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JP2015019607A - マウス大腸癌Colon26に特異的に結合する核酸 - Google Patents

マウス大腸癌Colon26に特異的に結合する核酸 Download PDF

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Abstract

【課題】マウス大腸癌Colon26の転移研究、治療等に有用な新規DNAアプタマーの提供。
【解決手段】特定の配列で示されるヌクレオチド配列から選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列を有し、マウス大腸癌細胞に対して特異的に結合するDNAアプタマー。DNAアプタマーを含む、マウス大腸癌細胞の検出用組成物、検出用キット。DNAアプタマーを用いるマウス大腸癌検出方法。DNAアプタマーを含有する、マウス大腸癌の転移研究又は治療用医薬組成物。前記医薬組成物の製造のためのDNAアプタマーの使用。DNAアプタマーを含有するマウス大腸癌の転移研究又は治療用ドラッグデリバリーシステム。前記マウス大腸癌細胞がColon26細胞であり、前記DNAアプタマーが、糖鎖部分がリン酸エステル部分及び核酸塩基部分のいずれかの部分での化学的置換からなる化学修飾を少なくも1つしており、5’末端又は3’末端に蛍光色素を有する。
【選択図】図1

Description

本発明は、マウス大腸癌(Colon26)細胞に対して特異的に結合し得る核酸、及び該核酸を含む組成物を提供することを課題とする。
大腸癌は、近年日本人の発症傾向増加が顕著に認められる癌としてその診断・治療に関する研究が急がれている。大腸癌2015年には現在羅患数が第一位である肺癌を抜くことが予想されており、特に死亡率において男性では、肺癌、肝臓癌に次いで第3位に、女性では最も多くなると推定されている。この大腸癌においては、癌の転移を抑制することが重要とされ様々な研究が行われている。転移の過程には転移性癌細胞と種々の宿主細胞(血小板、リンパ球、内皮細胞)と細胞外マトリックスや基底膜との相互作用が関与していることが知られている。
肝臓は一般的に消化器系癌の転移、特に大腸癌の血行性転移の標的となる臓器であり、しかも肝転移を伴う大腸癌の予後は極めて悪い(非特許文献1、2、3、4、5)。従って大腸癌の肝転移メカニズムを明らかにすることは、大腸癌における生存率の向上に重要と考えられている。この肝転移の研究を行うにあたり、Fidlerらが開発した肝転移モデルマウスによる実験は癌の転移メカニズムを明確にする上で必要不可欠なものとなっている(非特許文献 6,7)。
これら大腸癌の研究として、In Vitro(試験管内)実験において多く用いられるのがマウス大腸癌(Colon26)細胞であり、またIn Vivo観察においても蛍光染色したColon26細胞の肝臓転移研究が一般的に行われている。この様にマウス大腸癌ではあるがColon26は大腸癌に関する非常に多くの研究に用いられている実験用細胞であり、これらColon26を染色できる試薬は非常に有用である。
Colon26を含む全ての細胞は、その細胞が産生するたんぱく質によりその表面が覆われている。これら発現したたんぱく質に対して特定の配列を有する核酸が吸着することは既に多くの文献に紹介されている。(例えば、特許文献1及び2)これら特定のターゲットに対して特異的に吸着しうる核酸配列はアプタマーと呼ばれている。これらアプタマーは化学合成法による製造が可能であることが特徴である。従って、従来病因たんぱく質と特異的に吸着するものの代表的存在であった抗体のように、生体内で合成する必要がない。これらアプタマーを診断に用いる場合は蛍光標識を行い蛍光顕微鏡での検出が多く用いられている(例えば非特許文献8)。
これらColon26に対して特異的に吸着する新規のアプタマーの探索には試験管内進化法(in vitro selection法)が最も有効な手段として用いられている。特にSELEX(Systematic Evolution of Ligands by Exponential enrichment)法は大きく分けて目的核酸分子の選別と選別されたアプタマーの増幅の2ステップがある。(例えば特許文献3)この選別と増幅を選択圧を高めながら繰り返すことにより、高い親和性を有する核酸断片が得られる。さらに、近年では様々な改良が加えられ、より少ないサイクル回数でアプタマーを回収できる、効率・選択性において優れた手法や、低分子やタンパク質だけでなく細胞や組織(正確には、表面に存在する分子)に結合するアプタマーを得る手法(Cell−SELEX法;例えば、非特許文献9)などが報告されている。この手法は従来のSELEX法に比べ、膜たんぱく質の解析が不要であること、細胞表面に存在する様々な膜たんぱく質のアプタマーを同時に選別できること、さらに、目的細胞とより特異的に結合するアプタマーを選抜できると言った特徴がある。これらアプタマーは従来診断、治療に用いられてきた抗体の特性でもあるターゲットに対する高親和性や特異性は言うまでも無く、化学的に短時間で合成することが可能であり、さらにその分子修飾も安価に行うことができ、作用機序が単純で、免疫原性もほとんどないという、抗体にはない様々な利点がある。
特開2006−149302 特開2011−92138 国際公開WO91/19813
Nicolson G. L., Cancer Res., 47, 1473-1487(1987). Terranova V.P., Hujanen E.S.Martin G. R., J.Natl. Cancer Inst., 77,311-316(1986). Fidler I.J., Cancer Res., 50, 6130-6138(1990). Fidler I.J., Nat. Rev. Cancer, 3, 453-458(2003). Kota Funamoto, Hideaki Ichihara, Taku Matsushita.,YAKUGAKU ZASSHI 129(4), 465-473(2009) Giavazzi R., Jessup J.M.,Campbell D.E., Walker S.M., Fidler I;J. Natl Cancer Inst., 77, 1303-1308(1986). Ishizu K., Sunose N., Yamazaki K., TsuruoT., Sadahiro S., MakuuchiH., Yamori T., Biol. Pharm. Bull., 30, 1779-1783(2007). Yen-An Shieh, Shu-JyuanYang, Ming-Feng Wei and Ming-JiumShieh., ACS NANO., Vol.4, No.3, 1433-1442, 2010. Guo,et al.,Int.J.Mol.Sci.,9(4):668,2008
