以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。また、本明細書中においては、個別方位を[]、集合方位を<>、個別面を()、集合面を{}でそれぞれ示す。また、負の指数については、結晶学上、”−”(バー)を数字の上に付けることになっているが、本明細書中では、数字の前に負の符号を付けている。
(1)本実施の形態に係る炭化珪素基板10の製造方法は以下の工程を有している。第1の主面1aと、第1の主面1aと反対側の第2の主面1bとを有する炭化珪素単結晶基板1が準備される。第1の主面1aが化学機械研磨される。第1の主面1aが硫酸を含む酸で洗浄される。硫酸を含む酸で洗浄する工程の後、第1の主面1aがアンモニアを含むアルカリで洗浄される。第1の主面1aがアンモニアを含むアルカリで洗浄することにより、第1の主面1aに残存していた硫黄が効果的に除去される。そのため、第1の主面1a上に形成されるエピタキシャル層2の表面2aの面粗さが低減される。
(2)本実施の形態に係る炭化珪素基板10の製造方法において好ましくは、アンモニアを含むアルカリで洗浄する工程の後、第1の主面1aに炭化珪素エピタキシャル層2が形成される。これにより、第1の主面上に形成された炭化珪素エピタキシャル層2の表面2aの面粗さが低減される。
(3)本実施の形態に係る炭化珪素基板10の製造方法において好ましくは、アンモニアを含むアルカリは、アニモニア水溶液と、過酸化水素水と、超純水とを含む液からなる。これにより、第1の主面1aに残存する硫黄をより効果的に除去することができる。
(4)本実施の形態に係る炭化珪素基板10の製造方法において好ましくは、超純水の体積はアニモニア水溶液の体積の2倍以上10倍以下である。超純水の濃度がアンモニア水溶液の2倍以上であれば、アンモニア水溶液を大量に使用しすぎることなく硫黄を効率的に除去することができる。超純水の濃度がアンモニア水溶液の10倍以下であれば、硫黄を効果的に除去できる程度のアンモニア水溶液の濃度を保つことができる。
(5)本実施の形態に係る炭化珪素基板10の製造方法において好ましくは、硫酸を含む酸は、硫酸と、過酸化水素水と、超純水とを含む液からなる。これにより、第1の主面1aにおける重金属不純物および有機物を効果的に除去することができる。
(6)本実施の形態に係る炭化珪素基板10の製造方法において好ましくは、硫酸の体積は過酸化水素水の体積の2倍以上10倍以下である。硫酸の体積が過酸化水素水の体積の2倍以上であれば、重金属不純物および有機物を除去するための酸化力が得られる。硫酸の体積が過酸化水素水の体積の10倍以下であれば、第1の主面1aに硫黄が過剰に残存することを抑制することができる。
(7)本実施の形態に係る炭化珪素基板10の製造方法において好ましくは、アンモニアを含むアルカリで洗浄する工程の後における第1の主面1aの組成における硫黄の割合は、0.5at%未満である。これにより、硫黄の濃度が少ない炭化珪素基板10を得ることができる。
(8)本実施の形態に係る炭化珪素基板10の製造方法において好ましくは、アンモニアを含むアルカリで洗浄する工程の後における第1の主面1aに存在する金属不純物としてのアルミニウム、鉄、ニッケル、クロム、亜鉛および銅の各々の濃度はいずれも1×1011atoms/cm2以下である。これにより、金属不純物の少ない炭化珪素基板10を得ることができる。
次に、本発明の一実施の形態に係る炭化珪素基板の構成についてより詳細に説明する。
図1を参照して、本実施の形態における炭化珪素基板10は、たとえばポリタイプ4Hの六方晶炭化珪素単結晶からなり、第1の主面1aと、第1の主面と反対側の第2の主面1bとを有している。好ましくは、第1の主面1aおよび第2の主面1bの少なくとも一方の主面(たとえば第1の主面1a)における、金属不純物としてのアルミニウム原子、鉄原子、ニッケル原子、クロム原子、亜鉛原子および銅原子の各々の濃度は、いずれも1×1011atoms/cm2以下である。
