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JP2014014739A - 複合半透膜エレメントの製造方法および複合半透膜エレメント - Google Patents

複合半透膜エレメントの製造方法および複合半透膜エレメント Download PDF

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JP2014014739A JP2012152179A JP2012152179A JP2014014739A JP 2014014739 A JP2014014739 A JP 2014014739A JP 2012152179 A JP2012152179 A JP 2012152179A JP 2012152179 A JP2012152179 A JP 2012152179A JP 2014014739 A JP2014014739 A JP 2014014739A
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Kazuya Sugita
和弥 杉田
Koji Fujiwara
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Abstract

【課題】海水などの高濃度原水の処理に際し、膜の分離特性の変化が小さく、高圧で運転した際の性能の経時変化が小さい複合半透膜エレメントを提供する。
【解決手段】多孔性支持体及びそれに支持された薄膜からなる複合半透膜を含む複合半透膜エレメントであって、前記複合半透膜は、温度T[℃]と圧力P[MPa]が式(1)から式(3)の全てを満たす液体を用いて、2時間以上圧密化処理が行われたものであることを特徴とする複合半透膜エレメント。
T×P≦300 ・・・式(1)
6.0≦P≦8.3 ・・・式(2)
30≦T≦50 ・・・式(3)
【選択図】 なし

Description

本発明は、高圧下で使用しても経時的な性能変化が少なく、安定運転可能な複合半透膜エレメントおよびその製造方法に関する。
現在、工業的に広く利用されている半透膜には非対称膜型の酢酸セルロース膜と多孔性支持体上に活性な分離機能層を形成した複合半透膜が知られている。しかし、前者の酢酸セルロース膜は耐加水分解性、耐微生物性などに問題があり、塩排除率、水透過性も十分ではないことから、一部の用途には使用されているものの広範囲の用途に実用化されるには至っていない。
これに対し複合半透膜では、分離機能層と多孔性支持体の各々に最適な素材を選択する事が可能であり、製膜技術も種々の方法を選択できる。
現在市販されている複合半透膜は多孔性支持体上でモノマーを界面重縮合した分離機能層を有するものが主流となっている。これらの複合半透膜では酢酸セルロース非対称膜よりも高い脱塩性能が得られ、さらにこれらの膜は殺菌に用いられる塩素、過酸化水素に対する耐久性も向上されつつあり用途が広がってきている。
半透膜による分離を行うに際しては、供給水側の浸透圧と透過水側の浸透圧の差以上の圧力を供給水側にかけることが必要であり、特に供給水の溶質濃度が高く、浸透圧が高い場合には高い圧力を操作圧力として必要とする。さらに、供給水に対する透過水の量の割合(これを回収率という)が高くなると濃縮水の溶質濃度が高くなるため高い圧力を操作圧力として必要とする。例えば海水淡水化の場合、濃度3.5重量%の海水の浸透圧は2.5MPaであり、回収率40%で淡水化を行うと濃縮水の濃度は約6重量%で、その濃縮水の浸透圧(約4.4MPa)以上の操作圧力が必要である。透過水の水質と水量を十分に得るためには、実際には濃縮水の浸透圧よりも約2MPa(この圧力を有効圧力と呼ぶ)程度高めの圧力を濃縮水側に加えることが必要である。従来の一般的な海水淡水化では6〜6.5MPa程度の圧力をかけて回収率40%程度の条件で運転されている。一方、高濃度溶液の分離・濃縮の場合など7MPa以上の圧力で半透膜装置が運転されている場合もある。
一般的に半透膜に圧力をかけると半透膜は圧密化を起こすが、圧力を除くともとの形態に戻る。しかし、限界圧力以上の圧力を加えると非対称膜あるいは微多孔質膜のボイドが潰れたり、分離機能層がさらに緻密化したりして膜形態、膜性能が変化するおそれがある。具体的には半透膜の膜透過係数が小さくなることで、透過流束が低下し安定運転ができないおそれがある。