以上のような背景の下に、本発明は、大腸癌の診断、治療、及び転移予防等の研究に有用なマウス大腸癌(Colon26)に関わる新規DNAアプタマーを提供することを課題とするものである
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討を行った結果、Cell−SELEX法を用いることによってマウス大腸癌Colon26細胞に対して特異的な結合能を有するヌクレオチド配列を特定し、当該特定の配列を有するDNAがマウス大腸癌Colon26細胞に対する特異的アプタマーとして機能し得ることを新規に見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、一つの態様において、
(1)配列番号1〜14で示される配列から選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列を有し、マウス大腸癌細胞に対して特異的に結合することを特徴とするDNAアプタマー;
(2)配列番号1〜14で示される配列から選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列において、1〜3個のヌクレオチドの置換、欠失、又は付加を含む配列を有し、マウス大腸癌細胞に対して特異的に結合することを特徴とするDNAアプタマー;
(3)マウス大腸癌細胞に対して特異的に結合するDNAアプタマーであって、
5’−P−X−P−3’
で表されるヌクレオチド配列を有し、
ここで、Xは、1)配列番号1〜14で示される配列から選択されるヌクレオチド配列、又は2)配列番号1〜14で示される配列から選択されるヌクレオチド配列において1〜3個のヌクレオチドの置換、欠失、又は付加を含む配列であり、
及びPは、PCR増幅のために導入された第1及び第2プライマー認識配列である、
該DNAアプタマー;
(4) Pは、配列番号15で示される第1プライマー認識配列であり、及びPは、配列番号16で示される第2プライマー認識配列である、上記(3)に記載のDNAアプタマー。
(5)前記マウス大腸癌細胞が、Colon26細胞である、上記(1)〜(4)のいずれか1に記載のDNAアプタマー;
(6)糖鎖部分での化学的置換、リン酸エステル部分での化学的置換及び核酸塩基部分での化学的置換から成る群より選択される、少なくとも1つの化学修飾を含む、上記(1)〜(5)のいずれか1に記載のDNAアプタマー;
(7)5’末端又は3’末端に蛍光標識を有する、上記(1)〜(6)のいずれか1に記載のDNAアプタマー;
(8)前記蛍光標識が、グリーンフルオレセントプロテイン(GFP)、蛍光たんぱく質、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、6−カルボキシフルオロセイン−アミノヘキシル、フルオレセイン誘導体、Alexa Fluor 350、Alexa Fluor 405、Alexa Fluor 488、Alexa Fluor 647、Alexa Fluor 750、ローダミン、6−カルボキシテトラメチルローダミン、TAMRA(登録商標)、フィコエリスリン(PE)、フィコシアニン(PC)、PC5、PC7、Cy色素、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7、TexasRed、アロフィコシアニン(APC)、アミノメチルクマリンアセテート(AMCA)、Marina Blue、 Cascade Blue、 Cascade Yellow、 Pacific Blue、 SPRD、 テトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC)、R110、mC1B、CellTracker色素、CFSE、JC−1、PKH、DCFH−DA、DHR、FDA、Calcein AM、ニトロベンゾオキサジアゾール(NBD)基、ジメチルアミノスルホニルベンゾオキサジアゾール基、acridine(Acd)、dansyl(Dns)、7−ジメチルアミノクマリン−4−アセティックアシッド(DMACA)、5−((2−アミノエチル)アミノ)ナフタレン−1−スルホニックアシッド(EDANS)、ナフタレン、アントラセン及びプロトポルフィリン9から選ばれる一種以上を含む発光波長421nmから712nmの有機系蛍光団である上記(7)に記載のDNAアプタマー;
(9)(1)〜(8)のいずれか1に記載のDNAアプタマーが蛍光発光し得る金属ナノ粒子(量子ドット)表面に吸着されているDNAアプタマー;
(10)5‘末端または3’末端に蛍光標識を有する(1)〜(8)のいずれか1に記載のDNAアプタマーがラマン散乱活性を有する金属である金、銀、銅、鉄及び珪素から選ばれる一種以上の粒子に吸着した形態を有する。
別の態様において、本発明は、上記DNAアプタマーによるマウス大腸癌細胞の検出に関し、詳細には、
(11)上記(1)〜(10)のいずれか1に記載のDNAアプタマーを含む、マウス大腸癌細胞の検出用組成物;
(12)上記(1)〜(10)のいずれか1に記載のDNAアプタマーを含む、マウス大腸癌細胞の検出用キット;
(13)上記(1)〜(10)のいずれか1に記載のDNAアプタマーを用いることを特徴とする、マウス大腸癌の検出方法;及び
(14)前記DNAアプタマーをマウス大腸細胞、マウス大腸組織、血液、血清及び、血漿よりなる群から選択されるマウス生体から採取された試料と接触させる工程、及び当該試料とDNAアプタマーとの結合による応答を観測することによってマウス大腸癌細胞の存在を検出する工程を含む、上記(13)に記載の検出方法;
(15)前記応答が、蛍光応答である、上記(14)に記載の検出方法
(16)前記応答が、ラマン散乱応答である上記(14)記載の検出方法
に関する。
更なる態様において、本発明は、上記DNAアプタマーを医薬組成物及びドラッグデリバリーシステムに用いることに関し、詳細には、
(17)上記(1)〜(10)のいずれか1に記載のDNAアプタマーを含有する、マウス大腸癌の転移研究又は治療用医薬組成物;
(18)マウス大腸癌の転移研究又は治療用医薬組成物の製造のための上記(1)〜(10)のいずれか1に記載のDNAアプタマーの使用;
(19)上記(1)〜(10)のいずれか1に記載のDNAアプタマーを含有する、マウス大腸癌細胞の転移研究又は治療用ドラッグデリバリーシステム
に関する。
