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JP2013200123A - 電気化学測定用セルと電気化学測定システム - Google Patents

電気化学測定用セルと電気化学測定システム Download PDF

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thin film
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俊広 五十井
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Abstract

【課題】たとえばPt触媒等の燃料電池用の電極触媒をはじめとする試料の電気化学的変化の観察に好適な電気化学測定用セルと電気化学測定システムを提供する。
【解決手段】電気化学測定用セル10であって、電子線透過性の薄膜1と補剛板2からなる基板3と、基板3の薄膜1上に載置された金電極5および白金電極4からなる電極対と、薄膜1上で該電極対を包囲する囲い枠6と、囲い枠6で包囲された薄膜1上の空間で電極対を封止する電解液ESと、囲い枠6の上方に配された蓋9であって電子線透過性の薄膜7と補剛板8かなる蓋9とから構成され、蓋9と基板3双方の補剛板8,2はともに、金電極5に対応する位置がくり貫かれて観察窓8a、2aを形成しており、金電極5に接する試料Sが観察窓8a、2aから確認できるとともに、対応する観察窓8a、2aとその間にある試料Sを電子線EBが透過できるようになっている。
【選択図】図1

Description

本発明は試料の電気化学的な変化を観察するための電気化学測定システムと、この測定システムに含まれる電気化学測定用セルに関するものである。
たとえば燃料電池用の触媒の合成や活性、劣化のメカニズムを知ることは新規な触媒を開発する上で重要な指針となる。
ところで、現在は溶液中の試料をIn-situでTEM(透過型電子顕微鏡)観察することはできるものの、試料の電位を測定することができないために、たとえば、燃料電池用の触媒試料が溶出を開始する電位を精緻に確認できないのが現状である。なお、観察の際の解像度が低いこともまた、触媒溶出の電位確認を阻害している要因となっている。
上記課題の原因を分析するに、電極上に試料を載せることで電位の測定が可能となる一方で、電極上に試料が載せられているために電子線が透過できず、結果としてTEM観察ができないことが最大の要因である。
一方、解像度に関しては、液注入されているセルにおいては液や観察窓によって電子線が吸収され易く、その結果として解像度が低下することが要因である。
本発明者等は、これらの課題を解消しながら、特に試料としてPt触媒等の燃料電池用の電極触媒の電気化学的変化をリアルタイムで観察することを主目的として、特に透過型電子顕微鏡を用いて観察する際の電気化学測定用セルの開発をおこなってきた。
ここで、特許文献1には、開口部を有する試料保持部材でイオン液体を保持し、そこに試料を投入してイオン液体中に試料を浮かして透過型電子顕微鏡で観察する方法が開示されている。この観察方法によれば、試料を変形させずに試料そのものの形状を観察することができるとしている。しかしながら、Pt触媒等の燃料電池用の電極触媒の電気化学的変化の観察を対象としたものでないために、当該電極触媒の電気化学的変化を観察するのに適したセル構成とはなっていない。具体的には、電極素材が明確でないためにPt触媒の電気化学的変化を観察できるか否かが不明であり、電極に試料触媒が接した状態で電子線が透過できる構成となっていないために試料触媒の電気化学的変化を観察できるか否かが不明であるといったことが挙げられる。
特開2009−266741号公報
本発明は上記する問題に鑑みてなされたものであり、たとえばPt触媒等の燃料電池用の電極触媒をはじめとする試料の電気化学的変化の観察に好適な電気化学測定用セルと電気化学測定システムを提供することを目的とする。
前記目的を達成すべく、本発明による電気化学測定用セルは、電気化学測定用セルであって、電子線透過性の薄膜と補剛板からなる基板と、基板の薄膜上に載置された金電極および白金電極からなる電極対と、薄膜上で該電極対を包囲する囲い枠と、囲い枠で包囲された薄膜上の空間で電極対を封止する電解液と、囲い枠の上方に配された蓋であって電子線透過性の薄膜と補剛板かなる蓋と、から構成され、前記蓋と前記基板双方の補剛板はともに、前記金電極に対応する位置がくり貫かれて観察窓を形成しており、金電極に接する試料が観察窓から確認できるとともに、対応する観察窓とその間にある試料を電子線が透過できるようになっているものである。
本発明の電気化学測定用セルは、その測定対象が主として燃料電池用のPt等からなる電極触媒であり、TEM観察に用いられるセルであって、その平面寸法は数mm四方程度かそれ以下の大きさである。なお、観察対象の試料が燃料電池用の電極触媒に限定されるものでないことは勿論のことである。
基板は電子線透過性の薄膜と補剛板から構成されており、薄膜は窒化珪素や二酸化珪素、アモルファスシリコン(たとえばポリシリコン)などを素材としてその厚みはせいぜい数十nm程度が好ましく、たとえば10nm〜20nm程度が望ましい。また、電子線透過性の薄膜に剛性を付与して基板を形成する補剛板は珪素(シリコン)等を素材とするのがよい。
