JP2013020909A - 非水系二次電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】ジ(2−プロピニル)オギザレートを含む非水電解質を使用した際に、正極/電解質界面の被膜抵抗の増加が少なく、イオン伝導性が良好で、高温及び室温の充放電サイクル特性が良好な非水系二次電池を提供する。
【解決手段】非水電解質中にジ(2−プロピニル)オギザレートを非水電解質の総質量に対して0.05質量%以上3質量%以下含有する。また、正極合剤層がシランカップリング剤もしくはAl、Ti、Zrから選択される1種の金属の化合物であるカップリング剤の少なくとも1種を正極活物質の質量に対して0.003質量%以上3質量%以下含有させる。カップリング剤としてアルミニウムビスエチルアセトアセテートモノアセチルアセトネートが好ましい。
【選択図】なし
【解決手段】非水電解質中にジ(2−プロピニル)オギザレートを非水電解質の総質量に対して0.05質量%以上3質量%以下含有する。また、正極合剤層がシランカップリング剤もしくはAl、Ti、Zrから選択される1種の金属の化合物であるカップリング剤の少なくとも1種を正極活物質の質量に対して0.003質量%以上3質量%以下含有させる。カップリング剤としてアルミニウムビスエチルアセトアセテートモノアセチルアセトネートが好ましい。
【選択図】なし
Description
本発明は、リチウム複合酸化物を正極活物質とする非水系二次電池に関する。さらに詳しくは、本発明は、ジ(2−プロピニル)オギザレートを含む非水電解質を使用した際に、正極/電解質界面の被膜抵抗の増加が少なく、イオン伝導性が良好で、高温及び室温の充放電サイクル特性が良好な非水系二次電池に関する。
今日の携帯電話機、携帯型パーソナルコンピューター、携帯型音楽プレイヤー等の携帯型電子機器の駆動電源として、さらには、ハイブリッド電気自動車(HEV)や電気自動車(EV)用の電源として、高エネルギー密度を有し、高容量であるリチウムイオン二次電池に代表される非水系二次電池が広く利用されている。
これらの非水系二次電池の正極活物質としては、リチウムイオンを可逆的に吸蔵・放出することが可能なLiMO2(但し、MはCo、Ni、Mnの少なくとも1種である)で表されるリチウム遷移金属複合酸化物、すなわち、LiCoO2、LiNiO2、LiNiyCo1−yO2(y=0.01〜0.99)、LiMnO2、LiMn2O4、LiCoxMnyNizO2(x+y+z=1)、又はLiFePO4などが一種単独もしくは複数種を混合して用いられている。
このうち、特に各種電池特性が他のものに対して優れていることから、リチウムコバルト複合酸化物や異種金属元素添加リチウムコバルト複合酸化物が多く使用されている。しかしながら、コバルトは高価であると共に資源としての存在量が少ない。そのため、これらのリチウムコバルト複合酸化物や異種金属元素添加リチウムコバルト複合酸化物を非水系二次電池の正極活物質として使用し続けるには非水系二次電池のさらなる高性能化が望まれている。
一方、非水系二次電池は充電状態で高温環境下に保存すると、正極劣化を起こし易い。これは非水系二次電池を充電状態で保存すると、正極活物質上での非水電解質の酸化分解や正極活物質の遷移金属イオン溶出が起こるためであり、しかも、高温環境下では常温環境下より非水電解質の分解や金属イオン溶出が加速するためと考えられている。
これに対し、下記特許文献1には、非水系二次電池の初期容量を低下させることなく、高温での長期充放電サイクル特性が向上し、その際の電池の膨れを抑制する目的で、ビニレンカーボネート(VC)とジ(2−プロピニル)オキザレート(D2PO)を含有する非水系電解液を用いた例が示されている。
また、下記特許文献2には、非水系二次電池の高電圧かつ充放電条件下でのサイクル特性の向上を目的として、正極合剤中にアルミニウム系カップリング剤を混合した例が示されている。また、下記特許文献3には、非水系二次電池の低温における正極と電解液との濡れ性を改善し、低温での出力特性が良好となるようにすることを目的として、正極合剤中にエポキシ基、アミノ基等の有機反応基と、メトキシ基、エトキシ基等の結合基と、を有するシランカップリング剤を分散させた例が示されている。
また、下記特許文献4には、非水系二次電池の間欠サイクルを繰り返す場合のサイクル特性の向上を目的として、正極活物質を複数の結合基を有するシランカップリング剤で処理した例が示されている。さらに、下記特許文献5には、非水系二次電池のサイクル特性の向上を目的として、正極合剤層の圧縮時に生じる正極活物質の破断面近傍にシランカップリング剤を存在させた例が示されている。
