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JP2015052138A - 電気抵抗薄膜層の成膜方法および銅張積層板の製造方法 - Google Patents

電気抵抗薄膜層の成膜方法および銅張積層板の製造方法 Download PDF

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JP2015052138A JP2013184721A JP2013184721A JP2015052138A JP 2015052138 A JP2015052138 A JP 2015052138A JP 2013184721 A JP2013184721 A JP 2013184721A JP 2013184721 A JP2013184721 A JP 2013184721A JP 2015052138 A JP2015052138 A JP 2015052138A
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Abstract

【課題】 熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも片面に抵抗層を有する薄膜において、金属−樹脂界面の剥離強度を向上させる成膜方法を提供する。
【解決手段】 熱可塑性樹脂フィルムの表面の少なくとも片面に接着剤を介することなく電気抵抗薄膜層を成膜した後、その電気抵抗薄膜層へのマイクロ波照射により加熱を行い、その加熱による電気抵抗薄膜層の温度が、ガラス転移点で定める加熱下限温度と、その熱可塑性樹脂フィルムの融点からガラス転移点を差し引いた差の1/3の温度をガラス転移点に加えて定めた加熱上限温度との間となるように加熱することを特徴とする熱可塑性樹脂フィルムの表面への電気抵抗薄膜層の成膜方法。
【選択図】 図1

Description

本発明は、熱可塑性樹脂フィルム表面への電気抵抗材料の薄膜の成膜方法および電気抵抗材料の薄膜の表面に銅などの導電層を設けた銅張積層板に関する。
液晶パネル、ノートパソコン、デジタルカメラ、携帯電話等には、樹脂フィルムの上に金属膜を被覆して得られる多種類のフレキシブル配線基板が用いられている。このフレキシブル配線基板の材料には、樹脂フィルムの片面若しくは両面に金属膜を成膜した銅張積層板が用いられており、この銅張積層板にフォトリソグラフィーや化学エッチング等の薄膜技術を適用することにより所定の配線パターンを有するフレキシブル配線基板を得ることができる。フレキシブル配線基板の配線パターンは近年ますます微細化、高密度化しており、従って銅張積層板から形成された配線は、剥離しにくいことがより一層重要になってきている。
この種の銅張積層板の製造方法としては、従来から金属箔を接着剤により樹脂フィルムに貼り付けて製造する方法(3層基板の製造方法)、金属箔に樹脂溶液をコーティングした後、乾燥させて製造する方法(キャスティング法)、あるいは樹脂フィルムに乾式成膜法により、もしくは乾式成膜法と湿式めっき法との組み合わせにより金属膜を成膜して製造する方法(メタライジング法)等が知られている。また、メタライジング法における乾式成膜法には、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビームスパッタリング法等がある。
また成膜方法として、メタライジング法については、熱可塑性樹脂フィルムの表面に接着剤を介さずにニッケル合金などの電気抵抗の高い材料からなる電気抵抗薄膜層に銅からなる導電層を形成して銅張積層板を製造する。
特許文献1に、ポリイミド絶縁層上にクロムをスパッタリングした後、銅をスパッタリングしてポリイミド絶縁層上に導体層を形成する方法が開示されている。
また、特許文献2に、銅ニッケル合金をターゲットとするスパッタリングにより形成された第一の金属薄膜と、銅をターゲットとするスパッタリングにより形成された第二の金属薄膜とを、この順でポリイミドフィルム上に積層することによって得られるフレキシブル回路基板用材料が開示されている。なお、基板にポリイミドフィルムの様な耐熱性樹脂フィルムを用い、これに乾式成膜を行う場合はスパッタリングウェブコータを用いることが一般的である。
