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JP2014233999A - 自動車の車体製造方法 - Google Patents

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飛田 一紀
Kazunori Hida
一紀 飛田
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Abstract

【課題】 自動車のピラーのような鋼板製の車体部材を、重量の増加を最小限に抑えながら効果的に補強する。
【解決手段】 鋼板製のピラー25に荷重を加えたときに曲げ応力が集中する応力集中部49を特定し、ピラー25を製造し、応力集中部49の引張面にCFRP製のパッチ45を貼着するので、ピラー25の応力集中部49だけを軽量なCFRP製のパッチ45で補強し、重量の増加を最小限に抑えながら最大の補強効果を得ることができる。またCFRP製のパッチ45は圧縮荷重よりも引張荷重に対して強いため、それを応力集中部49の引張面に貼着あるいはボルト止めすることで、補強効果を更に高めることができるだけでなく、CFRP製のパッチ45の炭素繊維の積層数や繊維配向方向を変更するだけで、補強効果の大小を容易に調整することができる。
【選択図】 図4

Description

本発明は、鋼板製の車体部材をCFRP製のパッチで補強する自動車の車体製造方法に関する。
ハット状断面を有する鋼板製のアウター部材と、平板状の鋼板に平板状のCFRP(炭素繊維強化樹脂)板を積層したインナー部材とを結合して閉断面に構成した自動車のセンターピラーの内部に、帯状のCFRPを波形に成形したリンフォースメントを配置したものが、下記特許文献1により公知である。
また鋼板に未硬化のCFRP板を貼り合わせて所定形状に切断した後に、オートクレーブ内で加熱してCFRP板を硬化させることで、CFRP板で補強された鋼板を得るものが、下記特許文献2により公知である。
特開2010−195352号公報 特開2009−178997号公報
ところで、上記特許文献1に記載されたものは、センターピラーの下端から上端までの全域にCFRP板および波形のCFRP製リンフォースメントの二つの補強部材が配置されており、特に波形のCFRP製リンフォースメントは引き延ばしたときの実質的な全長が大きいため、車体重量増加の要因となる可能性がある。
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、自動車のピラーのような鋼板製の車体部材を、重量の増加を最小限に抑えながら効果的に補強することを目的とする。
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、鋼板製の車体部材に荷重を加えたときに曲げ応力が集中する応力集中部を特定する第1工程と、前記車体部材を製造する第2工程と、前記応力集中部の引張面にCFRP製のパッチを貼着あるいはボルト止めする第3工程とを含むことを特徴とする自動車の車体製造方法が提案される。
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記パッチの寸法は前記応力集中部の寸法よりも大きいことを特徴とする自動車の車体製造方法が提案される。
また請求項3に記載された発明によれば、請求項1または請求項2の構成に加えて、前記パッチは前記応力集中部の引張面の稜線を跨ぐことを特徴とする自動車の車体製造方法が提案される。
また請求項4に記載された発明によれば、請求項1〜請求項3の何れか1項の構成に加えて、前記パッチの連続繊維は前記応力集中部の応力緩和に有利な方向に沿って整列することを特徴とする自動車の車体製造方法が提案される。
また請求項5に記載された発明によれば、請求項1〜請求項4の何れか1項の構成に加えて、前記パッチは連続繊維および熱硬化性マトリクス樹脂からなり、前記熱硬化性マトリクス樹脂の量は熱硬化時の収縮により前記応力集中部を変形させない量であることを特徴とする自動車の車体製造方法が提案される。
尚、実施の形態のBピラー25、サイドシル13、ドアビーム51およびフロアトンネル補強パネル22は本発明の車体部材に対応する。
請求項1の構成によれば、鋼板製の車体部材に荷重を加えたときに曲げ応力が集中する応力集中部を特定し、車体部材を製造し、応力集中部の引張面にCFRP製のパッチを貼着あるいはボルト止めするので、車体部材の応力集中部だけを軽量なCFRP製のパッチで補強し、重量の増加を最小限に抑えながら最大の補強効果を得ることができる。またCFRP製のパッチは圧縮荷重よりも引張荷重に対して強いため、それを応力集中部の引張面に貼着あるいはボルト止めすることで、補強効果を更に高めることができ、しかもCFRP製のパッチの炭素繊維の積層数や繊維配向方向を変更するだけで、補強効果の大小を容易に調整することができる。
