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JP2013087165A - 絶縁性接着フィルム、積層体、硬化物、及びプリント配線板 - Google Patents

絶縁性接着フィルム、積層体、硬化物、及びプリント配線板 Download PDF

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JP2013087165A
JP2013087165A JP2011227524A JP2011227524A JP2013087165A JP 2013087165 A JP2013087165 A JP 2013087165A JP 2011227524 A JP2011227524 A JP 2011227524A JP 2011227524 A JP2011227524 A JP 2011227524A JP 2013087165 A JP2013087165 A JP 2013087165A
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Yohei Tateishi
洋平 立石
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Zeon Corp
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Nippon Zeon Co Ltd
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Abstract

【課題】熱履歴による変形が小さく、低表面粗度であり、硬化後、表面に導体層を形成した場合に高いピール強度が得られる絶縁性接着フィルム、ならびに、これを用いて得られる積層体、硬化物、及びプリント配線板を提供すること。
【解決手段】支持体上に、熱硬化性樹脂組成物層(A)及び光硬化性樹脂組成物層(B)を、この順で積層してなる絶縁性接着フィルム、これを用いて得られる積層体、硬化物、及びプリント配線板。
【選択図】なし

Description

本発明は、絶縁性接着フィルム、積層体、硬化物及びプリント配線板に関する。
電子機器の小型化、多機能化、通信高速化などの追求にともない、電子機器に用いられる回路基板のさらなる高密度化が要求されており、このような高密度化の要求に応えるために、回路基板の薄膜化と多層化が図られている。このような多層回路基板は、例えば、電気絶縁層とその表面に形成された導体層とからなる内層基板の上に、樹脂からなる電気絶縁層を積層し、この電気絶縁層の上に導体層を形成させ、さらに、これら電気絶縁層と、導体層の形成と、を繰り返し行うことにより形成される。電気絶縁層と導体層とは、必要に応じて、数段積層することもできる。
このような多層回路基板の電気絶縁層を構成するための材料としては、一般的にセラミックや熱硬化性樹脂が用いられている。なかでも、熱硬化性樹脂としてのエポキシ樹脂は、経済性と性能のバランスの点で優れるため、広く使用されている。
また、有機EL素子や液晶表示素子などの各種表示素子、集積回路素子、固体撮像素子などの半導体素子には、劣化や損傷を防止するための保護膜、素子表面や配線を平坦化するための平坦化膜、層状に配置されている各配線の間の電気絶縁性を保つための層間絶縁膜などの機能性樹脂層が設けられており、高密度化、薄膜化が求められている。
しかしながら、これらの電気絶縁層を形成する樹脂膜は、熱履歴による樹脂の伸縮により寸法変化が発生しやすく、積層して得られる基板や素子などが反りなどの変形をおこしてしまう問題がある。このような変形がおきた場合、実装が困難になったり、信頼性に劣る可能性がある。
熱履歴による樹脂の伸縮を抑える方策としては、樹脂中に無機充填剤を多量に添加する方法が一般的に有効であるが、熱膨張は抑制されるものの得られる基板の変形を抑えるには十分ではなく、また、樹脂表面に無電解めっきにより導体層を形成した場合、その界面粗度が大きくなってしまうという問題がある。
これに対し、たとえば、特許文献1にはリフロー時の反りや寸法精度が優れるビルドアップ型の多層プリント配線板を与える材料として、樹脂絶縁層にガラスクロスを支持体としたプリプレグを使用することが開示されている。
特開平11−233941号公報
しかしながら、本発明者が検討したところ、上述の特許文献1のプリプレグを用いた場合、熱履歴による樹脂の伸縮についてはある程度改善が認められたものの、樹脂表面と導体との界面粗度が大きく、また、積層する基材表面等との十分な密着が得られないという問題があることが明らかとなった。
本発明の目的は、熱履歴による変形が小さく、低表面粗度であり、硬化後、表面に導体層を形成した場合に高いピール強度が得られる絶縁性接着フィルム、ならびに、これを用いて得られる積層体、硬化物、及びプリント配線板を提供することである。
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、支持体上に、熱硬化性樹脂組成物層(A)、光硬化性樹脂組成物層(B)の順で積層してなる絶縁性接着フィルムが所望の特性を満たしうることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明によれば、
〔1〕支持体上に、熱硬化性樹脂組成物層(A)及び光硬化性樹脂組成物層(B)を、この順で積層してなる絶縁性接着フィルム、
〔2〕熱硬化性樹脂組成物が重量平均分子量1,000以上の熱硬化性樹脂を含有する前記〔1〕記載の絶縁性接着フィルム、
〔3〕熱硬化性樹脂が脂環式オレフィン重合体である前記〔2〕記載の絶縁性接着フィルム、
〔4〕熱硬化性樹脂組成物層(A)と光硬化性樹脂組成物層(B)の2層の合計厚さが50μm以下である前記〔1〕〜〔3〕いずれか記載の絶縁性接着フィルム、
〔5〕前記〔1〕〜〔4〕いずれかに記載の絶縁性接着フィルムの光硬化性樹脂組成物層(B)の表面を基材に合わせるようにして積層してなる積層体、
〔6〕前記〔5〕に記載の積層体の熱硬化性樹脂組成物層(A)及び/又は光硬化性樹脂組成物層(B)を硬化してなる硬化物、
〔7〕前記〔5〕に記載の積層体又は前記〔6〕に記載の硬化物において、レーザーにより基材と反対側の面から基材面までビアホールを形成した後、又は次いで更に、未硬化若しくは半硬化の、熱硬化性樹脂組成物層(A)及び/又は光硬化性樹脂組成物層(B)を硬化させた後、硬化した熱硬化性樹脂組成物層(A)の表面及び/又はビアホールの表面に導体層を形成してなる複合体、
〔8〕前記〔7〕に記載の複合体からなる層を2以上含んでなる多層複合体、並びに、
〔9〕前記〔7〕に記載の複合体、又は前記〔8〕に記載の多層複合体からなるプリント配線板、が提供される。
本発明によれば、熱履歴による変形が小さく、低表面粗度であり、硬化後、表面に導体層を形成した場合に高いピール強度が得られる絶縁性接着フィルム、ならびに、これを用いて得られる積層体、硬化物、及びプリント配線板を提供することができる。
本発明の絶縁性接着フィルムは、支持体上に、熱硬化性樹脂組成物層(A)及び光硬化性樹脂組成物層(B)を、この順で積層してなる。
(支持体)
本発明で用いる支持体としては、樹脂フィルムや金属箔などが挙げられる。樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリアリレートフィルム、ナイロンフィルムなどが挙げられる。これらのフィルムのうち、耐熱性、耐薬品性、剥離性などに優れることからポリエチレンテレフタレートフィルム又はポリエチレンナフタレートフィルムが好ましい。金属箔としては、銅箔、アルミ箔、ニッケル箔、クロム箔、金箔、銀箔などが挙げられる。支持体の厚さは特に制限されないが、作業性等の観点から、通常1μm〜200μm、好ましくは2μm〜150μm、より好ましくは3〜100μmである。なお、支持体の表面平均粗さRaは、通常、300nm以下、好ましくは150nm以下、より好ましくは100nm以下である。
(熱硬化性樹脂組成物)
本発明で用いる熱硬化性樹脂組成物に含まれる熱硬化性樹脂としては、樹脂単独で、もしくは硬化剤との組み合わせで、熱硬化性を示し、電気絶縁性を有するものであれば制限されず、例えば、エポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、脂環式オレフィン重合体、芳香族ポリエーテル重合体、ベンゾシクロブテン重合体、シアネートエステル重合体、及びポリイミドなどが挙げられる。これらの樹脂は、それぞれ単独で、又は2種以上を組合わせて用いられる。これらの中でも、絶縁性接着フィルムを硬化して得られる硬化物を電気絶縁層として、その表面に導体層を形成する場合に無電解めっき処理を行う際、その前処理による粗化が抑制され、低表面粗度の電気絶縁層が得られやすいという観点から、脂環式オレフィン重合体、芳香族ポリエーテル重合体、ベンゾシクロブテン重合体、シアネートエステル重合体、及びポリイミドが好ましく、脂環式オレフィン重合体、及び芳香族ポリエーテル重合体がより好ましく、脂環式オレフィン重合体が特に好ましい。なお、本明細書において「(メタ)アクリル」とはメタクリル又はアクリルを意味する。
熱硬化性樹脂組成物は、絶縁性接着フィルムの可とう性、取り扱い性に優れるという観点から、重量平均分子量(Mw)が、通常1,000以上、好ましくは1,000〜1,000,000、より好ましくは3,000〜500,000、さらに好ましくは5,000〜300,000である熱硬化性樹脂を、当該組成物に含まれる熱硬化性樹脂全体の、好ましくは20重量%以上、より好ましくは40重量%以上の割合で含むのが好適である。なお、当該割合の上限は好ましくは95重量%、より好ましくは80重量%である。重量平均分子量が小さすぎると絶縁性接着フィルムを硬化して得られる硬化物の機械的強度が低下し、大きすぎると絶縁性接着フィルムの成形作業性が悪化する傾向がある。熱硬化性樹脂としては、重量平均分子量(Mw)が1,000未満であるものや、1,000,000を超えるものが含まれていてもよい。本明細書において重量平均分子量(Mw)は、テトラヒドロフランを溶離液とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
本発明で熱硬化性樹脂として好適に用いられる脂環式オレフィン重合体を構成する脂環式構造としては、シクロアルカン構造やシクロアルケン構造などが挙げられるが、機械的強度や耐熱性などの観点から、シクロアルカン構造が好ましい。また、脂環式構造としては、単環、多環、縮合多環、橋架け環や、これらを組み合わせてなる多環などが挙げられる。脂環式構造を構成する炭素原子数は、特に限定されないが、通常4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは5〜15個の範囲であり、脂環式構造を構成する炭素原子数がこの範囲にある場合に、機械的強度、耐熱性、及び成形性の諸特性が高度にバランスされ好適である。
本発明で用いる脂環式オレフィン重合体の脂環式構造は、炭素原子で形成される脂環式構造を有するオレフィン単量体単位、又は当該単量体単位と同視しうる単量体単位(以下、まとめて脂環式オレフィン単量体単位という。)よりなる。脂環式オレフィン重合体は、脂環式オレフィン単量体単位の他、その他の単量体単位を含んでいてもよい。脂環式オレフィン重合体中の脂環式オレフィン単量体単位の割合は、特に限定されないが、通常30〜100重量%、好ましくは50〜100重量%、より好ましくは70〜100重量%である。脂環式オレフィン単量体単位の割合が少なすぎると、耐熱性に劣り好ましくない。脂環式オレフィン単量体単位以外の単量体単位としては、格別な限定はなく、目的に応じて適宜選択される。
本発明で用いる脂環式オレフィン重合体は、反応性基、特に、後述する硬化剤に対して反応性を有する反応性基を有するものが好ましく、特に、極性基を有するものが好ましい。極性基としては、特に限定されないが、アルコール性水酸基、フェノール性水酸基、カルボキシル基、アルコキシル基、エポキシ基、グリシジル基、オキシカルボニル基、カルボニル基、アミノ基、エステル基、カルボン酸無水物基、スルホン酸基、リン酸基などが挙げられるが、これらのなかでも、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、及びフェノール性水酸基が好ましく、カルボン酸無水物基がより好ましい。なお、脂環式オレフィン重合体は、2種以上の反応性基を有するものであってもよい。また、反応性基は、重合体の主鎖を構成する原子に直接結合していても、メチレン基、オキシ基、オキシカルボニルオキシアルキレン基、フェニレン基などの他の二価の基を介して結合していてもよい。脂環式オレフィン重合体中の反応性基を有する単量体単位の含有率は、特に制限されないが、脂環式オレフィン重合体を構成する全単量体単位100モル%中、通常4〜60モル%、好ましくは8〜50モル%である。