この電気抵抗薄膜層の上に銅などの導電層を掲載した基板は、電気抵抗薄膜層を銅拡散のバリア膜として利用し、耐熱性や信頼性の高いプリント配線板などの用途に利用されている。さらに、熱可塑性樹脂フィルムの表面に接着剤を介さずに電気抵抗薄膜層が形成された基板は、電気抵抗器等として使用されている。
ところで、上記乾式成膜法において、一般に熱可塑性樹脂、特に高度に延伸技術を駆使したフィルムにおいては、樹脂分子の配向が制御されることにより光学特性や寸法変化の少ないフィルムを得ることが可能になるが、金属皮膜を形成した場合、樹脂と金属皮膜の密着強度が著しく低下する欠点がある。
そこで、樹脂全体を加熱する熱処理が行われている。しかしながら、樹脂全体を加熱すると樹脂自体が柔らかくなり、例えばロールツーロールで搬送した場合、フィルムが切れるといった不具合が発生する。
特開平2−98994号公報 特許第3447070号公報
本発明は、熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも片面に抵抗層を有する薄膜において、金属−樹脂界面の剥離強度を向上させる成膜方法の提供を目的とする。
このような状況に鑑み、本発明の第1の発明は、熱可塑性樹脂フィルムの表面の少なくとも片面に接着剤を介することなく電気抵抗薄膜層を成膜した後、その電気抵抗薄膜層へのマイクロ波照射により加熱を行い、その加熱による電気抵抗薄膜層の温度が、ガラス転移点で定める加熱下限温度と、その熱可塑性樹脂フィルムの融点からガラス転移点を差し引いた差の1/3の温度をガラス転移点に加えて定めた加熱上限温度との間となるように加熱することを特徴とする熱可塑性樹脂フィルムの表面への電気抵抗薄膜層の成膜方法。
本発明の第2の発明は、熱可塑性樹脂フィルムの表面の少なくとも片面に接着剤を介することなく電気抵抗薄膜層を成膜した後、前記電気抵抗薄膜層へのマイクロ波照射により加熱を行い、前記加熱による電気抵抗薄膜層の温度が、α緩和温度で定める加熱下限温度と、前記熱可塑性樹脂フィルムの融点からα緩和温度を差し引いた差の1/3の温度をα緩和温度に加えて定めた加熱上限温度との間となるように加熱することを特徴とする熱可塑性樹脂フィルムの表面への電気抵抗薄膜層の成膜方法である。
本発明の第3の発明は、第1及び第2の発明における電気抵抗薄膜層が、乾式めっき法で成膜されることを特徴とする熱可塑性樹脂フィルムの表面への電気抵抗薄膜層の成膜方法である。
本発明の第4の発明は、第1から第3の発明における電気抵抗薄膜層に対するマイクロ波照射による加熱が、減圧雰囲気下または非酸化性雰囲気下で行われることを特徴とする熱可塑性樹脂フィルムの表面への電気抵抗薄膜層の成膜方法である。
本発明の第5の発明は、第1から第4の発明における電気抵抗薄膜層が、ニッケル合金であることを特徴とする熱可塑性樹脂フィルムの表面への電気抵抗薄膜層の成膜方法である。
本発明の第6の発明は、熱可塑性樹脂フィルムの表面の少なくとも片面に接着剤を介することなく電気抵抗薄膜層と銅からなる導電層を積層した銅張積層板の製造方法において、その電気抵抗薄膜層が、請求項1から5のいずれかに記載の熱可塑性樹脂フィルムの表面への電気抵抗薄膜層の成膜方法を用いて形成され、且つ、電気抵抗薄膜層へのマイクロ波照射による加熱後に前記電気抵抗薄膜層上に導電層を形成することを特徴とする銅張積層板の製造方法である。
本発明の第7の発明は、第6の発明における導電層が、乾式めっき法で形成されていることを特徴とする銅張積層板の製造方法である。
また、本発明の第8の発明は、第6の発明における導電層が、乾式めっき法による成膜層と、前記成膜層上に湿式めっき法による成膜層を備えることを特徴とする銅張積層板の製造方法である。
本発明によれば、基板に用いる熱可塑性樹脂フィルムの電気抵抗薄膜層近傍のみアモルファス化することが可能になり、フィルムが切れることなく、フィルム−電気抵抗薄膜層界面の強度を向上させることを可能とし、フレキシブル配線基板に好適な銅張積層板を提供するもので、工業上顕著な効果を奏するものである。
