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JP2013244546A - 切断用ブレード及びその製造方法 - Google Patents

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JP2013244546A JP2012118489A JP2012118489A JP2013244546A JP 2013244546 A JP2013244546 A JP 2013244546A JP 2012118489 A JP2012118489 A JP 2012118489A JP 2012118489 A JP2012118489 A JP 2012118489A JP 2013244546 A JP2013244546 A JP 2013244546A
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Yoshitaka Ikeda
吉隆 池田
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Abstract

【課題】ブレード本体の側面から突出される砥粒に、被切断物を切断して生じる切屑等が付着することを抑制して、切れ味や加工品位を安定して維持することができる切断用ブレード及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】金属結合相2に砥粒3が分散された基層8を有する円形薄板状のブレード本体1を備えた切断用ブレードであって、前記砥粒3の粒径は、6/12μm〜40/60μmであり、前記ブレード本体1の厚さ方向を向く側面4から前記砥粒3が突出される突き出し量が、平均0.5μm〜4μmとされていることを特徴とする。
【選択図】図3

Description

本発明は、例えばMLCC(積層セラミックスコンデンサ)等のグリーンシートの切断や溝入れなどの加工(以下、切断又は切断加工という)に用いられる切断用ブレード及びその製造方法に関するものである。
従来、例えばMLCC等のグリーンシートの切断に用いられる切断用ブレード(薄刃砥石)として、ダイヤモンドやcBN(立方晶窒化ホウ素)等からなる砥粒を金属結合相によって保持した円形薄板状のブレード本体を有するものが知られている(例えば、下記特許文献1を参照)。
この種の切断用ブレードとして、金属結合相が金属めっき相からなる電鋳砥石や、メタルボンド相からなるメタルボンド砥石などが知られており、このような金属結合相により、ブレード本体の強度や剛性をある程度確保しつつ薄肉化が可能である。
特開2001−300853号公報
しかしながら、前述した従来の切断用ブレードでは、ブレード本体の側面から砥粒が大きく突出されることがあり、このような砥粒に、被切断物を切断して生じる切屑(切粉)等が付着しやすくなるとともに目詰まりが発生して、切れ味や加工品位を安定して維持することが難しかった。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、ブレード本体の側面から突出される砥粒に、被切断物を切断して生じる切屑等が付着することを抑制して、切れ味や加工品位を安定して維持することができる切断用ブレード及びその製造方法を提供することを目的としている。
このような課題を解決して、前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提案している。
すなわち、本発明は、金属結合相に砥粒が分散された基層を有する円形薄板状のブレード本体を備えた切断用ブレードであって、前記砥粒の粒径は、6/12μm〜40/60μmであり、前記ブレード本体の厚さ方向を向く側面から前記砥粒が突出される突き出し量が、平均0.5μm〜4μmとされていることを特徴とする。
本発明の切断用ブレードによれば、砥粒の粒径が6/12μm〜40/60μmであるので、鋭い切れ味と良好な加工品位を確保できる。
この切断用ブレードは、前述した砥粒の粒径に比べて、ブレード本体の側面から突出される砥粒の突き出し量が平均4μm以下と小さくされているので、該砥粒に切屑等が付着することを抑制でき、これによりブレード本体の側面における目詰まりの発生が抑制されて、この切断用ブレードの切れ味や加工品位が安定して維持されるのである。
また、ブレード本体の側面から砥粒が突出される突き出し量が、平均0.5μm以上とされることによって、該ブレード本体の外周端縁(切れ刃)と被切断物との摩擦抵抗が確実に低減されて、高品位な切断加工が可能となる。
具体的に、ブレード本体の側面からの砥粒の突き出し量が平均0.5μm未満の場合は、該ブレード本体の側面と被切断物との接触面積が大きくなるとともに摩擦抵抗が増大して、加工品位が確保できないおそれがある。