本発明で用いる脂環式オレフィン重合体が、反応性基として極性基を有するものである場合には、たとえば、以下の方法により得ることができる。すなわち、(1)極性基を有する脂環式オレフィンを、必要に応じて他の単量体を加えて、重合する方法、(2)極性基を有しない脂環式オレフィンを、極性基を有する単量体と共重合する方法、(3)極性基を有する芳香族オレフィンを、必要に応じて他の単量体を加えて、重合し、これにより得られる重合体の芳香環部分を水素化する方法、(4)極性基を有しない芳香族オレフィンを、極性基を有する単量体と共重合し、これにより得られる重合体の芳香環部分を水素化する方法、又は、(5)極性基を有しない脂環式オレフィン重合体に極性基を有する化合物を変性反応により導入する方法、もしくは(6)前述の(1)〜(5)のようにして得られる極性基(例えばカルボン酸エステル基など)を有する脂環式オレフィン重合体の極性基を、例えば加水分解することなどにより他の極性基(例えばカルボキシル基)に変換する方法などにより得ることができる。これらのなかでも、前述の(1)の方法によって得られる重合体が好適である。
本発明で用いる脂環式オレフィン重合体を得る重合法は開環重合や付加重合が用いられるが、開環重合の場合には得られた開環重合体を水素添加することが好ましい。
極性基を有する脂環式オレフィンの具体例としては、5−ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−カルボキシメチル−5−ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、9−ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−メチル−9−ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−カルボキシメチル−9−ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、5−エキソ−6−エンド−ジヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、9−エキソ−10−エンド−ジヒドロキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、などのカルボキシル基を有する脂環式オレフィン;ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン−9,10−ジカルボン酸無水物、ヘキサシクロ[10.2.1.13,10.15,8.02,11.04,9]ヘプタデカ−6−エン−13,14−ジカルボン酸無水物などのカルボン酸無水物基を有する脂環式オレフィン;9−メチル−9−メトキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンなどのカルボン酸エステル基を有する脂環式オレフィン;(5−(4−ヒドロキシフェニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、9−(4−ヒドロキシフェニル)テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、N−(4−ヒドロキシフェニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミドなどのフェノール性水酸基を有する脂環式オレフィンなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
極性基を有しない脂環式オレフィンの具体例としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)、5−エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ブチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ビニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−3,8−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、テトラシクロ〔6.2.1.13,6.02,7〕ドデカ−4−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)、9−メチル−テトラシクロ〔6.2.1.13,6.02,7〕ドデカ−4−エン、9−エチル−テトラシクロ〔6.2.1.13,6.02,7〕ドデカ−4−エン、9−メチリデン−テトラシクロ〔6.2.1.13,6.02,7〕ドデカ−4−エン、9−エチリデン−テトラシクロ〔6.2.1.13,6.02,7〕ドデカ−4−エン、9−メトキシカルボニル−テトラシクロ〔6.2.1.13,6.02,7〕ドデカ−4−エン、9−ビニル−テトラシクロ〔6.2.1.13,6.02,7〕ドデカ−4−エン、9−プロペニル−テトラシクロ〔6.2.1.13,6.02,7〕ドデカ−4−エン、9−フェニル−テトラシクロ〔6.2.1.13,6.02,7〕ドデカ−4−エン、テトラシクロ[9.2.1.02,10.03,8]テトラデカ−3,5,7,12−テトラエン、シクロペンテン、シクロペンタジエンなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
極性基を有しない芳香族オレフィンの例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼンなどが挙げられる。これらの具体例が前記極性基を有する場合、極性基を有する芳香族オレフィンの例として挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
脂環式オレフィンや芳香族オレフィンと共重合することができる、極性基を有する脂環式オレフィン以外の、極性基を有する単量体としては、極性基を有するエチレン性不飽和化合物が挙げられ、その具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、α−エチルアクリル酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸化合物;無水マレイン酸、ブテニル無水コハク酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水シトラコン酸などの不飽和カルボン酸無水物;などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
脂環式オレフィンや芳香族オレフィンと共重合することができる、脂環式オレフィン以外の、極性基を有しない単量体としては、極性基を有しないエチレン性不飽和化合物が挙げられ、その具体例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどの炭素数2〜20のエチレン又はα−オレフィン;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどの非共役ジエン;などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
本発明で用いる脂環式オレフィン重合体を、開環重合法により得る場合の重合触媒としては、従来公知のメタセシス重合触媒を用いることができる。メタセシス重合触媒としては、Mo,W,Nb,Ta,Ruなどの原子を含有してなる遷移金属化合物が例示され、なかでも、Mo,W又はRuを含有する化合物は重合活性が高くて好ましい。特に好ましいメタセシス重合触媒の具体的な例としては、(1)ハロゲン基、イミド基、アルコキシ基、アリロキシ基又はカルボニル基を配位子として有する、モリブデンあるいはタングステン化合物を主触媒とし、有機金属化合物を第二成分とする触媒や、(2)Ruを中心金属とする金属カルベン錯体触媒を挙げることができる。
上記(1)の触媒で主触媒として用いられる化合物の例としては、MoCl、MoBrなどのハロゲン化モリブデン化合物やWCl、WOCl、タングステン(フェニルイミド)テトラクロリド・ジエチルエーテルなどのハロゲン化タングステン化合物が挙げられる。また、上記(1)の触媒で、第二成分として用いられる有機金属化合物としては、周期表第1族、2族、12族、13族又は14族の有機金属化合物を挙げることができる。なかでも、有機リチウム化合物、有機マグネシウム化合物、有機亜鉛化合物、有機アルミニウム化合物、有機スズ化合物が好ましく、有機リチウム化合物、有機アルミニウム化合物、有機スズ化合物が特に好ましい。有機リチウム化合物としては、n−ブチルリチウム、メチルリチウム、フェニルリチウム、ネオペンチルリチウム、ネオフィルリチウムなどを挙げることができる。有機マグネシウムとしては、ブチルエチルマグネシウム、ブチルオクチルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、エチルマグネシウムクロリド、n−ブチルマグネシウムクロリド、アリルマグネシウムブロミド、ネオペンチルマグネシウムクロリド、ネオフィルマグネシウムクロリドなどを挙げることができる。有機亜鉛化合物としては、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジフェニル亜鉛などを挙げることができる。有機アルミニウム化合物としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、ジエチルアルミニウムエトキシド、エチルアルミニウムジエトキシドなどを挙げることができ、さらに、これらの有機アルミニウム化合物と水との反応によって得られるアルミノキサン化合物も用いることができる。有機スズ化合物としては、テトラメチルスズ、テトラ(n−ブチル)スズ、テトラフェニルスズなどを挙げることができる。これらの有機金属化合物の量は、用いる有機金属化合物によって異なるが、主触媒の中心金属に対して、モル比で、0.1〜10,000倍が好ましく、0.2〜5,000倍がより好ましく、0.5〜2,000倍が特に好ましい。
また、上記(2)のRuを中心金属とする金属カルベン錯体触媒としては、(1,3−ジメシチル−イミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、トリシクロヘキシルホスフィン−〔1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−4,5−ジブロモイミダゾール−2−イリデン〕−〔ベンジリデン〕ルテニウムジクロリド、4−アセトキシベンジリデン(ジクロロ)(4,5−ジブロモ−1,3−ジメシチル−4−イミダゾリン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムなどが挙げられる。
メタセシス重合触媒の使用割合は、重合に用いる単量体に対して、(メタセシス重合触媒中の遷移金属:単量体)のモル比で、通常1:100〜1:2,000,000の範囲であり、好ましくは1:200〜1:1,000,000の範囲である。触媒量が多すぎると触媒除去が困難となり、少なすぎると十分な重合活性が得られないおそれがある。
重合反応は、通常、有機溶媒中で行なう。用いられる有機溶媒は、重合体が所定の条件で溶解又は分散し、重合に影響しないものであれば、特に限定されないが、工業的に汎用されているものが好ましい。有機溶媒の具体例としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ビシクロヘプタン、トリシクロデカン、ヘキサヒドロインデンシクロヘキサン、シクロオクタンなどの脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン系脂肪族炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン系芳香族炭化水素;ニトロメタン、ニトロベンゼン、アセトニトリルなどの含窒素炭化水素系溶媒;ジエチルエ−テル、テトラヒドロフランなどのエ−テル系溶媒;アニソール、フェネトールなどの芳香族エーテル系溶媒;などを挙げることができる。これらの中でも、工業的に汎用されている芳香族炭化水素系溶媒や脂肪族炭化水素系溶媒、脂環族炭化水素系溶媒、エーテル系溶剤、芳香族エーテル系溶媒が好ましい。
有機溶媒の使用量は、重合溶液中の単量体の濃度が、1〜50重量%となる量であることが好ましく、2〜45重量%となる量であることがより好ましく、3〜40重量%となる量であることが特に好ましい。単量体の濃度が1重量%未満の場合は生産性が悪くなり、50重量%を超えると、重合後の溶液粘度が高すぎて、その後の水素添加反応が困難となる場合がある。
重合反応は、重合に用いる単量体とメタセシス重合触媒とを混合することにより開始される。これらを混合する方法としては、単量体溶液にメタセシス重合触媒溶液を加えてもよいし、その逆でもよい。用いるメタセシス重合触媒が、主触媒である遷移金属化合物と第二成分である有機金属化合物とからなる混合触媒である場合には、単量体溶液に混合触媒の反応液を加えてもよいし、その逆でもよい。また、単量体と有機金属化合物との混合溶液に遷移金属化合物溶液を加えてもよいし、その逆でもよい。さらに、単量体と遷移金属化合物の混合溶液に有機金属化合物を加えてもよいし、その逆でもよい。