本発明によれば、マウス大腸癌細胞に対して特異的に結合する新規DNAアプタマーを用いることによって、かかるヒト大腸癌の肝臓転移に関わるモデル研究の効率的な検討が可能となる。特に、蛍光標識等の検出部位を付与したDNAアプタマーを含むキット等に応用することで、マウス生体から採取した細胞や組織を測定対象とする簡便かつハイスループットな蛍光癌転移検出又は蛍光イメージングを行うことができる。また、さらに前記の蛍光標識を施したDNAアプタマーを金属ナノ粒子に固着させた分散液を含むキット等に応用することで、マウス生体から採取した大腸癌細胞や組織を測定対象とする簡便かつハイスループットなラマンによる癌転移検出又はラマン散乱イメージングを行うことができる。そのようなマウス大腸癌細胞の検出によって、癌の発症や転移の有無、癌の予後や悪性度の診断が可能となる。
また、本発明のDNAアプタマーはマウス大腸癌細胞に対して特異的に結合し得るという性質を有することから、上記DNAアプタマーに抗癌剤等の薬物をコンジュゲートさせて用いることによって、当該薬剤をターゲット部位に確実に作用させることが可能となるため、大腸癌の転移研究又は治療用医薬組成物又はかかる医薬組成物のためのドラッグデリバリーシステムとしても有用性が期待できる。
さらに、本発明のDNAアプタマーにおけるコンセンサス配列は、わずか30塩基程度の比較的短い領域であることから、製造のための手間やコストを抑制すること、及び種々の用途に応じて所望の化学修飾や更なる機能の付加を行うことが容易であるという利点も有する。
図1は、磁性粒子を用いた2本鎖DNAの1本鎖化を示す模式図である。 図2は、配列番号1を有するDNAアプタマーによるColon26細胞の実像図である。 図3は、配列番号1を有するDNAアプタマーによるColon26細胞の蛍光イメージング図である。 図4は、配列番号2を有するDNAアプタマーによるColon26細胞の実像図である。 図5は、配列番号2を有するDNAアプタマーによるColon26細胞の蛍光イメージング図である。 図6は、配列番号3を有するDNAアプタマーによるColon26細胞の実像図である。 図7は、配列番号3を有するDNAアプタマーによるColon26細胞の蛍光イメージング図である。 図8は、配列番号4を有するDNAアプタマーによるColon26細胞の実像図である。 図9は、配列番号4を有するDNAアプタマーによるColon26細胞の蛍光イメージング図である。 図10は、配列番号5を有するDNAアプタマーによるColon26細胞の実像図である。 図11は、配列番号5を有するDNAアプタマーによるColon26細胞の蛍光イメージング図である。 図12は、配列番号6を有するDNAアプタマーによるColon26細胞の実像図である。 図13は、配列番号6を有するDNAアプタマーによるColon26細胞の蛍光イメージング図である。 図14は、配列番号7を有するDNAアプタマーによるColon26細胞の実像図である。 図157は、配列番号7を有するDNAアプタマーによるColon26細胞の蛍光イメージング図である。 図16は、配列番号8を有するDNAアプタマーによるColon26細胞の実像図である。 図17は、配列番号8を有するDNAアプタマーによるColon26細胞の蛍光イメージング図である。 図18は、配列番号9を有するDNAアプタマーによるColon26細胞の実像図である。 図19は、配列番号9を有するDNAアプタマーによるColon26細胞の蛍光イメージング図である。 図20は、配列番号9を有するDNAアプタマーによるColon26細胞の実像図である。 図21は、配列番号9を有するDNAアプタマーによるColon26細胞の蛍光イメージング図である。 図22は、配列番号10を有するDNAアプタマーによるColon26細胞の実像図である。 図23は、配列番号10を有するDNAアプタマーによるColon26細胞の蛍光イメージング図である。 図24は、配列番号11を有するDNAアプタマーによるColon26細胞の実像図である。 図25は、配列番号11を有するDNAアプタマーによるColon26細胞の蛍光イメージング図である。 図26は、配列番号12を有するDNAアプタマーによるColon26細胞の実像図である。 図27は、配列番号12を有するDNAアプタマーによるColon26細胞の蛍光イメージング図である。 図28は、配列番号13を有するDNAアプタマーによるColon26細胞の実像図である。 図29は、配列番号13を有するDNAアプタマーによるColon26細胞の蛍光イメージング図である。 図30は、配列番号14を有するDNAアプタマーによるColon26細胞の実像図である。 図31は、配列番号14を有するDNAアプタマーによるColon26細胞の蛍光イメージング図である。
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更し実施することができる。
1.DNAアプタマー
本願において「DNAアプタマー」とは、ターゲットとなる分子や物質を特異的に認識できる一本鎖オリゴDNAを意味し、本発明に係るDNAアプタマーは、マウス大腸癌細胞に対して特異的に結合する機能を有する一本鎖オリゴDNAである。
本発明に係るDNAアプタマーの結合ターゲットとしては、好ましくは大腸癌細胞であり、より好ましくはマウス大腸癌細胞であり、より好ましくはColon26細胞である。Colon26細胞は杏林医学会雑誌22(3)、413−422,1991、近畿大学医学雑誌17(2)、265−272,1992、等に記載されている。典型的な態様において、本発明に係るDNAアプタマーは、以下に示す配列番号1〜14のいずれかで表されるヌクレオチド配列を有する。なお、本明細書においては、ヌクレオチド配列は、5’末端から3’末端方向に左から右に記載する。
<配列番号1>
CGGTCATAGACGCGGGTTAGGTTCTTTGTGGGCC
<配列番号2>
CGATATTGGGGTATCCGGTGGTGTGGTGGGGGCG
<配列番号3>
GGAGTGCGCATGGGAGTAGTTTGTCTGTTCGTGT
<配列番号4>
GTTAGCTCGGTCGAGTATGGTGGTTCGTGGGGCT
<配列番号5>
GTGGCAGTGTGTTATTATTAGAGTACCGGGCATG
<配列番号6>
CGATATTGGGGTATCCGGTGGTGTGGTGGGGGCG
<配列番号7>
CTGTGGCTTTATTTCAATGGTGTCAGCTGTGGTC
<配列番号8>
GACGTGTGCCCTGCGGTGTGTGTGTGTGGCGGTC
<配列番号9>
GTGTGCAGCTGGGGTGGTTCAGGGTGTTCGCGTC
<配列番号10>
CCGCTGGGCCTGGGCGGGTGTGTTTTGTTCGCGC