本発明の基板処理装置における乾式めっき法による電気抵抗薄膜層形成の説明図である。 本発明で用いたロール・ツー・ロールスパッタリング装置の一例を示す概略図である。
以下、本発明の基板処理装置の一具体例について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の基板処理装置おける乾式めっき法による電気抵抗薄膜層形成の説明図で、1はキャンロール、2はロール(キャンロール入側)、3はロール(キャンロール出側)、4はロール、5はマイクロ波照射装置で、ロール3、4間においてマイクロ波照射装置5により加熱されている。Fは熱可塑性樹脂フィルム、Fは電気抵抗薄膜層を表面に設けた熱可塑性樹脂フィルム、Mは金属ターゲット(蒸着源)、Tはファイバ温度計である。
図1には、減圧容器内(図示せず)にて熱可塑性樹脂フィルムがロールツーロールで搬送されており、電気抵抗薄膜層がキャンロール1上で、乾式めっき法(スパッタリング法、または蒸着法)で形成される様子が示されている。
この熱可塑性樹脂フィルムFは、減圧容器内に配される巻取軸(図示せず)に巻回されており、その巻取軸に巻回された巻出ロール(図示せず)から巻きだされ、ロール2、キャンロール1、導電層の成膜を経て、ロール3、ロール4間でマイクロ波の照射により加熱されて、巻取軸(図示せず)に巻き取られ巻取ロールに形成される。
キャンロール1の内部には、減圧容器外部から供給される冷媒が循環して電気抵抗薄膜層が形成中の熱可塑性樹脂フィルムFを冷却する。
また乾式めっき法で成膜された電気抵抗薄膜層が接する表面が金属であるロール3と、さらに搬送方向に隣接するもう一本の表面が金属のロール4の間に、マイクロ波照射装置5が設置され、電気抵抗薄膜層の表面にマイクロ波を照射し、表面で発生する渦電流によって加温される。
なお、マイクロ照射装置5は、熱可塑性樹脂フィルム表面の電気抵抗薄膜層の幅方向を覆うことができればよい。
ファイバ温度計Tは、電気抵抗薄膜層の温度を測定し、その測定結果により電気抵抗薄膜層へのマイクロ波の照射出力に対するフィードバック制御を行う。マイクロ波の照射出力の制御は公知のPID制御を用いることができる。なお、ロール4は冷媒または温媒によって温度がコントロールされていることが望ましい。また、ファイバ温度計は非接触式でも接触式であってもよく、基板表面処理装置により適宜選択できる。
用いる樹脂フィルムは、熱可塑性樹脂フィルムを用いる。この熱可塑性樹脂フィルムであれば加熱されることで、軟化し電気抵抗薄膜層との密着性が向上する。なお、熱硬化性樹脂フィルムでは本発明の目的は達成されない。
具体的な熱可塑性樹脂フィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルファイド、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、フッ素樹脂、ポリアミドイミド、不飽和ポリエステル、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、酢酸セルロース、ポリイミド樹脂、液晶ポリマーなどいずれでもよい。
上記例示した液晶ポリマーを除く熱可塑性樹脂フィルムは、ガラス転移点が測定可能である。一方、液晶ポリマーはガラス転移点を測定することができない代わりにα緩和温度が測定可能である。融点は、上記例示したすべての熱可塑性樹脂フィルムで測定可能である。
ここで液晶ポリマーは、230℃以上の融点を持ち、全芳香族型ポリエステルであり、下記化1、化2に例示する「共重合体化合物(I)」、「共重合体化合物(II)」から選ばれるポリエステルを使用することができる。
Figure 2015052138
Figure 2015052138
次に、電気抵抗薄膜層の形成は、酸化防止の観点からは、減圧雰囲気下での成膜するのが好ましい。