重合温度は特に制限はないが、通常、−30℃〜200℃、好ましくは0℃〜180℃である。重合時間は、特に制限はないが、通常、1分間〜100時間である。
得られる脂環式オレフィン重合体の分子量を調整する方法としては、ビニル化合物又はジエン化合物を適当量添加する方法を挙げることができる。分子量調整に用いるビニル化合物は、ビニル基を有する有機化合物であれば特に限定されないが、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどのα−オレフィン類;スチレン、ビニルトルエンなどのスチレン類;エチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、アリルグリシジルエーテルなどのエーテル類;アリルクロライドなどのハロゲン含有ビニル化合物;酢酸アリル、アリルアルコール、グリシジルメタクリレートなど酸素含有ビニル化合物、アクリルアミドなどの窒素含有ビニル化合物などを挙げることができる。分子量調整に用いるジエン化合物としては、1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、2−メチル−1,4−ペンタジエン、2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエンなどの非共役ジエン、又は、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなどの共役ジエンを挙げることができる。ビニル化合物又はジエン化合物の添加量は、目的とする分子量に応じて、重合に用いる単量体100モル部に対して、0.1〜10モル部の間で任意に選択することができる。
本発明で用いる脂環式オレフィン重合体を、付加重合法により得る場合の重合触媒としては、たとえば、チタン、ジルコニウム又はバナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなる触媒が好適に用いられる。これらの重合触媒は、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。重合触媒の量は、重合触媒中の金属化合物:重合に用いる単量体のモル比で、通常、1:100〜1:2,000,000の範囲である。
本発明で用いる脂環式オレフィン重合体として、開環重合体の水素添加物を用いる場合の、開環重合体に対する水素添加は、通常、水素添加触媒を用いて行われる。水素添加触媒は特に限定されず、オレフィン化合物の水素添加に際して一般的に使用されているものを適宜採用すればよい。水素添加触媒の具体例としては、たとえば、酢酸コバルトとトリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナートとトリイソブチルアルミニウム、チタノセンジクロリドとn−ブチルリチウム、ジルコノセンジクロリドとsec−ブチルリチウム、テトラブトキシチタネートとジメチルマグネシウムのような遷移金属化合物とアルカリ金属化合物との組み合わせからなるチーグラー系触媒;ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム、特開平7−2929号公報、特開平7−149823号公報、特開平11−209460号公報、特開平11−158256号公報、特開平11−193323号公報、特開平11−209460号公報などに記載されている、たとえば、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリジンルテニウム(IV)ジクロリドなどのルテニウム化合物からなる貴金属錯体触媒;などの均一系触媒が挙げられる。また、ニッケル、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウムなどの金属を、カーボン、シリカ、ケイソウ土、アルミナ、酸化チタンなどの担体に担持させた不均一触媒、たとえば、ニッケル/シリカ、ニッケル/ケイソウ土、ニッケル/アルミナ、パラジウム/カーボン、パラジウム/シリカ、パラジウム/ケイソウ土、パラジウム/アルミナなどを用いることもできる。また、上述したメタセシス重合触媒をそのまま、水素添加触媒として用いることも可能である。
水素添加反応は、通常、有機溶媒中で行う。有機溶媒は生成する水素添加物の溶解性により適宜選択することができ、上述した重合反応に用いる有機溶媒と同様の有機溶媒を使用することができる。したがって、重合反応後、有機溶媒を入れ替えることなく、そのまま水素添加触媒を添加して反応させることもできる。さらに、上述した重合反応に用いる有機溶媒の中でも、水素添加反応に際して反応しないという観点から、芳香族炭化水素系溶媒や脂肪族炭化水素系溶媒、脂環族炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、芳香族エーテル系溶媒が好ましく、芳香族エーテル系溶媒がより好ましい。
水素添加反応条件は、使用する水素添加触媒の種類に応じて適宜選択すればよい。反応温度は、通常、−20〜250℃、好ましくは−10〜220℃、より好ましくは0〜200℃である。−20℃未満では反応速度が遅くなり、逆に250℃を超えると副反応が起こりやすくなる。水素の圧力は、通常、0.01〜10.0MPa、好ましくは0.05〜8.0MPaである。水素圧力が0.01MPa未満では水素添加速度が遅くなり、10.0MPaを超えると高耐圧反応装置が必要となり、生産効率が劣る傾向がある。
水素添加反応の時間は、水素添加率を制御するために適宜選択される。反応時間は、通常、0.1〜50時間の範囲であり、重合体中の主鎖の炭素−炭素二重結合100モル%のうち、通常50モル%以上、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上を水素添加することができる。
水素添加反応を行った後、水素添加反応に用いた触媒を除去する処理を行ってもよい。触媒の除去方法は特に制限されず、遠心分離、濾過などの方法が挙げられる。さらに、水やアルコールなどの触媒不活性化剤を添加したり、また活性白土、アルミナ、珪素土などの吸着剤を添加したりして、触媒の除去を促進させることができる。
本発明で用いられる脂環式オレフィン重合体は、重合や水素添加反応後の重合体溶液として使用しても、溶媒を除去した後に使用してもどちらでもよいが、熱硬化性樹脂組成物を調製する際に添加剤の溶解や分散が良好になるとともに、工程が簡素化できるため、重合体溶液として使用するのが好ましい。
本発明で用いる熱硬化性樹脂組成物中における、脂環式オレフィン重合体の配合量は、熱硬化性樹脂組成物層(A)とした際における、脂環式オレフィン重合体の含有比率が、好ましくは30〜90重量%、より好ましくは40〜80重量%、さらに好ましくは50〜70重量%となるような範囲とすることが好ましい。熱硬化性樹脂組成物層(A)中における脂環式オレフィン重合体の含有比率を上記範囲とすることにより、得られる硬化物の表面を、無電解めっきの前処理として粗化処理した際に表面粗度を小さく保つことができ、しかも当該表面に導体層を形成すると高いピール強度が得られ、好適である。
(硬化剤)
本発明で用いられる硬化剤は、特に限定されず、一般の電気絶縁膜形成用の樹脂組成物に配合される硬化剤を用いることができる。本発明の好適態様においては、硬化剤として、脂環式オレフィン重合体の有する反応性基と反応して結合を形成することができる官能基を2個以上有する化合物を用いることが好ましい。
たとえば、脂環式オレフィン重合体として、極性基、特に、カルボキシル基やカルボン酸無水物基、フェノール性水酸基を有する脂環式オレフィン重合体を用いる場合に好適に用いられる硬化剤としては、多価エポキシ化合物、多価イソシアナート化合物、多価アミン化合物、多価ヒドラジド化合物、アジリジン化合物、塩基性金属酸化物、有機金属ハロゲン化物などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。これらのなかでも、脂環式オレフィン重合体の反応性基との反応性が緩やかであり、熱硬化性樹脂組成物の扱いが容易となる観点から、多価エポキシ化合物が好ましい。なお、本明細書において「多価」と「多官能」とは同義である。
多価エポキシ化合物としては、たとえば、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、クレゾール型エポキシ化合物などのポリフェノール型エポキシ化合物、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、水素添加ビスフェノールA型エポキシ化合物などのビスフェノールグリシジルエーテル型エポキシ化合物;脂環式オレフィン構造を有するエポキシ化合物などの脂環式エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、グリシジルアミン型エポキシ化合物、フルオレン構造を有するエポキシ化合物、イソシアヌレート型エポキシ化合物、リン含有エポキシ化合物などの多価エポキシ化合物;などの分子内に2以上のエポキシ基を有する化合物が挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。これらのなかでも、本発明の絶縁性接着フィルム、ならびに、これを用いて得られる、積層体、硬化物及び複合体の機械物性を良好なものとすることができるという点より、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ポリフェノール型エポキシ化合物及び脂環式オレフィン構造又はフルオレン構造を有するエポキシ化合物が好ましい。さらに、加熱時の熱硬化性樹脂組成物の樹脂流動性を良好なものにするという観点から、脂環式オレフィン構造を有するエポキシ化合物が特に好ましい。なお、これらは1種を単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
ビスフェノールA型エポキシ化合物としては、たとえば、商品名「jER827、jER828、jER828EL、jER828XA、jER834」(以上、三菱化学社製)、商品名「エピクロン840、エピクロン840−S、エピクロン850、エピクロン850−S、エピクロン850−LC」(以上、DIC社製、「エピクロン」は登録商標)などが挙げられる。ポリフェノール型エポキシ化合物としては、たとえば、商品名「1032H60、XY−4000」(以上、三菱化学社製)などが挙げられる。脂環式オレフィン構造又はフルオレン構造を有するエポキシ化合物としては、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂〔たとえば、商品名「エピクロンHP7200L、エピクロンHP7200、エピクロンHP7200H、エピクロンHP7200HH、エピクロンHP7200HHH」(以上、DIC社製);商品名「Tactix558」(ハンツマン・アドバンスト・マテリアル社製);商品名「XD−1000−1L、XD−1000−2L」(以上、日本化薬社製)〕や、フルオレン骨格を有するエポキシ樹脂〔たとえば、商品名「オンコートEX−1010、オンコートEX−1011、オンコートEX−1012、オンコートEX−1020、オンコートEX−1030、オンコートEX−1040、オンコートEX−1050、オンコートEX−1051」(以上、長瀬産業社製、「オンコート」は登録商標);商品名「オグソールPG−100、オグソールEG−200、オグソールEG−250)」(以上、大阪ガスケミカル社製、「オグソール」は登録商標)〕などが挙げられる。
多価イソシアナート化合物としては、炭素数6〜24の、ジイソシアナート類及びトリイソシアナート類が好ましい。ジイソシアナート類の例としては、2,4−トリレンジイソシアナート、2,6−トリレンジイソシアナート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、p−フェニレンジイソシアナートなどが挙げられる。トリイソシアナート類の例としては、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアナート、1,6,11−ウンデカントリイソシアナート、ビシクロヘプタントリイソシアナートなどが挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