上述の特許文献1に開示されている発明によれば、炭素負極の表面に生じるSEI被膜(SEI:Solid Electrolyte Interface)として、VCとD2POとの混合被膜が形成されることによりD2PO被膜の変質を防ぎ、高温での充放電サイクル時のVC被膜の溶解が抑制するものである。
しかしながら、D2POが非水電解質に含有されている場合、D2POの酸化分解による反応生成物が正極表面に堆積する。このような正極表面に形成された被膜は、非水電解質あるいはセパレータと正極との直接接触が避けられるように機能し、また、正極と電解質界面に被膜抵抗を上昇させる。これにより、正極と電解質界面でのイオン伝導が阻害され、高温及び特に室温の充放電サイクル特性において、容量維持率が大幅に低下するという課題を有している。
また、上記特許文献3〜6に開示されている発明によれば、正極合剤中にシラン系ないしアルミニウム系カップリング剤を混合すると、一応サイクル特性の向上と低温環境下での出力特性の向上が達成し得ることが示唆されていると認められる。しかしながら、上記特許文献3〜6に開示されている発明においても、高温及び室温の充放電サイクル特性の向上が十分であるとは言えなかった。
したがって、本発明者は、上述のような非水電解質中にジ(2−プロピニル)オギザレートを添加した際の非水系二次電池の高温及び室温での充放電サイクル特性の低下を改善すべく種々実験を重ねた結果、正極合剤中にシラン系又はアルミニウム系カップリング剤を所定量含有させることにより解決できることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
すなわち、本発明は、リチウム複合酸化物を正極活物質とする非水系二次電池において、高温及び室温の充放電サイクル特性が良好な非水系二次電池を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の非水系二次電池は、リチウム複合酸化物を正極活物質とする正極合剤層が形成された正極極板と、負極極板と、セパレータと、非水電解質とを備える非水系二次電池において、前記非水電解質中にジ(2−プロピニル)オギザレート(D2PO)を前記非水電解質の総質量に対して0.05質量%以上3質量%以下含有し、前記正極合剤層がシランカップリング剤もしくは下記一般式(I)で表されるカップリング剤(以下、「特定カップリング剤」と称する)の少なくとも1種を前記正極活物質の質量に対して0.003質量%以上3質量%以下含有していることを特徴とする
(ただし、MはAl、Ti、Zrから選択される1種であり、R1及びR2は炭素原子数1〜18のアルキル基又はアルコキシ基であり、nは1〜4の整数を表す。)
本発明の非水系二次電池において、非水電解質中にD2POを非水電解質の総質量に対して0.05質量%以上3質量%以下含有させ、正極合剤層に特定カップリング剤を前記正極活物質の質量に対して0.003質量%以上3質量%以下含有させると、充放電サイクルにおいて、D2POが正極表面上で酸化分解される前に先に、特定カップリング剤が、正極合剤層表面と電解質界面の間に作用して、この界面におけるイオン伝導性の低下を抑制すると推測される。従って、正極合剤層と電解質界面のイオン導電性の低下を抑制し、高温及び室温の充放電サイクル特性が向上すると考えられる。
なお、D2POの含有量が非水電解質の総質量に対して0.05質量%未満であると、負極上での安定なSEI被膜が形成できなくなる。また、D2POの含有量が非水電解質の総質量に対して3質量%を超えると、正極上での酸化分解による反応生成物が堆積し、正極合剤層と電解質界面の皮膜抵抗を上昇させる。より好ましくは、D2POの含有量が非水電解質の総質量に対して0.1質量%以上0.5質量%以下であると、高温及び室温の充放電サイクル特性が、さらに向上すると考えられる。
また、特定カップリング剤が、正極活物質の質量に対して0.003質量%未満であると、少なすぎて特定カップリング剤添加の効果が得られない。これらの特定カップリング剤の含有量が正極活物質の質量に対して3質量%を超えると、正極の抵抗が大きくなり、初期容量が低下する。また、高温及び室温の充放電サイクル特性も低下する。より好ましくは、特定カップリング剤の含有量が、正極活物質の質量に対して0.1質量%以上0.5質量%以下含有であると、初期容量の低下もなく、高温及び室温の充放電サイクル特性がさらに向上すると考えられる。
また、本発明の非水系二次電池においては、正極活物質の平均粒径は4.5〜15.5μm、比表面積は0.13〜0.80m2/gであることが好ましい。正極活物質の平均粒径及び比表面積が、この範囲内であると、高温及び室温の充放電サイクル特性がさらに向上する。
