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JP2014210905A - セルロースアシレートフィルム、それを用いた偏光板および液晶表示装置 - Google Patents

セルロースアシレートフィルム、それを用いた偏光板および液晶表示装置 Download PDF

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直也 下重
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Abstract

【課題】偏光板の光学特性及び耐久性を改善し、液晶表示装置の性能をより高めることができるセルロースアシレートフィルム、それを使用した偏光板及び液晶表示装置の提供。【解決手段】セルロースアシレートと、少なくとも1種の下記一般式(I)で表される化合物を含有するセルロースアシレートフィルム、それを使用した偏光板及び液晶表示装置。R1、R3及びR5は水素原子、C1〜20のアルキル基、C3〜20シクロアルキル基、C2〜20のアルケニル基又はC6〜20の芳香族基を表す。但し、R1、R3及びR5のいずれか1つがアラルキル基又はシクロアルキル基であり、かつR1、R3及びR5に存在する環構造の合計は3個以上である。【選択図】なし

Description

本発明は、セルロースアシレートフィルム、それを用いた偏光板および液晶表示装置に関する。
セルロースアシレートフィルムは、液晶表示装置の光学部材、例えば、光学補償フィルムの支持体、偏光板の保護フィルム等として、種々の液晶表示装置に利用されている。
液晶表示装置は、TV用途等のように室内で使用する以外に、例えば、携帯デバイス等を中心に室外で使用される機会が増加している。このため、従来よりも高温高湿下での使用に耐えうる液晶表示装置の開発が求められている。しかし、液晶表示装置を高温高湿下で使用すると、偏光子が収縮することによるムラが発生したり、偏光性能が低下したりすることで、表示性能が劣化してしまうという問題があった。さらに、液晶表示装置は益々多様な用途で過酷な使用条件でも耐えることに対する要求が高まり、年々、従来よりも高いレベルの耐久性が求められるようになった。
特許文献1には、特定の溶媒中における酸解離定数が2〜7の有機酸を含有する樹脂フィルム(セルロースアシレートフィルムを含む)により、偏光子の高温高湿下での耐久性を改善できることが記載されている。また、特許文献2にも、有機酸として知られているバルビツール酸誘導体を含むセルロースアシレートフィルムが開示されているが、偏光子の耐久性に関する記載はない。
特開2011−118135号公報 特開2011−126968号公報
本発明者らの検討により、偏光子の高温高湿下での耐久性をさらに改善するに当たり、各種添加剤を加えることによる弊害、例えば、光によるフィルムの着色やハードコート層を設けた場合の密着性の改善、金属腐食性の低減などの新たに生ずる課題の解決が、ともに必要であることがわかった。
本発明は、偏光板の光学特性および耐久性、特に光によるフィルムの着色抑制やハードコート層などを設けた場合の密着性、を改善し、液晶表示装置の性能をより高めることができるセルロースアシレートフィルム、それを使用した偏光板および液晶表示装置を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために種々の添加剤と諸性能の関係を検討した。その結果、セルロースアシレートフィルムに特定の構造を有するバルビツール酸誘導体を添加すると、光照射による経時的な着色が抑えられることを見出した。置換基およびその組み合わせも含め、さらに検討を行った結果、バルビツール酸が置換基として有する環構造が重要であることがわかり、さらに検討を重ねた。これらの検討結果から、本発明者らは、特定の構造を有するバルビツール酸を含むセルロースアシレートフィルムを偏光子の保護フィルムとして用いることで、偏光板の耐久性をより向上させることができることを見出した。
また、上記特定構造のバルビツール酸誘導体は、腐食性をほとんど示さず、しかも製膜時に使用する溶剤への溶解性にも優れ、揮散も少ないことから、上記セルロースアシレートフィルムはその製造面においても優位性を備えるものであった。
すなわち、上記課題は、以下の手段により達成された。
<1>セルロースアシレートと、少なくとも1種の下記一般式(I)で表される化合物を含有するセルロースアシレートフィルム。
Figure 2014210905
[一般式(I)中、R、RおよびRは各々独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基または炭素数6〜20の芳香族基を表す。このアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基および芳香族基は置換基を有してもよい。ただし、R、RおよびRのいずれか1つがアラルキル基またはシクロアルキル基であり、かつR、RおよびRに存在する環構造の合計は3個以上である。]
<2>一般式(I)において、Rが、アラルキル基またはシクロアルキル基である、<1>に記載のセルロースアシレートフィルム。
<3>一般式(I)において、R、RおよびRが、それぞれ1個以上の環構造を有する、<1>または<2>に記載のセルロースアシレートフィルム。
<4>一般式(I)において、R、RおよびRが、それぞれ1個以上の芳香環構造を有する、<1>〜<3>のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
<5>一般式(I)において、R、RおよびRが有する環構造の全てが芳香環構造である、<1>〜<4>のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
<6>セルロースアシレートの総アシル置換度(A)が下記式を満足する、<1>〜<5>のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
1.5≦A≦3.0
<7>セルロースアシレートのアシル基がアセチル基であり、総アセチル置換度(B)が下記式を満足する、<1>〜<6>のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
2.0≦B≦3.0
<8>総アセチル置換度(B)が、2.5以上2.97未満である、<7>に記載のセルロースアシレートフィルム。
<9>重縮合エステル化合物の少なくとも1種を含有する、<1>〜<8>のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
<10>重縮合エステル化合物が、下記一般式(a)で表される少なくとも1種のジカルボン酸と、下記一般式(b)で表される少なくとも1種のジオールとを重縮合して得られる化合物である、<9>に記載のセルロースアシレートフィルム。
Figure 2014210905
[一般式(a)中、Xは2価の炭素数2〜18の脂肪族基または2価の炭素数6〜18の芳香族基を表す。一般式(b)中、Zは2価の炭素数2〜8の脂肪族基を表す。]
<11>重縮合エステル化合物の数平均分子量が、500〜2000である、<9>または<10>に記載のセルロースアシレートフィルム。
<12>重縮合エステル化合物の末端が封止されている、<9>〜<11>のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
<13>単糖、または2〜10個の単糖単位からなる炭水化物化合物の少なくとも1種を含有する、<1>〜<12>のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
<14>炭水化物化合物が、置換基としてアルキル基、アリール基またはアシル基を有する、<13>に記載のセルロースアシレートフィルム。
<15>前記<1>〜<14>のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムと偏光子とを少なくとも有する偏光板。
<16>前記<15>に記載の偏光板と液晶セルを少なくとも有する液晶表示装置。
本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、その前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書において、各基として説明する「基」は、特段の断りがない限り、無置換の形態および置換基を有する形態のいずれも包含する意味に用いる。例えば、「アルキル基」は置換基を有してもよいアルキル基を意味する。また、本明細書において「脂肪族基」は、直鎖、分岐もしくは環状の脂肪族基で、飽和であっても不飽和(芳香環となることはない)であってもよい。
本明細書において、複数の置換基や連結基(以下、置換基等という。)を同時もしくは択一的に規定するときには、それぞれの置換基等は互いに同一でも異なっていてもよい。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、光照射による経時的な着色がより抑えられている。また、偏光板における偏光子の保護フィルムとして用いれば、偏光板の耐久性をより向上させることができる。
この結果、偏光板の光学特性および耐久性、特に光によるフィルムの着色抑制やハードコート層などを設けた場合の密着性が改善され、液晶表示装置の性能をより高めることができるセルロースアシレートフィルム、それを使用した偏光板および液晶表示装置の提供が可能となった。
液晶表示装置の内部構造を模式的に示した一例を示す概略図である。 共流延用ダイを用いて同時共流延により3層構造のセルロースアシレートフィルムを流涎するときの一例を示す概略図である。
以下、本発明について、実施の形態を挙げて詳細に説明する。
<<セルロースアシレートフィルム>>
本発明のセルロースアシレートフィルムは、セルロースアシレートと少なくとも1種の下記一般式(I)で表される化合物を含有する。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、偏光板の劣化を抑制する効果を発現でき、保護フィルムとしての使用に適する。
<一般式(I)で表される化合物>
本発明で使用する化合物は、下記一般式(I)で表される化合物である。
Figure 2014210905
一般式(I)中、R、RおよびRは各々独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基または炭素数6〜20の芳香族基を表す。該アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基および芳香族基は置換基を有してもよい。ただし、R、RおよびRのいずれか1つがアラルキル基またはシクロアルキル基であり、かつR、RおよびRの中に存在する環構造は合計3個以上である。
上記R、RおよびRにおけるアルキル基の炭素数は、1〜10が好ましく、1〜5がより好ましく、1〜3がさらに好ましく、特に好ましくはメチル基またはエチル基である。ただし、アリール基が置換したアルキル基、すなわちアラルキル基の場合、アラルキル基の炭素数は、7〜20が好ましく、7〜12がより好ましく、7〜10がさらに好ましい。
上記R、RおよびRにおけるシクロアルキル基の炭素数は、3〜10が好ましく、4〜8がより好ましく、5または6がさらに好ましい。シクロアルキル基の具体例として、例えば、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロへキシルが挙げられ、シクロヘキシルが特に好ましい。
上記R、RおよびRにおけるアルケニル基の炭素数は、2〜10が好ましく、2〜5がより好ましい。例えば、ビニル、アリルが挙げられる。
上記R、RおよびRにおける芳香族基は、芳香族炭化水素基であっても芳香族複素環基であってもよいが、芳香族炭化水素基であることが好ましい。芳香族基の炭素数は、6〜16が好ましく、6〜12がさらに好ましい。
芳香族基、なかでも芳香族炭化水素基としては、フェニル、ナフチルが好ましく、フェニルがより好ましい。
、RおよびRの上記の各基は、置換基を有してもよい。
該置換基としては、特に制限はなく、アルキル基(好ましくは炭素数1〜10で、例えばメチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル、ペンチル、ヘプチル、1−エチルペンチル、ベンジル、2−エトキシエチル、1−カルボキシメチル等)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20で、例えば、ビニル、アリル、オレイル等)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20で、例えば、エチニル、ブタジイニル、フェニルエチニル等)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜20で、例えば、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、4−メチルシクロヘキシル等)、アリール基(好ましくは炭素数6〜26で、例えば、フェニル、1−ナフチル、4−メトキシフェニル、2−クロロフェニル、3−メチルフェニル等)、ヘテロ環基(好ましくは炭素数0〜20のヘテロ環基で、環構成ヘテロ原子が酸素原子、窒素原子、硫黄原子が好ましく、5または6員環でベンゼン環やヘテロ環で縮環していてもよく、該環が飽和環、不飽和環、芳香環であってもよく、例えば、2−ピリジル、4−ピリジル、2−イミダゾリル、2−ベンゾイミダゾリル、2−チアゾリル、2−オキサゾリル等)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20で、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシ、ベンジルオキシ等)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜26で、例えば、フェノキシ、1−ナフチルオキシ、3−メチルフェノキシ、4−メトキシフェノキシ等)、
アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20で、例えば、メチルチオ、エチルチオ、イソプロピルチオ、ベンジルチオ等)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜26で、例えば、フェニルチオ、1−ナフチルチオ、3−メチルフェニルチオ、4−メトキシフェニルチオ等)、スルホニル基(好ましくはアルキルもしくはアリールのスルホニル基で、炭素数は1〜20が好ましく、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、ベンゼンスルホニル、トルエンスルホニル等)、アシル基(アルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基、アリールカルボニル基、ヘテロ環カルボニル基を含み、炭素数は20以下が好ましく、例えば、アセチル、ピバロイル、アクリロイル、メタクロロイル、ベンゾイル、ニコチノイル等)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20で、例えば、エトキシカルボニル、2−エチルヘキシルオキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20で、例えば、フェニルオキシカルボニル、ナフチルオキシカルボニル等)、アミノ基(アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基を含み、好ましくは炭素数0〜20で、例えば、アミノ、N,N−ジメチルアミノ、N,N−ジエチルアミノ、N−エチルアミノ、アニリノ、1−ピロリジニル、ピペリジノ、モルホニル等)、スルホンアミド基(好ましくはアルキルもしくはアリールのスルホンアミド基で、炭素数は0〜20が好ましく、例えば、N,N−ジメチルスルホンアミド、N−フェニルスルホンアミド等)、スルファモイル基(好ましくはアルキルもしくはアリールのスルファモイル基で、炭素数は0〜20が好ましく、例えば、N,N−ジメチルスルファモイル、N−フェニルスルファモイル等)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数1〜20で、例えば、アセチルオキシ、ベンゾイルオキシ等)、カルバモイル基(好ましくはアルキルもしくはアリールのカルバモイル基で、炭素数は1〜20が好ましく、例えば、N,N−ジメチルカルバモイル、N−フェニルカルバモイル等)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20で、例えば、アセチルアミノ、アクリロイルアミノ、ベンゾイルアミノ、ニコチンアミド等)、シアノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基またはハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)が挙げられる。
上記の置換基は、さらに上記の置換基で置換されていてもよい。例えば、トリフルオロメチルのようなパーフルオロアルキル基、アラルキル基、アシル基が置換したアルキル基などが挙げられる。
なお、これらの置換基は、R、R、Rの各基が有してもよい置換基のみでなく、本願明細書に記載の化合物における置換基に適用される。
ここで、R、RおよびRの各基が有してもよい上記の置換基のうち、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、ハロゲン原子、アシル基が好ましく、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アシル基がより好ましく、アルキル基、アルコキシ基がさらに好ましい。
一般式(I)で表される化合物は、R、RおよびRのいずれか1つがアラルキル基またはシクロアルキル基であるが、いずれか1つがアラルキル基であることが好ましい。
なかでも、Rがアラルキル基またはシクロアルキル基であるものが好ましい。
は、アリール基、アシル基が置換してもよいアルキル基またはシクロアルキル基が好ましく、アリール基が置換したアルキル基(すなわち、アラルキル基で、以後アラルキル基と称す)、アシル基が置換したアルキル基(好ましくは、アシル基とアリール基が置換したアルキル基)またはシクロアルキル基がより好ましく、アラルキル基またはシクロアルキル基がさらに好ましく、アラルキル基が特に好ましい。
以下、Rにおける、上記の好ましいアルキル基、シクロアルキル基をさらに説明する。
アルキル基のうち、無置換アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、n−ヘキシル、2−エチルヘキシル、n−オクチルが挙げられる。
アリール基が置換したアルキル基であるアラルキル基としては、例えば、ベンジル、フェネチル、3−フェニルプロピルが挙げられる。
アシル基が置換したアルキル基におけるアシル基は、アルキルカルボニル基、シクロアルキルカルボニル基、アリールカルボニル基が好ましく、環構造を有するシクロアルキルカルボニル基、アリールカルボニル基が、なかでも好ましく、アリールカルボニル基が特に好ましい。
上記のアルキルカルボニル基としては、例えば、アセチル、プロピオニル、ブチリル、ピバロイルが挙げられ、シクロアルキルカルボニル基としては、例えば、シクロプロピルカルボニル、シクロペンチルカルボニル、シクロヘキシルカルボニルが挙げられ、アリールカルボニル基としては、例えば、ベンゾイル、トルオイル、ナフトイルが挙げられる。
アシル基が置換したアルキル基は、例えば、2−アシルエチル基、3−アシルプロピル基、2−アシルプロピル基が挙げられ、2−アシルエチル基が好ましい。
アシル基が置換したアルキル基は、本発明においては、アシル基とともにアリール基が置換したアルキル基がなかでも好ましく、この場合のアリール基はフェニル基が好ましい。
アシル基とアリール基が置換したアルキル基としては、例えば、1−フェニル−2−ベンゾイルエチル、1−トリル−2−ベンゾイルエチルが挙げられる。
シクロアルキル基、アラルキル基は、R、RおよびRで例示した基が挙げられる。
一般式(I)で表される化合物のうち、好ましい化合物を列挙すると以下の通りである。
・R、RおよびRのいずれか1つがアラルキル基である化合物
なお、アラルキル基のなかでも、アルキル基に1個または2個のアリール基が置換したもの(2個のアリール基が置換した場合、同一炭素原子に置換していることが好ましい。)が好ましい。さらに、アルキル基にアリール基とアシル基(好ましくはアリーロイル基)が置換したものも好ましい。
・R、RおよびRのいずれか1つが、シクロアルキル基を含む基で、好ましくは、シクロアルキル基を含む基がシクロアルキル基である化合物
上記「R、RおよびRに存在する環構造が合計3個以上である」場合における環構造には、R、RまたはRの置換基の基本骨格そのものが環構造をとる場合の他、既に例示したように、R、RまたはRが有する置換基が環構造を有する形態も含まれる。
上記環構造としては、環状飽和炭化水素構造または芳香環構造(芳香族炭化水素構造または芳香族複素環構造)が好ましい。また、該環構造は縮環構造であってもよい。
上記環構造が環状飽和炭化水素構造である場合、当該環状飽和炭化水素構造は炭素数3〜20のシクロアルキル基として存在することが好ましい。より具体的には、シクロプロピル基、シクロペンチル基またはシクロへキシル基として存在することがより好ましく、シクロへキシル基として存在することが特に好ましい。
また、上記環構造が芳香環構造である場合、芳香族炭化水素構造であることが好ましい。当該芳香族炭化水素構造は、炭素数6〜20のアリール基として存在することが好ましい。より具体的には、フェニル基、ナフチル基として存在することがより好ましく、フェニル基として存在することが特に好ましい。