通常、スペック通りの半透膜エレメントを使って設計されたプラントで、圧密化により設計流量が得られなくなった場合には、生産水量を確保するために、さらに圧力を大きくする場合が多いため、半透膜エレメントの破損や、配管、機器類の故障を引き起こす可能性がある。
また、長期運転での圧密化を見込んで初期の透過流束が高い半透膜エレメントを採用することも可能であるが、この場合、圧密化が完了していない初期の運転では、圧密化後の期待値に比べ、運転圧力が低くなり、生産水質も悪くなる。高圧ポンプは圧密化後の圧力に対応可能な大型のものであるため、バルブによる圧力調整が必要となり、配管の振動や騒音等で装置自体や、周りの環境への影響が非常に大きくなる。
このような問題を解決するため、多孔性支持体の構造を変更したもの(特許文献1)や透過水流路材の構造を変えたもの(特許文献2,3)、あらかじめ半透膜に高圧力をかけて圧密化させたもの(特許文献4,5)も提案されているが、いずれも充分な耐圧性を有しておらず、操業にしたがい初期の性能に変化が生じるなど安定な運転ができなかった。
特開平8−168658号公報 特開平9−141060号公報 特開平9−141067号公報 特開2000−288368号公報 特開2002−95941号公報
本発明の目的は、このような従来技術の課題を解決するためになされたものであって、高圧、特に6MPa以上の高圧下でも安定した運転が可能な複合半透膜を組み込んだ複合半透膜エレメントを提供することにある。
上記課題を解決するための本発明は、以下の(1)〜(6)の実施態様に関する。
(1)多孔性支持体及びそれに支持された薄膜からなる複合半透膜を含む複合半透膜エレメントの製造方法であって、前記複合半透膜を、温度T[℃]と圧力P[MPa]が式(1)から式(3)の全てを満たす液体を用いて、2時間以上圧密化処理を行う工程を含むことを特徴とする複合半透膜エレメントの製造方法。
T×P≦300 ・・・式(1)
6.0≦P≦8.3 ・・・式(2)
30≦T≦50 ・・・式(3)
(2)前記液体の浸透圧が3MPa以上である前記(1)に記載の複合半透膜エレメントの製造方法。
(3)前記多孔性支持体が基材上に多孔質層を設けてなり、圧密化処理後の前記多孔質層の厚みが、圧密化処理前の前記多孔質層の厚みと比べて10%以上減少するまで圧密化処理を行うことを特徴とする前記(1)または(2)に記載の複合半透膜エレメントの製造方法。
(4)多孔性支持体及びそれに支持された薄膜からなる複合半透膜を含む複合半透膜エレメントであって、前記複合半透膜は、温度T[℃]と圧力P[MPa]が式(1)から式(3)の全てを満たす液体を用いて、2時間以上圧密化処理が行われたものであることを特徴とする複合半透膜エレメント。
T×P≦300 ・・・式(1)
6.0≦P≦8.3 ・・・式(2)
30≦T≦50 ・・・式(3)
(5)前記液体の浸透圧が3MPa以上である前記(4)に記載の複合半透膜エレメント。
(6)前記多孔性支持体が基材上に多孔質層を設けてなり、圧密化処理後の前記多孔質層の厚みが、圧密化処理前の前記多孔質層の厚みと比べて10%以上減少したものであることを特徴とする前記(4)または(5)に記載の複合半透膜エレメント。
本発明の複合半透膜は高圧で使用する場合にも優れた耐圧性を有し、運転中の透過水量の低下を抑制し、安定して透過水量を維持することができる。特に、海水などの高濃度の原液を処理する場合に適しており、安定した運転をすることができる。さらには、装置の振動等を抑制するとともに、設計段階で予想された水質よりも水質の改善も期待できる。
実施例で用いた複合半透膜エレメントの概略構成図である。
本発明で用いられる多孔性支持体は、複合半透膜の分離機能層を支持するものであり、基材と多孔質層からなる。基材としてはポリエステルなどの織布あるいは不織布が用いられ、製膜原液である重合体の有機溶媒を基材上に流延し、前記重合体に対して非溶媒性の凝固浴に浸漬することによって基材上に多孔質層が設けられた多孔性支持体が得られる。