また、本発明の切断用ブレードにおいて、前記ブレード本体の厚さ方向に沿う前記基層の外側に、無電解めっき又は電気めっきによりめっき層が形成されることで、前記突き出し量が設定されていることとしてもよい。
この場合、前述のように金属結合相に分散される砥粒の粒径が、該砥粒の突き出し量に比べて大きくされていても、無電解めっき又は電気めっき(電解めっき)により形成されるめっき層の厚さ(析出量)を調整することによって、前記砥粒の突き出し量を精度よく設定することができ、従って前述した効果が確実に得られることになる。
また、本発明の切断用ブレードにおいて、前記ブレード本体は、厚さ0.15mm以下とされ、前記ブレード本体の両側面には、該ブレード本体を厚さ方向に貫通しない有底の凹溝が周方向にずらされて形成されていることとしてもよい。
この場合、ブレード本体の両側面に凹溝が形成されているので、切断時に外部から供給されるクーラントをこれらの凹溝を介して被切断物の切断部位に効率的に供給することができ、切断部位やブレード本体に生じる熱を抑えることができる。さらに、被切断物から生成される切屑をこれらの凹溝に収容してクーラントとともに円滑に排出することができ、切屑詰まりを防いで切れ味を向上させることにより切断抵抗の低減を図ることも可能となる。
そして、これらの凹溝は、ブレード本体を貫通することのない有底のものであって、周方向に重ならないように互いにずらされて形成されているので、凹溝の溝底と、該凹溝が開口される側面とは厚さ方向の反対側を向く側面との間には、砥粒を金属結合相によって保持したブレード本体部分が残されることになる。このため、凹溝部分を除いた両側面間の間隔であるブレード本体の厚さが0.15mm以下の極薄とされていても、ブレード本体の強度や剛性を確保することが可能となるので、この切断用ブレードによれば、切断時のブレード本体の蛇行を防いで被切断物を高精度に切断することができる。
また、凹溝の溝底と反対側の側面との間にブレード本体部分が残されるため、例えばブレード本体を貫通したスリットのように該スリットを起点としてブレード本体が破損することも少なく、しかもブレード本体の切れ刃とされる外周端縁への開口部も前記スリットと比べて小さくなるので、この部分でのブレード本体の摩耗を抑制することもでき、工具寿命が延長される。なお、金属結合相は、電鋳ブレード(電鋳薄刃砥石)のような金属めっき相であるのが一層確実にブレード本体の強度や剛性を確保することができて望ましいが、メタルボンド相のように金属を焼結した結合相であってもよい。
また、本発明は、金属結合相に砥粒が分散された基層を有する円形薄板状のブレード本体を備えた切断用ブレードの製造方法であって、前記ブレード本体の厚さ方向に沿う前記基層の外側に、無電解めっき又は電気めっきによりめっき層を形成して、前記ブレード本体の側面から前記砥粒が突出される突き出し量を、平均0.5μm〜4μmとすることを特徴とする。
本発明の切断用ブレードの製造方法によれば、無電解めっき又は電気めっきにより形成されるめっき層の厚さを調整することによって、ブレード本体の側面から突出される砥粒の突き出し量を、平均0.5μm〜4μmに設定している。すなわち、基層を覆うようにめっき層を析出させつつ砥粒の突き出し量を調整することにより、該突き出し量を精度よく簡単に、所定範囲の値となるように設定することが可能である。
これにより、前述したように、ブレード本体の側面から突出される砥粒に、被切断物を切断して生じる切屑等が付着することを抑制でき、これによりブレード本体の側面における切れ刃部分の目詰まりの発生も抑制されて、この切断用ブレードの切れ味や加工品位が安定して維持される。また、ブレード本体の外周端縁(切れ刃)と被切断物との摩擦抵抗が確実に低減されて、高品位な切断加工が可能となる。
本発明の切断用ブレード及びその製造方法によれば、ブレード本体の側面から突出される砥粒に、被切断物を切断して生じる切屑等が付着することを抑制して、切れ味や加工品位を安定して維持することができる。
本発明の一実施形態に係る切断用ブレードを示す側面図である。 図1のZ−Z断面を示す図である。 図2のA部を拡大して示す図である。
以下、本発明の一実施形態に係る切断用ブレード10について、図面を参照して説明する。
図1〜図3に示されるように、本実施形態の切断用ブレード10は、金属結合相2に砥粒3が分散された基層8を有する厚さt0.15mm以下の円形薄板状のブレード本体1を備えている。