一般式(I)で表される化合物は、製膜時の溶解安定性の観点から、R、RおよびRが、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基または炭素数6〜20のアリール基であることがより好ましい。また、R、RおよびRが、それぞれ1個以上の環構造を有することがより好ましく、それぞれ環構造を1個有するのがさらに好ましい。
本発明の一般式(I)で表される化合物は、より好ましくは、下記一般式(I−a)で表される化合物である。
Figure 2014210905
一般式(I−a)中、L、LおよびLは各々独立に、単結合または炭素数1以上の2価の連結基を表す。L、LおよびLは単結合または炭素数1〜6のアルキレン基であることがより好ましく、単結合、メチレン基またはエチレン基であることがさらに好ましく、単結合またはメチレン基であることが特に好ましい。溶解安定性を考慮すると、L、LおよびLのうちの少なくとも一つは炭素数1〜6のアルキレン基であることが好ましく、メチレン基またはエチレン基であることが好ましい。
、LおよびLで表される2価の連結基は置換基を有していてもよく、該置換基は、前述のR、RおよびRの各基が有してもよい置換基が挙げられる。
一般式(I−a)中、Ar、ArおよびArは各々独立に、炭素数6〜20のアリール基を表し、好ましくはフェニル基、ナフチル基であり、フェニル基がさらに好ましい。Ar、ArおよびArは置換基を有してもよく、該置換基は、前述のR、RおよびRの各基が有してもよい置換基が挙げられる。このような置換基としては、R、RおよびRが芳香族基の場合に置換してもよい置換基と同義であり、好ましい範囲も同じである。
Ar、ArおよびArは置換基を有さないか、または置換基を有する場合には、当該置換基は環構造を有さないことが好ましい。
一般式(I)および一般式(I−a)で表される化合物の分子量は250〜1200が好ましく、300〜800がより好ましく、350〜600が特に好ましい。
分子量をこのような好ましい範囲にすることで、本発明の化合物におけるフィルムからの揮散抑制に優れ、透明性の高いフィルムを得ることができる。
以下に、本発明の一般式(I)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 2014210905
Figure 2014210905
Figure 2014210905
Figure 2014210905
Figure 2014210905
本発明の一般式(I)で表される化合物は、尿素誘導体とマロン酸誘導体とを縮合させるバルビツール酸の合成法を用いて合成できることが知られている。窒素原子上に置換基を2つ有するバルビツール酸は、N,N’二置換型尿素とマロン酸クロリドを加熱するか、マロン酸と無水酢酸などの活性化剤とを組合わせて加熱することにより得られ、例えば、Journal of the American Chemical Society,第61巻,1015頁(1939年)、Journal of Medicinal Chemistry,第54巻,2409頁(2011年)、Tetrahedron Letters,第40巻,8029頁(1999年)、国際公開第2007/150011号パンフレットなどに記載の方法を好ましく用いることができる。
また、縮合に用いるマロン酸は、無置換のものでも置換基を有するものでもよく、Rに相当する置換基を有するマロン酸を用いれば、バルビツール酸を構築することにより本発明の一般式(I)で表される化合物を合成することができる。また、無置換のマロン酸と尿素誘導体を縮合させると5位が無置換のバルビツール酸が得られるので、これを修飾することにより本発明の一般式(I)で表される化合物を合成してもよい。
5位の修飾の方法としては、ハロゲン化アルキルなどとの求核置換反応やマイケル付加反応のような付加反応を用いることができる。また、アルデヒドやケトンと脱水縮合させてアルキリデンまたはアリーリデン化合物を生成させ、その後二重結合を還元する方法も好ましく用いることができる。例えば亜鉛による還元方法が、Tetrahedron Letters,第44巻,2203頁(2003年)に、接触還元による還元方法がTetrahedron Letters,第42巻,4103頁(2001年)やJournal of the American Chemical Society,第119巻,12849頁(1997年)に、NaBHによる還元方法が、Tetrahedron Letters,第28巻,4173頁(1987年)などにそれぞれ記載されている。これらはいずれも、5位にアラルキル基を有する場合やシクロアルキル基を有する場合に好ましく用いることができる合成方法である。
なお、本発明に用いる一般式(I)で表される化合物の合成法は上記に限定されるものではない。
一般式(I)で表される化合物のセルロースアシレートフィルム中の含有量は特に限定されないが、セルロースアシレート100質量部に対して、0.1〜20質量部であることが好ましく、0.2〜15質量部であることがより好ましく、0.3〜10質量部であることが特に好ましい。
一般式(I)で表される化合物の添加量を上記の範囲とすることで、透湿度を効果的に下げることが可能となり、またヘイズの発生が抑えられる。
<セルロースアシレート>
本発明では、セルロースアシレートをフィルムの主成分として用いる。ここで本明細書では、「主成分」とは、原料となる成分が1種である態様ではその成分を、2種以上である態様では、最も質量分率の高い成分をいうものとする。セルロースアシレートの1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。セルロースアシレートのアシル置換基は、例えばアセチル基単独からなるセルロースアシレートであっても、複数の異なったアシル置換基を有するセルロースアシレートを用いてもよく、異なったセルロースアシレートの混合物であってもよい。
本発明で使用されるセルロースアシレートの原料のセルロースとしては、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ,針葉樹パルプ)などがあり、何れの原料セルロースから得られるセルロースアシレートでも使用でき、場合により混合して使用してもよい。これらの原料セルロースについての詳細な記載は、例えば、丸澤、宇田著,「プラスチック材料講座(17)繊維素系樹脂」,日刊工業新聞社(1970年発行)や発明協会公開技報公技番号2001−1745号(7頁〜8頁)に記載のセルロースを用いることができる。
本発明では、セルロースアシレートのアシル基は1種類だけでもよいし、あるいは2種類以上のアシル基が使用されていてもよい。本発明で使用されるセルロースアシレートは、炭素数2〜4のアシル基を置換基として有することが好ましい。2種類以上のアシル基を用いるときは、そのひとつがアセチル基であることが好ましく、その他に用いる炭素数2〜4のアシル基としてはプロピオニル基またはブチリル基が好ましい。これらのセルロースアシレートにより溶解性の好ましい溶液が作製でき、特に非塩素系有機溶媒において、良好な溶液の作製が可能となる。さらに粘度が低く、ろ過性のよい溶液の作製が可能となる。
まず、本発明に好ましく用いられるセルロースアシレートについて詳細に記載する。
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位および6位に遊離のヒドロキシ基を有している。セルロースアシレートは、これらのヒドロキシ基の一部または全部をアシル基によりアシル化した重合体(ポリマー)である。
アシル置換度は、2位、3位および6位に位置するセルロースのヒドロキシ基のアシル化の度合いを示すものであり、全てのグルコース単位の2位、3位および6位のヒドロキシ基がいずれもアシル化された場合、総アシル置換度は3であり、例えば、全てのグルコース単位で、6位のみが全てアシル化された場合、総アシル置換度は1である。同様に、全グルコースの全ヒドロキシ基において、各々のグルコース単位で、6位か、2位のいずれか一方の全てがアシル化された場合も、総アシル置換度は1である。
すなわち、グルコース分子中の全ヒドロキシ基が全てアシル化された場合を3として、アシル化の度合いを示すものである。
アシル置換度の測定方法の詳細については、手塚他,Carbohydrate.Res.,273,83−91(1995)に記載の方法やASTM−D817−96に規定の方法に準じて測定することができる。
本発明で使用するセルロースアシレートの総アシル置換度(A)は、1.5以上3以下(1.5≦A≦3.0)が好ましく、2.0〜2.97がより好ましく、2.5以上2.97未満がさらに好ましく、2.70〜2.95が特に好ましい。
また、セルロースアシレートのアシル基としてアセチル基のみを用いたセルロースアセテートにおいては、総アセチル置換度(B)は、2.0以上3以下(2.0≦B≦3.0)が好ましく、2.0〜2.97がより好ましく、2.5以上2.97未満がさらに好ましく、2.55以上2.97未満がなかでも好ましく、2.60〜2.96が特に好ましく、2.70〜2.95が最も好ましい。
なお、本発明の一般式(I)で表される化合物は、総アセチル置換度(B)が2.50を超えたセルロースアシレートに対して、特に効果的に効果が発現される。
本発明で使用するセルロースアシレートの炭素数2以上のアシル基としては、脂肪族のアシル基でも芳香族のアシル基でもよく特に限定されない。それらは、例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステル、芳香族カルボニルエステル、または芳香族アルキルカルボニルエステル(アラルキルカルボニルエステル)であり、これらは置換基を有していてもよい。上記炭素数2以上のアシル基は、アセチル、プロピオニル、ブタノイル、ペンタノイル、ヘプタノイル、ヘキサノイル、オクタノイル、デカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ヘキサデカノイル、オクタデカノイル、イソブタノイル、tert−ブタノイル、シクロヘキサンカルボニル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、またはシンナモイルであることが好ましい。これらの中でも、アセチル、プロピオニル、ブタノイル、ドデカノイル、オクタデカノイル、tert−ブタノイル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、またはシンナモイルがより好ましく、さらに好ましくはアセチル、プロピオニル、またはブタノイルのような炭素原子数2〜4のアシル基であり、さらに好ましくはアセチル(すなわち、セルロースアシレートが、セルロースアセテートである場合)である。
セルロースのアシル化において、アシル化剤として酸無水物や酸クロライドを用いた場合、反応溶媒である有機溶媒は、有機カルボン酸溶媒またはハロゲン溶媒(例えば、酢酸またはメチレンクロライド)が好ましく使用される。
触媒としては、アシル化剤が酸無水物である場合には、硫酸のようなプロトン性触媒が好ましく用いられ、アシル化剤が酸クロライド(例えば、CHCHCOCl)である場合には、塩基性化合物が用いられる。
最も一般的なセルロースの混合脂肪酸エステルの工業的合成方法は、アセチル基などのアシル基に対応する脂肪酸(例えば、アセチル基に対応する酢酸、プロピオニル基に対応するプロピオン酸、ペンタノイル基に対応する吉草酸等)または該脂肪酸の酸無水物を含む混合有機酸成分を用いて、セルロースをアシル化する方法である。
セルロースアシレートは、例えば、特開平10−45804号公報に記載されている方法により合成できる。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、全固形分中、セルロースアシレートを5〜99質量%含むことが透湿度の観点から好ましく、20〜99質量%含むことがより好ましく、50〜95質量%含むことが特に好ましい。
<その他の添加剤>
本発明のセルロースアシレートフィルム中には、レターデーション調整剤(レターデーション発現剤およびレターデーション低減剤)、可塑剤(重縮合エステル化合物(ポリマー)、多価アルコールの多価エステル、フタル酸エステル、リン酸エステルなど)、紫外線吸収剤、酸化防止剤、マット剤などの添加剤を加えることもできる。
なお、本願明細書では、化合物群を標記するのに、例えば、リン酸エステル系化合物のように、「系」を組み込んで記載することがあるが、これは、上記の場合、リン酸エステル化合物と同じ意味である。
(レターデーション低減剤)
高分子レターデーション低減剤は、リン酸ポリエステルポリマー、スチレンポリマー、アクリルポリマー、およびこれらの共重合体から選択される少なくとも1種が好ましく、アクリルポリマーおよびスチレンポリマーから選択される少なくとも1種の負の固有複屈折を有するポリマーがより好ましい。
また、非リン酸エステル化合物である低分子量レターデーション低減剤も好ましく用いられる。
非リン酸エステル化合物である低分子量レターデーション低減剤は、特に限定されないが、詳細は特開2007−272177号公報の段落番号0066〜0085に記載されている化合物が好ましい。
レターデーション低減剤は、好適なNzファクターを実現する観点から、Rth低減剤であることがより好ましい。Rth低減剤としては、アクリルポリマーおよびスチレンポリマー、特開2007−272177号公報に記載の一般式(3)〜(7)で表される低分子化合物などを挙げることができる。
セルロースアシレートフィルム中のレターデーション低減剤の含有量は、セルロースアシレート100質量部に対し、0.01〜30質量部が好ましく、0.1〜20質量部がより好ましく、0.1〜10質量部であることが特に好ましい。添加量をセルロースアシレート100質量部に対して30質量部以下にすることで、セルロースアシレートとの相溶性を向上させることができ、セルロースアシレートフィルムの透明性を高めることができる。2種類以上のレターデーション低減剤を用いる場合、その合計量が、上記範囲内であることが好ましい。
(レターデーション発現剤)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、レターデーション値を発現するために、少なくとも1種のレターデーション発現剤を含有することが好ましい。
レターデーション発現剤としては、特に制限はないが、棒状または円盤状化合物からなるものや、前記非リン酸エステル化合物のうちレターデーション発現性を示す化合物を挙げることができる。棒状または円盤状化合物としては、少なくとも二つの芳香族環を有する化合物をレターデーション発現剤として好ましく用いることができる。
セルロースアシレートフィルム中、棒状化合物からなるレターデーション発現剤の含有量は、セルロースアシレートを含むポリマー成分100質量部に対して0.1〜30質量部が好ましく、0.5〜20質量部がさらに好ましい。また、セルロースアシレートフィルム中、レターデーション発現剤中に含まれる円盤状化合物の含有量が、セルロースアシレート100質量部に対して3質量部未満が好ましく、2質量部未満がより好ましく、1質量部未満が特に好ましい。
円盤状化合物はフィルム厚み方向のレターデーション(Rthレターデーション)発現性において棒状化合物よりも優れているため、特に大きなRthレターデーションを必要とする場合には好ましく使用される。2種類以上のレターデーション発現剤を併用してもよい。
レターデーション発現剤は、250〜400nmの波長領域に最大吸収を有することが好ましく、可視領域に実質的に吸収を有していないことが好ましい。
レターデーション発現剤の詳細は公開技報2001−1745の49頁に記載されている。
(可塑剤(疎水化剤))
本発明のセルロースアシレートフィルムは、可塑剤(疎水化剤)として、多価アルコールの多価エステル化合物(以後、多価アルコールエステル可塑剤とも称す。)、重縮合エステル化合物(以後、重縮合エステル可塑剤とも称す。)および炭水化物化合物(以後、炭水化物誘導体可塑剤とも称す。)の中から選ばれる少なくとも一種の化合物を含むことが好ましい。
可塑剤は、セルロースアシレートフィルムのガラス転移温度(Tg)をできるだけ下げずに、セルロースアシレートフィルム中の含水率を低減できるものが好ましい。このような可塑剤を使用することにより高温高湿下においてセルロースアシレートフィルム中の添加剤が偏光子層へ拡散するのを抑制し、偏光子性能の劣化を改良することができる。
以下に本発明に用いられる可塑剤について詳しく説明する。
(多価アルコールエステル可塑剤)
本発明では、多価アルコールエステル可塑剤の合成原料である多価アルコールは下記一般式(c)で表される。
一般式(c)
Rα−(OH)m
一般式(c)中、Rαはm価の有機基を表し、mは2以上の正の整数を表す。
上記一般式(c)で表される化合物の中でも、アドニトール、アラビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、ガラクチトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、またはキシリトールを原料とすることが好ましく、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、またはキシリトールがより好ましい。
多価アルコールエステル可塑剤は、炭素数5以上の多価アルコール、好ましくは炭素数5〜20の多価アルコールとモノカルボン酸から合成された多価アルコールエステルが好ましい。
多価アルコールエステル可塑剤の合成に使用するモノカルボン酸は、特に制限はなく、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等が挙げられる。脂環族モノカルボン酸または芳香族モノカルボン酸を用いると透湿性、保留性を向上させる点で好ましい。
モノカルボン酸は以下の化合物を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
脂肪族モノカルボン酸は、炭素数1〜32の直鎖または分岐の脂肪酸が好ましい。炭素数は1〜20がより好ましく、1〜10が特に好ましい。酢酸を含有させるとセルロース誘導体との相溶性が増すため好ましく、酢酸と他のモノカルボン酸を混合して用いることも好ましい。
前記脂肪族モノカルボン酸は、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、およびラクセル酸から選ばれる少なくとも1種の飽和脂肪酸、または、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、およびアラキドン酸から選ばれる少なくとも1種の不飽和脂肪酸が好ましい。
前記脂環族モノカルボン酸は、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、およびそれらの誘導体から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
前記芳香族モノカルボン酸は、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタレンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、およびそれらの誘導体から選ばれる少なくとも1種が好ましい。なかでも安息香酸が好ましい。
前記多価アルコールエステル可塑剤の分子量は、特に制限はないが、300〜3000が好ましく、350〜1500が更に好ましい。このような分子量とすることで、フィルムからの揮発抑制に優れ、透湿性、セルロース誘導体との相溶性を良好にすることができる。
多価アルコールエステル可塑剤の合成に使用するカルボン酸は1種類でもよいし、2種以上の混合であってもよい。また、多価アルコール中のヒドロキシ基は、全てエステル化してもよいし、一部をヒドロキシ基のままで残してもよい。
以下に、多価アルコールエステル可塑剤の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 2014210905
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(重縮合エステル可塑剤)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、重縮合エステル可塑剤を含むことも好ましい。重縮合エステル可塑剤を含有させることで、湿度安定性、偏光板耐久性に優れたセルロースエステルフィルムを得ることができる。
重縮合エステル可塑剤は、下記一般式(a)で表される少なくとも1種のジカルボン酸および下記一般式(b)で表される少なくとも1種のジオールを重縮合して得られる。
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一般式(a)、(b)中、Xは2価の炭素数2〜18の脂肪族基または2価の炭素数6〜18の芳香族基を表し、Zは2価の炭素数2〜8の脂肪族基を表す。
ここで、Xにおける2価の炭素数2〜18の脂肪族基は、飽和であっても不飽和であってもよく、2価の鎖状もしくは環状の脂肪族基(例えばシクロアルキレン基など)のいずれであってもよい。また、2価の鎖状の脂肪族基である場合は、直鎖状であっても、分枝状であってもよい。2価の脂肪族基の炭素数は2〜12がより好ましく、2〜6がさらに好ましい。その中でも、2価の炭素数2〜18の脂肪族基は、2価の鎖状の飽和脂肪族基が好ましく、鎖状のアルキレン基がより好ましく、直鎖状のアルキレン基がさらに好ましい。炭素数2〜18の鎖状の脂肪族基としては、例えば、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、デカメチレン、ドデカチレン、プロピレン、2−メチルトリメチレン、2,2−ジメチルトリメチレン、シクロペンチレン、シクロヘキシレンなどが挙げられる。