なお、本発明の非水系二次電池で使用する正極活物質としては、LiCoO2、LiNiO2、LiMn2O4、LiMnO2、LiNi1−xMnxO2(0<x<1)、LiNi1−xCoxO2(0<x<1)、LiNixMnyCozO2(0<x、y、z<1、x+y+z=1)などのリチウム複合酸化物又はLiFePO4などのオリビン構造を有するリン酸化合物が好ましい。
また、本発明の非水系二次電池の正極合剤層中に含有させる特定カップリング剤の含有方法については、正極極板に直接塗布あるいは正極合剤スラリーに混合してもよい。この特定カップリング剤は、特に限定されないが、適当な有機溶媒、例えばアセトン、メチルエチルケトン(MEK)などのケトン類、テトラヒドロフラン(THF)などのエーテル類、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、シリコーンオイル等を用いて希釈して使用してもよい。
また、本発明の非水系二次電池で使用し得る負極活物質としては、黒鉛、難黒鉛化性炭素及び易黒鉛化性炭素などの炭素原料、LiTiO2及びTiO2などのチタン酸化物、ケイ素及びスズなどの半金属元素、またはSn−Co合金等が挙げられる。
また、本発明の非水系二次電池で使用し得る非水溶媒としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)などの環状炭酸エステル、フッ素化された環状炭酸エステル、γ−ブチルラクトン(BL)、γ−バレロラクトン(VL)などの環状カルボン酸エステル、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、ジブチルカーボネート(DNBC)などの鎖状炭酸エステル、ピバリン酸メチル、ピバリン酸エチル、メチルイソブチレート、メチルプロピオネートなどの鎖状カルボン酸エステル、N、N’−ジメチルホルムアミド、N−メチルオキサゾリジノンなどのアミド化合物、スルホランなどの硫黄化合物、テトラフルオロ硼酸1−エチル−3−メチルイミダゾリウムなどの常温溶融塩などが例示できる。これらは2種以上混合して用いることが望ましい。この中でもEC、PC、鎖状炭酸エステル、3級カルボン酸エステルが特に好ましい。
また、本発明の非水系二次電池で使用するセパレータとしては、ポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィン材料から形成された微多孔膜からなるセパレータが選択できる。セパレータのシャットダウン応答性を確保するために、融点の低い樹脂を混合したり、耐熱性を得るために高融点樹脂との積層体や無機粒子を担持させた樹脂としてもよい。
なお、本発明の非水系二次電池で使用する非水電解質中には、電極の安定化用化合物として、さらに、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチルカーボネート(VEC)、無水コハク酸(SUCAH)、無水マイレン酸(MAAH)、グリコール酸無水物、エチレンサルファイト(ES)、ジビニルスルホン(VS)、ビニルアセテート(VA)、ビニルピバレート(VP)、カテコールカーボネート、ビフェニル(BP)などを添加してもよい。これらの化合物は、2種以上を適宜に混合して用いることができる。
また、本発明の非水系二次電池で使用する非水溶媒中に溶解させる電解質塩としては、非水系二次電池において一般に電解質塩として用いられるリチウム塩を用いることができる。このようなリチウム塩としては、LiPF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、LiN(CF3SO2)(C4F9SO2)、LiC(CF3SO2)3、LiC(C2F5SO2)3、LiAsF6、LiClO4、Li2B10Cl10、Li2B12Cl12など及びそれらの混合物が例示される。これらの中でも、LiPF6(ヘキサフルオロリン酸リチウム)が特に好ましい。前記非水溶媒に対する電解質塩の溶解量は、0.5〜2.0mol/Lとするのが好ましい。
また、本発明の非水系二次電池で採用し得るシランカップリング剤としては、分子内に少なくとも1つの有機官能基と、複数の結合基とを有するものを使用し得る。有機官能基は、様々な炭化水素骨格を有するものであればよい。この有機官能基としては、例えばアルキル基、メルカプトプロピル基、トリフルオロプロピル基などが挙げられる。また、結合基としては、加水分解性のアルコキシ基などが挙げられる。