多孔質層の素材は特に限定されるものではないが、例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリイミド、ポリフッ化ビニリデンなどのホモポリマーあるいはブレンドしたものが挙げられるが、化学的、機械的、熱的に安定であるポリスルホン、ポリエーテルスルホンが好ましく用いられる。
多孔質層を形成するための製膜原液は、重合体を溶解させることのできる溶媒であればよく、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ピリジン等の含窒素化合物、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等の多価アルコールおよびその誘導体、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチルブチルエーテル等のエーテル、アセタール類などを用いることができる。これらの溶媒は単独で用いてもよく、また、2種以上を混合して用いてもよい。さらに貧溶媒である水やメタノール、エタノール等のアルコールや、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化リチウム等の無機塩を添加しても良い。
これらの溶媒の重合体の濃度は30重量%以下であることが好ましい。さらに好ましくは10〜20重量%である。重合体濃度がこの範囲より高いと透水性が著しく低下してしまう。逆に低いと製膜原液がゲル化したり、多孔質層内に欠点が発生したりし、膜性能が不安定になりやすい。
製膜原液の基材への塗布方法は、製膜原液が基材上に均一かつ連続的にぬれれば良いが、例えばコーターを用いて製膜原液を基材にコーティングする方法が挙げられる。基材上に一定の厚みでコーティングするために、基材とコーターの隙間が一定になるように調整する。
基材にコーティングされた製膜原液は凝固浴に浸漬させることにより多孔質層を形成する。使用する凝固浴としては、通常水が使われるが、重合体を溶解しないものであれば良い。凝固浴の組成によって多孔質層の膜形態が変化し、それによって複合半透膜の膜形成性も変化する。
次にこのようにして得られた多孔性支持体を、膜中に存在する製膜溶媒を除去するために熱水洗浄を行う。このときの熱水の温度は50〜100℃が好ましく、さらに好ましくは60〜95℃である。この範囲より高いと、多孔性支持体の収縮度が大きくなり、透水性が低下してしまう。逆に低いと洗浄効果が小さくなる。
上記の多孔性支持体の厚みおよび基材の厚みは、複合半透膜の強度およびそれをエレメントにしたときの充填密度に影響を与える。十分な機械的強度および充填密度を得るためには、多孔性支持体の厚みは50〜300μmの範囲内にあることが好ましく、より好ましくは100〜250μmの範囲内である。また、多孔性支持体における多孔質層の厚みは、20〜120μmの範囲内にあることが好ましく、より好ましくは30〜100μmの範囲内である。
次に、本発明に係る複合半透膜を製造する方法について説明する。
複合半透膜を構成する分離機能層は、逆浸透膜の素材としては、酢酸セルロース系ポリマー、ポリエステル、ポリイミド、ビニルポリマーなどの高分子素材が、一般的に使用されているが、その他にも、多官能アミン水溶液と、多官能酸ハロゲン化物とを微多孔性支体の表面で界面重縮合させることによりその骨格を形成させてなるものであり、即ち、微多孔性支持体上に多官能アミン水溶液を接触させた後、多官能酸ハロゲン化物の、水と非混和性の有機溶媒溶液を接触させ、界面重縮合を生じさせることによって形成される架橋ポリアミド分離機能層を挙げることができる。
ここで、多官能アミンとは、一分子中に少なくとも2個の一級および/または二級アミノ基を有するアミンをいい、たとえば、2個のアミノ基がオルト位やメタ位、パラ位のいずれかの位置関係でベンゼンに結合したフェニレンジアミン、キシリレンジアミン、1,3,5−トリアミノベンゼン、1,2,4−トリアミノベンゼン、3,5−ジアミノ安息香酸などの芳香族多官能アミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミンなどの脂肪族アミン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、ピペラジン、1,3−ビスピペリジルプロパン、4−アミノメチルピペラジンなどの脂環式多官能アミン等を挙げることができる。