好ましくは、第1の主面1aおよび第2の主面1bの少なくとも一方の主面(たとえば第1の主面1a)の組成における硫黄原子の割合は、0.5at%未満である。第1の主面1aおよび第2の主面1bの少なくとも一方の主面(たとえば第1の主面1a)における、算術平均粗さ(Ra)は、たとえば0.1nmである。炭化珪素基板10の第1の主面1aは、たとえば{000−1}面であってもよいし、{0−33−8}面であってもよい。第1の主面1aは、{000−1}面から8°以下程度オフした面であってもよい。図2を参照して、炭化珪素基板10は、単結晶炭化珪素からなる炭化珪素単結晶基板1上に炭化珪素からなるエピタキシャル層2が形成された基板であってもよい。
次に、本発明の一実施の形態に係る炭化珪素基板の製造方法について、図3および図4を参照して説明する。
まず、たとえばグラファイトからなる坩堝内に、単結晶炭化珪素からなる種結晶と、炭化珪素からなる原料粉末とが配置される。次に、原料粉末を加熱することにより炭化珪素を昇華させ、単結晶炭化珪素を種結晶上に再結晶させる。このとき、たとえば窒素などが導入されつつ再結晶が進行する。種結晶上に所望の大きさの結晶が成長した時点で加熱を停止し、坩堝内から単結晶炭化珪素の結晶が取り出される。単結晶炭化珪素が円柱状の形状を有するインゴットに加工される。当該インゴットをスライスすることにより、炭化珪素単結晶基板1が切り出される。炭化珪素単結晶基板1は、たとえばポリタイプ4Hの六方晶炭化珪素単結晶からなり、第1の主面1aと、第1の主面と反対側の第2の主面1bとを有している。
次に、研削工程(S10:図3)が実施される。研削工程では、炭化珪素単結晶基板1の主面1aに対して研削加工が実施されることにより、切断面(すなわち第1の主面1a)の粗さが低減される。研削加工ではツールにダイヤモンド砥石を用い、炭化珪素単結晶基板1の第1の主面1aと砥石を対向して回転させ、一定速度で切り込むことにより、炭化珪素単結晶基板1の第1の主面1aの表面層が除去される。これにより、炭化珪素単結晶基板1の第1の主面1aの凹凸を除去して第1の主面1aを平坦化し、炭化珪素単結晶基板1の厚みを調整することができる。炭化珪素単結晶基板1の第2の主面1bに対しても同様の研削工程が実施されてもよい。
次に、MP(Mechanical Polishing)工程(S20:図3)が実施される。MP加工では、ダイヤモンド等の砥粒を含む溶液を用いて、炭化珪素単結晶基板1の第1の主面1aを定盤に対向させながら炭化珪素単結晶基板1に荷重をかけることによって第1の主面1aが研磨される。ダイヤモンド等の砥粒の粒径を調整することにより、所望の表面粗さを得ることができる。定盤は、鉄、銅、スズ、スズ合金などの金属定盤や、金属と樹脂の複合定盤、あるいは研磨布を用いることができる。硬い金属定盤を用いることで、レートを向上させることができる。軟らかい定盤を用いることで、表面粗さを低減することができる。炭化珪素単結晶基板1の第2の主面1bに対しても同様のMP工程が実施されてもよい。
次に、化学機械研磨(Chemical Mechanical Polishing)工程(S30:図3)が実施される。CMPの砥粒は表面粗さや加工変質層を低減させるために炭化珪素よりも柔らかい材料であることが必要である。CMPの砥粒として、たとえばコロイダルシリカ、フュームドシリカが用いられる。CMPの溶液は、ケミカル作用を増加させるためにpH4以下またはpH9.5以上であること好ましく、pH2以下、pH10.5以上であることがより好ましい。CMP液のpHの制御は、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸などの無機酸、ギ酸、酢酸、シュウ酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸、フタル酸、フマル酸などの有機酸、KOH、NaOH、NH4OHなどの無機アルカリ、コリン、アミン、TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)などの有機アルカリ、およびそれらの塩を添加することで制御できる。
次に、洗浄工程(S40:図3)が実施される。洗浄工程では、たとえば以下の工程により、炭化珪素基板10の第1の主面1aが洗浄される。まず、アルカリ洗浄工程(S41:図4)が実施される。アルカリ洗浄工程では、たとえばTMAHおよび界面活性剤を用いて、CMP工程において炭化珪素基板10の第1の主面1aに付着したコロイダルシリカなどの研磨剤が除去される。次に、超純水洗浄工程(S42:図4)により、炭化珪素基板10の第1の主面1aが超純水により洗浄され、炭化珪素単結晶基板1の第1の主面1aに残存していたTMAHなどが除去される。