形成する電気抵抗薄膜層は、ニッケル−クロム合金、モネル合金、コンスタンタン合金、マンガニン合金等のニッケル合金や、窒化タンタル等の窒化物や各種金属酸化物を用いることができる。このうち、銅張積層板の場合には、ニッケル−クロム合金が望ましい。
ニッケル−クロム合金の組成は、クロム含有率を5重量%〜30重量%とすることが望ましく、より望ましいクロム含有率は5重量%〜25重量%である。クロム含有率が5重量%未満では、電気抵抗が低いことと、導電層の銅の拡散を防ぐことが難しくなる。一方、クロム含有率が30重量%を越えるとニッケル−クロム合金の電気抵抗が低下すること、および、後述するようにフレキシブル配線基板の配線パターンを形成する際の化学エッチングが困難になることがある。
電気抵抗薄膜層は、スパッタリング法や蒸着法などの公知の乾式めっき法で形成できる。このうち、スパッタリング法が望ましい。
電気抵抗薄膜層の成膜時の温度は樹脂フィルムがガラス転移点以上またはα緩和温度以上にならないようにするため、内部に冷媒が循環するキャンロール1で樹脂フィルムを保持して冷却しつつ成膜することが望ましい。
電気抵抗薄膜層の膜厚は2nm〜5000nmが望ましい。
電気抵抗薄膜の膜厚が2nm未満では、膜成長の初期段階は島状であるため、均質な被膜を得られない場合がある。このように電気抵抗薄膜層が2nm未満では、電気抵抗薄膜層は、島状であるため、電気抵抗薄膜層による加熱も島状となり、密着性向上は望めない。
電気抵抗薄膜層を抵抗器として用いる場合は、抵抗器の電気特性等や加工性も考慮して2nm〜5000nmの範囲で膜厚を検討すればよい。また、銅張積層板のバリア層として電気抵抗薄膜層を設ける場合は、銅張積層板の配線加工性の問題から電気抵抗薄膜層の膜厚は2nm〜50nmが望ましく、更には2nm〜30nmが望ましい。
照射するマイクロ波は、周波数300MHz〜300GHzの電磁波を指すが、一般的には電子レンジ等で用いられる2.45GHzが、取り扱いやすいという点で一般的に使用できる。
マイクロ波照射による加熱の原理は、乾式めっき法で形成された電気抵抗薄膜層にマイクロ波を照射すると、マイクロ波は電気抵抗薄膜層を透過し、これに誘導されて渦電流が発生することによりジュール熱が生成されて、電気抵抗箔膜層が発熱し、これに接する熱可塑性樹脂フィルムが加熱される。
電気抵抗薄膜層に照射されるマイクロ波の電力は、所望の温度に加熱できれば良い。また渦電流はマイクロ波が照射されていない箇所では生じないため、マイクロ波が照射された部位のみが加熱される。
ここで、熱可塑性樹脂フィルムの延伸工程と加熱処理について説明する。
延伸により樹脂分子の配向が制御されることになるが、樹脂と金属などの被膜との密着性からすると、樹脂フィルムの表面はアモルファスであることが望ましい傾向にあり、延伸による樹脂分子の配向制御は望ましくない。
そこで、熱可塑性樹脂フィルムの表面のみに熱を加えることができれば、熱可塑性樹脂フィルム全体を加熱しないので、延伸による熱可塑性樹脂フィルムの寸法安定性と被膜との密着性を両立することができる。さらに、本発明に係る温度範囲に熱可塑性樹脂フィルムを加熱しても、熱可塑性樹脂フィルムの表面のみが加熱されるので、熱可塑性樹脂フィルムにシワや破断などの不具合が生じない。
従って、本発明に係る成膜方法では、熱可塑性樹脂フィルムの表面に成膜された電気抵抗薄膜層をマイクロ波照射により加熱し、生成する電気抵抗薄膜層のジュール熱で熱可塑性樹脂フィルムの表面だけを直接的に加熱処理する。
また、マイクロ波照射時の雰囲気は非酸化性または不活性雰囲気下で行うので、電気抵抗薄膜層が酸化することもない。ここで、非酸化性雰囲気とは、実質的に酸素等の酸化剤となる気体を含まない雰囲気である。また、不活性雰囲気とは、アルゴンなどの不活性気体の雰囲気である。
電気抵抗薄膜層の温度は、マイクロ波照射の影響を受けないファイバ式放射温度計で測定し、照射するマイクロ波の電力を調整すればよい。
電気抵抗薄膜層のマイクロ波照射による加熱温度は、熱可塑性樹脂フィルムのガラス転移点またはα緩和温度とフィルムの融点との間であり、より望ましくは、下記式(1)(熱可塑性樹脂フィルムが液晶ポリマーのようにガラス転移点を持たない場合には式(2))に示されるようにガラス転移点またはα緩和温度以上、フィルムの融点からガラス転移点またはα緩和温度を差し引いた差の1/3の温度を、ガラス転移点またはα緩和温度に加えた温度以下の温度範囲である。