中でも、膜の選択分離性や透過性、耐熱性を考慮すると芳香族多官能アミンであることが好ましく、このような多官能芳香族アミンとしては、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、1,3,5−トリアミノベンゼンが好適に用いられる。中でも、入手の容易性や取り扱いのしやすさから、m−フェニレンジアミン(以下、m−PDAと記す)を用いることがより好ましい。これらの多官能アミンは、単独で用いても良いし、混合して用いてもよい。
また、多官能酸ハロゲン化物とは、一分子中に少なくとも2個のハロゲン化カルボニル基を有する酸ハロゲン化物をいう。例えば、3官能酸ハロゲン化物では、トリメシン酸クロリド、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸トリクロリド、1,2,4−シクロブタントリカルボン酸トリクロリドなどを挙げることができ、2官能酸ハロゲン化物では、ビフェニルジカルボン酸ジクロリド、ビフェニレンカルボン酸ジクロリド、アゾベンゼンジカルボン酸ジクロリド、テレフタル酸クロリド、イソフタル酸クロリド、ナフタレンジカルボン酸クロリドなどの芳香族2官能酸ハロゲン化物、アジポイルクロリド、セバコイルクロリドなどの脂肪族2官能酸ハロゲン化物、シクロペンタンジカルボン酸ジクロリド、シクロヘキサンジカルボン酸ジクロリド、テトラヒドロフランジカルボン酸ジクロリドなどの脂環式2官能酸ハロゲン化物を挙げることができる。多官能アミンとの反応性を考慮すると、多官能酸ハロゲン化物は多官能酸塩化物であることが好ましく、また、膜の選択分離性、耐熱性を考慮すると、多官能芳香族酸塩化物であることが好ましい。中でも、入手の容易性や取り扱いのしやすさの観点から、トリメシン酸クロリドを用いるとより好ましい。これらの多官能酸ハロゲン化物は、単独で用いても良いし、混合して用いてもよい。
ここで、多官能アミン水溶液における多官能アミンの濃度は2.5〜10重量%の範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは3〜5重量%の範囲内である。この範囲であると十分な塩除去性能および透水性を得ることができる。多官能アミン水溶液には、多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物との反応を妨害しないものであれば、界面活性剤や有機溶媒、アルカリ性化合物、酸化防止剤などが含まれていてもよい。界面活性剤は、多孔性支持体表面の濡れ性を向上させ、アミン水溶液と非極性溶媒との間の界面張力を減少させる効果があり、有機溶媒は界面重縮合反応の触媒として働くことがあり、添加することにより界面重宿合反応を効率よく行える場合がある。
界面重縮合を多孔性支持体上で行うために、まず、上述の多官能アミン水溶液を多孔性支持体に接触させる。接触は、多孔性支持体表面に均一にかつ連続的に行うことが好ましい。具体的には、たとえば、多官能アミン水溶液を多孔性支持体にコーティングする方法や多孔性支持体を多官能アミン水溶液に浸漬する方法を挙げることができる。多孔性支持体と多官能アミン水溶液との接触時間は、1〜10分間の範囲内であることが好ましく、1〜3分間の範囲内であるとさらに好ましい。
多官能アミン水溶液を多孔性支持体に接触させたあとは、表面に液滴が残らないように十分に液切りする。十分に液切りすることで、膜形成後に液滴残存部分が膜欠点となって膜性能が低下することを防ぐことができる。液切りの方法としては、たとえば、特開平2−78428号公報に記載されているように、多官能アミン水溶液接触後の多孔性支持体を垂直方向に把持して過剰の水溶液を自然流下させる方法や、エアーノズルから窒素などの風を吹き付け、強制的に液切りする方法などを用いることができる。また、液切り後、膜面を乾燥させ、水溶液の水の一部を除去することもできる。
次いで、多官能アミン水溶液接触後の支持膜に、多官能酸ハロゲン化物を含む有機溶媒溶液を接触させ、界面重縮合により架橋ポリアミド分離機能層の骨格を形成させる。
