JP2013511640A - 静圧で動かされる摺動スリーブによるガス交換制御を行う対向ピストン・エンジン - Google Patents

Abstract

【課題】 本発明は、摺動スリーブによるガス交換制御を有する対向ピストン・エンジンに関するものである。
【解決手段】 摺動スリーブは、その外周が段付ピストン（差動ピストン）のように形成され、これにより、スレーブ・ピストンとして作動可能である。マスター・ピストンとして、カムにより動かされるタペットが使用される。マスター・ピストンとスレーブ・ピストンとの間の閉じた配管系内に油圧液が存在する。静圧付勢により、マスター・ピストンとスレーブ・ピストンとの間に閉じ込められた液柱は、往復移動可能であり、このようにして、摺動スリーブによりガス交換機構が開閉可能である。
【選択図】 図２

Description

本発明は、特に対向ピストン・エンジンにおける使用に適している。

対向ピストン・エンジンは、一般に２サイクルで作動する。この場合、２つのピストンは、共通のシリンダ内において対向運動する。シリンダの両方の端部には、クランク軸が配置され、このクランク軸は、対応する歯車装置を介して同期化され、ピストンのストローク運動を、既知のように、ピストン棒およびクランク軸を介して回転運動に変換する。

この場合、ガス交換は、ピストンにより行われ、ピストンは、その下死点のストローク範囲内において入口開口ないしは出口開口を開放し、入口開口および出口開口を介して、燃焼前にフレッシュ・ガスが、シリンダ内に流入可能であり、燃焼後に排気ガスが、シリンダから流出可能である。このサイクルは、クランク軸の各回転ごとに反復されるので、４サイクルは実行可能ではない。さらに、ピストン、および、それらのピストン・リングが制御開口を通過するとき、潤滑のために必要な、シリンダ壁の油膜が、これらによりこのスリット内にかき出されるという欠点が発生する。この結果、オイル消費量が増加し、排出性が悪化することになる。

内燃機関におけるガス交換を摺動スリーブにより制御することが既知である（ドイツ特許公開第１９０６５４２号）。対向ピストン・エンジンにおいて、ガス交換を制御するこのような摺動スリーブによって、ピストンのスリット通過を回避することもまた既知である（ドイツ実用新案第２０２００５０２１６２４号およびドイツ実用新案第２０２００６０２０５４６号）。この場合、２サイクルにおいてのみならず、４サイクルにおいてもまた任意の制御時間が達成可能である。この利点を利用可能にするために、摺動スリーブの簡単かつ確実な駆動が必要である。この場合、制御カムを介しての直接機械駆動は、２つのカム軸、すなわち、入口スリーブおよび出口スリーブに対してそれぞれ１つずつのカム軸を必要とする。これは、円滑、かつ、振動の少ない直接駆動を可能にするために、駆動されている摺動スリーブのできるだけ近くに位置されるべきカム軸のための対応歯車装置を必要とする。このような配置は、実現が常に容易というわけではなく、特に４サイクルに対しては、高価な歯車装置を必要とする。カムの駆動はクランク軸の回転数の半分で行われるので、大きな駆動歯車装置を必要とするからである。摺動スリーブは、機械的作動のために任意の位置でアクセス可能というわけではなく、摺動スリーブへの摺動力の付勢は、通常、片側において行われなければならないので、たいていの場合は、重量を軽くするために比較的薄い摺動スリーブの肉厚を変形させてしまう。

