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JP2014199184A - 磁気センサシステム - Google Patents

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Kunihiro Ueda
国博 上田
啓 平林
Hiroshi Hirabayashi
啓 平林
聡 阿部
Satoshi Abe
聡 阿部
誉 常田
Homare Tokida
誉 常田
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Abstract

【課題】磁気センサに対するスケールの相対的な移動方向を含む、スケールと磁気センサとの相対的位置関係に関連する物理量を精度よく検出する。
【解決手段】磁気センサシステムは、第1の方向D1に相対的位置関係が変化し得るスケール1および磁気センサ2と、演算部を備えている。磁気センサ2は、それぞれ位置P1,P2,P3に配置された検出回路10,20,30を有している。検出回路10,20,30の各々は、スピンバルブ型のMR素子を含んでいる。第1の方向Dについて、第1ないし第3の位置のうち互いに最も離れた2つの位置の差は、スケール1と磁気センサ2の相対的位置関係の変化における1ピッチ以内である。演算部は、検出回路10,20,30の各検出信号を用いた演算によって、互いに位相が異なる第1および第2の演算後信号を生成する。
【選択図】図1

Description

本発明は、スケールと磁気センサとの相対的位置関係に関連する物理量を検出するための磁気センサシステムに関する。
近年、種々の用途で、ロータリエンコーダやリニアエンコーダ等、動作体の回転動作や直線的動作に関連する物理量を検出するセンサシステムが用いられている。このようなセンサシステムは、一般的に、スケールとセンサとを備え、センサによって、スケールとセンサとの相対的位置関係に関連する信号を生成するようになっている。このようなセンサシステムのうち、センサとして磁気センサを用いたものを、本出願において磁気センサシステムと呼ぶ。このような磁気センサシステムは、例えば特許文献1ないし3に記載されている。
動作体が回転動作をするものである場合に用いられる磁気センサシステムのスケールは、一般的には、動作体に連動する回転体である。この回転体は、例えば、円周方向に交互に配列された複数組のN極とS極を有する多極着磁磁石や、磁性材料によって構成された複数の歯を有する歯車である。この場合、磁気センサシステムは、前記物理量として、回転体の回転位置や回転速度等を検出する。
動作体が直線的動作をするものである場合に用いられる磁気センサシステムのスケールは、例えば、交互に直線状に配列された複数組のN極とS極を有するリニアスケールである。この場合、リニアスケールと磁気センサの一方が動作体に連動し、磁気センサシステムは、前記物理量として、磁気センサに対するリニアスケールの相対的な位置や速度を検出する。
磁気センサシステムでは、スケールと磁気センサの相対的位置関係が連続的に変化すると、磁気センサ中のある点における磁界の方向が周期的に変化する。ここで、磁気センサ中のある点における磁界の方向が1周期だけ変化するときのスケールと磁気センサの相対的位置関係の変化量を1ピッチと言う。
特開平4−5571号公報 特開2003−269995号公報 特開2006−113015号公報
ところで、ロータリエンコーダやリニアエンコーダでは、センサが、互いに異なる位置に配置された第1および第2の検出部を有し、この2つの検出部によって、互いに位相が異なる第1の信号と第2の信号を生成するものが知られている。この構成では、第1の信号に対して第2の信号の位相が進んでいるか遅れているかによって、センサに対するスケールの相対的な移動方向を検出することが可能になる。
以下、磁気センサが上記の第1および第2の検出部を有するように磁気センサシステムを構成する場合における問題点について説明する。この場合、第1および第2の検出部の各々は感磁素子を含む。従来の磁気センサシステムは、特許文献2,3に示されるように、感磁素子として異方性磁気抵抗効果素子を用いたものが多かった。異方性磁気抵抗効果素子は、比較的広い配置面積を要する。そのため、感磁素子として異方性磁気抵抗効果素子を用いた場合には、第1の検出部と第2の検出部の間の距離をある程度大きくせざるを得ない。この場合には、以下のような種々の要因により、第1の検出部と第2の検出部の検出特性が異なりやすいという問題点がある。要因の1つとしては、第1の検出部と第2の検出部に対して互いに異なるノイズ磁界が印加されることが挙げられる。他の要因としては、第1の検出部とスケールとの間の物理的距離と第2の検出部とスケールとの間の物理的距離が異なることが挙げられる。更に他の要因としては、スケールに磁性金属粉が付着する等により、第1の検出部とスケールとの間の実効的な距離と、第2の検出部とスケールとの間の実効的な距離が異なることが挙げられる。
また、1ピッチの大きさが小さくなると、異方性磁気抵抗効果素子では、スケールと磁気センサの相対的位置関係の変化に伴う磁界の変化を精度よく検出することが困難になる。
特許文献1には、一対のN極とS極だけを含み回転する磁石と、磁石の回転軸を中心とする同一円周上に120°間隔で配置された第1ないし第3の磁気抵抗素子と、第1の磁気抵抗素子の出力と第3の磁気抵抗素子の出力との差を演算する第1の差動演算増幅器と、第2の磁気抵抗素子の出力と第3の磁気抵抗素子の出力との差を演算する第2の差動演算増幅器とを備えた回転検出装置が記載されている。
この回転検出装置では、第1ないし第3の磁気抵抗素子の位置が大きく異なるため、上述の問題点が当てはまる。また、第1ないし第3の磁気抵抗素子が大きいため、特許文献1に開示された技術は、スケールが、円周方向に交互に配列された複数組のN極とS極を有する多極着磁磁石である磁気センサシステムに適用することは困難である。
このように、従来は、スケールと磁気センサの相対的位置関係が2ピッチ以上変化可能で、磁気センサに対するスケールの相対的な移動方向を含む、スケールと磁気センサとの相対的位置関係に関連する物理量を精度よく検出することが可能な磁気センサシステムが実現されていなかった。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、スケールと磁気センサの相対的位置関係が2ピッチ以上変化可能で、磁気センサに対するスケールの相対的な移動方向を含む、スケールと磁気センサとの相対的位置関係に関連する物理量を精度よく検出することが可能な磁気センサシステムを提供することにある。
本発明の磁気センサシステムは、第1の方向に相対的位置関係が変化し得るスケールと磁気センサとを備え、スケールと磁気センサとの相対的位置関係に関連する物理量を検出するためのものである。本発明の磁気センサシステムにおいて、磁気センサは、第1の位置に配置された第1の検出回路と、第2の位置に配置された第2の検出回路と、第3の位置に配置された第3の検出回路とを有している。第1の検出回路は、第1の検出回路に印加される第1の磁界に応じて変化する第1の検出信号を出力する。第2の検出回路は、第2の検出回路に印加される第2の磁界に応じて変化する第2の検出信号を出力する。第3の検出回路は、第3の検出回路に印加される第3の磁界に応じて変化する第3の検出信号を出力する。第1ないし第3の検出回路の各々は、磁気抵抗効果素子を含んでいる。磁気抵抗効果素子は、磁化方向が固定された磁化固定層と、印加される磁界に応じて磁化が変化する自由層と、磁化固定層と自由層の間に配置された非磁性層とを有している。
第1ないし第3の磁界の方向は、いずれも、スケールと磁気センサの相対的位置関係の変化に応じて周期的に変化する。第1ないし第3の磁界の方向がそれぞれ1周期だけ変化するときのスケールと磁気センサの相対的位置関係の変化量を1ピッチとしたとき、スケールと磁気センサの相対的位置関係は、2ピッチ以上変化可能である。第1の方向について、第1ないし第3の位置のうち互いに最も離れた2つの位置の差は、1ピッチ以内である。第1ないし第3の検出信号は、スケールと磁気センサの相対的位置関係の変化に応じて周期的に変化し、且つ互いに位相が異なる。磁気センサシステムは、更に、少なくとも第1の検出信号および第3の検出信号を用いた演算によって第1の演算後信号を生成すると共に、少なくとも第2の検出信号および第3の検出信号を用いた演算によって第2の演算後信号を生成する演算部を備えている。第1の演算後信号と第2の演算後信号は、スケールと磁気センサの相対的位置関係の変化に応じて周期的に変化し、且つ互いに位相が異なる。