Figure 2015052138
加熱温度が熱可塑性樹脂フィルムのガラス転移点またはα緩和温度未満では、熱可塑性樹脂フィルムの結晶配向は改善されない。一方、加熱温度が熱可塑性樹脂フィルムの融点を越えると、熱可塑性樹脂フィルムが軟化しすぎて変形したり、切断することがある。
従って、熱可塑性樹脂フィルムの変形を考慮すると、加熱温度の上限は、融点からガラス転移点またはα緩和温度を差し引いた差の1/3の温度を、ガラス転移点またはα緩和温度に加えた温度である。
なお、導体層形成後にマイクロ波を照射しても、マイクロ波による渦電流は殆どの電流は導体層を流れ電気抵抗薄膜層は発熱しないことから望ましくない。
ここで、ガラス転移点は、TMA(Thermal Mechanical Analysis)により測定し、ガラス転移点は、試料温度を上昇させていくと試料の比容積が膨張し、資料温度に対する比容積の変化の屈曲点のことである。
α緩和温度は、液晶ポリマーフィルムに用いられる温度指標であり、液晶ポリマーフィルムの主鎖セグメントのミクロブラウン運動に由来する温度であり、動的粘弾性装置(DMA:Dynamic Thermomechanometry)にて測定した値を用いる。
また、融点はDSC(Differential scanning calorimetry)を用いて測定し、JIS−K−7121に定められる融解ピーク温度のことである。
メタライジング法で得られる銅張積層板の金属膜と樹脂フィルムの密着性を向上させるために、加熱処理をすることは従来から知られているが、このような加熱処理は、樹脂フィルムの表面に金属膜を形成した後に行なわれる。
従って、ニッケル合金からなる電気抵抗薄膜層とその表面の銅からなる導電層の両者に熱がかかることとなる。この両者に熱がかかると電気抵抗薄膜層は樹脂フィルムとの密着性は向上するが、導電層は銅の結晶粒子が成長する。そのため、加熱処理を行ったために所望する導電層の結晶粒子が得られないことがあり、結果的に、導電層の結晶粒子が期待した状態ではないことから、銅張積層板の耐折り曲げ性や配線加工性等の特性が発揮されないことがある。
そこで、発明に係る電気抵抗薄膜層の成膜方法を銅張積層板の製造方法に利用すると、電気抵抗薄膜層や導電層の形成雰囲気を維持したままニッケル合金の電気抵抗薄膜層のみに熱処理ができる利点がある。電気抵抗薄膜層のみ加熱できることから、導電層の設計の自由度が向上するので、銅張積層板の設計の自由度も向上する効果が得られる。
次に、電気抵抗薄膜層にマイクロ波の照射により加熱した後に、導体層を形成する。
導体層は、銅または銅合金で構成することが望ましい。導体層を銅で構成すると銅張積層板の電気抵抗を低く抑えることができるのでフレキシブル配線基板の電気抵抗による信号のロスを防げるばかりか、経済的にも有利である。
導体層は、スパッタリング法や蒸着法などの乾式めっき法で、電気抵抗薄膜層の表面に10nm〜1μmの導体の薄膜層を形成する。
導体層の成膜時の温度は、樹脂フィルムがガラス転移点以上またはα緩和温度以上にならないようにするため、内部に冷媒が循環するキャンロールで樹脂フィルムを保持して冷却しつつ成膜することが望ましい。
導体層の成膜手順を具体的に説明する。図2はロール・ツー・ロールスパッタリング装置の一例である。
図2において、ロール・ツー・ロールスパッタリング装置10は、その構成部品のほとんどを収納した直方体状の筐体12を備えている。
この筐体12は円筒状でも良く、その形状は問わないが、10−4Pa〜1Paの範囲に減圧された状態を保持できれば良い。
この筐体12内には、長尺の樹脂フィルム基板である抵抗薄膜層が成膜された熱可塑性樹脂フィルムFを、供給する巻き出す巻出ロール13、キャンロール14、スパッタリングカソード15a、15b、15c、15d、前フィードロール16a、後フィードロール16b、テンションロール17a、テンションロール17b、巻取ロール18を有する。
