JP2012509737A - 埋め込み式の眼薬送達器具および眼薬送達方法 - Google Patents
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Abstract
本発明は埋め込み式の眼薬送達器具を提供する。一般的に、器具は、コイル形状の胴体部材を有している遠位部および強膜と接触する近位部を有している。一形態において、コイル形状の上記胴体部材は、異なるピッチを有している2つのコイル部を含んでいる独自の構造を備えており、当該構造によって眼への器具のはめ込み性が向上される。他の形態において、器具は、眼における器具の安定性を向上させる遠位にある凹面を有している独自のかさ状部の構造を含んでいる近位部を有している。また、他の形態において、器具は、上記かさ状部とコイル形状の上記胴体部材との間に、眼における器具の安定性を向上させる移行部を包んでいる。また、本発明は、眼に医療器具をはめ込む方法および眼の障害を処置する方法を提供する。
Description
〔関連出願に対する相互参照〕
仮特許出願ではない本特許出願は、米国特許法119条(e)に基づいて、米国仮特許出願(出願番号:61/200,294、出願日:2008年11月26日、発明の名称:IMPLANTABLE OCULAR DRUG DELIVERY DEVICE AND METHODS)からの優先権を主張しており、上記仮特許出願の全体は参照によって本明細書に援用される。
仮特許出願ではない本特許出願は、米国特許法119条(e)に基づいて、米国仮特許出願(出願番号:61/200,294、出願日:2008年11月26日、発明の名称:IMPLANTABLE OCULAR DRUG DELIVERY DEVICE AND METHODS)からの優先権を主張しており、上記仮特許出願の全体は参照によって本明細書に援用される。
本発明は、眼の処置部位に生体活性物質を送達するために用いられ得る、埋め込み式の眼内の医療器具に関する。
医療器具は、病状(例えば、感染症または疾患)の処置のために身体に配置され得る。より最近になって、病状を処置する器具から薬剤を放出可能にする技術が発展してきている。これらの技術のいくつかは、器具の表面に形成されている重合体の被覆からの薬剤の放出に関する。他の技術は、器具の内部(つまり内腔)からの薬剤の放出に関する。処置には、長期間(例えば数週間、数ヶ月間、数年間でさえ)にわたる生体活性物質の放出が必要であり得る。
さらに、埋め込み式の医療器具の表面は、長期間にわたって身体に留めることを可能にするために、生体適合性、非刺激性および耐久性を典型的に有している。また、埋め込み式の器具は、採算が合い、かつ再現可能な方法において好ましく製造され、従来の方法を用いて一般的に滅菌可能である。
また、薬剤送達に関する試みに加えて、器具の埋め込みに関する試みが、しばしば行われている。いくつかの器具(例えばステント)は、標的の部位に対する器具の挿入を容易にする特定の構造的な特徴(例えば折り畳み可能であること)を有し得る。また、標的の位置に対する器具の配置を向上させる特定の器具の構成は、器具からの薬剤送達を最終的に向上させ得る。例えば、このような構造的な改良は、構造的設計を通して所望のように、挿入手順を容易にし、組織の損傷を最小化し、標的の位置における器具の安定性を向上させ、薬剤送達を高める。
限られた接触領域(例えば、眼の硝子体腔および内耳)への治療薬の送達に特に適している治療薬の送達器具は、米国特許第6,719,750号(“Devices for Intraocular Drug Delivery,” Varner et al.)および米国特許出願公開第2005/0019371号(“Controlled Release Bioactive Agent Delivery Device,” Anderson et al.)に記載されている。
本発明の明細書は例示的な実施形態としての眼の処置に関するので、眼の基本的な解剖学的な構造を、断面視した眼を示している図1を参照していくらか詳細に説明する。眼の外部から始めると、眼の構造は瞳孔3を取り囲む虹彩2を含んでいる。虹彩2は、瞳孔3の大きさを調整して、眼に入射する光の量を調整する環状筋である。透明な殻構造の角膜4は瞳孔4および虹彩2の前に位置している。強膜5(白眼)は、角膜4と連続しており、眼球の支持壁の一部を形成している。結膜6は強膜5を覆っている透明な粘膜である。水晶体8は、眼の内部にあり、虹彩2の後部に位置している透明体である。水晶体8は、毛様体10の前方部分に接続されている靭帯9によって留められている。毛様筋の動作の結果としてのこれら靭帯9の収縮または弛緩は、水晶体8の形状を変化させ(いわゆる眼の遠近調節の過程)、網膜11における鮮明な像の形成を可能にする。光線は、網膜11の上にある透明な角膜4および水晶体8を経て集束する。ヒトの網膜における像の焦点にとっての中心点(視軸)は、中心窩12である。視神経13は水晶体8の反対に位置している。
眼には3つの異なる層がある。3つの異なる当該層は、強膜5および角膜4によって形成されている外層;2つの部分、すなわち前方(虹彩2および毛様体10)および後方(脈絡膜14)に分割されている中間層;ならびに網膜11によって形成されている内層または眼の感覚性の部分である。水晶体8は、前部(水晶体の前方)および後部(水晶体の後方)に眼を分割している。より詳細には、眼は3つの流体の眼房:前眼房(角膜4と虹彩2との間)、後眼房(虹彩2と水晶体8との間)および硝子体腔(水晶体8と網膜11との間)から構成されている。前眼房および後眼房は、房水によって満たされており、一方で硝子体腔は、より粘性を有している液体である硝子体液によって満たされている。
本発明は、(複数の)生体活性物質の放出が可能な、眼内の一部に埋め込まれ得る医療器具に関する。これらの器具は、本明細書において“埋め込み式の眼の器具”と呼ばれる。また、本発明は、眼へ埋め込み式の眼の器具をはめ込む方法、および当該器具から放出される生体活性物質を用いた眼の障害を処置する方法に関する。一局面において、器具は、1つ以上の生体活性物質が硝子体に放出され得るように当該器具の一部を眼の後方に挿入される方法に使用される。
埋め込み式の眼の器具は遠位部を一般的に備えている。当該遠位部は、螺旋状に動かす様式において強膜組織を貫いて回転可能に挿入されるように構成されているコイル形状の胴体部材を含んでいる。強膜を通じてコイル本体の実質的な部分が硝子体に配置されるまで、コイル形状の胴体部材(遠位端から始まっている)は回転によって移動させられる。硝子体において、上記胴体部材は眼の障害の処置のため1つ以上の生体活性物質を放出する。
また、いくつかの実施形態では、埋め込み式の眼の器具は、かさ状部を備えている近位部、およびコイル形状の上記胴体部材とかさ状部との間に位置する移行部を備え得る。かさ状部の遠位面は、眼の外面とかみ合わせられ得、器具の安定化に寄与し得る。また、器具の移行部は、強膜と接触し得、また器具の安定化に寄与し得る。
一般的に、本発明は、眼に挿入されているときの器具のはめ込み、薬の送達および安定性を向上させる創意に富んだ新規な特徴を有している埋め込み式の眼薬送達器具を提供する。本発明の一形態において、器具は遠位部を有している。当該遠位部は、当該遠位部の埋め込みおよび薬の送達を容易にする創意に富む独自の構成を有している。本発明の他の形態において、器具は近位部を有している。当該近位部は、器具の埋め込み後の安定化を容易にする創意に富んだ新規な構成を有している。
したがって、一実施形態において、本発明は、眼の強膜と接触するように構成されている近位部および遠位端を備えている眼薬送達器具を提供する。ここで、当該遠位端がコイル形状の胴体部材を有しており、当該胴体部材が第1部分および第2部分を備えている。コイル形状の胴体部材の第1部分は、第2部分より大きなピッチを有しており、第2部分は第1部分に対して近位にある(つまり、第2部分は近位端により近い)。また、器具は器具の遠位部から送達させ得る生体活性物質を含んでいる。
コイル形状の独自の胴体部材(異なるピッチを有している第1部分および第2部分を有している)は、器具の埋め込みおよび機能にとっての利点を提供する。例えば、埋め込み手順の間に器具を回転運動させることによって、遠位部の創意に富んだ構成は、強膜組織への器具の先端(遠位端)の貫通を容易にする。そうすることによって、先端を貫通させない強膜の表面上における先端の回転によって、そうしなければ引き起こされる強膜組織の損傷が回避される。また、所望されない組織の応答(例えば炎症)を最小化し得る。
コイル形状の胴体部材の独自の設計が、挿入を容易にし得、同時に1つ以上の生体活性物質のための高い充填能を維持し得る。コイル形状の構成は、器具の遠位部における胴体部材の大きな表面積(または体積)によってもたらされるような薬の大量の充填を達成する、優れた方法を提供する。例えば、生体活性物質は、存在し得、コイル形状部の被覆および/または内腔から放出可能である。遠位部の設計は、その遠位端を視野の中央に入れないような範囲に、器具の長さが縦軸に沿って収められることを可能にしている。
本発明の他の実施形態は、器具の安定性および患者のコンプライアンス(compliance)を少なくとも向上させる創意に富んだ新規な近位部に関する。これらの実施形態において、埋め込み式の眼の器具は、かさ状部を有している近位部および/または当該かさ状部に対してコイル形状の胴体部材を接続させている移行部を備えている。挿入手順の間に、胴体部材が回転によって眼に完全に挿入されるので、かさ状部の遠位面は、眼の外面に接触し、その挿入部において器具を安定化させる。
したがって、他の実施形態において、本発明は近位部を有している眼薬送達器具を提供する。当該近位部は、遠位面を有しているかさ状部を備えており、当該かさ状部は凹形状を有している。器具の挿入によって、凹形状を有しているかさ状部の遠位面は、凸形状である眼の外面と同一平面を生じる。遠位面の凹形状は眼の外面における高められた接触性を提供する。完全に挿入されている位置にある器具を用いて、凹形状は、器具の安定化を向上させ得、硝子体における遠位部の移動を最小化し得る。
他の実施形態において、かさ状部の構造は、眼の外表面に対する刺激を最小化することによって、器具の安定性を向上させる構成を有している。この実施形態において、かさ状部の構造は、曲線的な断面の形状を備えている外周を有している。曲線的な形状は、強膜および結膜に対する刺激を減少させ、同様に、器具の平行移動を最小化することによって器具の安定性を向上させ得る。
移行部はコイル形状の胴体部材とかさ状部との間にある器具の部分を指す。移行部は眼に挿入されているときに器具の安定性を向上させるように構成されている。特に、眼に完全に挿入されているとき、移行部は強膜組織と接触している。いくつかの形態において、本発明は、器具の中心軸と平行な直線状の部分である移行部を備えており、約0.15mmから約0.30mmの範囲における長さを有している器具を提供する。この直線状の部分に対して遠位にある胴体部材は、コイル形状の胴体部材における第2部分のコイル形状に曲がっている。短い移行部は、コイル形状の胴体部材を、かさ状部の遠位面から離してわずかな間隔を生じさせる。かさ状部、移行部、およびコイル形状の胴体部材の近位端によって作り出されている溝に強膜組織が押し込まれることによって、この間隔が眼における器具の位置合わせおよび安定性を向上させる。
安定性を向上させる器具の上述の部分は、組織の刺激を最小化し、挿入中に患者にとってより許容できる埋め込み式の器具であるので、有用である。
いくつかの実施形態において、本装置の主要な機能は、眼における所望の処置部位に(複数の)生体活性物質を送達することである。いったん所望の眼の処置が達成されると、器具は身体から除去され得る。さらに、本発明の実施形態は、侵襲的な外科技術と関係がある危険および不利益が減少し得るような低侵襲性の器具を提供する。
本明細書に記載されている本発明の実施形態は、以下に記載する詳細な説明において開示されている厳密な形態に本発明を限定すること、または網羅的であることを意図されていない。むしろ、本実施形態は、当業者が本発明の本質および実施を正しく認識し得、理解し得るように選択されており、記載されている。
本明細書に記載されている全ての出願および特許は、参照によって本明細書に援用される。本明細書に開示されている公報および特許は、それらの開示のためだけに提供されている。本明細書は、発明者が、任意の公報および/または特許(本明細書に引用されている任意の公開および/または特許が挙げられる)に先行する権利を有していないという承認として解釈されるべきではない。
図2aは、図においてより近い端である近位端を有している、本発明の例示的な埋め込み式の眼の器具21の実例を示している。埋め込み式の眼の器具21は、かさ状部23、示されている近位面24、コイル形状の胴体部材25を有している遠位部、および尖っている遠位端27を備えている。図2bは、図においてより近い端である遠位端を有している、例示的な埋め込み式の眼の器具の実例を示しており、コイル形状の胴体部材25とかさ状部26の遠位面との間にある移行部28、およびかさ状部23の遠位面26を示している。
コイル形状の胴体部材はコイルの遠位端および近位端によって規定され得る。コイル形状の胴体部材は、中心軸を取り巻く非直線状の経路を一般的に採っており、上記経路は器具の遠位端から移行部におけるコイルの近位端まで延びている。一般的な事柄として、螺旋の形態におけるコイルは、変化に一定の方向性を有して、連続的に方向を変える非直線状の経路を採っている。変化における一定の方向性は螺旋の一定の曲率およびねじれ率に相当している。そういうものとして、いくつかの実施形態において、器具は“螺旋形状の”胴体部材を有している。