本発明の磁気センサシステムにおいて、第1の方向について、第1ないし第3の位置のうち互いに最も離れた2つの位置の差は、1/2ピッチ以内であってもよい。
また、本発明の磁気センサシステムにおいて、第1の演算後信号は、第1の検出信号と第3の検出信号の差を求めることを含む演算によって生成され、第2の演算後信号は、第2の検出信号と第3の検出信号の差を求めることを含む演算によって生成されてもよい。
また、本発明の磁気センサシステムにおいて、スケールは、所定の中心軸を中心として回転する回転体であってもよい。この場合、回転体が回転することによって、スケールと磁気センサとの相対的位置関係が変化する。第1の方向は、回転体の回転方向である。また、1ピッチは、回転体の回転方向における角度で表される。
上記回転体は、円周方向に交互に配列された複数組のN極とS極を有していてもよい。この場合、第1ないし第3の磁界は、回転体によって発生され、且つ第1ないし第3の磁界の方向は、上記回転体の回転に伴って変化する。また、1ピッチは、回転体における隣接する2つのN極の中心と中心軸とを結ぶ2つの直線がなす角度である。
上記回転体は、磁性材料によって構成された複数の歯を有する歯車であってもよい。また、磁気センサシステムは、更に、磁気センサに対する位置関係が一定である磁石を備えていてもよい。この場合、第1ないし第3の磁界は、磁石によって発生され、且つ第1ないし第3の磁界の方向は、歯車の回転に伴って変化する。また、1ピッチは、隣接する2つの歯の中心と中心軸とを結ぶ2つの直線がなす角度である。
また、本発明の磁気センサシステムにおいて、スケールは、交互に直線状に配列された複数組のN極とS極を有していてもよい。この場合、第1の方向は、スケールのN極とS極が並ぶ方向である。第1ないし第3の磁界は、スケールによって発生される。また、1ピッチは、スケールにおける隣接する2つのN極の中心間の距離である。
また、本発明の磁気センサシステムにおいて、磁気抵抗効果素子の非磁性層は、トンネルバリア層であってもよい。
本発明の磁気センサシステムでは、第1ないし第3の検出回路の各々は、磁化固定層、自由層および非磁性層を有する磁気抵抗効果素子いわゆるスピンバルブ型の磁気抵抗効果素子を含んでいる。スピンバルブ型の磁気抵抗効果素子は、異方性磁気抵抗効果素子に比べて、配置面積を非常に小さくすることができる。そのため、本発明によれば、スケールと磁気センサの相対的位置関係が2ピッチ以上変化可能な磁気センサシステムにおいて、第1の方向について、第1ないし第3の位置のうち互いに最も離れた2つの位置の差が1ピッチ以内になるように第1ないし第3の検出回路を配置することが可能である。そして、本発明によれば、第1の演算後信号と第2の演算後信号によって、磁気センサに対するスケールの相対的な移動方向を含む、スケールと磁気センサとの相対的位置関係に関連する物理量を精度よく検出することが可能である。以上のことから、本発明によれば、スケールと磁気センサの相対的位置関係が2ピッチ以上変化可能な磁気センサシステムにおいて、磁気センサに対するスケールの相対的な移動方向を含む、スケールと磁気センサとの相対的位置関係に関連する物理量を精度よく検出することが可能になるという効果を奏する。
本発明の第1の実施の形態に係る磁気センサシステムの概略の構成を示す斜視図である。 本発明の第1の実施の形態に係る磁気センサシステムの概略の構成を示す平面図である。 本発明の第1の実施の形態におけるスケールと第1ないし第3の検出回路を示す側面図である。 本発明の第1の実施の形態に係る磁気センサシステムの回路構成を示すブロック図である。 本発明の第1の実施の形態における第1ないし第3の検出回路の構成を示す回路図である。 本発明の第1の実施の形態における第1の検出回路を示す平面図である。 図6における1つのMR素子を示す側面図である。 本発明の第1の実施の形態における第1の検出信号を示す波形図である。 本発明の第1の実施の形態における正転時の第1および第2の演算後信号を示す波形図である。 本発明の第1の実施の形態における正転時の第1および第2の二値化信号を示す波形図である。 本発明の第1の実施の形態における逆転時の第1および第2の演算後信号を示す波形図である。 本発明の第1の実施の形態における逆転時の第1および第2の二値化信号を示す波形図である。 本発明の第2の実施の形態に係る磁気センサシステムの概略の構成を示す斜視図である。 本発明の第2の実施の形態に係る磁気センサシステムの動作を示す説明図である。 本発明の第3の実施の形態に係る磁気センサシステムの概略の構成を示す斜視図である。 本発明の第3の実施の形態に係る磁気センサシステムの概略の構成を示す平面図である。 本発明の第3の実施の形態におけるスケールと第1ないし第3の検出回路を示す側面図である。 本発明の第3の実施の形態における正転時の第1および第2の演算後信号を示す波形図である。 本発明の第3の実施の形態における正転時の第1および第2の二値化信号を示す波形図である。 本発明の第3の実施の形態における逆転時の第1および第2の演算後信号を示す波形図である。 本発明の第3の実施の形態における逆転時の第1および第2の二値化信号を示す波形図である。 本発明の第4の実施の形態に係る磁気センサシステムの概略の構成を示す斜視図である。
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。始めに、図1ないし図3を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る磁気センサシステムの概略の構成について説明する。図1は、本実施の形態に係る磁気センサシステムの概略の構成を示す斜視図である。図2は、本実施の形態に係る磁気センサシステムの概略の構成を示す平面図である。図3は、本実施の形態におけるスケールと第1ないし第3の検出回路を示す側面図である。
図1ないし図3に示したように、本実施の形態に係る磁気センサシステムは、第1の方向D1に相対的位置関係が変化し得るスケール1と磁気センサ2とを備え、スケール1と磁気センサ2との相対的位置関係に関連する物理量を検出するためのものである。本実施の形態では、スケール1は、回転動作をする図示しない動作体に連動し、所定の中心軸Cを中心として回転する回転体である。この回転体が回転することによって、スケール1と磁気センサ2との相対的位置関係が変化する。第1の方向D1は、回転体の回転方向である。磁気センサシステムは、上記物理量として、回転体の回転位置や回転速度等を検出する。
図1および図2に示したように、本実施の形態では、回転体は、円周方向に交互に配列された複数組のN極とS極を有する多極着磁磁石5である。図1および図2に示した例では、磁石5は、12組のN極とS極を有している。磁気センサ2は、磁石5の外周面に対向する位置に配置されている。
ここで、図1および図2を参照して、本実施の形態における方向の定義について説明する。まず、図1に示した中心軸Cに平行で、図1における下から上に向かう方向をZ方向と定義する。図2では、Z方向を図2における奥から手前に向かう方向として表している。次に、Z方向に垂直な2方向であって、互いに直交する2つの方向をX方向とY方向と定義する。図2では、X方向を右側に向かう方向として表し、Y方向を上側に向かう方向として表している。また、X方向とは反対の方向を−X方向と定義し、Y方向とは反対の方向を−Y方向と定義する。
磁気センサ2は、第1の検出回路10と第2の検出回路20と第3の検出回路30とを有している。なお、図1および図2では、理解を容易にするために、図3に比べて第1ないし第3の検出回路10〜30を大きく描いている。また、図1ないし図3では、第1ないし第3の検出回路10〜30を別体として描いているが、第1ないし第3の検出回路10〜30は一体化されていてもよい。