<配列番号11>
CGAGTGCACTAGTTAGGTGTATGTTCTGGTGGCC
<配列番号12>
GTTACGCGTTACGGGTTTGGTCGTCGGTGGGGCC
<配列番号13>
GTGGTTGGACCGGGGTTTGTCGTGGTCGGGGGCC
<配列番号14>
AGTGGGGGTCATGGATGGTGGGGGGTTGGCGGCC
本発明に係るDNAアプタマーは、マウス大腸癌細胞に対して特異的に結合するという機能を有する限り、上記配列番号1〜14配列における1もしくは複数のヌクレオチドが置換、欠失、又は付加された配列であってもよい。好ましくは、当該置換、欠失、又は付加されるヌクレオチドは、1〜3個であり、より好ましくは1又は2個であり、さらに好ましくは1個である。
また、かかるヌクレオチドの置換、欠失、又は付加が存在する場合、本発明に係るDNAアプタマーの配列は、上記配列番号1〜14のそれぞれと90%以上、好ましくは93%以上、さらに好ましくは96%以上の相同性である配列(以下、「相同体」という場合がある。)であることができる。ここで、本明細書で用いる場合、用語「相同性」は、当該技術分野で一般に認められた意味を示す。該用語は、典型的には配列解析プログラムによって(例えば、Karlin及びAltschul,1990,PNAS 87:2264−2268;Karlin及びAltschul,1993,PNAS 90:5873−5877)または目視検査によって調べたとき、参照核酸配列の同一のヌクレオチドにマッチした主題の核酸配列のヌクレオチドの数をいう。
1もしくは複数のヌクレオチドが置換される場合、当該置換はユニバーサル塩基によってなされることができる。用語「ユニバーサル塩基」は、当該技術分野で一般に認められたその意味を示す。すなわち、該用語は、一般的に、標準DNA/RNAの各塩基とほとんど区別なく塩基対を形成し、細胞内酵素によって認識されるヌクレオチド塩基類似体をいう(例えば、Loakesら,1997,J.Mol.Bio.270:426−435)。ユニバーサル塩基の非限定的な例としては、C−フェニル、C−ナフチル及び他の芳香族の誘導体、イノシン、アゾールカルボザミド(carbozamide)、ならびにニトロアゾール誘導体(3’−ニトロピロール、4−ニトロインドール、5−ニトロインドール、及び6−ニトロインドールなど)が挙げられる(Loakes,2001,Nucleic Acids Res.29:2437)。
また、本発明に係るDNAアプタマーは、マウス大腸癌細胞に対して特異的に結合するという機能を有する限り、その長さに上限はない。しかし、合成の容易さや抗原性の問題等を考慮すると、本実施の形態におけるDNAアプタマーの長さは、上限としては、例えば200塩基以下、好ましくは150塩基以下、より好ましくは100塩基以下である。
全塩基の数が少ない場合、化学合成及び大量生産がより容易で、かつ費用面における長所も大きい。また、化学修飾も容易で生体内の安全性も高く、毒性も低くなる。下限としては、上記配列番号1〜24における塩基数以上、すなわち33塩基又は34塩基以上である。DNAアプタマーは1本鎖(ssDNA)であることが好ましいが、ヘアピンループ型の構造をとることにより部分的に2本鎖構造を形成する場合であっても、そのDNAアプタマーの長さは1本鎖の長さとして計算するものとする。
好ましい実施態様において、本発明に係るDNAアプタマーは、上記配列番号1〜14のいずれかの配列、及びその5’及び3’末端側にそれぞれプライマー認識配列よりなるヌクレオチド配列であることができる。すなわち、この場合、当該DNAアプタマーは、
5’−P−X−P−3’
で表されるヌクレオチド配列を有する。ここで、Xは、配列番号1〜14で示される配列から選択されるヌクレオチド配列、又はそれらの配列において1〜3個のヌクレオチドの置換、欠失、又は付加を含む配列である。P及びPは、PCR増幅のために導入された第1及び第2プライマー認識配列である。好ましくは、Pは、GCC TGT TGT GAG CCT CCT(配列番号15)であり、及びPは、CGC TTA TTC TTG TCT CCC(配列番号16)である。
本発明に係るDNAアプタマーは、生体内における安定性の増大のために、化学修飾されていてもよい。そのような化学修飾の非限定的な例としては、糖鎖部分での化学的置換(例えば、2’−0メチル化)、リン酸エステル部分での化学的置換(例えば、ホスホロチオエート化、アミノ基、低級アルキルアミノ基、アセチル基等)、及び塩基部分での化学的置換が挙げられる。同様に、5’又は3’末端に付加的な塩基を有することもできる。該付加的塩基の長さは通常5塩基以下である。該付加的塩基は、DNAでもRNAでもよいが、DNAを用いるとアプタマーの安定性を向上させることができる場合がある。このような付加的塩基の配列としては、例えばug−3’、uu−3’、tg−3’、tt−3’、ggg−3’、guuu−3’、gttt−3’、ttttt−3’、uuuuu−3’などの配列が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、本発明に係るDNAアプタマーは、後述のマウス大腸癌細胞の検出方法又は当該検出用キットにおいて用いるために、例えば5’末端又は3’末端に連結した検出標識を有することができる。かかる検出標識としては、蛍光標識が好ましいが、ラマン散乱標識、酵素標識、さらに赤外線標識を用いてもよい。
蛍光標識は、当該技術分野において慣用されている蛍光標識剤を用いることができるが、例えば、グリーンフルオレセントプロテイン(GFP)、蛍光たんぱく質、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、6−カルボキシフルオロセイン−アミノヘキシル、フルオレセイン誘導体、Alexa Fluor 350、Alexa Fluor 405、Alexa Fluor 488、Alexa Fluor 647、Alexa Fluor 750、ローダミン、6−カルボキシテトラメチルローダミン、TAMRA(登録商標)、フィコエリスリン(PE)、フィコシアニン(PC)、PC5、PC7、Cy色素、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7、TexasRed、アロフィコシアニン(APC)、アミノメチルクマリンアセテート(AMCA)、Marina Blue、 Cascade Blue、 Cascade Yellow、 Pacific Blue、 SPRD、 テトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC)、R110、mC1B、CellTracker色素、CFSE、JC−1、PKH、DCFH−DA、DHR、FDA、Calcein AM、ニトロベンゾオキサジアゾール(NBD)基、ジメチルアミノスルホニルベンゾオキサジアゾール基、acridine(Acd)、dansyl(Dns)、7−ジメチルアミノクマリン−4−アセティックアシッド(DMACA)、5−((2−アミノエチル)アミノ)ナフタレン−1−スルホニックアシッド(EDANS)、ナフタレン、アントラセン及びプロトポルフィリン9など市販のオリゴヌクレオチド固相合成サービスで導入できる蛍光団が挙げられる。