尚、図2においては説明のため、ブレード本体1の厚さt(すなわち円形をなすブレード本体1において中心軸O方向を向く両側面4、4間の距離、図3参照)が、実際より厚く示されているが、ブレード本体1の厚さtは前述のように0.15mm以下であり、極薄板状とされている。また、ブレード本体1の中央部には、このブレード本体1の中心軸Oを中心とした円形をなし、該ブレード本体1を厚さ方向(図2における左右方向)に貫通する取付孔5が形成されており、このためブレード本体1は、厳密には円環薄板状を呈している。
特に図示しないが、切断用ブレード10は、ブレード本体1がフランジを介して切断装置の主軸に取り付けられたり、或いは電鋳の際の台金に固着されたハブ付きブレードとされるとともに、この台金を介して主軸に取り付けられたりして、中心軸O回りに回転されることにより、該ブレード本体1においてフランジより径方向外側に突出された外周端縁(切れ刃)で被切断物を切断する。
本実施形態の切断用ブレード10は、例えばMLCC(積層セラミックスコンデンサ)等のグリーンシート(被切断物)を精密切断加工するのに適している。
金属結合相2は、Niを主成分として形成されている。本実施形態の金属結合相2は金属めっき相であり、この切断用ブレード10は電鋳ブレード(電鋳薄刃砥石)である。ブレード本体1の基層8は、Niを主成分とした金属めっき液に砥粒3を分散して、この金属めっき液中に台金を配置し、砥粒3を取り込みつつ台金表面に金属めっき相(金属結合相2)を所定の厚さに析出させ、これを台金から剥離して円板状に成形するといった公知の電鋳法により形成される。尚、ブレード本体1を前述したハブ付きブレードとする場合には、台金の所定領域(ブレード本体1を作製しない領域)にマスキングを施し、マスキングした所定領域以外の部位に金属めっき相を析出させればよい。
砥粒3は、ダイヤモンド砥粒及びcBN砥粒の少なくともいずれかからなる。砥粒3の粒径は、6/12μm〜40/60μmとされている。尚、ここでいう「砥粒の粒径」が「6/12μm」とは、粒径が6〜12μmの間を正規分布するものを表し、また「40/60μm」とは、粒径が40〜60μmの間を正規分布するものを表している。
ブレード本体1の金属結合相2において、複数の砥粒3同士は、互いの間隔が均一となるように分散されている。
また、ブレード本体1の厚さ方向に沿う基層8の外側には、無電解めっき又は電気めっきによりめっき層9が形成されている。めっき層9は、Niを主成分としており、砥粒3が分散されていない金属めっき液中に、上述したブレード本体1の基層8を配置し、該基層8の表面にめっき層9を所定の厚さに析出させることで形成されている。
そして、この切断用ブレード10は、ブレード本体1の厚さ方向を向く側面4から砥粒3が突出される突き出し量が、平均0.5μm〜4μmとされている。具体的に、本実施形態の切断用ブレード10は、ブレード本体1の基層8の外側に、砥粒3を含まない金属めっき液中においてめっき層9を析出させることで、該基層8に含まれる砥粒3の側面4(つまりめっき層9の外面)からの突き出し量を、平均0.5μm〜4μmに設定するようにした。
また、ブレード本体1の両側面4には、該ブレード本体1を厚さ方向に貫通しない有底の凹溝6が周方向にずらされて形成されている。なお、本実施形態では、基層8にこれら凹溝6をエッチングにより形成した後、該基層8を金属めっき液中に浸漬してめっき層9を形成していることから、これら凹溝6内にも前記めっき層9が形成されている。凹溝6を形成する具体的な方法については、後述する。
本実施形態では、側面4には複数ずつの凹溝6が形成されていて、これらの凹溝6は、両側面4の間では周方向に等間隔かつ交互に形成されており、従って両側面4には同数の凹溝6が形成されることになって、片方の側面4に形成される凹溝6の周方向の間隔も、両側面4間の周方向に隣接する凹溝6同士の間隔の2倍の間隔で、等間隔とされている。
なお、個々の凹溝6は、中心軸Oに対する半径方向においては、ブレード本体1の側面4の外周端縁とともに切れ刃を構成する該ブレード本体1の外周面7に開口して径方向内側に向けて延び、ただし取付孔5には達することのないように形成されていて、この半径方向に直交する断面は略「コ」字状をなして側面4に開口させられ、かつ該半径方向に沿って略一定の断面形状、寸法とされている。さらに、この凹溝6の深さdはブレード本体1の厚さtの60%以下とされており、また凹溝6の幅wは3mm以下とされている。
このような凹溝6は、ブレード本体1の基層8を形成する金属結合相2を化学処理により部分的に砥粒3ごと除去して形成される。すなわち、この金属結合相2が金属めっき相とされた本実施形態では、まず、前述した公知の電鋳法によって、凹溝6が形成されていない、基層8の両側面が平面とされたブレード本体1素材を製造する。