第1の検出回路10は、第1の位置P1に配置され、第1の検出回路10に印加される第1の磁界MF1を検出し、第1の磁界MF1に応じて変化する第1の検出信号S1を出力する。第2の検出回路20は、第2の位置P2に配置され、第2の検出回路20に印加される第2の磁界MF2を検出し、第2の磁界MF2に応じて変化する第2の検出信号S2を出力する。第3の検出回路30は、第3の位置P3に配置され、第3の検出回路30に印加される第3の磁界MF3を検出し、第3の磁界MF3に応じて変化する第3の検出信号S3を出力する。図1ないし図3では、第1の位置P1を第1の検出回路10の中心の位置として表し、第2の位置P2を第2の検出回路20の中心の位置として表し、第3の位置P3を第3の検出回路30の中心の位置として表している。
第1の方向D1およびX方向について、第1ないし第3の位置P1〜P3は、互いに異なっている。図2および図3に示した例では、第3の位置P3と中心軸Cとを結ぶ直線は、Y方向に平行である。Y方向およびZ方向については、第1ないし第3の位置P1〜P3は同じである。図2および図3に示した例では、第1ないし第3の位置P1〜P3は、位置P1,P3,P2の順に、X方向に並んでいる。しかし、本発明において、位置P1〜P3の配置の順番は、この例に限られない。
第1ないし第3の磁界MF1〜MF3の方向は、いずれも、スケール1と磁気センサ2の相対的位置関係の変化に応じて周期的に変化する。本実施の形態では、第1ないし第3の磁界MF1〜MF3は、磁石5によって発生され、且つ第第1ないし第3の磁界MF1〜MF3の方向は、回転体である磁石5の回転に伴って変化する。図2において、符号MF1,MF2,MF3を付した白抜きの矢印は、それぞれ、第1ないし第3の磁界MF1,MF2,MF3の磁界の方向を表している。第1の磁界MF1の方向は、XY平面内において第1の位置P1を中心として回転する。第2の磁界MF2の方向は、XY平面内において第2の位置P2を中心として回転する。第3の磁界MF3の方向は、XY平面内において第3の位置P3を中心として回転する。
また、第1ないし第3の磁界MF1〜MF3の方向がそれぞれ1周期だけ変化するときのスケール1と磁気センサ2の相対的位置関係の変化量を1ピッチと定義する。本実施の形態では、1ピッチは、回転体である磁石5の回転方向における角度で表される。具体的には、1ピッチは、磁石5における隣接する2つのN極の中心と中心軸Cとを結ぶ2つの直線がなす角度である。図1および図2では、上記2つの直線を破線の直線で表し、上記2つの直線がなす角度を記号αで表している。図1および図2に示した例では、角度αは30°である。この例では、磁石5が1回転すると、第1ないし第3の磁界MF1〜MF3の方向は、それぞれ12回転すなわち12周期変化し、スケール1と磁気センサ2の相対的位置関係は、12ピッチ変化する。このように、スケール1と磁気センサ2の相対的位置関係は、2ピッチ以上変化可能である。
本実施の形態では、第1の方向D1について、第1ないし第3の位置P1〜P3のうち互いに最も離れた2つの位置の差は、1ピッチ以内である。この2つの位置の差は、1/2ピッチ以内であることが好ましい。
本実施の形態では、第1の方向D1について、第1ないし第3の位置P1〜P3のうちの任意の2つの位置の差(以下、位置差とも言う。)は、回転体である磁石5の回転方向における角度であって、任意の2つの位置と中心軸Cとを結ぶ2つの直線がなす角度で定義される。図3では、第1の位置P1と第3の位置P3の位置差を記号dp1で示し、第2の位置P2と第3の位置P3の位置差を記号dp2で示している。図3に示した例では、位置差dp1,dp2は、いずれも、角度αの1/4、すなわち1/4ピッチである。なお、磁気センサシステムの作製の精度等の観点から、位置差dp1,dp2は、1/4ピッチからわずかにずれていてもよい。
図1ないし図3に示した例では、第1の方向D1について、第1ないし第3の位置P1〜P3のうち互いに最も離れた2つの位置は、第1の位置P1と第2の位置P2である。この例では、第1の方向D1について、第1の位置P1と第2の位置P2の位置差は、角度αの1/2、すなわち1/2ピッチである。
また、第1ないし第3の検出回路10〜30の各々は、磁気抵抗効果素子(以下、MR素子と記す。)を含んでいる。後で詳しく説明するが、本実施の形態では、第1ないし第3の検出回路10〜30に含まれる全てのMR素子として、スピンバルブ型のMR素子を用いている。このMR素子は、磁化方向が固定された磁化固定層と、印加される磁界に応じて磁化が変化する自由層と、磁化固定層と自由層の間に配置された非磁性層とを有している。第1ないし第3の検出回路10〜30は、そのMR素子を構成する各層の面が、第3の位置P3と中心軸Cとを結ぶ直線に対して垂直になるように配置されている。
磁石5の外周面において隣接する2つのN極の中心間の距離を4mmとすると、本実施の形態では、第1の位置P1と第2の位置P2の位置差が1ピッチ以内となるようにするために、第1の位置P1と第3の位置P3の距離である第1の距離を2mm以下、第2の位置P2と第3の位置P3の距離である第2の距離を2mm以下、第1の位置P1と第2の位置P2の距離である第3の距離を4mm以下にする必要がある。本実施の形態では特に、第1および第2の距離をそれぞれ1mm以下、第3の距離を2mm以下にする必要がある。スピンバルブ型のMR素子は、異方性磁気抵抗効果素子に比べて、配置面積を非常に小さくすることができる。そのため、本実施の形態によれば、隣接する2つのN極の中心間の距離すなわち1ピッチの大きさが実用的な範囲内であれば、第1ないし第3の位置P1〜P3が上記の条件を満たすように、第1ないし第3の検出回路10〜30を配置することが可能である。このように、本実施の形態によれば、スケール1と磁気センサ2の相対的位置関係が2ピッチ以上変化可能な磁気センサシステムにおいて、第1の方向D1について、第1ないし第3の位置P1〜P3のうち互いに最も離れた2つの位置P1,P2の位置差が1ピッチ以内となるように第1ないし第3の検出回路10〜30を配置することが可能である。
第1ないし第3の検出信号S1〜S3は、スケール1と磁気センサ2の相対的位置関係の変化に応じて周期的に変化し、且つ互いに位相が異なる。図1および図2に示した例では、第1ないし第3の検出信号S1〜S3における1周期すなわち電気角の360°は、磁石5の1/12回転すなわち磁石5の回転角の30°に相当する。
磁気センサシステムは、更に、少なくとも第1の検出信号S1および第3の検出信号S3を用いた演算によって第1の演算後信号を生成すると共に、少なくとも第2の検出信号S2および第3の検出信号S3を用いた演算によって第2の演算後信号を生成する演算部40を備えている。第1の演算後信号と第2の演算後信号は、スケール1と磁気センサ2の相対的位置関係の変化に応じて周期的に変化し、且つ互いに位相が異なる。第1の演算後信号を生成する演算は、第1の検出信号S1と第3の検出信号S3の差を求めることを含んでいてもよい。第2の演算後信号を生成する演算は、第2の検出信号S2と第3の検出信号S3の差を求めることを含んでいてもよい。
次に、図4を参照して、演算部40の構成について説明する。図4は、本実施の形態に係る磁気センサシステムの回路構成を示すブロック図である。演算部40は、2つの演算回路41,42と、データ処理回路43とを有している。演算回路41,42は、それぞれ、2つの入力端と出力端とを有している。演算回路41の2つの入力端は、それぞれ、第1の検出回路10と第3の検出回路30に接続されている。演算回路42は、2つの入力端と出力端とを有している。演算回路42の2つの入力端は、それぞれ、第2の検出回路20と第3の検出回路30に接続されている。演算回路41は、第1および第3の検出信号S1,S3を用いた演算を行うための回路である。演算回路42は、第2および第3の検出信号S2,S3を用いた演算を行うための回路である。
データ処理回路43は、2つの入力端を有している。データ処理回路43の2つの入力端は、それぞれ、演算回路41の出力端と演算回路42の出力端に接続されている。データ処理回路43は、演算回路41,42の出力信号を用いた演算を行ったり、その演算結果に基づいて、スケール1と磁気センサ2との相対的位置関係の変化量や変化速度、すなわち回転体である磁石5の回転位置や回転速度を算出する処理を行ったりするための回路である。データ処理回路43は、例えばマイクロコンピュータによって実現することができる。演算回路41,42およびデータ処理回路43における演算と、第1および第2の演算後信号については、後で詳しく説明する。