巻出ロール13、キャンロール14、前フィードロール16a、巻取ロール18にはサーボモータによる動力を備える。巻出ロール13、巻取ロール18は、パウダークラッチ等によるトルク制御によって抵抗薄膜層が成膜された熱可塑性樹脂フィルムFの張力バランスが保たれるようになっている。
テンションロール17a、17bは、表面が硬質クロムめっきで仕上げられ張力センサーが備えられている。
スパッタリングカソード15a〜15dは、マグネトロンカソード式でキャンロール14に対向して配置される。このスパッタリングカソード15a〜15dの抵抗薄膜層が成膜された熱可塑性樹脂フィルムFの巾方向の寸法は、長尺樹脂フィルム抵抗薄膜層が成膜された熱可塑性樹脂フィルムFの巾より広ければよい。
抵抗薄膜層が成膜された熱可塑性樹脂フィルムFは、ロールツーロール真空成膜装置であるロール・ツー・ロールスパッタリング装置10内を搬送されて、キャンロール14に対向するスパッタリングカソード15a〜15dで成膜され、導体薄膜層付熱可塑性樹脂フィルムF2に加工される。
キャンロール14は、その表面が硬質クロムめっきで仕上げられ、その内部には筐体12の外部から供給される冷媒や温媒が循環し、略一定の温度に調整される。
ロール・ツー・ロールスパッタリング装置10では、銅ターゲットをスパッタリングカソード15a〜15dにそれぞれ装着し、熱可塑性樹脂フィルムを巻出ロール13にセットした装置内を真空排気した後、アルゴン等のスパッタリングガスを導入して装置内を0.3Pa程度に保持する。
次に導体薄膜層の表面に電気めっき法等の湿式めっき法で必要な膜厚となるまで電気めっき導体層を形成して導体層の厚付けをおこなう。なお、湿式めっき法で導体層を厚付けするのは乾式めっき法より経済的だからである。電気めっき法を用いる場合、硫酸銅水溶液等のめっき浴で電気めっきを行えばよい。また、めっき浴には、レベラーやブライトナーなどの公知の添加剤を添加しても良い。
形成する導体層の厚みは、0.1μm〜20μmが望ましい。
厚みが0.1μmよりも薄い場合、セミアディティブ法で配線加工する際に湿式めっき工程で給電がし辛くなるため好ましくない。20μmよりも厚くなると、エッチングによる配線加工の生産性が低下するばかりでなく、基板としての総厚も厚くなってしまうので、好ましくない。
プリント配線基板の配線はサブトラクティブ法又はセミアディティブ法で形成することができる。
サブトラクティブ法とは、銅張積層板の導電層を化学エッチング処理して不要部分を除去する方法である。即ち、銅張積層板の導電層のうち導体配線として残したい部分の表面にレジストを設け、銅に対応するエッチング液による化学エッチング処理と水洗を経て、導電層の不要部分を選択的に除去して導体配線を形成するものである。
また、セミアディティブ法とは、銅張積層板の下地金属層および導電層の上にレジスト層を形成し、フォトリソグラフィーにより、レジスト層をパターニングし、配線を形成したい箇所のレジスト層を除去して得られる導電層が露出した開口部に銅めっきを施し、配線を形成する。配線を形成後、レジスト除去を行い、不要な導電層および下地金属層を化学エッチング処理して極薄導電層および下地金属層部分を除去する方法である。
以下、実施例を用いて、本発明をさらに説明する。
熱可塑性樹脂フィルムには25μm厚みのポリエーテルエーテルケトンフィルム(PEEK)「クラボウ社製 エクスピーク ガラス転移温度320℃、融点342℃」を用いた。
電気抵抗薄膜層としてはNi(80wt%)−Cr(20w%)合金20nmとなるように、図1の成膜装置でスパッタリング成膜した。その成膜雰囲気は0.3Paのアルゴンガスであった。
ロール2と3の間でマイクロ波を照射することによって、ファイバ温度計が測定した熱可塑性樹脂フィルムの温度は320℃であった。その時のマイクロ波照射による加熱雰囲気は0.3Paのアルゴンガスであった。
その後、図2の成膜装置を用い0.3Paアルゴンガス雰囲気下で抵抗薄膜層の表面にCuからなる導体薄膜層を200nmスパッタリング成膜した後に、大気中常温常圧の下で硫酸銅水溶液を用いて導体層の膜厚が8μmになるように電気めっきを行い実施例1に係る銅張積層板を得た。
