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JP2013185064A - プロピレン系ブロック共重合体の製造方法 - Google Patents

プロピレン系ブロック共重合体の製造方法 Download PDF

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JP2013185064A JP2012051069A JP2012051069A JP2013185064A JP 2013185064 A JP2013185064 A JP 2013185064A JP 2012051069 A JP2012051069 A JP 2012051069A JP 2012051069 A JP2012051069 A JP 2012051069A JP 2013185064 A JP2013185064 A JP 2013185064A
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Nobuhiro Iwai
伸浩 岩井
Kiyoshi Yugawa
潔 湯川
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Japan Polypropylene Corp
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Abstract

【課題】射出成形に適した高い流動性と充分な耐熱性を有し、更に良好な柔軟性を併せ有するプロピレン系ブロック共重合体を安定的に製造する方法を提供する。
【解決手段】メタロセン系触媒を用いる、第1工程と第2工程とを含む多段気相重合法により、MFRが20〜1,000g/10分のプロピレン系ブロック共重合体を製造する方法。第1工程で、プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(I)を、30〜70重量%生成させる。成分(I)の融解ピーク温度(Tm)と、当該工程の重合温度(T1)は、45℃≦(Tm−T1)≦80℃を満たす。第2工程は、エチレン含量が成分(I)より高く、且つMFRが成分(I)より高いプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(II)を70〜30重量%生成させる。当該工程の重合温度(T2)は40〜62℃の範囲内で、第2工程の反応器へ供給する循環ガスの温度は重合温度(T2)よりも高い。
【選択図】なし

Description

本発明は、メタロセン系触媒を用いる多段重合によるプロピレン系ブロック共重合体の製造方法に関し、詳しくは、射出成形に適した高い流動性と充分な耐熱性を有し、更に適度な柔軟性を併せ有する、プロピレン系ブロック共重合体の製造方法に係るものである。
高分子材料として重用されている、オレフィン系の熱可塑性エラストマー或いはプラストマーとしては、エチレン−α−オレフィン共重合体に代表されるランダムコポリマーなどのポリマー材料がよく知られている。
これらは、適度な柔軟性と強度を持ち、リサイクルや焼却廃棄などの環境問題適応性が高く、また、軽量で成形性や経済性などにも優れていることから、フィルムやシート、繊維、不織布、各種容器、種々の成形品、改質剤などとして幅広い分野で利用されている。
かかる熱可塑性エラストマーのうち、第1工程でポリプロピレン成分を、第2工程でプロピレン−エチレン共重合体エラストマー成分を製造する、いわゆるプロピレン系ブロック共重合体と称されるものは、ランダムコポリマーなどのポリマー成分のブレンドのような、単なる機械的な混合により製造されるエラストマーに対して、生成物の品質が安定し、製造コストの低減が図れ、エラストマー組成を広く可変にできるなどの有利な特徴を有することから、経済性が高く、耐熱性及び強度などに優れており、最近において非常に汎用されている。
そして、このようなプロピレン系ブロック共重合体タイプの熱可塑性エラストマーを射出成形分野に適用する場合おいては、成形サイクルタイムを短縮して、生産効率を上げることが求められる。成形サイクルタイムの短縮には、プロピレン系ブロック共重合体そのものの流動性を高める、すなわち高MFRであることが必要である。
しかし、このような高いMFRを有するプロピレン系ブロック共重合体の製造においてチーグラー・ナッタ系重合触媒を用いる場合は、活性点の種類が複数あるため、生成したプロピレン−エチレン共重合体の結晶性分布及び分子量分布が広く、低結晶性・低分子量成分を多く生成することにより、重合パウダーのベタツキが強く見られ、工業的な製造工程に対して問題が発生し易いという欠点を呈している。
他の方法としては、プロピレン系ブロック共重合体を有機過酸化物と溶融混錬してプロピレン系ブロック共重合体のMFRを高めることでも可能である。しかし、有機過酸化物の使用による製造単価の上昇、残留有機過酸化物や有機過酸化物の分解生成物による臭気や色相の悪化という問題がある。
近年ではメタロセン系触媒の技術が進歩しており、メタロセン系触媒はチーグラー・ナッタ系触媒とは異なり、オレフィン系共重合体の製造において、分子量分布と結晶性分布が極めて狭いという特徴を呈し、柔軟性を有するMFRが高いプロピレン系ブロック共重合体の製造においても、低結晶性・低分子量成分の生成を抑制することを期待できる。
具体的には、第2工程で結晶性の低い、若しくは、結晶性を持たないエラストマー成分を多く製造した場合でも、分子量や結晶性が著しく低い成分が殆ど生成せず、べたつきのない良好な重合パウダーが得られることが知られている(特許文献1,2を参照)。
そして、メタロセン系触媒を用いて高いMFRを有するプロピレン系ブロック共重合体を製造する場合、第1工程で製造するポリプロピレン成分のMFRを高くすることで、プロピレン系ブロック共重合体のMFRを高くする方法がある。しかしながら、この場合には、水素などのMFR調整剤の影響で第1工程の触媒活性が急激に高くなるため、第2工程に移る前に触媒活性を使いきってしまう。そのため、第2工程の製造量を高くできず、充分な柔軟性が得られないという問題が派生している。
一方で、第2工程で製造するプロピレン−エチレン共重合体エラストマー成分のMFRを高くする、すなわち重量平均分子量を下げる方法もあるが、結晶性の低い、若しくは、結晶性を持たない成分の粘度が下がるために、メタロセン系触媒を用いてもパウダーがべたついて安定に製造できないという欠点が避けられない。
特開2005−132992号公報(要約を参照) 特開2007−297505号公報(特許請求の範囲及び段落0001を参照)
本発明においては、前記の従来技術を鑑みて、プロピレン系ブロック共重合体を射出成形に利用する際に、射出成形に適した高い流動性と充分な耐熱性を有し、更に適度な柔軟性を併せ有する、プロピレン系ブロック共重合体を安定的に製造する方法を開発することを、発明が解決すべき課題とするものである。
本発明者らは、かかる課題を解決すべく、上記のプロピレン系ブロック共重合体の製造方法の開発を目指して、メタロセン系触媒によるプロピレン系ブロック共重合体の多段重合を利用し、重合条件や各成分の相関などを熟慮勘案し、重合反応器内での結晶性の低い、若しくは、結晶性を持たないプロピレン−エチレン共重合体エラストマー成分の運動性と液化プロピレンのパウダーへの吸着量増加に着目することにより、開発すべき上記のプロピレン系ブロック共重合体の製造方法を着想するに至った。
すなわち、プロピレン−エチレン共重合体エラストマー成分を製造する、メタロセン系触媒による多段重合の第1工程において、重合温度を特定の範囲で制御し、第2工程において、重合温度を特定の範囲で制御し、未反応ガス状モノマーを特定の条件にて循環させることにより、重量平均分子量が低く(すなわちMFRが高く)、かつ、適度な柔軟性を併せ有するプロピレン系ブロック共重合体を安定に製造する方法を見い出した。
なお、本発明に基づいて製造したプロピレン系ブロック共重合体は、射出成形に適した高い流動性と充分な耐熱性を有し、更に良好な柔軟性を併せ有する点で従来の技術とは大きく異なるものである。
具体的には、本発明の第1の発明(基本発明)によれば、メタロセン系触媒を用いる、下記の第1工程と第2工程とを含む多段重合法によって、MFRが20〜1,000g/10分であるプロピレン系ブロック共重合体を製造する方法が提供される。(なお、本発明におけるMFRは、JIS K6758により測定したメルトインデックス値を示す。)
第1工程:気相重合法によって、プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(I)を、上記プロピレン系ブロック共重合体の30〜70重量%生成させる工程であって、成分(I)の示差走査熱量測定(DSC)による融解ピーク温度Tmと、当該工程の重合温度T1との間で、
45℃≦(Tm−T1)≦80℃
を満たす条件下で行なう。
第2工程:気相重合法によって、エチレン含量が成分(I)より高く、かつMFRが成分(I)より高いプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(II)を上記プロピレン系ブロック共重合体の70〜30重量%生成させる工程であって、当該工程の重合温度(T2)が40〜62℃の範囲内で行ない、かつ、第2工程の反応器へ供給する循環ガスの温度を重合温度(T2)よりも高い条件で行う。