次に、第1の洗浄液で洗浄する工程(S43:図4)が実施される。具体的には、硫酸を含む酸としての第1の洗浄液を用いて炭化珪素単結晶基板1の第1の主面1aが洗浄される。第1の洗浄液は、たとえば硫酸と、過酸化水素水と、超純水とを含む液からなる硫酸過酸化水素水である。言い換えれば、第1の洗浄液は、硫酸と、過酸化水素水と、超純水とが混合された溶液である。硫酸としては、たとえば質量百分率濃度が98%の濃硫酸を使用することができる。過酸化水素水としては、たとえば質量百分率濃度が30%の過酸化水素水を用いることができる。超純水としては、たとえば、電気抵抗率が15MΩ・cm以上であり、有機物量(TOC:Total Organic Carbon)が30ppb未満であり、かつ残存シリカが10ppb未満である水を使用することができる。
第1の洗浄液が含む、硫酸と、過酸化水素水と、超純水との体積比率は、たとえば10(硫酸):1(過酸化水素水):1(超純水)である。当該体積比率は、10(硫酸):1(過酸化水素水):1(超純水)から2(硫酸):1(過酸化水素水):1(超純水)であることが好ましい。言い換えれば、硫酸の体積は過酸化水素水の体積の2倍以上10倍以下である。また硫酸の体積は、超純水の体積の2倍以上10倍以下である。次に、超純水洗浄工程(S44:図4)により、炭化珪素単結晶基板1の第1の主面1aが超純水により洗浄され、炭化珪素単結晶基板1の第1の主面1aに残存していた硫酸過酸化水素水が除去される。
次に、第2の洗浄液で洗浄する工程(S45:図4)が実施される。具体的には、アンモニアを含むアルカリとしての第2の洗浄液を用いて炭化珪素単結晶基板1の第1の主面1aが洗浄される。第2の洗浄液は、たとえばアンモニア水溶液と、過酸化水素水と、超純水とを含む液からなるアンモニア過酸化水素水である。言い換えれば、第2の洗浄液は、アンモニア水溶液と、過酸化水素水と、超純水とが混合された溶液である。アンモニア水溶液としては、たとえば質量百分率濃度が28%のアンモニア水溶液を使用することができる。過酸化水素水としては、たとえば質量百分率濃度が30%の過酸化水素水を用いることができる。超純水としては、たとえば、電気抵抗率が15MΩ・cm以上であり、有機物量(TOC:Total Organic Carbon)が30ppb未満であり、かつ残存シリカが10ppb未満である水を使用することができる。
第2の洗浄液が含む、アンモニア水溶液と、過酸化水素水と、超純水との体積比率は、たとえば1(アンモニア水溶液):1(過酸化水素水):5(超純水)である。当該体積比率は、1(アンモニア水溶液):1(過酸化水素水):10(超純水)から1(アンモニア水溶液):1(過酸化水素水):2(超純水)であることが好ましい。言い換えれば、超純水の体積はアニモニア水溶液の体積の2倍以上10倍以下である。また超純水の体積は、過酸化水素水の体積の2倍以上10倍以下である。次に、超純水洗浄工程(S46:図4)により、炭化珪素基板10の第1の主面1aが超純水により洗浄され、炭化珪素単結晶基板1の第1の主面1aに残存していたアニモニア過酸化水素水が除去される。
好ましくは、第2の洗浄液(アンモニアを含むアルカリ)で炭化珪素単結晶基板1の第1の主面1aを洗浄した後における炭化珪素基板10の第1の主面1aの硫黄の濃度は、0.5at%未満である。第1の主面1aの硫黄の濃度は、たとえばESCA(Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)により測定可能である。なおESCAが測定できる下限値(測定精度)はたとえば0.5at%程度である。また好ましくは、第2の洗浄液(アンモニアを含むアルカリ)で炭化珪素単結晶基板1の第1の主面1aを洗浄した後における炭化珪素基板10の第1の主面1aに存在する金属不純物としてのアルミニウム、鉄、ニッケル、クロム、亜鉛および銅の各々の濃度はいずれも1×1011atoms/cm2以下である。第1の主面1aに存在するアルミニウム、鉄、ニッケル、クロム、亜鉛および銅の各々の濃度は、たとえばICP−MS(Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometry)により測定可能である。