得られた銅張積層板の導体層を幅1mmの直線の帯状となるように塩化第二鉄溶液でエッチング加工しピール強度試験片を作製した。
ピール強度は、90°引きはがし試験であり、その結果は、445N/mであった。
(比較例1)
熱可塑性樹脂フィルムには25μm厚みのポリエーテルエーテルケトンフィルム「クラボウ社製 エクスピーク ガラス転移温度320℃、融点342℃」を用いた。
電気抵抗薄膜層としてはNi(80wt%)−Cr(20w%)合金、20nmとした。
ロール2と3の間でマイクロ波を照射することで、ファイバ温度計が測定した熱可塑性樹脂フィルム温度は300℃になった以外は実施例1と同様に試験を行った。
ピール強度は255N/mであった。
(比較例2)
熱可塑性樹脂フィルムには25μm厚みのポリエーテルエーテルケトンフィルム「クラボウ社製 エクスピーク ガラス転移温度320℃、融点342℃」を用いた。
電気抵抗薄膜層としてはNi(80wt%)−Cr(20w%)合金20nmとした。
ロール2と3の間にマイクロ波を照射することで、ファイバ温度計が測定した熱可塑性樹脂フィルム温度は350℃となり、熱可塑性樹脂フィルムは切れてしまった。
熱可塑性樹脂フィルムには25μm厚みの液晶ポリマーフィルム「クラレ社製 ベクスターCT-Z(登録商標) α緩和温度300℃ 融点325℃」を用いた。
電気抵抗薄膜層としてはNi(80wt%)−Cr(20w%)合金20nmとした。
ロール2と3の間にマイクロ波を照射することで、ファイバ温度計が測定した熱可塑性樹脂フィルム温度は303℃となった以外は実施例1と同様に試験を行った。
ピール強度は450N/mであった。
熱可塑性樹脂フィルムには25μm厚みの液晶ポリマーフィルム「クラレ社製 ベクスターCT-Z(登録商標) α緩和温度300℃ 融点325℃」を用いた。
電気抵抗薄膜層としてはNi(80wt%)−Cr(20w%)合金20nmとした。
ロール2と3の間にマイクロ波を照射することで、ファイバ温度計が測定した熱可塑性樹脂フィルム温度は300℃となった以外は実施例1と同様に試験を行った。
ピール強度は450N/mであった。
(比較例3)
熱可塑性樹脂フィルムには25μm厚みの液晶ポリマーフィルム「クラレ社製 ベクスターCT-Z(登録商標) α緩和温度300℃ 融点325℃」を用いた。
電気抵抗薄膜層としてはNi(80wt%)−Cr(20w%)合金20nmとした。
ロール2と3の間にマイクロ波を照射することで、ファイバ温度計が測定した熱可塑性樹脂フィルム温度は280℃となった以外は実施例1と同様に試験を行った。
ピール強度は245N/mであった。
(比較例4)
熱可塑性樹脂フィルムには25μm厚みの液晶ポリマーフィルム「クラレ社製 ベクスターCT-Z(登録商標) α緩和温度300℃ 融点325℃」を用いた。
電気抵抗薄膜層としてはNi(80wt%)−Cr(20w%)合金20nmとした。
ロール2と3の間にマイクロ波を照射することで、ファイバ温度計が測定した熱可塑性樹脂フィルム温度は330℃となり、フィルムは切れてしまった。
熱可塑性樹脂フィルムに6μm厚みの熱可塑性ポリイミドフィルム「クラボウ製 ミドフィル(登録商標) ガラス転移点 320℃、融点388℃」を用いた。
ロール2と3の間にマイクロ波を照射することで、ファイバ温度計が測定した熱可塑性樹脂フィルム温度は340℃となった以外は実施例1と同様に試験を行った。
ピール強度は475N/mであった。
(比較例5)
熱可塑性樹脂フィルムに6μm厚みの熱可塑性ポリイミドフィルム「クラボウ製 ミドフィル(登録商標) ガラス転移点 320℃、融点388℃」を用いた。
ロール2と3の間にマイクロ波を照射することで、ファイバ温度計が測定した熱可塑性樹脂フィルム温度は300℃となった以外は実施例1と同様に試験を行った。
ピール強度は290N/mであった。
(比較例6)