さらに、蛍光物質の近傍に該蛍光物質の発する蛍光エネルギーを吸収するクエンチャー(消光物質)がさらに結合されていてもよい。かかる実施態様においては、検出反応の際に蛍光物質とクエンチャーとが分離して蛍光が検出される。
酵素標識の例としては、β−ガラクトシダーゼ、β−グルコシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、パーオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素等が挙げられる。また、発光基質として、ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニンなどを標識剤として用いてもよい。
ラマン散乱標識に関しては、前記の蛍光標識されたアプタマーの例えば5’末端又は3’末端に金属表面と結合能を有する置換基として特に限定するものではないが、チオール(SH)基、アルキルアミノ基、芳香族アミノ基、カルボキシル基を導入し、これを例えば、金ナノ粒子表面に吸着させることにより当該アプタマー吸着金属粒子から発せられる増強ラマン散乱光を検出することで細胞認識を行うものである。この場合、特に限定するものではないが、金属ナノ粒子として、金、銀、銅、鉄、珪素、量子ドットなどを用いることができる。
2.DNAアプタマーの選別
本発明のDNAアプタマーは、当該技術分野において周知のインビトロセレクション法を用いて選別及び取得することができる。そのような手法の好ましい例として、試験管内進化法(Systematic Evolution of Ligands by EXponential enrichment:SELEX法)が用いられる。
当該SELEX法は、ターゲット物質に結合する核酸リガンド(アプタマー)の選別と、PCR(Polymerase Chain Reaction)による指数関数的な増幅を複数回繰り返すことにより,ターゲット物質に親和性を有する核酸分子(一本鎖DNA、RNA)を得るというものである。
また、その改良手法として、例えばGuo,et al.,Int.J.Mol.Sci.,9(4):668,2008に記載されているようなCell−SELEX法を用いることが好ましい。この手法は、ターゲットとして細胞自体を用いることができるため、従来のSELEX法と比較して、細胞表面に膜タンパク質の解析が不要であること、細胞表面に結合し得る複数のアプタマーを同時に選抜できること、及びターゲット細胞に対してより特異的に結合するアプタマーを選抜できるといった利点を有するものである。
なお、これら以外にも当該技術分野において周知の方法を用いて本発明のDNAアプタマーを選別及び取得することもできる。
上述のとおり、「インビトロセレクション法」は、ランダムなヌクレオチド配列を含む核酸分子のプール(いわゆる、DNAプール)からターゲットとする分子や細胞に対して親和性を持つアプタマー分子を選択し、親和性を持たない分子を排除する方法である。当該選択されたアプタマー分子のみをPCR法等で増幅し、さらに親和性による選択をするというサイクルを繰り返すことにより、強い結合能を持つアプタマー分子を濃縮することができるというものである。
具体的には、まず、20〜300塩基、好ましくは30〜150、より好ましくは30〜100塩基程度のランダムなヌクレオチド配列(塩基配列)領域を含む1本鎖核酸分子、例えば、オリゴDNAを調製する。オリゴDNAは、PCR増幅を可能にするために、その両端にプライマーとなるべき塩基配列を有するものを用いることが好ましい。
プライマー認識配列部分は、PCR増幅後にプライマー部分を制限酵素によって切除し得るように適当な制限酵素サイトを有するようにしてもよい。用いるプライマー認識配列部分の長さは、特に限定されるものではないが、約20〜50、好ましくは20〜30塩基程度である。また、PCR増幅後の1本鎖DNAを電気泳動などで分離可能とするために、5’側末端に、放射標識、蛍光標識などによる標識を行ってもよい。
次に、上記で得られたランダムなヌクレオチド配列を有する核酸分子(ライブラリープール)と、ターゲット細胞とを適当な濃度比で混合し、適当な条件下でインキュベートする。インキュベート後、混合物を遠心機にかけて、核酸分子−ターゲット細胞複合体と遊離核酸分子とを分離する。分離溶液の上澄み部分を除去し、得られた核酸分子−ターゲット細胞複合体を用いてPCR反応を行うことで細胞結合性核酸配列の増幅を行う。この後、ターゲット細胞と複合体を形成している核酸分子を当該技術分野において周知の手法に従って一本鎖化する。そのような手法としては、例えば、ストレプトアビジン固定化磁性粒子とビオチンとの結合を利用する分離が挙げられる。これにより、増幅した核酸二重鎖のうち細胞結合能を有するssDNAを分離することができ、さらにDNAポリメラーゼなどのPCR反応溶液中に含まれる不要な共存物質を除去することができる。その後、回収されたssDNAをライブラリープールとして用いて同様の操作を行う。
上述の核酸分子とターゲット細胞との混合、ターゲット細胞と結合した核酸分子の分離、PCR増幅、増幅された核酸分子を再びターゲット細胞との結合に使用するまでの一連の操作は数ラウンドを行う。ラウンドを繰り返し行うことにより、より特異的にターゲット細胞と結合する核酸分子を選別することができる。得られた核酸分子は、当該技術分野において周知の手法によりその配列解析を行うことができる。
3.癌細胞の検出用組成物、検出方法、及びキット
上述のように、本発明に係るDNAアプタマーは、マウス大腸癌細胞に対して特異的に結合する機能を有することから、当該マウス大腸癌細胞の検出において好適に用いることができ、本発明のDNAアプタマーを含む検出用組成物は、マウス大腸癌に対する腫瘍マーカとしても用いることができる。
具体的には、本発明のDNAアプタマーを含む検出用組成物をマウス大腸細胞、大腸組織、血液、血清及び血漿よりなる群から選択される生体から採取された試料と接触させ、その後、当該試料とDNAアプタマーとの結合による応答(シグナルの有無)を観測することによってマウス大腸癌細胞の存在を検出する。