一般的に、コイルの構造において、コイルの個々の輪は縦軸について回転している。コイル全体は縦軸に対して実質的に対称である。意図されているコイルは、コイル形状の胴体部材の、近位から遠位の長さに沿って、外周において実質的に相似な(一定の曲率によってもたらされるような)多数の輪から構成されている。このような個々の輪は、同心性であり得る(つまり、共通の軸を有している、または縦軸について共軸性である)か、または偏心性(環状の経路から外れている)であり得る。これらの実施形態によれば、個々の輪は胴体部材の長さに沿って隣接しておらず、したがって胴体部材の伸長方向に沿った位置において個々の“突出部”を形成している。コイルの曲率は中心軸と相対する曲率の弧として測定される。典型的には、コイル形状の胴体部材の第1部分の曲率および第2部分の曲率は同じである。
胴体部材のコイル形状の構造は、同じ長さおよび/または幅を有している直線状の器具と比べて、埋め込み部位への生体活性物質の送達のための増大した表面積(または体積)をもたらす。この構造は器具のより短い長さおよび/またはより小さい幅において、より広い表面積を提供可能にするので、これは器具の使用中に利点をもたらし得る。眼における適用のために、器具の長さをある範囲に収めるのが望ましい。例えば、器具が眼の視野の中央に入ることを防止するために、かつ眼の組織への損傷の危険性を最小化するために、眼における埋め込みの長さを抑えることが望ましい。伸長方向から逸脱している胴体部材の一部を少なくとも有している胴体部材を提供することによって、本発明の器具は、器具の長さあたりについて、生体活性物質を含んでいる被覆にとってのより大きな表面積を有している(したがってより多くの生体活性物質を提供し得る)。ここで、本発明の器具は、器具の断面(したがって挿入の切り口)をより大きくする必要なく、被覆にとってのより大きな表面積を有している。
図2aおよび図2bに示されるように、コイル形状の胴体部材25は、器具の中心軸について複数回巻きとして構成されている近位端から遠位端までの経路を採っている。1回巻きは胴体部材における360°の回転を指す。多くの実施形態において、コイル形状の胴体部材は、約3回巻きから約5回巻き(1080°〜1800°)、約3回半巻きから約4回半巻き、または約4回巻きを有している。これらの図に示されるように、コイル形状の胴体部材は、回転にしたがってそれ自身からそれを離すような構造を提供するために、非直線状の経路を採っている。言い換えると、多くの実施形態において、器具は、コイル形状の胴体部材の表面が長さに沿ってそれ自体と接触していない構造を有している。
図2aおよび図2bに示されるようにコイル形状の胴体部材25は、左巻きの螺旋であり、時計回りの巻きをともなって差し込まれている。代替として、コイル形状の胴体部材は右巻きの螺旋を有し得る。右巻きの螺旋を有している胴体部材の挿入は、反時計回りの回転を包含し得る。
図3(器具の断面図を示している)を参照すると、器具は中心軸を有しており(直線CA)、当該中心軸はかさ状部33の中心と揃えられており、器具の近位端から遠位端37まで延びている。中心軸に沿って測定される場合、器具は近位端(かさ状部の近位面)から遠位端(コイル部の鋭利な端部)までの全長(L1)を有し得る。器具の遠位部が眼の視野の中央に入ることを防ぎ、かつ眼の組織への損傷の危険性を最小化するために、埋め込み物の全長L1は抑えられ得る。一般的に、多くの実施形態において、全長L1は約1cmより短い。多くの実施形態において、全長L1は約2.5mmから約8.9mmの範囲であり、より詳細には約4.1mmから約7.3mmの範囲であり、またはさらに詳細には約4.9mmから約6.5mmの範囲である。例示的な実施例において、全長L1は約5.7mmまたは約6.0mmである。
図4は、近位端(かさ状部なし)からの器具の移行部およびコイル形状の胴体部材の図を示しており、当該図は中心軸を見下ろし、かつ内面積を示している。遠位部の内面積は、この図に基づいて内径(ID)によって規定され得、当該内径は小径とも呼ばれ得る。器具の内径は、コイル形状の遠位部の長さに沿って一定であり得るか、または長さに沿って変化し得る。
多くの実施形態において、内径は、約0.43mmから約2.1mmの範囲であり、より詳細には約0.83mmから約1.7mmの範囲である。例示的な一実施形態において、内径は約1.28mmである。
また、器具の外径(OD)が図4に示されており、当該外径は“大径”とも呼ばれ得る。器具の外径は、コイル形状の遠位部の長さに沿って一定であり得るか、または長さに沿って変化し得る。多くの実施形態において、外径は約1.28mmから約2.19mmの範囲である。
図4をふたたび参照すると、胴体部材の断面形状が示されている(胴体部材がかさ状部の遠位面と対向している部分における移行部48を指している)。断面は、環状の形状を有している胴体部材を示している。多くの形態において、胴体部材の断面の形状は、かさ状部の遠位面における先頭(移行部が挙げられる)から胴体部材の遠位部の近くまで同じである。例えば、胴体部材の断面の形状は長さに沿って実質的に環状である。これは棒またはワイヤから形成されている胴体部材によって例示され、当該棒またはワイヤはコイル形状を有するように構成されている。
いくつかの局面において、胴体部材の断面は、約0.38mmから約0.63mmの範囲、より詳細には約0.45mmから約0.55mmの範囲における直径を有している。例示的な一実施形態において、胴体部材は約0.5mmの直径または約0.4mmの直径を有している。
また、胴体部材の断面の形状は、実質的に環状、楕円状、または非曲線状の形状であり得る。例えば、胴体部材の断面の形状は多角形(例えば、正方形、長方形、六角形、八角形など)であり得る。
また、胴体部材は測定され得る断面積を有している。多くの局面において、胴体部材は約0.11mm2から約0.31mm2の範囲、より詳細には約0.16mm2から約0.24mm2の範囲における断面積を有している。例示的な一実施形態において、胴体部材の断面積は約0.20mm2または約0.13mm2である。
一実施形態において、器具はコイル形状の胴体部材を備えており、当該コイル形状の胴体部材は第1部分および第2部分を備えている。ここで、上記コイル形状の胴体部材の上記第1部分は上記第2部分より大きいピッチを有しており、上記第2部分は上記第1部分に対して近位にある。つまり、第1部分より小さいピッチを有しているコイル形状の胴体部材の第2部分は、器具の近位部(例えば、かさ状部)とコイル形状に沿って第1部分が始まる部分との間に位置している。
ピッチは、コイルの1回巻き(360°)によって隔てられている胴体部材上の2点間の、中心軸に沿って測定されるときの距離を指す。しかし、ピッチはまた、コイルの部分的な回転についての中心軸に沿った距離を知るときに測定され得る。一例として図5を参照すると、コイル形状の胴体部材は、点Aから点Bまでの測定されたコイル形状部の第2部分においてピッチP2を有している。
第1部分(より大きなピッチを有している)は、コイルのねじれ率が変化している胴体部材の一点に始まる。ねじれ率は、空間曲線の接触平面の変化率である。例えば、螺旋のねじれ率は1/T=2πa/pであり、pは螺旋の1回巻きに対する棒の長さであり、aはピッチの長さである。言い換えると、胴体部材の第2部分は、変化に一定の方向性(連続した曲率およびねじれ率)を有して、連続的に方向を変える非直線状の経路を採っているコイル形状を有し得、第1部分(より大きなピッチを有している)は、第2部分の一定の方向性に変化を生じている胴体部材上の一点に始まり得る。つまり、胴体部材の第1部分は、コイルの経路に沿ってねじれ率の変化を生じている一点に始まり得る。この点に始まり、胴体部材に沿って遠方に移動するにしたがって、螺旋は、引き伸ばされて、第1部分におけるピッチの増加を生じている。一例として図5を参照すると、胴体部材のねじれ率の変化は点Cにおいて始まり、コイル形状の胴体部材は点Cから点Eまで測定されたコイル形状部の第1部分においてピッチP1を有している。
第1部分(より大きなピッチを有している)は1回巻き未満の螺旋、1回巻きの螺旋または1回巻きを超える螺旋であり得る。多くの実施形態において、第1部分は約1/4回巻きから3/2回巻き、約1/2回巻きから約5/4回巻き、または約3/4回巻きから約1回巻きとして構成されている。
いくつかの形態において、第1部分(より大きなピッチを有している)は、約1.2mmから約2mmの範囲、より詳細には約1.4mmから約1.8mmの範囲、またはさらに詳細には約1.5mmから約1.7mmの範囲におけるピッチ(例えば、図5のP1)を有している。特定の一形態において、第1部分は約1.6mmのピッチを有している。
中心軸に沿って測定されるとき、第1部分は、約1.28mmから約2.14mmの範囲、より詳細には約1.5mmから約1.93mmの範囲、またはさらに詳細には約1.61mmから約1.82mmにおける距離(例えば、図5の点Cから点FまでのD1)を典型的に有している。特定の一局面において、第1部分は約1.71mmの長さである。多くの形態において、第2部分は第1部分(例えば、図5の点Cから点Fまで)より長い長さ(例えば、図5の点Xから点Cまで)を有している。
第1部分は、一定のねじれ率または一定ではないねじれ率を有し得る。いくつかの場合において、第1部分は一定ではないねじれ率を有している。例えば、第1部分におけるねじれ率は胴体部材の遠位端に向かって増加し得る。この場合において、螺旋は遠位端に向かってさらに長くなり得る。
いくつかの局面において、第2部分は、約0.74mmから約1.23mmの範囲、より詳細には約0.84mmから約1.10mmの範囲、またはさらに詳細には約0.91mmから約1.04mmの範囲におけるピッチ(例えば、図5のP2)を有している。特定の一局面において、第2部分は約0.98mmのピッチを有している。
中心軸に沿って測定されるとき、第2部分は、約2.12mmから約3.53mmの範囲、より詳細には約2.47mmから約3.18mmの範囲、またはさらに詳細には約2.65mmから約3.0mmにおける距離(例えば、図5の点Xから点Cまで)を典型的に有している。特定の一局面において、第2部分は約2.82mmの長さである。
多くの実施形態において、第2部分は約2回巻きから4回巻き、約5/2回巻きから約7/2回巻き、または約3回巻きとして構成されている。
また、移行部の近位端からコイル形状部の遠位端までの、非直線状の経路に沿ったコイル形状の胴体部材の長さ(コイルが直線状に伸張された場合における胴体部材の長さを指す)が、決定され得る。
胴体部材の長さは、第2部分のピッチ(P2)および外周(C2)、第2部分における胴体部材の巻き数(N2)、第1部分のピッチ(P1)および外周(C1)、ならびに第2部分における胴体部材の巻き数(N1)を知ることによって、以下の式にしたがって算出され得る:
非直線状の経路に沿ったコイル形状の胴体部材の長さは、典型的に、約15mmから約25mmの範囲であり、またはより詳細には約17.5mmから約22.5mmの範囲である。例示的な一実施形態において、非直線状の経路に沿った胴体部材の長さは約20mmである。
また、非直線状の経路に沿った移行部の近位端からコイル形状部の遠位端までの、コイル形状の胴体部材の表面積は、非直線状の経路に沿った胴体部材の長さを知ることによって決定され得る。
コイル形状の胴体部材の表面積は、典型的に、約18.9mm2から約49.5mm2の範囲であり、またはより詳細には約24.7mm2から約38.9mm2の範囲である。例示的な一実施形態において、非直線状の経路に沿った胴体部材の表面積は約31.4mm2である。
胴体部材の遠位端は、眼の標的領域における挿入に適した形状を有し得る。いくつかの局面において、遠位端は、眼への器具の埋め込み中に強膜組織を貫通するために、鋭利であるか、または尖っている。器具の鋭利な端または尖っている端は、切り口の部位を形成するための個々の道具および/または手順を必要とせずにむしろ、強膜組織に切り口を形成するために利用され得る。言い換えると、鋭利な遠位端は、眼への挿入のために“自己開始する”器具を提供し、強膜組織への最初の挿入のために結膜の外科処置または他の器具を必要としない。
鋭利な遠位端は、コイル形状の胴体部材の第1部分(より大きなピッチを有している)の経路に形成され得る。言い換えると、いくつかの形態において、鋭利な部分は、コイル形状の胴体部材の第1部分の構成から離れていないか、または実質的に離れていない。
いくつかの実施形態において、鋭利であるか、または尖っている遠位端は、胴体部材の第1部分の遠位端に斜角をつけることによって形成され得る。図3に示されるように、コイル形状の胴体部材の遠位端37には斜角がつけられている。遠位端におけるコイル形状の胴体部材の経路の経路に対して、遠位端は、約35°から約55°、約40°から約50°、または約45°の範囲における角度(器具の先端からの角度)に斜角がつけられ得る。中心軸に対して測定すると、遠位端は約10°または約20°の角度に斜角がつけられ得る。
斜角をつけることによって、遠位端の近傍に平面を形成し得る。
斜角をつけることによって、強膜組織を貫通することおよび眼内に器具を進ませることに有用な特に鋭利な端をもたらし得る。このように斜角をつけることは、第1部分のコイル形状が依然として保たれ得、かつコイル形状の胴体部材に沿った器具の長さは、有効な長さの任意の直線部を含めることによって損なわれる必要がないので、望ましい。