有機溶媒溶液中の多官能酸ハロゲン化物の濃度は、0.01〜10重量%の範囲内であると好ましく、0.02〜2.0重量%の範囲内であるとさらに好ましい。この範囲であると、十分な反応速度が得られ、また副反応の発生を抑制することができる。さらに、この有機溶媒溶液にN,N−ジメチルホルムアミドのようなアシル化触媒を含有させると、界面重縮合が促進され、さらに好ましい。
有機溶媒としては、水と非混和性の有機溶媒を用いる。水と非混和性の有機溶媒の中でも、酸ハロゲン化物を溶解し多孔性支持体を破壊しない有機溶媒が望ましく、アミノ化合物および酸ハロゲン化物に対して不活性であるものであればよい。好ましい例としては、たとえば、n−ヘキサン、n−オクタン、n−デカンなどの炭化水素化合物が挙げられる。
多官能酸ハロゲン化物の有機溶媒溶液のアミノ化合物水溶液相への接触の方法は、多官能アミン水溶液の多孔性支持体への被覆方法と同様に行えばよい。
上述したように、酸ハロゲン化物の有機溶媒溶液を接触させて界面重縮合を行い、多孔性支持体上に架橋ポリアミドを含む分離機能層を形成したあとは、余剰の溶媒を液切りするとよい。液切りの方法は、たとえば、膜を垂直方向に把持して過剰の有機溶媒を自然流下して除去する方法を用いることができる。この場合、垂直方向に把持する時間としては、1〜5分間の間にあることが好ましく、1〜3分間であるとより好ましい。この範囲であれば、分離機能層が完全に形成し、有機溶媒の過乾燥による欠点発生も起こしにくくなる。
上述の方法により得られた複合半透膜は、50〜150℃の範囲内、好ましくは70〜130℃の範囲内で1〜10分間、より好ましくは2〜8分間、熱水処理する工程などを経ることにより、複合半透膜の排除性能や透水性をより一層向上させてもよい。
このような複合半透膜面上に、有機物、及び/又は有機重合体、好適には、非イオン系の親水性基を有する有機物、及び/又は有機重合体の溶液を塗布し、その後に乾燥させて複合半透膜を得ることも、耐汚染性等の改善に際し有効である。
上では本発明に係る複合半透膜を構成する分離機能層として、架橋ポリアミド分離機能層について詳述したが、例えば、酢酸セルロース系の素材では、膜の少なくとも片側に緻密層を持ち、該緻密層から膜内部あるいはもう片方の面に向けて徐々に大きな孔径の微細孔を有する非対称膜を作ることで半透膜を形成することができる。
本発明に用いられる複合半透膜エレメントとは、上記半透膜を実際に使用するために形態化したものであり、半透膜の膜形態が平膜の場合は、スパイラル、チューブラー、プレート・アンド・フレームのモジュールに組み込んで使用することができるが、本発明はこれらの形態に左右されるものではない。
また、半透膜エレメントとして、前記スパイラル形状を用いる場合、供給水の流路材、透過水の流路材などの部材が当該モジュールに組み込まれており、特に、高濃度用、高圧用に設計された半透膜エレメントとして好ましく用いられる。
本発明は、このようにして製造される複合半透膜エレメントについて、複合半透膜エレメントに組み込まれる複合半透膜に対して圧密化処理を行うことを特徴とする。圧密化処理の方法としては、高濃度の液体を用いて6MPa以上の圧力および30℃以上の温度にて、水などの液体を媒体として2時間以上行う方法であれば特に限定されない。この時の圧密化処理方法としては、複合半透膜エレメントを構成する前の複合半透膜に対して圧密化処理を行っても構わないし、複合半透膜エレメントを構成した後に組み込まれた複合半透膜について所望の圧密化処理がなされるように処理を行うことで本発明の複合半透膜エレメントを得る方法でも構わない。
複合半透膜エレメント構成後に行う圧密化処理は、耐圧性の容器に複合半透膜あるいは複合半透膜エレメントを入れ密閉し、その中に気体、または液体を封入していき温度、圧力を上昇させて一定時間処理を行う。一定時間経過後、温度、圧力を常温、常圧に戻し、耐圧容器を開けて、中から圧密化処理された複合半透膜、あるいは複合半透膜エレメントを取り出す。
複合半透膜エレメント作製の効率化という観点から、圧密化処理は複合半透膜エレメント構成後に圧密化処理を行うほうが好ましく、この場合は、水などの液体を媒体として行うのが好ましい。
本発明において、圧密化処理を行うときの温度T[℃]と圧力P[MPa]は、式(1)から式(3)を満たす範囲内で適宜選択される。