当該生体から採取された試料は、動物から採取したものであって、最小侵襲で確保可能な試料または分泌体液、in vitro細胞培養液成分試料等であれば、その形態は特に限定されない。
また、大腸細胞の存在を検出するための「応答」は、蛍光応答もしくはラマン散乱応答であることが好ましく、そのため上記で述べたとおり、蛍光応答においてはDNAアプタマーの5’末端又は3’末端にTAMRA(登録商標)、FITC等の蛍光標識剤を連結させることが好ましい。またラマン散乱応答においてはDNAアプタマーの5’末端又は3’末端にCy3.5(登録商標)、TAMRA(登録商標)、FITC等の蛍光標識剤を連結させ、さらに前記のチオール(SH)基、アルキルアミノ基、芳香族アミノ基、カルボキシル基を導入し、これを例えば、金ナノ粒子表面に吸着させることが好ましい。
また、本発明のマウス大腸癌細胞の検出用組成物は、その簡便性や携帯性を高めるためDNAアプタマーを含むキットとして提供することもできる。当該キットにおいてDNAアプタマーは、通常、適当な濃度となるように溶解された水溶液の態様で、或いは該DNAアプタマーが固相担体上に固定されたDNAアレイの態様で提供されることができる。
例えば、DNAアプタマーの末端にビオチンを結合させて複合体を形成し、固相担体の表面にストレプトアビジンを固定化させて、ビオチンとストレプトアビジンの相互作用によってDNAアプタマーを固相担体表面に固定化することができる。当該キットには、必要に応じて他の試薬等を適宜含んでいても良く、例えば、添加剤として、溶解補助剤、pH調節剤、緩衝剤、等張化剤などの添加剤を用いることができ、これらの配合量は当業者に適宜選択可能である。
4.医薬組成物及びDDS
別の態様において、本発明は、上記DNAアプタマーを含有する、マウス大腸癌の転移研究又は治療用医薬組成物を提供するものである。好ましくは、当該医薬組成物は、DNAアプタマーに加えて、有効量のマウス大腸癌の転移研究又は治療のための医薬化合物(有効成分)、及び医薬上許容される担体を含むことができる。例えば、本アプタマーを金ナノ粒子に結合したものを用いて、癌の温熱療法用の試薬として利用できる可能性がある。

上記「マウス大腸癌」は、好ましくはColon26細胞と関連するマウス大腸癌である。「転移研究又は治療」には、癌細胞の遊離、移動、転移、浸潤または増殖の抑制、アポトーシスの誘導が含まれ得る。転移の抑制とは、癌細胞が原発巣から異なる部位に到達し、該部位において癌を二次的に生じることを抑制することを意味する。
本発明の医薬組成物中に含まれる有効成分は、マウス大腸癌の転移研究又は治療に有効なものであれば、特に限定されるものではないが、好ましくは抗癌剤である。かかる抗癌剤の例としては、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗腫瘍性抗生物質、化学療法剤、分子標的治療薬、これら以外の他の抗癌剤等が挙げられる。
アルキル化剤としては、例えば、ナイトロジェンマスタード、クロラムブチル、ジブロモダルシトール、チオテパ、カルムスチン、ブスルファンなどが挙げられる。
代謝拮抗剤としては、6−メルカプトプリン、フルオロウラシル、テガフール、ドキシフルリジン、シタラビン、エノシタビン、メトトレキセートなどが挙げられる。
抗生物質としては、マイトマイシンC、ブレオマイシン、ペプロマイシン、ドキソルビシン、THP−アドリアマイシン、アクチノマイシンDなど、その他の抗癌剤としては、塩酸アムルビシン、塩酸イリノテカン、イホスファミド、エトポシドラステット、ゲフィニチブ、シクロホスファミド、シスプラチン、トラスツズマブ、フルオロウラシル、メシル酸イマニチブ、メソトレキサート、リツキサン、アドリアマイシン、カルボプラチン、タモキシフェン、カンプトテシン、メルファラン、L−アスパラギナーゼ、アセクラトン、シゾフィランなどが挙げられる。
分子標的治療薬の標的は細胞表面抗原、増殖因子・受容体・シグナル伝達系、細胞周期、アポトーシス、テロメア・テロメラーゼ、転移・血管新生などに分類される。
細胞表面抗原を標的とする分子標的治療薬は抗体であることが多い。代表はRituximib(Rituxan)、Trastuzumab、Cetuximab 、Oncophage、Provengeなどが挙げられる。
増殖因子・受容体・シグナル伝達系にかかわる分子標的治療薬は特に限定するものではないが、Trastzumabやc-kitおよびBCR-ABLチロシンキナーゼ阻害薬、特にEGFRチロシンキナーゼなどが挙げられる。
大腸癌の分子標的治療薬としては、VEGFそのものに対する抗体であるBevacizumabや、Thalidomide、Lenalidomideなどが挙げられる。
大腸癌の分子標的治療薬として現在検討されているものとして1)抗VEGF抗体Bevacizumab、2)抗EGFR抗体Cetuximab、3)抗EGFR抗体Panitumumabなどが挙げられる。
本発明の医薬組成物中に含まれる医薬上許容される担体としては、例えば、ショ糖、デンプン等の賦形剤、セルロース、メチルセルロース等の結合剤、デンプン、カルボキシメチルセルロース等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、エアロジル等の滑剤、クエン酸、メントール等の芳香剤、安息香酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム等の保存剤、クエン酸、クエン酸ナトリウム等の安定剤、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン等の懸濁剤、界面活性剤等の分散剤、水、生理食塩水等の希釈剤、ベースワックス等が挙げられるが、それらに限定されるものではない。
本発明の医薬組成物の癌細胞内への導入を促進するために、当該組成物には、さらに核酸導入用試薬を含むこともできる。該核酸導入用試薬としては、アテロコラーゲン、リポソーム、ナノパーティクル、リポフェクチン、リプフェクタミン、DOGS(トランスフェクタム)、DOPE、DOTAP、DDAB、DHDEAB、HDEAB、ポリブレン、或いはポリエチレンイミン等の陽イオン性脂質等を用いることが出来る。

本発明の医薬組成物は、例えば、哺乳動物(例えば、ヒト、ラット、マウス、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サル等)に対して投与することができる。
本発明の医薬組成物は、多様な製剤形態、例えば、カプセル剤、錠剤、液剤等の剤形をとることができ、限定はしないが、より一般的には、液剤化され、注射剤とされるか、または、経口剤とされるか、又は徐放剤とされる。