一般的に、埋め込み式の眼の器具を製造するために使用される材料は特に限定されない。多くの局面において、器具のコイル形状の胴体部材は、曲がりにくく硬い材料から製造される。曲がりにくく硬い材料の使用は、器具における向上した埋め込み/取り出しの特性をもたらし得る。代替的に、埋め込み式の眼の器具のわずかな動きが埋め込み部位に伝わらないように、胴体部材は柔軟な材料から製造され得る。
コイル形状の胴体部材は部分的または完全に金属から製造され得る。胴体部材の製造に適した金属としては、プラチナ、金またはタングステン、他の金属(例えば、リチウム、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、チタンおよびニッケル)ならびにこれらの金属の合金(例えばステンレス鋼、チタン/ニッケルのニチノール合金およびプラチナ/イリジウム合金)が挙げられる。
セラミックス(例えば窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、ガラス、シリカおよびサファイア)は、胴体部材を製造するために使用され得る。
胴体部材はプラスチック材料から部分的または完全に製造され得る。例示的なプラスチック材料としては、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリスルフォン(PS)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリウレタン(PU)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリカーボネート(PC)およびポリエーテルエーテルケトン(PEEK)が挙げられる。
コイル形状の胴体部材は、中実であり得るか、または代替的に1つ以上の中空部を有し得る。中実のコイル形状の胴体部材は棒から形成され得、一方で中空のコイル形状はチューブから形成され得る。
また、図6を参照すると、埋め込み式の眼の器具は移行部68を備えており、当該移行部68は、かさ状部63の遠位面66とコイル形状の胴体部材の第2部分の近位端67との間に位置している。移行部は、眼に挿入されているとき、器具の安定化を向上させるように構成されている。特に、十分に眼に挿入されているとき、移行部は強膜組織と接している。
図6に示されるように、移行部68は、かさ状部63の遠位面66から生じており、非常に短い距離において器具の中心軸と平行であり、それから曲がってコイル形状の胴体部材の第2部分のコイル形状になっている。短い移行部は、コイル形状の胴体部材をかさ状部の遠位面から離して、わずかな間隔をおいて配置されている。この間隔をおいた配置によって眼における器具の安全性が向上し、配置が容易になる。
かさ状部の遠位面66と胴体部材の曲線部の近位端67との間の、器具の中心軸に沿った間隔(距離D3によって示されている)は、約0.15mmから約0.30mmの範囲である。コイル形状の胴体部材の近位にある最初の1巻きの最外部の表面70とかさ状部の遠位面66との間の間隔(距離D4によって示されている)は、約0.5mmから約0.65mmの範囲である。
十分に眼に挿入されているとき、移行部は、かさ状部と対向している胴体部材のコイル形状部の表面69(かさ状部の遠位面に対してより近位にあり、かつかさ状部の遠位面と対面している胴体部材のコイル形状部の表面)とかさ上部66の遠位面との間に強膜組織が押し込まれることによって器具を安定化させるために、設計されている。かさ状部、移行部、およびコイル形状の胴体部材の近位の表面は、器具が適当な位置にあるとき、強膜組織を固定する溝を形成する。
独自の移行部を有している近位部の構成は、十分に眼に挿入されているときの器具の安定性を大きく向上させる。挿入されている器具は、所望されない移動を起こしにくく、そうでなければ、当該所望されない移動は器具の位置合わせの望ましくない不正確さを引き起こし得るか、または組織の刺激の原因になり得る。器具自体の自己固定的な特性の結果として、器具は身体組織に対するさらなる固定手段(例えば縫合)を必要としない。
図1aおよび図1bに示されるように、器具は、いったん身体に埋め込まれた器具の安定性を補助し得るかさ状部23を備え得る。一般的に、器具は、かさ状部23の遠位面26が眼の外面と接するまで、強膜組織における隙間を介して挿入される。かさ状部は、眼の外部にとどまるように設計されており、器具の挿入部位を通って眼の内部に入らないような大きさである。かさ状部は、眼に器具が挿入されているとき、組織の刺激を最小限にすると同時に器具の安定性を向上させる創意に富んだ構造を備え得、そうでなければ当該組織の刺激は患者のコンプライアンスを低下させ得る。望ましくは、かさ状部は、(かさ状部の近位24からかさ状部の遠位面26まで測定されるときに)薄くなるべく構成され、作られている。
図7aおよび図7b(器具の移行部および器具のコイル形状の胴体部材を除いた、かさ状部を示している)を参照すると、環状の形状を有しているかさ状部が示されている。しかし、かさ状部は、環状ではない他の形状(例えば、楕円、不規則な曲形および多角形)であり得る。このような環状ではない形状が用いられている場合、外周は鋭利な縁を有していないことが望ましい。外周75は、好ましく曲線状にされているか、または丸みを帯びている。図7aおよび図7bに示されるように、曲線状にされているか、または丸みを帯びている外周は、組織の刺激を最小化し得、したがって患者の適合性を向上させ得る。かさ状部のいくつかの局面において、外周(例えば、かさ状部が環状の形状を有しているときの円周)は、約4.52mmから約7.54mm、約5.28mmから約6.78mmまたは約5.65mmから約6.41mmの範囲である。一実施形態において、かさ状部は約6.03mmの外周を有している。
図7aに示されるように、かさ状部の近位面は平面72および曲面73を有し得る。平面72はかさ状部の中心付近に存在し得、曲面73はかさ状部の外周75付近に存在し得る。したがって、多くの局面において、かさ状部は中央の近くにおいてより厚く、かつ外周に向かうにしたがって薄くなる。曲面は一定の曲率または一定ではない曲率を有し得る。
かさ状部は、中心近くにおける最大の厚さから外周近くにおける最小の厚さまで次第に薄くなり得る。例えば図8はかさ状部の断面を示している。図8を参照すると、かさ状部の中心において(中心軸に沿って)測定されるとき、厚さ(距離D5)は、約0.25mmから約0.64mmの範囲、より詳細には約0.38mmから約0.51mmの範囲であり得る。いくつかの場合において、かさ状部は、かさ状部の中心部の全体にわたって一定の厚さを有している。
これは、近位面(図7aにおいては72)において、かさ状部に平らな表面82または比較的に平らな表面82を提供し得る。この平らな表面は、約0.245mm2から約0.405mm2、またはより詳細には約0.285mm2から約0.365mm2の範囲の面積を有し得る。一実施形態において、かさ状部は約0.325mm2の面積の平らな面を有している。
いくつかの局面において、かさ状部は外周に向かうにしたがって次第に薄くなる。例えば、かさ状部は、中心近くの最大の厚さから外周近くの最小の厚さまで次第に薄くなり得、例えば、約0.075mmから約0.175mmの範囲、より詳細には約0.10mmmから約0.15mmの範囲であり得る。
また、いくつかの局面において、かさ状部は、図8に示されている曲線の外周端87を有している。かさ状部の外周端87は、かさ状部の近位面から遠位面までの移行を表す部分である。かさ状部の外周端は丸みを帯びた曲面を有し得る。また、眼に器具が埋め込まれており、かつかさ状部の遠位面が眼の外部とかみ合わせられるときに、丸みを帯びた外周端は、組織の刺激を最小化し得、したがって患者のコンプライアンスを向上させ得る。
器具が十分に眼に挿入されているとき、かさ状部の遠位面は眼の外面に接触している。したがって、かさ状部の遠位面は挿入されているときの器具の安定化に役立ち得る。多くの形態において、かさ状部の遠位面はかさ状の近位面よりも平らである。しかし、いくつかの実施形態において、図7b(76)および図8(86)に示されるように、かさ状部の遠位面は曲面を備えている。いくつかの実施形態において、かさ状部の遠位面は凹形状の表面を有しており、当該凹形状の表面はかさ状部の外周から表面が内側に曲がっていることを意味している。例示的な一実施形態において、器具が眼に挿入されているときに遠位面が眼の外面と深くかみ合うように、凹形状の表面はごくわずかに内側に曲がっている。言い換えると、かさ状部の凹形の遠位面は眼の外面の凸形状と適合されている。いくつかの実施形態において、凹面(すなわち、遠位面の深さ)は、約0.05mmより小さく、より典型的には約0.032mmより小さい。
かさ状部は、移行部および/または胴体部材と同じか、または異なる材料から製造され得る。いくつかの実施形態において、かさ状部は胴体部材と同じ材料から製造され得る。代替的に、かさ状部は胴体部材と異なる材料から製造され得る。
かさ状部を製造するために用いられる材料は特に限定されず、当該材料としては、コイル形状の胴体部材の製造のための上述のような任意の材料が挙げられる。通常、材料は、器具が接触している体液および体組織に不溶である。さらに、かさ状部は、かさ状部が接する身体の一部(例えば、切り口のある領域および切り口のある周辺)に刺激を与えない材料から製造され得る。例えば、器具が眼に挿入されているとき、かさ状部は、かさ状部が接触する眼の一部に刺激を与えない材料から望ましく製造される。したがって、この特定の実施形態にとっての材料の一例としては、様々な重合体(例えば、シリコンエラストマー、ゴム、ポリオレフィン、ポリウレタン、アクリレート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリスルフォンなど)および種々の金属(例えば、胴体部材のための上述の金属)が挙げられる。
かさ状部は、コイル形状の胴体部材とは別に製造され得、その後に、任意の適切な取り付け手段(例えば、適切な粘着剤またははんだ付け材料など)を用いて、胴体部材に取り付けられる。例えば、かさ状部は開口を備えるように製造され得る。胴体部材は、当該開口に配置され、その後にはんだ付け、溶接またはそうでなければ取り付けされる。代替的な実施形態において、かさ状部および胴体部材は、例えば、器具の構成部品(胴体部材およびかさ状部)の両方を囲い込んでいる(includes)鋳型を利用することによって、単一の構成として製造される。器具を製造する詳細な方法は、材料の入手の容易さおよび器具の構成部品を形成するための設備などの要因に依存して選択され得る。
他の実施形態において、コイル形状の胴体部材の表面積は、表面の構造を備えていることによって増加させられ得る。例えば、くぼみ、間隙、隆起部(例えば、リッジまたは溝)、起伏部などのような、表面の構造の任意の適切な種類が胴体部材に設けられ得る。表面の構造は、胴体部材を製造するために用いられる材料の表面に凹凸を形成することによって導入され得る。胴体部材の表面は、機械的手法(例えば、50μmのシリカのような材料を利用する機械的な粗雑化(roughening))、化学的手法、エッチング手法または他の公知の方法を用いて、粗雑化され得る。他の実施形態において、もたらされる表面は、胴体部材を製造するために多孔性の材料を利用することによって実現され得る。代替的に、材料は、当該分野において公知の方法を利用して処理されて、材料に細孔をもたらし得る。さらなる実施形態において、表面の構造は、機械加工された材料(例えば機械加工された金属)の胴体部材を製造することによって、もたらされ得る。材料は、所望される適切な任意の表面の構造(例えば、くぼみ、谷間、間隙などが挙げられる)をもたらすために機械加工され得る。
本発明のいくつかの局面において、器具は少なくとも表面の一部において被覆を備えている。被覆は、眼における器具の埋め込みに続いて被覆から放出可能な生体活性物質を備え得る。器具のコイル形状の胴体部材の第1部分および第2部分の表面は、典型的に被覆を備えている。また、移行部およびかさ状部は必要に応じて被覆を備え得る。
被覆は器具の表面に塗布される1つ以上の材料を指す。生体活性物質を放出する被覆は生物活性物質を少なくとも含んでいる。被覆を放出する生体活性物質は、生体活性物質および少なくとも1つの徐放性の成分をより典型的に含んでいる。多くの局面において、徐放性の成分は重合体材料である。
被覆は、器具の表面に被覆を形成するために用いられる1つ以上の材料を指す“被覆組成物”を用いて形成され得る。被覆組成物は、固体(例えば、生体活性物質および1つ以上の徐放性の(複数の)成分)および非固体(例えば、固体材料を溶解させるか、または懸濁させるために用いられ得る1つ以上の溶媒)を含み得る。
“被覆組成物”または“被覆”は、埋め込み式の眼の器具の表面に堆積させられている固体材料を指す。被覆組成物は、1つ以上の被覆組成物から形成され得るか、または1つ以上の層として形成され得る。また、例えば、被覆が被覆材料の複数の層から形成されている場合、被覆層は、必要に応じて“第1被覆層”、“第2被覆層”などと記載され得る。しかし、複数の層を有している被覆を説明する場合に、“第1層”が、器具の表面の遠位または近位にあるか否かは、その被覆の特定の記載との関連において理解される。