T×P≦300 ・・・式(1)
6.0≦P≦8.3 ・・・式(2)
30≦T≦50 ・・・式(3)
圧密化処理では特に温度と圧力の設定が重要であるが、圧力と温度の両方とも高い条件で実施した場合、複合半透膜への影響が大きいばかりで無く、複合半透膜エレメントの構成部材にも変形等の影響を及ぼす可能性があるため、本発明では式(1)で示す関係を満たす条件で処理することを特徴とする。
圧密化処理を行うときの圧力は高い方が好ましいが、あまり高いと圧密化処理により透過水量の低下が大きくなりすぎて好ましくない。本発明では圧密化処理を6MPa以上8.3MPa以下で行うことを特徴とする。6MPa未満では圧密化の効果が小さく、8.3MPaを超えると、複合半透膜エレメント自体が変形等を起こす可能性がある。
また、圧密化処理を行うときの温度は、媒体の液体が揮発しない程度の範囲が好ましく、特に複合半透膜エレメントを構成した後に圧密化処理を行う場合、複合半透膜エレメントに影響を与えない観点から、本発明では30℃以上50℃以下の範囲で行うことを特徴とする。30℃未満では圧密化の効果が小さく、50℃を超えると複合半透膜エレメントの各種部材への影響が大きく、変形や破損等が発生する可能性がある。
なお、本発明における圧密化処理は、圧密化処理後の多孔質層の厚みが、圧密化処理前の多孔質層の厚みと比べて10%以上減少するまで実施することが好ましい。
また、多孔質層の厚みの減少率が次式を満たすように減少率を設定することが好ましい。
減少率[%]≦40×Ln(圧密化処理前の多孔質層厚さ[μm])−102・・・式(4)
これより減少率が大きくなると、透水性の低下が大きくなってしまう。
多孔質層はその中にスポンジ状の隙間を有しているため、高圧運転の継続により圧縮変形を受けるとともに、透水性の低下を引き起こすが、圧密化処理を実施し、多孔質層が初期の10%以上減少することで、多孔質層の隙間が減少し、その後の高圧運転でも透水性の低下を小さくし、安定運転することが可能となる。
また、多孔質層の厚みは、走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡で、断面を観察することによって、求めることができる。例えば走査型電子顕微鏡の断面写真の場合は、膜サンプルを液体窒素に漬けて凍結させたものを、製膜原液を流延させた方向に対して垂直に割断して乾燥させた後、膜断面に白金/パラジウムまたは四酸化ルテニウム、好ましくは四酸化ルテニウムを薄くコーティングして1〜6kVの加速電圧で高分解能電界放射型走査電子顕微鏡(UHR−FE−SEM)で観察する。最適な観察倍率は膜断面全体が観察できる倍率であればよいが、例えば多孔質層の膜厚が60μmであれば、100〜5,000倍が好ましい。
圧密化処理で使用する液体は複合半透膜に影響を与えないものであれば適宜選択されるが、水、あるいはNaCl、KClなどの無機塩の水溶液や、メタノール、エタノール等のアルコール水溶液などを使用するのが好ましい。
圧密化処理では6MPa以上の圧力で液体を複合半透膜エレメントに供給するが、使用する液体の濃度が低すぎると複合半透膜エレメントを透過する液体の量が多くなり、複合半透膜エレメントが装置内の不純物により性能低下してしまう可能性がある。
これを防ぐ1つの方法として、圧密化処理で使用する液体の濃度を増加させることが有効であり、圧密化処理で使用する液体の浸透圧は3MPa以上であることが好ましい。
浸透圧はファントホッフの式で計算され、液体の浸透圧と濃度は相関関係があり、3MPa以上の浸透圧にするには液体の濃度を高濃度にする必要がある。3MPaの浸透圧として、例えば3.8%NaCl水溶液や4.9%KCl水溶液等が挙げられる。
通常圧密化処理は、エレメントから出てきた透過水と濃縮水を原水に戻して循環系で実施されるが、すべて循環で圧密化処理を行うことができない場合には、あらかじめ濁質等の不純物が除去された海水等の高濃度の液体を使って、濃縮水を一部循環させて実施することもできる。通常3.5%濃度の海水の浸透圧は2.4MPa程度であるが、エレメントを通った濃縮水の一部を原水側に循環して戻すことで、エレメント内に流入する原水の濃度を増加させ、3MPa以上の浸透圧に増加させることができる。この時の濃度の調節方法は、循環させる濃縮水の量を適宜調整することで実施することができる。
