とされる。
以上のように、加圧工程P3では、対象間隔Aが基準間隔Bに合うように渡り部38を外力により変形させる。この際、渡り部38を含むコイルユニット10を構成する線状導体34は、弾性変形に加えて塑性変形が可能な材料を用いて形成されている。すなわち、渡り部38を変形させる荷重が弾性限界より小さい場合には、渡り部38は弾性変形し、当該荷重が弾性限界よりも大きい場合には、渡り部38は弾性変形に加えて塑性変形する。本実施形態では、コイルユニット10として、渡り部38を弾性変形させることにより対象間隔Aを基準間隔Bに合わせることが可能な形状に成形されたものを用いる。すなわち、本実施形態では、加圧工程P3は、対象間隔Aが基準間隔Bに合うように渡り部38を弾性変形させる工程とされる。また、本実施形態では、上記のように、第一コイル辺部31の第一側面部61と第二コイル辺部32の第二側面部62との間隔が、第一基準スロット間隔D1よりも大きくなるように成形されたコイルユニット10を用いる(図6参照)。そのため、加圧解除工程P5によりコイル3に対する加圧を解除した際には、渡り部38に発生する復元力によって、第一コイル辺部31をスロット40の第一側面部51に当接させると共に、第二コイル辺部32をスロット40の第二側面部52に当接させることができる。この際、第一コイル辺部31及び第二コイル辺部32のそれぞれは、渡り部38に発生する復元力に応じた力によって側面部50に押し付けられるため、第一コイル辺部31と第一側面部51との間に発生する摩擦力と、第二コイル辺部32と第二側面部52との間に発生する摩擦力を利用して、コイルユニット10のステータコア2に対する位置を保持することが可能となる。
このように、本実施形態では、コイルユニット10として、対象間隔Aを基準間隔Bに合わせるように渡り部38を変形させるための外力(荷重)を取り除いた後に、当該渡り部38に発生する復元力によって、第一コイル辺部31及び第二コイル辺部32のそれぞれを、互いに周方向Cの反対側を向く側面部50に当接させることが可能なコイルユニットを用いている。また、本実施形態では、加圧解除工程P5の実行後の状態において、第一コイル辺部31はスロット40の第一側面部51に当接するように配置され、第二コイル辺部32はスロット40の第二側面部52に当接するように配置される。そのため、1つのスロット40には、第一側面部51に当接するコイル辺部30と、第二側面部52に当接するコイル辺部30とが、1つずつ径方向Rに沿って交互に配置される。
なお、コイルユニット10として、渡り部38を塑性変形させることにより対象間隔Aを基準間隔Bに合わせることが可能な形状に成形されたものを用いることも可能である。この場合、加圧工程P3は、対象間隔Aが基準間隔Bに合うように、渡り部38を弾性変形に加えて塑性変形させる工程とされる。この場合であっても、加圧解除工程P5によりコイル3に対する加圧を解除した際に、弾性変形分に応じた復元力(スプリングバックによる復元力)が渡り部38に発生する。そのため、この場合においても、渡り部38に発生する復元力によって、第一コイル辺部31をスロット40の第一側面部51に当接させると共に、第二コイル辺部32をスロット40の第二側面部52に当接させることが可能となる。但し、この場合には、第一コイル辺部31の第一側面部61と第二コイル辺部32の第二側面部62との間隔と、第一基準スロット間隔D1との差を、弾性変形分に応じた復元力によって第一コイル辺部31及び第二コイル辺部32のそれぞれを側面部50に当接させることが可能な大きさに設定する必要がある。
3.その他の実施形態
最後に、本発明に係るその他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。
最後に、本発明に係るその他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。
(1)上記の実施形態では、加圧工程P3では、対象間隔Aが基準間隔Bよりも大きくなるように成形されたコイルユニット10を用いる構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、加圧工程P3において、対象間隔Aが基準間隔Bよりも小さくなるように成形されたコイルユニット10を用いる構成とすることも可能である。すなわち、準備工程P1において、対象間隔Aが基準間隔Bよりも小さくなるように成形されたコイルユニット10を用意する構成とすることが可能である。この場合、例えば図11に示すようなコイルユニット10を用いることができる。図11に示すコイルユニット10は、渡り部38により接続される第一コイル辺部31と第二コイル辺部32とについて、第一コイル辺部31の第二側面部62と第二コイル辺部32の第一側面部61との間隔が、第二基準スロット間隔D2よりも小さくなるように成形されたコイルユニットである。ここで、第二基準スロット間隔D2は、第一コイル辺部31が配置されるスロット40の第二側面部52における、設定位置に配置された第一コイル辺部31と周方向Cに対向する部分と、第二コイル辺部32が配置されるスロット40の第一側面部51における、設定位置に配置された第二コイル辺部32と周方向Cに対向する部分との間隔である。
