以下の詳細な説明において、対応する部分については明細書及び図面を通じて同じ参照番号がそれぞれ記されている。図面は必ずしも正確な寸法及び形状ではなく、明りょう及び簡潔とする目的又は情報を提供する目的で一般化又は概念的な形式で表される場合がある。
本明細書において圧迫装置、並びに一つ又はそれ以上の人体の部位若しくは解剖学的な構造の圧迫を伴う治療の実施及び使用の方法について記述する。圧迫を伴う治療は急性の障害、慢性の障害、手術後又はその他の障害からの回復のため、痛み又は炎症に対して、運動後に、又は障害の防止若しくは現在の状態の悪化防止として、体の一部又は複数の部位に対して実施することができる。圧迫装置は装置内の流体によって心臓に向かう方向に順次的な圧迫を促進する。圧迫は断続的であり、概して予め決められた方法で適切な装置の配置で加えられる。そして圧迫は順次的な流体(例えば、気体、液体など)の動き及び/又は分布で対象となる人体の部位又はその近傍で遂行される。流体の動きは後述するように予め定義付けられたアルゴリズムに従い、流体の動きは概して心臓に向かう方向、すなわち、より末端側の位置からより基部側の位置へ向かう方向となる。人が動かないとき又は動作しているときに、圧迫装置自体が身に着けられることができても良い。多くの実施例において、圧迫装置は温度調整可能な構成要素又は温度変動可能な構成要素を有する。これらは、圧迫及び予め定義されたアルゴリズムと組み合わせることによって対象の人体の部位又はその近傍において有効な治療のために管理された環境を提供する。圧迫装置の様々な構成要素は再利用、洗浄及び/又は使い捨てとすることが可能である。
図1Aを参照すると、代表的な圧迫装置は第一の部分20及び第二の部分30を有している。第一の部分20と第二の部分30のいずれか又は両方は透明、半透明、不透明若しくはそれらの組み合わせとすることができる。第二の部分を有する場合は、第一の部分と第二の部分は互いに協働することができる。協働には第一の部分及び第二の部分を一つ若しくは複数の保持手段34によってしっかりと保持すること又はぴったりと合わせることを含む。保持手段34は粘着性のフィッティング、機械的なフィッティング及び/又は化学的なフィッティングを含むがこれに限定されない。適当な例として、一つ又は複数のクリップ、ボタン、フック、磁石、縛ってくくりつけるもの、タブ、バックル、スナップ、フックと輪、ベルクロ、接着剤、縫い合わせ及びこれらのあらゆる組み合わせによる接続が含まれる。他の保持手段は関係する技術について知識を有する者に理解される範囲のものが適用可能である。代表的な保持手段34の例は図1F、図1G、図4C、図5C及び図6Cに表される。協働は、一つ又はそれ以上の実施例において、第一の部分及び第二の部分の外縁又はその近傍においてもたらされ、外縁全体における確保を要しないが、これを含んでも良い。確保は様々な特異的な位置においてのみ第一の部分と第二の部分の間でなされても良い。協働は、第一の部分に設けたポケット又はハウジングに第二の部分の全体又は一部を位置させることを含んでも良い。
図1Aは更に管50と圧迫装置の間に着脱可能な結合を提供する接続要素40を例示する。接続要素40は管と第一の部分20との接続を提供することが示されているが、これと共に又はこれに代えて、接続要素40は管と第二の部分30との接続を提供するように配置することができる。本実施例では、接続要素40は管50と第一の部分20の内部の間の流体の接続を提供するポートを有する(また、図示されていないが、管50と第二の部分30の内部を流体が流れるように接続しても良い)。接続要素70は管と供給源60の間の着脱可能な接続を提供する。接続要素70もまた管50と供給源60の間の流体の接続を提供するポートを有する。
供給源は容易に携帯可能であってもよく、携帯性が劣るか又は固定された機械の形態としても良い。図1Aに、容易に携帯可能な供給源が示されている。一つ又はそれ以上の実施例において、携帯可能な供給源は長手方向において凡そ8インチ(凡そ20.3センチメートル)かそれ以下である。供給源は容易に携帯可能か携帯性が劣るか又は固定されているかに関わらず、管、ポート及び接続要素を介して第一の部分(第一の部分に接続されている場合)及び/又は管、ポート及び接続要素を介して第二の部分(第二の部分に接続されている場合)へ流体を供給する。供給される流体は概して加圧されている(例えば、圧迫装置に流体が流れることができるように接続された電池その他の動力によるポンプによる方法によって)。供給源は圧力及び/又は温度を監視及び/又は調節するコントローラー(例えば、マイクロプロセッサー)を有する。いくつかの実施例において、供給源は圧力センサ(例えば、圧迫装置内の流体の圧力を監視する目的で)、温度センサ(例えば、体の部位の温度を監視する目的で)及び/又はインピーダンスを測定するセンサ(例えば、体の部位のインピーダンスを監視する目的で)、に接続される。供給源は更に着脱可能なカバーを設けることができる。加えて、供給源にはまたアナログ又はデジタルの表示装置及び/又はコントロールパネルを(例えば、手動又は遠隔操作によって起動可能なスイッチと共に)設けることができる。供給源には更に、特定の圧力に達した場合にポンプが停止又は圧力を低下させることを許容する一つ又はそれ以上の安全機構を設けことができる。安全機構は警報、警告灯及びこれらの様々な組み合わせと接続することができる。例として、供給源は制御可能に圧縮機及びバルブ機構(例えば、ソレノイドバルブ)に接続されたコントローラーを有し、圧縮機及びバルブ機構のいずれかは基部(例えば、マニフォールド)上に配置され、圧力が装置に設定された最大圧力よりも高くなった場合には、圧力を解放するように圧力センサが安全機構(例えば、バルブ)を制御できるように構成しても良い。その他の例として、供給源にはポンプ及びバルブ機構(例えば、ソレノイドバルブ)、圧力ゲージ、マフラー、及び、排気機構又は解放機構(例えば、機械式の吹き出し弁又はその他の積極的若しくは消極的機構)を制御可能なコントローラーを設けることができる。いずれのバルブ機構もポンプ及び流体をためる袋と接続する引入口管によって操作可能である。本実施例において、圧力ゲージはソレノイドバルブ(連通及び圧力の解放について)及びポンプと(ポンプの起動及び停止について)操作可能に連絡する。解放機構は圧力が圧迫装置に設定された最大圧力よりも高くなった場合に圧力を解放する消極的安全機構として、流体をためる袋と操作可能に連絡する。
一つ又はそれ以上の実施例において、供給源はコンパクトであり、着脱可能又は常設的に第一の部分の外側に向く表面に配置することが可能である。代表的な例は図17、図18及び図19に表わされている。これらに示されるように、供給源はいくつかの実施例において、圧迫装置に接続及び/又は分離可能である。携帯性を高めるために、供給源にはその構成要素の動力を供給する携帯可能な動力源(例えば、太陽電池、電気式若しくは電気式以外のバッテリー又はバッテリー以外の動力であっても良い)を設けることができる。携帯可能な動力源は供給源の構成要素に動力を供給する。供給源にはまたバッテリーの充電レベルの表示器を設けることができる。望まれる場合は、一つ又はそれ以上の供給源の構成要素は再充電可能及び/又は使い捨て可能とすることができる。