Xにおける2価の炭素数6〜18の芳香族基は、2価の芳香族炭化水素基でも2価の芳香族ヘテロ環基でもよい。2価の芳香族基としては、炭素数は、6〜15が好ましく、6〜12がさらに好ましい。2価の芳香族炭化水素基における芳香環は、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ビフェニル環またはターフェニル環が好ましく、ベンゼン環、ナフタレン環またはビフェニル環がより好ましい。2価の芳香族ヘテロ環基における芳香族ヘテロ環は、酸素原子、窒素原子または硫黄原子のうち少なくとも1つを環構成原子として含むものが好ましい。当該芳香族ヘテロ環は、フラン環、ピロール環、チオフェン環、イミダゾール環、ピラゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、トリアゾール環、トリアジン環、インドール環、インダゾール環、プリン環、チアゾリン環、チアジアゾール環、オキサゾリン環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、キノリン環、イソキノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、キナゾリン環、シンノリン環、プテリジン環、アクリジン環、フェナントロリン環、フェナジン環、テトラゾール環、ベンズイミダゾール環、ベンズオキサゾール環、ベンズチアゾール環、ベンゾトリアゾール環またはテトラザインデン環が好ましく、ピリジン環、トリアジン環またはキノリン環がより好ましい。
Zは、2価の炭素数2〜8の脂肪族基を表す。2価の炭素数2〜8の脂肪族基は、飽和であっても不飽和であってもよく、2価の鎖状もしくは環状の脂肪族基(例えばシクロアルキレン基など)のいずれであってもよい。また、2価の鎖状の脂肪族基である場合は、2価の直鎖状であっても、分枝状であってもよい。2価の脂肪族基の炭素数は2〜6がより好ましく、2〜4がさらに好ましい。その中でも、2価の炭素数2〜8の脂肪族基は、2価の鎖状の飽和脂肪族基が好ましく、鎖状のアルキレン基がより好ましく、直鎖状のアルキレン基がさらに好ましい。炭素数5〜10の鎖状のアルキレン基は、例えば、例えば、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、デカメチレン、プロピレン、2−メチルトリメチレン、2,2−ジメチルトリメチレンなどが挙げられる。
なお、2価のシクロアルキレン基としてはシクロペンチレン、シクロヘキシレンが挙げられる。
一般式(b)で表される脂肪族ジオールは、より好ましくはエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、および1,3−プロパンジオールから選ばれる少なくとも1種であり、重縮合エステル可塑剤の結晶化を防止する観点から、エチレングリコールおよび1,2−プロパンジオールから選ばれる少なくとも1種が特に好ましい。
重縮合エステル可塑剤の脂肪族ジオール残基中には、エチレングリコール残基が10mol%〜100mol%含まれることが好ましく、20mol%〜100mol%含まれることがより好ましい。
重縮合エステル可塑剤は、Xが上記の2価の芳香族基であるジカルボン酸(芳香族ジカルボン酸とも呼ぶ)の少なくとも1種と、Zが上記の脂肪族基であるジオール(脂肪族ジオールとも呼ぶ)の少なくとも1種とから得られる化合物が好ましい。使用する脂肪族ジオールの平均炭素数は2.5〜8.0が好ましい。また、少なくとも一種の芳香族ジカルボン酸とXが上記の2価の脂肪族基である少なくとも一種のジカルボン酸(脂肪族ジカルボン酸とも呼ぶ)との混合物と、少なくとも一種の平均炭素数が2.5〜8.0の脂肪族ジオールとから得られる重縮合エステル可塑剤も好ましい。
重縮合エステル可塑剤の説明において、ジカルボン酸またはジカルボン酸残基の平均炭素数の計算は、使用する全ジカルボン酸または重縮合エステル可塑剤中の全ジカルボン酸残基が有する炭素数の合計を使用するジカルボン酸のモル数または重縮合エステル可塑剤中のジカルボン酸残基のモル数で割った値である。例えば、全ジカルボン酸残基中、アジピン酸残基とフタル酸残基のそれぞれ50mol%ずつから構成される場合は、ジカルボン酸残基の平均炭素数7.0となる。ジオールまたはジオール残基の平均炭素数も同様に計算する。例えばエチレングリコール残基50mol%と1,2−プロパンジオール残基50mol%から構成される場合はジオール残基の平均炭素数2.5となる。
重縮合エステル可塑剤の数平均分子量は500〜2000が好ましく、600〜1500がより好ましく、700〜1200がさらに好ましい。重縮合エステルの数平均分子量は600以上であれば揮発性が低くなり、セルロースエステルフィルムの延伸時の高温条件下における揮散によるフィルム故障や工程汚染の抑制に優れる。
また、2000以下であればセルロースエステルとの相溶性が高くなり、製膜時および加熱延伸時のブリードアウトの抑制に優れる。
重縮合エステル可塑剤の数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定、評価することができる。また、末端が封止のないポリエステルポリオールの場合、質量あたりのヒドロキシ基の量(以下、水酸基価とも言う)により算出することもできる。本発明において、水酸基価は、ポリエステルポリオールをアセチル化した後、過剰の酢酸の中和に必要な水酸化カリウムの量(mg)を測定して得ることができる。
芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジカルボン酸との混合物をジカルボン酸成分として用いる場合は、ジカルボン酸成分の平均炭素数は、5.5〜10.0が好ましく、より好ましくは5.6〜8である。
平均炭素数を5.5以上にすることで耐久性により優れた偏光板を得ることができる。また、平均炭素数を10以下にすることでセルロースエステルへの相溶性により優れ、セルローエステルフィルムの製膜過程でブリードアウトの抑制に優れる。
芳香族ジカルボン酸を用いて得られた重縮合エステルには、芳香族ジカルボン酸残基が含まれる。
本発明に用いる重縮合エステル可塑剤のジカルボン酸残基中、芳香族ジカルボン酸残基の比率は40mol%以上が好ましく、40mol%〜95mol%がより好ましい。
ジカルボン酸残基中の芳香族ジカルボン酸残基の比率を40mol%以上にすることで、十分な光学異方性を示すセルロースエステルフィルムが得られ、耐久性に優れた偏光板を得ることができる。また、ジカルボン酸残基中の芳香族ジカルボン酸残基の比率を95mol%以下にすることでセルロースエステルとの相溶性に優れ、セルロースエステルフィルムの製膜時および加熱延伸時においてもブリードアウトの抑制に優れる。
ジカルボン酸残基は重縮合エステルの部分構造であり、例えばジカルボン酸HOC(=O)−X−COHから形成されるジカルボン酸残基は−C(=O)−X−C(=O)−である。
重縮合エステル可塑剤の合成に用いることができる芳香族ジカルボン酸は、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,8−ナフタレンジカルボン酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸から選ばれる少なくとも1種が好ましい。その中でもフタル酸、テレフタル酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸から選ばれる少なくとも1種がより好ましく、フタル酸およびテレフタル酸から選ばれる少なくとも1種がさらに好ましく、テレフタル酸がさらに好ましい。
重縮合エステル可素剤の合成に、芳香族ジカルボン酸としてテレフタル酸を用いることで、よりセルロースエステルとの相溶性に優れ、セルロースエステルフィルムの製膜時および加熱延伸時においてもブリードアウトの抑制に優れたセルロースエステルフィルムとすることができる。また、芳香族ジカルボン酸は1種用いても、2種以上を用いてもよい。2種用いる場合は、フタル酸とテレフタル酸を用いることが好ましい。
また、フタル酸とテレフタル酸の2種の芳香族ジカルボン酸を併用することにより、常温での重縮合エステル可素剤を軟化することができ、ハンドリングが容易になる点で好ましい。
重縮合エステル可塑剤は、そのジカルボン酸残基中におけるテレフタル酸残基の含有量は、40mol%〜100mol%が好ましい。
テレフタル酸残基比率を40mol%以上にすることで、十分な光学異方性を示すセルロースエステルフィルムが得られる。
脂肪族ジカルボン酸を用いて得られた重縮合エステルには、脂肪族ジカルボン酸残基が含まれる。
重縮合エステル可塑剤の合成に使用する脂肪族ジカルボン酸は、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸および1,4−シクロヘキサンジカルボン酸から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
脂肪族ジカルボン酸残基の平均炭素数は、5.5〜10.0が好ましく、5.5〜8.0がより好ましく、5.5〜7.0がさらに好ましい。脂肪族ジカルボン酸残基の平均炭素数が10.0以下であれば化合物の加熱減量が低減でき、セルロースアシレートウェブ乾燥時のブリードアウトによる工程汚染が原因と考えられる面状故障の発生を防ぐことができる。また、脂肪族ジカルボン酸残基の平均炭素数が5.5以上であれば相溶性に優れ、重縮合エステルの析出が起き難く好ましい。
重縮合エステル可塑剤中の脂肪族ジカルボン酸残基は、具体的には、コハク酸残基を含むことが好ましい。また、重縮合エステル可塑剤中に2種以上の脂肪族ジカルボン酸残基を含む場合には、当該脂肪族ジカルボン酸残基は、コハク酸残基とアジピン酸残基を含むことが好ましい。
重縮合エステル可塑剤には、ジオール残基が含まれる。
一般式(b)で表されるジオール化合物(HO−Z−OH)により形成されるジオール残基は−O−Z−O−である。
重縮合エステル可塑剤は、平均炭素数が2.5〜7.0の脂肪族ジオール残基を含むことが好ましく、平均炭素数が2.5〜4.0の脂肪族ジオール残基を含むことがより好ましい。
脂肪族ジオール残基の平均炭素数が7.0より小さいとセルロースエステルとの相溶性が改善され、ブリードアウトが生じにくくなり、また、化合物の加熱減量が増大しにくくなり、セルロースアシレートウェブ乾燥時の工程汚染が原因と考えられる面状故障が発生し難くなる。また、脂肪族ジオール残基の平均炭素数が2.5以上であれば合成が容易である。
重縮合エステル可塑剤の末端は、封止せずにジオールもしくはカルボン酸のまま(すなわち、ポリマー鎖長末端が−OHまたは−COH)としてもよく、さらに−OH末端に対してモノカルボン酸または−COH末端に対してモノアルコールを反応させて、いわゆる末端封止を行ってもよい。なお、重縮合エステル可塑剤の末端を封止することで、常温での状態が固体形状となりにくく、ハンドリングが良好となる。また、湿度安定性、偏光板耐久性に優れたセルロースエステルフィルムが得られる。
封止に用いるモノカルボン酸は、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、および安息香酸から選ばれる少なくとも1種が好ましい。封止に用いるモノアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、およびイソブタノールから選ばれる少なくとも1種が好ましく、メタノールが最も好ましい。重縮合エステルの末端に使用するモノカルボン酸の炭素数が7以下であると、化合物の加熱減量が小さくなり、面状故障の発生の抑制に優れる。
下記表1に重縮合エステル可塑剤の具体例J−1〜J−41を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 2014210905
ここで、上記表1中の略称において、PAはフタル酸、TPAはテレフタル酸、AAはアジピン酸、SAはコハク酸、2,6−NPAは2,6−ナフタレンジカルボン酸をそれぞれ表す。
重縮合エステル可塑剤の合成は、常法によりジオールとジカルボン酸とのポリエステル化反応またはエステル交換反応による熱溶融縮合法、もしくは、これら酸の酸クロライドとグリコール類との界面縮合法のいずれかの方法によって容易に合成できる。なお、重縮合エステルは、村井孝一編者「可塑剤その理論と応用」(株式会社幸書房,昭和48年3月1日初版第1版発行)に詳細に記載されており、これらの化合物を使用することもできる。
本発明には、重縮合エステル可塑剤として、特開平05−155809号、特開平05−155810号、特開平5−197073号、特開2006−259494号、特開平07−330670号、特開2006−342227号、特開2007−003679号の各公報などに記載されている化合物を利用することもできる。
(炭水化物誘導体可塑剤)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、さらに炭水化物誘導体可塑剤を含むことが好ましい。炭水化物誘導体可塑剤を含有させることで、湿度安定性、偏光板耐久性に優れたセルロースエステルフィルムを得ることができる。
炭水化物誘導体可塑剤としては、単糖あるいは2〜10個の単糖単位を含む炭水化物の誘導体が好ましい。
炭水化物誘導体可塑剤を好ましく構成する単糖または多糖は、分子中の置換可能な基(例えば、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アミノ基、メルカプト基など)の一部または全部が置換基により置換されている。炭水化物誘導体可塑剤が有しうる置換基としては、アルキル基、アリール基、アシル基などを挙げることができ、詳細は後述する。また、アルコールによって置換されて形成されるエーテル構造、ヒドロキシ基がアシル基によって置換されて形成されるエステル構造、アミノ基によって置換されて形成されるアミド構造やイミド構造などを挙げることができる。
単糖または2〜10個の単糖単位を含む炭水化物は、エリトロース、トレオース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、アロース、アルトロース、グルコース、フルクトース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、トレハロース、イソトレハロース、ネオトレハロース、トレハロサミン、コウジビオース、ニゲロース、マルトース、マルチトール、イソマルトース、ソホロース、ラミナリビオース、セロビオース、ゲンチオビオース、ラクトース、ラクトサミン、ラクチトール、ラクツロース、メリビオース、プリメベロース、ルチノース、シラビオース、スクロース、スクラロース、ツラノース、ビシアノース、セロトリオース、カコトリオース、ゲンチアノース、イソマルトトリオース、イソパノース、マルトトリオース、マンニノトリオース、メレジトース、パノース、プランテオース、ラフィノース、ソラトリオース、ウンベリフェロース、リコテトラオース、マルトテトラオース、スタキオース、バルトペンタオース、ベルバルコース、マルトヘキサオース、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、δ−シクロデキストリン、キシリトール、またはソルビトールが好ましい。
好ましくは、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、トレハロース、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、スクラロース、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、δ−シクロデキストリン、キシリトール、ソルビトールであり、さらに好ましくは、アラビノース、キシロース、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、マルトース、セロビオース、スクロース、β−シクロデキストリン、またはγ−シクロデキストリンであり、特に好ましくは、キシロース、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、マルトース、セロビオース、スクロース、キシリトール、またはソルビトールである。
また、炭水化物誘導体可塑剤が有する置換基は、アルキル基(好ましくは炭素数1〜22、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8のアルキル基、例えば、メチル、エチル、プロピル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、2−シアノエチル、ベンジル基など)、アリール基(好ましくは炭素数6〜24、より好ましくは6〜18、特に好ましくは6〜12のアリール基、例えば、フェニル、ナフチル)、アシル基(アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、ヘテロ環カルボニル基を含み、好ましくは炭素数1〜22、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8のアシル基、例えばアセチル、プロピオニル、ブチリル、ペンタノイル、ヘキサノイル、オクタノイル、ベンゾイル、トルイル、フタリル、ナフトルなど)が好ましい。また、アミノ基によって置換されて形成される好ましい構造として、アミド構造(好ましくは炭素数1〜22、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8のアミド、例えばホルムアミド、アセトアミドなど)、またはイミド構造(好ましくは炭素数4〜22、より好ましくは炭素数4〜12、特に好ましくは炭素数4〜8のイミド、例えば、スクシイミド、フタルイミドなど)を挙げることができる。
炭水化物誘導体可塑剤が有する置換基は、アルキル基、アリール基およびアシル基から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましく、さらに好ましくはアシル基である。
炭水化物誘導体可塑剤の好ましい例としては、以下のものを挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
キシローステトラアセテート、グルコースペンタアセテート、フルクトースペンタアセテート、マンノースペンタアセテート、ガラクトースペンタアセテート、マルトースオクタアセテート、セロビオースオクタアセテート、スクロースオクタアセテート、キシリトールペンタアセテート、ソルビトールヘキサアセテート、キシローステトラプロピオネート、グルコースペンタプロピオネート、フルクトースペンタプロピオネート、マンノースペンタプロピオネート、ガラクトースペンタプロピオネート、マルトースオクタプロピオネート、セロビオースオクタプロピオネート、スクロースオクタプロピオネート、キシリトールペンタプロピオネート、ソルビトールヘキサプロピオネート、キシローステトラブチレート、グルコースペンタブチレート、フルクトースペンタブチレート、マンノースペンタブチレート、ガラクトースペンタブチレート、マルトースオクタブチレート、セロビオースオクタブチレート、スクロースオクタブチレート、キシリトールペンタブチレート、ソルビトールヘキサブチレート、キシローステトラベンゾエート、グルコースペンタベンゾエート、フルクトースペンタベンゾエート、マンノースペンタベンゾエート、ガラクトースペンタベンゾエート、マルトースオクタベンゾエート、セロビオースオクタベンゾエート、スクロースオクタベンゾエート、キシリトールペンタベンゾエート、およびソルビトールヘキサベンゾエートから選ばれる少なくとも1種。
より好ましくは、キシローステトラアセテート、グルコースペンタアセテート、フルクトースペンタアセテート、マンノースペンタアセテート、ガラクトースペンタアセテート、マルトースオクタアセテート、セロビオースオクタアセテート、スクロースオクタアセテート、キシリトールペンタアセテート、ソルビトールヘキサアセテート、キシローステトラプロピオネート、グルコースペンタプロピオネート、フルクトースペンタプロピオネート、マンノースペンタプロピオネート、ガラクトースペンタプロピオネート、マルトースオクタプロピオネート、セロビオースオクタプロピオネート、スクロースオクタプロピオネート、キシリトールペンタプロピオネート、ソルビトールヘキサプロピオネート、キシローステトラベンゾエート、グルコースペンタベンゾエート、フルクトースペンタベンゾエート、マンノースペンタベンゾエート、ガラクトースペンタベンゾエート、マルトースオクタベンゾエート、セロビオースオクタベンゾエート、スクロースオクタベンゾエート、キシリトールペンタベンゾエート、およびソルビトールヘキサベンゾエートから選ばれる少なくとも1種。
さらに好ましくは、マルトースオクタアセテート、セロビオースオクタアセテート、スクロースオクタアセテート、キシローステトラプロピオネート、グルコースペンタプロピオネート、フルクトースペンタプロピオネート、マンノースペンタプロピオネート、ガラクトースペンタプロピオネート、マルトースオクタプロピオネート、セロビオースオクタプロピオネート、スクロースオクタプロピオネート、キシローステトラベンゾエート、グルコースペンタベンゾエート、フルクトースペンタベンゾエート、マンノースペンタベンゾエート、ガラクトースペンタベンゾエート、マルトースオクタベンゾエート、セロビオースオクタベンゾエート、スクロースオクタベンゾエート、キシリトールペンタベンゾエート、およびソルビトールヘキサベンゾエートから選ばれる少なくとも1種。
炭水化物誘導体可塑剤はピラノース構造あるいはフラノース構造を有することが好ましい。
本発明に用いられる炭水化物誘導体可塑剤としては以下に示す化合物も好ましい。ただし、本発明では、これらに限定されるものではない。
なお、以下の構造式中、Rは各々独立に任意の置換基を表し、複数のRは同一でも、異なっていてもよい。