また、上記一般式(I)の構造を有するカップリング剤におけるMとしては、Al、Ti、Zrから選択される1種とすることができるが、特にMをAlとすることが好ましい。MをAlとすると、安価に合成でき、しかも、MをTi又はZrとした場合よりも良好な結果が得られる。
また、上記一般式(I)の構造を有するカップリング剤としては、R1又はR2の少なくとも一つがアルコキシ基(エトキシ基、iso−プロポキシ基、tert−ブトキシ基等)である場合、特性改善効果が大きい。また上記一般式(I)のM原子にアルコキシ基(iso−プロボキシ基、tert−プトキシ基等)が結合している場合、正極活物質に対する反応性が向上するため好ましい。なお、M原子に結合するアルコキシ基の数は、化合物の耐加水分解性を高めるために、二つまでが好ましい。
また、特定カップリング剤としては、アルミニウムビスエチルアセトアセテートモノアセチルアセトネート、アルミニウムエチルアセトアセテートジイソプロピレート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムビスエチルアセトアセテートモノアセチルアセトネート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、チタニウムビス(エチルアセトアセテート)ジイソプロポキシド、チタニウムビスエチルアセトアセテートビスアセチルアセトネート、ジルコニウムテトラキスアセチルアセトネート、メチルトリメトキシシラン、ジメチルメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランからなる群から選択された少なくとも1種であることが好ましい。この中でも、特に、アルミニウムビスエチルアセトアセテートモノアセチルアセトネートがより好ましい。
以下、本発明を実施するための形態を実施例及び比較例を用いて詳細に説明する。但し、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための非水系二次電池の一例を示すものであって、本発明をこの実施例に限定することを意図するものではなく、本発明は特許請求の範囲に示した技術思想を逸脱することなく種々の変更を行ったものにも均しく適用し得るものである。
最初に、各種実施例及び比較例に共通する非水系二次電池の具体的製造方法について説明する。
[正極の作製]
各種正極活物質を95質量%、導電剤としての無定形炭素HS−100(商品名)2.5質量%、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)2.5質量%の割合で混合して正極合剤とし、これに正極合剤質量の50質量%のN−メチルピロリドン(NMP)を加えてスラリー状にした。得られたスラリーに各種カップリング剤を所定量添加し、十分に撹拌した後、ドクターブレード法により厚さ12μmのアルミ箔の両面に塗布(塗布量440g/m2)した。その後、加熱乾燥(70〜140℃)及び加圧成型して充填密度3.66g/cc(LiMn2O4、LiMn1/3Ni1/3Co1/3O2については3.15g/cc)となるようにし、所定の大きさに切り出して正極板を得た。
[正極の作製]
各種正極活物質を95質量%、導電剤としての無定形炭素HS−100(商品名)2.5質量%、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)2.5質量%の割合で混合して正極合剤とし、これに正極合剤質量の50質量%のN−メチルピロリドン(NMP)を加えてスラリー状にした。得られたスラリーに各種カップリング剤を所定量添加し、十分に撹拌した後、ドクターブレード法により厚さ12μmのアルミ箔の両面に塗布(塗布量440g/m2)した。その後、加熱乾燥(70〜140℃)及び加圧成型して充填密度3.66g/cc(LiMn2O4、LiMn1/3Ni1/3Co1/3O2については3.15g/cc)となるようにし、所定の大きさに切り出して正極板を得た。
[負極の作製]
人造黒鉛(d=0.336nm)97質量%、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)2質量%、結着材としてのスチレンブタジエンゴム(SBR)1質量%の割合で混合し、これに水を加えてスラリー状にして厚さ8μmの銅箔の両面に塗布(塗布量210g/m2)した。その後、これを乾燥させ、加圧成型して充填密度1.60g/ccとなるようにし、所定の大きさに切り出して負極極板を作製した。