第一の部分20は典型的にボディ24、互いに向かい合う側面部分23、心臓に近い基部側の部分又は端を有する基部26、及び心臓から遠い末端側の部分又は端を有する末端部28を有する。概して接続要素40は、第一の部分上(又は第二の部分上)に位置する場合は、末端部28又はその近傍に配置される。第一の部分の代表的な形状を表すいくつかの代表的な実施例は図2から図19に例示されている。
図面に描かれ、また、追加の実施例にもあるように、第一の部分20は概して改良された人間工学に基づいたデザインを有し、一つ又は複数の人体の部位及び解剖学的な構造に従って適合する。平らでない形状の解剖学的な部位、例えば膝、肩、肘、足首のような部位にもちいる場合は、図2Aから図2J、図4Aから図4Cに例示されるように、第一の部分を、後退した面である第一の外側の表面と、突出した表面である第二の外側の表面を有するようにしても良い。後退及び突出した外側の面をそれぞれ形成することを補助するため、第一の部分には更に隙間、切れ込み、又は空間25及び/又は閉鎖手段又は要素27を設けることができる(図2Aから図2Jを参照)。閉鎖手段は粘着性フィッティング及び/又は機械的なフィッティングを含むがこれらに限定されない。適当な例として、一つ又は複数のクリップ、ボタン、フック、磁石、縛ってくくりつけるもの、タブ、バックル、スナップ、フックと輪、ベルクロ、接着剤、縫い合わせ及びこれらのあらゆる組み合わせによる接続が含まれる。他の保持手段は関係する技術について知識を有する者に理解される範囲のものが適用可能である。図4B、図4C及び図6Cに示されているように、望まれる場合は改良された解剖学的な構造への適合を得るために、着脱可能部29は人間工学に基づいたデザインを施されていても良い。着脱可能部分は流体の圧縮の防止や又は温度調節のために治療対象の人体の部位上又はその近傍に一つ又は複数の特定の解剖学的な部位に設けられる。このように、着脱可能部はしばしば流体圧縮を提供する構成要素を除外する。着脱可能部は、後述するように温度調整可能な構成要素又は温度変動可能な構成要素を有していてもよく、また、有していなくても良い。
第一の部分20は典型的に更に一つ又はそれ以上のエクステンション22を有する。エクステンションは第一の部分20と(例えば、図1A、図14B、図15B、図16Bに表わされたように)一体的及び連続的に形成することができ、かつ/あるいは第一の部分20と分けて形成することができる(例えば、図5Aから図5C、図12B、図13B)。追加された代表的な実施例におけるエクステンション22及び適当なデザインは、膝関節の前側に配置するためのものを含めて図7から図11及び図17から図19に表わされている。さらに、図示されていない更なるデザインも関係する技術について知識を有する者に理解されるであろう。一つ又はそれ以上のエクステンションは互いに及び/又は第一の部分と(しばしばその外側又はその外側の表面において)あらゆる保持手段又は留め具75によって協働することができる。保持手段は又は留め具75は粘着性フィッティング、機械的なフィッティング及び/又は化学的なフィッティングを含むがこれらに限定されない。適当な例として、一つ又はそれ以上のクリップ、ボタン、フック、磁石、縛ってくくりつけるもの、タブ、バックル、スナップ、フックと輪、ベルクロ、接着剤、縫い合わせ及びこれらの組み合わせによる接続が含まれる。その他の保持手段は関係する技術について知識を有する者に理解される範囲のものが適用可能である。留め具75の代表的な例は図11A、図11B、図12から図12C、図13から図13C及び図16Aから図16Cに特定される。
治療対象の人体の部位が手足に位置している場合、一つ又はそれ以上のエクステンションは、いくつかの実施例において、少なくとも一つのエクステンションが手足を取り囲む長さを持っていても良い(例えば、図8B、図11B、図12B、図13B、図14B、図15B、図16B)。同様に、対象の部位が胴体に位置している場合、一つ又は複数のエクステンションは、いくつかの実施例において、少なくとも一つのエクステンションがめいめいに胴体を取り囲む長さを持っていても良い。これに加えて又は代えて、一対のエクステンションが互いに交わり、保持又は固定のためのあらゆる手段によって協働するようにしても良い。保持又は固定のための手段は粘着性フィッティング、機械的なフィッティング及び/又は化学的なフィッティングを含むがこれらに限定されない。適当な例として、前述したように、一つ又は複数のクリップ、ボタン、フック、磁石、縛ってくくりつけるもの、タブ、バックル、スナップ、フックと輪、ベルクロ、接着剤、縫い合わせ及びこれらの組み合わせによる接続が含まれる。その他の保持手段は関係する技術について知識を有する者に理解される範囲のものが適用可能である。
本明細書において記述された一つ又はそれ以上のエクステンションは、適切な配置及び人間工学に基づいた圧迫装置の配置による補助を提供する。当該記述されたエクステンションは、すべりによる移動や周囲の解剖学的な構造の領域によるエクステンションの移動を防止する目的を持って配置及び形成されているため、代替的な方法と異なる。周囲の解剖学的な構造の領域はエクステンションが位置すべきでない範囲又は領域も含む。例えば、本明細書において記述されたあるエクステンションの形態は人間工学に基づいて設計され、皮膚又は軟組織のうち敏感な及び/又は表面近くの神経及び血管を有する部分に圧力を加えることを防止する。加えて、一つ又はそれ以上のエクステンションは、そのデザイン及び配置によって圧迫下での圧迫装置の正確な配置を確実にする。人間工学に基づいたデザイン及び配置の例として、膝について説明する。膝は膝関節の裏側の領域を有し、膝窩又は膝窩領域と呼ばれる。この領域は総脛骨腓骨神経、膝窩血管、伏在静脈の末梢、閉鎖神経の関節枝、下部後大腿皮神経の下部及び小さなリンパ腺を含む、敏感な神経及び血管を有している。膝窩領域への圧力の付加を防ぐために、本明細書において記述された一つ又はそれ以上のエクステンションは、(あくまで一例として)膝関節の前側又はその近傍で使用される装置と協働する場合は、それぞれのエクステンションは膝窩部又はその近くでは膝の裏側の領域から離れるような方法で延長するような形状を有し、一方ではまた、装置の端部(基部及び末端部)又はその近傍に人間工学に基づいて配置されるように形成される。この特徴的かつ独特なデザインはその領域への圧力の付加を防止している。この設計は更に曲線からなる形状を有しており、その形状は膝窩部を避けて伸びている。この人間工学に基づいたデザインは、圧迫装置の末端部側及び基部側の端部又はその近傍への配置とともに、エクステンションの膝窩部への移動を防いでいる。ここで説明したような形状でも配置でもない代替的なデザインでは、エクステンションの膝窩部への移動がおこる。従って、ここで説明した装置は、治療対象の人体の部位に近い一つ又は複数の敏感な領域を保護するために設計されたものである。これは多くの実施例で、あらゆる断続的な圧迫を敏感な領域に加えることの防止と更に組み合わせることが可能である。