下記表2〜5において、1分子中のヒドロキシ基(Rがいずれも水素原子)であるものを、2種類のアシル化剤でアシル化したものであり、この2種類のアシル化剤で導入されたRの一方を「置換基1」、他方のRを「置換基2」として示し、置換度は、1分子中の全ヒドロキシ基中の個数を表す。
Figure 2014210905
Figure 2014210905
Figure 2014210905
Figure 2014210905
Figure 2014210905
Figure 2014210905
Figure 2014210905
Figure 2014210905
炭水化物誘導体可塑剤は、市販品として、例えば、東京化成社製、アルドリッチ社製のものを入手可能であり、また市販の炭水化物を既知のエステル化反応(例えば、特開平8−245678号公報に記載の方法)により容易に合成できる。
本発明のセルロースアシレートフィルム中の可塑剤の含有量は、セルロースアシレート100質量部に対して1〜20質量部が好ましい。可塑剤の含有量をセルロースアシレート100質量部に対して1質量部以上にすることで、偏光子耐久性改良効果が得られやすく、また20質量部以下にすることで、ブリードアウトも抑制できる。セルロースアシレートフィルム中の可塑剤のさらに好ましい含有量は、セルロースアシレート100質量部に対して2〜15質量部であり、特に好ましくは5〜15質量部である。
なお、これらの可塑剤は2種類以上添加してもよい。2種類以上添加する場合も、添加量の具体例および好ましい範囲は上記と同一である。
(劣化防止剤)
セルロースアシレートフィルムには、劣化防止剤(例、酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤、アミン)を添加してもよい。また、紫外線吸収剤も劣化防止剤の1つである。これらの劣化防止剤などは、特開昭60−235852号、特開平3−199201号、同5−1907073号、同5−194789号、同5−271471号、同6−107854号、同6−118233号、同6−148430号、同7−11056号、同7−11055号、同7−11056号、同8−29619号、同8−239509号、特開2000−204173号の各公報に記載がある。
また、「高分子添加剤ハンドブック」(CMC出版)の21〜69頁に記載の市販の安定化剤はいずれも好ましく用いることができる。
(酸化防止剤)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、酸化防止剤を含有することが好ましい。
酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、4,4'−チオビス−(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)、1,1'−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2'−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などのフェノール系あるいはヒドロキノン系酸化防止剤が挙げられる。
トリス(4−メトキシ−3,5−ジフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリストールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトなどのリン系酸化防止剤やN,N−ジオクタデシルヒドロキシルアミン、N,N−ジベンジルヒドロキシルアミンなどのヒドロキシルアミン系酸化防止剤を用いることも好ましい。ヒドロキシルアミン系化合物については、特開平8−62767号公報の段落番号0005〜0020、段落番号0022〜0026に記載の化合物も好ましく用いることができる。
また、下記一般式(A)または後述の一般式(B)で表されるレダクトン類も本発明に用いる酸化防止剤として好ましい。
Figure 2014210905
一般式(A)中、RA1およびRA2は各々独立に、ヒドロキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、メルカプト基またはアルキルチオ基を表す。Xは炭素原子と酸素原子および/または窒素原子から構成され、−C(=O)−C(RA1)=C(RA2)−と共に5〜6員環を構成する非金属原子群を表す。
A1およびRA2はヒドロキシ基、アミノ基、アルキルスルホニルアミノ基またはアリールスルホニルアミノ基が好ましく、ヒドロキシ基またはアミノ基がより好ましく、ヒドロキシ基がさらに好ましい。
Xは、少なくとも1つの−O−結合を有し、−C(RA3)(RA4)−、−C(RA5)=、−C(=O)−、−N(Ra)−および−N=の1種または2種以上を組み合わせて構成されることが好ましい。ここで、RA3〜RA5およびRaは各々独立に、水素原子、炭素数1〜10の置換基を有してよいアルキル基、置換基を有してよい炭素数6〜15のアリール基、ヒドロキシ基またはカルボキシル基が好ましい。
Xを介して形成される上記の5〜6員環は、例えば、シクロペンテノン環(2−シクロペンテン−1−オン環;形成された化合物はレダクチン酸となる)、フラノン環〔2(5H)−フラノン環〕、ジヒドロピラノン環〔3,4−ジヒドロ−2H−ピラン−4−オン環(2,3−ジヒドロ−4H−ピロン環)、3,6−ジヒドロ−2H−ピラン−2−オン環、3,6−ジヒドロ−2H−ピラン−6−オン環(5,6−ジヒドロ−2−ピロン環)〕、3,4−ジヒドロ−2H−ピロン環が挙げられ、シクロペンテノン環、フラノン環、ジヒドロピロン環が好ましく、フラノン環、ジヒドロピロン環がさらに好ましく、フラノン環が特に好ましい。
これらの環は縮環していてもよく、該縮環する環としては、飽和環、不飽和環のいずれでもよい。
上記一般式(A)で表わされるレダクトン類のうち、下記一般式(A1)で表される化合物が好ましく、なかでも下記一般式(A2)で表される化合物が好ましい。
Figure 2014210905
一般式(A1)中、Ra1は水素原子、アルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表し、それらは置換基を有していてもよい。
a1は置換基を有してもよいアルキル基が好ましく、−CH(ORa1)CHORa2がより好ましく、この場合、上記一般式(A2)で表される化合物となる。
一般式(A2)中、Ra2およびRa3は各々独立に、水素原子、アルキル基、アシル基またはアルコキシカルボニル基を表し、Ra2とRa3が互いに結合して環を形成してもよく、形成する環としては1,3−ジオキソラン環であることが好ましく、該環はさらに置換基を有していてもよい。ジオキソラン環を有する化合物は、アスコルビン酸とケトン類やアルデヒド類との反応による、アセタールもしくはケタール化で合成でき、原料のケトン類やアルデヒド類は特に制約なく用いることができる。
特に好ましい置換基の組合せの一つは、Ra2がアシル基でRa3が水素原子である化合物であり、アシル基としては脂肪族アシル基と芳香族アシル基のどちらでもよく、脂肪族アシル基の場合には、炭素数が2〜30が好ましく、4〜24がより好ましく、8〜18がさらに好ましい。芳香族アシル基の場合には、炭素数は7〜24が好ましく、炭素数7〜22がより好ましく、炭素数7〜18がさらに好ましい。好ましいアシル基としては、ブタノイル、ヘキサノイル、2−エチルヘキサノイル、デカノイル、ラウロイル、ミリストイル、パルミトイル、ステアロイル、パルミトレイル、ミリストレイル、オレオイル、ベンゾイル、4−メチルベンゾイルおよび2−メチルベンゾイルを挙げることができる。
前記一般式(A)で表される化合物とともに、下記一般式(B)で表される化合物も好ましい。
Figure 2014210905
一般式(B)中、RB1およびRB2は各々独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アシル基、カルボキシ基、アミノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基または複素環基を表し、RB3およびRB4は各々独立に、ヒドロキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基またはメルカプト基を表す。
B1およびRB2におけるアルキル基は、炭素数1〜10が好ましい。該アルキル基は、メチル、エチル、t−ブチルが好ましい。
B1およびRB2におけるアルキル基は、炭素数1〜10が好ましい。
B1およびRB2におけるアルケニル基は、炭素数2〜10が好ましい。該アルケニル基はビニル、アリルが好ましく、ビニルが好ましい。
B1およびRB2におけるシクロアルキル基は、炭素数3〜10が好ましい。該シクロアルキル基はシクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルが好ましい。
これらのアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基は置換基を有してもよく、該置換基はヒドロキシ基、カルボキシル基およびスルホ基から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
なお、アルケニル基がビニルの場合、カルボキシル基が置換したビニル基も好ましい。
B1およびRB2におけるアリール基は、炭素数6〜12が好ましい。アリール基は置換基を有してもよく、該置換基はアルキル基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、スルホ基、ハロゲン原子、ニトロ基およびシアノ基から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
B1およびRB2におけるアシル基は、ホルミル、アセチル、イソブチリルまたはベンゾイルが好ましい。
B1およびRB2におけるアミノ基は、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基を含み、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、エチルアミノ、ジエチルアミノ、ジプロピルアミノ、フェニルアミノ、N−メチル−N−フェニルアミノが好ましい。
B1およびRB2におけるアルコキシ基は、炭素数1〜10が好ましい。該アルコキシ基はメトキシまたはエトキシが好ましい。
B1およびRB2におけるアルコキシカルボニル基はメトキシカルボニルが好ましい。
B1およびRB2における複素環基は、環構成ヘテロ原子が酸素原子、硫黄原子または窒素原子が好ましく、環構造が5員環または6員環であることが好ましい。該複素環基は、芳香族複素環基であっても飽和複素環基であっても、また縮環していても構わない。
複素環基における複素環は、ピリジン環、ピリミジン環、ピロール環、フラン環基、チオフェン環、ピラゾール環、ピペリジン環、ピペラジン環またはモルホリン環が好ましい。
B1およびRB2は、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基または炭素数6〜12のアリール基である。
B3およびRB4におけるアミノ基は、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基を含み、アミノ基やメチルアミノ、エチルアミノ、n−ブチルアミノ、ヒドロキシエチルアミノのようなアルキルアミノ基が好ましい。
B3およびRB4におけるアシルアミノ基は、アセチルアミノまたはベンゾイルアミノが好ましい。
B3およびRB4におけるアルキルスルホニルアミノ基は、メチルスルホニルアミノが好ましい。
B3およびRB4におけるアリールスルホニルアミノ基は、ベンゼンスルホニルアミノまたはp−トルエンスルホニルアミノが好ましい。
B3およびRB4におけるアルコキシカルボニルアミノ基は、メトキシカルボニルアミノが好ましい。
B3およびRB4はヒドロキシ基、アミノ基、アルキルスルホニルアミノ基またはアリールスルホニルアミノ基がより好ましい。
本発明に用いる酸化防止剤は、レダクトン類がより好ましく、具体例としては、特開6−27599号公報の段落番号0014〜0034に例示の化合物、特開平6−110163号公報の段落番号0012〜0020に例示の化合物、特開平8−114899号公報の段落番号0022〜0031に例示の化合物を挙げることができる。
なかでも、L−アスコルビン酸のミリスチン酸エステル、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステルが特に好ましい。
前記酸化防止剤をセルロースアシレートフィルムに添加するタイミングは、製膜される時点で添加されていれば特に限定されない。例えば、セルロースアシレートの合成時点で添加してもよいし、ドープ調製時にセルロースアシレートと混合してもよい。
セルロースアシレートフィルム中の酸化防止剤の含有量は、セルロースアシレート100質量部に対して、0.0001〜5.0質量部が好ましい。酸化防止剤の含有量を前記範囲内とすることで、十分な酸化防止効果と偏光子耐久性を得ることができる。セルロースアシレートフィルム中の酸化防止剤の含有量は、さらに好ましくは、セルロースアシレート100質量部に対して、0.001〜1.0質量部であり、より好ましくは、0.01質量部〜0.5質量部である。
(ラジカル捕捉剤)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、ラジカル捕捉剤を含有することが好ましい。ラジカル捕捉剤を含有することにより、前記一般式(I)で表される化合物の分解が抑制され、より良好な偏光子の耐久性が得られる。
本発明に用いうるラジカル捕捉剤としては、下記一般式(H)で表される化合物(HALS)が好ましい。
Figure 2014210905
一般式(H)中、RH1およびRH2は各々独立に、水素原子または置換基を表し、RH01〜RH04は各々独立にアルキル基を表す。
H1における置換基は特に限定はないが、アルキル基であるか、または窒素原子もしくは酸素原子でピペリジン環と結合する置換基が好ましい。窒素原子もしくは酸素原子でピペリジン環と結合する置換基は、アミノ基、アシルアミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基またはアシルオキシ基が好ましい。これらの基は置換基を有していてもよい。
H1における置換基は、アルキル基、アリール基もしくはヘテロ環基を有するアミノ基、さらにはヒドロキシ基、アルコキシ基またはアシルオキシ基が好ましい。
H2における置換基は特に限定はないが、アルキル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜12、さらに好ましくは1〜8であり、なかでも、メチル、エチル、イソプロピル、tert−ブチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−デシル、n−ヘキサデシル)、アルケニル基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜12、さらに好ましくは2〜8であり、さらに好ましくは、ビニル、アリル、2−ブテニルまたは3−ペンテニル)、アルキニル基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜12、さらに好ましくは2〜8であり、さらに好ましくは、プロパルギル、たは3−ペンチニル)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜20、より好ましくは3〜12、さらに好ましくは3〜8で、シクロプロピル、シクロペンチルまたはシクロヘキシル)。アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは6〜20、さらに好ましくは6〜12であり、さらに好ましくは、フェニル、ビフェニルまたはナフチル)、アミノ基(アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基を含み、好ましくは炭素原子数0〜20、より好ましくは0〜10、さらに好ましくは0〜6であり、さらに好ましくは、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、フェニルアミノ、N−メチル−N−フェニルアミノまたはジベンジルアミノ)、アルコキシ基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜12、さらに好ましくは1〜8であり、さらに好ましくは、メトキシ、エトキシ、ブトキシ)、シクロアルキルオキシ基(シクロアルキルオキシ基におけるシクロアルキル環は、好ましくは3〜8員環で、炭素数3〜20が好ましく、シクロアルキルオキシ基は、好ましくはシクロプロピルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ)、アシル基(アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基を含み、好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは2〜16、さらに好ましくは2〜8であり、さらに好ましくは、アセチル、プロピオニル、2−エチルヘキサノイルまたはベンゾイル)、ヒドロキシ基またはオキシラジカル基(−O・)が好ましい。
H01〜RH04は、炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、エチルまたはメチルがより好ましく、R01〜R04の全てが、メチルであることがさらに好ましい。
上記一般式(H)で表される化合物は、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−アリル−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−ベンジル−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(4−t−ブチル−2−ブテニル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−エチル−4−サリチロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メタクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン−4−イル−β(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、1−ベンジル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イルマレイネート(maleinate)、ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アジペート、ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)セバケート、ビス(1,2,3,6−テトラメチル−2,6−ジエチル−ピペリジン−4−イル)セバケート、ビス(1−アリル−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−4−イル)フタレート、1−アセチル−4−アセトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、トリメリト酸−トリス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)エステル、1−アクリロイル−4−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、
ジブチルマロン酸−ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−ピペリジン−4−イル)エステル、ジベンジルマロン酸−ビス(1,2,3,6−テトラメチル−2,6−ジエチル−ピペリジン−4−イル)エステル、ジメチル−ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イルオキシ)−シラン,トリス(1−プロピル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−ホスフィット、トリス(1−プロピル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−ホスフェート,N,N′−ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−ヘキサメチレン−1,6−ジアミン、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン−4−イル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、N,N’−ビス−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−ヘキサメチレン−1,6−ジアセトアミド、1−アセチル−4−(N−シクロヘキシルアセトアミド)−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン、4−ベンジルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、N,N’−ビス−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−N,N’−ジブチル−アジパミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−N,N’−ジシクロヘキシル−(2−ヒドロキシ)プロピレンンジアミン、N,N’−ビス−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−p−キシリレン−ジアミン、4−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−メタクリルアミド−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジンおよびα−シアノ−β−メチル−β−[N−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)]−アミノ−アクリル酸メチルエステルから選ばれる少なくとも1種が好ましい。