本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、成分(II)の重量平均分子量が5万以上10万未満であることを特徴とする、プロピレン系ブロック共重合体を製造する方法が提供される。
また、本発明の第3の発明によれば、第1又は第2のいずれかの発明において、成分(I)のMFRが3〜50g/10分であることを特徴とする、プロピレン系ブロック共重合体を製造する方法が提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、第1工程の重合温度T1が50℃以上であることを特徴とする、プロピレン系ブロック共重合体を製造する方法が提供される。
本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(I)の融解ピーク温度Tmが105〜140℃であることを特徴とする、プロピレン系ブロック共重合体を製造する方法が提供される。
更に、本発明の第6の発明によれば、第1〜5のいずれかの発明において、第1工程及び/又は第2工程を、撹拌装置を有する反応器で行うことを特徴とする、プロピレン系ブロック共重合体を製造する方法が提供される。
本発明の第7の発明によれば、第6の発明において、攪拌装置が水平方向の撹拌軸を有する反応器であることを特徴とする、プロピレン系ブロック共重合体を製造する方法が提供される。
本発明の第8の発明によれば、第1〜7のいずれかの発明において、気相重合法が主として液化プロピレンの気化熱により重合熱の除去が行われることを特徴とする、プロピレン系ブロック共重合体を製造する方法が提供される。
また更に、本発明の第9の発明によれば、第1〜8のいずれかの発明におけるプロピレン系ブロック重合体を製造する方法により製造された、プロピレン系ブロック重合体を用いて射出成形されたプロピレン系ブロック重合体の成形品が提供される。
本発明のプロピレン系ブロック共重合体を製造する方法の発明においては、段落000
9に記載したとおり、特異な製造方法を採用することにより製造したプロピレン系ブロック共重合体は、射出成形に適した高い流動性と充分な耐熱性を有し、更に適度な柔軟性を併せ有する点で、従来の技術とは大きく異なるものであり、本発明は従来のいずれの特許文献からも窺えないものである。
本発明においては、射出成形に適した高い流動性と充分な耐熱性を有し、更に適度な柔軟性を有するプロピレン系ブロック共重合体を安定的に製造する方法を提供できる。
本発明の製造方法に使用する重合反応系を例示した図である。
1:触媒成分供給配管 2,13:原料循環ガス供給配管
3,12:原料プロピレン補給配管 4,11:未反応ガス抜出し配管
5,9:重合器 6:反応器下流末端
7:ガス遮断槽 8:反応器上流末端
10:活性抑制剤フィードライン 14: 重合体抜出し配管
15:脱ガス槽 16:ロータリーフィーダー
17:乾燥系輸送配管
1.基本的な発明
(1)基本発明の特徴
本発明は、基本発明として、メタロセン系触媒による多段重合の第1工程において、重合温度を特定の範囲で制御し、第2工程において、重合温度を特定の範囲で制御し、未反応ガス状モノマーを特定の条件にて循環させることにより、MFRが高く射出成形に好適に利用でき、耐熱性も高く、かつ、適度な柔軟性をも有するプロピレン系ブロック共重合体を安定に製造する方法の発明である。
(2)基本発明の構成
メタロセン系触媒を用いる、下記の第1工程と第2工程とを含む多段重合法によって、MFRが20〜1,000g/10分であるプロピレン系ブロック共重合体を製造する方法。
第1工程:気相重合法によって、プロピレン−エチレンランダム共重合体成分 (I)を、プロピレン系ブロック共重合体の30〜70重量%生成させる工程であって、成分(I)の示差走査熱量測定(DSC)による融解ピーク温度(Tm)と、当該工程の重合温度(T1)との間で、
45℃≦(Tm−T1)≦80℃
を満たす条件下で行なう。
第2工程:気相重合法によって、エチレン含量が成分(I)より高く、且つMFRが成分(I)より高いプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(II)をプロピレン系ブロック共重合体の70〜30重量%生成させる工程であって、当該工程の重合温度(T2)が40〜62℃の範囲内で行ない、かつ、第2工程の反応器は、未反応ガス状モノマーを循環させる循環経路を有し、第2工程の反応器へ供給する循環ガスの温度を重合温度(T2)よりも高い条件で行う。
2.重合触媒
(1)メタロセン系触媒
本発明のプロピレン系ブロック共重合体を製造する方法は、メタロセン系触媒の使用を必須とする。
メタロセン系触媒の種類は、本発明の性能を有する共重合体を生成できる限りは、特に限定はされるものではないが、本発明の要件を満たすために、例えば、下記に示すような成分(A)、(B)、及び必要に応じて使用する成分(C)からなるメタロセン系触媒を用いることが好ましい。
成分(A):一般式(1)で表される遷移金属化合物から選ばれる少なくとも1種のメタロセン遷移金属化合物
Figure 2013185064
成分(B):下記(b−1)〜(b−4)から選ばれる少なくとも1種の固体成分
(b−1)有機アルミオキシ化合物が担持された微粒子状担体
(b−2)成分(A)と反応して成分(A)をカチオンに変換することが可能な、イオン性化合物又はルイス酸が担持された微粒子状担体
(b−3)固体酸微粒子
(b−4)イオン交換性層状珪酸塩
成分(C):有機アルミニウム化合物
(2)成分(A)
成分(A)としては、下記の一般式(1)で表される遷移金属化合物から選ばれる少なくとも1種のメタロセン遷移金属化合物を使用することができる。
Figure 2013185064
(式中、A及びA’は置換基を有していてもよい共役五員環配位子、Qは二つの共役五員環配位子間を任意の位置で架橋する結合性基、X及びYは、助触媒と反応してオレフィン重合能を発現させるσ共有結合性補助配位子、Mは、周期律表第4族の遷移金属である)
共役五員環配位子は置換基を有していてもよいシクロペンタジエニル基誘導体である。置換基を有する場合、その置換基の例としては、炭素数1〜30の炭化水素基(ハロゲン、珪素、酸素、硫黄などのヘテロ原子を含有していてもよい)が挙げられ、この炭化水素基は一価の基としてシクロペンタジエニル基と結合していても、またこれが複数存在するときにその内の2個がそれぞれ他端(ω−端)で結合してシクロペンタジエニルの一部と共に環を形成していてもよい。この置換基の他の例としては、インデニル基、フルオレニル基、又はヒドロアズレニル基等が挙げられ、これらの基は、更に置換基を有していてもよく、中でもインデニル基又はヒドロアズレニル基が好ましい。
Qとして、好ましくはメチレン基、エチレン基、シリレン基、ゲルミレン基、及びこれらに炭化水素基が置換したもの、並びにシラフルオレン基などが挙げられる。
X及びYの補助配位子は、成分(b)などの助触媒と反応してオレフィン重合能を有する活性なメタロセンを生成させるものであり、各々水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、或いは酸素、窒素、珪素などのヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基が例示できる。これらのうち好ましいものは、炭素数1〜10の炭化水素基、或いはハロゲン原子である。
Mは、チタン、ジルコニウム、ハフニウムであり、特に、ジルコニウム、ハフニウムが好ましい。
更に上記の遷移金属化合物の中でも、プロピレンの立体規則性重合を進行させ、かつ得られるプロピレン重合体の分子量が高い(MFRが低い)ものが好ましい。
具体的には、特開平1−301704号公報、特開平4−211694号公報、特開平6−100579号公報、特表2002−535339号公報、特開平6−239914号公報、特開平10−226712号公報、特開平3−193796号公報、特表2001−504824号公報などに記載の遷移金属化合物が好ましく挙げられる。
ここで、具体的に代表的な錯体の例示として、インデニル基又はヒドロアズレニル基を有する錯体を、以下に記載する。
(1)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、
(2)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、
(3)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、
(4)ジクロロ[1,1’−ジフェニルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、
(5)ジクロロ[1,1’−ジメチルゲルミレンビス{2,5−ジメチル−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、
(6)ジクロロ[1,1’−ジメチルゲルミレンビス{2,5−ジエチル−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、
(7)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−t−ブチル−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、
(8)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−トリメチルシリル−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、