多価アミン化合物としては、2個以上のアミノ基を有する炭素数4〜30の脂肪族多価アミン化合物、芳香族多価アミン化合物などが挙げられ、グアニジン化合物のように非共役の窒素−炭素二重結合を有するものは含まれない。脂肪族多価アミン化合物としては、ヘキサメチレンジアミン、N,N’−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサンジアミンなどが挙げられる。芳香族多価アミン化合物としては、4,4’−メチレンジアニリン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3,5−ベンゼントリアミンなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
多価ヒドラジド化合物の例としては、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド、トリメリット酸ジヒドラジド、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸ジヒドラジド、ピロメリット酸ジヒドラジドなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
アジリジン化合物としては、トリス−2,4,6−(1−アジリジニル)−1,3,5−トリアジン、トリス[1−(2−メチル)アジリジニル]ホスフィノキシド、ヘキサ[1−(2−メチル)アジリジニル]トリホスファトリアジンなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
上述した硬化剤の中でも、脂環式オレフィン重合体の反応性基との反応性が緩やかであり、熱硬化性樹脂組成物の扱いが容易となる観点から、多価エポキシ化合物が好ましく、グリシジルエーテル型エポキシ化合物や脂環式の多価エポキシ化合物が特に好ましく用いられる。
本発明で用いる熱硬化性樹脂組成物中における、硬化剤の配合量は、熱硬化性樹脂組成物層(A)とした際における、硬化剤の含有比率が、好ましくは5〜50重量%、より好ましくは10〜40重量%、さらに好ましくは15〜30重量%となるような範囲とすることが好ましい。熱硬化性樹脂組成物層(A)中における硬化剤の含有比率を上記範囲とすることにより、得られる硬化物の機械的強度及び電気特性を良好なものとすることができるため、好ましい。
熱硬化性樹脂組成物には、熱硬化性樹脂(好ましくは、脂環式オレフィン重合体)及び硬化剤のほかに、硬化促進剤、硬化助剤等を配合してもよい。硬化促進剤としては、絶縁層形成に用いられる公知の硬化促進剤を用いることができる。硬化剤として多価エポキシ化合物を用いる場合には、第3級アミン系化合物(4−位に3級アミンを有する2,2,6,6−テトラメチルピペリジル基を有する化合物を除く)や三弗化ホウ素錯化合物等が硬化促進剤として好適に用いられる。
硬化促進剤は、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。硬化促進剤の配合量は、使用目的に応じて適宜選択すればよいが、たとえば、極性基を有する脂環式オレフィン重合体100重量部に対して、通常、0.001〜30重量部、好ましくは0.01〜10重量部、より好ましくは0.03〜5重量部である。
硬化助剤としては、絶縁層形成に用いられる公知の硬化助剤を用いることができる。硬化助剤としては、キノンジオキシム、ベンゾキノンジオキシム、p−ニトロソフェノール等のオキシム・ニトロソ系硬化助剤;N,N−m−フェニレンビスマレイミド等のマレイミド系硬化助剤;ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等のアリル系硬化助剤;エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等のメタクリレート系硬化助剤;ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ジビニルベンゼン等のビニル系硬化助剤;等が挙げられる。これらの硬化助剤は、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
硬化助剤の配合量は、硬化剤100重量部に対して、通常、1〜100重量部、好ましくは10〜50重量部の範囲である。
熱硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、ゴム質重合体や任意の熱可塑性樹脂を配合することができる。熱硬化性樹脂組成物に、それらを配合することにより、得られる硬化物の柔軟性が向上するので好適である。
ゴム質重合体は、常温(25℃)以下のガラス転移温度を持つ重合体であり、一般的なゴム状重合体及び熱可塑性エラストマーが含まれる。
ゴム質重合体や熱可塑性樹脂は、それぞれ1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの配合量は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択されるが、例えば、脂環式オレフィン重合体100重量部に対して、30重量部以下とすることが好ましい。
熱硬化性樹脂組成物には、ヒンダードフェノール化合物や、ヒンダードアミン化合物を配合することができる。これらを配合することにより、得られる硬化物の機械的強度が向上するので好適である。
ヒンダードフェノール化合物の配合量は、特に限定されないが、例えば、脂環式オレフィン重合体100重量部に対して、通常、0.04〜20重量部、好ましくは0.4〜10重量部、より好ましくは0.5〜5重量部の範囲である。
ヒンダードアミン化合物の配合量は、特に限定されないが、例えば、脂環式オレフィン重合体100重量部に対して、通常、0.002〜30重量部、好ましくは0.02〜10重量部、より好ましくは0.025〜5重量部の範囲である。
また、ヒンダードフェノール化合物とヒンダードアミン化合物は、組み合わせて用いることが好ましい。これらを併用することで、例えば、得られる硬化物に対し無電解めっきを行う場合、当該硬化物の表面に酸化剤水溶液を接触させて粗化処理した際に表面粗度が小さい状態を効率よく保つことができ、好適である。
かかる効果が得られやすいことから、ヒンダードフェノール化合物と、ヒンダードアミン化合物との配合割合は、「ヒンダードフェノール化合物/ヒンダードアミン化合物」の重量比で、好ましくは、1/0.05〜1/25であり、より好ましくは、1/0.1〜1/10、さらに好ましくは、1/0.25〜1/5である。
熱硬化性樹脂組成物には、難燃剤を配合することができる。難燃剤を配合することで、得られる硬化物の難燃性が向上する。
難燃剤としては、ハロゲン系難燃剤やリン酸エステル系難燃剤等が挙げられる。難燃剤の配合量は、例えば、脂環式オレフィン重合体100重量部に対して、好ましくは100重量部以下であり、より好ましくは60重量部以下である
熱硬化性樹脂組成物には、酸化剤水溶液に可溶な重合体や無機充填剤を配合することができる。かかる重合体や無機充填剤を配合することで、例えば、得られる硬化物に対し無電解めっきを行う場合、当該硬化物の表面に酸化剤水溶液を接触させて粗化処理した際に、前記重合体や無機充填剤が選択的に溶解や脱落するため、当該表面の表面粗さを制御することができる。
酸化剤水溶液に可溶な重合体としては、液状エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ビスマレイミド−トリアジン樹脂、シリコーン樹脂、ポリメチルメタクリル樹脂、天然ゴム、スチレン系ゴム、イソプレン系ゴム、ブタジエン系ゴム、ニトリル系ゴム、エチレン−プロピレン系ゴム、ウレタンゴム、ブチルゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ノルボルネンゴム、エーテル系ゴム等が挙げられる。
これらの重合体の配合量は、例えば、脂環式オレフィン重合体100重量部に対して、通常、1〜60重量部、好ましくは3〜50重量部、より好ましくは4〜40重量部である。
無機充填剤としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、水和アルミナ、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、シリカ、タルク、クレー等が挙げられる。これらの中でも、微細な粒子が得やすく、かつ、酸化剤水溶液での脱落を制御しやすいため、炭酸カルシウム及びシリカが好ましく、特にシリカが好ましい。これらの無機充填剤は、シランカップリング剤処理やステアリン酸等の有機酸処理をしたものであってもよい。
無機充填剤は、得られる硬化物の誘電特性を低下させない非導電性のものが好ましい。また、無機充填剤の形状は、特に限定されず、球状、繊維状、板状等であってもよいが、微細な粗面形状を得るために、微細な球状であることが好ましい。無機充填剤の平均粒径は、通常、0.008μm以上2μm未満、好ましくは0.01μm以上1.5μm未満、特に好ましくは0.02μm以上1μm未満である。無機充填剤の配合量は、必要とされる密着性の程度に応じて適宜選択されるが、熱硬化性樹脂組成物層(A)中、好ましくは1〜40重量%、より好ましくは2〜30重量%、さらに好ましくは3〜25重量%となるような範囲とすることが好ましい。
また、熱硬化性樹脂組成物には、さらに必要に応じて、耐熱安定剤、耐候安定剤、老化防止剤、紫外線吸収剤(レーザー加工性向上剤)、レベリング剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、天然油、合成油、ワックス、乳剤、磁性体、誘電特性調整剤、靭性剤等の任意成分を配合してもよい。これらの任意成分の配合割合は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択すればよい。
(光硬化性樹脂組成物)
本発明で用いる光硬化性樹脂組成物としては、光の照射により硬化反応を示すものであれば制限されないが、通常、光硬化性化合物と光重合開始剤とを含有してなる。
(光硬化性化合物)
光硬化性化合物としては、光カチオン硬化型化合物、光ラジカル硬化型化合物、又はこれらの併用型化合物を用いることができる。これらの中でも、酸素による硬化阻害を受けないことから、光カチオン硬化型化合物が好ましい。
光カチオン硬化型化合物としては、エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、オキセタン化合物、カーボネート化合物、ジチオカーボネート化合物等が挙げられる。光カチオン硬化性を示す官能基は、多く知られているが、特に実用性の高い物として、エポキシ基、ビニルエーテル基、オキセタニル基等が広く用いられている。
エポキシ化合物としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する多価エポキシ化合物が好ましく、例えば、脂肪族多価エポキシ化合物、芳香族多価エポキシ化合物、脂環式多価エポキシ化合物が挙げられる。
脂肪族多価エポキシ化合物とは、芳香環および/または脂環式エポキシ構造を含有しない多価エポキシ化合物であり、具体的には、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ソルビトールヘプタグリシジルエーテル、ソルビトールヘキサグリシジルエーテル等を挙げることができる。
芳香族多価エポキシ化合物とは、脂環式エポキシ構造を含有せず芳香環を含有する多価エポキシ化合物であり、具体的には、ビフェニル型エポキシ化合物、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールAD型エポキシ化合物、スチルベン型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、トリフェノールメタン型エポキシ化合物、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ化合物、フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ化合物、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ化合物、ナフタレン骨格グリシジルエーテル型エポキシ化合物、フェニレン骨格を有するナフトールアラルキル型エポキシ化合物、ビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ化合物、アントラセンまたはその水添化物の骨格を有するエポキシ化合物、ハイドロキノン型エポキシ化合物、フェノール性水酸基含有芳香族類とアルデヒド類とアルコキシ基もしくはチオアルキル基を含有する芳香族類とを共縮合して得られたフェノール樹脂類をエピクロルヒドリンでグリシジルエーテル化したエポキシ化合物などが挙げられる。