さらに、好ましくは、N,N’,N”,N′″−テトラキス−[4,6−ビス−〔ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ〕−トリアジン−2−イル]−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、ジブチルアミンと1,3,5−トリアジン・N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物(BASF社製 CHIMASSORB 2020FDL)、ジブチルアミンと1,3,5−トリアジンとN,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、ポリ〔{(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕(BASF社製 CHIMASSORB 944FDL)、1,6−ヘキサンジアミン−N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)とモルホリン−2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジンとの重縮合物、ポリ[(6−モルホリノ−s−トリアジン−2,4−ジイル)〔(2,2,6,6,−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕−ヘキサメチレン〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕]などの、ピペリジン環がトリアジン骨格を介して複数結合した高分子量HALS;
または、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの重縮合物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールと3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンとの混合エステル化物などの、ピペリジン環がエステル結合を介して結合した高分子量HALSを好適に用いることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
これらの中でも、ジブチルアミンと1,3,5−トリアジンとN,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、ポリ〔{(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}およびコハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの重縮合物から選ばれ、数平均分子量(Mn)は、2,000〜5,000が好ましい。
ラジカル捕捉剤は、下記構造(Hα)で表される化合物(商品名、Sunlizer HA−622、株式会社ソート製)および下記構造(Hβ)で表される化合物も好適である。
Figure 2014210905
なお、上記構造(Hα)におけるmは2〜30である。
上記構造(Hα)または(Hβ)の化合物は、BASF社(旧チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社)製の商品名、CHIMASSORB 2020FDL(CAS−No.192268−64−7)、CHIMASSORB 944FDL(CAS−No.71878−19−8)およびTINUVIN 770DF(CAS−No.52829−07−9)、サンケミカル株式会社製の商品名、サイアソーブUV−3346(CAS−No.82541−48−7)、同サイアソーブUV−3529(CAS−No.193098−40−7)として上市され、入手可能である。
また、下記一般式(H1)で表される化合物は、塩基性が低く、偏光性能に対する副作用が小さいという理由から、本発明のセルロースアシレートフィルムに特に好ましく用いることができる。
Figure 2014210905
一般式(H1)中、ZH1はアルキル基、シクロアルキル基またはアリール基を表し、YH1は水素原子または置換基を表す。RH01〜RH04は、前記一般式(H)のRH01〜RH04と同義であり、好ましい態様も同一である。
H1は置換基を有してもよいアルキル基またはシクロアルキル基が好ましく、分岐構造を有する無置換アルキル基、アリール基を置換基として有するアルキル基またはシクロアルキル基がより好ましく、シクロアルキル基がさらに好ましい。なお、ZH1が有する置換基には特に限定はない。
H1におけるアルキル基の炭素数は1〜20が好ましく、1〜14がさらに好ましい。ZH1におけるシクロアルキル基の炭素数は3〜20が好ましく、3〜14がさらに好ましい。また、ZH1におけるアリール基の炭素数は6〜20が好ましく、6〜14がさらに好ましい。
H1は置換基が好ましい。YH1における置換基は特に限定されないが、窒素原子または酸素原子でピペリジン環と結合する置換基が好ましく、また、置換基を有していてもよいアミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基(炭素数は、好ましくは1〜20、より好ましくは1〜14)、アリールオキシ基(炭素数は、好ましくは6〜20、より好ましくは6〜12)、またはアシルオキシ基(炭素数は、好ましくは2〜20、より好ましくは2〜14)であることがより好ましく、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基またはヘテロ環基を置換基として有するアミノ基、ヒドロキシ基、炭素数1〜10のアルコキシ基、または炭素数2〜10のアシルオキシ基がさらに好ましい。
一般式(H1)で表される化合物は、特にピペリジン環の窒素(N)が、ZH1で表される置換基を有していてもよいアルキル基またはアリール基と、エーテル結合している点に特徴がある。この「N−O−ZH1」の構造を含む前記一般式(H1)で表されるピペリジン骨格を有する化合物を、本願明細書では「NOZH1型」と呼ぶ。
その他、ピペリジン環の窒素(N)に水素のみが直接結合した化合物は「NH型」と呼び、窒素(N)にメチル基のみが直接結合した化合物は「NCH型」と呼ぶ。NH型およびNCH型は、NOZH1型と比較して塩基性が強い。本発明では塩基性の弱いNOZH1型の化合物を用いることで、偏光板に本発明のセルロースアシレートフィルムを組み込んで高温高湿下で長期間使用した際の偏光子性能劣化をより効果的に抑制することができる。
一般式(H1)で表されるNOZH1型の化合物は、所定のピペリジン骨格を有するものであれば限定されないが、下記一般式(H1−1)または(H1−2)で表される化合物が好ましい。
Figure 2014210905
一般式(H1−1)、(H1−2)中、RH01〜RH04は、前記一般式(H)におけるRH01〜RH04と同義であり、好ましい範囲も同じである。ZH2は置換基を有してもよいアルキル基またはアリール基を表す。RH11およびRH12は各々独立に、アルキル基、アリール基、アシル基または複素環基を表す。RH13は水素原子、アルキル基、アシル基またはアリール基を表す。
H2の好ましい範囲は、前記一般式(H1)のZH1と同じである。
H11は水素原子またはアルキル基がより好ましく、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基が特に好ましく、プロピル基またはブチル基がより特に好ましい。
H12はアルキル基または複素環基がより好ましく、炭素数1〜6のアルキル基または環員数1〜2の窒素原子を含む複素環基が特に好ましく、トリアジンが特に好ましい。
H13は水素原子、炭素数1〜12のアルキル基または炭素数1〜12のアシル基が好ましく、炭素数1〜12のアシル基が特に好ましい。
前記RH11〜RH13における上記の各基は置換基で置換されていてもよい。このような置換基としては、例えば、一般式(H1)からYH1を取り除いた置換基を有していてもよい。
前記一般式(H1−1)または(H1−2)で表される化合物は、下記一般式(H1−a)〜(H1−c)で表される化合物が好ましい。
Figure 2014210905
一般式(H1−a)〜(H1−c)中、ZH1およびZH2は前記と同様であり、好ましい範囲も同じである。RH01〜RH04は前記一般式(H)におけるRH01〜RH04と同義であり、好ましい範囲も同じである。
一般式(H1−c)中、RH05〜RH06は各々独立にアルキル基を表し、RHaおよびRHbは各々独立に水素原子、アルキル基、アリール基または複素環基を表し、WH1は置換基を表す。
以下に前記一般式(H)で表される化合物の好ましい例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 2014210905
Figure 2014210905
上記化合物HA−11(製品名「TINUVIN 152」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製、CAS−No. 191743−75−6)および化合物HA−12(製品名「FLAMESTAB NOR 116 FF」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製、CAS−No. 191680−81−6)は市場から容易に入手可能である。
また、下記化合物HA−13(製品名「TINUVIN 123」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製、CAS−No. 129757−67−1)もラジカル捕捉剤として好ましく用いることができる。
Figure 2014210905
なお、前記一般式(H)で表される化合物は、上述のように商業的に入手してもよいが、合成により製造したものを用いてもよい。前記一般式(H)で表される化合物の合成方法としては特に制限はなく、通常の有機合成における手法により合成可能である。また、精製方法としては、蒸留、再結晶、再沈、ろ過剤・吸着剤を用いる方法を適宜使用することができる。さらに、通常市販される安価に入手可能なものは前記一般式(H)で表される化合物単独ではなく、混合物であることもあるが、本発明においては、ラジカル捕捉剤として機能する限り、製造方法、組成、融点、酸価等によらず利用することができる。
前記一般式(H)で表される化合物は、その分子量に制限はないが、セルロースアシレートフィルムからの揮発抑制の観点から、下記の分子量のように、ある程度高分子である方が好ましい。適度な分子量に調整することで、セルロースアシレートとの相溶性に優れ、透明性の高いフィルムが得られる。
従って、前記一般式(H)で表される化合物の分子量は300〜100000が好ましく、500〜50000がより好ましく、700〜30000が特に好ましい。
前記一般式(H)で表される化合物をセルロースアシレートフィルムに添加するタイミングは、製膜される時点で添加されていれば特に限定されない。例えば、セルロースアシレートの合成時点で添加してもよいし、ドープ調製時にセルロースアシレートと混合してもよい。
セルロースアシレートフィルム中の前記一般式(H)で表される化合物の含有量は、セルロースアシレート100質量部に対して、0.0001〜5.0質量部が好ましい。セルロースアシレートフィルム中の前記一般式(H)で表される化合物の含有量を上記範囲内とすることで、十分な酸化防止効果と偏光子耐久特性を得ることができる。セルロースアシレートフィルム中の前記一般式(H)で表される化合物の含有量は、さらに好ましくはセルロースアシレート100質量部に対して、0.001〜1.0質量部であり、さらに好ましくは、0.01質量部〜0.5質量部である。
(紫外線吸収剤)
本発明においてはセルロースアシレート溶液に、偏光板または液晶等の劣化防止の観点から、紫外線吸収剤を加えてもよい。紫外線吸収剤は、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましく用いられる。本発明に用いられる紫外線吸収剤は、ヒンダードフェノール化合物、ヒドロキシベンゾフェノン化合物、ベンゾトリアゾール化合物、サリチル酸エステル化合物、ベンゾフェノン化合物、シアノアクリレート化合物およびニッケル錯塩化合物から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
ヒンダードフェノール化合物に特に制限はないが、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、N,N'−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンおよびトリス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレートから選ばれる少なくとも1種が好ましい。
ベンゾトリアゾール化合物に特に制限はないが、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス〔4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール〕、(2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、N,N'−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−tert−アミルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、およびペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
セルロースアシレートフィルム中の紫外線防止剤の含有量は、質量ベースで1ppm〜1.0%が好ましく、10ppm〜1000ppmがさらに好ましい。
(その他の劣化防止剤)
セルロースアシレートの劣化防止剤として、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤として知られる添加剤を用いても良い。これらの安定化剤としては例えば、特開2006−251746号公報の段落番号0074〜0081、0082〜0117に記載の化合物が挙げられる。
また、アミン類も劣化防止剤として知られており、例えば特開平5−194789号公報の段落番号0009〜0080に記載の化合物や、トリ−n−オクチルアミン、トリイソオクチルアミン、トリス(2−エチルヘキシル)アミン、N,N−ジメチルドデシルアミンなどの脂肪族アミンが挙げられる。
また、2個以上のアミノ基を有する多価アミン類を用いることも好ましく、多価アミンとしては、第一級または第二級のアミノ基を2個以上有しているものが好ましい。2個以上のアミノ基を有する化合物としては、含窒素ヘテロ環化合物(ピラゾリジン環、ピペラジン環などを有する化合物)、ポリアミン系化合物(鎖状もしくは環状のポリアミンで、例えば、ジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン、N,N’−ビス(アミノエチル)−1,3−プロパンジアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタキス(2−ヒドロキシプロピル)ジエチレントリアミン、シクラムを基本骨格して含む化合物)等が挙げられる。
該多価アミノの具体例としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ジプロピレントリアミン、トリプロピレンテトラミン、アミノエチルエタノ−ルアミン、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、N’,N'−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタキス(2−ヒドロキシプロピル)ジエチレントリアミンなどが挙げられる。また、市販品では、例えば、(株)日本触媒社製エポミンSP−006、SP−012、SP−018等が挙げられる。
(マット剤)
本発明のセルロースアシレートフィルムには、フィルムすべり性、および安定製造の観点からマット剤を加えてもよい。マット剤は、無機化合物のマット剤であっても、有機化合物のマット剤であってもよい。
無機化合物のマット剤は、ケイ素を含む無機化合物(例えば、二酸化ケイ素、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムなど)、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化バリウム、酸化ジルコニウム、酸化ストロンチウム、酸化アンチモン、酸化スズ、酸化スズ・アンチモン、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリンおよびリン酸カルシウムから選ばれる少なくとも1種が好ましく、更に好ましくはケイ素を含む無機化合物および酸化ジルコニウムから選ばれる少なくとも1種であるが、セルロースアシレートフィルムの濁度をより低減する観点から、二酸化ケイ素を用いるのが特に好ましい。
二酸化ケイ素の微粒子は、例えば、アエロジルR972、R974、R812、200、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)等の商品名を有する市販品が使用できる。酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976およびR811(以上日本アエロジル(株)製)等の商品名で市販されているものが使用できる。
有機化合物のマット剤に特に制限はないが、シリコーン樹脂、フッ素樹脂およびアクリル樹脂から選ばれる少なくとも1種のポリマーが好ましく、中でも、シリコーン樹脂が好ましい。シリコーン樹脂の中でも、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、トスパール105、トスパール108、トスパール120、トスパール145、トスパール3120およびトスパール240(以上東芝シリコーン(株)製)等の商品名を有する市販品が使用できる。
これらのマット剤をセルロースアシレートフィルムに添加するタイミングは、製膜される時点で添加されていれば特に限定されない。例えば、セルロースアシレートと溶媒を混合する段階で添加物を含有させてもよいし、セルロースアシレートと溶媒で混合溶液を作製した後に、添加物を添加してもよい。
更にはドープを流延する直前に添加混合してもよく、その混合はスクリュー式混練をオンラインで設置して行われることが好ましい。具体的には、インラインミキサーのような静的混合機を用いることが好ましい。また、インラインミキサーとしては、例えば、スタチックミキサーSWJ(東レ静止型管内混合器Hi−Mixer)(東レエンジニアリング製)のようなものが好ましい。
なお、インライン添加に関しては、濃度ムラ、粒子の凝集等をなくすために、特開2003−053752号公報に記載の方法を用いることができる。さらに、添加剤ブリードアウトが少なく、かつ層間の剥離現象もなく、しかも滑り性が良好で透明性に優れた位相差フィルムとするために特開2003−014933号公報に記載の方法を用いることもできる。
セルロースアシレートフィルム中のマット剤の含有量は、0.05〜1.0質量%が特に好ましい。このような値とすることで、セルロースアシレートフィルムのヘイズが大きくならず、実際に液晶表示装置に使用した場合、コントラストの低下および輝点の発生等の不都合の抑制に寄与する。また、上記のキシミ、耐擦傷性を実現することができる。これらの観点からセルロースアシレートフィルム中のマット剤の含有量は0.05〜1.0質量%が特に好ましい。
(剥離促進剤)
本発明のセルロースアシレートフィルムは公知の剥離促進剤を添加してもよい。
剥離促進剤は、有機酸、多価カルボン酸誘導体、界面活性剤またはキレート剤であることが好ましい。例えば特開2006−45497号公報の段落番号0048〜0081に記載の化合物、特開2002−322294号公報の段落番号0077〜0086に記載の化合物、特開2012−72348号公報の段落番号0030〜0056に記載の化合物等を、好ましく用いることができる。
有機酸としては、特開2002−322294号公報の段落番号0079〜0082に記載の化合物が挙げられ、例えば、クエン酸、シュウ酸、アジピン酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸などが挙げられる。
さらに有機酸としては、アミノ酸類も好ましく、例えば、アスパラギン、アスパラギン酸、アデニン、アラニン、β−アラニン、アルギニン、イソロイシン、グリシン、グルタミン、グルタミン酸、セリン、チロシン、トリプトファン、トレオニン、ノルロイシン、バリン、フェニルアラニン、メチオニン、リシン、ロイシンなどが挙げられる。