例えば、いくつかの実施形態において、被覆組成物は少なくとも2つの層を備えており、それぞれの層は同じ被覆組成物または異なる被覆組成物を含んでいる。このような一実施形態において、1つ以上の重合体(第1重合体および/または第2重合体)と共に1つの生体活性物質または(複数の)生体活性物質を有している第1層を塗布し、その後にそれぞれ生体活性物質を有しているか、または有していない1つ以上のさらなる層を塗布する。これらの異なる層は、特定の望ましい特徴を有している総合的な放出の特性をもたらすために、結果物の多層の被覆において次々に協同作用し得る。これは、大きい分子量を有している生体活性物質の徐放にとって利点であり得る。被覆の個々の層の組成は、所望される通りに、以下:第1重合体、第2重合体および/または1つ以上の生体活性物質のうちの、任意の1つ以上を含み得る。
被覆組成物は、少なくとも器具のコイル形状の胴体部材の一部と接して設けられ得る。いくつかの実施形態において、例えば、胴体部材の表面のすべてと接して、被覆組成物を設けることが望ましい。代替的に、被覆組成物は、胴体部材の一部(例えば、近位端と遠位端との間に位置している胴体部材の中心部など)に設けられ得る。いくつかの実施形態において、例えば、胴体部材の鋭利な遠位端を含めない胴体部材の部分と接して、被覆組成物を設けることが望ましい。これは、例えば、鋭利な先端における被覆組成物の層間剥離のおそれを減らすためにか、および/または先端の鋭利さを維持するために望ましい。被覆組成物と接している胴体部材の度合いは、複数の要因(例えば、眼に供給される生体活性物質の量、被覆材料の選択、被覆組成物の層間剥離のおそれなど)を考慮することによって決定され得る。例えば、いくつかの実施形態において、器具の埋め込みおよび/または取り出しにおける層間剥離のおそれを減らすために、器具の近位端および遠位端以外の胴体部材の部分に被覆組成物を提供することが望ましい。また必要に応じて、いくつかの実施形態において、このような層間剥離は、胴体部材の近位端および/または遠位端に向かって被覆の厚さが減少するように階段状の被覆厚を設けることによって、最小化され得る。例えば、米国特許出願公開第2005/0196424号(Chappa et al.)に記載されている被覆方法を参照すればよい。
さらなる任意の実施形態において、器具は、コイル形状の胴体部材の第1部分および第2部分における被覆の組成物と異なる被覆組成物を近位部および/または遠位部に備えられ得る。このような実施形態の一例は、コイル形状の胴体部材の第1部分および第2部分に異なる被覆組成物を有しており、胴体部材の遠位端および/または近位端に滑らかな被覆を有している胴体部材を備えている。当業者は被覆される胴体部材の度合いおよび望ましい(複数の)領域を決定し得る。
被覆材料は、器具が配置されて接している身体組織または体液に対して生体適合性であり得る。本明細書に用いられる“生体適合性”は、異物に対する大きな応答(例えば、免疫応答または炎症性の応答など)を誘発することなく、受容者によって受け入れられ、かつ受容者において機能する物質の能力を意味する。例えば、本発明の重合体の1つ以上に言及して用いられるとき、生体適合性は、意図されている方法において、受容者によって受け入れられ、かつ受容者において機能する重合体(または複数の重合体)の能力を指す。
本発明の多くの形態において、器具は、重合体を含有している被覆を備えている。1つ以上の重合体は、被覆内に含まれ得、器具からの生体活性物質の放出についての制御をもたらし得る。
本発明に有用な重合体材料は分子量について説明され得る。本明細書に使用されるとき、(重合体調製物の)分子量は、重合体調製の分子量を評価するために特に有用な、分子量を評価する標準比較方式である“質量平均分子量”またはMwを指す。質量平均分子量(MW)は、以下の式:
によって定義され得る(ここで、NはMの分子量を有している試料における重合体の分子数を表し、Σiは調製物におけるすべてのNiMi(化学種)の合計である)。MWは一般的な方法(例えば光散乱、超遠心分離、ゲル浸透クロマトグラフィー)を用いて測定され得る。重合体の調製物の分子量を決定するために用いられるMWおよび他の用語の説明は、例えばAllcock, H.R.およびLampe, F.W.のContemporary Polymer Chemistry(1990)の271ページに見られ得る。
器具の表面に形成されている被覆または器具の内腔に形成されているマトリクス(matrix)は、安定であり得るか、部分的に分解可能であり得るかもしくは部分的に可溶であり得るか、または十分に分解可能であり得るかもしくは十分に可溶であり得る。
重合体に言及して本明細書に使用されるとき、“分解可能である”という用語は、生理学的条件下(例えば、酵素的過程または非酵素的過程)にある期間を通して、構成成分に化学変化する天然重合体または合成重合体を指す。“分解性の”、“生分解性の”、“生分解可能な”および“耐久性のない”という用語は、“分解可能である”という用語と本明細書において交換可能に使用される。
いくつかの局面において、器具は、生体安定性の(biostable)重合体から形成されている、生体安定性の被覆または生体安定性のマトリクスを有している。例示的な生体安定性の重合体としては、アクリレート、ビニル重合体(例えばエチレンビニル酢酸)、ウレタン、エチレン系重合体(例えば、エチレンテレフタレートおよびエチレンオキシド)およびシリコンが挙げられるが、これらに限定されない。生体安定性の重合体は、重合体の被覆またはマトリクスを介した拡散によって放出され得る生体活性物質に関して透過性であり得る。いくつかの場合において、エチレン−酢酸ビニル共重合体は、器具に一体化されている生体安定性の被覆またはマトリクスを形成するために用いられる。
いくつかの形態において、器具は、ポリ(アルキル(メタ)アクリレート)および/またはポリ(芳香族(メタ)アクリレート)から形成される被覆またはマトリクスを備えており、ここで、“(メタ)”という表記は、アクリル系および/またはメタクリル系の形態のいずれかとしてのそのような分子(それぞれ、アクリレートおよび/またはメタクリレートに対応する)を包含している。
例示的なポリ(アルキル(メタ)アクリレート)としては、2以上、8以下の炭素のアルキル鎖長を有しており、50キロダルトンから900キロダルトンの分子量を有しているものが挙げられる。一実施形態において、重合体材料としては、約100キロダルトンから約1000キロダルトンまで、約150キロダルトンから約500キロダルトンまで、およびより詳細には約200キロダルトンから約400キロダルトンまでの分子量を有しているポリ(アルキル(メタ)アクリレート)が挙げられる。ポリ(アルキル(メタ)アクリレート)の一例は、ポリ(n−ブチル(メタ)アクリレート)である。他のポリアクリレートの例は、3対1の単量体の割合を有しているn−ブチルメタクリレート−メチルメタクリレート共重合体、1対1の単量体の割合を有しているn−ブチルメタクリレート−イソブチルメタクリレート共重合体、およびポリ(t−ブチルメタクリレート)である。このような重合体は市販されており(例えば、Sigma-Aldrich、Milwaukee、WI)、約150キロダルトンから約350キロダルトンまでの範囲の分子量を有しており、種々のインヘレント粘度、溶解度および形態(例えば、板、粒子、ビーズ、結晶または粉末)を有している。
適切なポリ(芳香族(メタ)アクリレート)の例としては、ポリ(アリール(メタ)アクリレート)、ポリ(アラルキル(メタ)アクリレート)、ポリ(アラルキル(メタ)アクリレート)、ポリ(アリールオキシアルキル(メタ)アクリレート)、およびポリ(アルコキシアリール(メタ)アクリレート)が挙げられる。
適切なポリ(アリール(メタ)アクリレート)としては、ポリ(9−アントラセニルメタクリレート)、ポリ(クロロフェニルアクリレート)、ポリ(メタクリルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン)、ポリ(メタクリルオキシベンゾトリアゾール)、ポリ(ナフチルアクリレート)、ポリ(ナフチルメタクリレート)、ポリ−4−ニトロフェニルアクリレート、ポリ(ペンタクロロ(ブロモ,フルオロ)アクリレート)、ポリ(フェニルアクリレート)、およびポリ(フェニルメタクリレート)が挙げられる。適切なポリ(アラルキル(メタ)アクリレート)としては、ポリ(ベンジルアクリレート)、ポリ(ベンジルメタクリレート)、ポリ(2−フェネチルアクリレート)、ポリ(2−フェネチルメタクリレート)、およびポリ(1−フェネチルメチルメタクリレート)が挙げられる。適切なポリ(アラルキル(メタ)アクリレート)としては、ポリ(4−sec−ブチルフェニルメタクリレート)、ポリ(3−エチルフェニルアクリレート)、およびポリ(2−メチル−1−ナフチルメタクリレート)が挙げられる。適切なポリ(アリールオキシアルキル(メタ)アクリレート)としては、ポリ(フェノキシエチルアクリレート)、ポリ(フェノキシエチルメタクリレート)、ならびにポリエチレングリコールの様々な分子量を有しているポリ(ポリエチレングリコールフェニルエーテルアクリレート)およびポリ(ポリエチレングリコールフェニルエーテルアクリレート)が挙げられる。適切なポリ(アルコキシアリール(メタ)アクリレート)としては、ポリ(4−メトキシフェニルメタクリレート)、ポリ(2−エトキシフェニルアクリレート)、およびポリ(2−メトキシナフチルアクリレート)が挙げられる。
アクリレートもしくはメタクリレートの単量体または重合体および/またはそれらの親のアルコールは、Sigma-Aldrich (Milwaukee、WI)またはPolysciences, Inc,(Warrington、PA)によって市販されている。
また、被覆またはマトリクスは、生体安定性の2つ以上の重合体の混合物によって形成され得る。例えば、一実施形態において、重合体被覆の組成物は、ポリ(n−ブチル)メタクリレート(“pBMA”)および第2重合体としてのエチレン−酢酸ビニル共重合体(“pEVA”)を含んでいる。重合体の例示的な絶対濃度は、被覆組成物の質量を基準にして、約0.05%から約70%の範囲である。本明細書に使用されるとき、“重合体の絶対濃度”は、被覆組成物における第1重合体および第2重合体の濃度を組み合わせた合計を指す。一実施形態において、被覆組成物は、約100キロダルトン(kD)から約1000kDまでの範囲にある重量平均分子量を有しているポリアルキル(メタ)アクリレート(例えば、ポリ(n−ブチル)メタクリレート)、およびpEVA共重合体の質量を基準にして約10%から約90%の範囲にある酢酸ビニルの含有量を有しているpEVA共重合体を含んでいる。特定の実施形態において、重合体組成物は、約200kDから約500キロkDの範囲にある分子量を有しているポリアルキル(メタ)アクリレート(例えば、ポリ(n−ブチル)メタクリレート)、およびpEVA共重合体の質量を基準にして約30%から約34%の範囲にある酢酸ビニルの含有量を有しているpEVA共重合体を含んでいる。この実施形態の重合体の被覆組成物における生体活性物質の濃度は、最終の被覆組成物の質量に基づいて、質量を基準にして約0.01%から約90%の範囲にあり得る。
生体安定性の重合体の例示的な混合物は、米国特許第6,214,901号(Chudzik et al.)および米国特許出願公開第2002/0188037号A1(Chudzik et al.)に記載されている(本発明の代理人がそれぞれ共通して指定されている)。これらの文献には、ポリ(ブチルメタクリレート)(pBMA)およびエチレン−酢酸ビニル共重合体(pEVA)の重合体の混合物が記載されている。
被覆またはマトリクスに含まれ得る重合体の有用な他の混合物は、米国特許出願公開第2004/0047911号に記載されている。この公報は、ポリ(ビニルアクリレート)、ポリ(ビニルアルキルエーテル)、ポリ(ビニルアセタール)、ポリ(アルキルおよび/またはアリールメタクリレート)またはポリ(アルキルおよび/またはアリールアクリレート)からなる群から選択される重合体(pEVAを含まない)およびエチレン−メタクリレート共重合体を含んでいる混合重合体を説明している。
また、生体安定性の重合体材料は、スチレン共重合体(例えば、ポリ(スチレン−イソブチレン−スチレン))であり得、被覆に基づくポリ(スチレン−イソブチレン−スチレン)の調製は、例えば、米国特許第6,669,980号に記載されている。
本発明の他の形態において、器具は、生分解可能な重合体を含んでいる被覆またはマトリクスを備えている。被覆またはマトリクスは、例えば単純な加水分解によって水性環境において分解する生分解可能な重合体から形成され得る。被覆またはマトリクスは、酵素的に分解可能である生分解可能な重合体から形成され得る。例えば、酵素的に生分解可能な重合体は、哺乳類の身体によって生成される酵素によって分解されるものであり得る。いったん分解されると、これらの重合体の分解生成物は、典型的に、身体によって次第に吸収されるか、または排除される。
生分解可能な材料として研究されている合成重合体の種類の例としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリオルトエステル、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリイミノカーボネート、脂肪族カーボネート、ポリホスファゼン、ポリ無水物およびこれらの共重合体が挙げられる。本発明の器具に接して用いられ得る生分解可能な材料の特定の例としては、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリジキサノン、ポリ(ラクチド−グリコリド)、ポリ(グリコリド−ポリジオキセタン)、ポリ無水物、ポリ(グリコリド−トリメチレンカーボネート)およびポリ(グリコリド−カプロラクトン)が挙げられる。また、これら重合体の混合物は、生分解可能な他の重合体とともに用いられ得る。多くの場合において、生体活性物質の放出は、これらの重合体がインシチュにおいて溶解するか、または分解するときに生じる。