次に、図5および図6を参照して、第1ないし第3の検出回路10〜30の構成について詳しく説明する。図5は、第1ないし第3の検出回路10〜30の構成を示す回路図である。図6は、第1の検出回路10を示す平面図である。第1の検出回路10は、直列に接続されたMR素子列R11,R12と、電源ポートV1と、グランドポートG1と、出力ポートE1とを有している。MR素子列R11,R12の各々は、直列に接続された複数のMR素子50を含んでいる。MR素子列R11の一端は、電源ポートV1に接続されている。MR素子列R11の他端は、MR素子列R12の一端と出力ポートE1に接続されている。MR素子列R12の他端は、グランドポートG1に接続されている。出力ポートE1は、第1の検出信号S1を出力する。
第2の検出回路20の回路構成は、第1の検出回路10と同様である。すなわち、第2の検出回路20は、直列に接続されたMR素子列R21,R22と、電源ポートV2と、グランドポートG2と、出力ポートE2とを有している。MR素子列R21,R22の各々は、直列に接続された複数のMR素子50を含んでいる。MR素子列R21の一端は、電源ポートV2に接続されている。MR素子列R21の他端は、MR素子列R22の一端と出力ポートE2に接続されている。MR素子列R22の他端は、グランドポートG2に接続されている。出力ポートE2は、第2の検出信号S2を出力する。
第3の検出回路30の回路構成も、第1の検出回路10と同様である。すなわち、第3の検出回路30は、直列に接続されたMR素子列R31,R32と、電源ポートV3と、グランドポートG3と、出力ポートE3とを有している。MR素子列R31,R32の各々は、直列に接続された複数のMR素子50を含んでいる。MR素子列R31の一端は、電源ポートV3に接続されている。MR素子列R31の他端は、MR素子列R32の一端と出力ポートE3に接続されている。MR素子列R32の他端は、グランドポートG3に接続されている。出力ポートE3は、第3の検出信号S3を出力する。
磁気センサ2は、更に、所定の大きさの電源電圧が印加される電源ポートVaと、グランドに接続されるグランドポートGaとを有している。電源ポートV1,V2,V3は、電源ポートVaに接続されている。グランドポートG1,G2,G3は、グランドポートGaに接続されている。
図5に示したように、MR素子列R11,R12,R21,R22,R31,R32は、X方向に並ぶように配置されている。なお、MR素子列R11,R12,R21,R22,R31,R32の配置は、図5に示した例に限られない。
本実施の形態では、MR素子50は、磁化固定層、自由層および非磁性層を有するスピンバルブ型のMR素子である。MR素子50は、TMR素子でもよいし、GMR素子でもよい。MR素子50がTMR素子である場合には、非磁性層はトンネルバリア層である。MR素子50がGMR素子である場合には、非磁性層は非磁性導電層である。MR素子50では、自由層に印加される磁界に応じて、自由層の磁化が変化する。より詳しく説明すると、自由層に印加される磁界の方向および大きさに応じて、自由層の磁化の方向および大きさが変化する。そして、MR素子50の抵抗値は、自由層の磁化の方向および大きさによって変化する。例えば、自由層の磁化の大きさが一定の場合には、自由層の磁化の方向が磁化固定層の磁化の方向と同じであるときに、MR素子の抵抗値は最小値となり、自由層の磁化の方向が磁化固定層の磁化の方向とは反対方向であるときに、MR素子50の抵抗値は最大値となる。図5において、塗りつぶした矢印は、MR素子列R11,R12,R21,R22,R31,R32の各々におけるMR素子50の磁化固定層の磁化の方向を表している。図6において、MR素子50内に描かれた矢印は、MR素子50における磁化固定層の磁化の方向を表している。
第1の検出回路10では、MR素子列R11に含まれる複数のMR素子50における磁化固定層の磁化の方向は−X方向であり、MR素子列R12に含まれる複数のMR素子50における磁化固定層の磁化の方向はX方向である。この場合、X方向および−X方向に平行な方向についての第1の磁界MF1の成分の強度に応じて、出力ポートE1の電位が変化する。従って、第1の検出回路10は、X方向および−X方向に平行な方向についての第1の磁界MF1の成分の強度を検出して、その強度を表す第1の検出信号S1を出力する。
第2の検出回路20では、MR素子列R21に含まれる複数のMR素子50における磁化固定層の磁化の方向は−X方向であり、MR素子列R22に含まれる複数のMR素子50における磁化固定層の磁化の方向はX方向である。この場合、X方向および−X方向に平行な方向についての第2の磁界MF2の成分の強度に応じて、出力ポートE2の電位が変化する。従って、第2の検出回路20は、X方向および−X方向に平行な方向についての第2の磁界MF2の成分の強度を検出して、その強度を表す第2の検出信号S2を出力する。
第3の検出回路30では、MR素子列R31に含まれる複数のMR素子50における磁化固定層の磁化の方向は−X方向であり、MR素子列R32に含まれる複数のMR素子50における磁化固定層の磁化の方向はX方向である。この場合、X方向および−X方向に平行な方向についての第3の磁界MF3の成分の強度に応じて、出力ポートE3の電位が変化する。従って、第3の検出回路30は、X方向および−X方向に平行な方向についての第3の磁界MF3の成分の強度を検出して、その強度を表す第3の検出信号S3を出力する。
MR素子列R11,R21,R31では、それらに含まれる複数のMR素子50における磁化固定層の磁化の方向が同じである。また、MR素子列R12,R22,R32では、それらに含まれる複数のMR素子50における磁化固定層の磁化の方向が同じである。前述のように、第1の位置P1と第3の位置P3の位置差dp1は、角度αの1/4、すなわち第1および第3の検出信号S1,S3の電気角の90°に相当する。そのため、第1の検出信号S1に対する第3の検出信号S3の位相差は90°になる。同様に、第2の位置P2と第3の位置P3の位置差dp2は、角度αの1/4、すなわち第2および第3の検出信号S2,S3の電気角の90°に相当する。そのため、第3の検出信号S3に対する第2の検出信号S2の位相差は90°になる。また、第1の位置P1と第2の位置P2の位置差は、角度αの1/2、すなわち第1および第2の検出信号S1,S2の電気角の180°に相当する。そのため、第1の検出信号S1に対する第2の検出信号S2の位相差は180°になる。
なお、第1ないし第3の検出回路10〜30内の複数のMR素子50における磁化固定層の磁化の方向は、MR素子50の作製の精度等の観点から、上述の方向からわずかにずれていてもよい。
MR素子列R11,R12,R21,R22,R31,R32の各々は、更に、複数のMR素子50を電気的に接続する図示しない複数の下部電極および複数の上部電極を含んでいる。MR素子列R11,R12,R21,R22,R31,R32の各々において、複数の下部電極は、全体としてミアンダ形状となるように、図示しない基板上に、互いに間隔を開けて配列されている。個々の下部電極は一方向に長い形状を有している。下部電極の上面上において、長手方向の両端の近傍に、それぞれMR素子50が配置されている。複数の上部電極は、複数のMR素子50の上に配置されている。個々の上部電極は一方向に長い形状を有し、下部電極の長手方向に隣接する2つの下部電極上に配置されて隣接する2つのMR素子50を電気的に接続する。このような構成により、MR素子列R11,R12,R21,R22,R31,R32の各々において、複数のMR素子50は、複数の下部電極と複数の上部電極とによって直列に接続されている。
次に、図7を参照して、MR素子50の構成の一例について説明する。図7は、図6における1つのMR素子50を示している。図7に示したMR素子50は、下部電極側から順に積層された下地層51、反強磁性層52、磁化固定層53、非磁性層54、自由層55および保護層56を有している。下地層51と保護層56は、導電性を有している。下地層51は、図示しない基板の結晶軸の影響を排除し、下地層51の上に形成される各層の結晶性や配向性を向上させるために用いられる。下地層51の材料としては、例えばTaやRuが用いられる。反強磁性層52は、磁化固定層53との交換結合により、磁化固定層53における磁化の方向を固定する層である。反強磁性層52は、例えば、IrMn、PtMn等の反強磁性材料によって形成されている。