有機酸は遊離酸として用いてもよく、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、遷移金属を含む重金属の塩が挙げられる。各塩の金属のうち、アルカリ金属は、リチウム、カリウム、ナトリウムなどが例示でき、アルカリ土類金属は、カルシウム、マグネシウム、バリウム、ストロンチウムなどが例示できる。遷移金属を含む重金属は、アルミニウム、亜鉛、スズ、ニッケル、鉄、鉛、銅、銀などが例示できる。また、炭素数5以下の置換、無置換のアミン類の塩も好ましく、該塩のアミンとしては、例えばアンモニウム、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ヒドロキシエチルアミン、ビス(ヒドロキシエチル)アミン、トリス(ヒドロキシエチル)アミンなどが例示できる。好ましい金属は、アルカリ金属ではナトリウム、アルカリ土類金属ではカルシウム、マグネシウムである。これらのアルカリ金属、アルカリ土類金属はそれぞれ単独もしくは二種以上組み合わせて使用でき、アルカリ金属とアルカリ土類金属とを併用してもよい。
多価カルボン酸誘導体としては、エステル化合物とアミド化合物が好ましい。
カルボン酸成分は、多価のカルボン酸で、該カルボン酸は、脂肪族または芳香族のいずれのカルボン酸であっても構わないが、脂肪族カルボン酸が好ましい。脂肪族カルボン酸は、飽和、不飽和であっても、直鎖状、分岐鎖状または環状の脂肪族のカルボン酸が好ましく、置換基を有していても構わない。該置換基は、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヒドロキシ基、アミノ基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アシルオキシ基、アシルアミノ基が挙げられる。
芳香族カルボン酸は、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1、3、5−ベンゼントリカルボン酸などが挙げられ、脂肪族カルボン酸は、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸が挙げられ、置換基を有する脂肪族カルボン酸としては、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸が挙げられる。
多価カルボン酸エステルは、アルコール成分である、エステル官能基の−C(=O)−O−の酸素原子に結合する基が、置換、無置換のアルキル基〔例えば、メチル、エチル、イソプピル、t−ブチル、2−エチルヘキシル、−CHCHO−(CHCH)n−Cなど〕、アルケニル基(例えば、ビニル、アリル、2−メチル−2−プロペニル、2−ブテニル、オレイルなど)が好ましく、該アルコール成分(酸素原子に結合する基)の総炭素数は1〜200が好ましく、1〜100がより好ましく、1〜50がさらに好ましい。該アルキル基およびアルケニル基が有してもよい置換基は、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、ヒドロキシ基、アシルルオキシ基が好ましく、アルコキシ基がより好ましい。該アルコキシ基やアルケニルオキシ基は、(ポリ)オキシアルキレン基を含むものが好ましく、特に、この(ポリ)オキシアルキレン基が、ポリ(オキシエチレン)基、(ポリ)オキシプロピレン基、(ポリ)オキシブチレン基が好ましい。
また、アルコール成分における原料のアルコールは、1価であっても多価であってもよく、多価アルコールは、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトールが挙げられ、これらのヒドロキシ基部分(−OH)が、ポリオキシアルキレンオキシ基となったもの〔例えば、−(OCHCH)n−OH、−(OC)nOH〕も好ましい。
多価カルボン酸アミドは、アミン成分のアミン化合物が、第一級または第二級のいずれでもよく、特に限定されない。アミド官能基の−C(=O)−N<の窒素原子に置換する置換基は、アルキル基〔例えば、メチル、エチル、イソプピル、t−ブチル、2−エチルヘキシル、−CHCHO−(CHCH)n−Cなど〕、アルケニル基(例えば、ビニル、アリル、2−メチル−2−プロペニル、2−ブテニルなど)が好ましく、該アミン成分であるアミン化合物の総炭素数は1〜200が好ましく、1〜100がより好ましく、1〜50がさらに好ましい。該アルキル基およびアルケニル基が有してもよい置換基は、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、ヒドロキシ基、アシルルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基が好ましく、アルコキシ基がより好ましい。該アルコキシ基やアルケニルオキシ基は、(ポリ)オキシアルキレン基を含むものが好ましく、特に、この(ポリ)オキシアルキレン基が、ポリ(オキシエチレン)基、(ポリ)オキシプロピレン基、(ポリ)オキシブチレン基が好ましい。また、このようなポリオキシアルキレン部分構造が、グリセリンを介して、分岐したポリオキシアルキレン基を含むことも好ましい。
また、アミン成分における原料のアミン化合物は、1価であっても多価であってもよい。
多価カルボン酸誘導体のうち、未反応で遊離可能なカルボキシル基を有する有機酸モノグリセリドが特に好ましく、その市販品としては、例えば、理研ビタミン(株)社製ポエムK−37V(グリセリンクエン酸オレイン酸エステル)、花王社製ステップSS(グリセリンステアリン酸/パルミチン酸コハク酸エステル)等が挙げられる。
前記界面活性剤としては、特開2006−45497号公報の段落番号0050〜0051に記載の化合物、特開2002−322294号公報の段落番号0127〜0128に記載の化合物を好ましく用いることができる。ノニオン系の界面活性剤として具体的にはポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニールエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコール、多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸ジエタノールアミド、トリエタノールアミン脂肪酸部分エステル、ポリエーテルアミンが挙げられる。また、市販品としては、ナイミーンL−202、スタホームDO、スタホームDL(日油)などが挙げられる。
前記キレート剤は、鉄イオンなど金属イオンやカルシウムイオンなどのアルカリ土類金属イオンなどの多価金属イオンに配位(キレート)できる化合物であり、アミノポリカルボン酸、アミノポリホスホン酸、アルキルホスホン酸、ホスホノカルボン酸に代表されるような各種キレート剤のいずれを用いてもよい。キレート剤としては、特公平6−8956号、特開平11−190892号、特開2000−18038号、特開2010−158640号、特開2006−328203号、特開2005−68246号、特開2006−306969号の各公報に記載の化合物を用いることができる。
具体的には、エチレンジアミンテトラ酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、ニトリロトリ酢酸、トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、シクロヘキサンジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルイミノジ酢酸、エチレングリコールビス(2−アミノエチルエーテル)テトラ酢酸、1,3−ジアミノプロパンテトラ酢酸、ホスホン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、ニトリロ−N,N,N−トリメチレンホスホン酸、エチレンジアミン−N,N,N,N−テトラメチレンホスホン酸、エチレンジアミン−ジ(o−ヒドロキシフェニル酢酸)、DL−アラニン−N,N−ジ酢酸、アスパラギン酸−N,N−ジ酢酸、グルタミン酸−N,N−ジ酢酸、セリン−N,N−ジ酢酸、ポリアクリル酸、イソアミレン−マレイン酸共重合体、アクリル酸−マレイン酸共重合体、アクリル酸−メタクリル酸共重合体、ケイ酸、グルコン酸、ヒドロキシベンジルイミノジ酢酸、イミノジ酢酸、などが挙げられる。また、油溶性のキレート剤を用いることも好ましい。市販品としては、テークランDO(ナガセケムテックス株式会社)、キレストMZ−2、キレストMZ−8(キレスト株式会社)を用いることができる。
<セルロースアシレートフィルムの構成と物性>
(フィルムの層構造)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、単層であっても、2層以上の積層体であってもよい。
本発明のセルロースアシレートフィルムが2層以上の積層体である場合は、2層構造または3層構造であることがより好ましく、3層構造であることが好ましい。3層構造は、1層のコア層(以下、基層とも言う)と、当該コア層を挟んで互いに対向するスキン層(スキンA層およびスキンB層という。)から構成されることが好ましい(スキンB層/コア層/スキンA層)。
なお、スキンA層とスキンB層を総称して、スキン層(または表層)とも言う。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、各層中におけるセルロースアシレートのアシル置換度は均一であっても、複数のセルロースアシレートを一つの層に混在させてもよいが、各層中におけるセルロースアシレートのアシル置換度は全て一定であることが光学特性の調整の観点から好ましい。また、本発明のセルロースアシレートフィルムが3層構造であるとき、両面の表面層に含まれるセルロースアシレートは同じアシル置換度のセルロースアシレートを用いることが、製造コストの観点から好ましい。
(弾性率)
本発明のセルロースアシレートフィルムの弾性率の範囲は特に限定されないが、製造適性およびハンドリング性の観点から1.0GPa〜5.0GPaが好ましく、2.0GPa〜4.5GPaがより好ましい。本発明の一般式(I)で表される化合物は、セルロースアシレート中に添加されることにより、フィルムを疎水化することで弾性率を向上させる作用がある。すなわち、本発明の一般式(I)で表される化合物の添加は、弾性率の観点からも有利である。
(光弾性係数)
本発明のセルロースアシレートフィルムの光弾性係数の絶対値は、好ましくは8.0×10−12/N以下、より好ましくは6×10−12/N以下、さらに好ましくは5×10−12/N以下である。樹脂フィルムの光弾性係数を小さくすることにより、該樹脂フィルムを偏光板保護フィルムとして液晶表示装置に組み込んだ際に、高温高湿下におけるムラ発生を抑制できる。光弾性係数は、特に断らない限り、以下の方法により測定し算出するものとする。
光弾性率の下限値は特に限定されないが、0.1×10−12/N以上が実際的である。
(光弾性率の算出方法)
フィルムを3.5cm×12cmに切り出し、荷重無し、250g、500g、1000g、1500gのそれぞれの荷重におけるReをエリプソメーター(M150[商品名]、日本分光(株))で測定し、応力に対するRe変化の直線の傾きから算出することにより光弾性係数を測定する。
(含水率)
セルロースアシレートフィルムの含水率は一定温湿度における平衡含水率を測定することにより評価することができる。平衡含水率は前記温湿度に24時間放置した後に、平衡に達した試料の水分量をカールフィッシャー法で測定し、水分量(g)を試料質量(g)で除して算出したものである。
本発明のセルロースアシレートフィルムの25℃相対湿度80%における含水率は5質量%以下であることが好ましく、4質量%以下がさらに好ましく、3質量%未満がさらに好ましい。セルロースアシレートフィルムの含水率を小さくすることにより、セルロースアシレートフィルムを偏光板保護フィルムとして液晶表示装置に組み込んだ際に、高温高湿下における液晶表示装置の黒表示品質劣化の抑制に優れる。含水率の下限値は特に限定されないが、0.1質量%以上であることが実際的である。
(透湿度)
セルロースアシレートフィルムの透湿度は、JIS Z0208の透湿度試験(カップ法)に準じ、温度40℃、相対湿度90%RHの雰囲気中、試料を24時間に通過する水蒸気の質量を測定し、試料面積1mの値に換算することにより評価することができる。
本発明のセルロースアシレートフィルムの透湿度は、500〜2000g/m・dayが好ましく、900〜1300g/m・dayがより好ましく、1000〜1200g/m・dayが特に好ましい。
(ヘイズ)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、ヘイズが、1%以下が好ましく、0.7%以下がより好ましく、0.5%以下が特に好ましい。ヘイズを上記上限値以下にすることにより、フィルムの透明性がより高くなり、光学フィルムとしてより用いやすくなるという利点がある。ヘイズの下限値は特に限定されないが、0.001%以上が実際的である。 ヘイズは、セルロースアシレートフィルム40mm×80mmを、25℃、相対湿度60%の環境下で、ヘイズメーター(HGM−2DP、スガ試験機)を用いて、JIS K7136に従って測定する。
(膜厚)
本発明のセルロースアシレートフィルムの平均膜厚は、10〜100μmが好ましく、15〜80μmがより好ましく、20〜70μmがさらに好ましい。20μm以上にすることにより、ウェブ状のフィルムを作製する際のハンドリング性が向上し好ましい。また、70μm以下にすることにより、湿度変化に対応しやすく、光学特性を維持しやすい。
また、本発明のセルロースアシレートフィルムが3層以上の積層構造を有する場合、前記コア層の膜厚は3〜70μmが好ましく、5〜60μmがより好ましい。本発明のフィルムが3層以上の積層構造を有する場合、フィルム両面の表層(スキンA層およびスキンB層)の膜厚は、ともに0.5〜20μmがより好ましく、0.5〜10μmが特に好ましく、0.5〜3μmが最も好ましい。
(フィルム幅)
本発明のセルロースアシレートフィルムのフィルム幅は700〜3000mmが好ましく、1000〜2800mmがより好ましく、1300〜2500mmが特に好ましい。
<セルロースアシレートフィルムの製造方法>
本発明のセルロースアシレートフィルムの製造方法は、特に限定されるものではないが、溶融製膜法又は溶液製膜法により製造することが好ましい。溶液製膜法(ソルベントキャスト法)による製造がより好ましい。本発明のセルロースアシレートフィルムは、ソルベントキャスト法により製造されることが好ましい。ソルベントキャスト法を利用したセルロースアシレートフィルムの製造例については、米国特許第2,336,310号、同第2,367,603号、同第2,492,078号、同第2,492,977号、同第2,492,978号、同第2,607,704号、同第2,739,069号および同第2,739,070号の各明細書、英国特許第640731号および同第736892号の各明細書、並びに特公昭45−4554号、同49−5614号、特開昭60−176834号、同60−203430号および同62−115035号等の各公報を参考にすることができる。また、前記セルロースアシレートフィルムは、延伸処理を施されていてもよい。延伸処理の方法および条件については、例えば、特開昭62−115035号、特開平4−152125号、同4−284211号、同4−298310号、同11−48271号等の各公報を参考にすることができる。
(流延方法)
溶液の流延方法としては、調製されたドープを加圧ダイから金属支持体上に均一に押し出す方法、一旦金属支持体上に流延されたドープをブレードで膜厚を調節するドクターブレードによる方法、逆回転するロールで調節するリバースロールコーターによる方法等があるが、加圧ダイによる方法が好ましい。加圧ダイにはコートハンガータイプやTダイタイプ等があるが、いずれも好ましく用いることができる。またここで挙げた方法以外にも、従来知られているセルローストリアセテート溶液を流延製膜する種々の方法で実施することができ、用いる溶媒の沸点等の違いを考慮して各条件を設定することにより、それぞれの公報に記載の内容と同様の効果が得られる。
・共流延
本発明のセルロースアシレートフィルムの形成においては共流延法(重層同時流延)、逐次流延法、塗布法などの積層流延法を用いることが好ましく、共流延法を用いることが、安定製造および生産コスト低減の観点から特に好ましい。
共流延法により2層以上のセルロースアシレートフィルムを製造する場合には、先ず、各層用のセルロースアセテート溶液(ドープ)を調製する。続いて、各層用の流延用ドープを別のスリットなどから同時に押出す機能をもつ流延用ギーサからドープを押出して、流延用支持体(バンドまたはドラム)の上に、各層用ドープを同時に流延し、適当な時期に支持体から剥ぎ取って、乾燥しフィルムを成形する。図2に、共流延ギーサ3を用い、流延用支持体4の上に表層用ドープ1とコア層用ドープ2を3層同時に押出して流延する状態を断面図で示した。
・逐次流延法
逐次流延法では、流延用支持体の上に先ず第1層用の流延用ドープを流延用ギーサから押出して、流延し、乾燥あるいは乾燥することなく、その上に第2層用の流延用ドープを流延用ギーサから押出して流延する要領で、必要なら第3層以上まで逐次ドープを流延・積層して、適当な時期に支持体から剥ぎ取って、乾燥しフィルムを成形する。
・塗布法
塗布法は、一般的には、コア層のフィルムを溶液製膜法によりフィルムに成形し、表層に塗布する塗布液を調製し、適当な塗布機を用いて、片面ずつまたは両面同時にフィルムに塗布液を塗布・乾燥して積層構造のフィルムを成形する方法である。
セルロースアシレートフィルムを製造するのに使用される、エンドレスに走行する流延用支持体(金属支持体)としては、表面がクロムメッキによって鏡面仕上げされたドラムや表面研磨によって鏡面仕上げされたステンレスベルト(バンドといってもよい)が用いられる。使用される加圧ダイは、金属支持体の上方に1基または2基以上設置してもよい。2基以上設置する場合には、流延するドープ量をそれぞれのダイに振り分けてもよい。複数の精密定量ギアポンプからそれぞれの割合でダイにドープを送液してもよい。流延に用いられるドープ(樹脂溶液)の温度は−10〜55℃が好ましく、より好ましくは25〜50℃である。その場合、工程の全ての溶液温度が同一でもよく、または工程の各所で異なっていてもよい。
また、前記金属支持体の材質については特に制限はないが、SUS製(例えば、SUS316)であることがより好ましい。
(剥離)
本発明のセルロースアシレートフィルムの製造では、前記ドープ膜を前記金属支持体から剥ぎ取る工程を含むことが好ましい。
(延伸処理)
本発明のセルロースアシレートフィルムの製造方法では、製膜された延伸する工程を含むことが好ましい。セルロースアシレートフィルムの延伸方向はフィルム搬送方向と搬送方向に直交する方向(幅方向)のいずれでもよいが、フィルム搬送方向に直交する方向(幅方向)であることが、後に続く該フィルムを用いた偏光板加工プロセスの観点から好ましい。
幅方向に延伸する方法は、例えば、特開昭62−115035号、特開平4−152125号、同4−284211号、同4−298310号、同11−48271号などの各公報に記載されている。長手方向の延伸の場合、例えば、フィルムの搬送ローラーの速度を調節して、フィルムの剥ぎ取り速度よりもフィルムの巻き取り速度の方を速くするとフィルムは延伸される。幅方向の延伸の場合、フィルムの巾をテンターで保持しながら搬送して、テンターの巾を徐々に広げることによってもフィルムを延伸できる。フィルムの乾燥後に、延伸機を用いて延伸すること(好ましくはロング延伸機を用いる一軸延伸)もできる。
本発明のセルロースアシレートフィルムを偏光子の保護膜として使用する場合には、偏光板を斜めから見たときの光漏れを抑制するため、偏光子の透過軸と本発明の樹脂フィルムの面内の遅相軸を平行に配置する必要がある。連続的に製造されるロールフィルム状の偏光子の透過軸は、一般的に、ロールフィルムの幅方向に平行であるので、前記ロールフィルム状の偏光子とロールフィルム状のセルロースアシレートフィルムからなる保護膜を連続的に貼り合せるためには、ロールフィルム状の保護膜の面内遅相軸は、フィルムの幅方向に平行であることが必要となる。従って幅方向により多く延伸することが好ましい。また延伸処理は、製膜工程の途中で行ってもよいし、製膜して巻き取った原反を延伸処理してもよい。
幅方向の延伸は5〜100%の延伸が好ましく、より好ましくは5〜80%、特に好ましくは5〜40%延伸を行う。なお、未延伸とは延伸が0%であることを意味する。延伸処理は製膜工程の途中で行ってもよいし、製膜して巻き取った原反を延伸処理してもよい。前者の場合には残留溶剤量を含んだ状態で延伸を行ってもよく、残留溶剤量=(残存揮発分質量/加熱処理後フィルム質量)×100%が0.05〜50%で好ましく延伸することができる。残留溶剤量が0.05〜5%の状態で5〜80%延伸を行うことが特に好ましい。
(乾燥)
本発明のセルロースアシレートフィルムの製造方法では、セルロースアシレートフィルムを乾燥する工程と、乾燥後の本発明の樹脂フィルムをガラス転移温度(Tg)−10℃以上の温度で延伸する工程とを含むことが、レターデーション発現性の観点から好ましい。
本発明のセルロースアシレートフィルムの製造に係わる、金属支持体上におけるドープの乾燥は、一般的には、金属支持体(ドラムまたはベルト)の表面側、つまり金属支持体上にあるウェブの表面から熱風を当てる方法、ドラムまたはベルトの裏面から熱風を当てる方法、温度コントロールした液体をベルトやドラムのドープ流延面の反対側である裏面から接触させて、伝熱によりドラムまたはベルトを加熱し表面温度をコントロールする裏面液体伝熱方法などがあるが、裏面液体伝熱方式が好ましい。流延される前の金属支持体の表面温度は、ドープに用いられている溶媒の沸点以下であれば何度でもよい。乾燥を促進し、かつ、金属支持体上での流動性を失わせるためには、使用される溶媒の内の最も沸点の低い溶媒の沸点より1〜10℃低い温度に設定することが好ましい。なお流延ドープを冷却して乾燥することなく剥ぎ取る場合はこの限りではない。
フィルム厚さの調整は、所望の厚さになるように、ドープ中に含まれる固形分濃度、ダイの口金のスリット間隙、ダイからの押し出し圧力、金属支持体速度等を調節すればよい。