人造黒鉛(d=0.336nm)97質量%、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)2質量%、結着材としてのスチレンブタジエンゴム(SBR)1質量%の割合で混合し、これに水を加えてスラリー状にして厚さ8μmの銅箔の両面に塗布(塗布量210g/m2)した。その後、これを乾燥させ、加圧成型して充填密度1.60g/ccとなるようにし、所定の大きさに切り出して負極極板を作製した。
[注液前電池の作製]
所定の寸法にスリットした正極板と負極板に集電タブを溶接し、厚さ16μmのポリエチレン微多孔膜のセパレータを挟んで捲回し、巻回電極体を作製した。得られた巻回電極体をカップ成型したラミネート外装体内に収納し、注液口を除いて熱シールすることにより注液前電池を作製した。
所定の寸法にスリットした正極板と負極板に集電タブを溶接し、厚さ16μmのポリエチレン微多孔膜のセパレータを挟んで捲回し、巻回電極体を作製した。得られた巻回電極体をカップ成型したラミネート外装体内に収納し、注液口を除いて熱シールすることにより注液前電池を作製した。
[電池の作製]
非水電解質としては、EC/PC/EMC/ピバリン酸メチルをそれぞれ体積%で25/5/10/60となるように混合した非水溶媒を用い、これに電解質塩としてのLiPF6濃度が1Mとなるように溶解したものを用いた。この非水電解質19mlを注液口より注入した後に真空含浸処理を行い、その後注液口を熱シールして充放電を行い、設計容量3850mAh(1It=3850mA)の非水系二次電池を完成させた。
非水電解質としては、EC/PC/EMC/ピバリン酸メチルをそれぞれ体積%で25/5/10/60となるように混合した非水溶媒を用い、これに電解質塩としてのLiPF6濃度が1Mとなるように溶解したものを用いた。この非水電解質19mlを注液口より注入した後に真空含浸処理を行い、その後注液口を熱シールして充放電を行い、設計容量3850mAh(1It=3850mA)の非水系二次電池を完成させた。
[電池特性の測定]
上述のようにして作製された各実施例及び比較例の電池のそれぞれに対し、以下の測定方法に従って、初期容量、高温及び室温のサイクル特性を求めた。
上述のようにして作製された各実施例及び比較例の電池のそれぞれに対し、以下の測定方法に従って、初期容量、高温及び室温のサイクル特性を求めた。
[初期容量の測定]
各実施例及び比較例の電池のそれぞれに対し、23℃の恒温槽中で、0.5It=1925mAの定電流で電池電圧が4.2Vに達するまで充電し、さらに電池電圧が4.2Vに達した後は、4.2Vの定電圧で電流値が(1/20)It=193mAになるまで充電した。このときの充電容量を常温充電容量として求めた。その後、0.5It=1925mAの定電流で電池電圧が2.75Vになるまで放電した。このときの放電容量を初期容量として求めた。
各実施例及び比較例の電池のそれぞれに対し、23℃の恒温槽中で、0.5It=1925mAの定電流で電池電圧が4.2Vに達するまで充電し、さらに電池電圧が4.2Vに達した後は、4.2Vの定電圧で電流値が(1/20)It=193mAになるまで充電した。このときの充電容量を常温充電容量として求めた。その後、0.5It=1925mAの定電流で電池電圧が2.75Vになるまで放電した。このときの放電容量を初期容量として求めた。
[23℃サイクル特性の測定]
各実施例及び比較例のそれぞれの電池について、23℃の恒温槽中で、1It=3850mAの定電流で電池電圧が4.2Vに達するまで充電し、さらに電池電圧が4.2Vに達した後は、4.2Vの定電圧で電流値が(1/20)It=193mAになるまで充電した。その後、1It=3850mAの定電流で電池電圧が2.75Vになるまで放電した。このときの放電容量を1サイクル時の放電容量として求めた。同様の充放電を1000回繰り返し、1000回目の放電容量を1000サイクル時の放電容量として求め、以下の計算式に基いて23℃のサイクル特性(%)を求めた。
23℃のサイクル特性(%)=(1000サイクル時の放電容量/1サイクル時の放電容量)×100
各実施例及び比較例のそれぞれの電池について、23℃の恒温槽中で、1It=3850mAの定電流で電池電圧が4.2Vに達するまで充電し、さらに電池電圧が4.2Vに達した後は、4.2Vの定電圧で電流値が(1/20)It=193mAになるまで充電した。その後、1It=3850mAの定電流で電池電圧が2.75Vになるまで放電した。このときの放電容量を1サイクル時の放電容量として求めた。同様の充放電を1000回繰り返し、1000回目の放電容量を1000サイクル時の放電容量として求め、以下の計算式に基いて23℃のサイクル特性(%)を求めた。