ドイツ特許公開第１９０６５４２号 ドイツ実用新案第２０２００５０２１６２４号 ドイツ実用新案第２０２００６０２０５４６号

本発明の課題は、摺動スリーブの駆動を簡単にし、上記問題点を回避することである。

この課題は、本発明により、摺動スリーブが静圧で作動され、任意の位置に配置されたカム軸によってのみ、制御が行われることにより解決される。摺動スリーブは、中空油圧ピストンのように形成され、その外側の任意の適切な位置に段付ピストン（差動ピストン）のような加圧段部を有していることが目的に適っている。この加圧段部は、２つの同心ではあるが、異なる外径により形成される。これにより、２つの直径の間の正面に油圧が作用する。摺動スリーブを案内するエンジン・ハウジング内のシリンダ内孔もまた、同様に、この加圧段部を有している。この構造は、摺動スリーブに対する横方向の力作用が均等になり、かつ、片側変形なしに行われるという利点を有している。これにより、摺動スリーブの開放運動のみならず、閉鎖運動もまた、静圧により実行可能である。しかしながら、通常の内燃機関における吸気弁および排気弁において行われるのと同様に、開放運動のみが静圧で行われ、摺動スリーブの閉鎖は、１つまたは複数のばねにより行われるように設計されていてもよい。

摺動スリーブのストローク運動は、カム軸上に設けられた入口カムおよび出口カムにより開始される。油圧配管を短くできるように、カム軸は、中央に、即ち、両方のクランク軸の間の中央に配置されることが目的に適っている。カムを介して操作されるタペットは、ポンプ・ピストンとして形成され、ポンプ・シリンダ内において案内されている。油圧液として、エンジンの油だめからポンプに供給される、エンジン内に本来存在する潤滑油が使用されることが好ましい。これにより、高価なシールおよびオイル循環の分離が必要なくなる。発生した漏れは、エンジンの内部に残留する。静圧作動用オイルは、ポンプから、対応する外部または内部の配管系を介して、摺動スリーブの加圧段部に導かれる。摺動スリーブのストロークは、ポンプ・シリンダ内のポンプ側給油内孔がポンプ・ピストンのストロークにより閉鎖され、摺動スリーブとポンプ・ピストンとの間の空間が閉鎖され、その中に圧力が形成可能となった後に開始される。ストロークの終了後に、摺動スリーブは、ばね力により、またはそれに代えて、対向カムによる静圧運動により、初期位置に戻される。これにより、それに続いて、液柱は、ポンプ・ピストンの運動に抵抗する。作動中に発生する僅かな漏れは、給油内孔の開放後に再び補うことが可能である。

制御時間、即ち、摺動スリーブ・ストロークの開始および終了は、ポンプ・シリンダの調節により行われる。この場合、ポンプ・シリンダのねじが長手方向調節を可能にし、これにより給油内孔の閉鎖時点を調節可能にする。

本発明による配置は、噴射ポンプと同様に、ポンプ・ピストンが回転可能であり、且つ、傾斜制御エッジを有していることにより、制御時間もまた可変に調節可能にする。代替態様として、ポンプ・シリンダが回転されるか、または、長手方向移動が行われてもよい。

ポンプ・ピストンが給油内孔を閉鎖するまで進むプレ・ストローク過程が考慮されなければならない点において、カム形状は、通常のカムの外形とは異なっている。弁制御される内燃機関においてしばしば使用される通常の油圧タペットと同様に、また、既知のように、これにより自動的遊び補償が得られる。ポンプ要素への給油内に逆止弁が組み込まれたとき、ガス交換制御のこの作動の代替態様が得られる。この逆止弁は、前のタペット・ストロークにおいて漏れにより失われた油圧液量だけを供給可能にする。このようにしてプレ・ストロークが回避される。

原理的に、静圧スリーブ運動は両方向に実行可能である。しかしながら、内燃機関における通常の弁制御においてと同様に、ばね力により摺動スリーブの復帰を行わせることが有利である。これにより、摺動スリーブのそのシール・シートへの遊びのない閉鎖が確実に行われるのみならず、他のカムおよびタペットを含む、閉鎖ストロークを作動させるための他のオイル循環もまた回避される。開放ストロークおよび閉鎖ストロークは、ただ１つのカムにより制御される。

一般に、エンジン内に本来存在する潤滑油が、油圧媒体として使用されるべきである。これにより、僅かな漏れは有害ではなく、漏れは全体のオイル循環に再び戻されるので、全ての制御構成要素のシールのための費用はきわめて小さくなる。