磁化固定層53では、反強磁性層52との界面における交換結合により、磁化の方向が固定されている。図7に示した例では、磁化固定層53は、反強磁性層52の上に順に積層されたアウター層531、非磁性中間層532およびインナー層533を有し、いわゆるシンセティック固定層になっている。アウター層531とインナー層533は、例えば、CoFe、CoFeB、CoNiFe等の軟磁性材料によって形成されている。アウター層531は、反強磁性層52との交換結合により、磁化の方向が固定されている。アウター層531とインナー層533は、反強磁性的に結合し、磁化の方向が互いに逆方向に固定されている。非磁性中間層532は、アウター層531とインナー層533の間に反強磁性交換結合を生じさせ、アウター層531の磁化の方向とインナー層533の磁化の方向を互いに逆方向に固定する。非磁性中間層532は、例えばRu等の非磁性材料によって形成されている。磁化固定層53がアウター層531、非磁性中間層532およびインナー層533を有する場合には、磁化固定層53の磁化の方向とは、インナー層533の磁化の方向を指す。
MR素子50がTMR素子である場合には、非磁性層54はトンネルバリア層である。トンネルバリア層は、例えば、マグネシウム層の一部または全体を酸化させて形成したものであってもよい。MR素子50がGMR素子である場合には、非磁性層54は非磁性導電層である。自由層55は、例えば、CoFe、CoFeB、NiFe、CoNiFe等の軟磁性材料によって形成されている。保護層56は、その下の各層を保護するための層である。保護層56の材料としては、Ta、Ru、W、Ti等が用いられる。
下地層51は下部電極に接続され、保護層56は上部電極に接続されている。MR素子50には、これら下部電極および上部電極によって、電流が供給されるようになっている。この電流は、MR素子50を構成する各層の面と交差する方向、例えばMR素子50を構成する各層の面に対して垂直な方向に流れる。
次に、図8を参照して、第1ないし第3の検出信号S1〜S3について説明する。図8は、第1の検出信号S1を示す波形図である。図8において、横軸は第1の検出信号S1の電気角を示し、縦軸は第1の検出信号S1の電位を示している。なお、図8では、第1の検出信号S1の最大値が1になり、最小値が−1になるように規格化している。図8に示したように、第1の検出信号S1は周期的に変化する。図8に示した例では、第1の検出信号S1の波形は、正弦曲線から歪んだ波形になっている。
図示しないが、第2および第3の検出信号S2,S3の波形は、図8に示した第1の検出信号S1のような波形になっている。前述のように、第1の検出信号S1に対する第3の検出信号S3の位相差は90°であり、第3の検出信号S3に対する第2の検出信号S2の位相差は90°である。
ここで、回転体である磁石5が、図2における反時計回り方向に回転することを正転と呼び、図2における時計回りに回転することを逆転と呼ぶ。正転時には、第3の検出信号S3の位相は、第1の検出信号S1の位相に対して90°だけ遅れ、第2の検出信号S2の位相に対して90°だけ進む。逆転時には、第3の検出信号S3の位相は、第1の検出信号S1の位相に対して90°だけ進み、第2の検出信号S2の位相に対して90°だけ遅れる。
次に、演算回路41,42およびデータ処理回路43における演算と、第1および第2の演算後信号について説明する。演算回路41は、例えば、第1の検出信号S1と第3の検出信号S3の差(S1−S3)を規格化した値を、第1の演算後信号Saとして生成する。また、演算回路42は、例えば、第2の検出信号S2と第3の検出信号S3の差(S2−S3)を規格化した値を、第2の演算後信号Sbとして生成する。
図9は、正転時の第1および第2の演算後信号Sa,Sbを示す波形図である。図9において、横軸は第1ないし第3の検出信号S1〜S3の電気角に対応する任意の電気角を示し、縦軸は第1および第2の演算後信号の電位を示している。図9の横軸に示した電気角は、スケール1と磁気センサ2の相対的位置関係の変化に対応する。図9に示した例では、第1および第2の演算後信号Sa,Sbのそれぞれの最大値が1になり、最小値が−1になるように規格化している。
本実施の形態では、第1の演算後信号Saを生成するための演算と第2の演算後信号Sbを生成するための演算の両方において、第3の検出信号S3が用いられる。なお、第3の検出信号S3の代わりに、第1または第2の検出信号S1,S2を、第1の演算後信号Saを生成するための演算と第2の演算後信号Sbを生成するための演算の両方に用いてもよい。
図9に示したように、第1および第2の演算後信号Sa,Sbは、図9の横軸に示した電気角に応じて、すなわちスケール1と磁気センサ2の相対的位置関係の変化に応じて、周期的に変化し、且つ互いに位相が異なる。正転時には、第2の演算後信号Sbの位相は、第1の演算後信号Saの位相に対して90°だけ遅れる。
データ処理回路43は、演算回路41,42の出力信号である第1および第2の演算後信号Sa,Sbを二値化する。以下、第1の演算後信号Saを二値化して得られた信号を第1の二値化信号DSaと言い、第2の演算後信号Sbを二値化して得られた信号を第2の二値化信号DSbと言う。
図10は、図9に示した正転時の演算後信号Sa,Sbを二値化して得られた二値化信号DSa,DSbを示す波形図である。図10において、横軸は時間を示し、縦軸は二値化信号DSa,DSbの値を示している。図9および図10に示した例では、演算後信号Sa,Sbの電位が0以上のときに二値化信号DSa,DSbの値は1となり、演算後信号Sa,Sbの電位が0よりも小さいときに二値化信号DSa,DSbの値は0となっている。なお、図10では、理解を容易にするために、二値化信号DSa,DSbの波形を図10における上下方向に互いにずらして描いている。これ以降の説明で使用する図10と同様の図においても、図10と同様の表し方を用いる。正転時には、第2の二値化信号DSbの位相は、第1の二値化信号DSaの位相に対して90°だけ遅れる。データ処理回路43は、二値化信号DSa,DSbを用いて、磁石5の回転方向を検出したり、磁石5の回転位置や回転速度を算出する処理を行ったりする。
次に、図9ないし図12を参照して、第1および第2の演算後信号Sa,Sbならびに第1および第2の二値化信号DSa,DSbを用いて、磁石5の回転方向を検出する方法について説明する。図11は、逆転時の第1および第2の演算後信号Sa,Sbを示す波形図である。図12は、逆転時の第1および第2の二値化信号DSa,DSbを示す波形図である。図11には、図9と同様の横軸および縦軸を示している。図12には、図10と同様の横軸および縦軸を示している。図11に示したように、逆転時には、第2の演算後信号Sbの位相は、第1の演算後信号Saの位相に対して90°だけ進み、第2の二値化信号DSbの位相は、第1の二値化信号DSaの位相に対して90°だけ進む。
データ処理回路43は、第1の二値化信号DSaに対して第2の二値化信号DSbの位相が進んでいるか遅れているかによって、磁気センサ2に対するスケール1の相対的な移動方向すなわち磁石5の回転方向を検出する。すなわち、図10に示したように、磁石5が正転することによって、第1の二値化信号DSaに対して第2の二値化信号DSbの位相が遅れていると、第1の二値化信号DSaの値が0から1に立ち上がる時の第2の二値化信号DSbの値は0になる。一方、図12に示したように、磁石5が逆転することによって、第1の二値化信号DSaに対して第2の二値化信号DSbの位相が進んでいると、第1の二値化信号DSaの値が0から1に立ち上がる時の第2の二値化信号DSbの値は1になる。この違いによって、データ処理回路43は、磁石5が正転しているか逆転しているかを検出することができる。
磁石5の回転位置や回転速度は、例えば、磁石5の回転方向を検出しながら、第1または第2の二値化信号DSa,DSbの値が1になる回数をカウントすることによって算出することができる。