(9)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−フェニル−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、
(10)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(4,5−ジメチル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、
(1)ジクロロ{1,1’−ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニル−4−ヒドロアズレニル)}ハフニウム、
(2)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、
(3)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−t−ブチルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、
(4)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、
(5)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(3−クロロ−4−t−ブチルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、
(6)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(3−メチル−4−t−ブチルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、
(7)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(3−クロロ−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、
(8)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(3−メチル−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、
(9)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(1−ナフチル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、
(10)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(2−ナフチル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム
(3)成分(B)
成分(B)としては、上述した成分(b−1)〜成分(b−4)から選ばれる少なくとも1種の固体成分を使用する。
これらの各成分は公知のものであり、公知技術の中から適宜選択して使用することができる。その具体的な例示や製造方法については、特開2002−284808号公報、特開2002−53609号公報、特開2002−69116号公報などに詳細な例示がある。
ここで、成分(b−1)、成分(b−2)に用いられる微粒子状担体としては、シリカ、アルミナ、マグネシア、シリカアルミナ、シリカマグネシアなどの無機酸化物、塩化マグネシウム、オキシ塩化マグネシウム、塩化アルミニウム、塩化ランタンなどの無機ハロゲン化物、更には、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンジビニルベンセン共重合体、アクリル酸系共重合体などの多孔質の有機単体を挙げることができる。
成分(b−1)、成分(b−2)に用いられる微粒子状担体は、レーザー粒径測定法で測定した平均粒子径が25〜200μmが好ましく、25〜150μmがより好ましい。
また、成分(B)の非限定的な具体例としては、成分(b−1)として、メチルアルモキサン、イソブチルアルモキサン、メチルイソブチルアルモキサン、ブチルボロン酸アルミニウムテトライソブチルなどが担持された微粒子状担体を、成分(b−2)として、トリフェニルボラン、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどが担持された微粒子状担体を、成分(b−3)として、アルミナ、シリカアルミナ、塩化マグネシウム、フッ素化合物処理した後に、火焼したシリカアルミナ、ペンタフルオロフェノールとジエチル亜鉛などの有機金属化合物を反応させ、更に水と反応後、同生成物を担持したシリカなどを、成分(b−4)として、モンモリロナイト、ザコウナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、ベントナイト、テニオライトなどのスメクタイト族、バーミキュライト族、雲母族などが挙げられる。これらは、混合層を形成しているものでもよい。
上記成分(B)の中で特に好ましいものは、成分(b−4)のイオン交換性層状珪酸塩であり、更に好ましい物は、酸処理、アルカリ処理、塩処理、有機物処理などの化学処理が施されたイオン交換性層状珪酸塩である。
(4)成分(C)
必要に応じて用いられる成分(C)の有機アルミニウム化合物の例は、次式で示される。
一般式 AlR3−a
(式中、Rは、炭素数1〜20の炭化水素基、Xは、水素、ハロゲン、アルコキシ基、aは0<a≦3の数)で示される。
例示としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム、又はジエチルアルミニウムモノクロライド、ジエチルアルミニウムモノメトキシドなどのハロゲン若しくはアルコキシ含有アルキルアルミニウムである。またこの他に、メチルアルミノキサンなどのアルミノキサン類なども使用できる。これらのうち特にトリアルキルアルミニウムが好ましい。
(5)触媒の形成
成分(A)、成分(B)及び必要に応じて成分(C)を接触させて触媒とする。その接触方法は特に限定されないが、以下のような順序で接触させることができる。また、この接触は、触媒調製時だけでなく、オレフィンによる予備重合時又はオレフィンの重合時に行ってもよい。
1)成分(A)と成分(B)を接触させる
2)成分(A)と成分(B)を接触させた後に成分(C)を添加する
3)成分(A)と成分(C)を接触させた後に成分(B)を添加する
4)成分(B)と成分(C)を接触させた後に成分(A)を添加する
5)三成分を同時に接触させる。
本発明で使用する成分(A)、(B)及び(C)の使用量は任意である。例えば、成分(B)に対する成分(A)の使用量は、成分(B)1gに対して、好ましくは0.1〜500μmol、特に好ましくは0.5〜100μmolの範囲である。成分(B)に対する成分(C)の使用量は、成分(B)1gに対し、好ましくは遷移金属の量が0〜100mmol、特に好ましくは0.005〜50mmolの範囲である。したがって、成分(A)に対する成分(C)の量は、遷移金属のモル比で0〜10、好ましくは0.02〜10、特に好ましくは0.2〜10の範囲内である。なお、(C)は任意成分なので0を含めた。
(6)予備重合
本発明の触媒は、予めオレフィンを接触させて少量重合されることからなる予備重合処理に付すことが好ましい。使用するオレフィンは、特に限定はないが、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、ビニルシクロアルカン、スチレンなどを使用することが可能であり、これらは単独のみならず、他のα−オレフィンとの2種以上の混合物であってもよい。中でもプロピレンを使用することが特に好ましい。
オレフィンの供給方法は、オレフィンを反応槽に定速的に或いは定圧状態になるように維持する供給方法やその組み合わせ、段階的な変化をさせるなど、任意の方法が可能である。
予備重合温度と時間は、特に限定されないが、各々−20〜100℃、5分〜24時間の範囲であることが好ましい。
また、予備重合量は、予備重合ポリマー量が成分(B)に対し、好ましくは0.01〜100、更に好ましくは0.1〜50である。
予備重合処理は、一般的に撹拌下に行うことが好ましく、そのとき不活性溶媒を存在させることもできる。予備重合処理に用いられる不活性溶媒は、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン及び流動パラフィンなどの液状飽和炭化水素やジメチルポリシロキサンの構造を持ったシリコンオイルなど重合反応に著しく影響を及ぼさない不活性溶媒である。これらの不活性溶媒は1種の単独溶媒又は2種以上の混合溶媒のいずれでもよい。これらの不活性溶媒の使用に際しては重合に悪影響を及ぼす水分やイオウ化合物などの不純物を取り除いた後で使用することが好ましい。
予備重合処理は複数回行ってもよく、この際用いるモノマーは同一であっても異なっていてもよい。また、予備重合処理後にヘキサン、ヘプタンなどの不活性溶媒で洗浄を行うこともできる。
予備重合を終了した後に、触媒の使用形態に応じ、そのまま使用することが可能であるが、必要ならば乾燥を行うことも可能である。
更に、上記各成分の接触の際、若しくは接触の後に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどの重合体やシリカ、チタニアなどの無機酸化物固体から選ばれる触媒の流動性改質剤などを共存させることも可能である。