また請求項2の構成によれば、パッチの寸法は応力集中部の寸法よりも大きいので、応力集中部の変形を確実に防止することができる。
また請求項3の構成によれば、パッチは応力集中部の引張面の稜線を跨ぐので、応力が集中し易い稜線が折れ変形するのを効果的に防止することができる。
また請求項4の構成によれば、パッチの連続繊維は応力集中部の応力緩和に有利な方向に沿って整列するので、パッチによる応力集中部の補強効果を有効に発揮させることができる。
また請求項5の構成によれば、パッチは連続繊維および熱硬化性マトリクス樹脂からなり、熱硬化性マトリクス樹脂の量は熱硬化時の収縮により応力集中部を変形させない量であるので、熱硬化性マトリクス樹脂が熱硬化するときの収縮量が応力集中部が熱収縮するときの収縮量よりも大きくても、車体部材に変形が発生するのを防止することができる。
自動車の車体フレームの斜視図。 図1の2−2線拡大断面図。 図2の3−3線矢視図。 図2の4−4線断面図。 車体が横転したときの荷重の作用状態を示す図。
以下、図1〜図5に基づいて本発明の実施の形態を説明する。尚、本明細書において、前後方向、左右方向(車幅方向)、上下方向とは、運転席に着座した乗員を基準として定義される。
図1に示すように、自動車の車体フレームは、車体前部に前後方向に配置された左右一対のフロントサイドフレーム11,11と、左右のフロントサイドフレーム11,11の後端に接続されて後方に延びる左右一対のフロアフレーム12,12と、左右のフロアフレーム12,12の車幅方向外側において前後方向に配置された左右一対のサイドシル13,13と、左右のサイドシル13,13の後端に接続されて後方に延びる左右一対のリヤサイドフレーム14,14とを備える。
左右のフロントサイドフレーム11,11の前端間は枠状に形成されたフロントバルクヘッド15により接続され、左右のフロントサイドフレーム11,11の前後方向中間部間は車幅方向に延びる第1クロスメンバ16により接続され、左右のフロントサイドフレーム11,11の後部間は車幅方向に延びる第2クロスメンバ17により接続され、左右のサイドシル13,13の前後方向中間部間および左右のフロアフレーム12,12の後端間は車幅方向に延びる第3クロスメンバ18,18により接続され、左右のサイドシル13,13の後端間は車幅方向に延びる第4クロスメンバ19により接続され、左右のリヤサイドフレーム14,14の前端間は車幅方向に延びる第5クロスメンバ20により接続され、左右のリヤサイドフレーム14,14の後端間は車幅方向に延びる第6クロスメンバ21により接続される。前記第2クロスメンバ17は、第3クロスメンバ18の車幅方向中間部から前方に延びる板材よりなるフロアトンネル補強パネル22の前部22aと、それを左右のサイドシル13,13の前部に接続する左右一対の板材よりなるブラケット23,23とにより構成される。
左右のサイドシル13,13の前端から左右一対のAピラー(フロントピラー)ロア24,24が起立し、左右のサイドシル13,13の前後方向中間部から左右一対のBピラー(センターピラー)25,25が起立し、左右のサイドシル13,13の後端から左右一対のCピラー(リヤピラー)26,26が起立し、左右のリヤサイドフレーム14,14の後端から左右一対のDピラー27,27が起立する。
フロントサイドフレーム11の前部から連結部材28が車幅方向外側に張り出しており、この連結部材28に前端を接続されて後上方に延びるロアメンバ29が、Aピラーロア24の上端に接続される。ロアメンバ29の前後方向中間部からAピラーアッパ30が後上方に延びており、このAピラーアッパ30と、ロアメンバ29の後部と、Aピラーロア24の上端とがフロントクォータパネル31で接続される。
Aピラーアッパ30の後端からルーフサイドレール33が後方に延びており、左右のAピラーアッパ30,30間が車幅方向に延びるダッシュボードアッパ34で接続され、左右のルーフサイドレール33,33の前部間が車幅方向に延びる第1ルーフアーチ35で接続され、左右のルーフサイドレール33,33の前後方向中間部間と、左右のBピラー25,25の上端間とが車幅方向に延びる第2ルーフアーチ36で接続され、左右のルーフサイドレール33,33の後端間と、左右のDピラー27,27の上端間とが車幅方向に延びる第3ルーフアーチ37で接続される。
リヤサイドフレーム14からリヤホイールハウス38が起立しており、リヤホイールハウス38の車幅方向外側がリヤフェンダーパネル39で覆われる。