当該注射剤は、当該技術分野における周知の方法より調製することができる。例えば、滅菌水、緩衝液、生理食塩水等の適切な溶媒に溶解した後、フィルター等で濾過して滅菌し、次いで無菌的な容器に充填することにより調製することができる。
経口剤としては、例えば、錠剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、軟又は硬カプセル剤、液剤、乳剤、懸濁剤、シロップ剤等の剤形に製剤化される。
徐放剤としては、例えば、錠剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、軟又は硬カプセル剤、マイクロカプセル等の剤形に製剤化される。製剤化する場合には、好ましくは、例えば、アルブミン、グロブリン、ゼラチン、マンニトール、グルコース、デキストラン、エチレングリコール等の安定化剤が添加され得る。
さらに、本発明の医薬組成物の製剤化においては、例えば、賦形剤、溶解補助剤、酸化防止剤、無痛化剤、等張化剤等の必要な補助添加物を含んでもよい。
液状製剤とした場合は、凍結保存又は凍結乾燥等により水分を除去して保存するのが望ましい。凍結乾燥剤は、使用時に注射用蒸留水等を加え、再溶解して使用される。
また、徐放剤とした場合、徐放用担体として例えば、可溶性コラーゲン又は可溶性コラーゲン誘導体、ゼラチン等の蛋白質、セラミックス多孔体、ポリアミノ酸、ポリ乳酸、キチン又はキチン誘導体、水膨潤性高分子ゲル等を使用することができる。
本発明の医薬組成物は、その形態に応じた適切な投与経路により投与され得る。経口的に又は非経口的投与することが可能であるが、非経口的に投与するのが望ましい。例えば、注射剤の形態にして静脈、動脈、皮下、筋肉内等に投与することができる。また、徐放剤の形態にして生体内、例えば患部、皮下、筋肉内等に埋め込むことにより投与することができる。
投与量及び投与回数等は、投与の目的、投与方法、癌の種類、大きさ、投与対象者の状況(性別、年齢、体重など)によって異なるが、基本的には上記有効成分における望ましい投与形態に従う。
また、本発明のDNAアプタマーをリポソームやナノ粒子等の輸送材料の表面に付着もしくは内包させることによって、当該輸送材料中に含まれる医薬成分をマウス大腸癌細胞に選択的に輸送することができる。従って、更なる態様において、本発明は上記DNAアプタマーを含有する、マウス大腸癌の転移研究又は治療用ドラッグデリバリーシステムを提供するものである。
当該ドラッグデリバリーシステムによって輸送され得る医薬成分は、典型的には上述の抗癌剤であるが、マウス大腸癌の転移予防又は治療に有用な物質である限り、それら以外にもトキシン、癌成長阻害遺伝子、自殺遺伝子、又は、マウス大腸癌の成長及び転移に重要な役割を果たす遺伝子の発現を阻害するsiRNA(small interfering RNA)等であることもできる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
実施例1:アプタマーの選別
Cell−SELEX法を用いて、ランダムな配列を有するDNAプールからマウス大腸癌細胞であるColon26細胞に特異的に結合するアプタマーの選別を行った。当該Cell−SELEX法における各工程は以下のとおりである。
1) DNAプールの調製(DNAアプタマー候補群の溶液調製)
2) ターゲット物質−Colon26細胞−との混合
3) ターゲット結合性DNAと非結合性DNAの分離
4) ターゲット結合性DNAの複製(ターゲット物質と結合したDNAアプタマーを増幅する工程)
5) ターゲット結合性DNAの精製(増幅したDNAアプタマーを1本鎖DNAに精製する工程)
6) ターゲット結合性核酸のクローンニング(得られたDNAアプタマーの配列解析の前処理)
7) これら1)〜6)の工程を6ラウンド実行
8) ターゲット結合性核酸の配列解析(シーケンサーによるDNAアプタマーのヌクレオチド配列の解析)
より詳細な実験手順は、以下のとおりである。
DNAプールは、以下の配列を有する全長が70塩基でランダム配列部分(N)が34塩基のオリゴDNAを用いた。
DNA pool:Random34(日本遺伝子研究所社製)
・配列: 5’-GCC TGT TGT GAG CCT CCT(N34)CGC TTA TTC TTG TCT CCC−3’
・長さ: 70塩基(ランダム配列は中央の34塩基)
・分子量: 21391.3 g/mol
・モル吸光係数: 630475 L/mol・cm
ランダム配列の両側は、後のPCRにおいてプライマーによって認識され、増幅を可能にするための配列である。上記ランダムDNAを細胞培養用培地(和光純薬工業株式会社製:RPM1−1640)バッファーを溶媒として1μMのDNAプールを調製した。
その後、Colon26細胞を培養シャーレで培養し、細胞数が10〜10個になるまで培養した。培養後培地を除去し、さらに同シャーレにリン酸緩衝生理食塩水(以下、PBSと称する。)を2mL添加して細胞を洗浄した。このシャーレにEDTA含有0.05%トリプシン溶液1mLを添加し、37℃インキュベーターに2分間静置した。細胞がシャーレから剥がれていることを確認した後、PBSを4mL添加し、これを15mL遠沈管にて回収し、200gで3分間遠心処理を行った。その後上澄み液をアスピレータにより除去した。それにPBSを3mL添加し、ピペッティングにより細胞を懸濁させたのち200gで3分間遠心処理を行い、上澄みを除去する洗浄工程を2回行った。培地を330uL中10セルになるように調製した。調製した懸濁液に予め準備しておいた1μMのランダムDNA(DNAプール)溶液370μLを混和し、ボルテックスにより十分に混和させた。
得られた混合溶液を37℃インキュベーター内に1時間静置した。その後同遠沈管を用いて400gで4分間遠心処理を行い、上澄みを除去した後PBSを500μL添加し400gで4分間遠心処理を行った。この洗浄操作を3回行った。上澄みを除去した後PBS200μLを添加し、95℃で10分間過熱した。13000gで5分間遠心処理を行い、上澄みを回収した。
分離したColon26細胞結合性のDNAをPCRにより増幅した。装置は、Thermal Cycler(TAKARA−TP600)を用いた。プライマーは、上記ランダムDNAの共通配列に対応する18塩基のプライマーを用いた(日本遺伝子研究所社製)。当該プライマーの5’末端側には、後述のように1本鎖DNAの分離を可能にするためビオチン修飾を施してある。
精製したDNAにストレプトアビジンを加えて磁性粒子に吸着させ、磁石により磁性粒子を回収したのち上澄みを除去、その後アルカリバッファー変性により上澄み中に磁性粒子と結合していない1本鎖DNAを回収した(図1)。その後アルカリバッファーをPBSバッファーに置換することで、磁性粒子と結合した目的物である1本鎖DNAを回収した。これを1ラウンドとし、この操作を6回行った。