次いで、このブレード本体1素材の両側面に、凹溝6を形成する部分を除いてマスキングを施す。そして、このマスキングを施したブレード本体1素材を、硝酸や塩化鉄などのNi金属めっき相を溶解する処理液に浸漬することにより、マスキングが施されていない部分の金属めっき相を砥粒3ごとエッチングにより除去して、凹溝6を形成する。従って、凹溝6の幅wはマスキングの開放部の幅によって調整可能であり、また凹溝6の深さdは、処理液へのブレード本体1素材の浸漬時間や処理液の濃度等により調整可能である。
そして、このように凹溝6が形成されたブレード本体1素材(基層8)に対して、前述のようにめっき層9を形成することで、本実施形態の切断用ブレード10が作製される。なお、図3に示されるように、切断用ブレード10の外径を整える際(ドレス加工)において、ブレード本体1の外周面7からはめっき層9が取り除かれて、該外周面7には基層8が露出されている。
このように構成された切断用ブレード10は、取付孔5に切断装置の主軸が挿入された上で、両側面4の内周部が上記厚さ方向の両側からフランジによって挟み込まれることにより、この主軸にブレード本体1が同軸に固定されて中心軸O回りに回転させられ、フランジから径方向外側に突出された該ブレード本体1の外周端縁(切れ刃)が被切断物に切り込まれて該被切断物を切断する。従って、上記凹溝6の半径方向の長さは、この被切断物への切り込み深さよりも大きければよい。なお、切断時には被切断物の切断部位に向けてクーラントが例えばミスト状に供給される。
以上説明した本実施形態の切断用ブレード10によれば、砥粒3の粒径が6/12μm〜40/60μmであるので、鋭い切れ味と良好な加工品位を確保できる。またその一方で、前記砥粒3の粒径に比べて、ブレード本体1の側面4から突出される砥粒3の突き出し量が平均4μm以下と小さくされているので、該砥粒3に切屑等が付着することを抑制でき、これによりブレード本体1の側面4における目詰まりの発生が抑制されて、この切断用ブレード10の切れ味や加工品位が安定して維持される。
また、本実施形態の切断用ブレード10において、ブレード本体1の側面4から砥粒3が突出される突き出し量が、平均0.5μm以上とされることによって、該ブレード本体1の外周端縁(切れ刃)と被切断物との摩擦抵抗が確実に低減されて、高品位な切断加工が可能となる。
具体的に、側面4からの砥粒3の突き出し量が平均0.5μm未満の場合は、ブレード本体1の側面4と被切断物との接触面積が大きくなるとともに摩擦抵抗が増大して、加工品位が確保できないおそれがある。
また、ブレード本体1の厚さ方向に沿う基層8の外側に、無電解めっき又は電気めっきによりめっき層9が形成されることで、前記突き出し量が設定されているので、前述のように金属結合相2に分散される砥粒3の粒径が、該砥粒3の突き出し量に比べて大きくされていても、めっき層9の厚さ(析出量)を調整することによって、砥粒3の突き出し量を精度よく設定することができ、従って前述した効果が確実に得られることになる。
具体的に、本実施形態の切断用ブレード10の製造方法によれば、無電解めっき又は電気めっきにより形成されるめっき層9の厚さを調整することによって、ブレード本体1の側面4から突出される砥粒3の突き出し量を、平均0.5μm〜4μmに設定している。すなわち、基層8を覆うようにめっき層9を析出させつつ砥粒3の突き出し量を調整することにより、該突き出し量を精度よく簡単に、所定範囲の値となるように設定することが可能である。
これにより、前述したように、ブレード本体1の側面4から突出される砥粒3に、被切断物を切断して生じる切屑等が付着することを抑制でき、これによりブレード本体1の側面4における切れ刃部分の目詰まりの発生も抑制されて、この切断用ブレード10の切れ味や加工品位が安定して維持される。また、ブレード本体1の外周端縁(切れ刃)と被切断物との摩擦抵抗が確実に低減されて、高品位な切断加工が可能となる。
また、ブレード本体1の両側面4に凹溝6が形成されているので、切断時に外部から供給されるクーラントをこれらの凹溝6に保持して被切断物の切断部位に効率的に供給することができ、切断による摩擦熱を抑えるとともに潤滑効果を高めて切断抵抗を低減することができる。また、切断により被切断物から生成された切屑をこれらの凹溝6内に一時的に収容してクーラントとともに円滑に排出することができ、切屑が被切断物の切断部位に残されてブレード本体1に切屑詰まりを発生させるようなことが抑制されて、該ブレード本体1の外周端縁の切れ刃に鋭い切れ味を維持することができ、これによっても切断抵抗の低減を図ることができる。
そして、これらの凹溝6は、例えば特許文献1(特開2001−300853号公報)に記載される薄刃砥石のスリットとは異なり、ブレード本体1を貫通することのない有底のものであって、しかも両側面4に形成されたもの同士で周方向にずらされて形成されているので、凹溝6の溝底と、該凹溝6が形成された側面4とは厚さ方向の反対側を向く側面4との間には、図3に示されるように砥粒3を金属結合相2によって保持したブレード本体1部分が(t−d)の厚さで残されることになり、これによってブレード本体1に高い強度と剛性を確保することができる。なお、前記ブレード本体1部分には、基層8のみならずめっき層9も含まれる。