生分解可能なポリエーテルエステル共重合体が用いられ得る。一般的に言って、ポリエーテルエステル共重合体としては、親水性(例えば、ポリエチレングリコールのようなポリアルキルグリコール)および疎水性のブロック(例えば、ポリエチレンテレフタレート)を含んでいる両親媒性のブロック共重合体である。ブロック共重合体の例としては、ポリ(エチレングリコール)に基づくブロックおよびポリ(ブチレンテレフタレート)に基づくブロック(PEG/PBT重合体)が挙げられる。これら種類のマルチブロック共重合体の例が、例えば、米国特許第5,980,948号に記載されている。PEG/PBT重合体は、商品名PolyActive(商標)をつけてOctoplus BVから市販されている。
また、部分に分かれている(segmented)生分解可能な分子構造を有している生分解可能な共重合体が用いられ得、ここで当該分子構造は、少なくとも2つの異なるエステル結合を含んでいる。生分解可能な、重合体は、(ABまたはABAの様式の)ブロック共重合体、または部分に分かれている(マルチブロックまたはランダムブロックとしても知られている)(AB)nの様式の共重合体であり得る。これらの共重合体は、エステル置換に対して非常に異なる感受性を用いて共重合体における結合を形成する2つ(またはそれ以上)の環状エステルの単量体を用いることによって、2段階(またはそれ以上)の開環共重合において形成される。これらの重合体の例は、例えば米国特許第5,252,701号(Jarrett et al., “Segmented Absorbable Copolymer”)に記載されている。
生分解可能な他の適切な重合体材料としては、リン含有結合を含んでいる生分解可能なテレフタレート共重合体が挙げられる。ポリ(ホスフェート)、ポリ(ホスホネート)およびポリ(ホスファイト)と呼ばれるリン酸エステルを有している重合体が知られている。例えば、Penczek et al., Handbook of Polymer Synthesis, Chapter 17: “Phosphorus-Containing Polymers,” 1077-1132 (Hans R. Kricheldorf ed., 1992)および米国特許第6,153,212号、米国特許第6,485,737号、米国特許第6,322,797号、米国特許第6,600,010号および米国特許第6,419,709号を参照すればよい。また、ホスファイトであるリン酸エステル結合を含んでいる生分解可能なテレフタレートポリエステルが用いられ得る。適切なテレフタレートポリエステル−ポリホスファイト共重合体は、例えば、米国特許第6,419,709号に記載されている(Mao et al., “Biodegradable Terephthalate Polyester-Poly(Phosphite) Compositions, Articles, and Methods of Using the Same)。ホスホネートであるリン酸エステル結合を含んでいる生分解可能なテレフタレートポリエステルが用いられ得る。適切なテレフタレートポリエステル−ポリ(ホスホネート)共重合体は、例えば、米国特許第6,485,737号および米国特許第6,153,212号に記載されている(Mao et al., “Biodegradable Terephthalate Polyester-Poly(Phosphonate) Compositions, Articles and Methods of Using the Same)。ホスフェートであるリン酸エステル結合を含んでいる生分解可能なテレフタレートポリエステルが用いられ得る。適切なテレフタレートポリエステル−ポリ(ホスフェート)共重合体は、例えば、米国特許第6,322,797号および米国特許第6,600,010号に記載されている(Mao et al., “Biodegradable Terephthalate Polyester-Poly(Phosphate) Polymers, Compositions, Articles, and Methods for Making and Using the Same)。
また、生分解可能な多価アルコールエステルが用いられ得る(米国特許第6,592,895号を参照すればよい)。この特許には、多価アルコールのエステル化によって生成されて、脂肪族ホモ重合体または脂肪族共重合体のポリエステルに由来するアシル部分をもたらす生分解可能な星型の重合体について説明されている。生分解可能な重合体は、疎水性の構成要素および親水性の構成要素を含んでいる架橋されている重合体の3次元的な網状構造であり得、当該構成要素は架橋されている重合体の構造とともにヒドロゲルを形成する(例えば、米国特許第6,583,219号に記載されている)。疎水性の構成要素は、不飽和基によって終結している末端を有している疎水性のマクロマーであり、親水性の重合体は、化合物を導入する不飽和基と反応させられるヒドロキシ基を含んでいるデキストラン多糖類である。構成要素は遊離ラジカルの重合によって架橋されている重合体の1段階の網状構造に転換可能である。
また、生体活性物質は、ポリ(エステル−アミド)(PEA)を含んでいるマトリクスから送達され得る。分解可能なポリ(エステル−アミド)は、OH−x−OH、zおよびCOOH−y−COOHの単量体から形成されるものを含み得、ここで、xはアルキル基であり、yはアルキル基であり、zはα−アミノ酸である。このようなα−アミノ酸の例は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、ノルロイシン、システイン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファンである。器具は、2つ以上のPEAおよび生体活性物質の混合物を含んでいるマトリクスとともに一体にされ得る。例示的なPEAおよび混合物は米国特許第6,703,040号(Katsarava, et al.)に記載されている。
生分解可能な他の材料は、α−1,4グルコピラノース重合体を包含している。重合体のマトリクスを形成するために用いられ得るいくつかの例示的なα−1,4グルコピラノース重合体は、同一出願人による米国特許出願公開第2005/0255142号(Chudzik et al.、公開日:2005年12月17日)および米国特許出願公開第2007/0065481号(Chudzik et al.、公開日:2007年5月22日)に記載されているようなでんぷん由来の低分子量の重合体である。アミロース、マルトデキストリンおよびポリアルジトールによって例示されるような、これらでんぷん由来の低分子量の重合体は、重合可能な基といった反応基を含んでおり、当該反応基は、活性化されて、生体活性物質を含んでいる生分解可能なマトリクスを形成し得る。
生分解可能な重合体は、α−アミノ酸に基づく重合体(例えば、米国特許第6,503,538号に記載されているようなエラストマーポリエステル共重合体アミドまたはエラストマーポリエステル共重合体ウレタン)を包含し得る。
本発明の他の形態において、器具は、生体安定性の重合体および生分解可能な重合体を含んでいる被覆またはマトリクスを備えている。
いくつかの形態において、被覆またはマトリクスは、少なくとも生体安定性の生分解可能な重合体が一般的な溶媒または一般的な溶媒系に混合されているか、または分散させられている組成物から形成される。このような組成物は、表面に塗布されるか、または内腔に満たされて、重合体が互いを用いた混合物である被覆またはマトリクスを形成し得る。適切な組成物は、特定の重合体を可溶化するためにか、または分散させるために用いられる特定の重合体の構成要素および溶媒系に基づいて選択され得る。
いくつかの局面において、被覆またはマトリクスは、親水性の部分および疎水性の部分を含んでいる生体安定性の疎水性の重合体ならびに生分解可能な疎水性の重合体から形成されている。生体安定性の重合体および生分解可能な重合体の組み合わせは、本明細書における開示および従来技術に基づいて選択され得る。例示的な組み合わせは、ポリ((メタ)アクリレート)(例えば、ポリ(ブチルメタクリレート)および生分解可能なポリエステルの組み合わせ(例えば、ポリ(エチレングリコール)(PEG)およびポリ(ブチレンテレフタレート)(PBT)に基づく生分解可能なポリ(エーテルエステル)マルチブロック共重合体))である。これら重合体の組み合わせの例は、同一出願人による同時係属中の米国特許出願公開第2008/0038354号に記載されている。
他の例として、生体安定性の重合体材料および生分解可能な重合体材料は、器具の表面の異なる被覆層に存在し得る。例えば、器具は、生体安定性の重合体材料から形成されている第1被覆層、および生分解可能な重合体材料から形成されている第2被覆層を備え得る。生体活性物質は一方または両方の被覆層に存在し得る。
さらなる被覆層が保護膜として存在し得、当該保護膜は生体活性物質を含んでいる1つ以上の重合体被覆層を覆い得る。このような保護膜は、当該保護膜の下にある1つ以上の層からの生体活性物質の放出を調整するために用いられ得る。保護膜の材料は、生体安定性であり得るか、または生分解可能であり得る。一局面において、被覆は、エチレン−酢酸ビニル共重合体を含んでいる、溶出を制御する保護膜層を含み得る。このような保護膜の組成物は、親水性の生体活性物質の下層からの放出速度を制御するために用いられ得る。保護膜の組成物の1つは、約15%から約35%の酢酸ビニルの範囲の酢酸ビニルの濃度を有しているエチレン−酢酸ビニル共重合体(pEVA)を使用している。
これらpEVA重合体の保護膜の組成物の例は、同一出願人による同時係属中の米国特許出願第12/386,469号(Hergenrother et al.、出願日:2009年4月17日、発明の名称:COATING SYSTEMS FOR THE CONTROLLED DELIVERY OF HYDROPHILIC BIOACTIVE AGENTS)に記載されている。
例示的な被覆組成物またはマトリクス形成組成物は、溶媒、溶媒に溶解しているか、もしくは懸濁している1つ以上の重合体、および重合体/溶媒の混合物に分散させられている1つもしくは複数の生体活性物質を含むように調製され得る。溶媒は、重合体が真溶液を形成するものが望ましい。いくつかの場合において、生体活性物質は、溶媒に可溶であり得るか、または溶媒の全体にわたって分散を形成し得るかのいずれかである。生体活性物質が分散を形成する場合、被覆組成物および/または被覆処理は、生体活性物質が組成物に懸濁している状態を維持するように、組成物を混合する処理または攪拌する処理を含み得る。
使用に際して、これらの実施形態は、器具に対する被覆組成物の塗布の前に、使用者側に任意の混合を要求しない。いくつかの実施形態において、組成物は、1つの組成物として器具に塗布されて被覆を形成し得るか、または器具の内腔を満たすために用いられ得る単一部分のシステムを提供し得る。例えば、米国特許第6,214,901号は、溶媒としてのテトラヒドロフラン(THF)の使用を例示している。THFは、特定の組成物に対して適当であり、ときに選択されると同時に、他の溶媒が発明にしたがって同様に使用され得る。当該他の溶媒としては、例えば、アルコール(例えば、メタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロパノールなど)、アルカン(例えば、ハロゲン化されているか、またはハロゲン化されていないアルカン(例えば、ヘキサンおよびシクロヘキサン))、アミド(例えば、ジメチルホルムアミド)、エーテル(例えば、ジオキソラン)、ケトン(例えば、メチルケトン)、芳香族化合物(例えば、トルエンおよびキシレン)、アセトニトリル、およびエステル(例えば、酢酸エチル)が挙げられる。
実施形態において、器具は、埋め込みによって器具から放出可能な生体活性物質と一体化されている。本明細書における説明のために、“生体活性物質”に対して言及がなされるが、単一の用語の使用は、考慮されている生体活性物質の用途を限定しないと理解され、任意の数の生体活性物質が、本明細書に教示しているものを用いて含められ得る。本発明によれば、有用な生体活性物質は、埋め込み部位への適用のための望ましい治療特性を有している任意の物質を実質的に包含している。
本発明の埋め込み式の眼の器具と一体化され得、当該器具から放出可能な生体活性物質の例が記載されているが、以下のそれらに限定されない。
ステロイド(抗炎症性のステロイドおよびコルチステロイドが挙げられる)は、埋め込み式の眼の器具と一体化され得、当該器具から放出可能である。例示的な抗炎症性のステロイドおよびコルチステロイドとしては、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、デキサメタゾン21−リン酸、フルオシノロン、メドリゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン21−リン酸、酢酸プレドニゾロン、フルオロメタロン、ベータメタゾン、およびトリアムシノロンもしくはトリアムシノロンアセトニドが挙げられる。
抗VEGF(血管内皮細胞増殖因子活性)(例えば、VEGF阻害剤またはVEGFの産生を阻害する成分)を有している種々の生体活性物質は、埋め込み式の眼の器具と一体化され得、当該器具から放出可能である。