3.プロピレン系ブロック共重合体の重合
(1)重合形式
重合形式は、それぞれ第1工程、第2工程とも回分法、及び連続法どちらの方式も採用できるが、製造コストなどを考慮した工業的な生産という観点からは、第1工程を行う反応器に連続的或いは間欠的に触媒を導入し、かつ、第1工程から第2工程に連続的或いは間欠的にポリマーを移送し、かつ、第2工程から連続的或いは間欠的にポリマーを抜き出す連続法を採用する方が好ましい。本発明においては、第1工程と第2工程からなる2段重合が行われるが、場合によっては、それぞれの工程を更に分割することができ、また2段重合に限定されない。
(2)重合方法
本発明では、第1工程部分を不活性溶媒中で重合を行ういわゆるスラリー重合で行う場合に、成分(I)の融点が比較的低いと溶媒中への溶出成分量が多くなってしまうため、工業的に安定な製造が困難になる。また、溶出成分の分離・回収操作も必要となるため、製造コストが上昇し、工業的な生産には適さない。第1工程部分を液体プロピレン中で重合を行ういわゆるバルク重合で行うと、低融点ポリマー製造時にはポリマーの溶解が懸念されるため、工業的なレベルまで重合温度を上げることができない、更に活性の制御が難しいため、第1工程での触媒効率が高くなり過ぎる懸念がある。このため、第2工程で生成される成分(II)の割合の高いプロピレン系ブロック共重合体の製造ができなくなってしまう。このようなことから、本発明では第1工程を気相重合で行うことが最も好ましい。
更に、第2工程の製造においても気相重合を採用することが望ましい。第2工程においてプロピレン−エチレンランダム共重合体成分がゴム成分として製造されるが、溶媒などの液体が存在すると溶媒中へゴム成分が溶出してしまう。このことから本発明の成分(II)の製造においては気相重合法が好ましく、特に本発明のような成分(II)の割合が多いポリマーを製造するには気相重合法が好ましい。更に好ましくは、機械的な攪拌を伴う気相重合法を用いるのが望ましい。
(3)重合反応器
本発明においては、機械的な攪拌を伴う気相重合プロセスであれば、反応器の形態に制限はなく、縦型反応器でも横型反応器でも、或いはその他の形態でも使用することができる。より好ましくは、攪拌装置が水平方向の撹拌軸を有する横型反応器である。
横型反応器の上流末端へ供給される触媒粒子は重合反応によりポリマー粒子へと徐々に成長していく。横型反応器で重合を行う場合、重合によるポリプロピレンの生成と機械的な撹拌の2つの力により、これらの粒子は徐々に成長しながら反応器の軸方向に沿って進んで行く。そのため、反応器の上流末端から下流末端に向かって、成長度すなわち滞留時間の揃った粒子が経時的に並ぶことになる。かくして、横型反応器ではフローパターンがピストンフロー型となり、完全混合槽を数台直列に並べた場合と同程度に滞留時間分布を狭くする効果がある。これは、その他の重合反応器には見られない優れた特徴であり、単一の反応器で2個、3個又はそれ以上の反応器と同等な固体混合度を容易に達成することができる点で経済的に有利である。
(4)気相重合における除熱
気相重合において、重合熱の除熱方式に特に制限はなく、冷却ガス、液化プロピレンの気化熱による除熱、また、それ以外の形態でも使用できる。
より好ましくは、液化プロピレンを用いた除熱方式が望ましい。液化プロピレンは、パウダーへ含浸するためパウダー粒子内でも除熱効果が得られパウダーの性状維持に大きく寄与する。この効果により、液化プロピレンの気化熱による除熱方式は、プロピレン系ブロック共重合体の製造範囲の拡大に非常に有効である。
(5)第1工程
第1工程は、反応器上流部分より、メタロセン系触媒をフィードし、反応器の気相部を、プロピレン、エチレンガスにて満たし、攪拌翼によってパウダー相を攪拌混合させて、プロピレンとエチレンを共重合させて成分(I)を製造する工程である。
第1工程における重合温度T1においては、該工程で製造される成分(I)の融点Tmとの差(Tm−T1)が45〜80℃、好ましくは45〜75℃となるように設定される。(Tm−T1)が45℃より小さいと、重合される成分(I)の性状が悪化し、安定な運転ができなくなる。また、80℃よりも大きいと、重合温度が低くなり過ぎ、除熱のための冷却水温度を確保することが困難になるなど工業的な生産が許される温度領域を下回ってしまう。Tm−T1の範囲が、上記記載の範囲であることと同時に、徐熱のための冷却水温度を確保するためには、第1工程の重合温度T1は50℃よりも高いことが望ましい。第1工程では、所望のTmを予め設計し、そのTmに対して重合温度T1を設定するのが好ましい。
重合圧力は、気相重合における触媒性能から、重合活性を考慮して設定する必要がある。一方で、上記重合温度範囲でプロピレンが液化しない範囲で設定しなければならない。このようなことを考慮すると、重合に関与するモノマー、具体的にはプロピレン及びエチレンの分圧の合計は、通常0.1MPa以上、好ましくは0.5MPa以上、より好ましくは1MPa以上、4.5MPa以下、好ましくは4MPa以下、より好ましくは3.5MPa以下で実施することが望ましい。
反応器内には、上記のモノマーの他に、反応には直接関与しない窒素、プロパン、n−ブタン、イソブタンなどの、いわゆるイナートガス及び分子量調節剤として用いる水素などが存在していてもよい。
滞留時間は重合槽の構成や製品インデックスに合わせて任意に調整することができる。一般には、30分から10時間の範囲内で設定される。30分以上、好ましくは1時間以上、更に好ましくは2時間以上、10時間以下、好ましくは8時間以下、更に好ましくは6時間以下である。
(6)第2工程
本発明における、第2工程の重合温度T2は、40〜62℃である。一般的には、第2工程の生産量を高くするためには、できるだけ重合温度が高い方が望ましいが、本発明のように成分(II)のMFRを大きくしようとすると、プロピレン系ブロック共重合体のパウダー粒子の流動性低下が著しく低下する傾向がある。特に、成分(II)の重量平均分子量が10万未満となる場合、第2工程の重合温度が62℃を上回ると重合パウダー性状が悪化し長期運転が困難となる。この理由は、重合温度が高くなることで成分(II)が重合パウダーの表面にブリードし易くなり、重合パウダーの付着性が高くなるためと考えられる。そのため、重合パウダー相互や攪拌翼、反応器の壁面へ付着し易くなり、撹拌挙動が異常な状態となる。更には貯蔵タンクや輸送配管で付着すると閉塞が生じ、運転の継続が困難となる。
一方、低い重合温度の設定では、パウダーの性状は良好に保つことができるが、重合速度の低下が著しく、所望の成分(II)量を効率よく得ることは難しい。重合温度が40℃を下まわると、2段目の活性が低下し、柔軟性を付与する成分(II)の重合割合を維持することが困難となる。
よって、本発明のプロピレン系ブロック共重合体の製造においては、第2工程の重合温度は40〜62℃が必要である。好ましくは45〜61℃、より好ましくは50〜60℃である。
特に、重合熱の除去を液化プロピレンの気化熱で行う気相重合法の場合、重合パウダー中の組成の均一性を増すことができる。重合温度を低くすることで、重合熱の除去に用いる液化プロピレンの吸着量が増加し、パウダー内部へ溶け込むプロピレンの量が増加する。このため、パウダー内部においても除熱の効率があがり、パウダー内で均一な成長が得られ、成分(II)の高い重合量においても、粒子の割れなど粒子形状の悪化が抑制される。これによりパウダーの流動性も良好に維持できる。
本発明における、第2工程の反応器へ供給する循環ガスの温度は、第2重合温度T2より高くするのが好ましい。より好ましくは第2重合温度T2より1〜20℃高い。第2工程のガス組成は、凝縮性の低いガスの濃度が高くなるため、凝縮温度が低くなる。重合熱の除去に用いられる液化プロピレンは、反応器の圧力、ガス組成によって凝縮温度が変化する。第2工程のように、凝縮性の低いガス濃度が高くなると凝縮温度だけでなく反応器に循環させるガスの温度も低くなる。循環ガス温度が極端に低くなると反応器内に極端な温度分布が発生する。温度分布の発生により、温度計周辺部のパウダー温度が低くなるものの、温度計の測定できない部分で温度が高くなる可能性がある。温度計の値によって、除熱コントロールがされるため、高温部分が除熱されなくなり、パウダー性状に悪化が発生する。
上記現象の発生を防止するために、循環ガスを重合温度以上に加熱し、極端な温度分布の発生を防ぐ必要がある。
第2工程で反応器へ供給する循環ガス温度は、通常、第2重合温度T2より高くする。好ましくは、50〜90℃。更に好ましくは、55〜80℃である。この範囲であれば、循環ガスの凝縮を容易に抑えられ、また、パウダーの性状の悪化はない。
第2工程の重合時には、重合量制御を目的に、活性水素含有化合物又は含窒素化合物、含酸素化合物などの電子供与性化合物を存在させてもよい。これらの供給量(フィード量)は、触媒担持されている錯体1molに対して、0.5mol/h以上、好ましくは、10mol/h以上、より好ましくは、100mol/h以上、5,000mol/h以下、好ましくは、2,500mol/h以下、1,000mol/h以下である。
第2工程の重合圧力は、第2工程での必要触媒活性を得ることができれば特に限定はされないが、通常、0.5MPa以上、好ましくは1MPa以上、より好ましくは1.5MPa以上、5MPa以下、好ましくは、4MPa以下、より好ましくは3MPa以下である。前記の電子供与化合物を共存させる場合は、プロピレンが液化しない範囲で、触媒活性を高くする充分に高い圧力に設定することが好ましい。