圧密化処理で使用する液体のSDIは3.0以下であることが好ましい。このSDIは、ASTM(American Standard Test Method)がD4189−95で定めている水質指標で、細孔径0.45μmの精密濾過フィルターに一定圧力30psi(207kPa)で通水して、一定時間経過後に透水性の低下度合いを次式で示される数値として表すものである。
Figure 2014014739
ここで、tは濾過開始直後から500mlの濾過水を得るまでの時間(秒)であり、tは濾過開始s秒後から500mlの濾過水を得るまでの時間(秒)である。
SDIが高いと液体中の不純物の量が多いと判断でき、SDIが3.0を超える液体を使った場合、エレメントが汚れて性能低下してしまう。
圧密化処理は少なくとも2時間以上実施することが好ましい。2時間以下では処理が不十分であり、運転中の性能変化が大きくなる可能性がある。
このようにして得られたROエレメントは高圧が必要とされる海水等の淡水化において、性能低下が少なく安定運転への寄与が期待されるが、運転の継続に伴い、例えば塩素による酸化劣化や強いアルカリ性液体によるアルカリ加水分解によって、長期継続的もしくは突発的に膜劣化を引き起こし、除去率が低下する場合がある。
このような場合に除去率を向上させる性能回復方法として、例えば運転開始後の半透膜に対し、ノニオン系界面活性剤やカチオン系界面活性剤を接触させることで除去率を改善させる方法や、半透膜に対しヨウ素を接触させる方法、さらに、分子量4000〜50000のポリエチレングリコールを接触させる方法、さらに、タンニン酸を半透膜に接触させる方法が挙げられる。
以下に、具体的実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
(実施例1)
多孔性支持体として厚さ95μmのポリエステル不織布(通気度0.5〜1cc/cm/sec)上に、ポリスルホンの15.7重量%ジメチルホルムアミド(DMF)溶液を200μmの厚みで室温(25℃)にてキャストし、ただちに純水凝固液中に浸漬して5分間放置することによって多孔性支持体(多孔質層厚さ60μm)を作製した。このようにして得られた多孔性支持体をm−フェニレンジアミン3.8重量%水溶液中に2分間浸漬した。次に多孔性支持体を引き上げ、窒素を吹き付け多孔性支持体表面から余分な水溶液を取り除いた後、トリメシン酸クロリド0.175重量%のn-デカン溶液を表面が完全に濡れるように塗布して静置し、その後、膜から余分な溶液を除去するために、膜を垂直に立てて液切りした。その後、90℃の熱水で2分間洗浄することで複合半透膜を得た。
得られた複合半透膜を用いて、これを袋状にスパイラル型に巻囲して複合半透膜エレメントとした。図1は、本発明の複合半透膜エレメントを示している。複合半透膜エレメント1は、集水孔2を有する集水管3の周りに、複合半透膜4と透過液流路材5と原液流路材6とを含む膜ユニット7がスパイラル状に巻回されており、その膜ユニット7の外側に外装体8が形成されて流体分離素子9が構成されている。この流体分離素子9の端面には流体分離素子9がテレスコープ状に変形することを防止するためのテレスコープ防止板10が装着され、複合半透膜エレメント1となる。
この複合半透膜エレメントの性能は圧力5.5MPa、原水3.2%食塩水、回収率8%、温度25℃、pH7のときに脱塩率99.8%、造水量30m3/dであった。このときの多孔質層の厚さは60μmであった。
この複合半透膜エレメントを濃度5.3%の食塩水(浸透圧4.2MPa)を用いて温度35℃、圧力8MPa(温度T[℃]×圧力P[MPa]=280≦300)で3hr圧密化処理を行った後、再度同条件で性能評価を行ったところ、脱塩率99.8%、造水量25m3/dであった。また、圧密化処理後の多孔質層の厚さは35μmであり、圧密化処理前の多孔質層の厚みと比べて42%減少していた。
このエレメントを使って海水を原水として5.5MPa、25℃で約1ヶ月の連続運転を行ったところ、1ヶ月後の性能は脱塩率99.7%、造水量24m3/dで性能に大きな変化は見られなかった。結果を表1に示す。