6ラウンド後、ビオチン非修飾の18塩基プライマーを用いてPCR増幅を行い、PCR産物を、ライフテクノロジーズ社製IonPGMシステムを用いてシークエンサー解析した。
実施例2:蛍光標識DNAアプタマーによるマウス大腸癌細胞の染色
Colon26細胞を培養シャーレで培養し、細胞数が10〜10になるまで培養する。これにシークエンサー解析により見出されたColon26細胞に対して親和性のあるヌクレオチド配列からなるDNAアプタマーの5‘末端をTAMRA(商標)で修飾し、このDNAを超純水により100μMに調製したアプタマー溶液を20μLとり、1mL培養液を有する培養シャーレに分散させながら添加した。これを37℃1時間インキュベーターに静置した。その後、PBSで細胞を3回洗浄した後、さらにPBSを2mL添加した状態でオリンパス製の倒立型蛍光顕微鏡IX71により観察した。配列番号1〜14を有するDNAアプタマーによる結果を、それぞれ図2から図31に示す。これらの蛍光標識DNAアプタマーがColon26細胞に特異的に結合し、それによってColon26細胞に対する良好な蛍光イメージング画像が得られることが明らかとなった。

Claims (18)

  1. 配列番号1〜14で示される配列から選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列を有し、マウス大腸癌細胞に対して特異的に結合することを特徴とするDNAアプタマー。
  2. 配列番号1〜14で示される配列から選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列において、1〜3個のヌクレオチドの置換、欠失、又は付加を含む配列を有し、マウス大腸癌細胞に対して特異的に結合することを特徴とするDNAアプタマー。
  3. マウス大腸癌細胞に対して特異的に結合するDNAアプタマーであって、
    5’−P−X−P−3’
    で表されるヌクレオチド配列を有し、ここで、
    Xは、1)配列番号1〜14で示される配列から選択されるヌクレオチド配列、又は2)配列番号1〜14で示される配列から選択されるヌクレオチド配列において1〜3個のヌクレオチドの置換、欠失、又は付加を含む配列であり、
    及びPは、PCR増幅のために導入された第1及び第2プライマー認識配列である
    該DNAアプタマー。
  4. は、配列番号15で示される第1プライマー認識配列であり、及び
    は、配列番号16で示される第2プライマー認識配列である、請求項3に記載のDNAアプタマー。
  5. 前記マウス大腸癌細胞が、Colon26細胞である、請求項1〜4のいずれか1に記載のDNAアプタマー。
  6. 糖鎖部分での化学的置換、リン酸エステル部分での化学的置換及び核酸塩基部分での化学的置換から成る群より選択される、少なくとも1つの化学修飾を含む、請求項1〜5のいずれか1に記載のDNAアプタマー。
  7. 5’末端又は3’末端に蛍光標識を有する、請求項1〜6のいずれか1に記載のDNAアプタマー。
  8. 前記蛍光標識が、グリーンフルオレセントプロテイン(GFP)、蛍光たんぱく質、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、6−カルボキシフルオロセイン−アミノヘキシル、フルオレセイン誘導体、Alexa Fluor 350、Alexa Fluor 405、Alexa Fluor 488、Alexa Fluor 647、Alexa Fluor 750、ローダミン、6−カルボキシテトラメチルローダミン、TAMRA(登録商標)、フィコエリスリン(PE)、フィコシアニン(PC)、PC5、PC7、Cy色素、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7、TexasRed、アロフィコシアニン(APC)、アミノメチルクマリンアセテート(AMCA)、Marina Blue、 Cascade Blue、 Cascade Yellow、 Pacific Blue、 SPRD、 テトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC)、R110、mC1B、CellTracker色素、CFSE、JC−1、PKH、DCFH−DA、DHR、FDA、Calcein AM、ニトロベンゾオキサジアゾール(NBD)基、ジメチルアミノスルホニルベンゾオキサジアゾール基、acridine(Acd)、dansyl(Dns)、7−ジメチルアミノクマリン−4−アセティックアシッド(DMACA)、5−((2−アミノエチル)アミノ)ナフタレン−1−スルホニックアシッド(EDANS)、ナフタレン、アントラセン及びプロトポルフィリン9から選ばれる一種以上を含む発光波長421nmから712nmの有機系蛍光団である、請求項7に記載のDNAアプタマー。
  9. 請求項1〜8のいずれか1に記載のDNAアプタマーが蛍光発光し得る金属ナノ粒子(量子ドット)表面に吸着されているDNAアプタマー。
  10. 5‘末端または3’末端に蛍光標識を有する請求項1〜8のいずれかに記載のDNAアプタマーがラマン散乱活性を有する金属である金、銀、銅、鉄及び珪素から選ばれる一種以上の粒子に吸着されているDNAアプタマー。
  11. 請求項1〜10のいずれか1に記載のDNAアプタマーを含む、マウス大腸癌細胞の検出用組成物。
  12. 請求項1〜10のいずれか1に記載のDNAアプタマーを含む、マウス大腸癌細胞の検出用キット。
  13. 請求項1〜10のいずれか1に記載のDNAアプタマーを用いることを特徴とする、マウス大腸癌検出方法。
  14. 前記DNAアプタマーをマウス大腸細胞、大腸組織、血液、血清及び、血漿よりなる群から選択される生体から採取された試料と接触させる工程、及び当該試料とDNAアプタマーとの結合による応答を観測することによってマウス大腸癌細胞の存在を検出する工程を含む、請求項13に記載の検出方法。
  15. 前記応答が、蛍光応答である、請求項14に記載の検出方法。
  16. 請求項1〜10のいずれか1に記載のDNAアプタマーを含有する、マウス大腸癌の転移研究又は治療用医薬組成物。
  17. マウス大腸癌の転移研究又は治療用医薬組成物の製造のための請求項1〜10のいずれか1に記載のDNAアプタマーの使用。
  18. 請求項1〜10のいずれか1に記載のDNAアプタマーを含有する、マウス大腸癌の転移研究又は治療用ドラッグデリバリーシステム。
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