第1工程と同様に、滞留時間は重合槽の構成や製品インデックスに合わせて任意に調整することができる。一般的には、30分以上、好ましくは1時間以上、更に好ましくは2時間以上、5時間以下、好ましくは4時間以下である。
ここで、生産される重合パウダーの粒径は、好ましくは700μm以上、より好ましくは850μm以上、更に好ましくは1,000μm以上、好ましくは4,000μm以下、より好ましくは3,500μm以下、更に好ましくは3,000μm以下である。この範囲であれば、これより小さくなると成分(II)の重合パウダーホールド性が低下し、ブリードが生じやすくなったり、粒径が過大な場合に、攪拌や重合パウダーの移送において破砕などの問題が生じ易くなったりすることを、効果的に防止できる。
4.プロピレン系ブロック共重合体の各成分の性状
(1)成分(I)の融点
第1工程で製造されるプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(I)の融解ピーク温度(Tm)(以下、融点ともいう)は、好ましくは105℃以上、より好ましくは115℃以上、更に好ましくは125℃以上、好ましくは140℃以下、より好ましくは135℃以下である。
上記範囲よりも融点が高いと、本ブロック共重合体の柔軟性が不充分なものとなってしまう。また、上記範囲よりも融点が低いと工業的に可能な重合温度では本ブロック共重合体自身が一部融解してしまう惧れがあり、運転が不安定になる惧れがある。一般的に、成分(I)の融点は、重合反応に用いる触媒や重合条件により変化する。
(2)成分(I)のエチレン含量
本発明においては、成分(I)中のエチレン含量は、1.0重量%以上、好ましくは、1.5重量%以上、10重量%以下、好ましくは、8.0重量%以下、より好ましくは、5.0重量%以下の範囲である。
その際、第1反応器気相部のエチレンとプロピレンのガス濃度モル比(エチレン/プロピレン)の値によって制御され、得られたポリマーの下記に記すIR測定結果によって調整することができる。
成分(I)中のエチレン含量の算出は、予めNMRでエチレン含量を定量してあるサンプルを用いて検量線を作成し、この検量線に基づいて、成分(I)中のエチレン含量をIR分析にて算出する。
それらの結晶性は、プロピレン−エチレンランダム共重合体成分中のエチレン含量で制御される。
(3)成分(II)のエチレン含量
成分(II)中のエチレン含量は、7.0重量%以上、好ましくは、8.5重量%以上、より好ましくは、10重量%以上、25重量%以下、好ましくは、22.5重量%以下、更に好ましくは、20重量%以下である。
また、成分(II)中のエチレン含量[E](II)と成分(I)中のエチレン含量[E](I)の差の[E]gap([E](II)−[E](I))は、本ブロック共重合体の用途によって、任意に設定することができる。
[E]gapが小さい場合、具体的には12重量%未満の場合、本ブロック共重合体は、透明性に優れたものとなる。一方、この差が大きい場合、具体的には12〜20重量%の場合、本ブロック共重合体は、耐衝撃性や耐白化性に優れたものとなる。
プロピレン系ブロック共重合体中のエチレン含量の算出も成分(I)のエチレン含量の定量と同様に、予めNMRでエチレン含量を定量してあるサンプルを用いて検量線を作成し、この検量線に基づいて、プロピレン共重合体中のエチレン含量を算出する。
本発明においては、プロピレン系ブロック共重合体中には、成分(I)のエチレン含量を含むため、エチレン重合体(I)含量を引いた値として成分(II)のエチレン含量を算出する。
(4)成分(I)(II)の重合割合量
第1工程で生成される成分(I)と第2工程で生成される成分(II)の重合割合は、重量比成分(I)/成分(II)で、成分(I)は30〜70重量%、好ましくは35〜65重量%である。更に、好ましくは、40〜60重量%である。したがって、成分(II)は、70〜30重量%、好ましくは65〜35重量%であり、更に、好ましくは、60〜40重量%である。
成分(I)の割合が70重量%よりも多いと、柔軟性が不充分となって目的とする物性を持つプロピレン系ブロック共重合体が得られ難い、また、成分(II)の割合が70重量%よりも多いと、プロピレン系ブロック共重合体のパウダー性状が悪化してしまい、工業的な安定運転に支障をきたす惧れがある。
(5)成分(II)の含量の算出
成分(II)の含量は、成分(I)を製造する第1工程と、成分(II)を製造する第2工程の生産量の値から算出し、重量%として値を得た。
(6)成分(II)のエチレン含量の算出
成分(II)のエチレン含量[E](II)は、上記より測定された成分エチレン含量[E](I)、[E](W)、及び、生産量による重量比率W(I)、W(II)[重量%]から、以下の式により算出される。
Figure 2013185064
(7)成分(I)(II)の重合割合量の算出
成分(I)と成分(II)の重合割合は、以下のように、TREF(温度昇温溶離分別法)を利用して測定することもできる。
先ず、成分(I)と成分(II)の結晶性の違いを利用した、TREF測定により得られる溶出曲線から、成分(I)と(II)の溶出を分割する温度T(C)を決定し、T(C)までに溶出する成分の割合を成分(II)の比率、T(C)以上で溶出する成分の割合を成分(I)の比率とみなす。
なお、プロピレン−エチレンランダム共重合体の結晶性分布をTREF測定により評価する手法は、当業者によく知られるものであり、G.Glokner,J.Appl.Polym.Sci:Appl.Poly.Symp.;45,1−24(1990)、L.Wild,Adv.Polym.Sci.;98,1−47(1990)、J.B.P.Soares,A.E.Hamielec,Polyer;36,8,1639−1654(1995)などで詳細な測定法が示されている。
溶出温度が低い成分の結晶性は低く、柔軟性に富み、一方、溶出温度が高い成分の結晶性は高くなることにより、剛性が増加し耐熱性も向上する。本発明におけるプロピレン系ブロック共重合体の、TREF測定で得られる溶出曲線(温度に対する溶出量の割合:dwt%/dT曲線)において、結晶性プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(I)と、低結晶性又は非晶性プロピレン−エチレン共重合体成分(II)は、その結晶性の違いから、異なる温度で溶出する成分として観測される。すなわち、成分(I)は、結晶性が高いため高温側に、一方、成分(II)は、低結晶性又は非晶性であるため低温側に観測され、或いは、TREF測定温度内でピークを示さない。各ピーク温度をT(I)、T(II)(ピークを示さない場合には、測定温度下限の−15℃)としたとき、両ピークの中間の温度T(C)({T(I)+T(II)}/2)において、両成分は、ほぼ分離可能である。
このとき、TREFにおいてT(C)までに溶出する成分の積算量をW(II)重量%、T(C)以上で溶出する部分の積算量をW(I)重量%と定義する。W(II)は、結晶性が低い或いは非晶性の成分(II)の量とほぼ対応しており、W(I)は、結晶性が高い成分(I)の量とほぼ対応しており、第1工程と第2工程の生産量比と一致する。
第2工程で生成される成分(II)の割合は、一般的に、電子供与体化合物を活性抑制剤として用いて制御する。活性抑制剤としては、一酸化炭素、二酸化炭素、酸素、硫化カルボニル、アンモニアなどが挙げられる。
また、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン又は酢酸メチルなどの分子量の大きい電子供与体化合物を用いてもよい。これらの供給量(フィード量)は、段落0046に記載のとおりである。
その他にも、第2工程の滞留時間の制御、モノマー圧力制御によっても、重合活性を制御できる。しかし、活性抑制剤を用いる方法が制御方法として一番簡便である。
5.プロピレン系ブロック共重合体の特徴
(1)MFR及び分子量
MFRが低い場合、射出成形においては、成型サイクルが長くなる、射出圧力が高くなり金型が破損するなどの問題が発生する。本発明のように射出成形を主な用途とする場合、プロピレン系ブロック共重合体のMFRは20〜1,000g/10分の範囲であり、好ましくは、25〜800g/10分、更に好ましくは、30〜500g/10分である。
上記の範囲以下になると流動性が悪化し、射出成形に適さない。一方、上記の範囲以上になると、成形面では、ポリマーの流動性が高くなり過ぎるため、成形不良が生じるばかりか引張り特性の低下が生じる。また、運転面においては、必然的に成分(I)及び成分(II)のMFRが高くなることにより、重合パウダーの嵩密度BDの低下、微粉発生及び反応器壁面などへの付着が生じ、安定運転が難しくなる。
第1工程、第2工程は共に、水素などの分子量調節剤を用いて重合体のMFR並びに重量平均分子量を調整することができる。第1工程で得られる成分(I)のMFRは、3〜50g/10分、好ましくは5〜40g/10分、更に好ましくは、5〜30g/10分の範囲であることが望ましい。成分(I)のMFRが上記の範囲を下回ると第1工程の触媒活性が著しく低下する。また、上記の範囲を上回ると成分(I)の活性増加により所望する成分(II)を得ることが難しくなる。
成分(II)のMFRは、プロピレン系ブロック共重合体のMFR、成分(I)のMFR、並びに、成分(II)の重合割合より求めることができる。当業者には良く知られているが、具体的には以下の計算式を用いることが一般的である。
本発明における、成分(II)のMFR(II−MFR)はプロピレン系ブロック共重合体組成物全体のMFR(TotalMFR)及び成分(I)のMFR(I−MFR)を測定し、下記式(2)より求められる。