従って、上記構成の切断用ブレード10によれば、たとえブレード本体1の厚さtが0.15mm以下の極薄のものであっても、ブレード本体1の強度や剛性を確保することが可能となり、切断時にブレード本体1の切れ刃とされる外周端縁が蛇行するのを防いで被切断物を高精度に切断することができ、切断された被切断物において寸法異常が生じることを抑制あるいは防止することができる。また、こうして凹溝6と反対側の側面4との間にブレード本体1が残されることにより、凹溝6を起点としてブレード本体1にクラックが入って破損が生じるようなことも起き難く、さらに切れ刃を構成する外周面7への凹溝6の開口部も、貫通したスリットよりは小さくなるので、この開口部でのブレード本体1の摩耗も抑制することができて、工具寿命(ブレード寿命)を延長することができる。
さらに、本実施形態では、このような凹溝6が、ブレード本体1の両側面4の間では周方向に等間隔かつ交互に形成されており、上述のように両側面4には同数の凹溝6が形成されて、片方の側面4に形成される凹溝6の周方向の間隔は、両側面4間の周方向に隣接する凹溝6同士の間隔の2倍の間隔で、等間隔とされている。すなわち、これら両側面4の凹溝6同士は互いに、図1に示すように一方の側面4の凹溝6が他方の側面4の周方向に隣接する凹溝6同士の中央に配置されることになるので、両側面4間で周方向に隣接する凹溝6同士の間隔に広狭が生じることがない。
このため、例えば周方向に隣接する凹溝6間に間隔の大きな部分が生じることによってこの部分で切屑の排出性が損なわれたりクーラントの供給が滞ったりするようなこともなく、より効果的に切断抵抗の低減を図ることができる。また、両側面4の凹溝6の間に位置する厚さtのブレード本体1部分もその周方向の長さが均一となるので、例えばこの長さが不均一で短い部分において凹溝6が近接するためにブレード本体1の強度や剛性が部分的に確保できなくなるようなこともなく、一層確実に工具寿命の延長を図ることができるとともに高精度な切断を促すことができる。
さらにまた、本実施形態では、凹溝6が、ブレード本体1の基層8を形成する金属結合相2を化学処理により部分的に除去して形成されたものであり、放電加工やレーザー加工などによって凹溝を形成する場合のようにブレード本体1に熱が生じることがない。このため、熱によってブレード本体1に反り等の変形や焼けが生じたりすることもなく、上述のような高精度の切断をさらに確実に行うことが可能となる。しかも、このような化学処理により金属結合相2を部分的に除去して形成された凹溝6は、上述のようにマスキングの開口幅を調整したり、処理液の濃度や浸漬時間を調整したりすることで、比較的正確にその幅wや深さdを制御することが可能であるので、ブレード本体1の厚さtが0.15mm以下であっても確実に所定の凹溝6を形成することが可能となる。
さらに、基層8を覆うめっき層9が無電解めっき又は電気めっきにより形成されていることで、ブレード本体1に反りや変形がより生じにくくされている。
なお、本実施形態では、ブレード本体1の基層8を形成する金属結合相2がNi等をめっきによって析出した金属めっき相とされ、これを硝酸や塩化鉄等の処理液によってエッチングして除去することにより、凹溝6を形成しているが、本発明はボンド相が金属結合相2であればよく、ボンドとなる金属の粉末と砥粒3とを混練して円板状に成形した素材を焼結してブレード本体1の基層8としたメタルボンド砥石に適用することも可能である。そして、このような場合でも、凹溝6を形成するには、ブレード本体1の基層8において金属結合相(メタルボンド相)2を形成する金属を溶解可能な処理液中に、マスキングを施したブレード本体1素材を浸漬して、この金属結合相2を化学処理により部分的に除去して形成すればよい。
なお、金属結合相2が本実施形態のような金属めっき相である場合も、上述のようなメタルボンド相である場合も、凹溝6の深さdが深すぎると、凹溝6がブレード本体1をその厚さ方向に貫通した状態に近くなり、ブレード本体1の強度や剛性を確実に確保することが困難となるおそれがある。このため、凹溝6の深さdは、本実施形態のようにブレード本体1の厚さtの60%以下とされるのが望ましく、より望ましくは厚さtの50%以下とされる。
ただし、この凹溝6の深さdが浅くなりすぎると、上述の場合とは逆にブレード本体1に凹溝6を形成していない上記ブレード本体1素材の状態に近くなり、ブレード本体1の強度や剛性は確保されても切屑の排出性やクーラントの効率的な供給は望めなくなる。このため、凹溝6の深さdはブレード本体1の厚さtの10%以上とされるのが望ましく、より望ましくは厚さtの20%以上とされる。