このように、本明細書において記述された一つ又はそれ以上のエクステンションは、いくつかの実施例において、延長領域(又はその部分)において治療部位付近の敏感な領域から逃れるように曲がる曲線を有する。一つの実施例において、膝の前側に配置され、一対のエクステンションをもちいて圧迫装置の配置を補助する場合(いずれか又は両方のエクステンションは互いに交差し及び/又は足に巻き付いている)に、第一のエクステンションは圧迫装置の基部側の端又はその近傍に配置され(従って、固定した場合には大腿部の下側であって膝窩部の上側に配置される)、第二のエクステンションは圧迫装置の末端側の端又はその近傍に配置される(従って、固定した場合にはふくらはぎの上側であって膝窩部の下側に配置される)。他の実施例において、治療の対象部位が肘関節であり、いずれか又は両方のエクステンションが互いに交差し、及び/又は手に巻き付いている場合に、それぞれのエクステンションは互いに距離をおいて配置することができる(概して、圧迫装置のより末端側の部分又は端部と接するエクステンションと、より基部側の部分又は圧迫装置の端部と接するエクステンション)。いずれのエクステンションも、肘関節の内側にある敏感な神経及び血管から逃れるように曲がる曲線からなる形状を有し、放射状及び鰓形状の動脈と正中神経および放射神経に対する締め付けを防止している。そして、固定した場合には基部側のエクステンションは上腕の下端部であって、かつ、肘関節の内側の場所よりも上方に(肘関節の内側の場所への圧迫を防止するため)位置する。また、末端側のエクステンションはほぼ前腕の上端の領域であって、かつ、肘関節の内側の場所よりも下方に(肘関節の内側の場所への圧迫を防止するため)位置する。更に他の実施例において、圧迫装置が手首の周囲にある場合に、基部側及び末端側のエクステンションは互いに離れて配置することができる(それぞれの又は両方のエクステンションは互いに交差し、及び/又は手に巻き付いている)。そして、それぞれのエクステンションは手首の手の平側から離れる曲線部と、その中で尺骨神経及び尺骨動脈並びに正中神経(ギヨン管及び手根管)を支えると共にそれを通過させるトンネル状の構造を有し、ギヨン管及び手根管への締め付けを防いでいる。
人間工学に基づいた補助は補助具80(例えば、図11A及び図11B)によっても提供されうる。補助具80はねじ止め、環状、ベルクロ様及び/又はその他の解放(かつ、着脱)可能かつエクステンション22と協働するのに適当な形状をとることができる。補助具80は必要に応じてエクステンションの配置決め及び固定を補助する。
一つ又はそれ以上の実施例において、実施例にて記述されたエクステンションの形態はエクステンションの間に十分な空間を要する。そして、多くの実施例においては一つ又は複数のエクステンションのうち少なくとも一つは曲線をなす形状を有しており、曲線状の部分は締め付けを避けるべき特定の領域から離れるように曲がっているとともに、エクステンションが特定の領域に移動することの防止に寄与している。エクステンションの厚みは対象部位又はその近傍の特定の領域の締め付けを防止する場合にのみ制限される。これらの実施例において、十分な空間及び/又は曲線をなす形状なしに、エクステンションの配置をすることは望ましくない。なぜなら、これらの構成なくしては、エクステンションの移動が特定の領域に対する締め付けという結果を生み、これにより領域によっては有害な効果をもたらすからである。
前述したように、圧迫装置の第一の部分は二つの大きな互いに向き合い、外側に延長する面を有している。第一の外向き面は人の体に向いた表面である。この面は対象の人体の部位に直接配置する、又は、多くの実施例においては中間層を有することができる。例として、第一の外向き面が図1Gに記載されている。図1Gにはまた中間層が示されている。中間層は第一の外向き面の全体と協働するようにしてもよく、そのうちの一つまたは複数の部分のみと協働してもよい。中間層は保護用又は耐性の面又は層である。また、第一の部分の第一の外向き面には、第二の部分の全部または一部を収納するポケット又はハウジングを設けても良い。第二の部分が含まれる場合には、第二の部分は第一の外向き面(又は、含まれる場合には、第一の外向き面と第二の部分の間に存在する中間層)と協働する。第一の部分の第二の外向き面は、圧迫装置が対象部位に配置された際に見える面であり、概要は図1A、図2から図16、図17A、図18A及び図19Aに表わされている。第一の部分の一つ又は両方の外向き面は、浸透性のものとすることができる。外向き面はまた、いくつかの実施例において撥水性、耐水性、(毛細管作用による)排水作用又はこれらの複合を供する表面と組み合わせることができる。
第一及び第二の外向き面は同一の組成若しくは材質又はそれらの層の互いに反対側の面とすることができる。または、第一及び第二の外向き面は独立した組成若しくは材質とし、例えば、それぞれの組成又は材質を単独の層又は複数の層で形成しても良い。第一及び第二の外向き面が独立している場合、第一及び第二の外向き面の間に流体保持チャンバー又は流体で膨らむ袋(以下、単に「袋」と表現する場合がある)が形成される。第一及び第二の外向き面が同一の組成若しくは材質又は層である場合、流体で膨らむ袋は第一の外向き面と袋の間に中間層を設けない限り、治療部位に対向する面である第一の外向き面に接する位置に設けられる。
本明細書において記述された圧迫装置は概して一つの袋のみを有している。本明細書において記述された袋は一つ又は複数のチャンバーを有している。チャンバーは順次的及び方向性をもって、流体の加入による袋の膨張がなされるように構成される。流体の供給源はポンプ、圧縮機又はその他の流体を袋に供給するのに適した手段をもちいることができる。袋は第一の部分のボディと同じかそれに近い大きさ又は第一の部分のボディよりも小さな大きさとすることができる。袋は、拡大及び縮小を圧迫の周期毎に行うため、その大きさに応じて第一の部分の全て、ほぼ全て又は一部を拡大させ、また、縮小させる。袋の代表的な実施例は図1C及び図1Dに示されている。このような形状は関節部、例えば膝関節に配置するために特に適している。追加の形状及びデザインもまた、関連する技術について知識を有する者に理解される範囲において適用可能である。
袋は空気若しくはその他の気体、液体又はゲル等の流体で満たされることが可能であり、また、圧迫の周期毎に、流入した流体を実質的な損失なしに保持することが可能である。流体は供給源(例えば、図1Aの供給源60)によって袋に供給され、一般的には一つ又はそれ以上の接続要素(例えば、図1Aの接続要素40)を介して注入口(例えば、図1C及び図1Dのポート35)に向けて移動させられる。流体は解放、消散又は排気されてよく、または既知の方法によって抜け出るようにしても良い。一つ又はそれ以上の形態において、流体の解放は流体の供給源(例えば、ポンプ)と作動可能に接続されたソレノイドバルブによって生じる。その他の実施例においては、袋及び/又は供給源に取り付けられた排気管(例えば、導管)として第二のポートを設けることができる。概して、流体は周期的に移動する。流体は一定の周期で供給されても良いし、異なる周期で供給されても良い。各周期において、流体は膨張期間の全体において供給されても良いし、又は、パルス状又は正弦関数状の変動に応じて供給されても良く、また、ときには膨張期間の一部のみで流入するようにしても良い。