Figure 2013185064
なお、上記式のW(II)は、成分(II)の重量%である。
重量平均分子量は、上記式で求まる((II)−MFR)と相関が高いこともよく知られている。実際は、(II)−MFRの値より重合条件を調整する。このとき、本発明のブロック共重合体は、ブリードアウトし易い低分子量成分の生成が少ないため、従来のチーグラー・ナッタ系触媒では、製造上の問題やブロッキングなどの悪化により実用上問題のあった、成分(II)の重量平均分子量10万未満の領域であっても、格別な物性の悪化を引き起こすことなく、製造し利用することができる。
以上より、式2より求められる成分(II)のMFRより推定される重量平均分子量は、5万以上10万未満の範囲であることが望ましい。好ましくは、6万〜9万、更に好ましくは、7万〜9万の範囲である。
上記の範囲より大きくなると、充分なプロピレン系ブロック共重合体の流動性を得ることができない。上記の範囲よりも小さくなると、本発明の第2工程における重合温度50〜60℃にても、成形体からの成分(II)のブリードを抑えることが困難となり、重合パウダーの付着を発生させるばかりでなく、成形体の外観も損ねる。
(2)嵩密度BD
運転安定性は、第2工程後にサンプリングされる重合パウダーの流動状態で判断できる。流動状態の指標としては、重合パウダーBD(嵩密度)が適当である。
安定な運転性を維持できる重合パウダーBDは、0.40g/ml以上であり、更に、好ましくは0.44g/ml以上、0.55g/ml以下、好ましくは0.50g/ml以下である。0.39g/ml以下となると流動性低下による、攪拌不良、輸送時の配管閉塞が生じるため、運転継続が困難となる。また、0.56g/ml以上となると同じ保有レベルであっても、保有重量が増加するため、攪拌動力が著しく増加する。
6.付加的成分(添加剤)
本発明のプロピレン− エチレンブロック共重合体においては、ブロック共重合体に各種の機能を付加させるために、付加的成分(任意成分)を添加剤として添加して、本発明の効果を著しく損なわない範囲内で配合することもできる。
この付加的成分としては、従来公知のポリオレフィン樹脂用配合剤として使用される核剤、フェノール系酸化防止剤、燐系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、中和剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤、金属不活性剤、過酸化物、充填剤、抗菌防黴剤、蛍光増白剤のような各種添加剤を加えることができる。
これら添加剤の配合量は、一般に0.0001〜3重量%、好ましくは0.001〜1重量%である。
核剤の具体例としては2,2−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)燐酸ナトリウム、タルク、1,3,2,4−ジ(p−メチルベンジリデン)ソルビトールなどのソルビトール系化合物、ヒドロキシ− ジ( t−ブチル安息香酸アルミニウム、2,2−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)燐酸と炭素数8〜20の脂肪族モノカルボン酸リチウム塩混合物(旭電化(株)製 商品名NA21)などを挙げることができる。
フェノール系酸化防止剤の具体例としては、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリチル−テトラキス{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ− 5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌル酸などを挙げることができる。
燐系酸化防止剤の具体例としては、トリス(ミックスド,モノ−ジノニルフェニルホスファイト)、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、4,4´−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ,トリデシル)ホスファイト、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ジ,トリデシルホスファイト−5−t−ブチルフェニル)ブタン、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4´−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)−4,4´−ビフェニレンジホスホナイトなどを挙げることができる。
硫黄系酸化防止剤の具体例としては、ジ−ステアリル,チオ,ジ−プロピオネート、ジ−ミリスチル,チオ,ジ−プロピオネート、ペンタエリスリトール,テトラキス−(3−ラウリル,チオ−プロピオネート)などを挙げることができる。
中和剤の具体例としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ハイドロタルサイト、ミズカラック(水沢化学(株)製)などを挙げることができる。
ヒンダードアミン系の安定剤の具体例としては、琥珀酸ジメチルと1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンとの重縮合物、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、N,N−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン・2,4−ビス{N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ}−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ポリ{ 6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}、ポリ(6−モルホリノ− s−トリアジン−2,4−ジイル){(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}などを挙げることができる。
滑剤の具体例としては、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、エチレンビスステアロイドなどの高級脂肪酸アミド、シリコンオイル、高級脂肪酸エステルなどを挙げることができる。
帯電防止剤としては、高級脂肪酸グリセリンエステル、アルキルジエタノールアミン、アルキルジエタノールアミド、アルキルジエタノールアミド脂肪酸モノエステルなどを挙げることができる。
また、本発明のプロピレン系ブロック共重合体以外の樹脂であるエチレン・プロピレン系ゴム、エチレン・ブテン系ゴム、エチレン・ヘキセン系ゴム、エチレン・オクテン系ゴムなどを本発明の効果を著しく損なわない範囲内で配合することもできる。本発明に使用する以外の樹脂は、最大30重量% 、好ましくは20重量% まで配合することができる。
これらの付加的成分は、重合により得られた本発明のプロピレン系ブロック共重合体中に直接添加し溶融混練して使用することも可能であるし、溶融混練中に添加してもよい。更には、溶融混練後に直接添加、或いは、本発明の効果を著しく損なわない範囲においてマスターバッチとして添加することも可能である。また、これらの複合的な手法により添加してもよい。
一般的には、酸化防止剤、中和剤などの添加剤を配合して、混合、溶融、混練された後に製品に成形され使用される。成形時に本発明の効果を著しく損なわない範囲で他の樹脂、或いは、その他の付加的成分( マスターバッチを含む)を添加し使用することも可能である。
上記混合、溶融、混練は、従来公知のあらゆる方法を用いることができるが、通常、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、Vブレンダー、タンブラーミキサー、リボンブレンダー、バンバリーミキサー、ニーダーブレンダー、一軸又は二軸の混練押出機にて実施することができる。これらの中でも一軸又は二軸の混練押出機により混合或いは溶融混練を行うことが好ましい。
7.本発明の用途及び成形法
本発明のプロピレン系ブロック共重合体は、射出成形に適した高い流動性を有し、柔軟性に優れるという特徴をもつため、各種容器、各種成形品などに好適に使用される。
また、各種容器として用いられる場合には、ブリードによる内容物汚染が非常に少なく、食品や医療及び産業用の各分野に好適である。
成形品としても、ブリードによる経時の外観悪化がなく、好適に用いることができる。
これらの各種製品の成形方法としては、公知の成形法を制限なく用いることができる。
容器成形としては、熱圧成形、圧空成形、真空成形、真空圧空成形、延伸ブロー成形、射出成形などを用いることができる。
成形品を得るためには、通常の射出成形はもちろん、インサート成形、サンドイッチ成形、ガスアシスト成形などを行うことができるし、プレス成形、スタンピングモールド、回転成形などを利用することもできる。
これらの成形体は耐熱性を有するため、熱水による殺菌や比較的高い温度での使用に好適であり、単に変形を生じないだけでなく、熱を加えた際にブリードアウトによる外観悪化が生じないという特徴をも有する。
次に、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、各実施例のデータ及び各実施例と各比較例の対照により、本発明の構成の合理性と有意性及び従来技術に対する卓越性を実証する。