対向ピストン・エンジンの断面図を示す。 図１の断面図の一方の半部分のみの詳細図を示す。 図２の制御ハウジングの範囲内の詳細図を示す。

図１は、対向ピストン・エンジンの断面図を示す。２つのピストン１，２は、２つのクランク・ハウジング３，４と、シリンダ中央部分７により相互に結合されているシリンダ半部分５，６と、から構成されているエンジン・ハウジング内を対向運動する。ピストンは、２つのクランク軸８，９、および、ピストン棒１０，１１により駆動される。これらの運動は、歯車駆動装置１２により同期化される。この歯車駆動装置１２の中央歯車は、エンジン・ハウジングのシリンダ中央部分７に固定された制御ハウジング１３内に支承され、クランク軸回転数の半分の４サイクルで回転する。この中央歯車は、カム軸１４を駆動し、カム軸１４は、噴射ポンプ１５を作動させるためのカムと、摺動スリーブ１６，１７により入口および出口のガス交換を制御するためのカムとを有している。摺動スリーブの移動により、環状ガス流路１８，１９は、相互に独立に開閉可能である。

図２は、図１の断面図の一方の半部分のみの詳細図を示す。制御ハウジング１３内において案内され、ばね２１を介してカム２２に圧着されるタペット２０は、カム軸１４の回転によって往復運動を実行する。タペット２０は、同時にポンプ・ピストンとして使用される。給油内孔２３を通して、タペット２０の後方の室２４、および、並びに導管２５，２６が満たされる。これらの導管２５，２６は、オイルを、段部２８の範囲内において摺動スリーブ１７の外径の周りを囲む周囲リング溝２７内に導く。この段部２８は、摺動スリーブ１７の外周の、クランク軸９の方向を向く側に、シリンダ中央部分７の方向を向く側よりも大きい直径が設けられていることにより形成される。これにより、摺動スリーブ１７は、段付ピストン（差動ピストン）のように圧力を加えることにより移動可能である。ここで、制御ハウジング１３内の給油内孔２３がタペット２０のストローク運動により閉鎖されたとき直ちに、室２４内、導管２５，２６内、およびリング溝２７内の液柱内に過圧が発生し、この過圧が摺動スリーブ１７を移動させ、これによりガス流路１９を開放させる。閉鎖運動は、ばね２９により行われ、ばね２９は、カム２２およびタペット２０の下降運動に追従して、摺動スリーブ１７を再びそのシール・シート３０に押し戻す。摺動運動の間に発生した漏れは、タペット２０および摺動スリーブ１７を滑りやすくする働きをする。漏れは、給油内孔２３がタペット２０の戻り運動により再び開放されたとき直ちに、給油内孔２３を介しての供給により補充される。タペット２０からの漏れは、制御ハウジング１３内に流入し、摺動スリーブ１７の大きい方の直径からの漏れは、クランク・ハウジング４内に流入する。小さい方の直径からの漏れは、シリンダ半部分６の環状溝３１内に集められ、そこから循環内に戻される。ガス流路１９内へのオイル流出の回避は、１つまたは複数のシール・リング３２によるピストン・リングのようなシールによって保証される。

図３は、制御ハウジング１３の範囲内の図２の詳細図を示す。タペット２０は、直接、制御ハウジング１３内において案内されるのではなく、回転可能なケーシング３３内において案内される。ケーシング３３は、その外方端部に、ねじ山回転用キーのための複数の係合面３５を設けたねじ山３４を有している。ねじ山３４は、制御ハウジング１３に固定されたプレート３６に螺着される。給油内孔２３を介して供給されたオイルは、ケーシング３３の外側溝３８内の穴３７を介して、ケーシング３３の内側溝３９内に流入する。摺動スリーブに通じる液柱内の静圧形成は、この内側溝３９がタペット２０のストロークの開始により閉鎖された後に開始する。このプレ・ストロークの正確な調節、それによる制御時間の微調節は、プレ・ストロークがねじ山３４のピッチに対応して変化可能であるので、ケーシング３３のキー係合面３５におけるケーシング３３の回転により実行可能である。外側溝４０は、穴４１を介した内孔２５内への圧力伝達が、ケーシング３３の回転により遮断されることを阻止する。調節装置は、Ｏリング４２および４３によって、外部に対してシールされている。制御時間の調節は、対応する調節モジュールを用いて、動的に、即ち、エンジンの稼働中に実行可能であることは明らかであり、これにより、可変の制御時間を簡単に達成できる。