以上のようにして得られた、セルロースアシレートフィルムの長さは、1ロール当たり100〜10000mで巻き取るのが好ましく、より好ましくは500〜7000mであり、さらに好ましくは1000〜6000mである。巻き取る際、少なくとも片端にナーリングを付与するのが好ましく、ナーリングの幅は3mm〜50mmが好ましく、より好ましくは5mm〜30mm、高さは0.5〜500μmが好ましく、より好ましくは1〜200μmである。これは片押しであっても両押しであってもよい。
大画面用液晶表示装置用の光学補償フィルムとして用いる場合は、例えば、フィルム幅を1470mm以上として成形するのが好ましい。また、本発明の偏光板保護フィルムには、液晶表示装置にそのまま組み込むことが可能な大きさに切断されたフィルム片の態様のフィルムのみならず、連続生産により、長尺状に作製され、ロール状に巻き上げられた態様のフィルムも含まれる。後者の態様の偏光板保護フィルムは、その状態で保管・搬送等され、実際に液晶表示装置に組み込む際や偏光子等と貼り合わされる際に、所望の大きさに切断されて用いられる。また、同様に長尺状に作製されたポリビニルアルコールフィルム等からなる偏光子等と、長尺状のまま貼り合わされた後に、実際に液晶表示装置に組み込む際に、所望の大きさに切断されて用いられる。ロール状に巻き上げられた光学補償フィルムの一態様としては、ロール長が2500m以上のロール状に巻き上げられた態様が挙げられる。
<<偏光板>>
本発明の偏光板は、偏光子と、本発明のセルロースアシレートフィルムとを少なくとも有する。
本発明の偏光板は、偏光子と、該偏光子の片面または両面に本発明のフィルムを有することが好ましい。偏光子には、ヨウ素系偏光子、二色性染料を用いる染料系偏光子やポリエン系偏光子がある。ヨウ素系偏光子および染料系偏光子は、一般にポリビニルアルコール系フィルムを用いて製造する。本発明のセルロースアシレートフィルムを偏光板保護膜として用いる場合、偏光板の作製方法は特に限定されず、一般的な方法で作製することができる。得られたセルロースアシレートフィルムをアルカリ処理し、ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の両面に完全ケン化ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせる方法がある。アルカリ処理の代わりに特開平6−94915号公報、特開平6−118232号公報に記載されているような易接着加工を施してもよい。保護膜処理面と偏光子を貼り合わせるのに使用される接着剤は、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルコール系接着剤や、ブチルアクリレート等のビニル系ラテックス等が挙げられる。
本発明のセルロースアシレートフィルムの偏光子への貼り合せ方は、偏光子の透過軸と本発明のセルロースアシレートフィルムの遅相軸が実質的に直交となるように貼り合せることが好ましい。本発明の液晶表示装置において、偏光板の透過軸と本発明のセルロースアシレートフィルムの遅相軸が、実質的に直交であることが好ましい。ここで、実質的に直交であるとは、本発明のセルロースアシレートフィルムの主屈折率nxの方向と偏光板の透過軸の方向とが90°±10°の角度で交わっていることを意味し、90°±5°の角度で交わっていることが好ましく、90°±1°の角度で交わっていることがより好ましい。貼り合せに際してこのように角度調整することで、偏光板クロスニコル下での光抜けをより低減することができる。遅相軸の測定は、公知の種々の方法で測定することができ、例えば、複屈折計(KOBRA DH、王子計測機器(株)製)を用いて行うことができる。
本発明の偏光板は、液晶表示装置にそのまま組み込むことが可能な大きさに切断されたフィルム片の態様の偏光板のみならず、連続生産により、長尺状に作製され、ロール状に巻き上げられた態様(例えば、ロール長2500m以上や3900m以上の態様)の偏光板も含まれる。大画面液晶表示装置用とするためには、偏光板の幅は1470mm以上とすることが好ましい。本発明の偏光板の具体的な構成については、特に制限はなく公知の構成を採用できるが、例えば、特開2008−262161号公報の図6に記載の構成を採用することができる。
<<液晶表示装置>>
本発明の液晶表示装置は、液晶セルと、本発明の偏光板とを有する。
本発明の液晶表示装置は液晶セルと該液晶セルの両側に配置された一対の偏光板を有する液晶表示装置であって、前記偏光板の少なくとも一方が本発明の偏光板であるIPS、OCBまたはVAモードの液晶表示装置であることが好ましい。典型的な液晶表示装置の内部構成を図1に示した。本発明の液晶表示装置の具体的な構成としては特に制限はなく公知の構成を採用できる。また、特開2008−262161号公報の図2に記載の構成も好ましく採用することができる。
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、これにより本発明が限定して解釈されるものではない。
〔一般式(I)で表される化合物の合成〕
本発明の一般式(I)で表される化合物を以下のようにして合成した。
代表的な化合物の合成例を以下に示す。
合成例1
以下の反応スキームで例示化合物(A−1)を合成した。
Figure 2014210905
1)中間体N−ベンジル−N’−フェニル尿素の合成
温度計、還流冷却管および攪拌機を付した5Lのガラス製フラスコにベンジルアミン 321gとアセトニトリル 2Lを仕込み、水浴で冷却して攪拌しながらイソシアン酸フェニル 358gを反応液の内温が40℃以下になる速度で滴下した。そのまま2時間攪拌した後に、水 2Lを加えて吸引ろ過して析出した結晶をろ取し、水 1Lで3回洗浄した。得られた結晶を80℃で減圧乾燥して中間体N−ベンジル−N’−フェニル尿素 610gを得た。
得られた化合物の構造は、H−NMRスペクトルで確認した。
H−NMR(300MHz、DMSO−d6)、δ:8.52(s,1H)、7.45−7.18(m,9H)、6.89(t,1H)、6.59(s,1H)、4.30(d,2H)
2)例示化合物(A−1)の合成
温度計、還流冷却管および撹拌機を付した300mlのガラス製フラスコにN−ベンジル−N’−フェニル尿素 5.0g、フェニルマロン酸 8.16g、酢酸 10mLおよび無水酢酸15mLを仕込み、攪拌しながら内温が60℃になるように加熱し、そのまま60℃で1.5時間攪拌を続けた。その後室温まで冷却し、ジイソプロピルエーテル100mLを加えた。氷水浴にて冷却して1時間攪拌した後に吸引ろ過して析出した結晶をろ取し、冷却したジイソプロピルエーテルで洗浄した後で乾燥し、例示化合物(A−1) 4.2gを得た。
得られた化合物の構造は、H−NMRスペクトルで確認した。
H−NMR(300MHz、CDCl)、δ:7.50−7.10(m,15H)、5.13(dd,2H)、4.80(s,1H)
例示化合物(A−3)は、例えば、以下の反応スキームで合成できる。
Figure 2014210905
合成例2
(A)ルート1での例示化合物(A−3)の合成
温度計、還流冷却管および撹拌機を付した300mlのガラス製フラスコに、合成例1で合成した中間体N−ベンジル−N’−フェニル尿素 5.0g、ベンジルマロン酸 6.4g、トルエン10mLおよび無水酢酸15mLを仕込み、攪拌しながら内温が75℃になるように加熱し、そのまま75℃で2時間攪拌を続けた。その後50℃まで冷却し、1mol/dmの水酸化ナトリウム水溶液50mLを加えた。有機相を廃棄し水相を氷水浴にて冷却、攪拌しながら6M塩酸10mLを滴下した。さらに0℃で1時間攪拌した後に吸引ろ過して析出した結晶をろ取し、水で洗浄後、乾燥し、例示化合物(A−3) 7.5gを得た。
得られた化合物の構造は、H−NMRスペクトルで確認した。
H−NMR(300MHz、CDCl)、δ:7.55−7.20(m,9H)、7.13(t,2H)、6.96(d,2H)、6.84(br,2H)、4.96(s,2H)、3.94(t,1H)、3.55(m,2H)
合成例3
(B)ルート2での例示化合物(A−3)の合成
以下のようにして例示化合物(A−3)を合成した。
1)中間体1−ベンジル−3−フェニルバルビツール酸の合成
温度計、還流冷却管および撹拌機を付した300mlのガラス製フラスコに合成例1−1で合成したN−ベンジル−N’−フェニル尿素 5.0g、マロン酸 2.5g、トルエン20mL、および無水酢酸5.6gを仕込み、攪拌しながら内温が80℃になるように加熱し、そのまま80℃で3時間攪拌を続けた。その後50℃まで冷却し、水15mLを加えて分液し、水相を廃棄した。有機層を室温で攪拌しながらイソプロパノール5mLを滴下した。さらに10℃以下で0.5時間攪拌した後に吸引ろ過して析出した結晶をろ取し、冷却したイソプロパノールで洗浄後、乾燥し、中間体1−ベンジル−3−フェニルバルビツール酸 4.6gを得た。
得られた化合物の構造は、H−NMRスペクトルで確認した。
H−NMR(300MHz、CDCl)、δ:7.52−7.16(m,10H)、5.10(s,2H)、3.86(s,2H)
2)中間体1−ベンジル−5−ベンジリデン−3−フェニルバルビツール酸の合成
温度計、還流冷却管および撹拌機を付した300mlのガラス製フラスコに1−ベンジル−3−フェニルバルビツール酸4.0g、ベンズアルデヒド1.6g、酢酸40mLを仕込み、硫酸1滴を加えて攪拌しながら内温が100℃になるように加熱し、そのまま100℃で3時間攪拌を続けた。その後50℃まで冷却し、イソプロパノール39mLと水17mLの混合溶液を加えて10℃以下で1時間攪拌した後に吸引ろ過して析出した結晶をろ取し、メタノールで洗浄後、中間体1−ベンジル−5−ベンジリデン−3−フェニルバルビツール酸 3.9gを得た。
得られた化合物の構造は、H−NMRスペクトルで確認した。
H−NMR(300MHz、CDCl)、δ:8.70(s,1H)、8.10(d,2H)、7.58−7.20(m,15H)、5.20(s,2H)
3)例示化合物(A−3)の合成
50mlのオートクレーブに1−ベンジル−5−ベンジリデン−3−フェニルバルビツール酸 3.5g、メタノール8mLを仕込み、Pd−C(10%)0.1gを加えて攪拌しながら、Hを充填し内温が50℃になるように加熱し、そのまま50℃で3時間攪拌を続けた。その後Pd−Cを濾別し、5℃まで冷却し、さらに水4mLを加えて5℃で1時間攪拌した後に吸引ろ過して析出した結晶をろ取し、メタノール/水=1/1の混合溶媒で洗浄後、乾燥し、例示化合物(A−3) 3.0gを得た。
得られた化合物の構造は、H−NMRスペクトル、IRスペクトルおよびマススペクトルで確認した。
なお、得られた化合物の構造は、H−NMRスペクトルで、合成例2で得られたものと一致することを確認した。
実施例で用いた上記以外の化合物は、上記と類似の方法または前述の文献に記載の方法もしくはこれに準じた方法により合成した。
ここで、例示化合物(A−2)は、融点139℃、例示化合物(A−4)は融点88℃、例示化合物(A−5)は融点113℃であった。
実施例1
以下のようにして、セルロースアシレートフィルムを作製し、耐光性として、光によるフィルム着色を評価した。
(セルロースアシレートの調製)
総アセチル置換度(B)2.87のセルロースアシレートを調製した。これは、触媒として硫酸(セルロース100質量部に対し7.8質量部)を添加し、アシル置換基の原料となるカルボン酸を添加し40℃でアシル化反応を行った。またアシル化後に40℃で熟成を行った。さらにこのセルロースアシレートの低分子量成分をアセトンで洗浄し除去した。
(表層用ドープの調製)
・セルロースアシレート溶液の調製
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、セルロースアシレート溶液を調製した。
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セルロースアシレート溶液の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
総アセチル置換度(B)2.87、重合度370のセルロースアセテート
100.0質量部
第一工業化学社製モノペット(登録商標)SB(可塑剤)
9.0質量部
イーストマン・ケミカル社製SAIB−100(可塑剤) 3.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 353.9質量部
メタノール(第2溶媒) 89.6質量部
n−ブタノール(第3溶媒) 4.5質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
なお、第一工業化学社製モノペット(登録商標)SBはショ糖の安息酸エステルであり、イーストマン・ケミカル社製SAIB−100はショ糖の酢酸およびイソ酪酸エステルである。
・マット剤溶液の調製
下記の組成物を分散機に投入し、攪拌して各成分を溶解し、マット剤溶液を調製した。
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マット剤溶液の組成
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平均粒子サイズ20nmのシリカ粒子(AEROSIL R972、
日本アエロジル(株)製) 2.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 69.3質量部
メタノール(第2溶媒) 17.5質量部
n−ブタノール(第3溶媒) 0.9質量部
前記セルロースアシレート溶液 0.9質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
・紫外線吸収剤溶液の調製
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、紫外線吸収剤溶液を調製した。
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紫外線吸収剤溶液の組成
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下記紫外線吸収剤(UV−1) 20.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 61.0質量部
メタノール(第2溶媒) 15.4質量部
n−ブタノール(第3溶媒) 0.8質量部
前記セルロースアシレート溶液 12.8質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
Figure 2014210905
上記マット剤溶液の1.3質量部と、紫外線吸収剤溶液の3.4質量部をそれぞれ濾過後にインラインミキサーを用いて混合し、さらにセルロースアシレート溶液を95.3質量部加えて、インラインミキサーを用いて混合し、表層用溶液を調製した。
(基層用ドープの調製)
・セルロースアシレート溶液の調製
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、基層用ドープを調製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースアシレート溶液の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
総アセチル置換度(B)2.87、重合度370のセルロースアセテート
100.0質量部
第一工業化学社製モノペット(登録商標)SB(可塑剤)
9.0質量部
イーストマン・ケミカル社製SAIB−100(可塑剤) 3.0質量部
例示化合物(A−1) 4.0質量部
前記紫外線吸収剤(UV−1) 2.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 297.7質量部
メタノール(第2溶媒) 75.4質量部
n−ブタノール(第3溶媒) 3.8質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
(流延)
ドラム流延装置を用い、上記のように調製した基層用ドープと、その両側に表層用ドープとを3層同時にステンレス製の流延支持体(支持体温度−9℃)に流延口から均一に流延した。各層のドープ中の残留溶媒量が略70質量%の状態で剥ぎ取り、フィルムの幅方向の両端をピンテンターで固定し、残留溶媒量が3〜5質量%の状態で、幅方向に1.28倍(28%)延伸しつつ乾燥した。その後、熱処理装置のロール間を搬送することにより、さらに乾燥し、本発明のセルロースアシレートフィルム101を得た。得られたセルロースアシレートフィルム101の厚みは60μm、幅は1480mmであった。
上記セルロースアシレートフィルム101において、例示化合物A−1の代わりに、化合物の種類および添加量を後述の表6に記載のように変更した以外はセルロースアシレートフィルム101と同様にして、本発明のセルロースアシレートフィルム102〜118および比較のセルロースアシレートフィルムc10〜c13をそれぞれ製造した。
また、上記セルロースアシレートフィルム101において、得られるセルロースアシレートフィルムの膜厚が40μm、幅は1480mmになるように流延、乾燥し、本発明のセルロースアシレートフィルム131を得た。このセルロースアシレートフィルム131において例示化合物A−1の代わりに、化合物の種類を後述の表6に記載のように変更した以外はセルロースアシレートフィルム131と同様にして、本発明のセルロースアシレートフィルム132〜135および比較のセルロースアシレートフィルムc21をそれぞれ製造した。
同様に上記セルロースアシレートフィルム101において、得られるセルロースアシレートフィルムの膜厚が25μm、幅は1480mmになるように流延、乾燥し、本発明のセルロースアシレートフィルム141を得た。このセルロースアシレートフィルム141において例示化合物A−1の代わりに、化合物の種類を後述の表6に記載のように変更した以外はセルロースアシレートフィルム141と同様にして、本発明のセルロースアシレートフィルム142〜145、および比較のセルロースアシレートフィルムc22をそれぞれ製造した。
さらに、上記セルロースアシレートフィルム101において、モノペット(登録商標)SBおよびSAIB−100の代わりに、重縮合エステル系可塑剤である下記重縮合ポリマー(A)を12質量部添加した以外はセルロースアシレートフィルム101と同様にして、本発明のセルロースアシレートフィルム201を得た。このセルロースアシレートフィルム201において、例示化合物A−1の代わりに、化合物の種類を後述の表6に記載のように変更した以外はセルロースアシレートフィルム201と同様にして、本発明のセルロースアシレートフィルム202〜205および比較のセルロースアシレートフィルムc30〜c33をそれぞれ製造した。
重縮合ポリマー(A):アジピン酸とエタンジオールからなるポリエステル(末端はヒドロキシ基)(数平均分子量=1000)
各セルロースアシレートフィルムに対して、光によるフィルム着色の評価を行った。
得られた結果は、実施例2、3の結果とともに、まとめて後述の表6に示す。
なお、これらのセルロースアシレートフィルムは、以下において偏光板保護フィルムとも称す。
(光によるフィルム着色の評価)
上記のようにして作製した各セルロースアシレートフィルムに対して、スーパーキセノンウェザーメーター(スガ試験機(株)製SX75)を用い、放射照度150W/m、ブラックパネル温度63℃、相対湿度50%RHの条件で、120時間光照射を行った。その後、島津製作所の分光光度計UV3150を用いて色相bを測定した。色相bの値がマイナス側に大きくなると透過光は青味が増し、プラス側に大きくなると黄色味が増す。
また、上記光照射前後での各セルロースアシレートフィルムのbの変化をΔbとして光による着色の指標とした。
評価は下記基準で行った。
A :Δbが0.05以下
B :Δbが0.05を超えて0.10以下
C :Δbが0.10を超えて0.15以下
D :Δbが0.15を超える
得られた結果を、まとめて後述の表6に示す。
実施例2
実施例1で作製したセルロースアシレートフィルムを使用して、以下のようにして偏光板を作製して偏光板の耐久性を評価するとともに、ハードコート層付き光学フィルムを作製して耐光密着性を評価した。
(偏光板保護フィルムの鹸化処理)
実施例1で作製したセルロースアシレートフィルム101からなる偏光板保護フィルムを、2.3mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液に、55℃で3分間浸漬した。室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃で0.05mol/Lの硫酸を用いて中和した。再度、室温の水洗浴槽中で洗浄し、さらに100℃の温風で乾燥した。このようにして、各偏光板保護フィルムに対して表面の鹸化処理を行った。
(偏光板の作製)
延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて偏光子を作製した。
実施例1で製造し、上記の鹸化処理した偏光板保護フィルム101を、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光子の片側に貼り付けた。市販のセルローストリアセテートフィルム(フジタックTD80UF、富士フイルム(株)製)も同様の鹸化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、鹸化処理した偏光板保護フィルム101が貼り付けてある側とは反対側の偏光子の面に、鹸化処理済みの上記市販のセルローストリアセテートフィルムを貼り付けた。
この際、偏光子の透過軸と、実施例1で作製して鹸化処理済みの偏光板保護フィルムの遅相軸とが平行になるように配置した。また、偏光子の透過軸と鹸化処理済みの市販のセルローストリアセテートフィルムの遅相軸についても、直交するように配置した。
このようにして本発明の偏光板101を作製した。