脂環式エポキシ化合物とは、脂環式化合物の脂肪族環を形成する環状に結合した炭素原子のうちの2個の炭素原子(通常は互いに隣接する炭素原子)に酸素原子1個が結合した状態のエポキシ環構造を含有する化合物であり、具体的には、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(例えば、セロキサイド(登録商標)2021P:ダイセル化学工業社製)、エポキシ化3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ビス3−シクロヘキセニルメチルエステルのε−カプロラクトン付加物(例えば、エポリード(登録商標)GT301、ダイセル化学工業社製)、エポキシ化ブタンテトラカルボン酸テトラキス−3−シクロヘキセニルメチルエステルのε−カプロラクトン付加物(例えば、エポリードGT401:ダイセル化学工業社製)、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキセン付加物(例えば、EHPE3150:ダイセル化学工業社製)等の多官能脂環式エポキシ化合物、4−ビニルエポキシシクロヘキサン(例えば、セロキサイド2000:ダイセル化学工業社製)等の単官能脂環式エポキシ化合物、などが挙げられる。
また、エポキシ基と(メタ)アクリル基を有するハイブリッド化合物を使用することができる。例えば、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、グリシジルメタクリレート、ビニルグリシジルエーテル等が挙げられる。これらは、単独でも2種以上混合しても使用することができる。
ビニルエーテル化合物としては、ビニルエーテル構造を有する化合物であれば特に限定されない。市販品としては、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、2−ヒドロキシブチルビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル等が挙げられる。また、エポキシ基及び/又はオキセタン基等の環状エーテル基を含むビニルエーテル化合物を使用することができる。例えば、オキシノルボルネンジビニルエーテル、3、3−ジメタノールオキセタンジビニルエーテルが挙げられる。これらは、単独でも2種以上混合しても使用することができる。
オキセタン化合物としては、オキセタニル基を有する化合物であれば特に限定されない。市販品としては、ジ[1−エチル(3−オキセタニル)] メチルエーテル等の多官能オキセタン化合物、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−{[3−(トリエトキシシリル)プロポキシ]メチル}オキセタン、オキセタニルシルセスキオキサン、フェノールノボラックオキセタン等の単官能オキセタン化合物が挙げられる。また、オキセタニル基と(メタ)アクリル基を有するハイブリッド化合物(1−エチル−3−オキセタニルメチル(メタ)アクリレート)を使用することができる。これらは、単独でも2種以上混合しても使用することができる。
カーボネート化合物及びジチオカーボネート化合物としてはそれぞれ、分子内にカーボネート基、又はジチオカーボネート基を有する化合物であれば特に限定されない。
なお、本発明における光硬化性樹脂組成物は、光カチオン硬化型化合物として硬化膨張性化合物を一成分とする事により、硬化収縮を制御でき、例えば、優れたパターン形状を作製する事が可能となる。前記硬化膨張性化合物としては、例えば、エポキシ化合物及びカーボネート化合物等が挙げられる。
光カチオン硬化型化合物としては、中でも光による反応性に優れ、硬化後の変形が小さいことから、多価エポキシ化合物又は多価オキセタン化合物が好ましく、脂環式多価エポキシ化合物がより好ましい。 なお、光カチオン硬化型化合物はそれぞれ、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明に用いる光硬化性樹脂組成物における、光硬化性化合物の配合量は、光硬化性樹脂組成物層(B)中、通常10〜90重量%、好ましくは20〜80重量%、より好ましくは30〜70重量%となるような範囲である。光硬化性化合物の配合量が少なすぎると、硬化が不十分となり、得られる硬化物の機械的強度が悪化するおそれがある。一方、光硬化性化合物の配合量が多すぎると、脆くなるおそれがある。
(光重合開始剤)
本発明で用いる光硬化性樹脂組成物に使用される光重合開始剤としては、光に感応してブレンステッド酸又はルイス酸を発生する光酸発生剤や、光に感応してラジカルを発生する、ベンゾイン・ベンゾインアルキルエーテル類、アセトフェノン類、アントラキノン類、チオキサントン類、ケタール類、ベンゾフェノン類などの光ラジカル発生剤などが挙げられるが、光酸発生剤が好ましい。
本発明で用いられる光酸発生剤としては、例えば、オニウム塩、ハロゲン化有機化合物、α,α−ビス(スルホニル)ジアゾメタン化合物、α−カルボニル−α−スルホニル−ジアゾメタン化合物、スルホン化合物、有機酸エステル化合物、有機酸アミド化合物、有機酸イミド化合物などの中から選ばれる。
オニウム塩の具体例としては、スルホニウム塩、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ヨードニウム塩、ホスホニウム塩、アルソニウム塩、オキソニウム塩等でアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基、ヘテロ環状基を有するものが挙げられ、特にスルホニウム塩が好ましい。これらオニウム塩の対アニオンは、特に限定されず、例えば、アンチモン酸、硼素酸、砒素酸、燐酸、スルホン酸、カルボン酸、あるいはこれらのハロゲン化物が挙げられ、特にアンチモン酸が好ましい。具体例としては、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート等が挙げられる。
本発明で用いられる光酸発生剤としては、アリールスルホニウム塩誘導体〔例えば、ダウ・ケミカル社製のサイラキュアUVI−6990、サイラキュアUVI−6992、サイラキュアUVI−6974(「サイラキュア」は登録商標);ADEKA社製のアデカオプトマーSP−150、アデカオプトマーSP−152、アデカオプトマーSP−170、アデカオプトマーSP−172(「アデカオプトマー」は登録商標);サンアプロ社製のCPI−100P、CPI−101A、CPI−200K、CPI−210S〕、アリルヨードニウム塩誘導体(例えば、ローディア社製のPI−2074)、アレン−イオン錯体誘導体(例えば、BASF社製のイルガキュア(登録商標)261)、ジアゾニウム塩誘導体、トリアジン系開始剤、及びその他のハロゲン化物等の酸発生剤が挙げられる。
本発明に用いる光硬化性樹脂組成物における、光酸発生剤の配合量は、光硬化性化合物100重量部に対して、通常0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部、より好ましくは1〜4重量部である。光酸発生剤の配合量が少なすぎると、硬化が不十分になるおそれがあり、一方、多すぎると、得られる複合体等の信頼性が低下するおそれがある。
また、本発明に用いる光硬化性樹脂組成物には、上述した光硬化性化合物及び光酸発生剤に加えて、無機充填剤を配合することが好ましい。無機充填剤としては、工業的に一般に使用されるものであれば特に限定されず、たとえば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、水和アルミナ、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、シリカ、タルク、クレーなどを挙げることができる。無機充填剤を配合することで、得られる硬化物の線膨張を低くすることができる。
上述した無機充填剤の中でも、耐熱性、低吸水率、誘電特性、低不純物性、放熱性等に優れるという点より、シリカが好ましく、特に、その表面をシランカップリング剤で処理してなるシリカがより好ましい。なお、シランカップリング剤としては、特に限定されず、公知のものを使用することができる。
光硬化性樹脂組成物に用いられる無機充填剤は、平均粒径が、好ましくは0.05〜1.5μmであり、より好ましくは0.1〜1μmである。無機充填剤の平均粒径が小さすぎると、本発明の絶縁性接着フィルムを基材に積層する際、溶融粘度が高く埋め込み平坦性が確保できなくなる場合があり、一方、大きすぎると、微細な配線パターンを埋め込んだときに配線間のショートを引き起こす場合がある。なお、本明細書において平均粒径は、粒度分布測定装置により測定することができる。
本発明の光硬化性樹脂組成物における、無機充填剤の配合量は、光硬化性樹脂組成物層(B)中、通常30〜90重量%であり、好ましくは40〜80重量%、より好ましくは50〜70重量%となるような範囲である。無機充填剤の配合量が少なすぎると、無機充填剤を配合した効果が得難くなり、一方、配合量が多すぎると、絶縁性接着フィルムや硬化物が脆くなるおそれがある。
また、本発明に用いる光硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、光増感剤を配合してもよい。光増感剤としては、チオキサントン、チオキサントンの誘導体、アントラキノン、アントラキノンの誘導体、アントラセン、アントラセンの誘導体、ペリレン、ペリレンの誘導体、ベンゾフェノン、及びベンゾインイソプロピルエーテルなどの光増感剤などを挙げることができる。光増感剤は光硬化性化合物を100重量部とした場合に0. 1〜20重量部含有することで効果が増し、有効である。光増感剤を使用することで、光硬化性、光反応性が向上し、接着強度を向上させることができる。
また、本発明に用いる光硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、溶剤を配合してもよい。溶剤を配合することにより、フィルム状に成形する際における、成形性を向上させることができる。なお、溶剤は、光硬化性樹脂組成物をフィルム状に成形し、絶縁性接着フィルム化する際に、加熱等により揮発除去されることとなる。
溶剤としては、フィルム状に成形する際に、加熱等により揮発除去させるという観点から、その沸点が30〜250℃のものが好ましく、50〜200℃のものがより好ましい。このような溶剤の具体例としては、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、及びアニソールなどの芳香族炭化水素;n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、メチルエチルケトン、及びメチルイソブチルケトンなどの脂肪族炭化水素;シクロペンタンやシクロヘキサン、シクロペンタノン、及びシクロヘキサノンなどの脂環式炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、及びトリクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素;などが挙げられる。
本発明に用いる光硬化性樹脂組成物における、溶剤の配合割合は、好ましくは90重量%以下、より好ましくは70重量%以下、さらに好ましくは50重量%以下である。
さらに、本発明に用いる光硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、ゴム質重合体や任意の熱可塑性樹脂を配合することができる。ゴム質重合体としては、常温(25℃)以下のガラス転移温度を持つ重合体であり、一般的なゴム状重合体及び熱可塑性エラストマーが含まれる。ゴム質重合体や熱可塑性樹脂は、本発明の効果の発現を阻害しない範囲で配合することができる。
本発明に用いる光硬化性樹脂組成物には、硬化物とした際における難燃性を向上させる目的で、例えば、ハロゲン系難燃剤やリン酸エステル系難燃剤などの一般の電気絶縁膜形成用の硬化性樹脂組成物に配合される難燃剤を配合してもよい。光硬化性樹脂組成物に難燃剤を配合する場合の配合量は、光硬化性化合物100重量部に対して、好ましくは100重量部以下であり、より好ましくは60重量部以下である。
また、本発明に用いる光硬化性樹脂組成物には、さらに必要に応じて、難燃助剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、老化防止剤、レベリング剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、天然油、合成油、ワックス、乳剤、磁性体、誘電特性調整剤、靭性剤などの任意成分を配合してもよい。これらの任意成分の配合割合は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択すればよい。
(絶縁性接着フィルム)
本発明の絶縁性接着フィルムは、上述した支持体上に、上述した熱硬化性樹脂組成物からなる層(A)と、上述した光硬化性樹脂組成物からなる層(B)とをこの順で積層し、シート状又はフィルム状に成形してなるものである。
本発明に用いる熱硬化性樹脂組成物及び光硬化性樹脂組成物は、上記各成分を公知の方法により適宜混合することで製造することができる。溶剤を用いる場合には、たとえば、上記各成分の一部を溶剤に溶解もしくは分散させた状態の組成物を調製し、当該組成物に残りの成分を混合して製造することができる。