Figure 2014014739
(実施例2)
圧密化処理時の圧力を6.0MPaに変化させた以外は実施例1と同条件で行った(温度T[℃]×圧力P[MPa]=210≦300)。結果を表1に示す。この時の多孔質層の厚さは38μmであり、圧密化処理前の多孔質層の厚みと比べて37%減少していた。
(比較例1)
圧密化処理時の圧力を4.0MPaに変化させた以外は実施例1と同条件で行った(温度T[℃]×圧力P[MPa]=140≦300)。結果を表1に示す。この時の多孔質層の厚さは55μmであり、圧密化処理前の多孔質層の厚みと比べて8%しか減少していなかった。
(実施例3)
圧密化処理時の温度を30℃に変化させた以外は実施例1と同条件で行った(温度T[℃]×圧力P[MPa]=240≦300)。結果を表1に示す。この時の多孔質層の厚さは41μmであり、圧密化処理前の多孔質層の厚みと比べて32%減少していた。
(実施例4)
圧密化処理時の温度を45℃に変化させ、圧力を6.0MPaに変更させた以外は実施例1と同条件で行った(温度T[℃]×圧力P[MPa]=270≦300)。結果を表1に示す。この時の多孔質層の厚さは40μmであり、圧密化処理前の多孔質層の厚みと比べて33%減少していた。
(比較例2)
圧密化処理時の温度を25℃に変化させた以外は実施例1と同条件で行った(温度T[℃]×圧力P[MPa]=200≦300)。結果を表1に示す。この時の多孔質層の厚さは56μmであり、圧密化処理前の多孔質層の厚みと比べて7%しか減少していなかった。
(実施例5)
圧密化処理時のNaCl濃度を4.0%(浸透圧3.2MPa)に変化させた以外は実施例1と同条件で行った(温度T[℃]×圧力P[MPa]=280≦300)。結果を表1に示す。この時の多孔質層の厚さは39μmであり、圧密化処理前の多孔質層の厚みと比べて35%減少していた。
(比較例3)
圧密化処理時の処理時間が0.5hrである以外は実施例1と同条件で行った(温度T[℃]×圧力P[MPa]=280≦300)。結果を表1に示す。この時の多孔質層の厚さは56μmであり、圧密化処理前の多孔質層の厚みと比べて7%しか減少していなかった。
1:複合半透膜エレメント
2:集水孔
3:集水管
4:複合半透膜
5:透過液流路材
6:原液流路材
7:膜ユニット
8:外装体
9:流体分離素子
10:テレスコープ防止板

Claims (6)

  1. 多孔性支持体及びそれに支持された薄膜からなる複合半透膜を含む複合半透膜エレメントの製造方法であって、前記複合半透膜を、温度T[℃]と圧力P[MPa]が式(1)から式(3)の全てを満たす液体を用いて、2時間以上圧密化処理を行う工程を含むことを特徴とする複合半透膜エレメントの製造方法。
    T×P≦300 ・・・式(1)
    6.0≦P≦8.3 ・・・式(2)
    30≦T≦50 ・・・式(3)
  2. 前記液体の浸透圧が3MPa以上である請求項1に記載の複合半透膜エレメントの製造方法。
  3. 前記多孔性支持体が基材上に多孔質層を設けてなり、圧密化処理後の前記多孔質層の厚みが、圧密化処理前の前記多孔質層の厚みと比べて10%以上減少するまで圧密化処理を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の複合半透膜エレメントの製造方法。
  4. 多孔性支持体及びそれに支持された薄膜からなる複合半透膜を含む複合半透膜エレメントであって、前記複合半透膜は、温度T[℃]と圧力P[MPa]が式(1)から式(3)の全てを満たす液体を用いて、2時間以上圧密化処理が行われたものであることを特徴とする複合半透膜エレメント。
    T×P≦300 ・・・式(1)
    6.0≦P≦8.3 ・・・式(2)
    30≦T≦50 ・・・式(3)
  5. 前記液体の浸透圧が3MPa以上である請求項4に記載の複合半透膜エレメント。
  6. 前記多孔性支持体が基材上に多孔質層を設けてなり、圧密化処理後の前記多孔質層の厚みが、圧密化処理前の前記多孔質層の厚みと比べて10%以上減少したものであることを特徴とする請求項4または5に記載の複合半透膜エレメント。
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