偏光板保護フィルム102〜118、131〜135、141〜145、201〜205および比較の偏光板保護フィルムc10〜c13、c21、c22、およびc30〜c33についても、それぞれ上記と同様にして鹸化処理と偏光板の作製を行い、本発明の偏光板102〜118、131〜135、141〜145、201〜205、比較の偏光板c10〜c13、c21、c22、およびc30〜c33をそれぞれ作製した。
(偏光板耐久性の評価)
偏光板耐久性試験は偏光板をガラスに粘着剤を介して貼り付けた形態で次のように行った。
ガラスの上に本発明のセルロースアシレートフィルムが空気界面側になるように偏光板を貼り付けたサンプル(約5cm×5cm)を2つ作製する。単板直交透過率測定ではこのサンプルの本発明のセルロースアシレートフィルムの側を光源に向けてセットして測定する。2つのサンプルをそれぞれ測定し、その平均値を実施例における偏光板の直交透過率とした。偏光板の直交透過率は、日本分光(株)製、自動偏光フィルム測定装置VAP−7070を用いて380nm〜780nmの範囲で測定し、410nmにおける測定値を採用した。その後、フィルムの膜厚に応じた条件下で経時保存した後に同様の方法で直交透過率を測定した。経時前後の直交透過率の変化を求め、これを偏光板耐久性として下記基準で評価した。
なお、調湿なしの環境下での相対湿度は、0〜20%RHの範囲であった。
得られた結果を後述の表6に示した。
−経時条件−
サンプル101〜118、201〜205、c10〜c13、およびc30〜c33:
80℃、相対湿度90%RHの環境下で168時間および336時間
サンプル131〜135、およびc21:
80℃、相対湿度90%RHの環境下で120時間および240時間
サンプル141〜145、およびc22
60℃、相対湿度95%RHの環境下で500時間および1000時間
A:経時前後の直交透過率の変化が0.6%未満
B:経時前後の直交透過率の変化が0.6〜1.0%
C:経時前後の直交透過率の変化が1.0%を超える
得られた結果を、まとめて後述の表6に示す。
(ハードコート層付き光学フィルムの作製)
下記表に記載の各成分を混合した後、孔径30μmのポリプロピレン製フィルターでろ過してハードコート層用塗布液を調製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
ハードコート層溶液の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
モノマー ペンタエリスリトールトリアクリレート/
ペンタエリスリトールテトラアクリレート(混合質量比3/2)
53.5質量部
UV開始剤 IrgacureTM907
(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製) 1.5質量部
酢酸エチル 45質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
上記製造した各セルロースアシレートフィルムの空気側表面上に、前記ハードコート層用塗布液を、マイクログラビア塗工方式で、搬送速度30m/分の条件で塗布した。60℃で150秒乾燥の後、窒素パージ(酸素濃度0.5%以下)しながら、160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm2、照射量150mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、ハードコート層(厚み6μm)を形成した。
この様にして、各セルロースアシレートフィルムの空気側表面上に、ハードコート層を形成し、ハードコート層付きセルロースアシレートフィルムをそれぞれ作製した。
なお、下記表6では、単層の光学フィルムNo.と、これに対応するハードコート層付き光学フィルムNo.に共通のフィルムNo.を付けて表している。
(耐光密着性の評価)
まず、上記で作製した各実施例及び比較例のハードコート層付き偏光板保護フィルムに対して、(株)スガ試験機社製スーパーキセノンウェザーメーターSX75で、60℃、相対湿度50%の環境下に96時間光を照射した。
次にハードコート層付き偏光板保護フィルムのそれぞれを、温度25℃、相対湿度60%の条件で2時間調湿した。ハードコート層を有する側の表面に、ハードコート層付き偏光板保護フィルム1cm角に対してカッターナイフで碁盤目状に各々1mm間隔で、縦11本、横11本の切り込みを入れて、1mm角の正方形の升目を合計100個刻み、その面に日東電工(株)製のポリエステル粘着テープ(No.31B)を貼りつけた。30分経時したあとに、垂直方向にテープを素早く引き剥がし、剥がれた升目の数を数えて、下記4段階の基準で評価した。同じ密着評価を3回行って平均をとった。結果を下記表に示す。
A:100升において剥がれが10升以下であった。
B:100升において11〜20升の剥がれが認められた。
C:100升において21〜30升の剥がれが認められた。
D:100升において31升以上の剥がれが認められた。
これらの結果をまとめて表6に示す。
Figure 2014210905
ここで、表6中のH−A、H−1およびH−2は、以下の化合物である。
Figure 2014210905
上記表6の結果から、本発明の一般式(I)で表される化合物を含有する本発明のセルロースアシレートフィルムである偏光板保護フィルムは、いずれも経時での偏光板耐久性に優れ、偏光子の劣化を効果的に抑制しうるものであり、さらに、光による経時着色が少なかった。
これに対し、上記の比較化合物であるH−A、H−1またはH−2を含むセルロースアシレートフィルムである偏光板保護フィルムc10〜c12、およびc30〜c32は、いずれも本発明の偏光板保護フィルムと比較して、偏光板耐久性と光による経時着色抑制との両立ができなかった。またこれらの比較化合物を添加した偏光板保護フィルムにハードコート層を塗布したハードコート層付きセルロースアシレートフィルムc10〜c12、およびc30〜c32は、いずれも本発明の偏光板保護フィルムと比較してハードコート層との耐光密着性が劣っており、偏光板耐久性と耐光密着性との両立ができなかった。
本発明の一般式(I)で表される化合物も比較の化合物も含まない比較のセルロースアシレートフィルムである偏光板保護フィルムc13、c21、c22およびc33では、いずれも、本発明のセルロースアシレートフィルムである偏光板保護フィルムと比較して、偏光板耐久性において劣った。
この結果、本発明の偏光板を使用することで、以上に示したような優れた性能の液晶表示装置が作製できる。
実施例3
〔セルロースアシレートの総置換度(B)の変更〕
実施例1におけるセルロースアシレートフィルム101において、基層用ドープの溶液の調製でのセルロースアシレート溶液の組成で使用した総アセチル置換度(B)2.87のセルロースアセテートの代わりに総アセチル置換度(B)2.77のセルロースアセテートを100.0質量部添加した以外はセルロースアシレートフィルム101と同様にして、本発明のセルロースアシレートフィルム301を得た。このセルロースアシレートフィルム301に対して、総アセチル置換度(B)の異なるセルロースアセテート、添加する例示化合物の種類と可塑剤を後述の表7に記載のように変更した以外はセルロースアシレートフィルム301と同様にして、本発明のセルロースアシレートフィルム302〜304、および比較例のセルロースアシレートフィルムc40およびc41を製造した。
さらに、実施例1におけるセルロースアシレートフィルム202において、同じく、基層用ドープの溶液の調製でのセルロースアシレート溶液の組成で使用した総アセチル置換度(B)2.87のセルロースアセテートの代わりに総アセチル置換度(B)2.77のセルロースアセテートを100.0質量部添加した以外はセルロースアシレートフィルム202と同様にして、本発明のセルロースアシレートフィルム311を得た。このセルロースアシレートフィルム311に対して、総アセチル置換度(B)の異なるセルロースアセテート、添加する例示化合物の種類と可塑剤を後述の表7に記載のように変更した以外はセルロースアシレートフィルム311と同様にして、本発明のセルロースアシレートフィルム00312〜314、および比較例のセルロースアシレートフィルムc42およびc43を製造した。
また、実施例2と同様にして、偏光板およびハードコート層付き光学フィルムを作製した。偏光板耐久性の経時条件を下記のように行った以外は、実施例1、2と同様に評価した。
−経時条件−
サンプル301〜304、311〜314、c40〜c43:
80℃、相対湿度90%RHの環境下で168時間および336時間
得られた結果をまとめて下記表7に示す。
Figure 2014210905
上記表7の結果から、本発明の一般式(I)で表される化合物を含有する本発明のセルロースアシレートフィルムである偏光板保護フィルムを用いた偏光板は、総アセチル置換度(B)によらず、いずれも経時での偏光板耐久性に優れ、偏光子の劣化を効果的に抑制しうるものであった。
実施例4
〔化合物の金属腐食性の評価〕
以下のようにして、本発明の一般式(I)で表される化合物の金属腐食性に関する評価を行った。
(金属腐食性に関する評価)
耐圧容器中に、前記基層用ドープ作製に用いる混合溶剤に対して各化合物を1質量%の濃度で溶解させ溶液を20g秤量し、その中に幅2cm×長さ3cmに切り出した厚み0.5cmのSUS316の試験片を浸漬した。耐圧容器を密閉し、90℃で70時間経時させた後に耐圧容器の蓋をあけ、試験片の腐食およびこれに起因する有機酸溶液の変化を観察し、以下の基準により評価した。
A :試験片表面の平滑性に変化がなく、溶液は無色もしくは淡黄色で不溶分なし。
B :試験片表面の平滑性の変化は小さいが、溶液は黄色に着色。
C :試験片穂油綿がざらざらしており、溶液は茶褐色で濁りあり。
得られた結果を下記表8に示す。
Figure 2014210905
表8の結果より、本発明の化合物は金属腐食性が良好であるのに対し、比較の有機酸H−2は金属腐食性が十分でないため、製造設備の劣化、さらにはこの腐食に基づくフィルム中への不純物の混入が懸念される。
このように、表6〜8の結果から、本発明の化合物は、偏光板の耐久性改良効果と着色抑制に有効であると同時に、製造安定化や添加量の自由度に対して有利であることがわかる。
実施例5
以下のようにして、偏光板を作製し、偏光板耐久性を評価した。
(セルロースアシレート溶液5−1の調製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、セルロースアシレート溶液5−1を調製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースアシレート溶液5−1の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
・アセチル置換度2.87、重合度370のセルロースアセテート
100.0質量部
・疎水化剤1:フタル酸/エタンジオールの重縮合物
末端はアセチルエステル基で平均分子量は800
10.0質量部
・メチレンクロライド(第1溶媒) 389.8質量部
・メタノール(第2溶媒) 58.2質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
(マット剤溶液5−2の調製)
下記の組成物を分散機に投入し、攪拌して各成分を溶解し、マット剤溶液5−2を調製した。
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マット剤溶液5−2の組成
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平均粒子サイズ20nmのシリカ粒子(AEROSIL R972、
日本アエロジル(株)製) 2.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 75.5質量部
メタノール(第2溶媒) 11.3質量部
前記セルロースアシレート溶液501 0.9質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
(偏光子耐久性改良剤溶液5−3の調製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、偏光子耐久性改良剤溶液5−3を調製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
偏光子耐久性改良剤溶液5−3の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
例示化合物(A−3) 20.0質量部
レダクトン(L) 1.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 73.5質量部
メタノール(第2溶媒) 6.4質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
なお、上記のレダクトン(L)は、下記の構造で、東京化成(株)製の6−O−パルミトイル−L−アスコルビン酸である。
Figure 2014210905
(紫外線吸収剤溶液5−4の調製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、偏光子耐久性改良剤溶液5−4を調製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
紫外線吸収剤溶液5−4の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
下記紫外線吸収剤(UV−2) 10.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 78.3質量部
メタノール(第2溶媒) 11.7質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
Figure 2014210905
<流延>
上記マット剤溶液5−2を1.3質量部、偏光子耐久性改良剤溶液5−3を3.3質量部および紫外線吸収剤溶液5−4を4.0質量部、それぞれ濾過後にインラインミキサーを用いて混合し、さらにセルロースアシレート溶液5−1を91.4質量部加えて、インラインミキサーを用いて混合した。バンド流延装置を用い、前記調製したドープをステンレス製の流延支持体(支持体温度22℃)に流延した。ドープ中の残留溶媒量が略20質量%の状態で剥ぎ取り、フィルムの幅方向の両端をテンターで把持し、残留溶媒量が5〜10質量%の状態で、120℃の温度下で幅方向に1.10倍(10%)延伸しつつ乾燥した。その後、熱処理装置のロール間を搬送することにより、更に乾燥し、セルロースアシレートフィルム501を得た。得られたセルロースアシレートフィルムの厚みは23μm、幅は1480mmであった。
さらに、上記セルロースアシレートフィルム501において、添加する例示化合物の種類と添加量および可塑剤の種類と添加量を下記表9に記載のように変更した以外はセルロースアシレートフィルム501と同様にして、本発明のセルロースアシレートフィルム502〜521を製造した。
また、セルロースアシレートフィルム501において、偏光子耐久性改良剤溶液503を混合しなかったこと以外はセルロースアシレートフィルム501と同様にして、比較のセルロースアシレートフィルムc61を作製した。
Figure 2014210905
ここで、上記表9で、新たに使用した素材は、以下の通りである。
〔使用素材〕
レダクトンL:6−O−パルミトイル−L−アスコルビン酸(東京化成工業(株)製)
トリアジン化合物T:特開平8−333325号公報の段落番号0166に記載のF−10
ヒドロキシルアミン化合物H1:特開平8−62767号公報の段落番号0026に記載のA−50
Figure 2014210905
ヒドロキシルアミン化合物H2:ジベンジルヒドロキシルアミン(東京化成工業(株)製)
多価アミンA:N,N,N’,N”,N”−ペンタキス(2−ヒドロキシプロピル)ジエチレントリアミン(東京化成工業(株)製)
多価アミンB:テトラエチレンペンタミン(東京化成工業(株)製)
アミンC:トリ(n−オクチル)アミン(東京化成工業(株)製)
キレスト3PA:キレスト(株)社製
キレストPH−540:キレスト(株)社製
アデカスタブPEP−36:旭電化(株)製
IRGANOX1010:BASF社製
HP−136:BASF社製
IRGANOX MD 1024:BASF社製
TINUVIN123:BASF社製
TINUVIN770:BASF社製
アデカスタブLA−81:旭電化(株)製
テークランDO:ナガセケムテックス社製
ポエムK−37V:理研ビタミン(株)社製
スタホームDL:日油(株)社製
ナイミーンL−202:日油(株)社製
エポミンSP−006:(株)日本触媒社製
疎水化剤1:フタル酸/エタンジオールの重縮合物(末端はアセチルエステル基で平均分子量は800)
上記のようにして作製したセルロースアシレートフィルム501〜521、および比較のセルロースアシレートフィルムc61を使用し、実施例2と同様にして偏光板を作製した。
これらの偏光板において、実施例2と同様にして耐久性の評価を行ったところ、本発明のセルロースアシレートフィルム501〜521を使用した偏光板は、比較のセルロースアシレートフィルムc61を使用した偏光板に対して、経時前後の直交透過率の変化が低減され、偏光性能の劣化が抑えられていた。
この結果、本発明の偏光板を使用することで、以上に示したような優れた性能の液晶表示装置が作製できる。
1 表層用ドープ
2 コア層(基層)用ドープ
3 共流延ギーサ
4 流延用支持体
21A、21B 偏光板
22 カラーフィルタ基板
23 液晶層
24 アレイ基板
25 導光板
26 光源
31a、31b セルロースアシレートフィルム(偏光板保護フィルム)
32 偏光子

Claims (16)

  1. セルロースアシレートと、少なくとも1種の下記一般式(I)で表される化合物を含有するセルロースアシレートフィルム。
    Figure 2014210905
    [一般式(I)中、R、RおよびRは各々独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基または炭素数6〜20の芳香族基を表す。該アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基および芳香族基は置換基を有してもよい。ただし、R、RおよびRのいずれか1つがアラルキル基またはシクロアルキル基であり、かつR、RおよびRに存在する環構造の合計は3個以上である。]
  2. 前記一般式(I)において、Rが、アラルキル基またはシクロアルキル基である、請求項1に記載のセルロースアシレートフィルム。
  3. 前記一般式(I)において、R、RおよびRが、それぞれ1個以上の環構造を有する、請求項1または2に記載のセルロースアシレートフィルム。
  4. 前記一般式(I)において、R、RおよびRが、それぞれ1個以上の芳香環構造を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルム。
  5. 前記一般式(I)において、R、RおよびRが有する環構造の全てが芳香環構造である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルム。
  6. 前記セルロースアシレートの総アシル置換度(A)が下記式を満足する、請求項1〜5のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルム。
    1.5≦A≦3.0
  7. 前記セルロースアシレートのアシル基がアセチル基であり、総アセチル置換度(B)が下記式を満足する、請求項1〜6のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルム。
    2.0≦B≦3.0
  8. 前記総アセチル置換度(B)が、2.5以上2.97未満である、請求項7に記載のセルロースアシレートフィルム。
  9. 重縮合エステル化合物の少なくとも1種を含有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルム。
  10. 前記重縮合エステル化合物が、下記一般式(a)で表される少なくとも1種のジカルボン酸と、下記一般式(b)で表される少なくとも1種のジオールとを重縮合して得られる化合物である、請求項9に記載のセルロースアシレートフィルム。
    Figure 2014210905
    [一般式(a)中、Xは2価の炭素数2〜18の脂肪族基または2価の炭素数6〜18の芳香族基を表す。一般式(b)中、Zは2価の炭素数2〜8の脂肪族基を表す。]
  11. 前記重縮合エステル化合物の数平均分子量が、500〜2000である、請求項9または10に記載のセルロースアシレートフィルム。
  12. 前記重縮合エステル化合物の末端が封止されている、請求項9〜11のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルム。
  13. 単糖、または2〜10個の単糖単位からなる炭水化物化合物の少なくとも1種を含有する、請求項1〜12のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルム。
  14. 前記炭水化物化合物が、置換基としてアルキル基、アリール基またはアシル基を有する、請求項13に記載のセルロースアシレートフィルム。
  15. 請求項1〜14のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルムと偏光子とを少なくとも有する偏光板。
  16. 請求項15に記載の偏光板と液晶セルを少なくとも有する液晶表示装置。
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