本明細書において記述された、圧迫装置によって提供される指向性の圧迫は以下のように行われる。すなわち、流体が指向性をもって袋の第一のチャンバーから順に満たされ、次いで選択的に一つ又はそれ以上の付加的なチャンバーに満たされる。第一のチャンバーは心臓から最も遠い位置、又は心臓から最も末端側の位置に配置される。残りのチャンバーを有する場合は、第一のチャンバーよりも心臓に対して近い又は末端側でない位置に配置される。従って、いくつかの実施例において、一つ又はそれ以上の末端側のチャンバーは最初に満たされ、次いで一つ又はそれ以上の末端側でない側のチャンバーが満たされる。いくつかの実施例においては、単一のチャンバーが受動的に満たされるが、最も心臓から末端側の特定の位置から満たされる。図1C及び図1Dにおいて、注入口35が表されており、注入口35は流体を袋に向かわせるために利用される。加えて、例えば膝のようないくつかの関節のために、袋は流体によって満たされることのない一つ又は複数の流体チャンバーを有していても良い。例えば、図1Cに示されるように、穴又は満たされない空間であるチャンバー38を設けることができる。一つの実施例において、流体は注入口35に供給される。チャンバーの形状によって、流体はチャンバー36を最初に満たし、次いで、チャンバー37、そして、最後に最終チャンバー39を満たす。チャンバー38に流体は流入しない。前述したように、一つ又はそれ以上の実施例において、流体は予め決められた指向性をもった方式で袋に入り、治療対象の人体の部位に順次的、指向的な方式で圧迫を導く。例えば、指向性をもった方式で流体の動きを方向付ける経路を袋に設けても良い。
一つ又は複数の袋のチャンバーは、いくつかの実施例において、互いに流体を伝達可能となっており、一つの流体供給源があれば袋に順次的、指向的に流体を供給するのに十分である。他の実施例において、袋は、一つよりも多いチャンバーを有することで、完全に又は部分的に区画されている。区画化された袋には同一の流体供給源をもちいることができ(例えば、一つ又は複数のバルブ、継手及び/又は接続要素を介して)、又は、順々に付加的な及び/又は独立した流体供給源を使用して順次的及び指向的な方法で各々の区画化されたチャンバーに流体を導入しても良い。このようなチャンバーはまた流体の伝達をより少なくする、無視できる程度にする又は全く流体の伝達をなくして、互いに独立させても良い。チャンバー及び/又は流体供給源の数に関わらず、先に説明したとおり、心臓に関して第一のチャンバーよりも末端側にないあらゆる追加的なチャンバーへの順次的な流体の導入及びそれによる圧迫に先立って、流体は最初の一つ又はそれ以上の最も心臓から末端側の第一のチャンバーへの導入とともに袋の中に導入される。先に説明したように、袋は更に必要であれば、流体を逃がす流体の解放ユニット(例えば、リリースバルブ及び付随する構成要素)を有していても良い。袋の解放ユニットへの接続は、袋が第一の部分に密着している場合に、第一の部分を介してなされるようにすることができる。このように、本明細書において記述された袋は、順次的に膨張する区画を一つより多く有しうる袋である。順次的な膨張はまた、一つ又はそれ以上のチャンバー間の流れを制限することによって導くことが可能である。いくつかの実施例において、流れの制限はバルブ、狭窄した通路、又は予め定められた圧力によってのみ反応する制御バルブを介して、及び/又はチャンバーを区画化し、各々のチャンバーを別々の流体供給源と接続し、予め定義されたかつ制御されたパターン又は順番又は圧力に応じて(例えば、ソレノイドバルブを介して)膨張するようにすることで、実施することができる。
袋の大きさは処置する面積及び人体の部位がどこであるかに依存する。多くの実施例において、対象とする人体の部位は関節またはその近傍である。人体の部位には指関節、手首、肘、肩、腰、膝、足首、足、足指関節のうちの一つ又はそれ以上を含む。人体の部位には足の一部、腕(前腕、上腕)、脚(ふくらはぎ、太もも)又は体幹下部(背中下部、尻)を更に含む。圧迫装置が関節の表面又はその近傍に配置することを目的とする場合に、袋はしばしば目的とする関節又はその近傍に配置するために特別に設計される。図1C及び図1Dに表されるように、袋は膝のような関節に合わせて独特の形状に形成されている。多くの実施例において、袋自体は手足をくるまないが、処置する部位のみに圧迫を提供するために適切な大きさとされている。代表的な袋の形状はまた処置する部位の特定の部分を直接的に圧迫することを防ぐことができる。例えば図1B、図1C,及び図6に記載されているように、このような例は圧迫を直接的に膝蓋骨に伝えることがない。更なる実施例は体の他の部分、例えば基部の指の骨、外果及び内果の基部表面への圧力を最小化又は避けるデザインを含む。代替として、袋を含む全ての装置は関節の大部分を包み込むように又は手足全体に完全に巻き付くように形成しても良い。
典型的な流体及びそれに伴う圧縮は周期的に伝えられ、圧迫の程度は袋に導入される流体の体積に依存する。流体を袋内の導入するための特別なアルゴリズムで提供することによって、それにより独特な形状の袋を断続的に圧迫することにより、対象部位への治療が最適化されることが明らかにされている。最小の情報で、様々な体の部分に対して処置の効果を最大化し、より処置に適した方法を提供するための処置のアルゴリズムが準備される。
一つ又はそれ以上の実施例において、袋は第一の部分に密着するように構成され、かつ第二の部分(例えば、図1Aに記載の第二の部分30)の全て又は一部と協働する。いくつかの実施例において、袋及び第二の部分は極めて近似した寸法、例えば長さ及び幅を有することとなる。一方、袋と第二の部分の厚みは異なるもので良い。例えば、図1Cに代表されるような袋のデザインは、いくつかの実施例において、図1Bに代表される第二の部分と協働する。例えば袋のチャンバー38及び第二の部分の領域90は互い同じような位置に配置され、そして、袋のチャンバー37と第二の部分の領域90は互いに同じような位置に配置される。いくつかの解剖学的な構造のために、第二の部分は、圧迫装置を使用するために配置した場合の第一の部分と第二の部分の改良したはめ合わせを提供するために、更に形成されることが更に理解されるであろう。例えば、ある解剖学的な構造のために、第一の部分が後退した面である第一の外側構造と、突出した面である第二の外側構造を有する場合に、第二の部分は一つ又はそれ以上の接続要素によって(例えば、接続要素又は連結器32、図1A及び図1Fを参照)、同様に成形することができる。このような第二の部分に設けられる接続要素によって、第二の部分の表面を同様の形状とし、また突出した表面とこれと対向する後退した表面を含むようにすることができる。接続要素又は連結器は典型的に第二の部分の離間した端部に位置し、従って第二の部分は接続要素を介して一つにまとめられる。このような第二の部分の代表的な実施例は、連結要素によって突出した表面が提供され、図1Fに記載された後退した表面と向かい合うように更に形成される。