図2〜図4に示すように、Bピラー25は、車幅方向外向きに凸に湾曲するハット状断面に鋼板をプレス成形したアウタパネル41と、車幅方向内向きに凸に湾曲するハット状断面に鋼板をプレス成形したインナパネル42と、車幅方向外向きに凸に湾曲するハット状断面に鋼板をプレス成形したスチフナ43とを、それらの接合フランジ41a,41a,42a,42a,43a,43aにおいて3枚重ねで溶接44…した閉断面の中空部材である。スチフナ43は上下方向に延びる2本の稜線43b,43bによって折れ曲がっており、その車幅方向内面(インナパネル42に対向する面にCFRP製のパッチ45が貼着されて補強される。
パッチ45は矩形状のCFRPシートからなるもので、炭素繊維の連続繊維46(連続炭素繊維を一方向に引き揃えてシート状にしたもの)を、熱硬化性マトリクス樹脂47内に埋設して構成される。このパッチ45は、連続繊維46の連続炭素繊維の配向方向がBピラー25の長手方向(上下方向)に沿うように、接着剤48でスチフナ43の車幅方向内面に接着される。
図5に示すように、車体が横転してルーフサイドレール33に矢印F1で示すような荷重が加わった場合を想定し、Bピラー25に作用する荷重をコンピュータで解析すると、車幅方向外側に位置するアウタパネル41およびスチフナ43に引張荷重F2が作用し、車幅方向内側に位置するインナパネル42に圧縮荷重F3が作用することが分かる。
図3において鎖線で示す楕円は、スチフナ43に作用する引張荷重F2が所定値を超える領域である応力集中部49を示しており、パッチ45の上下方向幅W2は、応力集中部49の上下方向幅W1を超えており、従ってパッチ45は応力集中部49の上端よりも上方位置から下端よりも下方位置までを覆っている。またパッチ45の前後方向長さは、スチフナ43の稜線43b,43bを跨ぐように設定される。
溶接工程の前段階において、パッチ45は熱硬化性マトリクス樹脂47が未硬化の状態でスチフナ43に貼着され、続く溶接工程でアウタパネル41、インナパネル42およびスチフナ43が一体に溶接される。そして次の塗装工程で車体が乾燥炉内を通過する際の熱で熱硬化性マトリクス樹脂47が加熱されて硬化し、パッチ45がスチフナ43に強固に貼着される。尚、パッチ45は、熱硬化性マトリクス樹脂47が硬化した状態で、スチフナ43に接着あるいはボルト止めしても良い。
熱硬化性マトリクス樹脂47が硬化するときの熱収縮量は、鋼板が加熱後に冷却されたときの熱収縮量よりも大きいため、熱硬化性マトリクス樹脂47の量(例えば、パッチ45の厚さや面積)が過大であると、熱硬化性マトリクス樹脂47の熱収縮によってスチフナ43が変形する虞がある。従って、パッチ45の熱硬化性マトリクス樹脂47の量は、スチフナ43の変形を発生させない量に制限される。
次に、上記構成を備えた本発明の実施の形態の作用を説明する。
車体が横転したような場合、ルーフサイドレール33に入力した荷重F1により、引張面となるBピラー25のアウタパネル41およびスチフナ43に引張荷重F2が作用し、圧縮面となるインナパネル42に圧縮荷重F3が作用する。スチフナ43に作用する引張荷重F2が所定値を超える領域である応力集中部49が予め特定されており、この応力集中部49にCFRP製のパッチ45を貼着して補強することで、Bピラー25の強度が高められて横転時に車室空間を確保することができる。即ち、引張荷重が入力したときの伸び率は、鋼板製のスチフナ43よりもCFRP製のパッチ45の方が小さいため、パッチ45によりスチフナ43の延び変形が抑制されてBピラー25の強度が高められる。
このように、曲げ応力が集中する応力集中部49を特定し、応力集中部49の引張面にCFRP製のパッチ45を貼着するので、スチフナ43の全体でなく応力集中部49だけを軽量なCFRP製のパッチ45で補強することで、重量の増加を最小限に抑えながら最大の補強効果を得ることができる。またCFRP製のパッチ45は圧縮荷重よりも引張荷重に対して強いため、それを応力集中部49の引張面に貼着することで、補強効果を更に高めることができる。しかもCFRP製のパッチ45の連続繊維46の積層数や繊維配向方向を変更するだけで、補強効果の大小を容易に調整することができる。
またパッチ45の上下方向幅W2は、応力集中部49の上下方向幅W1を超えており、かつパッチ45の前後方向長さは、スチフナ43の稜線43b,43bを跨ぐように設定されるので、パッチ45で応力集中部49を確実に覆って補強効果を高めるとともに、応力が集中し易いスチフナ43の稜線43b,43bを補強して変形を防止することができる。
またパッチ45の骨材は炭素繊維の連続繊維46を積層したものからなり、その連続繊維46は応力集中部49の応力を緩和するのに有利な方向(例えば、引張荷重の方向)に沿って整列するので、パッチ45による応力集中部49の補強効果を有効に発揮させることができる。
このような構造のパッチ45は、上述したBピラー25以外に、車体フレームの各部に取り付けることができる。以下、その例を図1に基づいて説明する。