また、凹溝6の幅wが広すぎても、周方向においてブレード本体1の両側面4に形成された凹溝6の間に残される厚さtの部分の面積や幅が小さくなり、やはりブレード本体1の強度や剛性を十分に確保することが困難となるおそれがある。具体的に、被切断物を切断する際のカーフ幅が安定しなくなることがある。このため、個々の凹溝6の幅wは本実施形態のように3mm以下とされるのが望ましい。
ただし、この凹溝6の幅wについても、幅狭となりすぎると、上述のようにこの凹溝6を介してクーラントを切断部位に効率的に供給したり、あるいは切断部位から切屑を収容してクーラントとともに確実に排出したりすることが困難となるおそれが生じる。このため、凹溝6の幅wは、0.5mm以上とされるのが望ましく、より望ましくは1.0mm以上とされる。
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、前述の実施形態では、ブレード本体1の両側面4に、該ブレード本体1を貫通しない有底の凹溝6が周方向にずらされて形成されているとしたが、これに限定されるものではなく、該凹溝6が形成されていなくても構わない。また、凹溝6の代わりに、ブレード本体1を厚さ方向に貫通するスリットが形成されていても構わない。ただし、前述の実施形態で説明したように、ブレード本体1に有底の凹溝6が形成されていることで、前述した優れた作用効果が得られることから、好ましい。
また、前述の実施形態では、切断用ブレード10が、被切断物として例えばMLCC等のグリーンシートを精密切断加工すると説明したが、それ以外の電子部品材料からなる被切断物を切断することとしてもよい。
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。ただし本発明はこの実施例に限定されるものではない。
[砥粒の突き出し量に関する切断品位等確認試験A]
この実施例では、ブレード本体1の側面4から突出される砥粒3の突き出し量と、切断品位等(切断したチップへの切屑付着率、チップの寸法異常発生率、主軸電流値(つまり切断抵抗の大きさ)、ブレード本体の側面目詰まり発生率)との関係について、確認を行った。
具体的には、粒度#600の砥粒3がNi金属めっき相よりなる金属結合相2に分散された基層8に、エッチングにより凹溝6を形成して、さらにこの基層8上に、砥粒3を含まないNiめっき液を用いた無電解めっきにより図3に示されるめっき層9を形成して、外径:54mm、内径(取付孔5の直径):40mm、厚さt:0.1mmのブレード本体1を有する切断用ブレードを複数製造した。そして、これら切断用ブレードのうち、ブレード本体1の側面4から突出される砥粒3の突き出し量を、平均0.5μm、平均1μm、平均2μm、平均3μm、平均4μmとしたものを、この順に実施例1〜5とし、砥粒3の突き出し量を平均0.3μm、平均4.5μmとしたものを、この順に比較例1、2とした。一方、上記実施例1〜5及び比較例1、2とは異なり、ブレード本体1の基層8上にめっき層9を形成せずに、該ブレード本体1の厚さt:0.1mmとした切断用ブレードを用意し、これを比較例3とした。
そして、これら実施例1〜5及び比較例1〜3の切断用ブレードを用いて、発泡シートに固定した幅100mm、長さ100mm、厚さ0.7mmのセラミックグリーンシートを、幅方向と長さ方向とに0.9mmのピッチで切断する切断試験を行った。
また切断条件については、主軸回転数:30000min−1、送り速度:200mm/secとした。また、切断用ブレードを切断装置の主軸に固定するフランジの外径はφ52mmであり、従って切断用ブレードはその外周端縁が切れ刃として径方向に1mmフランジからはみ出して被切断物に切り込まれた。
そして、切断された被切断物(製品となるチップ)への切屑付着率、切断された被切断物の寸法異常発生率、切断の際の主軸電流値、及び切断試験終了後の切断用ブレードの外周端縁(フランジからはみ出した切れ刃部分)における側面目詰まり発生率を確認した。
尚、切屑付着率は、上述のように幅100mm、長さ100mmのセラミックグリーンシートを、0.9mmのピッチで幅方向と長さ方向とに切断して得られるすべてのチップのうち、切屑が付着していたチップの個数の割合である。また、寸法異常の発生率は、同じく得られるすべてのチップのうち、幅0.8mm、長さ0.8mmであるべき幅寸法と長さ寸法の少なくとも一方が、0.8±0.02mmの範囲内に入らなかったチップの個数の割合である。
Figure 2013244546
表1に示されるように、実施例1〜5は、比較例1〜3に比べて、切屑付着率、寸法異常の発生率、主軸電流値及び目詰まり発生率がすべて低減された。