次に、本実施の形態に係る磁気センサシステムの効果について説明する。本実施の形態では、第1ないし第3の検出回路10〜30の各々は、異方性磁気抵抗効果素子に比べて配置面積を非常に小さくすることができるスピンバルブ型のMR素子50を含んでいる。そのため、本実施の形態によれば、スケール1と磁気センサ2の相対的位置関係が2ピッチ以上変化可能な磁気センサシステムにおいて、第1の方向D1について、第1ないし第3の位置P1〜P3のうち互いに最も離れた2つの位置P1,P2の位置差が1ピッチ以内となるように第1ないし第3の検出回路10〜30を配置することが可能である。このように狭い範囲内に第1ないし第3の検出回路10〜30を配置することにより、第1ないし第3の検出回路10〜30に対して互いに異なるノイズ磁界が印加されることを防止したり、第1ないし第3の検出回路10〜30の各々とスケール1との間の物理的距離が大きく異なったりすることを防止することができる。また、スケール1に磁性金属粉が付着する等により、第1ないし第3の検出回路10〜30の各々とスケール1との間の実効的な距離が大きく異なることを防止したりすることもできる。このようにして、本実施の形態によれば、第1ないし第3の検出回路10〜30の検出特性が異なることを防止することができる。
また、本実施の形態では、少なくとも第1の検出信号S1および第3の検出信号S3を用いた演算によって第1の演算後信号Saを生成すると共に、少なくとも第2の検出信号S2および第3の検出信号S3を用いた演算によって第2の演算後信号Sbを生成する。このように、本実施の形態では、第1の演算後信号Saを生成するための演算と第2の演算後信号Sbを生成するための演算の両方において、第3の検出信号S3が用いられる。本実施の形態では、狭い範囲内に第1ないし第3の検出回路10〜30が配置されていることから、スケール1と磁気センサ2との距離が変動したり、磁気センサ2にノイズ磁界が印加されたりして、第1ないし第3の検出信号S1,S2,S3に、望まれない変動成分が重畳した場合、第1ないし第3の検出信号S1,S2,S3における変動成分はほぼ同じ位相になる。そのため、上述のようにして第1および第2の演算後信号Sa,Sbを生成することにより、望まれない変動成分が抑制された第1および第2の演算後信号Sa,Sbを得ることが可能になる。従って、本実施の形態によれば、第1および第2の演算後信号Sa,Sbによって、磁気センサ2に対するスケール1の相対的な移動方向を含む、スケール1と磁気センサ2との相対的位置関係に関連する物理量を精度よく検出することが可能になる。本実施の形態では、特に、第1の検出信号S1と第3の検出信号S3の差を求めることを含む演算によって第1の演算後信号Saを生成し、第2の検出信号S2と第3の検出信号S3の差を求めることを含む演算によって第2の演算後信号Sbを生成している。これにより、本実施の形態によれば、望まれない変動成分を全くあるいはほとんど含まない第1および第2の演算後信号Sa,Sbを生成することが可能になる。
以上のことから、本実施の形態によれば、スケール1と磁気センサ2の相対的位置関係が2ピッチ以上変化可能な磁気センサシステムにおいて、磁気センサ2に対するスケール1の相対的な移動方向を含む、スケール1と磁気センサ2との相対的位置関係に関連する物理量を精度よく検出することが可能になる。
[第2の実施の形態]
次に、図13および図14を参照して、本発明の第2の実施の形態について説明する。図13は、本実施の形態に係る磁気センサシステムの概略の構成を示す斜視図である。図14は、本実施の形態に係る磁気センサシステムの動作を示す説明図である。
本実施の形態に係る磁気センサシステムの構成は、以下の点で第1の実施の形態と異なっている。本実施の形態に係る磁気センサシステムでは、スケール1は、第1の実施の形態と同様に所定の中心軸Cを中心として回転する回転体であるが、本実施の形態における回転体は、磁性材料によって構成された複数の歯6aを有する歯車6である。磁気センサ2は、歯車6の外周面に対向する位置に配置されている。
本実施の形態に係る磁気センサシステムは、磁気センサ2に対する位置関係が一定である磁石7を備えている。図13および図14に示した例では、磁石7は、歯車6との間で磁気センサ2を挟む位置に配置されている。また、磁石7のN極が、歯車6に向いている。図14において、符号MF7を付した矢印は、磁石7より発生される磁束を表している。
磁気センサ2の第1の検出回路10は、第1の位置P1に配置され、第1の検出回路10に印加される第1の磁界MF1を検出する。磁気センサ2の第2の検出回路20は、第2の位置P2に配置され、第2の検出回路20に印加される第2の磁界MF2を検出する。磁気センサ2の第3の検出回路30は、第3の位置P3に配置され、第3の検出回路30に印加される第3の磁界MF3を検出する。
本実施の形態では、第1ないし第3の磁界MF1〜MF3は、磁石7によって発生され、且つ第1ないし第3の磁界MF1〜MF3の方向は、歯車6の回転に伴って変化する。図14において、符号MF1,MF2,MF3を付した白抜きの矢印は、それぞれ、第1ないし第3の磁界MF1〜MF3の磁界の方向を表している。第1ないし第3の磁界MF1〜MF3の方向は、第1ないし第3の検出回路10〜30を通過する際の磁束MF7の方向に対応している。
第1の実施の形態で説明したように、1ピッチとは、第1ないし第3の磁界MF1〜MF3の方向がそれぞれ1周期だけ変化するときのスケール1と磁気センサ2の相対的位置関係の変化量である。本実施の形態では、1ピッチは、回転体である歯車6の回転方向における角度で表される。具体的には、1ピッチは、歯車6における隣接する2つの歯6aの中心と中心軸Cとを結ぶ2つの直線がなす角度である。図13では、上記2つの直線を破線の直線で表し、上記2つの直線がなす角度を記号βで表している。図13に示した例では、角度βは15°である。この例では、歯車6が1回転すると、第1ないし第3の磁界MF1〜MF3の方向は、それぞれ24周期変化し、スケール1と磁気センサ2の相対的位置関係は、24ピッチ変化する。また、第1ないし第3の検出信号S1〜S3における1周期すなわち電気角の360°は、歯車6の1/24回転すなわち歯車6の回転角の15°に相当する。
図13に示したように、第1の位置P1と第3の位置P3の位置差dp1と、第2の位置P2と第3の位置P3の位置差dp2は、いずれも、角度βの1/4、すなわち1/4ピッチである。第1の方向D1について、第1ないし第3の位置P1〜P3のうち互いに最も離れた2つの位置は、第1の位置P1と第2の位置P2である。第1の方向D1について、第1の位置P1と第2の位置P2の位置差は、角度βの1/2、すなわち1/2ピッチである。
図14における(a),(b),(c),(d)は、スケール1と磁気センサ2の4つ相対的位置関係を示している。(a)は、歯車6の任意の1つの歯6aの中心が磁石7に最も近い位置にある状態を示している。(b)は、(a)に示した状態から歯車6が反時計回り方向に3°だけ回転した状態を示している。(c)は、(b)に示した状態から歯車6が反時計回り方向に4.5°だけ回転した状態を示しており、特に、(a)に示した状態から歯車6が反時計回り方向に1/2ピッチ(7.5°)だけ回転した状態を示している。(d)は、(c)に示した状態から歯車6が反時計回り方向に4.5°だけ回転した状態を示している。
第1ないし第3の磁界MF1〜MF3の方向は、歯車6の回転に伴って以下のように変化する。ここでは、歯車6における隣接する2つの歯6a1,6a2に着目する。図14において、(a)、(b)に示した状態では、歯6a1と磁石7との距離は、歯6a2と磁石7との距離よりも小さく、(c)に示した状態では、歯6a1と磁石7との距離と歯6a2と磁石7との距離は等しく、(d)に示した状態では、歯6a2と磁石7との距離は、歯6a1と磁石7との距離よりも小さい。
始めに、第1の磁界MF1の方向について説明する。まず、(a)に示した状態では、第1の磁界MF1の方向は、第1の位置P1から歯6a1に向く方向、すなわち図14における左下方向に向く。次に、歯車6が回転して、(b)に示した状態になると、第1の磁界MF1の方向は、第1の位置P1から歯6a1と歯6a2との間に向く方向、すなわち図14におけるほぼ下方向に向く。次に、歯車6が回転して、(c)に示した状態になると、第1の磁界MF1の方向は、第1の位置P1から歯6a2に向く方向、すなわち図14における右下方向に向く。次に、歯車6が回転して、(d)に示した状態になると、第1の磁界MF1の方向は、第1の位置P1から歯6a2に向く方向、すなわち図14におけるほぼ下方向に向く。