第二の部分は温度変動可能な構成要素又は材料を包み込む密封要素である。本明細書において記述された温度変動可能な構成要素又は材料は典型的には液体又はゲル状の流体であるが、実施の形態によって、可鍛性又は形状を変更可能な固体をもちいても良い。一つ又はそれ以上の特徴として、温度変動可能な構成要素又は材料はゲルであり、ハイドロゲルであり得る。ゲルとして有用な材料の例にはシリカ(例えば、ビニル被覆シリカゲル)、ハイドロキシエチルセルロース、プロピレングリコール又はスラッシュパウダー(高吸収性ポリマー、高吸収性交差結合パウダー又はRoshgo社のTemtro Dry Gelを一例とする高吸収性交差結合ナトリウムポリマー)を含むが、これらに限定されない。多くの実施形態において、温度変動可能な構成要素は水のそれよりも低い氷結温度に到達することが可能である。このように本明細書において記述された圧迫装置がこのような低温の材料をもちいている場合に、下方に位置する組織又は人体の部位の温度が水又は氷水を循環する装置とともに到達され得る温度よりも低くなる。例えば、水又は氷水を循環する装置では、15分又は20分又は30分(例として)といった短い時間の間に運転した場合では一般的に60度(華氏、摂氏15.5度)以下である組織の温度に到達しない。一方、本明細書において記述された装置は前述した温度変動可能な構成要素をもちいているため下方に位置する組織の温度は60度(華氏、摂氏15.5度)に到達し、更に低い50度(華氏、摂氏10度)又はさらにそれよりも低い温度に到達することがある。温度変動可能な構成要素はまた不凍性材料をもちいることができる。不凍性材料には、プロピレングリコール、エチレングリコール、グリセロール及び塩化ナトリウムが含まれるが、これらに限定されない。水を含んでいる温度変動可能な構成要素に加えることで、不凍性材料は水の凝固点以下に達した場合でも構成要素の弾性を保つ働きをする。温度変動可能な構成要素は更に、望ましい温度に到達したとき及び/又は望ましい温度でなくなったときを示す化学的な指標(化学指示薬)を有していてもよい。化学指示薬は一般的に染料又は温度によって色が変化するインク(サーモクロミックインク)の形態をしているか、又は化学吸着性の分子であっても良い。一つ又はそれ以上の実施例において、温度変動可能な構成要素は好ましくは第一の温度から第二の温度に調整されるが、時間をおくことによって第一の温度に戻る(第二の温度から取り除いた場合)、これは、その材料は第二の温度から取り除かれた場合には一定かつ明確に限定された時間のみ第二の温度を保持することによる。このような材料は安全性が高く、しばしば人体の部位を処置するのに好ましいと考えられている。なぜなら、アメリカ食品医薬品局(Federal Drug Administration)によれば、それは人体の部位を過熱又は過冷却することに伴う直接的又は間接的な障害又は損傷のリスクを減らすと考えられるからである。これは低温の水や氷水を循環させる装置を一定時間使用した際に手足などの人体の部位に凍傷を含む重篤な損傷を引き起こす場合があることと対照的である。
密封要素の代表的な実施例は図1A、図1B、図1E及び図1Fに表わされている。前述したように、密封要素の大きさ及び形状は前述した袋のそれと同じ又は近いものである。代替的に、密封要素は概して袋の大きさよりも小さくすることができる。このような変更は袋と温度変動可能な構成要素との間に独特の協働をもたらす。すなわち、圧迫にかかる一つ又は複数の領域への温度のより均一な分配がなされ、ひいては、治療対象の部位の組織における効果的な温度への到達が改善する。
いくつかの実施例において、本明細書において記述された装置による断続的な圧迫を加えた後には治療対象の部位の組織が到達する効果的な温度は実質的に全ての部位で同じである。一方、他の実施例において、望まれる場合は、治療対象の部位の組織の効果的な温度は変わりうる。一つ又はそれ以上の形態において、温度変動可能な構成要素を区画化すること(いくつかの温度変動可能な構成要素の区画はより大きな体積又は量の温度変動可能な構成要素を有する)、及び/又は袋の異なる部分には異なる圧力を加えることによって、温度の傾斜が達成される。一例として、図1Bに示すように、第二の部分は少なくとも区画又は領域90、92及び94を有する。一つの実施例において、領域90は領域94及び領域92のいずれよりも、多くの温度変動可能な構成要素を単位面積あたりで有している。領域90内の温度変動可能な構成要素の量(合わせたもの)は領域94内の量(合わせたもの)の2倍と同等かそれ以上とすることができる。領域92内には温度変動可能な構成要素の量は、図1Bに示す実施例においては、無きに等しい。しかしながら、第二の部分が機能を有さない区画又は少量又は無視可能な量の温度変動可能な構成要素を有する場合は、領域92内の温度変動可能な構成要素の量は、これらの実施例においては、それぞれ少量又は無視できる程度である。他の実施例において、領域90は領域94と同じ量の(単位面積当たり)温度変動可能な構成要素を有している。
密封要素の区画化は温度変動可能な構成要素の移動を減少させるために望まれる。区画化をしなければ、温度変動可能な構成要素の少なくとも一部は圧迫装置が順次的及び断続的に圧迫されたときに移動をし、結果として、温度変動可能な構成要素の不均一な配分を時間と共にもたらす。温度変動可能な構成要素の不均一な配分は圧迫装置が下方に位置する組織内の均一な温度配分をすることができなくなる結果を導く。従って、前述したように、第二の部分は満たされる部分の区画を有し、温度変動可能な構成要素の移動を防止する。満たされる部分の区画は完全に分離させても良いし、少なくとも一つの別の区画にいくばくか最小限の流体の伝達を提供するようにしても良い。本明細書において記述された密封要素の別の長所は、これらを二つの形状(第一の初期形状及び第一の部材の形状と一致する第二の更なる形状)のうち一つをとることを許容することによって、密封要素が簡単に第一の形状に(冷凍庫の中などでは)折りたため、大きな空間を占めることがない。そして、温度変動可能な構成要素が所望の温度に達することができなくなったときなど望まれる場合は、密封要素は素早く互いに取り替えることができる。
いくつかの実施例において、第一の部分による順次的かつ断続的な圧迫と、第二の部分における温度変動可能な構成要素の独特の分配及び区画化が提供される。さらには、第二の部分における温度変動可能な構成要素の区画化は更に袋と組み合わせ、特異的に協調することができる。袋(第一の部分と結びついている)と第二の部分は類似又は実質的に同一の全体形状を有している(例えば、少なくとも二つの次元で近似している)。その上に、袋はまた、第二の部分内の均一な温度変動可能な構成要素の分配を維持するため、少なくとも一つより多いチャンバーが同様に配置された第二の部分の区画と協働するよう区画化されても良い。また、袋は、一つ又はそれ以上の第二の部分の区画がその内部に同様の又は実質的に同一の体積(量)の温度変動可能な構成要素を含むようにして、一つ又は複数のチャンバーと同様に配置された第二の部分の区画と協働するように区画化されても良い。代替として、袋は、一つ又は複数の第二の部分の区画が異なる体積(量)の温度変動可能な構成要素を含むようにして、一つ又はそれ以上のチャンバーと同様に配置された第二の部分の区画と協働するように区画化されても良い。従って、前述したように、密封要素は前述したように配置されかつ第一の部分と整列した温度変動可能な構成要素を有することで、圧迫システムが改良された温度分配と下方に位置する人体の部位の低い温度を提供することを可能にしている。本明細書において記述された装置は、圧迫や温度感応材料の量又は種類に応じて独自に設計され、特定の温度又は温度帯を下方に位置する人体の部位に提供する。本明細書において記述された装置は、温度変動可能な構成要素の種類、温度変動可能な構成要素の量(体積)及び/又は適用される圧力のアルゴリズムを特定することが可能である。加えて、温度変動可能な構成要素を区画化すること及び/又は第二の部分の区画における温度変動可能な構成要素の分配を特定することで、望まれる場合は、下方に位置する人体の部位(ある位置からその他の位置まで)の温度の分配がより詳細に特定に制御される。