次に、エピタキシャル層形成工程(S50)が実施される。エピタキシャル層形成工程では、炭化珪素単結晶基板1の第1の主面1aに炭化珪素からなるエピタキシャル層2が形成される。エピタキシャル層2は、たとえば窒素などの不純物を含有しており、n型を有していてもよい。エピタキシャル層2の厚みはたとえば10μm程度であり、窒素などの不純物濃度はたとえば5×1015cm-3程度である。
図5を参照して、炭化珪素単結晶基板1(炭化珪素基板10)の第1の主面1aに硫黄原子3が存在している場合、硫黄原子3の近くに存在する位置に成長するエピタキシャル層の成長速度は、硫黄原子3が遠くに存在する位置に成長するエピタキシャル層の成長速度と異なると考えられる。そのため、硫黄原子3が存在する位置上に成長したエピタキシャル層と、硫黄原子3が存在しない位置上に成長したエピタキシャル層との厚みが異なり、エピタキシャル層2の表面2aの凹凸が大きくなると考えられる。言い換えれば、炭化珪素単結晶基板1(炭化珪素基板10)の第1の主面1aに存在する硫黄原子3の数を減少させることにより、炭化珪素単結晶基板1(炭化珪素基板10)の第1の主面1a上に成長するエピタキシャル層2の表面2aの平坦性を向上することができる。
次に、本実施の形態に係る炭化珪素基板の製造方法の作用効果について説明する。
本実施の形態に係る炭化珪素基板10の製造方法は以下の工程を有している。第1の主面1aと、第1の主面1aと反対側の第2の主面1bとを有する炭化珪素単結晶基板1が準備される。第1の主面1aが化学機械研磨される。第1の主面1aが硫酸を含む酸で洗浄される。硫酸を含む酸で洗浄する工程の後、第1の主面1aがアンモニアを含むアルカリで洗浄される。第1の主面1aがアンモニアを含むアルカリで洗浄することにより、第1の主面1aに残存していた硫黄が効果的に除去される。そのため、第1の主面1a上に形成されるエピタキシャル層2の表面2aの面粗さが低減される。
また本実施の形態に係る炭化珪素基板10の製造方法によれば、アンモニアを含むアルカリで洗浄する工程の後、第1の主面1aに炭化珪素エピタキシャル層2が形成される。これにより、第1の主面1a上に形成されたエピタキシャル層2の表面2aの面粗さが低減される。
さらに本実施の形態に係る炭化珪素基板10の製造方法によれば、アンモニアを含むアルカリは、アニモニア水溶液と、過酸化水素水と、超純水とを含む液からなる。これにより、第1の主面1aに残存する硫黄をより効果的に除去することができる。
さらに本実施の形態に係る炭化珪素基板10の製造方法によれば、超純水の体積はアニモニア水溶液の体積の2倍以上10倍以下である。超純水の濃度がアンモニア水溶液の2倍以上であれば、アンモニア水溶液を大量に使用しすぎることなく硫黄を効率的に除去することができる。超純水の濃度がアンモニア水溶液の10倍以下であれば、硫黄を効果的に除去できる程度のアンモニア水溶液の濃度を保つことができる。
さらに本実施の形態に係る炭化珪素基板10の製造方法によれば、硫酸を含む酸は、硫酸と、過酸化水素水と、超純水とを含む液からなる。これにより、第1の主面1aにおける重金属不純物および有機物を効果的に除去することができる。
さらに本実施の形態に係る炭化珪素基板10の製造方法によれば、硫酸の体積は過酸化水素水の体積の2倍以上10倍以下である。硫酸の体積が過酸化水素水の体積の2倍以上であれば、重金属不純物および有機物を除去するための酸化力が得られる。硫酸の体積が過酸化水素水の体積の10倍以下であれば、第1の主面1aに硫黄が過剰に残存することを抑制することができる。
さらに本実施の形態に係る炭化珪素基板10の製造方法によれば、アンモニアを含むアルカリで洗浄する工程の後における第1の主面1aの組成における硫黄の割合は、0.5at%未満である。これにより、硫黄の濃度が少ない炭化珪素基板10を得ることができる。
さらに本実施の形態に係る炭化珪素基板10の製造方法によれば、アンモニアを含むアルカリで洗浄する工程の後における第1の主面1aに存在する金属不純物としてのアルミニウム、鉄、ニッケル、クロム、亜鉛および銅の各々の濃度はいずれも1×1011atoms/cm2以下である。これにより、金属不純物の少ない炭化珪素基板10を得ることができる。