このように、対象間隔Aが基準間隔Bよりも小さくなるように成形されたコイルユニット10を用いる場合には、加圧解除工程P5によりコイル3に対する加圧を解除した際に、渡り部38に発生する復元力によって、第一コイル辺部31がスロット40の第二側面部52に当接すると共に、第二コイル辺部32がスロット40の第一側面部51に当接する構成とすることができる。また、この場合、加圧工程P3における加圧方向を、上記実施形態とは異なり、径方向Rの外側に向かう方向とし、加圧工程P3では、複数のコイルユニット10が配置される円筒状の領域を、ステータコア2に巻装された状態と同様の領域まで拡径させる構成とすることもできる。
(2)上記の実施形態では、対象間隔Aが、渡り部38により接続される第一コイル辺部31と第二コイル辺部32との間の距離(直線距離)である構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。例えば、渡り部38により接続される第一コイル辺部31と第二コイル辺部32とのそれぞれを、ステータコア2に巻装された状態と径方向Rの同じ位置に配置した場合(図6参照)における、第一コイル辺部31と第二コイル辺部32との周方向Cの位置の差(角度差)を、対象間隔Aとすることも可能である。上述した、第一コイル辺部31の第一側面部61と第二コイル辺部32の第二側面部62との間隔、第一コイル辺部31の第二側面部62と第二コイル辺部32の第一側面部61との間隔、第一基準スロット間隔D1、及び第二基準スロット間隔D2のそれぞれについても同様に、周方向Cの位置の差(角度差)とすることが可能である。
(3)上記の実施形態では、巻装工程P4では、コア片20を複数用い、コイル3に対して径方向Rの外側に配置された複数のコア片20を径方向Rの内側へ向けて移動させて、コイル辺部30のそれぞれをスロット40内の設定位置に配置する構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。例えば、ステータコア2に巻装された状態と同じ円筒状に形成されたコイル3を、ステータコア2に対して軸方向Lに挿入することで、コイル辺部30のそれぞれをスロット40内の設定位置に配置する構成とすることも可能である。この場合、上記の実施形態とは異なり、ステータコア2が周方向Cにおいて一体的に形成された構成とすることも可能である。
(4)上記の実施形態では、加圧工程P3において、渡り部38における軸方向Lに見て円弧状の部分の径が変化するように渡り部38を変形させることで、対象間隔Aを基準間隔Bに合わせる構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。例えば、渡り部38における頂部の径方向R視での屈曲角が変化するように渡り部38を変形させることで、対象間隔Aを基準間隔Bに合わせる構成とすることもできる。
(5)上記の実施形態では、コイル3が重ね巻によりステータコア2に巻装される構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。例えば、コイル3が波巻によりステータコア2に巻装される構成とすることも可能である。この場合、軸方向Lの一方側の渡り部38により接続される一対のコイル辺部30については、対象間隔Aが基準間隔Bよりも大きくなるように成形され、軸方向Lの他方側の渡り部38により接続される一対のコイル辺部30については、対象間隔Aが基準間隔Bよりも小さくなるように成形された波巻状のコイル3を、加圧工程P3で用いる構成とすることができる。
(6)上記の実施形態では、スロット40が平行スロットである構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。例えば、スロット40の一部又は全部が、径方向Rの内側に向かうに従って周方向Cの幅が小さくなるように形成される構成とすることもできる。この場合、ティース23の周方向Cの両側の側面部(周方向Cの互いに反対側を向く2つの側面部)が互いに平行に形成される構成、すなわち、ティース23が平行ティースである構成とすることもできる。このようにスロット40の周方向Cの幅が径方向Rの位置に応じて異なる場合には、例えば、スロット40に配置される複数のコイル辺部30のそれぞれの直交断面の形状を、コイル辺部30のそれぞれが配置される径方向Rの位置に応じて互いに異ならせる構成とすると好適である。
(7)上記の実施形態では、コイル3を構成する線状導体34の直交断面の形状が矩形状である構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。例えば、直交断面の形状が正方形状又は円形状の線状導体34を用いてコイル3が構成されても良い。
(8)その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、本願の特許請求の範囲に記載されていない構成に関しては、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