VEGF阻害剤の1種は、抗VEGFアプタマーである。アプタマーにはDNAに基づく分子またはRNAに基づく分子が含まれ、標的分子(例えば、他の核酸およびタンパク質)と選択的に結合可能な点において、抗体と類似の機能を果たす。治療的なアプタマーの例としては、加齢性黄斑変性症の処置のためのpeg付加されている(pegylated)抗VEGFポリヌクレオチド、pegaptanib(Macugen(商標))が挙げられる。抗VEGFの成分の他の種類は、抗VEGFリボザイムである。リボザイムとして知られているRNA酵素分子は標的RNA分子の切断および分解を触媒し得る。Angiozyme(商標)として知られているFLT−1のmRNAに特異的なリボザイムが開発されており、進行型の固形腫瘍の処置にとって可能性を有していることについて明らかにされている。当該FLT−1のmRNAは、血管形成におけるVEGF受容体をコードしている。
VEGF阻害剤の他の種類は抗VEGF抗体またはその断片である。ranibizumab(Lucentis(商標))は抗血管内皮細胞増殖因子のmAb断片である。
抗増殖剤は、埋め込み式の眼の器具と一体化され得、当該器具から放出可能である。例示的な抗増殖剤としては、13−シスレチノイン酸、レチノイン酸誘導体、5−フルオロウラシル、タクソール、ラパマイシン、ラパマイシンの類似物質、タクロリムス、ABT−578、エベロリムス、パクリタキセル、タキサンまたは酒石酸ビノレルビンが挙げられる。
βアドレナリン作動薬は、埋め込み式の眼の器具一体化され得、当該器具から放出可能である。例示的なβアドレナリン作動薬としては、イソプロテレノール、エピネフリン(アゴニスト)、およびプロプラノロール(アンタゴニスト)が挙げられる。
プロスタグランジンは、埋め込み式の眼の器具と一体化され得、当該器具から放出可能である。例示的なプロスタグランジンとしては、PGE2またはPGF2が挙げられる。
神経保護剤は、埋め込み式の眼の器具と一体化され得、当該器具から放出可能である。神経保護物質は細胞を興奮毒性損傷から保護する。このような神経保護剤としては、N−メチル−D−アスパラギン酸塩(NMDA)アンタゴニスト、サイトカインおよび神経栄養因子、より詳細にはコエンザイムQ10、クレアチンおよびミノサイクリンが挙げられる。
例示的な神経栄養因子としては、毛様体神経栄養因子(CNTF)およびグリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)が挙げられる。
チロシンキナーゼ受容体アゴニストは、埋め込み式の眼の器具と一体化され得、当該器具から放出可能である。例示的なチロシンキナーゼ受容体は米国特許第5,919,813号に記載されている。いくつかの形態において、生体活性物質は式1:
の化合物を含んでいる(V、WおよびXは、ヒドロ、ヒドロキシル、アルコキシ、ハロ、エステル、エーテル、カルボン酸基、カルボン酸基の薬学的に受容可能な塩、および−SR(Rは水素またはアルキル基である)からなる群から選択され、Yは、酸素、硫黄、C(OH)およびC=Oからなる群から選択され、ZはヒドロおよびC(O)OR1(R1はアルキルである)からなる群から選択される。いくつかの局面において、アルコキシはC1−C6のアルコキシである。いくつかの局面において、ハロは、フッ素、塩素、または臭素である。いくつかの局面において、エステルはC1−C6のエステルである。いくつかの局面において、エーテルはC1−C6のエーテルである。カルボン酸基の薬学的に受容可能な塩としてはナトリウム塩およびカリウム塩が挙げられる。いくつかの形態において、アルキル基はC1−C6のアルキル基である。いくつかの形態において、タンパク質チロシンキナーゼ経路の阻害剤はゲニステインである。
特定の生体活性物質、または生体活性物質の組み合わせは、以下の1つ以上の要因:処置される障害、予想される処置期間、利用される生体活性物質の数および種類などに依存して選択され得る。
被覆組成物またはマトリクス形成組成物における生体活性物質の濃度は、最終的な組成物の質量を基準にして、約0.01質量%から約90質量%の範囲に規定され得る。
いくつかの局面において、生体活性物質は、約4%から約70%の範囲における量(固体の重量%)、または約40%から約60%、いくつかの例示的な組成物において約50%の範囲における量において、被覆組成物またはマトリクスを形成する組成物に存在している。
いくつかの局面において、被覆組成物またはマトリクス形成組成物における生体活性物質の量は、約1μgから約10mg、約100μgから約1500μgまたは約300μgから約1000μgの範囲であり得る。
いくつかの局面において、被覆またはマトリクスは、約1:9から約7:3または約1:9から約6:4の範囲にある、生体活性物質に対する重合体材料の割合(質量に基づく)を有して、形成されている。上記割合は、被覆またはマトリクスにおける重合体材料および生体活性物質の総量に基づいている。
いくつかの適用において、添加剤が、埋め込み部位に送達されるべき生体活性物質および/またはさらなる物質とともにさらに含まれ得る。適切な添加剤の例としては、水、生理食塩水、デキストロース、担体、防腐剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、賦形剤などが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の被覆組成物またはマトリクス形成組成物は、任意の適した形態において(例えば、真溶液、液状もしくはペースト状、乳剤、混合物、分散物またはブレンド(blend)の形態において)供給され得る。多くの場合において、被覆またはマトリクスは、溶液もしくは他の揮発性の成分の除去、および/または埋め込み式の眼の器具のインシチュにおいて被覆組成物に影響を与える他の物理化学的作用(例えば、加熱または照射)の結果として一般的に生成され得る。
器具の表面上にある被覆組成物または器具の1つ以上の内腔におけるマトリクスの全体の質量が、決定され得る。例えば、器具の質量は、器具に対する被覆の形成または内腔におけるマトリクスの形成の前および後に測定され得る。重合体材料および生体活性物質に起因する質量は、組み合わせてか、または個別に決定され得る。
例えば、被覆における生体活性物質の質量は、埋め込み式の眼の器具の表面積1cm2あたり約1μgから約5mgの範囲であり得る。いくつかの実施形態において、表面積は器具の胴体部材の全部または一部を含み得る。代替的な実施形態において、表面積は、器具の胴体部材およびかさ状部を含み得る。いくつかの形態において、生体活性物質に起因する被覆組成物の質量は、埋め込み式の眼の器具の表面積1cm2あたり約0.01mgから約0.05mgの範囲である。生体活性物質のこの量は、生理学的条件における十分な治療効果を提供するために一般的に有効である。本明細書に使用されるとき、表面積は器具の巨視的な表面積である。
いくつかの実施形態において、胴体部材の表面は、被覆組成物の供給の前に前処理され得る。埋め込み式の眼の器具の被覆において通常に用いられる任意の適切な表面の前処理は、本発明にしたがって利用され得、当該前処理としては、例えば、シラン、ポリウレタンおよびパリレンなどを用いた処理が挙げられる。例えば、パリレンの3つの主要な変種の1つであるParylene C(Union Carbide Corporationから市販されている)は、埋め込み式の眼の器具の表面に重合体層を形成するために用いられ得る。Parylene Cは、置換されている塩素原子を含有しているパラ−キシリレン、重合可能なガス状の単量体として低圧の真空環境においてParylene Cを供給することによって被覆し得る。単量体は、室温において基板上に凝縮し、重合して、埋め込み式の眼の器具の表面上にマトリクスを形成する。被覆の厚さは、圧力、温度および用いられる単量体の量によって制御され得る。パリレンの被覆は非反応性の不活性な障壁を提供する。
被覆組成物は、任意の適切な方法を用いて、埋め込み式の眼の器具に塗布され得る。例えば、被覆組成物は、被覆組成物を埋め込み式の眼の器具に塗布するために、浸漬、吹付けおよび他の通常の方法によって塗布され得る。特定の材料に対する使用にとっての被覆組成物の適合性、言い換えると被覆組成物の適合性は、本明細書の記載を考慮して当業者によって評価され得る。
いくつかの形態において、被覆組成物は、米国特許出願公開第2005/0019371号(上述)に記載されているように、超音波スプレーヘッドを利用して埋め込み式の眼の器具に塗布され得る。
1つ以上の適用において、被覆組成物は埋め込み式の眼の器具に塗布される。胴体部材に被覆組成物を塗布する方法は、器具の形状および処理における他の考慮のような要因によって典型的に決定される。被覆組成物は、次に溶媒の蒸発によって乾燥させられ得る。乾燥処理は、任意の適切な温度(例えば、室温または高温)において、必要に応じて減圧の補助とに、実施され得る。
いくつかの実施形態において、被覆組成物は、制御されている相対湿度の条件において胴体部材に塗布される。本明細書に使用されるとき、“相対湿度”は、空気の所定の温度における飽和水蒸気圧(または最大蒸気量)に対する水蒸気圧(または水蒸気量)の割合である。本発明のいくつかの実施形態によれば、被覆組成物は、周囲湿度と比較して高い相対湿度または低い相対湿度の条件下において胴体部材に塗布され得る。被覆組成物を塗布するときに湿度が制御されている場合、被覆組成物は、周囲湿度と異なる相対湿度をもたらすように適合されている、閉じられているチャンバまたは領域において、胴体部材に塗布され得る。このような一実施形態において、例えば、被覆組成物は、約0%から約95%の相対湿度の範囲における(約15℃から約30℃の範囲における所定の温度において)、より詳細には、約0%から約50%の相対湿度の範囲における程度に制御されている相対湿度の条件において、器具に塗布され得る。
いくつかの実施形態において、器具は、約0.1μmから約100μmの範囲、または約5μmから約60μmの範囲における厚さを有している。この被覆の厚さの程度は、生理学的条件において、埋め込み部位に対して治療有効量の生体活性物質を提供するために一般的に有効である。最終的な被覆の厚さは、被覆組成物に含められている生体活性物質の総量、生体活性物質の種類、含められている生体活性物質の数、治療の経過、および埋め込み部位などのような要因に依存して、変更され得、本明細書において特定されている範囲からときに外れ得る。
埋め込み式の眼の器具における被覆組成物の厚さは、任意の適切な手法を用いて評価され得る。例えば、被覆組成物の部分は、例えば液体窒素を利用した、被覆されている埋め込み式の眼の器具の凍結によって層間剥離され得る。層間剥離された部分の端部における厚さが、それから光学顕微鏡によって測定され得る。また、当該技術に公知の他の可視化の手法が利用され得る。当該手法は、例えば、本発明の明細書に記載されている厚さを有している被覆の可視化に適切な顕微鏡検査技術である。
いくつかの実施形態において、かさ状部は重合体の被覆組成物を供給され得る。これらの特定の実施形態によれば、かさ状部と接して供給される重合体の被覆組成物は、胴体部材と接して供給される重合体の被覆組成物と同じであり得るか、または異なり得る。例えば、かさ状部にとっての重合体の被覆組成物に含まれている特定の生体活性物質は、切り口の部位において所望の治療効果をもたらすために変更され得る。切り口の部位における身体の反応を減少させるか、またはそうでなければ制御するために、切り口の部位において所望され得る例示的な生体活性物質としては、抗菌剤および抗炎症薬などが挙げられる。また、かさ状部にとって特定の所望の重合体の被覆組成物を必要に応じて供給するために、第1重合体および第2重合体が、かさ状部に接して供給される重合体の被覆組成物について選択され得ることは、本開示事項の検討によって容易に明らかになるであろう。
いくつかの局面において、コイル形状の胴体部材は1つ以上の内腔を備えている。(複数の)内腔は、所望のように、胴体部材の長さまたは胴体部剤の長さの一部のみに沿って伸長し得る。いくつかの形態において、胴体部材は、胴体部材の第1部分から第2部分まで伸張している1つの内腔を備えている。内腔を有している胴体部材は、図3に示されるように、第1部分および第2部分を有しているコイル構造または螺旋構造として形成されている管から形成され得る。
(複数の)内腔は、所望の物質を埋め込み部位に送達する送達手段としての機能を果たし得る。内腔を介して送達される物質は、本明細書に記載されている任意の生体活性物質を含み得る。内腔を介して送達される物質は、器具の表面に形成されている被覆に含まれている(複数の)生体活性物質と同じであり得るか、または異なり得る。
内腔は、それ自身が生体活性物質であり得る充填組成物、または生体活性物質が生体活性物質の放出を調整する材料と混合され得る充填組成物を用いて充填され得る。例えば、内腔の充填組成物は、内腔に重合体のマトリクスを形成し、かつ内腔からの生体活性物質の放出を調整する高分子重合体材料を含み得る。また、本明細書に記載されているように、被覆の形成に有用な重合体材料は、内腔を満たすために用いられ得る。
内腔を有している器具の調製のために、充填組成物は、器具の出入口を介して内腔に送られ得るか、または器具が1つ以上の内腔を有している場合、2つ以上の出入口介して内腔に送達され得る。出入口は充填組成物によって内腔を満たした後に塞がれ得る。
内腔を備えている胴体部材は、生体活性物質が放出され得る1つ以上の開口を備え得る。例えば、胴体部材は複数の開口を備え得る。開口は不規則または規則的な配置において胴体部材の壁面に存在し得る。