本明細書において記述された所定のアルゴリズムは所望の治療結果を達成するために規定することができる。冷却パックをいくらかの圧力と共に解剖学上の部位に連続して当てていると、冷却パックを当てている時間が長いほど皮膚(冷却パックの直下)の温度が低くなる(例えば、Janwantanakul P, Physiotherapy 2006;92(4):254-259)ことは以前から知られている。前述のように、断続的に加えられる圧迫は組織内部(組織表面の下)と同様、組織表面の冷却の効果を優位に高めることが発見された(表2から表4を参照)。本明細書において記述された発明は、このように、断続的な圧迫を加えることで、圧迫装置による圧迫の量(圧力)を全体の治療時間との関係で変更し、(いずれの治療シナリオにおいても)同じ又は近い皮膚の温度の値とすることを可能にしている。このように、ある相対的に異なる組織の温度が望まれ、かつ、全体の治療時間が同じままである場合には、圧力の高さと圧迫の時間は膨張の時間と関連して変化する。このような方法によって、膨張の総計の時間と圧迫の量のみが操作される(一方では全体の治療時間は同じままである)。そのようにして、いくつかの実施例において、圧迫の量が増加した場合には膨張の総計の時間の概括的な減少がもたらされる。他の実施例において、圧迫する時間の変更を伴うか伴わないかによらず、同一の(又は同様の)温度を達成するために、(同一の装置をもちいて)圧迫の程度は変化する。
従って、本明細書において記述された圧迫装置(特定の温度変動可能な構成要素を有する装置)をもちいてほんの数回の試験運転を実行することで、装置によって断続的な圧迫を加えた場合の解剖学的な部位の類似した温度プロファイルを提供するように装置をセットすることができる。それに応じて、前述したように、いくつかの別々の治療期間において良好な効果及び結果を達成するために標準化された対象の部位に対する治療の処置が選択される。
第一の実施例において、記述された圧迫装置はその本体内部に袋を設けた第一の部分を有する。袋は、その末端側の端により近い位置に、携帯可能なポンプを介して圧力を導く注入口を有し、ポンプが末端側の端から基部側の端に向かって袋を膨らませる。袋はその中ほどの領域に穴が設けられ、従って、この領域は膨張しない。第一の部分はそのより中心側の領域の近くにくぼみ状に設けられた第一の外向き面と、そのより中心側の領域の近くで突出する第二の外向き面を有する。本実施例の第一の部材は、突出する又は関節を曲げた場合に使用される解剖学的な部分を含む関節などの解剖学的な構造に適している。第一の部分は突出している面及びくぼんでいる面が有るか否かに関わらず、更に他の解剖学的構造に対して使用することができる。第一の部分はその末端側の端に近い位置に一対のエクステンションを、その基部側の端に近い位置に一対のエクステンションを有する。一対のエクステンションはそれぞれ、互いに近づく方向に移動しないように曲がっている(装置の中心から外側に遠ざかるように弧をなして曲がっている)。一対のエクステンションはそれぞれはめ合い接続部を有し、それによりしっかりと手足に巻きつけることが可能である。第二の部分は、第二の部分の端部が小さな隙間をもって離間していることを除いて、第一の部分に設けられた袋の概略的な形状と類似した全体的、概略的な形状を有している。第二の部分は少なくとも2つの領域に区画化されており、第二の部分における周辺の部分はより中心側の部分が含むのより有意に少ない温度感応材料を含むというように、それぞれの領域は異なる体積(単位面積あたり)の温度感応材料を含んでいる。第二の部分のより中心側の領域は、概して袋と類似した形状を有する。この領域はまた、水の氷結温度よりも低い氷結温度を有する冷却用のハイドロゲルである温度感応材料を含んでいる。第二の部分は使用されるまで冷凍庫に保管され、冷凍庫から取り出されるときには形状を変えることができる。第二の部分は外向き面の一つの外縁付近における様々な点にいくつかの接続部を有し、当該接続部は第二の部分の外向き面の一つにおいてはめ合い接続部に貼り付けられる。第二の部分は第一の部分に張り付けられる前に離間した端部の近傍に位置する保持手段は又は留め具によって成形され、保持手段によって、第一の部材の形状(従って、より中心側の領域の近傍で後退しており、より中心側の領域の近傍で突出している外向き面に対抗する一つの外向き面の形状)に類似した形状とされる。第二の部分はその中心領域に穴を有しており、成形され、そして第一の部分に張り付けられた場合に、穴は概して袋に設けられた穴と整列する。圧迫装置が関節の周りにしっかりと固定された場合に、圧力が周期的に携帯可能なポンプから袋に導かれる。袋は断続的にのみ膨張され、それぞれの膨張期間において、袋と概して類似する形状に成形された第二の部分の、より中心側の領域のみに圧力が加えられる。これらの組み合わせによって、前述のように、時間と共に、温度感応材料の全体(又は大部分)に均一な圧力が加えられる。これにより、下方に位置する組織におけるより均一な温度変化が達成される(その変化は温度感応材料によって方向付けられたものである)。加えて、これらの組み合わせは前述(温度感応材料のみを断続的な方法で順次圧迫する)したように、下方に位置する組織のより速やかな温度変化を提供することが明らかになった。
温度感応材料のより均一な圧迫はいくつかの解剖学的な構造に適している一方で、他の解剖学的な構造においては温度感応材料の不均一な圧迫がより適していることが理解されるであろう。不均一な圧迫は第二の部分内の温度感応材料の体積(単位面積当たり)を調整し、温度感応材料を収容する全ての部分に対して概して均一な圧力を加えることで簡単に実施することができる。
本明細書において記述された装置は(概して均一な第二の部分における温度感応材料の体積(単位面積あたり)を提供し、一方で、時間と共に、温度感応材料を収容する全ての領域に概して均一な圧力を提供する共に)断続的な圧迫を膝の前部などの関節に加えるために使用される。下方に位置する組織の比較的均一な冷却及び迅速な冷却を達成する代表的な断続的な圧迫の条件(温度感応材料が冷却する構成要素であり、温度感応材料の収容箇所は袋と重なる形状を有している場合)は、表1に示されている。