23℃のサイクル特性(%)=(1000サイクル時の放電容量/1サイクル時の放電容量)×100
[45℃サイクル特性の測定]
45℃のサイクル特性は以下のようにして測定した。各実施例及び比較例のそれぞれの電池について、45℃の恒温槽中で、1It=3850mAの定電流で電池電圧が4.2Vに達するまで充電し、さらに電池電圧が4.2Vに達した後は、4.2Vの定電圧で電流値が(1/20)It=193mAになるまで充電した。その後、1It=3850mAの定電流で電池電圧が2.75Vになるまで放電した。このときの放電容量を1サイクル時の放電容量として求めた。同様の充放電を1000回繰り返し、1000回目の放電容量を1000サイクル時の放電容量として求め、以下の計算式に基いて45℃のサイクル特性(%)を求めた。
45℃のサイクル特性(%)=(1000サイクル時の放電容量/1サイクル時の放電容量)×100
45℃のサイクル特性は以下のようにして測定した。各実施例及び比較例のそれぞれの電池について、45℃の恒温槽中で、1It=3850mAの定電流で電池電圧が4.2Vに達するまで充電し、さらに電池電圧が4.2Vに達した後は、4.2Vの定電圧で電流値が(1/20)It=193mAになるまで充電した。その後、1It=3850mAの定電流で電池電圧が2.75Vになるまで放電した。このときの放電容量を1サイクル時の放電容量として求めた。同様の充放電を1000回繰り返し、1000回目の放電容量を1000サイクル時の放電容量として求め、以下の計算式に基いて45℃のサイクル特性(%)を求めた。
45℃のサイクル特性(%)=(1000サイクル時の放電容量/1サイクル時の放電容量)×100
[実施例1〜6、比較例1〜11]
実施例1〜6、比較例1〜11の非水系二次電池としては、正極活物質として平均粒径が9.7μmであり、比表面積が0.38m2/gのLiCoO2を用いた。なお、以下においては、ジ(2−プロピニル)オギザレート(D2PO)の添加量は、非水電解質の総質量に対する割合を示し、各種カップリング剤の添加量は、正極活物質の質量に対する割合を示している。
実施例1〜6、比較例1〜11の非水系二次電池としては、正極活物質として平均粒径が9.7μmであり、比表面積が0.38m2/gのLiCoO2を用いた。なお、以下においては、ジ(2−プロピニル)オギザレート(D2PO)の添加量は、非水電解質の総質量に対する割合を示し、各種カップリング剤の添加量は、正極活物質の質量に対する割合を示している。
比較例1は、非水電解質中にD2POを含まず、正極合剤層中にカップリング剤も添加しなかったものである。また、比較例2〜8は、非水電解質中にD2POを0.03〜2質量%まで変化させて添加し、正極合剤層中にカップリング剤を添加しなかったものである。
また、比較例9は、非水電解質中にD2POを添加せず、正極合剤層中にカップリング剤としてアルミニウムビスエチルアセトアセテートモノアセチルアセトネートを0.2質量%添加したものである。さらに、比較例10及び11は、正極合剤層中にカップリング剤としてアルミニウムビスエチルアセトアセテートモノアセチルアセトネートを0.2質量%添加し、非水電解質中にD2POを0.03質量%(比較例10)、3質量%(比較例11)添加したものである。
さらに、実施例1〜6は、正極合剤層中にカップリング剤としてアルミニウムビスエチルアセトアセテートモノアセチルアセトネートをそれぞれ0.2質量%添加し、非水電解質中にD2POを0.03質量%〜2質量%まで変化させて添加したものである。これらの実施例1〜6、比較例1〜11の測定結果を纏めて表1に示す。
表1に示した結果から、以下のことが分かる。すなわち、正極合剤層中にカップリング剤が添加されていない比較例1〜8の結果は、非水電解質中にD2POを添加(比較例2〜8)すると、D2POが添加されていない(比較例1)場合よりも、室温のサイクル特性が低下している。
また、正極合剤層中にカップリング剤が添加されているが、非水電解質中にD2POが添加されていない比較例9の測定結果は、カップリング剤及びD2POの両方とも無添加の比較例1の電池とほぼ同等の結果になっている。このことから、非水電解質中にD2POが添加していないと、正極合剤層中にカップリング剤を添加してもしなくても、高温及び室温のサイクル特性に影響を及ぼさないことが判る。
それに対し、正極合剤層中にカップリング剤としてのアルミニウムビスエチルアセトアセテートモノアセチルアセトネートが0.2質量%添加され、非水電解質中にD2POが0.03質量%〜2質量%添加(実施例1〜6)されていれば、室温のサイクル特性は、比較例1と同等ないしわずかであるが優れており、しかも、高温のサイクル特性は、比較例1〜10のものよりも大幅に優れている。