なお、前記目詰まり発生率については、極力少ないことが望ましいが、15%以下であれば、切断抵抗の上昇やチップの変形が抑制されて、高品位な加工が可能である。また、比較例1については、側面目詰まりは認められなかった一方、摩擦熱による側面焼けが確認された。
[砥粒の突き出し量に関する切断品位等確認試験B]
この実施例でも、上述した[砥粒の突き出し量に関する切断品位等確認試験A]とは異なる設定にて、ブレード本体1の側面4から突出される砥粒3の突き出し量と、切断品位等(切断したチップへの切屑付着率、チップの寸法異常発生率、主軸電流値、ブレード本体の側面目詰まり発生率)との関係について、確認を行った。
具体的には、粒度#800の砥粒3がNi金属めっき相よりなる金属結合相2に分散された基層8に、エッチングにより凹溝6を形成して、さらにこの基層8上に、砥粒3を含まないNiめっき液を用いた電気めっき(電解めっき)によりめっき層9を形成して、外径:54mm、内径:40mm、厚さt:0.07mmのブレード本体1を有する切断用ブレードを複数製造した。そして、これら切断用ブレードのうち、ブレード本体1の側面4から突出される砥粒3の突き出し量を、平均0.5μm、平均1μm、平均2μm、平均3μm、平均4μmとしたものを、この順に実施例6〜10とし、砥粒3の突き出し量を平均0.3μm、平均4.5μmとしたものを、この順に比較例4、5とした。一方、上記実施例6〜10及び比較例4、5とは異なり、ブレード本体1の基層8上にめっき層9を形成せずに、該ブレード本体1の厚さt:0.07mmとした切断用ブレードを用意し、これを比較例6とした。
そして、これら実施例6〜10及び比較例4〜6の切断用ブレードを用いて、発泡シートに固定した幅100mm、長さ100mm、厚さ0.5mmのセラミックグリーンシートを、幅方向と長さ方向とに0.67mmのピッチで切断する切断試験を行った。
また切断条件については、主軸回転数:30000min−1、送り速度:100mm/secとした。また、切断用ブレードを切断装置の主軸に固定するフランジの外径はφ52mmであり、従って切断用ブレードはその外周端縁が切れ刃として径方向に1mmフランジからはみ出して被切断物に切り込まれた。
そして、切断されたチップへの切屑付着率、チップの寸法異常発生率、切断の際の主軸電流値、及び切断試験終了後の切断用ブレードの外周端縁における側面目詰まり発生率を確認した。
尚、切屑付着率は、上述のように幅100mm、長さ100mmのセラミックグリーンシートを、0.67mmのピッチで幅方向と長さ方向とに切断して得られるすべてのチップのうち、切屑が付着していたチップの個数の割合である。また、寸法異常の発生率は、同じく得られるすべてのチップのうち、幅0.6mm、長さ0.6mmであるべき幅寸法と長さ寸法の少なくとも一方が、0.6±0.02mmの範囲内に入らなかったチップの個数の割合である。
Figure 2013244546
表2に示されるように、実施例6〜10は、比較例4〜6に比べて、切屑付着率、寸法異常の発生率及び目詰まり発生率がすべて低減された。
なお、比較例4については、側面目詰まりは認められなかった一方、摩擦熱による側面焼けが確認された。
[凹溝深さに関する切断品位等確認試験]
この実施例では、凹溝6の深さdのブレード本体1の厚さtに対する比(つまりd/t)と、切断品位等(切断したチップへの切屑付着率、チップの寸法異常発生率、主軸電流値、ブレード本体の側面目詰まり発生率、切断試験後のブレード状態)との関係について、確認を行った。
具体的には、粒度#1000の砥粒3がNi金属めっき相よりなる金属結合相2に分散された基層8上に、めっき層9を形成して、ブレード本体1の側面4から突出される砥粒3の突き出し量を平均3μmとした、外径:54mm、内径:40mm、厚さt:0.05mmのブレード本体1を有する切断用ブレード10を複数製造した。そして、これら切断用ブレード10のうち、基層8に凹溝6を形成せずにめっき層9を析出させたものを実施例11とし、また、基層8に凹溝6を形成してめっき層9を析出させたもののうち、凹溝6の深さdのブレード本体1の厚さtに対する比d/tを、5%、10%、30%、50%、70%としたものを、この順に実施例12〜16とした。これら実施例12〜16はいずれも、凹溝6の幅wが1mm、凹溝6の径方向の長さが1mmで、ブレード本体1の両側面4に16本の凹溝6を、両側面4の間で周方向に等間隔かつ交互に形成した。なお、上記実施例11は凹溝6が形成されていないことから、比d/tは0%である。また、基層8に、凹溝6を形成する代わりにブレード本体1を厚さ方向に貫通するスリットを形成してめっき層9を析出させた切断用ブレード10を用意し、これを実施例17とした。つまり実施例17において、比d/tは100%である。