次に、第2の磁界MF2の方向について説明する。まず、(a)に示した状態では、第2の磁界MF2の方向は、第2の位置P2から歯6a1に向く方向、すなわち図14における右下方向に向く。次に、歯車6が回転して、(b)に示した状態になると、第2の磁界MF2の方向は、第2の位置P2から歯6a1に向く方向、すなわち図14におけるほぼ下方向に向く。次に、歯車6が回転して、(c)に示した状態になると、第2の磁界MF2の方向は、第2の位置P2から歯6a1に向く方向、すなわち図14における左下方向に向く。次に、歯車6が回転して、(d)に示した状態になると、第2の磁界MF2の方向は、第2の位置P2から歯6a1と歯6a2との間に向く方向、すなわち図14におけるほぼ下方向に向く。
次に、第3の磁界MF3の方向について説明する。まず、(a)に示した状態では、第3の磁界MF3の方向は、第3の位置P3から歯6a1に向く方向、すなわち図14における下方向に向く。次に、歯車6が回転して、(b)に示した状態になると、第3の磁界MF3の方向は、第3の位置P3から歯6a1に向く方向、すなわち図14における左下方向に向く。次に、歯車6が回転して、(c)に示した状態になると、第3の磁界MF3の方向は、第3の位置P3から歯6a1と歯6a2との間に向く方向、すなわち図14における下方向に向く。次に、歯車6が回転して、(d)に示した状態になると、第3の磁界MF3の方向は、第3の位置P3から歯6a2に向く方向、すなわち図14における右下方向に向く。
このように、第1ないし第3の磁界MF1〜MF3の方向は、歯車6の回転に伴って変化する。図14に示した例では、第1の磁界MF1の方向は、左下方向、下方向、右下方向、下方向の順に、周期的に変化する。また、第2の磁界MF2の方向は、右下方向、下方向、左下方向、下方向の順に、周期的に変化する。また、第3の磁界MF3の方向は、下方向、左下方向、下方向、右下方向の順に、周期的に変化する。
第1の検出回路10は、例えば、第1の磁界MF1の、図14における左右方向の成分の強度を検出して、その強度を表す第1の検出信号を出力する。第2の検出回路20は、例えば、第2の磁界MF2の、図14における左右方向の成分の強度を検出して、その強度を表す第2の検出信号を出力する。第3の検出回路30は、例えば、第3の磁界MF3の、図14における左右方向の成分の強度を検出して、その強度を表す第3の検出信号を出力する。第1の検出信号に対する第3の検出信号の位相差は90°である。第3の検出信号に対する第2の検出信号の位相差は90°である。第1の検出信号に対する第2の検出信号の位相差は180°である。
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。始めに、図15ないし図17を参照して、本実施の形態に係る磁気センサシステムの構成について説明する。図15は、本実施の形態に係る磁気センサシステムの概略の構成を示す斜視図である。図16は、本実施の形態に係る磁気センサシステムの概略の構成を示す平面図である。図17は、本実施の形態におけるスケールと第1ないし第3の検出回路を示す側面図である。
本実施の形態に係る磁気センサシステムの構成は、以下の点で第1の実施の形態と異なっている。図15ないし図17に示したように、本実施の形態では、第1の位置P1と第3の位置P3の位置差dp1、第2の位置P2と第3の位置P3の位置差dp2、および第1の位置P1と第2の位置P2の位置差が、第1の実施の形態と異なっている。本実施の形態では、位置差dp1,dp2は、いずれも、角度αの1/8、すなわち1/8ピッチである。第1の方向D1について、第1ないし第3の位置P1〜P3のうち互いに最も離れた2つの位置は、第1の位置P1と第2の位置P2である。第1の方向D1について、第1の位置P1と第2の位置P2の位置差は、角度αの1/4、すなわち1/4ピッチである。
第1の検出信号S1に対する第3の検出信号S3の位相差は45°である。第3の検出信号S3に対する第2の検出信号S2の位相差は45°である。第1の検出信号S1に対する第2の検出信号S2の位相差は90°である。
次に、図18ないし図21を参照して、本実施の形態における第1および第2の演算後信号について説明する。図18は、正転時の第1および第2の演算後信号Sa,Sbを示す波形図である。図19は、正転時の第1および第2の二値化信号DSa,DSbを示す波形図である。図20は、逆転時の第1および第2の演算後信号Sa,Sbを示す波形図である。図21は、逆転時の第1および第2の二値化信号DSa,DSbを示す波形図である。図18ないし図21における横軸と縦軸は、図9ないし図12におけるそれらと同じである。演算後信号Sa,Sbおよび二値化信号DSa,DSbの生成方法は、第1の実施の形態と同じである。
図18および図19に示したように、正転時には、第2の演算後信号Sbの位相は、第1の演算後信号Saの位相に対して45°だけ遅れ、第2の二値化信号DSbの位相は、第1の二値化信号DSaの位相に対して45°だけ遅れる。また、図20および図21に示したように、逆転時には、第2の演算後信号Sbの位相は第1の演算後信号Saの位相に対して45°だけ進み、第2の二値化信号DSbの位相は、第1の二値化信号DSaの位相に対して45°だけ進む。本実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様に、第1および第2の二値化信号DSa,DSbを用いて、磁石5の回転方向を検出したり、磁石5の回転位置や回転速度を算出したりすることが可能である。
本実施の形態では、第1ないし第3の位置P1〜P3は、第1の実施の形態よりも狭い範囲内に存在する。従って、本実施の形態によれば、第1の実施の形態で説明した効果が、より顕著に発揮される。
なお、本実施の形態における回転体は、第2の実施の形態で説明した歯車6であってもよい。本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1または第2の実施の形態と同様である。
[第4の実施の形態]
次に、図22を参照して、本発明の第4の実施の形態について説明する。図22は、本実施の形態に係る磁気センサシステムの概略の構成を示す斜視図である。本実施の形態に係る磁気センサシステムは、以下の点で第1の実施の形態と異なっている。本実施の形態に係る磁気センサシステムでは、スケール1は、交互に直線状に配列された複数組のN極とS極を有するリニアスケール8である。図22に示した例では、リニアスケール8は、N極とS極とが並ぶ方向に平行な側面8aを有している。磁気センサ2は、リニアスケール8の側面8aに対向する位置に配置されている。
リニアスケール8と磁気センサ2の一方は、図示しない動作体に連動して、直線的に移動する。これにより、スケール1と磁気センサ2との相対的位置関係が変化する。磁気センサシステムは、スケール1と磁気センサ2との相対的位置関係に関連する物理量として、磁気センサ2に対するリニアスケール8の相対的な位置や速度を検出する。スケール1と磁気センサ2との相対的位置関係が変化する方向である第1の方向D1は、リニアスケール8のN極とS極が並ぶ方向である。
磁気センサ2の第1の検出回路10は、第1の位置P1に配置され、第1の検出回路10に印加される第1の磁界を検出する。磁気センサ2の第2の検出回路20は、第2の位置P2に配置され、第2の検出回路20に印加される第2の磁界を検出する。磁気センサ2の第3の検出回路30は、第3の位置P3に配置され、第3の検出回路30に印加される第3の磁界を検出する。第1の方向D1について、第1ないし第3の位置P1〜P3は、互いに異なっている。図22に示した例では、第1ないし第3の位置P1〜P3は、図22における左側から、位置P1,P3,P2の順に並んでいる。しかし、本発明において、位置P1〜P3の配置の順番は、この例に限られない。側面8aに直交する方向と、図22における上下方向については、第1ないし第3の位置P1〜P3は同じである。