基板を構成する薄膜の上には、金電極と白金電極からなる一対、もしくは複数対の電極対が形成されている。
電極対のうち、金電極が観察対象の試料と接触するようになっており、金電極に接する試料の電極対への電流印加後の電気化学的変化が観察される。このように、試料に接してその電気化学的変化を見るための電極を金電極とすることで、当該電極は電気的に安定であり、測定ノイズの低減を図ることができる。
また、特に燃料電池用の電極触媒として多用されているPt(白金)やその合金を試料とする際にも、これを接触させてその変化を観察するのに金電極は好適である。
それに対し、電極対を構成する他方の電極を白金電極とすることで、当該電極上で水素を発生させ、可逆水素電極とすることができる。
さらに、電極対を電解液で満たすべく、薄膜の上で電極対を包囲するように囲い枠が設けられ、この囲い枠内に電解液が満たされる。なお、この電解液には、過塩素酸や硫酸、硝酸などが使用できる。
電気化学測定用セルの平面寸法は数mm四方程度であり、このように極めて小さなセル内で電極対の短絡を防止する必要があることから、囲い枠は二酸化珪素などのセラミックスから形成されるのがよい。なお、囲い枠を封止用のゴム素材から形成した場合には、ゴムが溶け出して電解液の成分を変化させる怖れがあることからも、セラミックス素材の囲い枠が好ましいと言える。
囲い枠の上方には、基板と同じ組み合わせの蓋、すなわち、電子線透過性の薄膜と補剛板かなる蓋が配設され、基板と囲い枠、および蓋と囲い枠がそれぞれ液密状に接続(シール)されて電気化学測定用セルが形成される。
そして、この電気化学測定用セルにおいては、蓋と基板双方の補剛板がともに金電極に対応する位置がくり貫かれて観察窓を形成しており、金電極に接する試料が観察窓から確認できるとともに、対応する観察窓とその間にある試料を電子線が透過できるようになっている。
このような構成により、観察窓を介して電子線を透過しながら、電極に接する試料の電気化学変化を確認することが可能となる。
実際には、この電気化学測定用セルがホルダの先端に固定され、透過型電子顕微鏡内に設置されて、当該透過型電子顕微鏡を構成するCCDカメラ等で試料の電気化学変化がモニタリングされることになる。
なお、たとえば補剛板に形成された溝(観察窓)に電子線透過性の薄膜を嵌め込んで基板や蓋を構成するという形態も考えられるが、この形態では、小寸法の溝内に薄膜を製作するのに多大な手間と時間を要することが必至であることから好ましいものとは言えない。
また、前記囲い枠においては、その電極対に対向する内側の面が湾曲面、もしくは平面と湾曲面が連続した面のいずれかから構成されているのが好ましい。
二酸化珪素などからなる囲い枠内に電解液が満たされた場合、この電解液の周囲は一般に疎水性であることから、仮に囲い枠の内側の面に隅角部が存在するとそこにガスが溜まり易くなってしまう。なお、電解液中に親水性薬剤を投入してガスの溜まり易さを解消するといった方策もあるが、この場合には親水性薬剤が電気化学測定に影響を及ぼすことが懸念されることからも、囲い枠の内側形状に改良を加え、本実施の形態のごとく隅角部のない形状とするのがよい。
また、前記観察窓の平面形状は円形であるのが好ましい。透過型電子顕微鏡内は超高真空雰囲気であり、一方でセル内は大気圧雰囲気であることから、この圧力差に耐え得る観察窓の構造が必要となる。
具体的には、蓋や基板の補剛板がくり貫かれて形成された薄膜の観察窓は、透過型電子顕微鏡の超高真空雰囲気内において補剛板のくり貫き輪郭をエッジとして外側に強く引っ張られる(吸引される)ことになる。
この際に、仮に輪郭エッジの線形が方形や多角形だと、隅角を起点として薄膜に亀裂が生じ易くなってしまう。
これに対し、輪郭エッジ(観察窓の輪郭)を円形とすることで亀裂の起点となり易い隅角が存在しなくなり、また、薄膜には引張り力が円形輪郭の全体に均等に作用することとなり、このことによっても亀裂が生じ難くなる。
また、金電極に複数の開口があり、それぞれの開口に試料が収容自在となっており、かつ、前記蓋と前記基板ではそれぞれの前記開口に対応する位置に観察窓が形成されている実施の形態であってもよい。
この形態によれば、一つの電気化学測定用セルで複数の試料の電気化学変化を同時に観察することが可能となる。
また、複数の試料がそれぞれに固有の観察窓に対応する位置に位置決めされるように金電極に複数の開口が設けてあることで、複数の試料を金電極内の所望位置に固定できることに加えて、開口に試料が収容されることから試料がその周囲で金電極と接することができ、その電気化学変化の促進にも繋がる。
また、本発明は電気化学測定システムにも及ぶものであり、この電気化学測定システムは、前記電気化学測定用セルを固定するホルダが透過型電子顕微鏡(収差補正透過型電子顕微鏡(Cs-TEM)を含む)にセットされてなるものである。
この電気化学測定システムでは、本発明による電気化学測定用セルがホルダに固定された状態で透過型電子顕微鏡にセットされているため、電気化学測定と試料観察を両立することができる。また、本発明による電気化学測定用セルを適用していることでナノサイズの厚みの電子線透過型の薄膜を介して電子線を透過させることができ、もって解像度を高めることもできる。
以上の説明から理解できるように、本発明の電気化学測定用セルとこのセルが透過型電子顕微鏡にセットされてなる電気化学測定システムによれば、電気化学測定と試料観察を両立することができ、たとえばPt触媒等の燃料電池用の電極触媒の電気化学的変化をリアルタイムに観察することができる。