熱可塑性樹脂フィルムには25μm厚みのポリエーテルエーテルケトンフィルム(PEEK)「クラボウ社製 エクスピーク ガラス転移温度320℃、融点342℃」を用いた。熱可塑性樹脂フィルムに抵抗薄膜層を製膜することなく、0.3Paのアルゴンガス中で赤外線ヒーターの加熱によりファイバ温度計が測定した熱可塑性樹脂フィルムの温度が320℃となったところ、熱可塑性樹脂フィルムにシワが発生し試験を中止した。
(比較例7)
熱可塑性樹脂フィルムには25μm厚みの液晶ポリマーフィルム「クラレ社製 ベクスターCT-Z(登録商標) α緩和温度300℃ 融点325℃」を用いたことと、熱可塑性樹脂フィルム温度が305℃となった以外は比較例6と同様に試験を行ったところ、シワが発生し試験を中止した。
実施例及び比較例における試験結果を表1に纏めて示す。
Figure 2015052138
1 キャンロール
2 ロール(キャンロール入側)
3 ロール(キャンロール出側)
4 ロール
5 マイクロ波照射装置
F 熱可塑性樹脂フィルム
電気抵抗薄膜層を表面に設けた熱可塑性樹脂フィルム
F2 導体薄膜層付熱可塑性樹脂フィルム
M 金属ターゲット(蒸着源)
T ファイバ温度計
10 ロール・ツー・ロールスパッタリング装置
12 筐体
13 巻出ロール
14 キャンロール
15a、15b、15c、15d スパッタリングカソード
16a 前フィードロール
16b 後フィードロール
17a、17b テンションロール
18 巻取ロール

Claims (8)

  1. 熱可塑性樹脂フィルムの表面の少なくとも片面に接着剤を介することなく電気抵抗薄膜層を成膜した後、前記電気抵抗薄膜層へのマイクロ波照射により加熱を行い、前記加熱による電気抵抗薄膜層の温度が、ガラス転移点で定める加熱下限温度と、前記熱可塑性樹脂フィルムの融点からガラス転移点を差し引いた差の1/3の温度をガラス転移点に加えて定めた加熱上限温度との間となるように加熱することを特徴とする熱可塑性樹脂フィルムの表面への電気抵抗薄膜層の成膜方法。
  2. 熱可塑性樹脂フィルムの表面の少なくとも片面に接着剤を介することなく電気抵抗薄膜層を成膜した後、前記電気抵抗薄膜層へのマイクロ波照射により加熱を行い、前記加熱による電気抵抗薄膜層の温度が、α緩和温度で定める加熱下限温度と、前記熱可塑性樹脂フィルムの融点からα緩和温度を差し引いた差の1/3の温度をα緩和温度に加えて定めた加熱上限温度との間となるように加熱することを特徴とする熱可塑性樹脂フィルムの表面への電気抵抗薄膜層の成膜方法。
  3. 前記電気抵抗薄膜層が乾式めっき法で成膜されることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂フィルムの表面への電気抵抗薄膜層の成膜方法。
  4. 前記電気抵抗薄膜層に対するマイクロ波照射による加熱が、減圧雰囲気下または非酸化性雰囲気下で行われることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂フィルムの表面への電気抵抗薄膜層の成膜方法。
  5. 前記電気抵抗薄膜層が、ニッケル合金であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂フィルムの表面への電気抵抗薄膜層の成膜方法。
  6. 熱可塑性樹脂フィルムの表面の少なくとも片面に接着剤を介することなく電気抵抗薄膜層と銅からなる導電層を積層した銅張積層板の製造方法において、
    前記電気抵抗薄膜層が、請求項1から5のいずれかに記載の熱可塑性樹脂フィルムの表面への電気抵抗薄膜層の成膜方法を用いて形成され、
    且つ、電気抵抗薄膜層へのマイクロ波照射による加熱後に前記電気抵抗薄膜層上に導電層を形成することを特徴とする銅張積層板の製造方法。
  7. 前記導電層が、乾式めっき法で形成されていることを特徴とする請求項6に記載の銅張積層板の製造方法。
  8. 前記導電層が、乾式めっき法による成膜層と、前記成膜層上に湿式めっき法による成膜層を備えることを特徴とする請求項6に記載の銅張積層板の製造方法。
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