本発明は、円筒状のコア基準面の軸方向及び径方向に延びるスロットが、コア基準面の周方向に複数分散配置されているコアと、当該コアに巻装された状態でスロット内に配置されるコイル辺部及び一対のコイル辺部をコアの軸方向の外側において接続する渡り部を有するコイルと、を備えた回転電機の製造方法に利用することができる。
2:ステータコア(コア)
3:コイル
20:コア片
23:ティース
30:コイル辺部
31:第一コイル辺部
32:第二コイル辺部
38:渡り部
40:スロット
50:側面部
100:回転電機
A:対象間隔
B:基準間隔
C:周方向
C1:周第一方向
C2:周第二方向
D1:第一基準スロット間隔
D2:第二基準スロット間隔
L:軸方向
P3:加圧工程(変形工程)
P4:巻装工程
P5:加圧解除工程(変形解除工程)
R:径方向
S:コア基準面
3:コイル
20:コア片
23:ティース
30:コイル辺部
31:第一コイル辺部
32:第二コイル辺部
38:渡り部
40:スロット
50:側面部
100:回転電機
A:対象間隔
B:基準間隔
C:周方向
C1:周第一方向
C2:周第二方向
D1:第一基準スロット間隔
D2:第二基準スロット間隔
L:軸方向
P3:加圧工程(変形工程)
P4:巻装工程
P5:加圧解除工程(変形解除工程)
R:径方向
S:コア基準面
Claims (5)
- 円筒状のコア基準面の軸方向及び径方向に延びるスロットが、前記コア基準面の周方向に複数分散配置されているコアと、当該コアに巻装された状態で前記スロット内に配置されるコイル辺部及び一対の前記コイル辺部を前記コアの前記軸方向の外側において接続する渡り部を有するコイルと、を備えた回転電機の製造方法であって、
前記渡り部により接続される一対の前記コイル辺部同士の間隔を対象間隔とし、当該一対のコイル辺部における、前記コイルが前記コアに巻装された状態での前記対象間隔を基準間隔として、
前記対象間隔が前記基準間隔とは異なるように成形された前記コイルを用い、前記対象間隔が前記基準間隔に合うように前記渡り部を外力により変形させる変形工程と、
前記変形工程により前記渡り部を変形させた状態を保持したまま、前記渡り部により接続される一対の前記コイル辺部のそれぞれが互いに異なる前記スロット内の予め定められた設定位置に配置されるように、前記コイルを前記コアに巻装する巻装工程と、
前記巻装工程の実行後に、前記外力を取り除いて、前記渡り部により接続される一対の前記コイル辺部のそれぞれを、互いに前記周方向の反対側を向く前記スロットの側面部に当接させる変形解除工程と、を備える回転電機の製造方法。 - 前記変形工程では、前記軸方向を軸心とする円筒状に配置された前記コイルを全周に亘って前記径方向に加圧して、前記周方向に分散配置された複数の前記渡り部を変形させる請求項1に記載の回転電機の製造方法。
- 前記巻装工程では、隣接する前記スロット間に形成されるティースを有するコア片を複数用い、前記コイルに対して前記径方向の外側に配置された複数の前記コア片を前記径方向の内側へ向けて移動させて、前記コイル辺部のそれぞれを前記設定位置に配置する請求項2に記載の回転電機の製造方法。
- 前記渡り部により接続される一対の前記コイル辺部のうち、前記周方向の一方側である周第一方向側の前記コイル辺部が第一コイル辺部であり、前記周第一方向とは反対側である周第二方向側の前記コイル辺部が第二コイル辺部であり、
前記第一コイル辺部が配置される前記スロットの前記周第二方向側を向く側面部における、前記設定位置に配置された前記第一コイル辺部と前記周方向に対向する部分と、前記第二コイル辺部が配置される前記スロットの前記周第一方向側を向く側面部における、前記設定位置に配置された前記第二コイル辺部と前記周方向に対向する部分との間隔を第一基準スロット間隔として、
前記変形工程では、前記第一コイル辺部の前記周第一方向側を向く側面部と、前記第二コイル辺部の前記周第二方向側を向く側面部との間隔が、前記第一基準スロット間隔よりも大きくなるように成形された前記コイルを用いる請求項1から3のいずれか一項に記載の回転電機の製造方法。 - 前記渡り部により接続される一対の前記コイル辺部のうち、前記周方向の一方側である周第一方向側の前記コイル辺部が第一コイル辺部であり、前記周第一方向とは反対側である周第二方向側の前記コイル辺部が第二コイル辺部であり、
前記第一コイル辺部が配置される前記スロットの前記周第一方向側を向く側面部における、前記設定位置に配置された前記第一コイル辺部と前記周方向に対向する部分と、前記第二コイル辺部が配置される前記スロットの前記周第二方向側を向く側面部における、前記設定位置に配置された前記第二コイル辺部と前記周方向に対向する部分との間隔を第二基準スロット間隔として、
前記変形工程では、前記第一コイル辺部の前記周第二方向側を向く側面部と、前記第二コイル辺部の前記周第一方向側を向く側面部との間隔が、前記第二基準スロット間隔よりも小さくなるように成形された前記コイルを用いる請求項1から3のいずれか一項に記載の回転電機の製造方法。
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