なお、以下の触媒合成工程及び重合工程は、全て精製窒素雰囲気下で行った。また、溶媒は、モレキュラーシーブMS−4Aで脱水したものを用いた。
先ず、各物性値の測定方法と装置、及び使用した触媒の製造例を具体的に示す。
1.物性値の測定方法及び装置
(1)MFR:
プロピレン系ブロック重合体は、JIS K6758により測定したメルトインデックス値を示す。
(2)融点(Tm):
セイコー社製DSCを用い、試料5.0mgを採り、200℃まで加熱し5分間保持した後、40℃まで10℃/分の降温速度で結晶化させ、更に10℃/分の昇温速度で融解させたときの融解ピーク温度をTmとした(単位:℃)。
(3)重合パウダーBD:
ASTM D1895−69に準拠したポリマーの嵩密度を示す。
(4)成分(I)と成分(II)の重合比率:
第1工程、第2工程の生産量比より算出した。
(5)成分(I)及び成分(II)中のエチレン含量:
下記の手順に従って赤外分光光度計を用いて測定した。
(i)サンプルの調製:
成分(I)を加熱加圧プレスにより厚さ250μmのシ−ト、 成分(II)を含むプロピレン系ブロック重合体の試料を加熱加圧プレスにより厚さ200μmのシ−トに成形した。プレス条件は、温度230℃、予熱時間2分、加圧圧力30MPa、加圧時間2分とした。
(ii)赤外分光光度計による吸光度の測定:
上記にて得られたサンプルシ−トを用い、以下の条件にてIR吸収量を測定した。
装置:島津FTIR−8300 分解能:4.0cm−1 測定範囲:4,000〜400cm−1 吸光度ピ−ク面積算出範囲:700〜760cm−1 算出方法は、段落0050に前記した方法に従って算出した。
(6)柔軟性
重合工程で得られたプロピレン系ブロック共重合体パウダーに、下記の酸化防止剤及び中和剤を添加し、充分に撹拌混合した。
(i)添加剤配合
酸化防止剤:テトラキス[メチレン−3−(3´,5´−ジ−t−ブチル−4´−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン500ppm、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト500ppm
中和剤: ステアリン酸カルシウム500ppm
(ii)造粒
添加剤を加えたプロピレン系ブロック共重合体パウダーを、以下の条件により溶融混練し、ストランドダイから押し出された溶融樹脂を、冷却水槽で冷却固化させながら引き取り、ストランドカッターを用いてストランドを直径約2mm 、長さ約3mmに切断することで原料ペレットを得た。
押出機:テクノベル社製KZW−15−45MG2軸押出機 スクリュウ: 口径15mm L/D45 押出機設定温度:(ホッパ下から)40 80 160 200 220 220( ダイ) [℃ ] スクリュウ回転数: 400rpm 吐出量: スクリュウフィーダーにて1.5kg/hに調整 ダイ: 口径3mm ストランドダイ穴数2個
(iii)成形
得られた原料ペレットを、以下の条件により射出成形し、物性評価用平板試験片を得た。
規格番号:JIS−K7152(ISO 294−1) 参考 成型機:東洋機械金属社製TU−15射出成型機 成型機設定温度:( ホッパ下から) 80 160 200 200 200 ℃ 金型温度:40℃ 射出速度:200mm/s (金型キャビティー内の速度) 射出圧力:800kgf/cm保持圧力:800kgf/cm保圧時間:40秒 金型形状:平板(厚さ2mm、幅30mm、長さ90mm)
柔軟性は、曲げ特性試験によって評価した。曲げ特性試験は、JIS K7203の「硬質プラスチックの曲げ試験方法」に準拠して23℃で測定した。
(7)流動性
流動性の評価は、スパイラルフローで評価した。SJ型(インラインスクリュー型)射出成型機を用い、下記の条件でスパイラルフロー測定を実施した。
成型温度:240℃ 射出圧力:800kg/cm射出時間:6秒
金型温度:40℃ 射出率:50g/秒
2.触媒の製造
珪酸塩の化学処理:10リットルの撹拌翼の付いたガラス製セパラブルフラスコに、蒸留水3.75リットル、続いて濃硫酸(96%)2.5kgをゆっくりと添加した。50℃で、更にモンモリロナイト(水澤化学社製ベンクレイSL;平均粒径=50μm)を1kg分散させ、90℃に昇温し、6.5時間その温度を維持した。50℃まで冷却後、このスラリーを減圧濾過し、ケーキを回収した。このケーキに蒸留水を7リットル加え再スラリー化後、濾過した。この洗浄操作を、洗浄液(濾液)のpHが、3.5を越えるまで実施した。回収したケーキを窒素雰囲気下110℃で終夜乾燥した。乾燥後の質量は707gであった。化学処理した珪酸塩をキルン乾燥機で乾燥した。
触媒の調製:内容積3リットルの撹拌翼のついたガラス製反応器に上記で得た乾燥珪酸塩200gを導入し、混合ヘプタン1,160ml、更にトリエチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.60M)840mlを加え、室温で撹拌した。1時間後、混合ヘプタンにて洗浄し、珪酸塩スラリーを2.0リットルに調製した。
次に、調製した珪酸塩スラリーにトリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.71M/L)9.6mlを添加し、25℃で1時間反応させた。並行して、〔(r)−ジクロロ[1,1´−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ジルコニウム〕(合成は、特開平10−226712号公報実施例に従って実施した)2,180mg(3mmol)と混合ヘプタン870mlに、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.71M)を33.1ml加えて、室温にて1時間反応させた混合物を、珪酸塩スラリーに加え、1時間撹拌した。
予備重合:続いて、窒素で充分置換を行った内容積10リットルの撹拌式オートクレーブに、n−ヘプタン2.1リットルを導入し、40℃に保持した。そこに先に調製した触媒スラリーを導入した。温度が40℃に安定したところでプロピレンを100g/時間の速度で供給し、温度を維持した。4時間後プロピレンの供給を停止し、更に2時間維持した。予備重合終了後、残モノマーをパージし、撹拌を停止させ約10分間静置後、上澄み約3リットルをデカントした。続いてトリイソブチルアルミニウム(0.71M/L)のヘプタン溶液9.5ml、更に混合ヘプタンを5.6リットル添加し、40℃で30分間撹拌し、10分間静置した後に、上澄みを5.6リットル除いた。更にこの操作を3回繰り返した。最後の上澄み液の成分分析を実施したところ有機アルミニウム成分の濃度は、1.23ミリモル/L、Zr濃度は8.6×10−6g/Lであり、仕込み量に対する上澄み液中の存在量は0.016%であった。続いて、トリイソブチルアルミニウム(0.71M/L)のヘプタン溶液17.0mlを添加した後に、45℃で減圧乾燥した。
この操作により、触媒1g当たりポリプロピレン2.1gを含む予備重合触媒が得られた。
3.重合工程
[実施例1]
(1)第1重合工程
図1は、実施例で用いた重合装置のフローシートである。攪拌羽根を有する横型重合器5(L/D=3.7、内容積100L)に、予め35kgのベットポリマーを導入後、窒素ガスを3時間流通させた。その後、プロピレン、エチレン及び水素を、所定のモル比及び圧力となるように導入しながら昇温し、重合条件が整った時点で、予備重合処理した上記触媒を0.20g/h、有機アルミニウム化合物としてトリイソブチルアルミニウムを30mmol/h一定となるように配管1より供給した。反応温度65℃、反応圧力2.2MPaG、攪拌速度35rpmの条件を維持しながら配管2から反応器の気相部ガス組成がエチレン/プロピレン=0.06になるように混合ガスを連続的に供給し、更に反応器の気相中の水素濃度を水素/プロピレン=0.00013モル比に維持するように水素ガスを連続的に供給して、生成ポリマーすなわちプロピレン−エチレンブロック共重合体成分(I)の分子量(MFR)を調整した。
反応熱は、配管3から供給される原料プロピレンの気化熱により除去した。重合器から排出される未反応ガスは、配管4を通して反応器系外で冷却、凝縮させて重合器5に還流した。本重合で得られたプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(I)は、重合体の保有レベルが反応容積の65容積%となるように配管6を通して重合器5から間欠的に抜き出し、第2重合工程の重合器9に供給した。ガス遮断槽7からプロピレン−エチレンブロック共重合体成分(I)の一部を抜き出して、MFRと、エチレン含量を求める試料とした。
(2)第2重合工程
攪拌羽根を有する横型重合器9(L/D=3.7、内容積100L)に、第1重合工程からのプロピレン−エチレンブロック共重合体成分(I)を配管8から間欠的にそれぞれ供給し、プロピレンとエチレンの共重合を行った。反応条件は、攪拌速度18rpm、反応温度50℃、反応圧力2.1MPaGであり、気相中のガス組成エチレン/プロピレン=0.50、水素/エチレン=0.0046モル比となるように調整した。反応器中の未反応ガスは、未反応ガス抜き出し配管11から抜き出され、循環経路を通して、原料循環ガス供給配管13から再供給される。プロピレン−エチレンブロック共重合体成分(II)の重合量を調整するための重合活性抑制剤として酸素ガスを配管13より供給した。配管13より供給される循環ガスの温度は、65℃に設定した。