本実施例では、炭化珪素基板10のエピタキシャル層2の表面2aの表面粗さと、炭化珪素基板10の洗浄方法との関係について調査する実験を行なった。まず比較例の炭化珪素基板10は以下の洗浄方法1を用いて準備された。本発明例の炭化珪素基板10は以下の洗浄方法2を用いて準備された。洗浄方法1では、炭化珪素単結晶基板1の第1の主面1aを硫酸過酸化水素水で洗浄し、アニモニア過酸化水素水での洗浄は行わなかった。洗浄方法2では、炭化珪素単結晶基板1の第1の主面1aを硫酸過酸化水素水で洗浄した後、炭化珪素単結晶基板1の第1の主面1aをアンモニア過酸化水素水で洗浄した。具体的には、本発明例に係る炭化珪素基板10を上記実施の形態に係る製造方法に従って準備した。比較例に係る炭化珪素基板10を、第2の洗浄液で洗浄する工程(S45)および超純水洗浄工程(S46)を行っていないことを除いて、本発明例に係る炭化珪素基板10の製造方法と同様の製造方法によって準備した。
上記方法により洗浄方法1による炭化珪素基板10および洗浄方法2による炭化珪素基板10を準備した。その後、各炭化珪素基板10の第1の主面1aに存在する金属不純物(具体的には、アルミニウム、鉄、ニッケル、クロム、亜鉛および銅)の濃度を測定した。金属不純物の濃度の測定は、ICP−MSにより行われた。金属不純物濃度の測定結果を表1に示す。
表1に示すように、洗浄方法1による炭化珪素基板10(比較例)の第1の主面1aおよび洗浄方法2による炭化珪素基板10(本発明例)の第1の主面1aの各々において、鉄および亜鉛が存在していることが確認された。アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)および銅(Cu)の各々の存在はICP−MSによって検出されなかった。鉄(Fe)および亜鉛(Zn)の各々の濃度に関して、比較例に係る炭化珪素基板10と本発明例に係る炭化珪素基板10との間に大きな違いはなかった。
次に、洗浄方法1および洗浄方法2の各々の方法によって洗浄された炭化珪素基板10の第1の主面1aの表面組成における硫黄の割合を測定した。硫黄の割合の測定は、ESCAにより行われた。比較例および本発明例の各々に係る炭化珪素基板10の第1の主面1aの表面組成の測定結果を表2に示す。
表2に示すように、洗浄方法1による炭化珪素基板10(比較例)の第1の主面1aには、珪素(Si)、炭素(C)、酸素(O)および硫黄(S)の存在が確認された。硫黄の割合は2.3at%であった。一方、洗浄方法2による炭化珪素基板10(本発明例)の第1の主面1aには、珪素、炭素および酸素の存在が確認されたが、硫黄の存在は確認されなかった。本測定に用いられたESCAの測定下限値が0.5at%程度であるため、仮に本発明例に係る炭化珪素基板10の第1の主面1aに硫黄が存在したとしても、硫黄の割合は0.5at%未満であると考えられる。また本発明例に係る炭化珪素基板10の第1の主面1aの組成における炭素の割合は、珪素よりも5at%以上多かった。
次に、洗浄方法1および洗浄方法2の各々の方法によって洗浄されて製造された炭化珪素基板10の第1の主面1aにエピタキシャル層2を形成し、エピタキシャル層2の表面2aにおける表面粗さの指標である算術平均粗さ(Ra)を測定した。算術平均粗さ(Ra)の測定は、AFM(Atomic Force Microscope)により行われた。測定に用いられる視野を10μm×10μmとした。比較例および本発明例の各々に係る炭化珪素基板10の第1の主面1aの算術平均粗さ(Ra)の測定結果を表3に示す。
表3に示すように、洗浄方法1による炭化珪素基板10(比較例)のエピタキシャル層2の表面2aの算術平均粗さ(Ra)は0.8nmであった。一方、洗浄方法2による炭化珪素基板10(本発明例)のエピタキシャル層2の表面2aの算術平均粗さ(Ra)は0.1nmであった。つまり、第1の主面1aを硫酸過酸化水素水で洗浄した後、第1の主面1aをアンモニア過酸化水素水で洗浄した炭化珪素単結晶基板1の第1の主面1aに形成された炭化珪素エピタキシャル層2の表面2aは、第1の主面1aを硫酸過酸化水素水で洗浄し、アニモニア過酸化水素水での洗浄は行わなかった炭化珪素単結晶基板1の第1の主面1aに形成されたエピタキシャル層2の表面2aよりも凹凸が少なくなる(言い換えれば平坦性が良くなる)ことが確認された。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。