上記の条件において、圧迫の全体の時間(膨張及び収縮)はおよそ15分間である。圧迫の全体の時間はおよそ16分としても良い。また、圧迫の全体の時間はおよそ10分、20分、25分又は30分としても良く、およそ60分、90分、120分又は数時間としても良い。圧迫の全体の時間は組織及び/又は解剖学的な部位に応じて短く又は長くすることができる。いくつかの実施例においては、温度感応材料に固有の特性によって、温度感応材料が圧迫の全体の時間を決める。
表1には代表的な圧力が示されているが、他の圧力も使用可能であることが理解されよう。一つ又は複数の実施例において、膨張の期間は収縮の期間と同一である。付加的な実施例において、膨張の期間は収縮の期間と同一ではない。膨張の期間はおよそ15秒間から、およそ20秒間、25秒間、30秒間、35秒間、40秒間、45秒間、50秒間、55秒間、60秒間、90秒間又は120秒間までとすることができる。同様に、収縮の期間は、およそ15秒間から、およそ20秒間、25秒間、30秒間、35秒間、40秒間、45秒間、50秒間、55秒間、60秒間、90秒間又は120秒間までとすることができる。膨張期間及び/又は収縮期間を通じて最低限又は基礎的な量の圧力を一つ又は複数のチャンバーに保持することもまた、本発明の範囲に含まれる。
多くの代表的な配置のうちのある実施例において、本実施例の圧迫装置は圧迫装置の第一の部分に位置する袋に空気を送って膨らませるポンプを有している。ポンプは予め決められた周期で断続的な圧力を袋に供給する。ポンプは16分間の一つの圧迫の全体の時間にわたって空気を袋に供給する、3つの予め定義された設定を有しており、それぞれの設定は周期のパターンごとに異なる圧力を提供する。予め定義された設定は表1に示されたものと類似する。ポンプは十分に小さなユニットに収納され、手で持つ、身に着けられる専用のポーチ又はストラップに収納する、作業者のポケットに入れて携行する、作業者のベルトに装着する又は着脱可能に第一の部分自体の外側に連結させることができる。ポンプユニットはバッテリー又は代替の電流源から電力を供給される。ポンプは、予め設定された安全装置と共にバルブ、圧力ゲージマフラー、及び排気機構に接続されたコントローラーによって、袋が予め決められた圧力を超えて膨張した場合(この実施例においては、それぞれの予め設定した圧力よりも10mmHg(1333Pa)以上)に圧縮を停止するように制御される。ポンプが本実施例の圧迫装置を膨張させたとき、圧迫装置はその末端側の部分から基部側の部分に向かって順次的及び断続的に加圧される。その一連の流れは下方に位置する組織内の流体を体の周辺部でなく、体の中心(胴体)に向かって押し出す。
本明細書にて記述された圧迫装置及び構成要素に組み合わせられる付加的な特徴には、圧迫装置にフィードバック又は警報を提供する一つ又はそれ以上の温度センサ及び/又は圧力センサ(例えば、皮膚又は装置の部品自体にかかる圧力及び/又は温度)、パラメーター及びデータを入力するためのキーボード又はプッシュボタンその他のインターフェイス、及び、本明細書にて記述された装置の動作中及び動作後の圧力又は温度の、デジタル又はアナログの読み出し又は表示を提供するマイクロチップ又は表示器(例えば、LED表示器)を含む。選択的に、遠隔ユニット又は外部装置(スマートフォン又はその他の外部装置を含む有線又は無線)を、遠隔操作のため、及び、データ及び/又は圧迫装置と共に使用するアプリケーションをダウンロードするために圧迫装置に提供しても良い。例えば、特定の解剖学的な部位に対して圧迫装置の特定の運転を実行するために、一つ又はそれ以上のデータプログラムに外部装置から接続できるようにしても良い。内部の圧力源の代替例として、本明細書にて記述された圧迫装置は外部の圧力源と共に運転できるようにしても良い。
本明細書にて記述された運転中の圧迫装置の例は以下に示されている。いくつかの例は前述の装置と同一の効果を達成しない代替の(比較の)装置を含んでいる。
第一の例において、本実施例における圧迫装置は、図1A及び1Cに記述されたものと同様にして、プラスティックのフィルムに包んだ4ポンド(1.814kg)の牛肉の筋肉片に巻かれている。2インチ(5.08cm)長の温度系をもちいて表面、表面から1cm、2cm、3cm及び4cm下の筋肉温度を測定した。圧迫装置は空気によって膨張され、温度感応材料は使用前に0度(華氏、摂氏17.78度)に冷却したハイドロゲルをもちいた。冷却したハイドロゲルは(その収容器内で)プラスティックのフィルムに接触している。電動ポンプが50 mmHg(6666Pa)の強さで断続的、順次的な圧力を圧迫装置に導き、それぞれの周期は40秒間の膨張とそれに続く30秒間の収縮を含む。牛肉の筋肉片は全体の圧迫時間で15分間圧迫された。牛肉の筋肉片の温度は圧迫装置による処理前及び処理15分後に測定された。比較参照サンプル(同一の大きさの牛肉の筋肉片)は同一の圧迫装置によってその周囲を巻かれ(0度(華氏、摂氏17.78度)に冷却したハイドロゲルと共に)、ただし、ポンプの起動をせず、すなわち断続的な圧迫を加えなかった。
冷却とともに断続的な圧迫を加えた場合の結果を、単に冷却及び押し付けを加えた場合と比較したデータが表2に示されている。いずれの数値も、3回の独立した測定を行った平均値である。
断続的な圧迫なく冷却を15分間加えた筋肉と対照的に、冷却と共に断続的な圧迫を15分間加えた筋肉組織において、華氏50度(摂氏10.0度)よりも十分に低い温度に到達した。冷却のみでは、温度は組織の表面においても、より深層の組織においても53度(華氏、摂氏11.67度)を下回らなかった。これは更に図20に例示されている 図20において、「T-0」はIC(0分)及びNo IC(0分)の平均であり、「圧迫」は本明細書において記述された冷却圧迫装置をもちいた15分間の断続的な圧迫の後の温度、「圧迫なし」は断続的な圧迫なく冷却を15分間加えた後の温度である。
他の例において、本実施例における装置は、図1A及び図1Cに示されるものと同様に、比較対象の断続的な圧迫を加えない冷却圧迫装置と比較される。比較対象の装置(Moji Knee, by Moji, Inc., Glenview, IL)はツーピースの設計であり、膝関節の前側を囲む外側のラップ、上方と下方に伸縮可能な(移動可能な)ストラップを有する、それぞれ脚の周りに(膝の上下、それぞれのストラップはラップの前側に戻って接続する)に巻きついている。第二のピースはおよそ20の独立した冷却セルを有する内部の冷却セルユニットであり、冷却セルは物理的に互いに分離して、膝関節の前側及び側面を囲んでいる。
本実施例の装置は使用前に0度(華氏、摂氏-17.78度)に冷却されたハイドロゲルを有している。比較対象の装置における冷却セルユニットもまた使用前に初期的に0度(華氏、摂氏-17.78度)に冷却されている。本実施例の装置及び比較対象の装置の両方は同じ被験者の片側の膝に配置される。処置時間は両方の装置について16分であるが、本実施例の装置では空気ポンプによる断続的な圧迫を、45秒間の膨張と30秒間の収縮を含む10周期、50mmHg(6666Pa)の圧力で加えている。両方の装置は16分間の処置の後に取り外され、皮膚温度は膝蓋骨直下の膝の内側で測定され、酸素供給は膝蓋骨直下の膝の内側及び外側で測定された。全ての測定は処置開始から0分、16分、31分及び60分で実施された。酸素供給の測定のため、近赤外線分光装置(InSpectra(TM) Monitor, model 650, Hutchinson Technology Incorporated, Minnesotaの商標)がもちいられた。