いくつかの局面において、器具は、内腔から放出し得る生体活性物質および内腔を備えている。被覆の代替物としてか、または被覆に加えて、器具は、生体活性物質を徐放する(複数の)成分および生体活性物質を用いて満たされている内腔を備え得る。内腔を満たすために用いられ得る、例示的な(複数の)徐放成分としては重合体材料が挙げられ得る。重合体材料は生体活性物質を含有している“マトリクス”を内腔に形成するために用いられ得、当該内腔から生体活性物質が放出され得る。重合体のマトリクスは、器具と一体化されており(例えば内腔に存在している)、被覆以外の形態である重合体材料の本体を本明細書において指す。重合体材料(例えば、本明細書に記載されているもの)は、被覆の形成または内腔の充填に用いられ得る。
埋め込み式の眼の器具は、身体への埋め込みの前に、一般的な滅菌手法を利用して、滅菌され得る。滅菌は、例えば、エチレンオキシド滅菌またはガンマ線滅菌を利用して、所望のようになされ得る。好ましい実施形態において、利用される滅菌手法は、例えば生体活性物質の放出、被覆の安定性などに影響を及ぼすことによる、重合体の被覆組成物に影響を与えない。滅菌された器具は、使用前に無菌状態を維持するために、包装に入れられ得る。
“埋め込み部位”という用語は、本発明において、埋め込み式の眼の器具が配置される眼の部位を指す。言い換えると、“処置部位”は、器具の構成要素から直接的または間接的に処置を受ける眼の領域および埋め込み部位を包含している。例えば、生体活性物質は、埋め込み部位から器具自身を囲んでいる領域まで移動し得、したがって、埋め込み部位のみより大きな領域を処置する。
器具は、外科処置の終了時に、強膜の閉鎖のための縫合をわずかにか、またはまったく必要としない、眼における小さい穴または切り口を介する挿入のために設計され得る。
埋め込み式の眼の器具の挿入は、挿入用具を用いて容易にされ得る。コイル形状の器具の挿入に適した用具の例が、同一出願人による同時係属中の米国特許出願公開第2007/0027452号(Varner et al.)および米国仮特許出願第61/247,127号(Zhou, J. et al.、発明の名称:CARRIER FOR AN INSERTABLE MEDICAL DEVICE, INSERTION INSTRUMENTS, AND METHODS OF USE、出願日:2009年9月30日)に記載されている。この公報に記載されている挿入用具は、眼に対する器具の回転可能な挿入をもたらすために、手動によってか、または自動的に操作され得る手持ち式の器具を備えている。
いくつかの場合において、埋め込み式の眼の器具は、挿入手順をはかどらせ得る挿入用具にあらかじめ装填され得る。あらかじめ装填されている挿入用具は、無菌包装において提供され得る。他の場合において、埋め込み式の眼の器具は、挿入手順の前に無菌包装において提供され得、それから用具に装填され得る。無菌包装は、用具に対する器具の取り付けを容易にする特徴を含み得る。本発明において、あらかじめ装填されている器具を有している挿入用具、または取り付け補助を有している(単独もしくは挿入用具と組み合わせの)包装されている埋め込み式の眼の器具を含んでいるキットが考慮されている。あらかじめ装填されている埋め込み式の眼の器具を含んでいる、例示的なキットまたはシステムは、米国仮特許出願公開第61/247,127号(上述)に記載されている。
本発明の挿入用具は、眼の器具を眼に対して回転可能に挿入する方法に使用され得る。コイル形状の胴体部材は、眼の一部(例えば、強膜)における挿入を介して、眼への器具のねじ込みまたは眼への器具のひねり込みを可能にする。挿入部分は、胴体部材の外径とほぼ同じ大きさであり得る。典型的な挿入の手順は、回転運動によって眼の硝子体内に器具の遠位部を進めることに関する。多くの場合において、コイル形状の胴体部材が硝子体内に配置されるために、遠位端は、眼の強膜組織か、または強膜組織および結膜組織かを通って、まず進められる。いくつかの形態において、器具は、器具の鋭利な遠位端によって引き起こされる強膜組織の貫通(強膜を貫いての挿入)を介して、強膜組織を通って進み得る。代替的に他の形態において、器具は眼に予めなされる強膜切開術を介して硝子体内に進められ得る。
挿入用具は、挿入過程の間に埋め込み式の眼の器具を保持可能な遠位部を備え得る。特に、挿入用具の一端は、埋め込み式の眼の器具のかさ状の部分を把持し、かつ器具の遠位端と接しないコレット型の部材を備え得、当該部材は、鋭利な遠位端を有している器具のコイル形状部を挿入部位に向けている状態にする。コレット型の部材は、埋め込み式の眼の器具のかさ状部を把持し、開放させるために、半径方向に収縮および拡大し得る。また、コレット型の部材は挿入用具における駆動部によって制御され得る。
本発明の多くの局面において、胴体部材の遠位端は、器具を眼に挿入するときに強膜組織を貫通するために鋭利であるか、または尖っている(これらの局面において、切り口または貫通を形成するために、個々の用具および/または手順を必要としない)。挿入過程において、器具は挿入用具を用いて所定の場所に配置され、遠位端は強膜に接して配置される。力が、眼に向けて器具を進めるように、回転力とともに加えられる。これらの力を加えることによって、遠位端における鋭利な先端は強膜組織を貫通し、器具の遠位部は強膜組織を通って移動し始める。鋭利な遠位端は、第1部分の創意に富んだ構造(第2部分より大きいピッチを有している)に加えて、器具の遠位端の、強膜組織への貫通および移動を容易にし、同様に組織に対する損傷を顕著に最小化する。
挿入過程の間に、器具は、強膜を通って硝子体へのコイル形状の胴体部材の移動を起こす方向に回転させられる。
胴体部財の第1部分(拡大されているピッチを有している)は強膜組織を通って硝子体に移動する器具の最初の部分である。ピッチが拡大されているので、器具の1回転によって近位から遠位の方向により大きく移動する。
次に、器具の第2部分の胴体部材(第2部分より小さいピッチを有している)は、強膜組織を通って移動している器具の第1部分の次の部分である。第2部分のピッチは第1部分より小さいため、胴体部材の“リング”間における隔たりまたは間隔がより小さく、強膜層とのより密な適合を生じる。より密な適合によって、回転に対する抵抗のわずかな増加が生じ得、器具を眼に進ませるためのわずかに大きな回転力を必要とし得る。
ここで、図9を参照すると、器具は、強膜組織91を通ってかさ状部の遠位面96が眼の外面92と接している点まで回転させられる。この点において、器具は十分に眼に挿入されている。器具のコイル形状部の大部分(コイル形状の胴体部材の第1部分および第2部分が挙げられる)は、硝子体液に接して存在している。
十分に挿入されているとき、移行部93は強膜組織の層を通過している。さらに、十分な挿入の直後に、強膜組織94の一部は、移行部の近位にある胴体部材の表面97とかさ状部の遠位面との間に挟まれている。かさ状部と胴体部材との間における強膜組織の挟み込みは、十分な挿入位置における器具の安定化を助け、器具の移動の低下を助ける。
十分に挿入されているとき、移行部93は強膜組織の層を通過している。さらに、十分な挿入の直後に、強膜組織94の一部は、移行部の近位にある胴体部材の表面97とかさ状部の遠位面との間に挟まれている。かさ状部と胴体部材との間における強膜組織の挟み込みは、十分な挿入位置における器具の安定化を助け、器具の移動の低下を助ける。
さらに、いくつかの実施形態において、かさ状部の遠位面はわずかな凹形状を有しており、当該凹形状はまた、器具が十分に眼に挿入されているときの器具の安定性を向上させる。遠位面の凹形状は、凸形状を有している眼の外面との密着性を向上させる。向上した密着性は、眼の表面における器具の振動を阻むことによって、十分に挿入されているときの器具の望ましくない移動を最小化する。
挿入用具を用いて器具が十分に眼に挿入された後、コレット型の部材は、その保持部からかさ状部を放つ動作をし得、したがって器具は開放される。
他の外科的方法または外科用具は器具の埋め込みのために必要に応じて用いられ得る。器具を挿入するためのいくつかの方法において、強膜における切開は、眼へ通路を提供するためになされる。一般的な手法は、強膜を切開するために用いられ得る。図1を参照すると、このような手法は、結膜6の切開および強膜5を介した扁平部における強膜の切り口の形成を包含している。結膜6の切開は、眼の周りの結膜6を後方に引っぱって強膜5の大きい領域を露出させること、および後方に引っぱられている状態(結膜の通常の配置は非常に細く示されている)における、結膜6の切り込みまたは固定に一般的に関する。言い換えると、強膜5は、扁平部における強膜の切り口が形成されるべき領域においてのみ露出させられる。それから器具はこの切り口を介して挿入される。したがって、切り口は、器具が納まる程度に十分な大きさに形成されるべきである。結膜は、復元して器具を覆い、かつ縫合される。
代替的に、強膜切開部の形成は、縫合なしの外科的方法およびそれらの装置の利用を可能にする位置決め装置および位置決め方法(例えば、米国特許第7,077,848号に記載されている)の利用によって達成され得る。特に、そのような方法および装置は、器具が挿入される開口を塞ぐために縫合の利用を必要としない。位置決め装置は、結膜および強膜を介して挿入されて、1つ以上の入口開口を形成する。例示的な位置決め装置は、器具が眼に挿入される金属製またはポリイミド製の管である。
十分に器具が眼に挿入された後、眼の障害の処置のために器具から硝子体に生体活性物質が放出されるような期間にわたって、器具はそこに残され得る。
“処置単位”という用語は、眼の障害の処置にとって治療有効量を提供するために、1つ以上の生体活性物質の長期間にわたる投与量を指す。したがって、処置単位の要因としては、投与量および処置の時間経過((複数の)生体活性物質が投与される合計の時間)が挙げられる。
本明細書に使用されるとき、“治療有効量”は、患者において望ましい作用(例えば、眼の疾患のような眼の障害の処置などまたは痛みの緩和)をもたらす、生体活性物質のみまたは他の物質との組み合わせにおける量を指す。処置中における治療有効量は、要因(処置される特定の障害、障害の重篤度、個々の患者の特質(年齢が挙げられる)、身体の障害、身長および体重、処置の継続時間、用いられる特定の生体活性物質および併用療法(もしあれば)の性質などの医師の知識および専門的判断の範囲内にある要因)に依存し得る。通常の技術を有している医師または獣医は、障害の進行の処置および/または予防に必要な生体活性物質の有効量を容易に決定し得、処方し得る。
生体活性物質は、対象における眼の障害を処置するために、長期間にわたって十分な量において放出され得る。いくつかの局面において、器具は被覆を含んでおり、生体活性物質は一定の速度において被覆から放出され得る。一定の速度による放出は、被覆からの生体活性物質の放出期間にわたって一日当たりに放出される生体活性物質の量が実質的に変化しないことを意味している。このことから、器具における被覆は、ゼロ次放出の速度に近い薬剤送達を可能にする。
いくつかの局面において、生体活性物質は10ng/日から10μg/日の範囲の平均速度において放出される。より詳細な局面において、生体活性物質は100ng/日から7.5μg/日の範囲の平均速度において放出される。さらに詳細な局面において、生体活性物質は500ng/日から5μg/日の範囲の平均速度において放出される。さらに詳細な局面において、生体活性物質は750ng/日から2.5μg/日の範囲の平均速度において放出される。さらに詳細な局面において、生体活性物質は約1μg/日の平均速度において放出される。
被覆は、生体活性物質の特に長い放出期間を有するように調製され得、当該放出期間において、治療有効量の生体活性物質がこの期間の後期の時点において放出され得る。生体活性物質の放出に関して、被覆は“半減期”を有し得、当該半減期は、被覆に存在している生体活性物質の総量の半分が放出されるまでの期間である。
例えば、一局面において、被覆に存在している生体活性物質の量の50%は、100日の期間の後に被覆から放出される。この点において、被覆は、約3ヶ月以上の期間、約6ヶ月以上の期間、約9ヶ月以上の期間、約12ヶ月以上の期間、約3ヶ月から約6ヶ月の範囲における期間、約3ヶ月から約9ヶ月の範囲における期間、約3ヶ月から約12ヶ月の範囲における期間または約3ヶ月から約24ヶ月の範囲における期間にわたって生体活性物質が放出されるべき障害の処置に用いられ得る。
いったん生体活性物質が埋め込み部位に送達され始めると、要求されている治療有効量の生体活性物質が障害の処置のために送達された場合に、埋め込み式の眼の器具は取り外され得る。
埋め込み式の眼の器具は、徐放様式における1つ以上の生体活性物質の送達能を提供し得る。本明細書に使用されるとき、“徐放”は、所望の用量(投与量および総用量が挙げられる)および所望の処置の継続期間において、患者の体内への化合物(例えば、生体活性物質)の放出を指す。例えば、被覆組成物(被覆組成物における個々の成分の量および割合が挙げられる)は、生体活性物質の所望の放出特性(単位時間当たりに被覆から放出される生体活性物質の量)を有している被覆を提供するために調製され得る。インビボにおける生体活性物質の放出動態は、器具の埋め込みの後の数分間から数時間の単位またはそれ未満の範囲における短期間(“噴出”)の放出要素、ならびに数時間から数日間または数ヶ月間にさえ及ぶ有効な放出の範囲にあり得るより長期間の放出要素の両方を包含し得る。生体活性物質の放出の加速または減速は、これらの放出速度に関する構成要素のいずれか、または両方を包含し得る。