サイドシル13は、車幅方向外側に位置するサイドシルアウタ13aと、車幅方向内側に位置するサイドシルインナ13bとを結合して閉断面に構成される。サイドシル13に側面衝突の衝突荷重が入力すると、サイドシルインナ13の車幅方向内面、特にBピラーの近傍の車幅方向内面に強い引張荷重が作用するため、そこにCFRP製のパッチ45を貼着することで側面衝突に対するサイドシル13の強度を高めることができる。
またドア50の内部に配置されるドアビーム51は車幅方向内側に向かって開放するハット状断面の部材であり、側面衝突の衝突荷重が入力したときに引張荷重の応力集中部となるドアビーム51の開口部が、CFRP製のパッチ45で閉塞されて閉断面に構成される。この場合、パッチ45はドアビーム51の開口部を構成するフランジにボルト止めすることが望ましい。これにより、側面衝突時にドアビーム51に加わる引張荷重をパッチ45で支持し、ドアビーム51の変形を抑制することができる。
またフロアトンネル補強パネル22は下方に向かって開放するハット状断面の部材であり、走行時に車体に加わる荷重により引張応力が集中するフロアトンネル補強パネル22の開口部が、CFRP製のパッチ45で閉塞されて閉断面に構成される。この場合もパッチ45はフロアトンネル補強パネル22の開口部を構成するフランジにボルト止めされる。これにより、走行時にフロアトンネル補強パネル22の開口部に加わる引張荷重をパッチ45で支持し、車体剛性を高めることができる。
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
例えば、本発明の第1工程および第2工程の順序は逆であっても良く、車体部材を製造した後に応力集中部を特定することができる。即ち、車体部材を製造する度に当該車体部材について第1工程を行っても良い。しかしながら、実施の形態の如く同一仕様の車体部材を複数個製造する場合には、1個の車体部材について得た特定結果を他の車体部材に適用することができる。
また応力集中部29の特定は、コンピュータによるシミュレーションに限定されず、実験により行うことも可能である。
また実施の形態ではパッチ45を接着剤48で貼着しているが、熱硬化性マトリクス樹脂47自体の接着力により貼着しても良い。
またパッチ45の骨材は実施の形態の連続繊維46に限定されず、連続繊維を編んだ織布であっても良い。その場合、縦横一方向の連続繊維の配向方向を応力集中部49の引張方向に整列させることが望ましい。このとき、引張方向を縦方向とすれば、横方向の応力に対してパッチ45の破断が抑制される。
また実施の形態ではBピラー25のスチフナ43にパッチ45を貼着しているが、アウタパネル41にパッチ45を貼着しても良い。
また本発明の車体部材は実施の形態のBピラー25、サイドシル13、ドアビーム51あるいはフロアトンネル補強パネル22に限定されるものではない。
13 サイドシル(車体部材)
22 フロアトンネル補強パネル(車体部材)
25 Bピラー(車体部材)
43a 稜線
45 パッチ
46 連続繊維
47 熱硬化性マトリクス樹脂
49 応力集中部
51 ドアビーム(車体部材)

Claims (5)

  1. 鋼板製の車体部材(13,22,25,51)に荷重を加えたときに曲げ応力が集中する応力集中部(49)を特定する第1工程と、
    前記車体部材(13,22,25,51)を製造する第2工程と、
    前記応力集中部(49)の引張面にCFRP製のパッチ(45)を貼着あるいはボルト止めする第3工程とを含むことを特徴とする自動車の車体製造方法。
  2. 前記パッチ(45)の寸法は前記応力集中部(49)の寸法よりも大きいことを特徴とする、請求項1に記載の自動車の車体製造方法。
  3. 前記パッチ(45)は前記応力集中部(49)の引張面の稜線(43b)を跨ぐことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の自動車の車体製造方法。
  4. 前記パッチ(45)の連続繊維は前記応力集中部(49)の応力緩和に有利な方向に沿って整列することを特徴とする、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の自動車の車体製造方法。
  5. 前記パッチ(45)は連続繊維(46)および熱硬化性マトリクス樹脂(47)からなり、前記熱硬化性マトリクス樹脂(47)の量は熱硬化時の収縮により前記応力集中部(49)を変形させない量であることを特徴とする、請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の自動車の車体製造方法。
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