圧迫を加えた直後に双方の装置は取り外され、膝は可視化され、写真撮影がなされた。本実施例の装置が配置された左膝はより明白な赤みを示し、これは血流の増加を示している。更なるデータは表3に示されている。それぞれのデータは3回の独立した測定を行った平均値である。
結果は、本実施例の装置をもちいて膝に断続的は冷却圧迫を加えた場合に、比較対象の冷却及び押し付けを行った場合と比較して異なっていた。例えば、本実施例の装置で処置した膝付近の組織(IC)は49.1度(華氏、摂氏9.5度)に達したのに対し、比較対象の装置で処置した場合(No IC)は71.8度(華氏、摂氏22.11度)までしか到達しなかった。加えて、膝の内側付近の組織の酸素供給は本実施例の装置で処置した場合(IC)に61%上昇し、比較対象の装置で処置した場合(No IC)に明確な効果がなかった場合と対照的な結果となった。同じ結果が膝の外側においてもみられ、酸素供給は本実施例の装置で処置した場合(IC)に40%上昇し、比較対象の装置で処置した場合(No IC)に明確な効果がなかった場合と対照的な結果となった。このことは図21から図23においても実証されており、これらには最も低い皮膚温度及び最も高い酸素供給量が、目的の部位に特異的に断続的な圧迫と組み合わせた温度を下げる材料を含む本実施例の装置を適用された場合に達成されたことを示している。
更なる実施例において、本実施例における装置は、図1A及び図1Cに示されるものと同様に、比較対象の断続的な圧迫を異なる方法及び部位非特異的に加える装置と比較される。本実施例における装置は使用前に0度(華氏、摂氏-17.78度)に冷却されたハイドロゲルを有している。比較対象の装置(Game Ready(R) Knee Wrap; a trademark of CoolSystems, Inc., Concord, CAの商標)は足首から上から大腿部の中央までの脚の大部分を取り囲む水冷式の圧迫ラップである。比較対象の装置はラップ全体に渡って内側チャンバー内を冷却水又は氷水を循環させる。また、比較対象の装置はラップ全体に渡って固定された圧力設定で膨張及び収縮を行う外側空気チャンバーに有している。本実施例における装置は、被験者の片側の膝に配置され、比較対象の装置は同じ被験者の他方の脚に配置された。両方の装置は16分間作動させ、その後被験者の脚から取り外された。本実施例における装置は予め45秒の圧迫と30秒の収縮をそれぞれ含む10周期を、50mmHg(6666Pa)の圧力で行うように予めプログラムされた。比較対象の装置は脚全体を包み、その最大の冷却設定及び中間の圧迫設定に設定された。皮膚温度は膝蓋骨直下の膝の内側において測定され、酸素供給は膝蓋骨直下の膝の内側及び外側で測定された。全ての測定は処置開始から0分、16分、31分、46分及び60分で実施された。酸素供給の測定のため、近赤外線分光装置(InSpectra(TM) Monitor, model 650, Hutchinson Technology Incorporated, Minnesotaの商標)がもちいられた。
圧迫を加えた直後に双方の装置は取り外され、膝は可視化され、写真撮影がなされた。本実施例の装置が配置された左膝はより明白な赤みを示し、これは血流の増加を示している。更なるデータは表4に示されている。それぞれのデータは3回の独立した測定を行った平均値である。本実施例の装置は比較対象よりも低い膝付近の組織温度を達成した。加えて、本実施例の装置は膝付近の酸素供給も改善した。
このことは図24から図26においても実証されており、これらには、共に、本実施例の装置を適用された場合に、所望の温度(より好ましくは比較対象よりも低い温度)の温度を下げる材料に部位に特異的に断続的な圧迫を与えることによって、より低い組織温度及びより高い酸素供給量が達成されたことを示している。膝の内側で測定された組織の酸素供給は本実施例の装置で処置した場合(IC-knee)に38%増加し、比較対象の装置で処置した場合(IC-leg)に明確な効果がなかった場合と対照的な結果となった。膝の外側で測定された組織の酸素供給は本実施例の装置で処置した場合(IC-knee)に32%増加し、比較対象の装置で処置した場合(IC-leg)に明確な効果がなかった場合と対照的な結果となった。
図27から図30は手首(図27)、肩(図28)、足首(図29)及び肘(図30)を含む他の体の解剖学的構造の周りに配置するための代表的な装置を示している。これらの図において、温度感応材料(図中の破線を参照)が全体の寸法において袋(図中の点線)よりもわずかに小さい第二の部分に収容されていることが示されている。図27及び図29は温度感応材料のそれぞれの収容部及び袋は二つの区画又はチャンバーによって規定されていることを示している。図28は温度感応材料の収容部及び袋は一つの区画又はチャンバーによって規定されていることを示している。図30は温度感応材料のそれぞれの収容部及び袋は三つの区画又はチャンバーによって規定されていることを示している。それぞれの上記の代表的な実施例はエクステンション22及び供給源60などのような多くの代表的な設計の一つを示す。代替的な設計は流体供給源、第一の部分、エクステンション、袋及び第二の部分に収容された温度変動可能な構成要素として容易に推考され、それぞれは多くの代替の寸法及び形状を取り得ることが理解される。
以上のように、一つ又はそれ以上の人体の解剖学的部位への順次的、断続的な圧迫を実行する装置について説明した。この装置は対象の解剖学的部位へのより均一な温度及びより迅速な温度調整を達成することをうまく利用する。また、この装置は同様に、形状に融通が利き、水のそれよりも低い氷結点を有し、好ましくは広範囲のヒステリシスを有する温度変動可能な構成要素の使用、部位特異的で概して温度変動可能な構成要素に対して均一な圧迫を提供するために独特に設計された空気注入式の袋、移動を妨げるように区画化された収容部内の温度変動可能な構成要素、概して温度変動可能な構成要素の収容部に類似するか微かに大きな寸法及び形状を有する空気注入式の袋、袋に設けられた区画と類似した形状のチャンバーを有する温度変動可能な構成要素の収容部、エクステンションの移動、とりわけ体の敏感な部位への移動を防止する曲線部を有する人間工学に基づくエクステンション又はストラップ、使用者が同じ温度効能に異なる圧力で到達することを許容する、時間による圧迫の調整の使用、以下のうち一つ又はそれ以上を有することでの着実な温度変化な温度変化をもたらすことをうまく利用する。
本明細書において代表的な装置、構成要素及び使用方法について詳細に説明したが、関係する技術分野に知識を有する者は添付の特許請求の範囲に記述され、示され又は定義付けられたものから逸脱することなく様々な置換及び変更が可能であることを認識するであろう。