本発明の絶縁性接着フィルムは、たとえば、以下の2つの方法:(1)上述した熱硬化性樹脂組成物を支持体上に塗布、散布又は流延し、必要に応じて乾燥させ、次いで、その上に、上述した光硬化性樹脂組成物をさらに塗布、散布又は流延し、必要に応じて乾燥させることにより製造する方法;(2)上述した熱硬化性樹脂組成物を支持体上に塗布、散布又は流延し、必要に応じて乾燥させて得られたシート状又はフィルム状に成形してなる成形体と、上述した光硬化性樹脂組成物を支持体上に塗布、散布又は流延し、必要に応じて乾燥させて、シート状又はフィルム状に成形してなる成形体とを積層し、これらの成形体を一体化させることにより製造する方法、により製造することができる。これらの製造方法の内、より容易なプロセスであり生産性に優れることから、上記(1)の製造方法が好ましい。
上述の(1)の製造方法において、熱硬化性樹脂組成物を支持体に塗布、散布又は流延する際、及び塗布、散布又は流延された熱硬化性樹脂組成物に光硬化性樹脂組成物を塗布、散布又は流延する際、あるいは上述の(2)の製造方法において、熱硬化性樹脂組成物及び光硬化性樹脂組成物をシート状又はフィルム状に成形して熱硬化性樹脂層用成形体及び光硬化性樹脂層用成形体とする際には、熱硬化性樹脂組成物又は光硬化性樹脂組成物に、必要に応じて有機溶剤を添加して、支持体に塗布、散布又は流延することが好ましい。
上述の(1)の製造方法における、熱硬化性樹脂組成物及び光硬化性樹脂組成物の厚み、あるいは上述の(2)の製造方法における熱硬化性樹脂層用成形体及び光硬化性樹脂用成形体の厚みは、特に限定されないが、絶縁性接着フィルムとした際における、熱硬化性樹脂組成物層(A)の厚みが、好ましくは1〜10μm、より好ましくは1〜8μm、さらに好ましくは2〜5μm、また、光硬化性樹脂組成物層(B)の厚みが、好ましくは3〜45μm、より好ましくは5〜35μm、さらに好ましくは10〜25μmとなるような厚みとすることが好ましい。熱硬化性樹脂組成物層(A)の厚みが薄すぎると、絶縁性接着フィルムを硬化して得られる硬化物上に、無電解めっきにより導体層を形成する際、導体層の形成性が低下するおそれがあり、一方、熱硬化性樹脂組成物層(A)の厚みが厚すぎると、絶縁性接着フィルムを硬化して得られる硬化物の線膨張が大きくなるおそれがある。また、光硬化性樹脂組成物層(B)の厚みが薄すぎると、絶縁性接着フィルムの配線埋め込み性が低下してしまうおそれがあり、一方、光硬化性樹脂組成物層(B)の厚みが厚すぎると、得られる硬化物の変形が大きくなるおそれがある。
なお、基材上に積層した絶縁性接着フィルムに対して、活性放射線により光硬化性樹脂組成物層(B)全体を均一に硬化させる観点から、熱硬化性樹脂組成物層(A)と光硬化性樹脂組成物層(B)の2層の合計厚さは50μm以下であるのが好ましい。
熱硬化性樹脂組成物及び光硬化性樹脂組成物を塗布する方法としては、ディップコート、ロールコート、カーテンコート、ダイコート、スリットコート、グラビアコートなどが挙げられる。
また、上述の(1)の製造方法における、熱硬化性樹脂組成物を支持体上に塗布、散布又は流延した後、あるいは光硬化性樹脂組成物を熱硬化性樹脂組成物上に塗布、散布又は流延した後、あるいは上述の(2)の製造方法における、熱硬化性樹脂組成物及び光硬化性樹脂組成物を支持体上に塗布した後、必要に応じて、乾燥を行ってもよい。乾燥温度は、熱硬化性樹脂組成物及び光硬化性樹脂組成物が硬化しない程度の温度とすることが好ましく、通常、20〜300℃、好ましくは30〜200℃である。また、乾燥時間は、通常、30秒間〜1時間、好ましくは1分間〜30分間である。
なお、本発明の絶縁性接着フィルムにおいては、絶縁性接着フィルムを構成する光硬化性樹脂組成物層(B)が未硬化又は半硬化の状態であることが好ましい。該層を未硬化又は半硬化の状態とすることにより、本発明の絶縁性接着フィルムを構成する光硬化性樹脂組成物層(B)を接着性の高いものとすることできる。
そして、このようにして得られる本発明の絶縁性接着フィルムは、支持体上に付着させた状態で、又は支持体からはがして、使用される。
(積層体)
本発明の積層体は、上述した本発明の絶縁性接着フィルムの光硬化性樹脂組成物層(B)の表面を基材に合わせるようにして積層してなるものである。本発明の積層体としては、少なくとも、上述した本発明の絶縁性接着フィルムを積層してなるものであればよいが、表面に導体層を有する基板を基材として、上述した本発明の絶縁性接着フィルムを積層してなるものが好ましい。なお、この際においては、本発明の絶縁性接着フィルムが、光硬化性樹脂組成物層(B)を介して基板と積層されるような構成とする。すなわち、本発明の積層体においては、その表面は、本発明の絶縁性接着フィルムの熱硬化性樹脂組成物層(A)及び光硬化性樹脂組成物層(B)のうち、熱硬化性樹脂組成物層(A)により形成されることとなる。
表面に導体層を有する基板は、電気絶縁性基板の表面に導体層を有するものである。電気絶縁性基板は、公知の電気絶縁材料(たとえば、脂環式オレフィン重合体、エポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリフェニレンエーテル、ガラス等)を含有する樹脂組成物を硬化して形成されたものである。導体層は、特に限定されないが、通常、導電性金属等の導電体により形成された配線を含む層であって、更に各種の回路を含んでいてもよい。配線や回路の構成、厚み等は、特に限定されない。表面に導体層を有する基板の具体例としては、プリント配線基板、シリコンウェーハ基板等を挙げることができる。表面に導体層を有する基板の厚みは、通常、10μm〜10mm、好ましくは20μm〜5mm、より好ましくは30μm〜2mmである。
本発明で用いる表面に導体層を有する基板は、本発明の絶縁性接着フィルムにより形成される電気絶縁層との密着性を向上させるために、導体層表面に前処理が施されていることが好ましい。前処理の方法としては、公知の技術を、特に限定されず使用することができる。例えば、導体層が銅からなるものであれば、強アルカリ酸化性溶液を導体層表面に接触させて、導体表面に酸化銅の層を形成して粗化する酸化処理方法、導体層表面を先の方法で酸化した後に水素化ホウ素ナトリウムやホルマリンなどで還元する方法、導体層にめっきを析出させて粗化する方法、導体層に有機酸を接触させて銅の粒界を溶出して粗化する方法、及び導体層にチオール化合物やシラン化合物などによりプライマー層を形成する方法等が挙げられる。これらの内、微細な配線パターンの形状維持の容易性の観点から、導体層に有機酸を接触させて銅の粒界を溶出して粗化する方法、及び、チオール化合物やシラン化合物などによりプライマー層を形成する方法が好ましい。
本発明の積層体は、たとえば、表面に導体層を有する基板上に、上述した本発明の絶縁性接着フィルムを加熱圧着することにより、製造することができる。
加熱圧着の方法としては、支持体付きの絶縁性接着フィルムを、絶縁性接着フィルムを構成する光硬化性樹脂組成物層(B)が、上述した基板の導体層に接するように重ね合わせ、加圧ラミネータ、プレス、真空ラミネータ、真空プレス、ロールラミネータなどの加圧機を使用して加熱圧着(ラミネーション)する方法が挙げられる。加熱加圧することにより、基板表面の導体層と絶縁性接着フィルムとの界面に空隙が実質的に存在しないように結合させることができる。
加熱圧着操作の温度は、通常、30〜250℃、好ましくは70〜200℃であり、加える圧力は、通常、10kPa〜20MPa、好ましくは100kPa〜10MPaであり、時間は、通常、30秒〜5時間、好ましくは1分〜3時間である。また、加熱圧着は、配線パターンの埋め込み性を向上させ、気泡の発生を抑えるために減圧下で行うのが好ましい。加熱圧着を行う減圧下の圧力は、通常100kPa〜1Pa、好ましくは40kPa〜10Paである。以上の加熱圧着操作によれば、温度条件等を適宜調整することにより、本発明の絶縁性接着フィルムを未硬化状態、半硬化状態、又は硬化状態で基材上に積層することができる。なお、積層体は、支持体が樹脂フィルムのように光が透過する場合は、支持体を付着させた状態で、又は支持体からはがして、使用される。一方、支持体が金属箔のように光を透過しない場合は、支持体からはがして、使用される。
(硬化物)
本発明の硬化物は、本発明の積層体の熱硬化性樹脂組成物層(A)及び/又は光硬化性樹脂組成物層(B)を硬化してなるものである。
熱硬化性樹脂組成物層(A)の硬化は、たとえば、本発明の積層体の製造において挙げた前記加熱圧着操作の温度及び時間の範囲にて該層を適宜加熱することにより行うことができる。
一方、光硬化性樹脂組成物層(B)の硬化は、たとえば、該層に活性放射線を照射し、これにより、光酸発生剤を活性化させ、硬化反応を起こさせることにより行うことができる。
活性放射線としては、光酸発生剤を活性化させ、硬化反応を起こさせることができるものであれば特に限定されない。具体的には、紫外線、g線やi線等の単一波長の紫外線、KrFエキシマレーザー光、ArFエキシマレーザー光等の光線;電子線のような粒子線;等を用いることができる。活性放射線として光線を用いる場合は、単一波長光であっても、混合波長光であってもよい。
活性放射線の照射条件は、使用する活性放射線に応じて適宜選択されるが、例えば、波長200〜450nmの光線を使用する場合、照射量は、通常10〜10,000mJ/cm、好ましくは50〜5,000mJ/cmの範囲であり、照射時間と照度に応じて決まる。なお、得られた硬化物は、表面に支持体が付着している場合は、支持体をはがした状態で使用される。
活性放射線の照射後、所望により、得られた硬化物を更に加熱してもよい。加熱方法としては、例えば、得られた硬化物をホットプレートやオーブン内で加熱する方法が挙げられる。温度は、通常、100〜300℃、好ましくは120〜200℃の範囲である。
本発明の硬化物の製造は、熱履歴による硬化物の変形を抑える観点から、加熱圧着により絶縁性接着フィルムを基材に積層して積層体を製造する場合、その段階では熱硬化性樹脂組成物層(A)を半硬化の状態とし、次いで活性放射線を照射して光硬化性樹脂組成物層(B)の硬化を完了させた後、更に加熱して半硬化状態の熱硬化性樹脂組成物層(A)を硬化するのが好ましい。
(複合体)
本発明の複合体は、本発明の積層体又は硬化物において、レーザーにより基材と反対側の面から基材面までビアホールを形成した後、又は次いで更に、未硬化若しくは半硬化の、熱硬化性樹脂組成物層(A)及び/又は光硬化性樹脂組成物層(B)を硬化させた後、硬化した光硬化性樹脂組成物層(B)の表面及び/又はビアホールの表面に導体層を形成してなるものである。前記積層体や硬化物の製造に用いられる本発明の絶縁性接着フィルムは、繊維材料を含まない樹脂フィルムであるため、得られる複合体を薄膜化することができる。また、ビアホール形成性にも優れており、得られる複合体の電気特性(たとえば、絶縁層間の導体配線の絶縁性や、ビアホールとビアホールの間の絶縁性)が良好に維持される。
以下、本発明の複合体の製造方法を、本発明の複合体の一例としての多層回路基板を例示して、説明する。当該多層回路基板において、硬化した本発明の絶縁性接着フィルムは電気絶縁層を形成する。
まず、前記するような、表面に導体層を有する基板(内層基板)を基材として本発明の絶縁性接着フィルムを積層し、熱硬化性樹脂組成物層(A)及び/又は光硬化性樹脂組成物層(B)を硬化してなる硬化物に、基材と反対側の表面から基材面まで貫通するビアホールを形成する。ビアホールは、多層回路基板において、当該基板を構成する各導体層を電気的に接続するために形成される。ビアホールは、ドリル、レーザー、プラズマエッチングなどの物理的処理などにより形成することができるが、本発明においては、より微細なビアホールを電気絶縁層の特性を低下させずに形成できることから、レーザーによる方法(炭酸ガスレーザー、エキシマレーザー、UV−YAGレーザーなど)でビアホールを形成する。ここで、熱硬化性樹脂組成物層(A)及び/又は光硬化性樹脂組成物層(B)が未だ未硬化又は半硬化である場合には、硬化物を更に加熱し、それらの層を硬化する。なお、本明細書において半硬化とは、加熱又は活性放射線照射すれば更に硬化しうる程度に途中まで硬化された状態をいう。
次に、硬化物の電気絶縁層の表面、具体的には、硬化後の熱硬化性樹脂組成物層(A)の表面を粗化処理する。粗化処理は、電気絶縁層上に形成する導体層との接着性を高めるために行う。
電気絶縁層の表面平均粗さRaは、好ましくは0.05μm以上0.5μm未満、より好ましくは0.06μm以上0.3μm以下であり、かつ表面十点平均粗さRzjisは、好ましくは0.3μm以上4μm未満、より好ましくは0.5μm以上2μm以下である。なお、本明細書において、RaはJIS B0601−2001に示される算術平均粗さであり、表面十点平均粗さRzjisは、JIS B0601−2001付属書1に示される十点平均粗さである。