本発明の電気化学測定用セルの実施の形態の縦断面図である。 図1のII−II矢視図である。 図1のIII−III矢視図である。
以下、図面を参照して本発明の電気化学測定用セルの実施の形態を説明する。なお、図示例は電極対が一対の形態であるが、2対以上の電極対を具備する形態、電極を3本以上有する形態であってもよい。
(電気化学測定用セル)
図1は本発明の電気化学測定用セルの実施の形態の縦断面図であり、図2は図1のII−II矢視図であって電気化学測定用セルを上から見た平面図であり、図3は図1のIII−III矢視図であって電気化学測定用セルをその途中で切断した横断面図である。
図示する電気化学測定用セル10は、電子線透過性の薄膜1と補剛板2からなる基板3の上に金電極5と白金電極4からなる電極対が形成され、薄膜1上で電極対を包囲するように囲い枠6が形成され、囲い枠6で包囲された薄膜1上の空間は電極対を封止するように電解液ESが満たされ、囲い枠6の上方には電子線透過性の薄膜7と補剛板8かなる蓋9が配設されてその全体が構成されている。
基板3と蓋9を構成する薄膜1,7はいずれも、それらの厚みが10nm〜20nm程度の極薄の膜であり、窒化珪素や二酸化珪素、アモルファスシリコンなどのうちのいずれか一種から形成されている。
また、基板3と蓋9を構成する補剛板2,8はいずれも、薄膜1,7に剛性を付与して所望の剛性を備えた基板3や蓋9を構成するためのものであり、珪素(シリコン)等から形成される。
電気化学測定用セル10の平面寸法は数mm四方程度であり、このように極めて小さなセル内で電極対の短絡を防止する観点から、囲い枠6は二酸化珪素などのセラミックスから形成されている。
この囲い枠6は、図3から明らかなように、その内側面6aが4つの平面とこれらを繋ぐ4つの湾曲面6a’の連続面から構成されている。二酸化珪素などからなる囲い枠6内に電解液ESが満たされている状態では、この電解液ESの周囲は一般に疎水性となっており、囲い枠の内側の面に隅角部が存在するとそこにガスが溜まり易くなってしまうため、図示例のように囲い枠6の内側面6aを平面と湾曲面の連続面とすることでガス溜まりを解消できる。
また、電解液ESは、過塩素酸や硫酸、硝酸のうちのいずれか一種が使用される。
金電極5には複数の開口5a(図では4つの開口)が設けてあり、この開口5a内に観察対象である試料S(たとえば燃料電池用のPt触媒など)が収容されるようになっている。なお、図示する開口5aの平面形状は矩形であるが(図3参照)、平面視形状が矩形以外の多角形や円形、楕円形などであってもよい。さらには、収容される試料と相補的な形状の開口を設けておき、試料が開口に不動姿勢で収容できるようにしてもよい。
このように観察対象の試料Sが金電極5と接することにより、金電極5は電気的に安定であり、測定ノイズの低減を図ることができる。特に燃料電池用の電極触媒として多用されているPtやその合金を試料Sとする際には、これを金電極5に接触させてその変化を観察する上で金電極は好適である(白金電極に対して白金触媒を接触させた場合には、白金触媒のみの電気化学反応を観察することはできない)。加えて、複数の試料Sが金電極5に設けられた複数の開口5aに収容されることで、複数の試料Sを金電極5内の所望位置に固定できることに加えて、開口5aに試料Sが収容されることから試料Sがその周囲で金電極5と接することができ、その電気化学変化を促進させることができる。
また、基板3と蓋9を構成する補剛板2,8には、金電極5の各開口5a内の試料Sを確認できる観察窓2a、8aが各開口5aに対応する位置に設けられており、したがって、それぞれ4つの観察窓2a、8aは相互に対応する位置に開設されている。
したがって、図2で示すように、観察窓8aを介して下方に位置する金電極5の開口5aとこれに接している試料Sを確認することができる。
また、対応する観察窓2a、8aを介して、透過型電子顕微鏡による観察の際に電子線EBを透過させることができる。
さらに、図2から明らかなように、観察窓8aの平面形状は円形となっている。透過型電子顕微鏡内は超高真空雰囲気であり、一方でセル10内は大気圧雰囲気であることから、この圧力差に耐え得る観察窓8a(および観察窓2a)の構造が必要となる。そして、観察窓8a、2aの平面形状が円形であることから、薄膜7,1にはセル内外圧力差に起因する引張り力が円形輪郭の全体に均等に作用することとなり、このことによっても亀裂が生じ難くなる。
図示する電気化学測定用セル10によれば、電気化学測定と試料観察を両立することができ、たとえばPt触媒等の燃料電池用の電極触媒の電気化学的変化をリアルタイムに観察することが可能となる。また、小寸法のセルでありながら電気絶縁性が保証され、TEM観察の際の超高真空雰囲気下においても観察窓の破損の可能性は極めて低い。さらに、ナノサイズの極薄の薄膜を介して試料を撮像できることからその解像度も極めて高くなる。
このような電気化学測定用セル10が不図示のホルダに固定され、不図示の透過型電子顕微鏡にセットされることによって電気化学測定システムが構成される。
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。
1…薄膜、2…補剛板、2a…観察窓、3…基板、4…白金電極、5…金電極、5a…開口、6…囲い枠、6a…内側面、6a’…湾曲面、7…薄膜、8…補剛板、9…蓋、10…電気化学測定用セル、ES…電解液、S…試料、EB…電子線