また、比較例11及び実施例1〜6の結果から、正極合剤層中にカップリング剤としてのアルミニウムビスエチルアセトアセテートモノアセチルアセトネートが0.2質量%添加されている場合、非水電解質中のD2POの添加量が非水電解質の総質量に対して2質量を超えると、高温及び室温のサイクル特性の両方共に低下していることが分かる。
[実施例7〜24、比較例12、13]
実施例7〜24、比較例12、13の非水系二次電池としては、正極活物質として平均粒径が9.7μmであり、比表面積が0.38m2/gのLiCoO2を用い、さらに非水電解質中にD2POを0.2質量%添加したものを用いた。
実施例7〜24、比較例12、13の非水系二次電池としては、正極活物質として平均粒径が9.7μmであり、比表面積が0.38m2/gのLiCoO2を用い、さらに非水電解質中にD2POを0.2質量%添加したものを用いた。
比較例12としては、カップリング剤として鉄トリスアセチルアセテートを用いた。実施例7〜12はカップリング剤として下記一般式(I)で表される各種化合物を用いたものであり、実施例13〜17は各種のシランカップリング剤を用いたものである。なお、実施例7〜12で使用したカップリング剤のうち、実施例9で使用したアルミニウムトリスアセチルアセトネート及び実施例12で使用したジルコニウムテトラキスアセチルアセトネート以外は、全てアルコキシ基を有する化合物である。また、実施例7〜17で用いた各種カップリング剤名は表2に纏めて示してある。
(ただし、MはAl、Ti、Zrから選択される1種であり、R1及びR2は炭素原子数1〜18のアルキル基又はアルコキシ基であり、nは1〜4の整数を表す。)
また、実施例18〜24及び比較例13は、カップリング剤としてアルミニウムビスエチルアセトアセテートモノアセチルアセトネートをそれぞれ0.003〜3質量%(実施例18〜24)及び4質量%(比較例13)まで変化させて用いたものである。実施例7〜24、比較例12〜13までの結果を、実施例3及び比較例5の結果と共に、纏めて表2に示す。
表2に示した結果から以下のことが分かる。すなわち、非水電解質中にD2POが添加されている場合、カップリング剤として上記化学式(I)で表される化合物を用いた実施例3、7〜12及びシランカップリング剤を用いた実施例13〜17の結果は、カップリング剤として鉄トリスアセチルアセトネートを用いた比較例12の結果よりも非常に優れた結果が得られている。そのため、カップリング剤としては、上記化学式(I)で表される化合物又はシランカップリング剤が好ましいことが分かる。
また、カップリング剤として上記化学式(I)で表される化合物を用いた実施例3、7〜12のうち、MがAlである実施例3、7〜9の結果は、MがTiである実施例10及び11、MがZrである実施例12のものよりも高温及び室温サイクル特性において優れている。そのため、カップリング剤として上記化学式(I)で表される化合物を用いる場合、MがAlの方が好ましいことが分かる。
また、カップリング剤としてアルミニウムビスエチルアセトアセテートモノアセチルアセトネートをそれぞれ0.003〜4質量%まで変化させた実施例18〜24及び比較例13の結果によれば、カップリング剤の添加量は0.003質量%の添加で、カップリング剤の無添加(比較例1)の場合に比して充分に良好な結果が得られており、カップリング剤の添加量が多くなって4質量%(比較例13)となると初期容量が低下し、さらに高温及び室温サイクル特性が低下してしまう。そのため、非水電解質中にD2POが添加されている場合、カップリング剤としての上記化学式(I)で表される化合物ないしシランカップリング剤の添加量は正極活物質の質量に対して0.003質量%以上3質量%以下とすることが好ましいことが分かる。
[実施例25〜44]
実施例25〜44の非水系二次電池としては、非水電解質中にD2POを0.2質量%添加し、正極合剤層中にアルミニウムビスエチルアセトアセテートモノアセチルアセトネートを0.2質量%添加したものを用いた。
実施例25〜44の非水系二次電池としては、非水電解質中にD2POを0.2質量%添加し、正極合剤層中にアルミニウムビスエチルアセトアセテートモノアセチルアセトネートを0.2質量%添加したものを用いた。
そして、実施例25〜39では、正極活物質としてLiCoO2の平均粒径を3.3〜16.6μmまで、比表面積を0.11〜0.9m2/gまで種々変化させたものである。また、実施例40〜44は、LiCoO2以外の各種の正極活物質について測定したものである。