１，２…ピストン
３，４…クランク・ハウジング
５，６…シリンダ半部分
７…シリンダ中央部分
８，９…クランク軸
１０，１１…ピストン棒
１２…歯車駆動装置
１３…制御ハウジング
１４…カム軸
１５…噴射ポンプ
１６，１７…摺動スリーブ
１８，１９…環状ガス流路
２０…タペット
２１…ばね
２２…カム
２３…給油内孔
２４…室
２５，２６…導管（内孔）
２７…リング溝
２７…周囲リング溝
２８…段部
２９…ばね
３０…シール・シート
３１…環状溝
３２…シール・リング
３３…ケーシング
３４…ねじ山
３５…係合面
３６…プレート
３７，４１…穴
３８，４０…外側溝
３９…内側溝
４２，４３…Ｏリング

Claims (9)

1. 摺動スリーブによるガス交換制御を行う対向ピストン・エンジンであって、
   前記摺動スリーブは、外径に段付ピストン（差動ピストン）のような加圧段部を備え、
   前記摺動スリーブは、静圧付勢により移動される
   対向ピストン・エンジン。
2. 前記摺動スリーブの開放ストロークは、前記静圧付勢により行われ、
   閉鎖ストロークは、前記摺動スリーブに作用するばね力により行われる、請求項１に記載の対向ピストン・エンジン。
3. 前記静圧付勢は、同時にタペットとして形成されているピストンにより開始され、
   一方、前記タペットは、カムにより操作される、請求項１または２に記載の対向ピストン・エンジン。
4. 制御時間の調節が、可変プレ・ストローク、即ち、圧力上昇の開始までの前記ポンプ・タペットの可変ストロークを可能にする装置により行われる、請求項１ないし３のいずれか一項に記載の対向ピストン・エンジン。
5. 前記制御時間の調節を行うための前記装置は、前記タペットの軸線に沿って移動可能なケーシングによってもたらされ、
   前記ケーシング内に前記ポンプ・タペットが案内され、
   前記ケーシングは、供給内孔ないしは供給溝を有し、
   前記ケーシングを長手方向に移動させたとき、前記供給内孔ないしは前記供給溝により、可変の圧力上昇開始時点が調節される、請求項４に記載の対向ピストン・エンジン。
6. 前記ケーシングの長手方向移動が、ねじ山内における回転によって行われる、請求項４または５に記載の対向ピストン・エンジン。
7. 前記可変制御時間を達成させるために、前記ケーシングの移動は、動的に、即ち、エンジンの運転中において行われる、請求項４ないし６のいずれか一項に記載の対向ピストン・エンジン。
8. 入口摺動スリーブおよび出口摺動スリーブを作動するために、中央に配置されている制御ハウジング内に支承されている、ただ１つのカム軸が必要とされ、
   前記カム軸は、前記制御ハウジング内に配置されている入口ポンプ・タペットおよび出口ポンプ・タペットを作動するためのカムを有している、請求項１ないし７のいずれか一項に記載の対向ピストン・エンジン。
9. 前記制御ハウジング内に支承されている前記カム軸は、前記ガス交換制御のための前記カムに加えて、噴射カムを有し、
   前記制御ハウジング内に、前記入口ポンプ・タペットおよび前記出口ポンプ・タペットに加えて、１つまたは複数の噴射ポンプが設けられている、請求項８に記載の対向ピストン・エンジン。

Images