そして、これら実施例11〜17の切断用ブレード10を用いて、発泡シートに固定した幅100mm、長さ100mm、厚さ0.3mmのセラミックグリーンシートを、幅方向と長さ方向とに0.65mmのピッチで切断する切断試験を、切断条件を変えて2回行い、その際の切断されたチップへの切屑付着率、チップの寸法異常発生率、切断の際の主軸電流値、切断試験終了後の切断用ブレードの外周端縁における側面目詰まり発生率、及び切断試験終了後の切断用ブレードの状態を確認した。
これらの結果を表3、表4に示す。
また切断条件については、表3の切断試験においては、主軸回転数:30000min−1、送り速度:100mm/secとした。また、表4の切断試験においては、主軸回転数:40000min−1、送り速度:300mm/secとした。なお、切断用ブレードを切断装置の主軸に固定するフランジの外径はともにφ52mmであり、従って切断用ブレードはその外周端縁が切れ刃として径方向に1mmフランジからはみ出して被切断物に切り込まれた。
また、切屑付着率は、上述のように幅100mm、長さ100mmのセラミックグリーンシートを、0.65mmのピッチで幅方向と長さ方向とに切断して得られるすべてのチップのうち、切屑が付着していたチップの個数の割合である。また、寸法異常の発生率は、同じく得られるすべてのチップのうち、幅0.6mm、長さ0.6mmであるべき幅寸法と長さ寸法の少なくとも一方が、0.6±0.02mmの範囲内に入らなかったチップの個数の割合である。
Figure 2013244546
Figure 2013244546
これら表3、表4に示される結果のうち、切断条件が比較的緩やかな表3の切断試験では、実施例11〜17のすべてにおいて、切屑付着率が8%以下、寸法異常の発生率が0.2%以下、主軸電流値が2.7A以下、目詰まり発生率が14%以下となって、良好な加工品位が得られることが確認された。またその中でも、凹溝6を有するとともに、比d/tが10〜60%の範囲内とされた実施例13〜15では、切屑付着率が0.6%以下、寸法異常の発生率が0.0%、主軸電流値が2.4A以下となり、さらにその中でも比d/tが20〜50%の範囲内である実施例14、15では、切屑付着率が0.3%、主軸電流値が2.1A、目詰まり発生率が5%以下となって、優れた加工品位が得られることがわかった。
また、表3の切断試験よりも切断条件が厳しい表4の切断試験においても、実施例11〜17のすべてにおいて、切屑付着率が10%以下、寸法異常の発生率が12%以下、目詰まり発生率が15%以下となって、加工品位が確保されることが確認された。またその中でも、凹溝6を有するとともに、比d/tが10〜60%の範囲内とされた実施例13〜15では、切屑付着率が2.6%以下、寸法異常の発生率が1.5%以下、主軸電流値が3.1A以下、目詰まり発生率が9%以下となり、さらにその中でも比d/tが20〜50%の範囲内である実施例14、15では、切屑付着率が1.5%以下、主軸電流値が3.0A以下、目詰まり発生率が6%以下と、優れた結果が得られた。
1 ブレード本体
2 金属結合相
3 砥粒
4 側面
6 凹溝
8 基層
9 めっき層
10 切断用ブレード
t ブレード本体の厚さ

Claims (4)

  1. 金属結合相に砥粒が分散された基層を有する円形薄板状のブレード本体を備えた切断用ブレードであって、
    前記砥粒の粒径は、6/12μm〜40/60μmであり、
    前記ブレード本体の厚さ方向を向く側面から前記砥粒が突出される突き出し量が、平均0.5μm〜4μmとされていることを特徴とする切断用ブレード。
  2. 請求項1に記載の切断用ブレードであって、
    前記ブレード本体の厚さ方向に沿う前記基層の外側に、無電解めっき又は電気めっきによりめっき層が形成されることで、前記突き出し量が設定されていることを特徴とする切断用ブレード。
  3. 請求項1又は2に記載の切断用ブレードであって、
    前記ブレード本体は、厚さ0.15mm以下とされ、
    前記ブレード本体の両側面には、該ブレード本体を厚さ方向に貫通しない有底の凹溝が周方向にずらされて形成されていることを特徴とする切断用ブレード。
  4. 金属結合相に砥粒が分散された基層を有する円形薄板状のブレード本体を備えた切断用ブレードの製造方法であって、
    前記ブレード本体の厚さ方向に沿う前記基層の外側に、無電解めっき又は電気めっきによりめっき層を形成して、前記ブレード本体の側面から前記砥粒が突出される突き出し量を、平均0.5μm〜4μmとすることを特徴とする切断用ブレードの製造方法。
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