なお、実施例25〜44の測定結果を、実施例3の結果と共に、纏めて表3に示した。
なお、実施例25〜44の測定結果を、実施例3の結果と共に、纏めて表3に示した。
表3に示した結果から以下のことが分かる。すなわち、正極活物質としてLiCoO2を用い、その平均粒径を4.5〜15.5μm、比表面積を0.13〜0.80m2/gの範囲にある実施例27、28、30〜32、34〜37は、高温サイクル特性が79%〜84%、室温サイクル特性が77%〜82%と共に良好な結果となっている。
また、正極活物質としてLiCoO2を用い、平均粒径が4.5μm未満又は15.5μmを超え、比表面積が0.13m2/g未満又は0.80m2/gを超える実施例25、26、29、33、38〜39は、高温サイクル特性が75%〜76%、室温サイクル特性が69%〜75%という結果となっている。
以上の結果から、正極活物質の平均粒径が4.5〜15.5μm、比表面積が0.13〜0.80m2/gの場合、特に優れた高温及び室温サイクル特性が得られることが判る。
次に、実施例40〜44の測定結果について検討する。実施例40〜44は、正極活物質としてLi1/3Ni1/3Co1/3O2、LiMn2O4、LiNiO2、LiNi0.85Co0.15O2、及び、LiCo0.99Al0.01O2をそれぞれ用い測定した結果を示している。ただし、実施例40〜44のいずれにおいても、正極活物質の平均粒径は9.3〜12.7μmの範囲内及び比表面積は0.31〜0.58m2/gの範囲内とされている。
表3に示した結果によれば、正極活物質としてLi1/3Ni1/3Co1/3O2、LiMn2O4、LiNiO2、LiNi0.85Co0.15O2、及び、LiCo0.99Al0.01O2の何れを用いた場合であっても、D2PO及びカップリング剤共に含有する場合(実施例40
〜44)は、正極活物質としてLiCoO2を用いた場合と同様に良好な結果が得られている。そのため、正極活物質としてLiCoO2を用いた場合の検討結果は、非水系二次電池で普通に採用されている正極活物質に対して均しく適用できることは明らかである。
〜44)は、正極活物質としてLiCoO2を用いた場合と同様に良好な結果が得られている。そのため、正極活物質としてLiCoO2を用いた場合の検討結果は、非水系二次電池で普通に採用されている正極活物質に対して均しく適用できることは明らかである。
Claims (7)
- リチウム複合酸化物を正極活物質とする正極合剤層が形成された正極極板と、負極極板と、セパレータと、非水電解質とを備える非水系二次電池において、
前記非水電解質中にジ(2−プロピニル)オギザレートを前記非水電解質の総質量に対して0.05質量%以上3質量%以下含有し、
前記正極合剤層がシランカップリング剤もしくは下記一般式(I)で表されるカップリング剤の少なくとも1種を前記正極活物質の質量に対して0.003質量%以上3質量%以下含有していることを特徴とする非水系二次電池。
- 前記正極活物質の平均粒径が4.5〜15.5μm、比表面積が0.13〜0.80m2/gであることを特徴とする請求項1に記載の非水系二次電池。
- 前記ジ(2−プロピニル)オギザレートの含有量が、前記非水電解質の総質量に対して0.1質量%以上0.5質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の非水系二次電池。
- 前記カップリング剤がアルミニウムビスエチルアセトアセテートモノアセチルアセトネート、アルミニウムエチルアセトアセテートジイソプロピレート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムビスエチルアセトアセテートモノアセチルアセトネート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、チタニウムビス(エチルアセトアセテート)ジイソプロポキシド、チタニウムビスエチルアセトアセテートビスアセチルアセトネート、ジルコニウムテトラキスアセチルアセトネート、メチルトリメトキシシラン、ジメチルメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランからなる群から選択された少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の非水系二次電池。
- 前記カップリング剤がアルミニウムビスエチルアセトアセテートモノアセチルアセトネートであることを特徴とする請求項1に記載の非水系二次電池。
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