Claims (5)

  1. 電気化学測定用セルであって、
    電子線透過性の薄膜と補剛板からなる基板と、基板の薄膜上に載置された金電極および白金電極からなる電極対と、薄膜上で該電極対を包囲する囲い枠と、囲い枠で包囲された薄膜上の空間で電極対を封止する電解液と、囲い枠の上方に配された蓋であって電子線透過性の薄膜と補剛板かなる蓋と、から構成され、
    前記蓋と前記基板双方の補剛板はともに、前記金電極に対応する位置がくり貫かれて観察窓を形成しており、金電極に接する試料が観察窓から確認できるとともに、対応する観察窓とその間にある試料を電子線が透過できるようになっている電気化学測定用セル。
  2. 前記囲い枠のうち、電極対に対向する内側の面が湾曲面、もしくは平面と湾曲面が連続した面のいずれかから構成されている請求項1に記載の電気化学測定用セル。
  3. 前記観察窓の平面形状が円形である請求項1または2に記載の電気化学測定用セル。
  4. 金電極に複数の開口があり、それぞれの開口に試料が収容自在となっており、かつ、前記蓋と前記基板ではそれぞれの前記開口に対応する位置に観察窓が形成されている請求項1〜3のいずれかに記載の電気化学測定用セル。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の電気化学測定用セルを固定するホルダが透過型電子顕微鏡にセットされてなる電気化学測定システム。
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