生体活性物質の所望の放出特性は、要因(例えば、選択される特定の生体活性物質、埋め込み部位に供給される個々の生体活性物質の数、達成されるべき治療的効果、眼における器具の存続時間および当業者にとって公知の他の要因)に依存し得る。
器具からの生体活性物質の、眼における徐放をもたらす能力は、多くの利点をもたらし得る。例えば、埋め込み式の眼の器具は、所望の任意の期間にわたって眼に維持され得、生体活性物質の放出動態は、所望の治療効果を達成するための生体活性物質の総量を所望の速度において送達するために調節され得る。いくつかの実施形態において、眼における生体活性物質の徐放をもたらす能力は、所望の治療効果が達成されるまで適当な場所に維持され得る1つの器具のみが、当該器具を取り外すことおよび生体活性物質の新たな補充を受けた当該器具を元に戻すことを必要とせずに、埋め込まれることを許容する。いくつかの形態において、埋め込み式の眼の器具の使用は、身体の他の組織に悪影響を与え得る生体活性物質の全身性の散布に関する必要性を回避し得る。
埋め込み式の眼の器具は、任意の所望の生体活性物質または複数の生体活性物質の組み合わせ(例えば、本明細書に記載されている複数の生体活性物質)を眼に送達するために利用され得る。長期間にわたって送達される(複数の)生体活性物質は、治療的水準の範囲内であり、毒性の水準を下回ることが望ましい。例えば、眼の疾患また異常の処置に用いるトリアムシノロンアセトニドの標的用量は、約0.5μg/日から約2μg/日の範囲である。処置経過は6ヶ月間または1年間を超え得る。したがって、いくつかの実施形態において、生体活性物質は、患者に埋め込まれてから6ヶ月間以上、9ヶ月間以上、12ヶ月間以上または36ヶ月間以上の期間にわたって、治療有効量において被覆から放出される。
本発明の実施形態は、長期間にわたって一定の速度において生体活性物質を放出可能な埋め込み式の眼の器具を提供する。さらに、埋め込み式の眼の器具は、被覆組成物の調合を変更すること(例えば、異なる相対量において第1重合体および第2重合体を提供すること、および/または被覆組成物に含まれている生体活性物質の量を変更すること)によって、生体活性物質の放出速度を制御する能力を提供し得る。本明細書に記載されている被覆組成物は、種々の放出速度の全体における種々の期間にわたる再現可能な方法における生体活性物質の放出を提供し得る。いくつかの被覆組成物は、ポリ(n−ブチル)メタクリレートの量に対して変化する量のエチレン−酢酸ビニル共重合体、および一定量の生体活性物質を有している。種々の実施形態において、被覆組成物の重合体の組成は、生体活性物質の放出速度を制御するために変更され得る。
埋め込み式の眼の器具は、種々の眼の障害(例えば、網膜剥離;閉塞;増殖性網膜症;増殖性硝子体網膜症;糖尿病性網膜症;炎症(例えば、ブドウ膜炎、脈絡膜炎および網膜炎);変性疾患(AMDとも呼ばれる加齢性黄斑変性症);血管障害;および腫瘍(新生物が挙げられる))を処置し、1つ以上の生体活性物質を眼に送達するために用いられ得る。さらなる実施形態において、埋め込み式の眼の器具は、例えば眼の手術に起因する、考えられる合併症を減らすためか、または介するための処置として、術後に用いられ得る。このような一実施形態において、埋め込み式の眼の器具は、術後の炎症の管理(例えば、軽減または防止)を補助するために、白内障の外科的処置の後に患者に備えられ得る。
いくつかの実施形態において、生体活性物質は、器具の胴体部材の表面に形成されている被覆から放出され、眼の障害を処置するために用いられる。他の実施形態において、生体活性物質は、器具の胴体部材内の内腔から放出され、眼の障害を処置するために用いられる。
いくつかの実施形態において、埋め込み式の眼の器具は、網膜組織における血管形成によって特徴付けられる糖尿病性網膜症の処置のために用いられる。
糖尿病性網膜症は4つの段階を有している。埋め込み式の眼の器具は、これら4つの任意の段階において、糖尿病性網膜症と診断された対象に送達され得る一方で、より後の段階において障害を処置することが一般的である。
第1段階は、網膜血管において微細動脈瘤の出現によって特徴付けられる穏やかな非増殖性網膜症である。第2段階は、微細動脈瘤の閉塞によって特徴付けられる中程度の非増殖性網膜症である。第3段階は、微細動脈瘤のより広範囲の閉塞によって特徴付けられる重度の非増殖性網膜症であり、当該微細動脈瘤は網膜の種々の領域から血液供給を奪い、かつこの奪うことに応じて網膜に新たな血管の形成(血管形成)を招く。第4段階は、異常な形態を有している新たな血管の活発な形成によって特徴付けられる増殖性網膜症である。これらの異常に形成される血管は、網膜および硝子体の表面に沿って成長し、重度の失明を招き得る血液漏出を起こす傾向にある。
糖尿病性網膜症の処置は、抗血管形成因子である生体活性物質を含んでいる埋め込み式の眼の器具を準備すること、器具を眼に挿入すること、および抗血管形成因子の器具からの放出を可能にすることによって達成され得る。抗血管形成因子は、処置経過中に副網膜組織に影響を及ぼし得る。いくつかの局面において、生体活性物質は、血管形成の阻害物質(例えば、酢酸アネコルタブまたは受容体チロシンキナーゼアンタゴニスト)である。
受容体チロシンキナーゼアンタゴニストを用いて糖尿病性網膜症を処置する化合物および方法は、米国特許第5,919,813号に記載されている(本明細書にも記載されている)。化学式Iの化合物を用いた例示的な用量の範囲は、約1mg/kg/日から約100mg/kg/日であり、またはより詳細には約15mg/kg/日から約50mg/kg/日である。
また、複合薬の送達方法は、糖尿病性網膜症の処置のために実施され得る。例えば、強膜組織は1つ以上の神経栄養因子を処置され得る。さらに、神経保護薬は埋め込み式の眼の器具から送達され得る。一例として、ミノサイクリンは、プログラム細胞死(アポトーシス)に導く事象のカスケードも妨げ得るので、神経保護薬(抗炎症作用を有している抗生物質としての役割に加えて)と考えられている。
糖尿病性網膜症の処置は、埋め込み式の眼の器具の単独の埋め込みによって実施され得るか、または他の手順(例えば、レーザー手術および/または硝子体茎切除術)と共に実施され得る。
また、埋め込み式の眼の器具は、ブドウ膜の炎症によって特徴付けられるブドウ膜炎の処置に用いられ得る。ブドウ膜は、強膜と網膜との間にある眼の層であり、虹彩、毛様体および脈絡膜を含んでいる。ブドウ膜は、網膜に対する血液供給のほとんどを提供している。
ブドウ膜炎の形態としては、(複数の)虹彩に局限される炎症と一般的に関連する前部ブドウ膜炎が挙げられる。ブドウ膜炎の他の形態は、扁平部(虹彩と脈絡膜との間)の炎症に関する。ブドウ膜炎の他の形態は、(複数の)脈絡膜に主に影響を及ぼす後部のブドウ膜炎である。埋め込み式の眼の器具は、これら特定の任意の障害の処置のために、眼における標的部位に運ばれ得る。
埋め込み式の眼の器具は、1つ以上の抗炎症因子を眼に送達することによってブドウ膜炎を処置するために用いられ得る。
また、眼の器具は、網膜変性によって特徴付けられる網膜色素変性症の処置に用いられ得る。例えば、埋め込み式の眼の器具は、1つ以上の神経栄養因子を眼に送達することによって網膜色素変性症の処置に用いられ得る。
また、埋め込み式の眼の器具は、加齢性黄斑変性症(AMD)の処置のために用いられ得る。AMDは血管形成および網膜変性の両方によって特徴付けられる。AMDの特定の形態としては、萎縮型加齢性黄斑変性症、滲出型加齢性黄斑変性症および近視変性が挙げられるが、これらに限定されない。埋め込み式の眼の器具は、AMDのこれら任意の形態の処置のために眼に埋め込まれ得る。一例として、埋め込み式の眼の器具は、AMDの処置のための以下に薬剤:抗VEGF(血管内皮細胞増殖因子)化合物、神経栄養因子および/または抗血管形成因子の1つ以上を送達するために用いられ得る。いくつかの特定の局面において、埋め込み式の眼の器具は、副網膜組織の処置を目的として、コルチコステロイドを放出するために用いられる。
例示的な実施形態において、ステロイドの用量は、約3ヶ月間から約12ヶ月間の範囲における期間にわたって、約10μgから約500μgである。この用量の範囲は、黄斑変性の以下の3つの段階:つまり、早発性の黄斑変性、萎縮型黄斑変性(AMD)および新生血管黄斑変性(NMD)のそれぞれに対して適用可能である。
また、埋め込み式の眼の器具は、眼圧の増加および網膜神経節細胞の減少によって特徴付けられる緑内障の処置のために用いられ得る。埋め込み式の眼の器具は、興奮毒性損傷から細胞を保護する1つ以上の神経保護薬の放出を意図されている緑内障の処置のために眼に埋め込まれ得る。このような薬剤としては、N−メチル−D−アスパルテート(NMDA)アンタゴニスト、サイトカインおよび神経栄養因子が挙げられる。
また、埋め込み式の眼の器具は、対象の予防的処置のために用いられ得る。言い換えると、埋め込み式の眼の器具は、異常または疾患であると診断されていない場合でさえも、対象に提供され得る。例えば、一方の眼にAMDが生じている場合に50%を超えて、続く一年以内に、疾患に冒されていない眼にAMDが生じ得る。このような場合に、疾患に冒されていない眼に対するステロイドのような治療媒体の予防的投与は、疾患に冒されていない眼におけるAMDの危険性の最小化または予防に有効であることを示し得る。
Claims (21)
- 眼の強膜に接するように構成されている近位部、およびコイル形状の胴体部材を有している遠位部を備えており、
コイル形状の上記胴体部材は第1部分および第2部分を備えており、上記第1部分は上記第2部分よりも大きいピッチを有しており、上記第2部分は上記第1部分に対して近位にあり、
生体活性物質を含んでいる、眼薬送達器具。 - 上記第2部分は上記第1部分の長さより長い、請求項1に記載の眼薬送達器具。
- 上記第2部分は2.12mmから3.53mmの範囲における長さを有している、請求項1に記載の眼薬送達器具。
- 上記第2部分は2回巻きから4回巻きとして構成されている、請求項1に記載の眼薬送達器具。
- 上記第1部分は1.28mmから2.14mmの範囲における長さを有している、請求項1に記載の眼薬送達器具。
- 上記第2部分は0.74mmから1.23mmの範囲におけるピッチを有している、請求項1に記載の眼薬送達器具。
- 上記第1部分は1.2mmから2mmの範囲におけるピッチを有している、請求項1に記載の眼薬送達器具。
- コイル形状の上記胴体部材は3回巻きから5回巻きとして構成されている、請求項1に記載の眼薬送達器具。
- 4.9mmから6.5mmの範囲における長さを有している、請求項1に記載の眼薬送達器具。
- 1.28mmから2.19mmの範囲における外径を有している、請求項1に記載の眼薬送達器具。
- コイル形状の上記胴体部材は18.9mm2から49.5mm2の範囲における表面積を有している、請求項1に記載の眼薬送達器具。
- 上記近位部はかさ状部を備えており、当該かさ状部は、コイル形状の上記胴体部材が硝子体に挿入されているときに眼の外面と接触する遠位面を有している、請求項1に記載の眼薬送達器具。
- コイル形状の上記胴体部材の第2部分の近位端と上記かさ状部の上記遠位面との間に存在している移行部を備えており、上記移行部は、上記胴体部材の上記コイル形状部の表面と上記かさ状部の上記遠位面との間に強膜組織を押し込むように構成されており、当該表面は、上記かさ状部の上記遠位面に近接しており、当該遠位面と対向している、請求項12に記載の眼薬送達器具。
- 上記移行部の長さは0.15mmから0.3mmの範囲である、請求項13に記載の眼薬送達器具。
- コイル形状の上記胴体部材の近位にある最初の1巻きの最外部の表面と、上記かさ状部の上記遠位面との間の距離は、約0.5mmから約0.65mmの範囲である、請求項13に記載の眼薬送達器具。
- 上記かさ状部は曲線的な周辺端部を含んでいる、請求項12に記載の眼薬送達器具。
- 上記かさ状部は4.52mmから7.54mmの範囲における外周を有している、請求項12に記載の眼薬送達器具。
- 上記かさ状部は0.25mmから0.64mmの範囲における厚さを有している、請求項12に記載の眼薬送達器具。
- コイル形状の上記胴体部材の表面は、上記器具が眼に挿入されているときに上記生体活性物質の放出を制御する、重合体の被覆を備えている、請求項1に記載の眼薬送達器具。
- 遠位部、近位部および生体活性物質を備えている眼薬送達器具であって、
上記遠位部は、コイル形状の胴体部材を有しており、
上記近位部は、眼の強膜に接触するように構成されており、かつ遠位面を有しているかさ状部を備えており、当該遠位面は、凹形状を有しており、コイル形状の上記胴体部材を硝子体に挿入するときに眼の外面に接触する、眼薬送達器具。 - 遠位部、近位部、移行部および生体活性物質を備えている眼薬送達器具であって、
上記遠位部は、コイル形状の胴体部材を備えており、
上記近位部は、遠位面を有しているかさ状部を備えており、当該遠位面がコイル形状の上記胴体部材を硝子体に挿入するときに眼の外面と接触し、
上記移行部は、コイル形状の上記胴体部材の第2部分の近位端と上記かさ状部の上記遠位面との間にあり、上記移行部は、上記胴体部材のコイル形状部の表面と、上記かさ状部の上記遠位面との間に強膜組織を押し込むように構成されており、当該表面は、上記かさ状部の上記遠位面に近接しており、当該遠位面と対向している、眼薬送達器具。
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