粗化処理方法としては、特に限定されないが、電気絶縁層表面(すなわち、硬化後の熱硬化性樹脂組成物層(A)の表面)と酸化性化合物とを接触させる方法などが挙げられる。酸化性化合物としては、無機酸化性化合物や有機酸化性化合物などの酸化能を有する公知の化合物が挙げられる。電気絶縁層の表面平均粗さの制御の容易さから、無機酸化性化合物や有機酸化性化合物を用いるのが特に好ましい。無機酸化性化合物としては、過マンガン酸塩、無水クロム酸、重クロム酸塩、クロム酸塩、過硫酸塩、活性二酸化マンガン、四酸化オスミウム、過酸化水素、過よう素酸塩などが挙げられる。有機酸化性化合物としてはジクミルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、m−クロロ過安息香酸、過酢酸、オゾンなどが挙げられる。
無機酸化性化合物や有機酸化性化合物を用いて電気絶縁層表面を表面粗化処理する方法に格別な制限はない。例えば、上記酸化性化合物を溶解可能な溶媒に溶解して調製した酸化性化合物溶液を電気絶縁層表面に接触させる方法が挙げられる。
酸化性化合物溶液を、電気絶縁層の表面に接触させる方法としては、特に限定されないが、たとえば、電気絶縁層を酸化性化合物溶液に浸漬するディップ法、酸化性化合物溶液の表面張力を利用して、酸化性化合物溶液を、電気絶縁層に載せる液盛り法、酸化性化合物溶液を、電気絶縁層に噴霧するスプレー法、などいかなる方法であってもよい。表面粗化処理を行うことにより、電気絶縁層の、導体層など他の層との間の密着性を向上させることができる。
これらの酸化性化合物溶液を電気絶縁層表面に接触させる温度や時間は、酸化性化合物の濃度や種類、接触方法などを考慮して、任意に設定すればよいが、温度は、通常、10〜150℃、好ましくは20〜100℃であり、時間は、通常、0.5〜60分間、好ましくは1〜40分間である。
なお、粗化処理後、酸化性化合物を除去するため、粗化処理後の電気絶縁層表面を水で洗浄する。また、水だけでは洗浄しきれない物質が付着している場合には、その物質を溶解可能な洗浄液でさらに洗浄したり、他の化合物と接触させたりすることにより水に可溶な物質にしてから水で洗浄する。例えば、過マンガン酸カリウム水溶液や過マンガン酸ナトリウム水溶液などのアルカリ性水溶液を電気絶縁層と接触させた場合は、発生した二酸化マンガンの皮膜を除去する目的で、硫酸ヒドロキシアミンと硫酸との混合液などの酸性水溶液により中和還元処理した後に水で洗浄することができる。
以上のようにして硬化物の電気絶縁層表面について粗化処理を行った後、電気絶縁層の表面(すなわち、硬化後の熱硬化性樹脂組成物層(A)の表面)及び/又はビアホールの表面(内壁面)に、導体層を形成する。
導体層の形成方法は、密着性に優れる導体層を形成できるという観点より、無電解めっき法により行なう。
たとえば、無電解めっき法により導体層を形成する際においては、まず、金属薄膜を電気絶縁層の表面に形成させる前に、電気絶縁層(すなわち、硬化後の熱硬化性樹脂組成物層(A))上に、銀、パラジウム、亜鉛、コバルトなどの触媒核を付着させるのが一般的である。触媒核を電気絶縁層に付着させる方法は特に制限されず、例えば、銀、パラジウム、亜鉛、コバルトなどの金属化合物やこれらの塩や錯体を、水又はアルコールもしくはクロロホルムなどの有機溶剤に0.001〜10重量%の濃度で溶解した液(必要に応じて酸、アルカリ、錯化剤、還元剤などを含有していてもよい。)に浸漬した後、金属を還元する方法などが挙げられる。
無電解めっき法に用いる無電解めっき液としては、公知の自己触媒型の無電解めっき液を用いればよく、めっき液中に含まれる金属種、還元剤種、錯化剤種、水素イオン濃度、溶存酸素濃度などは特に限定されない。例えば、次亜リン酸アンモニウム、次亜リン酸、水素化硼素アンモニウム、ヒドラジン、ホルマリンなどを還元剤とする無電解銅めっき液;次亜リン酸ナトリウムを還元剤とする無電解ニッケル−リンめっき液;ジメチルアミンボランを還元剤とする無電解ニッケル−ホウ素めっき液;無電解パラジウムめっき液;次亜リン酸ナトリウムを還元剤とする無電解パラジウム−リンめっき液;無電解金めっき液;無電解銀めっき液;次亜リン酸ナトリウムを還元剤とする無電解ニッケル−コバルト−リンめっき液などの無電解めっき液を用いることができる。
金属薄膜を形成した後、基板表面を防錆剤と接触させて防錆処理を施すことができる。また、金属薄膜を形成した後、密着性向上などのため、金属薄膜を加熱することもできる。加熱温度は、通常、50〜350℃、好ましくは80〜250℃である。なお、この際において、加熱は加圧条件下で実施してもよい。このときの加圧方法としては、例えば、熱プレス機、加圧加熱ロール機などの物理的加圧手段を用いる方法が挙げられる。加える圧力は、通常、0.1〜20MPa、好ましくは0.5〜10MPaである。この範囲であれば、金属薄膜と電気絶縁層との高い密着性が確保できる。
このようにして形成された金属薄膜上にめっき用レジストパターンを形成し、更にその上に電解めっきなどの湿式めっきによりめっきを成長させ(厚付けめっき)、次いで、レジストを除去し、更にエッチングにより金属薄膜をパターン状にエッチングして導体層を形成する。従って、この方法により形成される導体層は、通常、パターン状の金属薄膜と、その上に成長させためっきとからなる。
(多層複合体)
本発明の多層複合体は、本発明の複合体からなる層を2以上含んでなる。かかる多層複合体は、以上のようにして得られた複合体を、上述した硬化物を製造するための基材とし、例えば、これに本発明の絶縁性接着フィルムを加熱圧着し、硬化して電気絶縁層を形成し、さらにこの上に、上述した方法に従い、導体層の形成を行い、これらを繰り返すことにより、更なる多層化を行って製造することができる。
本発明の複合体(多層複合体を含む。以下、同じ。)は、本発明の絶縁性接着フィルムからなる電気絶縁層を有してなり、該電気絶縁層は、熱履歴による変形が小さく、低表面粗度であり、高いピール強度を有するものであるため、該電気絶縁層に導体層を形成し、形成した導体層をパターン化し、微細配線を形成した際に、導体層のパターン化を良好に行なうことができるものであるとともに、実装工程での不具合が少なく、信頼性に優れたものである。
(プリント配線板)
本発明のプリント配線板は、上述した本発明の複合体を構成材料として含むものである。かかる本発明のプリント配線板は、携帯電話機、PHS、ノート型パソコン、PDA(携帯情報端末)、携帯テレビ電話機、パーソナルコンピューター、スーパーコンピューター、サーバー、ルーター、液晶プロジェクタ、エンジニアリング・ワークステーション(EWS)、ページャ、ワードプロセッサ、テレビ、ビューファインダ型又はモニタ直視型のビデオテープレコーダ、電子手帳、電子卓上計算機、カーナビゲーション装置、POS端末、タッチパネルを備えた装置などの各種電子機器に好適に用いることができる。
また、本発明のプリント配線板の一態様としてはウェハー・レベル・パッケージ構造の半導体装置が挙げられる。当該半導体装置は、半導体素子と、半導体素子の表面の電極に接続された外部接続用端子と、外部接続用端子を除く半導体素子の表面を覆う、硬化した絶縁性接着フィルムからなる電気絶縁層を有する。当該半導体装置の製造方法としては、半導体ウェハーの表面を覆うようにして本発明の絶縁性接着フィルムを接着する工程、前記絶縁性接着フィルムを硬化させた後、硬化した絶縁性接着フィルムに、半導体素子の電極位置となる部分に開口を形成する工程、この開口を介して硬化した絶縁性接着フィルムの表面に導体層を形成する工程、及び前記3つの工程を適宜繰り返すことにより、前記半導体素子の電極と外部接続用端子を接続する工程からなる。このようにして得られたウェハーを個々の素子に切断することにより、ウェハー・レベル・パッケージ構造の半導体装置が得られる。
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。なお、各例中の部及び%は、特に断りのない限り、重量基準である。各種の物性については、以下の方法に従って評価した。
(1)脂環式オレフィン重合体の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)
テトラヒドロフランを展開溶媒として、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定し、ポリスチレン換算値として求めた。
(2)脂環式オレフィン重合体の水素添加率
水素添加前における脂環式オレフィン重合体中の不飽和結合のモル数に対する水素添加された不飽和結合のモル数の比率を、400MHzのH−NMRスペクトル測定により求め、これを水素添加率とした。
(3)脂環式オレフィン重合体のカルボン酸無水物基を有する繰り返し単位の含有率
脂環式オレフィン重合体中の総単量体単位モル数に対するカルボン酸無水物基を有する繰り返し単位のモル数の割合を、400MHzのH−NMRスペクトル測定により求めた。
(4)絶縁層と金属層との密着性(ピール強度)
複合体においてビアホールがない部分の絶縁層と銅めっき層との引き剥がし強さをJIS C6481−1996に準拠して測定した。
○:ピール強度が5N/cm以上
×:ピール強度が5N/cm未満
(5)絶縁層の表面粗度(算術平均粗さRa)
複合体の電気絶縁層の表面を、表面形状測定装置(ビーコインスツルメンツ社製、WYKO NT1100)を用いて、測定範囲91μm×120μmで表面粗度(算術平均粗さRa)を測定した。
○:表面粗度Raが300μm未満
×:表面粗度Raが300μm以上
(6)積層体の硬化物の変形(反り)
積層体の硬化物を、その凸面が下になるように平らな面に置き、平らな面から、最も高く反って浮いた硬化物端部までの距離を、硬化物の反り量として測定した。
○:反り量が2mm未満
×:反り量が2mm以上
製造例1
テトラシクロ[9.2.1.02,10.03,8]テトラデカ−3,5,7,12−テトラエン70モル部、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物30モル部、1−ヘキセン0.9モル部、アニソール590モル部及びルテニウム系重合触媒として4−アセトキシベンジリデン(ジクロロ)(4,5−ジブロモ−1,3−ジメシチル−4−イミダゾリン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム(和光純薬社製)0.015モル部を、窒素置換した耐圧ガラス反応器に入れ、攪拌下に80℃で1時間の重合反応を行って開環重合体の溶液を得た。次いで、窒素置換した攪拌機付きオートクレーブに、得られた開環重合体の溶液を入れ、150℃、水素圧7MPaで、5時間攪拌させて水素添加反応を行って、脂環式オレフィン重合体(P−1)の溶液を得た。得られた脂環式オレフィン重合体(P−1)の重量平均分子量は50,000、数平均分子量は26,000、分子量分布は1.9であった。また、水素添加率は97%であり、カルボン酸無水物基を有する繰り返し単位の含有率は30モル%であった。脂環式オレフィン重合体(P−1)の溶液の固形分濃度は25%であった。
製造例2
テトラシクロ[9.2.1.02,10.03,8]テトラデカ−3,5,7,12−テトラエン(MTF)70モル部、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物(NDCA)30モル部、1−ヘキセン0.9モル部、アニソール590モル部及びC1063 0.015モル部を、窒素置換した耐圧ガラス反応器に仕込み、攪拌下に80℃で1時間の重合反応を行ってノルボルネン系開環重合体の溶液を得た。この溶液について、ガスクロマトグラフィーを測定したところ、実質的に単量体が残留していないことが確認され、重合転化率は99%以上であった。
次いで、窒素置換した攪拌機付きオートクレーブに、得られた開環重合体の溶液を仕込み、150℃、水素圧7MPaで、5時間攪拌させて水素添加反応を行って、ノルボルネン系開環重合体の水素添加物である脂環式オレフィン重合体(P−2)の溶液を得た。得られた重合体(P−2)の重量平均分子量は50,000、数平均分子量は26,000、分子量分布は1.9であった。また、水素添加率は97%であり、カルボン酸無水物基を有する単量体単位の含有率は30モル%であった。重合体(P−2)の溶液の固形分濃度は22%であった。
実施例1
(熱硬化性樹脂組成物)
製造例1で得られた脂環式オレフィン重合体(P−1)の溶液45部、及び無機充填剤としての未処理球状シリカ(アドマファイン(登録商標)SO−C1、アドマテックス社製、体積平均粒径0.25μm)98%と製造例2で得られた脂環式オレフィン重合体(P−2)2%とを固形分が75%になるようにアニソールを添加し高圧ホモジナイザーで分散したシリカスラリー3.3部を混合し、遊星式攪拌機で3分間攪拌した。
これに、硬化剤としてジシクロペンタジエン型多官能エポキシ樹脂(EPICLON HP−7200L、DIC社製、エポキシ当量242〜252)3.5部、レーザー加工性向上剤として2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール0.1部、ヒンダードフェノール化合物としてトリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート(IRGANOX(登録商標)3114、BASF社製)0.1部、ヒンダードアミン化合物としてテトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシラート(アデカスタブ(登録商標)LA52、ADEKA社製)0.05部、及びアニソール63.7部を混合し、遊星式攪拌機で3分間攪拌した。