本実施の形態では、第1ないし第3の磁界は、リニアスケール8によって発生され、且つ第1ないし第3の磁界の方向は、リニアスケール8と磁気センサ2の相対的位置関係の変化に伴って変化する。図示しないが、第1の磁界の方向は、側面8aに垂直で第1の方向D1に平行な平面内において第1の位置P1を中心として回転する。また、第2の磁界の方向は、側面8aに垂直で第1の方向D1に平行な平面内において第2の位置P2を中心として回転する。また、第3の磁界の方向は、側面8aに垂直で第1の方向D1に平行な平面内において第3の位置P3を中心として回転する。
第1の実施の形態で説明したように、1ピッチとは、第1ないし第3の磁界の方向がそれぞれ1周期だけ変化するときのスケール1と磁気センサ2の相対的位置関係の変化量である。本実施の形態では、1ピッチは、リニアスケール8おける隣接する2つのN極の中心間の距離Lである。
本実施の形態では、第1の方向D1について、第1ないし第3の位置P1〜P3のうちの任意の2つの位置の位置差は、任意の2つの位置の間の距離で定義される。第1の位置P1と第3の位置P3の位置差dp1と、第2の位置P2と第3の位置P3の位置差dp2は、いずれも、距離Lの1/4、すなわち1/4ピッチである。第1の方向D1について、第1ないし第3の位置P1〜P3のうち互いに最も離れた2つの位置は、第1の位置P1と第2の位置P2である。第1の方向D1について、第1の位置P1と第2の位置P2の位置差は、距離Lの1/2、すなわち1/2ピッチである。
第1ないし第3の検出回路10〜30の各々は、第1の実施の形態で説明したMR素子50(図7参照)を含んでいる。第1ないし第3の検出回路10〜30は、そのMR素子50を構成する各層の面が、リニアスケール8の側面8aに対して平行になるように配置されている。
本実施の形態における第1ないし第3の検出回路10〜30の構成は、第1の実施の形態における図5に示した例と同じであってもよい。この場合、図5に示したX方向と、本実施の形態における第1の方向D1とが平行になり、図5に示したY方向と、リニアスケール8の側面8aに直交する方向とが平行になるように、第1ないし第3の検出回路10〜30を配置してもよい。
なお、第3の実施の形態と同様に、位置差dp1,dp2は、いずれも、距離Lの1/8、すなわち1/8ピッチであってもよい。この場合、第1の位置P1と第2の位置P2の位置差は、距離Lの1/4、すなわち1/4ピッチである。本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1または第3の実施の形態と同様である。
なお、本発明は、上記各実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、第1の演算後信号Saを生成するための演算と第2の演算後信号Sbを生成するための演算の内容は、各実施の形態に示した例に限られず、請求の範囲の要件を満たすものであればよい。第1の演算後信号Saと第2の演算後信号Sbの少なくとも一方は、第1ないし第3の検出信号S1,S2,S3を用いた演算によって生成してもよい。例えば、S1−(S2+S3)/√2を含む演算によって第1の演算後信号Saを生成し、S2−(S1+S3)/√2を含む演算によって第2の演算後信号Sbを生成してもよい。
1…スケール、2…磁気センサ、5,7…磁石、6…歯車、8…リニアスケール、10…第1の検出回路、20…第2の検出回路、30…第3の検出回路、40…演算部、41,42…演算回路、43…データ処理回路、50…MR素子、53…磁化固定層、54…非磁性層、55…自由層。

Claims (8)

  1. 第1の方向に相対的位置関係が変化し得るスケールと磁気センサとを備え、前記スケールと前記磁気センサとの相対的位置関係に関連する物理量を検出するための磁気センサシステムであって、
    前記磁気センサは、第1の位置に配置された第1の検出回路と、第2の位置に配置された第2の検出回路と、第3の位置に配置された第3の検出回路とを有し、
    前記第1の検出回路は、第1の検出回路に印加される第1の磁界に応じて変化する第1の検出信号を出力し、
    前記第2の検出回路は、第2の検出回路に印加される第2の磁界に応じて変化する第2の検出信号を出力し、
    前記第3の検出回路は、第3の検出回路に印加される第3の磁界に応じて変化する第3の検出信号を出力し、
    前記第1ないし第3の検出回路の各々は、磁気抵抗効果素子を含み、
    前記磁気抵抗効果素子は、磁化方向が固定された磁化固定層と、印加される磁界に応じて磁化が変化する自由層と、前記磁化固定層と前記自由層の間に配置された非磁性層とを有し、
    前記第1ないし第3の磁界の方向は、いずれも、前記スケールと前記磁気センサの相対的位置関係の変化に応じて周期的に変化し、
    前記第1ないし第3の磁界の方向がそれぞれ1周期だけ変化するときの前記スケールと前記磁気センサの相対的位置関係の変化量を1ピッチとしたとき、前記スケールと前記磁気センサの相対的位置関係は、2ピッチ以上変化可能であり、
    前記第1の方向について、前記第1ないし第3の位置のうち互いに最も離れた2つの位置の差は、1ピッチ以内であり、
    前記第1ないし第3の検出信号は、前記スケールと前記磁気センサの相対的位置関係の変化に応じて周期的に変化し、且つ互いに位相が異なり、
    前記磁気センサシステムは、更に、少なくとも前記第1の検出信号および前記第3の検出信号を用いた演算によって第1の演算後信号を生成すると共に、少なくとも前記第2の検出信号および前記第3の検出信号を用いた演算によって第2の演算後信号を生成する演算部を備え、
    前記第1の演算後信号と前記第2の演算後信号は、前記スケールと前記磁気センサの相対的位置関係の変化に応じて周期的に変化し、且つ互いに位相が異なることを特徴とする磁気センサシステム。
  2. 前記第1の方向について、前記第1ないし第3の位置のうち互いに最も離れた2つの位置の差は、1/2ピッチ以内であることを特徴とする請求項1記載の磁気センサシステム。
  3. 前記第1の演算後信号は、前記第1の検出信号と前記第3の検出信号の差を求めることを含む演算によって生成され、前記第2の演算後信号は、前記第2の検出信号と前記第3の検出信号の差を求めることを含む演算によって生成されることを特徴とする請求項1記載の磁気センサシステム。
  4. 前記スケールは、所定の中心軸を中心として回転する回転体であり、
    前記回転体が回転することによって、前記スケールと前記磁気センサとの相対的位置関係が変化し、
    前記第1の方向は、前記回転体の回転方向であり、
    前記1ピッチは、前記回転体の回転方向における角度で表されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の磁気センサシステム。
  5. 前記回転体は、円周方向に交互に配列された複数組のN極とS極を有し、
    前記第1ないし第3の磁界は、前記回転体によって発生され、且つ前記第1ないし第3の磁界の方向は、前記回転体の回転に伴って変化し、
    前記1ピッチは、前記回転体における隣接する2つのN極の中心と前記中心軸とを結ぶ2つの直線がなす角度であることを特徴とする請求項4記載の磁気センサシステム。
  6. 前記回転体は、磁性材料によって構成された複数の歯を有する歯車であり、
    前記磁気センサシステムは、更に、前記磁気センサに対する位置関係が一定である磁石を備え、
    前記第1ないし第3の磁界は、前記磁石によって発生され、且つ前記第1ないし第3の磁界の方向は、前記歯車の回転に伴って変化し、
    前記1ピッチは、隣接する2つの歯の中心と前記中心軸とを結ぶ2つの直線がなす角度であることを特徴とする請求項4記載の磁気センサシステム。
  7. 前記スケールは、交互に直線状に配列された複数組のN極とS極を有し、
    前記第1の方向は、前記スケールのN極とS極が並ぶ方向であり、
    前記第1ないし第3の磁界は、前記スケールによって発生され、
    前記1ピッチは、前記スケールにおける隣接する2つのN極の中心間の距離であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の磁気センサシステム。
  8. 前記非磁性層は、トンネルバリア層であることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の磁気センサシステム。
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