反応熱は、配管12から供給される原料プロピレンの気化熱により除去した。重合器から排出される未反応ガスは配管11を通して反応器系外で冷却、凝縮させて重合器9に還流した。第2重合工程で生成されたプロピレン系ブロック共重合体は、重合体の保有レベルが反応容積の50容積%となるように配管14を通して重合器9から間欠的に抜き出した。このとき、重合されたプロピレン系ブロック共重合体の一部を抜き出して、MFR、ポリマー嵩密度、ゴム部含有量、ゴム中のエチレン含量、活性(触媒単位質量当りの重合体収量)を求める試料とした。このとき、プロピレン系ブロック共重合体の生産量は12.5kg/hであった。
配管14より抜き出されたプロピレン系ブロック共重合体は、脱ガス槽15で未反応ガスと分離される。そのプロピレン系ブロック共重合体は、ロータリーフィーダー16より間欠に抜き出され配管17より乾燥工程へ輸送される。
(3)プロピレン系ブロック共重合体の分析、物性評価結果
分析値、物性評価結果は、表1にまとめて示す。
(4)製造装置の運転性
製造装置の運転性は、以下のように分類した。
○・・・24時間以上の運転が可能。 ×・・・24時間以内に運転停止。
結果は、表1にまとめて示す。
[実施例2]
第1重合工程:水素/プロピレン=0.00037モル比、エチレン/プロピレン=0.10、重合温度:50℃とし、それら以外は、実施例1と同条件で運転した。
第2重合工程:水素/エチレン=0.00463モル比、重合温度60℃に設定した以外は、実施例1と同条件で運転した。
[実施例3]
第1重合工程:水素/プロピレン=0.00011モル比とし、それ以外は、実施例1と同条件で運転した。
第2重合工程:水素/エチレン=0.0040モル比に設定した以外は、実施例1と同条件で運転した。
[比較例1]
第1重合工程:エチレン/プロピレン=0.00019モル比とし、それ以外は、実施例1と同条件で運転した。
第2重合工程:水素/エチレン=0.0019モル比、重合温度70℃以外は、実施例1と同条件で運転した。
得られたプロピレン系ブロック共重合体は、MFRが低く射出成形には適さなかった。
[比較例2]
第1重合工程:比較例1と同条件で運転した。
第2重合工程:水素/エチレン=0.0038モル比、重合温度65℃以外は、実施例1と同条件で運転した。
この時、重合パウダー性状の悪化が顕著となり、ロータリーフィーダー16で重合パウダーの輸送が不可能となり、運転継続ができなかった。
比較例1,2から以下のことがいえる。第二工程の重合温度が本発明の上限を超える場合に、安定的に製造できるプロピレン系ブロック共重合体は、MFRが低く、射出成形に不適なものでしかない。無理に第二工程のMFRを高めようとすると、重合パウダーの性状が悪化し、運転が不能になってしまう。
[比較例3]
第1重合工程:エチレン/プロピレン=0.00051モルとし、それ以外は、実施例1と同条件で運転した。
第2重合工程:水素/エチレン=0.0003モル比とし、それ以外は、比較例1と同条件で運転した。
第2工程での触媒活性が低く、成分(II)の割合が低くなり、目標の曲げ弾性率に到達しなかった。
比較例3から以下のことがいえる。第一工程のMFRを高めることで、所定のMFRを持つプロピレン系ブロック共重合体を作ろうとすると、第二工程の活性が乏しく、重合温度を上げざるを得ない。それでも活性を充分には高めることができず、所望の成分(I):成分(II)比率の共重合体を得ることができなかった。第二工程の重合温度が高いためにパウダー性状の悪化がありえたが、成分(II)の比率が低いものしか得られなかったので、結果として運転は継続できた。
[比較例4]
第1重合工程:水素/プロピレン=0.0022、エチレン/プロピレン=0.15モル比、重合温度75℃とし、それら以外は、実施例1と同条件で運転した。
第2重合工程:水素/エチレン=0.0035モル比とし、それ以外は、実施例1と同条件で運転した。
第1工程で、塊が発生し、ロータリーフィーダー16が塊の噛み込みによって停止し、運転の継続が不可能であった。
比較例4から以下のことがいえる。成分(B)の分子量に関わらず、第1工程のTm−T1が45℃を下回ると第1工程で塊が多量に発生し、運転の継続が不可能である。
[比較例5]
第2重合工程:配管13より供給される循環ガスを45℃に設定した以外は、実施例1と同条件で運転した。この時、第2工程で重合パウダー性状の悪化が顕著となり、ロータリーフィーダー16で重合パウダーの輸送が不可能となり、運転継続ができなかった。
Figure 2013185064
[実施例と比較例の結果の考察]
実施例1〜3においては、本発明の基本発明(請求項1)における構成の要件(発明の特定事項)に関して、メタロセン系触媒を用いるプロピレン−エチレンブロック共重合体の多段重合において、ブロック共重合体のMFR、成分(I)(II)の重量割合、第1工程のTm−T1、第2工程のエチレン含量とMFR及び重合温度T2と循環ガス温度、の全てを満たしている。したがって、各実施例においては、ブロック共重合体のMFRが高くスパイラルフローが良好なので、射出成形性に優れていることが明確にされ、曲げ弾性率が低いので適度な柔軟性を示し、また、成分(I)のTmが高く耐熱性にも優れ、更に共重合体のパウダー嵩密度BDも良好なので重合運転性も充分に安定的であることが明示されている。
一方、比較例1においは、第2工程の循環ガス温度が重合温度T2より低くブロック共重合体のMFRが低過ぎスパイラルフローが悪くて、射出成形性に劣り、比較例2においては、第2工程の循環ガス温度が重合温度T2と同等であり、重合体のパウダー嵩密度BDが劣り、重合運転性不能となっている。比較例3においては、第2工程の循環ガス温度が重合温度T2より低く、成分(II)の割合も低過ぎて、曲げ弾性率が高く柔軟性が悪くなっており、比較例4においては、第1工程のTm−T1が低過ぎて、重合体のパウダー嵩密度BDが劣り、重合運転性不能となっている。比較例5においては、第2工程の循環ガス温度が重合温度T2より低くて、重合運転が不能となっている。
以上の各データ結果と考察によって、本発明の構成要件の合理性と有意性が実証され、本発明が従来技術に比べて顕著な卓越性を有していることが明確にされているといえる。
これまで製造が困難であった、射出成形が可能な高い流動性を有し、充分な耐熱性を有するうえに、更に適度な柔軟性を有するプロピレン系ブロック共重合体を安定的に製造する方法を実現することを可能にしたので、プロピレン系ブロック共重合体の射出成形の利用において、産業上大いに有用である。

Claims (9)

  1. メタロセン系触媒を用いる、下記の第1工程と第2工程とを含む多段重合法によって、MFRが20〜1,000g/10分であるプロピレン系ブロック共重合体を製造する方 法。
    第1工程:気相重合法によって、プロピレン−エチレンランダム共重合体成分 (I)を、プロピレン系ブロック共重合体の30〜70重量%生成させる工程であって、成分(I)の示差走査熱量測定(DSC)による融解ピーク温度(Tm)と、当該工程の重合温度(T1)との間で、
    45℃≦(Tm−T1)≦80℃
    を満たす条件下で行なう。
    第2工程:気相重合法によって、エチレン含量が成分(I)より高く、且つMFRが成分(I)より高いプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(II)をプロピレン系ブロック共重合体の70〜30重量%生成させる工程であって、当該工程の重合温度(T2)が40〜62℃の範囲内で行ない、かつ、第2工程の反応器は、未反応ガス状モノマーを循環させる循環経路を有し、第2工程の反応器へ供給する循環ガスの温度を重合温度(T2)よりも高い条件で行う。
  2. 成分(II)の重量平均分子量が5万以上10万未満であることを特徴とする、請求項1に記載のプロピレン系ブロック共重合体を製造する方法。
  3. 成分(I)のMFRが3〜50g/10分であることを特徴とする、請求項1〜2のいずれか1項に記載されたプロピレン系ブロック共重合体を製造する方法。
  4. T1が50℃以上であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のプロピレン系ブロック共重合体を製造する方法。
  5. Tmが105〜140℃であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のプロピレン系ブロック共重合体を製造する方法。
  6. 第1工程及び/又は第2工程を、撹拌装置を有する反応器で行うことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のプロピレン系ブロック共重合体を製造する方法。
  7. 攪拌装置が水平方向の撹拌軸を有することを特徴とする、請求項6に記載のプロピレン系ブロック共重合体を製造する方法。
  8. 気相重合法において、主として液化プロピレンの気化熱により重合熱の除去が行われることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載のプロピレン系ブロック重合体を製造する方法。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載のプロピレン系ブロック重合体を製造する方法により製造された、プロピレン系ブロック重合体を用いて射出成形されたプロピレン系ブロック重合体の成形品。

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