さらにこれに、硬化促進剤として1−べンジル−2−フェニルイミダゾールをアニソールに50%溶解した溶液0.1部を混合し、遊星式攪拌機で5分間攪拌して熱硬化性樹脂組成物のワニスを得た。
(光硬化性樹脂組成物)
光硬化性化合物である、脂環式エポキシ化合物としてのエポキシ化ブタンテトラカルボン酸テトラキス−3−シクロヘキセニルメチルエステルのε−カプロラクトン付加物(エポリードGT401、ダイセル化学工業社製)の70%シクロヘキサン溶液10部、ナフタレン骨格グリシジルエーテル型エポキシ化合物としての1,1−ビス(2,7−ジグリシジルオキシ−1−ナフチル)メタン(エピクロンHP−4700、DIC社製)28部、光重合開始剤(B2)として、光酸発生剤であるアリールスルホニウム塩([(フェニルチオ)フェニル]ジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、CPI−101A、サンアプロ社製)0.7部、無機充填剤としてのシリカ(アドマファインSO−C2、体積平均粒径0.5μm、アドマテックス社製)を固形分が70%になるようにシクロヘキサンを添加し高圧ホモジナイザーで分散したシリカスラリー88部、老化防止剤としてのトリスー(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアネート0.1部、光増感剤としての9,10−ジエトキシアントラセン0.07部を混合して、配合剤濃度が75%になるように混合することで、光硬化性樹脂組成物を得た。
(絶縁性接着フィルムの作製)
上記にて得られた熱硬化性樹脂組成物を支持体としての厚さが38μmのポレチレンテレフタレートフィルム(ルミラー(登録商標)T60、東レ社製)上にバーコーターを用いて塗布し、次いで窒素雰囲気下、80℃5分間乾燥し、支持体上に厚さ3μmの熱硬化性樹脂組成物のフィルム成形体を得た。
次に支持体付き熱硬化性樹脂組成物からなる層の成形面に、上記にて得られた光硬化性樹脂組成物をバーコーターを用いて塗布し、次いで窒素雰囲気下、80℃10分間乾燥させて、支持体上に総厚さが20μmの熱硬化性樹脂組成物層(A)と光硬化性樹脂組成物層(B)が形成されたフィルムを得た。
(積層体の作製)
次いで、基材として直径4インチの円形ガラス基板(D263、ショット社製、厚み150μm)の片方の面に、上記で得られた支持体付きフィルムを、支持体がついた状態で、光硬化性樹脂組成物層(B)がガラス面に合うようにして、耐熱性ゴムプレス板を上下に備えた真空ラミネータを用い、200Paに減圧して、温度90℃、圧力0.1MPaで60秒間圧着した。さらに、金属製プレス板を上下に備えた油圧プレス装置を用いて、温度90℃、1MPaで90秒間圧着した。次いで支持体を剥がすことにより積層体を得た。
(積層体の硬化)
得られた積層体の熱硬化性樹脂組成物面に、365nmにおける光強度が25mW/cmである紫外線を、80秒間、空気中で照射した。その後、30℃から180℃まで30分かけて昇温加熱、さらに、180℃で30分加熱、その後、180℃から30℃まで1時間かけて冷却して、ガラス上に厚さ20μmのフィルム積層体の硬化物を得て、反りの評価をおこなった。結果を表1に示す。
(複合体の形成)
次いで、上記とは別に、ガラスフィラー及びハロゲン不含エポキシ樹脂を含有するワニスをガラス繊維に含浸させて得られたコア材の表面に、厚さ35μmの銅箔が貼られた、厚さ0.8mmの両面銅張板の銅表面を有機酸との接触によってマイクロエッチング処理した両面銅張積層基板(内層基板)を得た。
この内層基板の両面に、上記にて得られた支持体付き絶縁性接着フィルムを、光硬化性樹脂組成物層(B)側の面が内側となるようにして貼り合わせた後、一次プレスを行った。一次プレスは、耐熱ゴム製プレス板を上下に備えた真空ラミネータにて、200Paの減圧下で温度90℃、圧力0.1MPaで60秒間の加熱圧着である。さらに、金属製プレス板を上下に備えた油圧プレス装置を用いて、圧着温度90℃、1MPaで90秒間、加熱圧着した。次いで支持体を剥がすことにより、熱硬化性樹脂組成物および光硬化性樹脂組成物からなる樹脂層と内層基板との積層体を得た。さらに積層体を空気雰囲気下、30℃から180℃まで30分かけて昇温加熱、さらに、180℃で30分加熱、その後、180℃から30℃まで1時間かけて冷却して、樹脂層を硬化させて内層基板上に電気絶縁層を形成した。
上記にて得られた積層体の硬化物を、炭酸ガスレーザー加工機(日立ビアメカニクス社製:LC−2K212/2C)を使用して、パルス幅17μs、周波数1000Hz、2ショットで穴開けをおこない、銅箔面までの開口直径60μmの形状良好なビアホールが得られた。
(膨潤処理工程)
得られた硬化物を、膨潤液(「スウェリング ディップ セキュリガント P」、アトテック社製、「セキュリガント」は登録商標)500mL/L、水酸化ナトリウム3g/Lになるように調製した60℃の水溶液に15分間揺動浸漬した後、水洗した。
(酸化処理工程)
次いで、過マンガン酸塩の水溶液(「コンセントレート コンパクト CP」、アトテック社製)500mL/L、水酸化ナトリウム濃度40g/Lになるように調製した80℃の水溶液に10分間揺動浸漬をした後、水洗した。
(中和還元処理工程)
続いて、硫酸ヒドロキシアミン水溶液(「リダクション セキュリガント P 500」、アトテック社製、「セキュリガント」は登録商標)100mL/L、硫酸35mL/Lになるように調製した40℃ の水溶液に、硬化物を5分間浸漬し、中和還元処理をした後、水洗した。
(クリーナー・コンディショナー工程)
次いで、クリーナー・コンディショナー水溶液(「アルカップ MCC−6−A」、上村工業社製、「アルカップ」は登録商標)を濃度50ml/Lとなるよう調整した50℃の水溶液に硬化物を5分間浸漬し、クリーナー・コンディショナー処理を行った。次いで40℃の水洗水に硬化物を1分間浸漬した後、水洗した。
(ソフトエッチング処理工程)
次いで、硫酸濃度100g/L、過硫酸ナトリウム100g/Lとなるように調製した水溶液に硬化物を2分間浸漬しソフトエッチング処理を行った後、水洗した。
(酸洗処理工程)
次いで、硫酸濃度100g/Lなるよう調製した水溶液に硬化物を1分間浸漬し酸洗処理を行った後、水洗した。
(触媒付与工程)
次いで、アルカップ アクチベータ MAT−1−A(商品名、上村工業社製、「アルカップ」は登録商標)が200mL/L、アルカップ アクチベータ MAT−1−B(上商品名、村工業社製、「アルカップ」は登録商標)が30mL/L、水酸化ナトリウムが0.35g/Lになるように調製した60℃のPd塩含有めっき触媒水溶液に硬化物を5分間浸漬した後、水洗した。
(活性化工程)
続いて、アルカップ レデユーサ− MAB−4−A(商品名、上村工業社製、「アルカップ」は登録商標)が20mL/L、アルカップ レデユーサ− MAB−4−B(商品名、上村工業社製、「アルカップ」は登録商標)が200mL/Lになるように調整した水溶液に硬化物を35℃で、3分間浸漬し、めっき触媒を還元処理した後、水洗した。
(アクセレレータ処理工程)
次いで、アルカップ アクセレレーター MEL−3−A(商品名、上村工業社製、「アルカップ」は登録商標)が50mL/Lになるように調製した水溶液に硬化物を25℃で、1分間浸漬した。
(無電解めっき工程)
以上の工程を経た硬化物を、スルカップ PEA−6−A(商品名、上村工業社製、「スルカップ」は登録商標)100mL/L、スルカップ PEA−6−B−2X(商品名、上村工業社製)50mL/L、スルカップ PEA−6−C(商品名、上村工業社製)14mL/L、スルカップ PEA−6−D(商品名、上村工業社製)15mL/L、スルカップ PEA−6−E(商品名、上村工業社製)50mL/L、37%ホルマリン水溶液5mL/Lとなるように調製した無電解銅めっき液に空気を吹き込みながら、温度36℃で、20分間浸漬して無電解銅めっき処理して硬化物表面(硬化した熱硬化性樹脂組成物からなる絶縁層の表面)に無電解めっき膜を形成した。次いで、空気雰囲気下において150℃で30分間アニール処理を行った。
アニール処理が施された硬化物に、電解銅めっきを施し厚さ30μmの電解銅めっき膜を形成させた。次いで当該硬化物を180℃で60分間加熱処理することにより、硬化物上に前記金属薄膜層及び電解銅めっき膜からなる導体層で回路を形成したプリント配線板(複合体)を得た。そして、得られた回路基板のピール強度を、上記方法にしたがって測定した。結果を表1に示す。
硬化物上の前記金属薄膜層及び電解銅めっき膜をエッチングにより導体層を取り除いて得られた電気絶縁層の表面平均粗さRaを、上記方法にしたがって測定した。結果を表1に示す。
比較例1
光硬化性樹脂組成物の光酸発生剤としての芳香族スルホン酸塩([(フェニルチオ)フェニル]ジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、CPI−101A、サンアプロ社製)0.7部および光増感剤としての9,10−ジエトキシアントラセン0.07部の代わりに熱酸発生剤SI−100L(三新化学工業社製)0.7部を使用し、紫外線を照射しなかった以外は、実施例1と同様にして、フィルム、積層体、硬化物を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
比較例2
熱硬化性樹脂組成物層(A)を形成せず、光硬化性樹脂組成物層(B)の厚さを20μmとした以外は、実施例1と同様にして、フィルム、積層体、硬化物を得て、同様に評価を行った。これらの評価結果を表1に示す。
比較例3
熱硬化性樹脂組成物層(A)を形成せず、光硬化性樹脂組成物の光酸発生剤としての芳香族スルホン酸塩([(フェニルチオ)フェニル]ジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、CPI−101A、サンアプロ社製)0.7部および光増感剤としての9,10−ジエトキシアントラセン0.07部の代わりに熱酸発生剤SI−100L(三新化学工業社製)0.7部を使用し、フィルムの厚さを20μmとし、紫外線を照射しなかった以外は、実施例1と同様にして、積層体、硬化物を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
Figure 2013087165
表1に示すように、熱硬化性樹脂組成物層(A)と光硬化性樹脂組成物層(B)を積層してなる絶縁性接着フィルムは、絶縁層表面の粗度が低く、反りが小さく、ピール強度が大きい硬化物を与えることがわかる。(実施例1)
一方、光硬化性樹脂組成物層(B)に光酸発生剤を配合せず、熱酸発生剤配合して熱により硬化させた場合には、反りが大きい結果となった。(比較例1)
熱硬化性樹脂組成物層(A)を形成せず、光硬化性樹脂組成物層(B)のみとした場合は、表面粗度が高く、ピール強度が小さい結果となった。(比較例2)
また、熱硬化性樹脂組成物層(A)を形成せず、光硬化性樹脂組成物層(B)に光酸発生剤を配合せず、熱酸発生剤配合して熱により硬化させた場合には、表面粗度、反り、ピール強度とも悪化する結果となった。(比較例3)

Claims (9)

  1. 支持体上に、熱硬化性樹脂組成物層(A)及び光硬化性樹脂組成物層(B)を、この順で積層してなる絶縁性接着フィルム。
  2. 熱硬化性樹脂組成物が重量平均分子量1,000以上の熱硬化性樹脂を含有することを特徴とする請求項1記載の絶縁性接着フィルム。
  3. 熱硬化性樹脂が脂環式オレフィン重合体であることを特徴とする請求項2記載の絶縁性接着フィルム。
  4. 熱硬化性樹脂組成物層(A)と光硬化性樹脂組成物層(B)の2層の合計厚さが50μm以下であることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の絶縁性接着フィルム。
  5. 請求項1〜4いずれかに記載の絶縁性接着フィルムの光硬化性樹脂組成物層(B)の表面を基材に合せるようにして積層してなる積層体。
  6. 請求項5に記載の積層体の熱硬化性樹脂組成物層(A)及び/又は光硬化性樹脂組成物層(B)を硬化してなる硬化物。
  7. 請求項5に記載の積層体又は請求項6に記載の硬化物において、レーザーにより基材と反対側の面から基材面までビアホールを形成した後、又は次いで更に、未硬化若しくは半硬化の、熱硬化性樹脂組成物層(A)及び/又は光硬化性樹脂組成物層(B)を硬化させた後、硬化した熱硬化性樹脂組成物層(A)の表面及び/又はビアホールの表面に導体層を形成してなることを特徴とする複合体。
  8. 請求項7に記載の複合体からなる層を2以上含んでなる多層複合体。
  9. 請求項7に記載の複合体、又は請求項8に記載の多層複合体からなるプリント配線板。
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